(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】2色成形レンズ
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20240920BHJP
F21S 41/20 20180101ALI20240920BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20240920BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20240920BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20240920BHJP
【FI】
B29C45/16
F21S41/20
B29C33/42
B29C45/37
F21W102:00
(21)【出願番号】P 2021128249
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2024-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健太
(72)【発明者】
【氏名】片山 征史
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-041560(JP,A)
【文献】特開2014-168936(JP,A)
【文献】特開2018-020470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/16
F21S 41/20
B29C 33/42
B29C 45/37
F21W 102/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂製の1次成形品と不透明樹脂製の2次成形品とからなる2色成形レンズであって、レンズ本体部と上記レンズ本体部の周縁部から上記2色成形レンズの内表面側に立ち上がるレンズ周壁部とを備えた2色成形レンズにおいて、
上記1次成形品は、上記2色成形レンズの外表面に沿って上記レンズ本体部から上記レンズ周壁部へ回り込むように形成されており、
上記2次成形品は、上記2色成形レンズの内表面に沿って上記レンズ周壁部から上記レンズ本体部へ回り込むように形成されており、
上記2色成形レンズの内表面側における上記1次成形品と上記2次成形品との接合面が、上記レンズ本体部に位置しており、
上記1次成形品において上記接合面に隣接する領域に、上記2色成形レンズの内表面側へ突出する仕切り棚部が形成されており、
上記2次成形品において上記レンズ本体部を構成している本体部構成部分は、上記接合面に隣接する領域が上記仕切り棚部と面一で延びる表面形状を有する薄肉部で構成されるとともに、上記接合面に隣接する領域以外の一般領域が上記薄肉部よりも厚い厚肉部で構成されている、ことを特徴とする2色成形レンズ。
【請求項2】
上記2色成形レンズの内表面において上記薄肉部の幅が上記仕切り棚部の幅よりも小さい値に設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の2色成形レンズ。
【請求項3】
上記2色成形レンズの内表面における上記厚肉部の幅が、上記仕切り棚部の肉厚に対して2倍以上の値に設定されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の2色成形レンズ。
【請求項4】
上記2色成形レンズの内表面における上記厚肉部の幅が10mm以上の値に設定されている、ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の2色成形レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、1次成形品と2次成形品との内表面側の接合面がレンズ本体部に位置する2色成形レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、透明樹脂製の1次成形品と不透明樹脂製の2次成形品とからなる2色成形レンズが知られている。
【0003】
車両用灯具等に用いられる2色成形レンズとしては、例えば「特許文献1」に記載されているように、レンズ本体部とその周縁部から2色成形レンズの内表面側に立ち上がるレンズ周壁部とを備えた構成が一般的である。
【0004】
