(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ACモータのための電流源型モータ・ドライブ制御
(51)【国際特許分類】
H02P 27/048 20160101AFI20240920BHJP
H02P 25/02 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
H02P27/048
H02P25/02
(21)【出願番号】P 2021531701
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 US2019064449
(87)【国際公開番号】W WO2020117924
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-07-13
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517077810
【氏名又は名称】アストロニクス アドバンスド エレクトロニック システムズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プーレン、ティモシー、エム.
(72)【発明者】
【氏名】バングラ、ジョン、フェイア
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-056093(JP,A)
【文献】特開2000-358380(JP,A)
【文献】特表2011-517269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/048
H02P 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかの巻線を有する多相ACモータのためのコントローラであって、
複数のAC電流源であって、AC電流源の数が巻線の数に等しく、異なる巻線に正弦波電流を供給するために、それぞれが前記異なる巻線に結合されている、複数のAC電流源と、
前記複数のAC電流源に結合された制御論理であって、前記制御論理が、前記AC電流源の
各入力に対して、
それぞれの正弦波
基準波形を生成し、各正弦波
基準波形が、
それぞれの指定された位相を有し、前記AC電流源の各
々に入力された前記
それぞれの正弦波
基準波形に基づいて
、制御可能な周波数の前記指定された位相及び可変振幅で前記AC電流源の各々の接続された巻線を駆動するために、PWM(パルス幅変調)スイッチングなしで、正弦波AC電流を出力する
ように前記AC電流源の各々を制御する制御論理と、
前記制御論理と結合され、入力として可変ランプ電圧を受信する電圧周波数コンバータであって、前記ランプ電圧は、前記制御論理への前記電圧周波数コンバータの出力を制御し、且つ前記制御論理から出力される前記正弦波
基準波形の前記制御可能な周波数を制御するために印加される、電圧周波数コンバータと
を備えるコントローラ。
【請求項2】
前記複数のAC電流源が線形電流増幅器を備える、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記制御論理が、前記正弦波
基準波形を生成するためのクロック論理とスイッチト・キャパシタ・フィルタとを備える、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項4】
異なる位相を有する複数のクロック信号を生成するために、前記クロック論理の入力に電圧周波数コンバータが接続されている、請求項3に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記クロック信号が、前記正弦波
基準波形を生成するために前記スイッチト・キャパシタ・フィルタに入力される、請求項4に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記複数のAC電流源のうちの1つの選択されたAC電流源から出力された前記正弦波AC電流の位相を、前記選択されたAC電流源に関連する前記多相ACモータの巻線において生成される逆EMF電圧でロックするための位相ロック・ループをさらに含む、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項7】
3つの固定子巻線を有する3相AC誘導モータのためのコントローラであって、
3つのAC電流源であって、それぞれが、前記固定子巻線のうちの異なる1つに、前記固定子巻線のうちの異なる1つに正弦波電流を供給するために結合されている、3つのAC電流源と、
前記3つのAC電流源に結合された制御論理であって、前記制御論理が、
前記AC電流源の
各入力に対して、
それぞれの正弦波
基準波形を生成し、各正弦波
基準波形が、
それぞれの指定された位相を有し、
前記AC電流源の
各々に入力された前記正弦波
基準波形に基づいて
、制御可能な周波数の前記指定された位相及び可変振幅で各AC電流源の結合された巻線を駆動するために、PWM(パルス幅変調)スイッチングなしで、正弦波AC電流を出力するように各AC電流源を制御する制御論理と、
前記制御論理と結合され、入力として可変ランプ電圧を受信する電圧周波数コンバータであって、前記ランプ電圧は、前記制御論理への前記電圧周波数コンバータの出力を制御し、且つ前記制御論理から出力される前記正弦波
基準波形の前記制御可能な周波数を制御するために印加される、電圧周波数コンバータと
を備えるコントローラ。
【請求項8】
前記AC電流源が線形電流増幅器を備える、請求項7に記載のコントローラ。
【請求項9】
前記制御論理が、前記正弦波
基準波形を生成するためのクロック論理とスイッチト・キャパシタ・フィルタとを備える、請求項7に記載のコントローラ。
【請求項10】
