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特許7558166多孔質フルオロポリマーフィルムの調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】多孔質フルオロポリマーフィルムの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20240920BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240920BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20240920BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
C08J9/28 101
B05D7/24 301M
B05D7/24 302L
C08J9/28 CEW
C09D11/102
H01M50/409
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021530869
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2019082966
(87)【国際公開番号】W WO2020109503
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】1872142
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イダルゴ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ラジュー,アリスティド
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-095492(JP,A)
【文献】特開昭52-154862(JP,A)
【文献】米国特許第04238571(US,A)
【文献】特表2003-518537(JP,A)
【文献】特表2016-516108(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125007(WO,A1)
【文献】特開2010-62062(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116607104(CN,A)
【文献】特表2007-518867(JP,A)
【文献】国際公開第89/08679(WO,A1)
【文献】Hofmann, Andreas,Micron-Sized Pored Membranes Based on Polyvinylidene Difluoride Hexafluoropropylene Prepared by Phase Inversion Techniques,Polymers,スイス,MOPI AG,2017年10月06日,9,489
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
C08J9/00-9/42
C09D11/00-13/00
H01M50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーの多孔質フィルムを調製する方法であって、以下の工程:
-前記フルオロポリマーと、相互に混和性である前記フルオロポリマーに対する溶媒及び前記フルオロポリマーに対する非溶媒を含むビヒクルとを含むインクを提供すること;
-基材上に前記インクを堆積すること;
-前記溶媒及び前記非溶媒を含む前記ビヒクルを蒸発させること;
を含み、
前記非溶媒が、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド又はそれらの混合物からなる群から選択され、
前記溶媒が、20℃において前記非溶媒よりも高い飽和蒸気圧を有
前記溶媒が酢酸エチルであり、前記非溶媒がベンジルアルコールであるか、又は、
前記溶媒が酢酸エチルであり、前記非溶媒がベンズアルデヒドであるか、又は、
前記溶媒がγ-ブチロラクトンであり、前記非溶媒がベンジルアルコールであるか、又は、
前記溶媒がγ-ブチロラクトンであり、前記非溶媒がベンズアルデヒドであるか、又は、
前記溶媒がリン酸トリエチルであり、前記非溶媒がベンズアルデヒドであるか、又は、
前記溶媒がシクロペンタノンであり、前記非溶媒がベンズアルデヒドであるか、又は、
前記溶媒がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、前記非溶媒がベンジルアルコールであるか、又は、
前記溶媒がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、前記非溶媒がベンズアルデヒドであるか、又は、
前記溶媒がメチルエチルケトンであり、前記非溶媒がベンジルアルコールであるか、又は、
前記溶媒がメチルエチルケトンであり、前記非溶媒がベンズアルデヒドである、
方法。
【請求項2】
前記フルオロポリマーが、フッ化ビニリデンから得られる単位と、式CX=CX(式中、X、X、X及びXの各基は、H、Cl、F、Br、I、及び1~3個の炭素原子を含み、任意選択で部分的に又は全体的にハロゲン化されているアルキル基から独立して選択される)の少なくとも1種の他のモノマーから得られる単位とを含むポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロポリマーに対する溶媒と非溶媒との混合物の総重量に対して、溶解限度を質量百分率として表して、前記ビヒクルが、百分率として前記非溶媒を、(溶解限度-60%)乃至溶解限度の範囲の質量割合で含み、及び/又は、前記ビヒクルが、百分率として前記溶媒を、(100-溶解限度)乃至(100-(溶解限度-60%))の範囲の質量割合で含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒及び前記非溶媒を含む前記ビヒクルの蒸発が、60℃以下の温度で行われる、請求項1~のうちの一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、前記非溶媒の沸点より低い沸点を有する、請求項1~のうちの一項に記載の方法。
【請求項6】
前記堆積が、スピンコーティング、スプレーコーティング、特にバー又はフィルムスプレッダによるコーティング、スロットダイコーティング、ディップコーティング、ロールツーロール印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、平版印刷又はインクジェット印刷によって行われる、請求項1~のうちの一項に記載の方法。
【請求項7】
前記インクが犠牲ポリマーを全く含まない、請求項1~のうちの一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒及び前記非溶媒を含む前記ビヒクルの蒸発中に適用される温度が、本質的に一定であるか、又は20℃未満変化する、請求項1~のうちの一項に記載の方法。
【請求項9】
濾過膜若しくは分離膜、又は電池膜を製造するための、請求項1~のうちの一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フルオロポリマーの多孔質フィルムが、Barrett-Joyner-Halenda法で評価して、0.020cm/g~0.05cm/gの範囲の細孔容積を有する、請求項1~9のうちの一項に記載の方法
【請求項11】
前記フルオロポリマーの多孔質フィルムが、2 /g以上のBET比表面積を有する、請求項1~9のうちの一項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質フルオロポリマーフィルムを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフルオロポリマー及びそれから誘導されるコポリマーは多数の用途を有し、特にフィルムの形態で基材に適用される。
【0003】
したがって、フッ化ビニリデン(VDF)とトリフルオロエチレン(TrFE)とに基づく電気活性コポリマーの製造への実用が公知であり、任意選択でクロロトリフルオロエチレン(CTFE)又は1,1-クロロフルオロエチレン(CFE)などの第3のモノマーを含有してもよい。VDF及びヘキサフルオロプロペン(HFP)に基づく他のコポリマーは、電子デバイス又は基材を保護、平坦化又は不動態化するのに有用である。
【0004】
フィルム形態のこれらの種類のフルオロポリマーは、「インク」と呼ばれる配合物から適用することができ、これは、フルオロポリマーと任意選択で添加剤とをビヒクル組成物中で混合することによって形成される。
【0005】
しかしながら、特定の用途、特に電子機器、電池又は濾過又は分離膜の分野では、フルオロポリマーフィルムが多孔質であることが必要である。
【0006】
したがって、多孔質フルオロポリマーフィルムを製造するための様々な方法が開発されてきた。
【0007】
例えば、Tamano-Machiavello et al.,Hydrophobic/Hydrophilic P(VDF-TrFE)/PHEA Polymer Blend Membranes,Journal of Polymer Science,Part B:Polymer Physics,volume 54,pages 672-679による論文は、混合疎水性/親水性膜を得るための方法を記載している。第1工程では、P(VDF-TrFE)コポリマーの多孔質膜を調製する。これを行うために、コポリマーを犠牲細孔形成剤としてのポリエチレンオキシド(PEO)と混合し、この混合物をフルオロコポリマーの溶媒であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させる。溶液を70℃の温度で支持体上に堆積させ、次いで室温に冷却する。次いで、PEOは、前記膜を水に浸漬することによって膜から除去され、これにより、水に溶解する犠牲PEOの場所に空洞又は細孔が形成される。次いで、膜を水ですすいですべてのPEOを完全に除去しなければならない。この方法は、有毒な溶媒DMFを使用する長い多段階方法である。さらに、水を使用すると、多孔質フィルムに微量の水分又はイオン性不純物が残る可能性があり、これは望ましくない。
