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▶ エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】メチオニンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/20 20060101AFI20240920BHJP
   C07C 321/14 20060101ALI20240920BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C07C319/20
C07C321/14
C07B61/00 300
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021573554
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2020065758
(87)【国際公開番号】W WO2020249495
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】19179839.6
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユアゲン ビルツ
(72)【発明者】
【氏名】コーネリア ボアクマン
(72)【発明者】
【氏名】アヒム フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ガイスト
(72)【発明者】
【氏名】アーニャ ノアトシルト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン レナー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ロイス
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ロネブルク
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047516(WO,A1)
【文献】特開2019-048774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下で2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液を水と接触させて、メチオニンを含む混合物を得る工程を含む、メチオニンの製造方法であって、
前記触媒は、CeOを含む粒子を含み、
前記CeOを含む粒子は、
DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175 /g~300±10%m/gのBET表面積、ならびに、
どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有する、方法。
【請求項2】
前記触媒が、前記触媒の総質量に対して25~100質量%のCeOを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記CeOを含む粒子が、50~100質量%のCeOを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記CeOを含む粒子のBET表面積が、225±10%~265±10%m/gの範囲である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記CeOを含む粒子の平均最小フェレット径xFmin,meanが、前記粒子の平均最大フェレット径xFmax,meanよりも常に小さい、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記CeOを含む粒子が、DIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される0.55±10%~0.80±10%の平均アスペクト比xFmin,mean/xFmax,meanを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記CeOを含む粒子が、0.24±10%~0.32±10%nmの格子面距離を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記CeOを含む粒子が、八面体粒子を含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記CeOを含む粒子が、DIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される3±10%~30±10%nmの平均円相当径xA,meanを有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記CeOを含む粒子が、少なくとも50%の結晶化度を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
接触工程を、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルを含む溶液または懸濁液を用いて最高90℃の温度で行う、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
接触工程から得られた前記メチオニンを含む混合物を、少なくとも1回の更なる接触工程に送る、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1回の更なる接触工程を、70~140℃の範囲の温度で行う、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記メチオニンを含む混合物から連続クロスフロー濾過によって前記触媒を分離する工程をさらに含む、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1回の接触工程が、真空蒸留を伴うか、または水蒸気を用いた反応溶液もしくは懸濁液のストリッピングを伴う、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを出発物質として用いて一段階でメチオニンを製造する方法に関する。
【0002】
メチオニンは必須アミノ酸であり、特に家禽用の飼料添加剤として非常に重要である。現在の標準的なメチオニンの工業生産では、メチルメルカプタン、アクロレインおよびシアン化水素から出発する。初めに、マイケル付加によってメチルメルカプタンをアクロレインの炭素-炭素二重結合に付加させ、中間体3-(メチルチオ)プロピオンアルデヒドを得る。次に、このアルデヒドをシアン化水素と反応させ、2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルを得て、これをさらにアンモニアおよび二酸化炭素と反応させて、対応するヒダントイン誘導体とする。代替的には、3-(メチルチオ)プロピオンアルデヒドと、シアン化水素、アンモニアおよび二酸化炭素とを反応させることによってもヒダントイン誘導体を得ることができる。このヒダントインの塩基性加水分解により、メチオニンのアルカリ塩が得られる。これを、例えばHSOの添加によって、またはメチオニンのアルカリ塩を含有する水溶液に二酸化炭素をバブリングすることによって酸で中和することで、ラセミ体メチオニンが得られる。
【0003】
代替的には、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルまたは2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドの加水分解によってメチオニンを製造することも可能である。2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルとアンモニアとの反応または3-(メチルチオ)プロピオンアルデヒドとシアン化水素およびアンモニアとの反応から得られた2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの加水分解が、中間体2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを介して進行し、所望の生成物としてメチオニンが得られることが広く認められている。初めに、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルのニトリル基をアミド基に加水分解して、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを得る。続いて、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドのアミド基をヒドロキシ基に加水分解して、メチオニンを得る。
