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特許7558224パーキングアシスト用の変速伝動装置ロック
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】パーキングアシスト用の変速伝動装置ロック
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20240920BHJP
   F16H 61/26 20060101ALI20240920BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20240920BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16H63/34
F16H61/26
B60T1/06 G
F16D63/00 H
【請求項の数】 27
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022124564
(22)【出願日】2022-08-04
(65)【公開番号】P2023024379
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】A 50642/2021
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】516256272
【氏名又は名称】ケーティーエム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】KTM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ マラント
(72)【発明者】
【氏名】トーマス コイネク
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187198(JP,A)
【文献】特開平11-303991(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0060994(US,A1)
【文献】特開2012-197812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
F16H 61/26
B60T 1/06
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシフトローラ(2)と、歯列(19)を備えた少なくとも1つのロックギヤ(15)と、を含む、変速伝動装置(1)のための変速伝動装置ロック(30)であって、前記変速伝動装置ロック(30)が、回転可能に支持されたロック爪(13)を有しており、該ロック爪(13)が、ロック位置において前記少なくとも1つのロックギヤ(15)の前記歯列(19)に係合し、かつ自由旋回位置において前記少なくとも1つのロックギヤ(15)とは係合しておらず、前記ロック爪(13)に、ばねエレメント(16)によって、前記ロック位置に向かう方向で予荷重が加えられている、変速伝動装置ロック(30)において、
係合エレメント(12)が、前記ロック爪(13)に結合されており、前記シフトローラ(2)が自由旋回回転領域における回転位置をとる場合に、前記係合エレメント(12)が、前記シフトローラ(2)との直接的な協働により前記ばねエレメント(16)の作用に抗して、前記ロック爪(13)を前記自由旋回位置に保持し、前記シフトローラ(2)がロック回転領域における回転位置をとる場合に、前記ロック爪(13)が、前記係合エレメント(12)によって、前記シフトローラ(2)によりロック位置へと解放可能であり、
前記変速伝動装置(1)が、少なくとも1つのシフトレール(3)を含んでおり、前記少なくとも1つのシフトレール(3)に、少なくとも1つのシフトフォーク(10)が摺動可能に支持されており、前記ロック爪(13)が、前記変速伝動装置(1)の少なくとも1つのシフトレール(3)に回転可能に支持されていることを特徴とする、
変速伝動装置ロック(30)。
【請求項2】
パーキングアシスト用の、請求項1記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項3】
前記ロック爪(13)が、支持領域(32)を有しており、前記ロック爪(13)が、前記支持領域(32)において回転可能に支持されており、前記ロック爪(13)が、ロック領域(29)を有しており、前記ロック爪(13)が、前記ロック領域(29)において、前記ロックギヤ(15)の前記歯列(19)に係合する、請求項1または2記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項4】
前記ばねエレメント(16)が、トーションばねとして形成されている、かつ/または前記ロック爪(13)の支持領域(32)に配置されている、請求項1または2記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項5】