このような2色成形レンズにおいては、1次成形品が2色成形レンズの外表面に沿ってレンズ本体部からレンズ周壁部へ回り込むように形成されるとともに、2次成形品が2色成形レンズの内表面に沿ってレンズ周壁部からレンズ本体部へ回り込むように形成されている。
【0005】
また、このような2色成形レンズにおいては、その内表面側における1次成形品と2次成形品との接合面がレンズ本体部に位置しており、かつ、1次成形品において上記接合面に隣接する領域には2色成形レンズの内表面側へ突出する仕切り棚部が形成されている。そして2次成形の際、この仕切り棚部に金型を当接させることにより1次成形品の位置決めを図るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような2色成形レンズにおいて、その意匠性を高めることを目的として、レンズ本体部における2次成形品の占有範囲(すなわち不透明領域)を拡げることが考えられる。
【0008】
しかしながら、これを実現するために上記接合面の位置をレンズ周壁部から離れた位置に設定すると、次のような問題が生じてしまう。
【0009】
すなわち、2次成形品においてレンズ本体部を構成している本体部構成部分は1次成形品と積層された状態になっているが、上記接合面がレンズ周壁部から離れている場合には本体部構成部分の幅も大きくなってしまう。したがって、本体部構成部分の肉厚をある程度確保しないと、2次成形の際、金型内において上記接合面の位置まで溶融樹脂を充填することができなくなってしまう。
【0010】
一方、2次成形品の本体部構成部分を厚肉にすると、これに伴って1次成形品の仕切り棚部も厚肉にする必要がある。しかしながら、このようにした場合には、1次成形品において2次成形品と積層されている部分と仕切り棚部との肉厚差が大きくなってしまうので、1次成形の際、金型内に充填された溶融樹脂の先走りによるウェルドライン(すなわち金型内における溶融樹脂の流動速度が積層部分と仕切り棚部とで大きく異なったものとなることに起因して発生するウェルドライン)が発生してしまうおそれがある。
【0011】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、1次成形品と2次成形品との内表面側の接合面がレンズ本体部に位置する2色成形レンズにおいて、上記接合面がレンズ周壁部から離れている場合であっても2次成形時における溶融樹脂の充填が確実に行われるようにした上で、1次成形時におけるウェルドラインの発生を効果的に抑制することができる2色成形レンズを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、2次成形品の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0013】
すなわち、本願発明に係る2色成形レンズは、
透明樹脂製の1次成形品と不透明樹脂製の2次成形品とからなる2色成形レンズであって、レンズ本体部と上記レンズ本体部の周縁部から上記2色成形レンズの内表面側に立ち上がるレンズ周壁部とを備えた2色成形レンズにおいて、
上記1次成形品は、上記2色成形レンズの外表面に沿って上記レンズ本体部から上記レンズ周壁部へ回り込むように形成されており、
上記2次成形品は、上記2色成形レンズの内表面に沿って上記レンズ周壁部から上記レンズ本体部へ回り込むように形成されており、
上記2色成形レンズの内表面側における上記1次成形品と上記2次成形品との接合面が、上記レンズ本体部に位置しており、
上記1次成形品において上記接合面に隣接する領域に、上記2色成形レンズの内表面側へ突出する仕切り棚部が形成されており、
上記2次成形品において上記レンズ本体部を構成している本体部構成部分は、上記接合面に隣接する領域が上記仕切り棚部と面一で延びる表面形状を有する薄肉部で構成されるとともに、上記接合面に隣接する領域以外の一般領域が上記薄肉部よりも厚い厚肉部で構成されている、ことを特徴とするものである。
【0014】
上記「2色成形レンズ」は、1次成形品が2色成形レンズの外表面に沿ってレンズ本体部からレンズ周壁部へ回り込むように形成されるとともに2次成形品が2色成形レンズの内表面に沿ってレンズ周壁部からレンズ本体部へ回り込むように形成されていれば、その具体的な形状は特に限定されるものではない。
【0015】
上記「レンズ周壁部」は、レンズ本体部の周縁部の全周にわたって形成されていてもよいし、その一部に形成されていてもよい。
【0016】
上記「薄肉部」は、接合面に隣接する領域であれば、その具体的な範囲は特に限定されるものではない。
【0017】
