(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ガスタービンのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
F01D 25/00 20060101AFI20240920BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20240920BHJP
F02C 7/042 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F01D25/00 X
F02C7/00 A
F02C7/042
(21)【出願番号】P 2022077565
(22)【出願日】2022-05-10
【審査請求日】2024-06-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝一
(72)【発明者】
【氏名】荒瀬 謙一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真也
(72)【発明者】
【氏名】大津 英紀
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-050579(JP,A)
【文献】特開2015-021477(JP,A)
【文献】特開2002-195056(JP,A)
【文献】特開2006-063977(JP,A)
【文献】藤井 泉,コンバインドサイクル発電におけるガスタービン設備の保守管理,日本ガスタービン学会誌,第37巻第1号,日本,公益社団法人日本ガスタービン学会,2009年01月,1-5
【文献】船橋 信之 ,[火力発電所の保守](改訂版),火力原子力発電 ,第63巻,一般社団法人火力原子力発電技術協会
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F02C 7/00
G01M 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転駆動される圧縮機の入口に設けられた入口案内翼、及び該入口案内翼に接続された第一リングと、
前記入口案内翼よりも前記軸線方向における下流側に設けられ
た可変静翼、及び
該可変静翼に接続され
た第二リングと、
前記第一リングを周方向に回動させる第一アクチュエータ、及び、前
記第二リングを周方向に回動させる第二アクチュエータと、
を備えるガスタービンのメンテナンス方法であって、
第一の点検時期
に前記第一アクチュエータを取り外して
、前記第一アクチュエータ及び前記第二アクチュエータとは別の第三アクチュエータを取り付けるステップと、
第二の点検時期に、前記第二アクチュエータを取り外して、メンテナンスの完了した前記第一アクチュエータを取り付けるステップと、
第三の点検時期に、前記第三アクチュエータを取り外して、メンテナンスの完了した前記第二アクチュエータを取り付けるステップと、
を含
むガスタービンのメンテナンス方法。
【請求項2】
軸線回りに回転駆動される圧縮機の入口に設けられた入口案内翼、及び該入口案内翼に接続された第一リングと、
前記入口案内翼よりも前記軸線方向における下流側に設けられた可変静翼、及び該可変静翼に接続された第二リングと、
前記第一リングを周方向に回動させる第一アクチュエータ、及び、前記第二リングを周方向に回動させる第二アクチュエータと、
を備えるガスタービンのメンテナンス方法であって、
第一の点検時期に前記第二アクチュエータを取り外して、前記第一アクチュエータ及び前記第二アクチュエータとは別の第三アクチュエータを取り付けるステップと、
第二の点検時期に、前記第一アクチュエータを取り外して、メンテナンスの完了した前記第二アクチュエータを取り付けるステップと、
第三の点検時期に、前記第三アクチュエータを取り外して、メンテナンスの完了した前記第一アクチュエータを取り付けるステップと、
を含むガスタービンのメンテナンス方法。
【請求項3】
前記
各ステップを
順に連続的に繰り返す請求項1
又は2に記載のガスタービンのメンテナンス方法。
【請求項4】
取り外された前記第一アクチュエータをメンテナンスするステップと、
取り外された前記第二アクチュエータをメンテナンスするステップと、
をさらに含む請求項1又は2に記載のガスタービンのメンテナンス方法。
【請求項5】
前記第一アクチュエータ、前記第二アクチュエータ、及び前記第三アクチュエータは、同一の前記ガスタービンのみで順次用いられる請求項1
又は2に記載のガスタービンのメンテナンス方法。
【請求項6】
前記可変静翼は、前記入口案内翼よりも前記軸線方向における下流側に、間隔を空けて複数列に配列され、
