IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイブイエックス コーポレイションの特許一覧

特許7558171リターン信号を低減する突起部を備える多層フィルタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】リターン信号を低減する突起部を備える多層フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H03H7/01 A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021535577
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 US2019067110
(87)【国際公開番号】W WO2020132025
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】62/782,482
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,クワン
(72)【発明者】
【氏名】ベロリーニ,マリアンヌ
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】千葉 輝久
【審判官】寺谷 大亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-175803(JP,A)
【文献】特開平3-209905(JP,A)
【文献】特開昭62-271502(JP,A)
【文献】特表2007-523574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B9/12-9/14
H03H7/00-7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層フィルタであって、
第1の方向および第2の方向の各々に垂直なZ方向において積層された複数の誘電体層であって、前記第1の方向は前記第2の方向に垂直である、複数の誘電体層と、
入力および出力を有する信号経路であって、前記信号経路は、前記複数の誘電体層のうちの1つの上に重なる導電層を含み、前記信号経路の前記導電層は、前記第1の方向に細長く、前記信号経路の前記導電層は、前記第1の方向にそれぞれ平行な第1の縁部と、第2の縁部とを有し、前記第2の縁部は前記第1の縁部と位置合わせされており、前記信号経路の前記導電層は、前記第2の方向に延び、前記第1の方向において前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に位置する、突起部を備え、前記突起部は、前記第1の縁部と平行であり、前記第2の方向において、前記第1の縁部から、約50マイクロメートル(50ミクロン)よりも大きい突起部長さだけオフセットされた、端縁部を有し、前記突起部は、前記第2の方向と平行であり、前記端縁部と前記第1の縁部との間に延びる第1の側縁部を有し、前記突起部は、前記第2の方向と平行であり、前記端縁部と前記第2の縁部との間に延びる第2の側縁部を有する、信号経路と、
前記信号経路の前記導電層と同一平面上の第1のインダクタであって、前記第2の方向に沿って前記突起部の前記第2の側縁部と位置合わせされた第1のインダクタ縁部を備える、第1のインダクタと、
第1のロケーションにおいて前記信号経路と電気的に接続され、第2のロケーションにおいて前記信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続された導電層を備える第2のインダクタと、
を備える、多層フィルタ。
【請求項2】
前記第2の方向における前記第2の縁部と前記第1の縁部との間の距離は約200マイクロメートル(200ミクロン)未満である、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項3】
前記信号経路の前記導電層は、前記信号経路の前記入力と前記導電層との間に垂直方向の電気接続部を含み、前記第1の方向における、前記垂直方向の電気接続部と、前記突起部の前記第1の側縁部との間の距離は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満である、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項4】
前記垂直方向の電気接続部はビアを含む、請求項3に記載の多層フィルタ。
【請求項5】
前記第2の側縁部は、約50マイクロメートル(50ミクロン)よりも大きい突起部幅だけ前記第1の側縁部から離間される、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項6】
前記信号経路の前記導電層には、前記突起部における電気接続部がない、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項7】
前記突起部の長さ対幅比は、約0.2~約2の範囲をとる、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項8】
前記導電層は、前記第1の方向に位置合わせされ、前記導電層の前記第1の縁部から前記第2の方向に間隔をあけて配置された第3の縁部を含み、前記導電層は、前記導電層の前記第1の縁部と前記導電層の第3の縁部との間で前記第2の方向に第1の幅を有し、前記導電層は、前記突起部の前記端縁部と前記導電層の前記第3の縁部の間で前記第2の方向に第2の幅を有しており、前記導電層の第2の幅対第1の幅の比は、約1.05~約3の範囲をとる、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項9】
前記突起部は、前記Z方向において、少なくとも約30マイクロメートル(30ミクロン)だけ他の導電層から離間される、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項10】
前記第1のロケーションにおいて前記第2のインダクタを前記信号経路と電気的に接続するビアを更に備える、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項11】
前記多層フィルタは、パスバンド周波数範囲を有し、パスバンド周波数範囲内の周波数において-20dB未満のリターン損失を呈する、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項12】
前記パスバンド周波数範囲は、約6GHzよりも高い下限を有する、請求項11に記載の多層フィルタ。
【請求項13】
前記多層フィルタは、約6GHzよりも大きい特性周波数を有する、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項14】
前記特性周波数は、ローパス周波数、ハイパス周波数、またはバンドパス周波数の上限のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の多層フィルタ。
【請求項15】
25℃の動作温度および1MHzの周波数において、ASTM D2149-13に従って決定される約100未満の誘電率を有する誘電材料を更に含む、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項16】
25℃の動作温度および1MHzの周波数において、ASTM D2149-13に従って決定される約100よりも大きい誘電率を有する誘電材料を更に含む、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項17】
エポキシを含む誘電材料を更に含む、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項18】
有機誘電材料を更に含む、請求項1に記載の多層フィルタ。
【請求項19】
前記有機誘電材料は、液晶ポリマーまたはポリフェニルエーテルのうちの少なくとも一方を含む、請求項18に記載の多層フィルタ。
【請求項20】
多層フィルタを形成する方法であって、
第1の誘電体層の上に重なる導電層を備える信号経路を形成するステップであって、前記信号経路の前記導電層は、第1の方向に細長く、前記信号経路の前記導電層は、前記第1の方向にそれぞれ平行な第1の縁部と、第2の縁部とを有し、前記第2の縁部は前記第1の縁部と位置合わせされており、前記信号経路の前記導電層は、第2の方向に延び、前記第1の方向において前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に位置する、突起部を備え、前記突起部は、前記第1の縁部と平行であり、前記第2の方向において、前記第1の縁部から、約50マイクロメートル(50ミクロン)よりも大きい突起部長さだけオフセットされた、端縁部を有し、前記突起部は、前記第2の方向と平行であり、前記端縁部と前記第1の縁部との間に延びる第1の側縁部を有し、前記突起部は、前記第2の方向と平行であり、前記端縁部と前記第2の縁部との間に延びる第2の側縁部を有する、ステップと、
前記信号経路の前記導電層と同一平面上の第1のインダクタであって、前記第2の方向に沿って前記突起部の前記第2の側縁部と位置合わせされた第1のインダクタ縁部を備える、第1のインダクタを形成するステップと、
第2の誘電体層の上に重なる導電層を備える第2のインダクタを形成するステップと、
前記第2のインダクタが、第1のロケーションにおいて前記信号経路と電気的に接続され、第2のロケーションにおいて前記信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続されるように、前記第1および第2の誘電体層を積層するステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記第1の誘電体層に、前記信号経路の入力と前記導電層との間に垂直方向の電気接続部の少なくとも一部を形成するビアを形成するステップを更に含み、前記第1の方向における、前記垂直方向の電気接続部と、前記突起部の第1の側縁部との間の距離は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満であり、前記第1の側縁部は前記第2の方向と平行であり、前記端縁部と前記第1の縁部との間に延びる、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される、2018年12月20日の出願日を有する米国仮特許出願第62/782,482号の出願日の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
