(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】条虫を検出するための方法、デバイス、キット、および組成物
(51)【国際特許分類】
G01N 33/569 20060101AFI20240920BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240920BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240920BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240920BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N33/569 A
C07K16/00
C12Q1/686 Z
G01N33/53 M
G01N33/543 521
G01N33/569 L
(21)【出願番号】P 2021518492
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 US2019054317
(87)【国際公開番号】W WO2020072662
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-30
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300004500
【氏名又は名称】アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IDEXX Laboratories, Inc.
【住所又は居所原語表記】One IDEXX Drive, Westbrook, Maine 04092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(72)【発明者】
【氏名】ゲン,ジンミン
(72)【発明者】
【氏名】エルスモア,デヴィッド,アレン
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0260718(US,A1)
【文献】国際公開第2010/100862(WO,A1)
【文献】特開2001-292766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0311557(US,A1)
【文献】米国特許第02797182(US,A)
【文献】Maria-Claudia Guezala et al.,Development of a Species-Specific Coproantigen ELISA for Human Taenia solium Taeniasis,The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene,2009年,Vol. 81, Issue 3,pp. 433-437,DOI: 10.4269/ajtmh.2009.81.433
【文献】James C. Allan and Philip S. Craig,Coproantigens in taeniasis and echinococcosis,Parasitology International,2006年,Vol. 55, Supplement,pp. S75-S80,DOI: 10.1016/j.parint.2005.11.010
【文献】山口良二, 外8名,免疫クロマト法による犬パルボウイルス抗原検出キットの作製とその有用性の検討,日本獣医師会雑誌,2000年,Vol. 53, No. 12,pp. 821-824,DOI: 10.12935/jvma1951.53.821
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
C07K 16/00 - 16/46
C12Q 1/00 - 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糞便試料において1つまたは複数の条虫抗原の存在または非存在を検出する方法であって、ここで方法は
(a)(i)第1の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫種由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;
(ii)第2の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および
(iii)第3の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫種由来の糞便抗原にも第2の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体からなる群から選択される2つ以上の抗体とイヌまたはネコ由来の糞便試料を接触させるステップ;ならびに
(b)抗体-糞便抗原複合体の存在または非存在を検出するステップを含み、
ここで、第1の条虫種がTaenia pisiformis、第2の条虫種がTaenia taeniaeformis、および第3の条虫種がDipylidium caninumである、方法。
【請求項2】
以下のステップ
(b1)ステップ(b)の前に、試料において、糞便抗原の存在下で、抗体-糞便抗原複合体を形成するステップ;
(c)抗体-糞便抗原複合体の存在または非存在を検出するステップ;ならびに
(d)(i)第1の条虫の抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第1の条虫感染;
(ii)第2の条虫の抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第2の条虫感染;および
(iii)第3の条虫の抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第3の条虫感染を有するとイヌまたはネコを診断するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つまたは複数の条虫に感染したイヌまたはネコを診断および処置する方法であって、方法は
(a)(i)第1の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫種由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;
(ii)第2の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および
(iii)第3の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫種由来の糞便抗原にも第2の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体からなる群から選択される2つ以上の抗体とイヌまたはネコ由来の糞便試料を接触させるステップ;
(b)試料において、糞便抗原の存在下で、抗体-糞便抗原複合体を形成するステップ;
(c)抗体-糞便抗原複合体の存在または非存在を検出するステップ;ならびに
(d)(i)第1の条虫の抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第1の条虫感染;
(ii)第2の条虫の抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第2の条虫感染;および
(iii)第3の条虫の抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第3の条虫感染を有するとイヌまたはネコを診断するステップ;ならびに
(e)第1の条虫感染、第2の条虫感染、もしくは第3の条虫感染、またはそれらの組合せを有するイヌまたはネコを処置するために有効量の1つまたは複数の治療剤を投与するステップを含み、
ここで、第1の条虫種がTaenia pisiformis、第2の条虫種がTaenia taeniaeformis、および第3の条虫種がDipylidium caninumである、方法。
【請求項4】
ステップ(e)がさらに、(a)1つもしくは複数の蠕虫の寄生体、1つもしくは複数の蠕虫ではない寄生体、1つもしくは複数のウイルス、1つもしくは複数の真菌、1つもしくは複数の原生動物、または1つもしくは複数の細菌による感染を処置するための、1つまたは複数の追加の治療剤を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(e)がさらに、(b)扁形動物の虫の寄生体、蠕虫の寄生体、蠕虫ではない寄生体、ウイルス、真菌、原生動物、または細菌の中間宿主を制御、撃退、または殺害するための、1つまたは複数の治療剤を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
第1の抗体が、条虫Taenia taeniaeformis、および条虫Dipylidium caninumからなる群から選択される1つまたは複数の糞便抗原と特異的に交差反応しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2の抗体が、条虫Taenia pisiformis糞便抗原、および条虫Dipylidium caninum糞便抗原からなる群から選択される1つまたは複数の糞便抗原と特異的に交差反応しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第3の抗体が、条虫Taenia pisiformis、またはTaenia taeniaeformisからなる群から選択される1つまたは複数の糞便抗原と特異的に交差反応しない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1、第2、および第3の抗体が、鉤虫、回虫、鞭虫、Giardia、およびパルボウイルスからなる群から選択される1つ以上の糞便抗原にも特異的に交差反応しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
回虫が、Toxocara canis、Toxocara cati、Toxocara vitulorum、Toxascaris leonina、Baylisascaris procyonis、Ascaridia galli、Parascaris equorum、Ascaris suum、Ascaris lumbricoides、Anisakis simplex、またはPseudoterranova decipiensである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
鞭虫が、Trichuris vulpis、Trichuris campanula、Trichuris serrata、Trichuris felis、Trichuris suis、Trichuris trichiura、Trichuris discolor、またはTrichocephalus trichiurisである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
鉤虫が、Ancylostoma caninum、Ancylostoma braziliense、Ancylostoma duodenal、Ancylostoma ceylanicum、Ancylostoma tubaeforme、Ancylostoma pluridentatum、Necator americanus、またはUncinaria stenocephalaである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a)の群がさらに、
(i)回虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、鞭虫、鉤虫、条虫、Giardia属、およびパルボウイルスからなる群に由来する糞便抗原に特異的に結合する能力がない、抗体;
(ii)鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫、鉤虫、条虫、Giardia属、およびパルボウイルスからなる群に由来する糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;ならびに
(iii)鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、鞭虫、回虫、条虫、Giardia属、およびパルボウイルスからなる群に由来する糞便抗原に特異的に結合する能力がない、抗体;
(iv)Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、鉤虫糞便抗原、条虫Taenia属糞便抗原、条虫Dipylidium属糞便抗原、およびパルボウイルス糞便抗原からなる群から選択される糞便抗原に特異的に結合する能力がない、抗体;ならびに
(v)パルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原,鞭虫糞便抗原、鉤虫糞便抗原、条虫Taenia属糞便抗原、条虫Dipylidium属糞便抗原、およびGiardia属糞便抗原からなる群から選択される糞便抗原に特異的に結合する能力がない、抗体からなる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
鉤虫がAnyclostoma属であり、回虫がToxocara属であり、鞭虫がTrichuris属である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
鉤虫がAncylostoma caninumまたはAncylostoma tubaeformeであり、回虫がToxocara canisまたはToxocara catiであり、鞭虫がTrichuris vulpisまたはTrichuris felisであり、Giardia属がGiardia lambliaであり、パルボウイルスがネコパルボウイルスまたはイヌパルボウイルスである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(d)の診断することがさらに:
(iv)回虫の抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、回虫感染;
(v)鞭虫の抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、鞭虫感染;
(vi)鉤虫の抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、鉤虫感染;
(vii)Giardia属の抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、Giardia属感染;および
(viii)パルボウイルスの抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、パルボウイルス感染を有するとイヌまたはネコを診断するステップを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
糞便試料を、3つ以上の抗体、4つ以上の抗体、5つ以上の抗体、6つ以上の抗体、7つ以上の抗体、または8つ以上の抗体と接触させる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
抗体-糞便抗原複合体の存在または非存在を検出するステップが、1つまたは複数の複合体と結合する少なくとも1つの二次抗体を供給するステップをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
二次抗体が、標識されているか、または固体支持体に付着している、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1、第2、および第3の抗体のうちの1つまたは複数が標識されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
第1、第2、および第3の抗体が固体支持体上に固相化されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
回虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、およびパルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体のうちの1つまたは複数が標識されている、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
回虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、およびパルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体が固体支持体上に固相化されている、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
固体支持体が、酵素結合免疫吸着アッセイデバイスの一部を構成する、請求項21または23に記載の方法。
【請求項25】
酵素結合免疫吸着アッセイデバイスがラテラルフローイムノアッセイデバイスである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
1つまたは複数の蠕虫の寄生体、1つまたは複数の蠕虫ではない寄生体、1つまたは複数のウイルス、1つまたは複数の真菌、1つまたは複数の原生動物、および1つまたは複数の細菌からなる群の1つまたは複数を検出するための1つまたは複数の試薬と試料を接触させるステップをさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
試薬が、1つまたは複数の抗体、あるいは、1つもしくは複数の蠕虫の寄生体、蠕虫ではない寄生体、1つもしくは複数のウイルス、1つもしくは複数の真菌、1つもしくは複数の原生動物、または1つもしくは複数の細菌に特異的な抗体により認識される1つまたは複数の抗原を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
1つまたは複数の蠕虫の寄生体が、回虫、鞭虫、鉤虫、およびイヌ糸状虫の少なくとも1つを含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
1つまたは複数の試薬が、蠕虫ではない寄生体のGiardia属糞便抗原と特異的に結合する抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
Giardia属がGiardia lambliaである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
Giardia属糞便抗原に特異的に結合する抗体が、T.pisiformi、T.taeniaeformis、D.caninum、A.caninum感染イヌ、A.tubaeforme、T.canis、T.cati、T.vulpis、T.felis、およびパルボウイルスに由来する糞便抗原と結合しない、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
回虫、鞭虫、または鉤虫由来の核酸の存在または非存在を決定するステップをさらに含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
核酸の存在または非存在を決定するステップが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づいたアッセイを用いることにより行われる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
糞便抗原の少なくとも1つがグリコシル化されている、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
抗体-糞便抗原複合体の存在または非存在を検出するステップが、複合体の少なくとも1つと結合する1つまたは複数のレクチンを供給するステップをさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
レクチンが、検出可能に標識されているか、または固体支持体上に固相化されている、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
第1、第2、および第3の抗体、回虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、およびパルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体が、検出可能に標識されているか、または固体支持体上に固相化されている、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
第1、第2、および第3の抗体、回虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、およびパルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体が、固体支持体上に固相化され、レクチンが検出可能に標識される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項39】
第1、第2、および第3の抗体、回虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、およびパルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体が、検出可能に標識され、レクチンが固体支持体上に固相化されている、請求項34または35に記載の方法。
【請求項40】
哺乳動物由来の糞便試料を1つまたは複数の抗体と接触させるステップの前に、糞便試料を1つまたは複数のレクチンと接触させるステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
1つまたは複数のレクチンが検出可能に標識されているか、または固体支持体上に固相化されている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
第1の抗体、第2の抗体、第3の抗体、回虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、および
パルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体が、検出可能に標識されているか、または固体支持体上に固相化されている、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
第1の抗体、第2の抗体、第3の抗体、回虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、およびパルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体が、固体支持体上に固相化され、1つまたは複数のレクチンが検出可能に標識される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
第1の抗体、第2の抗体、第3の抗体、回虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体、およびパルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力がある抗体が、検出可能に標識され、1つまたは複数のレクチンが固体支持体上に固相化されている、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
イヌまたはネコの糞便試料から1つまたは複数の条虫糞便抗原の存在または非存在を検出するためのデバイスであって、固体支持体を含み、固体支持体が、
(a)第1の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫種由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;
(b)第2の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および
(c)第3の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫種由来の糞便抗原にも第2の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体からなる群から選択される
2つ以上の抗体を前記固体支持体上に固相化しており、
ここで、第1の条虫種がTaenia pisiformis、第2の条虫種がTaenia taeniaeformis、および第3の条虫種がDipylidium caninumであり、
ここで固体支持体は任意にその上に固相化された1つもしくは複数のレクチンをさらに含む、デバイス。
【請求項46】
哺乳動物試料における1つまたは複数の扁形動物糞便抗原の検出のためのキットであって、請求項45に記載のデバイス、および1つまたは複数の糞便抗原の検出のために十分な1つまたは複数の試薬を含む、キット。
【請求項47】
1つまたは複数の試薬が、1つまたは複数の指示薬、1つまたは複数の抗体標識化合物、1つまたは複数の抗体、1つまたは複数の抗原捕獲試薬、1つまたは複数の阻害剤、および1つまたは複数の洗浄試薬からなる群から選択される、請求項46に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年10月2日に出願された米国仮特許出願第62/740,100号、2018年10月5日に出願された第62/741,849号、および2018年10月17日に出願された第62/746,805号からの優先権の恩恵を主張し、それらの全ては、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、哺乳動物において条虫種を検出しおよび条虫種間を識別するための組成物、デバイス、キット、および方法に関する。より具体的には、本発明は、哺乳動物由来の試料において条虫種の存在または非存在を検出するための、および条虫抗原間を識別するための抗体および抗体組成物、デバイス、ならびに方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.先行技術の説明
寄生虫感染は、動物においてよく見られ、診断も処置も行われなければ、重篤な疾患または死を引き起こし得る。寄生虫感染の診断のための現在の方法は、主に、糞便塗布において直接的か、または密度媒体における浮遊もしくは沈降による卵子および寄生体の濃縮後かのいずれかでの糞便試料の顕微鏡検査を含む。この手順の採用の多さにもかかわらず、その方法は、重大な欠点を有する。これらの顕微鏡方法は、時間がかかり、特殊な装置を必要とする。加えて、これらの方法の結果の精度は、操作者の技能および経験に大いに依存する。例えば、条虫の存在は、卵または片節を探すことにより決定されるが、これらは、断続的でかつ少数で排泄される。驚くほどのことではないが、条虫感染は、日常的な糞便検査で診断されないことが多い。
【0004】
便の取り扱いは、不快で危険である。便を処理するための衛生的かつ不快にさせない手順はやりにくく、複雑である場合が多い。そのような手順は、計量、遠心分離、および保管を含み得、適切な器具、保護装置、および熟練した技術者を備えた臨床検査室以外では難しい。したがって、糞便試験を実施するのに必要とされるステップの数のいくらかの低減、および試験操作者と試験材料との間の接触のいくらかの低減が望ましい。臨床検査室は、糞便中の様々なウイルス、細菌、ならびに非蠕虫の寄生体および生物体の検出のためにイムノアッセイ方法を用いている。しかしながら、糞便、全血、または血清中の寄生虫感染の検出のための単純なイムノアッセイ方法の必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、本発明は、Taenia属糞便抗原、例えば、Taenia pisiformis糞便抗原もしくはTaenia taeniaeformis糞便抗原、またはDipylidium caninum糞便抗原などの条虫糞便抗原と特異的に結合することができる、単離された抗体に向けられる。その抗体を、検出可能に標識し、または固体支持体に付着させることができる。
【0006】
