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  • 特許-アクチュエータ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/03 20060101AFI20240920BHJP
   F16F 9/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16F15/03 E
F16F9/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021181578
(22)【出願日】2021-11-08
(65)【公開番号】P2023069587
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 友行
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 智也
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/006067(WO,A1)
【文献】特開2014-167320(JP,A)
【文献】特開2013-29159(JP,A)
【文献】特開2010-104093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0127175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/03
F16F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対移動する第1取付部材と第2取付部材との間に設けられ、
前記第1取付部材に固定される第1部材と、前記第2取付部材に固定される第2部材と、を有するアクチュエータ装置であって、
前記第1部材は、
一端に底部が設けられ、他端が開口する第1シリンダと、
前記第1シリンダの他端部に設けられ、前記第2部材と摺動可能に配置される第1閉塞部材と、
前記第1シリンダ内に配置される複数の磁石と、
前記第1シリンダ内の前記底部から開口する他端側に向けて延びるロッドと、を備えており、
前記第2部材は、
前記第1シリンダの内側に設けられ、前記ロッドが挿入される第2シリンダと、
前記ロッドの外周と摺動すると共に前記第2シリンダの一端を閉塞する第2閉塞部材と、
前記第2シリンダの外周に配置され、コイルおよびコアを有し、一端が前記第2閉塞部材と当接する電機子と、
前記電機子の他端に設けられるコイル端部部材と、
前記コイル端部部材と一端が当接し、外周が前記第1閉塞部材と摺動し、他端が開口する第3シリンダと、
前記第2シリンダと前記第3シリンダとを閉塞する第3閉塞部材と、を備えており、
前記コイル端部部材は、前記第1シリンダ内と前記第2部材との間の第1室と、前記第3シリンダ内と前記第2シリンダとの間の第2室と、を連通する連通路を有し、
前記連通路には、前記コイルを動作させる導線が挿通されている
アクチュエータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータ装置であり、
前記第3閉塞部材は、前記第2室と外部とを連通する外部連通路が設けられている
アクチュエータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアクチュエータ装置であり、
前記第3閉塞部材の径方向外側には、前記第1シリンダが挿入され、一端が開口するアウタカバーが設けられ、
前記外部連通路は、前記アウタカバー内に連通し、前記第1部材側に開口する
アクチュエータ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のアクチュエータ装置であり、
前記外部連通路には、防塵フィルタが設けられている
アクチュエータ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアクチュエータ装置であり、
前記防塵フィルタは、前記第1部材と前記第2部材との伸縮方向に網目が配置されるよう固定されている
アクチュエータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、自動車、鉄道車両等の車両の振動を緩衝するアクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車、鉄道車両等の車両には、緩衝器となるアクチュエータ装置が設けられている。アクチュエータ装置は、相対移動する2部材間、例えば、ばね上側となる車体とばね下側となる車輪との間、ばね上側となる車体とばね下側となる台車との間、または、ばね上側となる台車とばね下側となる車輪(車軸、輪軸)との間に設けられている。ここで、特許文献1の電動リニアアクチュエータは、ストローク時(伸長時、縮小時)に内部の体積変化による反発力を低減するための連通孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2021/006067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術によれば、ストロークに伴う体積変化を抑制するために、例えば相互に体積変化する空気室の間を連通孔で連通させている。しかし、従来技術の場合、加工工数が増える可能性がある。
【0005】
本発明の一実施形態の目的は、加工工数を低減できるアクチュエータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、相対移動する第1取付部材と第2取付部材との間に設けられ、前記第1取付部材に固定される第1部材と、前記第2取付部材に固定される第2部材と、を有するアクチュエータ装置であって、前記第1部材は、一端に底部が設けられ、他端が開口する第1シリンダと、前記第1シリンダの他端部に設けられ、前記第2部材と摺動可能に配置される第1閉塞部材と、前記第1シリンダ内に配置される複数の磁石と、前記第1シリンダ内の前記底部から開口する他端側に向けて延びるロッドと、を備えており、前記第2部材は、前記第1シリンダの内側に設けられ、前記ロッドが挿入される第2シリンダと、前記ロッドの外周と摺動すると共に前記第2シリンダの一端を閉塞する第2閉塞部材と、前記第2シリンダの外周に配置され、コイルおよびコアを有し、一端が前記第2閉塞部材と当接する電機子と、前記電機子の他端に設けられるコイル端部部材と、前記コイル端部部材と一端が当接し、外周が前記第1閉塞部材と摺動し、他端が開口する第3シリンダと、前記第2シリンダと前記第3シリンダとを閉塞する第3閉塞部材と、を備えており、前記コイル端部部材は、前記第1シリンダ内と前記第2部材との間の第1室と、前記第3シリンダ内と前記第2シリンダとの間の第2室と、を連通する連通路を有し、前記連通路には、前記コイルを動作させる導線が挿通されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、加工工数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態によるアクチュエータ装置(電磁アクチュエータ)を示す縦断面図である。
