(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】細胞貯蔵・輸送媒体およびシステム、並びに細胞集合体の輸送のための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240920BHJP
C12M 1/18 20060101ALI20240920BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C12N5/071
C12M1/18
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2021570423
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 US2020034120
(87)【国際公開番号】W WO2020242904
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-17
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,グレゴリー ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】パルド,アナ マリア デル ピラール
(72)【発明者】
【氏名】タナー,アリソン ジーン
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05336614(US,A)
【文献】米国特許第03956273(US,A)
【文献】特表2016-520307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 7/08
C12M 1/00 - 3/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養培地、アガロース、およびメチルセルロースの混合物を含む
、スフェロイドまたはオルガノイド細胞のための細胞貯蔵および輸送媒体であって、該貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度
は0.5か
ら1.0%であり、該貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度
は0.5か
ら0.7%であ
り、
前記アガロースが、8~17℃のゲル化温度を有し、
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、4℃で堅いゲルであり、
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、23℃で軟質ゲルであり、および/または
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、37℃で粘性液体である、
細胞貯蔵および輸送媒体。
【請求項2】
スフェロイドまたはオルガノイド細胞のための細胞貯蔵および輸送システムにおいて、
細胞、
細胞培養物品であって、一連のマイクロキャビティを有するチャンバを備え、各マイクロキャビティは、前記細胞を3Dスフェロイド構造で成長させるように構造化されている、細胞培養物品、および
細胞培養培地、アガロース、およびメチルセルロースの混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体であって、該貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度
は0.5か
ら1.0%であり、該貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度
は0.5か
ら0.7%である、細胞貯蔵および輸送媒体、
を備え
、
前記アガロースが、8~17℃のゲル化温度を有し、
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、4℃で堅いゲルであり、
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、23℃で軟質ゲルであり、および/または
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、37℃で粘性液体である、
細胞貯蔵および輸送システム。
【請求項3】
前記チャンバの各マイクロキャビティが、
上部開口、および底部表面を有する液体不透過性底部、
を備え、
前記底部の少なくとも一部は、前記底部表面内または該底部表面上に低付着または非付着材料を含み;
前記底部表面を含む液体不透過性底部が、ガス透過性である、
前記底部表面が、凹形底部表面を含む、
前記底部の少なくとも一部が透明である、
前記凹形底部表面が、半球表面、側壁から前記底部表面まで30か
ら60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む、
前記チャンバの各マイクロキャビティが、側壁をさらに含み、該側壁の表面が、垂直円筒、前記チャンバの上部から前記底部表面まで直径が減少する垂直円錐の一部、前記凹形底部表面まで円錐移行部を有する垂直正方形シャフト、またはその組合せを含む、および/または
前記細胞培養物品が、前記チャンバを1か
ら2,000備え、各チャンバは、どの他のチャンバからも物理的に隔てられている、
請求項2記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【請求項4】
スフェロイドまたはオルガノイド細胞の輸送のための方法において、
a)細胞培養物品内で生細胞を培養して、スフェロイドを形成する工程であって、該細胞培養物品は、一連のマイクロキャビティを有するチャンバを備え、各マイクロキャビティは、該細胞を3Dスフェロイド構造で成長させるように構造化されている、工程、
b)前記細胞培養物品に、細胞培養培地、アガロース、およびメチルセルロースの混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体を添加する工程であって、該貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度
は0.5か
ら1.0%であり、該貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度
は0.5か
ら0.7%である、工程、
c)前記細胞貯蔵および輸送媒体を固化させる工程、および
d)前記細胞培養物品を輸送する工程、
を有してな
り、
前記アガロースが、8~17℃のゲル化温度を有し、
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、4℃で堅いゲルであり、
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、23℃で軟質ゲルであり、および/または
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、37℃で粘性液体である、
細胞の輸送のための方法。
【請求項5】
前記チャンバの各マイクロキャビティが、
上部開口、および底部表面を有する液体不透過性底部、
を備え、
前記底部の少なくとも一部は、前記底部表面内または該底部表面上に低付着または非付着材料を含み;
前記底部表面を含む液体不透過性底部が、ガス透過性である、
前記底部表面が、凹形底部表面を含む、
前記底部の少なくとも一部が透明である、
前記凹形底部表面が、半球表面、側壁から前記底部表面まで30か
ら60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む、
前記チャンバの各マイクロキャビティが、側壁をさらに含み、該側壁の表面が、垂直円筒、前記チャンバの上部から前記底部表面まで直径が減少する垂直円錐の一部、前記凹形底部表面まで円錐移行部を有する垂直正方形シャフト、またはその組合せを含む、および/または
前記細胞培養物品が、前記チャンバを1か
ら2,000備え、各チャンバは、どの他のチャンバからも物理的に隔てられている、
請求項4記載の細胞の輸送のための方法。
【請求項6】
前記工程b)が、37℃で培養下の前記細胞に前記細胞貯蔵および輸送媒体を添加する工程を含む、
前記工程c)が
、4℃以下の温度で行われる、および/または
前記工程d)が
、4℃の温度で行われる、
請求項4または5記載の細胞の輸送のための方法。
【請求項7】
輸送時間が、48または72時間以下である
、請求項4から6いずれか1項記載の細胞の輸送のための方法。
【請求項8】
前記細胞培養チャンバを密封する工程を含む、
請求項4から7いずれか1項記載の細胞の輸送のための方法。
【請求項9】
e)輸送された前記細胞を回収する工程をさらに含み;
前記工程e)が、前記輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む、
前記工程e)が、少なくと
も1時間に亘
り37℃で前記細胞培養物品をインキュベーションする工程、およびその後、前記輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む、
前記工程e)が
、37℃の細胞培養培地を前記輸送媒体に添加する工程、少なくと
も1時間に亘
り37℃で前記細胞培養物品をインキュベーションする工程、および該輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む、または
前記工程e)が、少なくと
も1時間に亘
り37℃で前記細胞培養物品をインキュベーションする工程、およびその後、前記輸送媒体を取り出し、該細胞培養物品から3Dスフェロイド細胞を抽出する工程を含む、
請求項4から8いずれか1項記載の細胞の輸送のための方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2019年5月30日に出願された米国仮特許出願第62/854556号の米国法典第35編第120条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、アガロースおよびメチルセルロース貯蔵および輸送媒体、細胞貯蔵および輸送のためのシステム、並びに細胞貯蔵および輸送方法に関する。特別な態様において、その輸送媒体、システム、および方法は、3Dスフェロイドまたはオルガノイド培養物を、貯蔵および輸送中におけるスフェロイド細胞(例えば、血球細胞)の生存能力および機能性の保護および長期に亘る維持を可能にするガス透過性のマイクロパターン化デザインと組み合わせる実験機器と組み合わされて使用される、またはその実験機器内で実施される。
【背景技術】
【0003】
スフェロイドなどの、三次元で培養された細胞は、単層として二次元で培養されたその対応物よりもインビボのような機能性を示すことができる。特に、三次元で培養された細胞は、細胞同士のコミュニケーションおよび細胞外基質の開発の観点から、インビボ組織に一層厳密に似ている。それゆえ、数多くのバイオテクノロジー関連分野における様々な細胞培養試験および検査のために、スフェロイドなどの3D培養細胞の貯蔵および輸送の需要がますます増えている。しかしながら、スフェロイドを含む3D培養細胞の貯蔵および輸送は、依然として難題である。二次元の細胞培養システムにおいて、細胞は基体に付着することができ、その上で細胞は培養される。しかしながら、スフェロイドまたはオルガノイドなどの細胞が三次元で成長するときに、その細胞は、基体に付着するよりも、互いに相互作用して、そのような細胞が、貯蔵および輸送過程中の撹乱のために、細胞の生存能力の損傷および完全性の損傷、さらに細胞死をより被りやすくなる。それゆえ、スフェロイドなどの、三次元で培養された貯蔵細胞を輸送することは難しい。アガロースは、非結合表面であるので、3D細胞培養のための支持体として使用されてきた。アガロース中の細胞の回収は、典型的に、細胞が耐えられない温度でアガロースを溶融し、培養された細胞に、細胞の生存能力の損傷および死さえもたらす工程を含む。さらに、培養システムの輸送媒体にアガロースを使用するには、大抵、アガロースの除去を促進し、それゆえ、細胞を放出させて、輸送培養物を形成するために、アガラーゼおよび余計な工程を使用する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、代わりの輸送媒体、細胞の貯蔵および輸送のためのシステム、並びに細胞貯蔵および輸送方法、より詳しくは、貯蔵および輸送中に、スフェロイドまたはオルガノイド細胞の生存能力および機能性の保護および長期に亘る維持を可能にする、代わりの輸送媒体、細胞の貯蔵および輸送のためのシステム、並びに細胞貯蔵および輸送方法が、引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の様々な実施の形態によれば、アガロースおよびメチルセルロース輸送媒体、細胞の貯蔵および輸送のためのシステム、並びに細胞貯蔵および輸送方法が開示されている。特別な態様において、その輸送媒体、システム、および方法は、3Dスフェロイドまたはオルガノイド培養物を、貯蔵および輸送中におけるスフェロイド細胞(例えば、血球細胞)の生存能力および機能性の保護および長期に亘る維持を可能にするガス透過性のマイクロパターン化デザインと組み合わせる実験機器と組み合わされて使用される、またはその実験機器内で実施される。
【0006】
様々な実施の形態において、細胞貯蔵および輸送媒体が開示されている。態様において、細胞貯蔵および輸送媒体は、細胞培養培地、アガロースおよびメチルセルロースの混合物を含み、この貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は約0.5から約1.0%であり、この貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は約0.5から約0.7%である。
【0007】
細胞貯蔵および輸送媒体のいくつかの態様において、アガロースは、超低ゲル化温度アガロース(「ARG-L」と略されることがある)である。いくつかの態様において、そのアガロースは、8~17℃のゲル化温度を有する。いくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、4℃で堅いゲルである。いくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、23℃で軟質ゲルである。いくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、37℃で粘性液体である。
【0008】
様々な実施の形態において、細胞貯蔵および輸送システムが開示されている。態様において、そのシステムは、細胞;細胞培養物品であって、一連のマイクロキャビティを有するチャンバを備え、各マイクロキャビティは、細胞を3Dスフェロイドまたはオルガノイド構造で成長させるように構造化されている、細胞培養物品;およびアガロースおよびメチルセルロースの混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体であって、その貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は約0.5から約1.0%であり、その貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は約0.5から約0.7%である、細胞貯蔵および輸送媒体を備える。
【0009】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、細胞培養物品のチャンバの各マイクロキャビティは、上部開口および底部表面を有する液体不透過性底部を備える。実施の形態において、底部表面の少なくとも一部は、その底部表面内または底部表面上に低付着または非付着材料を含む。いくつかの実施の形態において、底部表面を含む液体不透過性底部は、ガス透過性である。いくつかの実施の形態において、底部の少なくとも一部は透明である。
【0010】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、底部表面は、凹形底部表面を含む。いくつかの実施の形態において、チャンバの各マイクロキャビティの少なくとも1つの凹形表面は、半球表面、側壁から底部表面まで30から約60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む。
【0011】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、チャンバは、側壁をさらに含む。いくつかの実施の形態において、チャンバの各マイクロキャビティの側壁表面は、垂直円筒、チャンバの上部から底部表面まで直径が減少する垂直円錐の一部、少なくとも1つの凹形底部表面まで円錐移行部を有する垂直正方形シャフト、またはその組合せを含む。
【0012】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、細胞培養物品は、吸引のためのピペットチップを受け入れるためのチャンバ付属物をさらに備え、そのチャンバ付属物は、チャンバに隣接し、流体連通した表面を含み、そのチャンバ付属物は、底部表面から間隔が離れ、その上のある高さにある第2の底部を有し、その第2の底部は、ピペットから分配される流体を底部表面から離れるようにそらせる。
【0013】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、細胞培養物品は、1から約2,000のチャンバを備え、各チャンバは、どの他のチャンバからも物理的に隔てられている。いくつかの実施の形態において、各チャンバは、平方センチメートル当たり約1から約800のマイクロキャビティを含む。