互いに対して120度シフトされた位相を有する複数のクロック信号を生成するために、前記クロック論理の入力に電圧周波数コンバータが結合されている、請求項9に記載のコントローラ。
【請求項11】
前記位相シフトされたクロック信号が、前記正弦波
基準波形を生成するために前記スイッチト・キャパシタ・フィルタに入力される、請求項10に記載のコントローラ。
【請求項12】
前記3つのAC電流源のうちの1つの選択されたAC電流源から出力された前記正弦波AC電流の位相を、前記選択されたAC電流源に関連する前記3相AC誘導モータの巻線において生成される逆EMF電圧でロックするための位相ロック・ループをさらに含む、請求項10に記載のコントローラ。
【請求項13】
3相ACモータを制御するための方法であって、前記3相ACモータが3つの巻線を有し、前記方法が、
前記巻線に正弦波電流を供給するために各巻線にAC電流源を結合するステップと、
3つの正弦波基準波形であって、各正弦波基準波形が他の正弦波基準波形とは異なる電圧レベル及び位相
を有する、3つの正弦波
基準波形を生成するステップと、
前記3相ACモータの動作を制御するように、前記正弦波
基準波形
の各々を
対応するそれぞれのAC電流
源に結合して、特定の位相、及び制御可能な周波数で可変
正弦波電流を出力するために前記AC電流源の各々を駆動するステップと
を含み、
前記正弦波電流が、DCリンク電圧のPWM(パルス幅変調)スイッチングなしで各巻線に供給される、方法。
【請求項14】
前記AC電流源を結合するステップが、線形電流増幅器を結合するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生成するステップが、前記正弦波
基準波形を生成するためにクロック論理とスイッチト・キャパシタ・フィルタとを使用するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記生成するステップが、前記クロック論理とは異なる位相をもつクロックを生成するために電圧周波数コンバータを使用するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記AC電流源のうちの1つの選択されたAC電流源から出力された前記可変
正弦波電流は、前記3相ACモータによって生成される逆EMF電圧に位相ロックされる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2018年12月4日に出願した、仮出願第62/774,932号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、旧来の電圧源型制御ではなく電流源型制御に依拠するAC誘導モータを制御するための新規の制御概念に関する。
【背景技術】
【0003】
何十年もの間、ACモータはすべての産業の役に立ち、ACモータは世界中で多くの産業適用例の主力であり続ける。直接AC電圧適用例など、多くの場合、これらのモータは、特有のモータ定格を満たす3相AC電圧源に直接接続される。可変速度適用例と特定の制御適用例の両方について、線間電圧を分解することが可能なDCリンク電圧をもつ3相電圧源インバータ(Voltage Source Inverter)(VSI)が、AC誘導モータを制御するために使用される。
【0004】
VSIは、電圧と周波数の両方を調整することによってAC誘導モータを制御する。これは、ボルト/ヘルツ(V/F)方式とフィールド指向制御方式とを用いる標準的な従来技術手法である。VSIを使用するモータ制御は、ライン又はモータ相インダクタンスを用いた増分積分ボルト秒に基づく、相ごとの極電圧の正弦波変調によって達成され、疑似正弦波モータ電流を生じる。
【0005】
この手法は、極めて長い歴史をもち、十分に確立されている。しかしながら、高いDCリンク電圧を与えることの複雑さ、及びインバータ・フェーズレグ(phase-leg)変調を実行することにおける複雑さは、多くの欠点をもつモータ制御解決策をもたらす。これらの欠点は、大きく、費用がかかるDCバス・キャパシタを必要とし、過剰な重量、電力損失及び高周波損失を有する大きいフォーム・ファクタ(form factor)、高い電磁干渉(electromagnetic interference)(EMI)損失及び電磁両立性(electromagnetic compatibility)(EMC)問題、モータ絶縁に関する高い応力、並びにベアリング電流を含む。
【0006】
本開示は、非同期ACモータ(すなわち誘導モータ)を制御するための特定の実施例について説明するが、当業者は、本明細書で与えられる解決策が、定格AC電圧に依拠する必要なしに、ACモータを制御するために直接結合された電流源を使用することによって、VSI制御及び電力段変調の上記の欠点をなくすという点において、解決策が同期ACモータと非同期ACモータの両方の制御に等しく適用可能であることを認識するであろう。したがって、本明細書で開示する教示は、多くのACモータ適用例に適用され得、特に、極めて低いEMIを要求する環境において動作することが必要とされる冷却ファン・モータに好適である。
【0007】
さらなる背景として、従来技術では、ACモータは、同期と非同期のどちらも、一般に、電圧源インバータ(VSI)の出力にパルス幅変調(PWM)技法を適用することによって制御されてきた。この従来技術手法は、しばしば、VSIの、整流器セクションとインバータ・セクションとの間に高いDCリンク電圧を必要とする。
【0008】
一例として、多くの航空宇宙適用例及び他の産業適用例の場合、ACモータは、VSIから正弦波出力電流を生成するためにPWMを使用するとき、AC発電機フィードなど、単相正弦波電圧と3相正弦波電圧の両方に、又はキャリア除去フィルタの出力に直接結合され得る。すべてのそのような場合において、ACモータは、一般に、各位相について必要とされる正弦波電流を発生させるために高いDCリンク電圧を受ける。
【0009】
