(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】潮汐出力装置および発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/26 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F03B13/26
(21)【出願番号】P 2021185533
(22)【出願日】2021-11-15
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】521498966
【氏名又は名称】前田 康次
(73)【特許権者】
【識別番号】521498977
【氏名又は名称】秋山 由紀子
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】前田 康次
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-050675(JP,A)
【文献】米国特許第04364715(US,A)
【文献】特開昭51-140043(JP,A)
【文献】実開昭58-132179(JP,U)
【文献】米国特許第06269636(US,B1)
【文献】特公昭44-010964(JP,B1)
【文献】特開昭54-120341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮汐出力装置において、
海面に浮かべられるフロートと、
一方の端部において前記フロートに連結され、中間部において固定構造に軸支されたシーソー台と、
前記シーソー台の他方の端部の出力端と、
重力によって前記シーソー台の一方の端部から他方の端部まで移動可能な重量体とを具え、
干潮時には前記重量体が前記フロート側に移動して前記フロートに追加的な荷重をかけ、満潮時には前記重量体が前記フロートと反対側に移動して前記フロートに追加的な上向きの力を与えることを特徴とする潮汐出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の潮汐出力装置において、前記重量体は錘を乗せた台車または液体であることを特徴とする潮汐出力装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の潮汐出力装置において、前記重量体を前記シーソー台の一方または他方の端部および/またはその近傍に保持するためのストッパ手段を具えることを特徴とする潮汐出力装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の潮汐出力装置において、前記出力端に接続された水力発電装置であって、
少なくとも部分的にシリンダ状の貯水タンクと、
当該貯水タンクのシリンダ状部分の断面内側を占める水圧調整フロートと、
当該水圧調整フロートの上下を選択的に連通させる開閉弁と、
前記貯水タンクの前記水圧調整フロートの上側に設けられた取水口と、
前記貯水タンクの前記水圧調整フロートの下側に設けられた排出口と、
前記取水口を通る水によって回転するタービンと、
前記貯水タンクの排出口から水を受け取り、前記貯水タンクの取水口へと送る高圧水タンクと、
当該高圧水タンク内の水に自重で圧力をかける加重シリンダとを具え、
前記出力端は、周期的に前記加重シリンダを持ち上げる力を加えるように前記加重シリンダに接続されている水力発電装置をさらに含むことを特徴とする、潮汐出力装置。
【請求項5】
請求項4に記載の潮汐出力装置において、前記高圧水タンクを2つ以上具え、これらの高圧水タンクに前記貯水タンクから交互に水が送られることを特徴とする潮汐出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潮の干満を利用した動力発生装置およびこれを用いる発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱炭素が政策にも掲げられて、火力発電から太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーへの転換が進んでいる。しかしながら、太陽光発電は太陽光の強弱で発電量が変動し、また夜間は発電することができず、発電効率が悪く出力が一定でないという問題がある。また、風力発電や波力発電も風や波の強弱で発電量が変動し、安定供給が難しい。ダムを用いた水力発電は供給の安定性に優れているが、大規模なダムを建設できる場所に限りがあり、発電容量の大幅増が困難という課題がある。これに対し、潮の干満による潮汐エネルギーは、天候に関係なく1日2回の一定周期で現れるため、予測しやすく計画が立てやすいメリットがある。