前記第二リングは複数設けられ、当該各第二リングは前記複数列の可変静翼のそれぞれの列に対応させて、各列を構成する可変静翼に接続されており、
前記第二アクチュエータは、前記複数の第二リングを周方向に回動させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービンのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して高圧空気を生成する圧縮機と、高圧空気に燃料を混合して燃焼させることで高温高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスによって駆動されるタービンと、を備えている。圧縮機は、流入する空気の流量を調節するための入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)と、圧縮機中の空気の流れ方向を調節するための可変静翼(Varriable Vane)と、を有している。入口案内翼、及び可変静翼は、圧縮機のケーシングに対して径方向に延びる回動軸回りに回動可能にそれぞれ支持されている。これらの入口案内翼、及び可変静翼には、ケーシングの外周面に沿って周方向に回動可能なリングが接続されている。リングを周方向に回動させると、入口案内翼、及び可変静翼は、それぞれの回動軸回りに回動してその姿勢を変えることが可能とされている。
【0003】
上記のリングは、進退動するロッドを有するアクチュエータによって駆動されることが一般的である。アクチュエータを運用する上では、電気系統や内部のボールネジ等を定期的に点検・交換する必要がある。この種のガスタービン部品をメンテナンスする際に、共通する部品を異なる部位でローテーションさせる方法が下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、入口案内翼と可変静翼とでは、アクチュエータに要求される性能要件が異なっている。このため、これら入口案内翼と可変静翼との間でアクチュエータを相互に交換することは難しかった。その結果、メンテナンスコストが増大してしまうという課題があった。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、コストダウンを実現することが可能なガスタービンのメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るガスタービンのメンテナンス方法は、軸線回りに回転駆動される圧縮機の入口に設けられた入口案内翼、及び該入口案内翼に接続された第一リングと、前記入口案内翼よりも前記軸線方向における下流側に設けられた可変静翼、及び該可変静翼に接続された第二リングと、前記第一リングを周方向に回動させる第一アクチュエータ、及び、前記第二リングを周方向に回動させる第二アクチュエータと、を備えるガスタービンのメンテナンス方法であって、第一の点検時期に前記第一アクチュエータを取り外して、前記第一アクチュエータ及び第二アクチュエータとは別の第三アクチュエータを取り付けるステップと、第二の点検時期に、前記第二アクチュエータを取り外して、メンテナンスの完了した前記第一アクチュエータを取り付けるステップと、第三の点検時期に、前記第三アクチュエータを取り外して、メンテナンスの完了した前記第二アクチュエータを取り付けるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、コストダウンを実現することが可能なガスタービンのメンテナンス方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るガスタービンの構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る入口案内翼の構成を示す模式図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る可変静翼の構成を示す模式図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るガスタービンのメンテナンス方法の各ステップを示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施形態に係るアクチュエータのローテーションの例を示すブロックダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係るガスタービン1、及びガスタービン1のメンテナンス方法について、
図1から
図5を参照して説明する。
【0011】
(ガスタービンの構成)
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮機10と、燃焼器20と、タービン30と、を備えている。
