(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】抗CD79b抗体、その薬物複合体及びその応用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/30 20060101AFI20240920BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240920BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240920BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240920BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240920BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240920BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240920BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240920BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20240920BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240920BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20240920BHJP
A61K 31/535 20060101ALI20240920BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240920BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
A61K39/395 Y
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
A61K38/02
A61K51/10 100
A61K31/704
A61K38/05
A61K31/535
C12N15/13
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021523617
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2019114676
(87)【国際公開番号】W WO2020088587
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】201811296100.8
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517399413
【氏名又は名称】ニューバイオ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ニアンヘ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,リウェイ
(72)【発明者】
【氏名】アン,デキアン
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ディ
(72)【発明者】
【氏名】リ,フアリ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チュン
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-533496(JP,A)
【文献】特表2018-505849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含むことを特徴とする抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント。
SEQ ID NO:1に示されたアミノ酸配列を含有するHCDR1;
SEQ ID NO:2に示されたアミノ酸配列を含有するHCDR2;
SEQ ID NO:3に示されたアミノ酸配列を含有するHCDR3;
SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を含有するLCDR1;
SEQ ID NO:5に示されたアミノ酸配列を含有するLCDR2;及び
SEQ ID NO:6に示されたアミノ酸配列を含有するLCDR3。
【請求項2】
上記の抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメントのHCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示され、HCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に示され、HCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3に示され、LCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に示され、LCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5に示され、LCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6に示されることを特徴とする請求項1に記載された抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
上記の抗CD79b抗体は、モノクローナル抗体であり、及び/又は
上記の抗CD79b抗体は
、ヒト化抗体又はキメラ抗体である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載された抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
上記の抗CD79b抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:7又は11に示され、及び/又は上記の抗CD79b抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8又は12に示される;又は
上記の抗CD79b抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13-17のいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列から選ばれ、及び/又は上記の抗CD79b抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:18-22のいず
れか一つの配列に示されたアミノ酸配列から選ばれる
ことを特徴とする請求項1に記載された抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
上記の抗CD79b抗体の重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:25、27、29、31と33のいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選ばれ、及び/又は上記の抗CD79b抗体の軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:26、28、30、32と34のいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選ばれることを特徴とする請求項1に記載された抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
上記の抗CD79b抗体は、以下の抗体から選ばれることを特徴とする請求項1に記載された抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント:
(1)重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:25に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:26に示された抗体;
(2)重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:27に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:28に示された抗体;
(3)重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:29に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:30に示された抗体;
(4)重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:31に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:32に示された抗体;及び
(5)重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:33に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:34に示された抗体。
【請求項7】
複合体は、請求項1-6のいずれか一つに記載された抗体又はその抗原結合フラグメントと細胞毒性剤との複合体であることを特徴とする抗体-薬物複合体。
【請求項8】
上記の複合体の構造は、以下に示されたことを特徴とする請求項7に記載された抗体-薬物複合体:
A-(V-L-D)n
ただし、
Aは、抗体である;
V-Lは、リンカーであり、Vは存在するかまたは存在しなく、ビスマレイミド又はテトラマレイミドリンカーコンポーネントであり、Lは存在するかまたは存在しなく、切断可能なリンカー又は切断不可能なリンカーである;VとLの少なくとも1つが存在する;
Dは、興味ある細胞毒性剤である;及び
nは1-4の整数である。
【請求項9】
細胞毒性剤は、化学療法薬物、成長阻害剤、毒素又は放射性同位体であることを特徴とする請求項7又は8に記載された抗体-薬物複合体。
【請求項10】
請求項1-6のいずれか一つに記載された抗体又はそれと薬物の複合体、及び薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする薬物組成物。
【請求項11】
上記の薬物組成物は、請求項7-9のいずれか一つに記載された抗体-薬物複合体を含むことを特徴とする請求項10に記載された薬物組成物。
【請求項12】
請求項1-6のいずれか一つに記載された抗体又はその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列、又は該ポリヌクレオチド配列と相補する配列からなるポリヌク
レオチド分子。
【請求項13】
上記のポリヌクレオチド配列は、以下から選ばれることを特徴とする請求項12に記載されたポリヌクレオチド分子。
(a)SEQ ID NO:36-39のいずれか一つに示されたポリヌクレオチド配列;及び
(b)(a)に記載されたポリヌクレオチド配列と相補する配列。
【請求項14】
請求項1-6のいずれか一つに記載された抗体又はその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列又はその相補配列を含むベクター;ただし、上記のベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクターである。
【請求項15】
請求項1-6のいずれか一つに記載された抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント、又は上記の抗体又はその抗原結合フラグメントと薬物との複合体の、CD79bに仲介された疾患を治療又は予防する薬物の調製における用途。
【請求項16】
前記複合体が、請求項7-9のいずれか一つに記載のものである、請求項15に記載の用途のための抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
前記疾患が造血系のがんである、請求項15に記載の用途のための抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
前記疾患がB細胞増殖性疾患である、請求項15に記載の用途のための抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
前記疾患がリンパ腫又は白血病である、請求項15に記載の用途のための抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項20】
前記疾患が、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病(HCL)又は急性リンパ性白血病(ALL)から選択される、請求項15に記載の用途のための抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項21】
請求項1-6のいずれか一つに記載された抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメントの、CD79bを発現する細胞の増加に関連する細胞増殖性疾患の診断試薬の調製における用途。
【請求項22】
第1の容器を有する製品であって、上記の第1の容器は、組成物を含み、当該組成物は、請求項1-6のいずれか一つに記載された抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント、又は当該抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメントと薬物との複合体、又は上記の抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメント又は上記の複合体の薬物組成物を含む。
【請求項23】
製品は、さらに、第2の容器を含み、第2の容器には、薬学的に許容される緩衝液を収納する;又は
上記の組成物は、請求項1-6のいずれか一つに記載された抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、上記の製品は、さらに検出用の希釈剤、緩衝剤又はコントロール抗体を収納する容器を含む
ことを特徴とする請求項22に記載された製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、抗CD79b抗体、その薬物複合体及びその応用に関わる。
【背景技術】
【0002】
背景技術
CD79b(すなわち、IgβまたはB29)は、B細胞受容体のシグナル成分であり、CD79a(すなわち、Igαまたはmb-1)との共有結合ヘテロダイマーとして機能する。CD79bは、細胞外免疫グロブリン(Ig)ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。CD79bの表面発現は、フローサイトメトリーを使用して、非ホジキンリンパ腫(NHL)および慢性リンパ性白血病(CLL)のほぼすべての患者で検出された。シグナル伝達機能に加えて、B細胞受容体と架橋すると、それは、B細胞によるクラスII抗原提示の一部として、クラスII主要組織適合遺伝子複合体コンパートメント(リソソーム様コンパートメント)に標的されている。
【0003】
CD79bに対する抗体が内在化され、細胞毒性薬を放出できるプロテアーゼを含むことが知られているリソソームコンパートメントに送達されるため、CD79b生物学のこの特徴により、CD79bは抗体-薬物複合体(ADC)の標的になる。抗体-薬物複合体(ADC)は、薬物を腫瘍へ標的化的に送達し、かつその中に細胞内蓄積を起こすことができる。ADCの治療指数(つまり、最高の有効性と最低の毒性)を向上するための努力は、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の特異性、ならびに薬物連結特性と薬物放出特性に焦点を合わせてきた。
【0004】
NHLを臨床的に効果的に治療できるさまざまなADC(ヒト化抗CD79b抗体(ヒト化SN8)がプロテアーゼ切断可能リンカーを介してモノメチルオーリスタチンE(MMAE)と結合してなるものなど)が調製された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の内容
本明細書が、抗CD79b抗体又はその機能的フラグメント、その薬物組成物又は薬物複合体、及び血液腫瘍治療中におけるその使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一方、本明細書が、以下を含む抗CD79b抗体又はその抗原結合フラグメントを提供し:
SEQ ID NO:1に示されたアミノ酸配列を含有するHCDR1;
SEQ ID NO:2に示されたアミノ酸配列を含有するHCDR2;
SEQ ID NO:3に示されたアミノ酸配列を含有するHCDR3;
SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を含有するLCDR1;
SEQ ID NO:5に示されたアミノ酸配列を含有するLCDR2;
SEQ ID NO:6に示されたアミノ酸配列を含有するLCDR3。
【0007】
一つまたは複数の実施の形態において、本明細書に記載された抗CD79b抗体は、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。
【0008】
一つまたは複数の実施の形態において、本明細書の抗CD79b抗体又はその抗原結合
フラグメントのHCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示され、HCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に示され、HCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3に示され、LCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に示される;LCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5に示される;LCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6に示される。
【0009】
一つまたは複数の実施の形態において、本明細書の抗CD79b抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:7又は11に示され、及び/又は本明細書の抗CD79b抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8又は12に示される。
【0010】
一つまたは複数の実施の形態において、本明細書の抗CD79b抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13-17のいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列から選べられ、及び/又は本明細書の抗CD79b抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:18-22のいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列から選べられる。
【0011】
一つまたは複数の実施の形態において、本明細書の抗CD78b抗体は、以下を含む:(a)SEQ ID NO:25、27、29、31又は33と少なくとも90%、好ましくに少なくとも95%、さらに好ましくに少なくとも98%の配列同一性を有する重鎖;(b)SEQ ID NO:26、28、30、32又は34と少なくとも90%、好ましくに少なくとも95%、さらに好ましくに少なくとも98%の配列同一性を有する軽鎖;又は(c)(a)に記載された重鎖と(b)に記載された軽鎖。
【0012】
一つまたは複数の実施の形態において、本明細書の抗CD79b抗体の重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:25、27、29、31と33のいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくに少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選べられ、及び/又は本明細書の抗CD79b抗体の軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:26、28、30、32と34のいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくに少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選べられる。
【0013】
一つまたは複数の実施の形態において、本明細書の抗CD79b抗体は、以下の抗体から選べられる:
(1)重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:25に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:26に示された抗体;
(2)重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:27に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:28に示された抗体;
(3)重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:29に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:30に示された抗体;
(4)重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:31に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:32に示された抗体;及び
(5)重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:33に示され、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:34に示された抗体。
【0014】
もう一つの態様では、本明細書が、本明細書に記載された抗体と細胞毒性剤との複合体である抗体-薬物複合体を提供する。
【0015】
一つまたは複数の実施の形態において、上記の細胞毒性剤は、化学療法薬物、成長阻害剤、毒素又は放射性同位体である。
【0016】
もう一つの態様では、本明細書が、薬物組成物を提供し、上記の薬物組成物は、本明細書に記載された抗体又は抗体-薬物複合体、及び薬学的に許容される担体を含む。
【0017】
もう一つの態様では、本明細書が、容器と当該容器に収納された組成物を含む製品を提供し、ただし、上記の組成物は、一つ又は複数の本明細書に記載されたCD79b抗体を含む。ある実施の形態において、上記の製品は、キットであって、それが、以下を含む:一つ又は複数の本明細書に記載されたCD79b抗体を含む組成物を収納している第1の容器;及びバッファーを収納している第2の容器。
【0018】
もう一つの態様では、本明細書が、CD79bに仲介された疾患を治療又は予防するための薬物の調製における本明細書に記載されたCD79b抗体又はその抗原結合フラグメントの用途を提供する。ある実施の形態において、上記の疾患は、血液腫瘍、特にB細胞増殖性疾患である。ある実施の形態において、上記の疾患は、リンパ腫又は白血病である。ある実施の形態において、上記の疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病(HCL)又は急性リンパ性白血病(ALL)である。