【0004】
特開昭54-46717号公報には、金属亜鉛または酸化亜鉛の存在下でα-アミノニトリルと水とを反応させることによるアミノ酸の製造方法が開示されている。しかしながら、メチオニンの収率は満足のいくものではない。
【0005】
特開平03-93757号公報には、二酸化ジルコニウム系触媒の存在下でα-アミノニトリルを対応するα-アミノ酸に加水分解する方法が開示されている。しかしながら、メチオニンの収率は満足のいくものではなく、また一貫してもいない。
【0006】
米国特許第6,417,395号明細書には、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルのメチオニンへの触媒による加水分解が開示されている。しかしながら、この文献で使用される触媒系は、所望の生成物であるメチオニンの形成に関して最適な性能を示していない。むしろ、該触媒系は加水分解に使用される溶媒に応じて大きく異なるようである。
【0007】
欧州特許出願公開第3199519号明細書には、セリウムを含有する酸化物触媒の存在下で2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルと水とを互いに接触させることによってメチオニンを製造する方法が開示されている。具体的には、この方法に使用される触媒は、酸化セリウム、例えば酸化セリウム(III)(Ce)、酸化セリウム(IV)(CeO)、それらの混合物、もしくはこれらの混合相を有する酸化セリウム化合物;またはセリウムを含有する酸化物固溶体、例えばCeO-ZrO(セリア-ジルコニア)、CeO-YおよびCeO-Laである。しかしながら、このようにして得られるメチオニンの収率は、一貫していない。むしろ、使用されるCeO系触媒の種類および量および供給源、ならびにプロセスの付加的な固有の特性に応じて結果が大きく変わる。メチオニンを純粋なCeOの存在下で作製した例であっても、メチオニンの収率は、60%から95%まで大きく異なる。さらに、欧州特許出願公開第3199519号明細書の実施例には、このようにして得られるメチオニンを含む生成物混合物中の他の成分については明記しておらず、特に他の成分が未転化の出発化合物であるか、または副生成物であるかについては明記されていない。したがって、この文献の実験データは、あらゆる種類のCeO系触媒が実際に2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの触媒加水分解に適しているかについていかなる結論も与えない。
【0008】
したがって、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを出発物質として用いて一段階でメチオニンを製造する改善された方法が必要とされていた。
【0009】
この課題は、CeOを含む粒子を含む触媒の使用によって解決されることが見出されたが、ここで、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/gのBET表面積を、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanと組み合わせて有する。具体的には、これらのパラメーターのうち一方では、所望の転化率および選択率を与える触媒を特徴付けるには十分でないことが見出された。2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを出発化合物として用いたメチオニンの製造において所望の転化率および選択率を得るには、所与の範囲の特定のパラメーターの組合せを有する触媒が必要とされる。
【0010】
したがって、本発明の対象は、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液と、水と、を触媒の存在下で接触させ、メチオニンを含む混合物を得る工程を含む、メチオニンの製造方法であって、触媒は、CeOを含む粒子を含み、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有する、方法である。
【0011】
本発明との関連において、最大フェレット径および最小フェレット径という用語は、工業規格DIN ISO 9276-6(2012)によって知られているとおりに用いられる。これらはマクロ形状記述子であり、結晶または或る特定の結晶化度を有する粒子等の粒子の幾何学的比率を反映する。この点において、これらは粒子に適用される2つの平行な接線間の距離を表す。具体的には、最大フェレット径は、接線が適用された粒子の「長さ」に相当し、最小フェレット径は、その粒子の「幅」に相当する。
【0012】
本発明との関連において、平均という用語は、当該パラメーターの数学的期待値または平均値とも呼ばれる算術平均を表すために使用される。これは、パラメーターの測定値の離散集合の中央値、具体的にはパラメーターの測定値の合計を測定数で除算したものである。
【0013】
本発明との関連において、メチオニンを含む混合物という用語は、触媒と、必要に応じて未転化の出発化合物、すなわち2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドと、純粋な形態のメチオニン、および/またはメチオニン酸アンモニウムとして接触工程中に放出される、アンモニアと混合されたメチオニンとを含有する混合物を表す。メチオニンを含む混合物から触媒を分離した後、上記用語は、必要に応じて未転化の出発化合物、すなわち2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドと、純粋な形態のメチオニン、および/またはメチオニン酸アンモニウムとして接触工程中に放出される、アンモニアと混合されたメチオニンとを含む混合物を表す。
【0014】
本発明との関連において、明示的に言及された値に続く±10%という用語は、明示的に言及された値の-10%~+10%の範囲での偏差を表し、したがって、この範囲内の全ての値を含む。また、±10%という用語は、付加的な10の範囲の有無に関わらず、任意の明示的に言及された値からの偏差も、該偏差が同様に請求項に係る発明の効果につながることを条件として請求項に係る発明の範囲に包含されることを表す。
【0015】
本発明による方法、具体的には本発明によるCeOを含む粒子を含む触媒を使用することで、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドの2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドとメチオニンとを含む混合物またはメチオニンへの加水分解が、いずれも欧州特許出願公開第3199519号明細書の触媒より高い選択率で触媒される。
【0016】
原則として、本発明による方法は、使用される触媒中のCeOの含有量に関していかなる制限も受けない。したがって、触媒は25~100質量%のCeOを含み得る。あらゆる触媒反応が通例、触媒浸出とも称される幾らかの触媒の喪失を伴う。触媒中の触媒活性成分の価格に応じて、触媒の喪失または浸出は、多かれ少なかれプロセスの経済性に影響を与える。したがって、工業的には、可能な限り少量の触媒を触媒反応に使用することが有益である。例えば、CeOを含む粒子を含む触媒を、本発明による方法において触媒活性ではないと考えられる更なる成分と混合する。この点で好適な成分は、例えばZrOである。特定の触媒が25質量%のCeOしか含まない場合、例えば1当量のCeO当たり3当量のZrOと混合されたCeOの粒子を含む触媒を用いることで、本発明による方法が既に95%のメチオニン収率をもたらすことが見出された。
【0017】
本発明による方法の一実施形態では、触媒は、触媒の総質量に対して25~100質量%のCeOを含む。
【0018】
それにもかかわらず、可能な限り高い転化率およびメチオニン収率を相当に短時間で得るためには、本発明による触媒が、触媒の総質量に対して25質量%超のCeOを含有することが好ましい。したがって、本発明による触媒は、好ましくは、いずれも触媒の総質量に対して25~100質量%、30~100質量%、35~100質量%、40~100質量%、45~100質量%、50~100質量%、55~100質量%、60~100質量%、65~100質量%、70~100質量%、75~100質量%、80~100質量%、85~100質量%、90~100質量%または95~100質量%のCeOを含む。