【0012】
圧縮機10は、空気を圧縮して高圧空気を生成する。圧縮機10は、圧縮機ロータ11と、複数の圧縮機動翼列12と、圧縮機ケーシング13と、複数の圧縮機静翼列14と、入口案内翼40と、を有する。圧縮機ロータ11は、軸線Oを中心とする柱状をなしている。圧縮機ロータ11は、軸線O回りに回転可能に支持されている。圧縮機ロータ11の外周面には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼列12が設けられている。それぞれの圧縮機動翼列12は、径方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼15を有する。
【0013】
これら複数の圧縮機動翼列12は、圧縮機ケーシング13によって外周側から覆われている。圧縮機ケーシング13は、軸線Oを中心とする筒状をなしている。圧縮機ケーシング13の内周面には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼列14が設けられている。それぞれの圧縮機静翼列14は、径方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼16を有する。
【0014】
圧縮機10の軸線O方向一方側の端部である入口には、入口案内翼40(Inlet Guide Vane:IGV)が設けられている。入口案内翼40は、複数の案内翼41と、第一リング42と、アクチュエータ43と、を有する。複数の案内翼41は、圧縮機ケーシング13の内周面から径方向内側に向かって延びるとともに、周方向に間隔をあけて配列されている。
【0015】
図2に示すように、案内翼41の中央部は圧縮機ケーシング13に固定された第一回動軸44とされている。案内翼41は、当該第一回動軸44回りに回動自在に支持されている。さらに、案内翼41の前縁側の端部には、第一支持軸45を介して第一リング42が接続されている。第一リング42は、軸線Oを中心とする環状をなし、当該軸線O回りに回動自在である。第一リング42には、アクチュエータ43が接続されている。
【0016】
アクチュエータ43は、シリンダ51と、棒状のロッド52と、を有する。ロッド52は、シリンダ51を基準として、自身の延びる方向に進退動する。ロッド52が進退動することで、第一リング42が軸線Oに対する周方向に回動する。第一リング42が回動すると、複数の案内翼41が第一回動軸44回りに回動する。つまり、各案内翼41の姿勢が変化する。
【0017】
さらに、圧縮機静翼列14のうち、一例として3列の圧縮機静翼列14は、可変静翼60とされている。可変静翼60は、上記の入口案内翼40と同様に、圧縮機静翼16の姿勢を変化させることが可能な構成を有している。具体的には
図3に示すように、可変静翼60は、圧縮機静翼列14ごとに設けられた3つの第二リング61と、これら3つの第二リング61を軸線O方向に接続する接続部62と、アクチュエータ43とを有する。
【0018】
圧縮機静翼16の中央部は圧縮機ケーシング13に固定された第二回動軸62とされている。圧縮機静翼16は、当該第二回動軸62回りに回動自在に支持されている。さらに、圧縮機静翼16の前縁側の端部には、第二支持軸63を介して第二リング61が接続されている。第二リング61は、軸線Oを中心とする環状をなし、当該軸線O回りに回動自在である。第二リング61には、アクチュエータ43が接続されている。
【0019】
可変静翼60に用いられるアクチュエータ43は、上記の入口案内翼40に用いられるアクチュエータ43と同一の仕様・寸法体格を有する。なお、ここで言う同一とは実質的な同一を指すものであり、製造上の個体差は許容される。
【0020】
ロッド52が進退動することで、接続部62を介して3つの第二リング61が軸線Oに対する周方向に回動する。第二リング61が回動すると、複数の圧縮機静翼16が第二回動軸62回りに回動する。つまり、各圧縮機静翼16の姿勢が変化する。
【0021】
燃焼器20は、圧縮機ケーシング13の軸線O方向における下流側に設けられた中間ケーシング21に取り付けられている。燃焼器20は、圧縮機10が生成した高圧空気に燃料を混合して燃焼させることで高温高圧の燃焼ガスを生成する。燃焼器20は、軸線Oに対する周方向に間隔をあけて複数設けられている。燃焼器20が生成した燃焼ガスは、後述するタービンケーシング33内に送られる。
【0022】
タービン30は、タービンロータ31と、複数のタービン動翼列32と、タービンケーシング33と、複数のタービン静翼列34と、を有する。タービンロータ31は、軸線Oを中心とする柱状をなしている。タービンロータ31は、軸線O回りに回転可能に支持されている。タービンロータ31の外周面には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼列32が設けられている。それぞれのタービン動翼列32は、径方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼35を有する。