一実施形態において、単離抗体は、Taenia pisiformis糞便抗原と特異的に結合する。その抗体は、以下の群から選択される1つまたは複数の糞便抗原と特異的に交差反応しない:条虫Taenia taeniaeformis、条虫Dipylidium属、鉤虫(例えば、Ancylostoma属)、回虫(Toxocara属)、鞭虫(例えば、Trichuris属)、Giardia属、およびパルボウイルス;条虫Dipylidium属はDipylidium caninumである;鉤虫はAncylostoma caninumまたはAncylostoma tubaeformeである;回虫はToxocara canisまたはToxocara catiである;鞭虫はTrichuris vulpisまたはTrichuris felisである;Giardia属はGiardia lambliaである;ならびにパルボウイルスはネコパルボウイルスまたはイヌパルボウイルスである。
【0007】
別の実施形態において、単離抗体は、Taenia taeniaeformis糞便抗原と特異的に結合する。その抗体は、以下の群から選択される1つまたは複数の糞便抗原と特異的に交差反応しない:条虫Taenia pisiformis、条虫Dipylidium属、鉤虫(例えば、Ancylostoma属)、回虫(Toxocara属)、鞭虫(例えば、Trichuris属)、Giardia属、およびパルボウイルス;条虫Dipylidium属はDipylidium caninumである;鉤虫はAncylostoma caninumまたはAncylostoma tubaeformeである;回虫はToxocara canisまたはToxocara catiである;鞭虫はTrichuris vulpisまたはTrichuris felisである;Giardia属はGiardia lambliaである;ならびにパルボウイルスはネコパルボウイルスまたはイヌパルボウイルスである。
【0008】
他の実施形態において、単離抗体は、Dipylidium caninum糞便抗原と結合する。その抗体は、以下の群から選択される1つまたは複数の糞便抗原と特異的に交差反応しない:条虫Taenia属、条虫Dipylidium属、鉤虫(例えば、Ancylostoma属)、回虫(Toxocara属)、鞭虫(例えば、Trichuris属)、Giardia属、およびパルボウイルスであり、条虫Taenia属はTaenia pisiformisまたはTaenia taeniaeformisであり;鉤虫はAncylostoma caninumまたはAncylostoma tubaeformeであり;回虫はToxocara canisまたはToxocara catiであり;鞭虫はTrichuris vulpisまたはTrichuris felisであり;Giardia属はGiardia lambliaであり;パルボウイルスはネコパルボウイルスまたはイヌパルボウイルスである。
【0009】
別の態様において、本発明は、条虫糞便抗原、および条虫糞便抗原と特異的に結合する1つまたは複数の抗体を含む免疫複合体に向けられる。一実施形態において、条虫糞便抗原は、Taenia pisiformis、Taenia taeniaeformis、Taenia crassiceps、またはDipylidium caninum由来の糞便抗原であり得る。別の実施形態において、抗体は、条虫の全抽出物、条虫のE/S材料、条虫の虫洗浄液(Worm Wash)、または条虫のTCA可溶性材料での免疫化により得られる。別の実施形態において、抗体は、条虫感染哺乳動物から得られた糞便試料などの試料由来の条虫糞便抗原と特異的に結合する。いくつかの実施形態において、哺乳動物は、回虫、鞭虫、および鉤虫のうちの1つまたは複数にさらに感染しており、抗体は、試料に存在し得る回虫、鞭虫、または鉤虫のうちの1つまたは複数由来のいかなる抗原とも特異的に結合しない。いくつかの実施形態において、抗体を、検出可能に標識し、または固体支持体と結合させることができる。
【0010】
別の態様において、本発明は、条虫糞便抗原、条虫糞便抗原と特異的に結合する抗体、および条虫糞便抗原と結合するレクチンを含む免疫複合体に向けられる。レクチンは、1つの特定の型の糖鎖と特異的に結合することができ、または条虫糞便抗原上の2つ以上の糖鎖と結合することができる。
【0011】
別の態様において、本発明は、試料由来の蠕虫抗原、例えば、糞便試料由来の糞便抗原に特異的に結合し、それを単離するためのデバイスであって、固体支持体を含み、固体支持体が、(a)第1の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;(b)第2の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および(c)第3の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第2の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体からなる群から選択される1つまたは複数の抗体をその上に固相化している、デバイスを提供する。デバイスは、例えば、ラテラルフローイムノアッセイデバイスまたはマイクロタイタープレートデバイスなどのELISAデバイスであり得るが、それに限定されない。デバイスにより条虫について試験され得る試料には、糞便、消化管粘液、尿、全血、血清、乳房の乳、ならびに組織全体、例えば、乳腺、腸、肝臓、心臓、肺、食道、脳、筋肉、および眼由来の組織が挙げられるが、それらに限定されない。デバイスは、1つまたは複数の蠕虫の寄生体、蠕虫ではない寄生体、1つまたは複数のウイルス、1つまたは複数の真菌、1つまたは複数の原生動物、および1つまたは複数の細菌からなる群の1つまたは複数の検出のための1つまたは複数の試薬をさらに含み得るが、含む必要はない。いくつかの実施形態において、固体支持体はさらに、以下から選択される1つまたは複数の抗体をその上に固相化している:(i)回虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、鞭虫、鉤虫、条虫、Giardia属、およびパルボウイルスからなる群に由来する糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;(ii)鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫、鉤虫、条虫、Giardia属、およびパルボウイルスからなる群に由来する糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;(iii)鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、鞭虫、回虫、条虫、Giardia属、およびパルボウイルスからなる群に由来する糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;(iv)Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、鉤虫糞便抗原、条虫Taenia属糞便抗原、条虫Dipylidium属糞便抗原、およびパルボウイルス糞便抗原からなる群から選択される糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;ならびに(v)パルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、鉤虫糞便抗原、条虫Taenia属糞便抗原、条虫Dipylidium属糞便抗原、およびGiardia属糞便抗原からなる群から選択される糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体。実施形態において、鉤虫はAnyclostoma属であり、回虫はToxocara属であり、鞭虫はTrichuris属である。他の実施形態において、鉤虫はAncylostoma caninumまたはAncylostoma tubaeformeであり;回虫はToxocara canisまたはToxocara catiであり;鞭虫はTrichuris vulpisまたはTrichuris felisであり;Giardia属はGiardia lambliaであり;パルボウイルスはネコパルボウイルスまたはイヌパルボウイルスである。
【0012】
いくつかの実施形態において、固体支持体は、多重化を可能にするために、2つ以上の抗体、3つ以上の抗体、4つ以上の抗体、5つ以上の抗体、6つ以上の抗体、7つ以上の抗体、または8つ以上の抗体をその上に固相化している。
【0013】
別の態様において、本発明は、糞便試料から1つまたは複数の条虫糞便抗原の存在または非存在を検出するためのデバイスであって、固体支持体、レクチン、ならびに(a)第1の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫種由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;(b)第2の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および(c)第3の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫種由来の糞便抗原にも第2の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体からなる群から選択される1つまたは複数の抗体を含み、固体支持体が、1つもしくは複数のレクチンまたは1つもしくは複数の抗体をその上に固相化している、デバイスを提供する。いくつかの実施形態において、レクチンが固体支持体上に固相化されている。他の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体が、固体支持体上に固相化されている。他の実施形態において、デバイスは、1つまたは複数の種の条虫の抗原をさらに含み、1つまたは複数の種の条虫の抗原が、抗体と特異的に結合する。いくつかの実施形態において、第1の条虫種はTaenia pisiformisであり、第2の条虫種はTaenia taeniaeformisであり、および/または第3の条虫種はDipylidium caninumである。
【0014】
なお別の態様において、本発明は、試料において1つまたは複数の蠕虫抗原、例えば、糞便試料由来の糞便抗原の存在または非存在を検出する方法であって、(a)(i)第1の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;(ii)第2の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および(iii)第3の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第2の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体からなる群から選択される1つまたは複数の抗体と哺乳動物由来の試料を接触させるステップ;(b)試料において、もしあれば、糞便抗原の存在下で、抗体-糞便抗原複合体を形成するステップ、ならびに(c)もしあれば、抗体-糞便抗原複合体の存在または非存在を検出するステップを含む、方法を提供する。条虫の糞便抗原には、Taenia種の糞便抗原、例えば、Taenia pisiformisおよびTaenia taeniaeformis;ならびにDipylidium種、例えば、Dipylidium caninumを挙げることができる。一実施形態において、複合体の存在または非存在を検出するステップはさらに、複合体の少なくとも1つと結合するレクチンを供給するステップを含む。いくつかの実施形態において、レクチンを、検出可能に標識し、または固体支持体上に固相化することができる。他の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体は、検出可能に標識されているか、または固体支持体上に固相化されている。いくつかの実施形態において、第1、第2、および第3の抗体を、固体支持体上に固相化することができ、レクチンを検出可能に標識することができる。他の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体を、検出可能に標識することができ、レクチンを固体支持体上に固相化することができる。
【0015】
別の実施形態において、哺乳動物由来の糞便試料を少なくとも1つの抗体と接触させるステップの前に、方法は、糞便試料を1つまたは複数のレクチンと接触させるステップをさらに含む。1つまたは複数のレクチンを、検出可能に標識し、または固体支持体上に固相化することができる。あるいは、第1、第2、および第3の抗体を、検出可能に標識し、または固体支持体上に固相化することができる。一実施形態において、第1、第2、および第3の抗体を、固体支持体上に固相化することができ、1つまたは複数のレクチンを検出可能に標識することができる。別の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体を、検出可能に標識することができ、1つまたは複数のレクチンを固体支持体上に固相化することができる。
【0016】
一態様において、方法は、糞便の哺乳動物試料を条虫糞便抗原について試験するために行われる。しかしながら、方法は、糞便試料を試験するために行われることに限定されない。したがって、糞便に加えて、試料は、全血、血清、乳房の乳、ならびに組織全体、例えば、乳腺、腸、肝臓、心臓、肺、食道、脳、筋肉、および眼由来の組織であり得るが、それらに限定されない。
【0017】
なお別の態様において、本発明は、哺乳動物が1つまたは複数の寄生虫に感染しているかどうかを診断する方法であって、(a)(i)第1の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;(ii)第2の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および(iii)第3の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第2の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体からなる群から選択される1つまたは複数の抗体と哺乳動物由来の試料を接触させるステップ;(b)試料において、もしあれば、糞便抗原の存在下で、抗体-糞便抗原複合体を形成するステップ;(c)もしあれば、抗体-糞便抗原複合体の存在または非存在を検出するステップ;ならびに(d)(i)第1の条虫抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第1の条虫感染;(ii)第2の条虫抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第2の条虫感染;および(iii)第3の条虫抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第3の条虫感染を有すると哺乳動物を診断するステップ含む、方法を提供する。一実施形態において、2つ以上の抗体、3つ以上の抗体、4つ以上の抗体、5つ以上の抗体、6つ以上の抗体、7つ以上の抗体、または8つ以上の抗体が選択される。いくつかの実施形態において、複合体の存在または非存在を検出するステップはさらに、複合体の少なくとも1つと結合する1つまたは複数のレクチンを供給するステップを含む。いくつかの実施形態において、レクチンを、検出可能に標識し、または固体支持体上に固相化することができる。他の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体が、検出可能に標識されているか、または固体支持体上に固相化されている。いくつかの実施形態において、第1、第2、および第3の抗体を、固体支持体上に固相化することができ、レクチンを検出可能に標識することができる。他の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体を、検出可能に標識することができ、レクチンを固体支持体上に固相化することができる。
【0018】
別の実施形態において、哺乳動物由来の糞便試料を少なくとも1つの抗体と接触させるステップの前に、方法は、糞便試料を1つまたは複数のレクチンと接触させるステップをさらに含む。レクチンを、検出可能に標識し、または固体支持体上に固相化することができる。あるいは、第1、第2、および第3の抗体を、検出可能に標識し、または固体支持体上に固相化することができる。一実施形態において、第1、第2、および第3の抗体を、固体支持体上に固相化することができ、レクチンを検出可能に標識することができる。別の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体を、検出可能に標識することができ、レクチンを固体支持体上に固相化することができる。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、1つまたは複数の寄生虫に感染した哺乳動物を診断および処置する方法であって、(a)(i)第1の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;(ii)第2の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および(iii)第3の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第2の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体からなる群から選択される少なくとも1つの抗体と哺乳動物由来の試料を接触させるステップ;(b)試料において、もしあれば、糞便抗原の存在下で、抗体-糞便抗原複合体を形成するステップ;(c)もしあれば、抗体-糞便抗原複合体の存在または非存在を検出するステップ;ならびに(d)(i)第1の条虫抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第1の条虫感染;(ii)第2の条虫抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第2の条虫感染;および(iii)第3の条虫抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、第3の条虫感染を有すると哺乳動物を診断するステップ;ならびに(e)第1、第2、もしくは第3の条虫感染またはそれらの組合せを有する哺乳動物を処置するために有効量の1つまたは複数の治療剤を投与するステップ含む、方法を提供する。一実施形態において、2つ以上の抗体が選択される。他の実施形態において、ステップ(e)はさらに、1つもしくは複数の蠕虫の寄生体、1つもしくは複数の蠕虫ではない寄生体、1つもしくは複数のウイルス、1つもしくは複数の真菌、1つもしくは複数の原生動物、または1つもしくは複数の細菌による感染を処置するための、1つまたは複数の追加の治療剤を含む。他の実施形態において、ステップ(e)はさらに、扁形動物の虫の寄生体、蠕虫の寄生体、蠕虫ではない寄生体、ウイルス、真菌、または細菌の中間宿主を制御、撃退、または殺害するための、1つまたは複数の治療剤を含む。中間宿主の代表的例には、条虫の卵を運ぶことができるノミおよびイヌのハジラミが挙げられる。
【0020】
上記の方法のさらなる実施形態において、ステップ(a)の群はさらに以下からなる:(i)回虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、鞭虫、鉤虫、条虫、Giardia属、およびパルボウイルスからなる群に由来する糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;(ii)鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫、鉤虫、条虫、Giardia属、およびパルボウイルスからなる群に由来する糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;(iii)鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、鞭虫、回虫、条虫、Giardia属、およびパルボウイルスからなる群に由来する糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;(iv)Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、鉤虫糞便抗原、条虫Taenia属糞便抗原、条虫Dipylidium属糞便抗原、およびパルボウイルス糞便抗原からなる群から選択される糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;ならびに(v)パルボウイルス糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、鉤虫糞便抗原、条虫Taenia属糞便抗原、条虫Dipylidium属糞便抗原、およびGiardia属糞便抗原からなる群から選択される糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体。いくつかの実施形態において、鉤虫はAnyclostoma属であり、回虫はToxocara属であり、鞭虫はTrichuris属である。他の実施形態において、鉤虫はAncylostoma caninumまたはAncylostoma tubaeformeであり;回虫はToxocara canisまたはToxocara catiであり;鞭虫はTrichuris vulpisまたはTrichuris felisであり;Giardia属はGiardia lambliaであり;パルボウイルスはネコパルボウイルスまたはイヌパルボウイルスである。したがって、糞便試料を、多重化を可能にするために、2つ以上の抗体、3つ以上の抗体、4つ以上の抗体、5つ以上の抗体、6つ以上の抗体、7つ以上の抗体、または8つ以上の抗体と接触させる。
【0021】
上記方法のさらなる実施形態において、ステップ(d)の診断することは、さらに以下を含む:回虫抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、回虫感染;鞭虫抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、鞭虫感染;鉤虫抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、鉤虫感染;Giardia属抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、Giardia属感染;およびパルボウイルス抗体-糞便抗原複合体が存在する場合には、パルボウイルス感染。
【0022】
いくつかの実施形態において、複合体の存在または非存在を検出するステップはさらに、複合体の少なくとも1つと結合する1つまたは複数のレクチンを供給するステップを含む。いくつかの実施形態において、レクチンを、検出可能に標識し、または固体支持体上に固相化することができる。他の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体は、検出可能に標識されているか、または固体支持体上に固相化されている。いくつかの実施形態において、第1、第2、および第3の抗体を、固体支持体上に固相化することができ、レクチンを検出可能に標識することができる。他の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体を、検出可能に標識することができ、レクチンを固体支持体上に固相化することができる。
【0023】
方法はまた、条虫での環境汚染について試験し、それらを識別するために用いられ得る。デバイスにより条虫について試験され得る環境試料には、庭、庭園、砂場、遊び場を含む居住環境からの土壌、分解物質、または糞便物質が挙げられるが、それらに限定されない。試験場所にはまた、公園、海辺、森、農場、またはイヌ、ネコ、もしくは条虫の他の哺乳動物宿主由来の糞便物質に曝された他の場所が挙げられ得る。屋内および屋外のネコ用のトイレからの糞もまた試験され得る。
【0024】
なお別の態様において、本発明は、本発明の方法の1つまたは複数のステップを行うためのキットを含む。キットは、任意で、例えば、本発明のデバイス、および本発明の組成物の1つまたは複数、および本発明の方法を行うための使用説明書を含み得る。キットはさらに、任意で、例えば、デバイスの一部として用いられ、および/または本方法を行うのに用いられる、1つまたは複数の指示薬、1つまたは複数の抗体標識化合物、1つまたは複数の抗体、1つまたは複数の抗原捕獲試薬、1つまたは複数の阻害剤、および1つまたは複数の洗浄試薬を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例1Aに示されているように、本発明の方法に従うことによる、虫抽出物、および条虫感染が陰性または陽性であるイヌ由来の糞便抽出物に対する抗体ADX131のOD決定値を示す図である。陽性=T.pisiformis感染イヌ由来の糞便抽出物(FEX);陰性=T.pisiformisに感染していないイヌ由来のFEX;虫抽出物=T.pisiformis虫抽出物(WE)。
【
図2】実施例1Aに示されているように、本発明の方法に従うことによる、虫抽出物、および条虫感染が陰性または陽性であるイヌ由来の糞便抽出物に対する抗体ADX132のOD決定値を示す図である。陽性=T.pisiformis感染イヌ由来の糞便抽出物(FEX);陰性=T.pisiformisに感染していないイヌ由来のFEX;虫抽出物=T.pisiformis虫抽出物(WE)。
【
図3】実施例1Bに示されているように、本発明の方法に従うことにより、条虫に感染したイヌの糞便抽出物を用いてELISAアッセイが行われたマイクロタイタープレートを示す図である。H11は陰性対照である。A5、B6、B8、E6、およびE10は、5匹のT.pisiformis陽性イヌ由来の糞便抽出物である。他のウェルのそれぞれは、鉤虫Ancylostoma caninum感染イヌ、または回虫Toxocara canis感染イヌ、または鞭虫Trichuris vulpis感染イヌ、またはD.caninum感染イヌのうちの1匹に由来の糞便抽出物を有する。
【
図4】マイクロタイタープレート上にコーティングされた抗体ADX131、および患者試料の添加後に適用されるADX132-HRPコンジュゲートを用いる、サンドイッチ糞便抗原ELISAアッセイの特異度を示す図である。アッセイは、実施例1Bに論じられているように、D.caninum WE、T.pisiformis WE、T.crassiceps WE、T.taeniaeformis WE、T.taeniaeformis E/S、加えて、D.caninum陽性イヌ由来のFEX、D.caninum陰性イヌ由来のFEX、D.caninum陽性ネコ由来のFEX、D.caninum陰性ネコ由来のFEX、T.pisiformis陽性イヌ由来のFEX、T.pisiformis陰性イヌ由来のFEX、3匹のT.taeniaeformis陽性ネコの集合に由来のFEX、3匹のT.taeniaeformis陰性ネコの集合に由来のFEX、鉤虫Ancylostoma caninum WE、回虫Toxocara canis WE、および鞭虫Trichuris vulpis WEにおいて実行された。
【
図5】マイクロタイタープレート上にコーティングされた抗体ADX185を用い、続いて、患者試料を加え、その後、T.taeniaeformis WEウサギpAb-HRPコンジュゲートを加える、サンドイッチ糞便抗原ELISAアッセイの感度を示す図である。アッセイは、実施例2B(パートB)に論じられているように、7匹のT.taeniaeformis陽性ネコ、および3匹のT.taeniaeformis陰性ネコに由来のFEXにおいて実行された。
【
図6】マイクロタイタープレート上にコーティングされた抗体ADX184、および患者試料の添加後に適用されるADX193-HRPコンジュゲートを用いる、サンドイッチ糞便抗原ELISAアッセイの特異度を示す図である。ADX193は、下に記載されたT.taeniaeformis E/SマウスmAbである。アッセイは、実施例2B(パートB)に論じられているように、D.caninum WE、T.pisiformis WE、T.crassiceps WE、T.taeniaeformis WE、T.taeniaeformis E/S、加えて、D.caninum陽性イヌ、D.caninum陰性イヌ、D.caninum陽性ネコ、D.caninum陰性ネコ、T.pisiformis陽性イヌ、Taenia pisiformis陰性イヌ、3匹のT.taeniaeformis陽性ネコの集合、および3匹のT.taeniaeformis陰性ネコの集合に由来の糞便抽出物において実行された。