このような潮汐発電の一例が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、潮の干満に合わせて上下動するフロートから、潮の干満差以上の出力を得ることができないことである。また、得られた潮汐エネルギーから発電するためのより一層高効率の発電装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、潮汐出力装置において、海面に浮かべられるフロートと、一方の端部において前記フロートに連結され、中間部において固定構造に軸支されたシーソー台と、前記シーソー台の他方の端部の出力端と、重力によって前記シーソー台の一方の端部から他方の端部まで移動可能な重量体とを具え、干潮時には前記重量体が前記フロート側に移動して前記フロートに追加的な荷重をかけ、満潮時には前記重量体が前記フロートと反対側に移動して前記フロートに追加的な上向きの力を与えることを特徴とする。
【0006】
この潮汐出力装置において、前記重量体は錘を乗せた台車または液体であることが好ましい。
【0007】
この潮汐出力装置において、前記重量体を前記シーソー台の一方または他方の端部および/またはその近傍に保持するためのストッパ手段を具えることが好ましい。
【0008】
さらに、前記出力端に接続された水力発電装置であって、少なくとも部分的にシリンダ状の貯水タンクと、当該貯水タンクのシリンダ状部分の断面内側を占める水圧調整フロートと、当該水圧調整フロートの上下を選択的に連通させる開閉弁と、前記貯水タンクの前記水圧調整フロートの上側に設けられた取水口と、前記貯水タンクの前記水圧調整フロートの下側に設けられた排出口と、前記取水口を通る水によって回転するタービンと、を具える水力発電装置をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
前記水力発電装置がさらに、前記貯水タンクの排出口から水を受け取り、前記貯水タンクの取水口へと送る高圧水タンクと、当該高圧水タンク内の水に自重で圧力をかける加重シリンダとを具え、前記出力端が前記加重シリンダに接続されていることが好ましい。
【0010】
この潮汐出力装置において、前記高圧水タンクを2つ以上具え、これらの高圧水タンクに前記貯水タンクから交互に水が送られることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の潮汐出力装置では、フロートに連結したシーソー台の上を重量体が重力によって海側と陸側に往復移動し、干潮時にはフロートに荷重をかけてさらに沈ませ、満潮時には反対側に移動してフロートを吊り上げるように作用する。これにより単にフロートを海面に浮かせるよりも上下動の幅を大きくすることができ、出力を増大させることができる。
【0012】
また、本発明で利用する水力発電装置は、上記シーソー台の出力端からの動力に加え、水圧調整フロートの上に水を注ぎその重量でフロートを押し下げて水を圧送することを利用して、効率よく発電することができる。さらに、2つの高圧水タンクを用いて水に圧力をかけることにより、発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の潮汐出力装置の第1実施例の構成を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の潮汐出力装置の第2実施例の構成を示す側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態にかかる水力発電装置の構成を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の潮汐出力装置の上から見た配置を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の潮汐出力装置の第3実施例の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、添付の図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
図1は、本発明の潮汐出力装置の第1実施例の構成を示す側面図である。図示するように、岸壁に設けられた支柱10にシーソー台11が回動自在に軸支されており、シーソー台11の一方の端部11aは海面上に延在し、他方の端部11bは陸側に延在している。海側端部11aには海面フロート12がリンク棒12aを介して連結されている。海面フロート12は海面に浮かべられ、潮の干満によってシーソー台11の海側端部11aを上下させる。陸側端部(出力端)11bには滑車を介してワイヤロープ13が架けられており、図示する実施例では満潮時には上側のワイヤロープ13aが引っぱられ、干潮時には下側のワイヤロープ13bが引っぱられるように構成されている。
【0015】