【0014】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、細胞貯蔵および輸送媒体のアガロースは、超低ゲル化温度アガロースである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、そのアガロースは、8~17℃のゲル化温度を有する。いくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、4℃で堅いゲルである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、23℃で軟質ゲルである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、37℃で粘性液体である。
【0015】
様々な実施の形態において、細胞の輸送のための方法が開示されている。態様において、細胞の輸送のための方法は、a)細胞培養物品内で生細胞を培養して、スフェロイドまたはオルガノイドを形成する工程であって、その細胞培養物品は、一連のマイクロキャビティを有するチャンバを備え、各マイクロキャビティは、細胞を3Dスフェロイドまたはオルガノイド構造で成長させるように構造化されている、工程;b)その細胞培養物品に、細胞培養培地、アガロースおよびメチルセルロースの混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体を添加する工程であって、その貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は0.5から1.0%であり、その貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は0.5から0.7%である、工程;c)その細胞貯蔵および輸送媒体を固化させる工程;およびd)細胞培養物品を輸送する工程を有してなる。
【0016】
細胞の輸送のための方法の態様において、細胞培養物品のチャンバの各マイクロキャビティは、上部開口および底部表面を有する液体不透過性底部を備える。態様において、底部表面の少なくとも一部は、その底部表面内または底部表面上に低付着または非付着材料を含む。いくつかの態様において、底部表面を含む液体不透過性底部は、ガス透過性である。いくつかの態様において、底部の少なくとも一部は透明である。
【0017】
細胞の輸送のための方法の態様において、底部表面は、凹形底部表面を含む。いくつかの態様において、チャンバの各マイクロキャビティの少なくとも1つの凹形表面は、半球表面、側壁から底部表面まで30から約60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む。
【0018】
細胞の輸送のための方法の態様において、チャンバは、側壁をさらに含む。いくつかの実施の形態において、チャンバの各マイクロキャビティの側壁の表面は、垂直円筒、チャンバの上部から底部表面まで直径が減少する垂直円錐の一部、少なくとも1つの凹形底部表面まで円錐移行部を有する垂直正方形シャフト、またはその組合せを含む。
【0019】
細胞の輸送のための方法の態様において、細胞培養物品は、吸引のためのピペットチップを受け入れるためのチャンバ付属物をさらに備え、そのチャンバ付属物は、チャンバに隣接し、流体連通した表面を含み、そのチャンバ付属物は、底部表面から間隔が離れ、その上のある高さにある第2の底部を有し、その第2の底部は、ピペットから分配される流体を底部表面から離れるようにそらせる。
【0020】
細胞の輸送のための方法の態様において、細胞培養物品は、1から約2,000のチャンバを備え、各チャンバは、どの他のチャンバからも物理的に隔てられている。いくつかの実施の形態において、各チャンバは、平方センチメートル当たり約1から約800のマイクロキャビティを含む。
【0021】
細胞の輸送のための方法の態様において、細胞貯蔵および輸送媒体のアガロースは、超低ゲル化温度アガロースである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、そのアガロースは、8~17℃のゲル化温度を有する。いくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、4℃で堅いゲルである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、23℃で軟質ゲルである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、37℃で粘性液体である。
【0022】
細胞の輸送のための方法の態様において、工程b)は、37℃で培養下の細胞に細胞貯蔵および輸送媒体を添加する工程を含む。
【0023】
細胞の輸送のための方法の態様において、工程c)は、約4℃以下の温度で行われる。細胞の輸送のための方法の態様において、工程d)は、約4℃以下の温度で行われる。
【0024】
細胞の輸送のための方法の態様において、輸送時間は、48または72時間以下である。
【0025】
細胞の輸送のための方法の態様において、前記方法は、輸送前に細胞培養チャンバを密封する工程を含む。
【0026】
細胞の輸送のための方法の態様において、この方法は、e)輸送された細胞を回収する工程をさらに含む。態様において、工程e)は、細胞貯蔵および輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む。態様において、工程e)は、少なくとも約1時間に亘り約37℃で細胞培養物品をインキュベーションする工程;およびその後、細胞貯蔵および輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む。態様において、工程e)は、約37℃の細胞培養培地を細胞貯蔵および輸送媒体に添加する工程;少なくとも約1時間に亘り約37℃で細胞培養物品をインキュベーションする工程;および細胞貯蔵および輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む。態様において、工程e)は、少なくとも約1時間に亘り約37℃で細胞培養物品をインキュベーションする工程;およびその後、細胞貯蔵および輸送媒体を取り出し、細胞培養物品から3Dスフェロイドまたはオルガノイド細胞を抽出する工程を含む。
【0027】
本開示の主題の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、の並びに添付図面を含む、ここに記載されたような本開示の主題を実施することによって、認識されるであろう。
【0028】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、本開示の主題の実施の形態を提示しており、請求項に記載されたような本開示の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する意図があることを理解すべきである。添付図面は、本開示の主題のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、本開示の主題の様々な実施の形態を示しており、説明とともに、本開示の主題の原理および作動を説明する働きをする。それに加え、図面および記載は、単に実例であることを目的としており、請求項の範囲をいかようにも限定する意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本開示の具体的な実施の形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号により示されている、以下の図面とともに読まれたときに、最もよく理解することができる。
【
図1A】96ウェルの各々に多数のスフェロイドを提供するために各ウェルの底部表面上に一連のマイクロキャビティを有する、マルチウェルマイクロプレート、この場合、96ウェルスフェロイドマイクロプレートの実施の形態を示し、マルチウェルマイクロプレートを示す図
【
図1B】96ウェルの各々に多数のスフェロイドを提供するために各ウェルの底部表面上に一連のマイクロキャビティを有する、マルチウェルマイクロプレート、この場合、96ウェルスフェロイドマイクロプレートの実施の形態を示し、マルチウェルマイクロプレートの1つのウェルを示す図
【
図1C】96ウェルの各々に多数のスフェロイドを提供するために各ウェルの底部表面上に一連のマイクロキャビティを有する、マルチウェルマイクロプレート、この場合、96ウェルスフェロイドマイクロプレートの実施の形態を示し、
図1Bにおける四角形C内に示された1つのウェルの底部表面の区域の拡大図
【
図2B】追加の例示の一連のマイクロキャビティの説明図
【
図4】画像の上から、4℃で、輸送媒体の稠度は堅いゲルであり;室温(RT、23℃)で、輸送媒体の稠度は軟質ゲルであり;37℃で、輸送媒体は粘性液体である、異なる温度での細胞貯蔵および輸送媒体の実施の形態の稠度を示す写真である。これは、ゲルが管の下端に向かって移動するのを可能にするわずかな角度で保持された管内の輸送媒体(ピンク色の材料)の濃さによって、画像において検出できる。細胞貯蔵および輸送媒体は、細胞培養培地の、超低ゲル化温度アガロース(AGR-L)およびメチルセルロース(Mc)との組合せである。
【
図5A】貯蔵温度が4℃から室温まで変化するときの溶液の稠度を評価するための室温での細胞貯蔵および輸送媒体配合物の画像である。1%AGR0L/1%Mc配合物を示す。
【
図5B】貯蔵温度が4℃から室温まで変化するときの溶液の稠度を評価するための室温での細胞貯蔵および輸送媒体配合物の画像である。1%AGR0L/0.7%Mc配合物を示す。
【
図5C】貯蔵温度が4℃から室温まで変化するときの溶液の稠度を評価するための室温での細胞貯蔵および輸送媒体配合物の画像である。1%AGR0L/0.5%Mc配合物を示す。
【
図5D】貯蔵温度が4℃から室温まで変化するときの溶液の稠度を評価するための室温での細胞貯蔵および輸送媒体配合物の画像である。1%AGR0L/0.35%Mc配合物を示す。
【
図6】室温に到達した後の、60mmの皿内の1%AGR-Lの細胞貯蔵および輸送媒体配合物の画像を示す。左から右に、1%AGR-L/0.35%Mc、1%AGR-L/0.5%Mc、1%AGR-L/0.7%Mc、および1%AGR-L/1%Mcを示す。室温での細胞貯蔵および輸送媒体配合物の稠度を示すために、皿を前方に傾けた。
【
図7A】4℃での低温貯蔵後の細胞貯蔵および輸送媒体配合物の画像である。0.5%AGR-L/1%Mc配合物を示す。
【
図7B】4℃での低温貯蔵後の細胞貯蔵および輸送媒体配合物の画像である。0.5%AGR-L/0.7%Mc配合物を示す。
【
図7C】4℃での低温貯蔵後の細胞貯蔵および輸送媒体配合物の画像である。0.5%AGR-L/0.5%Mc配合物を示す。
【
図7D】4℃での低温貯蔵後の細胞貯蔵および輸送媒体配合物の画像である。0.5%AGR-L/0.35%Mc配合物を示す。
【
図8】室温に到達した後の、60mmの皿内の0.5%AGR-Lの細胞貯蔵および輸送媒体配合物の画像を示す。左から右に、0.5%AGR-L/0.35%Mc、0.5%AGR-L/0.5%Mc、0.5%AGR-L/0.7%Mc、および0.5%AGR-L/1.0%Mcを示す。室温での細胞貯蔵および輸送媒体配合物の稠度を示すために、皿を前方に傾けた。
【
図9】三回の希釈/加熱サイクルおよび液化/軟化材料の除去後に残留した細胞貯蔵および輸送媒体配合物材料を含む60mmの皿の画像を示す。識別目的のために覆われた皿を示し、上の列の試料は、左から右に、1.0%AGR-L/1%Mc、1.0%AGR-L/0.7%Mc、1.0%AGR-L/0.5%Mc、および1.0%AGR-L/0.35%Mcを含み、一方で、下の列の試料は、左から右に、0.5%AGR-L/1.0%Mc、0.5%AGR-L/0.7%Mc、0.5%AGR-L/0.5%Mc、および0.5%AGR-L/0.35%Mcを含む。
【
図10A】1%AGR-L/0.7%Mc配合物(対照)に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。適所に残っている4℃の貯蔵後の培養物の画像を示す。
【
図10B】1%AGR-L/0.7%Mc配合物(対照)に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。表面を覆うゲル状材料の形態でTMの約20%が容器内に残っている、三回の希釈サイクル後の画像を示す。細胞貯蔵および輸送媒体の除去後に、スフェロイドはいくぶん不規則に見える。
【
図10C】1%AGR-L/0.7%Mc配合物(対照)に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。回収期間にある、細胞貯蔵および輸送媒体の除去から24時間後の培養物の画像を示す。
【
図11A】0.5%AGR-L/0.7%Mc配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。適所に残っている4℃の貯蔵後の培養物の画像を示す。
【
図11B】0.5%AGR-L/0.7%Mc配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。三回の希釈サイクル後に培養容器から細胞貯蔵および輸送媒体の99%が除去された後の、スフェロイドの損失が最小の画像を示す。
【
図11C】0.5%AGR-L/0.7%Mc配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。回収期間にある、細胞貯蔵および輸送媒体の除去から24時間後の培養物の画像を示す。
【
図12A】0.5%AGR-L/0.5%Mc配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。4℃の貯蔵後であって、マイクロキャビティからいくつかのスフェロイドが取り除かれた培養物の画像を示す。
【
図12B】0.5%AGR-L/0.5%Mc配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。三回の希釈サイクル後に培養容器から細胞貯蔵および輸送媒体の99%が除去された後の、スフェロイドの損失が最小の画像を示す。
【
図12C】0.5%AGR-L/0.5%Mc配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。回収期間にある、細胞貯蔵および輸送媒体の除去から24時間後の培養物の画像を示す。マイクロキャビティ内に、微量の細胞貯蔵および輸送媒体が観察された。
【
図13A】0.5%AGR-L/0.35%Mc配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。4℃の貯蔵後の培養物の画像を示す。
【
図13B】0.5%AGR-L/0.35%Mc配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。三回の希釈サイクル後に培養容器から細胞貯蔵および輸送媒体の99%が除去された後の、スフェロイドの損失が著しい画像を示す。
【
図13C】0.5%AGR-L/0.35%Mc配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。回収期間にある、細胞貯蔵および輸送媒体の除去から24時間後の培養物の画像を示す。
【
図14】スフェロイドの健康に関連する結果を示す。スフェロイド細胞の健康を、スフェロイドの成長(サイズ測定)によりモニタした。サイズ測定は、細胞貯蔵および輸送媒体配合物の添加前、4℃での貯蔵後、および細胞貯蔵および輸送媒体配合物の除去を含む、48時間後の出荷後試験評価時に行った。測定値(
図14)は、低温貯蔵後または回収段階中にマイナスの副作用(スフェロイドの解離またはサイズの変化)を示していない。
【
図15A】緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識付けられたHT-29細胞の画像である。10%のFBSを含む、マッコイの通常細胞培養成長培地内の細胞を示す。
【
図15B】緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識付けられたHT-29細胞の画像である。24時間に亘る4℃での貯蔵後の細胞貯蔵および輸送媒体(この場合、0.5%の超低ゲル化温度アガロース/0.7%のR&D Systemsのメチルセルロース媒体)中の細胞を示す。
【
図15C】緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識付けられたHT-29細胞の画像である。細胞貯蔵および輸送媒体が除去され、成長培地と交換されて24時間後の細胞を示す。
【
図15D】緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識付けられたHT-29細胞の画像である。細胞貯蔵および輸送媒体が除去され、細胞死を検出するために細胞がヨウ化プロピジウムで染色されて48時間後の細胞を示す。細胞死は検出されなかった。
【
図16】細胞貯蔵および輸送媒体(この場合、0.5%の超低ゲル化温度アガロース/0.7%のR&D Systemsのメチルセルロース媒体)を評価するために使用される条件を詳述する模擬輸送試験過程の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ここで、そのいくつかの実施の形態が添付図面に示されている、本開示の主題の様々な実施の形態をより詳しく参照する。図面に使用される同様の番号は、同様の構成要素、工程などを指す。しかしながら、所定の図面においてある構成要素を指すための番号の使用は、同じ番号が付された別の図面における構成要素を限定する意図はないことが理解されよう。それに加え、構成要素を指すための異なる番号の使用は、その異なる番号が付された構成要素は、他の番号が付された構成要素と同じまたは同様であり得ないことを示す意図はない。
【0031】