【0008】
前記論文はまた、浸漬/すすぎ、温度誘起相分離(TIPS)及び蒸気誘起相分離(VIPS)の工程を含む、多孔質膜を製造するための一般的な方法にも言及している。これらの方法はすべて、多段階又は複雑であり、実施が困難であるか、水の望ましくない使用に基づいている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】Tamano-Machiavello et al.,Hydrophobic/Hydrophilic P(VDF-TrFE)/PHEA Polymer Blend Membranes,Journal of Polymer Science,Part B:Polymer Physics,volume 54,pages 672-679
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、実施がより容易であり、フィルムを水に浸漬すること、又は最終膜を汚染する可能性がある細孔形成ポリマーの使用、又は任意の温度変化を必要としない、多孔質フルオロポリマーフィルムを調製するための方法を提供することが実際に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1に、フルオロポリマーの多孔質フィルムを調製する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
-フルオロポリマーと、相互に混和性である該フルオロポリマーに対する溶媒及び該フルオロポリマーに対する非溶媒を含むビヒクルとを含むインクを提供すること;
-基材上に該インクを堆積すること;
-前記溶媒及び前記非溶媒を含むビヒクルを蒸発させること。
【0012】
この方法では、
非溶媒は、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド又はそれらの混合物からなる群から選択され、及び
溶媒は、20℃において非溶媒よりも高い飽和蒸気圧、好ましくは少なくとも20Pa高い飽和蒸気圧を有する。
【0013】
特定の実施形態では、フルオロポリマーは、フッ化ビニリデンから得られる単位と、式CX=CX(式中、X、X、X及びXの中の各基は、H、Cl、F、Br、I、及び1~3個の炭素原子を含む、任意選択で部分的に又は全体的にハロゲン化されているアルキル基から独立して選択される)の少なくとも1種の他のモノマーから得られる単位とを含むポリマーであり、好ましくは、フルオロポリマーは、フッ化ビニリデンから得られる単位と、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、1,1-クロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンから選択される少なくとも1種のモノマーから得られる単位とを含み、並びにより好ましくは、フルオロポリマーは、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロペン)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-トリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-ter-トリフルオロエチレン-ter-クロロトリフルオロエチレン)、及びポリ(フッ化ビニリデン-ter-トリフルオロエチレン-ter-1,1-クロロフルオロエチレン)から選択される。
【0014】
特定の実施形態では、溶媒は、ケトン、エステル、特に環状エステル、ジメチルスルホキシド、リン酸エステル、例えばリン酸トリエチル、カーボネート、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、溶媒は、好ましくは酢酸エチル、メチルエチルケトン、γ-ブチロラクトン、リン酸トリエチル、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0015】
特定の実施形態では、溶媒はγ-ブチロラクトンであり、非溶媒はベンジルアルコールであるか、又は溶媒は酢酸エチルであり、非溶媒はベンジルアルコールであるか、又は溶媒はメチルエチルケトンであり、非溶媒はベンジルアルコールである。
【0016】
特定の実施形態では、フルオロポリマーに対する溶媒と非溶媒との混合物の総重量に対して、溶解限度を質量百分率として表して、ビヒクルは、百分率として非溶媒を、(溶解限度-60%)乃至溶解限度の範囲、より優先的には(溶解限度-60%)乃至(溶解限度-10%)の範囲、さらにより優先的には(溶解限度-50%)乃至(溶解限度-20%)の範囲の質量割合で含み、及び/又はビヒクルは、百分率として溶媒を、(100-溶解限度)乃至(100-(溶解限度-60%))の範囲、より優先的には(100-(溶解限度-10%))乃至(100-(溶解限度-60%))の範囲、さらにより優先的には(100-(溶解限度-20%))乃至(100-(溶解限度-50%))の範囲の質量割合で含む。
【0017】
特定の実施形態では、溶媒及び非溶媒を含むビヒクルの蒸発は、60℃以下、好ましくは50℃以下の温度で行われる。
【0018】
特定の実施形態では、堆積は、スピンコーティング、スプレーコーティング、特にバー又はフィルムスプレッダによるコーティング、スロットダイコーティング、ディップコーティング、ロールツーロール印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、平版印刷又はインクジェット印刷によって行われる。
【0019】
特定の実施形態では、インクは犠牲ポリマーを含まない。
【0020】
特定の実施形態では、溶媒及び非溶媒を含むビヒクルの蒸発中に適用される温度は、本質的に一定であるか、又は20℃未満、好ましくは10℃未満変化する。
【0021】
特定の実施形態では、本方法は、濾過膜若しくは分離膜、又は電池膜を製造するための方法である。
【0022】
本発明はまた、上記方法を介して得ることができる、Barrett-Joyner-Halenda法で評価して、0.020cm/g~0.05cm/gの範囲、優先的には0.025cm/g~0.05cm/gの範囲の細孔容積を有する多孔質フィルムに関する。
【0023】
本発明はまた、上記方法を介して得ることができる多孔質フィルムに関し、前記フィルムは、2m/g以上、好ましくは3m/g以上のBET比表面積を有する。
【0024】
本発明は、上記の必要性を満たす。より具体的には、実施が容易であり、フィルムの形成中に、温度変化、又は周囲温度以外の温度、若しくは周囲温度に近い設定温度以外の温度の適用を必ずしも必要としない、多孔質フルオロポリマーフィルムを調製するための単純な方法を提供する。さらに、本発明による方法は、除去が困難であり、フィルムの純度に影響を及ぼし得る他の犠牲ポリマー、特に親水性ポリマーの使用も、最終的な多孔質フィルムに微量の水分又はイオン性不純物を残し得る非溶媒、より具体的には水へのフィルムの浸漬も必要としない。
【0025】
これは、液体ビヒクルが、相互に混和性であるフルオロポリマーに対する溶媒及びフルオロポリマーに対する非溶媒を含むインクを使用し、フィルムを堆積させるための条件を、このインクを使用してフィルム中に多孔性を得ることを可能にするように調整することによって達成される。
【0026】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、非溶媒の存在が、「乾燥」(すなわち、基材上に堆積したインクからのビヒクルの蒸発中)の時点でフルオロポリマーの局所沈殿を引き起こし、最終的に細孔の形成をもたらし得ると考えている。
【0027】
ある特定の実施形態によれば、本発明は、ビヒクルが好ましい生態毒性プロファイルを有するインクを使用して実施され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1に記載の方法によって得られたフィルムの走査型電子顕微鏡画像である。
図2】実施例1に記載の方法によって得られたフィルムの走査型電子顕微鏡画像である。
図3】実施例1に記載の方法によって得られたフィルムの走査型電子顕微鏡画像である。
図4A】周囲温度で行われた蒸発に関する、実施例2に記載の方法によって得られたフィルムの走査型電子顕微鏡画像である。
図4B】30℃で行われた蒸発に関する、実施例2に記載の方法によって得られたフィルムの走査型電子顕微鏡画像である。
図4C】40℃で行われた蒸発に関する、実施例2に記載の方法によって得られたフィルムの走査型電子顕微鏡画像である。
図4D】50℃で行われた蒸発に関する、実施例2に記載の方法によって得られたフィルムの走査型電子顕微鏡画像である。
図4E】60℃で行われた蒸発に関する、実施例2に記載の方法によって得られたフィルムの走査型電子顕微鏡画像である。 各画像の右下隅の水平の白いバーは、10μmの長さを表す。
図5A】周囲温度で行われた蒸発に関する、実施例2に記載の方法によって得られたフィルムの光学顕微鏡画像である。
図5B】30℃で行われた蒸発に関する、実施例2に記載の方法によって得られたフィルムの光学顕微鏡画像である。
図5C】40℃で行われた蒸発に関する、実施例2に記載の方法によって得られたフィルムの光学顕微鏡画像である。
図5D】50℃で行われた蒸発に関する、実施例2に記載の方法によって得られたフィルムの光学顕微鏡画像である。
図5E】60℃で行われた蒸発に関する、実施例2に記載の方法によって得られたフィルムの光学顕微鏡画像である。 各画像の右下隅の水平の白いバーは、100μmの長さを表す。
図6】特定の実施形態において、本発明の実施に使用することができるニューラルネットワークを概略的に表す図である。
