(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/04 20060101AFI20240920BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240920BHJP
【FI】
B60N2/04
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2021096899
(22)【出願日】2021-06-09
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小河 卓人
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0244180(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1485810(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099596(US,A1)
【文献】実開昭50-053936(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0359084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/04
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物の乗員が着座する乗り物用シートであって、
シートクッションの骨格の一部を構成するクッションフレーム及びシートバックの骨格の一部を構成するバックフレームをそれぞれ含む、一方向に配列された複数のシートフレームを備え、
前記複数のシートフレームの各々は、前記一方向に移動可能に前記乗り物の床面に取り付けられ、
前記複数のシートフレームを、隣り合う2つの前記シートフレーム間の距離を変更可能に連結する連結機構を更に備え
、
前記連結機構は、隣り合う2つの前記シートフレーム同士を当該シートフレーム間の距離を変更可能に連結する第1機構と、前記複数のシートフレームのうちの前記一方向の一端に配置される前記シートフレームと前記床面に固定される固定部材とを、当該シートフレーム及び当該固定部材間の距離を変更可能に連結する第2機構と、を組み合わせて構成されている、
乗り物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗り物用シートであって、
前記連結機構は、前記第1機構と前記第2機構がそれぞれ平行クランク機構で構成されたレージトング機構である、
乗り物用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の乗り物用シートであって、
前記複数のシートフレームのうちの前記一方向の一端に配置される前記シートフレームのみを前記一方向に駆動する駆動部を更に備える、
乗り物用シート。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の乗り物用シートであって、
前記複数のシートフレームは、前記乗り物の乗降口を遮る位置と、前記乗り物の乗降口を開放する位置との間で移動可能に構成される、
乗り物用シート。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の乗り物用シートであって、
前記固定部材は、前記乗り物に搭載される別のシートのフレームの一部である、
乗り物用シート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の乗り物用シートであって、
前記シートフレームは、前記床面に設置された前記一方向に延び且つ対向する一対のレールのそれぞれに摺動自在に支持される2つの脚部を有し、
前記連結機構は、前記2つの脚部のうちの前記バックフレームに近い側の脚部同士を連結している、
乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートバックとシートクッションを分割できるものとし、シートクッションを車室左右方向に摺動自在に配置したリアシートが記載されている。
【0003】