特定の実施の形態の以下の記載は、事実上、単に例示であり、本発明の範囲、その用途、または使途を限定することは決して意図されておらず、それらは、もちろん、様々であってよい。本発明は、ここに含まれる非限定的定義および専門用語に関して記載されている。これらの定義および専門用語は、本発明の範囲または実施に対する限定として機能するように意図されておらず、説明および記述目的のみのために提示されている。特に明記のない限り、ここに使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般に使用される辞書に定義されている用語などの用語は、従来の技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、ここにそのように明白に定義されない限り、理想化されたまたは形式ばった意味で解釈されないことがさらに理解されよう。
【0032】
定義
ここに用いられているように、名詞は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数の対象も指す。それゆえ、例えば、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、「構造化された底部表面」への言及は、そのような「構造化された底部表面」を2つ以上有する例も含む。
【0033】
本明細書および付随の特許請求の範囲に使用されているように、「または」という用語は、一般に、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、「および/または」を含む意味で用いられる。「および/または」という用語は、列挙された要素の内の1つまたは全て、もしくは列挙された要素のいずれか2つ以上の組合せを意味する。
【0034】
ここに用いられているように、「持つ」、「有する」、「含む」などは、制約のない包括的意味で使用され、一般に、「含むが、それに限定されない」ことを意味する。
【0035】
「随意的」または「必要に応じて」は、その後に記載された事象、状況、または構成要素が、生じ得るまたは生じ得ないこと、およびその記載が、その事象、状況、または構成要素が生じる場合と、生じない場合を含むことを意味する。
【0036】
「好ましい」および「好ましくは」という単語は、特定の状況下で、特定の恩恵を受けるであろう本開示の実施の形態を称する。しかしながら、他の実施の形態も、同じまたは他の状況下で、好ましいこともある。さらに、1つ以上の好ましい実施の形態の記述は、他の実施の形態が有用ではないことを暗示せず、本発明の技術の範囲から他の実施の形態を排除する意図はない。
【0037】
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとここに表現することができる。そのような範囲が表現された場合、例は、その1つの特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が、「約」という先行詞の使用により、近似として表現されている場合、その特定の値は、別の態様を形成することが理解されよう。範囲の各々の端点が、他方の端点に関してと、他方の端点とは関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0038】
また、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に含まれる全ての数を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本明細書に亘り与えられた全ての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に入る全てのより狭い数値範囲を、そのようなより狭い数値範囲がここに全て明白に記載されているかのように、含むことをさらに理解すべきである。値の範囲が、特定の値「より大きい」、「より小さい」などである場合、その値は、その範囲内に含まれる。
【0039】
「上部」、「底部」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、「より上」、「より下」、並びに他の方向および向きなど、ここに挙げられたどの方向も、図面に関して明確にするためにここに記載され、実際のデバイスまたはシステムもしくはそのデバイスまたはシステムの使用を限定するものではない。ここに記載されたデバイス、物品またはシステムの多くは、多数の方向および向きで使用してよい。細胞培養装置に関してここに使用される方向の記述子は、大抵、その装置が装置内で細胞を培養する目的のために方向付けられている場合の方向を称する。
【0040】
ここでの記載は、特定の様式で機能するように「作られている」または「適合されている」構成要素を称することにも留意のこと。この点に関して、そのような構成要素は、そのような記載が、目的の用途の記載とは対照的に、構造的記載である場合、特定の性質を具体化する、または特定の様式で機能するように、「作られている」または「適合されている」。より詳しくは、ある構成要素が「作られている」または「適合されている」様式に対するここでの記載は、その構成要素の既存の物理的条件を意味し、それゆえ、その構成要素の構造的特徴の明白な記載として解釈すべきである。
【0041】
ここに用いられているように、「細胞培養」という用語は、細胞をインビトロで生存させていることを称する。この用語内に、連続細胞株(例えば、不死の表現型を有する)、初代細胞培養物、有限細胞株(例えば、非形質転換細胞)、および卵母細胞と胚を含む、インビトロで維持された任意の他の細胞集団が含まれる。
【0042】
ここに用いられているように、「細胞培養培地」という用語は、細胞を成長または維持するのに使用される栄養源(態様において、液体またはゲル)を称する。当業者により理解されるように、その栄養源は、成長および/または生存のために細胞が必要とする培地成分を含有することがある、または細胞成長および/または生存を支援する成分を含有することがある。ビタミン、必須および非必須アミノ酸、タンパク質、炭水化物、脂質、ホルモン、成長因子、無機物、血清、および微量元素が、培地成分の例である。
【0043】
ここに用いられているように、「インビトロ」という用語は、人工環境、および人工環境内で生じる過程または反応を称する。インビトロ環境は、以下に限られないが、試験管および細胞培養物を含み得る。「インビボ」という用語は、自然環境(例えば、動物または細胞)、および自然環境内で生じる過程または反応を称する。
【0044】
ここに用いられているように、「長期培養」は、少なくとも約12時間に亘り、必要に応じて、少なくとも約24時間に亘り、少なくとも約48時間に亘り、または少なくとも約72時間に亘り、少なくとも約96時間、少なくとも約7日間、少なくとも約14日間、少なくとも約21日間、または少なくとも約28日間に亘り、培養された細胞(例えば、以下に限られないが、肝細胞)を称する意図がある。長期の培養により、培養物内の、代謝経路などの機能特性の確立が促進される。
【0045】
ここに用いられているように、「細胞培養物品」という用語は、細胞を培養するのに有用な任意の容器を意味し、プレート、ウェル、フラスコ、マルチウェルプレート、多層フラスコ、Transwell(登録商標)挿入物、「Transwell」マイクロキャビティ挿入物、および細胞培養のための環境を提供するかん流システムを含む。
【0046】
態様において、「ウェル」は、マルチウェルプレートの形態で与えられる個々の細胞培養環境である。実施の形態において、ウェルは、4ウェルプレート、5ウェルプレート、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート、1536ウェルプレート、またはどの他のマルチウェルプレートの構造のウェルであって差し支えない。
【0047】
ここに用いられているように、「関心のある細胞を3D構造で成長させるように構造化された」チャンバ、ウェル、マイクロウェル、またはマイクロキャビティは、培養下の細胞を、細胞の二次元シートではなく、3Dまたはスフェロイド構造で成長するように仕向ける、寸法または処理、もしくは寸法と処理の組合せを有するチャンバ、ウェル、マイクロウェル、またはマイクロキャビティを意味する。処理には、例えば、低結合溶液による処理、表面の疎水性を弱める処理、または殺菌のための処理がある。
【0048】
ここに用いられているように、「与えるように構造化された」または「与えるように作られた」とは、物品が、記載された結果を与える特徴を有することを意味する。
【0049】
態様において、1つの「スフェロイドウェル」は、関心のある細胞を、その1つのスフェロイドウェル内で、1つの3D細胞塊として、または1つのスフェロイド(オルガノイドを形成するように分化されていてもよい)として、成長させるように構造化されたマルチウェルプレートのウェルであり得る。例えば、96ウェルプレートのウェル(従来の96ウェルプレートのウェル)は、深さが約10.67mmであり、約6.86mmの上部開口、および約6.35mmのウェルの底部直径を有する。
【0050】
態様において、「スフェロイドプレート」は、一連の単一スフェロイドウェルを有するマルチウェルプレートを意味する。
【0051】
態様において、ウェルは、一連の「マイクロキャビティ」を有することがある。実施の形態において、「マイクロキャビティ」は、例えば、上部開口と底、上部開口の中心、および底と上部開口の中心との間の中心軸を画成するマイクロキャビティであり得る。実施の形態において、そのウェルは、その軸の周りに回転対称である(すなわち、側壁は円筒である)。いくつかの実施の形態において、その上部開口は、250μmから6mmの、またはそれらの測定値内の任意の範囲の上部開口に亘る距離を規定する。いくつかの実施の形態において、その上部開口から底までの距離(深さ「d」)は、200μmと6mmの間、または400μmと600μmの間である。一連のマイクロキャビティは、異なる形状、例えば、放物型、双曲型、逆V字型、および断面形状、またはその組合せを有することがある。
【0052】
態様において、「マイクロキャビティスフェロイドプレート」は、各々が一連のマイクロキャビティを有する一連のウェルを有するマルチウェルプレートを意味する。
【0053】
態様において、ウェルまたはマイクロキャビティウェルの「丸底」は、例えば、半球、もしくはウェルまたはマイクロキャビティの底部を構成する半球の水平部分または薄片などの半球の一部であり得る。
【0054】
態様において、「3Dスフェロイド」または「スフェロイド」という用語は、例えば、培養下の細胞のボールであり得、これは、細胞の平らな二次元シートではない。「3Dスフェロイド」および「スフェロイド」という用語は、ここでは互いに交換可能に使用される。態様において、スフェロイドは、単一の細胞型または多数の細胞型からなり、この細胞型は、分化して、例えば、スフェロイドまたはオルガノイド中の細胞の型に応じて、中間値および中間範囲を含む、例えば、約100マイクロメートルから約5mmの直径を有するオルガノイドを形成することがある。スフェロイドの直径は、壊死性コアの形成を避けるために、例えば、約100から約400マイクロメートルであり得る。スフェロイドの最大サイズは、一般に、拡散検討事項により、400μmに制約される(スフェロイドおよびスフェロイド容器の検討について、Achilli, T-M,等、Expert Opin. Biol. Ther. (2012年)12(10)参照のこと)。
【0055】
ここに用いられているように、「挿入物」は、スフェロイドプレートまたはマイクロキャビティスフェロイドプレートのウェルに収まる細胞培養ウェルを意味する。その挿入物は、細胞を培養するためのキャビティを画成する側壁および底部表面を有する。ここに用いられているように、「「Transwell」マイクロキャビティ挿入物」は、底部表面が一連のマイクロキャビティを有する挿入物を意味する。
【0056】
ここに用いられているように、「挿入プレート」は、マルチウェルプレートの一連のウェルに収まるように構造化された一連の挿入物を含有する挿入プレートを意味する。ここに用いられているように、「マイクロキャビティ挿入プレート」は、一連の挿入物における各挿入物が、一連のマイクロキャビティを持つ底部表面を有する挿入プレートを意味する。
【0057】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを要求するものと解釈されることは決して意図されていない。したがって、方法の請求項は、その工程がしたがうべき順序を実際に列挙していない場合、またはその工程が特定の順序に限定されるべきことが、特許請求の範囲または記載に他に具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も推測されることは決して意図されていない。いずれか1つの請求項におけるどの列挙された1つまたは複数の特徴または態様は、どの他の請求項におけるどの他の列挙された特徴または態様と組み合わされても、もしくは順序が変えられても差し支えない。
【0058】
特定の実施の形態の様々な特徴、要素または工程が、「含む」という移行句を使用して開示されることがあるが、移行句「からなる」または「から実質的になる」を使用して記載されることがあるものを含む代わりの実施の形態が暗示されることを理解すべきである。
【0059】
先に述べたように、スフェロイドまたはオルガノイドなど、三次元で培養された細胞は、単層として二次元で培養されたその対応物よりも、よりインビボのような機能性を示すことができる。特に、三次元で培養された細胞は、細胞同士のコミュニケーションおよび細胞外基質の発生に関して、インビボ組織に一層密接に似ている。それゆえ、非常に多くのバイオテクノロジー関連分野における様々な細胞培養試験および検査のために、スフェロイドおよびオルガノイドなどの3D培養細胞を貯蔵および輸送する需要がますます増えている。しかしながら、スフェロイドおよびオルガノイドを含む3D培養細胞の貯蔵および輸送は、依然として難題である。二次元細胞培養システムにおいて、細胞は基体に付着することができ、その上で細胞は培養される。しかしながら、スフェロイドおよびオルガノイドなどの細胞が三次元で成長するときの多くの場合、その細胞は、基体に付着するよりもむしろ、互いに相互作用して、そのような細胞は、貯蔵および輸送過程中の撹乱のために、細胞の生存能力の損傷および完全性の損傷、さらに細胞死をより被りやすくなる。それゆえ、スフェロイドおよびオルガノイドなど、三次元で培養された貯蔵細胞を輸送することは難しい。
【0060】
本開示は、数ある中でも、細胞貯蔵および輸送のためのアガロースおよびメチルセルロース輸送媒体、システム、および3Dスフェロイドおよびオルガノイドを含む、3D培養細胞の細胞貯蔵および輸送方法を記載する。本出願の発明者等は、予期せぬことに、細胞培養培地において特定の濃度範囲のメチルセルロースと組み合わされた特定濃度の特殊なアガロースを使用すると、3Dスフェロイドまたはオルガノイド細胞培養貯蔵および輸送に理想的に適した細胞貯蔵および輸送媒体が得られることを見いだした。現在開示されているアガロースおよびメチルセルロース細胞貯蔵および輸送媒体は、4℃辺りで堅いゲルであり、23℃辺りで軟質ゲルであり、37℃で粘性液体である。それゆえ、この細胞貯蔵および輸送媒体は、3Dスフェロイドおよびオルガノイド細胞を、4~37℃の温度範囲での貯蔵/輸送/取扱いを可能にする。これらの温度は、細胞の生存能力および代謝活動を維持するための最適温度である。多くの細胞型の成長に最適な温度が37℃辺りである一方で、これより高い温度は、細胞の生存能力および統合性に悪影響を及ぼし得るので、このことは重要である。4℃に至るまで、細胞成長にとってのこの最適温度より低い温度では、細胞代謝が減少するか、または遅くなるが、細胞は、生存能力および統合性を維持し、正常または最適成長条件(例えば、37℃辺り)に戻されると、正常な成長活動に戻ることができる。重ねて、現在開示されている細胞貯蔵および輸送媒体は、4℃辺りで堅いゲルであり、23℃辺りで軟質ゲルであり、37℃で粘性液体である。これにより、4℃で3Dスフェロイドまたはオルガノイド細胞の輸送が可能になる。何故ならば、この細胞貯蔵および輸送媒体は固体ゲルのように挙動し、それゆえ、輸送中に細胞の生存能力および統合性を維持するのに十分な強度を与えるからである。さらに、この固体ゲル状態は、37℃で液体状態に変わり、3Dスフェロイドまたはオルガノイド細胞培養物の取扱いおよび回収を可能にすることができる。重要なことには、特定の濃度範囲のメチルセルロースおよび細胞培養培地と組み合わされた現在開示されている濃度の特殊なアガロースを使用すると、4℃辺りで、ゲルを通るガス輸送に抵抗しない(例えば、酸素および二酸化炭素がゲルを通過する)堅いゲルを形成することができ、それゆえ、4℃辺りでの輸送中に、3Dスフェロイドまたはオルガノイド細胞の生存能力および統合性を維持する能力を改善することができる。意外なことに、上述した性質を有する細胞貯蔵および輸送媒体をうまく形成するには、超低ゲル化温度アガロースを使用する必要があった。特別な態様において、その輸送媒体、システムおよび方法は、3Dスフェロイドまたはオルガノイド培養物を、貯蔵および輸送中のスフェロイド細胞(例えば、肝細胞)またはオルガノイドの生存能力および機能性の保護および長期の維持を可能にするガス透過性のマイクロパターン化デザインであって、培養または試験中にどのようなスフェロイドの融合も防ぐために個々の3Dスフェロイドまたはオルガノイドの間の物的障壁を提供しつつ、多数から数千のスフェロイドまたはオルガノイドを同じ条件および媒体下で処理できるデザインと組み合わせる実験機器と組み合わされて使用されるまたは、その実験機器内で実施される。
【0061】
それゆえ、様々な実施の形態において、細胞貯蔵および輸送媒体が開示される。態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、細胞培養培地、アガロース、およびメチルセルロースの混合物を含み、その貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は約0.5から約1.0%であり、この貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は約0.5から約0.7%である。
【0062】
