(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02M3/155 C
(21)【出願番号】P 2021546554
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2020031286
(87)【国際公開番号】W WO2021054027
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019170257
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 瞬
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-226819(JP,A)
【文献】特開2018-164394(JP,A)
【文献】特開2011-167013(JP,A)
【文献】特開2010-213559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 - 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を受ける入力端子と出力電圧が加わる出力端子との間に直列に介在する出力トランジスタを備え、前記出力トランジスタの状態の制御を通じて前記入力電圧を降圧することにより前記出力電圧を生成する電源装置において、
前記出力電圧に基づき前記出力トランジスタをオフに維持する短絡保護動作を行う
ことが可能な短絡保護部と、
前記入力電圧及び前記出力電圧に基づき前記短絡保護動作をマスクすることが可能なマスク部と、を備え
、
前記マスク部は、前記入力電圧及び前記出力電圧間の差に基づき前記短絡保護動作をマスクするか否かを決定し、
前記入力電圧及び前記出力電圧間の差が所定値より大きい状態において、前記出力電圧に比例する電圧が所定の基準電圧を下回ることに応答して前記短絡保護部により前記短絡保護動作が行われる
、電源装置。
【請求項2】
前記マスク部は、前記入力電圧及び前記出力電圧間の差が
前記所定値より小さいとき、所定のマスク信号を出力し、
前記短絡保護部は、前記マスク信号が出力されているとき、前記出力電圧に依らず前記短絡保護動作を非実行とする
、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
入力電圧を受ける入力端子と出力電圧が加わる出力端子との間に直列に介在する出力トランジスタを備え、前記出力トランジスタの状態の制御を通じて前記入力電圧を降圧することにより前記出力電圧を生成する電源装置において、
前記出力電圧に基づき前記出力トランジスタをオフに維持する短絡保護動作を行う
ことが可能な短絡保護部と、
前記入力電圧及び前記出力電圧に基づき前記短絡保護動作をマスクすることが可能なマスク部と、を備え
、
前記マスク部は、前記入力電圧及び前記出力電圧間の比に基づき前記短絡保護動作をマスクするか否かを決定し、
前記入力電圧及び前記出力電圧間の比が所定値より小さい状態において、前記出力電圧に比例する電圧が所定の基準電圧を下回ることに応答して前記短絡保護部により前記短絡保護動作が行われる
、電源装置。
【請求項4】
前記マスク部は、前記入力電圧に対する前記出力電圧の比が
前記所定値より大きいとき、所定のマスク信号を出力し、
前記短絡保護部は、前記マスク信号が出力されているとき、前記出力電圧に依らず前記短絡保護動作を非実行とする
、請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記短絡保護部は、前記出力電圧に比例する電圧と前記所定の基準電圧とを比較して前記出力電圧に比例する電圧が前記基準電圧よりも低いときに所定の短絡検出信号を出力する短絡検出コンパレータを有し、前記短絡保護動作がマスクされていない状態において前記短絡検出信号が出力されているときに、前記短絡保護動作を行う
、請求項1~4の何れかに記載の電源装置。
【請求項6】
当該電源装置は、前記出力トランジスタをスイッチング動作させることで前記入力電圧から前記出力電圧を生成するスイッチング電源装置であり、
前記短絡保護動作では、前記スイッチング動作を停止させる
、請求項1~5の何れかに記載の電源装置。
【請求項7】
前記出力電圧に応じた帰還電圧に基づき前記出力トランジスタをスイッチング動作させる制御回路を備える
、請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
当該電源装置は、リニア電源装置である
、請求項1~5の何れかに記載の電源装置。
【請求項9】
前記出力電圧に応じた帰還電圧に基づき前記出力トランジスタの制御電極の電位を制御する制御回路を備える
、請求項8に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧を降圧することで出力電圧を生成するスイッチング電源装置(DC/DCコンバータ)では、出力電圧に応じた帰還電圧に基づき出力トランジスタをスイッチングさせることで出力電圧を所定の目標電圧に安定化させる。
【0003】
スイッチング電源装置に短絡保護機能が設けられることがある。短絡保護機能付きのスイッチング電源装置においては、出力電圧が異常に低下しているときに出力短絡が発生しているものとして、回路保護のためにスイッチング動作を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の短絡保護機能においては、入力電圧の変動が大きい用途にて出力短絡が誤検出されることがある。即ち、基本的に上記目標電圧よりも高い入力電圧がスイッチング電源装置に供給されるのであるが、一時的に入力電圧が目標電圧より低くなることもあり、このとき、入力電圧の低下に連動した出力電圧の低下に応答して、出力短絡が発生していると誤検出されることがある(この現象については後にも詳説される)。誤検出による保護動作(スイッチング動作を停止させる保護動作)の実行は防止されるべきである。
【0006】
スイッチング電源装置に関連して出力短絡に関わる事情を説明したが、リニア電源装置においても同様の事情がある。
【0007】
本発明は、保護動作の望ましくない実行をマスクしうる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電源装置は、入力電圧を受ける入力端子と出力電圧が加わる出力端子との間に直列に介在する出力トランジスタを備え、前記出力トランジスタの状態の制御を通じて前記入力電圧を降圧することにより前記出力電圧を生成する電源装置において、前記出力電圧に基づき前記出力トランジスタをオフに維持する短絡保護動作を行う短絡保護部と、前記入力電圧及び前記出力電圧に基づき前記短絡保護動作をマスクすることが可能なマスク部と、を備えた構成(第1の構成)である。
【0009】
上記第1の構成に係る電源装置において、前記マスク部は、前記入力電圧及び前記出力電圧間の差に基づき、前記短絡保護動作をマスクするか否かを決定する構成(第2の構成)であっても良い。
【0010】
上記第2の構成に係る電源装置において、前記マスク部は、前記入力電圧及び前記出力電圧間の差が所定値より小さいとき、所定のマスク信号を出力し、前記短絡保護部は、前記マスク信号が出力されているとき、前記出力電圧に依らず前記短絡保護動作を非実行とする構成(第3の構成)であっても良い。
【0011】
上記第1の構成に係る電源装置において、前記マスク部は、前記入力電圧及び前記出力電圧間の比に基づき、前記短絡保護動作をマスクするか否かを決定する構成(第4の構成)であっても良い。
【0012】
上記第4の構成に係る電源装置において、前記マスク部は、前記入力電圧に対する前記出力電圧の比が所定値より大きいとき、所定のマスク信号を出力し、前記短絡保護部は、前記マスク信号が出力されているとき、前記出力電圧に依らず前記短絡保護動作を非実行とする構成(第5の構成)であっても良い。
【0013】