【0019】
もう一つの態様では、本明細書が、CD79bを発現する細胞の成長を抑制する方法を提供し、上記の方法は、上記の細胞を、本明細書に記載された抗体又は抗体-薬物複合体に接触させ、そして上記の細胞の成長に対する抑制を引き起こすことを含む。ある実施の形態において、上記の細胞は、B細胞である。
【0020】
もう一つの態様では、本明細書が、CD79bに仲介された疾患を治療する方法を提供し、上記の方法は、必要とする哺乳動物に、治療有効量の本明細書に記載された抗体又は抗体-薬物複合体を投与することを含む。ある実施の形態において、上記のCD79bに仲介された疾患は、癌症である。
【0021】
もう一つの態様では、本明細書が、さらに、CD79bを含む疑いのあるサンプルにおけるCD79bの存在状況を測定する方法を提供し、上記の方法は、上記のサンプルを、本明細書に記載された抗体に暴露させ、かつ上記のサンプル中のCD79bへ上記の抗体の結合を測定することを含み、ただし、上記のサンプル中のCD79bへ上記の抗体の結合が、上記のサンプル中の上記のタンパク質の存在を指示している。
【0022】
もう一つの態様では、本明細書が、CD79bを発現する細胞(例えばB細胞)の増加に関連する細胞増殖性疾患を診断する方法を提供し、上記の方法は、以下を含む:生物学的サンプル中の試験細胞を本明細書に記載された抗体に接触すること;CD79bへ上記の抗体の結合を検出することで、上記のサンプル中の試験細胞に結合する抗体のレベルを測定すること;及び、コントロールサンプル中の細胞に結合する抗体のレベルを比較し、ただし、試験サンプルとコントロールサンプル中にCD79bを発現した細胞の数に対し、結合した抗体のレベルを正規化し、かつその場合、コントロールサンプルと比べて、試験サンプル中の結合した抗体のレベルの方が高いことは、CD79bを発現する細胞に関連する細胞増殖性疾患の存在を指示する。ある実施の形態において、上記の生物学的サンプルは、血液又は血清である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】
図2:ヌードマウスのヒトB細胞リンパ腫Ramos皮下移植腫瘍に対するAS11259-ADC-001、002、004の治療効果。
【
図3】
図3:ヌードマウスのヒトB細胞リンパ腫Ramos皮下移植腫瘍に対するAS11259-ADC-010、0012、011、008の治療効果。
【
図4】
図4:ヌードマウスのヒトリンパ腫Granta-519皮下移植腫瘍に対するAS11259-ADC-001、002、004の治療効果。
【
図5】
図5:ヌードマウスのヒトリンパ腫Granta-519皮下移植腫瘍に対するAS11259-ADC-001、0012、011、010の治療効果。
【
図6】
図6:ヌードマウスのヒトリンパ腫WSU-DLCL2皮下移植腫瘍に対するAS11259-ADC-001、004の治療効果。
【
図7】
図7:ヌードマウスのヒトリンパ腫WSU-DLCL2皮下移植腫瘍に対するAS11259-ADC-001、0012、011、010の治療効果。
【発明を実施するための形態】
【0024】
具体的な実施形態
本発明の範囲内で、本発明の上記の技術的特徴および以下に具体的に記載される技術的特徴(実施例など)を互いに組み合わせて、新しい技術を形成することができることを理解すべきである。
【0025】
別段の定義がない限り、本発明の実施は、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技術を使用し、これらはすべて当技術分野の技術的範囲内にある。これらの技術は、文献で完全に説明され、例えば、Molecular Cloning :A Laboratory Manual(分子クローニング:実験マニュアル)、第2版(Sambrookなど、1989);Oligonucleotide Synthesis(オリゴヌクレオチド合成)(M.J. Gait編集、1984年);Animal Cell Culture(動物細胞培養)(R.I.Freshney編集、1987年);Methods in Enzymology(酵素学の方法) (Academic Press,Inc.);Current Protocols in Molecular Biology (分子生物学の現在のプロトコル) (F.M.Ausubelなど編集、1987年、かつ定期更新);PCR:The Polymerase Chain Reaction (PCR:ポリメラーゼ連鎖反応),(Mullisなど編集、1994年) ;A Practical Guide to Molecular Cloning( 分子クローニングの実用ガイド) (Perbal Bernard V.,1988年) ;Phage Display :A Laboratory Manual (ファージディスプレイ:実験マニュアル) (Barbasなど、2001年)。
【0026】
本明細書中、「単離」した抗体とは、同定され、かつその自然環境の一つの成分から分離された抗体を指す。好ましい実施の形態において、抗体を(1)Lowry法の測定によって、抗体の重量は、95%を超え、最も好ましくに、重量は99%を超える;(2)ローターカップシーケンサーの使用で、少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を取得するのに十分な程度;又は(3)還元または非還元条件下のSDS-PAGE及びクマシーブルーまたは好ましくに銀染色の使用によれば、均質性が達成される;まで精製する。
【0027】
用語「CD79b」とは、特に明記しない限り、任意の脊椎動物(霊長類(例えば、ヒト、マカク)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む)から由来の任意の天然CD79bを指す。用語「CD79b」とは、「全長」、未処理のCD79b、および細胞から処理された任意の形態のCD79bを包含する。この用語は、スプライスバリアント、対立遺伝子バリアント、アイソフォームなどのCD79bの天然に存在するバリアントも含む。本明細書に記載されたCD79bポリペプチドは、ヒト組織型または他の由来などの様々な由来から単離することができ、或いは組換えまたは合成
方法によって調製することができる。「天然配列CD79bポリペプチド」は、自然由来の対応するCD79bポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。このような天然配列CD79bポリペプチドは、自然から単離することができ、或いは組換えまたは合成の方法によって調製することができる。用語「天然配列CD79bポリペプチド」とは、特定のCD79bポリペプチドの天然に存在する短縮型または分泌型(例えば細胞外ドメイン配列)、当該ポリペプチドの天然に存在する変異型(例えば選択的スプライシング形態)、および天然に存在する対立遺伝子バリアントを明確に包含する。
【0028】
CD79bポリペプチドの「細胞外ドメイン」または「ECD」は、CD79bポリペプチドが膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを実質的に含まない形態を指す。一般に、CD79bポリペプチドECDは、1%未満のこのような膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインを有し、好ましくに、0.5%未満のこのようなドメインを有する。膜貫通ドメインの精確な境界は変動でき、好ましくに、CD79bポリペプチドの細胞外ドメインは、実施例または明細書で同定された膜貫通ドメイン/細胞外ドメイン境界のいずれかの側に約5個または5個以下のアミノ酸を含んでも良い。ある実施の形態において、本明細書に記載されたCD79b ECDのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:35に示された。
【0029】
用語「抗体」は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)、ポリエピトープの特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、二重抗体と一本鎖分子、及び抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab′)2、とFv)を含む。用語「免疫グロブリン」(Ig)と「抗体」は、交換可能に使用される。
【0030】
用語「CD79b抗体」または類似の用語とは、十分な親和性でCD79bに結合することができる抗体を指す。好ましくに、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)の測定によって、無関係な非CD79bタンパク質へのCD79b抗体の結合程度は、CD79bへの該抗体の結合の約10%未満である。ある実施の形態において、CD79bに結合する抗体の解離定数(Kd)は、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMである。ある実施の形態において、抗CD79b抗体は、異なる種のCD79b間で保存されているCD79bエピトープに結合する。
【0031】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖と軽鎖の可変ドメインは、それぞれに「VH」と「VL」と呼ばれる。これらのドメインは、通常に、抗体の最も変化可能な部分であり(同じタイプの他の抗体と比較して)、かつ抗原結合部位を含む。
【0032】
用語「可変」とは、可変ドメインの特定のセグメントが抗体配列において大きく異なる状況を指す。可変ドメインは、抗原結合を仲介し、かつ特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を限定する。ただし、変動性は、可変ドメインにまたがる110個のアミノ酸に均等に分布していない。実際に、可変領域は、15~30個アミノ酸の長さのフレーム領域(FR)と呼ばれる比較的に不変的なセグメントと、フレーム領域を分離する9~12個アミノ酸の長さをもつ「高度可変領域」と呼ばれる極端に変動的な短い領域とからなる。天然の重鎖と軽鎖の可変ドメインにはそれぞれ4つのFR領域が含まれ、それらのほとんどはβシートコンフォメーションを取っている。各鎖のHVRは、FR領域によって非常に密接に保持されており、かつ他の鎖のHVRと一緒に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接に関与しないが、さまざまなエフェクター機能を示している。
【0033】
本明細書において、用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体集団から得
られる抗体、すなわち、集団を構成する各抗体が、少量で存在し得る可能性のある天然に存在する突然変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて、同じであることを意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を標的とする。ポリクローナル抗体製剤(通常、異なるエピトープに対する異なる抗体が含まれる)と比較し、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を標的とする。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体の利点は、それらがハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンによって汚染されないことである。「モノクローナル」は、抗体が実質的に均質な抗体集団から得られることを示し、特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に使用されるモノクローナル抗体は、様々な技術によって製造することができ、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、KohlerとMilstein、Nature、256:495-97(1975))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonなど、Nature、352:624-628(1991))、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全部を有する動物からヒトまたはヒト様抗体を生成するための技術(たとえば、WO1998 / 24893)を含む。
【0034】
用語「全長抗体」、「インタクトな抗体」または「完全抗体」とは交換可能に使用され、抗原結合部位およびCL、ならびに少なくとも重鎖定常ドメインCH1、CH2、およびCH3を含む抗体を指す。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであっても良い。場合によっては、完全抗体が1つまたは複数のエフェクター機能を持っても良い。
【0035】
「抗体フラグメント」は、完全抗体の一部、好ましくに完全な抗体の抗原結合領域および/または可変領域を含む。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab ′、F(ab′)2およびFvフラグメント;二重抗体;線状抗体(米国特許第5,641,870号を参照);一本鎖抗体(scFv)分子;および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体を含む。抗体をパパインで消化すると、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同じ抗原結合フラグメントと、一つの残りの「Fc」フラグメントを生成する。Fabフラグメントは、完全な軽鎖および重鎖可変ドメイン(VH)と、一つの重鎖第1定常ドメイン(CH1)で構成される。抗原結合の点から、各Fabフラグメントは、一価であり、つまり、単一の抗原結合部位を有する。ペプシン処理された抗体は、より大きなF(ab′)2フラグメントを生成し、それは、ジスルフィド結合で接続された2つのFabフラグメントとほぼ同等であり、異なる抗原結合活性を有すると同時に、抗原を架橋することができる。Fab′フラグメントは、CH1ドメインのカルボキシ末端にいくつかの追加の残基(抗体のヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む)が添加されたので、Fabフラグメントとは異なる。F(ab ′)2抗体フラグメントは、最初にFab′フラグメントのペアとして生成され、Fab′フラグメント間に、ヒンジシステインがある。抗体フラグメントの他の化学的複合も公知なものである。Fcフラグメントは、ジスルフィド結合によって一緒に保持している2つの重鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、特定のタイプの細胞に見られるFc受容体(FcR)によって認識される領域であるFc領域の配列によって決定される。
【0036】
本明細書では、「Fc領域」またはFcフラグメントは、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用され、天然配列Fc領域および変異Fc領域を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動できるが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常に、そのCys226またはPro230の位置のアミノ酸残基からカルボキシル末端までのセグメントとして定義される。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによると残基447)は、例えば、抗体の産生または精製の過程で、または抗体の重鎖をコードする核酸の組換え工程によって除去することができる。したがって、完全抗体の複合体は
、K447残基のすべてが除去された抗体複合体、K447残基が一つも除去されていない抗体複合体、またはK447残基を有する抗体とK447残基を有しない抗体を混合してなる抗体複合体を含んでも良い。「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域のエフェクター機能を有する。例示的なエフェクター機能は、Clq結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーションなどを含む。「天然配列Fc領域」は、自然界に見られるFc領域のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域は、天然配列ヒトIgG1Fc領域;天然配列ヒトIgG2Fc領域;天然配列ヒトIgG3Fc領域;天然配列ヒトIgG4Fc領域;及び天然に存在するそれらのバリアントを含む。「変異Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾(好ましくは1つ以上のアミノ酸置換)のために天然配列Fc領域とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較すると、変異Fc領域は、少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、例えば、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域には、約1から約10個のアミノ酸置換があり、好ましくに約1から約5個のアミノ酸置換がある。本明細書では、変異Fc領域は、好ましくに、天然配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性を有し、最も好ましくに少なくとも約90%の相同性を有し、さらに好ましくに少なくとも約95%の相同性を有する。
【0037】
「Fv」は、完全な抗原認識・結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。このフラグメントは、緊密に非共有結合している重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインのダイマーで構成される。これらの2つのドメインの折り畳みから、6つの高度可変ループ(重鎖と軽鎖にそれぞれに3つのループ)が突き出て、これらが、抗原結合アミノ酸残基を提供し、かつ抗体に抗原結合特異性を与える。ただし、親和性が完全な結合部位よりも低い場合でも、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異的な3つのHVRのみを含むの半分のFv)でさえ、抗原を認識・結合する能も持つ。
【0038】
「一本鎖Fv」は「scFv」と略記することもでき、抗体のVHドメインとVLドメインが1つのポリペプチド鎖に接続されている抗体フラグメントである。好ましくに、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、その結果として、sFvは、所望の抗原結合構造を形成する。
【0039】
「二重抗体」は、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントを指し、当該フラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH-VL)に、接続された重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。VHドメインとVLドメインの間に、短いリンカー(約5~10個の残基)を使用して、scFvフラグメントを構築することによって、小さな抗体フラグメントを調製し、リンカーが短いため、可変ドメインは鎖内ペアリングではなく鎖間ペアリングを実行し、その結果は、2価のフラグメント、つまり2つの抗原結合部位を持つフラグメントを生成する。二重抗体は、二価または二重特異性であっても良い。二重特異性の二重抗体は、2つの「クロスオーバー」scFvフラグメントのヘテロダイマーであり、ただし、2つの抗体のVHドメインとVLドメインが、異なるポリペプチド鎖に存在する。
【0040】
本明細書に記載された抗体の「機能性フラグメント」または「抗原結合フラグメント」は、完全な抗体の一部を含み、通常、該完全な抗体の抗原結合領域または可変領域、或いは修飾されたFcR結合能を保存または具備する抗体のFc領域を含む。抗体の機能性フラグメントの例は、線状抗体、一本鎖抗体(scFv)、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体、特にFv、scFv、Fab、F(ab′)2、Fab′、scFv-Fcフラグメントまたは二重抗体(diabody)、或いは化学修飾またはリポソームへの取り込みによって半減期を延ばすことができるはずのフラグメントのいずれかを指し、上記の化学修飾は、ポリエチレングリコールなどのポリ(アルキレン)グリコ
ールの付加、すなわちポリエチレングリコール(PEG)化修飾(Fv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab′)2-PEGまたはFab′-PEGと呼ばれるポリエチレングリコール化フラグメント)を含み、上記のフラグメントはCD79b結合活性を有する。
【0041】
好ましくに、本明細書に記載された抗体の機能性フラグメントは、それが由来する抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域の部分配列から構成されるか、またはそれらを含み、上記の部分配列は、それが由来する抗体と同じ結合特異性と十分な親和性を保持するのに十分である。このような機能性フラグメントは、最低5つのアミノ酸、好ましくにそれが由来する抗体配列の10、15、25、50および100個の連続するアミノ酸を含む。
【0042】
本明細書では、モノクローナル抗体は、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含む。キメラ抗体では、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種から由来する、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、他の部分は、別の種から由来する、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である。
【0043】
「ヒト化抗体」は「キメラ抗体」の特定のカテゴリーである。非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト抗体から由来する配列を最小限に含むキメラ抗体を指す。かなりの程度で、ヒト化抗体とは、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)の高度可変領域残基が、所望の抗体特異性、親和性、および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体、例えばマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類動物など)の高度可変領域残基によって置き換えられた免疫グロブリンを指す。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレーム領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。なお、ヒト化抗体は、受容体抗体またはドナー抗体には見られない残基を含んでも良い。これらの修飾は、抗体の性能をさらに向上させるために行われる。一般的に言えば、ヒト化抗体は、以下の可変ドメインの少なくとも1つ、通常は2つ、実質的にすべてを含み、ただし、高度可変ループのすべてまたは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのループに対応し、かつFRのすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。任意的に、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、通常にヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。ヒト化抗体は、ファージディスプレイ技術と組み合わせたコンピューターシミュレーション設計により、免疫化されたマウスによって産生されたマウス由来抗体から得られる。