アガロースは、低温でゲルを形成し、高温で溶融できる、交互の(1-3)結合β-D-ガラクトースおよび(1-4)結合(3-6)-無水-a-L-ガラクトース共重合体の熱可逆性ゲル化多糖類である。標準的なアガロースは、37℃辺りでゲルになり、高ゲル化温度アガロースは、41℃辺りでゲルになり、低ゲル化温度アガロースは、26~30℃でゲルになり、超低ゲル化温度アガロースは、8~17℃でゲルになる。この超低ゲル化温度アガロースは、55℃で再溶融する。アガロースは、一般に、質量に基づいてDNA鎖を分離するために分子生物学で使用されるゲルを形成するために使用されるが、これは、ウイルスプラークアッセイに使用することもでき、増粘剤として使用することもできる。アガロースは、水溶液を形成するために、水に添加し、87℃辺りで溶融しなければならない粉末として供給される。アガロースは、3D細胞培養のための支持体として使用されてきた。しかしながら、培養システム用の輸送媒体としてアガロースを使用するには、輸送される細胞をゲルから解放するために、その細胞を65℃より高い温度に曝す必要があるであろう。培養された細胞をそのような高温に曝すと、細胞の生存能力が損なわれ、培養された細胞を死にさえ至らせ得ることがよく知られている。さらに、培養システム用の輸送媒体にアガロースを使用するには、大抵、アガロースの除去を促進し、それゆえ、細胞を放出させて、輸送培養物を形成するために、アガラーゼおよび余計な工程を使用する必要がある。
【0063】
メチルセルロースは、水媒体中に熱可逆性ゲルを形成することができるセルロース誘導体である。メチルセルロース含有溶液が加熱されると、適した濃度と温度でゲルが形成される。典型的に、メチルセルロースの2%溶液(w/w)は、約48℃のゲル化温度を有する。このゲル化温度は、10%の溶液について、濃度の上昇とともに約30℃まで直線的に低下する。メチルセルロースの場合、冷液中に溶けることができ、溶液になった後、溶液が加熱されるにつれて、高分子鎖上の疎水性基の分子間結合のためにゲルになる。メチルセルロースは、医薬品、化粧品および用途(1)における結合剤または増粘剤として一般に使用される。メチルセルロースは、細胞培養培地と混合されたときに、細胞の培養にも使用されてきており、セルロース誘導体を含まない水または媒体よりも高粘度であるために、細胞を懸濁状態に維持するので、幹細胞の集まりから「胚様体」の形成を可能にするために一般に使用される。
【0064】
細胞貯蔵および輸送媒体のいくつかの態様において、前記アガロースは、超低溶融温度アガロースである。いくつかの態様において、そのアガロースは、8~17℃のゲル化温度を有する。そのような超低溶融温度アガロースおよび8~17℃のゲル化温度を有するアガロースは、市販されており、当該技術分野で公知である。本出願の発明者等は、超低ゲル化温度アガロースおよびメチルセルロースを組み合わせることによって、両方の成分のゲル化特性が、スフェロイドまたはオルガノイドとして細胞を輸送するための理想的な条件を与えるように変わることを突き止めた。本発明の細胞貯蔵および輸送媒体内に超低ゲル化温度アガロース(例えば、以下に限られないが、Sigma-Aldrichにより販売されているもの(Sigma製品番号A5030)などの市販の超低ゲル化温度アガロース)を使用すると、その媒体は、4℃辺りで、輸送中に3Dスフェロイドまたはオルガノイド細胞の生存能力および統合性を維持するのに十分な強度を提供する堅いゲルを形成することができ、その堅いゲルは、ゲルを通るガス輸送も可能にする(例えば、酸素および二酸化炭素がゲルを通過する)。これにより、4℃辺りでの輸送中に3Dスフェロイドおよびオルガノイド細胞の生存能力および統合性を維持する能力が改善される。いくつかの態様において、この細胞貯蔵および輸送媒体は、4℃で堅いゲルである。いくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、23℃で軟質ゲルである。いくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、37℃で粘性液体である。
図4は、異なる温度での輸送媒体の実施の形態の稠度を示す写真である。画像の上から、4℃で、輸送媒体の稠度は堅いゲルであり、室温(RT、23℃)で、輸送媒体の稠度は軟質ゲルであり、37℃で、輸送媒体は粘性液体である。これは、ゲルが管の下端に向かって移動するのを可能にするわずかな角度で保持された管内の輸送媒体(ピンク色の材料)の濃さによって、
図4の画像において検出できる。
【0065】
態様において、前記細胞貯蔵および輸送媒体は、細胞培養培地を含む。細胞培養培地は、追加の天然物とともに、天然培地または人工/合成培地(例えば、以下に限られないが、PBS、DPBS、HBSS、EBSSなどの平衡塩類溶液;MEMまたはDMEMなどの基本培地;もしくはRPMI-1640またはIMDMなどの複合培地を含む公知の細胞培養培地)を含み得る。態様において、そのような人工/合成培地は、血清含有培地、無血清培地、既知組成培地、および/または無タンパク質培地であり得る。態様において、細胞培養培地は、貯蔵/輸送されている細胞型に特定の生存能力を維持するのに必要なように、以下の内の1つ以上をさらに含み得る:例えば、当該技術分野で公知のように、栄養素(例えば、タンパク質、ペプチド、必須および/または非必須アミノ酸の内の1つ以上)、エネルギー(例えば、グルコースなどの炭水化物の内の1つ以上)、必須金属および無機物(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン酸塩、硫酸塩の内の1つ以上)、緩衝剤(例えば、リン酸塩、酢酸塩、重炭酸塩の内の1つ以上)、pH変化の指示薬(例えば、フェノールレッド、ブロモクレゾールパープルの内の1つ以上)、選択剤(例えば、化学薬品、抗菌剤の内の1つ以上)、当該技術分野で公知の他の基本的な栄養補給物および成長因子(ピルビン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、インスリン、トランスフェリン、セレン、およびβ-メルカプトエタノールの内の1つ以上)など。
【0066】
様々な実施の形態において、上述した細胞貯蔵および輸送媒体(その全ての態様を含む)を含む細胞貯蔵および輸送システムが開示されている。この細胞貯蔵および輸送システムは、3Dスフェロイド培養物を、貯蔵および輸送中のスフェロイド細胞(例えば、肝細胞)の生存能力および機能の保護および長期の維持を可能にするガス透過性のマイクロパターン化デザインであって、培養または試験中にどのようなスフェロイドの融合も防ぐために個々の3Dスフェロイドの間の物的障壁を提供しつつ、多数から数百のスフェロイドを同じ条件および媒体下で処理できるデザインと組み合わせる実験機器を含む。
【0067】
態様において、前記細胞貯蔵および輸送システムは、細胞;細胞培養物品であって、一連のマイクロキャビティを有するチャンバを備え、各マイクロキャビティは、細胞を3Dスフェロイドまたはオルガノイド構造で成長させるように構造化されている、細胞培養物品;および細胞培養培地、アガロース、およびメチルセルロースの混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体であって、その貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は約0.5から約1.0%であり、その貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は約0.5から約0.7%である、細胞貯蔵および輸送媒体を備える。
【0068】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、細胞貯蔵および輸送媒体のアガロースは、超低ゲル化温度アガロースである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、そのアガロースは、8~17℃のゲル化温度を有する。いくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、4℃で堅いゲルである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、23℃で軟質ゲルである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、37℃で粘性液体である。
【0069】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、細胞貯蔵および輸送媒体は、細胞培養培地を含む。細胞培養培地は、追加の天然物とともに、天然培地または人工/合成培地(例えば、以下に限られないが、PBS、DPBS、HBSS、EBSSなどの平衡塩類溶液;MEMまたはDMEMなどの基本培地;RPMI-1640またはIMDMなどの複合培地を含む公知の細胞培養培地)を含み得る。態様において、そのような人工/合成培地は、血清含有培地、無血清培地、既知組成培地、および/または無タンパク質培地であり得る。態様において、細胞培養培地は、貯蔵/輸送されている細胞型に特定の生存能力を維持するのに必要なように、以下の内の1つ以上をさらに含み得る:例えば、当該技術分野で公知のような、栄養素(例えば、タンパク質、ペプチド、必須および/または非必須アミノ酸の内の1つ以上)、エネルギー(例えば、グルコースなどの炭水化物の内の1つ以上)、必須金属および無機物(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン酸塩、硫酸塩の内の1つ以上)、緩衝剤(例えば、リン酸塩、酢酸塩、重炭酸塩の内の1つ以上)、pH変化の指示薬(例えば、フェノールレッド、ブロモクレゾールパープルの内の1つ以上)、選択剤(例えば、化学薬品、抗菌剤の内の1つ以上)、当該技術分野で公知の他の基本的な栄養補給物および成長因子(ピルビン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、インスリン、トランスフェリン、セレン、およびβ-メルカプトエタノールの内の1つ以上)など。
【0070】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、前記チャンバの各マイクロキャビティは、上部開口および底部表面を有する液体不透過性底部を備え、底部表面の少なくとも一部は、その底部表面内または底部表面上に低付着または非付着材料を含む。いくつかの態様において、底部表面を含む液体不透過性底部は、ガス透過性である。いくつかの態様において、底部の少なくとも一部は透明である。いくつかの実施の形態において、底部表面は、凹形底部表面を含む。いくつかの態様において、そのチャンバは側壁をさらに含む。いくつかの態様において、そのチャンバの各マイクロキャビティの少なくとも1つの凹形底部表面は、半球表面、側壁から底部表面まで30から約60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む。いくつかの態様において、前記細胞培養物品は、1から約2,000のチャンバを備え、各チャンバは、どの他のチャンバからも物理的に隔てられている。いくつかの態様において、各チャンバは、平方センチメートル当たり約1から約800のマイクロキャビティを含む。例えば、制限ではなく、6ウェルプレートは、その6ウェルプレートの1つのウェル内に約700のマイクロキャビティを含むことがあり、それゆえ、1つのウェル内に700のスフェロイド(合計で約1.2百万の細胞)が可能になる。同様に、24ウェルプレートは、ウェル当たり約100~200のマイクロキャビティを含むことがあり、一方で、96ウェルプレートは、ウェル当たり約50のマイクロキャビティを含むことがある。マイクロキャビティのこれらの数の全ては、代表的であり、マイクロキャビティのサイズに基づく。
【0071】
ここで、
図1A、
図1B、および
図1Cを参照すると、細胞貯蔵および輸送システムおよび下記の方法の態様に使用するための例示の細胞培養物品が示されている。図示された細胞培養物品は、各ウェルの底部表面上に一連のマイクロキャビティを有するマイクロキャビティスフェロイドプレートであり、この場合、96ウェルマイクロキャビティスフェロイドプレートであり、各マイクロキャビティは、96ウェルの各々に多数のスフェロイドを提供するように、培養される細胞を3Dスフェロイド構造で成長させるように構造化されている。
図1Aは、一連のウェル110を有するマルチウェルプレート10を示す。
図1Bは、
図1Aのマルチウェルプレート10の1つのウェル110を示す。この1つのウェル110は、上部開口、液体不透過性底部表面106、および側壁113を有する。
図1Cは、
図1Bの四角形C内に示されたウェル110の底部表面106の区域の拡大図であり、
図1Bに示された1つのウェルの底部表面内の一連のマイクロキャビティ112を示す。一連のマイクロキャビティ112内の各マイクロキャビティ115は、側壁121および液体不透過性底部表面116を有する。各個々のウェル110の底部に一連のマイクロキャビティ112を与える、
図1A、
図1B、および
図1Cに示されたマイクロキャビティスフェロイドプレートは、マルチウェルプレートの各個々のウェルのマイクロキャビティの各々の中に個々の3Dスフェロイドを成長させるために使用することができる。このタイプの容器を使用することにより、使用者は、マルチウェルプレートの各ウェル内で多数のスフェロイドを成長させることができ、それによって、長期間に亘り細胞の生存能力および機能性を維持し、様々な培養または試験での使用に同じ培養および実験条件下で処理できる多数の3Dスフェロイドを提供することができる。さらに、このタイプの容器は、培養または試験中にどのようなスフェロイドの融合も避けるために、個々の3Dスフェロイド間の物的障壁を提供する。スフェロイドの融合は、スフェロイドのコア中の細胞が生存能力を失い始めるまたは死に始めるような拡散限界を上回る融合スフェロイドのサイズをもたらし得る。それゆえ、本開示のマイクロウェルのデザインは、各スフェロイドの統合性が長期のインキュベーション期間中に維持される物的障壁を提供する。
【0072】
ここで
図2Aを参照すると、細胞貯蔵および輸送システムおよび下記の方法の態様に使用するための一連のマイクロキャビティ112の例示の説明図が示されている。
図2Aは、各々が、上部開口118、底部表面119、深さd、および側壁121により規定される幅wを有する、マイクロキャビティ115を示す。
図2Aに示されるように、この一連のマイクロキャビティは、液体不透過性の凹形弓状底部表面116を有する。実施の形態において、このマイクロキャビティの底部表面は、円形または円錐形、角度付き、平底、または3Dスフェロイドを形成するのに適したどの形状でも差し支えない。丸底が好ましい。丸底119は、垂直な側壁が丸底119に移行するので移行区域114を有し得る。これは、滑らかなまたは角度の付いた移行区域であり得る。実施の形態において、「マイクロキャビティ」は、例えば、上部開口118と底116、上部開口の中心、および底と上部開口の中心との間の中心軸105を画成するマイクロウェル115であり得る。実施の形態において、そのウェルは、その軸の周りに回転対称である(すなわち、側壁は円筒である)。いくつかの実施の形態において、その上部開口は、250μmから6mmの、またはそれらの測定値内の任意の範囲の上部開口に亘る距離(幅w)を規定する。いくつかの実施の形態において、その上部開口から底までの距離(深さ「d」)は、200μmと6mmの間、または400μmと600μmの間である。一連のマイクロキャビティは、異なる形状、例えば、放物型、双曲型、逆V字型、および断面形状、またはその組合せを有することがある。実施の形態において、そのマイクロキャビティは、マイクロキャビティが実験台またはテーブルなどの表面と直接接触するのを防止する、それらの下にある保護層130を有することがある。いくつかの実施の形態において、ウェルの底119と保護層との間に、空間110が設けられることがある。実施の形態において、空間110は、外部環境と連通していてもよい、または閉じられていてもよい。ここで
図2Bを参照すると、細胞貯蔵および輸送システムおよび下記の方法の態様に使用するための一連のマイクロキャビティ112のさらなる例示の説明図が示されている。
図2Bは、一連のマイクロキャビティ112が正弦波または放物型形状を有することがあるのを示す。この形状は、丸まった上端またはマイクロキャビティのエッジを作り出し、これは、態様において、マイクロキャビティの上部において尖った角または90度の角度での空気の取り込みを減少させる。
図2Bに示されるように、態様において、マイクロキャビティ115は、上部直径D
topを有する上部開口、マイクロキャビティの底部116からマイクロキャビティの上部までの高さH、マイクロキャビティの上部とマイクロキャビティの底部116との間の半分の高さでのマイクロキャビティの直径D
h、および側壁113を有する。そのような態様において、ウェルの底部は丸くなっており(例えば、半球状に丸い)、側壁は、ウェルの底部から上部まで直径が増加しており、ウェル間の境界は丸くなっている。それゆえ、ウェルの上部は、直角で終わっていない。いくつかの態様において、ウェルは、底部と上部との間の中間点での直径D(D
hとも称される)、ウェルの上部での直径D
top、およびウェルの底部から上部までの高さHを有する。これらの実施の形態において、D
topはDより大きい。
【0073】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、少なくとも1つの凹形弓状底部表面または「カップ」を有するマイクロキャビティの底部表面は、例えば、半球表面、丸底を有する円錐表面、および同様の表面形状、またはその組合せであり得る。そのマイクロキャビティの底部は、最終的に、ディンプル、ピット、および同様の凹形円錐台状起伏表面、またはその組合せなど、スフェロイドに「優しい」丸まったまたは湾曲した表面で終端する、その表面で終わる、またはその表面を底にする。態様において、チャンバ内の各マイクロキャビティの少なくとも1つの凹形表面は、半球表面、側壁から底部表面まで30から約60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む。いくつかの態様において、その少なくとも1つの凹形弓状底部表面は、例えば、選択されたウェルの形状、各ウェル内の凹形弓状表面の数、プレート内のウェルの数、および同様の検討事項に応じて、中間値および範囲を含む、例えば、約250から約5,000マイクロメートル(すなわち、0.010から0.200インチ)の直径を有する、半球の水平部分または薄片などの半球の一部であり得る。他の凹形弓状表面は、例えば、放物型、双曲型、逆V字型、および同様の断面形状、またはその組合せを有し得る。