【
図7】実施例2C(パートA)に論じられているように、6匹のT.taeniaeformis陽性ネコ由来の糞便抽出物、4匹のT.taeniaeformis陰性ネコ由来の糞便抽出物、および1つのT.taeniaeformis E/Sタンパク質試料において実行されたADX184/ADX193-HRP ELISAアッセイの結果を示す図である。
【
図8】マイクロタイタープレート上にコーティングされたADX191およびHRPにコンジュゲートされたADX194を用いた糞便抗原ELISAアッセイの結果を示す図である。どちらのマウスmAbも3ug/mlの濃度で用いられた。このELISAは、実施例2Dに論じられているように、6匹のT.taeniaeformis陽性ネコ由来の糞便抽出物、4匹のT.taeniaeformis陰性ネコ由来の糞便抽出物、および1つのT.taeniaeformis E/Sタンパク質試料において実行された。
【
図9】プレート上にコーティングされたD.caninum WEウサギpAbを用い、5ug/mlでのFEXと接触させ、その後、3ug/mlでのD.caninum WEウサギpAb-HRPコンジュゲートと接触させ、その後、発色基質と接触させる、ELISAアッセイの結果を示す図である。D.caninum WEウサギpAb ELISAアッセイは、実施例3B(パートA)に論じられているように、数個の蠕虫種由来の虫抽出物:D.caninum WE、Taenia pisiformis WE、T.crassiceps WE、鉤虫Ancylostoma caninum WE、回虫Toxocara canis WE、鞭虫Trichuris vulpis WEにおいて実行された。
【
図10】実施例3E(パートA)に論じられているように、D.caninum WEマウスpAbをプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、D.caninum WEマウスpAb-HRPコンジュゲートと接触させ、その後、発色基質と接触させる、糞便抗原ELISAアッセイの結果を示す図である。アッセイは、実施例3E(パートA)に論じられているように、4匹のD.caninum陽性イヌおよび3匹のD.caninum陽性ネコ;Giardia属とT.taeniaeformisに感染した1匹のD.caninum陰性ネコ、T.taeniaeformisに感染した1匹のD.caninum陰性ネコ、およびToxocara canisとTaenia pisiformisに感染した1匹のD.caninum陰性イヌに由来の糞便抽出物において実行された。
【
図11】プレート上にコーティングされたマウスmAb ADX226を用い、FEXと接触させ、その後、マウスmAb ADX251-HRPコンジュゲート、続いて、発色基質と接触させた、第1の糞便抗原ELISAアッセイの結果を示す図である。アッセイは、実施例3F(パートA)に論じられているように、3匹のD.caninum陽性イヌ、5匹のD.caninum陰性イヌ、3匹のD.caninum陽性ネコ、および1匹のD.caninum陰性ネコに由来の糞便抽出物において実行された。
【
図12】プレート上にコーティングされたマウスmAb ADX251を用い、FEXと接触させ、その後、マウスmAb ADX227-HRPコンジュゲート、続いて、発色基質と接触させた、第2の糞便抗原ELISAアッセイの結果を示す図である。アッセイは、実施例3F(パートA)に論じられているように、3匹のD.caninum陽性イヌ、5匹のD.caninum陰性イヌ、3匹のD.caninum陽性ネコ、および1匹のD.caninum陰性ネコに由来の糞便抽出物において実行された。
【
図13】プレート上にコーティングされたマウスmAb ADX251を用い、FEXと接触させ、その後、D.caninum WEウサギpAb-HRPコンジュゲート、続いて、発色基質と接触させた、第3の糞便抗原ELISAアッセイの結果を示す図である。アッセイは、実施例3F(パートA)に論じられているように、3匹のD.caninum陽性イヌ、5匹のD.caninum陰性イヌ、3匹のD.caninum陽性ネコ、および1匹のD.caninum陰性ネコに由来の糞便抽出物において実行された。
【
図14】実施例3G(パートA)に論じられているように、D.caninum WEマウスmAb ADX224、ADX225、ADX226、およびADX227を個々にプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、D.caninum WEウサギpAb-HRPコンジュゲート、続いて発色基質と接触させる、第1のセットの糞便抗原ELISAアッセイ設定の結果を示す図である。
【
図15】実施例3G(パートA)に論じられているように、D.caninum WEマウスmAb ADX226およびADX227を個々にプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、D.caninum WEマウスmAb-HRPコンジュゲート ADX227-HRP、続いて、発色基質と接触させる、第2のセットの糞便抗原ELISAアッセイ設定の結果を示す図である。
【
図16】実施例3H(パート1)に論じられているように、D.caninum WEマウスmAb ADX226と結合する糞便抗原がグリコシル化されているかどうかを、市販キット(Vector Laboratories、Burlingame、CA製のビオチン化レクチンキットI、II、およびIII)を用いて、21個の異なるレクチンの糞便抗原に結合する能力を試験することにより決定した結果を示す図である。
【
図17】実施例3H(パート2)に論じられているように、抗体D.caninum WEウサギpAbと結合する糞便抗原がグリコシル化されているかどうかを、市販キット(Vector Laboratories、Burlingame、CA製のビオチン化レクチンキットI、II、およびIII)を用いて、糞便抗原に結合する能力について21個の異なるレクチンを試験することにより決定した結果を示す図である。
【
図18】実施例3H(パート3)に論じられているように、D.caninum WEウサギpAbおよびADX187(D.caninum WEマウスmAb)と結合する糞便抗原がグリコシル化されているかどうかを、市販キット(Vector Laboratories、Burlingame、CA製のビオチン化レクチンキットI、II、およびIII)を用いて、糞便抗原に結合する能力について21個の異なるレクチンを試験することにより決定した結果を示す図である。
【
図19】実施例4に論じられているように、一連のT.p.、T.taeniaeformis、D.c.、鉤虫、回虫、鞭虫、およびGiardia属のELISAアッセイが、様々な感染したイヌおよびネコの糞便抽出物を用いて行われた、マイクロタイタープレートを示す図である。以下の源由来の糞便抽出物が、ELISAアッセイにおいて試験された:T.pisiformis陽性イヌ(
図19、列1)、T.taeniaeformis感染ネコ(
図19、列2)、D.caninum感染イヌ(
図19、列3)、D.caninum感染ネコ(
図19、列4)、鉤虫A.caninum感染イヌ(
図19、列5)、鉤虫A.tubaeforme感染ネコ(
図19、列6)、回虫T.canis感染イヌ(
図19、列7)、回虫T.cati感染ネコ(
図19、列8)、鞭虫T.vulpis感染イヌ(
図19、列9)、鞭虫T.felis感染ネコ(
図19、列10)、Giardia属感染イヌ(
図19、列11)、Giardia属感染ネコ(
図19、列12)、および2匹のパルボウイルス感染ネコ(
図19、列13および14)。
図19において、列1~12は、単一のマイクロタイタープレートの画像であり、列13および14は別の異なるマイクロタイタープレートの画像である。
【
図20】実施例5に論じられているように、Taenia属由来、例えば、T.pisiformis、T.taeniaeformis、およびDipylidium属由来、例えば、D.caninumなどの2つまたは3つの条虫種を検出する能力がある一連のELISAアッセイが、様々な感染したイヌおよびネコ由来の糞便抽出物を用いて行われた、マイクロタイタープレートを示す図である。以下の源由来の糞便抽出物が、ELISAアッセイにおいて試験された:4匹のT.pisiformis陽性イヌ(
図20、列1、4、7、および10)、4匹のT.taeniaeformis感染ネコ(
図20、列2、5、8、および11)、2匹のD.caninum感染イヌ(
図20、列3および6)、2匹のD.caninum感染ネコ(
図20、列9および12)。
図20において、列1~12は単一のマイクロタイタープレートの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
I.序論
本発明は、一般的に、哺乳動物から得られた糞便試料において条虫種を検出し、条虫種間を識別するための方法、デバイス、およびキットに向けられる。本発明は、Taenia pisiformis、Taenia taeniaeformis、およびDipylidium caninumを含む様々な条虫種由来の条虫糞便抗原に関する。特に、本発明は、条虫感染を検出し、2つ以上の条虫種間を識別するための方法、デバイス、およびキットに関する。
【0027】
本発明は、既存の顕微鏡観察技術に代わる優れた手段を提供する。これは、本発明が、以下である、哺乳動物由来の試料において条虫の存在または非存在を検出するためのデバイス、キット、および方法を提供するという理由により言えることである:(1)使いやすさと、一貫して信頼できる結果を生じることの両方であること;(2)哺乳動物が1つもしくは複数の条虫種ならびに/または鉤虫、回虫、鞭虫、および/もしくはイヌ糸状虫などの他の蠕虫の寄生体に感染しているかどうかに関わらず、哺乳動物において特定の条虫種の非存在または存在を確認することができること;(3)感染宿主の糞便中に卵子および片節が初めて現れる時点の前に条虫を検出することができること;ならびに(4)異なる条虫種、加えて、回虫、鞭虫、および鉤虫感染などの蠕虫の寄生体の間を識別することができること。
【0028】
本発明は、条虫感染に特異的な組成物の予期せぬ性質の発見に一部、基づいている。具体的には、条虫特異的ポリペプチドに対して産生された(または条虫全体の抽出物、条虫のE/S材料、条虫の虫洗浄液、もしくは条虫のTCA可溶性材料に対して産生された)抗体が、哺乳動物において異なる種由来の条虫抗原を捕獲し、検出し、およびそれらの間を識別するために用いられ得ることが決定された。各型の条虫種に対する特異性は、驚くべきことであり、なぜなら、条虫は、条虫綱の動物と関連しており、これらの条虫種のいずれか1つから単離されたタンパク質に対して産生された抗体は、その他の条虫種、宿主抗原、または他の宿主成分の1つまたは複数と交差反応することが予想されるものであるからである。
【0029】
卵および片節が糞便中で目に見える前に、哺乳動物において条虫抗原を捕獲および検出するためにこの抗体を用いることができることが、さらに決定された。感染後すぐに、かつ感染した哺乳動物の糞便中のいくらかの卵子の出現前に、条虫を検出するこの能力は驚くべきことであり、卵子および片節は一般的に、宿主が感染してから数週間後までは、感染宿主の糞便中に現れないからである。
【0030】
したがって、本発明は、哺乳動物において異なる条虫種を特異的に捕獲し、検出し、それらの間を識別するための、抗体および/またはその断片を用いる方法、デバイス、およびキットを含む。1つまたは複数の他の条虫種または異なる虫型も存在する場合でさえも、特定の条虫種を検出および診断する本発明の能力は、その条虫、加えて、回虫、鞭虫、および/または鉤虫などの他の虫を哺乳動物から取り除くための処置を最適に選択する機会を、哺乳動物の介護者に与える。さらに、場合によっては、卵および片節が糞便に現れる前に条虫を検出する本発明の能力は、哺乳動物の病気が重くなる前に、介護者はそのような処置を開始する可能性をもたらす。糞便における卵子および片節の出現前の治療介入はまた、その外寄生が他の動物またはヒトに広がる可能性を大いに低下させ、または排除するだろう。
【0031】
II.用語の定義および使用
用語「本発明の組成物」は、本明細書で明確に記載され、暗に包含され、または別なふうに開示されている本発明の方法を行うことにより、哺乳動物から得られた試料において条虫の存在または非存在を検出するために用いることができる、核酸、ポリペプチド、糖タンパク質、糖鎖、糖脂質、抗体、ならびにそれらの核酸、ポリペプチド、糖タンパク質、糖鎖、糖脂質、および抗体のうちの1つまたは複数を含む混合物、ならびに1つまたは複数の他の化合物の全部を指す。
【0032】
条虫を本発明により検出することができる、「哺乳動物由来の試料」は、条虫抗原であることができる、全ての身体的成分およびその抽出物、例えば、任意の流体、固体、細胞、または組織を含む。したがって、例示的な試料には、糞便、乳、全血およびその一部分、例えば、血清が挙げられるが、それらに限定されず、さらに、組織抽出物、例えば、乳腺、腸、肝臓、心臓、肺、食道、脳、筋肉、および眼由来の組織が挙げられる。試料は、哺乳動物から直接、採取され得、または試料は、哺乳動物に接触している何かから採取され得る。例えば、試料は、哺乳動物からの新鮮なまたは腐敗した糞便の落下物であり得る。別の例として、試料には、例えば、糞便などの哺乳動物によって置き去りにされ得る身体的成分と混合され得る、土壌、泥、砂、植物性材料、または任意の他の材料が挙げられ得る。そのようなものとして、試料は、森、農場、または居住環境、例えば、トイレ、庭、庭園、砂場、遊び場、公園、および海辺からの土壌、分解物質、または糞便物を含む、環境的源から採取され得る。試料の起源または内容を問わず、この試料は、本明細書で、「試料」、「哺乳動物試料」、「試験試料」、または「試験用試料」と呼ばれる場合がある。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「核酸」は、「遺伝子」、「DNA」、「cDNA」、「EST」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリ核酸」、「RNA」、および「mRNA」と同義であり、したがって、それらと交換可能に用いられる。核酸は、二本鎖型の場合もあるし、一本鎖型の場合もある。さらに、核酸は、例えば条虫全体またはその一部分から、天然で単離されるか、または、それは、組換え宿主生物体においてか、もしくは当業者に知られた任意の他の人工的手段によるかのいずれか、例えば、PCRに基づいた技術を用いること、その核酸を合成するトランスジェニック生物体を作製すること、DNA合成機を用いること、もしくは任意の別の分子に基づいた技術により、人工的に合成される。
【0034】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基の重合体を指すために本明細書で交換可能に用いられる同義語である。本発明のポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質は、例えば条虫全体から、もしくは条虫の一部分から天然で単離され得るか、または組換え宿主生物体においてか、もしくは当業者に知られた任意の他の人工的手段によるかのいずれかで、人工的に合成され得るかのいずれかであり得る。本発明のポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質は、グリコシル化され得る。
【0035】
用語「抗体」または「本発明の抗体」は、特定の虫についての1つまたは複数の抗原と、その他の虫由来の抗原と結合することなく、特異的に結合することができる任意の抗体を指す。例えば、1つの条虫種に対する抗体は、その条虫種の抗原と特異的に結合することができるが、異なる条虫種由来のいかなる抗原とも結合することができない。本発明の抗体は、本発明の1つまたは複数の免疫原性ポリペプチド、糖タンパク質、糖鎖、または糖脂質に対して産生され得る。他に明記されない限り、本発明の抗体は2つ以上の異なる型の抗体の混合物を含み得ることは理解されるべきである。例えば、抗体は、2つの型の抗体の混合物であり得、2つの型の一方が、1つの特定の抗原と特異的に結合し、2つの型の他方が、ある他の抗原と特異的に結合する。
【0036】
本明細書で用いられる場合、用語「第1の抗体」は、第1の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫種由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない1つまたは複数の抗体を意味する。
【0037】
本明細書で用いられる場合、用語「第2の抗体」は、第2の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫種由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない1つまたは複数の抗体を意味する。
【0038】
本明細書で用いられる場合、用語「第3の抗体」は、第3の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫種由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない1つまたは複数の抗体を意味する。
【0039】
「本発明の免疫原性ポリペプチド」、およびより簡単に、「本発明のポリペプチド」は、本発明の抗体が産生され得る免疫原である。全ての「本発明のポリペプチド」は、免疫原性であり、したがって、本発明の抗体を生じさせるために宿主動物において免疫応答を誘発するのに用いられ得る。他に明記されない限り、本発明のポリペプチドが、複数の成分の混合された組成物のうちの1つの成分であり得ることは、理解されるべきである。
【0040】
「免疫原」は、その作用剤に曝されている動物において免疫応答を誘発する能力がある、例えば、本発明の免疫原性抽出物、ポリペプチド、糖タンパク質、糖鎖、または糖脂質などの任意の作用剤である。
【0041】
本明細書で用いられる場合、用語「条虫」は、Taenia属およびDipylidium属を含む腸内条虫などの扁形動物の虫の寄生体を指す。したがって、本明細書で用いられる場合、用語「条虫」は、条虫綱(cestoda)の全体を指さず、むしろ、擬葉目(pseudophyllidea)を含む真正条虫亜綱(eucestoda)を指す。条虫の代表的例には、Taenia pisiformis、Taenia taeniaeformis、Taenia crassiceps、Dipylidium caninum、Diphyllobothrium mansonoide、Diphyllobothrium latum、およびSpirometra erinaceieuropaeiが挙げられる。
【0042】
「条虫糞便抗原」または「条虫由来の糞便抗原」は、条虫感染を有する哺乳動物の糞便中に存在し、本発明の抗体の1つまたは複数と特異的に結合することができる、任意の条虫産物である。例えば、条虫糞便抗原は、本発明のポリペプチドの1つまたは複数であり得るが、それらに限定されない。
【0043】
本明細書で用いられる場合、用語「回虫」は、Toxocara属、Toxascaris属、Baylisascaris属、Ascaridia属、Parascaris属、Ascaris属、Anisakis属、およびPseudoterranova属を含む、Ascaridida目の腸内回虫などの蠕虫を指す。したがって、例示的な回虫には、Toxocara canis、Toxocara cati、およびToxascaris leoninaが挙げられる。このように、本明細書で用いられる場合、用語「回虫」は、線形動物門(Nematoda)の全体を指すものではない。したがって、「回虫」は、Ancylostoma属、Uncinaria属、Necator属、Trichuris属、Wuchereria属、Brugia属、またはDirofilaria属のいかなるメンバーも含まない。
【0044】
「回虫糞便抗原」または「回虫由来の糞便抗原」は、回虫感染を有する哺乳動物の糞便中に存在し、本発明の抗体の1つまたは複数と特異的に結合することができる、任意の回虫産物である。例えば、回虫糞便抗原は、DIV6728の新規のC末端7kDアイソフォーム(T.canisの排泄性/分泌性タンパク質であり、イヌが初めてT.canisに感染してから早くも38日後にT.canis感染イヌの糞便中に存在する)であり得るが、それに限定されない。したがって、「回虫糞便抗原」は、米国特許第7,951,547号に論じられているようにイヌ糞便中に観察されているDIV6728のこの新規のC末端7kDアイソフォーム(本明細書では「Copro6728」と呼ぶ)であり得る。
【0045】
本明細書で用いられる場合、用語「鞭虫」は、Trichuris属およびTrichocephalus属の腸内鞭虫などの蠕虫を指す。したがって、例示的な鞭虫には、Trichuris vulpis、Trichuris campanula、Trichuris serrata、Trichuris felis、Trichuris suis、Trichuris trichiura、Trichuris discolor、およびTrichocephalus trichiurisが挙げられる。さらに、本明細書で用いられる場合、用語「鞭虫」は、線形動物門の全体を指すものではない。例えば、「鞭虫」は、Ancylostoma属、Uncinaria属、Necator属、Toxocara属、Toxascaris属、Ascaris属、Wuchereria属、Brugia属、またはDirofilaria属のいかなるメンバーも含まない。
【0046】
「鞭虫糞便抗原」または「鞭虫由来の糞便抗原」は、鞭虫感染を有する哺乳動物の糞便中に存在し、本発明の抗体の1つまたは複数と特異的に結合することができる、任意の鞭虫産物である。例えば、鞭虫糞便抗原は、「DIV6901」または「DIV6902」であり得るが、それらに限定されず、以下、この特定の抗体を、米国特許第7,951,547号に論じられているように「抗DIV6901」または「抗DIV6902」と呼ぶ。
【0047】
本明細書で用いられる場合、用語「鉤虫」は、Ancylostoma属、Necator属、およびUncinaria属の腸内鉤虫などの蠕虫を指す。したがって、例示的な鉤虫には、Ancylostoma caninum、Ancylostoma braziliense、Ancylostoma duodenal、Ancylostoma ceylanicum、Ancylostoma tubaeforme and Ancylostoma pluridentatum、Necator americanus、およびUncinaria stenocephalaが挙げられる。さらに、本明細書で用いられる場合、用語「鉤虫」は、線形動物門の全体を指すものではない。例えば、「鉤虫」は、Trichuris属、Trichocephalus属、Toxocara属、Toxascaris属、Ascaris属、Wuchereria属、Brugia属、またはDirofilaria属のいかなるメンバーも含まない。
【0048】
「鉤虫糞便抗原」または「鉤虫由来の糞便抗原」は、鉤虫感染を有する哺乳動物の糞便中に存在し、本発明の抗体の1つまたは複数と特異的に結合することができる、任意の鉤虫産物である。例えば、鉤虫糞便抗原は、ASP5の新規のN末端28kDアイソフォーム(Ancylostoma属の排泄性/分泌性タンパク質であり、イヌが初めてAncylostomaに感染してから早くも9日後にAncylostoma属感染イヌの糞便中に存在する)であり得るが、それに限定されない。したがって、「鉤虫糞便抗原」は、米国特許第7,951,547号に論じられているようにイヌ糞便中に観察されているASP5のこの新規のN末端28kDアイソフォーム(本明細書では「CoproASP5」と呼ぶ)であり得る。
【0049】
本明細書で言及される場合、用語「Giardia属」は、Giardia属の原生動物を指す。したがって、例示的なGiardia種には、Giardia intestinalisとしても知られたGiardia lambliaが挙げられる。
【0050】
「Giardia属糞便抗原」または「Giardia属の糞便抗原」は、Giardia属感染を有する哺乳動物の糞便中に存在し、本発明の抗体の1つまたは複数と特異的に結合することができる、任意のGiardia属産物である。
【0051】
「レクチン」は、特定の単糖またはオリゴ糖構造(糖鎖)を認識し、およびそれに結合するタンパク質である。レクチンは、通常、糖鎖ユニットについて2つ以上の結合部位を含有する。ある特定のレクチンの糖鎖結合特異性は、その糖鎖に結合するアミノ酸残基によって決定される。レクチンの糖鎖への結合強度は、分子相互作用の数と共に増加し得る。レクチンの糖鎖との結合の解離定数は約10-5~10-7のKdである。レクチンは、当技術分野において知られた任意の型の標識、例えば、蛍光、化学発光、放射性、酵素、コロイド金属、放射性同位元素、および生物発光の標識で標識することができる。
【0052】
本発明の実施形態において、用いられるレクチンは、条虫糞便抗原に特異的に結合するレクチンである。本発明の実施形態において、O-グリコシル化タンパク質に特異的に結合するレクチンが本発明において有用である。そのようなレクチンには、例えば、ECLレクチン(Erythina cristagalli)、GSL I(Griffonia Simplicifolia Lectin I)、GSL II(Griffonia Simplicifolia Lectin II)、ジャカリン(jacalin)、LCAレクチン(Lens culinaris)、RCA 123(Ricinus Communis)、ならびにPSAレクチン(Phaseolus vulgaris白血球凝集素)、WGA(コムギ胚芽凝集素)、およびsWGA(スクシニル化コムギ胚芽凝集素)が挙げられる。レクチンは、例えばVector Laboratories、Burlingame、CA、USAから市販されている。
【0053】
ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、またはサルの条虫抗原上の糖鎖と特異的に結合するレクチンを用いることができる。
【0054】
「に特異的な」、「特異的に結合する」、および「安定的に結合する」とは、例えば本発明の抗体、ポリペプチド、またはオリゴヌクレオチドなどの本発明の特定の組成物が、少なくとも1つの他の作用剤に対するより高い親和性で、1つまたは複数の他の作用剤を認識および結合することを意味する。一例として、本発明の抗体は、その抗体が、条虫ではない寄生虫由来の任意の他の抗原に対するより高い親和性で、それらの回虫抗原を認識し、それらと結合することができる時はいつでも、条虫抗原に「特異的である」、「特異的に結合する」、および「安定的に結合する」と言われる。そのような結合特異性は、当技術分野においてよく知られた方法論、例えば、ELISAまたはラジオイムノアッセイ(RIA)を用いて試験することができる。本発明の特定の組成物の結合特異性に関して観察された情報に基づいて、本発明の方法は、その組成物が特定の作用剤と結合するのを可能にする(および、したがって、そのようなそれとの結合の検出を可能にする)条件下だが、それらの条件が維持される間、他の作用剤に有意に結合することを可能にしない条件下で行うことができる。一例として、本発明の方法は、本発明の抗体が、特定の試料に存在するある種の条虫の抗原のうちの1つまたは複数の抗原と結合するのを可能にする(および、したがって、そのようなそれらとの結合の検出を可能にする)が、その試料に存在し得る他の条虫種由来のいかなる抗原とも他の蠕虫種由来のいかなる抗原とも有意に結合するのを可能にしない条件下で、行うことができ、それにより、条虫の種と、回虫、鞭虫、および鉤虫との間の識別を可能にする。
【0055】
「条虫を検出すること」は、例えば、本発明のポリペプチド、抗体、および核酸のうちの1つもしくは複数、または1つもしくは複数の条虫抗原を含む、1つまたは複数の条虫特異的産物を検出することを意味する。哺乳動物由来の試料中の1つまたは複数のそのような条虫産物の存在は、任意の条虫生物体全体またはその卵子もまたその試料に存在するかどうかに関わらず、その哺乳動物が条虫感染を有することを示している。逆に、哺乳動物由来の試料中の1つまたは複数のそのような条虫産物の非存在は、その哺乳動物が、条虫感染を有しないことを示している。
【0056】