上記「厚肉部」は、薄肉部よりも厚い肉厚を有していれば、その肉厚の具体的な値は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
本願発明に係る2色成形レンズは、透明樹脂製の1次成形品と不透明樹脂製の2次成形品との内表面側の接合面がレンズ本体部に位置しており、かつ、1次成形品において上記接合面に隣接する領域には仕切り棚部が形成されているが、2次成形品の本体部構成部分は、上記接合面に隣接する領域が仕切り棚部と面一で延びる表面形状を有する薄肉部で構成されており、それ以外の一般領域が薄肉部よりも厚い厚肉部で構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0019】
すなわち、2次成形品の本体部構成部分において薄肉部で構成されているのは上記接合面に隣接する領域のみであり、それ以外の一般領域は厚肉部で構成されているので、上記接合面がレンズ周壁部から離れている場合であっても、2次成形の際、金型内において上記接合面の位置まで溶融樹脂を充填することが容易に可能となる。
【0020】
また、仕切り棚部は薄肉部と面一で延びる表面形状を有しているので、1次成形品において2次成形品と積層されている部分と仕切り棚部との肉厚差が大きくならないようにすることができる。したがって1次成形の際、金型内に充填された溶融樹脂の先走りによるウェルドラインの発生を効果的に抑制することができる。
【0021】
このように本願発明によれば、1次成形品と2次成形品との内表面側の接合面がレンズ本体部に位置する2色成形レンズにおいて、上記接合面がレンズ周壁部から離れている場合であっても2次成形時における溶融樹脂の充填が確実に行われるようにした上で、1次成形時におけるウェルドラインの発生を効果的に抑制することができる。
【0022】
そして、上記接合面をレンズ周壁部から離れた位置に設定することにより、レンズ本体部における2次成形品の占有範囲(すなわち不透明領域)を拡げることができるので、これにより2色成形レンズの意匠性を高めることができる。
【0023】
上記構成において、さらに、2色成形レンズの内表面において薄肉部の幅が仕切り棚部の幅よりも小さい値に設定された構成とすれば、1次成形時におけるウェルドラインの発生を効果的に抑制可能とした上で、2次成形時における溶融樹脂の充填が一層確実に行われるようにすることができる。
【0024】
上記構成において、さらに、2色成形レンズの内表面における厚肉部の幅が仕切り棚部の肉厚に対して2倍以上の値に設定された構成とすれば、上記接合面をレンズ周壁部から十分に離すことができ、これにより2色成形レンズの意匠性を高めることが容易に可能となる。
【0025】
上記構成において、さらに、2色成形レンズの内表面における厚肉部の幅が10mm以上の値に設定された構成とすれば、レンズ本体部における2次成形品の占有範囲を十分拡げることができ、これにより2色成形レンズの意匠性を高めることが容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本願発明の一実施形態に係る2色成形レンズを示す正面図
【
図2】上記2色成形レンズが装着された車両用灯具を示す側断面図
【
図6】(a)は従来例に係る2色成形レンズの要部を示す斜視図、(b)は上記従来例の作用を示す斜視図
【
図7】上記実施形態の変形例を示す、
図5と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本願発明の一実施形態に係る2色成形レンズ30を示す正面図である。また、
図2は、2色成形レンズ30が装着された車両用灯具10を示す側断面図である。
【0029】
これらの図において、Xで示す方向が「レンズ前方」(すなわち2色成形レンズ30としての前方)であり、Yで示す方向が「レンズ前方」と直交する「左方向」(レンズ正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。これら以外の図においても同様である。
【0030】
図2に示すように、本実施形態に係る2色成形レンズ30は、車両用灯具10において、ランプボディ20の前端開口部に取り付けられる透光カバーとして構成されており、灯具前後方向と直交する鉛直面に対して多少後傾した状態で配置されている。
【0031】
車両用灯具10は、車両の右前端部に配置されるヘッドランプであって、ランプボディ20と2色成形レンズ30とで形成される灯室内に灯具ユニット50が収容された構成となっている。
【0032】