図1に示す実施例では、シーソー台11は好適には上下と四方が囲まれて内部に水を貯めることができ、全体が左右に傾斜可能な水槽として構成されている。水は給水口と排水口から出し入れすることができる(いずれも図示せず)。このように構成すると、
図1に示す満潮時に、海面フロート12が海面の上昇とともに持ち上げられてシーソー台11が陸側に傾くと、内部の水が陸側に寄ってシーソー台11の陸側にさらに荷重をかけ、海面フロート12に追加的な吊り上げる力(上昇力)を与える。また、干潮時に海面が下るとシーソー台11が反対側に傾き、これに伴って内部の水が海面フロート12の上に移動してこれに荷重をかけ、海面フロート12の喫水線が深くなる。これによりシーソー台11の運動量が大きくなり、得られる出力を大きくすることができる。
【0016】
図2は、潮汐出力装置の第2実施例の構成を示す側面図である。本実施例は、水を移動可能に内包するシーソー台11(
図1)の代わりに、シーソー台15の上を加重台車16が往復運動するように構成されている。シーソー台15の上面は加重台車16が移動可能なようにレールや枠が設けられ(図示せず)、両端部にはそれぞれ加重台車16の速度を緩めるための傾斜と突き当り17が設けられている。このような構成でも、海面フロート12が干潮時には大きく沈み満潮時には大きく浮き上がり、出力を大きくすることができる。
【0017】
図3は、本発明の一実施形態にかかる水力発電装置20の構成を示す概略図である。この水力発電装置20は、
図1または
図2に示す動力発生装置に接続されて電力を生成するものである。この水力発電装置20は大別すると、貯水タンク22と、2つの高圧水タンク23、24とを具える。
【0018】
貯水タンク22は縦長の筒型タンクであり、内部に水圧調整フロート25が浮かべられる。この水圧調整フロート25は貯水タンク22の内側断面の大部分に延在し、水圧調整フロート25の外側面と貯水タンク22の内面との間はガスケットが配設されて界面を水が往来しないようになっている。水圧調整フロート25の上下動は、上限/下限ストッパ27a、27bによって制限される。水圧調整フロート25はさらに、当該フロート25の上側空間と下側空間を選択的に連通させる1つ以上の自動開閉弁28を具える。この自動開閉弁28は、水圧調整フロート25が下限まで降りたら開き、上限まで上がったら閉じるように構成されている。この制御は各種センサおよび有線あるいは無線制御を用いて達成することができる。貯水タンク22はさらに、水圧調整フロート25の上側に設けられた取水口29と、水圧調整フロート25の下側に設けられた排出口30とを具える。取水口29にはタービン31が設けられ、取水口29を通る水によってタービン31が回転して発電するように構成されている。
【0019】
2つの高圧水タンク23、24も縦型の筒状タンクであり、満潮側高圧水タンク23と、干潮側高圧水タンク24に分けることができる。これらの高圧水タンク23、24は貯水タンク22の排出口30から水を受け取り、貯水タンク22の取水口29へ送り出す役割を有する。高圧水タンク22、24はそれぞれ十分な重量を有する加重シリンダ32を具え、この加重シリンダ32がストローク調整滑車35を介してシーソー台11または15の出力端に接続されている。ストローク調整滑車35は、スライドレール(図示せず)上を変位することができ、任意でギヤとモータで駆動され上下の定位置にロック可能である。貯水タンク22と高圧水タンク23、24の接続部にはそれぞれ自動制御される弁37a~dが配設されている。
【0020】
図4は、本発明の潮汐出力装置の上から見た配置を示す概略図である。本図に示すように、岸壁にシーソー台11または15が配置され、その海側端部に連結された海面フロート12が海面に浮かべられる。この部分は防波堤40でほぼ囲われている。シーソー台の出力はワイヤロープ13から高圧水タンク23、24(の加重シリンダ32)に伝達される。
【0021】
このように構成された潮汐出力装置の動作を説明する。満潮に向かうときには、
図1に示すようにシーソー台が陸側に傾き、ワイヤロープ13aが引っぱられる。このとき、本発明によれば単にフロートを海上に浮かべる場合よりも大きな出力が得られる。これにより、水力発電装置20の満潮側高圧水タンク23の加重シリンダ32を上に吊り上げらる力が伝達される。このとき自動制御により高圧水タンク23の取水弁37bは開けられ、出水弁37dは閉じられる。
【0022】
同時に、シーソー台に接続された他方のワイヤロープ13bが緩められ、滑車システムを介して干潮側高圧水タンク24の加重シリンダ32を吊り上げている力が消失し、加重シリンダ32が自重で下降して高圧水タンク24内の水に圧力をかける。実際には満潮側高圧水タンク23の加重シリンダ32の吊り上げによる給水速度と、干潮側高圧水タンク24の加重シリンダの下降による放水速度とが異なりワイヤロープが引き合う現象が生じるが、これはストローク調整滑車35によって吸収される。このとき自動制御により高圧水タンク24の取水弁37aは閉じられ、出水弁37cが開けられる。これにより高圧水タンク24の水が出水弁37cを通り貯水タンク22の取水口29へと圧送され、その過程でタービン31が回転されて発電が行われる。取水口29から貯水タンク22に入った水は、内部の水圧調整フロート25の上に注がれる。