図7】特定の実施形態において、本発明の実施に使用することができるコンピュータシステムを概略的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、本発明を、以下の説明において非限定的に、より詳細に説明する。
【0030】
特に明記しない限り、量に関する百分率はすべて質量百分率である。
【0031】
本特許出願において、「フルオロポリマー(a fluoropolymer)」という用語は、「1種以上のフルオロポリマー」を意味すると理解されるべきである。他のすべての種についても同様である。したがって、例えば、「非溶媒」という用語は、「1種以上の非溶媒」を意味すると理解されるべきである。
【0032】
インク
本発明による方法は、フルオロポリマー及びビヒクルを含むインクを使用する。
【0033】
フルオロポリマーは、好ましくは、少なくとも1つのフッ素原子を含む構造単位(又は単位、又は繰り返し単位、又は部分)を含む炭素鎖を有するポリマーである。
【0034】
好ましくは、フルオロポリマーはフッ化ビニリデン(VDF)モノマーから得られる単位(すなわち、これらはフッ化ビニリデン(VDF)モノマーの重合により得られる)を含む。
【0035】
特定の実施形態では、フルオロポリマーはPVDFホモポリマーである。
【0036】
しかしながら、好ましくは、フルオロポリマーは、(広義には)コポリマーであり、VDF以外の少なくとも1種のモノマーXから得られる単位を含むことを意味する。
【0037】
単一のモノマーXを用いてもよいし、場合によっては、複数の異なるモノマーXを用いてもよい。
【0038】
特定の実施形態では、モノマーXは、式CX=CX(式中、各基X、X、X及びX4は、H、Cl、F、Br、I、及びC1-C3(好ましくはC1-C2)の、任意選択で部分的に又は全体的にハロゲン化されているアルキル基から独立して選択されている)のものであってもよく、このモノマーXはVDFとは異なる(すなわち、X及びXがHを表す場合、X及びXのうちの少なくとも1つはFを表さず、X及びXがFを表す場合、X及びXのうちの少なくとも1つはHを表さない)。
【0039】
特定の実施形態では、各基X、X、X及びXは、独立して、H、F、Cl、I若しくはBr原子、又はF、Cl、I及びBrから選択される1つ以上の置換基を任意選択で含むメチル基を表す。
【0040】
特定の実施形態では、各基X、X、X及びXは、独立して、H、F、Cl、I又はBr原子を表す。
【0041】
特定の実施形態では、X、X、X及びXのうちの1つのみがCl又はI又はBr原子を表し、基X、X、X及びXの他の基は独立して:H若しくはF原子、又は任意選択で1つ以上のフッ素置換基を含むC1-C3アルキル基を表し、好ましくは、H若しくはF原子、又は任意選択で1つ以上のフッ素置換基を含むC1-C2アルキル基;より好ましくは、H若しくはF原子、又は任意選択で1つ以上のフッ素置換基を含むメチル基を表す。
【0042】
モノマーXの例は以下の通りである:フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、トリフルオロプロペン、特に3,3,3-トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(シス又は、好ましくはトランス形態で)、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロブチルエチレン、ペンタフルオロプロペン、特に1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、特に一般式R-O-CF=CF(式中、Rはアルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基である(好ましい例は、パーフルオロプロピルビニルエーテルすなわちPPVE、及びパーフルオロメチルビニルエーテルすなわちPMVEである))。
【0043】
特定の実施形態では、モノマーXは、塩素原子又は臭素原子を含む。これは、特に、ブロモトリフルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及びクロロトリフルオロプロペンから選択され得る。クロロフルオロエチレンは、1-クロロ-1-フルオロエチレン又は1-クロロ-2-フルオロエチレンのいずれかを示し得る。1-クロロ-1-フルオロエチレン異性体(CFE)が好ましい。クロロトリフルオロプロペンとしては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス又はトランス、好ましくはトランスの形態で)又は2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンが好ましい。
【0044】
特定の好ましい実施形態では、フルオロポリマーは、VDF及びHFPから得られる単位を含むか、又はVDF及びHFPから得られる単位からなるP(VDF-HFP)ポリマーである。
【0045】
HFPから得られる繰り返し単位のモル割合は、好ましくは2%~50%、特に5%~40%である。
【0046】
特定の好ましい実施形態では、フルオロポリマーは、VDF及びCFEから、又はCTFEから、又はTFEから、又はTrFEから得られる単位を含む。VDF以外のモノマーから得られる繰り返し単位のモル割合は、好ましくは50%未満であり、より好ましくは40%未満である。
【0047】
特定の好ましい実施形態では、フルオロポリマーは、VDF及びTrFEから得られる単位を含むか、又はVDF及びTrFEから得られる単位からなるP(VDF-TrFE)ポリマーである。
【0048】
特定の好ましい実施形態では、フルオロポリマーは、VDF、TrFEと、VDFとは異なりTrFEとも異なる上記定義の別のモノマーXとから得られる単位を含むか、又はVDF、TrFEと、VDFとは異なりTrFEとも異なる上記定義の別のモノマーXとから得られる単位からなるP(VDF-TrFE-X)ポリマーである。この場合、好ましくは、他のモノマーXは、TFE、HFP、トリフルオロプロペン、特に3,3,3-トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(シス、又は好ましくはトランス形態)、ブロモトリフルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及びクロロトリフルオロプロペンから選択される。CTFE又はCFEが特に好ましい。
【0049】
VDF及びTrFEから得られた単位が存在する場合、TrFEから得られた単位の割合は、VDF及びTrFEから得られた単位の合計に対して、好ましくは5~95mol%であり、特に:5~10mol%又は10~15mol%;又は15~20mol%;又は20~25mol%;又は25~30mol%;又は30~35mol%;又は35~40mol%;又は40~45mol%;又は45~50mol%;又は50~55mol%;又は55~60mol%;又は60~65mol%;又は65~70mol%;又は70~75mol%;又は75~80mol%;又は80~85mol%;又は85~90mol%;又は90~95mol%である。15~55mol%の範囲が特に好ましい。
【0050】
VDF及びTrFEに加えて、別のモノマーXから得られた単位が存在する場合(モノマーXは特にCTFE又はCFEである)、フルオロポリマー中のこの他のモノマーXから得られた単位の(単位の総量に対する)割合は、例えば、0.5~1mol%又は1~2mol%;又は2~3mol%;又は3~4mol%;又は4~5mol%;又は5~6mol%;又は6~7mol%;又は7~8mol%;又は8~9mol%;又は9~10mol%;又は10~12mol%;又は12~15mol%;又は15~20mol%;又は20~25mol%;又は25~30mol%;又は30~40mol%;又は40~50mol%の範囲であり得る。1~20mol%、好ましくは2~15mol%の範囲が特に適している。
【0051】
フルオロポリマー中の単位のモル組成は、赤外分光法又はラマン分光法などの様々な手段によって決定することができる。蛍光X線分光法などの炭素、フッ素及び塩素又は臭素又はヨウ素元素の元素分析の従来の方法は、ポリマーの質量組成を計算することを可能にし、それによりモル組成が推定される。
【0052】
適切な重水素化溶媒中のポリマーの溶液の分析によって、多核NMR技術、特にプロトン(1H)及びフッ素(19F)NMR技術を使用することもできる。
【0053】
最後に、例えば、塩素又は臭素又はヨウ素などのヘテロ原子の元素分析と、NMR分析とを組み合わせることが可能である。したがって、例えば、P(VDF-TrFE-CTFE)ターポリマー中のCTFEから得られた単位の含有量は、元素分析によって塩素の含有量を測定することによって決定することができる。
【0054】
フルオロポリマーの粘度は、(規格ASTM D 4440に従って)230℃及び100s-1の剪断速度で測定する場合、好ましくは0.1~100kPo(キロポイズ)である。
【0055】
フルオロポリマーは、好ましくはランダム及び線状である。
【0056】
フルオロポリマーは、均一であっても不均一であってもよい。均一なポリマーは一様な鎖構造を有し、様々なモノマーに由来する単位の統計的分布は鎖間でほとんど変化しない。不均一ポリマーでは、鎖は、多峰性又は拡散型の様々なモノマーに由来する単位の分布を有する。したがって、不均一ポリマーは、所与の単位においてより豊富な鎖及びこの単位においてより乏しい鎖を含む。
【0057】
インクのためのビヒクルは、フルオロポリマーに対する溶媒及びフルオロポリマーに対する非溶媒を含む。フルオロポリマーに対する溶媒及びフルオロポリマーための非溶媒は相互に混和性である。
【0058】
「フルオロポリマーに対する溶媒及びフルオロポリマーに対する非溶媒を含むビヒクル」という表現は、特に、フルオロポリマーに対する溶媒とフルオロポリマーに対する非溶媒との組み合わせを意味する。このビヒクルは、好ましくは分子レベルで均質である。
【0059】