上記第1~第5の構成の何れかに係る電源装置において、前記短絡保護部は、前記出力電圧に比例する電圧と所定の基準電圧とを比較して前記出力電圧に比例する電圧が前記基準電圧よりも低いときに所定の短絡検出信号を出力する短絡検出コンパレータを有し、前記短絡保護動作がマスクされていない状態において前記短絡検出信号が出力されているときに、前記短絡保護動作を行う構成(第6の構成)であっても良い。
【0014】
上記第1~第6の構成の何れかに係る電源装置において、当該電源装置は、前記出力トランジスタをスイッチング動作させることで前記入力電圧から前記出力電圧を生成するスイッチング電源装置であり、前記短絡保護動作では、前記スイッチング動作を停止させる構成(第7の構成)であっても良い。
【0015】
上記第7の構成に係る電源装置において、前記出力電圧に応じた帰還電圧に基づき前記出力トランジスタをスイッチング動作させる制御回路を備える構成(第8の構成)であっても良い。
【0016】
上記第1~第6の構成の何れかに係る電源装置において、当該電源装置は、リニア電源装置である構成(第9の構成)であっても良い。
【0017】
上記第9の構成に係る電源装置において、前記出力電圧に応じた帰還電圧に基づき前記出力トランジスタの制御電極の電位を制御する制御回路を備える構成(第10の構成)であっても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、保護動作の望ましくない実行をマスクしうる電源装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】は、本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置の全体構成図である。
【
図2】は、本発明の第1実施形態に係り、スイッチング電源ICの外観斜視図である。
【
図3】は、本発明の第1実施形態に係り、複数の信号のレベルとICの動作との関係を示す図である。
【
図4】は、参考スイッチング電源装置の全体構成図である。
【
図5】は、第1参考動作のタイミングチャートである。
【
図6】は、第2参考動作のタイミングチャートである。
【
図7】は、本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_1に係り、マスク判定部の構成図である。
【
図8】は、本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_1に係り、第1動作例のタイミングチャートである。
【
図9】は、本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_1に係り、第2動作例のタイミングチャートである。
【
図10】は、本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_1に係り、第3動作例のタイミングチャートである。
【
図11】は、本発明の第1実施形態に属する実施例EX1_2に係り、マスク判定部の構成図である。
【
図12】は、本発明の第2実施形態に係るリニア電源装置の全体構成図である。
【
図13】は、本発明の第2実施形態に係り、複数の信号のレベルとICの動作との関係を示す図である。
【
図14】(a)及び(b)は、本発明の第3実施形態に係るカーナビゲーション装置の外観図及び概略構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“100”によって参照されるスイッチング電源ICは(
図1参照)、スイッチング電源IC100と表記されることもあるし、電源IC100又はIC100と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0021】
まず、本発明の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略称である。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本発明の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。
【0022】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。
ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる期間をハイレベル期間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる期間をローレベル期間と称する。ハイレベル又はローレベルの電圧レベルをとる任意の電圧についても同様である。
【0023】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解して良い。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
【0024】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1の全体構成図である。
図1のスイッチング電源装置1は、スイッチング電源用回路(スイッチング電源用半導体装置)であるスイッチング電源IC100と、スイッチング電源IC100に対して外付け接続される複数のディスクリート部品と、を備え、当該複数のディスクリート部品には、コンデンサC1、コイルL1並びに抵抗R1及びR2が含まれる。スイッチング電源装置1は、所望の入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutを生成する降圧型のスイッチング電源装置(DC/DCコンバータ)として構成されている。出力電圧Voutは出力端子OUTに接続された負荷LDに供給される。入力電圧Vin及び出力電圧Voutは正の直流電圧であり、出力電圧Voutは入力電圧Vinよりも低い。スイッチング電源装置1の出力端子OUTに出力電圧Voutが現れる。例えば入力電圧Vinは12Vであり、抵抗R1及びR2の抵抗値を調整することで12V未満の所望の正の電圧値(例えば3.3Vや5V)にて出力電圧Voutを安定化させることができる。
【0025】
スイッチング電源IC100は、
図2に示すような、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品である(後述のIC200についても同様;
図12参照)。IC100の筐体に複数の外部端子が露出して設けられており、その複数の外部端子には、
図1に示される入力端子IN、スイッチ端子SW、帰還端子FB、出力監視端子OS及びグランド端子GNDが含まれる。これら以外の端子も、上記複数の外部端子に含まれうる。尚、
図2に示されるIC100の外部端子の数及びIC100の外観は例示に過ぎない(後述のIC200についても同様)。
【0026】
まず、スイッチング電源IC100の外部構成について説明する。IC100の外部より入力電圧Vinが入力端子INに供給される。スイッチ端子SWと出力端子OUTとの間にコイルL1が直列に介在している。即ち、コイルL1の一端はスイッチ端子SWに接続され、コイルL1の他端は出力端子OUTに接続される。また、出力端子OUTはコンデンサC1を介してグランドに接続される。更に、出力端子OUTは抵抗R1の一端に接続され、抵抗R1の他端は抵抗R2を介してグランドに接続される。抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続される。また、出力監視端子OSには出力電圧Voutが加えられ、グランド端子GNDはグランドに接続される。
【0027】
次に、スイッチング電源IC100の内部構成について説明する。スイッチング電源IC100は、出力段回路MMと、出力段回路MMの状態を制御するための主制御回路110と、を備える。
【0028】