【0023】
これら複数のタービン動翼列32は、タービンケーシング33によって外周側から覆われている。タービンケーシング33は、軸線Oを中心とする筒状をなしている。タービンケーシング33の内周面には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼列34が設けられている。それぞれのタービン静翼列34は、径方向に延びるとともに周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼36を有する。
【0024】
上述の圧縮機ロータ11とタービンロータ31とは、軸線O上で互いに一体に接続されることで、ガスタービンロータ91を形成する。圧縮機ケーシング13と、中間ケーシング21と、タービンケーシング33とは軸線O方向に一体に接続されてガスタービンケーシング92を形成する。つまり、ガスタービンロータ91は、ガスタービンケーシング92内で軸線O回りに一体となって回転可能である。
【0025】
不図示の電動機等でガスタービンロータ91を回転させると、圧縮機10に空気が取り込まれる。圧縮機10に取り込まれる空気の流量は、上記の入口案内翼40の姿勢によってコントロールされる。圧縮機10が駆動されることで高圧空気が生成される。圧縮機10が生成する高圧空気の流量は、上記の可変静翼60の姿勢によってコントロールされる。
【0026】
圧縮機10が生成した高圧空気は、圧縮機ケーシング13から中間ケーシング21の燃焼器20へ送られる。燃焼器20は、高圧空気に燃料を混合して燃焼させることで高温高圧の燃焼ガスを生成する。燃焼ガスは、タービンケーシング33内に送られてタービンロータ31に回転エネルギーを与える。このような動作が連続して生じることで、ガスタービン1が運転される。
【0027】
(ガスタービンのメンテナンス方法)
続いて、
図4と
図5を参照して、ガスタービン1のメンテナンス方法について説明する。このメンテナンス方法は、上述した入口案内翼40、及び可変静翼60に用いられるアクチュエータ43のローテーション(交換)に関する方法である。
【0028】
図4に示すように、このメンテナンス方法では、まず、アクチュエータ43の交換が可能な状態であるか否かを判定する(ステップS1)。アクチュエータ43が交換可能な状態にないと判定された場合(ステップS1:No)、処理は終了する。アクチュエータ43が交換可能な状態であると判定された場合(ステップS1:Yes)、後続のステップS2に進む。上述したように、入口案内翼40と可変静翼60では、それぞれ1つずつのアクチュエータ43を用いている。このステップS2では、これら2つのアクチュエータ43と同一の仕様を有する3つ目のアクチュエータ43を準備する。
【0029】
なお、以下の説明、及び
図5では、始めに入口案内翼40(IGV)に取り付けられているアクチュエータ43を「第一アクチュエータ」と呼び、可変静翼60(VV)に取り付けられているアクチュエータ43を「第二アクチュエータ」と呼び、ステップS2で準備した3つ目のアクチュエータ43を「第三アクチュエータ」と呼ぶ。これら3つのアクチュエータ43は、同一のガスタービン1のみで順次用いられる。
【0030】
続くステップS3では、予め定められた第一の点検時期に、第一アクチュエータを入口案内翼40から取り外す。このとき、
図5に示すように、第二アクチュエータは、可変静翼60用として運用を継続する。また、第三アクチュエータは、この第一の点検時期までに補修(メンテナンス)を完了している。
【0031】
第一アクチュエータが取り外された後、第三アクチュエータを入口案内翼40に取り付ける(ステップS4)。これにより、第三アクチュエータが運用に投入される。取り外された第一アクチュエータは、補修を施される(ステップS5)。なお、第一アクチュエータの補修に許容される期間の長さを1とすると、残余の2つのアクチュエータ43が運用に投入されている期間の長さは2である。
【0032】
次いで、予め定められた第二の点検時期に至ると、第二アクチュエータを取り外す(ステップS6)。このとき、
図5に示すように、第三アクチュエータは、入口案内翼40用として運用を継続する。また、第一アクチュエータは、この第二の点検時期までに補修(メンテナンス)を完了している。
【0033】
