(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】鉄道車両または列車用の少なくとも1つの車軸の回転監視システム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/176 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B60T8/176 Z
(21)【出願番号】P 2021564651
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 IB2020053994
(87)【国際公開番号】W WO2020222120
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】102019000006453
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100232275
【氏名又は名称】和田 宣喜
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ティオーネ, ロベルト
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-519678(JP,A)
【文献】特表2018-522774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1796
B60T 8/32-8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両または列車用の少なくとも1つの車軸の回転監視システム(WRM)であって、
前記車軸の回転監視システム(WRM)は、
前記車軸の回転監視システムによって制御され、所定の瞬間線形限界速度を下回る推定瞬間線形速度を有する少なくとも1つの車軸を特定し、
前記所定の瞬間線形限界速度を下回る推定瞬間線形速度を有すると特定された前記少なくとも1つの車軸に関連付けられたブレーキシリンダーに対する圧力を打ち消すことによって、前記所定の瞬間線形限界速度を下回る推定瞬間線形速度を有すると特定された前記車軸の1つ以上の車輪に対するブレーキ力を解除するよう、構成されており、
前記所定の瞬間線形限界速度を下回る推定瞬間線形速度を有すると特定された前記少なくとも1つの車軸に関連付けられたブレーキシリンダーに対する圧力の前記打ち消しは、前記ブレーキシリンダーのためにブレーキ圧を発生させる空気圧回路に関連付けされ、さらに、残存ブレーキ圧を打ち消すように構成されたリモートリリース機能を実行するように設けられた電空バルブに作用することによって得られることを特徴とする少なくとも1つの車軸の回転監視システム(WRM)。
【請求項2】
前記リモートリリース機能を実行するために設けられた前記電空バル
ブは、ハードウェアタイムアウト回路(507、511)またはソフトウェアタイムアウト機能によって条件付けされ、所定の継続時間(T)の間、前記電空バル
ブに関連付けられたソレノイド(503)の通電コマンドを制限するように設けられている請求項1に記載の少なくとも1つの車軸の回転監視システム(WRM)。
【請求項3】
前記所定の継続時間(T)は、10秒以上の値をとる請求項2に記載の少なくとも1つの車軸の回転監視システム(WRM)。
【請求項4】
前記ソフトウェアタイムアウト機能は、前記少なくとも1つの車軸の回転監視システム(WRM)のソフトウェア内において、直接的に実現されている請求項2または3に記載の少なくとも1つの車軸の回転監視システム(WRM)。
【請求項5】
前記所定の瞬間線形限定速度は、前記車両の線形参照速度の関数である請求項1ないし4のいずれかに記載の少なくとも1つの車軸の回転監視システム(WRM)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、鉄道ブレーキシステムの分野に関し、より具体的には、鉄道車両または列車用の少なくとも1つの車軸の回転監視システム(rotational monitoring system of at least one axle for a railway vehicle or train)に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道輸送システムにおいて、車輪とレールの間の瞬間接着値(the instantaneous adhesion value)は、車軸の車輪が前方へのスリップ状態を開始することがない範囲で、その時点で車軸に適用できるブレーキ力の上限を表している。
【0003】