前記係合エレメント(12)が、支持アーム(23)まは駆動ピン(18)として構成されている、請求項1または2記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項6】
前記係合エレメント(12)が、支持アーム(23)として構成されている場合に、前記支持アーム(23)が、
-前記シフトローラ(2)に当て付けるための当接面(33)を有している、かつ/または
-前記ロック爪(13)の支持領域(32)において、前記ロック爪(13)に結合されている、かつ/または
-前記ロック爪(13)と一緒に、2辺のレバーを形成し、かつ/または
-前記シフトローラ(2)に前記支持アーム(23)を当て付けるための当接面(33)と、前記少なくとも1つのロックギヤ(15)の前記歯列(19)内に前記ロック爪(13)を係合させるためのロック輪郭(14)とが、前記支持アーム(23)および前記ロック爪(13)の1つの共通の支持領域(32)から見て、前記支持アーム(23)もしくは前記ロック爪(13)の同一の側に配置されている、
請求項5記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項7】
前記支持アーム(23)が、前記ロック爪(13)と一緒に2辺のレバーを形成する場合に、前記ロック爪(13)と一緒にアングルレバーを形成する、請求項6記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項8】
前記アングルレバーの角度が、80度~100度の範囲にある、請求項7記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項9】
前記シフトローラが、操作輪郭(11)を有しており、前記係合エレメント(12)が、前記自由旋回位置において、前記操作輪郭(11)において支持可能である、請求項1または2記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項10】
前記操作輪郭(11)が、
-前記シフトローラ(2)の前記自由旋回回転領域において、円形軌道(25)に沿って延びており、これにより、前記係合エレメント(12)の当接面(33)が、前記操作輪郭(11)に接触している、かつ/または
-前記シフトローラ(2)の前記ロック回転領域において、半径方向内方に向かって凹設された切欠き(26)および/または半径方向内方に向かって凹設されたカムを有している、かつ/または
-前記シフトローラ(2)の前記ロック回転領域において、半径方向外方に向けられた隆起部(31)および/または半径方向外方に向けられたカムを有しており、かつ/または
-前記シフトローラ(2)の外半径の半径方向内側に配置されており、かつ/または
-前記シフトローラ(2)の端面(20)に配置されている、請求項9記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項11】
前記操作輪郭(11)が、前記シフトローラ(2)の前記ロック回転領域において、半径方向内方に向かって凹設された切欠き(26)および/または半径方向内方に向かって凹設されたカムを有している場合に、前記係合エレメント(12)が、前記ロック回転領域における前記シフトローラ(2)の回転位置において、半径方向で解放されている、かつ/または前記自由旋回回転領域における前記シフトローラ(2)の回転位置におけるよりも、半径方向でさらに内側に配置されている、請求項10記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項12】
前記操作輪郭(11)が、前記シフトローラ(2)の前記ロック回転領域において、半径方向外方に向けられた隆起部(31)および/または半径方向外方に向けられたカムを有している場合に、前記係合エレメント(12)が、前記ロック回転領域における前記シフトローラ(2)の回転位置において、半径方向で解放されている、かつ/または前記自由旋回回転領域における前記シフトローラ(2)の回転位置におけるよりも、半径方向でさらに外側に配置されている、請求項10記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項13】
前記ロック爪(13)および/または該ロック爪(13)の少なくとも1つのロック領域(29)が、前記シフトローラ(2)と前記少なくとも1つのロックギヤ(15)との間の中間室に配置されている、請求項1または2記載の変速伝動装置ロック(30)。
【請求項14】
少なくとも1つのシフトローラ(2)と、歯列(19)を備えた少なくとも1つのロックギヤ(15)と、請求項1または2記載の変速伝動装置ロック(30)とを備えた変速伝動装置(1)。
【請求項15】
前記変速伝動装置(1)が、ケーシングを有しており、前記変速伝動装置ロック(30)が、完全に前記ケーシング内に配置されている、請求項14記載の変速伝動装置(1)。
【請求項16】
前記少なくとも1つのロックギヤ(15)が、前記変速伝動装置(1)の出力軸(7)に相対回動不能に結合されている、請求項14記載の変速伝動装置(1)。