出力段回路MMは、Nチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)として構成されたトランジスタM1及びM2を備える。トランジスタM1及びM2は、入力端子INとグランド端子GND(換言すればグランド)との間に直列接続された一対のスイッチング素子であり、それらがスイッチング駆動されることで入力電圧Vinがスイッチングされてスイッチ端子SWに矩形波状のスイッチ電圧Vswが現れる。トランジスタM1がハイサイド側に設けられ、トランジスタM2がローサイド側に設けられる。具体的には、トランジスタM1のドレインは入力端子INに接続され、トランジスタM1のソース及びトランジスタM2のドレインはスイッチ端子SWに共通接続される。トランジスタM2のソースはグランドに直接接続されうるが、ここでは、トランジスタM2のソースはセンス抵抗13aを介してグランドに接続されているものとする。
【0029】
トランジスタM1は出力トランジスタとして機能し、トランジスタM2は同期整流トランジスタとして機能する。コイルL1及びコンデンサC1は、スイッチ端子SWに現れる矩形波状のスイッチ電圧Vswを整流及び平滑化して出力電圧Voutを生成する整流平滑回路を構成する。抵抗R1及びR2は出力電圧Voutを分圧する分圧回路を構成する。抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続されることで、その接続ノードに現れる分圧された電圧が帰還電圧Vfbとして帰還端子FBに入力される。
【0030】
トランジスタM1、M2のゲートには、駆動信号として夫々ゲート信号G1、G2が供給され、トランジスタM1及びM2はゲート信号G1及びG2に応じてオン、オフされる。基本的には、トランジスタM1及びM2が交互にオン、オフされるが、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態に維持されることもある(詳細は後述)。
【0031】
主制御回路110は、符号11~19によって参照される各部位を備える。
【0032】
エラーアンプ11は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。エラーアンプ11の反転入力端子には帰還端子FBに加わる電圧(即ち帰還電圧Vfb)が供給され、エラーアンプ11の非反転入力端子には所定の基準電圧Vref1が供給される。基準電圧Vref1及び後述の基準電圧Vref2は、互いに異なる正の電圧値を有する直流電圧であり、IC100内の図示されない基準電圧生成回路にて生成される。エラーアンプ11は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vref1との差分に応じた電流信号Iaを自身の出力端子から出力する。電流信号Iaによる電荷は配線WR1に対して入出力される。具体的にはエラーアンプ11は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1よりも低いときには配線WR1の電位が上がるようエラーアンプ11から配線WR1に向けて電流信号Iaによる電流を出力し、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1よりも高いときには配線WR1の電位が下がるよう配線WR1からエラーアンプ11に向けて電流信号Iaによる電流を引き込む。上記差分の絶対値が増大するにつれて、電流信号Iaによる電流の大きさも増大する。
【0033】
位相補償部12は、配線WR1とグランドとの間に設けられ、電流信号Iaの入力を受けて配線WR1上に誤差電圧Vcmpを生成する。誤差電圧Vcmpは配線WR1の電位を表す。位相補償部12は抵抗12a及びコンデンサ12bの直列回路を含み、具体的には抵抗12aの一端が配線WR1に接続され、抵抗12aの他端がコンデンサ12bを介してグランドに接続される。抵抗12の抵抗値及びコンデンサ12bの静電容量値を適切に設定することにより誤差電圧Vcmpの位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。
【0034】
電流検出部13は、コイルL1に流れるコイル電流ILを所定のタイミングでサンプリングし、サンプリングしたコイル電流ILの値を示す電流検出信号Isnsを出力する。電流検出信号Isnsは電圧信号であるため、電流検出信号Isnsが表す電圧を、電圧Isnsと称することがある。ここで、スイッチ端子SWから出力端子OUTに向かう向きのコイル電流ILの極性は正であり、出力端子OUTからスイッチ端子SWに向かう向きのコイル電流ILの極性は負であるとする。コイル電流ILの極性が正であるとき電圧Isnsは正の電圧値を有し、且つ、コイル電流ILの極性が負であるとき電圧Isnsは負の電圧値を有するものとする。電圧Isnsの絶対値は、コイル電流ILの絶対値に比例し、コイル電流ILの絶対値が増大するにつれて増大する。
図1のスイッチング電源装置1において、電流検出部13は、トランジスタM2のソースとグランドとの間に設けられたセンス抵抗13aを有し、トランジスタM2がオンとされている期間においてセンス抵抗13aの電圧降下をサンプリングすることで電圧Isnsを生成している。
【0035】
差動アンプ14の非反転入力端子には配線WR1に加わる誤差電圧Vcmpが供給され、差動アンプ14の反転入力端子には電圧Isnsが供給される。差動アンプ14は、誤差電圧Vcmpと電圧Isnsとの差分に応じた電流信号Ibを自身の出力端子から出力する。差動アンプ14も電流出力型のトランスコンダクタンスアンプとして構成されている。電流信号Ibによる電荷は配線WR2に対して入出力される。具体的には差動アンプ14は、誤差電圧Vcmpの電圧が電圧Isnsよりも高いときには配線WR2の電位が上がるよう差動アンプ14から配線WR2に向けて電流信号Ibによる電流を出力し、誤差電圧Vcmpの電圧が電圧Isnsよりも低いときには配線WR2の電位が下がるよう配線WR2から差動アンプ14に向けて電流信号Ibによる電流を引き込む。電圧Vcmp及びIsns間の差分の絶対値が増大するにつれて、電流信号Ibによる電流の大きさも増大する。
【0036】
位相補償部15は、配線WR2とグランドとの間に設けられ、電流信号Ibの入力を受けて、後述のランプ電圧と対比されるべき対比電圧Vcを配線WR2上に生成する。対比電圧Vcは配線WR2の電位を表す。位相補償部15は抵抗15a及びコンデンサ15bの直列回路を含み、具体的には抵抗15aの一端が配線WR2に接続され、抵抗15aの他端がコンデンサ15bを介してグランドに接続される。抵抗15の抵抗値及びコンデンサ15bの静電容量値を適切に設定することにより対比電圧Vcの位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。
【0037】
PWMコンパレータ16の非反転入力端子には対比電圧Vcが供給され、PWMコンパレータ16の反転入力端子には、所定のスイッチング周期にて周期的に電圧値が変化するランプ電圧が供給される。ランプ電圧は、IC100に設けられた図示されないランプ電圧生成回路により生成される周期信号であり、例えば三角波又はのこぎり波の電圧波形を持つ。PWMコンパレータ16は、対比電圧Vcをランプ電圧と比較して比較結果を示すパルス幅変調信号Spwmを出力する。パルス幅変調信号Spwmは、対比電圧Vcがランプ電圧よりも高い期間においてハイレベルとなり、対比電圧Vcがランプ電圧よりも低い期間においてローレベルとなる。出力段回路MMのオンデューティ(即ち、上記スイッチング周期を占める、トランジスタM1がオン状態となる期間の割合)は、対比電圧Vcが高いほど大きくなる。尚、PWMは“pulse width modulation”の略称である。
【0038】