【0044】
「ヒト抗体」とは、ヒトから産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する、および/またはヒト抗体を産生するための当技術分野で知られている任意の技術を使用して産生される抗体を指す。ヒト抗体は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で知られている様々な技術を使用して生成することができる。
【0045】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間のすべての非共有結合性相互作用の合計の強さを指す。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合ペアのメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYへの親和性は、通常に、解離定数(Kd)で表すことができる。低親和性抗体は、一般に抗原にゆっくりと結合し、かつ容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は、一般に抗原に速く結合し、長期間に結合を保持する傾向がある。親和性は、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)を含む当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。
【0046】
「制御配列」とは、特定の宿主生物体において作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に適した制御配列は、プロモーター、任意のオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
【0047】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係にある場合、「作動可能に連結」されている。例えば、リーダー配列または分泌リーダーのDNAが、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、それは、該ポリペプチドのDNAに作動可能に連結されている;プロモーターまたはエンハンサーが、コード配列の転写に影響を与える場合、それはその配列に作動可能に連結されている;あるいは、リボソーム結合部位の位置が翻訳を促進する場合、それはコード配列に作動可能に連結されている。一般的に言えば、「作動可能に連結」は、連結されたDNA配列が隣接していることを意味し、かつ分泌リーダーの場合、それらが隣接し、読み取り状態にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは隣接している必要がない。連結は、便利な制限サイトで連結することで実現できる。そのようなサイトがない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来の慣行に従って使用される。
【0048】
本明細書では、「ベクター」は、それに連結された他の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは別のDNAセグメントとライゲートできる環状の二本鎖DNAループを指す。もう一つのタイプのベクターは、ファージベクターである。もう一つのタイプのベクターは、ウイルスベクターであり、別のDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲートすることができる。あるベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自主的に複製することができる(例えば、細菌の複製起点を持つ細菌のベクターとエピゾーマル哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピゾーマル哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入された後、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主のゲノムとともに複製することができる。なお、あるベクターは、それらに作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では、「組換え発現ベクター」(または単に「組換えベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形式を取る。プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」は交換可能に使用される。
【0049】
本明細書では、「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、交換可能に使用され、DNAおよびRNAを含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指す。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチドまたは塩基および/またはそれらの類似体、或いはDNAまたはRNAポリメラーゼによって、または合成反応によってポリマーに組み込むことができる任意の基質であっても良い。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体などの修飾されたヌクレオチドを含んでも良い。もしあれば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前または後に行うことができる。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されても良い。ポリヌクレオチドは、標識との複合などによって、合成後にさらに修飾することができる。
【0050】
「オリゴヌクレオチド」は、一般に、短いポリヌクレオチドを指し、通常に、一本鎖で、合成され、しかし必ずしもではないが長さが約200個のヌクレオチド未満であるポリヌクレオチドを指す。
【0051】
本明細書では、用語「腫瘍」とは、通常、無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的障害を指す。腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍に分けられ、悪性腫瘍はがんとも呼ばれる。腫瘍は、固形腫瘍または血液腫瘍に分けられる。ある実施の形態において、本発明は
、特に、造血系のがんまたは血液関連のがんの治療に関する。本明細書では、「造血系」は、胸腺、骨髄、および末梢リンパ組織(例えば、脾臓、リンパ節)、粘膜に関連するリンパ組織(例えば、腸関連リンパ組織)、扁桃腺、ペイアースポット及び他の粘膜関連付属器およびリンパ組織(例えば、気管支ライニング)を含む。したがって、本明細書に記載された造血系のがんまたは血液関連のがんは、リンパ腫、白血病、骨髄腫、またはリンパ系悪性腫瘍を含み、ならびに脾臓のがんおよびリンパ節のがんも含む。造血系のがんまたは血液関連のがんのより具体的な例は、以下を含む:例えば、高悪性度、中悪性度、および低悪性度のリンパ腫を含むB細胞関連のがん、B細胞リンパ腫を含み、例えば、粘膜関連リンパ組織B細胞リンパ腫と非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫とホジキンリンパ腫およびT細胞リンパ腫);続発性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)を含む白血病、例えば、B細胞白血病(CD5+Bリンパ球)、急性骨髄性白血病などの骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)などのリンパ性白血病および骨髄異形成症候群;および他の血液学および/またはB細胞またはT細胞関連のがん。造血系のがんまたは血液関連のがんは、他の造血細胞のがんを含み、上記の造血細胞は、好塩基球、好酸球、好中球および単球などの多形核白血球、樹状細胞、血小板、赤血球、およびナチュラルキラー細胞を含む。具体的に、以下から選べられるがん性B細胞増殖性疾患を含んでも良い:非ホジキンリンパ腫(NHL)、攻撃性NHL、再発性攻撃性NHL、再発性無痛性NHL、難治性NHL、難治性無痛性NHL、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫、有毛細胞白血病(HCL)、急性リンパ性白血病(ALL)とマントル細胞リンパ腫。
【0052】
本明細書では、がんは、がん腫、芽細胞腫および肉腫も含む。したがって、がんの他の例は、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝肉腫、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、およびさまざまな種類の頭頸部がんなどを含む。
【0053】
「治療」または「緩和」とは、標的とされる病理学的状況または障害を軽減(緩和)または治癒することを指す。本明細書に記載された方法に従って治療量の抗CD79b抗体を投与した後、患者が以下の1つまたは複数で観察可能および/または測定可能な低下または消失を示す場合、受験者はCD79bポリペプチドを発現する腫瘍(特にがん)を成功に「治療」した:腫瘍細胞の数が減少するか、腫瘍細胞が消失すること;腫瘍の体積が減少すること;腫瘍細胞の浸潤が阻害されること;腫瘍の転移が阻害されること;腫瘍の成長がある程度阻害されること;および/または特定の腫瘍に関連する1つまたは複数の症状がある程度軽減されること;罹患率と死亡率の低下;及び生活の質の改善。抗CD79b抗体が腫瘍細胞の増殖を防ぎ、および/または既存の腫瘍細胞を殺すことができる限り、それは阻害性細胞および/または毒性細胞である可能性がある。これらの症候や症状の軽減は、患者にも感じられても良い。
【0054】
「治療有効量」とは、それが投与される対象にその利益を示すのに十分な用量を指す。実際に投与される量、及び投与の速度と時間経過は、治療される者の状態および重篤度に依存する。治療の処方(例えば投与量の決定など)は、最終的には、一般開業医や他の医師の責任であり、彼らが決定を下すのに依存する;通常に、治療する病気、個々の患者の状態、送達場所、投与方法、および医師が既知する他の要因を考えている。腫瘍の場合、薬物の治療有効量が、腫瘍細胞の数を減らす;腫瘍の体積を減らす;周囲の臓器への癌細胞の浸潤を阻害する;腫瘍の転移を阻害する;腫瘍の成長をある程度阻害する;および/または腫瘍に関連する1つまたは複数の症状をある程度軽減する。「予防有効量」とは、必要な用量および時間で、所望の予防効果を達成するのに有効な量を指す。必ずしもでは
ないが、通常、予防用量は、疾患の発症前または疾患の初期段階で受験者に適用されるため、予防有効量は、治療有効量よりも低くなる。
【0055】
抗CD79b抗体の「増殖阻害量」とは、インビトロまたはインビボで、細胞、特にのがん細胞などの腫瘍の増殖を阻害することができる量を指す。腫瘍細胞の増殖を阻害するための抗CD79b抗体の「増殖阻害量」は、経験的かつ従来の方法で決定することができる。
【0056】
抗CD79b抗体の「細胞毒性量」は、インビトロまたはインビボで、細胞、特にがん細胞などの腫瘍細胞の破壊を引き起こすことができる量を指す。腫瘍細胞の増殖を阻害するための抗CD79b抗体の「細胞毒性量」は、経験的かつ従来の方法で決定することができる。
【0057】
本明細書では、「個体」または「対象」は脊椎動物を指す。ある実施の形態において、脊椎動物は哺乳動物を指す。哺乳動物は、家畜(牛など)、スポーツ動物、ペット(猫、犬、馬など)、霊長類、マウス、ラットを含むが、これらに限定されない。好ましくに、哺乳動物はヒトを指す。
【0058】
1つまたは複数の他の治療剤と「組み合わせて」投与することは、同時(併用)投与および任意の順序での連続投与を含む。
【0059】
参照ポリペプチド配列の「配列同一性」は、最大パーセントの配列同一性を得るように配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後、かつ保存的置換を配列同一性の一部として考慮しなかった際に、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、当技術分野の範囲内で様々な方法で実施することができ、たとえば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般的に公開されているコンピューターソフトウェアを使用する。本明細書は、本明細書に記載された抗体の軽鎖可変領域、重鎖可変領域、または重鎖および軽鎖(特に本明細書に具体的に記載されている各配列)と少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、本明細書に記載された抗CD79b抗体において突然変異がなされても良く、例えば、米国特許第5,364,934号に記載されているものなどの保存的および非保存的突然変異のための任意の技術およびガイドラインを使用しても良い。ある実施の形態において、本明細書のSEQ ID NO:1-6に示されたCDRには、突然変異が発生しない。突然変異は、抗体またはポリペプチドをコードする1つまたは複数のコドンの置換、欠失、または挿入であっても良く、天然配列抗体に対するアミノ酸配列の変化をもたらす。任意的に、突然変異は、抗CD79b抗体の1つまたは複数のドメインの少なくとも1つのアミノ酸を他の任意のアミノ酸で置き換えることによるものである。抗CD79b抗体の配列を相同な既知のタンパク質分子の配列と比較し、高相同領域で行われるアミノ酸配列の変更の数を最小限に抑えることにより、目的の活性に悪影響を与えることなく、どのアミノ酸残基を挿入、置換、または削除できるかを決定するためのガイドラインを見つけることができる。
【0060】
アミノ酸置換は、一つのアミノ酸を、類似の構造および/または化学的性質を有する別のアミノ酸で置換すること(例えば、ロイシンをセリンで置換すること、いわゆる、保存的アミノ酸置換)の結果である。挿入または欠失は、任意的に、約1~5個のアミノ酸の範囲であっても良い。配列にアミノ酸の挿入、置換、または欠失を体系的に行い、かつ得
られたバリアントに対して、完全長または成熟した天然配列に示される活性をテストすることによって、許容される突然変異を確定できる。
【0061】
突然変異は、オリゴヌクレオチドに仲介された(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、およびPCR突然変異誘発などの当技術分野で知られている方法を使用して実施することができる。クローン化されたDNAは、部位特異的突然変異誘発、カセット突然変異誘発、制限選択的突然変異誘発、または他の既知の技術に供されて、抗CD79b抗体バリアントDNAを生成することができる。
【0062】
抗CD79b抗体の正しいコンフォメーションの維持に関与していないシステイン残基も、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防ぐために、(通常はセリンで)置き換えることができる。逆に、システイン結合を抗CD79b抗体に添加することで、その安定性を向上することができる(特に抗体は、Fvフラグメントなどの抗体フラグメントである場合)。
【0063】
ある実施の形態において、代替バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つ以上の高度可変領域残基の置換を関する。一般に、さらなる開発のために選択して得られるバリアントは、それらが産生された親抗体と比較して改善された生物学的特性を有する。このような代替バリアントを生成する便利な方法の1つは、ファージディスプレイを使用した親和性成熟である。要するに、高度可変領域のいくつかの部位(例えば、6~7個の部位)を突然変異させ、各部位で可能なすべてのアミノ酸置換を生成する。このように生成された抗体バリアントは、各粒子にパッケージされたM13遺伝子III産物との融合物として繊維状ファージ粒子上に一価の形で表示される。次に、ファージに表示されたバリアントを生物学的活性(結合親和性など)についてスクリーニングする。修飾のための候補高度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に重要な寄与を有する高度可変領域残基を同定することができる。または/なお、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析し、抗体とCD79bポリペプチドとの間の接触点を特定する。そのような接触残基および近接残基は、本明細書に詳述される技術による置換の候補部位である。そのようなバリアントが生成されると、当該バリアントのグループを、本明細書に記載されるようにスクリーニングし、1つまたは複数の関連するアッセイにおいて優れた特性を有する抗体をさらなる開発のために選択することができる。「細胞毒性剤」は、細胞の機能を阻害または防止する、および/または細胞破壊を引き起こす物質を指す。当該用語は、以下のものを含む:At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Lu放射性同位体などの放射性同位体;メトトレキサート(Methotrexate)、アドリアマイシン(adriamycin)、ビンカアルカロイド(Vinca alkaloids)(ビンクリスチン(Vincristine)、ビンブラスチン(Vinblastine)、エトポシド(Etoposide)など)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、メルファラン(Melphalan)、マイトマイシンC(MitomycinC)、クロラムブシル(Chlorambucil)またはダウノルビシン(Daunorubicin)などの化学療法薬;核酸分解酵素などの酵素およびそのフラグメント;抗生物質;細菌、真菌、植物または動物起源の小分子毒素または酵素毒素などの毒素(そのフラグメント及び/又はバリアントを含む);及び、当技術分野で知られている抗腫瘍薬または抗癌薬。
【0064】
「薬物組成物」は、特定の目的を達成するために一緒に組み合わされた、少なくとも1つの薬物と、任意的な薬学的に許容される担体または補助原料との組み合わせを意味する。ある実施の形態において、上記の薬物組成物は、本発明の目的を達成するために一緒に効くことができる限り、時間および/または空間で分離された組み合わせを含む。例えば、薬物組成物に含まれる成分(例えば本明細書に記載の抗体、核酸分子、核酸分子の組み
合わせおよび/または複合体)は、対象に全体的に、または別々に投与することができる。上記の薬物組成物に含まれる成分が対象に別々に投与される場合、上記の成分は、同時にまたは連続して対象に投与されても良い。好ましくは、薬学的に許容される担体は、水、緩衝水溶液、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)などの等張塩溶液、グルコース、マンニトール、デキストロース、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウム、0.3%グリセリン、ヒアルロン酸、エタノール、またはポリプロピレングリコール、トリグリセリドなどのポリアルキレングリコールである。使用される薬学的に許容される担体のタイプは、特に、本発明による組成物が経口、鼻腔、皮内、皮下、筋肉内または静脈内投与用に処方されるかどうかに依存する。本発明による組成物は、添加剤として、湿潤剤、乳化剤または緩衝液物質を含んでも良い。
【0065】
本発明による医薬組成物は、経口、鼻腔、皮内、皮下、筋肉内または静脈内投与などの任意の適切な経路によって投与することができる。
【0066】
本発明は、抗CD79b抗体又はその機能的フラグメント、その薬物組成物又は抗体-薬物複合体、及び造血腫瘍治療におけるその使用方法を提供する。
【0067】
本明細書の抗体は、腫瘍治療に使用されるCD79bに特異的に結合する任意の抗体であり、モノクローナル抗体、抗体フラグメント(Fab、Fab′、F(ab′)2とFvフラグメントを含む)、二重抗体、単一ドメイン抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体又は対応する抗原性エピトープへの抗CD79bポリペプチド抗体の結合を競合的に阻害する抗体であっても良い。本発明の抗体は、任意的に、毒素などの細胞毒性剤(例えば、オーリスタチン(auristatin)、メイタンシノイド(Maytansinoid)、ドラスタチン(Dolastatin)誘導体またはカリケアマイシン(Calicheamicin)、抗生物質、放射性同位体、核酸分解酵素を含む)に複合されてもよい。本発明の抗体は、任意的に、CHO細胞または細菌細胞で産生されても良く、好ましくに、それらが結合する細胞の死を誘導する。検出の目的で、本発明の抗体は、検出可能に標識されてもよく、固体支持体に付着させても良い。
【0068】
本明細書の抗CD79b抗体は、SEQ ID NO:1-6に示されるアミノ酸配列の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または6つすべてを含む。ある実施の形態において、本明細書の抗CD79b抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1-3からのいずれか一つ、いずれか二つ又は全ての三つを含み、及び/又はその軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:4-6中いずれか一つ、いずれか二つ又は全ての三つを含む。ある実施の形態において、本明細書のCD79b抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1-3に示されたアミノ酸配列を含み、及び/又はその軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:4-6に示されたアミノ酸配列を含む。ある実施の形態において、本明細書の抗CD79b抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1-3に示されたアミノ酸配列を含み、その軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:4-6に示されたアミノ酸配列を含む。ある実施の形態において、本明細書の抗CD79b抗体は、以下を含む:SEQ ID NO:1に示されたアミノ酸配列を含有するHCDR1;SEQ ID NO:2に示されたアミノ酸配列を含有するHCDR2;SEQ ID NO:3に示されたアミノ酸配列を含有するHCDR3;SEQ ID NO:4に示されたアミノ酸配列を含有するLCDR1;SEQ ID NO:5に示されたアミノ酸配列を含有するLCDR2; SEQ ID NO:6に示されたアミノ酸配列を含有するLCDR3。ある実施の形態において、本明細書の抗CD79b抗体は、SEQ ID NO:1-6に示されたCDR配列を含む。
【0069】
ある実施の形態において、本明細書の抗体は、マウス抗体104E1であり、その重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:7に示されても良く、及び/又はその
軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8に示されても良い。
【0070】