【0074】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、チャンバを備えた細胞培養物品(例えば、マイクロキャビティスフェロイドプレート、マイクロキャビティ挿入物、マイクロキャビティ挿入プレートなど)は、各マイクロキャビティの少なくとも1つの底部表面上または少なくとも1つの凹形底部表面および/または1つ以上の側壁上など、チャンバの一部の上に、低付着、超低付着、または非付着コーティングをさらに備え得る。非付着材料の例としては、ポリジメチルシロキサン、ペルフルオロポリマー、オレフィン、または同様のポリマー、またはその混合物が挙げられる。他の例としては、アガロース、ポリアクリルアミドなどの非イオン性ヒドロゲル、またはポリエチレンオキシドなどのポリエーテル、またはポリビニルアルコールなどのポリオール、またはポリビニルピロリドンなどの同様の材料、もしくはその混合物が挙げられる。
【0075】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、前記チャンバおよび/または各マイクロキャビティの側壁表面(すなわち、囲い)は、例えば、垂直円筒またはシャフト、チャンバの上部からチャンバの底部まで直径が減少する垂直円錐の一部、円錐移行部、すなわち、円錐に移行し、少なくとも1つの凹形弓状表面、すなわち、丸まったまたは湾曲した表面を有する底部で終わる、ウェルの上で正方形または卵形を有する垂直正方形シャフトまたは垂直卵形シャフト、もしくはその組合せであり得る。他の説明に役立つ形状の例としては、穴あき円筒、穴あき円錐円筒、最初は円筒で次に円錐、および他の同様の形状、またはその組合せが挙げられる。
【0076】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、例えば、低付着基体、マイクロキャビティの本体およびベース部分内のウェルの曲率、および重力の内の1つ以上が、細胞をスフェロイドまたはオルガノイドに自己組織化するように仕向けることができる。3Dスフェロイドまたはオルガノイド細胞は、2D単層で成長した細胞に対して、よりインビボのような応答を示す分化細胞機能を維持する。態様において、そのスフェロイドまたはオルガノイドは、例えば、約100マイクロメートルから約5ミリメートルの直径を有する、例えば、実質的に球体であり得る。
【0077】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、チャンバおよび/またはチャンバ内の各マイクロキャビティを含む細胞培養物品は、不透明な側壁および/または少なくとも1つの凹形表面を有するガス透過性かつ液体不透過性底部をさらに含み得る。いくつかの態様において、少なくとも1つの凹形表面を有する底部の少なくとも一部は、透明である。そのような特徴を有する細胞培養物品(例えば、マイクロキャビティスフェロイドプレート、マイクロキャビティ挿入物、マイクロキャビティ挿入プレートなど)は、アッセイを行うために、培養細胞をあるマルチウェルプレート(中にスフェロイドまたはオルガノイドが形成されており、視覚化することができる)から別のプレートに移す必要性をなくし、したがって、時間を節約し、スフェロイドのどのような不要な破壊も避けることを含む、現在開示されている方法にとってのいくつかの利点を与えることができる。さらに、ガス透過性底部(例えば、特定の与えられた厚さでガス透過性を有するポリマーから製造されたウェルの底部)は、3Dスフェロイドまたはオルガノイド細胞が増加した酸素供給を受けることを可能にする。例示のガス透過性底部は、ある厚さでの、ポリスチレン、ポリ4-メチルペンタンまたはポリエチレン、ポリプロピレンおよびその共重合体などのポリオレフィン、ポリカーボネート、ペルフルオロポリマーまたはポリジメチルシロキサンなどのポリマーを含む、多くの種類のポリマーまたはポリマーブレンドから形成することができる。ガス透過性ポリマーの代表的な厚さおよび範囲は、使用される特定のポリマーの酸素および二酸化炭素の透過性に応じて、中間値および範囲を含む、例えば、約0.001インチから約0.025インチ、0.0015インチから約0.03インチであり得る(ここで、1インチ=25,400マイクロメートル、0.000039インチ=1マイクロメートル)。それに加え、またはそれに代えて、ポリジメチルシロキサンポリマーなど、高いガス透過性を有する他の材料は、例えば、約1インチ(約25.4mm)までの厚さで十分なガス拡散を与えることができる。
【0078】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、前記細胞培養物品は、吸引のためのピペットチップを受け入れるための、チャンバ付属物、チャンバ延長区域、または補助側部チャンバをさらに備えることができ、そのチャンバ付属物またはチャンバ延長部(例えば、サイドポケット)は、例えば、チャンバに隣接し、それと流体連通した一体表面であり得る。そのチャンバ付属物は、チャンバおよび/またはチャンバ内のマイクロキャビティの液体不透過性底部から間隔が離れた第2の底部を有し得る。このチャンバ付属物およびチャンバ付属物の第2の底部は、例えば、より高い高度または相対的な高さなどで、チャンバの液体不透過性底部から間隔が離れ得る。チャンバ付属物の第2の底部は、ピペットから分配された流体をチャンバの液体不透過性底部(およびチャンバ内の各マイクロキャビティの液体不透過性底部)から離れるようにそらせて、スフェロイドを壊したり乱したりするのを避ける。
【0079】
細胞貯蔵および輸送システムの態様において、マイクロキャビティ挿入物またはマイクロキャビティ挿入プレートは、関心のある細胞を3Dスフェロイドまたはオルガノイド構造で成長するように培養するために、現在開示されているシステムおよび方法において細胞培養物品と組み合わせて使用することができる。例えば、
図3に示されるように、挿入物は、上部開口418、側壁421および一連のマイクロキャビティ420を形成する底部表面419を有する。挿入物は、以下に限られないが、6ウェルマイクロキャビティ挿入物、12ウェルマイクロキャビティ挿入物、24ウェルマイクロキャビティ挿入物、48ウェルマイクロキャビティ挿入物、96ウェルマイクロキャビティ挿入物、並びに1つのプレートが多数の挿入物を収容し、マルチウェル挿入プレートが、マルチウェルプレート内のウェルの相補的配列に収まるように構造化されている挿入プレート形態を含む、多くの形態で入手できることを理解すべきである。
【0080】
様々な実施の形態において、上述した細胞貯蔵および輸送システム(その細胞培養物品の全ての態様を含む)、並びに貯蔵および輸送媒体(先に開示された全ての態様を含む)を具体化する、細胞の輸送のための方法が開示されている。態様において、細胞の輸送のための方法は、a)細胞培養物品内で生細胞を培養して、スフェロイドを形成する工程であって、その細胞培養物品は、一連のマイクロキャビティを有するチャンバを備え、各マイクロキャビティは、細胞を3Dスフェロイド構造で成長させるように構造化されている、工程;b)その細胞培養物品に、アガロースとメチルセルロースと細胞培養培地の混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体を添加する工程であって、その貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は0.5から1.0%であり、その貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は0.5から0.7%である、工程;c)その細胞貯蔵および輸送媒体を固化させる工程;およびd)細胞培養物品を輸送する工程を有してなる。
【0081】
細胞の輸送のための方法の態様において、前記細胞貯蔵および輸送媒体のアガロースは、超低ゲル化温度アガロースである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、そのアガロースは、8~17℃のゲル化温度を有する。いくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、4℃で堅いゲルである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、23℃で軟質ゲルである。細胞貯蔵および輸送システムのいくつかの態様において、その細胞貯蔵および輸送媒体は、37℃で粘性液体である。
【0082】
細胞の輸送のための方法の態様において、前記細胞貯蔵および輸送媒体は、細胞培養培地を含む。細胞培養培地は、追加の天然物とともに、天然培地または人工/合成培地(例えば、以下に限られないが、PBS、DPBS、HBSS、EBSSなどの平衡塩類溶液;MEMまたはDMEMなどの基本培地;RPMI-1640またはIMDMなどの複合培地を含む公知の細胞培養培地)を含み得る。態様において、そのような人工/合成培地は、血清含有培地、無血清培地、既知組成培地、および/または無タンパク質培地であり得る。態様において、細胞培養培地は、貯蔵/輸送されている細胞型に特定の生存能力を維持するのに必要なように、以下の内の1つ以上をさらに含み得る:例えば、当該技術分野で公知のように、栄養素(例えば、タンパク質、ペプチド、必須および/または非必須アミノ酸の内の1つ以上)、エネルギー(例えば、グルコースなどの炭水化物の内の1つ以上)、必須金属および無機物(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン酸塩、硫酸塩の内の1つ以上)、緩衝剤(例えば、リン酸塩、酢酸塩、重炭酸塩の内の1つ以上)、pH変化の指示薬(例えば、フェノールレッド、ブロモクレゾールパープルの内の1つ以上)、選択剤(例えば、化学薬品、抗菌剤の内の1つ以上)、当該技術分野で公知の他の基本的な栄養補給物および成長因子(ピルビン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、インスリン、トランスフェリン、セレン、およびβ-メルカプトエタノールの内の1つ以上)など。
【0083】
細胞の輸送のための方法の態様において、前記チャンバの各マイクロキャビティは、上部開口および底部表面を有する液体不透過性底部を備え、底部表面の少なくとも一部は、その底部表面内または底部表面上に低付着または非付着材料を含む。いくつかの態様において、底部表面を含む液体不透過性底部は、ガス透過性である。いくつかの実施の形態において、底部の少なくとも一部は透明である。いくつかの実施の形態において、底部表面は、凹形底部表面を含む。いくつかの態様において、そのチャンバは側壁をさらに含む。いくつかの態様において、そのチャンバの各マイクロキャビティの少なくとも1つの凹形底部表面は、半球表面、側壁から底部表面まで30から約60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む。いくつかの態様において、前記細胞培養物品は、1から約2,000のチャンバを備え、各チャンバは、どの他のチャンバからも物理的に隔てられている。いくつかの実施の形態において、各チャンバは、平方センチメートル当たり約1から約800のマイクロキャビティを含む。例えば、制限ではなく、6ウェルプレートは、その6ウェルプレートの1つのウェル内に約700のマイクロキャビティを含むことがあり、それゆえ、1つのウェル内に700のスフェロイド(合計で約1.2百万の細胞)が可能になる。同様に、24ウェルプレートは、ウェル当たり約100~200のマイクロキャビティを含むことがあり、一方で、96ウェルプレートは、ウェル当たり約50のマイクロキャビティを含むことがある。マイクロキャビティのこれらの数の全ては、代表的であり、マイクロキャビティのサイズに基づく。
【0084】
態様において、細胞の輸送のための方法の細胞培養物品は、
図2~4に開示された特徴を備える。
【0085】
細胞の輸送のための方法の態様において、少なくとも1つの凹形弓状底部表面または「カップ」を有するマイクロキャビティの底部表面は、例えば、半球表面、丸底を有する円錐表面、および同様の表面形状、またはその組合せであり得る。そのマイクロキャビティの底部は、最終的に、ディンプル、ピット、および同様の凹形円錐台状起伏表面、またはその組合せなど、スフェロイドに「優しい」丸まったまたは湾曲した表面で終端する、その表面で終わる、またはその表面を底にする。実施の形態において、チャンバ内の各マイクロキャビティの少なくとも1つの凹形表面は、半球表面、側壁から底部表面まで30から約60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む。いくつかの実施の形態において、その少なくとも1つの凹形弓状底部表面は、例えば、選択されたウェルの形状、各ウェル内の凹形弓状表面の数、プレート内のウェルの数、および同様の検討事項に応じて、中間値および範囲を含む、例えば、約250から約5,000マイクロメートル(すなわち、0.010から0.200インチ)の直径を有する、半球の水平部分または薄片などの半球の一部であり得る。他の凹形弓状表面は、例えば、放物型、双曲型、逆V字型、および同様の断面形状、またはその組合せを有し得る。
【0086】
細胞の輸送のための方法の態様において、チャンバを備えた細胞培養物品(例えば、マイクロキャビティスフェロイドプレート、マイクロキャビティ挿入物、マイクロキャビティ挿入プレートなど)は、各マイクロキャビティの少なくとも1つの底部表面上または少なくとも1つの凹形底部表面および/または1つ以上の側壁上など、チャンバの一部の上に、低付着、超低付着、または非付着コーティングをさらに備え得る。非付着材料の例としては、ポリジメチルシロキサン、ペルフルオロポリマー、オレフィン、または同様のポリマー、またはその混合物が挙げられる。他の例としては、アガロース、ポリアクリルアミドなどの非イオン性ヒドロゲル、またはポリエチレンオキシドなどのポリエーテル、またはポリビニルアルコールなどのポリオール、またはポリビニルピロリドンなどの同様の材料、もしくはその混合物が挙げられる。
【0087】
細胞の輸送のための方法の態様において、前記チャンバおよび/または各マイクロキャビティの側壁表面(すなわち、囲い)は、例えば、垂直円筒またはシャフト、チャンバの上部からチャンバの底部まで直径が減少する垂直円錐の一部、円錐移行部、すなわち、円錐に移行し、少なくとも1つの凹形弓状表面、すなわち、丸まったまたは湾曲した表面を有する底部で終わる、ウェルの上で正方形または卵形を有する垂直正方形シャフトまたは垂直卵形シャフト、もしくはその組合せであり得る。他の説明に役立つ形状の例としては、穴あき円筒、穴あき円錐円筒、最初は円筒で次に円錐、および他の同様の形状、またはその組合せが挙げられる。
【0088】
細胞の輸送のための方法の態様において、例えば、低付着基体、マイクロキャビティの本体およびベース部分内のウェルの曲率、および重力の内の1つ以上が、細胞をスフェロイドに自己組織化するように仕向けることができる。3Dで成長した細胞は、2D単層で成長した細胞に対して、よりインビボのような応答を示す分化細胞機能を維持する。実施の形態において、そのスフェロイドまたはオルガノイドは、例えば、約100マイクロメートルから約5ミリメートルの直径を有する、例えば、実質的に球体であり得る。
【0089】
細胞の輸送のための方法の態様において、チャンバおよび/またはチャンバ内の各マイクロキャビティを含む細胞培養物品は、不透明な側壁および/または少なくとも1つの凹形表面を有するガス透過性かつ液体不透過性底部をさらに含み得る。いくつかの実施の形態において、少なくとも1つの凹形表面を有する底部の少なくとも一部は、透明である。そのような特徴を有する細胞培養物品(例えば、マイクロキャビティスフェロイドプレート、マイクロキャビティ挿入物、マイクロキャビティ挿入プレートなど)は、アッセイを行うために、培養細胞スフェロイドをあるマルチウェルプレート(中にスフェロイドまたはオルガノイドが形成されており、視覚化することができる)から別のプレートに移す必要性をなくし、したがって、時間を節約し、スフェロイドのどのような不要な破壊も避けることを含む、現在開示されている方法にとってのいくつかの利点を与えることができる。さらに、ガス透過性底部(例えば、特定の与えられた厚さでガス透過性を有するポリマーから製造されたウェルの底部)は、3Dスフェロイドまたはオルガノイドが増加した酸素供給を受けることを可能にする。例示のガス透過性底部は、ある厚さでの、ポリスチレン、ポリ4-メチルペンタンまたはポリエチレン、ポリプロピレンおよびその共重合体などのポリオレフィン、ポリカーボネート、ペルフルオロポリマーまたはポリジメチルシロキサンなどのポリマーを含む、多くの種類のポリマーまたはポリマーブレンドから形成することができる。ガス透過性ポリマーの代表的な厚さおよび範囲は、使用される特定のポリマーの酸素および二酸化炭素の透過性に応じて、中間値および範囲を含む、例えば、約0.001インチから約0.025インチ、0.0015インチから約0.03インチであり得る(ここで、1インチ=25,400マイクロメートル、0.000039インチ=1マイクロメートル)。それに加え、またはそれに代えて、ポリジメチルシロキサンポリマーなど、高いガス透過性を有する他の材料は、例えば、約1インチ(約25.4mm)までの厚さで十分なガス拡散を与えることができる。
【0090】