3相若しくは多相非同期モータ(たとえば、誘導モータ)又は同期モータ(たとえば、永久磁石AC(PMAC)モータ)の動作中、固定子コイル内を流れる相ごとの正弦波電流は、位相が(たとえば、3相モータの場合は120°だけ)互いから分離され、回転磁界を発生させる。次に、この回転磁界又はAC磁束スイング(AC flux swing)が回転子巻線を通り抜け、回転子巻線中に電圧を誘導する。これらの誘導された電圧は、短絡した回転子巻線中を流れる電流により、誘導された電圧自体の磁界を発生させる。応答して、回転子磁界が、回転する固定子磁界に整合しようと試みる。同様に、PMモータの場合は、回転子磁石が、回転する固定子磁界に整合しようと試みる。
【0010】
両方の場合において、これらの相互作用により、回転子に回転を開始させるトルクが回転子上に発生する。非同期誘導モータの回転子がモータ・モードで付勢された(すなわち、トルクを生じている)ままであるために、モータの回転速度は固定子励起周波数の同期速度よりも常に小さい。これらの速度間の差は、モータ動作モードにおけるすべり周波数(slip frequency)として知られている。
【0011】
前述のように、広範囲の速度及び負荷動作条件にわたって非同期及び同期ACモータを駆動し、制御するために、一般に、パルス幅変調(PWM)ドライブ又は電力コントローラが使用される。VSIを採用する旧来の電力コントローラの場合、DC電源電圧は、インバータAC出力線間電圧がDC電源電圧よりも小さくなるような大きさにされなければならない。変調ストラテジは、それが空間ベクトルにせよ、第3高調波にせよ、正弦波でにせよ、最大DC電圧利用率を決定する。
【0012】
PWM制御型ドライブを用いると、相ごとのモータ電流12(
図1参照)は、モータと、ライン・インダクタンスと、正弦波変調サイクルの「オン時間」とに依存する。この電流は「積分ボルト秒(integral volt-second)」とも呼ばれる。正弦波変調の場合、「オン時間」は、以下の伝達関数、及び正弦関数と台形型ランプ・キャリア信号との間の比較関係の関数である。特に、高及び低パルス・オン時間又は極電圧持続時間は以下のように定義され得る。
【数1】
ここで、三角波形(キャリア)の周期はt
cであり、v
mは変調信号の大きさであり、
【数2】
はキャリア信号のピークの正の大きさであり、項m
aは変調指数である。モータが受ける増分電流は以下の関係によって与えられる。
【数3】
【0013】
そのような制御方式が効果的であるために、ACモータは、電圧の時間積分(ボルト秒)(
図1の参照番号12参照)が、ACモータ要件を満たすフルサイクル正弦波電流スイングを保証するように、一意の電圧で定格化される。この点について、すべてのACモータが電流制御型デバイスであることに留意すべきである。
【0014】
概して、従来技術の電圧源インバータはうまく機能するが、高いDCリンク電源電圧を必要とする。従来技術の電圧源インバータはまた、上述の欠点と、設計課題と、長期信頼性問題とを有する。これらの問題は、電力段スイッチング損失、及びモータ絶縁に関する高い応力、高い周波数損失、ベアリング電流、信頼性問題を生じる起こり得るシュートスルー(shoot-through)、EMI雑音、及びロング・ライン・モータ及びコントローラ・システムとともに機能するときの、出力正弦波フィルタを使用して極電圧スイングを除去する必要性を含む。
【0015】
さらに、非同期又は同期モータの、モータ・モード動作又は発電機モード動作中に、回転子の回転と、電機子の多相巻線中に注入される電流とにより、固定子及び/又は回転子の電機子(armature)中に回転逆EMF電圧が誘導される。
【0016】
0速度において、及び初期始動状態中に、ACモータは、この逆EMFの不在により、はるかにより高い相電流を引き出し、ACモータは、一時的に始動時の最大電源電圧を受ける。しかしながら、ACモータが回転し始めると、増加した逆EMFは、(モータと発電機の同時作動の効果により)モータが受ける電圧を低減し、それによってモータ相電流をそれの正常な定格値に低減する効果を有する。
【0017】
正常動作を継続し、逆EMFが一定の平均値を有する電気的平衡を確立するために、制御システムは、逆EMFの効果を克服するためにライン電位(line-potential)を引き下げなければならない。逆EMFの発生による電源電位劣化のこのプロセスは、正常動作を維持するために、電圧の形態で、電源からの多大なエネルギーの入力を必要とする。
【0018】
特に3相電圧源インバータ(VSI)トポロジを含む、従来技術のモータ・ドライブの最も大きい障害は、大きいDCリンク電圧が必要であることである。一般に、AC誘導モータは、正弦波電圧又は変調型スイッチ・ノード極電圧のいずれかを使用して電圧供給され、したがって、電流は正弦波変調ウィンドウにわたる積分ボルト秒のファクタである。これらの大きいDCリンク電圧を発生させることはそれ自体課題であり、特に、多くのモータが、一意のトルク要件のために必要とされる電流を発生させるために数百ボルト及びより高いDCリンク電圧を必要とするときにそうである。
【0019】
この点について、より高い電圧を使用すると伝送ケーブルが軽くなるであろうから、航空宇宙産業は、現在、より低い相電流を駆動するために、540VDC~805VDCの範囲内でより高い電圧を使用することを検討している。より高いDC電圧に向かうこの傾向は、モータ制御のための、相応して高いDCリンク電圧の使用をより一層難しくする。
【0020】