電気フィルタは、多くの機能を実行し、多岐にわたる電気デバイスにおいて用いられる。例えば、高周波数無線信号通信等の高周波数信号のフィルタリングが近年ますます一般的になっている。無線接続性のためのデータ送信速度の増大に対する需要により、5Gスペクトル周波数を含む高周波数で動作するように構成されたものを含む高周波数コンポーネントに対する需要が駆り立てられた。現行の高周波数フィルタは、導波路またはキャビティの設計を用いる。しかしながら、そのような設計の性能特性は、調整またはカスタマイズするのが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
リターン損失は、フィルタの入力において反射される電気信号の一部分を示す。したがって、パスバンド周波数において(例えば高周波数において)低いリターン損失を呈する多層フィルタが当分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の1つの実施形態によれば、多層フィルタが、第1の方向および第2の方向の各々に垂直であり得るZ方向において積層された複数の誘電体層を備えることができる。第1の方向は第2の方向に垂直にすることができる。多層フィルタは、入力および出力を有する信号経路を含むことができる。信号経路は、複数の誘電体層のうちの少なくとも1つの上に重なる導電層を含むことができる。信号経路の導電層は、第1の方向に細長くすることができる。信号経路の導電層は、第1の方向と位置合わせされた第1の縁部と、第1の縁部と平行な第2の縁部とを有することができる。信号経路の導電層は、第2の方向に延び、第1の方向において第1の縁部と第2の縁部との間に位置する、突起部(protrusion)を備えることができる。突起部は、第1の縁部と平行であり、第2の方向において、第1の縁部から、約50マイクロメートル(50ミクロン)よりも大きい突起部長さだけオフセットされた、端縁部(end edge)を有することができる。多層フィルタは、第1のロケーションにおいて信号経路と電気的に接続され、第2のロケーションにおいて信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続された導電層を備えるインダクタを備えることができる。
【0005】
本開示の別の実施形態によれば、多層フィルタを形成する方法が、第1の誘電体層の上に重なる導電層を備える信号経路を形成することを含むことができる。信号経路の導電層は、第1の方向に細長くすることができる。信号経路の導電層は、第1の方向と位置合わせされた第1の縁部と、第1の縁部と平行な第2の縁部とを有することができる。信号経路の導電層は、第2の方向に延び、第1の方向において第1の縁部と第2の縁部との間に位置する、突起部を備えることができる。突起部は、第1の縁部と平行であり、第2の方向において、第1の縁部から、約50マイクロメートル(50ミクロン)よりも大きい突起部長さだけオフセットされた、端縁部を有することができる。方法は、第2の誘電体層の上に重なる導電層を備えるインダクタを形成することを含むことができる。方法は、インダクタが、第1のロケーションにおいて信号経路と電気的に接続され、第2のロケーションにおいて信号経路またはグラウンドのうちの少なくとも一方と電気的に接続されるように、第1および第2の誘電体層を積層することを含むことができる。
【0006】
当業者に対する、本開示の十分で実施可能な開示は、その最良の実施態様を含めて、添付の図面を参照しながら本明細書の残りの部分において、より詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の態様によるバンドパスフィルタの簡単な概略図である。
図2】本開示の態様による別のバンドパスフィルタの簡単な概略図である。
図3A】本開示の態様による例示的なバンドパスフィルタの斜視図である。
図3B】本開示の態様による例示的なバンドパスフィルタの斜視図である。
図3C図3Aおよび図3Bのフィルタの側面図である。
図4A】フィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図4B】フィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図4C】フィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図4D】フィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図4E】フィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図5図8A図9Dの多層フィルタの信号経路および/または図10A図11Dの多層フィルタの信号経路と対応することができる信号経路の導電層の平面図である。
図6A】本開示の態様による多層フィルタの別の実施形態の斜視図である。
図6B】本開示の態様による多層フィルタの別の実施形態の斜視図である。
図6C図6Aおよび図6Bのフィルタの側面図である。
図7A】図Aおよび図Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図7B図8Aおよび図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図7C図8Aおよび図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図7D図8Aおよび図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図8A】本開示の態様による多層フィルタの別の実施形態の斜視図である。
図8B図8Aのフィルタの側面図である。
図9A図8Aおよび図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図9B図8Aおよび図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図9C図8Aおよび図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図9D図8Aおよび図8Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図10A】本開示の態様による多層フィルタの別の実施形態の斜視図である。
図10B図10Aのフィルタの側面図である。
図11A図10Aおよび図10Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図11B図10Aおよび図10Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図11C図10Aおよび図10Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図11D図10Aおよび図10Bのフィルタの一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。
図12】本開示の態様による、構築されたフィルタの測定された挿入損失およびリターン損失の値を含む試験データのプロットである。
図13】本開示の態様による、構築されたフィルタの測定された挿入損失およびリターン損失の値を含む試験データのプロットである。
図14】本開示の態様による、構築されたフィルタの測定された挿入損失およびリターン損失の値を含む試験データのプロットである。
図15】本開示の態様による、フィルタのコンピュータ分析からの挿入損失およびリターン損失の値を含むシミュレーションデータのプロットである。
図16A】本開示の態様による突起部を備えるフィルタ、および突起部を備えないフィルタのコンピュータ分析からのシミュレーションデータのプロットである。
図16B】本開示の態様による突起部を備えるフィルタ、および突起部を備えないフィルタのコンピュータ分析からのリターン損失のプロットの拡大部分である。
図17A】本開示の態様による突起部を備えるフィルタ、および突起部を備えないフィルタのコンピュータ分析からのシミュレーションデータのプロットである。
図17B】本開示の態様による突起部を備えるフィルタ、および突起部を備えないフィルタのコンピュータ分析からのリターン損失のプロットの拡大部分である。
図18】本開示の態様による、フィルタを含む試験アセンブリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書および図面における参照符号の繰り返しの使用は、本開示の同じまたは類似の特徴または要素を表すことが意図される。
本考察は例示的な実施形態の説明にすぎず、本開示のより広い態様を限定することは意図されていないことが当業者には理解されるべきであり、このより広い態様は例示的な構造において具体化される。
【0009】
概して言えば、本開示は、多層フィルタのパスバンド内の周波数において多層フィルタのリターン信号を低減することができる突起部を備える多層フィルタを対象とする。多層フィルタは、第1の方向(例えばY方向)および第2の方向(例えばX方向)の各々に垂直なZ方向において積層された複数の誘電体層を備えることができる。第1の方向は、第2の方向に垂直にすることができる。信号経路は、複数の誘電体層のうちの1つの上に重なる導電層を含むことができる。信号経路の導電層は、第1の方向に細長くすることができ、第2の方向に延びる突起部を備えることができる。突起部は、第2の方向において、約50マイクロメートル(50ミクロン)よりも大きい長さを有することができる。
【0010】
突起部は、パスバンド周波数範囲内の多層フィルタのリターン損失を低減することができる。例えば、多層フィルタは、パスバンド周波数範囲内で、-20dB未満の周波数においてリターン損失を呈することができる。同様に、いくつかの実施形態では、多層フィルタは、ローパスフィルタとして構成することができ、カットオフ周波数未満の周波数において-20dB未満のリターン損失を呈することができる。いくつかの実施形態では、多層フィルタは、ハイパスフィルタとして構成することができ、カットオフ周波数を超える周波数において、-20dB未満のリターン損失を呈することができる。
【0011】