「フルオロポリマーに対する溶媒」という用語は、フルオロポリマーが溶解可能である液体を意味する。「溶媒へのフルオロポリマーの溶解」という用語は、真の溶液、すなわち単相又は分子レベルで均質な溶液の形成を意味する。
【0060】
「フルオロポリマーに対する非溶媒」という用語は、フルオロポリマーが完全に溶解することができない(又はフルオロポリマーが完全に可溶性ではない)液体を意味する。ポリマーを非溶媒に添加しても、単相又は分子レベルで均質な真の溶液を得ることはできない。
【0061】
所与の液体中のフルオロポリマーの溶解度は、例えば、5%w/wの量のフルオロポリマーを前記液体に室温(例えば25℃)において添加し、必要に応じて撹拌しながら、60℃以下の温度(例えば60℃の温度)まで、例えば60分間適度に加熱し、次いで室温(例えば25℃)まで放冷し、この温度で、例えば60分後に、懸濁液中に固体ポリマーが残っているかどうかを視覚的に観察することによって決定することができる。
【0062】
「混和性」という用語は、ポリマーの非存在下で混合して、好ましくは透明な、液相/液相分離の痕跡を全く伴わずに、分子レベルで均質な混合物を形成できることを意味する。
【0063】
溶媒と非溶媒とが混和性であるビヒクルを用いることにより、インクの取り扱いが容易になり、多孔質フィルムの調製が容易になる。
【0064】
本発明で使用され得る溶媒及び非溶媒は、一般に、室温において液体である任意のビヒクルであり得、特に、アルコール、エーテル、ハロゲン化ビヒクル、アルカン、シクロアルカン、芳香族ビヒクル、ケトン、アルデヒド、環状エステルを含むエステル、カーボネート、ホスフェート、フラン、アミド及びスルホキシド、並びにそれらの組み合わせから選択され得る。
【0065】
フルオロポリマーに対する溶媒として、フルオロポリマーを溶解することができる任意の液体ビヒクルを使用することができる。好ましくは、溶媒は、ケトン、エステル、特に環状エステル、ジメチルスルホキシド、リン酸エステル、例えばリン酸トリエチル、カーボネート、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。非常に揮発性の溶媒、特にメチルエチルケトン又は酢酸エチルが特に好ましい。後者はまた、好ましい生態毒性学的プロファイルを有するという利点を有する。難揮発性の溶媒、特にγ-ブチロラクトン、リン酸トリエチル、シクロペンタノン又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートも使用することができる。フルオロポリマーに対する溶媒は、上記溶媒の2種以上の混合物であってもよい。
【0066】
特に好ましくは、非溶媒は、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド又はそれらの混合物である。これらの非溶媒は、難揮発性であること、及び好ましい生態毒性学的プロファイルを有することの両方の利点を提供する(「環境保護的」非溶媒)。
【0067】
特に有利には、非溶媒は水ではなく、より好ましくは水を全く含まない。
【0068】
本発明で使用され得るフルオロポリマーに対する溶媒と非溶媒との組み合わせの例は、酢酸エチル/ベンジルアルコール;酢酸エチル/ベンズアルデヒド;γ-ブチロラクトン/ベンジルアルコール;γ-ブチロラクトン/ベンズアルデヒド;リン酸トリエチル/ベンジルアルコール;リン酸トリエチル/ベンズアルデヒド;シクロペンタノン/ベンジルアルコール;シクロペンタノン/ベンズアルデヒド;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/ベンジルアルコール;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/ベンズアルデヒド;メチルエチルケトン/ベンジルアルコール;メチルエチルケトン/ベンズアルデヒドである。特に好ましくは、溶媒がγ-ブチロラクトンであり、非溶媒がベンジルアルコールであるか、又は溶媒が酢酸エチルであり、非溶媒がベンジルアルコールであるか、又は溶媒がメチルエチルケトンであり、非溶媒がベンジルアルコールである。
【0069】
有利には、溶媒は、非溶媒の沸点より低い沸点を有し得る。これにより、インクからのビヒクルの蒸発中にフルオロポリマーの沈殿を促進し、フルオロポリマーに対する非溶媒をより低い割合で含むインクの使用が可能になり得る。好ましくは、溶媒は、非溶媒の沸点より少なくとも10℃低い、より好ましくは少なくとも20℃低い、より好ましくは少なくとも30℃低い沸点を有する。
【0070】
有利には、溶媒は、20℃において非溶媒の飽和蒸気圧よりも高い飽和蒸気圧を有し得る。これにより、インクからのビヒクルの蒸発中にフルオロポリマーの沈殿を促進し、フルオロポリマーに対する非溶媒をより低い割合で含むインクの使用が可能になり得る。好ましくは、溶媒は、20℃において非溶媒の飽和蒸気圧よりも少なくとも20Pa高い、より好ましくは少なくとも50Pa高い、より好ましくは少なくとも100Pa高い飽和蒸気圧を有する。
【0071】
フルオロポリマーのための所与の溶媒及び所与の非溶媒を含む混合物について、特定の温度及び特定のポリマー濃度における、この混合物中のフルオロポリマーの「溶解限度(solubility limit)」(又は溶解限界(dissolution limit))を決定することが可能である。本発明の目的のために、この「溶解限度」は、それを超えるとフルオロポリマーが混合物中で巨視的に可視的に(すなわち、肉眼で見ることができる)沈殿する(溶媒及び非溶媒の混合物の合計に対する)非溶媒の質量割合に対応する。この溶解限度は、上記の方法で、非溶媒の質量割合を漸増させ、混合物中のフルオロポリマーの溶解度を決定することによって定義することができるが、液体に検討中の濃度のポリマーを添加して、検討中の温度で固体ポリマーが懸濁液中に残っているかどうかを目視観察することによっても定義することができる。
【0072】
好ましくは、フルオロポリマーに対する溶媒と非溶媒との混合物の総重量に対して、溶解限度を質量百分率として表して、前述のパラグラフで定義したように、インクは、百分率としてフルオロポリマーに対する非溶媒を、(溶解限度-60%)~溶解限度の範囲、より優先的には(溶解限度-60%)乃至(溶解限度-10%)の範囲、さらにより優先的には(溶解限度-60%)乃至(溶解限度-20%)の範囲、さらにより優先的には(溶解限度-50%)乃至(溶解限度-20%)の範囲の質量割合で含む。
【0073】
溶解限度未満、又は溶解限度を大幅に下回る質量割合の非溶媒を使用することにより、インクをより容易に調製することができ、経時的にインクの安定性を向上させることができる。
【0074】
特定の実施形態では、フルオロポリマーに対する溶媒と非溶媒との混合物の総重量に対して、溶解限度を質量百分率として表して、インクは、百分率としてフルオロポリマーに対する非溶媒を、(溶解限度-60%)乃至(溶解限度-50%)の範囲、又は(溶解限度-50%)乃至(溶解限度-40%)の範囲、又は(溶解限度-40%)乃至(溶解限度-30%)の範囲、又は(溶解限度-30%)乃至(溶解限度-20%)の範囲、又は(溶解限度-20%)乃至(溶解限度-15%)の範囲、又は(溶解限度-15%)乃至(溶解限度-10%)の範囲、又は(溶解限度-10%)乃至(溶解限度-8%)の範囲、又は(溶解限度-8%)~溶解限度の範囲の質量割合で含む。
【0075】
好ましくは、フルオロポリマーに対する溶媒と非溶媒との混合物の総重量に対して、溶解限度を質量百分率として表して、インクは、百分率としてフルオロポリマーに対する溶媒を、(100-溶解限度)乃至(100-(溶解限度-60%))の範囲、より優先的には(100-(溶解限度-10%))乃至(100-(溶解限度-60%))の範囲、さらにより優先的には(100-(溶解限度-20%))乃至(100-(溶解限度-50%))の範囲の質量割合で含む。
【0076】
特定の実施形態では、フルオロポリマーに対する溶媒と非溶媒との混合物の総重量に対して、溶解限度を質量百分率として表して、インクは、百分率としてフルオロポリマーに対する非溶媒を、(100-(溶解限度-50%))乃至(100-(溶解限度-60%))の範囲、又は(100-(溶解限度-40%))乃至(100-(溶解限度-50%))の範囲、又は(100-(溶解限度-30%))乃至(100-(溶解限度-40%))の範囲、又は(100-(溶解限度-20%))乃至(100-(溶解限度-30%))の範囲、又は(100-(溶解限度-15%))乃至(100-(溶解限度-20%))の範囲、又は(100-(溶解限度-10%))乃至(100-(溶解限度-15%))の範囲、又は(100-(溶解限度-8%))乃至(100-(溶解限度-10%))の範囲、又は(100-溶解限度)乃至(100-(溶解限度-8%))の範囲の質量割合で含む。
【0077】
他の実施形態では、インクは、液体ビヒクルの総重量に対して、0.1重量%~5重量%、又は5重量%~10重量%、又は10重量%~20重量%、又は20重量%~30重量%、又は30重量%~40重量%、又は40重量%~50重量%、又は50重量%~60重量%、又は60重量%~70重量%、又は70重量%~80重量%、又は80重量%~90重量%、又は90重量%~95重量%、又は95重量%~99.9重量%のフルオロポリマーに対する溶媒を含む。
【0078】
特定の実施形態では、インクは、液体ビヒクルの総重量に対して、0.1重量%~5重量%、又は5重量%~10重量%、又は10重量%~20重量%、又は20重量%~30重量%、又は30重量%~40重量%、又は40重量%~50重量%、又は50重量%~60重量%、又は60重量%~70重量%、又は70重量%~80重量%、又は80重量%~90重量%、又は90重量%~95重量%、又は95重量%~99.9重量%のフルオロポリマーに対する非溶媒を含む。
【0079】