図2図1中の(II)部の拡大図である。
図3図2中の(III)部の拡大図である。
図4図3中の防塵フィルタを矢示(IV)方向からみた説明図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態によるアクチュエータ装置を、添付図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1において、アクチュエータ装置としての電磁アクチュエータ1は、電動リニアモータ、電動アクチュエータまたは電動リニアアクチュエータとも呼ばれている。電磁アクチュエータ1は、例えば、鉄道車両、自動車等の車両に搭載され、図示しないばね(懸架ばね、コイルスプリング、空気ばね)と共に、電磁サスペンション装置を構成する。
【0011】
即ち、図示は省略するが、電磁アクチュエータ1は、例えば、ばね上側となる車体とばね下側となる車輪との間、ばね上側となる車体とばね下側となる台車との間、または、ばね上側となる台車とばね下側となる車輪(車軸、輪軸)との間に、ばねと共に設けられる。以下、車体、台車等のばね上側の部材を「ばね上部材」という。また、台車、車輪、車軸、輪軸等のばね下側の部材を「ばね下部材」という。
【0012】
電磁アクチュエータ1は、例えば、ばね上側に配置される固定子2と、ばね下側に配置される可動子21とを備えている。電磁アクチュエータ1は、第1部材(一側部材)となる可動子21に設けられた永久磁石22,22と、第2部材(他側部材)となる固定子2に設けられた電機子13のコイル15(15A,15B,15C)とにより三相リニアモータ(三相リニア同期モータ)を構成している。
【0013】
より具体的には、電磁アクチュエータ1は、相対変位可能な同軸状の一対の筒部材からなる筒状リニア電磁式アクチュエータとして構成されており、相対移動する「ばね上部材」と「ばね下部材」との間に介装されている。この場合、電磁アクチュエータ1は、第1シリンダに対応する外筒23に設けられた磁性部材(磁石)としての永久磁石22,22と、第2シリンダに対応する内筒3にコア14を介して設けられた複数(複数相)のコイル15(即ち、u相コイル15A,v相コイル15B,w相コイル15C)とを備えている。コイル15(u相コイル15A,v相コイル15B,w相コイル15C)は、全周にわたって永久磁石22,22と径方向に対面して配置されている。
【0014】
電磁アクチュエータ1の固定子2と可動子21は、相対移動する2部材間(例えば、一方の部材となるばね下部材と他方の部材となるばね上部材との間)にそれぞれ取り付けられている。固定子2と可動子21は、ばね上部材とばね下部材との間に直線状に互いに相対変位(相対移動)を可能に配置されている。固定子2と可動子21は、ストローク方向となる軸方向、即ち、相対変位の方向である図1の上下方向に推力を発生させる。
【0015】
ばね下部材は、第1取付部材に対応し、ばね上部材は、第2取付部材に対応する。即ち、電磁アクチュエータ1は、相対移動する第1取付部材(例えば、ばね下部材)と第2取付部材(例えば、ばね上部材)との間に設けられている。そして、電磁アクチュエータ1は、第1取付部材に固定される第1部材と、第2取付部材に固定される第2部材と、を有している。
【0016】
実施形態では、電磁アクチュエータ1の第1部材と第2部材とのうち、第1部材を可動子21とし、第2部材を固定子2とした場合を例示している。しかし、これに限らず、第1部材を固定子とし、第2部材を可動子としてもよい。即ち、ばね下部材(第1取付部材)に固定子を固定し、ばね上部材(第2取付部材)に可動子を固定してもよい。また、第1取付部材をばね上部材とし、第2取付部材をばね下部材としてもよい。また、以下の説明では、電磁アクチュエータ1の軸方向(図1の上下方向)の一端側を下端側(図1の下端側)とし、軸方向の他端側を上端側(図1の上端側)とするが、電磁アクチュエータの軸方向の一端側を上端側とし、軸方向の他端側を下端側としてもよい。
【0017】
電磁アクチュエータ1の固定子2は、その一端側となる下端側に電機子13を有している。即ち、第2部材としての固定子2は、第2シリンダとしての内筒3と、アウタカバー4と、第3シリンダとしての中間筒5と、第2閉塞部材としての底部材6と、第3閉塞部材としての第1蓋部材7および第2蓋部材8と、コイル端部部材としての環状部材12と、電機子13とを備えている。内筒3は、上下方向(軸方向)に延びる筒状(円筒状)の筒部材(円筒部材)として形成されている。内筒3の径方向外側には、固定子2の中間筒5および可動子21の外筒23が配置されている。逆に言えば、内筒3は、外筒23および中間筒5の径方向内側に配置されている。この場合、内筒3は、外筒23の内周に外筒23の軸線方向に相対移動可能に配置されている。
【0018】
内筒3の一端部となる下端部には、電機子13が設けられている。内筒3は、下端側が電機子13(コア14)の内周側を軸方向に延び、例えば嵌合、圧入等の手段を用いてコア14の内側に挿入されている。即ち、内筒3の下端部は、電機子13まで延びており、電機子13の内周側に位置している。内筒3の下端側には、内筒3の下端側を閉塞する底部材6が固定されている。
【0019】
底部材6は、内筒3の下端側に挿入される小径部6Aと、電機子13のコア14とほぼ同じ外径寸法を有する大径部6Bとを備えている。小径部6Aの外周は、雄ねじ部6Cとなっている。雄ねじ部6Cは、内筒3の下端側に設けられた雌ねじ部3Aに螺合されている。即ち、底部材6は、小径部6Aの雄ねじ部6Cと内筒3の雌ねじ部3Aとの螺合により内筒3に固定される。底部材6には、小径部6Aおよび大径部6Bを軸方向に貫通する貫通孔6Dが設けられている。
【0020】
底部材6の貫通孔6Dおよび内筒3には、可動子21のロッド24が挿入される。貫通孔6D内には、ロッド24の外周面と低摩擦で摺動する摺動部材(図示せず)が設けられている。また、貫通孔6D内には、ロッド24と貫通孔6Dとの間をシールするシール部材6Eが設けられている。底部材6は、ロッド24の外周と摺動すると共に内筒3の一端(下端)を閉塞する第2閉塞部材に対応する。
【0021】
内筒3は、外筒23の内側に設けられ、一端側(下端側)からロッド24が挿入される。内筒3の他端部(上端部)は、ばね上部材(第2取付部材:2部材間のうちの他方の部材)に取り付けられる。この場合、内筒3の上端側は、第1蓋部材7および第2蓋部材8により閉塞されている。即ち、内筒3の他端(上端)には、第1蓋部材7および第2蓋部材8が設けられている。第1蓋部材7および第2蓋部材8は、内筒3と中間筒5とを閉塞する第3閉塞部材に対応する。実施形態では、第1蓋部材7および第2蓋部材8は、内筒3および中間筒5の他端側(上端側)の開口に加えてアウタカバー4の他端側(上端側)の開口も閉塞している。