特許文献2には、スライド可能に車両の前後方向に沿って並べられた複数のシートを備える車両用シート装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、車両用のユーザ入力制御装置にアクセスすることを可能にする乗客使用構成を有する第1の着座列と、乗客使用構成及び第2の構成する第2の着座列と、を有するシステムが記載されている。このシステムでは、第1の着座列が第2の着座列の上を移動するように構成されている。
【0005】
特許文献4には、車体側部に設けられ、乗降口を閉鎖する閉鎖位置と開放する折り畳み位置に位置可能な折戸と、前記折り畳み位置の前方に隣接して設けられた座席シートと、を有する車体の構造が記載されている。この座席シートは、リクライニング機構により前記折り畳み位置側へ倒し可能なシートバックを有するシートクッションを含み、前記シートクッションを、前後方向にスライドするスライド機構と、前記折り畳み位置と前記座席シート間に、前記リクライニング機構のリクライニング時に前記シートバックの移動を規制し、前記折り畳み位置に位置する折戸と前記シートバックの干渉を防止するストッパ手段と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平02-059028号公報
【文献】特開2015-221640号公報
【文献】特開2020-128205号公報
【文献】特開2011-131781公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術のように、シートバックとシートクッションが一体化された乗り物用シートが移動可能になっているだけでは、乗り物の内部空間を広く使うことが難しい。
【0008】
本発明の目的は、乗り物の内部空間を有効に利用可能な乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の乗り物用シートは、乗り物の乗員が着座する乗り物用シートであって、シートクッションの骨格の一部を構成するクッションフレーム及びシートバックの骨格の一部を構成するバックフレームをそれぞれ含む、一方向に配列された複数のシートフレームを備え、前記複数のシートフレームの各々は、前記一方向に移動可能に前記乗り物の床面に取り付けられ、前記複数のシートフレームを、隣り合う2つの前記シートフレーム間の距離を変更可能に連結する連結機構を更に備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乗り物の内部空間を有効に利用可能な乗り物用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の乗り物用シートの一実施形態である自動車用シートが搭載される自動車の概略構成を示す平面模式図である。
【
図2】
図1に示す自動車の自動車用シート30を後方向に縮めた状態を示す平面模式図である。
【
図3】
図1に示す自動車の3つの自動車用シートの詳細構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す自動車の3つの自動車用シートの詳細構成例を示す別の斜視図である。
【
図5】
図3に示す自動車用シート30を構成する1つのシートフレームの拡大斜視図である。
【
図6】
図3に示す自動車用シート30の部分拡大図である。
【
図7】
図2に示す自動車用シート30の連結機構を含む部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の乗り物用シートの一実施形態である自動車用シート30が搭載される自動車Vの概略構成を示す平面模式図である。自動車用シート30は、自動車Vに搭載される。以下では、自動車Vの前進方向を前方向Frと記載し、前方向Frの反対方向を後方向Rrと記載し、これらを総称して前後方向Yと記載する。前後方向Y及び鉛直方向に直交する方向を自動車Vの左右方向Xと記載する。左右方向Xのうちの一方を右方向Rと記載し、右方向Rの反対方向を左方向Lと記載する。前後方向Y及び左右方向Xに垂直な方向を自動車Vの上下方向Zと記載する。上下方向Zのうち地面に向かう方向を下方向Dと記載し、下方向Dの反対方向を上方向Uと記載する。
【0013】
自動車Vは、前後方向Yに延びる略矩形形状の車体を備え、車体の左側面の前側には、乗降口VEが設けられている。