細胞の輸送のための方法の態様において、前記細胞培養物品は、吸引のためのピペットチップを受け入れるための、チャンバ付属物、チャンバ延長区域、または補助側部チャンバをさらに備えることができ、そのチャンバ付属物またはチャンバ延長部(例えば、サイドポケット)は、例えば、チャンバに隣接し、それと流体連通した一体表面であり得る。そのチャンバ付属物は、チャンバおよび/またはチャンバ内のマイクロキャビティの液体不透過性底部から間隔が離れた第2の底部を有し得る。このチャンバ付属物およびチャンバ付属物の第2の底部は、例えば、より高い高度または相対的な高さなどで、チャンバの液体不透過性底部から間隔が離れ得る。チャンバ付属物の第2の底部は、ピペットから分配された流体をチャンバの液体不透過性底部(およびチャンバ内の各マイクロキャビティの液体不透過性底部)から離れるようにそらせて、スフェロイドを壊したり乱したりするのを避ける。
【0091】
細胞の輸送のための方法(並びに、現在開示されている細胞貯蔵および輸送システム)の態様において、細胞は、どの起源の操作されていないまたは遺伝子組み換えされた細胞であっても差し支えない。それゆえ、細胞は、以下に限られないが、ヒト細胞、ラット細胞、マウス細胞、サル細胞、ブタ細胞、イヌ細胞、モルモット細胞、および魚細胞を含む動物細胞を含み得る。その細胞は、病理学的または非病理学的起源(ガン細胞株を含む)の公知の樹立細胞株および初代動物細胞培養物も含み得る。そのような細胞としては、以下に限られないが、肝細胞、腎細胞、神経細胞、グリア細胞、非グリア細胞、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞、軟骨細胞、軟骨芽細胞、線維芽細胞、ケラチン生成細胞、メラニン形成細胞、腺細胞、角膜細胞、網膜細胞、間充織幹細胞、造血幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、上皮細胞、血小板、胸腺細胞、リンパ球、単球、マクロファージ、筋細胞、尿道細胞および/または胚細胞が挙げられる。
【0092】
細胞の輸送のための方法の態様において、工程a)は、工程b)に到達するまで、細胞を、培養下にある特定の細胞型の標準培養条件に維持する工程を含む。現在開示されている方法のいくつかの実施の形態において、3Dスフェロイドまたはオルガノイドを形成する培養細胞は、長期培養として培養される。いくつかの実施の形態において、培養細胞は、少なくとも約12時間に亘り、必要に応じて、少なくとも約24時間に亘り、少なくとも約48時間に亘り、または少なくとも約72時間に亘り、少なくとも約96時間、少なくとも約7日間、少なくとも約14日間、少なくとも約21日間、または少なくとも約28日間、もしくはある種のオルガノイドの場合には、少なくとも約3~4ヶ月に亘り、培養される。長期の培養により、培養物内の、代謝経路などの機能特性の確立が促進される。
【0093】
細胞の輸送のための方法の態様において、工程b)は、37℃で培養下の細胞に細胞貯蔵および輸送媒体を添加する工程を含む。態様において、3Dスフェロイド細胞またはオルガノイドを培養するために使用されるどの細胞培養培地も、工程b)における細胞貯蔵および輸送媒体の添加前に除去される。
【0094】
細胞の輸送のための方法の態様において、工程c)は、細胞貯蔵および輸送媒体が堅いゲルであるように、約4℃の温度で行われる。細胞の輸送のための方法の態様において、工程d)は、細胞貯蔵および輸送媒体が堅いゲルであり、それゆえ、輸送中に細胞の生存能力および統合性を維持するのに十分な強度を提供するように、約4度の温度で行われる。
【0095】
細胞の輸送のための方法の態様において、輸送時間は、48時間以下、または72時間以下である。態様において、輸送時間は、間の任意の値または範囲を含む、0~48時間、または0~72時間である。輸送は、トラック、自動車、航空機、船などによるものを含む、当該技術分野で公知のどの輸送方法のものであっても差し支えない。
【0096】
細胞の輸送のための方法の態様において、この方法、輸送前に細胞培養チャンバを密封する工程をさらに含む。例えば、前記細胞培養物品のチャンバの各マイクロキャビティの上部開口に形成された開放部分は、貯蔵/輸送中に細胞を外部から隔離するために、フイルム、キャップ、または蓋などの密封手段により覆われることがある。当該技術分野で公知のように、その密封手段は、二酸化炭素または酸素が透過するのを遮断する、または可能にするなど、液体または気体の流れを遮断するまたは可能にする材料から作られることがある。
【0097】
細胞の輸送のための方法の態様において、この方法は、e)輸送された細胞が、さらなる培養および/または試験を含む、異なる用途に使用できるように、輸送された細胞を回収する工程をさらに含む。態様において、工程e)は、細胞貯蔵および輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む。態様において、工程e)は、少なくとも約1時間に亘り約37℃で細胞培養物品をインキュベーションする工程;およびその後、細胞貯蔵および輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む。それゆえ、細胞貯蔵および輸送媒体の固体ゲル状態は、3Dスフェロイドまたはオルガノイド細胞培養の取扱いおよび回収を可能にするように、37℃で液体状態に変えることができる。態様において、工程e)は、約37℃の細胞培養培地を細胞貯蔵および輸送媒体に添加する工程;少なくとも約1時間に亘り約37℃で細胞培養物品をインキュベーションする工程;および細胞貯蔵および輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む。態様において、工程e)は、少なくとも約1時間に亘り約37℃で細胞培養物品をインキュベーションする工程;およびその後、細胞貯蔵および輸送媒体を取り出し、細胞培養物品から3Dスフェロイドまたはオルガノイド細胞を抽出する工程を含む。
【0098】
態様
組成物、システム、および方法の様々な態様をここに記載してきた。そのような組成物、システム、および方法のほんのえり抜きの例の要約が、下記に与えられている。
【0099】
第1の態様は、細胞貯蔵および輸送媒体であって、アガロースとメチルセルロースと細胞培養培地の混合物を含み、この貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は約0.5から約1.0%であり、この貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は約0.5から約0.7%である、細胞貯蔵および輸送媒体である。
【0100】
第2の態様は、前記アガロースが超低ゲル化温度アガロースである、第1の態様の細胞貯蔵および輸送媒体である。
【0101】
第3の態様は、前記アガロースが、8~17℃のゲル化温度を有する、第1または第2の態様の細胞貯蔵および輸送媒体である。
【0102】
第4の態様は、前記細胞貯蔵および輸送媒体が、4℃で堅いゲルである、第1から第3の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送媒体である。
【0103】
第5の態様は、前記細胞貯蔵および輸送媒体が、23℃で軟質ゲルである、第1から第4の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送媒体である。
【0104】
第6の態様は、前記細胞貯蔵および輸送媒体が、37℃で粘性液体である、第1から第5の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送媒体である。
【0105】
第7の態様は、細胞貯蔵および輸送システムにおいて、細胞;細胞培養物品であって、一連のマイクロキャビティを有するチャンバを備え、各マイクロキャビティは、細胞を3Dスフェロイド構造で成長させるように構造化されている、細胞培養物品;および細胞培養培地、アガロースおよびメチルセルロースの混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体であって、該貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は0.5から1.0%であり、該貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は約0.5から約0.7%である、細胞貯蔵および輸送媒体を備えた細胞貯蔵および輸送システムである。
【0106】
第8の態様は、前記チャンバの各マイクロキャビティが、上部開口および底部表面を有する液体不透過性底部を備え、前記底部の少なくとも一部は、該底部表面内または該底部表面上に低付着または非付着材料を含む、態様7の細胞貯蔵および輸送システムである。
【0107】
第9の態様は、前記底部表面を含む液体不透過性底部が、ガス透過性である、第8の態様の細胞貯蔵および輸送システムである。
【0108】
第10の態様は、前記底部表面が、凹形底部表面を含む、第8から9の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送システムである。
【0109】
第11の態様は、前記底部の少なくとも一部が透明である、第8から10の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送システムである。
【0110】
第12の態様は、前記凹形表面が、半球表面、側壁から前記底部表面まで30から約60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む、第10の態様の細胞貯蔵および輸送システムである。
【0111】
第13の態様は、前記チャンバの各マイクロキャビティが、側壁をさらに含む、第7から12の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送システムである。
【0112】
第14の態様は、前記側壁の表面が、垂直円筒、前記チャンバの上部から前記底部表面まで直径が減少する垂直円錐の一部、前記凹形底部表面まで円錐移行部を有する垂直正方形シャフト、またはその組合せを含む、第13の態様の細胞貯蔵および輸送システムである。
【0113】
第15の態様は、前記細胞培養物品が、前記チャンバを1から約2,000備え、各チャンバは、どの他のチャンバからも物理的に隔てられている、第7から14の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送システムである。
【0114】
第16の態様は、前記アガロースが、超低ゲル化温度アガロースである、第7から15の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送システムである。
【0115】
第17の態様は、前記アガロースが、8~17℃のゲル化温度を有する、第7から16の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送システムである。
【0116】
第18の態様は、前記細胞貯蔵および輸送媒体が、4℃で堅いゲルである、第7から17の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送システムである。
【0117】
第19の態様は、前記細胞貯蔵および輸送媒体が、23℃で軟質ゲルである、第7から18の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送システムである。
【0118】
第20の態様は、前記細胞貯蔵および輸送媒体が、37℃で粘性液体である、第7から19の態様のいずれかの細胞貯蔵および輸送システムである。
【0119】
第21の態様は、細胞の輸送のための方法において、a)細胞培養物品内で生細胞を培養して、スフェロイドまたはオルガノイドを形成する工程であって、その細胞培養物品は、一連のマイクロキャビティを有するチャンバを備え、各マイクロキャビティは、細胞を3Dスフェロイドまたはオルガノイド構造で成長させるように構造化されている、工程;b)その細胞培養物品に、細胞培養培地、アガロースおよびメチルセルロースの混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体を添加する工程であって、その貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は約0.5から約1.0%であり、その貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は約0.5から約0.7%である、工程;c)その細胞貯蔵および輸送媒体を固化させる工程;およびd)細胞培養物品を輸送する工程を有してなる方法である。
【0120】
第22の態様は、前記チャンバの各マイクロキャビティが、上部開口および底部表面を有する液体不透過性底部を備え、その底部の少なくとも一部は、その底部表面内または底部表面上に低付着または非付着材料を含む、第21の態様の方法である。
【0121】
第23の態様は、前記底部表面を含む液体不透過性底部が、ガス透過性である、第22の態様の方法である。
【0122】
第24の態様は、前記底部表面が凹形底部表面を含む、第22から23の態様のいずれかの方法である。
【0123】
第25の態様は、前記底部の少なくとも一部が透明である、第22から24の態様のいずれかの方法である。
【0124】
第26の態様は、前記凹形表面が、半球表面、側壁から前記底部表面まで30から約60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む、第22から25の態様のいずれかの方法である。
【0125】
第27の態様は、前記チャンバの各マイクロキャビティが側壁をさらに含む、第21から26の態様のいずれかの方法である。
【0126】
第28の態様は、前記側壁の表面が、垂直円筒、前記チャンバの上部から底部表面まで直径が減少する垂直円錐の一部、凹形底部表面まで円錐移行部を有する垂直正方形シャフト、またはその組合せを含む、第27の態様の方法である。
【0127】
第29の態様は、前記細胞培養物品が、前記チャンバを1から約2,000を備え、各チャンバは、どの他のチャンバからも物理的に隔てられている、第21から28の態様のいずれかの方法である。
【0128】
第30の態様は、前記アガロースが、超低ゲル化温度アガロースである、第21から29の態様のいずれかの方法である。
【0129】
第31の態様は、前記アガロースが、8~17℃のゲル化温度を有する、第21から30の態様のいずれかの方法である。
【0130】
第32の態様は、前記細胞貯蔵および輸送媒体が、4℃で堅いゲルである、第21から31の態様のいずれかの方法である。
【0131】
第33の態様は、前記細胞貯蔵および輸送媒体が、23℃で軟質ゲルである、第21から32の態様のいずれかの方法である。
【0132】
第34の態様は、前記細胞貯蔵および輸送媒体が、37℃で粘性液体である、第21から33の態様のいずれかの方法である。
【0133】
第35の態様は、前記工程b)が、37℃の細胞貯蔵および輸送媒体を3Dスフェロイド細胞またはオルガノイドに添加する工程を含む、第21から34の態様のいずれかの方法である。態様において、3Dスフェロイド細胞またはオルガノイドを培養するために使用されるどの細胞培養培地も、工程b)における細胞貯蔵および輸送媒体の添加前に除去される。
【0134】
第36の態様は、前記工程c)が、約4℃の温度で行われる、第21から35の態様のいずれかの方法である。
【0135】
第37の態様は、前記工程d)が、約4℃の温度で行われる、第21から36の態様のいずれかの方法である。
【0136】
第38の態様は、輸送時間が、48または72時間以下である、第21から37の態様のいずれかの方法である。
【0137】
第39の態様は、前記細胞培養チャンバを密封する工程を含む、第21から38の態様のいずれかの方法である。
【0138】
第40の態様は、e)輸送された細胞を回収する工程をさらに含む、第21から39の態様のいずれかの方法である。
【0139】
第41の態様は、前記工程e)が、前記輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む、第40の態様の方法である。
【0140】
第42の態様は、前記工程e)が、少なくとも約1時間に亘り約37℃で前記細胞培養物品をインキュベーションする工程;およびその後、前記輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む、第40の態様の方法である。
【0141】
第43の態様は、前記工程e)が、約37℃の細胞培養培地を前記輸送媒体に添加する工程;少なくとも約1時間に亘り約37℃で前記細胞培養物品をインキュベーションする工程;および輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む、第40の態様の方法である。
【0142】
第44の態様は、前記工程e)が、少なくとも約1時間に亘り約37℃で前記細胞培養物品をインキュベーションする工程;およびその後、前記輸送媒体を取り出し、該細胞培養物品から3Dスフェロイド細胞を抽出する工程を含む、第40の態様の方法である。
【実施例】
【0143】
以下の実施例は、本開示の特定の好ましい実施の形態および態様を説明する役割を果たし、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0144】
実施例1
細胞貯蔵および輸送媒体配合物
以前の細胞貯蔵および輸送媒体の評価により、超低ゲル化温度アガロース溶液に関する最大および最小濃度は1.0%と0.5%であり、メチルセルロース溶液の最大濃度は1%であることが示された。その混合物は、当該混合物が37℃で固体であるように見える場合、その混合物に剪断力を加えると(容器を軽くたたくことにより)、混合物が液化するという点で、非ニュートン性流体の性質のいくつかも示す。この性質は、一般に、「ずり流動化(shear-thinning)」と称される。ここで、超低ゲル化温度アガロースおよびメチルセルロースの濃度範囲をさらに評価する。
【0145】
材料