ある実施の形態において、本明細書の抗体は、ヒト化抗体であり、当該ヒト化抗体には、SEQ ID NO:1-6からの少なくとも一つ、少なくとも二つ、少なくとも三つ、少なくとも四つ、少なくとも五つ又は全ての六つで、ヒト抗体の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域における対応するCDR領域を置き換えても良い。ある実施の形態において、ヒト化抗体の重鎖可変領域を調製するためのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:9に示されてもよく、ヒト化抗体の軽鎖可変領域を調製するためのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10に示されても良い。ある実施の形態において、本明細書に記載されたヒト化抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示され、及び/又は上記のヒト化抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:12に示される。
【0071】
ある実施の形態において、抗体親和性に重要な役割を果たすマウスFR領域のアミノ酸部位を見つけるために、本明細書に記載のマウス抗体104E1に類似した結晶構造についてPDBデータベースを検索した結果は、104E1抗体配列と77%の相同性を持ち、十分に高い分解能を持つ抗ポリシアル酸抗体Ab735のscFv結晶構造を発見した。本明細書では、この結晶を構造テンプレートとして、2つの配列を比較し、104E1抗体の3WBDscFvのホモロジーモデルを確立し、当該ホモロジーモデルに従って、104E1配列のFR領域内の、CDRドメインによって囲まれるまたはCDRドメインから5A以内のアミノ酸部位を見つけ、そして抗体の親和性に重要な役割を果たす可能性のあるこれらのアミノ酸部位を、CDRグラフト配列(SEQ ID NO:11とSEQ ID NO:12)で復帰突然変異する同時に、グリコシル化、脱アミド化、酸化部位などを回避する。重鎖可変領域には、復帰突然変異される必要が有る可能性がある部位を15個見つけ、A24T、RV67KA、S84R、T98K、K12A、S16A、V20L、A24T、R38K、M48I、V68A、I70L、Y95F、T98KとV113Lを含む;軽鎖可変領域には、復帰突然変異される必要が有る可能性がある部位を7個見つけ、V3L、F41Y、RR50KL、FQ41YL、R51L、V88LとV109Lを含む。次に、ジェンスクリプト(GenScript)の標準操作手順に従ってFabライブラリーを確立し、ファージディスプレイプラットフォームでスクリーニングした。マウス104E1抗体より高い親和性を有するヒト化配列をスクリーニングし、シーケンシングで配列を確認した。したがって、ある実施の形態において、本明細書に記載された抗CD79b抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13-17からのいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列から選べられてもよく、及び/又はその軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:18-22からのいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列から選べられる。本発明は、これらの重鎖可変領域と少なくとも90%、好ましくに少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域配列、及びこれらの軽鎖可変領域と少なくとも90%、好ましくに少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域配列を含む。ある実施の形態において、重鎖可変領域と軽鎖可変領域における突然変異は、FRに発生するが、CDRに発生しない。
【0072】
本発明の抗体は、定常領域を含んでも良い。定常領域は、ヒトのIgM、IgD、IgG、IgAとIgEの定常領域であっても良い。例えば、定常領域は、ヒトのIgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl又はIgA2の定常領域であっても良い。ある実施の形態において、本明細書に記載された抗CD79b抗体の重鎖は、本明細書に記載された重鎖可変領域と重鎖Fc領域を含み、軽鎖は、本明細書に記載された軽鎖可変領域と軽鎖Fc領域を含む。例示的な重鎖Fc領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:23に示されてもよく、例示的な軽鎖Fc領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:24に示されても良い。ある実施の形態において、本発明に適する重鎖Fc領域は、さらにSEQ ID NO:23に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくに少
なくとも95%の配列同一性を有する重鎖Fc領域を含み、及び/又は本発明に適する軽鎖Fc領域は、さらにSEQ ID NO:23に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくに少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖Fc領域を含む。好ましくは、重鎖及び/又は軽鎖Fc領域に、本分野に公知されるFc領域のエフェクター機能を変われる突然変異が発生しても良い。例えば、エフェクター機能が低下したFc領域では、その残基238、265、269、270、297、327、および329のうちの1つまたは複数に置換突然変異が発生する(US6,737,056を参照)。ADCCが改善された1つまたは複数のアミノ酸置換は、Fc領域の残基298、333、および/または334で発生しても良い(残基にはEUナンバリングに従って番号が付けられる)。
【0073】
ある実施の形態において、本明細書に記載された抗CD79b抗体の重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:25、27、29、31と33のいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくに少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選べられてもよく、及び/又はその軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:26、28、30、32と34のいずれか一つの配列に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくに少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列から選べられる。
【0074】
したがって、ある実施の形態において、本明細書の抗CD79b抗体は、以下の抗体から選べられる:(1)重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:25に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:26に示された抗体;(2)重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:27に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:28に示された抗体;(3)重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:29に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:30に示された抗体;(4)重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:31に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:32に示された抗体;と(5)重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:33に示され、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:34に示された抗体。
【0075】
本明細書は、さらに本明細書に記載されたCDR、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、軽鎖及び重鎖のコーディング配列及びその相補配列(核酸配列)、上記のコーディング配列又はその相補配列を有する担体、及び上記の核酸又は担体を含む宿主細胞を提供する。例示性なコーディング配列は、SEQ ID NO:36、37、38と39に示され、それらは、それぞれにSEQ ID NO:33、34、7と8のコーディング配列である。
【0076】
標準的な組換え技術を使用し、本明細書に記載された抗体またはその機能的フラグメントをコードするポリヌクレオチド配列を得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離され、シーケンスされても良い。あるいは、ヌクレオチドシンセサイザーまたはPCR技術を使用し、ポリヌクレオチドを合成することができる。得られたら、ポリペプチドをコードする配列を、原核生物宿主において異種ポリヌクレオチドを複製および発現することができる組換えベクターに挿入する。本明細書の目的のために、当技術分野で利用可能で既知の様々なベクターを使用することができる。適切なベクターの選択は、主に、ベクターに挿入される核酸のサイズおよびベクターで形質転換される特定の宿主細胞に依存する。その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅または発現、あるいはその両方)およびそれが存在する特定の宿主細胞との適合性に応じて、各ベクターは様々なコンポーネントを含む。
【0077】
ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、またはファージの形態であってもよい。適切な核酸配列は、様々な方法によってベクターに挿入することができる。一般に、目的のDNA配列は、当技術分野で既知の技術を使用して、適切な制限エンド
ヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクターのコンポーネントは、一般に、以下のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない:シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。当業者に既知の標準的なライゲーション技術を使用し、これらのコンポーネントの1つまたは複数を含む適切なベクターを構築することができる。ベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクターであっても良い。
【0078】
CD79bは、直接的に組換えで生産できるだけでなく、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても生産できる;上記の異種ポリペプチドは、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特定の切断部位を持つシグナル配列または他のポリペプチドであっても良い。一般に、シグナル配列は、ベクターのコンポーネントであっても良く、或いはベクターに挿入された抗CD79b抗体をコードするDNAの一部であっても良い。シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダー配列から選べられる原核生物のシグナル配列であっても良い。酵母分泌のために、シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー配列、アルファ因子リーダー配列(サッカロマイセス(Saccharomyces)およびクルイウェロマイセス(Kluyveromyces)のアルファ因子リーダー配列を含む)または酸性ホスファターゼリーダー配列、カンジダアルビカンスグルコアミラーゼリーダー配列などであっても良い。哺乳動物細胞の発現において、哺乳類のシグナル配列(同じまたは関連する種から由来の分泌型ポリペプチドのシグナル配列、およびウイルス分泌リーダー配列など)を使用してタンパク質分泌を誘導することができる。
【0079】
一般に、哺乳類の発現ベクターは複製起点コンポーネントを必要としない。たとえば、SV40オリジンは初期のプロモーターを含んでいるため、通常は使用できる。発現とクローニングベクターには、通常に、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子が含まれる。典型的な選択遺伝子は、以下のタンパク質をコードする:(A)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートまたはテトラサイクリンなどの抗生物質または他の毒素に対する耐性を付与するもの;(B)栄養不足を補うもの;または(c)バチルスのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子など、複雑な培地からは得られない重要な栄養素を提供するもの。
【0080】
選択プロトコルの例では、薬物を使用して宿主細胞の増殖を阻止する。異種遺伝子で成功に形質転換されたこれらの細胞は、薬剤耐性を付与するタンパク質を産生するため、選択プロトコルを免れる。そのような優勢な選択の例には、ネオマイシン、ミコフェノール酸、およびハイグロマイシンという薬物を使用する。
【0081】
発現とクローニングベクターは、通常に、mRNA合成を指示するために、抗CD79b抗体をコードする核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む。さまざまな潜在的な宿主細胞によって認識されるプロモーターは公知されるものである。酵母宿主に適するプロモーター配列の例には以下が含まれる:3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖系酵素のプロモーター、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、リン酸トリオースイソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼおよびグルコキナーゼ。
【0082】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの抗CD79b抗体の転写は、例えば、ウイルス(ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例:アデノウイルス2型)、ウシ乳頭腫ウイルス、鳥肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびシミアンウイルス40(SV40)など)ゲノムから得られた異種哺乳
動物プロモーター(アクチンプロモーターや免疫グロブリンプロモーターなど)および熱ショックプロモーターに由来するプロモーターによって制御される。ある実施の形態において、SV40ウイルスの初期および後期プロモーターを使用し、当該フラグメントはさらに、SV40ウイルスの複製起点を含む。
【0083】
高等真核細胞による抗CD79b抗体をコードするDNAの転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することで改善できる。エンハンサーはDNAのシスエレメントであり、通常は約10~300 bpであり、プロモーターに作用して転写を増加させる。哺乳類の遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、およびインスリン)からの多くのエンハンサー配列が知られている。ただし、通常、真核細胞ウイルスのエンハンサーが使用される。例としては、SV40複製起点の後期側にあるエンハンサー(bp100-270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマウイルス複製起点の後期側にあるエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーがある。エンハンサーはベクターにスプライシングされてもよく、抗CD79b抗体のコード配列の5 ′または3′の位置に配置されるが、好ましくに、プロモーターの5
′の位置に配置される。
【0084】
真核生物の宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物からの有核細胞)に用いられる発現ベクターには、さらに、転写の終結とmRNAの安定化に必要な配列が含まれる。このような配列は通常、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの非翻訳領域の5 ′末端から、場合によっては3′末端から得られる。これらの領域には、抗CD79b抗体をコードするmRNAの非翻訳部分で、ポリアデニル化フラグメントに転写されたヌクレオチドセグメントを含む。有用な転写終結コンポーネントの1つは、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化領域である。
【0085】
本明細書に記載された核酸配列を含むベクターは、当技術分野で公知の方法を使用し、宿主細胞に導入することができる。インビトロで核酸を宿主細胞に導入するのに適した技術には、リポソームの使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿などが含まれる。
【0086】
宿主細胞は、原核生物細胞または真核生物細胞であっても良い。適切な原核生物は、グラム陰性菌またはグラム陽性菌などの古細菌および真正細菌、例えば、大腸菌などの腸内細菌科を含むが、これらに限定されない。他の適切な原核生物宿主細胞には以下が含まれる:エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテオバクテリア属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)(例えばネズミチフス菌(Salmonellatyphimurium))、セラチア属(Serratia)(例えばセラチア・ マルセッセンス(Serratiamarcescans))と赤痢菌属(Shigella)、及びバチルス属(Bacilli)(例えば枯草菌(B.subtilis)とバチルス・リケニフォルミス(B.licheniformis))、シュードモナス属(Pseudomonas)(例えば緑膿菌(P.aeruginosa))、リゾビウム属(Rhizobia)、ビトレオシラ属(Vitreoscilla)、パラコッカス属(Paracoccus)とストレプトマイセス属(Streptomyces)。
【0087】
全長抗体、抗体フラグメントおよび抗体融合タンパク質は、特に、グリコシル化とFcエフェクター機能が必要ない場合、例えば治療用抗体が細胞毒性剤(例えば毒素)に複合され、免疫複合体自体が腫瘍細胞破壊の有効性を示す場合、細菌で調製することができる。全長抗体は、循環中の長い半減期を有する。大腸菌での調製はより速く、より経済性が高い。細菌における抗体フラグメントおよびポリペプチドの発現については、例えば、U
S5,648,237、US5,789,199およびUS5,840,523を参照し、これらは、発現および分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)およびシグナル配列を説明している。発現後、抗体は大腸菌細胞ペーストから可溶性画分に分離され、例えば、アイソタイプに応じてプロテインAまたはGカラムによって精製することができる。最終の精製は、例えば、CHO細胞で発現された抗体を精製するために使用される方法と同様に実施することができる。
【0088】
糸状菌や酵母などの真核微生物も、抗CD79b抗体をコードするベクターの適切なクローニングまたは発現宿主である。サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、一般的に使用される下等真核生物の宿主微生物である。その他には、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイウェロマイセス(Kluyveromyces)属などがある。
【0089】
グリコシル化された抗CD79b抗体を発現するのに適した宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例は、ショウジョウバエS2やスポドプテラSf9などの昆虫細胞、及び、綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、タバコなどの植物細胞の細胞培養を含む。多くのバキュロウイルス株およびバリアント、ならびに対応する許容された昆虫宿主細胞は、ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、キイロショウジョウバエ、およびボンビックスモリなどの宿主から由来することを同定された。
【0090】
有用な哺乳類宿主細胞株の例は以下のものである:SV40で形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCCCRL1651)、ヒト胎児腎臓株(293細胞、または浮遊培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCCCCL10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO)、マウスセルトリ(sertoli)細胞(TM4)、サル腎臓細胞(CV1、ATCCCCL70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCCCRL-1587)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA、ATCCCCL2)、犬の腎臓細胞(MDCK、ATCCCCL34)、バッファローラット(buffalorat)肝細胞(BRL3A、ATCCCRL1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCCCCL75)、ヒト肝細胞(HepG2、HB8065)、マウス乳房腫瘍(MMT060562、ATCCCCL51)、TRI細胞、MRC5細胞、FS4細胞、ヒト肝肉腫株(HepG2)など。
【0091】
本発明の抗CD79b抗体を産生するために使用される宿主細胞は、当技術分野で周知の培養条件下で様々な培地で培養することができる。
【0092】
さまざまな形態の抗CD79b抗体を培養液または宿主細胞溶解物から回収できる。メンブレンに結合している場合は、適切な洗浄剤溶液(Triton-X100など)または酵素的切断を使用し、メンブレンから放出させることができる。抗CD79b抗体の発現に使用される細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破裂、または細胞溶解剤などのさまざまな物理的または化学的手段によって破裂するができる。
【0093】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、好ましい精製技術は、アフィニティークロマトグラフィーである。回収する抗体によって、例えば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSETMでのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフ
ィー、クロマトグラフィーフォーカシング、SDS-PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿などの他のタンパク質精製技術も使用できる。
【0094】