従来技術のVSIシステムの第2の課題は、インバータの極ノードが、2レベル変調方式の場合のように、接地から最大DCリンク電圧までスイングするか、又はマルチレベル構成の場合のように、低減された電圧レベルにおいてスイングする、スイッチ・ノード極電圧変調の使用にある。いずれにせよ、これにより、EMI及び電磁両立性(EMC)が主要な考慮事項である、変調制御の観点からの設計が複雑になる。100~300nsの立上り時間をもつ極めて大きい電圧スイングは、スイッチ・ノード変調、VSI内の固有インダクタンス、寄生容量性要素及びケーブル配線などによる、放射妨害波(radiated emission)の可能性とともに、ほぼ確実にコモン・モード雑音放出につながる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
電圧源インバータを使用する従来技術のモータ制御の上記の欠点を克服し、緩和するために、本開示は、VSI及びPWM変調手法をなくし、ACモータに電流制御を与えるために直接結合された電流源を使用する、同期と非同期の両方のACモータの制御に対する解決策を提示する。
【0022】
本開示の特徴及び利点は、添付図とともに行う、以下のより詳細な説明を参照すれば、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来技術において通常使用される、上側チャートに例示的な方形波極電圧変調波形10を説明的に示すとともに、下側チャートに得られた積分ボルト秒12(電流)を示す図である。
【
図2】本開示による、電流源型モータ制御技術のハイレベル・ブロック図を説明的に示す図である。
【
図3】本開示による、線形電流源として使用され得る例示的な電流増幅器のための回路を示す図である。
【
図4】本開示による、一実施例のより詳細なアーキテクチャ・ダイヤグラムを示す図である。
【
図5】本開示の一実施例に従って使用するための例示的な120度位相シフト・クロック論理を示す図である。
【
図6】本開示の実施例に従って使用するための例示的な電圧周波数コンバータを示す図である。
【
図7】本開示の実施例に従って使用するためのスイッチト・キャパシタ・フィルタを使用する可変周波数正弦波電圧生成回路のための例示的な回路実施例を示す図である。
【
図8】本開示の実施例に従って使用するための、アナログ乗算器を使用して可変振幅正弦波電圧を生成するための例示的な回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述のように、航空宇宙機器を設計する際の課題のうちの1つは、電磁干渉(EMI)を最小にすることである。電圧源インバータ(VSI)技術に基づく従来技術のモータ・コントローラは、正弦波変調方式を用いてDCリンク電圧を切り替えるためにパルス幅変調(PWM)技法を使用する。結果として、
図1中の参照番号12に示されているように、モータ・インダクタンスの積分ボルト秒(又はインライン正弦波フィルタ)が、リップル項をもつ疑似正弦波電流を発生させる。
【0025】
これは、実質的にすべての従来技術のVSIモータ・コントローラがそれによって動作する規格であるが、他の欠点の中でも、PWMが、EMIを低減するための技術的課題を生じる。これは、特に、RFシステムなど、高感度の機器がEMIに対する最も高い耐性を要求するときに当てはまる。これらの状況の下では、たとえば、冷却ファン・モータがEMIの主要な発生源になり得る。
【0026】
すべての場合において、多相モータは、回転磁界を発生させるために、それの巻線中に注入されるAC電流を必要とする。従来の動作の観点から、モータ電流は、AC電源電圧と逆EMF電圧との間の差をモータ・インピーダンスで割ったものである。上記で説明したように、通常の従来技術の方法によれば、AC電流は、固定されたAC電圧を使用することによって、又は高いDCリンク電圧を有する電圧源インバータからAC電圧を発生すること、及び正弦波電流を与えるためにPWM技法を使用することによって与えられる。モータ動作モードにおいて、電源電圧は常に逆EMF(BEMF)電圧よりも大きくなければならない。
【0027】
本開示によれば、高いDCリンク電圧のPWM切替えなしに、必要な正弦波電流が多相固定子巻線の各位相中に直接注入される、回路トポロジが説明される。
【0028】
これは、特に、電流が、巻線のインピーダンスを超克するような大きさにされる必要があるモータ始動において、電流をソースするために必要な十分な電圧を有する電流源を使用して達成され得る。そのような電流源トポロジは、高いDC電圧の必要なしに動作することが可能であり、それにより、たとえば、正弦波PWMは、相ごとの積分ボルト秒に、正弦波AC電流を発生させる。
【0029】
本開示によれば、電流源は特定のタイプに限定されない。たとえば、一実施例では、本開示による電流源は、当技術分野においてバック・コンバータとしても知られている、電流源型同期ダウン・コンバータであり得る。
【0030】
バック・コンバータは高効率の手法を提供するが、別の例として、たとえば
図3に示されているような線形電流増幅器を含む、多くの他の電流源トポロジが使用され得る。特定の電流源の選択は適用例のタイプとモータ電流要件とに依存し得る。
【0031】
本開示によれば、多相電流源の各位相は、多相モータの各位相に供給されるべきである電流の振幅と周波数の両方を表す、可変振幅及び可変周波数の正弦波電圧基準を与えられる。制御の目的で、本明細書でさらに説明するように、これらの位相のうちの1つはマスタ位相基準として指定される。
【0032】
図2は、3相ACモータを駆動するための、本明細書で開示する電流源制御トポロジのハイレベル・ブロック図を示す。それを参照すると、相ごとの電流基準の振幅と周波数の両方は電圧ランプ発生器20によって制御され、電圧ランプ発生器20の電圧は、0で始まり、それが最大値に達するまで、制御された傾きとともに上昇する。制御された傾きは、低レベルで始まり、次いで、3相ACモータが始動し、それの定格速度に近づくにつれて、増加し得る。当技術分野で知られているように、電圧ランプは、積分回路によって、デジタル・アナログ・コンバータ、又は他の手段によって発生され得る。ランプが達する最大電圧値は、(相ごとの)最大モータ電流、及び最大又は公称基本周波数に対応するように設計される。例として、これは400Hzにおいて10Aであり得る。
