(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】作業支援システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240920BHJP
A01D 41/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A01B69/00 303L
A01D41/12 C
(21)【出願番号】P 2021106515
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】朝田 諒
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】堀内 真幸
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】藤原 長浩
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】江戸 俊介
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/049098(WO,A1)
【文献】特開2020-095566(JP,A)
【文献】特開2020-064663(JP,A)
【文献】特開2020-035112(JP,A)
【文献】特開2020-028224(JP,A)
【文献】特開2021-058099(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0003416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1作業車が圃場にて走行している最中に前記圃場の外縁領域に位置する物体の三次元位置データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記三次元位置データを、前記三次元位置データを記憶可能な管理サーバへ送信する送信部と、
前記第1作業車とは異なる作業車である第2作業車の特性に応じて前記三次元位置データを処理することによって、前記第2作業車が前記圃場にて走行する際に前記第2作業車が越境不能な境界を示す外縁マップを生成するマップ生成部と
、
前記第2作業車の自動走行のための目標走行経路を前記外縁マップに基づいて生成する経路生成部と、を備え、
前記経路生成部は、前記第2作業車が前記目標走行経路に沿って自動走行した場合に前記第2作業車が前記外縁マップにより示される境界の外側へ出ることがないように、前記目標走行経路を生成する作業支援システム。
【請求項2】
第1作業車が圃場にて走行している最中に前記圃場の外縁領域に位置する物体の三次元位置データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記三次元位置データを、前記三次元位置データを記憶可能な管理サーバへ送信する送信部と、
第2作業車の特性に応じて前記三次元位置データを処理することによって、前記第2作業車が前記圃場にて走行する際に前記第2作業車が越境不能な境界を示す外縁マップを生成するマップ生成部と、
前記第1作業車の位置情報を経時的に取得する位置情報取得部と、
前記取得部による前記三次元位置データの取得中に前記第1作業車が走行した走行軌跡のうち、前記圃場の外周部に最も近い要素の集合体である最外軌跡要素群の位置情報を抽出し、前記最外軌跡要素群によって囲まれた領域をマスキング領域として設定するとともに、前記マスキング領域の位置情報を算定するマスキング領域設定部と、
前記マスキング領域の範囲内に含まれる前記三次元位置データを除去するマスキング処理を行うマスキング部と、を備え、
前記送信部は、前記マスキング処理後の前記三次元位置データの集合体を前記管理サーバへ送信す
る作業支援システム。
【請求項3】
前記第2作業車の自動走行のための目標走行経路を前記外縁マップに基づいて生成する経路生成部を備え、
前記経路生成部は、前記第2作業車が前記目標走行経路に沿って自動走行した場合に前記第2作業車が前記外縁マップにより示される境界の外側へ出ることがないように、前記目標走行経路を生成する請求
項2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記特性は、前記第2作業車に備わる作業装置の高さである請求項1
から3の何れか一項に記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記第2作業車の走行を制御する走行制御部を備え、
前記走行制御部は、前記第2作業車が前記外縁マップにより示される境界の外側へ出ることがないように、前記第2作業車の走行を制御する請求項1から
4の何れか一項に記載の作業支援システム。
【請求項6】
前記マップ生成部は前記管理サーバに備えられている請求項1から
5の何れか一項に記載の作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車を用いた作業を支援する作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業支援システムとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この作業支援システムは、圃場の境界線の地図位置を示す境界線データを利用して、圃場の境界線を超えることを回避するように作業車(特許文献1では「コンバイン」)の走行を制御する。また、この作業支援システムにおいて、境界線データは、圃場における当該作業車の走行軌跡に基づいて生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、複数の作業車間で境界線データを共有することについては記載されていない。