【0019】
触媒全般と同様、CeOを含む粒子も特定のCeO含有量に関して限定されない。具体的には、CeO含有量が一律ではないCeOを含む粒子であっても、本発明による方法において同等の結果をもたらすことが見出された。特に、50~100質量%のCeOを含み、残りがZrO等の、セリウムまたは酸化セリウムとは異なる1つ以上の金属または金属酸化物であるCeOを含む粒子は、本発明による方法において特に良好な結果をもたらす。したがって、本発明による方法に適した触媒は、CeO、(CeO0.5-(ZrO0.5、(CeO0.7-(ZrO0.3、および/または(CeO0.8-(ZrO0.2、または純粋なCeOを含む粒子を含む。
【0020】
本発明による方法の一実施形態では、CeOを含む粒子は、50~100質量%のCeOを含む。
【0021】
具体的には、CeOを含む粒子は50質量%、70質量%、80質量%または100質量%のCeOを含む。
【0022】
実験により、CeOを含む粒子が200~280m/gの範囲のBET表面積を有する本発明による触媒が、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの触媒による加水分解(T=75℃、t=120分、4gの触媒(0.35当量)および10gの2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル)において最大100%の選択率、ならびに最大100%のメチオニンおよび2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドの形成についての合計選択率でメチオニンを生じることが示された。
【0023】
本発明による方法の一実施形態では、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される200±10%~280±10%m/gのBET表面積を有する。更なる好ましい実施形態では、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される225±10%~265±10%m/gのBET表面積を有する。
【0024】
ややコンパクトなCeOを含む粒子を含む本発明による触媒が、高いメチオニン収率および高いメチオニン選択率のために、球状のCeOを含む粒子を含む触媒より有益であることも見出された。球状のCeOを含む粒子とコンパクトなCeOを含む粒子とを区別するのに適したパラメーターは、いわゆるアスペクト比である。このパラメーターは、粒子の辺の比率を説明するものであり、具体的には、DIN ISO 9276-6(2012)に準拠する最小フェレット径と最大フェレット径との比率xFmin/xFmaxを説明する。本発明との関連においては、CeOを含む粒子が平均最小フェレット径xFmin,meanおよび平均最大フェレット径xFmax,meanによって既に説明されているため、平均アスペクト比を使用することが好ましい。したがって、平均アスペクト比は、xFmin,mean/xFmax,meanとして表すことができる。球状の粒子は、同様のフェレット径を有するため、1に非常に近い(平均)アスペクト比を有する。完全に球形の粒子は、(平均)アスペクト比が1である。比較すると、本発明による方法に使用される触媒のCeOを含む粒子は、1未満の平均アスペクト比を有し、したがって、同一ではないフェレット径を有する。
【0025】
本発明による方法の別の実施形態では、CeOを含む粒子の平均最小フェレット径は、常に該粒子の平均最大フェレット径よりも小さい。
【0026】
好ましくは、CeOを含む粒子は、3±10%~10±10%nmの範囲の平均最小フェレット径xFmin,meanを有する。CeOを含む粒子が、4±10%~10±10%nmの範囲の平均最大フェレット径xFmax,meanを有することがさらに好ましい。特に、CeOを含む粒子は、3±10%~10±10%nmの範囲の平均最小フェレット径xFmin,meanおよび4±10%~10±10%nmの範囲の平均最大フェレット径xFmax,meanを有する。
【0027】
本発明による方法の一実施形態では、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~10±10%nmの範囲の平均最小フェレット径xFmin,meanおよび4±10%~10±10%nmの範囲の平均最大フェレット径xFmax,meanを有する。
【0028】
本発明による方法の好ましい実施形態では、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される225±10%~265±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~10±10%nmの範囲の平均最小フェレット径xFmin,meanおよび4±10%~10±10%nmの範囲の平均最大フェレット径xFmax,meanを有する。
【0029】
DIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される平均アスペクト比が0.75を超えるCeOを含む粒子は、ややコンパクトなCeOを含む粒子よりも低いメチオニン収率および低いメチオニン選択率をもたらすことが見出された。具体的には、0.55±10%~0.80±10%、特に0.6±10%~0.8±10%の平均アスペクト比を有するCeOを含む粒子を含む触媒は、特に高いメチオニン収率および高いメチオニン選択率をもたらすことが見出された。
【0030】
本発明による方法のさらに別の実施形態では、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される0.55±10%~0.80±10%の平均アスペクト比xFmin,mean/xFmax,meanを有する。
【0031】
本発明によると、触媒は、CeOを含む粒子を含み、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有する。フェレット径の定義から、それらの値は大きく変わり得ることになる。さらに、フェレット径は、最も厳密な意味での直径ではなく、むしろ結晶または或る特定の結晶化度を有する粒子等の粒子の幾何学的比率を反映するものである。したがって、フェレット径のみに基づいて一次粒子のサイズを表すことはできない。いわゆる円相当径xが、本発明による触媒中のCeOを含む粒子の一次粒子サイズを表すのに適した尺度である。本発明との関連において、円相当径という用語は、工業規格DIN ISO 9276-6(2012)によって知られるように使用される。概して、円相当径は、当該粒子と同じ投影面積を有する円の直径に相当する。円相当径は、以下の式
【数1】
を用いて算出され、Aは、nmで示され、DIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される当該粒子の投影面積である。通例、当該粒子の投影面積は、有意な数(少なくとも100個、好ましくは少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個または少なくとも500個)の粒子の高分解能透過電子顕微鏡法(HR-TEM)画像のグラフ解析において画像解析ソフトウェアを用いて得られる。本発明との関連において、分析されたCeOを含む粒子の全数について一般的な平均一次粒子サイズを表すことを可能にする平均円相当径xが用いられる。本発明の触媒中のCeOを含む粒子は、DIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される3±10%~30±10%nm、好ましくは4±10%~30±10%、10±10%~30±10%nmまたは4±10%~20±10%の平均円相当径xを特徴とする。比較すると、触媒#4(富士フイルム和光純薬株式会社から購入、実験の項の表1を参照)中のCeOを含む粒子は、約48nmの円相当径を有するため、本発明による触媒よりも大きく、嵩高い。
【0032】
本発明による方法の一実施形態では、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される3±10%~30±10%nmの平均円相当径xA,meanを有する。
【0033】