灯具ユニット50は、光源ユニット60とリフレクタ70とを備えた構成となっている。
【0033】
光源ユニット60は、発光素子62とこれを支持する金属板64とを備えており、発光素子62の発光面を下向きにした状態で配置されている。
【0034】
リフレクタ70は、複数の反射素子70sが形成された反射面70aを備えており、各反射素子70sにおいて発光素子62からの出射光を灯具前方へ向けて反射させるようになっている。
【0035】
リフレクタ70の上端部には、光源ユニット60を位置決めした状態で支持する光源支持部72が形成されている。そして、この光源支持部72に支持された光源ユニット60に対して灯具後方側から電源側コネクタ80が装着されることにより、光源ユニット60に電力が供給されるようになっている。
【0036】
そして、車両用灯具10は、その灯具ユニット50からの照射光(すなわちリフレクタ70で反射した発光素子62からの光)によって所要の配光パターン(例えばロービーム用配光パターン)を形成するように構成されている。
【0037】
図1、2に示すように、2色成形レンズ30は、透明樹脂製(例えば無色透明のPC樹脂製等)の1次成形品30Pと不透明樹脂製(例えば黒色のPC樹脂製やABS樹脂製等)の2次成形品30Sとによって構成されている。
【0038】
2色成形レンズ30は、レンズ正面視において横長の平行四辺形に近い外形形状を有するレンズ本体部32と、このレンズ本体部32の外周縁から2色成形レンズ30の内表面30b側(すなわちレンズ後方側)へ向けて延びるレンズ周壁部34と、このレンズ周壁部34の後端位置から外周側へ向けて延びる外周フランジ部36とを備えた構成となっている。
【0039】
1次成形品30Pは、2色成形レンズの外表面30aに沿ってレンズ本体部32からレンズ周壁部34へ回り込むように形成されている。一方、2次成形品30Sは、2色成形レンズの内表面30bに沿ってレンズ周壁部34からレンズ本体部32へ回り込むように形成されている。
【0040】
2色成形レンズ30の外表面30a側における1次成形品30Pと2次成形品30Sとの接合面30a1は、外周フランジ部36の前面(すなわちレンズ周壁部34の後端部)に位置している。一方、2色成形レンズ30の内表面30b側における1次成形品30Pと2次成形品30Sとの接合面30b1は、レンズ本体部32に位置している。この接合面30b1の位置は、レンズ本体部32とレンズ周壁部34との接続位置からかなり内周側に離れた位置に設定されている。
【0041】
2色成形レンズ30は、接合面30b1よりも内周側に位置する部分が透光領域として形成されており、この透光領域において灯具ユニット50のリフレクタ70からの反射光を透過させるようになっている。
【0042】
なお、本実施形態に係る2色成形レンズ30は、その外表面30aにハードコート膜(図示せず)が形成されるとともに、その内表面30bに防曇塗装膜(図示せず)が形成された構成となっている。その際、ハードコート膜は外表面30aにおいて1次成形品30Pの全領域を覆うように形成されており、防曇塗装膜も内表面30bにおいて1次成形品30Pの全領域を覆うように形成されている。
【0043】
次に、2色成形レンズ30の詳細構造について説明する。
【0044】
図3は、
図1のIII 部詳細図であり、
図4は、
図3のIV-IV線断面図である。
図3、4にも示すように、1次成形品30Pにおいて接合面30b1に隣接する領域は、2色成形レンズ30の内表面30b側へ突出する仕切り棚部30P1として構成されている。この仕切り棚部30P1は、接合面30b1に沿って一定幅で全周にわたって形成されており、これにより2色成形レンズ30の透光領域の外周縁部を構成している。
【0045】
一方、2次成形品30Sにおいてレンズ本体部32を構成している本体部構成部分32Sは、接合面30b1に隣接する領域が薄肉部32S1で構成されており、その外周側に位置する領域が厚肉部32S2で構成されている。
【0046】
その際、薄肉部32S1は、接合面30b1に沿って一定幅で全周にわたって形成されており、かつ、1次成形品30Pの仕切り棚部30P1と面一で延びる表面形状を有している。一方、厚肉部32S2は、薄肉部32S1よりも厚肉でかつ一定の肉厚で形成されているが、薄肉部32S1との境界領域は肉厚が徐々に変化する肉厚徐変部32S2aとして構成されている。
【0047】
【0048】