多層フィルタは1つまたは複数の誘電材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の誘電材料は低い誘電率を有することができる。誘電率は、約100未満、いくつかの実施形態では約75未満、いくつかの実施形態では約50未満、いくつかの実施形態では約25未満、いくつかの実施形態では約15未満、およびいくつかの実施形態では約5未満とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、誘電率は、約1.5~100、いくつかの実施形態では約1.5~約75、およびいくつかの実施形態では約2~約8の範囲をとることができる。誘電率は、25℃の動作温度および1MHzの周波数においてIPC TM-650 2.5.5.3に従って決定することができる。誘電正接は、約0.001~約0.04、いくつかの実施形態では約0.0015~約0.0025の範囲をとることができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の誘電材料は、有機誘電材料を含むことができる。例示的な有機誘電体は、PolycladのLD621およびPark/Nelco CorporationのN6000シリーズ等のポリフェニルエーテル(PPE)をベースとする材料、Rogers CorporationまたはW.L.Gore&Associates,Inc.の液晶ポリマー(LCP)等のLCP、Rogers Corporation.の4000シリーズ等の炭化水素複合体、ならびにPark/Nelco Corp.のN4000シリーズ等のエポキシ系積層体を含む。例えば、例は、エポキシ系N4000-13、LCPに積層された臭素を用いない材料、高K材料を有する有機層、未充填高K有機層、Rogers4350、Rogers4003材料、ならびに、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、およびグラフト樹脂等の他の熱可塑性材料、または類似の低誘電率で低損失の有機材料を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、誘電材料は、セラミック充填エポキシとすることができる。例えば、誘電材料は、ポリマー(例えば、エポキシ)等の有機化合物を含むことができ、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化亜鉛、低火度ガラス付きのアルミナ、または他の適当なセラミックもしくはガラス接着材料等のセラミック誘電材料の粒子を含有することができる。
【0014】
しかしながら、N6000、エポキシ系N4000-13、LCPに積層された臭素を用いない材料、高K材料を有する有機層、未充填高K有機層、(Rogers Corporationの)Rogers4350、Rogers4003材料、ならびに、炭化水素、テフロン、FR4、エポキシ、ポリアミド、ポリイミド、およびアクリレート、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、BT樹脂化合物(例えば、Speedboard C)、熱硬化性樹脂(例えば、Hitachi MCL-LX-67F)、およびグラフト樹脂等の他の熱可撓性材料、または類似の低誘電率で低損失の有機材料を含む他の材料が利用されてもよい。
【0015】
加えて、いくつかの実施形態では、限定ではないが、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化亜鉛、低火度ガラス付きのアルミナ等の、セラミック、半導体もしくは絶縁材料、または他の適切なセラミックまたはガラス接着材料を含む非有機誘電材料を用いることができる。代替的に、誘電材料は、回路基板材料して一般的なエポキシ(セラミック混合有りまたはなし、グラスファイバー有りまたはなし)等の有機化合物、または誘電体として普及している他のプラスチック等の有機化合物であってもよい。これらの場合、導体は、通例、パターンを提供するように化学的にエッチングされた銅箔である。また更なる実施形態において、誘電材料は、NPO(COG)、X7R、X5R X7S、Z5U、Y5Vおよびチタン酸ストロンチウムのうちの1つ等の比較的高誘電率(K)を有する材料を含むことができる。そのような例において、誘電材料は、100を超える、例えば、約100~約4000の範囲内の、いくつかの実施形態では、約1000~約3000の範囲内の誘電率を有することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、多層フィルタは、入力および出力を有する信号経路を含むことができる。信号経路は、誘電体層のうちの1つまたは複数の上に重なる1つまたは複数の導電層を含むことができる。導電層は、多岐にわたる導電性材料を含むことができる。例えば、導電層は、銅、ニッケル、金、銀、または他の金属もしくは合金を含むことができる。導電層は、それぞれの誘電体層の上に直接形成することができる。代替的に、1つまたは複数の中間層またはコーティングは、導電層と、それぞれの誘電体層との間に配置することができる。本明細書において用いられるとき、「上に形成される」とは、誘電体層上に直接形成された導電層、または間に中間層もしくはコーティングを有して誘電体層の上に重なる導電層を指すことができる。
【0017】
導電層は、多岐にわたる適切な技法を用いて形成することができる。サブトラクティブ、セミアディティブ、またはフルアディティブプロセスを、導電性材料のパネルまたはパターン電気めっきと共に用い、その後プリントおよびエッチングステップを行って、パターニングされた導電層を定義することができる。フォトリソグラフィ、めっき(例えば、電解めっき)、スパッタリング、真空蒸着、プリント、または他の技法を用いて、導電層を形成することができる。例えば、導電性材料の薄い層(例えば、箔)を、誘電体層の表面に接着(例えば、積層)することができる。導電性材料の薄い層を、マスクおよびフォトリソグラフィを用いて選択的にエッチングして、誘電材料の表面上の導電性材料の所望のパターンを生成することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、多層フィルタは、誘電体層のうちの1つまたは複数に形成された1つまたは複数のビアを含むことができる。例えば、ビアは、1つの誘電体層上の導電層を、別の誘電体層上の導電層に電気的に接続することができる。ビアは、銅、ニッケル、金、銀、または他の金属もしくは合金等の多岐にわたる導電性材料を含むことができる。ビアは、貫通孔をドリル加工(例えば、機械的ドリル加工、レーザードリル加工)し、例えば、無電気めっきまたは銅シードを用いて貫通孔に導電性材料をめっきすることによって形成することができる。ビアを導電性材料で充填し、導電性材料の堅柱が形成されるようにすることができる。代替的に、貫通孔の内面は、ビアが中空となるようにめっきすることができる。ビアは、Z方向において、約180マイクロメートル(180ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満、およびいくつかの実施形態では約80マイクロメートル(80ミクロン)未満の長さを有することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、誘電体層のうちの少なくともいくつかは、約180マイクロメートル(180ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約120マイクロメートル(120ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約80マイクロメートル(80ミクロン)未満、いくつかの実施形態では60マイクロメートル(60ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約50マイクロメートル(50ミクロン)、いくつかの実施形態では約40マイクロメートル(40ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約30マイクロメートル(30ミクロン)未満、およびいくつかの実施形態では約20マイクロメートル(20ミクロン)未満の厚みを有することができる。
【0020】
多層フィルタは、多層フィルタのパスバンド周波数範囲内の周波数についての低い挿入損失等の優れた性能特性を呈することができる。パスバンド周波数範囲は、連続周波数範囲として定義することができ、この連続周波数範囲内で、多層フィルタは、約-5dBよりも大きい、いくつかの実施形態では約-3dBよりも大きい、およびいくつかの実施形態では約-2dBよりも大きい挿入損失を呈する。
【0021】
加えて、多層フィルタは、パスバンド周波数範囲からパスバンド外の周波数への急なロールオフを呈することができる。例えば、パスバンド周波数範囲のすぐ外側の周波数について、挿入損失は、約0.1dB/MHz、いくつかの実施形態では、約0.2dB/MHzよりも高い、いくつかの実施形態では約0.3dB/MHzも高い、およびいくつかの実施形態では約0.4dB/MHzよりも高い比率で減少することができる。
【0022】
多層フィルタは、広範にわたる温度にわたって一定した性能特性(例えば、挿入損失、リターン損失等)を呈することもできる。いくつかの実施形態では、多層フィルタの挿入損失は、大きな温度範囲にわたって5dB以下未満で変動することができる。例えば、多層フィルタは、約25℃で、第1の周波数において第1の挿入損失を呈することができる。多層フィルタは、第2の温度で、概ね第1の周波数において第2の挿入損失を呈することができる。第1の温度と第2の温度との間の温度差は、約70℃以上、いくつかの実施形態では約60℃以上、いくつかの実施形態では約50℃以上、いくつかの実施形態では約30℃以上、およびいくつかの実施形態では約20℃以上とすることができる。例として、第1の温度は25℃とすることができ、第2の温度は85℃とすることができる。別の例として、第1の温度は25℃とすることができ、第2の温度は-55℃とすることができる。第2の挿入損失と第1の挿入損失との差は、約5dB以下、いくつかの実施形態では約2dB以下、いくつかの実施形態では約1dB以下、いくつかの実施形態では、約0.75dB以下、いくつかの実施形態では約0.5dB以下、およびいくつかの実施形態では、約0.2dB以下とすることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、多層フィルタは、約0.5mm~約30mm、いくつかの実施形態では、約1mm~約15mm、およびいくつかの実施形態では約2mm~約8mmの範囲をとる全体長さを有することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、多層フィルタは、約0.2mm~約20mm、いくつかの実施形態では約0.5mm~約15mm、いくつかの実施形態では約1mm~約10mm、およびいくつかの実施形態では約2mm~約8mmの範囲をとる全体幅を有することができる。
【0025】
多層フィルタは、通常、低プロファイルまたは薄型とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、多層フィルタは、約100マイクロメートル(100ミクロン)~約2mm、いくつかの実施形態では約150マイクロメートル(150ミクロン)~約1mm、およびいくつかの実施形態では約200マイクロメートル(200ミクロン)~約300マイクロメートル(300ミクロン)の範囲をとる全体厚みを有することができる。