図1の例では、自動車Vの車体の底面を構成するフロアVFには、自動車用シート30と、自動車用シート30に隣接する自動車用シート20と、自動車用シート20に隣接する自動車用シート10と、が設置されている。自動車用シート10は、フロアVFの後端部の右側に設置されている。自動車用シート30は、フロアVFの左側部の略中央において、乗降口VEの近傍に設置されている。自動車用シート20は、フロアVFの左後方の角部に配置され、自動車用シート10と自動車用シート30の間に設置されている。
【0014】
自動車用シート10は、着座者の臀部及び大腿部を支持するためのシートクッション10Aと、着座者の腰部及び背部を支持するためのシートバック10Bと、を備える。
【0015】
自動車用シート20は、着座者の臀部及び大腿部を支持するためのシートクッション20Aと、着座者の腰部及び背部を支持するためのシートバック20Bと、を備える。
【0016】
自動車用シート30は、着座者の臀部及び大腿部を支持するためのシートクッション30Aと、着座者の腰部及び背部を支持するためのシートバック30Bと、を備え、シートクッション30A及びシートバック30Bの全体が、前後方向Y(シートの幅方向)に伸縮可能に構成されている。
【0017】
自動車用シート30は、シートクッション30A及びシートバック30Bを前後方向Yに伸縮自在に支持する、フロアVFに固定されたレール37R及びレール37Lを更に備える。レール37Lは、自動車用シート20の前方に、前後方向Yに延びて設けられている。レール37Rは、自動車用シート20の前方且つレール37Lよりも右側に、前後方向Yに延びて設けられている。自動車用シート30は、シートクッション30A及びシートバック30Bが前後方向Yに伸縮することで、
図1に示すように乗降口VEを遮る状態と、
図2に示すように乗降口VEを開放する状態と、を切り替えることが可能になっている。すなわち、自動車用シート30は、通常のシートとしての機能に加えて、乗降口VEの開閉を行う扉としての機能を併せ持つ。
【0018】
シートクッション10A、シートクッション20A、シートクッション30A、シートバック10B、シートバック20B、及びシートバック30Bは、それぞれ、シートの骨格(ベース)をなす金属等で構成されたシートフレームと、このシートフレームを覆うウレタンフォームなどの発泡材等からなるパッドと、このパッド表面を覆うトリムカバーと、を備えて構成される。トリムカバーは、複数のカバー部材が縫合される等して形成された袋状のカバーである。カバー部材としては、例えば皮革(天然皮革、合成皮革)又は布帛(織物、編物、不織布)が用いられる。カバー部材は、皮革又は布帛の単層構造であってもよいし、皮革又は布帛を表地として、皮革又は布帛にワディング(例えば弾性変形可能な軟質ポリウレタンフォームなどの樹脂発泡体)が積層された多層構造であってもよい。
【0019】
自動車用シート30は、
図1に示すように乗降口VEを内側から遮ることで、乗降口VEを閉じる扉として機能させることができる。
図1に示す状態では、乗降口VEの向かい側の領域を着座スペースとすることができ、自動車Vの内部空間を有効利用できる。
図2に示す状態では、乗降口VEを解放でき、乗員のスムースな乗降を実現できる。なお、自動車用シート30は、乗降口VEにおける前後方向Yの端から端までを閉じる構成でなくてもよい。例えば、乗降口VEの前後方向Yの半分を、自動車用シート30が遮ったり、開放したりするようにしてもよい。
【0020】
次に、自動車用シート10、20、30それぞれの内部構造の例について、
図3から
図7を参照して説明する。
図3は、
図1に示す自動車Vの自動車用シート10、20、30の詳細構成例を示す斜視図である。
図4は、
図1に示す自動車Vの自動車用シート10、20、30の詳細構成例を示す別の斜視図である。
【0021】
図3に示すように、フロアVFの後端部には、左右方向Xに延びる外縁形状が矩形状の車体フレーム50が固定されている。フロアVFの左側部には、前後方向Yに延びる外縁形状が矩形状の車体フレーム51が固定されている。車体フレーム50の左前の角部と、車体フレーム51の右後ろの角部とが接する状態で、フロアVFに車体フレーム50と車体フレーム51が固定されている。車体フレーム51の内側には、同じ長さのレール37R、37Lが、左右方向Xに並んで固定されている。
【0022】
図3に示すように、自動車用シート10のシートフレームは、車体フレーム50に支持された、シートクッション10Aの骨格をなすクッションフレーム10Afと、クッションフレーム10Afと車体フレーム50とに支持された、シートバック10Bの骨格をなすバックフレーム10Bfと、を備えて構成される。