本発明による方法の触媒の更なる分析から、CeOを含む粒子における0.24±10%~0.32±10%nm、好ましくは0.28±10%~0.32±10%nmの格子面距離が、高いメチオニン収率および高いメチオニン選択率に有益であることが示された。
【0034】
本発明による方法の更なる実施形態では、CeOを含む粒子は、0.24±10%~0.32±10%nmの格子面距離を有する。
【0035】
0.24±10%~0.32nm±10%の格子面距離を有する粒子は、八面体粒子の存在の要件である(111)面を有する。この発見は、CeOを含む八面体粒子を含む、本発明による方法における非常に効率的かつ選択的な触媒のHR-TEM写真と一致する。0.24±10%~0.32±10%nmの格子面距離を有する本発明によるCeOを含む粒子を含む触媒は、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルのメチオニンへの加水分解を少なくとも99%の収率で触媒する。比較すると、本発明によるものではない0.40nmの格子面距離を有するCeOを含む粒子を含む触媒(実施例3.3の比較触媒#3を参照されたい)は、僅か35%のメチオニン収率しかもたらさない。実際に、CeOを含む粒子の平均アスペクト比が0.71に近づくほど、粒子が八面体形状に近づく。完全な八面体粒子は、0.71のアスペクト比を有する。したがって、CeOを含む八面体粒子の存在は、効率的な触媒が0.55±10%~0.80±10%、特に0.6±10%~0.8±10%の平均アスペクト比を有するCeOを含む粒子を含むこととも一致する。
【0036】
本発明による方法のまた更なる実施形態では、CeOを含む粒子は八面体粒子を含む。
【0037】
球形であり、やや滑らかな(soft)端部を有するCeOを含む粒子を含有する触媒がメチオニンの形成について低い収率および選択率をもたらすことが見出された。比較すると、本発明による方法に効果的な触媒は、やや結晶様の外観を有し、すなわち少なくとも50%の結晶化度を有するCeOを含む粒子を含有する。具体的には、効果的な触媒は、CeOを含む粒子の鮮明な端部、角および領域を有する鮮明かつ識別可能な幾何学的外観によって、効果が低い触媒と区別することができる。比較すると、効果が低い触媒は、特定の幾何学的外観に明確に割り当てることができない、丸みを帯びたまたは滑らかな角および端部を有するCeOを含む粒子を有する。
【0038】
本発明による方法の別の実施形態では、CeOを含む粒子は、少なくとも50%の結晶化度を有する。
【0039】
好ましくは、CeOを含む粒子は50~100%、50~95%または55~90%の結晶化度を有する。
【0040】
原則として、本発明による方法は、接触工程を行う温度に関して限定されない。したがって、接触工程は、出発化合物2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルが熱的に安定している任意の温度で行うことができる。具体的には、最高90℃の温度において、本発明の方法による2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドの加水分解から得られたメチオニンを含む混合物中に副生成物は検出されなかった。例えば、接触工程は20~90℃、30~90℃、40~90℃、50~90℃、60~90℃、70~90℃または80~90℃の温度で行うことができる。例えば、本発明による方法では、4g(0.35当量)の触媒および10gの出発化合物を用いて、75℃の比較的低い温度および2時間の反応時間で既に出発物質2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの完全な転化および99~100%のメチオニン収率が得られる。比較すると、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルのメチオニンへの加水分解を105℃の温度で行う場合、4%のメチオニンスルホキシド、すなわち望ましくない副生成物としての酸化メチオニンが形成される。
【0041】
一実施形態では、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルを含む溶液または懸濁液を用いて最高90℃の温度で本発明による方法の接触工程を行う。好ましくは、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルを含む溶液または懸濁液を用いて50~90℃の温度で本発明による方法の接触工程を行う。
【0042】
本発明による方法は、メチオニンの可能な限り高い収率を達成することを目的とする。しかしながら、出発物質、特に2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルが完全にまたは所望の程度までメチオニンに転化されない場合があり得る。ここで、残りの部分は、特に2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドである。上記2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドが本発明による方法における中間体であり、好適な出発物質であるため、(第1の)接触工程からのメチオニンを含む混合物を、好ましくは本発明による方法の更なる接触工程に送る。ここで、本発明による特定の触媒の存在下で2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含有する溶液または懸濁液を水と接触させて、メチオニンへの転化を最大化する。
【0043】
本発明による方法の一実施形態では、接触工程から得られたメチオニンを含む混合物を少なくとも1回の更なる接触工程に送る。
【0044】
したがって、本発明による方法は、好ましくは、
i)初めに触媒の存在下で2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液を水と接触させて、メチオニンを含む混合物を得る工程であって、触媒は、CeOを含む粒子を含み、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/g、好ましくは200±10%~280±10%m/gまたは225±10%~265±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nm、好ましくは4±10%~10±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nm、好ましくは3±10%nm~10±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有する工程と、
ii)工程i)から得られたメチオニンを含む混合物を少なくとも1回の更なる接触工程に送る工程と
を含む。
【0045】
出発化合物の非転化部分の完全な転化を達成するために、第2のまたは更なる接触工程を第1の接触工程の温度と比べて高温で行うことが好ましい。先行する接触工程、すなわち第1の接触工程と比較して、先行する、すなわち第1の接触工程の温度と比べて高温であることが、副生成物の定量可能な形成につながることはない。したがって、第2のまたは更なる接触工程は、90℃超の温度で行うことができる。例えば、第2のまたは更なる接触工程は70~140℃、80~130℃、90~120℃または100~110℃の温度で行うことができる。
【0046】
本発明による方法の別の実施形態では、少なくとも1回の更なる接触工程を70~140℃の範囲の温度で行う。
【0047】
本発明による方法は、好ましくは1~30質量%、3~25質量%、6~24質量%または6~20質量%の濃度範囲の2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液を用いて行うことができる。
【0048】
本発明による方法の一実施形態では、1~30質量%の濃度範囲の2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液を用いて接触工程を行う。
【0049】