【0026】
用いられる特定の構成にかかわらず、本発明者らは、信号経路突起部の形状および配置に対する選択的制御を通じて、選択周波数内で(例えばパスバンド周波数範囲内で)低いリターン損失を呈する多層フィルタを達成することができることを発見した。
【0027】
より詳細には、信号経路は、第1の方向(例えばY方向)に細長い導電層を含むことができる。突起部は、第1の方向に垂直な第2の方向(例えばY方向)において信号経路から延びることができる。信号経路の導電層は、第1の縁部および第2の縁部を有することができる。第1の縁部および第2の縁部の各々は、第1の方向と平行にすることができる。突起部は、第1の方向において第1の縁部と第2の縁部との間に位置することができる。突起部は、第1の縁部と平行であり、第2の方向において第1の縁部から突起部長さだけオフセットされた端縁部を有することができる。突起部長さは、約50マイクロメートル(50ミクロン)~約1200マイクロメートル(200ミクロン)、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)~約800マイクロメートル(800ミクロン)、いくつかの実施形態では約150マイクロメートル(150ミクロン)~約400マイクロメートル(400ミクロン)の範囲をとることができ、例えば約200マイクロメートル(200ミクロン)とすることができる。
【0028】
第1の縁部は、比較的小さな距離だけ第2の縁部から離間させることができる。例えば、距離は、第2の方向(例えばX方向)において、第1の縁部と第2の縁部との間に定義することができる。いくつかの実施形態では、距離は、200マイクロメートル(200ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約150マイクロメートル(150ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約50マイクロメートル(50ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約20マイクロメートル(20ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約10マイクロメートル(10ミクロン)未満とすることができる。
【0029】
突起部は、入力との1つまたは複数の電気接続部の比較的近くに位置することができる。電気接続部は、ビアまたは他の適切な垂直方向の電気接続部(例えば、キャスタレーション、外部めっき等)を含むことができる。より詳細には、突起部は、第2の方向(例えばX方向)と平行な第1の側縁部を有することができる。第1の側縁部は、端縁部と第1の縁部との間に延びることができる。第1の方向(例えばY方向)において、第1の側縁部と電気接続部との間に距離を定義することができる。いくつかの実施形態では、距離は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約400マイクロメートル(400ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約300マイクロメートル(300ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約200マイクロメートル(200ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満、例えば約50マイクロメートル(50ミクロン)とすることができる。
【0030】
突起部は、突起部長さに垂直な方向における幅を有することができる。例えば、突起部は、第2の方向(例えばX方向)と平行な第2の側縁部を有することができる。第2の側縁部は、第1の側縁部とも平行にすることができる。第2の側縁部は、端縁部と第2の縁部との間に延びる(例えば接続する)ことができる。第2の側縁部は、第1の側縁部から突起部幅だけ離間させることができる。いくつかの実施形態では、突起部幅は、約50マイクロメートル(50ミクロン)~約1200マイクロメートル(200ミクロン)、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)~約800マイクロメートル(800ミクロン)、いくつかの実施形態では約150マイクロメートル(150ミクロン)~約400マイクロメートル(400ミクロン)の範囲をとることができ、例えば約300マイクロメートル(300ミクロン)とすることができる。
【0031】
長さ対幅比は、突起部長さ対突起部幅の比として定義することができる。長さ対幅比は、約0.2~約2、いくつかの実施形態では約0.3~約1.8、いくつかの実施形態では約0.4~約1.5、およびいくつかの実施形態では約0.5~約1.2の範囲をとることができる。
【0032】
突起部の第2の縁部は、第1のインダクタの縁部と概ね位置合わせすることができる。第1のインダクタの縁部は、第2の方向(例えばX方向)と位置合わせすることができる。第1の方向(例えばY方向)における距離は、突起部の第2の縁部と第1のインダクタとの間に定義することができる。距離は、約200マイクロメートル(200ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約100マイクロメートル(100ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約50マイクロメートル(50ミクロン)未満、いくつかの実施形態では約20マイクロメートル(20ミクロン)未満、およびいくつかの実施形態では約10マイクロメートル(10ミクロン)未満とすることができる。
【0033】
信号経路は、第1の縁部と第3の縁部との間で第2の方向(例えばX方向)に第1の幅を有することができる。第3の縁部は第1の縁部と平行にすることができる。第1の幅は、約100マイクロメートル(100ミクロン)~約1200マイクロメートル(200ミクロン)、いくつかの実施形態では約200マイクロメートル(200ミクロン)~約800マイクロメートル(800ミクロン)、いくつかの実施形態では約300マイクロメートル(300ミクロン)~約400マイクロメートル(400ミクロン)の範囲をとることができ、例えば約350マイクロメートル(50ミクロン)とすることができる。
【0034】
信号経路は、第2の方向(例えばX方向)に第2の幅を有することができる。第2の幅は、端縁部と第3の縁部との間に定義することができる。第2の幅は、約200マイクロメートル(200ミクロン)~約1400マイクロメートル(400ミクロン)、いくつかの実施形態では約300マイクロメートル(300ミクロン)~約1000マイクロメートル(1000ミクロン)、いくつかの実施形態では約400マイクロメートル(400ミクロン)~約800マイクロメートル(800ミクロン)の範囲をとることができ、例えば約600マイクロメートル(600ミクロン)とすることができる。
【0035】
信号経路は、第2の方向(例えばX方向)に第3の幅を有することができる。第3の幅は、第2の縁部と第3の縁部との間に定義することができる。第3の幅は、約100マイクロメートル(100ミクロン)~約1200マイクロメートル(200ミクロン)、いくつかの実施形態では約200マイクロメートル(200ミクロン)~約800マイクロメートル(800ミクロン)、いくつかの実施形態では約300マイクロメートル(300ミクロン)~約400マイクロメートル(400ミクロン)の範囲をとることができ、例えば約300マイクロメートル(300ミクロン)とすることができる。
【0036】
第2の幅対第1の幅の比は、信号経路の導電層の第1の幅に対する第2の幅の比として定義することができる。第2の幅対第1の幅の比は、約1.05~約3、いくつかの実施形態では約1.1~約2.5、いくつかの実施形態では約1.2~約2.2、いくつかの実施形態では約1.3~約2、およびいくつかの実施形態では約1.5~約1.7の範囲をとることができる。
【0037】
突起部は、Z方向において、他の導電層から、少なくとも約30マイクロメートル(30ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも約50マイクロメートル(50ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも約100マイクロメートル(100ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも約150マイクロメートル(150ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも約200マイクロメートル(200ミクロン)、いくつかの実施形態では少なくとも約300マイクロメートル(300ミクロン)だけ離間させることができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、多層フィルタは、バンドパスフィルタとして構成することができ、パスバンド周波数範囲を有することができる。多層フィルタは、パスバンド周波数範囲内の周波数において、-15dB未満、いくつかの実施形態では-20dB未満、いくつかの実施形態では-25dB未満、いくつかの実施形態では約-30dB未満、いくつかの実施形態では約-35dB未満、およびいくつかの実施形態では約40dB未満のリターン損失を呈することができる。
【0039】
例えば、多層フィルタは、パスバンド周波数範囲内のいくつかまたは全ての周波数にわたって-10dB未満のリターン損失値を呈することができる。例えば、第1の周波数範囲を第1の周波数と第2の周波数との間に定義することができ、第1の周波数および第2の周波数の各々が、パスバンド周波数範囲内に入ることができる。第1の周波数範囲の第2の周波数と第1の周波数との差は、約5GHz以上、いくつかの実施形態では約4GHz以上、いくつかの実施形態では約2GHz以上、およびいくつかの実施形態では約1GHz以上とすることができる。
【0040】