車軸がスリップ状態に入ってしまった場合、加えられたブレーキ力が速やかに、かつ、適切に減じられないと、車軸は、完全にロックされるまで徐々に角速度を失うこととなり、その結果、車輪とレールの間の接触点において、車軸の車輪表面の温度過上昇による急激な加熱および深刻な損傷が生じてしまう。
【0004】
上述した状況は、摩擦係数のさらなる低下により、停止距離を著しく長くしてしまうことに加えて、鉄道車両の高速運転時において、脱線を引き起こす可能性があることが知られている。
【0005】
以上の問題点を克服するために、保護システムを備える空気圧鉄道ブレーキシステムが、スリップ防止システムとして知られている。
【0006】
4つの車軸102、103、104、105を有する鉄道車両の場合の例として、既知のスリップ防止システムが、
図1に示されている。ブレーキシステム110は、
図1には示されていないが、ブレーキ圧またはブレーキ力の働きが必要な時に、ブレーキシリンダー111、112、113、114に圧縮空気を供給することによって、空気圧によりブレーキ圧を生み出す。
【0007】
各ブレーキシリンダー111、112、113、114は、空気圧供給導管115、116によって、それぞれの車軸102、103、104、105にブレーキをかける役割を担っている。スリップ防止装置101に操作される4つのスリップ防止バルブユニット117、118、119、120は、空気圧供給導管115、116と、それぞれブレーキシリンダー111、112およびブレーキシリンダー113、114との間に介在している。
【0008】
角速度センサー106、107、108、109は、それぞれ、車軸102、103、104、105の角速度を検出する。角速度センサー106、107、108、109は、スリップ防止システム101に電気的に接続され、各車軸102、103、104、105の瞬間角速度情報を表す電気信号を継続的に供給する。
【0009】
スリップ防止システム101は、相対測定角速度(relative measured angular speeds)から導出された車軸102、103、104、105の推定瞬間線形速度(estimated instantaneous liner speed)の情報に対して行われる操作から、車両の瞬間線形速度を継続的に推定する。
【0010】
1つの車軸の推定線形速度と車両の推定線形速度の間の差ΔVを、継続的に評価することによって、スリップ防止装置101は、1つ以上の車軸がスリップ状態を開始しているか否かを検出する。1つ以上の車軸がスリップ状態を開始している場合、スリップ防止装置は、スリップしている車軸に関連するブレーキシリンダーへの圧力を適切に減少および調整し、例えば、EP3393873、WO2017175108に記載されている既知のアルゴリズムを使用して、スリップしている車軸に関連するバルブユニットに作用(act)し、車軸がブロック状態になることを防止し、スリップ状態の間も最良のブレーキ力を得ようとすることによって、車軸のスリップを制御する。
【0011】
スリップ防止バルブユニット117、118、119、120は、それぞれ、
図2に示される1対の電空バルブ(electro-pneumatic valves)220、221により表された詳細な形状をとることができる。
【0012】
電空バルブ220、221は、それぞれのスイッチング素子202、203を用いて、スリップ防止装置201によって通電される。各スイッチング素子202、203は、典型的には、固体電子部品である。
【0013】
図を単純にするために、
図2は、ソレノイド、すなわち電気コイル204、205のグランドへの接続を図示していない。
【0014】
スリップ防止バルブユニット117、118、119、120は、合計で4つ状態を取り得る。
【0015】
第1の状態は、「充填(filling)」として定義され、両方の電空バルブ220、221が通電されていない状態に対応する。
図2に示されるように、電空バルブ220は、
図1の空気圧供給導管115、116に対応する空気圧導管215内に存在する圧力にアクセス可能になっており、
図1のブレーキシリンダー111、112、113、114に対応するブレーキシリンダー211にアクセス可能となっている。一方で、電空バルブ221は、ブレーキシリンダー211と空気圧導管215から大気へ空気が排出されることを防止している。この「充填(filling)」という状態は、スリップ防止装置の停止(rest)または不干渉(non-intervention)状態を表している。この状態は、実質的にブレーキシリンダー211と空気圧導管215の間の直接接続を構成するので、この状態において、ブレーキシステムは、ブレーキシリンダー211に対する圧力が、ゼロ値から最大値になるまでの間、ブレーキシリンダー211に対する圧力を直接的に制御する。
【0016】