本発明による方法は、CeOを含む粒子を含む触媒の特定の形状またはサイズに関して限定されない。最も単純な事例では、触媒は、CeOを含む粒子の製造から得られた粉末である。しかしながら、微粒子からなる触媒を触媒反応に使用する場合、微粉末触媒とメチオニンを含む混合物とを互いに分離する必要がある。本発明との関連で好適な分離工程は、効率的かつ連続プロセスに適用可能であるという要件を満たす必要がある。液体媒体から粒子を分離する最も一般的な手法は、いわゆるデッドエンド濾過である。しかしながら、このタイプの濾過は、完全連続プロセスへの使用にも、大規模用途での液体媒体からの直径が10μm未満の粒子の分離にも適していない。この問題は、連続クロスフロー濾過を用いることで解決されることが見出された。タンジェンシャルフロー濾過としても知られるクロスフロー濾過は、出発メチオニンおよびCeOを含む懸濁液をフィルターの表面に沿って接線方向に通過させる濾過法である。フィルターを隔てた圧力差により、細孔よりも小さい成分がフィルターを通り抜ける(透過液)。フィルターの細孔よりも大きな成分は保持され、膜表面に沿って流れ、フィードリザーバに戻る(保持液)。
【0050】
更なる実施形態では、本発明による方法は、工程i)および/またはii)で得られたメチオニンを含む混合物から連続クロスフロー濾過によって触媒を分離する工程をさらに含む。
【0051】
したがって、本発明による方法は、好ましくは、
i)初めに触媒の存在下で2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液を水と接触させて、メチオニンを含む混合物を得る工程であって、触媒は、CeOを含む粒子を含み、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/g、好ましくは200±10%~280±10%m/gまたは225±10%~265±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nm、好ましくは4±10%~10±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nm、好ましくは3±10%~10±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有する工程と、
ii)任意に、工程i)から得られたメチオニンを含む混合物を少なくとも1回の更なる接触工程に送る工程と、
iii)工程i)および/または工程ii)のメチオニンを含む混合物から連続クロスフロー濾過によって触媒を分離する工程と
を含む。
【0052】
したがって、代替的または付加的に、本発明による方法は、好ましくは、
i)初めに触媒の存在下で2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液を水と接触させて、メチオニンを含む混合物を得る工程であって、触媒は、CeOを含む粒子を含み、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/g、好ましくは200±10%~280±10%m/gまたは225±10%~265±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nm、好ましくは4±10%~10±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nm、好ましくは3±10%~10±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有する工程と、
ii)任意に、工程i)から得られたメチオニンを含む混合物を少なくとも1回の更なる接触工程に送る工程と、
iii)工程i)および/または工程ii)のメチオニンを含む混合物から連続クロスフロー濾過によって触媒を分離する工程と、
ii’)任意に、工程i)およびiii)または工程i)~iii)を繰り返す工程と
を含む。
【0053】
原則として、CeOを含む粒子の分離には高分子膜またはセラミック膜を使用することができる。しかしながら、CeOを含む小さな粒子は、膜を通って流れる際に研磨してしまう。限定されるものではないが、例えばTiO、ZrOまたはAlからなり、限定されるものではないが、例えばTiO、ZrOまたはAl上に担持されたセラミック膜は、研磨性のCeOを含む粒子に対して耐久性があることが証明されており、したがって、メチオニンを含む混合物からCeOを含む粒子を含む触媒を分離するクロスフロー濾過に好ましい。本発明による方法の触媒が、そのまま、例えば微粉末の形態のCeOを含む粒子からなる場合、触媒粒子は、CeOを含む粒子と同様、10~30nmの円相当径xを有する。したがって、クロスフロー濾過に用いられる膜の細孔径は、触媒粒子を引き止めるために適切に選択する必要がある。同時に、濾過に使用される膜は、反応時に形成されたメチオニンが膜を透過できる必要がある。膜を通過することができる最大の分子の分子量である公称分画分子量(NMWC)は、膜のこの特徴を特徴付けるのに適したパラメーターであり、1~150kD(キロダルトン=1000g/mol)の範囲であり、150kDが約20nmの細孔径に概ね対応する。このため、透過液中のメチオニンを含む生成物溶液から保持液中のCeOを含む粒子を効率的に分離するためには、1~150kDのNMWC値を有するこれらの限外濾過膜を使用することができる。膜の細孔サイズが100nm未満の濾過は、限外濾過としても知られ、膜の細孔サイズが100nm以上の濾過は、精密濾過としても知られる。本発明との関連において、CeOを含む触媒粒子の凝集体および集塊の形成により、直径が100nm超から最大数μmの凝集体および集塊の直径が効果的に大きくなることから、細孔サイズが100nmから最大1μmの精密濾過膜を用いることもできる。しかしながら、精密濾過膜は、CeOを含む触媒粒子の全てを限外濾過膜ほど効率的に保持するものではない。その場合、1回目の濾過の透過液を用いて2回目の濾過を行う必要がある。したがって、連続クロスフロー濾過が限外濾過であることが好ましい。1~150kDの公称分画分子量および/または20~50nmの細孔径を有する膜、好ましくはセラミック膜を用いて連続クロスフロー濾過を行うことがさらに好ましい。
【0054】
このようにして得られる透過液の溶液から、例えば結晶化または再結晶化によって所望の生成物であるメチオニンを分離することができる。CeO粒子を含む触媒を含有する保持液の溶液または懸濁液を、上記のように第2のまたは任意の更なる接触工程に戻すことができる。例えば、更なる接触工程を行うために、上記保持液を第1の反応器に戻すか、または下流の反応器に送ることができる。保持液を下流の反応器に送る場合、上記下流の反応器も、生成物溶液から触媒を分離するために、上記のように膜を備えている。
【0055】
本発明による方法は、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドから出発するか、または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルから出発するかに関わらず、常にアンモニアの放出を伴う。2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの加水分解の第1の工程では、シアン化物基をアミド基に転化するが、これは、原理上はシアン化物基の炭素-窒素三重結合への水の付加である。次に、このようにして得られる2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドの加水分解において、アンモニアの放出下でアミド基を対応するカルボン酸基に転化する。このため、1当量の2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドの加水分解は、常に1当量のアンモニアの放出を伴う。加えて、出発物質2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルは、特に米国特許出願公開第2012/215021号明細書に従い、塩基としてのアンモニアの存在下で3-(メチルチオ)プロピオンアルデヒドとシアン化水素とを反応させることによって製造する場合、既にアンモニアを含有している。この製造手順でアンモニア以外の塩基を使用する場合であっても、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルは、依然としてアンモニアを含有する。これは、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの製造に使用されるシアン化水素が、アンドルソフ法に従って製造されたか、またはデグサ法とも称されるBMA法に従って製造されたかに関わらず、通例、未反応のアンモニアを依然として含有しているためである。