【0033】
図2にさらに示されているように、ランプ発生器20の電圧出力は、電圧周波数コンバータ(V2F)22に入力され、電圧周波数コンバータ(V2F)22はまた、それの周波数出力におけるジッタを低減するためにマスタ・クロック24の出力に同期される。マスタ・クロック24の出力はまた、緩衝増幅器23を介して電圧周波数コンバータ22の出力を受信する位相ロック・ループ(PLL)26に入力される。
【0034】
図2に示されているように、(それぞれ数字32、34、及び36によって参照される、ACモータを駆動する3つのAC電流源A、B、及びCのうちの1つから任意に選択される)マスタ電流源の出力において発現した、逆EMF(BEMF)28のゼロ交差の測度が、比較器50によって与えられ、またPLL26に入力される。したがって、PLL26は、それの位相がBEMFのゼロ交差にロックされる制御論理30に、周波数出力を与える。3つのAC電流源32、34、36から出力された電流の位相をモータのBEMFのゼロ交差に最終的にロックすることの目的は、出力電力ファクタを増加させることである。
【0035】
明快のために、相Aが任意にマスタ相として選択され得る。単一のBEMFマスタ相を使用すると、すべての3つの電流源基準は120度だけ位相変位するので、対応するマスタ相電流源を指定すれば、相ごとの電流がBEMFに正しく位相ロックされることが保証される。
【0036】
増分制御の見地から、モータBEMFは、位相インピーダンスにより印加電圧から位相シフトされる。マスタ相電流が、PLL制御を使用してマスタBEMFに対して漸進的に位相調整されるとき、これは、モータへの有効電力(real power)の伝達、すなわち力率が最大化されていることを暗示する。(無効電力(reactive power)は、位相インピーダンスから生じる非ゼロ力率角によるものである。)
【0037】
随意に、PLL26に印加されるBEMFの大きさを低減するために、逆EMF抑制ネットワーク52が、モータのBEMFの大部分を吸収するために多相巻線の各相にわたって追加され得る。
【0038】
図2をさらに参照すると、制御論理30は、位相ロック・ループ26及びV2F22からの入力を受信したことに応答して、3相ACモータのそれぞれの固定子巻線38を付勢するために、V2F22から出力された周波数に従ってそれぞれのAC電流源32、34、及び36を駆動する(それぞれ互いに対して120°度位相シフトされた)3つの正弦波電圧基準を生成する。図示のように、外部コモン・モード伝導放出の高インピーダンス除去を行うために、コモン・モード・フィルタ401がAC電流源の出力と固定子巻線38との間に設けられ、それによってコントローラを保護する。さらに図示のように、AC電流源32、34、36の出力にあるそれぞれの電流ループ40、42、43は、それぞれのバッファ44、45、及び46を介して制御論理30にフィードバック信号を与える。これらのフィードバック信号は、AC電流源32、34、36への入力における3つの正弦波電圧基準の周波数が正しいこと、及び3相電流の合計が0であることを確認するために、制御論理30によって使用され、それにより3相モータに対して均衡のとれた駆動が行われ、すべての3つの相が等しく駆動されることが保証される。
【0039】
図4に関して、及びモータがAC誘導モータ(ACIM)である例示的な実施例について、以下でさらに説明するように、多相巻線の各相内の電流はまた、そのようなフィードバック信号によって監視され、V/F制御下の従来のスカラー制御構造の場合のように、すべり制御目的で使用され得る。したがって、測定されたRMSモータ電流が、負荷トルクの増大により最大公称電流を超えて増大し始め、モータRPMがその後公称基本周波数未満に下がった場合、制御論理30は、すべり周波数を調整することによって不均衡を補正するために、AC誘導モータの技術分野で知られているように、すべり補償を行う。同じくACモータの技術分野で理解されているように、すべり制御は、同期ACモータを制御するときは必要とされないか、又は重要でない。
【0040】
特に、これらの状況の下で、すべり補償は、ACモータに供給される電流及び周波数の大きさが両方とも増加するように動作軌道を調整し、それによってモータRPMを漸進的に上げて最大公称範囲まで戻す。この時点で、多相巻線の各相についてのモータ電流は最終的に正常動作範囲内に入り、モータRPMは、電流励起周波数と、モータ極の数の関係を反映する。このすべり補償機構は、常に所定の位置にあり、負荷不確定性の条件下でモータすべりを維持する。
【0041】
図2の上記の説明から明らかであるように、制御論理30の1つの目的は、多相巻線のマスタ相巻線に印加される正弦波電流と、マスタ逆EMFとの間の位相整合を維持することである。これは、正弦波電流を制御するために使用される正弦波電圧基準の位相を逆EMFのゼロ交差に同期させるためにPLL26を使用することによって達成される。BEMF電圧に対する電流の位相整合はより高い力率を駆動する。この点について、このモータ・コントローラは、従来の用語では、印加電圧Vと周波数Fの両方の比が維持される、スカラー・コントローラとして動作することが述べられるべきである。
【0042】
このV/F比(たとえば、115VAC/400Hz=0.287)は、モータがソフト・スタートされ、それの基本動作周波数まで電圧ランプ制御されるので、一定のトルクを維持する。電流注入のプロセスは、PWMによってモータ・インダクタンスに適用される積分ボルト秒に基づかないので、電流は、通常のVSI駆動よりもはるかに短時間で大きさ及び周波数が調整され得るので、本明細書で開示するコントローラは、従来のコントローラよりもはるかに速い動的応答を呈する。これは、速い負荷変動を取り扱うときに増加した帯域幅を駆動する。
【0043】