インクは、インクの総重量に対して0.1重量%~60重量%、好ましくは0.5重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~25重量%、より好ましくは3重量%~20重量%のポリマーを含有し得る。ポリマーは、上記フルオロポリマーからなってもよく、又は前記フルオロポリマー及び1種以上の追加のポリマーを含んでもよい。インクは、好ましくはインクの総重量に対して0.1重量%~60重量%、より好ましくは0.5重量%~30重量%、より優先的には1重量%~25重量%、さらにより優先的には3重量%~20重量%のフルオロポリマーを含み得る。
【0080】
有利には、インクは犠牲ポリマーを全く含まない。「犠牲ポリマー」(又は「細孔形成ポリマー」)という用語は、多孔質フィルムを形成するために除去されることが意図されているポリマーを意味し、フィルムからこのポリマーを除去するとフィルムに細孔が生じる。したがって、そのようなポリマーは、フィルムの形成に役立つインク中に存在するが、最終的な多孔質フィルム中には実質的に存在しない。
【0081】
インクは、特に、レオロジー調整剤、耐老化性調整剤、接着調整剤、顔料又は染料、及びフィラー(ナノフィラーを含む)から選択される1種以上の添加剤を任意選択的に含んでもよい。インクはまた、ポリマーの合成に使用された1種以上の添加剤を含有してもよい。
【0082】
しかしながら、特に好ましくは、インクは、レオロジー調整剤(「レオロジー添加剤」としても知られる)、特にシリカ粒子、炭酸カルシウム粒子及び/又は架橋ポリマー粒子を全く含まない。好ましくは、インクは、界面活性剤などの、表面又は界面張力を変更するためのいかなる薬剤も含まない。
【0083】
特定の実施形態では、組成物が塗布された後にポリマーを架橋することを目的とする場合、インクは、好ましくはラジカル開始剤、光開始剤、反応性二重結合に関して二官能性又は多官能性の分子などの助剤、ジアミンなどの塩基性架橋剤、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の架橋添加剤を含む。
【0084】
他の実施形態では、インク中に光開始剤又は架橋剤などの架橋添加剤は存在しない。
【0085】
総添加剤含有量は、ポリマー及び添加剤の総量に対して、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満である。
【0086】
インクは、好ましくは0.1重量%~60重量%、好ましくは0.5重量%~30重量%、より好ましくは1重量%~25重量%、より好ましくは3重量%~20重量%の不揮発性固形分を有する。
【0087】
インクの堆積
上述のインクは、基材上に堆積される。基材は、金属の表面であってもよく、前記金属又は別の金属の酸化物又は窒化物の層、プラスチック、木材、紙、コンクリート、モルタル又はグラウト、ガラス、プラスター、織布又は不織布、皮革などでコーティングされていてもされていなくてもよい。好ましくは、基材は、窒化ケイ素若しくは酸化ケイ素、又は石英、又はポリマー材料(特にポリエチレンテレフタレート若しくはポリエチレンナフタレート)、又はケイ素以外の金属でコーティングされていても、されていなくてもよいガラス又はシリコン表面であり、又は金属酸化物若しくは窒化物の不動態化層でコーティングされていても、されていなくてもよいいくつかの異なる材料で構成される混合表面である。
【0088】
インクの塗布は、不連続又は連続的な手段による拡散を含んでもよい。堆積は、特に、スピンコーティング、スプレーコーティング、特にバー又はフィルムスプレッダによるコーティング(バーコーティング)、スロットダイコーティング、ディップコーティング、ロールツーロール印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、平版印刷又はインクジェット印刷によって行うことができる。
【0089】
好ましくは、基材上へのインクの堆積は、60℃以下、より優先的には50℃以下、さらにより優先的には40℃以下の温度、例えば室温(15~30℃の間)で行われる。
【0090】
フィルム形成
フルオロポリマーに対する溶媒及び非溶媒を含むビヒクルは、堆積後に蒸発される。次いで、フルオロポリマーの層(任意選択で1種以上の他のポリマー及び/又は添加剤を含む)が固化して多孔質フィルムを形成する。
【0091】
連続フィルム(すなわち、非多孔質フィルム)ではなく、多孔質フィルムを得るために、「限界蒸発温度」以下の温度が、インクからのビヒクルの蒸発工程(本明細書では「乾燥」工程としても知られる)中に適用される。この限界蒸発温度は、インクのビヒクル、特にフルオロポリマーに対する溶媒及び非溶媒、並びにそれらの割合、及びこれが数時間未満である場合の蒸発の持続時間に依存する。
【0092】
好ましくは、インクからのビヒクルの蒸発が行われる温度は、60℃以下、より優先的には55℃以下、さらにより優先的には50℃以下である。例えば、インクからのビヒクルの蒸発は、0~60℃の範囲の温度で、より優先的には5~55℃の範囲の温度で、さらにより優先的には室温(15~30℃)で行われる。特定の実施形態では、温度は、0~5℃、又は5~10℃、又は10~15℃、又は15~20℃、又は20~25℃、又は25~30℃、又は30~35℃、又は35~40℃、又は40~45℃、又は45~50℃、又は50~55℃、又は55~60℃、又は60~65℃、又は65~70℃である。
【0093】
蒸発時間は、例えば1分~48時間、好ましくは5分~24時間、より好ましくは10分~15時間であってよい。この時間の間、温度は一定のままであってもよいし、限界蒸発温度以下のままであれば変化してもよい。例えば、温度は、上述の範囲内で変化してもよい。
【0094】
有利には、インクからのビヒクルの蒸発工程中に適用される温度は、工程の過程で変動を有し、その幅は、50℃以下、好ましくは40℃以下、より優先的には30℃以下、さらにより優先的には20℃以下、さらにより優先的には10℃以下である。特定の実施形態では、適用される温度は、インクからのビヒクルの蒸発中に一定又は本質的に一定のままである。フィルムの多孔度は、蒸発工程中に温度を変えることによって調整することができる。
【0095】
好ましくは、ビヒクルの蒸発が行われる環境は、相対湿度が10%以下、より好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、より好ましくは0%に等しい。
【0096】
有利には、本発明による方法は、フルオロポリマーフィルムを液体に浸漬して前記フィルムに細孔を造る工程を含まず、特に、フィルムを水又は水性液体に浸漬する工程は存在しない。
【0097】
このように構成されたフルオロポリマー層(蒸発後)は、特に、50nm~150μm、好ましくは200nm~120μm、より好ましくは500nm~100μmの厚さを有し得る。
【0098】
特定の実施形態では、架橋工程は、層をX線、ガンマ線若しくはUV線などの放射線に供することによって、又は熱活性化によって実施することができる。
【0099】
多孔質フィルムは、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.2~5μm、より好ましくは0.3~4μmの平均直径を有する細孔を含む。平均細孔径は、走査型電子顕微鏡によって測定することができる。
【0100】
多孔質フィルムの製造は、光学顕微鏡及び/又は電子顕微鏡(例えば走査型電子顕微鏡)でフィルムを観察することによって、及び/又は肉眼でフィルムの外観を観察することによって決定することができる:多孔質フィルムは、非多孔質フィルムの半透明又は透明の外観とは対照的に、白色の外観を有する。
【0101】
用途
多孔質フルオロポリマーフィルムは、特にフルオロポリマーが上記のようにP(VDF-TrFE)又はP(VDF-TrFE-CFE)又はP(VDF-TrFE-CTFE)コポリマーである場合、及び細孔が別の液体又は固体物質、例えば絶縁油、又は絶縁電気活性若しくは非電気活性ポリマーで充填され、したがって得られる複合層が誘電特性を有する場合、電子デバイスの電気活性層及び/又は誘電層として使用することができる。
【0102】
本発明の多孔質フィルムが基材上の堆積物として使用される場合、1つ以上の追加の層が、フルオロポリマーフィルムを備えた基材上に堆積されてもよく、その例は、それ自体公知の方法で、ポリマー、半導体材料又は金属の1つ以上の層である。
【0103】
「電子デバイス」という用語は、電気又は電子回路において1つ以上の機能を実行することができる単一の電子部品、又は電子部品のセットのいずれかを意味する。
【0104】
特定の変形例によれば、電子デバイスは、より具体的には、光電子デバイス、すなわち、電磁放射線を放射、検出、又は制御することができるデバイスである。
【0105】
本発明が関連する電子デバイス、又は適切な場合には光電子デバイスの例は、強誘電体メモリ、トランジスタ(特に電界効果トランジスタ)、チップ、バッテリ、電極、光電池、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、センサ、アクチュエータ、変圧器、触覚デバイス、微小電気機械システム(MEMS)、及び検出器である。
【0106】
電子及び光電子デバイスは、多数の電子デバイス、機器又はサブアセンブリのアイテム、並びにテレビ、コンピュータ、携帯電話、剛性又は可撓性スクリーン、薄膜光起電力モジュール、光源、エネルギーセンサ及び変換器、医療機器、床及び壁、屋根及び天井などの多数の物体及び用途で使用され、それらに統合される。
【0107】
いずれの場合でも、電子デバイスは、特に、半導体材料などの導電性材料の層を含むことができる電子素子を支持する基材を含むことができる。電子素子は、好ましくは基材の単一の面上にあるが、特定の実施形態では、基材の両面上にあってもよい。本発明による多孔質層は、電子部品の一体部分を形成してもよく、電子素子の全部又は一部、及び基材の全部又は一部を覆ってもよい。
【0108】
また、多孔質フィルムは、超音波を吸収する層として、超音波検出器やエミッタなどの電子デバイスに用いられてもよい。
【0109】
それはまた、電池、例えばリチウム系電池の分離膜として、又はその製造のために使用することができる。
【0110】