ロジック回路17は、パルス幅変調信号Spwmに基づいてトランジスタM1及びM2に対しスイッチング動作を行うことができる。尚、スイッチング動作の主体はトランジスタM1及びM2であると考えても良い(即ち、トランジスタM1及びM2がロジック回路17からの信号に基づいてスイッチング動作を行うと考えても良い)。スイッチング動作では、信号Spwmに基づきトランジスタM1及びM2が交互にオン、オフされる。エラーアンプ11は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vref1とが等しくなるように電流信号Iaを生成するため、スイッチング動作の実行を通じ、出力電圧Voutが、基準電圧Vref1と抵抗R1及びR2による分圧比とに応じた所定の目標電圧Vtgにて安定化される。
【0039】
より具体的にはスイッチング動作において、信号Spwmがハイレベルである期間では、ハイレベルのゲート信号G1、ローレベルのゲート信号G2が、夫々、トランジスタM1、M2のゲートに供給されることで、トランジスタM1、M2が、夫々、オン状態、オフ状態となる。逆に、スイッチング動作において、信号Spwmがローレベルである期間では、ローレベルのゲート信号G1、ハイレベルのゲート信号G2が、夫々、トランジスタM1、M2のゲートに供給されることで、トランジスタM1、M2が、夫々、オフ状態、オン状態となる。但し、貫通電流の発生を確実に防止するべく、トランジスタM1がオン状態とされる期間とトランジスタM2がオン状態とされる期間との間に、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態されるデッドタイムが挿入されて良い。
【0040】
上述の如く、スイッチング電源装置1では、出力電圧Voutとコイル電流ILの双方に基づき出力帰還制御を行う電流モード制御方式が採用されている。コイル電流ILに応じた電圧Isnsが差動アンプ14に帰還入力されており、差動アンプ14の作用により、誤差電圧Vcmpが上昇するとコイル電流ILが増大し、誤差電圧Vcmpが低下するとコイル電流ILが減少する。このように、コイル電流ILの大きさを誤差電圧Vcmpに応じて制御することができる。
【0041】
短絡検出コンパレータ18は、出力短絡状態を検出するための比較器であって、自身の反転入力端子に入力される帰還電圧Vfbと自身の非反転入力端子に入力される基準電圧Vref2とを比較して、その比較結果を示す信号SC_DETを出力する。この比較においてはヒステリシスが設定されている。ここでは、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2よりも高く信号SC_DETがローレベルである状態を起点として、コンパレータ18は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2よりも低くなるとハイレベルの信号SC_DETを出力し、その後、帰還電圧Vfbが電圧(Vref2+ΔHYS2)よりも高くなると信号SC_DETのレベルをハイレベルからローレベルに切り替えるものとする。電圧(Vref2+ΔHYS2)は基準電圧Vref2よりも正のヒステリシス電圧ΔHYS2だけ高い電圧である。
【0042】
ハイレベルの信号SC_DETは、出力短絡状態が検出されたことを示す短絡検出信号(所定の短絡検出信号)として機能し、ローレベルの信号SC_DETは短絡検出信号として機能しない。出力短絡状態とは、出力端子OUTが、目標電圧Vtgよりも低い電位を有する所定電位点に短絡(これを出力短絡と称する)されている状態を指す。所定電位点として基本的にはグランドが想定されるが、所定電位点はグランド以外でありうる。
【0043】
出力短絡判定用の基準電圧Vref2は、上述の基準電圧Vref1よりも低い。帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1と一致するときに出力電圧Voutが目標電圧Vtgに一致するので、出力電圧Voutが目標電圧Vtg(例えば5V)よりも低い所定の短絡検出電圧(例えば2V)を下回るときに、信号SC_DETがハイレベルとなる。帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2と一致するとき、出力電圧Voutが短絡検出電圧と一致することになる。
【0044】
マスク判定部19は、入力電圧Vin及び出力電圧Voutに基づいて信号SCP_MASKを生成する。信号SCP_MASKの意義は後述の説明から明らかとなる。
【0045】
信号SC_DET及びSCP_MASKはロジック回路17に入力される。パルス幅変調信号Spwmに基づく上述のスイッチング動作は、信号SC_DET及びSCP_MASKのレベルに依存して、実行又は非実行とされる。
【0046】
図3に、信号SC_DET及びSCP_MASKとIC100の動作との対応関係を示す。
【0047】
信号SC_DET及びSCP_MASKが共にローレベルであるとき、IC100において通常動作が実行される。通常動作では、上述の如く、パルス幅変調信号Spwmに基づきスイッチング動作が行われる、即ちロジック回路17がパルス幅変調信号Spwmに基づきゲート信号G1及びG2の夫々をハイレベル及びローレベル間で切り替えることによりトランジスタM1及びM2のスイッチング動作が行われる。
【0048】
信号SC_DETがハイレベルであって且つ信号SCP_MASKがローレベルであるとき、IC100において短絡保護動作が実行される。短絡保護動作ではスイッチング動作が停止される。スイッチング動作が停止されるとは、ロジック回路17が、パルス幅変調信号Spwmに関係なくゲート信号G1及びG2をローレベルに固定することでトランジスタM1及びM2をオフ状態に維持することを指す。但し、実際には、信号SCP_MASKがローレベルに保たれている状態で、信号SC_DETがローレベルからハイレベルに切り替わった後、信号SC_DETのハイレベルが所定時間継続して維持された場合に限り、短絡保護動作が実行されるようにして良い。
【0049】
ハイレベルの信号SCP_MASKは、短絡保護動作をマスクすべきことを示すマスク信号(所定のマスク信号)として機能し、ローレベルの信号SCP_MASKはマスク信号として機能しない。故に、信号SCP_MASKのハイレベル期間では、短絡保護動作がマスクされる。つまり、信号SCP_MASKのハイレベル期間では、信号SC_DETに依らず(従って出力電圧Voutに依らず)短絡保護動作がマスクされ、信号SC_DET及びSCP_MASKが共にローレベルであるときと同様に、通常動作が実行される。短絡保護動作のマスクとは、短絡保護動作の実行を禁止することを意味する。
【0050】
[参考構成及び参考動作]
ここで、マスク判定部19の意義を明らかにするための参考構成及び参考動作について説明する。
図4に、参考構成に係る参考スイッチング電源装置1’を示す。参考スイッチング電源装置1’は、IC100の代わりにIC100’を備える。
図4のIC100’は
図1のIC100からマスク判定部19を削除したものであり、
図4のIC100’において短絡保護動作のマスク機能は無い。
【0051】
図5は、参考スイッチング電源装置1’の第1参考動作を示す波形図である。第1参考動作では、入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも十分に高い電圧に維持されている。第1参考動作では、当初、出力電圧Voutが目標電圧Vtgにて安定化されていたが、或るタイミングで出力短絡が発生し、出力電圧Voutが急速に0Vに向けて低下した後、0V近辺で維持される。出力電圧Voutの低下により帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2を下回ると信号SC_DETがハイレベルとなり、信号SC_DETのハイレベルが一定時間継続すると、スイッチング動作の停止を伴う短絡保護動作が実行される。
【0052】