「処置」は、患者への有意な損傷を引き起こすことなく、寄生虫(蠕虫)または他の体内寄生体を、それらを制御するか、衝撃を与えるか、もしくは殺害するかのいずれかにより身体から低減もしくは排除し、および/または寄生虫もしくは他の体内寄生体の感染を伝染させることができる中間宿主、例えば、ノミなどの昆虫による外寄生を低減もしくは排除する、任意の適切な投与経路による患者へ治療剤の投与を意味する。
【0057】
III 本発明の抗体
本発明はさらに、本発明の1つまたは複数のポリペプチドの全部または一部に対して産生され、それらに特異的に結合する、抗体およびその抗原結合断片を含み、また、前記抗体およびその抗原結合断片を含む組成物も含む。哺乳動物から得られた試料と接触した時、これらの抗体および抗原結合断片は、特定の蠕虫抗原と特異的に結合することができる。例えば、条虫抗体および抗原結合断片は、試料に存在する条虫抗原に特異的に結合することができるが、試料に存在する可能性がある回虫、鉤虫、または鞭虫などの他の虫由来のいかなる抗原にも特異的に結合することができない。本発明の抗体は、1つもしくは複数の条虫抗原を捕獲するためにのみ、1つもしくは複数の条虫抗原を検出するためにのみ、またはより好ましくは、1つもしくは複数の条虫抗原を捕獲することと検出することの両方のために、用いられるのに適している。
【0058】
本発明の抗体は、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを含む任意の抗体クラスに属し得、当業者に知られた様々な技術のいずれかにより調製され得る。(例えば、Dean、Methods Mol.Biol. 80:23~37(1998);Dean、Methods Mol.Biol. 32:361~79(1994);Baileg、Methods Mol.Biol. 32:381~88(1994);Gullick、Methods Mol.Biol. 32:389~99(1994);Drenckhahnら、Methods Cell.Biol. 37:7~56(1993);Morrison、Ann.Rev.Immunol. 10:239~65(1992);Wrightら Crit.Rev.Immunol. 12:125~68(1992);HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988);ならびにMaking and Using Antibodies:A Practical Handbook、HowardおよびKaser編、CRC Press(2006)参照、それぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられている。)
【0059】
一つの技術において、本発明のポリペプチドが、例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ヤギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ロバ、イヌ、ネコ、ニワトリ、またはウマなどの宿主動物へ導入される。ポリペプチドを担体と会合させることにより、および/または宿主をアジュバントに曝すことにより、宿主動物において増強した免疫応答が誘発され得るが、ポリペプチドが担体と会合することも、宿主がアジュバントに曝されることも本発明は必要としないことは、理解されるべきである。この目的として用いられ得る例示的な担体は、ウシ血清アルブミン、ウシチログロブリン、およびダイズトリプシン阻害剤である。例示的なアジュバントには、フロイント完全または不完全アジュバント、およびMDL-TDMアジュバントが挙げられる。ポリペプチドがそのような担体と会合されているか会合されていないか、または宿主がアジュバントに曝されているか曝されていないかに関わらず、任意で、追加免疫が、その後に1回または複数回、採血されることになっている宿主細胞に関して行われ得る。その後、ポリペプチドに特異的に結合するポリクローナル抗体(pAb)が、1回または複数回の採血から得られた抗血清から精製され得る。そのような精製は、例えば、ポリペプチドを固体支持体に会合させることを含む、アフィニティクロマトグラフィー技術を用いることにより、達成され得る。そのようなアフィニティクロマトグラフィー技術は、当業者によりよく知られている。
【0060】
数個の実施形態において、本発明の条虫抗体は、下で記載されているように、ウサギにおいて、条虫全体の抽出物、条虫のE/S材料、条虫の虫洗浄液、または条虫のTCA可溶性材料でその宿主動物を免疫することにより産生される抗体である。
【0061】
本発明の抗体は、任意で、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(mAb)、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、およびその断片であり得ることもまた理解されるべきである。関心対象となるポリペプチドに特異的であるモノクローナル抗体は、例えば、関心対象となるポリペプチドに対する望ましい特異性を有する抗体を生成する細胞株を調製することにより、獲得され、および精製され得る。この種の細胞株は、前に記載されているように、以前にポリペプチドで免疫されている宿主動物から単離される特定の型の細胞(例えば、脾臓細胞)に由来し得る。そのような場合、その後、これらの細胞は、例えば、当業者に知られた様々な融合技術のいずれか1つを行うことにより、それらを骨髄腫細胞と融合することにより、不死化することができる。一つの例示的な技術において、免疫化宿主動物由来の細胞は、それらの融合パートナー、例えば骨髄腫細胞と、界面活性物質の存在下で短い期間、共インキュベートされ、その後、ハイブリッド細胞の増殖を支援する(しかしながら、骨髄腫融合パートナーの増殖を支援しない)培地上にプレーティングされる。そのような選択は、例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT)を用いることにより、達成され得る。ハイブリッド細胞が選択中に出現した時、おそらく、選択工程を開始してから1週間または2週間後、単一のハイブリッドコロニー(およびそれらの上清)を、宿主動物が免疫された1つまたは複数のポリペプチドに結合するそれらの能力について試験される。最適な結合特異性を有するハイブリッドコロニーは、モノクローナル抗体が単離され得る最良の候補を表す。これらのモノクローナル抗体は、例えば、これらのコロニーが増殖する上清(すなわち、培地)から、当業者に知られた様々な技術のいずれか1つを用いることにより、直接的に単離され得る。
【0062】
本発明の抗体はまた、一本鎖抗体(scFv)、または抗体の抗原結合断片であり得る。抗体の抗原結合断片は、無傷抗体の抗原結合部位または可変領域を含む、無傷抗体の一部分であり、一部分は、無傷抗体のFc領域の重鎖定常ドメインを含まない。抗体断片の例には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、およびFv断片が挙げられる。動物または哺乳動物細胞からの産生および精製に加えて、抗体、抗体断片、または非抗体スキャフォールドが、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、または細菌ディスプレイを含む、様々なインビトロテクノロジーに基づいて選択することができる。
【0063】
二次抗体を含む抗体は、当技術分野において知られた任意の型の標識、例えば、蛍光、化学発光、放射性、酵素、コロイド粒子、放射性同位元素、および生物発光の標識で標識され得る。本発明の様々な実施形態において、本発明の抗体の1つまたは複数が、酵素、コロイド粒子、放射性核種、またはフルオロフォアで標識される。粒子性標識は、例えば、抗体にコンジュゲートされる、着色ラテックス粒子、色素ゾル、または金ゾルであり得る。
【0064】
IV.本発明の方法、デバイス、およびキット
A.本発明のデバイスおよびキット
本発明は、一態様において、試料から1つまたは複数の条虫抗原の存在または非存在を検出するデバイスであり、固体支持体を含み、固体支持体が、(a)第1の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;(b)第2の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および(c)第3の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第2の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体からなる群から選択される1つまたは複数の抗体;ならびに任意で、(d)Giardia属糞便抗原、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、および/または鉤虫糞便抗原の1つまたは複数の型をその上に固相化しており、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、および鉤虫糞便抗原の1つまたは複数の型が抗体と特異的に結合する。全体として参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第7,951,547号参照。デバイスは、哺乳動物由来の試料において、条虫糞便抗原を特異的に結合し、任意のGiardia属、回虫、鞭虫、および鉤虫の抗原から単離することを助けるように設定される。
【0065】
一態様において、デバイスは、固体支持体を含み、本発明の1つまたは複数の抗体が固体支持体上に固相化されている。固体支持体は、例えば、マイクロタイタープレートのウェルの内部、底部表面、マイクロ粒子、マイクロ流体デバイスのチャネル、カートリッジ、膜、またはラテラルフローデバイスの一部として含まれる基板であり得るが、それらに限定されない。例示的なマイクロタイタープレートは、Immulon 1B 96ウェルプレート(Milford、MAのThermo Scientificから市販されている)であるが、Immulon 1B 96ウェルプレートではない多種多様な他のマイクロタイタープレートが、その上への抗体の固相化を可能にし、したがって、本発明の固体支持体を供給するのに適していることを当業者が認識しているだろうことは理解されるべきである。
【0066】
例示的なラテラルフローデバイスは、全体として参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第5,726,010号に記載されているラテラルフローデバイスである。ラテラルフローアッセイを実施するためのデバイスは、Westbrook、MEのIDEXX Laboratories,Inc.から市販されているSNAP(登録商標)デバイスであり得る。しかしながら、SNAP(登録商標)デバイスではない、または米国特許第5,726,010号により記載されている多種多様な他のラテラルフローデバイスが、その上への抗体の固相化を可能にし、したがって、本発明のデバイスとして用いられるのに適していることを当業者が認識しているだろうことは理解されるべきである。これらのデバイスには、例えば、コロイド金テクノロジーを用いるラテラルフローデバイスを挙げることができる。
【0067】
本発明のデバイスに用いられる抗体は、当技術分野において知られた任意の方法論、例えば、抗体を固体支持体へ、共有結合性または非共有結合性に、直接的または間接的に、付着させることにより、固体支持体上に固相化され得る。したがって、これらの抗体は、固体支持体に物理的吸着により(すなわち、化学的リンカーの使用なしに)付着し得るが、これらの抗体が、当業者に広く知られた任意の化学的結合方法により(すなわち、化学的リンカーを用いて)固体支持体に固相化され得ることもまた事実である。
【0068】
いくつかの実施形態において、第1の抗体は、第1の条虫種の全抽出物、第1の条虫種のE/S材料、第1の条虫種の虫洗浄液材料、もしくは第1の条虫種のTCA可溶性材料に対して産生することができる;(b)第2の抗体は、第2の条虫種の全抽出物、第2の条虫種のE/S材料、第1の条虫種の虫洗浄液材料、もしくは第2の条虫種のTCA可溶性材料に対して産生することができる;または(c)第3の抗体は、第3の条虫種の全抽出物、第3の条虫種のE/S材料、第1の条虫種の虫洗浄液材料、もしくは第3の条虫種のTCA可溶性材料に対して産生することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、固体支持体はさらに、以下から選択される1つまたは複数の抗体をその上に固相化されている:回虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、鞭虫糞便抗原にも鉤虫糞便抗原にも特異的に結合する能力がない抗体;鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原にも鉤虫糞便抗原にも特異的に結合する能力がない抗体;鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、鞭虫糞便抗原にも回虫糞便抗原にも特異的に結合する能力がない抗体;Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、鉤虫糞便抗原、条虫Taenia属糞便抗原、条虫Dipylidium属糞便抗原、およびパルボウイルス糞便抗原からなる群から選択される糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;ならびにパルボウイルスに特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、鉤虫糞便抗原、条虫Taenia属糞便抗原、条虫Dipylidium属糞便抗原、およびGiardia属糞便抗原からなる群から選択される糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体。実施形態において、鉤虫はAncylostoma属であり、回虫はToxocara属であり、鞭虫はTrichuris属である。他の実施形態において、鉤虫はAncylostoma caninumまたはAncylostoma tubaeformeである;回虫はToxocara canisまたはToxocara catiである;鞭虫はTrichuris vulpisまたはTrichuris felisである;Giardia属はGiardia lambliaである;およびパルボウイルスはネコパルボウイルスまたはイヌパルボウイルスである。
【0070】
固体支持体が本発明の抗体の固相化のための任意の適切な材料であり得ることもまた理解されるべきである。例えば、固体支持体は、ビーズ、粒子、チューブ、ウェル、プローブ、ディップスティック、ピペットチップ、スライド、繊維、膜、紙、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、ガラス、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、プラスチック、マグネタイト、または当業者に広く知られた任意の他の適切な材料であり得る。いくつかの実施形態において、固体支持体は、複数の粒子、マイクロ粒子、チップ、またはビーズを含み得る。複数の粒子、マイクロ粒子、チップ、またはビーズは、デバイスに付着し、またはデバイスと緩く会合し得る。複数の粒子、マイクロ粒子、チップ、またはビーズは、デバイスの表面上またはデバイス内に位置し得る。複数の粒子、マイクロ粒子、またはビーズは、デバイス上もしくはデバイス内に静止し得、またはそれらはデバイス内をもしくはデバイスを通って移動することができ得る。
【0071】
デバイスは、任意で、本発明のデバイスへの適用前に、哺乳動物由来の試料と混合され得る1つまたは複数の標識抗原捕獲試薬を含んでもよい。標識抗原捕獲試薬が含まれる場合、標識抗原捕獲試薬は、デバイスの固体表面上に沈着または乾燥していてもよいし、していなくてもよい。「抗原捕獲試薬」は、関心対象となる1つまたは複数の抗原に特異的である任意の化合物を指す。標識抗原捕獲試薬は、哺乳動物の試料に加えられようが、デバイス上にあらかじめ沈着していようが、例えば、回虫抗原に特異的な標識抗体であり得、その標識抗体には、本発明の抗体が挙げられるが、それに限定されない。
【0072】
デバイスはまた、任意で、結合していない材料(例えば、糞便抽出物の反応していない部分などの哺乳動物試料の反応していない部分、および結合していない抗原捕獲試薬など)を反応ゾーン(固相)から、運び出し(デバイスが、例えばSNAP(登録商標)デバイスである場合など)、または別な方法でそれの除去を促進する(デバイスが、例えばマイクロタイタープレートを含む場合など)液体試薬を含んでもよい。液体試薬は、洗浄試薬であり、結合していない材料を反応ゾーンから除去するためだけの役割を果たし得、またはそれは、検出試薬を含み、結合していない材料を除去し、抗原検出を促進することの両方の役割を果たし得る。例えば、酵素とコンジュゲートされた抗原捕獲試薬の場合、検出試薬は、反応ゾーン(固相)におけるその酵素-抗体コンジュゲートとの反応により、検出可能なシグナルを生じる基質を含む。あるいは、放射性、蛍光、または光吸収性分子とコンジュゲートされた標識抗原捕獲試薬の場合、液体試薬は、単に、結合していない標識試薬を洗い流すことにより反応ゾーンにおける複合体形成の検出を促進する洗浄溶液として働く。
【0073】
液体試薬はさらに、限定された量の「阻害剤」、すなわち、検出可能な最終生成物の発生をブロックする物質を含み得る。限定された量は、ほとんどまたは全部の過剰な、結合していない材料が第2の領域から運び出される(その時点で、検出可能な最終生成物が生成される)まで、最終生成物の発生をブロックするのに十分な阻害剤の量であると定義される。
【0074】
本発明のデバイスはまた、1つまたは複数の抗原捕獲試薬とは異なる場所で固相化された様々な結合試薬を含み得る。例えば、標識抗体もしくは抗原捕獲試薬の種特異的(例えば、回虫特異的)抗体部分または酵素標識試薬の酵素部分を認識する免疫試薬(抗体、抗原、またはポリペプチド)が、デバイス内で試薬のバイアビリティを評価するための陽性対照として含まれ得る。例えば、陽性対照は、例えばヤギまたはマウスにおいて産生されている抗西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体であり得る。追加として、抗原-抗体複合体の抗体部分が由来した種の非免疫メンバーから単離された試薬、例えば、抗体が、免疫複合体(すなわち、抗原-抗体複合体)形成の特異性を評価するための陰性対照として含まれ得る。
【0075】
哺乳動物試料において条虫糞便抗原を特異的に結合し、単離するように設計されることに加えて、本発明のデバイスは、任意で、1つまたは複数の他の診断試験を実施できるように設計され得る。例えば、固体支持体はまた、回虫、鞭虫、イヌ糸状虫、および鉤虫などの1つもしくは複数の蠕虫、1つもしくは複数の虫でない寄生体、1つもしくは複数のウイルス(例えば、パルボウイルス)、1つもしくは複数の真菌、1つもしくは複数の原生動物(例えば、Giardia属)、または1つもしくは複数の細菌の検出のための試薬も含み得る。1つもしくは複数の虫でない寄生体、1つもしくは複数のウイルス、1つもしくは複数の真菌、1つもしくは複数の原生動物、または1つもしくは複数の細菌の検出のための試薬は、例えば、1つまたは複数の抗体、あるいは、1つもしくは複数の虫でない寄生体、1つもしくは複数のウイルス、1つもしくは複数の真菌、1つもしくは複数の原生動物、または1つもしくは複数の細菌に特異的な抗体により認識される1つまたは複数の抗原であり得る。
【0076】
一実施形態において、本発明のデバイスは、複数のウェルを含むマイクロタイタープレートであり、各ウェルが、その上に固相化された本発明の1つまたは複数の抗体を有する固体支持体を含む。
【0077】
マイクロタイタープレートは、試料において1つまたは複数の蠕虫糞便抗原の存在または非存在を検出するために、本発明の方法と共に用いられ得る。例えば、条虫感染は、固体支持体上に固相化されている抗体を用いて1つまたは複数の条虫抗原を検出することにより、哺乳動物において診断され得る。一実施形態において、検出される抗原は糞便抗原である。「糞便抗原」は、宿主種(例えば、イヌまたはネコ)由来の糞便試料に存在し、抗体と特異的に結合することができる、条虫などの胃腸内寄生体の1つまたは複数の任意の産物である。したがって、糞便抗原は、虫全体、虫の卵、虫の断片、もしくは虫から分泌され、排泄され、もしくは脱落した産物、またはそれらの組合せであり得る。
【0078】
マイクロタイタープレートに加えて、当技術分野において知られている複数のイムノアッセイを並行して実施する(すなわち、多重イムノアッセイ)ための多数の他の代替アプローチがある。典型的には、多重イムノアッセイは、複数のイムノアッセイの成分が流体連結している組成物またはデバイスにおいて、単一の容器で実施することができる。これらのテクノロジーは、アレイ、マイクロアレイ、および/またはマイクロビーズもしくはマイクロ粒子に基づき得る。アレイまたはマイクロアレイにおいて、捕獲試薬は、典型的には、膜などの単一デバイスの別々のエリアにスポットされ、または別な方法で沈着している。ビーズに基づいたアプローチにおいて、各アッセイについての捕獲試薬は、ビーズに付着しており、各アッセイのビーズは、他のアッセイのビーズと識別できる。その識別は、光の色、物理的位置、バーコードなどにより生じ得る。例として、Tighe,P.J.、Ryder,R.R.、Todd,I.、およびFairclough,L.C. (2015)、ELISA in the multiplex era:Potentials and pitfalls. Prot.Clin.Appl.、9:406~422. doi:10.1002/prca.201400130参照。
【0079】
多数のそのような多重化プラットフォームが市販されている。例には、Luminex(登録商標)(例えば、米国特許第7,523,637号参照);πCode(商標)MicroDiscs(Plexbio、例えば、米国特許出願第US2014/0274778号参照);バーコード付き磁気ビーズおよびそれらを用いたアッセイを実行するための方法および装置(例えば、Applied BioCode,Inc.、Santa Fe Springs、CA、USA;磁気バーコード付きチップ(例えば、Applied BioCode,Inc.;例えば、米国特許第8,232,092号);マイクロ流体試験ストリップ(例えば、LumiraDx(登録商標)、米国特許第9,919,313号);および平面光デッキテクノロジー、例えば、LightDeck(登録商標)(mBio(登録商標)、米国特許第9,739,714号)が挙げられる。追加の多重イムノアッセイテクノロジーには、MULTI-ARRAY(Meso Scale Diagnostics、Rockville、MD、USA)、Bio-Plex(登録商標)Multiplex System(Bio-Rad、Hercules、CA、USA)、Access 2(Beckman Coulter、Atlanta、GA);およびProcartaPlex(登録商標)およびProQuantum(登録商標)テクノロジー(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA、USA)(Fu Q、Zhu J、Van Eyk JE. Comparison of multiplex immunoassay platforms. Clin Chem. 2010 Feb;56(2):314~8. doi:10.1373/clinchem.2009.135087参照)が挙げられる。
【0080】
本発明の別の態様において、糞便試料から1つまたは複数の条虫糞便抗原の存在または非存在を検出するためのデバイスは、固体支持体、1つまたは複数のレクチン、および以下からなる群から選択される1つまたは複数の抗体を含む:(a)第1の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫種由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;(b)第2の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および(c)第3の条虫種由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫種由来の糞便抗原にも第2の条虫種由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体。一実施形態において、固体支持体は、1つ以上の抗体、2つ以上の抗体、3つ以上の抗体、4つ以上の抗体、5つ以上の抗体、6つ以上の抗体、7つ以上の抗体、または8つ以上の抗体をその上に固相化している。標識レクチンは、検出のために、固相化された抗体により捕獲された条虫糞便抗原上の糖鎖と結合することができる。別の実施形態において、レクチンは、固体支持体上に固相化することができる。固相化されたレクチンは、条虫糞便抗原を、存在しているならば、捕獲することができ、生じた複合体は、1つまたは複数の標識抗体により検出することができる。別の実施形態において、デバイスはさらに、1つまたは複数の種の条虫の抗原を含み、1つまたは複数の種の条虫の抗原は、抗体と特異的に結合する。
【0081】
本発明はさらに、哺乳動物試料において異なる種の条虫を検出し、それらの間を識別するためのアッセイキット(例えば、製造品)を含む。いくつかの実施形態において、アッセイキットはさらに、哺乳動物試料において回虫、鞭虫、および/または鉤虫などの蠕虫の同時感染を検出および識別することができる。したがって、キットは、本発明の1つまたは複数のデバイスおよび/または組成物を含み得る。例えば、キットは、抗条虫抗体、および抗体の条虫抗原との結合を決定するための手段、および抗体の条虫抗原との結合を決定するための手段を含み得る。一つの特定の例において、そのようなキットは、1つまたは複数の異なる種の条虫に対する固相化された抗条虫抗体を有するデバイス、1つまたは複数の抗原捕獲試薬(例えば、固相化されていない標識抗原捕獲試薬および固相化された抗原捕獲試薬)、および洗浄試薬、加えて、望ましいまたは適切ならば、検出試薬、ならびに陽性および陰性対照試薬を含む。当業者に知られたバッファー、対照などの他の成分が、そのような試験キットに含まれ得る。様々な試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中の濃度を提供するように異なり得る。特に、試薬は、通常は凍結乾燥した、乾燥粉末として供給され得、それは、溶解により、試料と組み合わせるのに適切な濃度を有する試薬溶液を提供する。本キットはさらに、キットに含まれる本発明の任意のデバイスおよび/または組成物を使用するための使用説明書を含む、本発明の1つまたは複数の方法を行うための使用説明書を含み得る。
【0082】
B.本発明の方法
本発明はさらに、試料において1つまたは複数の条虫抗原の存在または非存在を検出するための、本発明のデバイス、キット、および/または組成物の1つまたは複数を用いる方法を含む。したがって、方法は、非限定的にイヌ、ネコ、ブタ、ウシ、またはヒトを含む哺乳動物から得られる、例えば糞便試料などの試料において、1つまたは複数の種の条虫の存在または非存在を検出するために行われ得る。さらに、方法は、試料において、回虫、鞭虫、鉤虫、およびイヌ糸状虫などの蠕虫、Giardia属などの蠕虫ではない寄生体、ならびにパルボウイルスなどのウイルスの1つまたは複数を検出するために行われ得る。
【0083】
本発明の方法において、1つまたは複数の種の条虫の検出は、1つまたは複数の条虫抗原の存在または非存在を検出することにより達成され得る。条虫糞便抗原についての試験中の試料が糞便である場合、糞便の可溶性部分が、当技術分野において知られた任意のプロトコールにより収集され得る。例えば、本明細書における実施例セクションに記載された特定のプロトコールに加えて、試料の可溶性部分は、一般的に、濾過、抽出、遠心分離、または単純な混合、その後、重量測定的沈降により収集され得る。同様に、哺乳動物から糞便ではない試料を抽出および調製する様々な方法があることを当業者は認識しているだろう。例えば、試料は、哺乳動物により自然に排泄され、もしくは別なふうに放出される体液、または哺乳動物から人工的に得られる体液であり得る。そのような人工的抽出は、哺乳動物の乳を搾ることにより、または哺乳動物へ注射器を射して、体液を注射器へと引き出すことにより、行われ得る。いったん得られたならば、その流体は、任意で、分画され得る(例えば、血清が、全血から分画され、その後、試料として用いられ得る)。別の例として、試料は、哺乳動物、例えば哺乳動物の口腔を、綿球で採取することにより獲得され得る。なお別の例として、組織切片が生検により採取され得る。
【0084】