【請求項17】
前記変速伝動装置(1)が、複数の伝動装置ギヤ(5)を有しており、前記少なくとも1つのロックギヤ(15)が、前記複数の伝動装置ギヤ(5)のロック可能な少なくとも1つの伝動装置ギヤとして構成されている、請求項14記載の変速伝動装置(1)。
【請求項18】
ロック可能な前記少なくとも1つの伝動装置ギヤが、
-前記変速伝動装置(1)の固定ギヤ(5b)として構成されている、かつ/または
-前記変速伝動装置(1)のシフトギヤ(5c)として構成されている、かつ/または
-前記変速伝動装置(1)の空転ギヤ(5a)として構成されており、前記シフトローラ(2)が前記ロック回転領域における回転位置をとる場合に、前記空転ギヤ(5a)が、少なくとも1つのシフトギヤ(5c)に相対回動不能に結合されている、請求項17記載の変速伝動装置(1)。
【請求項19】
前記相対回動不能な結合が、シフトクローおよび/またはシフトスリーブによるものである、請求項18記載の変速伝動装置(1)。
【請求項20】
前記シフトローラ(2)が、前記自由旋回回転領域における少なくとも2つの回転位置をとることができ、前記自由旋回回転領域におけるそれぞれ1つの回転位置が、前記変速伝動装置(1)の1つのギヤに対応する、請求項14記載の変速伝動装置(1)。
【請求項21】
請求項14記載の変速伝動装置(1)であって、前記変速伝動装置(1)が、
-常時噛合い式伝動装置として構成されている、かつ/または
-オートマチック式の変速伝動装置として構成されている、変速伝動装置(1)。
【請求項22】
オートマチック式の変速伝動装置として構成されている場合に、前記シフトローラ(2)が、シフトモータ(27)および/または歯車駆動装置(28)により回転可能である、請求項21記載の変速伝動装置(1)。
【請求項23】
駆動エンジンと、請求項14記載の変速伝動装置(1)とを備えた二輪車。
【請求項24】
前記二輪車が、「ノーマルオープン型」のクラッチを有しており、前記駆動エンジンが、前記「ノーマルオープン型」のクラッチにより前記変速伝動装置(1)に連結可能である、請求項23記載の二輪車。
【請求項25】
遠心クラッチを有している、請求項24記載の二輪車。
【請求項26】
前記二輪車が、電子的な制御ユニットを有しており、
-前記電子的な制御ユニットにより、制御信号が少なくとも1つのアクチュエータに送信可能であり、前記シフトローラ(2)が、前記制御信号により制御可能な前記少なくとも1つのアクチュエータにより、自由旋回回転領域における少なくとも1つの回転位置と、ロック位置回転領域における少なくとも1つの回転位置とに回転可能であり、かつ/または
-ドライバの制御命令が、前記電子的な制御ユニットにより受信可能であり、これにより、ドライバが、前記シフトローラ(2)の種々異なる回転位置間でシフトを行うことができ、かつ/または
-少なくとも1つの操作表示部が前記二輪車に設けられており、前記少なくとも1つの操作表示部が、前記シフトローラ(2)の前記回転位置を表示する、請求項23記載の二輪車。
【請求項27】
ドライバの制御命令が、前記電子的な制御ユニットにより受信可能である場合に、ドライバが、前記シフトローラ(2)の自由旋回領域における少なくとも1つの回転位置と、ロック領域における回転位置との間および/または自由旋回領域における複数の回転位置間でシフトを行うことができる、請求項26記載の二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのシフトローラと、歯列を備えた少なくとも1つのロックギヤとを含む、変速伝動装置のためのパーキングアシスト用の変速伝動装置ロックであって、変速伝動装置ロックが、回転可能に支持されたロック爪を有しており、ロック爪が、ロック位置において少なくとも1つのロックギヤの歯列に係合し、かつ自由旋回位置において、少なくとも1つのロックギヤと係合しておらず、ロック爪に、ばねエレメントによって、ロック位置に向かう方向で予荷重が加えられている変速伝動装置ロックに関する。
【0002】
さらに本発明は、少なくとも1つのシフトローラと、歯列を備えた少なくとも1つのロックギヤと、変速伝動装置ロックとを含む変速伝動装置に関する。さらに本発明は、駆動エンジンおよび変速伝動装置を備えた二輪車も含む。
【0003】
傾斜した土地での二輪車の駐車時または搬送時に、二輪車は、転がらないようにされなければならない。このためには、マニュアル式の変速伝動装置を備えた二輪車の場合、通常はギヤが入れられ、これにより車輪が駆動エンジンに連結されている。
【0004】
特にオートマチック式の伝動装置では、駆動エンジンは、「ノーマルオープン型」のクラッチ、特に遠心クラッチによって変速伝動装置に連結されていることが多い。停止状態において、「ノーマルオープン型」のクラッチは空転し、これにより駆動エンジンと伝動装置との間の接続は生じない。したがって、ギヤを入れても、車輪の所望のロックは生じない。したがって、特にオートマチック式の変速伝動装置を備えた二輪車において、パーキングブレーキが必要となる。