【0022】
第1蓋部材7は、内筒3の上端側に挿入される小径部7Aと、中間筒5の上端側に挿入される大径部7Bと、大径部7Bの径方向の中央位置から上側に向けて突出する突出部7Cとを備えている。小径部7Aの外周は、雄ねじ部7Dとなっている。雄ねじ部7Dは、内筒3の上端側に設けられた雌ねじ部3Bに螺合される。即ち、第1蓋部材7は、小径部7Aの雄ねじ部7Dと内筒3の雌ねじ部3Bとの螺合により内筒3に固定される。
【0023】
また、大径部7Bの外周は、雄ねじ部7Eとなっている。雄ねじ部7Eは、中間筒5の上端側に設けられた雌ねじ部5Aに螺合される。即ち、第1蓋部材7は、大径部7Bの雄ねじ部7Eと中間筒5の雌ねじ部5Aとの螺合により中間筒5に固定される。突出部7Cは、第2蓋部材8に設けられた挿通孔8Aに挿通される。
【0024】
第1蓋部材7には、小径部7A、大径部7Bおよび突出部7Cを軸方向に貫通する貫通孔7Fが設けられている。貫通孔7Fは、上端側となる突出部7C側の開口がボルト11で閉塞されている。即ち、貫通孔7Fの上端側(突出部7C側)は、雌ねじとなっており、この雌ねじにボルト11が螺合している。貫通孔7Fは、ボルト11によって栓がされている。
【0025】
第2蓋部材8は、第1蓋部材7に一体的に接続(固定)されている。第2蓋部材8は、可動子21の外筒23よりも大きな径寸法を有している。第2蓋部材8の径方向の中心位置には、第1蓋部材7の突出部7Cおよびボルト11が挿通される挿通孔8Aが設けられている。第2蓋部材8には、図示しないボルトによって取付アイ9が固定されている。取付アイ9は、例えば車両のばね上部材に取り付けられる。即ち、取付アイ9は、第2蓋部材8および第1蓋部材7と共に、内筒3、中間筒5およびアウタカバー4をばね上部材に取り付ける。
【0026】
第2蓋部材8の外周縁には、全周にわたって下方に向けて延びる円筒状のアウタカバー4が取り付けられている。アウタカバー4は、中間筒5を覆っている。また、アウタカバー4は、可動子21の外筒23の上側ないし上半部を覆っている。これにより、固定子2には、外筒23の外周側に位置するカバー部材としてのアウタカバー4が設けられている。即ち、第1蓋部材7および第2蓋部材8の径方向外側には、外筒23が挿入され、かつ、一端(下端)が開口するアウタカバー4が設けられている。第2蓋部材8およびアウタカバー4は、車両の走行時に飛び石等から中間筒5および外筒23を保護する。
【0027】
中間筒5は、上下方向(軸方向)に延びる筒状(円筒状)の筒部材(円筒部材)として形成されている。中間筒5は、内筒3の外周側に設けられている。中間筒5は、一端となる下端が環状部材12と当接し、他端となる上端が開口する。この開口は、第1蓋部材7および第2蓋部材8により閉塞されている。即ち、中間筒5の上端側は、第1蓋部材7の大径部7Bに取り付けられている。これにより、中間筒5の上端側は、第1蓋部材7および第2蓋部材8により閉塞されている。中間筒5の下端部は、電機子13の上側に設けられた環状部材12に接続されている。コイル端部部材としての環状部材12は、電機子13の他端となる上端に設けられている。
【0028】
中間筒5は、第1蓋部材7の大径部7Bとの螺合により、環状部材12を介して電機子13を底部材6に向けて押し付けている。これにより、電機子13は、底部材6、環状部材12、中間筒5、内筒3、第1蓋部材7および第2蓋部材8と一体となって第1部材となる固定子2を構成している。中間筒5は、外周が可動子21のリング部材26と摺動する。
【0029】
電機子13は、環状に形成されている。電機子13の内周部(内周側の空間)は、内筒3が挿入されている。電機子13は、例えば磁性体からなる略筒状のコア14と、コア14に設けられた複数(複数相)のコイル15(即ち、u相コイル15A,v相コイル15B,w相コイル15C)とを有している。コア14は、内筒3の下端側、即ち、外筒23の底部側(下部部材25側)に設けられている。コア14の外周側には、コイル15A,15B,15Cが設けられている。これにより、コイル15A,15B,15Cは、内筒3の外周に配置されている。即ち、電機子13は、内筒3の外周に配置され、コイル15A,15B,15Cおよびコア14を有し、一端となる下端が底部材6と当接する。なお、コイル15A,15B,15Cの個数は、3個に限らず、例えば6個、9個、12個等、設計仕様等に応じて適宜に変更することができる。コイル15A,15B,15Cは、電磁アクチュエータ1の外部から導線16を通じて電力が供給される。即ち、コイル15A,15B,15Cには、導線16が接続されている。
【0030】
図示は省略するが、環状部材12の外周側には、電磁アクチュエータ1のストローク量を検出するストロークセンサが設けられている。ストロークセンサは、電機子13と可動子21(永久磁石22,22)との間の軸方向の絶対位置または相対位置を測定する。ストロークセンサは、例えば、磁気抵抗の変化、ホール効果等を利用して磁界(磁場、磁束)、極性(磁極)を検出する磁気抵抗素子、ホール素子(ホールIC)等の磁気センサにより構成することができる。
【0031】
ストロークセンサは、ストロークセンサに対して軸方向に変位する可動子21の永久磁石22,22の磁界、極性等を検出する。これにより、永久磁石22,22の軸方向位置(ストローク位置)を演算することができ、この位置に応じて固定子2のコイル15A,15B,15Cに必要な電流を供給できる。なお、ストロークセンサは、磁気センサに限らず、レーザ変位計等、電機子13と可動子21との間の軸方向の相対位置または絶対位置を測定することが可能な各種のストロークセンサ(変位センサ)を用いることができる。
【0032】
電磁アクチュエータ1の可動子21は、その下端側が車両のばね下部材に接続されている。可動子21には、可動子21の軸方向に延びて環状に形成される複数の永久磁石22,22からなる界磁が設けられている。可動子21は、円筒状の部材となる外筒23および外筒23の下端側を閉塞する下部部材25を有している。即ち、第1部材としての可動子21は、電機子13(コア14およびコイル15A,15B,15C)の外周側に配置されるヨークとしての外筒23と、外筒23の下端側に固定される下部部材25と、外筒23の内側に位置して下部部材25から軸方向に延びるロッド24と、外筒23に設けられコイル15A,15B,15Cに対し径方向に隙間をもって対向する磁性部材としての複数の永久磁石22,22とを備えている。また、可動子21は、外筒23の上端側に取り付けられた第1閉塞部材としてのリング部材26を備えている。
【0033】