例えば、多層フィルタは、パスバンド周波数範囲内のいくつかまたは全ての周波数にわたって-15dB未満のリターン損失値を呈することができる。例えば、第2の周波数範囲は、第1の周波数と第2の周波数との間に定義することができ、第1の周波数および第2の周波数の各々が、パスバンド周波数範囲内に入ることができる。第2の周波数範囲の第2の周波数と第1の周波数との差は、3GHz以上、いくつかの実施形態では2GHz以上、およびいくつかの実施形態では1GHz以上とすることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、多層フィルタは、パスバンド周波数範囲内に入るような第3の周波数範囲にわたって-20dB未満のリターン損失値を呈することができる。例えば、第3の周波数範囲は、第1の周波数と第2の周波数との間に定義することができる。第3の周波数範囲の第2の周波数と第1の周波数との差は、1,400MHz以上、いくつかの実施形態では1,000MHz以上、いくつかの実施形態では800MHz以上、およびいくつかの実施形態では400MHz以上とすることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、多層フィルタは、パスバンド周波数範囲内に入る第4の周波数範囲にわたって-30dB未満のリターン損失値を呈することができる。第4の範囲は、第1の周波数と第2の周波数との間に定義することができ、第1の周波数および第2の周波数の各々が、パスバンド周波数範囲内に入ることができる。第4の周波数範囲の第2の周波数と第1の周波数との差は、200MHz以上、およびいくつかの実施形態では100MHz以上とすることができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、多層フィルタは、高周波数における動作のために構成することができる。多層フィルタは、6GHzよりも高い特性周波数(例えば、ローパス周波数、ハイパス周波数、バンドパス周波数の上限、またはバンドパス周波数の下限)を有することができる。いくつかの実施形態では、フィルタは、約6GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約10GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約15GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約20GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約25GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約30GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約35GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約40GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約45GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約50GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約60GHzよりも高い、いくつかの実施形態では約70GHzよりも高い、およびいくつかの実施形態では約80GHzよりも高い特性周波数を有することができる。
【0044】
例えば、いくつかの実施形態では、多層フィルタのパスバンド周波数範囲は、約6GHzよりも大きい、いくつかの実施形態では10GHzよりも大きい、いくつかの実施形態では20GHzよりも大きい、いくつかの実施形態では30GHzよりも大きい、いくつかの実施形態では40GHzよりも大きい、いくつかの実施形態では50GHzよりも大きい、いくつかの実施形態では約60GHzよりも大きい、いくつかの実施形態では約70GHzよりも大きい、およびいくつかの実施形態では約80GHzよりも大きい下限を有することができる。
I.多層フィルタ
図1は、本開示の態様による多層フィルタ100の簡単な概略図である。フィルタ100は、1つまたは複数のインダクタ102、104、106と、1つまたは複数のコンデンサ108、110、112とを備えることができる。入力電圧(図1においてVによって表される)を、フィルタ100に入力することができ、出力電圧(図1においてVによって表される)をフィルタ100によって出力することができる。バンドパスフィルタ100は、パスバンド周波数範囲内の周波数が実質的に影響を受けずにフィルタ100を透過することを可能にしながら、低周波数および高周波数を大幅に低減することができる。上記で説明した簡単なフィルタ100は、バンドパスフィルタの簡単な例にすぎず、本開示の態様を、より複雑なバンドパスフィルタに適用することができることを理解されたい。加えて、本開示の態様は、例えば、ローパスフィルタまたはハイパスフィルタを含む他のタイプのフィルタに適用されてもよい。
【0045】
図2は、本開示の態様によるバンドパスフィルタ200の例示的な実施形態の概略図である。フィルタ200の入力202と出力204との間に信号経路201を定義することができる。フィルタ200の入力202とグラウンド206との間で入力電圧(図1においてVによって表される)をフィルタ200に入力することができる。出力204とグラウンド206との間で出力電圧(図1においてVによって表される)をフィルタ200によって出力することができる。
【0046】
フィルタ200は、互いに並列に電気的に接続された第1のインダクタ208および第1のコンデンサ210を備えることができる。第1のインダクタ208および第1のコンデンサ210は、信号経路201とグラウンド206との間に電気的に接続することができる。フィルタ200は、互いに並列に電気的に接続された第2のインダクタ212および第2のコンデンサ214を備えることができる。第2のインダクタ212および第2のコンデンサ214は、信号経路201と直列に接続することができる(例えば、信号経路201の一部分を形成することができる)。フィルタ200は、互いに並列に電気的に接続された第3のインダクタ210および第3のコンデンサ214を備えることができる。第3のインダクタ210および第3のコンデンサ214は、信号経路201とグラウンド206との間に電気的に接続することができる。第3のインダクタ210および第3のコンデンサ214は、信号経路201と直列に接続することができる(例えば、信号経路201の一部分を形成することができる)。フィルタ200は、互いに並列に電気的に接続された第4のインダクタ220および第4のコンデンサ222を備えることができる。第4のインダクタ220および第4のコンデンサ222は、信号経路201とグラウンド206との間に電気的に接続することができる。
【0047】
インダクタ208、212、216、220のインダクタンス値、およびコンデンサ210、214、218、222の容量値を選択して、バンドパスフィルタ200の所望のパスバンド周波数範囲を生成することができる。バンドパスフィルタ200は、パスバンド周波数範囲内の周波数が実質的に影響を受けずにフィルタ200を透過することを可能にしながら、パスバンド周波数範囲外の周波数を大幅に低減することができる。
【0048】
図3Aおよび図3Bは、本開示の態様による例示的なバンドパスフィルタ300の斜視図である。図3Cは、図3Aおよび図3Bのフィルタ300の側面図である。図3A図3Cを参照すると、バンドパスフィルタ300は、複数の誘電体層(明確にするために透明)を備えることができる。図3Cを参照すると、第1の誘電体層304、第2の誘電体層306、および第3の誘電体層308を積層して、一体構造を形成することができる。フィルタ300は、プリント回路基板等の実装表面302に実装することができる。導電層303、305、307、309は、誘電体層304、306、308上に形成することができる。導電層303は、第1の誘電体層304の底面に形成することができる。導電層305、307は、第2の誘電体層306のそれぞれ上面および底面に形成することができる。グラウンドは、フィルタ300の底面(導電層303の底面)に沿って露出および/または終端するグラウンドプレーン312を含むことができる。実装表面は、グラウンドプレーン312と接続するための1つまたは複数の端子310を含むことができる。
【0049】
図4A図4Eは、フィルタ300の一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。より詳細には、図4Aは、実装表面302および第1の導電層303を示す。図4Bは、第1の誘電体層304の底面に形成されたグラウンドプレーン312を示す。図4Cは、第1の誘電体層304の上面に形成された導電層305を更に示す。図4Dは、第2の誘電体層306上に形成された導電層307を更に示す。図4Eは、第3の層308上に形成された導電層309を示す。誘電体層304、306、308は、様々なパターニングされた導電層303、305、307、309の相対的再配置を示すために透明である。
【0050】
バンドパスフィルタ300は、入力318および出力320を有する信号経路316を備えることができる。信号経路316は、入力318および出力320を電気的に接続することができる。より詳細には、信号経路316は、複数の誘電体層、ならびに/または複数の誘電体層304、306、308内およびこれらの誘電体層上に形成され、入力318と出力320との間に電気的に接続されたビアを備えることができる。信号経路316は、入力318を、第1の層304と第2の層306との間に配設された中間導電層324と電気的に接続する1つまたは複数のビア322を備えることができる。信号経路316は、中間層324を第2の誘電体層306上に形成された導電層328と電気的に接続する1つまたは複数のビア326を備えることができる。
【0051】
第2の層360の上面に形成された信号経路316の一部分336と、誘電材料の第2の層306の下面に形成された導電層330との間に第1のコンデンサを形成することができる。導電層330は、グラウンドプレーン312と電気的に接続することができる。フィルタ300の第1のコンデンサは、図2の回路図200の第1のコンデンサ210と対応することができる。導電層330は、信号経路316の一部分336と容量結合することができる。導電層330は、Z方向における信号経路316の一部分336から離間させることができる。導電層330は、1つまたは複数のビア334によってグラウンドプレーン312と電気的に接続することができる。第1のコンデンサは自己整合することができる。
【0052】
第1のコンデンサは、第1のコンデンサの電極の相対的ずれに対し影響を受けにくくすることができる。これは「自己整合」として説明することができる。フィルタ300の第1のインダクタ342は、図2の回路図200の第1のインダクタ208と対応することができる。第1のインダクタ342は、コネクタ部分338によって、第1のコンデンサを形成する信号経路316の一部分336と接続することができる。第1のインダクタ342は、1つまたは複数のビア344(図3Bに最も良好に見られる)によってグラウンドプレーン312と電気的に接続することができる。
【0053】