多孔質フルオロポリマーフィルムはまた、濾過膜若しくは精密濾過膜、又は分離膜、例えば液体/液体、液体/気体、液体/固体、気体/気体又は固体/固体分離デバイス内の分離膜として、又はその製造のために使用することもできる。
【0111】
インクの調製
インクは、固体形態のフルオロポリマー(及び任意選択で他のポリマー)を、フルオロポリマーに対する溶媒及び非溶媒を含むビヒクル中に分散させることによって、好ましくは混合を行うことによって調製することができる。
【0112】
調製中に適用される温度は、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~75℃、より好ましくは15~60℃、理想的には20~30℃である。特定の実施形態では、調製は室温で行われる。有利には、調製は適度に撹拌しながら行われる。
【0113】
フルオロポリマーに対する溶媒及び非溶媒を含むビヒクルは、フルオロポリマーに対する溶媒をフルオロポリマーに対する非溶媒と混合することによって調製することができる。この混合物は、フルオロポリマー(及び/又は他の任意選択のポリマー)を組み込む前、組み込み中又は組み込み後に調製されてもよく、すなわち、フルオロポリマーは、既に混合された溶媒及び非溶媒中に分散されてもよく、又はフルオロポリマー、溶媒及び非溶媒が同時に添加されてもよく、又はフルオロポリマーが、溶媒又は非溶媒に添加され、その後に非溶媒又は溶媒が添加されてもよい。
【0114】
本発明によるインクを形成するために添加剤を添加しなければならない場合、添加剤は、液体ビヒクル中にポリマーを分散する前、分散中、又は分散後に添加されてもよい。
【0115】
フルオロポリマーに対する溶媒及び非溶媒は、フルオロポリマーのための公知の溶媒又は公知の非溶媒であり得る。又は、所与の液体ビヒクル中のフルオロポリマーの溶解度を評価して、このビヒクルがフルオロポリマーに対する溶媒であるか非溶媒であるかを、例えば上記の方法で決定することができる。
【0116】
他の実施形態によれば、所与の液体ビヒクル中のフルオロポリマーの溶解度は、コンピュータによって実行される方法によって決定することができる。この方法は、フルオロポリマーの溶解確率を、例えば学習によって決定されるビヒクル組成物の溶解度パラメータと関連付けるように構成された関数に基づく。
【0117】
学習によって決定される関数
好ましくは、上記の関数は、コンピュータによって実行される方法を介して決定される。
【0118】
この関数の決定は、学習データのセットの形成と、それに続く学習データのセットに基づく関数の学習とに基づき得る。
【0119】
学習データのセットは、いくつかの個別のビヒクル組成物について、
-ビヒクル組成物に関する複数の溶解度パラメータ;
-検討中のビヒクル組成物中のフルオロポリマーの溶解度に関する情報との関連付け、
を含む。
【0120】
「関連付け」という用語は、本明細書では、各ビヒクル組成物について検討中のデータ間に関連性があることを意味する。したがって、溶解度パラメータ及び溶解度に関する情報は、関係データベースにおいて特徴づけることができる。例えば、溶解度パラメータと溶解度に関する情報とは、同じベースの各フィールドに与えられてもよい。
【0121】
フルオロポリマーの溶解度に関する情報は、好ましくは、はい/いいえ型、すなわち可溶又は不溶のバイナリ情報である。したがって、これは、例えば、0又は1の形で符号化することができる。この情報は、必要に応じて、例えば、学習データのセットの各ビヒクル組成物の実験的試験によって、例えば、一定量のフルオロポリマーをビヒクル組成物に添加し、必要に応じて適度に加熱(例えば、60℃以下、又は50℃以下、又は40℃以下の温度)して、好ましくは室温で撹拌し、15分後又は60分後に、例えば固体ポリマーが懸濁液中に残っているかどうかを視覚的に観察することによって、決定することができる。試験に使用されるフルオロポリマーの量は、特に1%~10%w/w、好ましくは約5%w/wであり得る。
【0122】
特に、ビヒクル組成物についての2つ、又は好ましくは3つの溶解度パラメータが存在し得る。
【0123】
ハンセン溶解度パラメータの中から溶解度パラメータを選択することが特に好ましい。
【0124】
ハンセン溶解度パラメータは以下の通りである:
-δ:分散成分(組成物の分子間の分散力に関連するエネルギー);
-δ:極性成分(組成物の分子間の分子間双極子力に関連するエネルギー);及び
-δ:水素成分(組成物の分子間の水素結合に関連するエネルギー)。
【0125】
好ましくは、すべてのハンセン溶解度パラメータは、同じ基準温度、例えば25℃で提供される。
【0126】
したがって、学習データのセットで使用される溶解度パラメータは、δ及びδ;又はδ及びδ;又はδ及びδであってもよく;又は特に好ましくはδ、δ及びδであり得る。
【0127】
ハンセン溶解度パラメータは、MPa1/2又は任意の他の単位(例えば(cal/cm1/2)で示すことができる。
【0128】
溶解度パラメータは、理論的考察(半経験的方法)と組み合わせた実験的試験によって決定することができる。したがって、例えば、Hoyは、(Handbook of Solubility Parameters,and Other Cohesion Parameters,1983 edition,page 59)を用いて半経験的に成分δ、δ及びδを決定した。
【0129】
1.δ(ヒルデブラント溶解度パラメータ)=(δ +δ +δ 1/2として表されるヒルデブラント溶解度パラメータの実験的評価(蒸発のエンタルピーの測定及び状態方程式の使用)。
【0130】
2.比Tb/Tc(沸点、結晶化点)、分子質量及び密度の関数として、モル体積の回帰により導出された式から得られた凝集数からのδの推定。
【0131】
3.モル引力への基の寄与の方法によるパラメータδの計算。
【0132】
4.ヒルデブランド溶解度パラメータの式からの、差によるパラメータδの推定(ポイント1)。
【0133】
好ましくは、溶解度パラメータは、1つ以上の既存の参照表から得られる。「参照表」という用語は、様々なビヒクル組成物の凝集エネルギー(最終的に溶解度パラメータを反映する)に関するデータのまとめを意味し、これらのデータは、同じ方法論に従って、好ましくは同じ機器を用いて同じチームによって行われた実験的又は半経験的研究から得られる。
【0134】
特定の実施形態では、学習データのセットのすべての溶解度パラメータは、同じ参照表から得られる。他の実施形態では、学習データのセットの溶解度パラメータは、2又は2つを超える異なる参照表から得られる。驚くべきことに、少なくとも2つの異なる参照表から得られたデータを使用すると、信頼できる関数が決定されることが分かった。少なくとも2つの異なる参照表の使用は、学習データにおけるバイアス又は誤差のリスクを最小限に抑えることができる限り、有利であり得る。したがって、第1の参照表から得られた所与のビヒクル組成物の第1の溶解度パラメータセットと、第2の参照表から得られた同じ所与のビヒクル組成物の第2の溶解度パラメータセットとを学習データのセットに統合することが可能である。いくつかの所与のビヒクル組成物又はすべてのビヒクル組成物についてこのように進めることも可能である。
【0135】
例として、溶解度パラメータは、Allan F.M.BartonによるCRC Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters,2nd edition(1991)に含まれる参照表、例えば、この刊行物の第7章の表2及び/又は第8章の表5から得ることができる。
【0136】
学習データのセットのためのビヒクル組成物は、純粋な物質及び/又は物質の混合物であってよい。「純粋な物質」という用語は、「物質の混合物」とは対照的に使用される。したがって、純粋な物質は、好ましくは、98%、又は99%、又は99.5%、又は99.9%以上の質量純度を有する。本特許出願の目的のために、純粋な物質は少量の不純物を含有し得ることが理解されよう。
【0137】
物質の混合物を考慮する場合、溶解度パラメータは、実験的又は半経験的試験によって決定されてもよく、又は好ましくは、混合物として、純粋な物質の溶解度パラメータから線形結合の形態で計算されてもよい。このような線形結合では、適用される重み係数は、好ましくは、各物質の体積割合に対応する。
【0138】
学習データのセットは、訓練データのセットと試験データのセットとに分割されてもよい。次いで、試験フェーズが肯定的な結果をもたらすまで(すなわち、試験フェーズが検証基準を満たすまで)、訓練フェーズ(訓練データのセットに対して)及び試験フェーズ(試験データのセットに対して)のシーケンスを実行することによって、学習を実行することができる。又は、学習データのセットは、完全に訓練データのセットからなってもよく、試験フェーズは実行されないか、又は試験フェーズは追加データに対して実行される。
【0139】
学習データのセットが訓練データのセットと試験データのセットとにN回連続して異なって分割されることも想定可能である。毎回、訓練フェーズ及び試験フェーズのシーケンスが上記のように実行される。これにより、N個の異なるモデルが得られる。最良の統計的検証(最小誤差)を有するモデルが、関数の最終モデルとして選択される。
【0140】
この方法は、限られた量のデータを効率的に使用できるため、学習データのセットがあまり大きくないサイズである場合に特に適している。
【0141】
学習は、当業者に公知の任意の技術に従って、「機械学習」によって実行することができる。
【0142】
学習は、特に、ニューラルネットワークモデルに基づき得る。
【0143】
ニューラルネットワークは、バイナリ応答ネットワーク(パーセプトロンのネットワーク)であっても、又は例えば0と1との間の任意の値の形で確率を与える、漸進応答ネットワーク(例えば、シグモイドニューラルネットワーク)であってもよい。
【0144】
ニューラルネットワークは、入力層、1つ以上の中間層、又は隠れ層、及び出力層を含む。
【0145】
入力層は、学習データの一部を含む。それは、単一の中間層又は隠れ層、又はそれ自体が出力層を供給する一連の中間層又は隠れ層を供給する。
【0146】