【0005】
二輪車のパーキングブレーキは、固有の後輪ブレーキおよび/または前輪ブレーキを用いて実現することができる。これらのブレーキは、たとえばハンドルによって固有のレバーまたはサイドスタンドを介して操作することができる。この場合の欠点は、パーキングブレーキのための固有のブレーキシステムを提供しなければならず、したがって、多数の別の構成要素を組み付けなければならないことである。さらに、操作表示を付加的なセンサにより監視しなければならない。ハンドルにおける固有のレバーを介した操作時に、パーキングブレーキの解除が忘れられることがある。
【0006】
従来技術において、前輪ブレーキおよび/または後輪ブレーキが駐車時に持続的に操作されることも規定されている。これによって、既存の常用ブレーキシステムだけが使用される。この場合の欠点は、このことが常用ブレーキシステムの機能を損なう恐れがある、ということである。さらに、操作表示を付加的なセンサにより監視しなければならない。特に、後輪ブレーキの持続的な操作の解除を、発進時に忘れてしまうことがある。
【0007】
従来技術ではさらに、変速伝動装置ロックとして構成されているパーキングブレーキが、車または四輪バイクのような自動車のために設けられている。
【0008】
欧州特許出願公開第1865237号明細書は、四輪バイク用の変速伝動装置ロックを示しており、変速伝動装置のロックギヤは、ロック爪によりブロックすることができる。ロック爪は、回転可能に支持されており、支持アームに堅固に結合されている。支持アームには、変速伝動装置のシフトローラに向かってロックギヤの自由旋回位置において予荷重が加えられている。シフトローラには、閉鎖カムが取り付けられており、レバーはロック爪において、シフトローラの、閉鎖カムの位置により規定された回転位置への回転によって、ロック爪を予荷重に抗してロックギヤ内に押圧可能であり、これによってロック位置が実現される。
【0009】
この従来技術の欠点は、ロック爪が閉鎖カムによってロック位置へと押圧されることである。したがって、止め歯が、ロックギヤの歯に衝突することを回避しなければならない。解決手段として、欧州特許出願公開第1865237号明細書ではさらに、付加的なばねが設けられており、このばねは、止め歯がロックギヤの歯に衝突した場合に撓み、これによりロック爪またはロックギヤの損傷を回避する。これにより、多数の構成部材が必要となる。
【0010】
独国特許出願公開第102013107860号明細書は、オートマチック式の伝動装置用の伝動装置ロックを示しており、この場合、変速伝動装置のロックギヤは、ロック爪によりブロックすることができる。この場合、ロック爪は、回動可能に互いに結合された複数のレバーを備えたレバー機構を介して、カムディスクによって操作される。カムディスクは、変速伝動装置のシフトローラに配置されていてもよく、これにより、ロック爪は、シフトローラの回転を介しても操作可能である。レバー機構により、ロックギヤは、カムディスクから遠く離されて配置されていてよく、これにより、変速伝動装置ロックは、大型のオートマチック式の伝動装置のために適している。ロック爪には、少なくとも一時的に、閉位置に向かう方向で予荷重が加えられていてよい。
【0011】
この従来技術の欠点は、レバー機構が、多くのスペースを占め、したがって特に二輪車には適していないということである。さらに、多数の構成部材も必要である。
【0012】
本発明の課題は、変速伝動装置ロック、変速伝動装置ロックを備えた変速伝動装置および変速伝動装置ロックを有する二輪車を提供することであり、この場合に、変速伝動装置ロックがコンパクトに構成されていて、少ない構成部材から成っているようにすることである。
【0013】
この課題は、請求項1,9および15に記載の対象により解決される。
【0014】
本発明に係る変速伝動装置ロックでは、係合エレメントが、ロック爪に結合されており、シフトローラが自由旋回回転領域における回転位置をとる場合に、係合エレメントがシフトローラとの直接的な協働により、ばねエレメントの作用に抗してロック爪を自由旋回位置に保持し、シフトローラがロック回転領域における回転位置をとる場合に、ロック爪は係合エレメントによって、シフトローラによりロック位置へと解放可能であることが規定されている。
【0015】
係合エレメントとロック爪との間の結合は、相対回動不能な結合であり、特に、固定的かつ摺動不能な結合である。係合エレメントとロック爪とは、1つの構成部材として構成されていても、複数の部品から構成されていてもよい。
【0016】
係合エレメントがロック爪に結合されており、係合エレメントが、シフトローラとの直接的な協働により、ばねエレメントの作用に抗してロック爪を自由旋回位置に保持することによって、ロック爪を操作するための、回転可能および/または摺動可能に互いに結合された複数のレバーを備えたレバー機構は必要とされない。これによりコンパクトな構造形式と、構成部材の減少とが可能にされる。
【0017】