【0023】
図3に示すように、自動車用シート20のシートフレームは、車体フレーム50、51に支持された、シートクッション20Aの骨格をなすクッションフレーム20Afと、クッションフレーム20Afと車体フレーム50、51とに支持された、シートバック20Bの骨格をなすバックフレーム20Bfと、を備えて構成される。
【0024】
図3及び
図4に示すように、クッションフレーム20Afは、平面視で六角形の形状の座面フレーム21と、座面フレーム21と車体フレーム51とを繋ぐ上下方向Zに延びる脚部フレーム22、23、25と、座面フレーム21と車体フレーム50とを繋ぐ上下方向Zに延びる脚部フレーム24、26と、を備えて構成される。脚部フレーム22、23は、車体フレーム51の左側縁に、前後方向Yに離間した状態にて固定されている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、自動車用シート30は、前後方向Yに配列された複数(
図3の例では7個)のシートフレーム31からなるシートフレームと、7個のシートフレーム31の各々を摺動自在に支持するレール37R、37Lと、7個のシートフレーム31を、隣り合う2つのシートフレーム31間の前後方向Yの距離を変更可能に連結する連結機構40と、を備えて構成されている。7個のシートフレーム31は、それぞれ、同じ構造となっている。
【0026】
図5は、
図3に示す自動車用シート30の1つのシートフレーム31の拡大斜視図である。
図5に示すように、シートフレーム31は、自動車用シート30のシートクッション30Aの骨格の一部をなすクッションフレーム33と、自動車用シート30のシートバック30Bの骨格の一部をなすバックフレーム32と、クッションフレーム33とレール37Rとを連結する脚部フレーム34R及び台車35Rと、クッションフレーム33とレール37Lとを連結する脚部フレーム34L及び台車35Lと、を備える。クッションフレーム33とバックフレーム32は、それぞれ、図示省略のパッドにより被覆される。
【0027】
クッションフレーム33は、左右方向Xに延び且つ前後方向Yに離間して並ぶ一対の柱状のサイドフレーム33Fr及びサイドフレーム33Rrと、サイドフレーム33Fr及びサイドフレーム33Rrの各々の右端同士を繋ぐ前後方向Yに延びたフロントフレーム33Rとを備えた、略U字形状の構造となっている。
【0028】
サイドフレーム33Fr及びサイドフレーム33Rrの各々の左端部の下面には、ブラケット36Lが固定されている。ブラケット36Lの下面には、脚部フレーム34Lの上端が固定されている。脚部フレーム34Lの下端には台車35Lが固定されている。台車35Lは、レール37Lによって摺動自在に支持されている。
【0029】
サイドフレーム33Fr及びサイドフレーム33Rrの各々における、左端部とフロントフレーム33Rとの間の部分の下面には、ブラケット36Rが固定されている。ブラケット36Rの下面には、脚部フレーム34Rの上端が固定されている。脚部フレーム34Rの下端には台車35Rが固定されている。台車35Rは、レール37Rによって摺動自在に支持されている。
【0030】
バックフレーム32は、略V字形状の一対の柱状のサイドフレーム32Fr及びサイドフレーム32Rrを備える。サイドフレーム32Frとサイドフレーム32Rrは、それぞれ、両端部を下にして上下方向Zに延びて形成されており、前後方向Yに離間して配置されている。サイドフレーム32Frの両端部は、サイドフレーム33Frの左端部に溶接などによって固定されている。サイドフレーム32Rrの両端部は、サイドフレーム33Rrの左端部に溶接などによって固定されている。
【0031】
図6は、
図3に示す自動車用シート30の部分拡大図である。
図6では、構造を分かりやすくするために、7つのシートフレーム31のうち、後側から数えて1番目と2番目のシートフレーム31における脚部フレーム34Rの図示を省略している。また、自動車用シート20の脚部フレーム25の図示を省略している。
【0032】
以下では、7つのシートフレーム31のうち、後側から数えて1番目のシートフレーム31のことを第一シートフレーム31とも記載し、7つのシートフレーム31のうち、後側から数えて2番目のシートフレーム31のことを第二シートフレーム31とも記載し、7つのシートフレーム31のうち、後側から数えて6番目のシートフレーム31のことを第六シートフレーム31とも記載し、7つのシートフレーム31のうち、後側から数えて7番目のシートフレーム31のことを第七シートフレーム31とも記載する。