図6は、参考スイッチング電源装置1’の第2参考動作を示す波形図である。第2参考動作では出力短絡は発生しないが、代わりに、当初、目標電圧Vtgよりも十分に高かった入力電圧Vinが或るタイミングから目標電圧Vtgよりも低い電圧に向けて低下した後、目標電圧Vtgよりも低い電圧にて維持される。入力電圧Vinの低下に伴い出力電圧Voutも低下し、それに伴って帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2を下回ると信号SC_DETがハイレベルとなる。信号SC_DETのハイレベルが一定時間継続すると、スイッチング動作の停止を伴う短絡保護動作が実行される。
【0053】
つまり、第2参考動作では、実際には出力短絡が発生していないのにも関わらず、出力短絡が発生したと誤検出されている。基準電圧Vref2を十分に低く設定することで、このような誤検出を防ぐことはできるが、基準電圧Vref2を低く設定しすぎると、幾分かの抵抗成分を介して出力端子OUTがグランドと短絡するような状態(ハーフ短絡状態)で帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2を下回らなくなる。そのような状態も、出力短絡状態として保護対象に含めることが望まれる。
【0054】
また、第2参考動作による誤検出は、スイッチング電源装置を含むシステム全体に致命的な誤動作を招く可能性がある。このような誤検出は、入力電圧Vinの変動が比較的大きい用途(例えば、自動車のバッテリの出力電圧を入力電圧Vinとして用いる用途)において特に問題となる。
【0055】
このような誤検出を適正に防止できるマスク判定部19の構成等を以下の複数の実施例の中で説明する。第1実施形態は、以下の実施例EX1_1~EX1_4を含む。第1実施形態にて上述した事項(但し、参考構成並びに第1及び第2参考動作を除く)は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の実施例EX1_1~EX1_4に適用され、各実施例において、第1実施形態で上述した事項と矛盾する事項については各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、実施例EX1_1~EX1_4の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0056】
[実施例EX1_1]
実施例EX1_1を説明する。実施例EX1_1に係るマスク判定部19は、入力電圧Vin及び出力電圧Vout間の差に基づき信号SCP_MASKを生成する。
図7に実施例EX1_1に係るマスク判定部19Aを示す。マスク判定部19Aを
図1のマスク判定部19として用いることができる。
【0057】
マスク判定部19Aは、所定の正の直流電圧である閾値電圧Vthを生成する電圧源51と、コンパレータ52と、を備える。入力電圧Vinの印加端(即ち入力電圧Vinが加わる端子)とコンパレータ52の反転入力端子との間に電圧源51が挿入されることで、コンパレータ52の反転入力端子には電圧(Vin-Vth)が加わる。電圧(Vin-Vth)は、入力電圧Vinよりも閾値電圧Vth分だけ低い電圧を指す。コンパレータ52の非反転入力端子には出力電圧Voutが供給される。
【0058】
このため、コンパレータ52は、電圧(Vin-Vth)が出力電圧Voutよりも高いときにはローレベルの信号SCP_MASKを出力し、電圧(Vin-Vth)が出力電圧Voutよりも低いときにはハイレベルの信号SCP_MASKを出力する。つまり、入力電圧Vin及び出力電圧Vout間の差電圧(Vin-Vout)が閾値電圧Vthよりも小さい状態において、信号SCP_MASKがハイレベルとなる。電圧(Vin-Vth)が出力電圧Voutと一致するとき、信号SCP_MASKはローレベル又はハイレベルとなる。
【0059】
図7に示した回路構成は例に過ぎず、差電圧(Vin-Vout)が閾値電圧Vthよりも小さい状態において信号SCP_MASKをハイレベルにできる限り、マスク判定部19Aの具体的な構成は任意である。例えば、コンパレータ52の非反転入力端子側に電圧源51が挿入されても良い(但し、電圧源51の挿入の向きは上述したものの逆となる)。尚、コンパレータ52にヒステリシス特性を付与してしても良い。
【0060】
図8を参照し、通常の短絡保護動作が実行される第1動作例を説明する。第1動作例では、入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも十分に高い電圧に維持されている。第1動作例では、当初、出力電圧Voutが目標電圧Vtgにて安定化されていたが、或るタイミングで出力短絡が発生し、出力電圧Voutが急速に0Vに向けて低下した後、0V近辺で維持される。出力電圧Voutの低下によりタイミングT
A1にて帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2を下回ると信号SC_DETがローレベルからハイレベルに切り替わる。
【0061】
ロジック回路17は、信号SC_DETがローレベルからハイレベルに切り替わった後、信号SC_DETが所定時間tL継続してハイレベルに維持されていると、スイッチング動作の停止を伴う短絡保護動作を実行する。第1動作例では、タイミングTA1から、タイミングTA1より所定時間tLだけ後のタイミングTA2に亘って且つタイミングTA2以降も継続して、信号SC_DETがハイレベルに維持されている。このため、タイミングTA2まで継続実行されていたスイッチング動作が、タイミングTA2から短絡保護動作により停止される。尚、仮に、タイミングTA1の後、タイミングTA2に至る前に信号SC_DETがローレベルに戻ったのであれば短絡保護動作は実行されない。
【0062】
図9を参照し、入力電圧Vinが低下したときの動作例であって且つ出力短絡の発生の無い動作例である第2動作例を説明する。第2動作例では、当初、目標電圧Vtgよりも高かった入力電圧Vinが或るタイミングから目標電圧Vtgよりも低い電圧に向けて低下した後、入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも低い電圧に保たれる期間を経て、入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも高い電圧に向けて上昇し、目標電圧Vtgよりも高い電圧に戻る。
【0063】
第2動作例では、入力電圧Vinの低下の過程において、目標電圧Vtgにて安定化されていた出力電圧Voutと入力電圧Vinが接近することでタイミングTB1にて信号SCP_MASKがローレベルからハイレベルに切り替わり、その後のタイミングTB2にて帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2を下回ることで信号SC_DETがローレベルからハイレベルに切り替わる。
【0064】
その後、入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも低い電圧から上昇に転じると、出力電圧Vout及び帰還電圧Vfbも上昇に転じ、タイミングTB3にて帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2を上回ることで信号SC_DETがハイレベルからローレベルに切り替わる。更にその後、入力電圧Vinの上昇の過程において、入力電圧Vin及び出力電圧Vout間の差の拡大に伴いタイミングTB4にて信号SCP_MASKがハイレベルからローレベルに切り替わる。
【0065】
このように、第2動作例では、入力電圧Vinが定常状態から低下している期間に属するタイミングTB1及びTB4間において信号SCP_MASKがハイレベルとなり、信号SCP_MASKのハイレベル期間(TB1及びTB4間の期間)において短絡保護動作がマスクされる。このため、タイミングTB2及びTB3間において信号SC_DETがハイレベルとなるものの、短絡保護動作は実行されない。第2動作例では、スイッチング動作が停止されることなく継続的に実行される。
【0066】