結果として、メチオニンへの加水分解に使用される任意の2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル、ならびに加水分解中間体である2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドおよび最終加水分解生成物であるメチオニンは、常にアンモニアを含有する。しかしながら、メチオニンを含む混合物中のアンモニアの存在は、必然的にメチオニンのアンモニウム塩の形成を生じる。したがって、欧州特許出願公開第3199519号明細書による方法を用いて中性メチオニンまたはアンモニアを含まないメチオニンを得ることはできない。2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを水と接触させると、主生成物としてメチオニン酸アンモニウムを含むメチオニン含有混合物が常に得られ、したがって、中性メチオニン、すなわちアンモニアを含まないメチオニンを得るためには、このようにして得られるメチオニンを含む生成物を結晶化に供する必要がある。好ましくは、結晶化は、接触工程から得られた水性のメチオニン酸アンモニウムを含む水溶液から直接行われる。代替的には、メチオニンを含む生成物、すなわち主生成物としてメチオニン酸アンモニウムを含有する生成物を上記溶液から沈殿させ、続いて溶液から分離し、再び好適な溶媒、好ましくは水に溶解し、このようにして得られる第2の溶液の再結晶化を行うことも可能である。本発明との関連において、上記第2の溶液は、メチオニンを含む混合物とも称される。
【0056】
別の実施形態では、本発明による方法は、少なくとも1回の接触工程から得られたメチオニンを含む混合物からメチオニンを結晶化または再結晶化する工程をさらに含む。
【0057】
したがって、本発明による方法は、好ましくは、
i)初めに触媒の存在下で2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液を水と接触させて、メチオニンを含む混合物を得る工程であって、触媒は、CeOを含む粒子を含み、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/g、好ましくは200±10%~280±10%m/gまたは225±10%~265±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nm、好ましくは4±10%~10±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nm、好ましくは3±10%~10±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有する工程と、
ii)任意に、工程i)から得られたメチオニンを含む混合物を少なくとも1回の更なる接触工程に送る工程と、
iii)工程i)および/または工程ii)のメチオニンを含む混合物から連続クロスフロー濾過によって触媒を分離する工程と、
iv)工程iii)から得られたメチオニンを含む混合物からメチオニンを結晶化または再結晶化する工程と
を含む。
【0058】
したがって、代替的または付加的に、本発明による方法は、好ましくは、
i)初めに触媒の存在下で2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液を水と接触させて、メチオニンを含む混合物を得る工程であって、触媒は、CeOを含む粒子を含み、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/g、好ましくは200±10%~280±10%m/gまたは225±10%~265±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nm、好ましくは4±10%~10±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nm、好ましくは3±10%~10±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有する工程と、
ii)任意に、工程i)から得られたメチオニンを含む混合物を少なくとも1回の更なる接触工程に送る工程と、
iii)工程i)および/または工程ii)のメチオニンを含む混合物から連続クロスフロー濾過によって触媒を分離する工程と、
ii’)任意に、工程i)およびiii)または工程i)~iii)を繰り返す工程と、
iv)工程ii’)を少なくとも1回行った場合に、最終分離工程iii)から得られたメチオニンを含む混合物からメチオニンを結晶化または再結晶化する工程と
を含む。
【0059】
欧州特許出願公開第3199519号明細書の技術的教示によると、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルは、3-(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、シアン化水素およびアンモニアを互いに接触させることによって製造されるため、メチオニンの製造のための出発物質もアンモニアを含有する。したがって、この文献のほぼ全ての実施例が、依然としてアンモニアを含有する2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの水溶液を用いて行われたことは驚くには当たらない。この文献の実施例5のみが、脱アンモニア処理された2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルを用いて行われた。他の実施例と比較して、この実施例で得られたメチオニン収率は僅か80%であり、欧州特許出願公開第3199519号明細書の他の実施例よりも著しく低い。これらの結果に基づいて、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの加水分解によってメチオニンを製造する場合に、アンモニア等の塩基の存在が高い収率にとって有益であったことが予測される。しかしながら、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドからの加水分解においても、メチオニン酸アンモニウムの形成を少なくして高いメチオニン収率を得ることが可能であることが見出された。反応溶液または懸濁液から少なくとも部分的にアンモニアを除去するために、本発明による方法の少なくとも1回の接触工程が、真空蒸留を伴うか、または水蒸気を用いた反応溶液もしくは懸濁液のストリッピングを伴うことで、この効果が達成されることが見出された。本発明による方法の接触工程を減圧下で行うことで、反応溶液または懸濁液を緩和させ、溶液または懸濁液からアンモニアを遊離させることが可能である。水蒸気を用いたストリッピングにより、反応溶液または懸濁液中に含まれるアンモニアが上記溶液または懸濁液から取り除かれ、反応系から除去される。
【0060】
また別の実施形態では、本発明による方法の少なくとも1回の接触工程が、真空蒸留を伴うか、または水蒸気を用いた反応溶液もしくは懸濁液のストリッピングを伴う。
【0061】
したがって、本発明による方法は、好ましくは、
i)初めに触媒の存在下で2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液を水と接触させて、メチオニンを含む混合物を得る工程であって、触媒は、CeOを含む粒子を含み、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/g、好ましくは200±10%~280±10%m/gまたは225±10%~265±10%m/gのBET表面積、ならびに、
どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nm、好ましくは4±10%~10±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nm、好ましくは3±10%~10±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有する工程と、
ii)任意に、工程i)から得られたメチオニンを含む混合物を少なくとも1回の更なる接触工程に送る工程と、
iii)工程i)および/または工程ii)のメチオニンを含む混合物から連続クロスフロー濾過によって触媒を分離する工程と、
iv)工程iii)から得られた混合物からメチオニンを結晶化または再結晶化する工程と
を含み、工程ii)~iv)の少なくとも1つが、真空蒸留を伴うか、または水蒸気を用いた反応溶液もしくは懸濁液のストリッピングを伴う。
【0062】
したがって、代替的または付加的に、本発明による方法は、好ましくは、