ばねエレメントの作用に抗してロック爪を自由旋回位置に保持するために係合エレメントがシフトローラと直接的に協働するということは、操作機構が、シフトローラと係合エレメントとの間の梃子作用を受けないことを意味している。しかし、係合エレメントには、任意には、たとえばシフトローラにおいて転動するためのローラが設けられていてもよい。なぜならば、このローラによってシフトローラと係合エレメントとの間では梃子作用は引き起こされないからである。特に、係合エレメントは、複数の部分から構成されていてよい。
【0018】
このことは、シフトローラが、ロック爪に堅固に、特に摺動不能にかつ/または回動可能であるように可動に結合された構成部材、たとえば駆動ピンに作用することも意味し得る。さらに、シフトローラが、このシフトローラに固定的に、特に摺動不能にかつ/または回転可能であるように可動に結合された構成部材、たとえば固定的に被せ嵌められた操作スライドガイドでロック爪に作用することを意味し得る。
【0019】
同時に、ロック爪には、本発明によれば、ばねエレメントによって、ロック位置に向かう方向で予荷重が加えられている。これによりロック爪は、自由旋回位置においてばねエレメントによってロックギヤへと押圧され、たとえば閉鎖カムによってロック位置に押圧される必要はない。したがって、止め歯がロックギヤの歯に衝突することを回避する必要はない。ロックギヤが引き続き回転している限り、止め歯は場合によってはロックギヤの複数の歯の間の中間室内へと戻される。
【0020】
好適な1つの実施例では、ロック爪が、支持領域を有しており、ロック爪が、支持領域において回転可能に支持されており、かつロック爪が、ロック領域を有しており、ロック爪が、ロック領域においてロックギヤの歯列に係合する。
【0021】
別の1つの実施例によれば、ばねエレメントが、トーションばねとして形成されている、かつ/またはロック爪の支持領域に配置されている。これにより、省スペースな形式で、ロック爪への所望の予荷重が達成される。
【0022】
付加的にまたは代替的には、ばねエレメントが、ロック爪の第2の端部領域においてロック爪に作用することができる。このような場合、ばねエレメントは、回転可能にシフトローラに支持されていることが規定されていてよい。これにより、変速伝動装置において既に存在しているシフトローラが、ばねエレメントのための支持ピンとして付加的に使用される。ばねエレメントは、圧縮ばねおよび/または伸縮式ガイドを含んでいてよい。
【0023】
したがって、ばねエレメントの両実施形態により、ロック爪にはロック位置に向かう方向で予荷重が加えられる。
【0024】
ロック爪が、ロック領域においてロック輪郭を有してよく、ロック輪郭は、少なくとも1つのロックギヤの歯列に係合する。この場合、たとえばロック爪の縁部がロック輪郭を構成することができる。
【0025】
ロック輪郭は、少なくとも1つの歯間室に係合することができ、これにより、少なくとも1つのロックギヤがブロックされる。ロック輪郭が、少なくとも2つの歯間室に係合することが規定されてもよい。これにより、少なくとも1つのロックギヤを唯1つの止め歯のみによって保持する必要はなく、荷重を分散することができる。
【0026】
1つの実施例では、ロック輪郭は、少なくとも1つのロックギヤの歯列に適合されており、この場合に、ロック爪は、少なくとも1つのロックギヤにより機械的に戻され、これにより変速伝動装置は、回転しているロックギヤへのロック爪の係合時にブロックされないようになっている。ロック輪郭は、変速伝動装置に負荷が加えられている場合でも、ロック爪がロック位置から解除可能であるように適合されていてもよい。このためには、解放トルクが摩擦力よりも大きくなくてはならない。
【0027】
1つの別の実施例では、シフトローラの自由旋回回転領域は、330度~350度の角度を占めており、かつ/またはシフトローラのロック回転領域は、10度~30度の角度を占めている。したがって、自由旋回回転領域には、変速伝動装置のギヤの通常のシフト用のシフト輪郭のために十分なスペースがある。
【0028】
係合エレメントが、支持アームとして構成されていることが規定されていてよい。支持アームは、シフトローラが自由旋回回転領域における回転位置をとる場合に、シフトローラにおける支持によって、ばねエレメントの作用に抗してロック爪を自由旋回位置に保持することができる。
【0029】
支持アームは、好適には、シフトローラに当て付けるための当接面を有している。当接面により、支持アームはシフトローラにおいて支持され得る。当接面には、たとえば、シフトローラにおいて転動するためのローラが取り付けられていてもよい。
【0030】
さらに支持アームが、ロック爪の支持領域において、ロック爪に結合されていることが規定されていてよい。特に支持アームは、好適にはロック爪と一緒に、変速伝動装置のシフトレールにおいて支持されていてよい。
【0031】
好適には、支持アームがロック爪と一緒に、2辺のレバー、特にアングルレバーを形成し、特に好適にはアングルレバーの角度が、80~100度の範囲にあることが規定されている。アングルレバーとして使用することにより、変速伝動装置ロックの、特にコンパクトな構造形式が得られる。なぜならば、これにより少なくとも1つのロックギヤとシフトローラとが、同一の梃子作用で互いに近傍に配置されていることができるからである。