初期評価:超低ゲル化温度アガロース(AGR-L、Sigmaカタログ番号A5030)、細胞培養等級水中4%で調製され、蒸気滅菌された;メチルセルロース濃縮物(Mc,R&D systemsカタログ番号HSC011)2.8%(水中、滅菌済み);2倍IMDM(4倍ストックから)、以下が補給されている;20%のFBS(ウシ胎仔血清)、4mMのGlutagro(商標)、6.04g/Lの重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、および2倍ITS(インスリン、トランスフェリン、セレン)溶液;1倍IMDM、補給物なし;細胞培養等級水;および-ULA(極低付着性)被覆60mm皿。
【0146】
細胞培養評価は、以下のように行った:T25 Microcavity容器中で生成されたHT-29スフェロイド培養物;成長培地は、10%のFBSを含むマッコイ培地であった;スフェロイド培養物は、Evos-FL顕微鏡で観察した;TrypLE(商標)およびトリプシン/EDTAを解離試薬として使用した;細胞計数および生存能力評価に、NucleoCounter(登録商標)を使用した。
【0147】
低温貯蔵後の性能/評価
貯蔵温度を4℃から室温まで変化させたときの溶液の稠度をモニタするために、細胞貯蔵および輸送媒体試料を室温で評価した。
【0148】
方法
細胞培養を行わない初期評価:
1.超低ゲル化温度アガロース(AGR-L)溶液:
a.2%のAGR-L(12mL)、4%のAGR-Lと2倍IMDMの1:1希釈
b.1%のAGR-L(8mL)、2%のAGR-Lと1倍IMDMの1:1希釈
2.メチルセルロース(Mc)溶液
a.2%のMc(8mL)、2倍IMDMで2.8%のストックを希釈
b.1.4%のMc(5mL)、2倍IMDMで2.8%のストックを1:1希釈
c.1%のMc(5mL)、1倍IMDMで2%のストックを1:1希釈
d.0.7%のMc(5mL)、1倍IMDMで1.4%のストックを1:1希釈
3.1%のAGR-Lを含む細胞貯蔵および輸送媒体配合物、試料当たり4mL
a.1%のAGR-Lと1%のMc-2%のAGR-Lと2%のMcの1:1希釈
b.1%のAGR-Lと0.7%のMc-2%のAGR-Lと1.4%のMcの1:1希釈
c.1%のAGR-Lと0.5%のMc-2%のAGR-Lと1%のMcの1:1希釈
d.1%のAGR-Lと0.35%のMc-2%のAGR-Lと0.7%のMcの1:1希釈
4.0.5%のAGR-Lを含む細胞貯蔵および輸送媒体配合物、試料当たり4mL
a.0.5%のAGR-Lと1%のMc-2%のAGR-Lと2%のMcの1:1希釈
b.0.5%のAGR-Lと0.7%のMc-2%のAGR-Lと1.4%のMcの1:1希釈
c.0.5%のAGR-Lと0.5%のMc-2%のAGR-Lと1%のMcの1:1希釈
d.0.5%のAGR-Lと0.35%のMc-2%のAGR-Lと0.7%のMcの1:1希釈
5.-ULA被覆60mm皿中にTM溶液を分配
6.20分間に亘り37℃で皿をインキュベーションし、次いで、一晩、4℃での貯蔵に移した
7.低温貯蔵後に以下の性質について培地配合物を評価した
a.低温で固化し、室温に到達したときに固体のままでいる細胞貯蔵および輸送媒体の能力
b.軽くたたくことにより相変化する(固体から液体)細胞貯蔵および輸送媒体の能力
8.培養物(皿)からの細胞貯蔵および輸送媒体の除去の容易さを評価した
a.細胞貯蔵および輸送媒体を希釈するために、皿当たり2mLのPBSを添加し、30分間に亘り37℃で皿をインキュベーションした
b.皿から細胞貯蔵および輸送媒体を除去/吸引した
c.合計で三回、希釈/インキュベーションサイクルを繰り返した。
【0149】
注記/観察
AGR-LおよびMcの両方が1%の濃度の配合物は、濃すぎて、作業するのが難しかった。
【0150】
0.7%より低い濃度でMcが配合された細胞貯蔵および輸送媒体は、作業するのが非常に容易であり、混合し、分配し、皿内に均一に広げるのが容易であった。
【0151】
37℃でのインキュベーション後、1%の細胞貯蔵および輸送媒体配合物を除いて全ての配合物が、相変化を起こし(液化し)、皿内に均一に広がった。
【0152】
0.5%のAGR-L/0.35%のMcの組合せは、薄すぎる。
【0153】
結果
低温貯蔵後の1%のAGR-L TM配合物
1%のAGR-L/1%のMc-は、粘度の高い溶液であり、低温で固体である。この溶液は、軽くたたくことによって相変化(液化)しなかった。
図5Aは、皿を前方に傾けたときに表面を滑り落ちる固体の凝固物(solid plug)としての配合物を示す。
1%のAGR-L/0.7%のMc-は、粘度の高い溶液であり、低温で固体であり、軽くたたいた後に材料はいくらか液化する。材料は、室温で粘性ゲルのような材料に迅速に軟化した。
図5Bは、皿を前方に傾けたときに表面上に残る粘度の高い/粘性の材料の薄い被膜としての配合物を示す。
1%のAGR-L/0.5%のMc-この配合物は、0.7%のMcを有する配合物と非常に似ており、調製中に混合しやすい。低温で固体であるが、室温で粘性ゲルのような材料に迅速に軟化し、軽くたたいた後に液化する。
図5Cは、皿を前方に傾けたときに表面上に残る粘性材料としての配合物を示す。
1%のAGR-L/0.35%のMc-この配合物は、固化せず、むしろ、4℃で軟質材料になり、低温貯蔵から出すと迅速に液化した。
図5Dは、皿を軽く前方に傾けたときに底部に貯まる配合物液体を示す。
【0154】
低温貯蔵後と、室温(23℃)に到達させられた後の、1%のAGR-Lの細胞貯蔵および輸送媒体配合物。室温に到達させられた後のULA-被覆された60mmの皿内の1%のAGR-Lの細胞貯蔵および輸送媒体の画像が、
図6に示されている。
図6は、左から右に、1%のAGR-L/0.35%のMc、1%のAGR-L/0.5%のMc、1%のAGR-L/0.7%のMc、および1%のAGR-L/1%のMcを示す。皿は、室温での細胞貯蔵および輸送媒体配合物の稠度を示すために、前方に傾けられた。0.35%のMcの配合物の成分は、室温で分離した。画像は、皿の底部に貯まる液体成分を示し、一方で、粘度のより高い成分は、皿の表面に残っている。0.5%と0.7%のMcの濃度の両方は、粘性ゲルのような材料に迅速に軟化したが、前方に傾けられている間にさえ表面に保持されているのが示された。0.5%の濃度について、他の成分から液体媒体がわずかに分離しているのが示された。画像は、皿の底部に液体(媒体)の小さな貯まりを示し、一方で、粘性材料は適所に残っている。1%のMcの配合物は、固体のままであり、いくらかの液体が分離した。
【0155】
低温貯蔵後の0.5%のAGR-Lの細胞貯蔵および輸送媒体配合物
0.5%のAGR-L/1%のMc-これは、粘度の高い溶液であるが、作業するのは用意である。この溶液は、4℃で固体の凝固物を形成した。
図7Aは、皿を前方に傾けたときに滑り落ちる配合物の凝固物を示す。材料は、軽くたたいた後にわずかに軟化した。
0.5%のAGR-L/0.7%のMc-は、混合および調製については、先の配合物と非常に似ている。室温で固体であり、軽くたたくことにより、固体から粘性ゲルへの相変化が増した。
図7Bは、皿を前方に傾けたときにその場所に維持されている配合物の粘性材料を示す。
0.5%のAGR-L/0.5%のMc-これは、混合工程中に作業しやすかった。これは、4℃で粘度の高いゲル状材料になった。
図7Cは、皿を前方に傾けたときに滑り落ちる配合物のゲル状材料を示す。
0.5%のAGR-L/0.35%のMc-これは、混合工程中に作業しやすかった。
図7Dに示されるように、この配合物は、4℃で固化しなかったが、ゲル状材料を形成し、これは、低温貯蔵から一旦取り出したら、迅速に粘性液体に変わった。
【0156】
低温貯蔵後と、室温(23℃)に到達させられた後の、0.5%のAGR-Lの細胞貯蔵および輸送媒体配合物。室温に到達させられた後のULA-被覆された60mmの皿内の0.5%のAGR-Lの細胞貯蔵および輸送媒体の画像が、
図8に示されている。
図8は、左から右に、0.5%のAGR-L/0.35%のMc、0.5%のAGR-L/0.5%のMc、0.5%のAGR-L/0.7%のMc、および0.5%のAGR-L/1.0%のMcを示す。皿は、室温での配合物の稠度を示すために、前方に傾けられた。0.35%のMcの配合物は、室温で粘度の高い溶液になり、細胞貯蔵および輸送媒体配合物の成分が目に見えて分離した。0.7%と0.5%のMcの配合物の両方とも、室温で迅速に粘性ゲルに代わり、軽くたたいた後に、成分(ARG-LおよびMc)がいくらか分離した。1.0%のMcの配合物は、室温でゲル状凝固物に軟化した。
【0157】
注記/観察
1.0%のAGR-L配合物は、室温で、粘度のより高い/より固体のような稠度を維持する。
【0158】
0.5%のAGR-L配合物は、室温で軟質ゲルに迅速に変わる。
【0159】
AGR-LとMcのより低濃度の組合せは、低温貯蔵後に成分が溶液から分離するので、不安定のようである。
【0160】
細胞貯蔵および輸送媒体配合物の除去。細胞貯蔵および輸送媒体配合物の除去の容易さを評価するために、試料にPBSを加えた(皿当たり2mL)。次に、試料を30分までに亘り37℃でインキュベーションした。希釈した/軟化させた細胞貯蔵および輸送媒体配合物を皿から吸引した。希釈/熱サイクルを、合計で三回繰り返した。その結果が
図9に示されている。
図9は、三回の希釈/熱サイクルと液化した/軟化させた材料の除去後の、残留した細胞貯蔵および輸送媒体配合物材料を含むULA-被覆された60mmの皿の画像を示す。
図9は、特定目的のためにカバーを有する皿を示す。
図9において、上部列の試料は、左から右に、1.0%のAGR-L/1%のMc、1.0%のAGR-L/0.7%のMc、1.0%のAGR-L/0.5%のMc、および1.0%のAGR-L/0.351%のMcを含み、一方で、下部列の試料は、左から右に、0.5%のAGR-L/1.0%のMc、0.5%のAGR-L/0.7%のMc、0.5%のAGR-L/0.5%のMc、および0.5%のAGR-L/0.351%のMcを含む。
【0161】
注記/観察
全ての1.0%のAGR-Lの組合せ(
図9の上部列)について、細胞貯蔵および輸送媒体配合物の固体の塊(chunk)は、希釈/吸引工程後に皿内に残る。
【0162】
1%のMcが配合された細胞貯蔵および輸送媒体は、溶解/希釈するのも難しかった。
【0163】
0.5%のAGR-L(
図9の下部列)では、細胞貯蔵および輸送媒体配合物の大半が、特に、より低いMc濃度(0.5%から0.35%)で作業した場合、皿から容易に除去された。
【0164】
0.35%のMcでは、材料のいくらかの分離/凝集が観察された。
【0165】
纏め
0.5%のAGR-L配合物は、低温貯蔵後に粘度の高い粘性様稠度を維持したが、室温で迅速に軟化した。それらは、それより暖かい温度で作業するのがより困難であったが、1.0%のAGR-L配合物と比べて、培養物から除去するのはより容易であった。
【0166】
1.0%のMc濃度のものは、難し過ぎて作業できず、容易な除去に望ましい粘度を生じなかった。
【0167】
0.35%のMc濃度のものは、低すぎて、細胞貯蔵および輸送媒体配合物の所望の稠度を維持できないと思われる。
【0168】
0.5%のAGR-L配合物は、室温で軟質ゲルに迅速に変わる。AGR-LとMcのより低濃度の組合せは、低温貯蔵後に成分が溶液から分離するので、不安定のようである。
【0169】
細胞培養評価
前記細胞貯蔵および輸送媒体の試料、特に、1.0%のAGR-L/0.7%のMcの配合物と比べた、0.7%から0.35%のMc濃度範囲の0.5%のAGR-L濃度の試料を細胞培養について評価した。
【0170】
方法
1.T25 Microcavityフラスコ内でHT-29スフェロイドを生成した(48時間の培養)。
【0171】
2.評価のために、細胞貯蔵および輸送媒体配合物を調製した;
a.1%のAGR-L/0.7%のMc(対照)
b.0.5%のAGR-Lおよび0.7%、0.5%および0.35%の濃度でのMc。
【0172】
3.使用済み培地を容器から除去し、4mLの細胞貯蔵および輸送媒体配合物と交換した。条件当たり1つの容器。
【0173】
4.フラスコを30分に亘り37℃でインキュベーションして、細胞貯蔵および輸送媒体配合物を均一に分散させた。
【0174】
5.出荷条件を模倣するために、フラスコを発泡スチレン製箱内にアイスパックと共に包装した。箱を4℃で一晩貯蔵した。
【0175】
6.出荷/落下試験;低温貯蔵から箱を取り出し、出荷条件を模倣するために、箱を四回ひっくり返し、落下させた。
【0176】
7.スフェロイドの健康状態、スフェロイドの保持率、細胞貯蔵および輸送媒体配合物の細胞培養物からの除去の容易さについて、培養物を評価した:
a.スフェロイド培養物の成長を追跡することによって、細胞の健康状態をモニタした;
b.評価前後の培養物を画像化することによって、スフェロイドの保持率をモニタした;
c.三回の希釈/熱サイクルを使用して、細胞貯蔵および輸送媒体配合物を容器から除去することによって、細胞貯蔵および輸送媒体配合物の除去を評価した。
【0177】
注記/観察
0.5%のAGR-L/0.5%のMcの濃度が、混合し、作業するのが最も容易である。
【0178】
0.5%と0.35%のMcの細胞貯蔵および輸送媒体配合物は、薄すぎ、細胞貯蔵および輸送媒体配合物のフラスコへの最初の添加中にスフェロイドがいくらか移動した。
【0179】
低温条件下(4℃)で、スフェロイドは、全ての細胞貯蔵および輸送媒体配合物について、出荷/落下試験中に適所に残った。
【0180】
細胞貯蔵および輸送媒体配合物の評価後に、スフェロイド培養物に対する顕著な悪影響はなく、全てが、対照と似て見える。
【0181】
【0182】
図10A~Cは、1%のAGR-L/0.7%のMcの配合物(対照)に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。
図10Aは、4℃の貯蔵後のスフェロイド培養物の画像を示し、その最中に、スフェロイドは適所に残った。
図10Bは、三回の希釈サイクル後の画像を示し、約20%のTMが、表面を覆うゲル状材料の形態で容器内に残った。細胞貯蔵および輸送媒体の除去後、スフェロイドは、いくぶん不規則なように見える。
図10Cは、回収期間内の、細胞貯蔵および輸送媒体を除去してから24時間後のHT-29スフェロイド培養物の画像を示す。
【0183】
図11A~Cは、0.5%のAGR-L/0.7%のMcの配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。
図11Aは、4℃の貯蔵後のスフェロイド培養物の画像を示し、その最中に、スフェロイドは適所に残った。
図11Bは、三回の希釈サイクル後の、細胞貯蔵および輸送媒体の99%が培養容器から除去された後の画像を示し、スフェロイドの損失は最小である。
図11Cは、回収期間内の、細胞貯蔵および輸送媒体を除去してから24時間後のHT-29スフェロイド培養物の画像を示す。
【0184】
図12A~Cは、0.5%のAGR-L/0.5%のMcの配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。
図12Aは、4℃の貯蔵後のスフェロイド培養物の画像を示し、いくつかのスフェロイドがマイクロキャビティから移動したことを示す。
図12Bは、三回の希釈サイクル後の、細胞貯蔵および輸送媒体の99%がスフェロイド培養容器から除去された後の画像を示し、スフェロイドの損失は最小であり、ここでも、いくつかのスフェロイドの移動を示す。
図12Cは、回収期間内の、細胞貯蔵および輸送媒体を除去してから24時間後のHT-29スフェロイド培養物の画像を示す。微量の細胞貯蔵および輸送媒体がマイクロキャビティ内に観察され、マイクロキャビティの多くは、スフェロイドの移動のために空に見える。
【0185】
図13A~Cは、0.5%のAGR-L/0.35%のMcの配合物に関するHT-29スフェロイド培養物の画像(2倍の倍率)を示す。
図13Aは、4℃の貯蔵後の培養物の画像を示し、いくつかのスフェロイドがマイクロキャビティから移動したことを示す。
図13Bは、三回の希釈サイクル後の、細胞貯蔵および輸送媒体の99%がスフェロイド培養容器から除去された後の画像を示し、スフェロイドの損失は著しい。
図13Cは、回収期間内の、細胞貯蔵および輸送媒体を除去してから24時間後のスフェロイド培養物の画像を示し、マイクロキャビティの多くは、スフェロイドの移動のために空に見える。
【0186】
図14は、スフェロイドの健康状態に関連する結果を示す。スフェロイド細胞の健康状態は、スフェロイドの成長(サイズ測定)によりモニタした。サイズ測定は、細胞貯蔵および輸送媒体配合物の添加前、4℃での貯蔵後、および細胞貯蔵および輸送媒体配合物の除去を含む、48時間後の出荷後試験評価時に行った。測定値(
図14)は、低温貯蔵後または回収段階中にマイナスの副作用(スフェロイドの解離またはサイズの変化)を示していない。
【0187】
注記/観察
0.35%のMcの濃度は低すぎ、輸送評価中のスフェロイドの移動を効果的に防いでいない。
【0188】
0.7%のMcおよび0.5%のMcの濃度を有する0.5%のAGR-Lの細胞貯蔵および輸送媒体配合物は、スフェロイド保持率について対照と似ているが、培養物から除去するのがより容易であった。
【0189】
結論/纏め
評価を行って、現在開示されている細胞貯蔵および輸送媒体のアガロース成分とメチルセルロース成分に関する許容できる濃度範囲を決定した。
【0190】
以前の研究により、1.0%から0.5%が、アガロース成分に関する許容できる作業範囲として確立された。現在の対照の配合物は、IMDM中の1%のAGR-L/0.7%のMcである。
【0191】
1%のMc濃度のものは、難し過ぎて培養物から除去できなかった。
【0192】
0.35%のMcの条件は、評価中に最高のスフェロイド損失を示し、最も不安定であった。
【0193】
0.7%と0.5%の間のメチルセルロース(Mc)範囲が、輸送試験中にスフェロイドを適所に維持するのにうまく働き、作業するのが容易であり、評価後にスフェロイド培養物から除去するのが容易であった。
【0194】