図5に示すように、2次成形品30Sの本体部構成部分32Sは、その厚肉部32S2の肉厚t1が、1次成形品30Pにおいて本体部構成部分32Sと積層されている部分の肉厚t2と略同じ値に設定されている。具体的には、t1、t2=1.5~2.5mm程度の値(例えばt1、t2=2mm程度の値)に設定されている。
【0049】
また、1次成形品30Pにおいて2色成形レンズ30の透光領域の一般部分を構成している部分の肉厚t3は、本体部構成部分32Sとの積層部分の肉厚t2よりも大きい値に設定されている。具体的には、t3=2~3.5mm程度の値(例えばt3=2.8mm程度の値)に設定されている。
【0050】
さらに、1次成形品30Pの仕切り棚部30P1(すなわち2色成形レンズ30の透光領域の外周縁部を構成している部分)の肉厚t4は、透光領域の一般部分の肉厚t3よりも多少大きい値に設定されている。具体的には、t4=2.9~3.8mm程度の値(例えばt4=3mm程度の値)に設定されている。
【0051】
一方、2色成形レンズ30の内表面30bにおいて、本体部構成部分32Sの幅wは、w=10~40mm程度の値(例えばw=20mm程度の値)に設定されている。
【0052】
2色成形レンズ30の内表面30bにおいて、本体部構成部分32Sの薄肉部32S1の幅w1は、1次成形品30Pの仕切り棚部30P1の幅w2よりも小さい値に設定されている。
【0053】
具体的には、薄肉部32S1の幅w1は、w1=0.5~2mm程度の値(例えばw1=1mm程度の値)に設定されており、仕切り棚部30P1の幅w2は、w2=1~5mm程度の値(例えばw2=2mm程度の値)に設定されている。
【0054】
また、2色成形レンズ30の内表面30bにおける本体部構成部分32Sの厚肉部32S2の幅w3は、1次成形品30Pの仕切り棚部30P1の肉厚t4に対して2倍以上の値に設定されている、
具体的には、厚肉部32S2の幅w3は、仕切り棚部30P1の肉厚t4に対して3~10倍程度の値(例えばw3=19mm程度の値)に設定されている。
【0055】
さらに、厚肉部32S2の肉厚徐変部32S2aは、その表面の傾斜角度θが、θ=40~80°程度の値(例えばθ=60°程度の値)に設定されている。
【0056】
なお、厚肉部32S2における肉厚徐変部32S2aと一般領域との間の角部および肉厚徐変部32S2aと薄肉部32S1との間の角部には、それぞれ僅かなコーナR(具体的にはR0.1~1mm程度の値)が形成されている。
【0057】
図6は、従来例の構成およびその作用を示す図であって、
図6(a)は従来例に係る2色成形レンズ30´の要部を示す斜視図であり、
図6(b)は上記従来例の作用を示す斜視図である。
【0058】
図6(a)に示すように、従来例に係る2色成形レンズ30´においても、透明樹脂製の1次成形品30P´と不透明樹脂製の2次成形品30S´との内周面30b´側の接合面30b1´はレンズ本体部32´に位置しており、かつ、1次成形品30P´において接合面30b1´に隣接する領域には仕切り棚部30P1´が形成されている。
【0059】
ただし、2次成形品30S´の本体部構成部分32S´は、接合面30b1´に隣接する領域が本実施形態に係る2色成形レンズ30のように薄肉部32S1としては構成されておらず、本実施形態に係る2色成形レンズ30の厚肉部32S2と同じ肉厚で構成されている。
【0060】
そして、1次成形品30P´の仕切り棚部30P1´は、本体部構成部分32S´と面一で延びる表面形状を有しており、したがって本実施形態に係る2色成形レンズ30の仕切り棚部30P1よりもかなり厚肉になっている。このため、1次成形品30P´において2次成形品30S´と積層されている部分と仕切り棚部30P1´との肉厚差もかなり大きなものとなっている。
【0061】
なお、
図6(a)においては、本実施形態に係る2色成形レンズ30の仕切り棚部30P1、薄肉部32S1および肉厚徐変部32S2aを2点鎖線で示している。
【0062】
図6(b)は、2色成形レンズ30´の1次成形品30P´を成形する際の、金型内空間の様子を示している。
【0063】
2色成形レンズ30´の内表面30b´側の形状を形成するためのコア側金型2は、1次成形品30P´において2次成形品30S´と積層されている部分に対応する領域2aと仕切り棚部30P1´に対応する領域2bとの段差がかなり大きなものとなる。このため、2色成形レンズ30´の外表面30a´側の形状を形成するためのキャビティ側金型4との間隔は、領域2aの部分と領域2bの部分との間で大きく異なったものとなる。
【0064】
そして、1次成形品30P´を成形するために、金型内空間に溶融樹脂を充填すると、