外筒23および下部部材25は、第1シリンダを構成しており、下部部材25は、第1シリンダの底部に対応する。外筒23は、例えば、磁場の中に置くと磁路を形成する磁性材料を用いて形成されている。外筒23の径方向内側には、複数の永久磁石22,22が軸方向に並んで配置されている。外筒23は、磁性材料を用いることにより、電磁アクチュエータ1の磁気回路を形成すると共に、永久磁石22,22の磁束を外部に漏らさないためのカバーとしての機能も有している。外筒23は、上下方向(軸方向)に延びる筒状(円筒状)の筒部材(円筒部材)として形成されている。外筒23は、固定子2の内筒3および中間筒5の外周側に設けられている。
【0034】
外筒23の一端部となる下端部は、ばね下部材(第1取付部材:2部材間のうちの一方の部材)に取り付けられている。この場合、外筒23の下端側は、下部部材25に固定されている。即ち、外筒23の下端部は、下部部材25の位置まで軸方向に延びており、下部部材25により閉塞されている。外筒23の下端側は、下部部材25にボルト27によって固定されている。これにより、外筒23は、一端となる下端に底部となる下部部材25が設けられ、他端となる上端が開口している。
【0035】
下部部材25は、固定子2の内筒3(および中間筒5)よりも大きな径寸法を有する円板部25Aを備えている。円板部25Aには、ボルト27が挿通されるボルト挿通孔25Bが設けられている。外筒23の下端部には、円板部25Aのボルト挿通孔25Bに対応してねじ穴23Aが設けられている。外筒23と円板部25Aは、円板部25Aのボルト挿通孔25Bに挿通されると共に外筒23のねじ穴23Aに螺合されたボルト27によって固定される。
【0036】
下部部材25は、例えば車両のばね下部材に取り付けられる取付アイ25Cを備えている。取付アイ25Cは、円板部25Aに一体的に設けられている。下部部材25は、外筒23をばね下部材に取り付ける。下部部材25には、取付アイ25Cとは軸方向の反対側に位置して、下部部材25から電機子13の内側を軸方向に延びるロッド24が設けられている。
【0037】
ロッド24は、外筒23の内側に位置している。この場合、ロッド24は、内筒3に挿入されている。即ち、ロッド24は、外筒23内を下部部材25(円板部25A)から外筒23の開口側となる他端側(上端側)、即ち、リング部材26側に向けて延びている。ロッド24は、一端部となる下端部が下部部材25(円板部25A)に取り付けられている。ロッド24は、他端部となる上端部が底部材6の貫通孔6Dを通じて電機子13の内周部となる内筒3内に延びている。ロッド24は、例えば、下部部材25と一体に形成する構成、または、下部部材25とは別体のロッド24を下部部材25に螺合により固定する構成を採用することができる。
【0038】
ロッド24の先端側には、ピストン29が設けられている。ピストン29は、内筒3の内面と摺動し、内筒3内を2室に区画する。また、ピストン29の外周には、ピストン29に区画された2室を連通するピストン連通路29Aが設けられている。ロッド24は、内筒3内を軸方向に相対変位する。この場合、ピストン29の外周面と内筒3の内周面とが摺動し、かつ、ロッド24の外周面と底部材6(貫通孔6D)に設けられた摺動部材とが摺動することにより、ロッド24が内筒3に案内される。
【0039】
リング部材26は、外筒23の他端部となる上端部に設けられている。リング部材26は、円環状に形成されており、例えば、外筒23に螺合やかしめ等により固定的に取り付けられている。リング部材26は、中間筒5の外周と外部とを仕切っている。また、リング部材26は、例えば、永久磁石22,22が外筒23内から抜け出るのを抑えると共に、永久磁石22,22の軸方向の位置決めを行っている。
【0040】
リング部材26の内周側には、中間筒5の外周面と低摩擦で摺動する摺動部材(図示せず)が設けられている。また、リング部材26の内周面には、中間筒5とリング部材26との間をシールするシール部材26Aが設けられている。中間筒5は、リング部材26に対して軸方向に相対変位する。この場合、中間筒5の外周面とリング部材26の内周側に設けられた摺動部材とが摺動することにより、中間筒5がリング部材26(即ち、外筒23)に案内される。このように、リング部材26は、固定子2の中間筒5と摺動可能に配置される。
【0041】
界磁となる複数の永久磁石22,22は、可動子21に設けられている。永久磁石22,22は、磁場を生じさせる磁性部材であり、外筒23内に配置されている。この場合、永久磁石22,22は、それぞれ円環状に形成されている。永久磁石22,22は、例えば、円筒状に一体に形成されたリング磁石、円弧状の複数の磁石素子を周方向に並べることにより円環状に構成した分割型のセグメント磁石等により構成することができる。
【0042】
永久磁石22,22は、外筒23の内周面側に軸方向に沿って並んで設けられている。軸方向に隣合う各永久磁石22,22は、互いに逆極性になっている。例えば、内周面側がN極で外周面側がS極の永久磁石の隣には、内周面側がS極で外周面側がN極の永久磁石が配置されている。なお、永久磁石22,22の個数は、図示の例に限るものではない。例えば、ストローク量に応じて必要個数の永久磁石22,22を並べることができる。
【0043】
電磁アクチュエータ1は、例えば、鉄道車両の車体と台車との間に配置される。実施形態では、電磁アクチュエータ1の車体側部品は、固定子2に対応する。車体側には、磁性体のコア14と、コア14にマグネットワイヤーを巻回してなるコイル15(15A,15B,15C)とが配置される。また、電磁アクチュエータ1の台車側部品は、可動子21に対応する。台車側には、車体側の電機子13(コイル15およびコア14)に一定の空隙(エアギャップ)を介して対向する磁石22,22が配置される。
【0044】
ところで、鉄道車両用の制御サスペンションシステムの一例として、鉄道車両の台車と車体との間に2次ばね(例えば、空気ばね)と並列にリニアアクチュエータ(例えば、電磁アクチュエータ)を配置したアクティブサスペンションシステムがある。制御サスペンションの一つであるアクティブサスペンションは、車体の振動状態に合わせてリアルタイムに制御力を変更することが可能であり、車両の乗り心地を向上させることができる。
【0045】
リニアアクチュエータである電磁アクチュエータは、回転モータの回転運動を回転直動変換機構により直動運動に変換する方式(タイプ)と、リニアモータを用いる方式(タイプ)とがある。図1の電磁アクチュエータ1は、リニアモータを用いる方式である。電磁アクチュエータの制御力は、コイルと磁石との吸引力および/または反発力によって発生する。即ち、電磁アクチュエータの制御力は、コイルに電流を流すことにより発生する磁束とコイルに対向する磁石の磁束との間の吸引力および/または反発力によって発生する。
【0046】