各中間層は、先行層から得られたデータを用いて、可変パラメータを伴う数値演算を行う。数値演算の結果は、次の層を供給する。
【0147】
出力層はまた、先行層から得られたデータを使用して、可変パラメータを伴う数値演算を実行する。数値演算の結果は、溶解確率の推定をもたらす。
【0148】
次いで、この溶解確率の推定値と、学習データのセットにおいて特徴づけられる対応する溶解度に関する情報とを使用して、誤差関数が計算される。中間層及び出力層の可変パラメータは、誤差関数を最小化するように最適化される。ネットワークは、場合によっては、検討中の層のニューロン又は先行層の入力となる計算結果(出力)をバックフィードすることができる。好ましくは、フィードバックのないネットワークが使用される。
【0149】
例として、図6を参照すると、溶解度パラメータ1、2、3は、単一の中間層である3つのニューロン4、5、6への入力として供給され、それ自体が出力層7を供給する。
【0150】
各中間ニューロン4、5、6は、溶解度パラメータ1、2、3から数値関数を計算する。数値関数は、例えば、溶解度パラメータ1、2、3の線形結合又はアフィン結合を含むことができ、線形結合又はアフィン結合の係数(重み)は、上記の可変パラメータに対応する。数値関数は、そのような線形結合又はアフィン結合への別の数学関数の適用、例えば双曲線正接関数の適用も含み得る。
【0151】
出力層7は、中間ニューロン4、5、6から得られた値から数値関数を計算する。
【0152】
特定の実施形態では、閾値を、各中間ニューロン4、5、6に関連付けることができる。したがって、各中間ニューロン4、5、6は、数値関数の計算された値が閾値に対して定義された条件を満たすか否かに応じて、出力層7に対して活性化されるか又は活性化されない、すなわち、出力層7を供給するか又は供給しない。閾値は、重みと同様に、上述のように可変パラメータを表す。
【0153】
出力層7の数値関数は、例えば、中間ニューロン4、5、6から得られた値の線形結合又はアフィン結合を含むことができ、線形結合又はアフィン結合の係数は、上記の可変パラメータに対応する。数値関数はまた、そのような線形結合又はアフィン結合への別の数学関数の適用、例えば、双曲線正接関数又は任意の他の指数関数又は指数関数の組み合わせの適用を含み得る。
【0154】
ニューラルネットワークがバイナリ応答ネットワークである場合、出力層7の数値関数から得られる値は、所定の閾値と比較されて、はい/いいえ型の応答をもたらし、これは、例えば0又は1の形式で符号化され得る。
【0155】
ニューラルネットワークが漸進応答ネットワークである場合、出力層7の数値関数から得られる値は、例えば、0と1との間の任意の値であり、ビヒクル組成物中のフルオロポリマーの溶解確率を示す。
【0156】
1つの事例において他の事例と同様に、出力層7の数値関数から得られた値は、ポリマーの溶解度に関する情報(例えば、0又は1の形式で符号化される)と比較され、誤差関数が計算される。
【0157】
上記の工程は、誤差関数を最小化するように、中間ニューロン4、5、6及び出力層7の可変パラメータ(重み、閾値)を変化させながら、及び学習データのセットから得られたデータを変化させながら、一定回数繰り返される。
【0158】
この方法の終了時に、フルオロポリマーの溶解確率をビヒクル組成物と関連付けるように構成された関数が得られる。この関数は、先行する方法によって最適化された可変パラメータ(重み、閾値)の値に従って決定される。
【0159】
物質又は物質の混合物の選択
フルオロポリマーの溶解確率をビヒクル組成物と関連付けるように構成された関数を、コンピュータによって実行される方法で使用して、フルオロポリマーに対する溶媒及び/又はフルオロポリマーに対する非溶媒、及び/又はフルオロポリマーに対する溶媒とフルオロポリマーに対する非溶媒とを含むビヒクル中のフルオロポリマーに対する溶媒と非溶媒との割合を選択することができる。
【0160】
したがって、概して、この関数は、学習データのセットでは特徴づけられない、試験されるビヒクル組成物に対するフルオロポリマーの溶解確率を得るために使用することができる。
【0161】
次いで、この関数は、試験されるビヒクル組成物の溶解度パラメータに適用される。
【0162】
関数を適用することによって得られる溶解確率は、フルオロポリマーがビヒクル組成物に溶解する能力の推定を表す。この推定は、バイナリ形式(はい/いいえの応答)又は任意の確率の形式(例えば、0~1の任意の値)のいずれかで得ることができる。この第2の場合では、確率を閾値と比較して、フルオロポリマーがビヒクル組成物に可溶性又は不溶性であると推定されるかどうかを定義する。
【0163】
試験結果に応じて、試験されるビヒクル組成物を採用しても、しなくてもよい。
【0164】
特定の実施形態では、関数は、試験される複数のビヒクル組成物に連続的に適用されて、これらの組成物の1つ以上を選択する。
【0165】
試験されるビヒクル組成物は、純粋な物質であっても、物質の混合物であってもよい。
【0166】
それらが純粋な物質である場合、関数が適用される溶解度パラメータは、上記のように実験的若しくは半経験的試験によって決定することができ、又は好ましくは、上記のように1つ以上の既存の参照表から得ることもできる。
【0167】
それらが混合物である場合、関数が適用される溶解度パラメータは、実験的又は半経験的試験によって決定することができ、又は好ましくは、純粋な物質の溶解度パラメータから混合物としての線形結合の形態で計算することもできる。このような線形結合では、適用される重み係数は、好ましくは各溶媒の体積割合に対応する。
【0168】
上記の関数及び/又は選択方法は、フルオロポリマーに対する溶媒を選択するために使用されてもよい。次いで、フルオロポリマーがその中に可溶性であると推定される場合、溶媒が採用される。
【0169】
上記の関数及び/又は選択方法はまた、フルオロポリマーに対する非溶媒を選択するために使用されてもよい。次いで、フルオロポリマーがその中で不溶性であると推定される場合、非溶媒が採用される。
【0170】
上記の関数及び/又は選択方法はまた、インクの調製に使用されるビヒクル中のフルオロポリマーに対する溶媒及びフルオロポリマーに対する非溶媒の割合を選択するために適用されてもよい。
【0171】
この場合、関数が適用される溶解度パラメータを有する試験されるビヒクル組成物は、フルオロポリマーに対する溶媒及びフルオロポリマーに対する非溶媒を含む混合物である。
【0172】
好ましい実施形態では、関数は、すべてがフルオロポリマーに対する溶媒及びフルオロポリマーに対する非溶媒を含む混合物からなる、試験される複数のビヒクル組成物に連続的に適用され、フルオロポリマーに対する溶媒及び/又はフルオロポリマーに対する非溶媒の割合は、これらの組成物の1つ以上を選択するために、試験される様々な組成物において変化する。
【0173】
次いで、フルオロポリマーがその中に可溶性であると推定される場合、ビヒクル組成物(フルオロポリマーに対する溶媒及びフルオロポリマーに対する非溶媒を含む混合物からなる)を選択することができる。
【0174】
漸増割合のフルオロポリマーに対する非溶媒を含む複数の混合物にこの関数が連続的に適用される場合、本方法は、溶解限度がその範囲内に存在することが推定される、フルオロポリマーに対する非溶媒の割合の範囲を決定することを可能にし得る。
【0175】
したがって、フルオロポリマーに対する溶媒及び/又はフルオロポリマーに対する非溶媒、及び/又はフルオロポリマーための溶媒とフルオロポリマーに対する非溶媒とを含むビヒクル中の溶媒及び非溶媒の比率は、コンピュータによって実行される、以下を含む選択方法に従って選択することができる:
a)フルオロポリマーの溶解確率をビヒクル組成物の溶解度パラメータと関連付けるように構成された関数、例えば、上記のように学習することによって決定される関数を提供すること;
b)少なくとも1種のビヒクル組成物(このビヒクル組成物は、溶媒及び非溶媒の割合を選択する場合の混合物である)と関連付ける溶解度パラメータを提供すること;
c)工程a)で提供された関数を工程b)で提供された溶解度パラメータに適用して、それぞれのビヒクル組成物と関連付けたフルオロポリマーの溶解確率を得ること;
d)場合によって:
-フルオロポリマーが可溶性であると推定されるフルオロポリマーに対する溶媒として、組成物を選択すること、又は
-フルオロポリマーが不溶性であると推定されるフルオロポリマーに対する非溶媒として、組成物を選択すること、又は
-フルオロポリマーに対する溶媒とフルオロポリマーに対する非溶媒とを含み、所定の試験により、非溶媒の質量割合が溶解限度未満であると推定される、好ましくは溶解限度に関して上記の範囲の1つのうちにあると推定される混合物としてのビヒクル組成物を選択すること。
【0176】
このような方法は、必ずしも複数の溶解実験を行う必要がないため、効率的で信頼性が高く、迅速及び容易な選択を可能にする。
【0177】
次いで、選択されたビヒクル組成物を使用して、前記ビヒクル組成物中にフルオロポリマーを分散させることによってインクを製造することができる。
【0178】
コンピュータシステム
コンピュータによって実行される方法の案件である場合、方法の工程のすべて又は実質的にすべてがコンピュータ又はコンピュータのセットによって実行されることが理解される。工程は、完全に自動的に、又は部分的に自動的に実行されてもよい。特定の実施形態では、特定の工程は、ユーザとの対話に応答してトリガされてもよい。想定される自動化の程度は、ユーザによって事前定義及び/又は定義されてもよい。
【0179】
一例として、訓練データのセットと試験データのセットとの間の学習データのセットの分布は、ユーザによって決定されてもよいし、自動的に決定されてもよい。
【0180】
学習は、当業者に公知の任意の学習技術に従って自動的に実行される。特に、誤差関数は、好ましくは、当業者に公知の任意の変形に従って自動化される。
【0181】
図7を参照すると、コンピュータプログラムを介して、上述のコンピュータによって実行される方法を実行するために使用することができるシステムの一例が提供されている。この例では、システムはコンピュータ、例えばワークステーションである。