【0005】
ここで、特許文献1に記載の境界線データのように、作業車が越境不能な境界を示す外縁マップを生成可能な作業支援システムにおいて、単に、複数の作業車間で外縁マップを共有するように構成した場合、外縁マップが各作業車の特性に合わず、各作業車が効率的に走行できない事態が想定される。
【0006】
例えば、作業車の種類に応じて、作業車の外形は異なる。そのため、圃場において、作業車が圃場の外縁領域に位置する畦畔の近傍を走行するとき、作業車が畦畔にどの程度接近できるかは、作業車の種類に応じて異なる。従って、適切な外縁マップは、作業車の種類に応じて異なる。
【0007】
本発明の目的は、作業車の特性に応じた外縁マップを効率的に生成可能な作業支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、第1作業車が圃場にて走行している最中に前記圃場の外縁領域に位置する物体の三次元位置データを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記三次元位置データを、前記三次元位置データを記憶可能な管理サーバへ送信する送信部と、前記第1作業車とは異なる作業車である第2作業車の特性に応じて前記三次元位置データを処理することによって、前記第2作業車が前記圃場にて走行する際に前記第2作業車が越境不能な境界を示す外縁マップを生成するマップ生成部と、前記第2作業車の自動走行のための目標走行経路を前記外縁マップに基づいて生成する経路生成部と、を備え、前記経路生成部は、前記第2作業車が前記目標走行経路に沿って自動走行した場合に前記第2作業車が前記外縁マップにより示される境界の外側へ出ることがないように、前記目標走行経路を生成することにある。
【0009】
本構成によれば、マップ生成部により、第2作業車の特性に応じて外縁マップが生成される。
【0010】
また、第1作業車の走行時に三次元位置データが取得されていれば、第2作業車は、外縁マップの生成のために圃場を走行する必要がない。従って、第2作業車のための外縁マップを生成するために第2作業車が圃場を走行する必要のある構成に比べて、外縁マップを効率的に生成することができる。
【0011】
従って、本構成によれば、作業車の特性に応じた外縁マップを効率的に生成可能な作業支援システムを実現できる。
また、本構成によれば、第2作業車が外縁マップにより示される境界の外側へ出ることなく作業を行うことのできる目標走行経路が生成される。そのため、第2作業車が外縁マップにより示される境界の外側へ出ることを回避しながら作業走行を行うことを自動走行により行うことが可能な作業支援システムを実現できる。
【0012】
さらに、本発明において、前記特性は、前記第2作業車に備わる作業装置の高さであると好適である。
【0013】
圃場の外縁領域には畦畔が設けられている場合が多い。一般に、畦畔は、外側ほど高くなるように傾斜している。そのため、作業車が畦畔の近傍を走行するとき、作業車が畦畔にどの程度接近できるかは、作業装置の高さに応じて異なる。そのため、作業装置の高さに応じて外縁マップが生成されれば、外縁マップが好適なものになりやすい。
【0014】
ここで、本構成によれば、第2作業車のための外縁マップが、第2作業車に備わる作業装置の高さに応じて生成される。そのため、生成される外縁マップが好適なものになりやすい。
【0015】
さらに、本発明において、前記第2作業車の自動走行のための目標走行経路を前記外縁マップに基づいて生成する経路生成部を備え、前記経路生成部は、前記第2作業車が前記目標走行経路に沿って自動走行した場合に前記第2作業車が前記外縁マップにより示される境界の外側へ出ることがないように、前記目標走行経路を生成すると好適である。
【0016】
本構成によれば、第2作業車が外縁マップにより示される境界の外側へ出ることなく作業を行うことのできる目標走行経路が生成される。そのため、第2作業車が外縁マップにより示される境界の外側へ出ることを回避しながら作業走行を行うことを自動走行により行うことが可能な作業支援システムを実現できる。
【0017】
さらに、本発明において、前記第2作業車の走行を制御する走行制御部を備え、前記走行制御部は、前記第2作業車が前記外縁マップにより示される境界の外側へ出ることがないように、前記第2作業車の走行を制御すると好適である。
【0018】
本構成によれば、第2作業車が作業走行中に外縁マップにより示される境界の外側へ出ることが回避される。これにより、第2作業車が外縁マップにより示される境界の外側へ出ることを回避しながら作業走行を行うことを支援できる作業支援システムを実現できる。
【0019】
さらに、本発明において、前記マップ生成部は前記管理サーバに備えられていると好適である。
【0020】
一般に、物体の三次元位置データの容量は比較的大きい。そのため、三次元位置データは、外縁マップに比べて大きな容量を有することとなる。
【0021】