また、電磁アクチュエータを鉄道車両で使用する場合、例えば、雨水や塵の侵入による固着(摺動部への噛み込み)や絶縁性能の低下を防止するために、防水/防塵構造が必要となる。このとき、電磁アクチュエータを密閉することで、防水/防塵構造を満たすことは可能である。しかし、電磁アクチュエータを密閉した場合、ストローク(伸長、縮小)に伴う空気室の体積変化が問題になる可能性がある。具体的には、ストロークに伴う電磁アクチュエータの内部の体積変化によって空気ばね力が発生し、電磁アクチュエータの制御力を妨げる可能性がある。
【0047】
これに対して、例えば、ストロークによる体積変化に対応するために、外部にサブタンクを設けることが考えられる。しかし、この場合は、サブタンクの追加コストおよび設置スペースが必要になる。また、例えば、電磁アクチュエータの全体の体積変化をなくし、かつ、体積変化をする空気室間に連通孔を設けて空気抵抗を低減することが考えられる。しかし、この場合は、電磁アクチュエータ全体の構造を変更する必要がある。また、例えば、外部との連通孔を設け、外部との空気のやり取り(呼吸)をすることが考えられる。しかし、この場合は、連通孔(呼吸孔)を設ける位置によっては、制御力が犠牲になる可能性がある。さらに、体積変化による反発力を低減するための連通孔を設ける場合、加工工数が増える可能性がある。
【0048】
そこで、実施形態では、電磁アクチュエータの構造を極力変えずに、ストロークに伴う体積変化による反力を低減する。また、制御力を確保すると共に、加工工数を低減する。このために、実施形態では、ストロークによって体積変化する領域(即ち、電機子13と永久磁石22,22とが対向する第1室A)と体積変化しない領域(即ち、内筒3と中間筒5とが対向する第2室B)とを連通路31で接続する。この場合、この連通路31を、電機子13のコイル15(15A,15B,15C)を駆動する導線16が通過する通路としている。さらに、体積変化しない領域(第2室B)と外気(即ち、外気と接続するアウタカバー4内の第3室C)とを外部連通路32で接続する。以下、これらの構成について、詳しく説明する。
【0049】
まず、電磁アクチュエータ1は、相対移動する第1取付部材(例えば、ばね下部材)と第2取付部材(例えば、ばね上部材)との間に設けられる。電磁アクチュエータ1は、第1取付部材に固定される第1部材(例えば、可動子21)と、第2取付部材に固定される第2部材(例えば、固定子2)と、を有している。第1部材としての可動子21は、第1シリンダとしての外筒23および下部部材25と、第1閉塞部材としてのリング部材26と、複数の永久磁石22と、ロッド24と、を備えている。外筒23は、一端(下端)に第1シリンダの底部となる下部部材25が設けられ、他端(上端)が開口している。リング部材26は、外筒23の他端部(上端部)に設けられ、固定子2の中間筒5と摺動可能に配置されている。磁石である永久磁石22は、外筒23内に配置されている。ロッド24は、外筒23内を下部部材25から開口する他端側(上端側)に向けて延びている。
【0050】
第2部材としての固定子2は、第2シリンダとしての内筒3と、第2閉塞部材としての底部材6と、電機子13と、コイル端部部材としての環状部材12と、第3シリンダとしての中間筒5と、第3閉塞部材としての第1蓋部材7および第2蓋部材8と、を備えている。内筒3は、外筒23の内側に設けられ、ロッド24が挿入されている。底部材6は、ロッド24の外周と摺動すると共に内筒3の一端(下端)を閉塞している。電機子13は、コイル15A,15B,15Cおよびコア14を有している。電機子13は、内筒3の外周に配置され、一端(下端)が底部材6と当接している。環状部材12は、電機子13の他端(上端)に設けられている。中間筒5は、一端(下端)が環状部材12と当接し、他端(上端)が開口している。中間筒5は、外周がリング部材26と摺動する。第1蓋部材7および第2蓋部材8は、内筒3と中間筒5とを閉塞している。即ち、中間筒5の他端(上端)の開口は、第1蓋部材7および第2蓋部材8によって閉塞されている。
【0051】
電磁アクチュエータ1は、第1室Aおよび第2室Bを有している。第1室Aは、第1シリンダ(外筒23、下部部材25)内と固定子2との間の室(空間)に対応する。例えば、第1室Aは、外筒23の内周面と、下部部材25の上面と、ロッド24の外周面と、中間筒5の外周面と、環状部材12の外周面と、電機子13の外周面と、底部材6の外周面および底面とにより区画される室(空間)に対応する。第2室Bは、中間筒5内と内筒3との間の室(空間)に対応する。例えば、第1室Aは、中間筒5の内周面と内筒3の外周面とにより区画される室(空間)に対応する。鉄道車両の車体と台車との相対変位に伴って、固定子2と可動子21とが相対変位(ストローク)すると、この相対変位に伴って第1室Aは体積変化し、第2室Bは体積変化しない。
【0052】
環状部材12は、第1室Aと第2室Bとを連通する連通路31を有している。連通路31は、環状部材12の軸方向に延びる軸方向通路31Aと、この軸方向通路31Aに連通し環状部材12の径方向に延びる径方向通路31Bとを備えている。軸方向通路31Aおよび径方向通路31Bは、例えば穿孔加工によって環状部材12に形成されている。軸方向通路31Aは、環状部材12の一側面(電機子13のコア14と対面する下面)と他側面(第2室Bと対面する上面)との間を貫通する貫通孔として環状部材12に設けられている。径方向通路31Bは、環状部材12の外周面と軸方向通路31Aとの間を貫通する貫通孔として環状部材12に設けられている。これにより、連通路31は、軸方向通路31Aおよび径方向通路31Bにより、第1室Aと第2室Bとの間を連通している。
【0053】
軸方向通路31Aおよび径方向通路31Bは、第1室Aと第2室Bとの間を気体(空気)が流通する通気用通路である。また、軸方向通路31Aには、コイル15(15A,15B,15C)に電力を供給する導線16が配設されている。即ち、環状部材12の連通路31には、コイル15(15A,15B,15C)を動作させる導線16が挿通されている。これにより、環状部材12の連通路31は、コイル15(15A,15B,15C)の導線16を通過させるための配線用通路であり、かつ、第1室Aと第2室Bとの間で気体(空気)が流通する通気用通路となっている。
【0054】
また、内筒3および中間筒5の上端側を塞ぐ第1蓋部材7および第2蓋部材8には、第2室Bと外部(より具体的には、外部と接続するアウタカバー4内の第3室C)とを連通する外部連通路32が設けられている。即ち、第2蓋部材8の径方向外側には、一端となる下端が開口するアウタカバー4が設けられており、アウタカバー4には、外筒23が挿入されている。そして、外部連通路32は、アウタカバー4内に連通し、可動子21側(リング部材26側)に開口している。
【0055】