一方、本明細書は、細胞毒性剤と複合された抗体を含む免疫複合体または抗体-薬物複合体(ADC)、ならびにその使用および調製の方法を提供する。本発明に適する細胞毒性剤は、薬物(化学療法薬など)、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物から由来する酵素的に活性を有する毒素又はそのフラグメント)、または放射性同位体(すなわち、放射複合体)であっても良い。一般に、免疫複合体は、細胞毒性剤または検出可能な薬剤に共有結合した前述の抗CD79b抗体のいずれかを含む。
【0095】
本明細書では、「薬物」とは、所望の生物学的活性を有する任意の化合物を指す。所望の生物学的活性は、ヒトまたは他の動物の疾患の診断、治癒、緩和、治療、および予防が含まれる。したがって、用語「薬物」とは、公式の国家薬局方、ならびに米国の公式のホメオパシー薬局方、公式の国内処方集、またはそれらのサプリメントなどで確認された薬物を含む化合物を指す。典型的な薬物は、医師用医薬品便覧(Physician’s Desk Drug Reference)(PDR)およびアメリカ食品医薬品局(FDA)のオレンジブックにリストされている。新薬の継続的な発見と開発により、これらの薬物は、本明細書に記載の複合薬のプロドラッグにも含まれるべきである。好ましくに、上記の薬物は、本明細書に記載された複合体を調製するために使用できるように、反応性官能基を有する。
【0096】
本明細書に適する例示的な薬物は、以下を含むが、これらに限定されない:がんの治療に使用される細胞毒性薬;所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチド、例えば、アカシア毒素、リシンA、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素などの毒素、腫瘍壊死因子、アルファインターフェロン、ベータインターフェロン、神経性成長因子、血小板由来成長因子、組織型プラスミノーゲン成長因子を含む他の適切なタンパク質、及び、リンホカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子または他の成長因子などの生物学的反応修飾因子。
【0097】
例示的な薬物は、以下を含む:マイタンシン(maytansine);マイタンシノイド(maytansinoid);オーリスタチンペプチド(Auristatin peptide)薬物(例えばモノメチルオーリスタチンペプチドE(MMAE)およびモノメチルオーリスタチンペプチドF(MMAF));カリケアマイシン(Calicheamicin)類(例えば、カリケアマイシン);アドリアマイシン(Adriamycin)類(例えば、アドリアマイシン);ベンゾジピロール(Benzodipyrrole)抗生物質(例えばデュオカルマイシン(duocarmycins)、CC-1065など)及び他のシクロプロパピロロインド-4-オン(cyclopropapyrroloind-4-one、CPI)誘導体、例えば、シクロプロパベンズインド-4-オン類似体、例えば:
【化1】
及びピロロベンゾジアゼピン類(PBD)またはPBDダイマー類、例えば:
【化2】
【0098】
抗体は、直接またはリンカーを介して薬物に複合させることができる。リンカーは、切断可能なリンカーと切断不可能なリンカーの2つのカテゴリに分けられる。切断不可能なリンカーを含む抗体-薬物複合体の場合、その薬物放出メカニズムは次のとおり:複合体が抗原に結合し、細胞にエンドサイトーシスされた後に、抗体は、リソソームで酵素的に消化され、小分子薬、リンカー、および抗体アミノ酸残基で構成される活性分子を放出する。結果としては、生じる薬物分子の構造の変化が、その細胞毒性を低下させないが、活性分子は帯電しているため(アミノ酸残基)、隣接する細胞に浸透することはできなくなる。したがって、そのような活性薬物は、標的抗原を発現しない隣接する腫瘍細胞(抗原陰性細胞)を殺すことはできない(傍観者効果、bystandereffect)(Ducry等、2010、BioconjugateChem.21:5-13)。切断可能なリンカーは、標的細胞内で切断され、活性薬物を放出することができる。切断可能なリンカーは、化学的に不安定なリンカーと酵素に不安定なリンカーの2つの主要なカテゴリに分けられる。化学的に不安定なリンカーは、血漿と細胞質の特性の違いにより、選択的に切断される可能性がある。このような特性は、pH、グルタチオン濃度などを含む。pH感受性リンカーは通常に、酸切断リンカーとも呼ばれ、このようなリンカーは、血液の中性環境(pH 7.3-7.5)では比較的安定しているが、弱酸性のエンドソーム(pH 5.0-6.5)およびリソソーム(pH 4.5-5.0)では加水分解される。グルタチオン感受性リンカーは、ジスルフィド結合リンカーとも呼ばれる。薬物放出は、細胞内の高濃度(ミリモル範囲)のグルタチオンと血中の比較的低濃度(マイクロモル範囲)のグルタチオンの違いに基づくことである。その低い酸素含有量が、増強されたレダクターゼ活性をもたらし、そしてより高いグルタチオン濃度をもたらす腫瘍細胞には、特に当てはまる。ジスルフィド結合は熱力学的に安定しているため、血漿中での安定性が高い。ペプチドリンカーなどの酵素に不安定なリンカーは、薬物放出をよりよく制御することができる。ペプチドリンカーは、カテプシン(Cathepsin B)やプラスミン(一部の腫瘍組織で増加)などのリソソーム内のプロテアーゼによって効果的に切断される。このペプチドによるリンケージは、血漿循環において非常に安定していると考えられ、これは、細胞外の不適切なpH値と血清プロテアーゼ阻害剤により、プロテアーゼが一般的に不活性になるためである。比較的な高い血漿安定性と良好な細胞内切断選択性および有効性の観点から、酵素に不安定なリンカーは、抗体-薬物複合体の切断可能なリンカーとして広く使用される。典型的な酵素に不安定なリンカーは、Val-Cit(vc)、Phe-Lysなどを含む。自壊性リンカーは、一般に、切断可能なリンカーと活性薬物との間に埋め込まれるか、またはその自体は、切断可能なリンカーの一部である。自壊性リンカーの作用メカニズムは次のとおり:切断可能なリンカーが適切な条件下で切断されると、自壊性リンカーは自発的に転位し、そして、それと接続された活性薬物を放出することができる。一般的な自壊性リンカーは、p-アミノベンジルアルコール(PAB)とβ-グルクロニド(β-Glucuronide)を含む。
【0099】
リンカーは、1つまたは複数のリンカーコンポーネントを含んでも良い。例えば、ある実施の形態において、リンカーの構造は、V-Lであっても良く、ただし、Vコンポーネントは存在するかまたは存在しなく、以下に説明する三座リンカーコンポーネントまたはテトラマレイミドリンカーコンポーネントであり、Lコンポーネントは、前記の切断不可能なリンカーと切断可能なリンカーであっても良く、例えば酸不安定リンカー(例えば、ヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)リンカー、光不安定リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーなど。例示的なリンカーコンポーネントは、6-マレイミドヘキサノイル、マレイミドプロピオニルバリン-シトルリン、アラニン-フェニルアラニン、p-アミノベンジルオキシカルボニル、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレートとN-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノ安息香酸を含む。他の例示的なリンカーコンポーネントは、また、プロテアーゼ切断を可能にするアミノ酸単位を含むリンカーであっても良く、これにより、細胞内プロテアーゼ(例えばリソソーム酵素)への曝露後の免疫複合体からの薬物の放出が促進される。例示的なアミノ酸単位は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、およびペンタペプチドを含むが、これらに限定されない。例示的なジペプチドは、バリン-シトルリン;アラニン-フェニルアラニン;フェニルアラニン-リジン;またはN-メチル-バリン-シトルリンを含む。例示的なトリペプチドは、グリシン-バリン-シトルリンおよびグリシン-グリシン-グリシンを含む。
【0100】
例示的な三座(またはビスマレイミド)リンカーコンポーネントは、以下の構造を有しても良い:
【化3】
例示的なテトラマレイミドリンカーコンポーネントは、以下の構造を有しても良い:
【化4】
【0101】
他の適切なリンカー、薬物、またはリンカー薬物の例としては、CN 103933575AおよびCN107652219Aに記載されて、CN 103933575 Aに開示された抗体-薬物複合体H-1-vcMMAE、H-1-MMAF、H-3-vcMMAE、H-3-MMAF、H-4-vcMMAE、H-4-MMAFに示されたリンカー-薬物、及びCN 107652219 Aに開示された番号は1-vcMMAEから12-vcMMAEまでのものを含むが、これらに限定されない。本明細書では、これら2つの出願の内容全体を参照により本明細書に組み込んでいる。したがって、ある実施の形態において、本発明の抗体-薬物複合体は、以下の構造を有しても良い:
A-(V-L-D)n
ただし、Aは、本明細書の抗体である;V-Lは、リンカーであり、Vは存在するかまた
は存在しなく、前記のいずれか一つの三座リンカーコンポーネント又はテトラマレイミドリンカーコンポーネントであり、Lは、切断可能なリンカー又は切断不可能なリンカーであり、VとLの少なくとも1つが存在する;Dは、興味ある細胞毒性剤である;nは1-4の整数である。
【0102】
ある実施の形態において、Lは、前記のプロテアーゼ切断を可能にするアミノ酸単位を含むリンカーである。
【0103】
本明細書の例示性な抗体-薬物複合体の例として、本願の実施例を参照し、AS11259-ADC-001、AS11259-ADC-002、AS11259-ADC-003、AS11259-ADC-004、AS11259-ADC-005、AS11259-ADC-006、AS11259-ADC-007、AS11259-ADC-008、AS11259-ADC-010、AS11259-ADC-011とAS11250-ADC-0012を含むが、これらに限定されない。
【0104】
ある実施の形態において、免疫複合体は、高放射性原子を含んでも良い。さまざまな放射性同位体は、放射性複合抗体を生成するために用いられても良い。実例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212とLuである放射性同位体を含む。免疫複合体を検出に使用する場合、シンチグラフィー研究用の放射性原子(例えばTc99mやI123)、または核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴画像法、MRIとも呼ばれる)用のスピンマーカー(例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄)を含んでも良い。
【0105】
放射性または他のマーカーは、既知の方法で免疫複合体に組み込むことができる。例えば、ペプチドは生物学的に合成することができ、または、化学的にアミノ酸合成によって合成しても良く、ただし、例えば、水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する。Tc99m又はI123、Re186、Re188とIn111などのマーカーは、ペプチドのシステイン残基を介して結合できる。イットリウム90はリジン残基を介して結合することができる。
【0106】
本明細書のADCは、以下を含む、当業者に知られている有機化学反応、条件、および試薬を使用するいくつかの経路を介して調製することができる:(1)抗体の求核基は、共有結合を介して二価リンカー試薬と反応し、共有結合を介して抗体-リンカーを形成し、次に薬物と反応する;及び(2)薬物モジュールの求核基は、二価リンカー試薬と反応し、共有結合を介して薬物-リンカーを形成し、次に抗体の求核基と反応する。
【0107】
本明細書の抗体、その機能的フラグメントまたは抗体-薬物複合体は、治療される疾患に適した任意の経路で投与することができ、これらの投与方式は、経口、胃腸外、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外などを含む。
【0108】
疾患の予防または治療に対して、本明細書に記載された抗体、その機能的フラグメント又は抗体-薬物複合体の適切な投与量(単独で、または化学療法薬などの他の1つ以上の薬と組み合わせて使用する場合)は、治療される疾患の種類、抗体、その機能的フラグメントまたは抗体-薬物複合体の種類、疾患の重篤度および進行、抗体、その機能的フラグメントまたは抗体-薬物複合体の投与は、予防を目的とするか、それとも治療を目的とするか、以前の治療法、患者の病歴と、抗体、その機能的フラグメントまたは抗体-薬物複合体に対する反応、および主治医の判断に依存する。適切には、抗体、その機能的フラグメント又は抗体-薬物複合体は、一度に、または一連の治療を通じて患者に投与される。
疾患の種類および重篤度に応じて、患者への投与の最初の候補投与量は、例えば、1回または複数回の別々の投与または連続注入のいずれかによって、約1μg/kgから100mg/kg(例えば、0.1 mg/kg-20 mg/kg)の抗体、その機能的フラグメント又は抗体-薬物複合体であっても良い。上記の要因に基づいて、典型的な1日投与量は、約1μg/kgから100mg/kgまたはそれ以上であっても良い。数日またはそれ以上にわたる反復投与の場合、状態により、通常に、疾患症状の望ましい抑制が起こるまで治療を続ける。抗体、その機能的フラグメント又は抗体-薬物複合体の例示的な投与量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲であっても良い。このようにして、1回分または複数回分の抗体、その機能的フラグメント又は抗体-薬物複合体を、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kgまたは10mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)で患者に投与することができる。これらの投与量は、間欠的に、例えば毎週または3週間ごとに投与されても良い(例えば、患者が約2回分から約20回分、例えば約6回分の抗体または免疫複合体を受け取る)。より高い初期負荷投与量を1回投与し、その後に1回分または複数回分のより低い投与量を投与することができる。例示的な投与計画は、約4mg/kgの抗体の初期負荷投与量の投与と、それに続く約2mg/kgの毎週の維持投与量の投与を含む。しかしながら、他の投与計画もまた有用かもしれない。この治療法の進行は、従来の技術とアッセイによって簡単に監視される。
【0109】
患者への抗体タンパク質の投与に加えて、本願は、遺伝子治療による抗体の投与を想定している。細胞内抗体を生成するための遺伝子治療の使用については、例えば、WO96
/ 07321を参照される。(任意的にベクターに含まれる)核酸を患者の細胞に取り込ませるには、主に2つの方法、つまりインビボとエクスビボがある。インビボ送達の場合、核酸は、通常に、抗体が必要とされる部位で患者に直接注射される。エクスビボ治療では、患者の細胞を収集し、核酸をこれらの分離された細胞に導入し、修飾された細胞を患者に直接投与するか、または、例えば、多孔質膜に詰められて患者の体内に移植する(例えば、米国特許第4,892,538号および第5,283,187号を参照される)。生細胞に核酸を導入するために使用できるさまざまな技術がある。これらの技術は、核酸が目的の宿主のインビトロ培養細胞またはインビボ細胞のどちらに移されるかによって異なる。インビトロで核酸を哺乳類細胞に導入するのに適した技術には、リポソームの使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿などが含まれる。遺伝子のエクスビボ送達に一般的に使用されるベクターは、レトロウイルスである。
【0110】
現在好ましいインビボ核酸導入技術は、ウイルスベクター(アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、またはアデノ随伴ウイルスなど)および脂質ベースのシステム(脂質の仲介に用いられる遺伝子導入に使用できる脂質は、DOTMA、DOPE、DC-Cholを含む)によるトランスフェクションを含む。
【0111】
本明細書は、さらに、少なくとも一つの本明細書に記載された抗CD79b抗体及び/又は少なくとも一つのその免疫複合体及び/又は少なくとも一つの本明細書に記載された抗CD79b抗体-薬物複合体を含む薬物組成物を提供する。ある実施の形態において、薬物組成物は、以下を含む:(1)本明細書の抗CD79b抗体及び/又はその免疫複合体、と(2)薬学的に許容される担体。ある実施の形態において、薬物組成物は、以下を含む:(1)本明細書の抗CD79b抗体及び/又はその免疫複合体、と任意的な(2)少なくとも一つの既知の治療製剤、例えば既知の治療に用いられるCD79bに仲介された疾患の治療製剤。
【0112】
本明細書によって使用され、抗CD79b抗体又は抗CD79b抗体-薬物複合体を含む薬物組成物は、所望の純度の抗体または抗体-薬物複合体を、任意の薬学的に許容され
る担体、賦形剤または安定剤と混合して、凍結乾燥剤形または貯蔵用の水溶液を調製することによって調製される。許容される担体、賦形剤または安定剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、以下を含む:酢酸塩、トリス、リン酸塩、クエン酸塩、その他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸とメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;クロルヘキシジンジアンモニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸プロピルなどのp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロカルビル;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール; 3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清タンパク質、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、およびグルコース、マンノース、デキストリンなどの他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;トレハロースや塩化ナトリウムなどの張性調整剤;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ポリソルベートなどの界面活性剤;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質複合体);および/またはTWEE(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。インビボ投与用の薬物製剤は、一般に無菌である。これは、滅菌フィルターメンブレンでろ過することで簡単に実現できる。
【0113】
本明細書の抗CD79b抗体は、哺乳動物においてCD79bを発現する腫瘍を治療するために、または腫瘍の1つまたは複数の症状を軽減するために使用することができる。このような腫瘍は、造血系のがんまたは血液関連のがん、例えばリンパ腫、白血病、骨髄腫、またはリンパ系悪性腫瘍、ならびに脾臓のがんおよびリンパ節のがんを含むが、これらに限定されない。CD79bを発現する腫瘍は、特にB細胞関連がんを含み、その具体的な例は、例えば、高悪性度、中悪性度、および低悪性度のリンパ腫(B細胞リンパ腫を含み、例えば、粘膜関連リンパ組織B細胞リンパ腫と非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫とホジキンリンパ腫およびT細胞リンパ腫)と白血病(続発性白血病、慢性リンパ性白血病を含む白血病、例えば、B細胞白血病(CD5+Bリンパ球)、急性骨髄性白血病などの骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病などのリンパ性白血病および骨髄異形成症候群)。癌は、前述の転移性癌のいずれかを包含する。抗体は、哺乳動物においてCD79bポリペプチドを発現する腫瘍細胞の少なくとも一部に結合することができる。好ましい実施形態において、抗体は、インビトロまたはインビボで、細胞上のCD79bポリペプチドに結合する際に、CD79bを発現する腫瘍細胞を効果的に破壊または殺すか、或いはそのような腫瘍細胞の増殖を阻害する。このような抗体は、裸の抗CD79b抗体(どの薬剤にも複合していないもの)を含む。細胞毒性または細胞増殖抑制特性を有する裸の抗体は、細胞毒性剤とさらに協力し、腫瘍細胞を破壊するのにより効果的にすることができる。例えば、抗体を細胞毒性剤に複合し、本明細書に記載された免疫複合体を形成することにより、抗CD79b抗体に細胞毒性特性を付与することができる。
【0114】
本明細書は、さらに、CD79bを発現する腫瘍を治療、予防、および/または診断するために使用できる物質を含む製品も提供する。製品は、容器と、上記の容器にある又は容器に関連するラベルまたはパッケージインサートを含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、注射器などを含む。容器は、ガラスやプラスチックなど、さまざまな素材で製造できる。容器は、腫瘍状態を治療、予防および/または診断するのに有効な組成物を含み、かつ滅菌アクセスポートを有しても良い(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを備えた静脈内溶液バッグまたはバイアルであっても良い)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書の抗CD79b抗体である。ラベルまたはパ
ッケージインサートは、該組成物が腫瘍の治療、予防、および/または診断に使用されることを示している。ラベルまたはパッケージインサートは、腫瘍(特に癌)患者に抗体組成物を投与するためのマニュアルをさらに含む。さらに、製品はまた、第2の容器を含み、その中に、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を収納する。それはまた、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針および注射器を含む、商業的およびユーザーの観点から必要とされる他の材料を含んでも良い。
【0115】
例えば、CD79bを発現する細胞のキリングアッセイのため、細胞からのCD79bポリペプチドの精製または免疫沈降のためなど複数の目的に使用できるキットも提供する。CD79bを分離および精製するために、キットは、ビーズ(たとえば、セファロースビーズ)に複合した抗CD79b抗体を含む場合がある。CD79bポリペプチドのインビトロ検出および定量化(例えばELISAまたはウエスタンブロッティング)のための抗体を含むキットを提供することができる。製品と同じ、キットは、容器と、上記の容器にある又は容器に関連するラベルまたはパッケージインサートを含む。容器は、本明細書の少なくとも1つの抗CD79b抗体を含む組成物を収納する。例えば、希釈剤および緩衝液、対照抗体を収納する追加の容器を含んでも良い。ラベルまたはパッケージインサートは、組成物の説明およびその意図されたインビトロまたは試験使用のためのマニュアルを提供することができる。
【実施例】
【0116】
実施例
以下、具体的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の単なる例示であることが理解されるべく。以下の実施例に具体的な条件を示しない実験方法は、一般的に、通常の条件またはメーカーの推奨条件に従う。すべての反応は窒素の保護下で行われる(水素化反応を除く)。
【0117】
別段の定義がない限り、本文で使用されているすべての専門用語および科学用語は、当業者によく知られている用語と同じ意味を有する。さらに、記載された内容と類似または同等の任意の方法および材料を本発明の方法に適用することができる。本明細書に記載される実施の形態および材料は、例示のみのためである。