ここで、本構成によれば、マップ生成部が管理サーバに備えられているため、大きな容量を有する三次元位置データを管理サーバから第2作業車へ送る必要がない。また、管理サーバから外縁マップを第2作業車へ送れば、第2作業車において外縁マップを利用することができる。
【0022】
従って、本構成によれば、第2作業車において外縁マップを利用可能であると共に、管理サーバから第2作業車へ送る必要のあるデータの容量が比較的小さくなりやすい作業支援システムを実現できる。
【0023】
本発明の別の特徴は、第1作業車が圃場にて走行している最中に前記圃場の外縁領域に位置する物体の三次元位置データを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記三次元位置データを、前記三次元位置データを記憶可能な管理サーバへ送信する送信部と、第2作業車の特性に応じて前記三次元位置データを処理することによって、前記第2作業車が前記圃場にて走行する際に前記第2作業車が越境不能な境界を示す外縁マップを生成するマップ生成部と、前記第1作業車の位置情報を経時的に取得する位置情報取得部と、前記取得部による前記三次元位置データの取得中に前記第1作業車が走行した走行軌跡のうち、前記圃場の外周部に最も近い要素の集合体である最外軌跡要素群の位置情報を抽出し、前記最外軌跡要素群によって囲まれた領域をマスキング領域として設定するとともに、前記マスキング領域の位置情報を算定するマスキング領域設定部と、前記マスキング領域の範囲内に含まれる前記三次元位置データを除去するマスキング処理を行うマスキング部と、を備え、前記送信部は、前記マスキング処理後の前記三次元位置データの集合体を前記管理サーバへ送信することにある。
【0024】
本構成によれば、マスキング処理後の三次元位置データの集合体の容量は、マスキング処理前に比べて小さくなる。従って、送信部から管理サーバへ送る必要のあるデータの容量が比較的小さくなりやすい作業支援システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図6】作業支援システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図2及び
図3に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、
図3に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、
図2に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0027】
〔作業支援システムの全体構成〕
図1に示すように、作業支援システムAは、第1作業車1と、第2作業車2と、管理サーバ3と、を備えている。第1作業車1と管理サーバ3とは、互いに通信可能に構成されている。第2作業車2と管理サーバ3とは、互いに通信可能に構成されている。
【0028】
図1に示すように、本実施形態における第1作業車1は、具体的には、普通型のコンバイン10である。また、本実施形態における第2作業車2は、具体的には、トラクタ4A及び田植機4Bである。
【0029】
しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、第1作業車1がトラクタ4Aであっても良いし、第2作業車2がコンバイン10であっても良い。
【0030】
管理サーバ3は、第1作業車1及び第2作業車2の外部に位置する管理施設(図示せず)に設置されている。
【0031】
〔コンバインの構成〕
図2及び
図3に示すように、コンバイン10は、機体フレーム9、収穫部H、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0032】
走行装置11は、コンバイン10の機体における下部に備えられている。また、走行装置11は、エンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン10は、走行装置11によって自走可能である。
【0033】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、機体フレーム9に支持されている。運転部12には、コンバイン10の作業を監視するオペレータが搭乗可能である。尚、オペレータは、コンバイン10の機外からコンバイン10の作業を監視していても良い。
【0034】
図2及び
図3に示すように、穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0035】
収穫部Hは、機体における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、刈取装置15及びリール17を含んでいる。
【0036】
刈取装置15は、圃場5(
図4参照)の植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。刈取装置15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0037】
この構成により、収穫部Hは、圃場5の作物を収穫する。そして、コンバイン10は、刈取装置15によって圃場5の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0038】