上記結果に基づいて、細胞貯蔵および輸送媒体配合物の範囲は、1.0から0.5%のAGR-L、および0.7から0.5%のMcを含む。
【0195】
実施例2
貯蔵試験
細胞貯蔵および輸送媒体中の貯蔵試験を経たスフェロイド中の細胞の生存能力評価を判定した。その評価は、HT-29細胞(ヒト結腸ガン)で行った。細胞貯蔵および輸送媒体は、超低ゲル化温度アガロース(AGR-L、Sigma製品番号A5030)、およびメチルセルロース(R&D Systems製品番号HSC006)を含み、両方のゲル化特性は、スフェロイドとして細胞を輸送するための理想的な条件を提供するために変えられた。AGR-Lは、水中2%の濃度で作られ、次いで、2倍濃縮の細胞培養培地で1%に希釈されて、適切な培地成分濃度を維持した。AGR-Lは、メチルセルロース媒体と1:1で混合されると0.5%になる。メチルセルロースは、培地(IMDM)中の1.4%の貯蔵液で受け取ったまま使用され、これは、AGR-Lと混合されたときに、0.7%に希釈される。メチルセルロース対アガロースの1:1比は、4℃でのゲル形成を可能にし、このゲルは、37℃で粘性液体状態に戻る。この混合物は、混合物が37℃で固体であると見える場合、その混合物に剪断力を加えると(容器を軽くたたくことにより)、混合物が液化するという点で、非ニュートン流体のいくつかの性質も示す。この性質は、一般に、「ずり流動化」と称される。
【0196】
図15A~Dは、貯蔵試験の結果を示しており、これらの結果は、スフェロイドを形成した、緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識されたHT-29細胞の画像である。
図15Aは、10%のFBSを有するマッコイの通常細胞培養成長培地内のスフェロイドを示す。
図15Bは、24時間に亘り4℃で貯蔵した後の細胞貯蔵および輸送媒体(0.5%の超低ゲル化温度アガロース/0.7%のR&D SystemsのIMDMメチルセルロース媒体)内の細胞を示す。
図15Cは、細胞貯蔵および輸送媒体が除去され、成長培地と交換されて24時間後の細胞を示す。
図15Dは、細胞貯蔵および輸送媒体が除去され、細胞死を検出するために、細胞がヨウ化プロピジウムで染色されて48時間後の細胞を示す。死細胞は、赤く見えるであろうが、赤色は検出されていない。この生存能力評価データは、スフェロイド中の細胞は、現在開示されている細胞貯蔵媒体、システム、および方法を使用してうまく貯蔵できることを実証している。
【0197】
実施例3
模擬輸送試験
細胞貯蔵および輸送媒体中の模擬輸送試験を経たスフェロイド中の細胞の生存能力評価を判定した。この輸送媒体の実験を、以下のように行い、これが
図16に概説されている:1)通常培地を除去し、輸送媒体と交換する。2)マイクロキャビティ培養容器を1時間に亘り37℃に置く。3)輸送倍中のマイクロキャビティの培養物を、24時間に亘り4℃にする。4)輸送媒体を固体状態に維持するために、試験容器をアイスパックと共に発泡スチレン製箱に詰める。5)輸送条件を模倣するために、輸送媒体中にスフェロイドを有するマイクロキャビティ容器を収容した発泡スチレン製箱を軽く放り投げ、揺する。6)マイクロキャビティ容器を発泡スチレン製箱から取り出し、フード内に置き、そこで、37℃の培地を加える。7)1時間に亘り、またはスフェロイドを乱さずに、マイクロキャビティ容器内の媒体が、除去するのに十分に粘度が低くなるまで、マイクロキャビティ容器を37℃に置く。8)希釈した輸送媒体を除去し、新たな培地と交換する。9)スフェロイド中の細胞の生存能力を評価する24時間前に、マイクロキャビティ容器をインキュベータに戻す。10)トリプシン/EDTAを使用して、スフェロイドを単細胞に解離させ、NucleoCounterを使用して、生存率を得た。比較のために、対照は、輸送試験を経ていないスフェロイドからの細胞を使用した。本開示の細胞貯蔵および輸送媒体を使用した模擬輸送試験における細胞間の生存能力比較は、良好な生存能力(データは示さず)を示し、スフェロイド中の細胞は、現在開示されている貯蔵媒体、システム、および方法を使用して、うまく貯蔵し、輸送できることを実証している。
【0198】
*血清の有無にかかわらず、他の列挙された公知の媒体
先の明細書に述べられた全ての刊行物および特許は、ここに引用により含まれる。本開示の精神および範囲から逸脱せずに、本発明の技術に様々な改変および変更を行えることが当業者に明白であろう。本開示を、特定の好ましい実施の形態に関して記載してきたが、請求項に記載された本開示は、そのような特定の実施の形態に過度に限定されるべきではないことを理解すべきである。本発明の技術の精神および実態を含む、開示された実施の形態の改変、組合せ、部分的組合せ、および変更が、当業者に想起されるであろうから、本発明の技術は、付随の特許請求の範囲およびその等価物に全てを含むと解釈されるべきである。
【0199】
以下、本発明の好ましい実施の形態を項分け記載する。
【0200】
実施形態1
細胞培養培地、アガロース、およびメチルセルロースの混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体であって、該貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は約0.5から約1.0%であり、該貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は約0.5から約0.7%である、細胞貯蔵および輸送媒体。
【0201】
実施形態2
前記アガロースが超低ゲル化温度アガロースである、実施形態1に記載の細胞貯蔵および輸送媒体。
【0202】
実施形態3
前記アガロースが、8~17℃のゲル化温度を有する、実施形態1または2に記載の細胞貯蔵および輸送媒体。
【0203】
実施形態4
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、4℃で堅いゲルである、実施形態1から3のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送媒体。
【0204】
実施形態5
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、23℃で軟質ゲルである、実施形態1から4のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送媒体。
【0205】
実施形態6
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、37℃で粘性液体である、実施形態1から5のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送媒体。
【0206】
実施形態7
細胞貯蔵および輸送システムにおいて、
細胞、
細胞培養物品であって、一連のマイクロキャビティを有するチャンバを備え、各マイクロキャビティは、前記細胞を3Dスフェロイド構造で成長させるように構造化されている、細胞培養物品、および
細胞培養培地、アガロース、およびメチルセルロースの混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体であって、該貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は約0.5から約1.0%であり、該貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は約0.5から約0.7%である、細胞貯蔵および輸送媒体、
を備えた細胞貯蔵および輸送システム。
【0207】
実施形態8
前記チャンバの各マイクロキャビティが、
上部開口、および底部表面を有する液体不透過性底部、
を備え、
前記底部の少なくとも一部は、前記底部表面内または該底部表面上に低付着または非付着材料を含む、実施形態7に記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0208】
実施形態9
前記底部表面を含む液体不透過性底部が、ガス透過性である、実施形態8に記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0209】
実施形態10
前記底部表面が、凹形底部表面を含む、実施形態8または9に記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0210】
実施形態11
前記底部の少なくとも一部が透明である、実施形態8から10のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0211】
実施形態12
前記凹形底部表面が、半球表面、側壁から前記底部表面まで30から約60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む、実施形態10に記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0212】
実施形態13
前記チャンバの各マイクロキャビティが、側壁をさらに含む、実施形態7から12のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0213】
実施形態14
前記側壁の表面が、垂直円筒、前記チャンバの上部から前記底部表面まで直径が減少する垂直円錐の一部、前記凹形底部表面まで円錐移行部を有する垂直正方形シャフト、またはその組合せを含む、実施形態13に記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0214】
実施形態15
前記細胞培養物品が、前記チャンバを1から約2,000備え、各チャンバは、どの他のチャンバからも物理的に隔てられている、実施形態7から14のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0215】
実施形態16
前記アガロースが、超低ゲル化温度アガロースである、実施形態7から15のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0216】
実施形態17
前記アガロースが、8~17℃のゲル化温度を有する、実施形態7から16のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0217】
実施形態18
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、4℃で堅いゲルである、実施形態7から17のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0218】
実施形態19
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、23℃で軟質ゲルである、実施形態7から18のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0219】
実施形態20
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、37℃で粘性液体である、実施形態7から19のいずれか1つに記載の細胞貯蔵および輸送システム。
【0220】
実施形態21
細胞の輸送のための方法において、
a)細胞培養物品内で生細胞を培養して、スフェロイドを形成する工程であって、該細胞培養物品は、一連のマイクロキャビティを有するチャンバを備え、各マイクロキャビティは、該細胞を3Dスフェロイド構造で成長させるように構造化されている、工程、
b)前記細胞培養物品に、細胞培養培地、アガロース、およびメチルセルロースの混合物を含む細胞貯蔵および輸送媒体を添加する工程であって、該貯蔵および輸送媒体中の最終アガロース濃度は約0.5から約1.0%であり、該貯蔵および輸送媒体中の最終メチルセルロース濃度は約0.5から約0.7%である、工程、
c)前記細胞貯蔵および輸送媒体を固化させる工程、および
d)前記細胞培養物品を輸送する工程、
を有してなる、細胞の輸送のための方法。
【0221】
実施形態22
前記チャンバの各マイクロキャビティが、
上部開口、および底部表面を有する液体不透過性底部、
を備え、
前記底部の少なくとも一部は、前記底部表面内または該底部表面上に低付着または非付着材料を含む、実施形態21に記載の細胞の輸送のための方法。
【0222】
実施形態23
前記底部表面を含む液体不透過性底部が、ガス透過性である、実施形態22に記載の細胞の輸送のための方法。
【0223】
実施形態24
前記底部表面が凹形底部表面を含む、実施形態22または23に記載の細胞の輸送のための方法。
【0224】
実施形態25
前記底部の少なくとも一部が透明である、実施形態22から24のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0225】
実施形態26
前記凹形底部表面が、半球表面、側壁から前記底部表面まで30から約60度のテーパーを有する円錐表面、またはその組合せを含む、実施形態22から25のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0226】
実施形態27
前記チャンバの各マイクロキャビティが側壁をさらに含む、実施形態21から26のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0227】
実施形態28
前記側壁の表面が、垂直円筒、前記チャンバの上部から底部表面まで直径が減少する垂直円錐の一部、凹形底部表面まで円錐移行部を有する垂直正方形シャフト、またはその組合せを含む、実施形態27に記載の細胞の輸送のための方法。
【0228】
実施形態29
前記細胞培養物品が、前記チャンバを1から約2,000備え、各チャンバは、どの他のチャンバからも物理的に隔てられている、実施形態21から28のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0229】
実施形態30
前記アガロースが、超低ゲル化温度アガロースである、実施形態21から29のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0230】
実施形態31
前記アガロースが、8~17℃のゲル化温度を有する、実施形態21から30のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0231】
実施形態32
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、4℃で堅いゲルである、実施形態21から31のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0232】
実施形態33
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、23℃で軟質ゲルである、実施形態21から32のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0233】
実施形態34
前記細胞貯蔵および輸送媒体が、37℃で粘性液体である、実施形態21から33のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0234】
実施形態35
前記工程b)が、37℃で培養下の前記細胞に前記細胞貯蔵および輸送媒体を添加する工程を含む、実施形態21から34のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0235】
実施形態36
前記工程c)が、約4℃以下の温度で行われる、実施形態21から35のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0236】
実施形態37
前記工程d)が、約4℃の温度で行われる、実施形態21から36のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0237】
実施形態38
輸送時間が、48または72時間以下である、実施形態21から37のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0238】
実施形態39
前記細胞培養チャンバを密封する工程を含む、実施形態21から38のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0239】
実施形態40
e)輸送された前記細胞を回収する工程をさらに含む、実施形態21から39のいずれか1つに記載の細胞の輸送のための方法。
【0240】
実施形態41
前記工程e)が、前記輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む、実施形態40に記載の細胞の輸送のための方法。
【0241】
実施形態42
前記工程e)が、少なくとも約1時間に亘り約37℃で前記細胞培養物品をインキュベーションする工程、およびその後、前記輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む、実施形態40に記載の細胞の輸送のための方法。
【0242】
実施形態43
前記工程e)が、約37℃の細胞培養培地を前記輸送媒体に添加する工程、少なくとも約1時間に亘り約37℃で前記細胞培養物品をインキュベーションする工程、および該輸送媒体を取り出し、それを培地と交換する工程を含む、実施形態40に記載の細胞の輸送のための方法。
【0243】
実施形態44
前記工程e)が、少なくとも約1時間に亘り約37℃で前記細胞培養物品をインキュベーションする工程、およびその後、前記輸送媒体を取り出し、該細胞培養物品から3Dスフェロイド細胞を抽出する工程を含む、実施形態40に記載の細胞の輸送のための方法。
【符号の説明】
【0244】
10 マルチウェルプレート
106、119、419 底部表面
110 ウェル
112、420 マイクロキャビティ
113、421 側壁
115 マイクロキャビティ、マイクロウェル
116 液体不透過性底部表面
118、418 上部開口