【0032】
さらに、シフトローラに支持アームを当て付けるための当接面と、少なくとも1つのロックギヤの歯列内にロック爪を係合させるためのロック輪郭とが、支持アームおよびロック爪の1つの共通の支持領域から見て、支持アームもしくはロック爪の同一の側に配置されていることが規定されていてよい。支持アームもしくはロック爪のこの各側には、有利には、シフトローラもしくは少なくとも1つのロックギヤが配置されている。この場合、ロック爪は、好適にはシフトローラと少なくとも1つのロックギヤとの間に配置されている。
【0033】
シフトローラが、操作輪郭を有していてよく、係合エレメントは、自由旋回位置で操作輪郭において支持可能である。このことは、特に係合エレメントが支持アームとして構成されている場合に有意である。これにより、係合エレメントは、シフトローラとの直接的な協働により、ばねエレメントの作用に抗してロック爪を自由旋回位置に保持することができる。操作輪郭の形状は、少なくとも所定の部分において、シフトローラの回転位置に応じたロック爪の回転位置を定義する。
【0034】
好適には、操作輪郭が、シフトローラの自由旋回回転領域において、円形軌道に沿って延びており、これにより、係合エレメントの当接面が、操作輪郭に接触していることが規定されている。これにより、自由旋回回転領域全体においてロック爪がロックギヤに係合しない位置は不変である。代替的には、操作輪郭の楕円形または非円形の別の形状が規定されていてもよい。
【0035】
操作輪郭が、シフトローラのロック回転領域において、半径方向内方に向かって凹設された切欠きおよび/または半径方向内方に向かって凹設されたカムを有しており、これによって、係合エレメントが、ロック回転領域におけるシフトローラの回転位置において、半径方向で解放されている、かつ/または自由旋回回転領域におけるシフトローラの回転位置におけるよりも、半径方向でさらに内側に配置されていることが規定されていてもよい。特に支持アームとして構成された係合エレメントが、ロック爪と一緒に2辺のレバー、特にアングルレバーを形成している場合、このことは、ロックギヤに向かうロック爪の移動を引き起こし、これによりロック爪がロックギヤに係合する。
【0036】
代替的には、係合エレメントが、駆動ピンとして構成されており、駆動ピンが、シフトローラと直接的に協働することが規定されている。
【0037】
駆動ピンは、支持領域と、ロック領域の少なくとも一部との間でロック爪に取り付けられていてよい。これにより、別のレバーおよび/またはレバー機構は不要であり、変速伝動装置ロックの極めてコンパクトな構造形式を、僅かな構成部材で実現することができる。
【0038】
シフトローラが操作スライドガイドを有しており、ロック爪の係合エレメントが駆動ピンとして形成されており、駆動ピンが操作スライドガイドにより保持可能または解放可能であることが規定されていてよい。操作スライドガイドの形状は、少なくとも所定の部分で、シフトローラの回転位置に応じてロック爪の回転位置を定義している。
【0039】
操作スライドガイドは、シフトローラの自由旋回回転領域において、円形軌道に沿って延びていてよく、これにより駆動ピンは、自由旋回回転領域において、好適には1つの位置でシフトローラの半径方向に保持可能である。これにより、自由旋回回転領域におけるロック爪の、ロックギヤに係合しない位置は不変である。代替的には、操作スライドガイドの楕円形または非円形の別の形状が規定されていてもよい。
【0040】
操作スライドガイドは、シフトローラのロック回転領域において、半径方向外方に向けられた隆起部および/または半径方向外方に向けられたカムを有していてよく、これによって、係合エレメント、特に駆動ピンが、ロック回転領域におけるシフトローラの回転位置において、半径方向で好適には解放されている。その場合に、係合エレメントは、自由旋回回転領域におけるシフトローラの回転位置におけるよりも、さらに外側に配置されている。駆動ピンが、支持領域と、ロック領域の少なくとも一部との間でロック爪に取り付けられている場合、このことは、ロックギヤに向かう移動を引き起こし、これによりロック爪とロックギヤとは係合する。
【0041】
駆動ピンが、ロック回転領域におけるシフトローラの回転位置において、半径方向で第2の半径方向位置に保持可能であり、第2の半径方向位置が、自由旋回回転領域における駆動ピンの半径方向位置よりも、さらに外側に配置されていることが規定されていてよい。
【0042】
好適な1つの実施例では、操作輪郭および/または操作スライドガイドは、シフトローラの外半径の半径方向内側に配置されている。これにより、シフトローラの大きさは、伝動装置ロックを有しない変速伝動装置のシフトローラの大きさよりも大きくならず、これにより、コンパクトな構造形式が実現される。
【0043】