図10を参照し、第3動作例を説明する。第3動作例では、当初、目標電圧Vtgよりも高かった入力電圧Vinが或るタイミングから目標電圧Vtgよりも低い電圧に向けて低下した後、入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも低い電圧に保たれている期間中に出力短絡が発生している。
【0067】
第3動作例では、入力電圧Vinの低下の過程において、目標電圧Vtgにて安定化されていた出力電圧Voutと入力電圧Vinが接近することでタイミングTC1にて信号SCP_MASKがローレベルからハイレベルに切り替わり、その後のタイミングTC2にて帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2を下回ることで信号SC_DETがローレベルからハイレベルに切り替わる。その後、入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも低い電圧に保たれている期間中に出力短絡が発生し、出力電圧Voutが急速に0Vに向けて低下した後、0V近辺で維持される。出力短絡に起因する出力電圧Voutの低下により入力電圧Vin及び出力電圧Vout間の差が拡大し、この拡大に基づきタイミングTC3にて信号SCP_MASKがハイレベルからローレベルに切り替わる。
【0068】
第3動作例において、信号SCP_MASKのハイレベル期間(TC1及びTC3間の期間)において短絡保護動作がマスクされる。このため、タイミングTC2及びTC3間において信号SC_DETがハイレベルとなるものの、短絡保護動作は実行されず、スイッチング動作は停止されずに継続実行される。
【0069】
ロジック回路17は、信号SCP_MASKがハイレベルからローレベルに切り替わったタイミングTC3の後、信号SC_DETが所定時間tL継続してハイレベルに維持されていると、スイッチング動作の停止を伴う短絡保護動作を実行する。第3動作例では、タイミングTC2以降、継続的に、信号SC_DETがハイレベルに維持されている。このため、タイミングTC4まで継続実行されていたスイッチング動作が、タイミングTC4から短絡保護動作により停止される。タイミングTC4は、タイミングTC3よりも所定時間tLだけ後のタイミングである。
【0070】
図9の第2動作例から理解されるように、信号SCP_MASKを利用するスイッチング電源装置1によれば、
図6の第2参考動作で見られるような、出力短絡の誤検出を効果的に防止できる。
【0071】
尚、入力電圧Vinだけを監視し、入力電圧Vinが低いときに(例えば入力電圧Vinが目標電圧Vtgよりも低い判定電圧を下回っているときに)短絡保護動作をマスクするといった参考方法も検討される。しかしながら、その参考方法では、入力電圧Vinの低下に伴い短絡保護動作がマスクされていると、実際の出力短絡が発生したとしても、スイッチング動作を停止することができない。即ち、
図10の動作例の状況に対して参考方法を適用したとき、タイミングT
C3近辺で出力短絡が発生したとしても、低い入力電圧Vinによって短絡保護動作がマスクされ続けるので、必要な短絡保護が働かない。入力電圧Vin及び出力電圧Voutの双方に基づき短絡保護動作のマスクの是非を判断する本実施形態の方法によれば、そのような不都合は生じず、
図10のようなケースでも有効な短絡保護が可能となる。
【0072】
[実施例EX1_2]
実施例EX1_2を説明する。実施例EX1_2に係るマスク判定部19は、入力電圧Vin及び出力電圧Vout間の比に基づき信号SCP_MASKを生成する。
図11に実施例EX1_2に係るマスク判定部19Bを示す。マスク判定部19Bを
図1のマスク判定部19として用いることができる。
【0073】
マスク判定部19Bは、抵抗61~64とコンパレータ65を備える。抵抗61の一端は入力電圧Vinの印加端(即ち入力電圧Vinが加わる端子)に接続され、抵抗61の他端は抵抗62を介してグランドに接続される。抵抗63の一端は出力電圧Voutの印加端(即ち出力電圧Voutが加わる端子)に接続され、抵抗63の他端は抵抗64を介してグランドに接続される。コンパレータ65の反転入力端子は抵抗61及び62間の接続ノードND1に接続され、コンパレータ65の非反転入力端子は抵抗63及び64間の接続ノードND2に接続される。
【0074】
抵抗61及び62間の接続ノードND1に生じる電圧を記号“V1”によって参照すると共に、抵抗63及び64間の接続ノードND2に生じる電圧を記号“V2”によって参照する。そうすると、コンパレータ65は、“V1>V2”のときに信号SCP_MASKをローレベルとし、“V2>V1”のときに信号SCP_MASKをハイレベルとすることになる。“V1=V2”のとき信号SCP_MASKはローレベル又はハイレベルとなる。
【0075】
ここで、抵抗61、62、63、64の抵抗値を、夫々、Ra、Rb、Rc、Rdで表すと、電圧V1及びV2は、以下のように表される。
V1=Vin×Rb/(Ra+Rb)
V2=Vout×Rd/(Rc+Rd)
【0076】
故に、“V2>V1”の成立は“Vout/Vin>VALth”の成立と等価であり、ここにおける閾値VALthは、“VALth=Rb(Rc+Rd)/Rd(Ra+Rb)”で表される。つまり、マスク判定部19Bは、入力電圧Vinに対する出力電圧Voutの比(Vout/Vin)が、所定の閾値VALthよりも大きいときに、信号SCP_MASKをハイレベルとする。閾値VALthは、1未満であって且つ1に近い正の所定値(例えば0.9)を有する。
【0077】
“Vout/Vin>VALth”が成立する状態は、入力電圧Vin及び出力電圧Vout間の差が小さい状態に相当するため、実施例EX1_2によっても実施例EX1_1と同様の作用及び効果が得られる。
【0078】
[実施例EX1_3]
実施例EX1_3を説明する。短絡保護動作はスイッチング電源装置1の起動時にもマスクされる。即ち、スイッチング電源装置1において、IC100に対する入力電圧Vinの供給開始に伴ってIC100が起動すると出力段回路MMのスイッチング動作が開始されることとなるが、このスイッチング動作の開始後、所定の起動マスク時間が経過するまでは、マスク判定部19の出力に関係なく短絡保護動作がマスクされる。マスク判定部19を用いて実現される短絡保護動作のマスクは、起動マスク時間の経過後のマスクである。
【0079】
[実施例EX1_4]
実施例EX1_4を説明する。
図1を参照し、電流モードにてトランジスタM1及びM2のスイッチング動作を制御するスイッチング電源装置1を説明したが、出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfbに基づくスイッチング動作により入力電圧Vinから出力電圧Voutを生成できる限り、本発明に係るスイッチング電源装置の制御方式及び構成は任意である。
【0080】
例えば電圧モードにてトランジスタM1及びM2のスイッチング動作を制御するスイッチング電源装置を形成しても良い。電圧モードに係るスイッチング電源装置では、コイル電流ILに基づくことなく、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1と一致するように対比電圧Vcを生成することになる(対比電圧Vcの生成後の動作は上述した通りである)。また、スイッチング電源装置においてダイオード整流方式が採用されても良い(この場合、トランジスタM2がダイオードに置き換えられる)。
【0081】
ここで、上述のスイッチング電源装置にて具体化された本発明の一側面に係るスイッチング電源装置WAについて考察する。
【0082】
スイッチング電源装置WAは、入力電圧(Vin)を受ける入力端子(IN)と出力電圧(Vout)が加わる出力端子(OUT)との間に直列に介在する出力トランジスタ(M1)を備え、出力トランジスタの状態の制御を通じ(出力トランジスタのスイッチング制御を通じ)入力電圧を降圧させることで出力電圧を生成する。スイッチング電源装置WAは、出力電圧に基づき出力トランジスタをオフに維持する短絡保護動作を行う短絡保護部と、入力電圧及び出力電圧に基づき短絡保護動作をマスクする(即ち短絡保護動作の実行を禁止する)ことが可能なマスク部と、を備えている。