第2の状態は、「保持(holding)」として定義され、電空バルブ220が通電されている状態に対応する。この場合、ブレーキシリンダー211内の圧力は、空気圧導管215内の圧力変化によって変化し得ない。電空バルブ221は、ブレーキシリンダー211を大気から隔てられた状態に保持し続ける。全般的に見れば、電空バルブ221に対する圧力は、ブレーキシリンダー内の漏出がない限り、いつまでもその数値を維持する。
【0017】
第3の状態は、「排出(discharge)」として定義され、双方の電空バルブ220、221が通電されている状態に対応する。この場合、ブレーキシリンダー211内の圧力は、空気圧導管215内の圧力変化によって変化することはない。通電された電空バルブ221はブレーキシリンダー211を大気へと接続し、ブレーキシリンダーへの圧力を可能な限りゼロ値まで減少させる。
【0018】
第4の状態は、「禁止(prohibited)」として定義され、電空バルブ221のみが通電されている状態に対応する。この場合、電空バルブは、ブレーキシリンダー211と空気圧導管215の双方を直接的に大気へと接続し、ブレーキシステムによって生成された圧力の大気への急激な排出を発生させる。
【0019】
スリップ防止装置は、欧州鉄道規則(European railway regulations)によって規定されている。
・UIC541-05「ブレーキ-さまざまなブレーキ部品の構造のための仕様-車輪スライド保護装置(WHEEL SLIDE PROTECTION DEVICE)(WSP)」
・EN15595「鉄道用途-ブレーキ-車輪スライド保護(Railway applications - Braking - Wheel slide protection)」
【0020】
上に記載の両基準は、鉄道列車が速度200Km/hを超えて運転され得るケースに細心の注意を払っている。特に、EN15595のセクション4.2.4.3「高速用(v>200Km/h)WSPシステムの特別な特徴(Special features of WSP systems for high speeds)」およびサブチャプターでは、WRM「車輪回転監視(Wheel Rotation Monitoring)」装置の使用を推奨している。WRM「車輪回転監視(Wheel Rotation Monitoring)」装置とは、車輪の回転を監視するための装置であって、1つの車軸の瞬間角速度から導出された1つの車軸の推定線形瞬間速度(estimated linear instantaneous speed)が、車両参照線形速度(vehicle reference linear speed)の関数である線形瞬間限界速度(linear instantaneous limit speed)を、10秒間を超える間、下回らないことを確認する役割を担う装置である。
【0021】
さらに、セクション4.2.4.3.3「推奨される特徴(Recommended features)」において、WRM装置が、1つの車軸の推定線形瞬間速度が車両の参照線形速度を下回る場合において、ブレーキ力を解除(remove)することが可能である一方、ブレーキ力の解除時間が、10秒を超えないように制限する機能を有していることが推奨されている。
【0022】
その上、セクション4.2.4.3.2「機能的特徴(Functional characteristics)」では、WRM装置の電気/電子回路が、スリップ防止装置の電気/電子回路から独立していることが推奨されている。
【0023】
セクション4.2.4.3.3の推奨事項では、WRM装置が、排出ソレノイドバルブとして言及されている電空バルブに作用し得る可能性があり、これにより、車両の参照線形速度を下回るような推定線形速度の損失を受けることが確認され、車軸に関連付けられたブレーキシリンダーの排出が発生する可能性があることを示している。
【0024】
セクション4.2.4.3.2の推奨事項では、WRM装置が、スリップ防止バルブモジュールに属するソレノイドの1つに電気的に作用すると、電気回路の共有部分に影響を与える可能性があるので、WRM装置による、スリップ防止バルブモジュールに属するソレノイドの1つへの電気的な作用を防止している。
【0025】
このような従来技術は、排出ソレノイドバルブが、スリップ防止装置およびWRM装置の双方によってアクティベートされるべきであり、排出ソレノイドバルブが、2つの独立したソレノイド、具体的には、スリップ防止装置に割り当てられた第1のソレノイドと、WRM装置に割り当てられた第2のソレノイドと、を備えていることを示している。
【0026】
EP1577185は、ロック防止装置としても知られている、WSPスリップ防止装置およびWRM装置によって構成されている統合システムについて開示している。特に、本特許出願の
図3として示されているEP1577185の