フィルタ300の信号経路316は第2のインダクタ346を含むことができ、第2のインダクタ346は、図2の回路図200の第2のインダクタ212と対応することができる。第2のインダクタ346は、第3の層308(図3Cに最も良好に見られる)上に形成することができる。第2のインダクタ346は、第1のロケーション349および第2のロケーション351の各々において、信号経路316と電気的に接続することができる。換言すれば、第2のインダクタ346は、入力318と出力320との間で信号経路316の一部分を形成することができる。
【0054】
1つまたは複数のビア348は、第1のロケーション349において第2のインダクタ346を第2の層306(図3B図4Dおよび図4Eに最も良好に見られる)の信号経路316の一部分354と接続することができる。1つまたは複数のビア348が、第2のロケーション351において第1の誘導性素子346を第2の層306の上面の信号経路316の一部分369の各々、および第2の層306の底面の導電層352(以下で説明する、信号経路316の一部分354と共に第2のコンデンサを形成する)と接続することができる。図3Aおよび図4Eにおいて最も良好に見られるように、インダクタ346は4つの角部を有することができる。したがって、第1のインダクタ346は、半円を超える「ループ」を形成することができる。
【0055】
第2のコンデンサは、導電層352と、信号経路316の一部分354との間に形成することができる。第2のコンデンサは、図2の回路図200の第2のコンデンサ214と対応することができる。第2のコンデンサは自己整合コンデンサとすることができる。
【0056】
フィルタ300の第3のインダクタ356は、図2の回路図200の第3のインダクタ216と対応することができる。第3のインダクタ356は、第1のロケーション357における1つまたは複数のビア360によって、第2のインダクタ346と接続された信号経路316の一部分369と接続することができる。第3のインダクタ356は、第2のロケーション359における1つまたは複数のビア360によって、出力320と接続された信号経路316の一部分361と接続することができる。信号経路316の一部分361は、1つまたは複数のビア366および/または中間層368によって、出力320と電気的に接続することができる。換言すれば、第3のインダクタ356は、第2のインダクタ346と出力320との間で信号経路316の一部分を形成することができる。
【0057】
第3のコンデンサは、第3のインダクタ356と並列に形成することができる。第3のコンデンサは、図2の回路図200の第3のコンデンサ214と対応することができる。フィルタ300の第3のコンデンサは、信号経路316の一部分369と容量性結合された導電層367を含むことができる。
【0058】
第4のインダクタ370は、ビア374によって、第1のロケーション371において信号経路316と、第2のロケーション373においてグラウンドプレーン312と電気的に接続することができる。ビア374は、中間層376によって接続することができる。フィルタ300の第4のインダクタ370は、図2の回路図200の第4のインダクタ220と対応することができる。フィルタ300の第4のインダクタ370は、出力320と電気的に接続された信号経路316の一部分361において、信号経路316と接続することができる。第4のインダクタ370は、3つの角部372を有することができ、概ね四分円のループを形成することができる。
【0059】
第4のコンデンサは、出力320と接続された信号経路316の一部分361と容量性結合された導電層380を含むことができる。第4のコンデンサの導電層380は、ビア382によって、グラウンドプレーン312と電気的に接続することができる。第4のコンデンサは、図2の回路図200の第4のコンデンサ222と対応することができる。
【0060】
図6Aは、本開示の態様による多層フィルタ600の別の実施形態の斜視図を示す。図6Bは、図6Aの多層フィルタ600の別の斜視図を示す。フィルタ600は、通常、図3図5Dを参照して上記で説明したフィルタ300と類似した方式で構成することができる。フィルタ600は、入力602と、出力604と、入力602および出力604を接続する信号経路606とを備えることができる。フィルタ600は、1つまたは複数のグラウンド電極610と電気的に接続されたグラウンドプレーン608も備えることができる。
【0061】
フィルタ600は、グラウンドプレーン608と電気的に接続された第1のインダクタ612を備えることができる。第1のインダクタ612は、図2を参照して上記で説明した回路図200の第1のインダクタ208と対応することができる。フィルタ600は、グラウンドプレーン608と電気的に結合された第1のコンデンサ614を備えることができる。第1のコンデンサ614は、図2を参照して上記で説明した回路図200の第1のコンデンサ210と対応することができる。
【0062】
フィルタ600は、互いに並列に接続された第2のインダクタ616および第2のコンデンサ618を備えることができる。第2のインダクタ616および第2のコンデンサ618は、それぞれ、図2を参照して上記で説明した回路図200の第2のインダクタ212および第2のコンデンサ214と対応することができる。第2のインダクタ616および第2のコンデンサ618は、入力602と出力604との間で信号経路606の一部分を形成することができる。フィルタ600は、互いに並列に接続され、入力602と出力604との間で信号経路606の一部分を形成することができる第3のインダクタ620および第3のコンデンサ622を備えることができる。第3のインダクタ620および第3のコンデンサ622は、それぞれ、図2を参照して上記で説明した回路図200の第3のインダクタ216および第3のコンデンサ218と対応することができる。最後に、フィルタ600は、互いに並列に接続され、信号経路606とグラウンドプレーン608との間で接続された第4のインダクタ624および第4のコンデンサ626を備えることができる。第4のインダクタ624および第4のコンデンサ626は、それぞれ、図2を参照して上記で説明した回路図200の第4のインダクタ220および第4のコンデンサ222と対応することができる。
【0063】
インダクタ612、616、620、624およびコンデンサ614、618、622、626は、図3図5Dを参照して上記で説明したのと類似した方式でビア627によって接続することができる。インダクタ612、616、620、624の各々は、それぞれの第1のロケーションにおいて信号経路606と接続し、それぞれの第2のロケーションにおいて信号経路606またはグラウンドプレーン608と接続することができる。インダクタ612、616、620、624の各々は、第1のロケーションと第2のロケーションとの間で(例えばX-Y平面における)それぞれの有効長を有することができる。加えて、インダクタ612、616、620、624の各々が、それぞれの有効長に沿ったそれぞれの幅を有することができる。
【0064】
図6Cは、図6Aおよび図6Bのフィルタ600の側面図である。バンドパスフィルタ600は、複数の誘電体層(明確にするために図6Aおよび図6Bにおいて透明である)を備えることができる。図6Cを参照すると、第1の層632、第2の層636、および第3の層640を積層して、一体構造を形成することができる。誘電体層632、636、640の上に導電層630、634、638、642を形成することができる。第1の誘電体層632の底面に導電層630を形成することができる。第2の誘電体層636のそれぞれ上面および底面に導電層634、638を形成することができる。第3の誘電体層640の上面に導電層642を形成することができる。
【0065】
図7A図7Dは、図6A図6Cのフィルタ600の一連の連続平面図であり、各連続図において更なる層が示される。より詳細には、図7Aは、プリント回路基板等の実装表面628を示す。第1の導電層630は、第1の層632の底面および上面に形成することができるグラウンドプレーン608を含むことができる。図7Bは、第1の誘電体層632上に形成された第2の導電層634を更に示す。第2の導電層634は、第1のコンデンサ614、第2のコンデンサ618、第3のコンデンサ622および第4のコンデンサ626を備えることができる。図7Cは、第2の誘電体層636上に形成された第3の導電層638を更に示す。第3の導電層638は、信号経路606の一部分および第1のインダクタ612を備えることができる。図7Dは、第4の誘電体層640上に形成された第4の導電層642を示す。第4の導電層642は、第2のインダクタ616、第3のインダクタ622、および第4のインダクタ624を備えることができる。誘電体層632、636、640は、様々なパターニングされた導電層630、634、638、642の相対的再配置を示すために透明である。
【0066】
図8Aは、本開示の態様による多層フィルタ800の別の実施形態の斜視図を示す。フィルタ800は、通常、図3図5Dを参照して上記で説明したフィルタ300と類似した方式で構成することができる。フィルタ800は、入力802と、出力804と、入力802および出力804を接続する信号経路806とを備えることができる。フィルタ800は、1つまたは複数のグラウンド電極810と電気的に接続されたグラウンドプレーン808も含むことができる。
【0067】
フィルタ800は、グラウンドプレーン808と電気的に接続された第1のインダクタ812を備えることができる。第1のインダクタ812は、図2を参照して上記で説明した回路図200の第1のインダクタ208と対応することができる。フィルタ800は、グラウンドプレーン808と電気的に接続された第1のコンデンサ814を備えることができる。第1のコンデンサ814は、図2を参照して上記で説明した回路図200の第1のインダクタコンデンサ210と対応することができる。フィルタ800は、互いに並列に接続された第2のインダクタ816および第2のコンデンサ818を備えることができる。第2のインダクタ816および第2のコンデンサ818は、それぞれ、図2を参照して上記で説明した回路図200の第2のインダクタ212および第2のコンデンサ214と対応することができる。第2のインダクタ816および第2のコンデンサ818は、入力802と出力804との間で信号経路806の一部分を形成することができる。フィルタ800は、互いに並列に接続され、入力802と出力804との間で信号経路806の一部分を形成することができる、第3のインダクタ820および第3のコンデンサ822を備えることができる。第3のインダクタ820および第3のコンデンサ822は、それぞれ、図2を参照して上記で説明した回路図200の第3のインダクタ216および第3のコンデンサ218と対応することができる。最後に、フィルタ800は、互いに並列に接続され、信号経路806とグラウンドプレーン808との間で接続された第4のインダクタ824および第4のコンデンサ826を備えることができる。第4のインダクタ824および第4のコンデンサ826は、それぞれ、図2を参照して上記で説明した回路図200の第4のインダクタ220および第4のコンデンサ222と対応することができる。