i)初めに2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルおよび/または2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドを含む溶液または懸濁液を触媒の存在下で水と接触させて、メチオニンを含む混合物を得る工程であって、触媒は、CeOを含む粒子を含み、CeOを含む粒子は、DIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/g、好ましくは200±10%~280±10%m/gまたは225±10%~265±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nm、好ましくは4±10%~10±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nm、好ましくは3±10%~10±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有し、
ii)任意に、工程i)から得られたメチオニンを含む混合物を少なくとも1回の更なる接触工程に送る工程と、
iii)工程i)および/または工程ii)のメチオニンを含む混合物から連続クロスフロー濾過によって触媒を分離する工程と、
ii’)任意に、工程i)およびiii)または工程i)~iii)を繰り返す工程と、
iv)工程ii’)を少なくとも1回行った場合に、最終分離工程iii)から得られたメチオニンを含む混合物からメチオニンを結晶化または再結晶化する工程と
を含み、工程ii)~iv)の少なくとも1つが、真空蒸留を伴うか、または水蒸気を用いた反応溶液もしくは懸濁液のストリッピングを伴う。
【0063】
好ましくは、工程ii)およびiii)、工程ii)およびiv)、工程iii)およびiv)または工程ii)~iv)の全てが、1回行うか、または繰り返し行うかに関わらず、真空蒸留を伴うか、または水蒸気を用いた反応溶液もしくは懸濁液のストリッピングを伴う。
【0064】
このようにして反応溶液または懸濁液から除去されたアンモニアを、本発明による方法の上流の反応工程において2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの転化に使用し、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルを得ることができる。
【0065】
本発明による方法に使用される触媒は、本発明による技術的特徴、特にDIN ISO 9277-5(2003)に準拠して測定される175~300±10%m/g、好ましくは200±10%~280±10%m/g、225±10%~265±10%m/gのBET表面積、ならびに、どちらもDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して測定される、3±10%~40±10%nm、好ましくは4±10%~10±10%nmの平均最大フェレット径xFmax,meanおよび2±10%~30±10%nm、好ましくは3±10%~10±10%nmの平均最小フェレット径xFmin,meanを有する触媒中に含まれるCeOを含む粒子を与えるものである限りにおいて、その製造に関していかなる制限も受けない。例えば、触媒は、欧州特許出願公開第1506940号明細書の実施例1に従って製造することができる。
【0066】
本発明を以下の図面および実施例によってさらに説明する。
【0067】
実施例
1. 分析方法
1.1 HPLCクロマトグラフィー:
2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル(MMP-CN)、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル(MMP-AN)、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミド(Met-amide)、3-(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(MMP)およびメチオニン(Met)のクロマトグラフィー分析を、RP-18カラム(250×4.6mm;5μm)およびその後の210nmでのUV検出を伴うJASCOまたはAgilentのHPLCシステムを用いて行った。溶離液として、3.3gのHPO、6.8gのCHCNおよび89.9gのHOからなる混合物を1mL/分の流量で使用した。10μLのそれぞれのサンプル溶液(25mLのHO中50mgのサンプル)を分析のために溶離液に注入した。較正は、有機化学合成において一般に行われるように、分析対象物(analyst)の好適な標準原液の注入およびその後の外部標準とのピーク面積の比較によって事前に行った。
【0068】
1.2 BET表面積:
BET表面積ABETは、固体の表面に窒素を物理的に吸着させ、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)法に従って表面上の単分子層に相当する吸着ガスの量を算出することによって決定した。使用するサンプル(0.2~0.9g)を測定前に真空下にて150℃で20分間脱ガスした。次いで、液体窒素の温度(77K)で決定を行った。吸着されたガスの量は、MicromertricsのTriStar 3000装置を用いる3点の静的容積測定によって測定した。方法は、概してDIN ISO 9277-5(2003)に記載されており、それに準拠して適用した。
【0069】
1.3 X線粉末回折および結晶化度:
X線粉末回折(XRPD)は、固体サンプル中の結晶相の決定のための非破壊的な分析法である。結晶化度の決定を含むXRPD測定は以下のように行った。0.5~2.0gの材料を、以下のパラメーターを用いてPANalyticalのCubix3 Pharma X線粉末回折計において分析した:
X線管:LFF-Cu X線管、Cu Kα、λ=0.1542nm
ジェネレーターの設定:40mA、40KV
検出器:X’Celerator
回転:あり/1回転/秒
2θ範囲:5°~100°
ステップ(°2θ):0.017°
ステップ時間:40秒
【0070】
PANalytical HighScore Plusソフトウェアの現行バージョンおよび結晶参照相を含むICDDデータベースの最新バージョンを用いて結果を評価した。PANalyticalのHighScore Plusソフトウェアにおいて実行される固定バックグラウンド法を用いて材料の結晶化度を決定した。この方法は、以下の式に基づく:
結晶化度[%]=(100×A)/(A+B-C)
ここで、
Aは結晶反射下の積分面積であり、
Bは非晶質バックグラウンドの面積を表し、結晶反射と機器バックグラウンドラインとの間の積分面積であり、
CはX線の空気散乱、蛍光放射線および他の機器要因によって生じる機器バックグラウンドライン下の積分面積である。
【0071】
積分面積Aは、結晶反射と見かけの非晶質バックグラウンドとを分離するバックグラウンドラインを定めることによってX線ディフラクトグラムにおいて決定した。機器バックグラウンドライン(固定バックグラウンド)、ひいては積分面積Cは、結晶化度100%のCeO NIST認定標準物質を測定することによって決定した。積分面積Bは、測定されたサンプルにおいて非晶質バックグラウンドを定め、CeO NIST認定標準物質において決定された固定機器バックグラウンドを適用することによって決定した。
【0072】
1.4 高分解能透過電子顕微鏡法(HR-TEM):
Jeol 2010F電界放射型透過電子顕微鏡を200keVの加速電圧で操作した。システムの品質および安定性の較正は、Magical no.641標準(Norrox Scientific Ltd.,Beaver Pond,Ontario,Canada)を用いて行った。高分解能透過電子顕微鏡法(HR-TEM)を格子面間の距離の決定に使用した。サンプルは、清浄な試験管において2mLのクロロホルムまたは2mLのイソプロピルアルコール/水の2:1混合物に10mgの粉末を手動で分散させることによって製造した。試験管の底から1cmの距離まで深く挿入したUP100H超音波プローブ(Hielscher)を用いて分散液を3分間撹拌した。この間、試験管をさらにSonorex Super RK102H超音波浴(Bandelin、240Wのピークエネルギー入力)内に入れた。ホーリーカーボンフォイルで被覆されたHR-TEM支持体を支持体として使用した(200メッシュ銅グリッド上のCF200-Cuカーボンフィルム;製造業者:Electron Microscopy Sciences,Hatfield,PA)。Transferpette(Brand)を用いて10μLの分散液を炭素フォイル上に移した。