収穫部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0039】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0040】
ここで、コンバイン10は、
図4及び
図5に示すように、外縁領域6の内側に位置する圃場5において、作物を収穫するように構成されている。外縁領域6は、圃場5を囲む状態で設けられている。
図2及び
図3に示すように、外縁領域6には、例えば、畦畔61や給排水ポンプ(図示せず)等が含まれている。畦畔61及び給排水ポンプは、何れも、本発明に係る「物体」に相当する。尚、
図3では、畦畔61の上面部が斜線のハッチングにより示されている。
【0041】
コンバイン10は、
図4に示すように、第1刈取走行を実行可能に構成されている。第1刈取走行とは、圃場5の外周領域SAにおいて行われる刈取走行である。尚、外周領域SAとは、
図5に示すように、圃場5内の外周部に位置する領域である。
【0042】
本実施形態において、第1刈取走行での周回数は1回である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1刈取走行での周回数は、2回以上のいかなる回数であっても良い。
【0043】
そして、コンバイン10は、第1刈取走行を行った後、
図5に示すように、第2刈取走行を行うことにより、圃場5における刈取走行を実行可能である。第2刈取走行とは、第1刈取走行の後に外周領域SAよりも内側の作業対象領域CAにおいて行われる刈取走行である。
【0044】
本実施形態においては、
図4に示す第1刈取走行は手動走行により行われる。また、
図5に示す第2刈取走行は自動走行により行われる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1刈取走行は自動走行により行われても良い。また、第2刈取走行は手動走行により行われても良い。
【0045】
〔位置情報の取得について〕
図6に示すように、コンバイン10は、位置情報取得部21を備えている。また、
図2に示すように、衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GSからのGPS信号を受信する。そして、
図6に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン10の位置を示す測位データを位置情報取得部21へ送る。
【0046】
尚、本発明はこれに限定されない。衛星測位モジュール80は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール80は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0047】
位置情報取得部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン10の位置座標(本発明に係る「位置情報」に相当)を経時的に算出する。これにより、位置情報取得部21は、コンバイン10の位置座標を経時的に取得する。
【0048】
このように、作業支援システムAは、第1作業車1の位置座標を経時的に取得する位置情報取得部21を備えている。
【0049】
〔取得部について〕
図2及び
図3に示すように、コンバイン10は、取得部81を備えている。取得部81は、外縁領域6のうち、コンバイン10の進行方向前方に位置する部分を検出対象として、コンバイン10の圃場5での走行中に、外縁領域6に位置する物体の三次元位置を検出する。これにより、取得部81は、外縁領域6に位置する物体の三次元位置データを取得する。
【0050】
このように、作業支援システムAは、第1作業車1が圃場5にて走行している最中に圃場5の外縁領域6に位置する物体の三次元位置データを取得する取得部81を備えている。
【0051】
詳述すると、本実施形態における取得部81は、ToF(Time of flight)測定方式の測定装置である二次元スキャンLiDARである。尚、本発明はこれに限定されず、取得部81は、三次元スキャンLiDARであっても良い。また、取得部81の測定方式は、ToF測定方式に限定されず、ステレオマッチング測定方式等であっても良い。
【0052】
取得部81は、ToF測定方式の測定結果と、位置情報取得部21が取得したコンバイン10の位置座標と、に基づいて、前方領域FA(
図2参照)に存在する物体の位置及び高さを示す点群データを出力する。この構成により、取得部81は、コンバイン10の圃場5での走行中に、コンバイン10の進行方向前方に位置する領域である前方領域FAに存在する物体の位置及び高さを検出する。これにより、取得部81は、外縁領域6に位置する物体の三次元位置データを取得する。
【0053】
尚、本発明はこれに限定されず、取得部81は、外縁領域6に位置する物体の三次元位置データを取得可能であれば、いかなる構成であっても良い。
【0054】
取得部81は、例えば、外縁領域6に位置する畦畔61の三次元位置データを取得する。
【0055】
そして、取得部81が前方領域FAに存在する物体の位置及び高さを検出しながら、
図4及び
図5に示すようにコンバイン10が圃場5を走行することにより、外縁領域6の全周に対応する三次元位置データの集合体が取得されることとなる。
【0056】
〔マスキング処理について〕