モータ電流は、相ごとの正弦波電流として直接注入されるので、十分な周波数範囲にわたって、及び基本周波数まで一定のトルクを維持するために、V/Fについての関係を維持する必要がある。これは、電流は、相ごとの電流源の各々において振幅と周波数の両方が制御されなければならないことを暗示する。本明細書で開示するコントローラはまた、モータ電流の周波数を、基本周波数を超えて一定電力動作モード内で上げることによって、弱め界磁(field weakening)を実行することが可能である。
【0044】
制御論理30のさらなる詳細を示す、より詳細なアーキテクチャ概要が
図4に与えられており、以下でさらに説明するが、様々な実施例において、本明細書で開示する電流源型アーキテクチャは、個別の電子回路ブロック又は構成要素(すなわち、ソフトウェア又はファームウェアなし)によって、或いは代替的に、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサなどを使用してハードウェア複雑さを低減するためのソフトウェア又はファームウェアを含めることによって実装され得ることが理解される。
【0045】
図4を参照すると、
図2で使用されているものと同じ参照番号が、同様の構成要素を指定するために
図4において再利用されている。さらに、説明しやすいように、V2Fコンバータ22及びPLL26は、
図2の制御論理30に対応する、
図4において30と標示されたブロック内にあることが概略的に示されている。この制御論理ブロック30の重要な構成要素及び機能について、
図4においてさらに詳述し、以下で説明する。
【0046】
A.同期位相シフト正弦波電圧生成
電流源制御の観点から、電流コントローラは、可変振幅と可変周波数の両方を与えることができる3つの正弦波電圧基準を必要とする。3相ACモータの場合、これらの電圧基準の互いに対する位相変位は120度でなければならない。
図4の実施例では、これらの3つの位相シフトされた電圧基準は3相クロック(CLK)論理ブロック60において位相遅延クロック発生器によって生成され、位相遅延クロック発生器は、例示的な実施例では、
図5に示された回路を使用し得る。
【0047】
図5を参照すると、この回路は、電圧周波数コンバータ22(
図4参照)から出力された周波数を受信し、その周波数は、バイナリ・カウンタ54の出力において、ACモータの最大励起周波数の6倍である周波数を与えるために比(n)で分割され得る。例として、400Hzモータの場合、これは2400Hzになるであろう。同期クロック及びカスケードQ-Dリップル・スルー入力を使用する3つのDフリップ・フロップ55、56、57を組み込むことによって、
図5の回路は、この周波数を6でさらに分割することが可能であり、それによって、バッファ58、59、及び61のそれぞれの出力において400Hzの最大周波数で3つの120度位相シフトされたクロックを与える。
図4に示されているように、3相CLK論理ブロック60からのこれらの出力は、必要とされる正弦波波形を生成するそれぞれのスイッチト・キャパシタ・フィルタ62、64、及び66に加えられる。
【0048】
この点について、それの可変周波数出力が3相CLK論理ブロック60の入力に加えられる電圧周波数コンバータV2F22は、ジッタを最小にするために同期クロックを組み込み得る。例示的な電圧周波数コンバータのために使用され得る回路が
図6に示されている。要するに、
図6に示されているように、周波数変換のために使用される電圧ランプ入力601は、振幅リミット600を使用して制約される。このことは、V2Fの出力周波数がモータの上側周波数(たとえば400Hz)に制限されることを保証する。ランプは、次いで2極アクティブ・ローパス・フィルタ602、たとえば0.577のQ値をもつベッセル・フィルタ(Bessel filter)を使用して帯域制限される。入力フィルタ処理は、同期クロック604とともに、V2F22にジッタのない出力周波数を与える。
【0049】
再び
図4のブロック図を参照すると、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)への(0(0x00)~8ビット(0xFF)までの)8ビット・バイナリ・カウントの適用は、V2F22を駆動するためにブロック20から電圧ランプ出力を発生するために使用され得る。ブロック20からのランプ電圧出力は、2つの異なるランプ・レートを与えるために
図4の下流回路によって使用される。
【0050】
特に、
図4に示されているように、第1のランプが、電圧周波数コンバータ22を制御するために直接印加され、得られた周波数は、3相CLK論理60によって生成される電流源電圧基準の出力周波数と、最終的にSCフィルタ62、64、及び66のそれぞれの出力における周波数とを制御するために使用される。
【0051】
次に、異なるランプ・レートを有する第2のランプが、第1のランプから導出され、SCフィルタ62、64、66からの電流源電圧基準出力の振幅を制御するために使用される。そのような振幅制御は、SCフィルタ62、64、66からの出力を受信し、3相正弦波電圧基準の振幅制御を行う、
図8に示されているような電圧増倍器(voltage multiplier)回路を使用することによって達成され得る。これは、正弦波電圧基準の利得を直線的に増加させるために、それぞれの電圧増倍器800、802、804を使用してSCフィルタ62、64、66の出力に第2のランプを乗算することによって達成される。明らかなように、2つのランプは、相応してスケーリングされ、それらの特定の回路機能を実行するために異なる傾きを有する。
【0052】
図4に戻ると、多相巻線の各々に給電するAC電流源32、34、及び36のそれぞれの入力に印加される正弦波電流源電圧基準の生成は、以下のように達成され得る。電圧周波数(V2F)コンバータ22が、可変周波数の、位相シフトされた、相ごとの方形波クロック信号を与え、相ごとの方形波クロック信号は、より高い周波数のクロックに同期しており、3相CLK論理60からそれぞれ出力される。