【0033】
図6に示すように、自動車用シート30は、連結機構40を駆動するための駆動機構として、前後方向Yに延びるガイドレール38と、ガイドレール38に摺動自在に支持された、前後方向Yに延びる可動レール39と、可動レール39をガイドレール38に沿って移動させる動力を発生するモータMと、を備える。
【0034】
ガイドレール38の後端部は、自動車用シート20の脚部フレーム23に、ブラケット23aを介して固定されている。ガイドレール38の前端部は、自動車用シート20の脚部フレーム22に、ブラケット22aを介して固定されている。可動レール39の前端部の右側面は、ブラケット39aに固定されている。ブラケット39aは、第一シートフレーム31における脚部フレーム34Lの右側面に固定されている。したがって、モータMが作動して、可動レール39が前後方向Yに移動すると、ブラケット39aを介して可動レール39と固定された第一シートフレーム31が、レール37R、37Lに沿って前後方向Yに移動する。
【0035】
図7は、
図2に示す状態の自動車用シート30の連結機構40を含む部分の拡大図であり、左方向Lから右方向Rに向かって見た側面図である。
図7では、モータMの図示を省略している。連結機構40は、隣り合う2つのシートフレーム31同士を連結する合計で6つの平行クランク機構(4節連鎖のリンク機構)と、第一シートフレーム31と脚部フレーム22とを連結する平行クランク機構(4節連鎖のリンク機構)とを組み合わせて構成された、いわゆるレージトング機構である。
【0036】
連結機構40は、平板且つ直線状の複数のリンクを回動自在に連結して構成されている。具体的には、連結機構40は、7つのシートフレーム31のうちの第七シートフレーム31以外の各シートフレーム31に、互いに交差した状態で回動自在に支持された第一リンク41及び第二リンク42と、第七シートフレーム31に回動自在に支持された、第一リンク41の半分の長さ且つ第一リンク41に平行な第一リンク41hと、第七シートフレーム31に回動自在に支持された、第二リンク42の半分の長さ且つ第二リンク42に平行な第二リンク42hと、脚部フレーム22に回動自在に支持された、第一リンク41の半分の長さ且つ第一リンク41に平行な第三リンク43と、脚部フレーム22に回動自在に支持された、第二リンク42の半分の長さ且つ第二リンク42に平行な第四リンク44と、を備える。6つの第一リンク41は互いに平行であり、6つの第二リンク42は互いに平行となっている。以下では、連結機構40に含まれる各リンクの長手方向の両端部のうち、
図7の状態で後側に位置する方を後端部と記載し、
図7の状態で前側に位置する方を前端部と記載する。
【0037】
第一リンク41と第二リンク42は、それぞれ、長手方向の中央部において、脚部フレーム34Lの左側面に軸支されている。第一リンク41の後端部と、この第一リンク41を支持しているシートフレーム31の後隣にあるシートフレーム31に支持された第二リンク42の前端部は、回動自在に連結されている。第一リンク41の前端部と、この第一リンク41を支持しているシートフレーム31の前隣にあるシートフレーム31に支持された第二リンク42の後端部は、回動自在に連結されている。
【0038】
第一リンク41hと第二リンク42hの各々の前端部は、第七シートフレーム31の脚部フレーム34Lの左側面に回動自在に支持されている。第一リンク41hの後端部と、第六シートフレーム31に軸支された第二リンク42の前端部は、回動自在に連結されている。第二リンク42hの後端部と、第六シートフレーム31に軸支された第一リンク41の前端部は、回動自在に連結されている。
【0039】
第三リンク43と第四リンク44の各々の後端部は、脚部フレーム22の左側面に回動自在に支持されている。第三リンク43の前端部と、第一シートフレーム31に軸支された第二リンク42の後端部は、回動自在に連結されている。第四リンク44の前端部と、第一シートフレーム31に軸支された第一リンク41の後端部は、回動自在に連結されている。
【0040】