方法は、抗原/抗体複合体、すなわち、免疫複合体が形成するのを可能にする条件下で、哺乳動物試料を、条虫糞便抗原に特異的な1つまたは複数の抗体と接触させることを含む。すなわち、抗体は、試料に存在する糞便抗原と特異的に結合する。当業者は、そのような抗原/抗体複合体結合を検出するために用いられ得るアッセイおよび条件に精通している。例えば、抗原/抗体複合体は、その抗原/抗体複合体と結合する二次抗体を用いて検出され得る。試料における抗原と抗体の複合体の形成は、当技術分野において知られた任意の適切な方法を用いて検出され得る。
【0085】
さらに、1つの特定の反応において形成される抗体-抗原複合体の相対量は、その目的を達成するために当技術分野において知られた任意の方法論により、任意の他の反応において形成された量に対して測定され得る。試験中の試料が、特定の条虫抗体-抗原複合体を有することが決定された時、その形成された特定の複合体に基づいて、特定の条虫が宿主哺乳動物に存在すること、およびどの条虫が存在するのか(例として、条虫種Taenia pisiformisおよびDipylidium caninum)を結論づけることができる。これが事実である場合、その試験試料が採取された哺乳動物が腸内条虫感染を有すると結論づけられ得る。試験されている哺乳動物が腸内条虫感染を有するという結論は、診断サービスプロバイダーにおける臨床医、または、例えばその哺乳動物の獣医などのその哺乳動物の介護者によりなされ得る。哺乳動物の介護者が、哺乳動物が条虫感染を有すること、およびどの条虫が存在するのかを決定した(または別な形で知らされた)時、その後、介護者は、一般的に寄生虫感染を取り除くというより、哺乳動物からその条虫を特異的に取り除くように最適に設計される処置コースを哺乳動物に受けさせ得る。さらに、本発明は、特定の条虫感染についての処置を受けた任意の動物が、その感染を脱していることを確認するために用いることができる。例えば、試料が、条虫と回虫の両方を含むが、鉤虫を含まないことを知る介護者は、その知識を用いて、その試料が採取された哺乳動物を、条虫に対して最適に有効な薬物および回虫に対して最適に有効な第2の薬物をその哺乳動物に投与することにより、条虫について特定的に処置することができる。そのような知識がない場合、介護者は、例えば、条虫のみ、回虫のみに対して最適に有効である薬物で、または条虫にも回虫にも有効ではない薬物で、別なふうにその哺乳動物を処置する可能性がある(そのような場合、その哺乳動物は、最適以下の処置を受けるリスクがある)。加えて、外寄生した動物またはそれの排泄物に接触し得るヒトは、その1つまたは複数の寄生体を得ることに対して警戒するよう忠告され得る。この関連において、ヒトにおいて重大な疾患(例えば、幼虫移行症)を引き起こし得る蠕虫の種を高特異性で決定することは重要である。
【0086】
腸内寄生体の感染を患っている患者は、寄生体を患者から排除することが知られたある特定の治療用物質で処置され得る。したがって、糞便が、腸内寄生体由来の糞便抗原を含有することが見出されている患者は、その腸内寄生体を低減または排除することを目的として適切な治療で処置され得る。
【0087】
条虫、鉤虫、鞭虫、および/または回虫などの腸内寄生虫の感染を患っている患者は、駆虫薬(anthelmintic)(または駆虫薬(anthelminthic))とも呼ばれる、虫下し薬で処置することができる。そのような駆虫薬は、当業者に広く知られている。条虫の処置のための駆虫薬には、非限定的に、プラジカンテル、ニタゾキサニド、アルベンダゾール、エプシプランテル、フェンベンダゾール、またはそれらの組合せが挙げられる。駆虫薬は、腸内寄生体の処置および/または防止において患者へ様々な適切な経路によって投与され得、その経路には、経口で、または非経口で、例えば、皮下に、静脈内に、筋肉内に、もしくは腹腔内に、または局所的に(皮膚性に)、例えば、露出した皮膚表面へ直接的に、などが挙げられる。
【0088】
Giardia属は、ジアルジア症として知られた下痢性病気を引き起こす顕微鏡レベルの寄生体である。Giardia intestinalis、Giardia lamblia、およびGiardia duodenalisを含むGiardia属は、感染したヒトまたは動物由来の糞便で汚染されている土壌、食物、または水の表面または中に見出される。Giardia属糞便抗原は、いくつかの市販の検査薬で検出することができ、その検査薬には、VetScan(登録商標)イヌGiardia高速検査薬(Abaxis、Union City、USA)、Anigen(登録商標)高速CPV-CCV-Giardia抗原検査薬(BioNote、Seoul、Korea)、SNAP(登録商標)Giardia検査薬(IDEXX、Westbrook、ME、USA)およびELISA試験によるGiardia抗原(IDEXX)、ProSpecT(登録商標)Giardia/Cryptosporidiumマイクロプレートアッセイ(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)、ならびにWitness(登録商標)Giardia検査薬(Zoetis、Parsippany、NJ、USA)が挙げられる。(Barbecho JM、Bowman DD、Liotta JL. Comparative performance of reference laboratory tests and in-clinic tests for Giardia in canine feces. Parasit Vectors. 2018年8月1日;11(1):444. doi:10.1186/s13071-018-2990-6. PMID:30068364;PMCID:PMC6090814。)
【0089】
Giardia属感染の処置のための治療用物質は、当業者に広く知られている。Giardia属感染は、いくつかの薬物、例えば、フェンベンダゾール、アルベンダゾール、メトロニダゾール、チニダゾール、ニタゾキサニド、パロモマイシン、キナクリン、およびフラゾリドン、フェバンテル、パモ酸ピランテル、プラジカンテル、またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数で処置され得る。これらの薬物は、Giardia属の処置および/または防止において患者へ様々な適切な経路によって投与され得、その経路には、経口で、非経口で、例えば、皮下に、静脈内に、筋肉内に、もしくは腹腔内に、または局所的に(皮膚性に)、例えば、露出した皮膚表面へ直接的に、などが挙げられる。
【0090】
中間宿主は、1つまたは複数の蠕虫または蠕虫ではない寄生体、真菌、ウイルス、および細菌を患者に伝染させることに関与し得、したがって、治療介入の成功は、再感染を制御または防止するためのストラテジーを含む。例として、条虫感染は、ノミおよびイヌハジラミなどの中間宿主により伝染し得るため、条虫感染における治療介入の成功は、患者に存在する可能性がある任意の中間宿主(例えば、ノミ)外寄生を制御するためのストラテジーを含む。したがって、ノミなどの中間宿主を制御することは、患者の条虫の再感染を防止するのに役立つ。ノミ外寄生の処置または制御のための治療用物質は、当業者によく知られており、それには、セラメクチン、フィプロニル、イミダクロプリド、インドキサカルブ、ピレトリン、ペルメトリン、フルメトリン、スピノサド、ニテンピラム、アフォキソラネル(afoxolaner)、フルララネル(fluralaner)、サララン(saralane)、ニテンピラム、メトプレン、ピリプロキシフェン、およびルフェヌロン、またはそれらの組合せが挙げられる。ノミ制御剤は、患者へ様々な適切な経路によって投与され得、その経路には、経口で、非経口で、例えば、皮下に、静脈内に、筋肉内に、もしくは腹腔内に、または局所的に(皮膚性に)、例えば、露出した皮膚表面へ直接的に、などが挙げられる。代表的な適切なノミ制御剤形には、スプレー、粉末、首輪、経口組成物、または局所的処置が挙げられる。
【0091】
本発明の方法のステップは、(a)第1の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第2の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第1の抗体;(b)第2の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第3の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第2の抗体;および(c)第3の条虫由来の糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、第1の条虫由来の糞便抗原にも第2の条虫由来の糞便抗原にも特異的に結合する能力がない第3の抗体を含む本発明のデバイスに哺乳動物試料を適用して、試料において、もしあれば、糞便抗原の存在下で、抗体-糞便抗原複合体を形成するステップ、ならびに、もしあれば、抗体-糞便抗原複合体の存在または非存在を検出するステップを含み得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、デバイスはさらに、以下から選択される1つまたは複数の抗体を含み得る:回虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、鞭虫糞便抗原も鉤虫糞便抗原にも特異的に結合する能力がない抗体;鞭虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原も鉤虫糞便抗原にも特異的に結合する能力がない抗体;鉤虫糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、鞭虫糞便抗原も回虫糞便抗原にも特異的に結合する能力がない抗体;Giardia属糞便抗原に特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、鉤虫糞便抗原、条虫Taenia属糞便抗原、条虫Dipylidium属糞便抗原、およびパルボウイルス糞便抗原からなる群から選択される糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体;ならびにパルボウイルスに特異的に結合する能力があるが、回虫糞便抗原、鞭虫糞便抗原、鉤虫糞便抗原、条虫Taenia属糞便抗原、条虫Dipylidium属糞便抗原、およびGiardia属糞便抗原からなる群から選択される糞便抗原に特異的に結合する能力がない抗体。実施形態において、鉤虫はAnyclostoma属であり、回虫はToxocara属であり、鞭虫はTrichuris属である。他の実施形態において、鉤虫はAncylostoma caninumまたはAncylostoma tubaeformeである;回虫はToxocara canisまたはToxocara catiである;鞭虫はTrichuris vulpisまたはTrichuris felisである;Giardia属はGiardia lambliaである;パルボウイルスはネコパルボウイルスまたはイヌパルボウイルスである。
【0093】
一実施形態において、もしあれば、抗体-糞便抗原複合体の存在または非存在を検出するステップはさらに、複合体の少なくとも1つと結合する1つまたは複数のレクチンを供給するステップを含む。レクチンは、検出可能に標識することができ、または固体支持体上に固相化することができる。あるいは、第1、第2、および第3の抗体が、検出可能に標識することができ、または固体支持体上に固相化することができる。一実施形態において、第1、第2、および第3の抗体は、固体支持体上に固相化することができ、レクチンは検出可能に標識することができる。別の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体は、検出可能に標識することができ、レクチンは固体支持体上に固相化することができる。
【0094】
別の実施形態において、哺乳動物由来の糞便試料を1つまたは複数の抗体と接触させるステップはさらに、糞便試料を1つまたは複数のレクチンと接触させるステップを含む。レクチンは、検出可能に標識することができ、または固体支持体上に固相化することができる。あるいは、第1、第2、および第3の抗体が、検出可能に標識することができ、または固体支持体上に固相化することができる。一実施形態において、第1、第2、および第3の抗体は、固体支持体上に固相化することができ、レクチンは検出可能に標識することができる。別の実施形態において、第1、第2、および第3の抗体は、検出可能に標識することができ、レクチンは固体支持体上に固相化することができる。
【0095】
抗体およびレクチンは、固体支持体または基板、例えば、マイクロタイターウェル、SNAP(登録商標)デバイスの抗体固相化部分、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、カラム、マトリックス、膜、合成または天然繊維(例えば、ガラスもしくはセルロースベースの材料またはポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエステルなどの熱可塑性ポリマー)で構成された繊維状マット、特定の材料(例えば、ガラスまたは様々な熱可塑性ポリマー)で構成された焼結構造、またはニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホンなど(一般的には、本来、合成)で構成されたキャスト膜フィルムに直接的または間接的に付着し得る。これらの基板材料の全部は、適切な形、例えば、フィルム、シート、もしくはプレートの形をとって用いられ得、またはそれらは、適切な不活性担体、例えば、紙、ガラス、プラスチックフィルム、もしくは布の上へコーティングされ得、またはそれと結合し得、またはそれへラミネートされ得る。抗体、ペプチド、およびレクチンを固相上に固相化するための適切な方法には、イオン性、疎水性、共有結合性相互作用などが挙げられる。
【0096】
しかしながら、本発明の方法は、固相または基板の使用を必要とはしない。本方法が、固相または基板の使用を含むことなく、回虫の存在または非存在を検出するために行われ得るいくつかの様式があることを当業者は認識しているだろう。一つの例にすぎないが、固相または基板の使用を必要としない免疫沈降方法が行われ得る。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態において、抗原/抗体複合体は、抗体に結合している酵素コンジュゲートなどの指示薬が、検出可能な反応を触媒する時、検出される。任意で、シグナル発生化合物を含む指示薬が、抗原/抗体複合体へ、検出可能な抗原/抗体/指示薬複合体の形成を可能にする条件下で、適用され得る。任意で、抗体は、抗原/抗体複合体の形成前に指示薬で標識されてもよい。
【0098】
本発明の方法のいくつかにおける抗原/抗体複合体または抗原/抗体/指示薬複合体の形成は、具体的には、例えば、放射測定法、酵素法、化学発光法、比色法、比濁法、蛍光測定法、測光法、サイズ分離法、表面プラズモン共鳴法、または沈澱法により検出され得る。抗原/抗体複合体の検出はまた、シグナル発生化合物を含む指示薬と連結されている二次抗体の添加により達成され得る。ポリペプチド/抗体複合体と会合したシグナル発生化合物(標識)を含む指示薬は、上記の方法を用いて検出され得、それには、色素生産性物質、酵素コンジュゲートなどの触媒、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光化合物、ジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム、ルテニウム、およびルミノールなどの化学発光化合物、放射性元素、直接視覚的標識、加えて、補助因子、阻害剤、磁気粒子などが挙げられ得る。酵素コンジュゲートの例には、アルカリフォスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼなどが挙げられる。特定の標識の選択は必須ではないが、それは、独力か、または1つもしくは複数の追加の物質と共にかのいずれかでシグナルを生じる能力がある。
【0099】
本発明の方法には、競合アッセイ、直接的反応アッセイ、またはサンドイッチ型アッセイに基づいた方法、例えば、非限定的に、ELISA、RIA、免疫蛍光アッセイ(IFA)、赤血球凝集(HA)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、およびマイクロタイタープレートアッセイ(すなわち、マイクロタイタープレートの1つまたは複数のウェル内で行われる任意のアッセイ)が挙げられるが、それらに限定されない。本発明の一つのアッセイは、可逆性フロークロマトグラフィー結合アッセイを含み、それは、例えば、SNAP(登録商標)デバイスを用いることにより、実施され得る。米国特許第5,726,010号参照。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、サンドイッチ型または競合型特異的結合アッセイを促進する。サンドイッチアッセイにおいて、抗原捕獲試薬が反応ゾーンに固相化されている。これらの抗原捕獲試薬は、条虫について試験されることになっている試料における抗原と特異的に結合し得る。試料由来の抗原の結合後、抗原捕獲試薬/抗原複合体は、任意の適切な方法により検出される。例えば、複合体は、標識特異的結合試薬(例えば、酵素-抗体コンジュゲート)と反応し、抗原が(例えば、基質との反応により)検出され得る。
【0101】
本発明の方法の他の実施形態において、競合アッセイが実施される。競合アッセイにおいて、抗原捕獲試薬が反応ゾーンに固相化されており、試料由来の抗原と標識抗原(例えば、抗原-酵素コンジュゲート)に同時に接触させられる。反応ゾーンにおいて検出された標識の量は、試料中の抗原の量に反比例する。
【0102】
本方法のいくつかの実施形態において、条虫糞便抗原に特異的な抗体が固相または基板に付着している。条虫由来の抗原を含む可能性がある試料が基板に加えられる。条虫抗原に特異的に結合する抗体が加えられる。抗体は、固相上に用いられた同じ抗体であってもよいし、またはそれらは、異なる源もしくは種由来であってもよい。さらに、これらの抗体は、酵素コンジュゲートなどの指示薬と連結され得る。洗浄ステップが、各添加前に実施され得る。発色団または酵素基質を加えて、色を発生させ得る。発色反応を停止させ得、その色を、例えば、分光光度計を用いて定量化し得、および/またはその色をヒトの目で主観的に評価し得る。
【0103】
本方法の他の実施形態において、条虫糞便抗原に特異的な抗体が固相または基板に付着している。条虫抗原を含む可能性がある試料が基板に加えられる。糞便抗原に特異的に結合する第2の抗種抗体が加えられる。これらの第2の抗体は、固相抗体である種とは異なる種由来である。第2の抗体に特異的に結合し、固相抗体に特異的に結合することがない第3の抗種抗体が加えられる。第3の抗体は、酵素コンジュゲートなどの指示薬を含み得る。洗浄ステップは、各添加前に実施され得る。発色団または酵素基質を加え得、色を発生させ得る。発色反応を停止させ得、その色を、例えば、分光光度計を用いて定量化し得、および/またはその色をヒトの目で主観的に評価し得る。
【0104】
特定の例において、本発明の方法は、ラテラルフローアッセイデバイスであるデバイスと連動して、調製された哺乳動物試料をデバイスのフローマトリックスへ第1の領域(試料適用ゾーン)に加えることにより、実施される。調製された試料は、流体流路において毛細管作用により、フローマトリックスの第2の領域へ運ばれ、その第2の領域において、試料中の抗原に結合し、それとの第1の複合体を形成する能力がある粒状標識が存在する。粒状標識は、例えば、回虫抗原に特異的な抗体とコンジュゲートされた着色ラテックス粒子、色素ゾル、または金ゾルであり得る。第1の複合体は、フローマトリックスの第3の領域に運ばれ、その第3の領域において、回虫抗原に特異的に結合する抗体が別個の位置で固相化されている。第2の複合体が、固相化抗体と第1の複合体の間で形成される。第2の複合体の一部である粒状標識は、ヒトの目によって直接、見えるようにすることができる。
【0105】
各特定の虫の抗体は、反応ゾーン(固相)における固相化抗原捕獲試薬であり得る。第2の抗原捕獲試薬、すなわち、標識にコンジュゲートされている第2の特異的条虫抗体は、試料がデバイスに加えられる前に、試料に加えられてもよいし、または第2の抗原捕獲試薬をデバイスへ組み込むことができる。例えば、標識抗原捕獲試薬は、試料適用ゾーンと固相の間の流体連結を提供する流体流路上に沈着され、乾燥され得る。標識抗原捕獲試薬の試験試料との接触は、結果として、標識抗原捕獲試薬の溶解を生じ得る。
【0106】
本発明の方法の一実施形態において、特定の虫の糞便抗原は、ELISAにより検出される。本発明のELISA方法の特定の例は、本明細書に含まれる実施例セクションに記載されている。しかしながら、本発明は、それらの特定のELISA方法に関して記載されているが、代替の、追加の、または代わりのELISAステップが、本発明のこの方法を通して達成される基本的目的から逸脱することなく、用いられ得ることを当業者は認識しているだろうことは理解されるべきである。
【0107】
本発明の別の実施形態において、条虫糞便抗原は、例えば、SNAP(登録商標)デバイスなどのラテラルフローデバイスを用いることにより検出される。
【0108】
さらに、条虫感染の検出のための本発明の方法は、他の生物体または状態の存在を検出するための他の診断アッセイと組み合わせることができる。例えば、本発明のアッセイは、1つもしくは複数の蠕虫、蠕虫ではない糞便寄生体、1つもしくは複数のウイルス、1つもしくは複数の真菌、1つもしくは複数の原生動物、1つもしくは複数の細菌、1つもしくは複数の血液によって感染する寄生体もしくは潜血、またはそれらの組合せを検出する試薬と組み合わせることができる。単一のアッセイデバイスにおいて2つ以上の固有の結合部位(例えば、SNAP(登録商標)アッセイデバイス上の2つの固有のスポット)を供給することにより、本発明は、単一試料由来の2つ以上の生物体の検出を可能にする。一実施形態において、単一の試料由来の3つの生物体からの過去または現在の感染または外寄生の検出のための3つの固有のスポット(そのスポットは、抗原結合試薬かまたは抗体結合試薬のいずれかである)がある(すなわち、同じ個々の試料が、単一のデバイス上で3つの捕獲試薬に曝される)。なお別の実施形態において、単一の試料由来の4つの生物体からの過去または現在の感染または外寄生の検出のための4つの固有のスポット(そのスポットは、抗原結合試薬かまたは抗体結合試薬のいずれかである)がある(すなわち、同じ個々の試料が、単一のデバイス上で4つの捕獲試薬に曝される)。しかしながら、同じデバイスは、4つより多い固有のスポットを含み得、および/または4つより多い生物体の検出を可能にし得ることは理解されるべきである。
【0109】
1つもしくは複数の蠕虫、蠕虫ではない糞便寄生体、1つもしくは複数のウイルス、1つもしくは複数の真菌、1つもしくは複数の原生動物、または1つもしくは複数の細菌の検出のための試薬は、例えば、1つもしくは複数の抗体、あるいは1つもしくは複数の蠕虫、蠕虫ではない糞便寄生体、1つもしくは複数のウイルス、1つもしくは複数の真菌、または1つもしくは複数の細菌に特異的な抗体により認識される1つもしくは複数の抗原であり得る。いくつかの実施形態において、試薬には、1つもしくは複数の抗体、あるいは1つもしくは複数の蠕虫寄生体(例えば、回虫、鞭虫、鉤虫、およびイヌ糸状虫)、蠕虫ではない寄生体、1つもしくは複数のウイルス(例えば、イヌパルボウイルスまたはネコパルボウイルスなどのパルボウイルス)、1つもしくは複数の真菌、1つもしくは複数の原生動物(例えば、Giardia lambliaなどのGiardia属)、または1つもしくは複数の細菌に特異的な抗体により認識される1つもしくは複数の抗原を挙げることができる。
【0110】
方法はさらに、任意で、哺乳動物試料において1つまたは複数の条虫種の存在または非存在を決定するための条虫由来の1つまたは複数の核酸を用いることを含んでもよく、その核酸には、本発明の核酸が挙げられるが、それに限定されない。蠕虫の存在を決定するためのこれらの核酸のそのような使用は、抗体による1つまたは複数の条虫種の検出を含む本方法の任意の他の態様の実行の前、後、またはそれと同時に実行され得る。したがって、一態様において、特定の試料において1つまたは複数の条虫種が検出され、または検出されず、かつ試料が得られた哺乳動物が条虫感染を有するかまたは有しないかのいずれかと診断された後、試料(または診断された哺乳動物から後で得られた試料)は、本発明の任意の1つまたは複数の核酸を含む核酸の任意の1つまたは複数の存在または非存在について試験され得る。(蠕虫が、1つまたは複数の抗体を用いることにより検出された後で、)1つまたは複数の核酸を用いることにより特定の哺乳動物において特定の蠕虫を検出することができなかった誰でも、試料において検出可能な蠕虫核酸の出現前に抗体が蠕虫糞便抗原を検出していた可能性を考慮する必要がある。そのような場合、その哺乳動物の介護者は、その核酸が蠕虫を検出することができなかったという観察を無視して、抗体が実際、蠕虫を検出していたという観察に基づいて、蠕虫感染について特定的にその哺乳動物を処置するよう進めることを選択し得る。別の態様において、核酸が、特定の哺乳動物において蠕虫の存在または非存在を決定するために用いられ、その後、蠕虫の存在または非存在は、本発明の抗体を用いることによりさらに評価される。1つまたは複数の蠕虫核酸の検出は、当業者に知られた任意の核酸検出技術を用いることにより行われ得る。例えば、そのような検出は、PCRに基づいた技術、例えば、それに限定されないが、リアルタイムPCRに基づいた技術を実施することにより行われ得る。例示的なPCRに基づいた技術は、例えば、PCR Protocols(Methods in Molecular Biology)、第2版、BartlettおよびStirling編、Humana Press(2003);ならびにSambrookおよびRussell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に記載されている;それらのそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【実施例】
【0111】
本発明は、以下の実施例を参照して、具体的に記載されている;しかしながら、それは、それに限定されると解釈されるべきではない。
【0112】
実施例A
他に指示がない限り、以下の材料および技術が、下記のような実施例1~5の1つまたは複数に記載されたデータを作製するために用いられた。
【0113】
Taenia pisiformisおよびDipylidium caninumの虫抽出物の調製
Taenia pisiformisおよびDipylidium caninum虫抽出物を、Antibody systems,Inc.Hurst、Texas、U.S.A.から購入した。虫抽出物を、4℃において10,000gで30分間、遠心分離した。上清を収集し、PBS、pH7.0へ透析し(膜分子量カットオフ12~14kD、Part 132678、Spectrum、Repligen、Waltham MA、USA)、タンパク質濃度を、Bradfordアッセイを用いて決定した。
【0114】
Taenia taeniaeformisの虫抽出物の調製
Taenia taeniaeformisを、Ross University School of Veterinary Medicine、Saint Kittsから入手した。虫全体を、宿主由来のいかなる糞便材料も粘液も除去するために、室温で、冷たいPBS、pH7.0で数回、洗浄し、明らかな組織塊が肉眼で見えなくなるまで組織粉砕機を用いて4℃でホモジナイズした。ホモジナイズされた材料を、50ml Falconチューブへ移し、破砕機を、冷たいPBS、pH7.0で2~3回、すすいだ。粉砕機のすすぎ液と共に、ホモジナイズされた条虫を、4℃において10,000gで30分間、遠心分離し、上清を収集し、その後、PBS、pH7.0へ透析した(膜分子量カットオフ12~14kD、Part 132678、Spectrum、Repligen、Waltham MA、USA)。タンパク質濃度を、Bradfordアッセイを用いて決定した。
【0115】
Dipylidium caninum TCA可溶性画分の調製
この抗原を、水性バッファー溶液(リン酸バッファー、pH7.2)中で虫を破壊し、遠心分離して不溶性および粒状成分を除去し、30%トリクロロ酢酸(TCA)を15%の最終濃度まで滴下し、全てのTCAを加えた後、18~27℃でさらに15分間、撹拌し、18~27℃でさらに45分間、ベンチで静置し、遠心分離して、不溶性成分を除去し、Spectrapor I透析チューブ、MWCO:6~8Kを用いて、水性バッファー溶液(0.01Mリン酸バッファー、pH7.2)に対して透析し、凍結乾燥器を用いて凍結乾燥することにより調製した。