【0073】
ナノ粒子のスポット分析のために、30mmの結晶を用いるNoran SiLi検出器およびNoran System Six装置を用いてエネルギー分散型X線ナノスポット分析(EDX)を行った。
【0074】
ナノ粒子の最大フェレット径xFmax、最小フェレット径xFmin、アスペクト比xFmin/xFmax、投影面積Aおよび円相当径xの統計的評価のために、HR-TEM分析からサンプルの粒子500個を手動で選択し、Soft Imaging Systems(SIS),Muenster,GermanyのI-TEMソフトウェアを用いてDIN ISO 9276-6(2012)に準拠して評価した。得られた値を対応する平均値xFmax,mean、xFmin,mean、xFmin,mean/xFmax,mean、AmeanおよびxA,meanの算出に使用した。
【0075】
2. 本発明による触媒の製造
本発明による触媒は、その製造に用いられる手順により本発明による特徴を有する触媒が得られる限りにおいて、製造に関していかなる制限も受けない。本例では、本発明による触媒#1および#2をTreibacher Industrie AGから購入した。
【0076】
種々の触媒の粉末をブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積ABET、結晶化度、ならびに平均最大フェレット径xFmax,mean、最小フェレット径xFmin,mean、平均アスペクト比xFmin,mean/xFmax,mean、格子面距離および平均円相当径xA,meanについて、高分解能透過電子顕微鏡(HR-TEM)およびその後の500個の粒子のグラフ解析を用いて分析した。触媒#3および#4は、富士フイルム和光純薬株式会社から購入し、触媒#5は関東化学株式会社から購入し、触媒#6は第一稀元素化学工業株式会社からそれぞれ購入し、本発明による触媒と同じパラメーターについて分析した。
【0077】
【表1】
【0078】
3. 合成例
3.1 2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルから出発した2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの合成
10.1gの2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル(MMP-CN;水中90質量%、69.3mmol、1モル当量)と26.0gのNH(水中32質量%、7モル当量、48.8mmol)とをガラス反応器内で混合し、続いて密閉した。25質量%MMP-CNを含有する僅かにベージュ色の濁ったエマルションを撹拌し、予熱した水浴を用いて50℃に30分間加熱した。得られた淡黄色の溶液をHPLCクロマトグラフィーによって分析したところ、MMP-CNの転化率が100%、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル(MMP-AN;67.2mmol)および2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミド(Met-amide;1.2mmol)への選択率が98.8%であることが確認された。
【0079】
3.2 得られた2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドおよびメチオニンを含む混合物への直接転化
8.75gのMMP-AN(67.2mol)、0.18gのMet-amide(1.2mmol)、7.14gのNH(419mmol、6モル当量)および19.9gの水を含む、実施例3.1に従って得られた反応溶液に、さらに36.2gの水(MMP-AN濃度12質量%)ならびに1.0g(5.8mmol、0.09モル当量)の表2のCeO含有触媒#1および#2を添加した。ガラス反応器を再び密閉し、予熱した水浴を用いて30分間、反応物を撹拌しながら60℃に加熱した。続いて、反応溶液を室温まで急冷し、HPLCクロマトグラフィーによって分析した。加えて、反応をZrO(触媒#7)の存在下および触媒の非存在下でも行った。MMP-ANの転化率、メチオニン(Met)に対する選択率、Met-amideおよびMetに対する複合選択率、Met:Met-amideの比率、Metの収率、ならびにMet-amideおよびMetの複合収率に関する結果を表2に挙げる。
【0080】
【表2】
【0081】
3.3 得られた2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルのメチオニンへの完全な直接転化
8.76gのMMP-AN(67.3mol)、0.18gのMet-amide(1.2mmol)、7.14gのNH(419mmol、6モル当量)および19.9gの水を含む、実施例3.1に従って得られた反応溶液を、ステンレス鋼オートクレーブ反応器に移し、さらに36.2gの水(MMP-AN濃度12質量%)および4.0g(23mmol、0.35モル当量)の表3に示すCeO含有触媒#1~#4および触媒#6を添加した。反応器を密閉し、電気蓄熱ヒーターを用いて120分間、反応物を撹拌しながら75℃に加熱した。続いて、反応溶液を室温まで急冷し、HPLCクロマトグラフィーによって分析した。MMP-ANの転化率、メチオニン(Met)に対する選択率、Met-amideおよびMetに対する複合選択率、Met:Met-amideの比率、Metの収率、ならびにMet-amideおよびMetの複合収率に関する結果を表3に挙げる。
【0082】
【表3】
【0083】
3.4 得られた2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの異なる開始濃度における、得られた2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドおよびメチオニンを含む混合物への直接転化
8.75gのMMP-AN(67.2mol)、0.18gのMet-amide(1.2mmol)、7.14gのNH(419mmol、6モル当量)および19.9gの水を含む、実施例3.1に従って得られた反応溶液に、さらに0g、36.2gまたは110gの水(MMP-AN濃度24質量%、12質量%または6質量%)および0.5gの表1に示す触媒#1(2.9mmol、0.04モル当量)を添加した。ガラス反応器を再び密閉し、予熱した水浴を用いて30分間、反応物を撹拌しながら60℃に加熱した。続いて、反応溶液を室温まで急冷し、HPLCクロマトグラフィーによって分析した。MMP-ANの転化率、メチオニン(Met)に対する選択率、Met-amideおよびMetに対する複合選択率、Met:Met-amideの比率、Metの収率、ならびにMet-amideおよびMetの複合収率に関する結果を表4に挙げる。
【0084】
【表4】
【0085】
3.5 メチオニンへの完全な転化のための、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドおよびメチオニンを含む得られた溶液の高温での反応
表2に示す触媒#1を用いて実施例3.2に従って得られた反応溶液をステンレス鋼オートクレーブ反応器に移し、電気蓄熱ヒーターを用いて120分間、反応物を撹拌しながら120℃に加熱した。続いて、反応溶液を室温まで急冷した。溶液をHPLCクロマトグラフィーによって分析したところ、Met-amideの転化率が98%、Metへの選択率が91%であることが明らかとなり、これはMetの収率が91%であることに相当する。
【0086】
3.6 連続クロスフロー濾過によるメチオニンを含む混合物からの触媒の分離
3質量%のMetおよび1質量%の表1に示す触媒#1を含む、メチオニンを含む混合物を、膜の細孔径が50nmのAlからなる膜で覆われるか、または公称分画分子量(NMWC)が150もしくは25kDのZrOからなる膜で覆われたAlチャネル(支持体)に通して送り込んだ。いずれの場合にも、透過液はHPLCクロマトグラフィーによって分析され、メチオニンを含む出発混合物と比較して同一のMet濃度である3%で、Metが妨げられずにうまく膜を通過したことが明らかとなった。いずれの場合にも、透過液の溶液のレーザー回折および動的光散乱による粒径分布分析から、触媒が保持液中に完全に保持され、膜を通過しないことが明らかとなった。