【0053】
図4に、及び
図7のより詳細な回路に示されているように、一実施例では、これらの3つの相ごとの方形波信号は、その後、可変コーナー周波数を有するそれぞれの10次楕円スイッチト・キャパシタ・フィルタ(10
th order elliptical switched capacitor filter)(SCフィルタ62、64、66)に加えられる。(3相CLK論理60からの基本正弦波周波数出力に対するコーナー周波数の比は96に設定され得る)。クロック周波数フィードスルーをなくすために、SCフィルタ62、64、66の出力はローパス・アナログSINC補正フィルタ702、704、706に渡される。これらのSINC補正ローパス・フィルタは、方形波SCフィルタ・クロックにおける高調波を、それらが無視され得るレベルまで減衰させ、それによってSINC補正ローパス・フィルタのそれぞれの出力において位相シフトされた正弦波波形を生成する。この減衰は一般にクロック周波数で-60dBである。400Hzモータ周波数の場合、これは、明快のために38.4kHzのクロック周波数になるであろう。基本周波数クロックとコーナー周波数クロックの両方は同期しており、ランプ基準に応じて変化するので、SINC補正LPフィルタ702、704、及び706は、ACモータを駆動するために周波数が(たとえば、0Hz~400Hz基本波まで)可変であるトラッキング正弦波出力を生成する。これは、SCフィルタは周波数の範囲を追跡するので、SCフィルタへの入力周波数もフィルタのコーナー周波数と同じであることによる。3相CLK論理60からの方形波は、SCフィルタ62、64及び66に提示され、次いでSINC補正LPフィルタ702、704、及び706に提示されるので、より高次の高調波は減衰され、それぞれのフィルタ702、704、及び706から出力されるべき適切に位相シフトされた正弦波基本波のみが残る。
【0054】
B.入力電圧監視及び検証
本開示によれば、制御論理30の別の機能は、相ごとのAC電流源の各々に電力を供給するDC電圧を監視し、検証することである。これらの電圧が所定の限界から外れると、モニタは、モータ動作を抑制するか、又はモータが動作している場合、パワー・ダウン・ソフト停止プロセスを開始する。この機能は、入力デグリッチ・フィルタ(deglitch filter)をもつAC電流源に電力を供給するために使用されるDC入力電圧を監視する比較器によって実装され得る。
【0055】
C.相ごとの同期電流源型コンバータ
前に説明したように、相ごとの電流源の各々は、たとえば、線形レギュレータとして、又は同期電流源型ダウン・コンバータ(すなわち、バック・コンバータ)若しくは同等のAC電流源として構成され得る。3相冷却ファンなど、AC誘導モータ適用例の場合、比較的低い相電流、及び回路機能の単純さにより、線形電流源が使用され得る。電流源型ダウン・コンバータは制御目的でパルス幅変調を使用するので、より高い電流の動作を必要とするモータの場合、電流源型ダウン・コンバータは一般に線形レギュレータよりも効率的であろう。
【0056】
本開示によれば、すべての場合における制御目標は、固定子巻線の各々に相ごとの正弦波電流を与えることである。電流コンバータはまた、フル・レートの正弦波相電流をソースすることが可能でなければならず、これはトルク(電流)及び周波数の制御目標に基づく。本開示では、線形電流源並びに電流源型ダウン・コンバータ(バック・コンバータ)を使用する例示的な実施例について説明するが、他の回路トポロジに基づく好適な特性を有するAC電流源が、本明細書で開示する同期電流源として代替的に使用され得、本開示の範囲によって包含されるものである。
【0057】
D.相電流フィードバック
図4に示されているように、変流器(たとえば、電流ループ40、42、及び43)が相ごとの同期電流源レギュレータの各々の出力に接続される。これらは、電流帰還制御目的のための相電流の電圧アナログを発生するために使用される。正弦波電流源型ドライブであるので、電流のライン周波数は一般に数百ヘルツである。したがって、スカラーV/F制御を用いれば、電流の瞬時検出及び補正は必要でなく、RMS検出方法で十分である。
【0058】
E.相電流RMS検証及びすべり補償
相ごとの正弦波電流の各々は、固定子の相ごとの電流が命令された電流を満たすように、閉ループ制御構造内で使用される。電流ループ40、42、43によって監視される、3つの相電流のうち最も高い相電流はSUM/High Winsブロック68においてRMS項に変換される。すべり制御ブロック70は、モータ引きずり(drag)、又は負荷トルクが通常よりも高い(その結果、モータRPMが通常動作よりも低くなる)他の状況を検出するために、3つのRMS電流のうち最も高いRMS電流を使用する。モータRPMは、モータ内の誘導ピックアップを使用することによって、又は逆EMF電圧を測定することによって検出され得る。この状況において、スリップ制御ブロック70は、乗算器74、76及び78を介してAC電流源の入力に、及びV2F22にフィードバックされる信号を与える。このフィードバックは、相ごとの電流源に、励起周波数及び出力電流において小さい増加を行わせて、増加した負荷トルクを補償し、モータを通常の動作状態に引き戻す。
【0059】
特に、励起周波数が増大するにつれて、モータRPMも漸進的に増加し、電気周波数と回転子RPMとの間のすべり項は、2~3%の公称すべりが適切であり、モータ電流がもう一度正常な限界内にあるレベルまで低減する。モータへの高い負荷の影響がなくなると、モータが正しい基本周波数で、及び正常なRPM限界内で動作するように、すべり補償器は、相ごとの固定子巻線の各々に加えられる電気的周波数を漸進的に低減する。すべり制御のこのモードは、低帯域幅補償器であり、RPMに急激な過渡変化をもたらさないような形で動作する。すべり制御調整は、限界ブロック72によって課される周波数と電流の両方に課される最大限界を用いて実行される。