略語
Ab 抗体
ACN アセトニトリル
ADC 抗体-薬物複合体
BOC (Boc) Tert-ブトキシカルボニル
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
ELISA 酵素結合免疫吸着アッセイ
EtOAc 酢酸エチル
Eq (eq) 当量
g グラム
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N,N-テトラメチル尿素ヘキサフルオロホスフェート
HOSu N-ヒドロキシスクシンイミド
HIC 疎水性相互作用クロマトグラフィー
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC-MS 液体クロマトグラフィー-質量分析
mAb モノクローナル抗体
min 分間
mL ミリリットル
MS 質量分析
nm ナノメートル
μL マイクロリットル
PE 石油エーテル
rt 室温
Rt 保留時間
SDS-PAGE ポリアクリルアミドゲル電気泳動
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
【0118】
特に明記しない限り、すべての無水試薬はサプライヤーから直接購入し、窒素下で保存した。購入した他のすべての試薬と溶媒は高純度であり、使用前にさらに精製することはなかった。
【0119】
核磁気共鳴スペクトルは、Bruker Avance III 500M 核磁気共鳴分光計で収集された。化学シフトの単位(δ)はppmであり、テトラメチルシランが参照システムとして使用された(化学シフトは0)。
【0120】
液体クロマトグラフィー-質量分析法では、HP Agilent1200高速液体クロマトグラフと接続するAgilent 6110(酸法)または6120B(アルカリ法)質量分析計で、低分解能質量分析データが収集された。
【0121】
方法1:酸法高速液体クロマトグラフィー方法には、ウォーターズ Sunfire C18逆相カラム(4.60 × 50 mm、3.5 μm)で単離し、溶離液の勾配は、A相(水相、0.01% TFAを含む)中にあるB相(アセトニトリル、0.01%TFAを含む)が1.4分間の内に5%-95%であり、流速は2.0 mL/minであり、カラム温度は50℃であった;
方法2:酸法高速液体クロマトグラフィー方法には、Poroshell 120 EC-C18逆相カラム(4.6 × 30 mm、2.7 μm)で単離し、溶離液の勾配は、A相(水相、0.01% TFAを含む)中にあるB相(アセトニトリル、0.01%TFAを含む)が2分間の内に5%-95%であり、流速は1.5 mL/minであり、カラム温度は50℃であった;
方法3:アルカリ法高速液体クロマトグラフィー方法には、ウォーターズ Xbridge C18逆相カラム(4.60 × 50 mm、3.5 μm)で単離し、溶離液の勾配は、A相(水相、10mM重炭酸アンモニウムを含む)中にあるB相(アセトニトリル)が1.5分間の内に5%-95%であり、流速は2.0mL/minであり、カラム温度は40℃であった。
【0122】
調製は、ギルソン(Gilson)装置で逆相-高速液体クロマトグラフィー精製(prep-RP-HPLC)により完成し、使用した分離カラムはウォーターズ Sunfire C18逆相クロマトグラフィーカラム(250 × 19mm、10μm)であった。
【0123】
方法4:酸法による調製。移動相:A:0.1%TFAを含む水相;B:ACN。流速:20 mL/min。
【0124】
方法5:アルカリ法による調製。移動相:A:10mM重炭酸アンモニウムを含む水相
;B:ACN。流速:20 mL/min。
【0125】
特に明記しない限り、実施例に記載されている市販の試薬は、製造業者の指示に従って使用された。
【0126】
1、抗原抗体結合試験(ELISA)
実施例では、酵素結合免疫吸着アッセイを使用し、インビトロでのCD79b抗原に対する抗CD79b抗体(マウス血清、ハイブリドーマ上清または組換え発現モノクローナル抗体などを含む)の親和性を試験した。
【0127】
実験手順は:PBS(10 mMリン酸、138 mM NaCl、pH7.2)中の1 ug/mlの抗原(ヒトCD79b-ECD、ノボプロテイン、CA29)(100
ul /ウェル)により、96ウェルプレート(Corning、CAT#9018)を4℃で一晩コートした後、250 ul/ウェルのブロッキング溶液(PBS + 1%BSA(Sangon, CAT #A0332))により25℃で1~3時間ブロッキングした。プレートを洗浄液(PBS + 0.05%Tween-20(Sangon、CAT#TB0560))で3回洗浄した後、100 ul のブロッキング溶液中の抗CD79b抗体の段階希釈液と共に、二重ウェル中で25℃で2時間インキュベートした。洗浄液でプレートを3回洗浄した後、100ulの1:10,000の二次抗体(抗マウスIgG(Fc)-HRP、Sigma、CAT#A00168または抗ヒトIgG F(ab ′)2-HRP、Sigma、CAT#A0293)と共に、25℃で1時間インキュベートした。洗浄液でプレートを3回洗浄した後、100 ul /ウェルのTMB(Sangon、CAT#TB0954)を各ウェルに加え、発色まで25℃で(約15分間)放置した。100 ul /ウェルの停止溶液(1N H2SO4)を加えることで反応を停止させた。マイクロプレートリーダーで10分以内にOD450/630nmを読み取った。
【0128】
2.FACSで細胞表面のCD79bへの抗体の結合を検出
実施例では、フローサイトメトリー(FACS)を使用し、抗CD79b抗体(マウス血清、ハイブリドーマ抗体などを含む)がインビトロでがん細胞の表面にある天然のCD79b細胞外ドメインに結合する能を検出した。
【0129】
DSMZまたはATCCからCD79b陽性発現または陰性発現がん細胞ビーズを購入し、細胞膜表面受容体定量キットQIFIKIT(DAKO、K0078)を使用し、細胞表面のCD79bを定量した。結果は、以下の表に示された:
【0130】
【0131】
SU-DHL-4細胞株を使用し、免疫したマウスとハイブリドーマ上清の検出およびスクリーニングを行った。具体的な方法は、対数増殖期のSU-DHL-4細胞を回収し、PBSで洗浄し、約100,000細胞/チューブで1.5 ml EPチューブに分配し、希釈したマウス血清またはハイブリドーマ上清を100 ul /チューブで加え、4℃で1時間インキュベートした。PBS-2%BSAで2回洗浄した後、PBS-2%BSAによって1:400で調製されたAlexaFluor 488ヤギ抗マウスIgG(H + L)(Molecular Probes、Cat#A11001)を100 ul /チューブで添加し、該溶液を暗所で45分間4℃でインキュベートした。細胞をPBS-2%BSAで2回洗浄し、500ul PBS-2%BSAで再懸濁し、フローサイトメーターGuava(Millipore、8HT)で解析を行い、蛍光強度(MFI値)に基づいて、細胞表面のCD79b受容体に対する抗体の結合強度を決定した。
【0132】
3、薬物複合体の調製
抗CD79b抗体の有効性を検証するために、抗体を、さまざまなリンカーを使用し、さまざまな小分子薬物に複合し、薬物複合体を調製し、具体的な複合方法は次のとおりであった。
【0133】
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP、10 eq、ストック溶液濃度10 mM)を抗体溶液(20 mMリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムバッファー、150 mM塩化ナトリウム、pH 7.2)に加えた。反応溶液を37℃の恒温水浴中で2時間インキュベートした。反応溶液をほぼ室温まで冷却し、限外濾過(MilliporeAmicon(登録商標)Ultra、50000 MWCO)またはゲル濾過によって緩衝液(100 mMリン酸二水素カリウム-リン酸水素二カリウム、100 mM塩化ナトリウム、1 mMジエチレントリアミン五酢酸、pH 7.0-8.0)または緩衝液(20 mMクエン酸-クエン酸三ナトリウム、50 mM塩化ナトリウム、1 mMジエチレントリアミン五酢酸、pH 6.0)に交換し、ジメチルスルホキシドおよび対応するリンカー-薬物化合物(ジメチルスルホキシドストッ
ク液、抗体に対して3-10当量)を添加し、反応溶液中のジメチルスルホキシドの体積比を約10-15%まで確保した。複合反応は10℃で0.5時間行った。
【0134】
過剰のシステイン溶液を反応溶液に加えて、未反応のリンカー-薬物化合物をクエンチし、クエンチ反応を10℃で30分間行った。反応溶液を最初に限外ろ過(MilliporeAmicon(登録商標)Ultra、50000 MWCO)またはゲルろ過にかけてリンカー-薬物-システイン付加物と過剰なシステインを除去し、サンプルを保存緩衝液(20 mMリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムバッファー、150 mM塩化ナトリウム、pH 7.2)に交換し、次に0.22 μmのフィルター装置(Millex-GV Filter)で除菌し、抗CD79b-ADCを得、4℃で保存した。
【0135】
上記の方法で薬物複合体の調製に用いられる抗体は、ラット抗マウスHB58抗体(ATCC(登録商標)HB-58TM)、抗CD79bヒトマウスキメラ抗体、およびヒト化後のさまざまなバリアントを含み、さらに本発明で言及された他のコントロール抗体も含む。
【0136】
4. 2次ADC実験でリンパ腫細胞BJABに対するハイブリドーマ上清の増殖阻害効果を検出。
少量または精製が困難な抗体の場合、リンカーや小分子毒素との複合実験を完了するのに十分な量がない;この場合、まずリンカーや毒素小分子と複合した抗体に結合させた後、さらに癌細胞と共培養することで、標的抗体のエンドサイトーシスにより、それに結合した抗体-薬物複合体は細胞内部に運ばれ、がん細胞を殺す。この間接反応抗体のエンドサイトーシスの性質と癌細胞に対するその増殖阻害効果は、2次ADC実験と呼ばれる。
【0137】
2次ADC実験を実施するために、HB58細胞株(ATCC(登録商標)HB-58TM)をATCCから購入し、この細胞株は、ラットB細胞とP3X63Ag8.653骨髄腫細胞の融合後に得られたハイブリドーマ細胞であり、分泌される抗体は、マウス抗体に特異的に結合することができた。HB58細胞株の培地の精製で、十分なHB58抗体を取得し、抗体-薬物複合体HB58-ADCを調製した。
【0138】
ヒトリンパ腫細胞BJABを、1×105細胞/100ul /ウェルで96ウェル細胞培養プレート(BDファルコン、Cat#353072)に接種し、培地はATCC改変RPMI1640培地(Gibco、Cat#A10491)+ 10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco、Cat#10099141)であった。37℃のインキュベーター(SANYO、MC0018AIC)で1日間インキュベートし、2日目にHB58-ADCと1:1の濃度比でプレミックスした抗CD79b抗体を含むハイブリドーマ上清および関連コントロールを100 ul /ウェルで、3倍勾配希釈で添加し、合計9つの勾配濃度ウェルと1つのコントロールウェルにした。37℃のインキュベーターで3日間インキュベートした。5日目に、細胞増殖検出キット(Cell Counting
Kit-8)(DOJINDO、CK04)を使用し、発色させた。キットのマニュアルに従って細胞増殖状況を検出した。マイクロプレートリーダー(BioTek Synergy MX)を使用し、450/630 nmでの吸光度値を読み取り、IC50と阻害率を計算した。
【0139】
5.表面プラズモン共鳴法で抗体親和性を測定
実施例では、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用し、インビトロで組換えCD79b細胞外ドメインタンパク質に対する抗CD79b抗体(ヒト-マウスキメラ抗体およびヒト化抗体などを含む)の結合能を検出した。
【0140】
実験はBiacore T200(GE)マシンで実施し、試験する抗体を、HBS-EP(GE、BR100826)緩衝液で10 ug/mlに希釈し、、Amine-Coupling Kit(GE、BR-1000-50)の指示に従って、試験する抗体をCM5チップ(GE、BR-1006-68)に固定し、固定時間は300秒、流速は10 ul/min、Kineticsプログラムを使用して、HBSバッファーでさまざまな濃度(0.25 nm、0.5 nm、1 nm、2 nm、4 nm、8(×2)nm、16 nm)に勾配希釈した組換えCD79b細胞外ドメインタンパク質を捕捉し、抗原-抗体結合時間を300秒、解離時間を900秒、抗原タンパク質の流速を30
ul / minに設定した。解離曲線を当てはめて、さまざまな抗体のKD値を計算した。上記の実験のいずれかも25℃で行った。
【0141】
実施例1:抗ヒトCD79bのマウスモノクローナル抗体細胞株の産生およびスクリーニング
マウス由来の抗ヒトCD79bモノクローナル細胞株は、Nanjing GenScript Biotechnology Co.、Ltdに委託し、マウスの免疫化、脾臓細胞の融合、およびハイブリドーマスクリーニング法によって得られた。免疫化に使用した抗原は、組換え発現したヒトCD79b細胞外ドメインタンパク質(上海近岸株式会社、製品名は組換えヒトCD79B、製品番号はCA29、アミノ酸配列はSEQ ID
NO:35に示されている)であり、免疫化には、Balb/C、C3H、SJL、C57BL/6の合計4種のマウスを選択し、各種マウスを6匹ずつ使用した。免疫アジュバントは従来のフロイントアジュバントであり、最初の免疫の用量はマウスあたり50ugの抗原であった。2週間間隔で免疫を増強し、用量を25ugに減らし、最初の追加免疫から、各追加免疫の7日後にマウス血清を収集し、ELISAによって効力を測定した(方法については、「材料と方法」の1を参照)。2回目の追加免疫の7日後に収集したマウス血清を、FACS検出(方法については、「材料と方法」の2を参照)に使用し、CD79b陽性発現細胞株SU-DHL4の表面のCD79bに結合できるかどうかを確認したと同時に、各マウスの結合効力を測定した。
【0142】
ELISAとFACSの結果により、2回の追加免疫の後、細胞融合(電気融合法を使用)のために最も効力の高いマウスを選択し、融合効率は、脾臓の約3000個のB細胞ごとに、ハイブリドーマ細胞に融合でき、融合したすべての細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、融合ごとに40枚のプレートをプレーティングした。ELISA試験は1週間後に実行された(方法については、「材料と方法」の1を参照)。ELISA試験で陽性であったクローンの上清を、FACS検出のために収集した(方法については、「材料と方法」の2を参照)。FACSによって陽性と検出されたすべてのクローンをサブクローン化した。1回のサブクローニング後にシングルクローンが出現するウェルにおける上清を収集し、2次ADC検出を実行した(方法については、「材料と方法」の3を参照)。2次ADC検出でCD79bの陽性発現を伴うBJAB癌細胞の増殖を阻害できるクローンは、安定したモノクローナル細胞株が形成されるまで、サブクローニングを続けた。
【0143】
この例では、合計3つの有効な融合を行い、スクリーニング後に、合計31のFACS陽性クローンを得、最後に、増殖阻害効果が最も高い18株(以下の表1を参照)を、完全なサブクローニングのために選択した。
【0144】
【0145】
実施例2:抗CD79bハイブリドーマ抗体のシーケンシングおよび組換えキメラ抗体の構築
実施例1の表1に記載された18のモノクローナル細胞株を、ハイブリドーマシーケンシングを行い、そして、定常領域がヒトIgG1であるキメラ抗体を組換え発現させ、そして活性を検出した。この実施例では、逆転写PCRを使用し、抗体の重鎖および軽鎖可変領域の遺伝子を増幅し、担体にライゲートし、シーケンシングにより、モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の配列を得られた。具体的には、まず、RNA精製キット(Qiagen、Cat#74104)を使用し、各モノクローナル細胞株の全細胞RNAを抽出した。次に、cDNA合成キット(Invitrogenのカタログ番号18080-051)を使用し、cDNA一本鎖、すなわちオリゴdTプライマーcDNA逆転写を調製した。これをテンプレートとして、PCR法で、抗体の軽鎖および重鎖可変領域配列を合成し、PCR産物をTAベクターpMD-18Tにクローニングし、シーケンシングした。
【0146】
重鎖および軽鎖のCDR領域の配列を分析することにより、翻訳後修飾される可能性のある部位を有する抗体を排除し、最後に抗体の組換え発現のために6つのクローン(35B5、78B6、85G11、88B12、104A2および104E1)を選択した。
まず、抗体の軽鎖と重鎖の配列を、コドン最適化を経ち、全遺伝子合成を行い、かつHindIII/NheI制限部位を重鎖の両端に配置し、HindIII / BsiWI制限部位を軽鎖の両端に配置し、2つのペアの制限部位を使用し、重鎖および軽鎖可変領域遺伝子を、ヒトIgG1定常領域配列またはK鎖定常領域配列を含む発現ベクターPTT5に連結し、キメラ抗体の発現ベクターを構築した。293F細胞中の一過性発現により、組換え抗体を得た。
【0147】
実施例3.抗CD79b抗体-薬物複合体の細胞毒性の分析
6つの組換えキメラ抗体(35B5、78B6、85G11、88B12、104A2及び104E1)をそれぞれBMP-vcMMAE(リンカー-薬物1)に複合して、抗体-薬物複合体(ADC)を作成し、7つのCD79b陽性発現リンパ腫細胞株BJAB、Ramos、DoHH2、SU-DHL-4、U-698-M、Granta-519、WSU-DLCL2と2つのCD79b陰性発現リンパ腫細胞株RajiとJurkatにおいて、増殖阻害試験を行った。がん細胞の培養条件は同じで(「材料と方法」の3を参照)、異なるがん細胞株の細胞プレーティング密度とADC薬物初期濃度を下の表2に示す。
【0148】
【0149】
表3は、各種のがん細胞株に対する6つのADCの増殖阻害効果の結果を示している。
【0150】
【0151】
実施例4:抗CD79b抗体のヒト化
104E1に発現された組換えキメラ抗体の薬物複合体は、他の5つの抗体よりも、CD79bの発現レベルが比較的低いリンパ腫細胞であるGranta-519およびWSU-DLCL2の増殖に対して有意に優れた阻害効果を示しているので、104E1のヒト化を行った。
【0152】
抗体104E1の配列情報(Kabatシステムに基づき分ける)は次のとおり:
HCDR1:GNTFTSYGIN(SEQ ID NO:1)
HCDR2:GEIFPRSGNIYYNEKFKG(SEQ ID NO:2)
HCDR3:AKGGTGDFDY(SEQ ID NO:3)
LCDR1:RSSQNIVHSDGNTYLE(SEQ ID NO:4)
LCDR2:KVSFRLS(SEQ ID NO:5)
LCDR3:FQGSHVPWT(SEQ ID NO:6)
mVH:
QVQLQQSGSELARPGASVKLSCKTSGNTFTSYGINWVKQRTGQGLEWIGEIFPRSGNIYYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMELRSLTSEDSAVYFCAKGGTGDFDYWGQGTTLTVSS(SEQ ID NO:7,ヌクレオチド配列はSEQ ID NO:38に示される)
mVL:
DVLMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYLQKPGQSPKLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKIRRVEAEDLGTYYCFQGSHVPWTFGGGTKLEIK(SEQ ID NO:8,ヌクレオチド配列はSEQ ID NO:39に示される)
【0153】
104E1配列のヒト化をNanjing GenScript に委託した。具体的なプロセスは次のとおり:ヒト生殖系列配列データベースでマウス由来の抗CD79bモノクローナル抗体104E1の重鎖および軽鎖可変領域の配列を比較して、相同性が64.3%である104E1重鎖可変領域と最も高い相同性を持つヒト生殖細胞系列配列IGHV1-69 * 02と、相同性が79.0%である104E1軽鎖可変領域と最も高い相同性を持つヒト生殖細胞系列配列IGKV2-30 * 02を見つけた。次に、ヒト抗体ライブラリーで、これら2つの生殖細胞系列配列から生成された抗体AGC78785.1(重鎖可変領域、SEQ ID NO:9)およびBAC01734.1(軽鎖可変領域、SEQ ID NO:10)の配列を見つけ、配列情報は次のとおり:
AGC78785.1 免疫グロブリン重鎖可変領域 [ヒト(Homo sapien
s)]
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYTISWVRQAPGQGLEWMGRIIPILGIANYAQKFQGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCATSGVGLHFGYFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:9)
BAC01734.1 免疫グロブリン軽鎖可変領域[ヒト(Homo sapiens)]
MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMADVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQSLVHSDGNTYLNWFQQRPGQSPRRLIYKVSNRDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCMQGTHWPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECSARQSTPFVCEYQGQSSDLPQPPVNAGGGSGGGSGG(SEQ ID NO:10)
【0154】
これら2つのヒト抗体のFR領域をフレームとして使用し、それらのCDR領域配列を対応するマウス104E1 CDR領域配列に置き換え、CDRグラフト化ヒト化抗体を生成し、配列は次のとおり:
HCDRをグラフトしたVH:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGNTFTSYGINWVRQAPGQGLEWMGEIFPRSGNIYYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCATGGTGDFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:11);
LCDRをグラフトしたVL:
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWFQQRPGQSPRRLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO:12)。
【0155】
抗体親和性に重要な役割を果たすマウスFR領域のアミノ酸部位を見つけるために、マウス104E1抗体に類似した相同性を持つ結晶構造をPDBデータベースに検索した。その結果、104E1抗体配列と77%の相同性を持ち、十分に高い分解能を有する抗ポリシアル酸抗体Ab735のscFV結晶構造が見出された。この結晶を構造テンプレートとして、2つの配列を比較し、104E1抗体の3WBDscFvのホモロジーモデルを確立し、当該ホモロジーモデルに従って、104E1配列のFR領域内の、CDRドメインによって囲まれるまたはCDRドメインから5A以内のアミノ酸部位を見つけ、そして抗体の親和性に重要な役割を果たす可能性のあるこれらの部位を、CDRグラフト配列(SEQ ID NO:11とSEQ ID NO:12)で復帰突然変異する同時に、グリコシル化、脱アミド化、酸化部位などを回避した。重鎖可変領域には、復帰突然変異される必要が有る可能性がある部位を15個見つけ、A24T、RV67KA、S84R、T98K、K12A、S16A、V20L、A24T、R38K、M48I、V68A、I70L、Y95F、T98KとV113Lを含む;軽鎖可変領域には、復帰突然変異される必要が有る可能性がある部位を7個見つけ、V3L、F41Y、RR50KL、FQ41YL、R51L、V88LとV109Lを含む。次に、ジェンスクリプト(GenScript)の標準操作手順に従ってFabライブラリーを確立し、ファージディスプレイプラットフォームでスクリーニングした。マウス104E1抗体より高い親和性を有するヒト化配列をスクリーニングし、シーケンシングで配列を確認した。