図6に示すように、コンバイン10は、マスキング領域設定部23及びマスキング部24を備えている。以下では、マスキング領域設定部23及びマスキング部24について説明する。
【0057】
マスキング領域設定部23は、位置情報取得部21が取得したコンバイン10の位置座標に基づいて、コンバイン10の走行軌跡から、最外軌跡要素群の位置情報を抽出する。最外軌跡要素群とは、取得部81による三次元位置データの取得中にコンバイン10が走行した走行軌跡のうち、圃場5の外周部に最も近い要素の集合体である。
【0058】
そして、マスキング領域設定部23は、最外軌跡要素群によって囲まれた領域をマスキング領域(
図7参照)として設定するとともに、マスキング領域の位置情報を算定する。
【0059】
このように、作業支援システムAは、取得部81による三次元位置データの取得中に第1作業車1が走行した走行軌跡のうち、圃場5の外周部に最も近い要素の集合体である最外軌跡要素群の位置情報を抽出し、最外軌跡要素群によって囲まれた領域をマスキング領域として設定するとともに、マスキング領域の位置情報を算定するマスキング領域設定部23を備えている。
【0060】
マスキング部24は、
図7に示すように、マスキング処理を行う。マスキング処理とは、取得部81により取得された三次元位置データの集合体から、マスキング領域の範囲内に含まれる三次元位置データを除去する処理である。尚、マスキング処理される三次元位置データの集合体は、第1刈取走行の開始時点から終了時点までの間に取得されたものであっても良いし、第1刈取走行の開始時点から第2刈取走行の途中までの間に取得されたものであっても良いし、第1刈取走行の開始時点から第2刈取走行の終了時点までの間に取得されたものであっても良い。
【0061】
このように、作業支援システムAは、マスキング領域の範囲内に含まれる三次元位置データを除去するマスキング処理を行うマスキング部24を備えている。
【0062】
〔送信部及び記憶部について〕
図6に示すように、コンバイン10は、送信部22を備えている。また、管理サーバ3は、記憶部31を備えている。
【0063】
送信部22は、マスキング処理後の三次元位置データの集合体を管理サーバ3へ送信する。管理サーバ3が受け取ったマスキング処理後の三次元位置データの集合体は、記憶部31に記憶される。即ち、管理サーバ3は、記憶部31によって、三次元位置データの集合体を記憶可能である。
【0064】
このように、作業支援システムAは、取得部81により取得された三次元位置データを、三次元位置データを記憶可能な管理サーバ3へ送信する送信部22を備えている。
【0065】
〔外縁マップについて〕
図6に示すように、作業支援システムAは、マップ生成部32を備えている。マップ生成部32は管理サーバ3に備えられている。
【0066】
マップ生成部32は、記憶部31から三次元位置データの集合体を受け取る。そして、マップ生成部32は、三次元位置データの集合体を第2作業車2の特性に応じて処理することによって、外縁マップMP(
図8参照)を生成する。外縁マップMPとは、第2作業車2が圃場5にて走行する際に第2作業車2が越境不能な境界を示すマップである。
【0067】
このように、作業支援システムAは、第2作業車2の特性に応じて三次元位置データを処理することによって、第2作業車2が圃場5にて走行する際に第2作業車2が越境不能な境界を示す外縁マップMPを生成するマップ生成部32を備えている。
【0068】
尚、本実施形態においては、第1作業車1が圃場5にて作業走行を行った後、第2作業車2が圃場5にて作業走行を行うものとする。第1作業車1が作業走行を行う圃場5と、第2作業車2が作業走行を行う圃場5と、は同一である。また、第1作業車1が作業走行を完了してから、第2作業車2が作業走行を開始するまでの期間の長さは、特に限定されない。
【0069】
図8には、第2作業車2がトラクタ4Aである場合の外縁マップMPが示されている。この例では、外縁マップMPは、第1境界線M1及び第2境界線M2を含んでいる。第1境界線M1及び第2境界線M2は、何れも枠状である。また、第2境界線M2は第1境界線M1を囲んでいる。
【0070】
図8に示すように、トラクタ4Aは、走行装置44及び耕耘装置45(本発明に係る「作業装置」に相当)を備えている。耕耘装置45は、上下昇降可能に構成されている。
【0071】
図8には、第1高さH1が示されている。第1高さH1は、トラクタ4Aが圃場5を走行しているときの走行装置44の下端の高さである。尚、第1高さH1は、圃場5の地面の高さに等しい。
【0072】
第1境界線M1は、第1高さH1に応じて生成される。より具体的には、三次元位置データの集合体のうち、高さ位置が第1高さH1である三次元位置データにより示される位置座標を平面視で繋いだものが、第1境界線M1である。
【0073】
第1境界線M1は、走行装置44が越境不能な境界を示している。
【0074】
また、
図8には、第2高さH2が示されている。第2高さH2は、トラクタ4Aが圃場5を走行しているときの、上昇姿勢の耕耘装置45の下端の高さである。
【0075】
第2境界線M2は、第2高さH2に応じて生成される。より具体的には、三次元位置データの集合体のうち、高さ位置が第2高さH2である三次元位置データにより示される位置座標を平面視で繋いだものが、第2境界線M2である。
【0076】
第2境界線M2は、耕耘装置45が越境不能な境界を示している。
【0077】