【0060】
制御論理30はまた、相電流不均衡を補償し、各相が等しく駆動されていることを保証するために、各相の測定されたAC電流を使用する。これは、SUM/High Winsブロック68内ですべての3相の合計を取ることによって達成される。ウィンドウ比較器によって検出され得る、0に近い合計は均衡電流駆動を示している。これは、すべての3つの相の合計は0に等しくなるべきであることを暗示する。
【0061】
F.モータ・タコメータ・フィードバック
モータRPMは、逆EMF電圧を追跡することによって、又はホール・センサをタコメータとして使用することによって決定され得る。この情報は、集中型コントローラに情報を与えるために使用され、したがって、すべり補償器は、モータ印加電気的周波数と実際のモータRPMとに基づいて電流と周波数の両方において補償の正しい軌道をスケーリングすることが可能である。
【0062】
G.最適電力ファクタのためのPLLを使用するモータ位置同期
モータBEMFは、力率が制御論理30によって最適化され得るように、ソースされた電流と位相整合される(すなわち、同相である)ことを保証することが重要である。これは、相ごとのBEMFに対する電流源の同期制御によって、及びモータBEMFを相電流に漸進的に位相整合させるために位相ロック・ループ26を使用して達成される。
【0063】
H.可変周波数、可変電圧正弦波電流コマンド
制御論理30は、振幅可変及び周波数可変である、電流コマンドの電圧アナログを生成する。AC電流源の各々への電流コマンドはV2F22及び正弦波電圧調整方式の出力である。これはまた、必要に応じてモータへの電流を調整するすべりコントローラによって増加する。すべての相ごとの3つのコマンドは120度だけ位相シフトされる。これは、高い慣性負荷を始動することを検討するとき、及び負荷トルクの速い変化に反応する際に重要である。
【0064】
I.位相ロック・ループ(PLL)
本明細書で説明するように、位相ロック・ループ26は、BEMFをマスタ電流制御基準の位相と位相ロックするために使用される。これは、相ごとのモータ電流周波数がBEMFに整合されることを保証する。相ごとの電流基準(正弦波電圧)の各々は同時に位相シフトされるので、PLLをロックするために専用位相を使用することは、すべての相が、印加された相電流に対するそれら自体のBEMFに関して整合されることを保証する。
【0065】
本明細書で開示するように、電流源型コントローラ・トポロジはACモータの電圧周波数制御、すべり制御、及びトルク制御を実行する。そのようなコントローラの特定の実装は、デジタル信号プロセッサ(DSP)を組み込むことによってか、又は個別のアナログ及び/又はデジタル解決策を使用して実装することによって達成され得る。
【0066】
以下の著しい利点は、旧来の従来技術VSIトポロジと比較して、本明細書で開示する新規の電流源型コントローラ・アーキテクチャを使用することによって得られ得る。
【0067】
重要なことには、本明細書で開示する電流源型手法は、VSI、及びVSIに高いリンク電圧を与えるために必要とされる高電圧DCバスの削減をもたらす。したがって、電流源ごとのDCリンク電圧は、十分なトルク対周波数のために必要とされる最大電流に耐えられる(すなわち、ソースする)ようにサイズ決定されるだけでよい。
【0068】
VSIの削減により、極電圧のパルス幅変調を採用する必要がない。これは、正弦波出力フィルタのために必要な複雑なPWM制御論理を削減する。
【0069】
本明細書で開示する電流源型制御は、電流を制御することに集中しているので、電流及び周波数の速い変化を駆動することが可能であり、これは、負荷不確定性を管理し、トルクを増加させるために使用され得る。
【0070】
本明細書で開示するトポロジは電流源型モータ・ドライブに基づくので、モータとコントローラとの間にかなりのワイヤ長さがある、いわゆる「ロング・ライン」モータ及びコントローラ適用例のために優れた設計をもたらす。特に、電流源コントローラは、ロング・ライン対応であり、電圧のスイッチ・ノード変調を使用する標準VSIトポロジで起こるEMI問題なしに使用され得る。
【0071】
別の利点は、このタイプのコントローラは、単相セクションと、低減された複雑さを有するコントローラとを使用することによって、単相ACモータを制御するためにも使用され得ることである。
【0072】
この電流源制御方式のための多数の適用例は、限定はしないが、ほんのいくつかの適用例を挙げれば、たとえば、同期と非同期の両方の3相モータの制御、単相ACモータの制御、AC誘導モータを使用するポンプ・コントローラ、ロング・ラインACモータ適用例、PMACモータの制御、並びに3相ACファン及びブロワを含む。
【0073】
さらに、開示された電流源型トポロジを用いて達成され得る効率利得は、特に、SiC技術を組み込んだ最適に設計された同期制御されるダウン・コンバータが使用されるときに、著しいものとなる可能性がある。
【0074】
上記の利点に加えて、このトポロジについての戦略的利得は、市場投入がより速い設計及び実装、低減されたフォーム・ファクタ及び重量、低減されたシステム複雑さ、並びに低減された経常外(non-recurring)コストを含む。
【0075】
手短に言うと、上記の開示では、電流源型制御トポロジを使用する3相モータのための制御の実施例について説明した。そのような電流源型トポロジは、極電圧変調に依拠し、EMCクワイエットであり、ロング・ライン対応であり、従来技術よりも改善された効率を有する制御を与える、スタンド従来技術VSI回路トポロジに起因する問題をなくす。
【0076】
本開示の例示的な実施例を図示し、詳細に説明したが、それに対する様々な改変及び改善は当業者に容易に明らかになり、それらのすべては以下の特許請求の範囲によって包含されるものとする。