【0156】
ヒト化後の軽鎖と重鎖の可変領域は次のとおり:
1、重鎖可変領域
AS11161:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKTSGNTFTSYGINWVRQAPGQGLEWMGEIFPRSGNIYYNEKFKGKVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKGGTGDFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:13);
AS11164:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKTSGNTFTSYGINWVRQAPGQGLEWMGEIFPRSGNIYYNEKFKGKVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKGGTGDFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:14);
AS11252:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKLSCKTSGNTFTSYGINWVKQAPGQGLEWIGEIFPRSGNIYYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKGGTGDFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:15);
AS11254:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKTSGNTFTSYGINWVKQAPGQGLEWMGEIFPRSGNIYYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKGGTGDFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:16);
AS11259:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKTSGNTFTSYGINWVKQAPGQGLEWIGEIFPRSGNIYYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKGGTGDFDYWGQGTLVTVSS(SEQ ID NO:17);
2、軽鎖可変領域
AS11161:
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYQQRPGQSPRLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO:18);
AS11164:
DVLMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYQQRPGQSPKLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO:19);
AS11252:
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYQQRPGQSPRLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO:20);
AS11254:
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYQQRPGQSPRLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO: 21) ;
AS11259:
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYQQRPGQSPRLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKI
SRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIK(SEQ ID NO:22) 。
【0157】
ヒト化された軽鎖および重鎖を、IgG1 Fcセグメントと組換え、本発明のヒト化抗CD79bモノクローナル抗体を得た。使用されるFc配列は次のとおり:
重鎖定常領域:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(SEQ ID NO:23);
軽鎖定常領域:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:24)。
【0158】
遺伝子クローニングと組換え発現法を使用し、上記の抗体をクローニング、発現、精製し、Biacore(GenScriptで完成)によって抗体の親和性を測定し、最後に最高の活性を維持するヒト化抗体AS11161、AS11164、AS11252、AS11254、AS11259を選択し、それらの配列は次のとおり:
ヒト化抗体AS11161
重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKTSGNTFTSYGINWVRQAPGQGLEWMGEIFPRSGNIYYNEKFKGKVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKGGTGDFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(SEQ ID NO:25)
軽鎖
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYQQRPGQSPRLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:26)
【0159】
ヒト化抗体AS11164
重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKTSGNTFTSYGINWVRQA
PGQGLEWMGEIFPRSGNIYYNEKFKGKVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKGGTGDFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(SEQ ID NO:27)
軽鎖
DVLMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYQQRPGQSPKLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:28)
【0160】
ヒト化抗体AS11252
重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKLSCKTSGNTFTSYGINWVKQAPGQGLEWIGEIFPRSGNIYYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKGGTGDFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(SEQ ID NO:29)
軽鎖
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYQQRPGQSPRLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:30)
【0161】
ヒト化抗体AS11254
重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKTSGNTFTSYGINWVKQAPGQGLEWMGEIFPRSGNIYYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKGGTGDFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVD
GVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(SEQ ID NO:31)
軽鎖
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYQQRPGQSPRLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:32)
【0162】
ヒト化抗体AS11259
重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKTSGNTFTSYGINWVKQAPGQGLEWIGEIFPRSGNIYYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAKGGTGDFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(SEQ ID NO:33,ヌクレオチド配列はSEQ ID NO:36に示される)
軽鎖
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQNIVHSDGNTYLEWYQQRPGQSPRLLIYKVSFRLSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(SEQ ID NO:34,ヌクレオチド配列はSEQ ID NO:37に示される)。
【0163】
「材料と方法」の4で説明した方法を使用し、ヒト化後の抗体の親和性を測定し、結果を以下の表4と
図1に示した。
【0164】
【0165】
結果は、インビトロでのCD79b抗原に対する本発明のヒト化抗体の結合力KD値が約0.02nM(GenScriptによって実行されるBiacore測定)であり、ヒト-マウスキメラ抗体に匹敵することを示し、ヒト化は、抗体の親和性を有意に変化させなかった。
【0166】
実施例5:ヒトCD79bの細胞外ドメインに対するヒト化抗CD79b抗体のインビトロ結合活性およびリンパ腫細胞に対するその薬物複合体の増殖阻害効果の測定
「材料と方法」の1に記載されたELISAを使用し、ヒトCD79bの細胞外ドメインに対するヒト化抗CD79b抗体のインビトロ結合活性を検出し、結果を、表5に示す。
【0167】
【0168】
ヒト化抗体の抗体-薬物複合体を調製し、インビトロでのリンパ腫細胞に対するその増殖阻害効果(方法については実施例3を参照)を、表6に示す。
【0169】
【0170】
実施例6:ヒト化抗CD79b抗体の生物物理学的安定性の分析
抗体の安定性を評価するために、5つのヒト化抗体をそれぞれpH 4.5、6.0、7.4の異なる緩衝液に40℃で26日目まで貯蔵した。貯蔵の1、6、12、26日目に、上記のストレス条件でサンプルの特性を分析し、4℃に置いたサンプルをコントロールとした。ELISAとSEC-HPLC(TOSOH、TSKgel、G3000SWXL)でアリコートを分析した。
【0171】
結果は、5つのヒト化抗体を、3つの異なるpH条件下で26日間40℃に置くと、ELISAで検出された活性に有意差がなかったことを示し、SEC検出では、純度もすべて98%を超えており、明らかな集合体は見られなかった。
【0172】
実施例7:マウスのリンパ腫に対するヒト化抗CD79b抗体-薬物複合体のインビボ有効性の評価
ヒト化抗CD79b抗体の有効性を検証するために、バリアントAS11259を選択し、材料と方法3に記載された方法に従って、薬物複合体AS11259-ADCを調製し、Ramos、DoHH2、Granta519とWSU-DLCL2を含む複数種の異種移植モデルでADCの腫瘍を消失させる能を測定した。
【0173】
リンカー-薬物の合成
リンカー-薬物1の合成
【化5】
WO2014114207の記載に従い、リンカー薬物1を調製した。
リンカー-薬物2の合成
【化6】
WO2014114207の記載に従い、リンカー薬物2を調製した。
【0174】
リンカー-薬物3の合成
【化7】
合成スキーム:
【化8】
【0175】
N-tert-ブトキシカルボニルエチレンジアミン(710 mg、4.43 mmol)とジイソプロピルエチルアミン(1.55 mL、8.86 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、クロロアセチルクロリド(500 mg、4.43 mmol)を滴下した。反応液を室温で16時間撹拌した後、ジクロロメタンの添加で希釈し、飽和塩化アンモニウム溶液、飽和重炭酸アンモニウム溶液、水、飽和食塩水の順で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、白色の固体として粗化合物11を得た。
【0176】
得られた粗生成物11をアセトン(10mL)に溶解し、次にヨウ化ナトリウム(3.32g、22.2mmol)を加えた。反応液を50℃で16時間撹拌し、次にジクロロメタンの添加で希釈し、水と飽和食塩水で順番に洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル 1:1)で精製し、白色固体として化合物12(400mg)を得た。LC-MS(方法1):保持時間 1.61分間; [M + Na]+ 351.0。
【0177】
化合物DM1(40 mg、0.054 mmol)と化合物12(35.4 mg、0.108 mmol)をN、N-ジメチルホルムアミド(2 mL)に溶解し、次にジイソプロピルエチルアミン(29μL、0.163 mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、分取高速液体クロマトグラフィー(方法4:8分以内に50%-80%B →4分以内に95%B)で精製して、白色固体として化合物13(40 mg)を得た。
【0178】
化合物13(40mg、0.043mmol)をジクロロメタン(3mL)に溶解し、次にトリフルオロ酢酸(97mg、0.852mmol)を加えた。反応液を室温で3時間攪拌した後、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物と化合物14(18.7mg、0.0639mmol)をN、N-ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解し、その中に、HATU(32.4mg、0.0852mmol)とジイソプロピルエチルアミン(74μL、0.426mmol)に順次に添加した。反応液を室温で2時間撹拌し、分取高速液体クロマトグラフィー(方法4:8分以内に50%-80%B →4分以内に95%B)で精製して、白色固体としてリンカー-薬物3(8.3 mg)を得た。LCMS (A018):保持時間 1.92 分間、[M+Na]+ 1134.3。
【0179】
リンカー-薬物4の合成
【化9】
合成スキーム:
【化10】
【0180】
化合物15(0.25 g、0.305 mmol、WO 2014114207に従って調製された)、化合物16(0.20 g、0.208 mmol、WO20161
92527に従って調製された)およびHOBt(28.1mg、0.208mmol)をN、N-ジメチルホルムアミド(4mL)に溶解し、次にピリジン(1mL)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、分取高速液体クロマトグラフィー(方法5:8分以内に50%-80%B →4分以内に95%B)で精製して、ライトピンク固体としてリンカー-薬物4(45 mg)を得た。LCMS (方法3):保持時間 2.127
分間、 1/2[M+2H]2 + 822.0。
【0181】
リンカー-薬物5の合成
【化11】
合成スキーム:
【化12】
【0182】
化合物15(14 mg、0.017 mmol)、化合物17(14 mg、0.014 mmol、WO2016192527に従って調製された)およびHOBt(3mg、0.017mmol)をN、N-ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解し、次にピリジン(0.5mL)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、分取高速液体クロマトグラフィー(方法5:8分以内に45%-75%B →4分以内に95%B)で精製して、赤色固体としてリンカー-薬物5(1.8 mg)を得た。LCMS (方法2):保持時間 1.40分間、1/2[M+2H]2 + 843.9。
【0183】
リンカー-薬物6の合成
【化13】
合成スキーム:
【化14】
【0184】
化合物15(14 mg、0.017 mmol)、化合物18(14 mg、0.013 mmol、WO2016192527に従って調製された)およびHOBt(3mg、0.017mmol)をN、N-ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解し、次にピリジン(0.5mL)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、分取高速液体クロマトグラフィー(方法5:8分以内に45%-75%B →4分以内に95%B)で精製して、赤色固体としてリンカー-薬物6(2.0 mg)を得た。LCMS (方法2):保持時間 1.40分間、1/2[M+2H]2 + 865.3。
【0185】
リンカー-薬物7の合成
【化15】
合成スキーム:
【化16】
【0186】
化合物15(10 mg、0.012 mmol)、化合物19(8 mg、0.024 mmol、WO2013/149948A1に従って調製された)を、N、N-ジメチルホルムアミド(2mL)とピリジン(0.2mL)との混合溶液に溶解し、次にHOBt(3.2 mg、0.024 mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、分取高速液体クロマトグラフィー(方法4:8分以内に60%-90%B →4分以内に95%B)で精製して、白色固体として化合物20(6.0 mg)を得た。LC-MS (方法3):保持時間 2.24 分間、 [M+Na] + 1028.3。
【0187】
化合物20(6.0mg、0.0006mmol)をジクロロメタン(1mL)に溶解し、次にジクロロ酢酸(15mg、0.12mmol)を加えた。反応液を室温で2時間攪拌した後、濃縮して溶剤を除去した。残留物をn-ヘキサン/エーテル(1mL / 1mL)で洗浄し、濾過し、そして乾燥して、白色固体として化合物21(4.5mg)を得た。LC-MS (方法3):保持時間 1.57 分間、 [M+H] + 768.3。
【0188】
化合物21(4.5 mg、0.005 mmol)と化合物22(5 mg、0.008 mmol、US8389697B2に従って調製された)をN、N-ジメチルホルムアミド(1 mL)に溶解し、次にジイソプロピルエチルアミン(2.6 mL、0.02 mmol)とHATU(3.8 mg、0.01 mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、分取高速液体クロマトグラフィー(方法5:8分以内に50%-80%B →4分以内に95%B)で精製して、赤色固体としてリンカー-薬物7(0.9 mg)を得た。LCMS (方法3):保持時間 2.05分間、[M+H] +
1378.3。
【0189】
リンカー-薬物8の合成
【化17】
合成スキーム:
【化18】
【0190】
化合物15(100 mg、0.122 mmol)、化合物23(60 mg、0.071 mmol、WO2016192527に従って調製された)およびHOBt(10mg、0.071mmol)を乾燥DMF(2mL)に溶解し、次にピリジン(0.5mL)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、分取高速液体クロマトグラフィー(方法5:8分以内に50%-80%B →4分以内に95%B)で精製して、白色固体として化合物24(30 mg)を得た。LCMS (方法3):保持時間 2.41 分間、 1/2[M+2H]2 + 762.0。
【0191】
化合物24(30mg、0.0197mmol)をジクロロメタン(1.5mL)に溶解し、次にトリフルオロ酢酸(0.5mL)を加えた。反応液を室温で3時間撹拌した後、濃縮して溶剤を除去した後、分取高速液体クロマトグラフィー(方法X)により残留物を精製し、白色粉末状固体として化合物25(15mg)を得た。
【0192】
化合物25(15mg、0.0197mmol)および化合物26(7 mg、0.0189 mmol、Journal of Organic Chemistry、2001、66、4494-4503に従って調製された)を乾燥DMF(0.4mL)に溶解し、次にHATU(7.2mg、0.0189mmol)およびDIPEA(3.7mg、0.0286mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、分取高速液体クロマトグラフィー(方法5:8分以内に50%-80%B →4分以内に95%B)で精製して、白色粉末状固体としてリンカー-薬物8(4.8 mg)を得た。LCMS (方法2):保持時間 1.37 分間、 1/2[M+2H]2 + 909.5。
【0193】
リンカー-薬物9の合成
【化19】
合成スキーム:
【化20】
【0194】
化合物27(165mg、0.132mmol、WO2007011968に従って調製された)および化合物28(90mg、0.231mmol、WO2014114207に従って調製された)をDMF(2mL)に溶解し、次いで、DIPEA(51mg、0.395mmol)を加えた。反応液を室温で0.5時間撹拌し、次に氷酢酸(50 μL)を加えて反応をクエンチし、溶液を、分取高速液体クロマトグラフィー(方法4:8分以内に50%-80%B →4分以内に95%B)で精製して、白色粉末状固体としてリンカー-薬物9(128 mg)を得た。LCMS (方法2):保持時間 1.51 分間、1/2[M+2H]2 + 702.8。
【0195】
リンカー-薬物10の合成
【化21】
リンカー薬物10の合成は、CN 201710691056.Xに従って調製された。
【0196】
抗体-薬物複合体の調製
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP、10 eq、ストック溶液濃度10 mM)を抗体AS11259(IgG1)溶液(20 mMリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムバッファー、150 mM塩化ナトリウム、pH 7.2)に加えた。反応溶液を37℃の恒温水浴中で2時間インキュベートした。反応溶液をほぼ室温まで冷却し、限外濾過(Merck MilliporeAmicon(登録商標)Ultra、50000 MWCO)またはゲル濾過によって緩衝液(100 mMリン酸二水素カリウム-リン酸水素二カリウム、100 mM塩化ナトリウム、1 mMジエチレントリアミン五酢酸、pH 7.0-8.0)または緩衝液(20 mMクエン酸-クエン酸三ナトリウム、50 mM塩化ナトリウム、1 mMジエチレントリアミン五酢酸、pH 6.0)に交換し、ジメチルスルホキシドおよび実施例1に得られたリンカー-薬物1(ジメチルスルホキシドストック液、抗体に対して3-10当量)を添加し、反応溶液中のジメチルスルホキシドの体積比を最大約10-15%まで確保した。複合反応は10℃で0.5時間行った。
【0197】
過剰のシステイン溶液を上記の複合溶液に加えて、未反応のリンカー-薬物1をクエンチし、クエンチ反応を10℃で30分間行った。反応溶液を最初に限外ろ過(Merck