操作輪郭および/または操作スライドガイドが、シフトローラの端面に配置されていることが規定されていてよい。これにより、シフトローラにおいて、たとえばカムホイールのような別の構成部材は不要であり、これにより、構成部材の個数は少なく維持される。
【0044】
特に好適な1つの実施例では、ロック爪および/またはロック爪の少なくとも1つのロック領域が、シフトローラと少なくとも1つのロックギヤとの間の中間室に配置されている。これにより、特にコンパクトな構造形式が実現される。
【0045】
本発明に係る変速伝動装置は、少なくとも1つのシフトローラと、歯列を備えた少なくとも1つのロックギヤと、本明細書の開示において説明する変速伝動装置ロックとを含んでいる。
【0046】
この場合、好適には、変速伝動装置が、ケーシングを有しており、変速伝動装置ロックが、完全にケーシング内に配置されていることが規定されている。変速伝動装置ロックのコンパクトな構造形式により、このことは、小型の変速伝動装置の場合でも可能である。モータ内部での位置決めにより、このシステムは、天候保護されており、メンテナンスフリーである。
【0047】
1つの実施例において、少なくとも1つのロックギヤが、変速伝動装置の出力軸に相対回動不能に結合されている。少なくとも1つのロックギヤが、専ら変速伝動装置のロックのために設けられていることが規定されていてよい。
【0048】
特に好適な1つの実施例では、変速伝動装置は、複数の伝動装置ギヤを有しており、少なくとも1つのロックギヤは、複数の伝動装置ギヤの少なくとも1つのロック可能な伝動装置ギヤとして構成されている。これにより、変速伝動装置をロックするための付加的な歯車が不要となり、これにより、重量および構成部材が節減される。
【0049】
伝動装置ギヤは、変速伝動装置の少なくとも1つのシフト位置において、出力を変速伝動装置の入力軸から変速伝動装置の出力軸に伝達する。
【0050】
ロック可能な少なくとも1つの伝動装置ギヤが、変速伝動装置の固定ギヤとして構成されていることが規定されていてよい。ここで固定ギヤとは、1つの軸に相対回動不能にかつ摺動不能に取り付けられている伝動装置ギヤを指す。
【0051】
代替的には、ロック可能な少なくとも1つの伝動装置ギヤが、変速伝動装置のシフトギヤとして構成されていることが規定されていてよい。軸に相対回動不能かつ摺動可能に取り付けられている伝動装置ギヤが、シフトギヤと呼ばれる。
【0052】
代替的には、ロック可能な少なくとも1つの伝動装置ギヤが、変速伝動装置の空転ギヤ(Losrad)として構成されており、シフトローラがロック回転領域における回転位置をとる場合に、シフトローラのロック可能な少なくとも1つの伝動装置ギヤは、少なくとも1つのシフトギヤに、特に好適にはシフトクロー(Schaltklauen)および/またはシフトスリーブにより相対回動不能に結合されていることが規定されていてよい。これにより、ブロックされた空転ギヤが、車輪のブロックをもたらす。
【0053】
軸は、たとえば入力軸、出力軸および/または副軸として形成されていてよい。変速伝動装置は、駆動のための入力軸と、被駆動のための出力軸とを有していてよい。さらに、副軸が設けられていてよい。入力軸および出力軸は、同軸的に配置されていてよい。出力軸が、副軸として形成されていることが規定されていてもよい。
【0054】
変速伝動装置は、少なくとも1つのシフトレールを含んでいてよく、少なくとも1つのシフトレールに、少なくとも1つのシフトフォークが摺動可能に支持されており、ロック爪が、変速伝動装置の少なくとも1つのシフトレールに回転可能に支持されている。これにより、ロック爪を支持するための付加的なピンは不要であり、これにより、構成部材を削減することができ、特にコンパクトな構造形式が可能にされる。
【0055】
好適には、シフトローラが自由旋回回転領域における少なくとも2つの回転位置をとることができ、自由旋回回転領域におけるそれぞれ1つの回転位置が、変速伝動装置の1つのギヤに対応することが規定されている。これにより、シフトローラの様々な回転位置により、ギヤ間の切り換えができると共に、変速伝動装置をロックすることもできる。特に、自由旋回回転領域において複数の前進ギヤ間で切り換えることができる。
【0056】
好適には、変速伝動装置が、常時噛合い式伝動装置として構成されており、この種の変速伝動装置は、二輪車において特に頻繁に用いられる。このときシフトローラは、たとえば、フットシフトレバーによって操作されるシフトクローにより回転させることができる。
【0057】
代替的にまたは付加的には、変速伝動装置が、オートマチック式の変速伝動装置として構成されており、好適には、シフトローラがシフトモータおよび/または歯車駆動装置により回転可能であることが好適に規定されている。これにより、全自動で、またはドライバの操作に基づいて自動的にギヤを切り換えることができる。
【0058】
本発明に係る二輪車は、駆動エンジンと変速伝動装置とを含んでいる。二輪車にとって、コンパクトな変速伝動装置ロックを実現することは特に重要である。
【0059】