この場合、コイル15(15A,15B,15C)に電流を流すための導線16は、第2室Bを経由し、第1蓋部材7および第2蓋部材8を通り、電磁アクチュエータ1の外部へ導出されている。即ち、ケーブルとも呼ばれる導線16は、第2室Bから第1蓋部材7および第2蓋部材8を通り、電磁アクチュエータ1から導線出口33を通じて外部に延びている。この場合、導線取出し口となる導線出口33は、導線出口33から電磁アクチュエータ1の内部に水や塵が侵入することを防止するために防水/防塵処置を施す必要がある。このため、導線出口33は、電磁アクチュエータ1の内部と外気とを連通する外部連通路32の開口と共用することができない。即ち、導線出口33は、防水/防塵処置を施すために、導線出口33の内面と導線16との間を栓部材34により封止する必要があるのに対して、外部連通路32の開口は、通気できるようにする必要がある。そこで、実施形態では、導線出口33と外部連通路32の開口とを異ならせている。また、外部連通路32には、防塵フィルタ35が設けられている。
【0056】
ここで、前述の従来技術によれば、円筒状のアウタチューブに防塵フィルタを配置している。このため、防塵フィルタを貼付する作業が面倒になる可能性がある。また、外部からの雨や塵埃、飛び石などに対応するために、防塵フィルタにある程度の強度、剛性が必要になる。一方、防塵フィルタの配置場所によっては、磁石の貼付枚数や面積が減り、推力が局所的に低下する可能性もある。そこで、実施形態では、電磁アクチュエータ1がストロークしたときに体積変化に伴う空気ばね力を抑制し、かつ、防塵フィルタの貼付の作業性を確保すると共に推力の低下を抑制できるようにしている。
【0057】
このために、外部連通路32は、第1蓋部材7および第2蓋部材8に設けられている。外部連通路32は、内径側連通路32Aと、外径側連通路32Bと、接続連通路32Cとを有している。内径側連通路32Aは、第1蓋部材7に少なくとも1つ以上設けられている。内径側連通路32Aは、電磁アクチュエータ1のストローク方向(軸方向)に延び、第2室Bに開口している。この場合、内径側連通路32Aの下端側の開口は、環状部材12に対面している。内径側連通路32Aの上端側の開口は、接続連通路32Cに接続されている。外径側連通路32Bは、内径側連通路32Aよりも外径側に位置して第2蓋部材8に設けられている。外径側連通路32Bは、電磁アクチュエータ1のストローク方向(軸方向)に延び、外部、即ち、外部に接続するアウタカバー4内の第3室Cに開口している。この場合、外径側連通路32Bの下端側の開口は、リング部材26に対面している。外径側連通路32Bの上端側の開口は、接続連通路32Cに接続されている。
【0058】
接続連通路32Cは、第2蓋部材8に設けられている。接続連通路32Cは、内径側連通路32Aと外径側連通路32Bとを接続している。このために、接続連通路32Cは、第1接続路32C1と、第2接続路32C2とを備えている。第1接続路32C1は、第1蓋部材7と第2蓋部材8とを接続したときに、第1蓋部材7の内径側連通路32Aと対向する。第1接続路32C1は、外径側連通路32Bと同様に電磁アクチュエータ1のストローク方向(軸方向)に延びている。第2接続路32C2は、第2蓋部材8の径方向に延びている。第2接続路32C2の一端部、即ち、第2蓋部材8の径方向内側に位置する端部は、第1接続路32C1に接続されている。
【0059】
第2接続路32C2の他端部、即ち、第2蓋部材8の径方向外側に位置する端部は、第2蓋部材8の外周面に開口している。即ち、第2接続路32C2の他端は、電磁アクチュエータ1の外部に開口しており、導線出口33となっている。また、第2接続路32C2の途中には、外径側連通路32Bが接続されている。これにより、外部連通路32は、第2室Bと外部に通じる第3室C(即ち、中間筒5の外周面とアウタカバー4の内周面との間の第3室C)とを連通している。この場合、第2室Bは、外部連通路32の内径側連通路32A、接続連通路32Cの第1接続路32C1および第2接続路32C2、外径側連通路32Bを介して第3室Cと連通している。
【0060】
さらに、外部連通路32のうち内径側連通路32A、接続連通路32Cの第1接続路32C1および第2接続路32C2には、導線16が配設されている。導線16は、コイル15(15A,15B,15C)側から第2室B、外部連通路32の内径側連通路32A、接続連通路32Cの第1接続路32C1および第2接続路32C2を通り、第2接続路32C2の他端側の開口である導線出口33から外部に延びている。これにより、外部連通路32の内径側連通路32Aおよび接続連通路32Cは、第2室Bと第3室Cとの間で気体(空気)を流通させるための通気用通路の機能と導線16を第2室B側から外部へ導く配線用通路の機能とを有している。接続連通路32Cは、外径側連通路32Bが接続されており、外径側連通路32Bは、第2室Bと第3室Cとの間で気体(空気)を流通させるための通気用通路の機能を有している。
【0061】
導線出口33には、シール部材となる栓部材34が設けられており、導線出口33の内周面と導線16の外周面との間から水、塵等の異物が侵入しないように防水/防塵処置が施されている。これに対して、外径側連通路32Bには、防塵フィルタ35が設けられている。アウタカバー4の内の第3室Cは、アウタカバー4の一端側となる下端側で外気と連通している。このため、アウタカバー4内の第3室Cから水、塵等の異物が侵入することを防止するために、外径側連通路32Bには、防塵フィルタ35が設けられている。図3および図4に示すように、防塵フィルタ35は、電磁アクチュエータ1のストローク方向、即ち、可動子21と固定子2の伸縮方向(軸方向)に網目が配置されている。即ち、防塵フィルタ35は、外径側連通路32Bを通過する空気の流れに対して対面するように網目が配置されている。
【0062】
実施形態による電磁アクチュエータ1は、上述のような構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0063】
例えば、電磁アクチュエータ1は、図示しないばねと共に、車両の電磁サスペンション装置を構成する。電磁サスペンション装置は、車両のばね上部材(車体側)とばね下部材(車輪側)との間に上下方向に縦置き状態で介在させることができる。また、電磁サスペンション装置は、車両のばね上部材(車体側)とばね下部材(台車側)との間に左右方向に横置き状態で介在させることができる。例えば、縦置き状態の場合、車両が上下方向に振動すると、電磁サスペンション装置には、ストローク方向(軸方向)に力が作用する。横置き状態の場合、車両が左右方向に振動すると、電磁サスペンション装置には、ストローク方向(軸方向)に力が作用する。この力に応じて、電磁アクチュエータ1の固定子2と可動子21とが相対移動する。このとき、電磁アクチュエータ1は、コイル15(15A,15B,15C)と永久磁石22,22の磁極位置とに応じてコイル15(15A,15B,15C)に所定の電流を流すことにより、電磁アクチュエータ1の推力(減衰力)を調整することができる。この結果、車両の乗り心地や操縦安定性を向上させることができる。