【0116】
虫洗浄液の調製
凍結した生の虫検体を、pH7.2でのPBSバッファー中で4回、すすいだ。最初の3回のすすぎステップからのバッファー溶液を捨てた。4回目のすすぎステップからのバッファー溶液を、10,000gで20分間、遠心分離し、上清を収集した。上清を、iCON濃縮器(MWCO:20mL/9K;Thermo Scientific)を用いて濃縮した。生じた濃縮物を「虫洗浄液(Worm Wash)」(WW)と名づけた。
【0117】
E/S材料の調製
5%CO2の37℃インキュベーター内で2週間、組織培養培地(D-グルコース、ゲンタマイシン、およびファンギゾンを含むEMEM、pH7.2~7.3)を含むT-150フラスコにおいて条虫を生かしておくことにより、排泄性/分泌性(E/S)材料を収集した。簡単に述べれば、生きている条虫を、温かい培地で数回、洗浄して、いかなる糞便残渣も除去し、100mlの温かい培地(EMEM)を含むT-150組織培養フラスコに入れた。条虫の生存率を、毎日検証し、培地を1日3回、交換した。用いられた培地をプールし、iCON濃縮器(MWCO:9K;Thermo Scientific)で濃縮し、生じた濃縮E/S材料を、抗体産生のために用いた。
【0118】
ポリクローナル抗体(pAb)調製
ポリクローナル抗体を、SDIX、LLC(Windham、Maine、U.S.A.)において特定病原体除去(SPF)ウサギを用いて産生させた。その免疫原は、虫全体の抽出物(Antibody Systems Inc.、Hurst、Tex.製のDipylidium caninumおよびTaenia pisiformis;IDEXX Laboratories,Inc.製のT.taeniaeformis)またはE/S材料(IDEXX Laboratories、Westbrook、Maine)であった。簡単に述べれば、ウサギを、異なるアジュバント中の同じ免疫原に、皮下へ50日間に渡って4回、曝露させた。免疫化手順の終わりに血清を回収した。
【0119】
モノクローナル抗体(mAb)調製
マウスモノクローナル抗体を、特に断りのない限り、標準手順に従って作製した。簡単に述べれば、3~5匹のBalb/cマウスを免疫原で免疫し、免疫化スケジュールの完了後、脾臓細胞を採取した。脾臓細胞を、骨髄腫細胞と融合させた。数ラウンドのスクリーニング、ならびにHAT培地での選択、アイソタイピングおよびサブクローニングを通して、分泌される所望のmAbを分泌する特定のハイブリドーマ細胞株を得た。
【0120】
抗体精製および単離
ウサギポリクローナル抗体とマウスモノクローナル抗体の両方を、AKTA精製システムを用いるプロテインGセファロース4 Fast Flow(Thermo Fisher Scientific)アフィニティクロマトグラフィーで精製した。簡単に述べれば、ウサギ血清またはTCF(末期培養液)を、洗浄バッファーで希釈し、プロテインGカラムに負荷した。カラムを洗浄バッファーで徹底的に洗浄し、その後、抗体をカラムから溶出した。溶出された抗体を、1M Trisバッファー、pH8.0で中和し、その後、10mM PBS、pH7.2へ透析し、将来的な使用のために-20℃で保存した。
【0121】
糞便抽出物調製
新鮮な、保存処置がなされていないイヌまたはネコの糞便試料(1グラム)からの試料を、4mlの希釈液(「希釈液」は0.05M Trisベース;1mM EDTA;0.45% Kathon;16mg/ml 硫酸ゲンタマイシン;0.05% Tween-20;40% ウシ胎仔血清;10% ウサギ血清;および5% マウス血清である)中に懸濁した。上清を4000rpmで20分間、遠心分離して、第1の上清が生じた。第1の上清を10000gで10分間、遠心分離して、第2の上清が生じ、それを本明細書では「糞便抽出物」と呼ぶ。
【0122】
ELISAアッセイ
精製されたポリクローナルAbまたはモノクローナルAb(100μl/ウェルおよび3μg/ml)を、Immulon 1B 96ウェルプレート上に物理的吸着により4℃で一晩、固相化した。その後、プレートを、0.1M Tris pH7.0中1% BSAで、4℃、一晩、ブロッキングし、続いて、室温で乾燥させた。およそ100μlの糞便抽出物を各ウェルに加え、室温で1時間、インキュベートした。その後、ウェルを、当業者に知られた標準方法に従って、PBS-Tween-20溶液で5回、洗浄した。別個の反応容器において、遊離ウサギpAb(mAbの場合、同じ標的に対する異なる抗体を用いた)に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で、架橋剤スクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)を用いることにより標識して、コンジュゲートを作製し、このコンジュゲートの3μg/mlを、固相化pAbまたはmAbを有する各ウェルに加えた。室温での30分間のインキュベーション時間後、結合していないコンジュゲートを、当業者に知られた標準方法に従って、PBS-Tween-20溶液を用いることによりウェルから洗い流した。その後、50μlのTMBLUE(商標)ペルオキシダーゼ基質(IDEXX Laboratories、Westbrook、ME)を各ウェルに加え、プレートを、室温で10分間、インキュベートした。10分間のインキュベーション時間後、各酵素反応を0.1% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で停止させた後、96ウェルプレートの各ウェルの光学密度(OD)値を、ELISAプレートリーダーを用いることによって、標準分光光度法技術によりA650において測定して、各ウェルについての「OD650値」(または、より簡単に、「OD値」)を作成した。この設定において、96ウェルプレートの任意の特定のウェルについて得られたOD値は、ウェルに存在する特異的に結合した抗原の量に正比例した。実施例において特に断りのない限り、0.1以下のOD値は、陰性結果とみなされ、OD値は陽性結果とみなされた。
【0123】
ジャカリン-ビオチンでの糖鎖検証ELISAを用いた糖鎖/グリコシル化特徴づけ
マウスIgM mAb ADX226コーティング化immulon 1Bプレートを、糖鎖検証ELISAに用いた。およそ100μlの糞便抽出物を各ウェルに加え、室温で1時間、インキュベートした。その後、ウェルを、当業者に知られた標準方法に従って、PBS-Tween-20溶液で5回、洗浄した。ジャカリン-ビオチン(0.25ug/ml)を各ウェルに加え、その後、室温で1時間、インキュベートした。結合していないジャカリン-ビオチン(Vector Laboratories、30 Ingold Road、Burlingame、CA)を、当業者に知られた標準方法に従って、PBS-Tween-20溶液を用いることによりウェルから洗い流した。ストレプトアビジン-HRPコンジュゲート(Vector Laboratories、30 Ingold Road、Burlingame、CA)を各ウェルに加え、室温で30分間、インキュベートした。結合していないストレプトアビジン-HRPコンジュゲートを、再び、PBS-Tween-20溶液を用いることによりウェルから洗い流した。その後、ストレプトアビジン-HRPコンジュゲートとの30分間の後、50μlのTMBLUE(商標)ペルオキシダーゼ基質(IDEXX Laboratories、Westbrook、ME)を各ウェルに加え、プレートを、室温で1分間、インキュベートした。1分間のインキュベーション時間後、各酵素反応を0.1% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で停止させた後、96ウェルプレートの各ウェルの光学密度(OD)値を、糞便アッセイELISAセクションにおいて、上記で例示されているように、A650で測定した。
【0124】
実施例1A
Taenia pisiformisに対するマウスモノクローナル抗体の産生およびスクリーニング
マウスmAb(モノクローナル抗体)は、T.pisiformisの虫抽出物(WE)(以下、T.pisiformis抽出物またはT.pisiformisの抽出物)でのマウスの免疫化により産生され、ハイブリドーマを作製した。候補ハイブリドーマを、ELISA捕獲アッセイにおいてマイクロタイタープレート上にコーティングされた免疫原(すなわち、T.pisiformisの抽出物)に結合する分泌mAbの能力についてスクリーニングした。このスクリーニングから、このスクリーニングにおいて陽性であった(すなわち、T.pisiformis抽出物に結合することができた)百(100)個のハイブリドーマ(すなわち、100個のmAb)を、さらなる分析のために選択した。その100個のmAb候補をさらに、捕獲アッセイスクリーニングにより、糞便抗原ELISAアッセイにおいて機能するそれらの能力についてスクリーニングした。T.pisiformis抽出物でのウサギの標準免疫化により産生されたウサギポリクローナル抗体で、マイクロタイタープレートをコーティングした。イヌ糞便試料から作製されたFEX(糞便抽出物)を加えた。その糞便試料は、T.pisiformisに感染していることがわかっているイヌ由来であり、IDEXX Reference Laboratoriesから受け取った。100個の候補mAb上清のうちの1つを各ウェルに加え、続いて、標識にコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgGを加えた。このアッセイにおいて5個のmAb(02D09、03H02、07C02、ADX131、およびADX13)が特に良く機能し、さらなる分析のために選択した。
【0125】
5個のmAbを、サンドイッチアッセイにおいてお互いにペアにされた時に機能するそれらの能力についてさらにスクリーニングした。この目的のために、5個のmAbのそれぞれを、マイクロタイタープレートのウェル上にコーティングし、FEX(Taenia pisiformis陽性試料:n=10;T.pisiformis陰性試料:n=10)とインキュベートし、その後、標識にコンジュゲートされた5個のmAbのうちの1個、またはTaenia pisiformis WEマウスpAbとインキュベートした。5個のmAbは、その他のmAbのうちの少なくとも1個との組合せにおいて、よく機能し、したがって、さらなる研究のためにそれらを選択した。よく機能した5個のmAbから、2個(ADX131およびADX132)をさらなる試験に選択し、その理由は、それらが、糞便抗原ELISAにおいてお互いにペアにされた時、低いバックグラウンドおよび高いシグナルを生じたからである。
【0126】
別のELISAアッセイにおいて、ADX131およびADX132をそれぞれ、02D09、03H02、07C02、ADX131、およびADX132のHRPコンジュゲートとペアにした。T.pisiformis WEウサギpAbとの追加のペア形成を、陽性対照として用いた。ADX131およびADX132を、個々に、マイクロタイタープレートのウェル上にコーティングした;T.pisiformis感染イヌ由来のFEX、T.pisiformis非感染イヌ由来のFEX、またはT.pisiformis虫抽出物とインキュベートし、続いて、コンジュゲートおよびHRP基質とインキュベートした。5個の抗体ペア形成のそれぞれにおいて、ADX131は、感染イヌ由来のFEXおよび虫抽出物に関して、強いシグナルを生じた。5個の抗体ペア形成のうちの4個において、ADX131は、非感染イヌ由来のFEXに関して陰性結果(すなわち、閾値より下であるシグナル)を生じたが、ただし、03H02とのペア形成が、0.1 ODの選択された閾値よりわずかに上であるシグナルを生じた(
図1)。全ての5個の抗体ペア形成において、ADX132は、感染イヌ由来のFEXおよび虫抽出物に関して強いシグナルを生じた。全ての5個の抗体ペア形成において、ADX132は、非感染イヌ由来のFEXに関して低いバックグラウンドシグナルを生じた(
図2)。
【0127】
実施例1B
Taenia pisiformis糞便抗原ELISA特異度および感度の評価
アッセイの特異度を評価するために、(プレート上にコーティングされたADX131およびADX132-HRPコンジュゲートを用いる)T.pisiformis糞便抗原ELISAアッセイを、鉤虫Ancylostoma caninum(n=44)、回虫Toxocara canis(n=9)、鞭虫Trichuris vulpis(n=36)、D.caninum(n=44)、またはTaenia pisiformis(n=5)に感染したイヌ由来のFEXに対して試験した。その結果(
図3参照)は、全ての5個のT.pisiformis試料がアッセイにおいて陽性であり、その他の全部が陰性であったことを示した。T.pisiformis糞便抗原ELISAは、鉤虫Ancylostoma caninumとも、回虫Toxocara canisとも、鞭虫Trichuris vulpisとも、D.caninumとも交差反応しなかった。したがって、T.pisiformis糞便抗原ELISAアッセイは、この実験において100%の感度および特異度であった。アッセイの特異度を評価するために、サンドイッチ糞便抗原ELISAを、マイクロタイタープレート上にコーティングされたADX131で構築し、ADX132-HRPコンジュゲートを、患者試料の添加後に適用した。アッセイを、D.caninum WE、T.pisiformis WE、T.crassiceps WE、T.taeniaeformis WE、T.taeniaeformis E/S、加えて、D.caninum陽性イヌ、D.caninum陰性イヌ、D.caninum陽性ネコ、D.caninum陰性ネコ、T.pisiformis陽性イヌ、T.pisiformis陰性イヌ、3匹のT.taeniaeformis陽性ネコの集合、および3匹のT.taeniaeformis陰性ネコの集合に由来のFEXに関して実行した。前述のWEを、1μg/mlタンパク質の濃度で用いた。追加として、アッセイを、2μg/mlタンパク質および/または10μg/mlタンパク質における数個のWE試料に関して実行した。これらのより高い濃度で実行されたWE試料は、D.caninum WE、T.pisiformis WE、T.taeniaeformis WE、T.crassiceps WE、鉤虫Ancylostoma caninum WE、回虫Toxocara canis WE、および鞭虫Trichuris vulpis WEであった。これらの試料の中で、アッセイは、T.pisiformis WEおよびT.pisiformis陽性イヌに関してのみ陽性であった(
図4)。したがって、ADX131/ADX132-HRP ELISAは、この実験において非常に特異度が高かった。
【0128】
(プレート上にコーティングされたADX131、およびADX132-HRPコンジュゲートを用いる)T.pisiformis糞便抗原ELISAアッセイの特異度を評価するために、アッセイを、822個のイヌ試料由来のFEXに関して実行した。これらの試料のうち、1個の試料が、顕微鏡観察によりT.pisiformis陽性と確認されており(すなわち、片節が顕微鏡観察により観察された)、821個が、顕微鏡観察によりT.pisiformis陰性と確認されていた。結果は、821個の顕微鏡観察による陰性試料のうち、818個が、T.pisiformis糞便抗原ELISAアッセイにおいて陰性であり、3個が陽性であることを示した。顕微鏡観察による陽性試料は、T.pisiformis糞便抗原ELISAアッセイにおいて陽性であった。したがって、T.pisiformis糞便抗原ELISAアッセイは、この実験において99.7%の特異度であった。
【0129】
実施例1C
抗原特徴づけ:抗T.pisiformis mAb ADX131と結合した抗原のグリコシル化
mAb ADX131と結合した糞便抗原がグリコシル化されているかどうかを決定するために、21個の異なるレクチンの能力を、市販キット(Vector Laboratories、Burlingame、CA製のビオチン化レクチンキットI、II、およびIII)を用いて糞便抗原に結合するそれらの能力について試験した。アッセイを、製造会社の使用説明書に従って行った。簡単に述べれば、T.pisiformis陽性イヌ由来のFEXを、ADX131でコーティングされたプレートに加えた。洗浄後、レクチン::ビオチンコンジュゲートを加え、続いて、ストレプトアビジン-HRPおよび発色基質を加えた。この試験において、以下のレクチンが、高いシグナルおよび低いバックグラウンドを生じ、それらが、T.pisiformis糞便抗原に結合したことを示している:WGA、スクシニル化WGA、PSA、GSLII、およびLCA。
【0130】
抗原特徴づけ:抗T.pisiformis mAb ADX132と結合した抗原のグリコシル化
mAb ADX132と結合した糞便抗原がグリコシル化されているかどうかを決定するために、ADX132が、21個の異なるレクチンと結合したFEX物質に結合する能力を、市販キット(Vector Laboratories、Burlingame、CA製のビオチン化レクチンキットI、II、およびIII)を用いて試験した。アッセイを、製造会社の使用説明書に従って行った。簡単に述べれば、マイクロタイタープレートのウェルをレクチンのうちの1つでコーティングし、T.pisiformis陽性イヌ由来のFEXを加え、続いて、ADX132-HRPコンジュゲートおよび発色基質を加えた。この試験において、以下のレクチンが糞便抗原と結合した:WGA、UEA、およびGSLII。
【0131】
レクチン結合データは、ADX131/ADX132アッセイにより結合したT.pisiformis糞便抗原がグリコシル化されていることを示している。レクチン結合データはさらに、ADX131/ADX132糞便抗原が以下の部分を含有することを示している:非還元型GlcNac;還元型GlcNac;フコース;GSL II;およびマンノース。
【0132】
実施例2A
T.taeniaeformisに対するウサギポリクローナル抗体の調製
T.taeniaeformisの虫抽出物(WE)、E/S材料、および虫洗浄液(WW)を、上記のように調製した。ウサギを、上記のように、T.taeniaeformis WE、T.taeniaeformis E/S、またはT.taeniaeformis WWで免疫して、ポリクローナル抗体T.taeniaeformis WEウサギpAb、T.taeniaeformis E/SウサギpAb、およびT.taeniaeformis WWウサギpAbが産生された。
【0133】
A. T.taeniaeformis WEウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイ、およびT.taeniaeformis E/SウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイの最初の評価
T.taeniaeformis WEウサギpAb、およびT.taeniaeformis E/SウサギpAbでの糞便抗原ELISAアッセイの性能の最初の評価のために、7匹のT.taeniaeformis陽性ネコおよび6匹のT.taeniaeformis陰性ネコ由来のネコ糞便抽出物を試験した。
【0134】
T.taeniaeformis WEウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイ:
このELISAアッセイにおいて、T.taeniaeformis WEウサギpAbをプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、T.taeniaeformis WEウサギpAb-HRPコンジュゲートと接触させ、その後、発色基質と接触させた。このアッセイにおいて、全ての7個のT.taeniaeformis陽性試料は陽性であり、一方、全ての6個のT.taeniaeformis陰性試料は陰性と出た。したがって、T.taeniaeformis WEウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイについての感度および特異度はこの実験において100%であった。
【0135】
T.taeniaeformis E/SウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイ:
このELISAアッセイにおいて、T.taeniaeformis E/SウサギpAbをプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、T.taeniaeformis E/SウサギpAb-HRPコンジュゲートと接触させ、その後、発色基質と接触させた。このアッセイにおいて、全ての7個のT.taeniaeformis陽性試料は陽性であり、一方、全ての6個のT.taeniaeformis陰性試料は陰性と出た。したがって、T.taeniaeformis E/SウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイについての感度および特異度はこの実験において100%であった。
【0136】
B. イヌおよびネコの糞便試料に関するT.taeniaeformis WEウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイの性能
(セクションAに記載されているような)T.taeniaeformis WEウサギpAbを用いた糞便抗原ELISAアッセイの性能を、イヌおよびネコの糞便抽出物に関してさらに評価した。イヌ試料セットは31匹のT.taeniaeformis陽性イヌおよび74匹のT.taeniaeformis陰性イヌに由来の糞便抽出物を含んだ。ネコ試料セットは13匹のT.taeniaeformis陽性ネコおよび39匹のT.taeniaeformis陰性ネコに由来の糞便抽出物を含んだ。
【0137】
イヌについて、31個の陽性試料の中で、T.taeniaeformis WEウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、8個の試料において陽性シグナルを生じた。74個の陰性イヌ試料の中で、T.taeniaeformis WEウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、6個の試料において陽性シグナルを生じた。したがって、この実験において、感度は、25.8%であり、特異度は91.9%であった。
【0138】
ネコについて、13個の陽性試料の中で、T.taeniaeformis WEウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、12個の試料において陽性シグナルを生じた。39個の陰性試料の中で、T.taeniaeformis WEウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、4個の試料において陽性シグナルを生じた。したがって、この実験において、感度は、92.3%であり、特異度は89.7%であった。
【0139】
C. イヌおよびネコの糞便抽出物に関するT.taeniaeformis E/SウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイの性能
(セクションAに記載されているような)T.taeniaeformis E/SウサギpAbを用いた糞便抗原ELISAアッセイの性能を、イヌおよびネコの糞便抽出物に関してさらに評価した。イヌ試料セットは31匹のT.taeniaeformis陽性イヌおよび74匹のT.taeniaeformis陰性イヌに由来の糞便抽出物を含んだ。ネコ試料セットは13匹のT.taeniaeformis陽性ネコおよび39匹のT.taeniaeformis陰性ネコに由来の糞便抽出物を含んだ。
【0140】
イヌについて、31個の陽性試料の中で、T.taeniaeformis E/SウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、4個の試料において陽性シグナルを生じた。74個の陰性イヌ試料において、T.taeniaeformis E/SウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、1個の試料において陽性シグナルを生じた。したがって、この実験において、感度は、12.9%であり、特異度は98.6%であった。
【0141】
ネコについて、13個の陽性試料の中で、T.taeniaeformis E/SウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、12個の試料において陽性シグナルを生じた。39個の陰性試料の中で、T.taeniaeformis E/SウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、3個の試料において陽性シグナルを生じた。したがって、この実験において、感度は、92.3%であり、特異度は92.3%であった。
【0142】
D. イヌおよびネコの糞便試料に関するT.taeniaeformis WWウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイの性能
T.taeniaeformis WWウサギpAbを用いた糞便抗原ELISAアッセイの性能を、イヌおよびネコの糞便抽出物に関して評価した。イヌ試料セットは31匹のT.taeniaeformis陽性イヌおよび74匹のT.taeniaeformis陰性イヌに由来の糞便抽出物を含んだ。ネコ試料セットは13匹のT.taeniaeformis陽性ネコおよび39匹のT.taeniaeformis陰性ネコに由来の糞便抽出物を含んだ。
【0143】
イヌについて、31個の陽性試料の中で、T.taeniaeformis WWウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、16個の試料において陽性シグナルを生じた。74個の陰性イヌ試料において、T.taeniaeformis WEウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、3個の試料において陽性シグナルを生じた。したがって、この実験において、感度は、51.6%であり、特異度は98.6%であった。
【0144】
ネコについて、13個の陽性試料の中で、T.taeniaeformis WWウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、12個の試料において陽性シグナルを生じた。39個の陰性試料の中で、T.taeniaeformis WWウサギpAb-ウサギpAb ELISAアッセイは、3個の試料において陽性シグナルを生じた。したがって、この実験において、感度は、92.3%であり、特異度は95.9%であった。
【0145】
実施例2B
T.taeniaeformis WEおよびT.taeniaeformis E/Sに対するマウスポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製
T.taeniaeformisの虫抽出物(WE)およびT.taeniaeformisのE/S材料を、上記のように調製した。上記のように、マウスを、T.taeniaeformis WEまたはT.taeniaeformis E/Sで免疫して、マウスポリクローナル抗体T.taeniaeformis WEマウスpAbおよびT.taeniaeformis E/SマウスpAbが産生された。これらのポリクローナル抗体は、免疫原がマイクロタイタープレート上にコーティングされている時、それらのそれぞれの免疫原と特異的に結合した。
【0146】
A. T.taeniaeformis WEマウスmAbの調製
ハイブリドーマは、上記のようにT.taeniaeformis WEで免疫されたマウスに由来していた。生じたマウスモノクローナル抗体(マウスmAb)分泌性ハイブリドーマから、以下の2個のT.taeniaeformis WEマウスmAbを選択し、それらが、ELISAアッセイにおいて高いシグナルおよび低いバックグラウンドを生じたからである:ADX184(IgG)およびADX185(IgM)。
【0147】
B. T.taeniaeformis WEマウスmAbを用いた糞便抗原ELISAの性能
感度を評価するために、ADX185をマイクロタイタープレート上にコーティングし、その後、患者試料を加え、その後、T.taeniaejormis WEウサギpAb-HRPコンジュゲートを加えて、サンドイッチ糞便抗原ELISAアッセイを構築した。アッセイを、7匹のT.taeniaeformis陽性ネコおよび3匹のT.taeniaeformis陰性ネコに由来のFEXに関して実行した。