図6(b)において矢印方向に溶融樹脂が流れるが、その際、キャビティ側金型4との間隔が狭い領域2aの部分を流れる溶融樹脂の流動速度は矢印Aで示すように比較的遅いのに対して、キャビティ側金型4との間隔が広い領域2bの部分を流れる溶融樹脂の流動速度は矢印Bで示すように比較的速いものとなる。
【0065】
このため、成形された1次成形品30P´には、2色成形レンズ30´の外表面30a´側において接合面30b1´に対応する位置に、先走りによるウェルドラインWLが発生してしまう。
【0066】
これに対し、
図6(a)において2点鎖線で示す本実施形態に係る2色成形レンズ30のように、仕切り棚部30P1として薄肉部32S1と面一で延びる表面形状を有するものとすれば、コア側金型2とキャビティ側金型4との間隔が領域2aの部分と領域2bの部分との間で大きく異なったものとはならないので、先走りによるウェルドラインWLの発生が効果的に抑制されることとなる。
【0067】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0068】
本実施形態に係る2色成形レンズ30は、透明樹脂製の1次成形品30Pと不透明樹脂製の2次成形品30Sとの内表面30b側の接合面30b1がレンズ本体部32に位置しており、かつ、1次成形品30Pにおいて接合面30b1に隣接する領域には仕切り棚部30P1が形成されているが、2次成形品30Sの本体部構成部分32Sは、接合面30b1に隣接する領域が仕切り棚部30P1と面一で延びる表面形状を有する薄肉部32S1で構成されており、それ以外の一般領域が薄肉部32S1よりも厚い厚肉部32S2で構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0069】
すなわち、2次成形品30Sの本体部構成部分32Sにおいて薄肉部32S1で構成されているのは接合面30b1に隣接する領域のみであり、それ以外の一般領域は厚肉部32S2で構成されているので、接合面30b1がレンズ周壁部34から離れているにもかかわらず、2次成形の際、金型内において接合面30b1の位置まで溶融樹脂を充填することが容易に可能となる。
【0070】
また、仕切り棚部30P1は薄肉部32S1と面一で延びる表面形状を有しているので、1次成形品30Pにおいて2次成形品30Sと積層されている部分と仕切り棚部30P1との肉厚差が大きくならないようにすることができる。したがって1次成形の際、金型内に充填された溶融樹脂の先走りによるウェルドラインの発生を効果的に抑制することができる。
【0071】
このように本実施形態によれば、1次成形品30Pと2次成形品30Sとの内表面30b側の接合面30b1がレンズ本体部32に位置する2色成形レンズ30において、接合面30b1がレンズ周壁部34から離れているにもかかわらず、2次成形時における溶融樹脂の充填が確実に行われるようにした上で、1次成形時におけるウェルドラインの発生を効果的に抑制することができる。
【0072】
しかも本実施形態のように、接合面30b1をレンズ周壁部34から離れた位置に設定することにより、レンズ本体部32における2次成形品30Sの占有範囲を拡げることができ、これにより2色成形レンズ30の意匠性を高めることができる。
【0073】
その際、本実施形態においては、2色成形レンズ30の内表面30bにおいて薄肉部32S1の幅w1が仕切り棚部30P1の幅w2よりも小さい値に設定されているので、1次成形時におけるウェルドラインの発生を効果的に抑制可能とした上で、2次成形時における溶融樹脂の充填が一層確実に行われるようにすることができる。
【0074】
また本実施形態においては、2色成形レンズ30の内表面30bにおける厚肉部32S2の幅w3が仕切り棚部30P1の肉厚t4に対して2倍以上の値に設定されているので、接合面30b1をレンズ周壁部34から十分に離すことができ、これにより2色成形レンズ30の意匠性を高めることが容易に可能となる。
【0075】
さらに本実施形態においては、2色成形レンズ30の内表面30bにおける厚肉部32S2の幅w3が10mm以上の値に設定されているので、レンズ本体部32における2次成形品30Sの占有範囲を十分拡げることができ、これにより2色成形レンズ30の意匠性を高めることが容易に可能となる。
【0076】
しかも本実施形態においては、2次成形品30Sの本体部構成部分32Sの厚肉部32S2における薄肉部32S1との境界領域は、肉厚が徐々に変化する肉厚徐変部32S2aとして構成されているので、2次成形品130Sを成形する際、その薄肉部132S1への溶融樹脂の充填性向上を図ることができる。