第二アクチュエータが取り外された後、第一アクチュエータを可変静翼60に取り付ける(ステップS7)。これにより、第一アクチュエータが運用に投入される。取り外された第二アクチュエータは、補修を施される(ステップS8)。なお、第二アクチュエータの補修に許容される期間の長さを1とすると、残余の2つのアクチュエータ43が運用に投入されている期間の長さは2である。
【0034】
その後、予め定められた第三の点検時期に至ると、第三アクチュエータを取り外す(ステップS9)。このとき、
図5に示すように、第一アクチュエータは、可変静翼60用として運用を継続する。また、第二アクチュエータは、この第三の点検時期までに補修(メンテナンス)を完了している。
【0035】
第三アクチュエータが取り外された後、第二アクチュエータを入口案内翼40に取り付ける(ステップS9)。これにより、第二アクチュエータが運用に投入される。取り外された第三アクチュエータは、補修を施される(ステップS10)。なお、第三アクチュエータの補修に許容される期間の長さを1とすると、残余の2つのアクチュエータ43が運用に投入されている期間の長さは2である。
【0036】
以上のステップS2からステップS10までの各ステップが、ステップS1でアクチュエータ43が交換可能な状態にないと判定されるまで連続して継続される。
【0037】
(作用効果)
ここで、ガスタービン1をメンテナンスする上では、上述のアクチュエータ43の動作の安定性を確保することが肝要である。アクチュエータ43を運用する上では、電気系統や内部のボールネジ等を定期的に点検・交換する必要がある。しかしながら、入口案内翼40と可変静翼60とでは、アクチュエータに要求される性能要件が異なっている。このため、これら入口案内翼40と可変静翼60との間でアクチュエータ43を相互に交換することは難しかった。その結果、メンテナンスコストが増大してしまうという課題があった。そこで、本実施形態では、入口案内翼40と、可変静翼60とにそれぞれ取り付けられるアクチュエータ43の仕様を共通化している。具体的には、より大きな推力が必要とされる可変静翼60側にアクチュエータ43の仕様を揃えている。これにより、入口案内翼40と可変静翼60との間でアクチュエータ43をローテーションしながら運用することが可能となるため、コストダウンを図ることができる。
【0038】
さらに、第一リング42、及び第二リング61に使用される2つのアクチュエータ43とは別に、3つ目のアクチュエータ43を準備することで、3つのうちいずれか2つのアクチュエータ43が運用されている間に、残余の1つのアクチュエータ43を、メンテナンスステップを含む予備用に供することが可能となる。言い換えると、仕様を共通化したことにより、予備用として必要となるアクチュエータ43の数が1つのみで済む。これにより、部品点数の削減と、メンテナンスコストの削減、及びメンテンナンスに要する期間の短縮化とを実現することができる。
【0039】
また、上記方法によれば、第三アクチュエータを準備するステップよりも後の全てのステップを連続的に繰り返す。これにより、3つのアクチュエータ43を順次ローテーションすることで、ガスタービン1を長期にわたって、より安定的に運用することが可能となる。
【0040】
加えて、上記方法によれば、第一アクチュエータ、第二アクチュエータ、及び第三アクチュエータのうち1つが予備用に供されている期間の長さが、これらアクチュエータ43のうち2つが運用に供されている期間の長さの半分である。これにより、運用に供されている2つのアクチュエータ43の使用期間を互いにずらすことが可能となる。したがって、1回のメンテナンスで交換するアクチュエータ43の数を1つのみとすることができる。言い換えると、予備用に供されるアクチュエータ43を1つのみに限定することができる。これにより、部品点数が削減されるとともに、2つのアクチュエータ43を同時に交換する場合に比べて、メンテナンスコスト・期間をさらに低減することができる。
【0041】
また、上記方法によれば、3つのアクチュエータ43が同一のガスタービン1のみで順次用いられる。これにより、ガスタービン1ごとの個体差によるアクチュエータ43への負荷の変化が抑えられる。したがって、3つのアクチュエータ43を安定した環境下で長期にわたって運用し続けることが可能となる。また、作業員にとっては、同一のガスタービン1個体に用いられることで、その個体におけるそれぞれのアクチュエータ43に生じる経年変化や故障を予見しやすくなる。これにより、作業員のメンテナンスに要する負担も軽減することが可能となる。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態では、3つのアクチュエータ43が同一のガスタービン1のみに順次適用される例について説明した。しかしながら、型式が共通するガスタービン1同士の間では、アクチュエータ43を互いに共通化して用いることも可能である。
【0043】
<付記>