図2では、電空パイロットバルブ14、15によりそれぞれ冗長化された、電空パイロットバルブ12、13を備えるスリップ防止バルブが図示されている。EN15595のセクション4.2.4.3で推奨されるように、スリップ防止装置の故障が特定された場合、または、電空パイロットバルブ14、15に関連付けられた1つの車軸の推定瞬間線形速度が、車両の線形参照速度を下回る場合には、電空パイロットバルブ12、13は、スリップ防止装置に制御され、さらに、電空パイロットバルブ14、15は、ロック防止装置に制御される。
【0027】
鉄道ブレーキシステムの近年の発展は、鉄道ブレーキシステムの重要な統合と簡略化をもたらし、その結果、ブレーキ圧を制御するための電空コンポーネントやスリップ防止機能を制御するための電空コンポーネントが同じものとなった。例えば、特許EP3148853と特許EP2830918が挙げられる。
【0028】
本特許出願の
図4として示されているEP3148853の
図1では、電空バルブ10は、EP3148853に記述されているように、ブレーキ制御段階とスリップ防止段階の双方において、ブレーキ制御ユニット(braking control unit)BCUによって制御されるリレーバルブ(relay valve)RVのパイロットチャンバー充填用パイロットとして動作する。さらに、電空バルブ12は、ブレーキ制御段階とスリップ防止段階の双方の間、ブレーキ制御ユニットBCUに制御されるリレーバルブRVのパイロットチャンバーを空にするためのパイロットとして機能する。複合連結論理回路(complex interlocking logic)は、ソフトウェアブレーキ制御機能およびスリップ防止制御機能を制御し、ソフトウェアブレーキ制御機能およびスリップ防止制御機能の双方が、同じ電空バルブにアクセスし、それぞれの機能を実現する。さらに、鉄道ブレーキシステムが、リモートリリース(Remote Release)として定義される機能を備えるということは、ほとんどの用途において、既知の技術である。このリモートリリース機能は、ブレーキシステムに関連付けられたブレーキシリンダー中に存在する不要な残存圧力の問題を解決するために必要である。残存圧力は、ブレーキシステムを構成する1つまたは2以上のコンポーネントの予期せぬ故障が原因でブレーキシリンダーに、残存し得る。残存圧力の値が高い場合、残存圧力は、関連付けられた車輪のロックを引き起こし、結果として、車輪のレールと接触する部分に深刻なダメージを与え得る。残存圧力が、車輪のロックを引き起こすような値でない場合、残存圧力は、不要なブレーキ動作を連続的に引き起こし、ブレーキ摩擦要素(braking friction elements)の危険な過熱が原因の出火を引き起こす危険性がある。これは、特に、乗客の逃げ道がない地下鉄やトンネル内で深刻な事態となる。リモートリリース機能は、通常、休止状態または非通電状態においては、ブレーキシステムの標準機能に干渉しない空気圧ダイアグラムの位置で、ブレーキシステム内部に取り付けられた電空バルブによって実現される。運転手または任意の自動列車制御システム(TCMS列車制御監視システム(Train Control Monitoring System)等)が、ブレーキシリンダーの特定された残存圧力に基づいて、ブレーキを解除することを決定した時、運転手または自動列車制御システムは、電空リモートリリースバルブを通電させるための動作を実行する。通電状態では、電空リモートリリースバルブは、以下の2つの重要な動作を行わなければならない。すなわち、
-関連付けられたブレーキシリンダーへの圧縮空気の流入を回避し、さらに、他の方向に追加の空気を解放し得る圧縮空気源(大気圧等)からの流入も回避する。
-大気圧下で、関連付けられたブレーキシリンダーに排出を実行させる。
【0029】
本特許出願の
図6として示されるEP2830918の
図1では、電空バルブ「車軸1ホールドMV」と「車軸2ホールドMV」は、それぞれ、電空バルブ6、7および電空バルブ16、17に作用する関連ブレーキシリンダーBCP1、BCP2のそれぞれに対する充填パイロットとして動作する。さらに、電空バルブ「車軸1ベントMV」と「車軸2ベントMV」は、それぞれ、電空バルブ6、7および電空バルブ16、17に作用する関連ブレーキシリンダーBCP1、BCP2のそれぞれに対するベンティングパイロット(venting pilots)として動作する。また、この場合、電空バルブは、ブレーキ圧制御機能およびスリップ防止制御機能のために、統合制御エレクトロニクスによって同時に使用される。
【0030】
上述の両機器は、200km/hを超える速度で動作する鉄道車両/列車用のブレーキシステムの分野に適用可能である。しかしながら、EN15595のセクション4.2.4.3「高速(v>200km/h)用WSPシステムの特別な特徴(Special features of WSP systems for high speeds (v>200km/h))」およびサブチャプターに対応するための追加的な電空コンポーネントの導入は、上記機器によって達成される簡便性と統合性のレベルを落としている。