【0077】
また、本実施形態に係る2色成形レンズ30は、不透明樹脂製の2次成形品30Sが透明樹脂製の1次成形品30Pを全周にわたって囲むように形成されており、かつ、2色成形レンズ30の内表面30b側における1次成形品30Pと2次成形品30Sとの接合面30b1が、レンズ本体部32においてレンズ周壁部34との接続位置からかなり内周側に離れた位置に設定されているので、車両用灯具10の透光カバーとして装着されたとき、灯具ユニット50の周縁領域が2次成形品30Sによって灯具前方から視認しにくくなる。
【0078】
したがって、車両用灯具10の構成として、灯室内に灯具ユニット50の周縁領域を覆うためのエクステンションパネル等が配置されていなくても、その見映え向上を図ることができる。
【0079】
上記実施形態においては、2色成形レンズ30として、レンズ周壁部34がレンズ本体部32の周縁部の全周にわたって形成されているものとして説明したが、その一部にのみ形成された構成としてもよい。その際、車両用灯具10の構成として、灯室内に灯具ユニット50の周縁領域を部分的に覆うためのエクステンションパネル等が配置されたものとすることも可能である。
【0080】
上記実施形態においては、2色成形レンズ30が車両用灯具10の透光カバーであるものとして説明したが、これ以外の用途に用いられる場合においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0082】
図7は、本変形例に係る2色成形レンズ130の要部を示す、
図5と同様の図である。
【0083】
図7に示すように、本変形例に係る2色成形レンズ130も、1次成形品130Pの構成については上記実施形態の場合と同様であるが、2次成形品130Sの構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0084】
すなわち、本変形例の2次成形品130Sにおいても、レンズ本体部132を構成している本体部構成部分132Sは、その内表面130b側の接合面130b1に隣接する領域が薄肉部132S1で構成されており、その外周側に位置する領域が厚肉部132S2で構成されている。
【0085】
薄肉部132S1は、上記実施形態の場合と同様、仕切り棚部130P1と面一で延びる表面形状を有している。また、厚肉部132S2も、上記実施形態の場合と同様、薄肉部132S1よりも厚肉でかつ一定肉厚で形成されており、薄肉部132S1との境界領域は肉厚が徐々に変化する肉厚徐変部132S2aとして構成されているが、その表面の傾斜角度が上記実施形態の場合と異なっている。
【0086】
すなわち、本変形例の肉厚徐変部132S2aは、その表面の傾斜角度θが、上記実施形態の場合よりも小さいθ=10~40°程度の値(例えばθ=30°程度の値)に設定されている。
【0087】
なお本変形例においても、厚肉部132S2における肉厚徐変部132S2aと一般領域との間の角部および肉厚徐変部132S2aと薄肉部132S1との間の角部には、それぞれ僅かなコーナRが形成されている。
【0088】
本変形例の構成を採用した場合においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0089】
その上で、本変形例の構成を採用することにより、2次成形品130Sを成形する際、その薄肉部132S1への溶融樹脂の充填性を一層向上させることができる。
【0090】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0091】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0092】
10 車両用灯具
20 ランプボディ
30、130 2色成形レンズ
30a 外表面
30a1 接合面
30b 内表面
30b1、130b1 接合面
30P、130P 1次成形品
30P1、130P1 仕切り棚部
30S、130S 2次成形品
32、132 レンズ本体部
32S、132S 本体部構成部分
32S1、132S1 薄肉部
32S2、132S2 厚肉部
32S2a、132S2a 肉厚徐変部
34 レンズ周壁部
36 外周フランジ部
50 灯具ユニット
60 光源ユニット
62 発光素子
64 金属板
70 リフレクタ
70a 反射面
70s 反射素子
72 光源支持部
80 電源側コネクタ
t1、t2、t3、t4 肉厚
w、w1、w2、w3 幅
θ 傾斜角度