図5に示されているように、アッセイは、7個の陽性試料のうち7個において、および3個の陰性試料のうち0個において、糞便抗原を検出した。したがって、ADX185/T.taeniaeformis WEウサギpAb-HRP ELISAの感度は、この実験において、100%であった。
【0148】
特異度を評価するために、ADX184をマイクロタイタープレート上にコーティングし、そして、患者試料の添加後、ADX193-HRPコンジュゲートを適用することで、サンドイッチ糞便抗原ELISAを構築した。ADX193は、下記のT.taeniaeformis E/SマウスmAbである。アッセイを、D.caninum WE、T.pisiformis WE、T.crassiceps WE、T.taeniaeformis WE、T.taeniaeformis E/S、加えて、the fecal extracts from D.caninum陽性イヌ、D.caninum陰性イヌ、D.caninum陽性ネコ、D.caninum陰性ネコ、T.pisiformis陽性イヌ、Taenia pisiformis陰性イヌ、3匹のT.taeniaeformis陽性ネコの集合、および3匹のT.taeniaeformis陰性ネコの集合に関して実行した。前述のWEを、1μg/mlタンパク質の濃度で用いた。追加として、アッセイを、10μg/mlタンパク質および2μg/mlタンパク質での数個のWE試料に関して実行した。これらのより高い濃度で実行されたWE試料は、D.caninum WE、T.pisiformis WE、T.taeniaeformis WE、T.crassiceps WE、鉤虫Ancylostoma caninum WE、回虫Toxocara canis WE、および鞭虫Trichuris vulpis WEであった。これらの試料の中で、
図6に示されているように、アッセイは、T.taeniaeformis WE(10μg/ml)およびT.taeniaeformis陽性ネコの集合に関してのみ陽性であった。したがって、ADX184/ADX193-HRP ELISAは、この実験において、非常に特異度が高かった。
【0149】
C. T.taeniaeformis E/SマウスmAbの調製およびスクリーニング
ハイブリドーマは、上記のようにT.taeniaeformis E/Sで免疫されたマウスに由来していた。生じたマウスモノクローナル抗体(マウスmAb)分泌性ハイブリドーマから、以下の5個のT.taeniaeformis E/SマウスmAbを選択した:ADX190、ADX191、ADX192、ADX193、ADX194。これらの5つのmAbをさらに、それぞれが抗E/SマウスpAb-HRPコンジュゲートとペアにされた時のELISAアッセイにおけるそれらの性能について評価した。5つのアッセイを、T.taeniaeformis E/S、7匹のT.taeniaeformis陽性ネコ由来の糞便抽出物、および3匹のT.taeniaeformis陰性ネコ由来の糞便抽出物に関して実行した。5つのアッセイのそれぞれは、全ての7個の陽性ネコ試料を検出した。それぞれはまた、3個の陰性ネコ由来の試料に関して陰性であったが、ADX193およびADX194は、3個の陰性ネコ試料のうち1個に関してより高いバックグラウンドを有した。
【0150】
実施例2C
ADX184をADX193-HRPと共に用いるELISAの性能
ELISAを、マイクロタイタープレート上にコーティングされたADX184、およびHRPにコンジュゲートされたADX193を用いて構築した。両方のマウスmAbを5μg/mlの濃度で用いた。
【0151】
ADX184/ADX193-HRP ELISAを、6匹のT.taeniaeformis陽性ネコ由来の糞便抽出物、4匹のT.taeniaeformis陰性ネコ由来の糞便抽出物、および1個のT.taeniaeformis E/Sタンパク質の試料に関して実行した。
図7に示されているように、アッセイは、全ての6個の陽性糞便抽出物およびE/S試料において糞便抗原を検出したが、4個の陰性糞便抽出物のいずれにおいても糞便抗原を検出しなかった。
【0152】
ADX184/ADX193-HRP ELISAを、68匹のT.taeniaeformis陽性ネコ由来の糞便抽出物、および108匹のD.caninum陽性であるT.taeniaeformis陰性のネコ由来の糞便抽出物に関して実行した。アッセイは、68個のT.taeniaeformis陽性試料のうち55個において陽性シグナルを生じ(80.9%感度)、108個のT.taeniaeformis陰性試料のうち1個において陽性シグナルを生じた(99.1%特異度;D.caninumとの0.9%交差反応性)。
【0153】
実施例2D
ADX191をADX194-HRPと共に用いるELISAの性能
糞便抗原ELISAを、マイクロタイタープレート上にコーティングされたADX191、およびHRPにコンジュゲートされたADX194を用いて構築した。両方のマウスmAbを3μg/mlの濃度で用いた。このELISAを、6匹のT.taeniaeformis陽性ネコ由来の糞便抽出物、4匹のT.taeniaeformis陰性ネコ由来の糞便抽出物、および1個のT.taeniaeformis E/Sタンパク質の試料に関して実行した。
図8に示されているように、アッセイは、全ての6個の陽性糞便抽出物およびE/S試料を検出したが、4個の陰性糞便抽出物のいずれにおいても糞便抗原を検出しなかった。
【0154】
実施例3A
A. Dipylidium caninum TCA可溶性画分に対するウサギpAb(D.caninum TCAウサギpAb)の調整
D.caninum虫のTCA画分を、上記のように調製し、それを用いて2匹のウサギを免疫した。これらのウサギのうちの1匹由来の抗血清を、さらなる分析のために選択した。
【0155】
B. イヌおよびネコの試料に関するD.caninum TCAウサギpAb ELISAアッセイの評価
この糞便抗原ELISAアッセイにおいて、上記のように、D.caninum TCAウサギpAbをプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、D.caninum TCAウサギpAb-HRPコンジュゲートと接触させ、その後、発色基質と接触させた。
【0156】
イヌ: D.caninum TCAウサギpAb ELISAアッセイを、58匹のD.caninum陽性イヌ由来の糞便抽出物に関して実行した;ELISAは、58個の試料のうち57個において陽性シグナルを生じた。アッセイをまた、27匹のD.caninum陰性イヌ由来の糞便抽出物に関して実行した;ELISAは、27個の試料のうち8個において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、98.3%の感度および70.4%の特異度であった。
【0157】
ネコ: D.caninum TCAウサギpAb ELISAアッセイを、31匹のD.caninum陽性ネコ由来の糞便抽出物に関して実行した;ELISAは、31個の試料のうち28個において陽性シグナルを生じた。アッセイをまた、13匹のD.caninum陰性ネコ由来の糞便抽出物に関して実行した;ELISAは、13個の試料のうち5個において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、90.3%の感度および61.5%の特異度であった。
【0158】
実施例3B
A. D.caninum WE画分に対するウサギpAb(D.caninum WEウサギpAb)の調製
WEを、上記のように、D.caninum虫(Antibody Systems)から調製し、それを用いて、2匹のウサギを免疫した。これらのウサギのうちの1匹由来の抗血清をさらなる分析のために選択した。
【0159】
B. D.caninum WEウサギpAb ELISAアッセイの評価
このELISAアッセイにおいて、上記のように、D.caninum WEウサギpAbをプレート上にコーティングし、5μg/mlでのFEXと接触させ、その後、3μg/mlでのD.caninum WEウサギpAb-HRPコンジュゲートと接触させ、その後、発色基質と接触させた。このD.caninum WEウサギpAb ELISAアッセイを、数個の蠕虫種由来の虫抽出物:D.caninum WE、Taenia pisiformis WE、T.crassiceps WE、鉤虫Ancylostoma caninum WE、回虫Toxocara canis WE、鞭虫Trichuris vulpis WEに関して実行した。
図9に示されているように、D.caninum WEだけが、このELISAにおいて陽性シグナルを生じ、この実験におけるアッセイの特異性を実証した。
【0160】
D.caninum WEウサギpAb ELISAアッセイの性能を、以下のように、追加の実験において評価した。アッセイを、44匹のD.caninum陽性イヌおよび48匹のD.caninum陰性イヌ由来の糞便抽出物に関して実行した。アッセイは、44個の陽性試料のうち16個において、および0個の陰性試料において、陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、36.4%の感度および100%の特異度であった。
【0161】
実施例3C
A. D.caninum E/Sに対するウサギpAb(D.caninum E/SウサギpAb)の調製
E/Sを、上記のように、イヌ由来のD.caninum虫から調製し、それを用いて、2匹のウサギを免疫した。これらのウサギのうちの1匹由来の抗血清をさらなる分析のために選択した。
【0162】
B. D.caninum E/SウサギpAb ELISAアッセイの評価
この糞便抗原ELISAアッセイにおいて、上記のように、D.caninum E/SウサギpAbをプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、D.caninum WEウサギpAb-HRPコンジュゲートと接触させ、その後、発色基質と接触させた。
【0163】
アッセイを、7匹のD.caninum陽性イヌ由来の糞便抽出物に関して実行した。アッセイは、7個の陽性試料のうち4個において陽性シグナルを生じた。アッセイは、4匹のD.caninum陰性イヌのうちの1匹において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、57.1%の感度および75%特異度であった。
【0164】
実施例3D
A. D.caninum WEに対するウサギmAb(D.caninum WEウサギmAb)の調製
WEを、上記のように、イヌ由来のD.caninum虫全体から調製した。ウサギを、標準免疫化手順に従って、Dipylidium caninum WEで免疫した(SDIX、Windham、Maine、USA)。最初の免疫化から少なくとも3週間後の追加免疫の後、ウサギ由来の血液試料をモノクローナル抗体発生のために用いた(ImmunoPrecise Antibodies,Ltd.(IPA)、Victoria、British Columbia、Canada)。ウサギ由来のB細胞を収集し、B細胞培養上清を、D.caninum WEコーティング化96ウェルプレートにおいて評価し、二次抗ウサギIgG抗体で探索した。陽性ウェルからのおよそ50μlのB細胞上清を、様々な糞便抽出物を用いた二次スクリーニング(IDEXX)において特異的結合について試験した。この二次スクリーニングからの最良の32個の候補のB細胞を、クローニングのために溶解バッファー中に保存した。これらの32個の候補からRNAを単離し、ウサギ抗体重鎖可変領域および軽鎖(κ)可変領域を、別々の哺乳動物発現ベクター(IPA)へクローニングした。抗体重鎖および軽鎖ベクターをトランスフェクションされた哺乳動物細胞から収集された組織培養上清を、様々な糞便抽出物を用いて再び、評価した。組換えウサギmAb DNA構築物の上位の5個のクローンを、シーケンシングした(IPA)。これらの5個のウサギmAbクローンのうちの以下の2個を、さらなる分析のために選択した:RDX13およびRDX12。
【0165】
B. D.caninum WEウサギmAbを用いたELISAアッセイのイヌおよびネコ試料における評価
この一連の糞便抗原ELISAアッセイにおいて、上記のように、マウスmAb ADX226をプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、RDX13-HRPコンジュゲートおよび/またはRDX12-HRPコンジュゲートと接触させ、その後、発色基質と接触させた。
【0166】
第1の実験において、RDX13-HRPコンジュゲートおよびRDX12-HRPコンジュゲートを混合し、アッセイを、38匹のD.caninum陽性イヌ、28匹のD.caninum陰性イヌ、20匹のD.caninum陽性ネコ、および7匹のD.caninum陰性ネコに由来の糞便抽出物に関して実行した。アッセイは、38匹の陽性イヌのうちの28匹、28匹の陰性イヌのうちの2匹、20匹の陽性ネコのうちの18匹、および7匹の陰性ネコのうちの0匹において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、イヌ試料について73.7%の感度および92.9%の特異度、ならびにネコ試料について90.0%の感度および100%の特異度を生じた。
【0167】
第2、第3、および第4の実験において、RDX13-HRPコンジュゲートおよびRDX12-HRPコンジュゲートを、個々に、および混合して、用い、アッセイを、37匹のD.caninum陽性イヌ、28匹のD.caninum陰性イヌ、21匹のD.caninum陽性ネコ、および7匹のD.caninum陰性ネコ試料に関して実行した。
【0168】
第2の実験において、RDX13-HRPを単独で用い、アッセイは、37匹の陽性イヌのうち20匹、28匹の陰性イヌのうち1匹、21匹の陽性ネコのうち15匹、および7匹の陰性ネコのうちの0匹において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、イヌ試料について54.1%の感度および96.4%の特異度、ならびにネコ試料について71.4%の感度および100%の特異度を生じた。
【0169】
第3の実験において、RDX12-HRPを単独で用い、アッセイは、37匹の陽性イヌのうち13匹、28匹の陰性イヌのうち1匹、21匹の陽性ネコのうち16匹、および7匹の陰性ネコのうちの0匹において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、イヌ試料について35.1%の感度および96.4%の特異度、ならびにネコ試料について76.2%の感度および100%の特異度を生じた。
【0170】
第4の実験において、RDX13-HRPコンジュゲートおよびRDX12-HRPコンジュゲートを混合し、アッセイは、37匹の陽性イヌのうち22匹、28匹の陰性イヌのうち1匹、21匹の陽性ネコのうち19匹、および7匹の陰性ネコのうちの0匹において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、イヌ試料について59.5%の感度および96.4%の特異度、ならびにネコ試料について90.5%の感度および100%の特異度を生じた。
【0171】
実施例3E
A. D.caninum WEに対するマウスpAb(D.caninum WEマウスpAb)の調製
WEを、上記のように、イヌ由来のD.caninum虫から調製し、それを用いて、マウスを免疫した。生じた抗血清、D.caninum WEマウスpAbを、下記のELISA実験に用いた。
【0172】
B. D.caninum WEマウスpAbを用いたELISAアッセイのイヌおよびネコ試料における評価
この糞便抗原ELISAアッセイにおいて、上記のように、D.caninum WEマウスpAbをプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、D.caninum WEマウスpAb-HRPコンジュゲートと接触させ、その後、発色基質と接触させた。
【0173】
アッセイを、4匹のD.caninum陽性イヌおよび3匹のD.caninum陽性ネコ;Giardia属およびT.taeniaeformisに感染した1匹のD.caninum陰性ネコ、T.taeniaeformisに感染した1匹のD.caninum陰性ネコ、およびToxocara属およびTaenia pisiformisに感染した1匹のイヌに由来の糞便抽出物に関して実行した。
図10に示されているように、アッセイは、4匹の陽性イヌのうち4匹、1匹の陰性イヌのうち0匹、3匹の陽性ネコのうち3匹、および2匹の陰性ネコのうち0匹において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、高度の特異度および感度を生じた。
【0174】
実施例3F
A. D.caninum TCA可溶性画分に対するマウスmAb(D.caninum TCAマウスmAb)の調製
TCA可溶性画分を、上記のように、イヌ由来のD.caninum虫から調製し、それを用いてマウスを免疫した(MBS)。免疫されたマウスの脾臓を用いて、マウスmAb、ADX251を作製し、それを以下のELISA実験に用いた。
【0175】
B. D.caninum TCAマウスmAbを用いたELISAアッセイのイヌおよびネコ試料における評価
第1の糞便抗原ELISA設定において、マウスmAb ADX226をプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、マウスmAb ADX251-HRPコンジュゲート、続いて発色基質と接触させた。
【0176】
アッセイを、3匹のD.caninum陽性イヌ、5匹のD.caninum陰性イヌ;3匹のD.caninum陽性ネコ、および1匹のD.caninum陰性ネコに由来の糞便抽出物において実行した。
図11に示されているように、アッセイは、3匹の陽性イヌのうちの3匹、5匹の陰性イヌのうちの0匹、3匹の陽性ネコのうちの3匹、および1匹の陰性ネコのうちの0匹において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、高度の特異度および感度を生じた。
【0177】
第2の糞便抗原ELISA設定において、マウスmAb ADX251をプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、マウスmAb ADX227-HRPコンジュゲート、続いて発色基質と接触させた。アッセイを、3匹のD.caninum陽性イヌ、5匹のD.caninum陰性イヌ;3匹のD.caninum陽性ネコ、および1匹のD.caninum陰性ネコ由来の糞便抽出物において実行した。
図12に示されているように、アッセイは、3匹の陽性イヌのうちの3匹、5匹の陰性イヌのうちの0匹、3匹の陽性ネコのうちの3匹、および1匹の陰性ネコのうちの0匹において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、高度の特異度および感度を生じた。
【0178】
第3の糞便抗原ELISA設定において、マウスmAb ADX251をプレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、D.caninum WEウサギpAb-HRPコンジュゲート、続いて発色基質と接触させた。アッセイを、3匹のD.caninum陽性イヌ、5匹のD.caninum陰性イヌ;3匹のD.caninum陽性ネコ、および1匹のD.caninum陰性ネコ由来の糞便抽出物において実行した。
図13に示されているように、アッセイは、3匹の陽性イヌのうちの3匹、5匹の陰性イヌのうちの0匹、3匹の陽性ネコのうちの3匹、および1匹の陰性ネコのうちの0匹において陽性シグナルを生じた。したがって、アッセイは、この実験において、高度の特異度および感度を生じた。
【0179】
実施例3G
A. D.caninum WEに対するマウスmAb(D.caninum WEマウスmAb)の調製
WEを、上記のように、イヌ由来のD.caninum虫から調製し、それを用いて、マウスを免疫した。これらのマウスから、上記のように、4つのモノクローナル抗体(ADX224、ADX225、ADX226、およびADX227)を作製し、さらなる分析のために選択した。
【0180】
B. D.caninum WEマウスmAbを用いたELISAアッセイのイヌおよび
ネコ試料における評価
以下のELISA設定を、3匹のD.caninum陽性イヌ、4匹のD.caninum陰性イヌ;3匹のD.caninum陽性ネコ、および1匹のD.caninum陰性ネコ由来の糞便抽出物において実行した。
【0181】
第1のセットの糞便抗原ELISA設定において、D.caninum WEマウスmAbを個々に、プレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、D.caninum WEウサギpAb-HRPコンジュゲート、続いて発色基質と接触させた。結果は、
図14に示されている。このように、プレート上にADX224を用いたアッセイは、6個の陽性試料のうち5個において、および0個の陰性試料において糞便抗原を検出した。プレート上にADX225を用いたアッセイは、6個の陽性試料のうち6個において、および0個の陰性試料において糞便抗原を検出した。プレート上にADX226を用いたアッセイは、6個の陽性試料のうち6個において、および0個の陰性試料において糞便抗原を検出した。プレート上にADX227を用いたアッセイは、6個の陽性試料のうち6個において、および0個の陰性試料において、糞便抗原を検出した。
【0182】
第2のセットの糞便抗原ELISA設定において、4つのD.caninum WEマウスmAbのそれぞれを個々に、プレート上にコーティングし、FEXと接触させ、その後、4つのD.caninum WEマウスmAb-HRPコンジュゲートのそれぞれ、続いて発色基質と接触させた。結果は、
図15に示されている。試験された組合せの中で、2つのペア形成を選択した。プレート上のADX226およびADX227-HRPを用いたアッセイは、6個の陽性試料のうち6個において、および0個の陰性試料において、糞便抗原を検出した;ならびにプレート上のADX227およびADX227-HRPを用いたアッセイは6個の陽性試料のうち6個において、および0個の陰性試料において、糞便抗原を検出した。ADX227のそれ自体とのペア形成のこの成功は、ADX227により検出された糞便抗原が、反復性エピトープを含有することを示唆している。
【0183】
実施例3H
A. 抗原特徴づけ:抗D.caninum抗体ADX226と結合した抗原のグリコシル化
D.caninum WEマウスmAb ADX226と結合した糞便抗原がグリコシル化されているかどうかを決定するために、21個の異なるレクチンの能力を、市販キット(Vector Laboratories、Burlingame、CA製のビオチン化レクチンキットI、II、およびIII)を用いて、糞便抗原に結合するそれらの能力について試験した。アッセイを、製造会社の使用説明書に従って行った。簡単に述べれば、ADX226をImmulon 1bプレートへコーティングした。D.caninum陽性または陰性イヌ由来のFEXをプレートに加えた。洗浄後、レクチン::ビオチンコンジュゲートを加え、その後、ストレプトアビジン-HRPおよび発色基質を加えた。結果は
図16に示されている。この試験において、以下のレクチンが、ADX226糞便抗原と特異的かつ強く結合した:PSA、LCA、ジャカリン、ECL、GSL1、RCA123、およびWGA。このレクチン結合データは、ADX226と結合したD.caninum糞便抗原がグリコシル化されていることを示している。
【0184】
B. 抗原特徴づけ:抗D.caninum WEウサギpAbと結合した抗原のグリコシル化
抗体D.caninum WEウサギpAbと結合した糞便抗原がグリコシル化されているかどうかを決定するために、21個の異なるレクチンを、市販キット(Vector Laboratories、Burlingame、CA製のビオチン化レクチンキットI、II、およびIII)を用いて、糞便抗原に結合するそれらの能力について試験した。アッセイを、製造会社の使用説明書に従って行った。簡単に述べれば、D.caninum WEウサギpAbをImmulon 1bプレートへコーティングした。D.caninum陽性または陰性イヌおよびネコ由来のFEXをプレートに加えた。洗浄後、レクチン::ビオチンコンジュゲートを加え、その後、ストレプトアビジン-HRPおよび発色基質を加えた。この試験において、以下のレクチンが、D.caninum WEウサギpAb糞便抗原と結合した:ジャカリン、WGA、スクシニル化WGA、GSL II。この結果は
図17に示されている。このレクチン結合データは、D.caninum WEウサギpAbと結合したD.caninum糞便抗原がグリコシル化されていることを示している。このデータはまた、抗体-レクチンサンドイッチアッセイが、D.caninum糞便抗原を検出するために用いられ得ることも示している。
【0185】
C. 抗原特徴づけ:抗D.caninum抗体 D.caninum WEウサギpAbおよびADX187と結合した抗原のグリコシル化
D.caninum WEウサギpAbおよびADX187(D.caninum WEマウスmAb)と結合した糞便抗原がグリコシル化されているかどうかを決定するために同様のアッセイ設定を用い、21個の異なるレクチンを、市販キット(Vector Laboratories、Burlingame、CA製のビオチン化レクチンキットI、II、およびIII)を用いて、糞便抗原に結合するそれらの能力について試験した。この設定において、21個の異なるビオチン化レクチンをImmulon 1bプレートへコーティングした。D.caninum陽性または陰性イヌ由来のFEXをプレートに加えた。洗浄後、D.caninum WEウサギpAb-HRPコンジュゲートまたはADX187-HRPコンジュゲートを加え、その後、ストレプトアビジン-HRPおよび発色基質を加えた。結果は
図18に示されている。この試験において、以下のレクチンが、D.caninum WEウサギpAb糞便抗原と結合した:ジャカリン、WGA、およびスクシニル化WGA。その同じセットのレクチン:ジャカリン、WGA、およびスクシニル化WGAがADX187糞便抗原と結合した。このレクチン結合データは、D.caninum WEウサギpAbおよびADX187と結合したD.caninum糞便抗原がグリコシル化されていることを確認している。このデータはまた、抗体-レクチンサンドイッチアッセイが、D.caninum糞便抗原を検出するために用いられ得ることも示している。
【0186】
ADX226により認識された糞便抗原のO-グリコシル化のさらなる試験
この実験において、ADX226を、マイクロタイタープレート上にコーティングし、続いて、FEX、その後、ジャカリン-ビオチン、その後、ストレプトアビジン-HRP、および最後にHRP基質を加えた。FEXを、20匹のD.caninum陽性イヌ、24匹のD.caninum陰性イヌ、12匹のD.caninum陽性ネコ、および3匹のD.caninum陰性ネコの糞便抽出物から調製した。アッセイは、20匹の陽性イヌのうち18匹(95%の感度)、24匹の陰性イヌのうち0匹(100%の特異度)、12匹の陽性ネコのうち11匹(91.7%の感度)、および3匹の陰性ネコのうち0匹(100%の特異度)において陽性シグナルを生じた。このデータは、ADX226糞便抗原がO-グリコシル化されていること、および抗体とレクチンを用いるサンドイッチイムノアッセイが、条虫糞便抗原を検出するために用いられ得ることを実証している。
【0187】
実施例4
一連の糞便ELISAサンドイッチアッセイを、本質的に上記のセクション「実施例A」に記載されているように、マイクロタイタープレートにおいて実施して、条虫T.pisiformis、条虫T.taeniaeformis、条虫D.caninum、鉤虫Ancylostoma caninum(A.caninum)、鉤虫Ancylostoma tubaeforme(A.tubaeforme)、回虫Toxocara canis(T.canis)、回虫Toxocara cati(T.cati)、鞭虫Trichuris vulpis(T.vulpis)、鞭虫Trichuris felis(T.felis)、および原生動物Giardia lamblia(Giardia属)の検出についてのELISAアッセイの特異度を試験した。
【0188】
以下の源由来の糞便抽出物をELISAアッセイにおいて試験した:T.pisiformis陽性イヌ(
図19、列1)、T.taeniaeformis感染ネコ(
図19、列2)、D.caninum感染イヌ(