即ち、走行装置44の下端の高さに応じて三次元位置データの集合体を処理することによって、第1境界線M1が生成される。また、上昇姿勢の耕耘装置45の下端の高さに応じて三次元位置データの集合体を処理することによって、第2境界線M2が生成される。
【0078】
このように、上述の「第2作業車2の特性」は、具体的には、第2作業車2に備わる耕耘装置45の高さである。
【0079】
尚、本発明はこれに限定されず、マップ生成部32は、耕耘装置45の高さ以外の特性に応じて三次元位置データの集合体を処理することによって、外縁マップMPを生成するように構成されていても良い。例えば、マップ生成部32は、第2作業車2における耕耘装置45以外の所定部位の高さに応じて三次元位置データの集合体を処理することによって、外縁マップMPを生成するように構成されていても良い。この場合、所定部位の高さは、上述の「第2作業車2の特性」に相当する。
【0080】
また、マップ生成部32は、トラクタ4Aの特性に応じた外縁マップMPだけではなく、コンバイン10の特性に応じた外縁マップMPを生成可能であっても良いし、田植機4Bの特性に応じた外縁マップMPを生成可能であっても良い。
【0081】
〔経路生成部及び走行制御部について〕
図6に示すように、トラクタ4Aは、マップ取得部41、経路生成部42、走行制御部43を備えている。
【0082】
マップ取得部41は、管理サーバ3から外縁マップMPを取得する。
【0083】
経路生成部42は、マップ取得部41が取得した外縁マップMPに基づいて、トラクタ4Aの自動走行のための目標走行経路LI(
図8参照)を生成する。
【0084】
経路生成部42は、トラクタ4Aが目標走行経路LIに沿って自動走行した場合にトラクタ4Aが外縁マップMPにより示される境界の外側へ出ることがないように、目標走行経路LIを生成する。より具体的には、経路生成部42は、トラクタ4Aが目標走行経路LIに沿って自動走行した場合に、走行装置44が第1境界線M1の外側へ出ることがなく、且つ、耕耘装置45が第2境界線M2の外側へ出ることがないように、目標走行経路LIを生成する。
【0085】
このように、作業支援システムAは、トラクタ4Aの自動走行のための目標走行経路LIを外縁マップMPに基づいて生成する経路生成部42を備えている。
【0086】
走行制御部43は、トラクタ4Aが目標走行経路LIに沿って自動走行するように、トラクタ4Aの走行を制御する。
【0087】
このように、作業支援システムAは、トラクタ4Aの走行を制御する走行制御部43を備えている。
【0088】
また、走行制御部43は、トラクタ4Aが外縁マップMPにより示される境界の外側へ出ることがないように、トラクタ4Aの走行を制御する。より具体的には、走行制御部43は、走行装置44が第1境界線M1の外側へ出ることがなく、且つ、耕耘装置45が第2境界線M2の外側へ出ることがないように、トラクタ4Aの走行を制御する。
【0089】
尚、このような走行制御部43による走行の制御は、トラクタ4Aが自動走行を行っているときに実行されても良いし、トラクタ4Aが手動走行を行っているときに実行されても良い。例えば、走行制御部43は、トラクタ4Aが手動走行を行っているときに外縁マップMPにより示される境界の外側へ出そうになった場合に、トラクタ4Aの走行速度を低下させる、あるいは、トラクタ4Aを走行停止させるように構成されていても良い。
【0090】
以上で説明した構成によれば、マップ生成部32により、第2作業車2の特性に応じて外縁マップMPが生成される。
【0091】
また、第1作業車1の走行時に三次元位置データが取得されていれば、第2作業車2は、外縁マップMPの生成のために圃場5を走行する必要がない。従って、第2作業車2のための外縁マップMPを生成するために第2作業車2が圃場5を走行する必要のある構成に比べて、外縁マップMPを効率的に生成することができる。
【0092】
従って、以上で説明した構成によれば、作業車の特性に応じた外縁マップMPを効率的に生成可能な作業支援システムAを実現できる。
【0093】
〔その他の実施形態〕
(1)第1作業車1は、自動走行できないように構成されていても良い。
【0094】
(2)第2作業車2は、自動走行できないように構成されていても良い。
【0095】
(3)マップ生成部32は、第1作業車1に備えられていても良いし、第2作業車2に備えられていても良い。
【0096】
(4)マスキング処理が行われないように構成されていても良い。
【0097】
(5)第1作業車1と第2作業車2とが互いに同じ種類の作業車であっても良い。例えば、第1作業車1と第2作業車2とが何れもコンバイン10であっても良い。
【0098】
(6)第1作業車1及び第2作業車2は、いかなる種類の作業車であっても良い。
【0099】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、作業車を用いた作業を支援する作業支援システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 第1作業車
2 第2作業車
3 管理サーバ
5 圃場
6 外縁領域
21 位置情報取得部
22 送信部
23 マスキング領域設定部
24 マスキング部
32 マップ生成部
42 経路生成部
43 走行制御部
45 耕耘装置(作業装置)
61 畦畔(物体)
81 取得部
A 作業支援システム
LI 目標走行経路
MP 外縁マップ