【0023】
貯水タンク22内では、水圧調整フロート25が連続的に上下動する。すなわち、水圧調整フロート25が下降位置にくると弁28が開かれ、水圧調整フロート25は浮力によって上昇する。水圧調整フロート25が上限位置まで浮上すると弁28が閉じられる。これにより、水圧調整フロート25より上の水がその重量分の重りに変わり、水圧調整フロート25に圧力を加える。水圧調整フロート25の下の水がそのときに連通している(弁37bが開いている)満潮側高圧水タンク23に供給される。この圧力は高圧水タンクの加重シリンダを押し上げる力となる。
【0024】
干潮に向かうときには、
図2に示すようにシーソー台が海側に傾き、さらに重量体(水や加重台車16)が海面フロート12の上に移動して荷重をかけることにより、ワイヤロープ13bが引っぱられてワイヤロープ13aが緩められる。上記と逆の作用により、干潮側高圧水タンク24において加重シリンダ32が吊り上げられ貯水タンク22から高圧水が供給される。同時に、満潮側高圧水タンク23の取水弁37bが閉じられ出水弁37dが開けられて、高圧水タンク23の水が貯水タンク22の取水口29に圧送され、その過程でタービン31が回転されて発電が行われる。タービン31は満潮側、干潮側のどちらの高圧水タンク23、24からの出力水でも同一方向に回転するように構成されている。代替的な実施例では、タービン31は満潮側と干潮側にそれぞれ別個に設けられてもよい。
【0025】
すべての弁37a~dを自動制御することにより、1日24時間、何日でも発電を続け一定の電圧で送電することができる。高圧水タンク23、24の加重シリンダ32は重量が重い方が望ましい。
【0026】
図5は、本発明の潮汐出力装置の第3実施例の構成を示す側面図である。本実施例のシーソー台40は、
図2に示す加重台車16を用いるシーソー台15とほぼ同じだが、海面フロート12が
図2のシーソー台の端部より内側寄りに連結されており、加重台車16の経路に4つの台車ストッパ42a~dを有する点で異なる。これらの台車ストッパ42a~dは通常は解除されて(引っ込んで)いるが、シーソー台40の傾きセンサに接続された制御部(いずれも図示せず)からの信号を受けている間は突出するように構成されている。これらの台車ストッパ42a~dは以下のように制御される。
【0027】
図5(a)では、干潮が近くシーソー台40は海側に大きく傾いた下限位置にあり、加重台車16は海側端部に位置し、台車ストッパ42dで止まっている。このとき水力発電装置20は干潮側高圧水タンク24の満水待ちである。干潮側高圧水タンク24が満水になると、干潮側のストローク調整滑車35のロックを解除するとともに、台車ストッパ42dを解除して台車ストッパ42cを出す。これにより、
図5(b)に示すように加重台車16がシーソー台40に設けられた海側の坂を台車ストッパ42cまで降りる。
【0028】
満潮に向かいシーソー台40が陸側に傾くと、所定の角度で台車ストッパ42cを解除する。
図5(c)に示すように、加重台車16はシーソー台40上を陸側に移動し、その勢いで陸側の坂を突き当りまで上る。これをセンサで検知して台車ストッパ42aを出すと、この端部位置に加重台車16が留め置かれる。水力発電装置20では満潮側高圧水タンク23の満水待ちとなる。
【0029】
満潮側高圧水タンク23が満水になるとストローク調整滑車35のロックを解除するとともに、台車ストッパ42aを解除して台車ストッパ42bを出す。これにより、
図5(d)に示すように加重台車16が台車ストッパ42bの位置まで降りる。このように構成すると、海面フロート12の連結箇所に対してシーソー台40が長いため出力を増大させることができ、また加重台車16の重量を海面フロート12の真上のストッパ42b、42cの位置にかけることができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態や実施例のものに限られず、様々な変更例や変形例として実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は潮汐を利用した水力発電に関し、海に接した土地であればどこでも設置することができる。
【符号の説明】
【0032】
11、15、40 シーソー台
12 海面フロート
16 加重台車
22 貯水タンク
23、24 高圧水タンク
25 水圧調整フロート
31 タービン
32 加重シリンダ
35 ストローク調整滑車