【0064】
電磁アクチュエータ1の内部は、ストロークに伴って体積変化する。例えば、電磁アクチュエータ1が縮小すると、第1室Aの体積が減少し、第1室Aの圧力が上昇する。これにより、第1室Aから環状部材12の連通路31を経由して第2室Bに空気が移動する。第2室Bは、連通路31からの空気により圧力が上昇する。第2室Bの空気は、外部連通路32を経由して第3室Cに移動する。これに対して、電磁アクチュエータ1が伸長すると、第1室の体積が増加し、第1室Aの圧力が減少する。これにより、第3室C側から外部連通路32、第2室B、連通路31を経由して第1室Aに空気が移動する。
【0065】
実施形態では、第2室Bは、外気と第1室Aとの間の空気の通路とし、かつ、導線16を通す領域として共用している。また、第1蓋部材7および第2蓋部材8には、「防水/防塵処理をした導線16の取出し」および「第2室Bと外気との間の連通」を行うための外部連通路32が設けられている。そして、外部連通路32の外径側連通路32Bは、重力方向(上下方向)を向いている。防塵フィルタ35は、外径側連通路32Bに設けられており、防塵フィルタ35は直接外気と接触していない。体積が変化する領域となる第1室Aと外気(外気に直接接続する第3室C)との間には、体積が変化しない領域となる第2室Bが設けられている。
【0066】
そして、第1室Aと外気(外気に直接接続する第3室C)とを接続するための連通路31および外部連通路32は、磁石と関係ない位置に設けられている。このため、連通路31および外部連通路32を設けることに伴う推力の局所的な低下をなくすことができる。また、外部連通路32(外径側連通路32B)に防塵フィルタ35を配置することで、防塵フィルタ35の配置、選定が従来技術と比べて容易になる。具体的には、防塵フィルタ35自体が直接外気と接しない(アウタカバー4内に配置される)ので、例えば飛び石による防塵フィルタ35の損傷を考慮する必要がなくなり、要求される強度を低くできる。これにより、従来に比べ安価なフィルタを採用することができる。防塵フィルタ35を設ける外径側連通路32Bは、重力方向を向いているため、水や塵の侵入を抑制できる。さらに、電磁アクチュエータ1の体積変化に伴う空気のルートは、電磁アクチュエータ1が伸びたときも縮んだときも必ず体積一定の第2室Bを通る。このため、例えば、第1室Aを直接外気に接続する構成と比較して、体積変化に伴う体積変化の割合(=圧力変化)を少なくでき、ストロークに伴う異音(呼吸音)を低減できる。さらに、導線16を通すルートとエア抜きの通路とを共用しているため、加工工数の低減を図ることができる。また、新規に追加の部品が必要になることもない。
【0067】
以上のように、実施形態によれば、環状部材12の連通路31にコイル15(15A,15B,15C)を動作させる導線16が挿通されている。このため、この連通路31を、「コイル15(15A,15B,15C)の導線16を通過させるための配線用通路」と「第1室Aと第2室Bとの間で気体(空気)が流通する通気用通路」との両方の通路として用いることができる。即ち、「コイル15(15A,15B,15C)に接続される導線16を通すルートである配線用通路」と「第1室Aと第2室Bとの間のエア抜きの通路である通気用通路」とを共用することができる。これにより、配線用通路と通気用通路とを別々に形成する必要がなくなり、加工工数を低減できる。この場合、新規の追加部品を必要とすることなく対応することができる。
【0068】
実施形態によれば、第1蓋部材7および第2蓋部材8に外部連通路32が設けられている。このため、外部連通路32を永久磁石22,22と無関係の場所に配置することができる。これにより、外部連通路32を設けることに伴う推力の局所的な低下を抑制することができる。これに加えて、外部連通路32を設けることに伴う電磁アクチュエータ1のストローク量の犠牲をなくせる(低減できる)ため、制御範囲(推力発生範囲)を確保しやすくできる。さらに、ストロークに伴い体積変化する第1室Aは、体積変化しない第2室Bを経由して外部(外気)と連通されるため、全体としての体積変化の割合および圧力変化を小さくできる。これにより、ストロークに伴う異音(呼吸音)を抑制できる。
【0069】
実施形態によれば、外部連通路32は、第1蓋部材7および第2蓋部材8の径方向外側に設けられたアウタカバー4内に連通し、可動子21側に開口する。このため、外部連通路32がアウタカバー4内の空間(第3室C)を介して外部と連通する(即ち、外部連通路32が外部と直接的に連通しない)。これにより、外部の異物を内部(第2室B)に入りにくくできる。また、外部連通路32をストローク方向に開口させることができるため、例えば電磁アクチュエータ1を上下方向に配置した場合に外部連通路32を下側(重力方向)に向けることができる。このため、この面からも、外部連通路32を通じて雨水、塵等の異物を内部(第2室B)に入りにくくできる。
【0070】
実施形態によれば、外部連通路32に防塵フィルタ35が設けられている。このため、第2蓋部材8に防塵フィルタ35を配置でき、防塵フィルタ35の組み付けの作業性を確保できる。また、防塵フィルタ35は、直接外気と接しない(アウタカバー4内に位置する)。このため、外部から異物が防塵フィルタ35に衝突することを抑制できる。これにより、防塵フィルタ35の損傷を抑制できることに加えて、安価な防塵フィルタ35を採用できる。
【0071】
実施形態によれば、防塵フィルタ35は、伸縮方向に網目が配置される。このため、防塵フィルタ35は、外部連通路32を伸縮方向に流通する気体(空気)中の異物を安定して捕集(気体中から除去)できる。
【0072】
なお、実施形態では、外部連通路32の断面積の大きさ、即ち、内径側連通路32Aの断面積の大きさと外径側連通路32Bの断面積の大きさと接続連通路32Cの断面積の大きさとを特に規定していない。しかし、例えば、外部連通路32の断面積を一定、即ち、内径側連通路32Aの断面積と外径側連通路32Bの断面積と接続連通路32Cの断面積とを同じにすることができる。この場合は、外部連通路32で発生する圧力損失を均等にすることができる。即ち、電磁アクチュエータ1のストロークで発生する圧力変化による空気の流れを、外部連通路32内で妨げることなく空気を通すことができる。即ち、圧力変化による空気反力の増加を抑えることができる。
【0073】
また、例えば、内径側連通路32Aの断面積と外径側連通路32Bの断面積とをほぼ同じとし、この断面積よりも接続連通路32Cの断面積を大きくしてもよい。ここで、内径側連通路32Aと外径側連通路32Bは、一般的にはドリルで穴をあけることにより形成するため、加工断面は円となる。一方、接続連通路32Cは、内径側連通路32Aおよび外径側連通路32Bと同径のドリルで開ける、または、第2蓋部材8の上面の一部を凹形状にくりぬくことにより形成できる。このため、内径側連通路32Aおよび外径側連通路32Bの断面積よりも接続連通路32Cの断面積を大きくすることで、加工寸法精度を粗くすることが可能となる。この結果、加工費を低減できる。