【0031】
WO2019/053599A1は、常用ブレーキ及び緊急ブレーキ用の制御システムを開示しているが、上記問題は未だに解決されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明の目的は、簡便性およびソリューション統合のレベルを低下させることなく、EN15595のセクション4.2.4.3「高速(v>200km/h)用WSPシステムの特別な特徴(Special features of WSP systems for high speeds (v>200km/h))」およびサブチャプターに対応し得る解決策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、従来のシステムに適用可能である。
【0034】
従って、要約すれば、本発明は、EN15595のセクション4.2.4.3.2およびセクション4.2.4.3.3に記された推奨事項を満たすために、WRM装置に設けられたアクチュエーターとして、ブレーキシステムに存在し、リモートリリース機能を有する電空バルブの利用について開示する。
【0035】
発明の1つの態様によれば、上記目的および他の目的並びに利点は、請求項1において規定される特徴を有する鉄道車両または列車用の少なくとも1つの車軸の回転監視システムによって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に規定されており、その内容は、本明細書の重要な部分として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
次に、以下の添付図面を参照して、本発明に係る鉄道車両および列車用の少なくとも1つの車軸の回転監視システムの、いくつかの好ましい実施形態の機能的および構造的特徴を詳述する。
【
図1】
図1は、従来技術における一式のスリップ防止装置を示している。
【
図2】
図2は、スリップ防止バルブユニットおよびスリップ防止装置の制御回路の詳細を示している。
【
図3】
図3は、冗長パイロットバルブを備えた、既知のスリップ防止バルブアッセンブリを示している。
【
図4】
図4は、既知の統合鉄道ブレーキシステムを示している。
【
図6】
図6は、既知の統合鉄道ブレーキシステムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の複数の実施形態を詳述する前に、本発明は、その適用において、以下、明細書中で述べられ、または図に示される構造の詳細および部品の形状に限定されないということに留意すべきである。本発明は他の実施形態をとることができ、本発明を、様々な方法で、実施または実質的に実施し得る。また、表現および用語は、説明を目的とするものであって、限定として解釈されるものではないことも理解されるべきである。「備える(include)」、「含む(comprise)」、またはそれらのバリエーションは、以下に記述される要素やそれらの均等物、並びに、それらの追加要素およびその均等物を含むことを意味する。
【0038】
図4を参照すると、既に詳述したように、統合鉄道ブレーキシステムは、外部から来る電気信号RRによって操作されるリモートリリース用の電空バルブ20を備えている。
【0039】
この電空バルブ20は、非通電時に、電空充填バルブ10とリレーバルブRVのパイロットチャンバーの間の直接空気圧路(direct pneumatic passage)を構成し、さらに、電空充填バルブ10の機能を妨げない。
【0040】
さらに、電空バルブ20は、非通電時に、電空排出バルブ12の機能を妨げない。電空バルブ20が通電している場合には、外部コマンドの結果として、電空バルブ10の通電/非通電状態にかかわらず、電空バルブ20は、電空バルブ10の排出口からの空気の流出を防ぐ。さらに、電空バルブ20は、電空排出バルブ12の通電/非通電状態にかかわらず、リレーバルブRVのパイロットチャンバーを大気に接続する。
【0041】
以上を踏まえて、有利なことに、リモートリリース電空バルブ20は、WRM装置に設けられたアクチュエーターとして使用される場合、EN15595のセクション4.2.4.3.2およびセクション4.2.4.3.3に記載の推奨事項を満たすことができる。
【0042】
本発明において、電空バルブ20と電空バルブ12の間の空気排出機能の物理的分離は、スリップ防止装置とWRM装置の間に、総合的な物理的冗長性および機能的冗長性を与えることによって、更なる利点を構成する。
【0043】
図3の構成図に対して行われたものと同様の解析は、同じ結論を導く。