MilliporeAmicon(登録商標)Ultra、50000 MWCO)またはゲルろ過にかけてリンカー-薬物1-システイン付加物と過剰なシステインを除去し、サンプルを保存緩衝液(20 mMリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウムバッファー、150 mM塩化ナトリウム、pH 7.2)に交換し、次に得られた溶液を0.22 μmのフィルター装置(Millex-GV Filter)で除菌し、抗体-薬物複合体AS11259-ADC-001を得、4℃で保存した。
【0198】
上記の調製方法に従い、リンカー-薬物1の代わりにリンカー-薬物2~10をそれぞれ使用し、本発明の他の抗体-薬物複合体AS11259-002からAS11259-011を調製した。抗体-薬物複合体AS11259-ADC-0012は、抗体AS11259をリンカー-薬物1に複合することによって得られ、ただし、抗体は部分還元モードで還元され、平均に、2ペアのジスルフィド結合が還元された。
表6は、本実施で調製した抗体-薬物複合体の概要を示している。
【0199】
【0200】
抗体-薬物複合体のキャラクタリゼーション
1)平均DAR値の測定
平均DAR値の計算方法は、疎水性クロマトグラフィーHICを採用する(Anal.Chem.2013、85、1699-1704を参照)。疎水性相互作用クロマトグラフィーは、Agilent 1100(Agilent 1100)で実行された。固定相はTSKgelブチル-NPRカラム(4.6×35mm、2.5μm、東ソー(上海)バイオテクノロジー株式会社)を採用した。
【0201】
溶出勾配は線形勾配で、25分間以内に100%緩衝液A[50 mMリン酸カリウム(pH 7.0)+ 1.5M硫酸アンモニウム]から100%緩衝液B[80%v/v
50 mMリン酸カリウム(pH 7.0)+ 20%v/vイソプロパノール]に交換した。流量は0.8mL/minであり、カラム温度は30℃であり、検出波長は230nmと280nmに設定された。
本発明の抗体-薬物複合体の平均DAR値の測定結果を以下の表7に示す。
【0202】
【0203】
抗原に対する抗体-薬物複合体の親和性の測定
間接ELISA法を使用し、試験する抗体または抗体-薬物複合体の対応する抗原へ結合能を調査した:CD79b抗原を固相担体(96ウェルマイクロタイタープレート)に接続し、固相抗原を形成し、洗浄で未結合の抗原を除去した;勾配希釈した本発明に調製された抗体-薬物複合体またはその対応する抗体を加え、その中で、特異的抗体が抗原に結合し、固相抗原-抗体複合体を形成したが、固相抗原に結合していない抗体または抗体-薬物複合体を洗浄で除去した;ELISA抗抗体を加え、固相抗原に結合した抗体またはADC抗体に結合させ、未結合の抗抗体を洗浄で除去した;基質溶液を加え、マイクロプレートリーダーで450 nm/630 nmでの光学密度(OD)値を読み取り、曲線をプロットし、EC50を計算した。
CD79b抗原に対する本発明の抗体-薬物複合体の親和性測定の結果を表8に示す。
【0204】
【0205】
表8から、本発明に調製された抗体-薬物複合体は、裸の抗体AS11259と比較すると、抗原に対する親和性に有意差がないことが分かる。
【0206】
抗体-薬物複合体の細胞増殖阻害作用
抗体または抗体-薬物複合体の細胞阻害活性は、以下の方法で測定された:腫瘍関連抗原または受容体タンパク質を発現する哺乳動物細胞(この試験では、CD79b抗原を発現するRamos細胞を使用した)を96ウェルプレートに接種し、ウェルあたり40,
000細胞を接種し、10%FBSを含む100 μLのRPMI 1640培地(GIBCO)に懸濁した;ADCサンプルの初期濃度は2μg / mLであり、2%FBS(GIBCO)を含むRPMI1640培地で3倍に勾配希釈した;元の培地で、100
μLの勾配希釈されたADCサンプルを各ウェルに追加し、薬剤の開始濃度は1 ug/mlであった。37℃、5%CO2で72時間インキュベートし続けた;元の培地50
μLを除去し、各ウェルに70 μLのCCK-8発色溶液(CCK-8:RPMI 1640 = 2:5)を加え、培養を60~75分間続けた;マイクロプレートリーダーで450nm / 630 nmでの吸光度値を読み取り、曲線をプロットし、IC50を計算した。本発明の抗体-薬物複合体の細胞増殖阻害作用の結果を表9に示す。
【0207】
【0208】
結果は、本発明に調製された抗体-薬物複合体は、すべて良好な細胞増殖阻害効果を有することを示している。
【0209】
Ramosモデル
Ramos細胞を、37℃、5%CO2の培養条件で、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地で培養した。対数増殖期の細胞を数えて集め、1:1 PBSとマトリゲルに再懸濁し、マウス(CB17/SCIDマウス、雌、8~9週、平均体重18.4g、Shanghai Lingchang Biological Technology Co.、Ltdから購入、動物証明書番号:2013001832088。繁殖環境:SPFレベル)の右側に皮下接種し、マウス1匹あたりに接種する細胞の体積は0.1mlであり、接種する細胞量はマウス1匹あたりに1×107であり、平均腫瘍体積が197mm3になったとき、体重を量り、ランダムに群分けして投与を開始し、投与方法は尾静脈投与であり、投与頻度は1回のみであった。
【0210】
結果の判断基準
相対腫瘍増殖抑制率TGI(%):TGI = 1-T/C(%)。T/C%は、相対的な腫瘍増殖率であり、つまり、特定の時点でのコントロールグループに対する治療グループの相対腫瘍体積または腫瘍重量のパーセンテージ値である。TとCは、それぞれ特定の時点での治療グループとコントロールグループの相対腫瘍体積(RTV)である。
計算式は次のとおり:T/C%= TRTV/CRTV*100%(TRTV:治療グループの平均RTV;CRTV:溶媒コントロールグループの平均RTV;RTV = Vt/V0、V0はグループを分ける時の動物の腫瘍体積であり、Vtは、治療後の動物の腫瘍体積である)。
腫瘍体積の計算式は:長径×短径2/2である。腫瘍細胞接種の当日を0日目と定義した。投与後、週に2回腫瘍を測定した。
溶媒コントロールグループでは、平均腫瘍体積は、投与後14日目(PG-D14)に
3003mm3に達した。安楽死を行い、投与後14日目の他の投与グループの相対腫瘍増殖抑制率を算出した。投与後45日目に実験を終了し、継続観察中の残りのマウスをすべて安楽死させ、腫瘍が完全に消失した各グループのマウス数を記録した。
【0211】
【0212】
【0213】
溶媒コントロールグループでは、平均腫瘍体積は、投与後14日目(PG-D14)に3,003 mm3に達した。
【0214】
試験薬AS11259-ADC-001治療グループは、溶媒コントロールグループと比較して、3つの投与量(1 mg/kg、2.5 mg/kg、5 mg/kg)で著しい抗腫瘍効果を示し、明らかな用量反応関係を示した。3つの投与量の投与グループの投与後14日目(PG-D14)の平均腫瘍体積は、それぞれに1558 mm3、337 mm3、14 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、それぞれに、48.7%、90.1%、99.6%であり、コントロールグループと比較すると、統計的に有意差がある(p値は、それぞれに0.023、0.001、0.001である)。高投与量(5mg/kg)グループのマウスの腫瘍増殖は、投与後に有意に抑制され、投与後10日目(PG-D10)に、6匹のマウスのうち3匹の腫瘍が消失し始め、投与後24日目(PG-D24)には、6匹のマウスの腫瘍がすべて完全に消失し、実験終了時(PG-
D45)に、マウスの腫瘍は成長を回復しなかった。
【0215】
試験薬AS11259-ADC-002治療グループは、1mg/kgおよび2.5mg/kgの投与量で、溶媒コントロールグループと比較して、一定の抗腫瘍効果を有し、投与後14日目(PG-D14)の平均腫瘍体積は、それぞれに、2171mm3、1986mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、それぞれに、28.4%、33.2%であるが、溶媒コントロールグループと比較すると、統計的に有意な差がない(p値はそれぞれに0.195と0.126である);試験薬AS11259-ADC-002治療グループは、5mg/kgの投与量で、溶媒コントロールグループと比較して、著しい抗腫瘍効果を有し、投与後14日目(PG-D14)の平均腫瘍体積は、1294mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、60.1%であり、コントロールグループと比較すると、統計的に有意な差がある(p=0.014)。試験薬AS11259-ADC-002の抗腫瘍効果は、明らかな用量反応関係を示した。
【0216】
試験薬AS11259-ADC-004治療グループは、1mg/kgの投与量で、溶媒コントロールグループと比較して、一定の抗腫瘍効果を有し、投与後14日目(PG-D14)の平均腫瘍体積は、1,762mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、42.6%であるが、溶媒コントロールグループと比較すると、統計的に有意な差がない(p=0.075);試験薬AS11259-ADC-004治療グループは、2.5 mg/kgと5mg/kgの投与量で、溶媒コントロールグループと比較して、著しい抗腫瘍効果を有し、投与後14日目(PG-D14)の平均腫瘍体積は、それぞれに、1,835 mm3と1030mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、41.2%と66.0%であり、コントロールグループと比較すると、統計的に有意な差がある(p値はそれぞれに、0.027と0.003である)。試験薬AS11259-ADC-004の抗腫瘍効果は、明らかな用量反応関係を示した。
【0217】
試験薬AS11259-ADC-010治療グループは、溶媒コントロールグループと比較して、3つの投与量(1 mg/kg、2.5 mg/kg、5 mg/kg)で著しい抗腫瘍効果を示し、明らかな用量反応関係を示した。投与後14日目(PG-D14)の平均腫瘍体積は、それぞれに1,241 mm3、15mm3、12 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、それぞれに、57.8%、99.5%、99.6%であり、コントロールグループと比較すると、統計的に有意差がある(p値は、それぞれに0.014、0.001、0.001である)。中投与量(2.5mg/kg)グループのマウスの腫瘍成長は、投与後に有意に抑制され、投与後10日目(PG-D10)に、6匹のマウスのうち2匹の腫瘍が消失し始め、投与後28日目(PG-D28)には、6匹のマウスの腫瘍がすべて消失したが、1匹のマウスの腫瘍の成長を回復したが、残り5匹のマウスが、実験終了時(PG-D45)に、マウスの腫瘍は成長を回復しなかった;高投与量(5mg/kg)グループのマウスの腫瘍増殖は、投与後に有意に抑制され、投与後10日目(PG-D10)に、6匹のマウスのうち1匹の腫瘍が消失し始め、投与後24日目(PG-D24)には、6匹のマウスの腫瘍が全て消失し、実験終了時(PG-D45)に、マウスの腫瘍は成長を回復しなかった。
【0218】
試験薬AS11259-ADC-0012治療グループは、5mg/kgの投与量で、溶媒コントロールグループと比較して、著しい抗腫瘍効果を有し、投与後14日目(PG-D14)の平均腫瘍体積は、13mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、99.6%であり、コントロールグループと比較すると、統計的に有意な差がある(p=0.001)。この投与グループのマウスの腫瘍増殖は、投与後に有意に抑制され、投与後10日目(PG-D10)に、6匹のマウスのうち2匹の腫瘍が消失し始め、投与後31日目(PG-D31)には、6匹のマウスのうち5匹の腫瘍が消失し、実験終了時(PG-D45)に、当該5匹のマウスの腫瘍は成長を回復しなかった。
【0219】
試験薬AS11259-ADC-011治療グループは、2mg/kgと5 mg/kgの投与量で、溶媒コントロールグループと比較して、著しい抗腫瘍効果を示し、明らかな用量反応関係を示した。投与後14日目(PG-D14)の平均腫瘍体積は、818mm3と17mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、それぞれに、73.8%と99.4%であり、溶媒コントロールグループと比較して、統計的に有意な差がある(p値はすべて0.001)。高投与量(5mg/kg)グループのマウスの腫瘍増殖は、投与後に有意に抑制され、投与後10日目(PG-D10)に、6匹のマウスのうち1匹の腫瘍が消失し始め、投与後28日目(PG-D28)には、6匹のマウスの腫瘍がすべて消失し、実験終了時(PG-D45)に、マウスの腫瘍は成長を回復しなかった。
【0220】
試験薬AS11259-ADC-008治療グループは、2.5 mg/kgの投与量で、溶媒コントロールグループと比較して、著しい抗腫瘍効果を有し、投与後14日目(PG-D14)の平均腫瘍体積は、1,390 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、54.8%であり、コントロールグループと比較すると、統計的に有意な差がある(p=0.009)。
【0221】
Granta-519モデル
Granta-519細胞を、37℃、5%CO2の培養条件で、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地で培養した。対数増殖期の細胞を数えて集め、1:1 PBSとマトリゲルに再懸濁し、マウス(NOD/SCIDマウス、雌、8~9週、平均体重20.5g、北京安凱エキスポバイオテクノロジー株式会社から購入、動物証明書番号:11402400012442。繁殖環境:SPFレベル)の右側に皮下接種し、マウス1匹あたりに接種する細胞の体積は0.1mlであり、接種する細胞量はマウス1匹あたりに1×107であり、平均腫瘍体積が200mm3になったとき、体重を量り、ランダムに群分けして投与を開始し、投与方法は尾静脈投与であり、投与頻度は1回のみであった。
【0222】
結果の判断基準
実験の最初のバッチの溶媒コントロールグループは、投与後17日目(PG-D17)に平均腫瘍体積が2744mm3に達した。コントロールグループを安楽死させたと同時に、投与後17日目の薬物治療グループのTGIを計算した。投与後46日目に実験を終了し、残りのマウスをすべて安楽死させ、腫瘍が完全に消失した各グループのマウス数を記録した。
【0223】
実験結果
結果を表11と12および
図4と5に示した。
【0224】
【0225】
【0226】
実験の最初のバッチの溶媒コントロールグループでは、平均腫瘍体積は、投与後17日目(PG-D17)に2,744 mm3に達した。
【0227】
試験薬AS11259-ADC-001治療グループは、溶媒コントロールグループと比較して、3つの投与量(3.5 mg/kg、7 mg/kg、14 mg/kg)で著しい抗腫瘍効果を示した。3つの投与量の投与グループの投与後17日目(PG-D17)の平均腫瘍体積は、それぞれに68 mm3、68 mm3、49 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、それぞれに、97.5%、97.6%、98.2%であり、コントロールグループと比較すると、統計的に非常に有意な差がある(p値はすべて0.001未満)。投与後45日目(PG-D45)には、3つの投与量の投与グループの平均腫瘍体積は、それぞれに、1268mm3、536mm3、184mm3に達したことから、当該試験物質の抗腫瘍効果は、明らかな用量反応関係を示したことが分かる。
【0228】
試験薬AS11259-ADC-002治療グループは、溶媒コントロールグループと比較して、3つの投与量(3.5 mg/kg、7 mg/kg、14 mg/kg)で著しい抗腫瘍効果を示し、明らかな用量反応関係を示した。低投与量(3.5mg/kg)グループでは、投与後17日目(PG-D17)の平均腫瘍体積は871mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、68.5%であり、溶媒コントロールグループと比較して、統計的に非常に有意な差がある(p <0.001)。中投与量(7mg/kg)グループでは、投与後17日目(PG-D17)の平均腫瘍体積は246 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、90.8%であり、溶媒コントロールグループと比較して、統計的に有意差がある(p <0.001)。高投与量(14 mg/kg)グループでは、投与後17日目(PG-D17)の平均腫瘍体積は101 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、96.3%であり、溶媒コントロールグループと比較して、統計的に有意差がある(p <0.001)。
【0229】
試験薬AS11259-ADC-004治療グループは、溶媒コントロールグループと比較して、3つの投与量(3.5 mg/kg、7 mg/kg、14 mg/kg)で著しい抗腫瘍効果を示し、明らかな用量反応関係を示した。低投与量(3.5mg/kg)グループでは、投与後17日目(PG-D17)の平均腫瘍体積は703 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、74.3%であり、溶媒コントロールグループと比較して、統計的に非常に有意な差がある(p <0.001)。中投与量(7 mg/kg)グループでは、投与後17日目(PG-D17)の平均腫瘍体積は222 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、92.1%であり、溶媒コントロールグループと比較して、統計的に有意差がある(p <0.001)。高投与量(14mg/kg)グループでは、投与後17日目(PG-D17)の平均腫瘍体積は117 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、95.7%であり、溶媒コントロールグループと比較して、統計的に有意差がある(p <0.001)。
【0230】
実験の二回目のバッチの溶媒コントロールグループでは、平均腫瘍体積は、投与後17日目(PG-D17)に2,535 mm3に達した。
【0231】
試験薬AS11259-ADC-001(2.5 mg / kg)、AS11259-ADC-0012(6 mg / kg)、AS11259-ADC-011(5 mg / kg)およびAS11259-ADC-010(2.5 mg / kg)治療グループでは、投与後17日目(PG-D17)の平均腫瘍体積は、それぞれに、17 mm3、6 mm3、11 mm3と9 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、それぞれに、99.3%、99.8%、99.6%と99.6%であり、溶媒コントロールグループと比較して、いずれも統計的に有意差がある(p値はすべて0.001)。
【0232】
WSU-DLCL2モデル
WSU-DLCL2細胞を、37℃、5%CO2の培養条件で、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地で培養した。対数増殖期の細胞を集め、NOD/SCIDマウス(雌、8~9週齢、平均体重19.6g、北京安凱エキスポバイオテクノロジー株式会社から購入、動物証明書番号:11402400012441。繁殖環境:SPFレベル)の右側に注射で皮下接種し、マウス1匹あたりに接種する細胞の体積は0.1mlであり、接種する細胞量は1×107であり、平均腫瘍体積が200mm3になったとき、体重を量り、ランダムに群分けして投与を開始し、投与方法は尾静脈投与であり、投与頻度は1回のみであった。
【0233】
結果の判断基準
実験の最初のバッチの溶媒コントロールグループでは、平均腫瘍体積は、投与後32日目(PG-D32)に2,146 mm3に達した。溶媒コントロールグループに安楽死
を行い、32日目の薬物治療グループのTGIを算出した。投与後43日目に実験を終了し、残りマウスをすべて安楽死させ、腫瘍が完全に消失した各グループのマウス数を記録した。
【0234】
実験の二回目のバッチの溶媒コントロールグループは、投与後35日目(PG-D35)に平均腫瘍体積が2,360mm3に達した。溶媒コントロールグループを安楽死させたと同時に、投与後35日目の薬物治療グループのTGIを計算した。投与後42日目に実験を終了し、残りのマウスをすべて安楽死させ、腫瘍が完全に消失した各グループのマウス数を記録した。
【0235】
実験結果
実験結果を表13と14および
図6と7に示した。
【0236】
【0237】
【0238】
実験の最初のバッチの溶媒コントロールグループでは、平均腫瘍体積は、投与後32日目(PG-D32)に2,146 mm3に達した。試験薬AS11259-ADC-001治療グループは、溶媒コントロールグループと比較して、3つの投与量(3.5 m
g/kg、7 mg/kg、14 mg/kg)で著しい抗腫瘍効果を示し、明らかな用量反応関係を示した。低投与量(3.5mg/kg)グループでは、投与後32日目(PG-D32)の平均腫瘍体積は845 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、60.4%であり、溶媒コントロールグループと比較して、統計的に有意差がある(p=0.004)。中投与量(7 mg/kg)グループでは、投与後32日目(PG-D32)の平均腫瘍体積は273 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、87.6%であり、溶媒コントロールグループと比較して、統計的に有意差がある(p=0.001)。高投与量(14 mg/kg)グループでは、投与後32日目(PG-D32)の平均腫瘍体積は132 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、93.7%であり、溶媒コントロールグループと比較して、統計的に非常に有意な差がある(p=0.001)。
【0239】
試験薬AS11259-ADC-004治療グループは、溶媒コントロールグループと比較して、3つの投与量(3.5 mg/kg、7 mg/kg、14 mg/kg)で、わずかな抗腫瘍効果ををもたらしたが、統計的に有意な差がない。3つの投与量グループでは、投与後32日目(PG-D32)の平均腫瘍体積は、それぞれに、1526 mm3、1632 mm3、1521 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、それぞれに、28.3%、24.0%、28.6%であり、p値は、それぞれに、0.080、0.123、0.080である。
【0240】
二回目のバッチの異種移植モデルにおいて、試験薬AS11259-ADC-001(3.5 mg / kg)、AS11259-ADC-0012 (8.4 mg/kg)、AS11259-ADC-011(7 mg/kg)とAS11259-ADC-010(3.5 mg/kg)治療グループでは、いずれも投与後で腫瘍増殖を有意に抑制し、投与後35日目(PG-D35)の平均腫瘍体積は、それぞれに、912 mm3、840 mm3、700 mm3と913 mm3であり、相対腫瘍増殖抑制率TGIは、それぞれに、61.0%、64.4%、71.4%と62.0%であり、p値は、それぞれに、<0.001、<0.001、<0.001と0.001である。各グループのマウスはすべて、試験された薬物によく耐えた。
【0241】
本出願に言及されている全ての参考文献は、参照として単独に引用されるように、本出願に引用されて、参照になる。理解すべきのは、本発明の上記の開示に基づき、当業者は、本発明を様々な変更または修正を行っても良い、これらの同等の形態も本出願に添付された請求の範囲に規定される範囲内に含まれる。
【配列表】