図19、列3)、D.caninum感染ネコ(
図19、列4)、鉤虫A.caninum感染イヌ(
図19、列5)、鉤虫A.tubaeforme感染ネコ(
図19、列6)、回虫T.canis感染イヌ(
図19、列7)、回虫T.cati感染ネコ(
図19、列8)、鞭虫T.vulpis感染イヌ(
図19、列9)、鞭虫T.felis感染ネコ(
図19、列10)、Giardia属感染イヌ(
図19、列11)、Giardia属感染ネコ(
図19、列12)、および2匹のパルボウイルス感染ネコ(
図19、列13および14)。
図19において、列1~12は、単一のマイクロタイタープレートの画像であり、列13および14は別の異なるマイクロタイタープレートの画像である。
【0189】
条虫T.pisiformis糞便抗原ELISA(
図19、行A)
T.pisiformis糞便抗原の検出のためのサンドイッチELISAアッセイを構築した。簡単に述べれば、mAb ADX131をマイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、mAb ADX132-HRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。ADX131を、3ug/mlの濃度でコーティングした。ADX132-HRPを、3ug/mlの濃度で用いた。その結果は、このT.pisiformis糞便抗原ELISAが、T.pisiformis感染イヌ由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。しかしながら、このT.pisiformis ELISAは、以下のうちのいずれに由来するFEXにおいても糞便抗原を検出しなかった:条虫T.taeniaeformis感染ネコ、D.caninum感染イヌ、D.caninum感染ネコ、鉤虫A.caninum感染イヌ、鉤虫A.tubaeforme感染ネコ、回虫T.canis感染イヌ、回虫T.cati感染ネコ、鞭虫T.vulpis感染イヌ、鞭虫T.felis感染ネコ、Giardia属感染イヌ、Giardia属感染ネコ、およびパルボウイルス感染ネコ(
図19、行A)。したがって、このT.pisiformis ELISAは、T.pisiformis糞便抗原を特異的に検出し、以下のいずれに由来する糞便抗原とも交差反応しなかった:条虫T.taeniaeformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、原生動物Giardia lamblia、およびネコパルボウイルス。したがって、このT.pisiformis ELISAは、非常に種特異性が高かった。このT.pisiformis ELISAは、T.pisiformisの感染または外寄生の検出または診断に有用である。このT.pisiformis ELISAは、T.pisiformisの感染を、条虫T.taeniaeformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、原生動物Giardia lamblia、イヌパルボウイルス、およびネコパルボウイルスの感染から識別するために用いることができる。
【0190】
条虫T.taeniaeformis糞便抗原ELISA(
図19、行B)
Taenia.taeniaeformis糞便抗原の検出のためのサンドイッチELISAアッセイを構築した。簡単に述べれば、mAb ADX184をマイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、マウスmAb ADX193-HRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。ADX184を、5ug/mlの濃度でコーティングした。ADX193-HRPを、3ug/mlの濃度で用いた。その結果は、このT.taeniaeformis糞便抗原ELISAが、T.taeniaeformis感染イヌ由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。しかしながら、このT.taeniaeformis糞便抗原ELISAは、以下のいずれに由来するFEXにおける糞便抗原も検出しなかった:条虫T.pisiformis感染イヌ、D.caninum感染イヌ、D.caninum感染ネコ、鉤虫A.caninum感染イヌ、鉤虫A.tubaeforme感染ネコ、回虫T.canis感染イヌ、回虫T.cati感染ネコ、鞭虫T.vulpis感染イヌ、鞭虫T.felis感染ネコ、Giardia属感染イヌ、Giardia属感染ネコ、およびパルボウイルス感染ネコ(
図19、行B)。したがって、このT.taeniaeformis ELISAは、T.taeniaeformis糞便抗原を特異的に検出し、以下のうちのいずれに由来する糞便抗原とも交差反応しなかった:条虫T.pisiformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、原生動物Giardia lamblia、およびネコパルボウイルス。したがって、このT.taeniaeformis ELISAは、非常に種特異性が高かった。このT.taeniaeformis ELISAは、T.taeniaeformisの感染または外寄生の検出または診断に有用である。このT.taeniaeformis ELISAは、条虫T.taeniaeformisの感染を、条虫T.pisiformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、原生動物Giardia lamblia、イヌパルボウイルス、およびネコパルボウイルスの感染から識別するために用いることができる。
【0191】
条虫D.caninum糞便抗原ELISA(
図19、行C)
D.caninum糞便抗原の検出のためのサンドイッチELISAアッセイを構築した。簡単に述べれば、mAb ADX226をマイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、mAb RDX5-HRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。ADX226を、3ug/mlの濃度でコーティングした。RDX5-HRPを、3ug/mlの濃度で用いた。その結果は、このD.caninum糞便抗原ELISAが、D.caninum感染イヌおよびD.caninum感染ネコ由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。しかしながら、このD.caninum ELISAは、以下のいずれに由来するFEXにおける糞便抗原も検出しなかった:条虫T.pisiformis感染イヌ、T.taeniaeformis感染ネコ、鉤虫A.caninum感染イヌ、鉤虫A.tubaeforme感染ネコ、回虫T.canis感染イヌ、回虫T.cati感染ネコ、鞭虫T.vulpis感染イヌ、鞭虫T.felis感染ネコ、Giardia属感染イヌ、Giardia属感染ネコ、およびパルボウイルス感染ネコ(
図19、行C)。したがって、このD.caninum ELISAは、D.caninum糞便抗原を特異的に検出し、以下のうちのいずれに由来する糞便抗原とも交差反応しなかった:条虫T.taeniaeformis、条虫T.pisiformis、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、原生動物Giardia lamblia、およびネコパルボウイルス。このように、このD.caninum ELISAは、非常に種特異性が高く、D.caninumの感染または外寄生の検出または診断に有用である。このD.caninum ELISAは、D.caninumの感染を、条虫T.pisiformis、条虫T.taeniaeformis、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、原生動物Giardia lamblia、イヌパルボウイルス、およびネコパルボウイルスの感染から識別するために用いることができる。
【0192】
鉤虫Ancylostoma属糞便抗原ELISA(
図19、行D)
A.caninum糞便抗原の検出のためのサンドイッチELISAアッセイを構築した。簡単に述べれば、全体として参照により本明細書に組み入れられている米国特許第7,951,547号に論じられているように、ポリクローナルのウサギ抗ASP5-1抗体をマイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、マウス抗ASP5-1 mAb-HRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。ウサギポリクローナル抗体を、5ug/mlの濃度でコーティングした。マウスmAbを、4ug/mlの濃度で用いた。その結果は、このAncylostoma属糞便抗原ELISAが、A.caninum感染イヌおよびA.tubaeforme感染ネコ由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。しかしながら、このAncylostoma属ELISAは、以下のうちのいずれに由来するFEXにおける糞便抗原も検出しなかった:条虫T.pisiformis感染イヌ、条虫T.taeniaeformis感染ネコ、条虫D.caninum感染イヌ、条虫D.caninum感染ネコ、回虫T.canis感染イヌ、回虫T.cati感染ネコ、鞭虫T.vulpis感染イヌ、鞭虫T.felis感染ネコ、Giardia属感染イヌ、Giardia属感染ネコ、およびパルボウイルス感染ネコ(
図19、行D)。したがって、このAncylostoma属ELISAは、A.caninumおよびA.tubaeforme糞便抗原を特異的に検出し、以下のうちのいずれに由来する糞便抗原とも交差反応しなかった:条虫T.taeniaeformis、条虫T.pisiformis、条虫D.caninum、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、原生動物Giardia lamblia、およびネコパルボウイルス。このように、このAncylostoma属ELISAは、非常に特異度が高く、鉤虫A.caninumおよびA.tubaeformeの感染または外寄生の検出または診断に有用である。さらに、このAncylostoma属ELISAは、鉤虫A.caninumまたはA.tubaeformeの感染を、条虫T.pisiformis、条虫T.taeniaeformis、条虫D.caninum、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、原生動物Giardia lamblia、イヌパルボウイルス、およびネコパルボウイルスの感染から識別するために用いることができる。
【0193】
回虫Toxocara属糞便抗原ELISA(
図19、行E)
T.canisおよびT.cati糞便抗原の検出のためのサンドイッチELISAアッセイを構築した。簡単に述べれば、全体として参照により本明細書に組み入れられている米国特許第7,951,547号に論じられているように、T.canisタンパク質DIV6728Cに対して産生されたマウスmAbをマイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、T.canisタンパク質DIV6728Cに対して産生された別のマウスmAbのHRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。ADX5を、6ug/mlの濃度でコーティングした。ADX10-HRPを、5ug/mlの濃度で用いた。その結果は、このToxocara属糞便抗原ELISAが、T.canis感染イヌおよびT.cati感染ネコに由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。しかしながら、このToxocara属ELISAは、以下のうちのいずれに由来するFEXにおける糞便抗原も検出しなかった:条虫T.pisiformis感染イヌ、T.taeniaeformis感染ネコ、条虫D.caninum感染イヌ、条虫D.caninum感染ネコ、鉤虫A.caninum感染イヌ、鉤虫A.tubaeforme感染ネコ、鞭虫T.vulpis感染イヌ、鞭虫T.felis感染ネコ、Giardia属感染イヌ、Giardia属感染ネコ、およびパルボウイルス感染ネコ(
図19、行E)。したがって、このToxocara属ELISAは、Toxocara属糞便抗原を特異的に検出し、以下のうちのいずれに由来する糞便抗原とも交差反応しなかった:条虫T.taeniaeformis、条虫T.pisiformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、原生動物Giardia lamblia、およびネコパルボウイルス。このように、このToxocara属ELISAは、非常に特異度が高く、T.canisまたはT.catiの感染または外寄生の検出または診断に有用である。この回虫Toxocara属ELISAは、回虫T.canisまたはT.catiの感染を、条虫T.pisiformis、条虫T.taeniaeformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、原生動物Giardia lamblia、イヌパルボウイルス、およびネコパルボウイルスの感染から識別するために用いることができる。
【0194】
鞭虫Trichuris属糞便抗原ELISA(
図19、行F)
T.vulpis糞便抗原の検出のためのサンドイッチ糞便抗原ELISAアッセイを構築した。簡単に述べれば、全体として参照により本明細書に組み入れられている米国特許第7,951,547号に論じられているように、T.vulpisタンパク質DIV6901に対して産生されたマウスmAb(ADX6)をマイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、T.vulpisタンパク質DIV6901に対して産生された別のマウスmAb(ADX14)のHRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。ADX6を、3ug/mlの濃度でコーティングした。ADX10-HRPを、3ug/mlの濃度で用いた。その結果は、このTrichuris属糞便抗原ELISAが、T.vulpis感染イヌおよびT.felis感染ネコ由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。しかしながら、このTrichuris ELISAは、以下のうちのいずれに由来するFEXにおける糞便抗原も検出しなかった:条虫T.pisiformis感染イヌ、T.taeniaeformis感染ネコ、条虫D.caninum感染イヌ、条虫D.caninum感染ネコ、鉤虫A.caninum感染イヌ、鉤虫A.tubaeforme感染ネコ、回虫T.canis感染イヌ、回虫T.cati感染ネコ、Giardia属感染イヌ、Giardia属感染ネコ、およびパルボウイルス感染ネコ(
図19、行F)。したがって、このTrichuris ELISAは、T.vulpisおよびT.felis糞便抗原を特異的に検出し、以下のうちのいずれに由来する糞便抗原とも交差反応しなかった:条虫T.taeniaeformis、条虫T.pisiformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、回虫T.canis、回虫T.cati、原生動物Giardia lamblia、およびネコパルボウイルス。このように、このTrichuris ELISAは、非常に特異度が高く、T.vulpisおよびT.felisの感染または外寄生の検出または診断に有用である。この鞭虫Trichuris属ELISAは、鉤虫T.vulpisまたはT.felisの感染を、条虫T.pisiformis、条虫T.taeniaeformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、回虫T.canis、回虫T.cati、原生動物Giardia lamblia、イヌパルボウイルス、およびネコパルボウイルスの感染から識別するために用いることができる。
【0195】
Giardia属糞便抗原ELISA(
図19、行G)
Giardia lamblia糞便抗原の検出のためのサンドイッチ糞便抗原ELISAアッセイを、可溶性抗原を特異的に検出する抗体ペア(SNAP(登録商標)Giardia試験、IDEXX Laboratories,Inc. Westbrook、ME、USA)(Olson ME、Leonard NJ、Strout J. Prevalence and diagnosis of Giardia infection in dogs and cats using a fecal antigen test and fecal smear. Can Vet J. 2010 Jun;51(6):640~2、PMID:20808578)を用いて構築した。簡単に述べれば、ウサギ抗Giardia属ポリクローナル抗体を、マイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、マウス抗Giardia属モノクローナル抗体のHRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。ポリクローナル抗体を、3ug/mlの濃度でコーティングした。mAb-HRPを、3ug/mlの濃度で用いた。その結果は、このGiardia属糞便抗原ELISAが、Giardia属感染イヌおよびGiardia属感染ネコ由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。しかしながら、このGiardia属ELISAは、以下のうちのいずれに由来するFEXにおける糞便抗原も検出しなかった:条虫T.pisiformis感染イヌ、T.taeniaeformis感染ネコ、条虫D.caninum感染イヌ、条虫D.caninum感染ネコ、鉤虫A.caninum感染イヌ、鉤虫A.tubaeforme感染ネコ、回虫T.canis感染イヌ、回虫T.cati感染ネコ、鞭虫T.vulpis感染イヌ、鞭虫T.felis感染ネコ、およびパルボウイルス感染ネコ(
図19、行G)。したがって、このGiardia属ELISAは、Giardia lamblia糞便抗原を特異的に検出し、以下のうちのいずれに由来する糞便抗原とも交差反応しなかった:条虫T.taeniaeformis、条虫T.pisiformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.vulpis、およびネコパルボウイルス。このように、このGiardia属ELISAは、非常に特異度が高く、Giardia lambliaの感染の検出または診断に有用である。このGiardia属ELISAは、Giardia lambliaの感染を、条虫T.pisiformis、条虫T.taeniaeformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、イヌパルボウイルス、およびネコパルボウイルスの感染から識別するために用いることができる。
【0196】
パルボウイルス感染ネコ(
図19、列13および14)の陽性感染状態を、SNAP(登録商標)Parvo試験(M.Abd-Eldaim、M.Beall、およびM.A.Kennedy. 「Detection of feline panleukopenia virus using a commercial ELISA for canine parvovirus」 Vet Ther. 2009 Winter;10(4):E1~6)を用いて製造会社(IDEXX Laboratories Inc.、Westbrook、Maine、USA)の使用説明書に従って確認した。この多重糞便ELISAアッセイは、条虫T.pisiformis、条虫T.taeniaeformis、条虫D.caninum、鉤虫A.caninum、鉤虫A.tubaeforme、回虫T.canis、回虫T.cati、鞭虫T.vulpis、鞭虫T.felis、および原生動物Giardia lambliaの同時の特異的検出の能力がある。
【0197】
このデータは、本発明の方法が、種特異的様式で、少なくとも8つの異なる腸内寄生体を容易に検出し、それらの間を識別するために用いられ得ることを実証している。
【0198】
実施例5
Taenia属由来、例えば、T.pisiformis、T.taeniaeformis、およびDipylidium属由来、例えば、D.caninumなどの2つまたは3つの条虫種を検出する能力がある一連の糞便ELISAアッセイを開発した。そのELISAを、本質的に上記のセクション「実施例A」に記載されているように、マイクロタイタープレートにおいて実施した。
【0199】
以下の源由来の糞便抽出物を、ELISAアッセイにおいて試験した:4匹のT.pisiformis陽性イヌ(
図20、列1、4、7、および10)、4匹のT.taeniaeformis感染ネコ(
図20、列2、5、8、および11)、2匹のD.caninum感染イヌ(
図20、列3および6)、2匹のD.caninum感染ネコ(
図20、列9および12)。
図20において、列1~12は単一のマイクロタイタープレートの画像である。
【0200】
Taenia属の条虫の検出のための糞便抗原ELISA(
図20、行A)
Taenia tapewormsに感染した動物由来の糞便抗原の検出のためのサンドイッチELISAアッセイを構築した。簡単に述べれば、mAb ADX131およびmAb ADX184を、それぞれ3ug/mlの濃度で、マイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、それぞれ3ug/mlの濃度でのmAb ADX132-HRPおよびADX193-HRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。その結果は、このTaenia属糞便抗原ELISAが、T.pisiformis感染イヌ(
図20、行A、列1、4、7、および10)およびT.taeniaeformis感染ネコ(
図20、行A、列2、5、8、および11)由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。しかしながら、このTaenia属ELISAは、条虫D.caninum感染イヌ(
図20、行A、列3および6)由来のFEXにおける糞便抗原もD.caninum感染ネコ(
図20、行A、列9および12)由来のFEXにおける糞便抗原も検出しなかった。したがって、このTaenia属ELISAは、T.pisiformisおよびT.taeniaeformis糞便抗原を特異的に検出し、D.caninum由来の糞便抗原と交差反応しなかった。このTaenia属ELISAは、T.pisiformisおよびT.taeniaeformisを含む1つまたは複数のTaenia属条虫の感染または外寄生の検出または診断に有用である。このTaenia属ELISAは、T.pisiformisおよびT.taeniaeformisを含む1つまたは複数のTaenia属条虫の感染を、D.caninumを含むDipylidium属条虫の感染から識別するために用いることができる。
【0201】
条虫T.pisiformisおよびD.caninumの検出のための糞便抗原ELISA(
図20、行B)
条虫T.pisiformisおよびD.caninumに感染した動物由来の糞便抗原の検出のためのサンドイッチELISAアッセイを構築した。簡単に述べれば、mAb ADX131およびmAb ADX226を、それぞれ3ug/mlの濃度で、マイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、それぞれ3ug/mlの濃度でのmAb ADX132-HRPおよびmAb RDX5-HRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。その結果は、このELISAが、T.pisiformis感染イヌ(
図20、行B、列1、4、7、および10)、条虫D.caninum感染イヌ(
図20、行B、列3および6)、およびD.caninum感染ネコ(
図20、行B、列9および12)由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。しかしながら、このELISAは、T.taeniaeformis感染ネコ(
図20、行B、列2、5、8、および11)由来のFEXにおける糞便抗原を検出しなかった。したがって、このELISAは、T.pisiformisおよびD.caninum糞便抗原を特異的に検出し、T.taeniaeformis糞便抗原と交差反応しなかった。このELISAは、条虫T.pisiformisおよび/またはD.caninumの感染または外寄生の検出または診断に有用であり、条虫T.pisiformisおよび/またはD.caninumの感染を、条虫T.taeniaeformisの感染から識別するために用いることができる。
【0202】
条虫T.taeniaeformisおよびD.caninumの検出のための糞便抗原ELISA(
図20、行C)
条虫T.taeniaeformisおよびD.caninumに感染した動物由来の糞便抗原の検出のためのサンドイッチELISAアッセイを構築した。簡単に述べれば、mAb ADX184およびmAb ADX226を、それぞれ3ug/mlの濃度で、マイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、それぞれ3ug/mlの濃度でのmAb ADX193-HRPおよびmAb RDX5-HRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。その結果は、このELISAが、T.taeniaeformis感染ネコ(
図20、行C、列2、5、8、および11)、条虫D.caninum感染イヌ(
図20、行C、列3および6)、およびD.caninum感染ネコ(
図20、行C、列9および12)由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。しかしながら、このELISAは、T.pisiformis感染イヌ(
図20、行C、列1、4、7、および10)由来のFEXにおける糞便抗原を検出しなかった。したがって、このELISAは、T.taeniaeformisおよびD.caninum糞便抗原を特異的に検出し、T.pisiformis糞便抗原と交差反応しなかった。このELISAは、条虫T.taeniaeformisおよび/またはD.caninumの感染または外寄生の検出または診断に有用であり、条虫T.taeniaeformisおよび/またはD.caninumの感染を、条虫T.pisiformisの感染から識別するために用いることができる。
【0203】
条虫T.pisiformis、T.taeniaeformis、およびD.caninumの検出のための糞便抗原ELISA(
図20、行D)
条虫T.pisiformis、T.taeniaeformis、およびD.caninumに感染した動物由来の糞便抗原の検出のためのサンドイッチELISAアッセイを構築した。簡単に述べれば、mAb ADX131、mAb ADX184、およびmAb ADX226を、それぞれ3ug/mlの濃度で、マイクロタイタープレート上にコーティングし、糞便抽出物とインキュベートし、その後、それぞれ3ug/mlの濃度でのmAb ADX132-HRP、mAb ADX193-HRP、およびRDX5-HRPコンジュゲートとインキュベートし、続いて、ペルオキシダーゼ基質で検出した。その結果は、このELISAが、T.pisiformis感染イヌ(
図20、行D、列1、4、7、および10)、T.taeniaeformis感染ネコ(
図20、行D、列2、5、8、および11)、条虫D.caninum感染イヌ(
図20、行D、列3および6)、およびD.caninum感染ネコ(
図20、行D、列9および12)由来のFEXに関して陽性シグナルを生じたことを示している。したがって、このELISAは、T.pisiformis、T.taeniaeformis、およびD.caninum糞便抗原を検出した。このELISAは、条虫T.pisiformis、T.taeniaeformis、および/またはD.caninumの感染または外寄生の検出または診断に有用である。これらのデータは、このELISAアッセイが、イヌおよびネコにおけるTaenia属および/またはDipylidium属条虫の感染を容易に検出するために用いられ得ることを実証している。