【0083】
スイッチング電源装置WAにおいて、マスク部は、入力電圧及び出力電圧間の差に基づき、又は、入力電圧及び出力電圧間の比に基づき、短絡保護動作をマスクするか否かを決定し、上記差又は比が所定条件を満たすときに所定のマスク信号(上述の例においてハイレベルの信号SCP_MASK)を出力する。短絡保護部は、マスク信号が出力されているときには、出力電圧に依らず(上述の例においては信号SC_DETのレベルに依らず)短絡保護動作を非実行とする。
【0084】
スイッチング電源装置W
Aの具体例である
図1のスイッチング電源装置1において、短絡保護部は短絡検出コンパレータ18を構成要素として含み、マスク部はマスク判定部19を構成要素として含む。但し、短絡保護動作は短絡検出コンパレータ18とロジック回路17との協働により実現されるので、短絡保護部はロジック回路17も含んでいると解して良い。同様に、短絡保護動作のマスクはマスク判定部19とロジック回路17との協働により実現されるので、マスク部はロジック回路17も含んでいると解して良い。
【0085】
また、スイッチング電源装置WAは、出力電圧に応じた帰還電圧(Vfb)に基づき出力トランジスタをスイッチング動作させる制御回路を備える。
【0086】
この制御回路は、
図1の構成においては、主制御回路110に相当する(但し符号11~17によって参照される各部位にて構成されると考えても良い)。
【0087】
スイッチング電源装置WAにおいて、短絡保護部は、出力電圧に比例する電圧と所定の基準電圧(Vref2)とを比較して、出力電圧に比例する電圧が基準電圧よりも低いときに所定の短絡検出信号(上述の例においてはハイレベルの信号SC_DET)を出力する短絡検出コンパレータ(18)を有し、短絡保護動作がマスクされていない状態において短絡検出信号が出力されているときに、短絡保護動作を行う。
【0088】
短絡保護部にて所定の基準電圧(Vref2)と比較される電圧は、
図1の構成では帰還電圧(Vfb)であるが、出力電圧に比例する電圧であれば任意であり、出力電圧そのものであっても良い。
【0089】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2及び第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2及び第3実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第3実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0090】
本発明はリニア電源装置(シリーズ電源装置)にも適用でき、第2実施形態では本発明を適用したリニア電源装置の構成例を説明する。
【0091】
図12は、本発明の第2実施形態に係るリニア電源装置2の全体構成図である。
図12のリニア電源装置2は、リニア電源用回路(リニア電源用半導体装置)であるリニア電源IC200と、リニア電源IC200に対して外付け接続される複数のディスクリート部品と、を備え、当該複数のディスクリート部品には、コンデンサC1並びに抵抗R1及びR2が含まれる。リニア電源装置2は入力電圧Vinを降圧することで出力電圧Voutを生成する。出力電圧Voutは出力端子OUTに接続された負荷LDに供給される。入力電圧Vin及び出力電圧Voutは正の直流電圧であり、出力電圧Voutは入力電圧Vinよりも低い。リニア電源装置2の出力端子OUTに出力電圧Voutが現れる。例えば入力電圧Vinは12Vであり、抵抗R1及びR2の抵抗値を調整することで12V未満の所望の正の電圧値(例えば3.3Vや5V)にて出力電圧Voutを安定化させることができる。
【0092】
リニア電源IC200は、
図1のスイッチング電源IC100と同様に、入力端子IN、帰還端子FB及びグランド端子GNDを外部端子として備え、且つ、出力端子OUTを外部端子として備える。
【0093】
IC200の外部より入力電圧Vinが入力端子INに供給される。グランド端子GNDはグランドに接続される。出力端子OUTはコンデンサC1を介してグランドに接続される。更に、出力端子OUTは抵抗R1の一端に接続され、抵抗R1の他端は抵抗R2を介してグランドに接続される。抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続される。
【0094】
リニア電源IC200は、出力トランジスタM0と、出力トランジスタM0の状態を制御するための主制御回路210と、を備える。
図12の構成例において、出力トランジスタM0はPチャネル型のMOSFETとして構成され、出力トランジスタM0のソースは入力端子INに接続され、出力トランジスタM0のドレインは出力端子OUTに接続される。抵抗R1及びR2は出力電圧Voutを分圧する分圧回路を構成する。抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続されることで、その接続ノードに現れる分圧された電圧が帰還電圧Vfbとして帰還端子FBに入力される。
【0095】
主制御回路210は、ゲート制御部220、短絡検出コンパレータ18及びマスク判定部19を備える。ゲート制御部220は、帰還端子FBに接続され、帰還電圧Vfbが所定の基準電圧Vref1と一致するようにトランジスタM0のゲート電位を連続的に制御する。この際、出力トランジスタM0は飽和領域にて動作し、出力トランジスタM0に流れる電流が連続的に制御される。これにより、基準電圧Vref1と抵抗R1及びR2の抵抗値の比とで定まる所定の目標電圧Vtgにて出力電圧Voutが安定化される。
【0096】
IC200における短絡検出コンパレータ18は、IC100におけるそれと同じものである。基準電圧Vref1及び短絡検出コンパレータ18にて参照される基準電圧Vref2は、互いに異なる正の電圧値を有する直流電圧であり、IC200内の図示されない基準電圧生成回路にて生成される。基準電圧Vref1及びVref2について第1実施形態で述べた内容は第2実施形態にも適用される。
【0097】
IC200におけるマスク判定部19は、IC100におけるそれと同じものであり、IC200におけるマスク判定部19として上述のマスク判定部19A又はマスク判定部19Bを採用できる(
図7、
図11参照)。
【0098】
IC200において、短絡検出コンパレータ18からの信号SC_DET及びマスク判定部19からの信号SCP_MASKはゲート制御部220に入力される。
【0099】
図13に、信号SC_DET及びSCP_MASKとIC200の動作との対応関係を示す。
【0100】
信号SC_DET及びSCP_MASKが共にローレベルであるとき、IC200において通常動作が実行される。通常動作では、上述の如く、帰還電圧Vfbが所定の基準電圧Vref1と一致するように出力トランジスタM0のゲート電位を連続的に制御する。つまり、“Vfb<Vref1”であれば出力トランジスタM0のゲート電位を低下させ、“Vfb>Vref1”であれば出力トランジスタM0のゲート電位を上昇させる帰還制御を通常動作にて行う。
【0101】
信号SC_DETがハイレベルであって且つ信号SCP_MASKがローレベルであるとき、IC200において短絡保護動作が実行される。短絡保護動作では、帰還電圧Vfbに関係なく出力トランジスタM0がオフ状態に維持される。但し、実際には、信号SCP_MASKがローレベルに保たれている状態で、信号SC_DETがローレベルからハイレベルに切り替わった後、信号SC_DETのハイレベルが所定時間継続して維持された場合に限り、短絡保護動作が実行されるようにして良い。
【0102】