【0068】
インダクタ812、816、820、824およびコンデンサ814、818、822、826は、図3図5Dを参照して上記で説明したのと同様の方式でビア827によって接続することができる。インダクタ812、818、820、824の各々は、それぞれの第1のロケーションにおいて信号経路806と接続し、それぞれの第2のロケーションにおいて信号経路806またはグラウンドプレーン808と接続することができる。インダクタ812、818、820、824の各々は、第1のロケーションと第2のロケーションとの間で(例えばX-Y平面における)それぞれの有効長を有することができる。加えて、インダクタ812、818、820、824の各々は、そのそれぞれの有効長に沿ってそれぞれの幅を有することができる。
【0069】
図8Bは、図8Aのフィルタ800の側面図である。バンドパスフィルタ800は、複数の誘電体層(明確にするために図8Aにおいて透明である)を備えることができる。図8Bを参照すると、第1の層832、第2の層836および第3の層840を積層して、一体構造を形成することができる。誘電体層832、836、840上に導電層830、834、838、842を形成することができる。第1の誘電体層832の底面に導電層830を形成することができる。それぞれ、第2の誘電体層836の上面および底面に導電層834、838を形成することができる。第3の誘電体層840の上面に導電層842を形成することができる。
【0070】
図9A図9Dは、図8Aおよび図8Bのフィルタ600の一連の連続平面図であり、各連続図において更なる誘電体層が示される。より詳細には、図9Aは、プリント回路基板等の実装表面828を示す。第1の導電層830は、第1の層832の底面および上面に形成することができるグラウンドプレーン808を含むことができる。図9Bは、第1の誘電体層832上に形成された第2の導電層834を更に示す。第2の導電層834は、第1のコンデンサ814、第2のコンデンサ818、第3のコンデンサ822および第4のコンデンサ826を含むことができる。図9Cは、第2の誘電体層836上に形成された第3の導電層838を更に示す。第3の導電層838は、信号経路806の一部分と、第1のインダクタ812とを含むことができる。図9Dは、第4の誘電体層840上に形成された第4の導電層842を示す。第4の導電層842は、第2のインダクタ816、第3のインダクタ822および第4のインダクタ824を含むことができる。誘電体層832、836、840は、様々なパターニングされた導電層830、834、838、842の相対的再配置を示すために透明である。
【0071】
図10Aは、本開示の態様による多層フィルタ1000の別の実施形態の斜視図を示す。図10Bは、図10Aの多層フィルタ1000の別の斜視図を示す。フィルタ1000は、通常、図3図5Dを参照して上記で説明したフィルタ300と類似の方式で構成することができる。フィルタ1000は、入力1002と、出力1004と、入力1002および出力1004を接続する信号経路1006とを含むことができる。フィルタ1000は、1つまたは複数のグラウンド電極1010と電気的に接続されたグラウンドプレーン1008も含むことができる。
【0072】
フィルタ1000は、グラウンドプレーン1008と電気的に接続された第1のインダクタ1012を備えることができる。第1のインダクタ1012は、図2を参照して上記で説明した回路図200の第1のインダクタ208と対応することができる。フィルタ1000は、グラウンドプレーン1008と電気的に結合された第1のコンデンサ1014を含むことができる。第1のコンデンサ1014は、図2を参照して上記で説明した回路図200の第1のインダクタコンデンサ210と対応することができる。フィルタ1000は、互いに並列に接続された第2のインダクタ1016および第2のコンデンサ1018を含むことができる。第2のインダクタ1016および第2のコンデンサ1018は、それぞれ、図2を参照して上記で説明した回路図200の第2のインダクタ212および第2のコンデンサ214と対応することができる。第2のインダクタ1016および第2のコンデンサ1018は、入力1002と出力1004との間で信号経路1006の一部分を形成することができる。フィルタ1000は、互いに並列に接続され、入力1002と出力1004との間で信号経路1006の一部分を形成することができる第3のインダクタ1020および第3のコンデンサ1022を備えることができる。第3のインダクタ1020および第3のコンデンサ1022は、それぞれ、図2を参照して上記で説明した回路図200の第3のインダクタ216および第3のコンデンサ218と対応することができる。最後に、フィルタ1000は、互いに並列に接続され、信号経路1006とグラウンドプレーン1008との間で接続された第4のインダクタ1024および第4のコンデンサ1026を備えることができる。第4のインダクタ1024および第4のコンデンサ1026は、それぞれ、図2を参照して上記で説明した回路図200の第4のインダクタ220および第4のコンデンサ222と対応することができる。
【0073】
インダクタ1012、1016、1020、1024およびコンデンサ1014、1018、1022、1026は、図3図5Dを参照して上記で説明したのと類似した方式でビア1027によって接続することができる。インダクタ1012、10110、1020、1024の各々は、それぞれの第1のロケーションにおいて信号経路1006と接続し、それぞれの第2のロケーションにおいて信号経路1006またはグラウンドプレーン1008と接続することができる。インダクタ1012、10110、1020、1024の各々は、第1のロケーションと第2のロケーションとの間で(例えばX-Y平面における)それぞれの有効長を有することができる。加えて、インダクタ1012、10110、1020、1024の各々が、それぞれの有効長に沿ったそれぞれの幅を有することができる。
【0074】
図10Bは、図10Aおよび図10Bのフィルタ1000の側面図である。バンドパスフィルタ1000は、複数の誘電体層(明確にするために図10Aにおいて透明である)を備えることができる。図10Bを参照すると、第1の層1032、第2の層1036、第3の層1040を積層して、一体構造を形成することができる。誘電体層1032、1036、1040の上に導電層1030、1034、1038、1042を形成することができる。第1の誘電体層1032の底面に導電層1030を形成することができる。第2の誘電体層1036のそれぞれ上面および底面に導電層1034、1038を形成することができる。第3の誘電体層1040の上面に導電層1042を形成することができる。
【0075】
図11A図11Dは、図10Aおよび図10Bのフィルタ600の一連の連続平面図であり、各連続図において更なる誘電体層が示される。より詳細には、図11Aは、プリント回路基板等の実装表面1028を示す。第1の導電層1030は、第1の層1030の底面および上面に形成することができるグラウンドプレーン1008を含むことができる。図11Bは、第1の誘電体層1032上に形成された第2の導電層1034を更に示す。第2の導電層1034は、第1のコンデンサ1014、第2のコンデンサ1018、第3のコンデンサ1022および第4のコンデンサ1026を備えることができる。図11Cは、第2の誘電体層1036上に形成された第3の導電層1038を更に示す。第3の導電層1038は、信号経路1006の一部分および第1のインダクタ1012を備えることができる。図11Dは、第4の誘電体層1040上に形成された第4の導電層1042を示す。第4の導電層1042は、第2のインダクタ1016、第3のインダクタ1022、および第4のインダクタ1024を備えることができる。誘電体層1032、1036、1040は、様々なパターニングされた導電層1030、1034、1038、1042の相対的再配置を示すために透明である。
II.リターン損失低減突起部
図5は、本開示の態様による多層フィルタの信号経路の導電層500の上面図である。信号経路は、図8A図9Dを参照して上記で説明した多層フィルタ800の信号経路806および/または図10A図11Dを参照して上記で説明した多層フィルタ1000の信号経路1006と対応することができる。加えて、いくつかの実施形態では、図3A図4Eを参照して上記で説明したフィルタ300および/または図6A図7Dを参照して上記で説明したフィルタ600は、本明細書において説明した突起部を含むように構成することができる。
【0076】
信号経路806の導電層500は、第1の方向(例えばY方向)に細長くすることができ、第2の方向(例えばX方向)に延びる突起部502を含むことができる。より詳細には、導電層500は、第1の縁部504および第2の縁部506を有することができる。第1の縁部504および第2の縁部506の各々は、第1の方向(例えばY方向)と平行にすることができる。第1の縁部504は、第2の縁部506と概ね位置合わせすることができる。例えば、距離507は、第2の方向(例えばX方向)において第1の縁部504と第2の縁部506との間に定義することができる。いくつかの実施形態では、距離507は200マイクロメートル(200ミクロン)未満とすることができる。
【0077】
突起部502は、第1の方向(例えばY方向)において第1の縁部504と第2の縁部506との間に位置することができる。突起部502は、第1の縁部504と平行にすることができる端縁部508を有することができる。端縁部508は、第2の方向(例えばX方向)において第1の縁部504から突起部長さ510だけオフセットすることができる。突起部長さ510は、約50マイクロメートル(50ミクロン)よりも大きくすることができる。
【0078】
突起部502は、入力802との垂直方向の電気接続部512の比較的近くに位置することができる(図8A図9Dに示される)。例えば図8A図9Dを参照して説明したように、垂直方向の電気接続部512は、1つまたは複数のビアを含むことができる。例えば、垂直方向の電気接続部512は、通常、図3A図4Eを参照して、中間層324を第2の誘電体層306上に形成された導電層328と電気的に接続するビア326を参照して上記で説明したように構成することができる。代替的に、他の実施形態では、垂直方向の電気接続部512は、キャスタレーションまたは外部端子とするか、またはこれを含むことができる。
【0079】