【0074】
また、例えば、外部連通路32の断面積と連通路31の断面積とをほぼ同じにしてもよい。この場合には、第1室Aから外気までを接続する連通路31および外部連通路32をほぼ同一とすることで、局所的な圧力損失による空気反力の発生を抑えることができる。
【0075】
また、図示は省略するが、防塵フィルタ35は、例えば、外径側連通路32Bと接続連通路32Cとの接続部に設けてもよい。この場合は、この接続部に設けた防塵フィルタにより、外気中の異物(水、塵等)の侵入を抑えることができる。また、仮に、防塵フィルタが接続部から剥がれた場合でも、この防塵フィルタの外径寸法を外径側連通路32Bの内径寸法よりも大きくすることにより、防塵フィルタが外径側連通路32Bを通じて外部に抜け出ることを抑制できる。これにより、防塵フィルタの落失事故を構造的に抑制することができる。
【0076】
また、防塵フィルタ35は省略してもよい。即ち、防塵フィルタを設けない構成としてもよい。また、アウタカバー4を省略してもよい。即ち、アウタカバーを設けない構成としてもよい。さらに、外部連通路32を省略してもよい。即ち、環状部材12に連通路31を設けるが、第1蓋部材7および第2蓋部材8に外部連通路を設けない構成としてもよい。
【0077】
実施形態では、電磁アクチュエータ1を、固定子2側のコア14に設けられたコイル15(15A,15B,15C)と、可動子21側の外筒23に設けられた永久磁石22,22(磁石)とにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、可動子側に設けられたコイルと、固定子側に設けられた磁石とにより電磁アクチュエータを構成してもよい。
【0078】
実施形態では、横断面形状が円形の電磁アクチュエータ1、即ち、固定子2および可動子21を円筒状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、横断面形状がI字状(平板状)や矩形状、H字状の電磁アクチュエータ等、横断面形状が円形以外の筒状(シリンダ状)の電磁アクチュエータにより構成してもよい。
【0079】
実施形態では、固定子2を車両のばね上部材に取り付けると共に、可動子21を車両のばね下部材に取り付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、固定子を車両のばね下部材に取り付けると共に、可動子を車両のばね上部材に取り付ける構成としてもよい。
【0080】
実施形態では、電磁アクチュエータ1を縦置き状態で鉄道車両、自動車等の車両に取り付ける構成とした場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、電磁アクチュエータを横置き状態で鉄道車両等の車両に取り付ける構成としてもよい。
【0081】
実施形態では、電磁アクチュエータ1を車両に取り付ける構成とした場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、電磁アクチュエータは、例えば、振動源となる種々の機械、建築物等の緩衝器として用いてもよい。また、電磁アクチュエータは、緩衝器に限定されず、各種機器を駆動するアクチュエータ(駆動装置)として用いることができる。
【0082】
以上説明した実施形態によれば、コイル端部部材の連通路にコイルを動作させる導線が挿通されている。このため、この連通路を、「コイルの導線を通過させるための配線用通路」と「第1室と第2室との間で気体(空気)が流通する通気用通路」との両方の通路として用いることができる。即ち、「コイルに接続される導線を通すルートである配線用通路」と「第1室と第2室との間のエア抜きの通路である通気用通路」とを共用することができる。これにより、配線用通路と通気用通路とを別々に形成する必要がなくなり、加工工数を低減できる。この場合、新規の追加部品を必要とすることなく対応することができる。
【0083】
実施形態によれば、第3閉塞部材に外部連通路が設けられている。このため、外部連通路を磁石と無関係の場所に配置することができる。これにより、外部連通路を設けることに伴う推力の局所的な低下を抑制することができる。これに加えて、外部連通路を設けることに伴うアクチュエータ装置のストローク量の犠牲をなくせる(低減できる)ため、制御範囲(推力発生範囲)を確保しやすくできる。さらに、ストロークに伴い体積変化する第1室は、体積変化しない第2室を経由して外部(外気)と連通されるため、全体としての体積変化の割合および圧力変化を小さくできる。これにより、ストロークに伴う異音(呼吸音)を抑制できる。
【0084】
実施形態によれば、外部連通路は、第3閉塞部材の径方向外側に設けられたアウタカバー内に連通し、第1部材側に開口する。このため、外部連通路がアウタカバー内の空間を介して外部と連通する(即ち、外部連通路が外部と直接的に連通しない)。これにより、外部の異物を内部(第2室)に入りにくくできる。また、外部連通路をストローク方向に開口させることができるため、例えばアクチュエータ装置を上下方向に配置した場合に外部連通路を下側(重力方向)に向けることができる。このため、この面からも、外部連通路を通じて雨水、塵等の異物を内部(第2室)に入りにくくできる。
【0085】
実施形態によれば、外部連通路に防塵フィルタが設けられている。このため、第3閉塞部材に防塵フィルタを配置でき、防塵フィルタの組み付けの作業性を確保できる。また、防塵フィルタは、直接外気と接しない(アウタカバー内に位置する)。このため、外部から異物が防塵フィルタに衝突することを抑制できる。これにより、防塵フィルタの損傷を抑制できることに加えて、安価な防塵フィルタを採用できる。
【0086】
実施形態によれば、防塵フィルタは、伸縮方向に網目が配置される。このため、防塵フィルタは、外部連通路を伸縮方向に流通する気体(空気)中の異物を安定して捕集(気体中から除去)できる。
【符号の説明】
【0087】
1:電磁アクチュエータ(アクチュエータ装置)、2:固定子(第2部材)、3:内筒(第2シリンダ)、4:アウタカバー、5:中間筒(第3シリンダ)、6:底部材(第2閉塞部材)、7:第1蓋部材(第3閉塞部材)、8:第2蓋部材(第3閉塞部材)、12:環状部材(コイル端部部材)、13:電機子、14:コア、15:コイル、16:導線、21:可動子(第1部材)、23:外筒(第1シリンダ)、25:下部部材25(第1シリンダ、第1シリンダの底部)、26:リング部材(第1閉塞部材)、31:連通路、32:外部連通路、35:防塵フィルタ、A:第1室、B:第2室
図1
図2
図3
図4