【0044】
そのため、本発明の一実施形態によれば、鉄道車両または列車用の少なくとも1つのWRM車軸の回転監視システムは、該回転監視システムによって制御され、所定の瞬間線形限界速度を下回る推定瞬間線形速度を有する少なくとも1つの車軸を特定するよう、構成される。また、鉄道車両または列車用の少なくとも1つのWRM車軸の回転監視システムは、所定の瞬間線形限界速度を下回る推定瞬間線形速度を有すると特定された少なくとも1つの車軸に関連付けられたブレーキシリンダーに対する圧力を打ち消すことにより、所定の瞬間線形限界速度を下回る推定瞬間線形速度を有すると特定された車軸の1つ以上の車輪に対するブレーキ力を解除するよう構成される。
【0045】
所定の瞬間線形限界速度を下回る推定瞬間線形速度を有すると特定された少なくとも1つの車軸に関連付けられたブレーキシリンダーに対する圧力の打ち消しは、リモートリリース機能を実行するために構成された電空バルブRRに作用すること(act)によって得られる。このリモートリリース機能は、該ブレーキシリンダーのブレーキ圧を生成する空気圧回路(pneumatic circuit)に関連付けられ、残存ブレーキ圧を打ち消すように構成されている。
【0046】
次に、WRM装置とリモートリリース機能を実行するバルブとの間の可能であるが排他的ではない統合ソリューションについて詳述する。
【0047】
図5を参照すると、例えばマイクロプロセッサーシステムを構成するWRM装置501は、WRM装置501が、リモートリリース機能を実行する電磁バルブRRを通電させようとするときに、論理レベル「1」をとり、ソレノイド503に供給される信号502を発生させる。信号502は、単安定回路(monostable circuit)507をアクティベートする。単安定回路507の出力508は、自身への入力509となる信号502によって「0」から「1」へ遷移した後、最大時間Tの間、論理レベル「1」をとる。出力508は、時間Tが経過した後に、再び論理レベル値「0」を取る、または、信号502が再び論理レベル「0」を取る場合、その入力「R」510によって単安定回路507はリセットされる。ANDゲート511は、出力信号508によって信号502を条件付けし、リレーのソレノイド505へ供給される電圧レベルが変更可能となるように構成されたドライバー504を駆動する。リレーのソレノイド505の接点506は、直接的に、または、専用の動力供給源を介して、ソレノイド503に圧力V
RRを供給する。単安定回路507およびANDゲート511の組み合わせは、電空リモートリリースバルブの連続的な通電を最大時間Tの範囲内に収める。
【0048】
接点506と並列に配置される接点512は、リモートリリース機能を実行する電空バルブのソレノイド503を、通常の方法で操作するために、ドライバーまたはTCMSシステムに利用可能である。
【0049】
ソレノイド505および接点506で構成されるリレーは、オプト遮断スイッチング素子(opto-isolated switching element)により置き換えられることができる。例えば、これに限定されないが、オプトMOSや機能的に均等な電気回路に置き換え可能である。
【0050】
WRM装置501のソフトウェアが、EN50128の基準に従って、SIL≧3の安全レベルで開発されると、その結果、単安定回路507およびANDゲート511のタイムアウト機能は、WRM装置501のソフトウェアコード内において直接的に実現される。
【0051】
換言すれば、リモートリリース機能を実行するために設けられた電空バルブRRは、ハードウェアタイムアウト回路である単安定回路507、ANDゲート511や、所定の継続時間Tの間、電空バルブRRに関連付けられたソレノイド503の通電コマンドを制限するように構成された、ソフトウェアタイムアウト機能により条件付けされても良い。
【0052】
ソフトウェアタイムアウト機能は、少なくとも1つのWRM車軸の回転監視システムのソフトウェア内において直接的に実現されても良い。
【0053】
所定の継続時間Tは、10秒の値を取ることができる。実際に、継続時間Tを10秒に設定することにより、EN15595のセクション4.2.4.3.3に記された推奨事項を満たすことができる。
【0054】
さらなる態様において、所定の瞬間線形限界速度は、車両の線形基準速度の関数である。
【0055】
本発明に係る鉄道車両および列車用の少なくとも1つの車軸の回転監視システムを実施するための方法のさまざまな態様および実施形態を詳述した。各実施形態は、任意の他の実施形態とも組み合わせが可能であることが理解されるであろう。さらに、本発明は、記述された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内で変更されても良い。