連結機構40のうち、第一シートフレーム31と脚部フレーム22を連結している平行四辺形状の部分、具体的には、第三リンク43、第四リンク44、第一シートフレーム31に支持された第二リンク42のうちの長手方向の中央部よりも第三リンク43側の部分、及び第一シートフレーム31に支持された第一リンク41のうちの長手方向の中央部よりも第四リンク44側の部分によって、平行クランク機構が構成される。同様に、連結機構40のうち、隣り合う2つのシートフレーム31同士を連結する平行四辺形状の部分によって、平行クランク機構が構成される。このように、連結機構40は、平行クランク機構を7つ組み合わせて構成されたものとなっている。
【0041】
図7に示す状態からモータMが作動すると、可動レール39がガイドレール38に沿って前方向Frに移動する。可動レール39の移動に伴い、この可動レール39にブラケット39aを介して固定されている第一シートフレーム31が前方向Frに移動する。第一シートフレーム31が前方向Frに移動することで、この動力が、連結機構40によって第一シートフレーム31から前側のシートフレーム31に順次伝達されていき、各シートフレーム31が前方向Frに移動する。このとき、第七シートフレーム31の前方向Frへの移動距離は、第一シートフレーム31の前方向Frへの移動距離よりも大きくなる。可動レール39が移動可能範囲の前側端に到達すると、
図1に示すように、自動車用シート30の一部によって、乗降口VEが閉じられた状態となる。一方、可動レール39が移動可能範囲の後側端に到達すると、
図2に示すように、自動車用シート30は乗降口VEの向かいから退避して、乗降口VEが開放された状態となる。
【0042】
なお、自動車用シート30の各シートフレーム31を被覆するパッドは、7個のシートフレーム31で共通の1つのトリムカバー(図示省略)によって被覆されることが好ましい。この場合、
図2及び
図7に示す状態においては、各シートフレーム31間の隙間に、トリムカバーの一部が折り畳まれた状態で収納されるようにすればよい。
【0043】
以上のように、自動車用シート30によれば、隣り合う2つのシートフレーム31間の距離を変更することで、複数のシートフレーム31の端から端までの距離、すなわち自動車用シート30の幅を変えることができる。これにより、自動車用シート30の幅を
図2のように最小限にすることで、乗り物の内部空間を広げることができ、内部空間を有効利用することができる。また、
図1及び
図2のように、自動車用シート30の幅を調整することで、着座スペースを増やしたり減らしたりすることができる。
【0044】
本発明は、上記実施形態とその変形例に示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、以上の説明では、自動車用シート30が、モータMによって前後方向Yに伸縮されるものとしているが、モータMを省略し、手動によって伸縮できる構成としてもよい。
【0045】
また、連結機構40は、各シートフレーム31の脚部フレーム34Lではなく、各シートフレーム31の脚部フレーム34Rに固定される構成であってもよい。ただし、連結機構40が各シートフレーム31の脚部フレーム34Lに固定される構成によれば、各シートフレーム31の移動をより安定して行うことができる。
【0046】
自動車Vの内部空間を有効利用する観点からは、自動車Vの内部空間において、乗降口VEを開閉できないような位置に自動車用シート30が配置されていてもよい。
【0047】
ここまでの説明では、乗り物用シートの一実施形態として、自動車Vに搭載される自動車用シート30を例にした。しかし、本発明は、自動車に搭載されるシートに限らず、電車、航空機、及び船舶等の乗り物に搭載されるシートであれば適応可能である。
【0048】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0049】
(1) 乗り物(自動車V)の乗員が着座する乗り物用シート(自動車用シート30)であって、
シートクッション(シートクッション30A)の骨格の一部を構成するクッションフレーム(クッションフレーム33)及びシートバック(シートバック30B)の骨格の一部を構成するバックフレーム(バックフレーム32)をそれぞれ含む、一方向(前後方向Y)に配列された複数のシートフレーム(シートフレーム31)を備え、
前記複数のシートフレームの各々は、前記一方向に移動可能に前記乗り物の床面(フロアVF)に取り付けられ、
前記複数のシートフレームを、隣り合う2つの前記シートフレーム間の距離を変更可能に連結する連結機構(連結機構40)を更に備える、
乗り物用シート。
【0050】