各実施形態に記載のガスタービン1のメンテナンス方法は、例えば以下のように把握される。
【0044】
(1)第1の態様に係るガスタービン1のメンテナンス方法は、軸線O回りに回転駆動される圧縮機10の入口に設けられた入口案内翼40、及び該入口案内翼40に接続された第一リング42と、前記入口案内翼40よりも前記軸線O方向における下流側に設けられた複数列の可変静翼60、及び該複数列の可変静翼60に接続された第二リング61と、前記第一リング42、及び前記第二リング61をそれぞれ周方向に回動させる第一アクチュエータ、及び第二アクチュエータと、を備えるガスタービン1のメンテナンス方法であって、前記第一アクチュエータ、及び第二アクチュエータとは別の第三アクチュエータを準備するステップと、予め定められた第一の点検時期に、前記第一アクチュエータを取り外して前記第三アクチュエータを取り付けるステップと、取り外された前記第一アクチュエータをメンテナンスするステップと、予め定められた第二の点検時期に、前記第二アクチュエータを取り外して、メンテナンスの完了した前記第一アクチュエータを取り付けるステップと、取り外された前記第二アクチュエータをメンテナンスするステップと、予め定められた第三の点検時期に、前記第三アクチュエータを取り外して、メンテナンスの完了した前記第二アクチュエータを取り付けるステップと、を含み、前記第一アクチュエータ、前記第二アクチュエータ、及び前記第三アクチュエータは互いに仕様が同一である。
【0045】
上記方法によれば、第一アクチュエータ、第二アクチュエータ、及び第三アクチュエータの仕様が互いに同一であることから、これらアクチュエータ43を入口案内翼40に接続された第一リング42、及び可変静翼60に接続された第二リング61との間で共通して使用することができる。さらに、第一リング42、及び第二リング61に使用される2つのアクチュエータ43とは別に、3つ目のアクチュエータ43を準備することで、3つのうちいずれか2つのアクチュエータ43が運用されている間に、残余の1つのアクチュエータ43を、メンテナンスステップを含む予備用に供することが可能となる。
【0046】
(2)第2の態様に係るガスタービン1のメンテナンス方法は、(1)のガスタービン1のメンテナンス方法であって、前記第三アクチュエータを準備するステップよりも後の前記ステップを連続的に繰り返す。
【0047】
上記方法によれば、3つのアクチュエータ43を順次ローテーションすることで、ガスタービン1を長期にわたって、より安定的に運用することが可能となる。
【0048】
(3)第3の態様に係るガスタービン1のメンテナンス方法は、(1)又は(2)のガスタービン1のメンテナンス方法であって、前記第一アクチュエータ、前記第二アクチュエータ、及び前記第三アクチュエータが、前記第一リング42、及び前記第二リング61のいずれか一方に取り付けられている期間の長さを2としたとき、前記第一アクチュエータ、前記第二アクチュエータ、及び前記第三アクチュエータが、メンテナンスするステップを含む予備用に供されている期間の長さは1である。
【0049】
上記方法によれば、第一アクチュエータ、第二アクチュエータ、及び第三アクチュエータのうち1つが予備用に供されている期間の長さが、これらアクチュエータ43のうち2つが運用に供されている期間の長さの半分である。これにより、運用に供されている2つのアクチュエータ43の使用期間を互いにずらすことが可能となる。したがって、予備用に供されるアクチュエータ43を1つのみに限定することができる。
【0050】
(4)第4の態様に係るガスタービン1のメンテナンス方法は、(1)から(3)のいずれか一態様に係るガスタービン1のメンテナンス方法であって、前記第一アクチュエータ、前記第二アクチュエータ、及び前記第三アクチュエータは、同一の前記ガスタービン1のみで順次用いられる。
【0051】
上記方法によれば、3つのアクチュエータ43が同一のガスタービン1のみで順次用いられる。これにより、ガスタービン1本体ごとの個体差によるアクチュエータ43への負荷の変化が抑えられる。
【符号の説明】
【0052】
1…ガスタービン
10…圧縮機
11…圧縮機ロータ
12…圧縮機動翼列
13…圧縮機ケーシング
14…圧縮機静翼列
15…圧縮機動翼
16…圧縮機静翼
20…燃焼器
21…中間ケーシング
30…タービン
31…タービンロータ
32…タービン動翼列
33…タービンケーシング
34…タービン静翼列
35…タービン動翼
36…タービン静翼
40…入口案内翼
41…案内翼
42…第一リング
43…アクチュエータ
44…第一回動軸
45…第一支持軸
51…シリンダ
52…ロッド
60…可変静翼
61…第二リング
62…第二回動軸
63…第二支持軸
91…ガスタービンロータ
92…ガスタービンケーシング
O…軸線