突起部502は、第2の方向(例えばX方向)と平行な第1の側縁部514を有することができる。第1の側縁部514は、端縁部508と第1の縁部504との間に延びることができる。距離516は、第1の方向(例えばY方向)において第1の側縁部54と電気接続部512との間に定義することができる。いくつかの実施形態では、距離516は、約500マイクロメートル(500ミクロン)未満とすることができる。
【0080】
突起部502は、第2の方向(例えばX方向)と平行な第2の側縁部518を有することができる。このため、第2の側縁部518は、第1の側縁部514と平行にすることができる。第2の側縁部518は、端縁部508と第2の縁部506との間に延びる(例えば接続する)ことができる。第2の側縁部518は、第1の側縁部514から突起部幅520だけ離間させることができる。いくつかの実施形態では、突起部幅520は、約100マイクロメートル(100ミクロン)よりも大きくすることができる。
【0081】
突起部502の第2の縁部506は、第1のインダクタ812の縁部522と概ね位置合わせすることができる。第1のインダクタ812の縁部522は、第2の方向(例えばX方向)と位置合わせすることができる。第1のインダクタ812は、図8A図9Dを参照して上記で説明された。第1の方向(例えばY方向)における距離は、突起部の第2の縁部506と第1のインダクタ812との間に定義することができる。距離は、約200マイクロメートル(200ミクロン)未満とすることができる。この例において、距離は約0ミクロンである。
【0082】
信号経路316の導電層500は、第2の方向(例えばX方向)において、第1の縁部504と第3の縁部526との間に第1の幅524を有することができる。第3の縁部526は、第1の縁部504と平行にすることができる。
【0083】
信号経路316の導電層500は、第2の方向(例えばX方向)における第2の幅528を有することができる。第2の幅528は、第2の方向(例えばX方向)において端縁部508と第3の縁部526との間に定義することができる。
【0084】
信号経路316の導電層500は、第2の方向(例えばX方向)における第3の幅530を有することができる。第3の幅530は、第2の方向(例えばX方向)において第2の縁部506と第3の縁部526との間に定義することができる。
【0085】
信号経路316の導電層500には、突起部502における電気接続部をなくすことができる。例えば、導電層500には、第1の方向(例えばY方向)における側縁部514、518間、および/またはX方向(例えばX方向)における端縁部508と第1の縁部504との間の電気接続部をなくすことができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、信号経路316の導電層500は、第1の方向(例えばY方向)に対し非対称にすることができる。より詳細には、導電層500は、第3の縁部526から第2の方向(例えばY方向)に延びる別の突起部を含まなくてもよい。しかしながら、他の実施形態では、導電層500は、第1の方向(例えばY方向)に対し対称であることを含む任意の適切な配置の複数の突起部を含むことができる。
【0087】
III.用途
本明細書において説明したフィルタの様々な実施形態は、任意の適切なタイプの電気コンポーネントにおいて用途を見出すことができる。フィルタは、高周波数無線信号を受信、送信、または他の形で用いるデバイスにおいて特定の用途を見出すことができる。例示的な用途は、スマートフォン、信号中継器(例えば、スモールセル)、中継局およびレーダを含む。
実施例
コンピュータモデルを用いて、本開示の態様による多層フィルタをシミュレートした。加えて、フィルタが構築され、試験された。以下の寸法は単なる例として与えられ、本開示の範囲を制限するものではないことを理解されたい。
【0088】
以下の寸法を有する突起部を備える導電層を有する信号経路を含む様々な多層フィルタ(上記で説明した多層フィルタ800、1000を含む)がモデリングされた。
【0089】
【表1】
【0090】
誘電体層の厚みは、通常、約180マイクロメートル(「ミクロン」)未満とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、第1の層304、632、832、1032は、約60マイクロメートル(60ミクロン)の厚みとすることができる。第2の層306、636、836、1036は、約20マイクロメートル(20ミクロン)の厚みとすることができる。第3の層308、640、840、1040は、約60マイクロメートル(60ミクロン)の厚みとすることができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、フィルタの全体長さは、4.3mmとすることができる。全体幅は約4mmとすることができる。全体厚は約230マイクロメートル(230ミクロン)とすることができる。
【0092】
図12図17は、様々なフィルタのための試験結果およびシミュレーションデータを表す。図12を参照すると、本開示の態様による多層フィルタが構築され試験された。測定された挿入損失(S21)値および測定されたリターン損失(S11)値が0GHz~45GHzでプロットされている。シミュレートされた挿入損失(S21)値およびシミュレートされたリターン損失(S11)値が0GHz~35GHzでプロットされている。測定パスバンドは、約13.2GHz~約15.8GHzである。
【0093】
図13を参照すると、本開示の態様による多層フィルタが構築され、試験された。測定された挿入損失(S21)値および測定されたリターン損失(S11)値が0GHz~45GHzでプロットされている。シミュレートされた挿入損失(S21)値およびシミュレートされたリターン損失(S11)値が0GHz~35GHzでプロットされている。パスバンドは約16.1GHz~約18.2GHzである。
【0094】
図14を参照すると、図3A図4Eを参照して上記で説明した多層フィルタ300のシミュレートおよび構築の双方が行われ、物理的に試験された。測定された挿入損失(S21)値および測定されたリターン損失(S11)値が0GHz~45GHzでプロットされている。シミュレートされた挿入損失(S21)値およびシミュレートされたリターン損失(S11)値が0GHz~35GHzでプロットされている。パスバンドは約17.0GHz~約21.2GHzである。
【0095】
図15を参照すると、図6A図7Dを参照して上記で説明した多層フィルタ600がシミュレートされた。シミュレートされた挿入損失(S21)値およびシミュレートされたリターン損失(S11)値が0GHz~50GHzでプロットされている。パスバンドは約24.6GHz~約27.8GHzである。
【0096】
図16Aを参照すると、図5および図8A図9Dを参照して上記で説明したように、突起部502を備える上記で説明した多層フィルタ800がシミュレートされた。突起部502を備えないフィルタ800の変更バージョンもシミュレートされた。図16Aは、フィルタ800の双方のバージョンについて、0GHz~55GHzのシミュレートされた挿入損失(S21)値およびシミュレートされたリターン損失(S11)値を提示する。各バージョンについて、パスバンド周波数範囲は約34.6GHz~約37.4GHzである。図16Aに示すように、リターン損失(S11)値は、パスバンド周波数範囲よりもはるかに低い。
【0097】
図16Bは、32GHz~40GHzのシミュレートされたリターン損失(S11)値のプロットである。図16Bに示すように、突起部502を含むフィルタ800のバージョンは、突起部502のないフィルタのバージョンよりも低いリターン損失値を呈する。より詳細には、突起部502を有するフィルタ800は、以下の表に列挙するようなリターン損失(S11)値を呈する。
【0098】
【表2】
【0099】
図17Aを参照すると、図5および図8A図9Dを参照して上記で説明したように、突起部502を備える上記で説明した多層フィルタ1000がシミュレートされた。突起部502を備えないフィルタ1000の変更バージョンもシミュレートされた。図17Aは、フィルタ1000の双方のバージョンについて、0GHz~55GHzのシミュレートされた挿入損失(S21)値およびシミュレートされたリターン損失(S11)値を呈する。各バージョンについて、パスバンド周波数範囲は約42.9GHz~約46.6GHzである。図17Aに示すように、リターン損失(S11)値は、パスバンド周波数範囲内ではるかに低い。
【0100】
図17Bは、32GHz~40GHzのシミュレートされたリターン損失(S11)値のプロットである。図16Bに示すように、突起部502を備えるフィルタ800のバージョンは、突起部502のないフィルタのバージョンよりも低いリターン損失値を呈する。より詳細には、突起部502を有するフィルタ800は、以下の表にリストされるリターン損失(S11)値を呈する。
【0101】
【表3】
【0102】
試験方法
図18を参照すると、本開示の態様に従って、試験アセンブリ1800を用いて、多層フィルタ1802の挿入損失およびリターン損失等の性能特性を試験することができる。フィルタ1802は、試験基板1804に実装することができる。入力線1806および出力線1808は、各々試験基板1804に接続された。試験基板1804は、入力線1806をフィルタ1802の入力と電気的に接続し、出力線1808をフィルタ1802の出力と電気的に接続するマイクロストリップ線1810を含むことができる。入力信号が、ソース信号発生器(例えば、1806 Keithley 2400シリーズのソース測定ユニット(SMU)、例えば、Keithley 2410-C SMU)を用いて入力線に適用され、フィルタ1802の結果としての出力が、(例えば、ソース信号発生器を用いて)出力線18108において測定された。これは、フィルタの様々な構成について繰り返された。
【0103】
当業者であれば、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示のこれらのおよび他の変更および変形を行うことができる。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的および部分的の双方で入れ替えることができることを理解されたい。更に、当業者であれば、上記の説明が例示の目的にすぎず、添付の特許請求の範囲において更に記載される本開示を限定することを意図しないことを理解するであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A-4C】
図4D-4E】
図5
図6A
図6B
図6C
図7A-7B】
図7C-7D】
図8A
図8B
図9A-9B】
図9C-9D】
図10A
図10B
図11A-11B】
図11C-11D】
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18