(1)によれば、隣り合う2つのシートフレーム間の距離を変更することで、複数のシートフレームの端から端までの距離、すなわち乗り物用シートの幅を変えることができる。これにより、乗り物用シートの幅を例えば最小限にすることで、乗り物の内部空間を広げることができ、内部空間を有効利用することができる。また、乗り物用シートの幅を調整することで、着座スペースを増やしたり減らしたりすることができる。
【0051】
(2) (1)に記載の乗り物用シートであって、
前記連結機構は、隣り合う2つの前記シートフレーム同士を連結する平行クランク機構と、前記複数のシートフレームのうちの前記一方向の一端に配置される前記シートフレーム(最も後側の第一シートフレーム31)と前記床面に固定される固定部材(脚部フレーム22)とを連結する平行クランク機構と、を組み合わせて構成されたレージトング機構である、
乗り物用シート。
【0052】
(2)によれば、複数のシートフレームのうちの一方向の一端に配置される端部シートフレーム(最も後側の第一シートフレーム31)を一方向に僅かに移動させることで、レージトング機構によって、複数のシートフレームのうちの端部シートフレームと反対側の端部にあるシートフレーム(最も前側の第七シートフレーム31)を大きく移動させることができる。これにより、乗り物用シートの幅の調整範囲を広くとることができる。また、少ない力でその幅の調整が可能となる。
【0053】
(3) (2)に記載の乗り物用シートであって、
前記複数のシートフレームのうちの前記一方向の一端に配置される前記シートフレーム(最も後側の第一シートフレーム31)のみを前記一方向に駆動する駆動部(可動レール39、ガイドレール38、及びモータM)を更に備える、
乗り物用シート。
【0054】
(3)によれば、駆動部によって端部シートフレームを一方向に移動させることで、乗り物用シートの幅の調整を行うことができる。レージトング機構の存在により、駆動部に大きな動力を不要としながら、調整範囲を広くとることができる。また、複数のシートフレームのうちの端部シートフレームと反対側の端部の構造を簡素化でき、この反対側の端部の近傍のスペースを大きくとることができる。
【0055】
(4) (2)又は(3)に記載の乗り物用シートであって、
前記複数のシートフレームは、前記乗り物の乗降口(乗降口VE)を遮る位置と、前記乗り物の乗降口を開放する位置との間で移動可能に構成される、
乗り物用シート。
【0056】
(4)によれば、乗り物用シートを、乗降口を開閉するための扉として機能させることができる。このため、乗り物に扉を設ける必要がなくなり、乗り物の製造コストを抑制できる。また、自動車用シートの乗降口側には駆動部が配置されないことで、乗降口を広くとることができる。
【0057】
(5) (2)から(4)のいずれかに記載の乗り物用シートであって、
前記固定部材は、前記乗り物に搭載される別のシート(自動車用シート20)のフレームの一部(脚部フレーム22)である、
乗り物用シート。
【0058】
(5)によれば、乗り物用シートと別のシートとをほぼ隙間なく並べた配置が可能となる。例えば、別のシートによって乗り物用シートの可動構造等を隠すことができ、コストを抑制しながら、外観品質を向上させることができる。
【0059】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の乗り物用シートであって、
前記シートフレームは、前記床面に設置された前記一方向に延び且つ対向する一対のレール(レール37R、37L)のそれぞれに摺動自在に支持される2つの脚部(脚部フレーム34R、34L)を有し、
前記連結機構は、前記2つの脚部のうちの前記バックフレームに近い側の脚部(脚部フレーム34L)同士を連結している、
乗り物用シート。
【0060】
(6)によれば、相対的に荷重のかかりやすい脚部フレーム同士を連結機構で連結しているため、各シートフレームの移動を安定して行うことができる。また、連結機構を容易に隠すことが可能となり、外観品質を向上させつつ、製造コストを下げることができる。
【符号の説明】
【0061】
V 自動車
VE 乗降口
VF フロア
20 自動車用シート
22 脚部フレーム
30 自動車用シート
30A シートクッション
30B シートバック
31 シートフレーム
32 バックフレーム
33 クッションフレーム
34R、34L 脚部フレーム
37R、37L レール
40 連結機構