ハイレベルの信号SCP_MASKは、短絡保護動作をマスクすべきことを示すマスク信号(所定のマスク信号)として機能し、ローレベルの信号SCP_MASKはマスク信号として機能しない。故に、信号SCP_MASKのハイレベル期間では、短絡保護動作がマスクされる。つまり、信号SCP_MASKのハイレベル期間では、信号SC_DETに依らず(従って出力電圧Voutに依らず)短絡保護動作がマスクされ、信号SC_DET及びSCP_MASKが共にローレベルであるときと同様に、通常動作が実行される。短絡保護動作のマスクとは、短絡保護動作の実行を禁止することを意味する。
【0103】
尚、短絡保護動作はリニア電源装置2の起動時にもマスクされる。即ち、リニア電源装置2において、IC200に対する入力電圧Vinの供給開始に伴ってIC200が起動すると帰還電圧Vfbに基づく出力トランジスタM0のゲート電位制御が開始されることとなるが、このゲート電位制御の開始後、所定の起動マスク時間が経過するまでは、マスク判定部19の出力に関係なく短絡保護動作がマスクされる。マスク判定部19を用いて実現される短絡保護動作のマスクは、起動マスク時間の経過後のマスクである。
【0104】
ここで、上述のリニア電源装置にて具体化された本発明の一側面に係るリニア電源装置WBについて考察する。
【0105】
リニア電源装置WBは、入力電圧(Vin)を受ける入力端子(IN)と出力電圧(Vout)が加わる出力端子(OUT)との間に直列に介在する出力トランジスタ(M0)を備え、出力トランジスタの状態の制御を通じ入力電圧を降圧させることで出力電圧を生成する。リニア電源装置WBは、出力電圧に基づき出力トランジスタをオフに維持する短絡保護動作を行う短絡保護部と、入力電圧及び出力電圧に基づき短絡保護動作をマスクする(即ち短絡保護動作の実行を禁止する)ことが可能なマスク部と、を備えている。
【0106】
リニア電源装置WBにおいて、マスク部は、入力電圧及び出力電圧間の差に基づき、又は、入力電圧及び出力電圧間の比に基づき、短絡保護動作をマスクするか否かを決定し、上記差又は比が所定条件を満たすときに所定のマスク信号(上述の例においてハイレベルの信号SCP_MASK)を出力する。短絡保護部は、マスク信号が出力されているときには、出力電圧に依らず(上述の例においては信号SC_DETのレベルに依らず)短絡保護動作を非実行とする。
【0107】
リニア電源装置W
Bの具体例である
図12のリニア電源装置2において、短絡保護部は短絡検出コンパレータ18を構成要素として含み、マスク部はマスク判定部19を構成要素として含む。但し、短絡保護動作は短絡検出コンパレータ18とゲート制御部220との協働により実現されるので、短絡保護部はゲート制御部220も含んでいると解して良い。同様に、短絡保護動作のマスクはマスク判定部19とゲート制御部220との協働により実現されるので、短絡保護部はゲート制御部220も含んでいると解して良い。
【0108】
また、リニア電源装置WBは、出力電圧に応じた帰還電圧(Vfb)に基づき出力トランジスタのゲート電位を制御する制御回路を備える。
【0109】
この制御回路は、
図12の構成においては、主制御回路210に相当する(但しゲート制御部220のみにて構成されると考えても良い)。
【0110】
リニア電源装置WBにおいて、短絡保護部は、出力電圧に比例する電圧と所定の基準電圧(Vref2)とを比較して、出力電圧に比例する電圧が基準電圧よりも低いときに所定の短絡検出信号(上述の例においてはハイレベルの信号SC_DET)を出力する短絡検出コンパレータ(18)を有し、短絡保護動作がマスクされていない状態において短絡検出信号が出力されているときに、短絡保護動作を行う。
【0111】
短絡保護部にて所定の基準電圧(Vref2)と比較される電圧は、
図12の構成では帰還電圧(Vfb)であるが、出力電圧に比例する電圧であれば任意であり、出力電圧そのものであっても良い。
【0112】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態では、第1又は第2実施形態と組み合わせて実施可能な技術、又は、第1及び第2実施形態に適用可能な変形技術を説明する。第3実施形態は、互いに組み合わせ可能な以下の実施例EX3_1~EX3_3を含む。
【0113】
[実施例EX3_1]
実施例EX3_1を説明する。
図14(a)は、実施例EX3_1に係るカーナビゲーション装置300の外観図であり、
図14(b)は、カーナビゲーション装置300の概略構成ブロック図である。カーナビゲーション装置300は、電源装置301と、DC/DCコンバータ302と、機能ブロック303と、を備える。電源装置301として上述の電源装置1又は2が用いられる。電源装置301の入力電圧Vinは、カーナビゲーション装置300が搭載される車両に設置されたバッテリから供給されて良い。DC/DCコンバータ302は、電源装置301の出力電圧Voutを所望の電圧値を有する1以上の直流電圧に変換し、得られた直流電圧を機能ブロック303に供給する。機能ブロック303は、DC/DCコンバータ302から供給される直流電圧に基づいて動作する。機能ブロック303は、カーナビゲーション装置300の各機能を実現する複数の構成要素を含み、表示装置、スピーカ、マイクロプロセッサ等を含む。尚、電源装置301の出力電圧が、直接、機能ブロック303に供給されることもあり得る。
【0114】
カーナビゲーション装置300においては、DC/DCコンバータ302と機能ブロック303とが、電源装置301の負荷LDであると考えることができる。勿論、電源装置1又は2は、カーナビゲーション装置に限らず、任意の負荷LDを内包する任意の機器に搭載されて良い。
【0115】
[実施例EX3_2]
実施例EX3_2を説明する。IC100及びIC200において、帰還端子FBに出力電圧Voutを直接入力することも可能であり、この場合、帰還電圧Vfbは出力電圧Voutそのものとなる。帰還電圧Vfbが出力電圧Voutそのものであっても、帰還電圧Vfbが出力電圧Voutに応じた帰還電圧であることに変わりは無い。
【0116】
[実施例EX3_3]
実施例EX3_3を説明する。
【0117】
IC100及びIC200の各回路素子は半導体集積回路の形態で形成され、当該半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置が構成される。但し、複数のディスクリート部品を用いてIC100及びIC200内の回路と同等の回路を構成するようにしても良い。IC100又はIC200内に含まれるものとして上述した幾つかの回路素子(例えば
図1の構成におけるトランジスタM1及びM2、又は、
図12の構成におけるトランジスタM0)は、IC100又はIC200外に設けられてIC100又はIC200に外付け接続されても良い。
【0118】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。
【0119】
図1のトランジスタM1をPチャネル型のMOSFETにて構成するようにしても良く、この場合には、上述のスイッチング動作が実現されるように、トランジスタM1のゲートに供給される電圧レベルが上述のものから変形される。同様に、
図12のトランジスタM0をNチャネル型のMOSFETにて構成するようにしても良い。この他、FETのチャネル型は任意に変更可能である。
【0120】
上述の各トランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述されたトランジスタを、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0121】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 スイッチング電源装置
18 短絡検出コンパレータ
19 マスク判定部
100 スイッチング電源IC
110 主制御回路
M1 出力トランジスタ
2 リニア電源装置
200 リニア電源IC
210 主制御回路
M0 出力トランジスタ