【0182】
したがって、コンピュータは、バス1000に接続された処理ユニット1010と、同じくバス1000に接続されたランダムアクセスメモリ1070(RAM)とを備える。コンピュータはまた、バスに接続されたビデオランダムアクセスメモリ1100に関連付けられたグラフィック処理ユニット1110を備える。大容量記憶デバイスコントローラ1020は、ハードディスク1030などの大容量記憶デバイスへのアクセスを制御する。コンピュータプログラムの命令及びデータを有形に表すのに適した大容量記憶デバイス1040は、例えば、EPROM及びEEPROMタイプの半導体メモリデバイス及びフラッシュメモリデバイス;内蔵ハードディスク、リムーバブルディスク等の磁気ディスク;光磁気ディスク、及びCD-ROMディスクを含む、すべての形態の不揮発性メモリを含む。これらのデバイスはまた、特定のASIC(特定用途向け集積回路)に補足又は組み込まれてもよい。ネットワークアダプタ1050は、ネットワーク1060へのアクセスを制御する。コンピュータはまた、カーソル制御デバイス、キーボードなどの触覚デバイス1090を備えてもよい。カーソル制御デバイスは、ユーザがディスプレイ1080上の任意の場所に選択的にカーソルを配置することを可能にするために使用される。また、カーソル制御デバイスは、ユーザが各種の入力コマンドや制御信号を選択することができる。カーソル制御デバイスは、システム入力制御信号用の信号生成デバイスを備える。典型的には、このデバイスはマウスであってもよく、マウスボタンは信号を生成するために使用される。コンピュータシステムはまた、タッチスクリーン及び/又はタッチパッドを備えてもよい。
【0183】
コンピュータプログラムは、コンピュータ実行可能命令を含むことができ、命令は、上記のシステムに方法を実行させるための手段を含む。プログラムは、システムメモリを含む任意のデータサポートに記録可能であってもよい。プログラムは、例えば、デジタル電子回路で、又はコンピュータハードウェア、ファームウェア若しくはソフトウェア、又はそれらの組み合わせで実行することができる。プログラムは、機器、例えば、プログラマブルプロセッサによって実行される機械によって読み取ることができるメモリデバイスに有形に表される製品として実行されてもよい。方法の工程は、入力データを処理して出力を生成することによってこの方法の関数を実行するように、命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって実行されてもよい。したがって、プロセッサはプログラマブルであり得、メモリデバイス、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信し、それらにデータ及び命令を送信するように結合されてもよい。プログラムは、高レベルの手続き型又はオブジェクト指向プログラミング言語で、又は機械言語又はアセンブリ言語で実行されてもよい。言語は、コンパイルされても、又はインタプリタされてもよい。プログラムは、フルインストールプログラムであってもよいし、アップデートプログラムであってもよい。プログラムをシステムに適用すると、方法を実行するための命令がもたらされる。
【実施例
【0184】
以下の実施例は、本発明を限定することなく例示する。
[実施例1]
溶解度推定モデル
学習データのセットは、以下の表から構成された:
【0185】
【表1】
【0186】
この表では、ハンセン溶解度パラメータをMPa1/2で示している。表記(2)又は(5)は、これらのハンセン溶解度パラメータが、Allan F.M.BartonによるCRC Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters,2nd edition(1991)の第7章の表2又は第8章の表5のいずれかに由来することを示している。
【0187】
溶解度に関する情報は、80%のVDF単位及び20%のTrFE単位を(モル比率として)含むP(VDF-TrFE)コポリマーを用いて実験的に得た。
【0188】
SAS社のソフトウェアJMP 13.0.0を使用して、図6に概略的に示すようなニューラルネットワークを提供した。
【0189】
表の20行をモデルの学習に使用し、6行を検証に使用した。得られた成功の度合いは100%である。
【0190】
「KFold」検証方法を使用した。この方法は、ソフトウェアマニュアルで説明されているように、データをK個のサブグループに分割する。K個のサブグループの各々は、「適合」、又はサブグループKに含まれない残りのデータで作成されたモデルを検証するために連続的に使用され、これによりK個の異なるモデルを取得することを可能にする。最良の統計的検証(最小誤差)を有するモデルが最終モデルとして選択される。
【0191】
このモデル化から、以下の予測モデルが得られた。
【0192】
中間(隠れ)層の3つのニューロンの関数:
-H1=tanh(0.5×(0.288078×δ+0.029058×δ+0.092642×δ-4.79788));
-H2=tanh(0.5×(0.131723×δ-0.16692×δ-0.03299×δ-0.05098));
-H3=tanh(0.5×(0.399484×δ-0.11103×δ-0.05299×δ-4.13038))。
【0193】
上記において、ハンセン溶解度パラメータは、MPa1/2で表される。
【0194】
出力ニューロンの関数:S=exp(201.3275×H1+192.4403×H2-156.203×H3-82.4311)。
【0195】
不溶(又は非溶解)確率はS/(1+S)に等しく、溶解確率は1-不溶確率に等しい。
【0196】
このようにして得られたモデルは、先行する学習表に存在しない任意の新しいビヒクル組成物に適用することができる。
【0197】
インク用のビヒクルの選択
上記のモデルを使用して、ベンジルアルコールとγ-ブチロラクトンとの様々な混合物中における、(モル比率として)80%のVDF単位及び20%のTrFE単位を含むP(VDF-TrFE)コポリマー(「FC-20」コポリマー)の溶解の確率(又は溶解確率)を評価する。上記のように、γ-ブチロラクトンはFC-20に対する溶媒であり、ベンジルアルコールはFC-20コポリマーに対する非溶媒である。
【0198】
これらの溶解確率を以下の表に示す(表の最初の2列は、評価された混合物中の物質の質量割合を表す)。
【0199】
【表2】
【0200】
溶解限度(非沈殿から沈殿混合物への切り替え)は、ベンジルアルコールが約58重量%の割合と約68重量%の割合との間である。したがって、ベンジルアルコール及びγ-ブチロラクトンの重量の合計に対して58重量%未満のベンジルアルコール及び42重量%超のγ-ブチロラクトンで構成される溶媒系液体ビヒクルを含む任意の混合物を、多孔質フィルムを製造するためのインクのためのビヒクルとして使用できる可能性がある。
【0201】
ポリマーフィルムの調製
8.34重量%(インクの総重量に対して)のFC-20コポリマーを、17.1重量%のベンジルアルコール及び82.9重量%のγ-ブチロラクトンの混合物中に含有するインクを以下のように調製する。FC-20コポリマーを、撹拌容器内において、該コポリマー粉末を撹拌しながら徐々に添加することにより、γ-ブチロラクトン/ベンジルアルコール混合物に溶解させる。溶解を促進するために、溶解中に混合物を70℃未満の温度まで加熱してもよい。
【0202】
このようにして得られたインクを、ドクターブレード方式(ブレードがガラスに接触しない方式)のバーコーターを用いて、ガラス板上に室温で堆積させる。堆積物を、ヒュームフードにおいて室温で一晩乾燥させる(すなわち、蒸発するように放置する)。これにより、外観が均一な脆い白色フィルムが得られる。フィルムの典型的な厚さは80μmである。
【0203】
走査型電子顕微鏡を使用して得られたフィルムの画像を図1図2及び図3に示す。
【0204】
[実施例2]
8.3重量%(インクの総重量に対して)のFC-20コポリマーを、17.1重量%のベンジルアルコール及び82.9重量%のγ-ブチロラクトンの混合物中に含有するインクを調製する。
【0205】
次いで、ドクターブレード型のバーコーターを使用してガラス板上にこのインクで5つの堆積物を作製し、次いで、これらをそれぞれ異なる温度:室温、30℃、40℃、50℃、又は60℃で、ヒュームフード内で一晩乾燥させる。厚さ10~50μmのフィルムが得られる。
【0206】
得られたフィルムを走査型電子顕微鏡(図4A、4B、4C、4D及び4E)及び光学顕微鏡(図5A、5B、5C、5D及び5E)で観察する。
【0207】
50℃、40℃、30℃又は室温に等しい乾燥温度の適用は、多孔質白色フィルムの製造を可能にし、一方、60℃の乾燥温度の適用は、非多孔質半透明フィルムをもたらすことを観察した。
【0208】
[実施例3]
異なる温度で乾燥させた実施例2のフィルムを、ポロシメトリーによって分析した。Micromeritics製ASAP 2020の機械をこの目的のために使用した。140~270mgのフィルムを測定セルに導入し、2μmHg未満の真空下で、室温において16時間脱気を行う。次いで、窒素吸着脱着等温線を77K(約-196℃)の温度で測定する。BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積を、0.06~0.2の間のP/P0比値で機械によって計算する。メソポーラス及びマクロポーラス領域の細孔容積は、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)法で評価する。
【0209】
以下の表は、得られた結果をまとめたものである。
【0210】
【表3】
【0211】
これらの結果から、乾燥温度が低いほど、比表面積及び細孔容積が大きいことが分かる。60℃で乾燥させたサンプルは、その不均一な外観のために分析することができなかった。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7