1つの実施例では、二輪車は、「ノーマルオープン型」のクラッチ、好適には遠心クラッチを含んで、この場合、駆動エンジンは、「ノーマルオープン型」のクラッチにより変速伝動装置に連結可能である。これにより駆動エンジンは、所定の回転数になってようやく変速伝動装置に連結される。このことは、特にオートマチック式の変速伝動装置を備えた二輪車の場合に典型的である。遠心クラッチの他に、別の「ノーマルオープン型の」クラッチ、たとえば液圧式の「ノーマルオープン型」のクラッチも可能である。
【0060】
「ノーマルクローズ型」のクラッチの使用も可能である。
【0061】
好適な1つの実施例では、二輪車は、電子的な制御ユニットを有しており、電子的な制御ユニットにより、制御信号が少なくとも1つのアクチュエータに送信可能であり、シフトローラは、制御信号により制御可能な少なくとも1つのアクチュエータにより、自由旋回回転領域における少なくとも1つの回転位置と、ロック位置回転領域における少なくとも1つの回転位置とに回転可能である。アクチュエータは、たとえば、特に電気的なシフトモータの一部として構成されていてよい。これによって、オートマチック式の変速伝動装置を実現することができる。引張り力がシフト時に自動的に減少させられ、これにより、ギヤ間のシフト時にクラッチが使用されていないことが規定されていてよい。
【0062】
ドライバの制御命令は、電子的な制御ユニットにより受信可能であり、これにより、ドライバは、シフトローラの種々異なる回転位置間、特に自由旋回領域における少なくとも1つの回転位置と、ロック領域における回転位置との間、かつ/または自由旋回領域における複数の回転位置間でシフトを行うことができることが規定されていてよい。これによりドライバは、オートマチック式の変速伝動装置および伝動装置ロックを操作することができる。つまり伝動装置ロックを操作するためには、オートマチック式の変速伝動装置が二輪車に設けられている場合、既存の構成要素を介して実施することができ、付加的な構成部材は不要である。
【0063】
1つの実施例では、少なくとも1つの操作表示部が二輪車に設けられており、少なくとも1つの操作表示部が、シフトローラの回転位置を表示することが規定されている。これにより、ドライバに変速伝動装置状態、特に変速伝動装置がロックされているか否かについて情報を提供される。操作表示部は、たとえば二輪車のダッシュボードにおける表示部として構成されていてよい。この箇所では、変速伝動装置ロックの操作がシンボルまたは文字として表されていてよい。
【0064】
ギヤの切換えも伝動装置ロックも、シフトローラの回転位置を介して実現されることによって、両機能のために1つのセンサしか必要とならない。特に伝動装置ロックのために、固有のセンサは不要である。シフトローラの回転位置を特定するための既存のセンサを使用することができる。
【0065】
要約すると、本発明は、以下の利点も有している:
変速伝動装置のシフト機構にパーキングブレーキを統合することによって、発進時にパーキングブレーキの解除を忘れ得ないことを保証することができる;
構成部材の個数が少ないことにより、システムを比較的廉価に実現することができる。
【0066】
別の実施形態および詳細は、図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】変速伝動装置ロックを備えた変速伝動装置を示す斜視図である。
図2a】シフトローラおよびロックギヤを備えた変速伝動装置ロックを示す斜視図である。
図2b】シフトローラおよびロックギヤを備えた変速伝動装置ロックを示す斜視図である。
図2c】シフトローラおよびロックギヤを備えた変速伝動装置ロックを示す側面図である。
図2d】シフトローラおよびロックギヤを備えた変速伝動装置ロックを示す正面図である。
図2e】シフトローラおよびロックギヤを備えた変速伝動装置ロックを示す背面図である。
図3a】シフトローラ、ロックギヤおよび歯車駆動装置を備えた変速伝動装置ロックを示す斜視図である。
図3b】シフトローラ、ロックギヤおよび歯車駆動装置を備えた変速伝動装置ロックを示す斜視図である。
図3c】シフトローラ、ロックギヤおよび歯車駆動装置を備えた変速伝動装置ロックを示す正面図である。
図3d】シフトローラ、ロックギヤおよび歯車駆動装置を備えた変速伝動装置ロックを示す背面図である。
図4】変速伝動装置ロックを備えた変速伝動装置の代替的な実施例を示す斜視図である。
【0068】
図1は、変速伝動装置ロック30を備えた変速伝動装置1を斜視図で示している。変速伝動装置ロック30は、好適には、パーキングアシストのために適している。変速伝動装置1のロックにより、この変速伝動装置1が組み込まれている車両の車輪もブロックされる。
【0069】
変速伝動装置1は、シフトローラ2と、2つのシフトレール3と、複数の伝動装置ギヤ5とを含んでいる。
【0070】
特に、変速伝動装置1は、好適にはオートマチック式の変速伝動装置として構成されている常時噛合い式伝動装置(Klauengetriebe)である。この場合、シフトローラ2は、図3a~図3dから判るように、シフトモータ27および/または歯車駆動装置35により回転可能であってよい。しかし、変速伝動装置1は、手動で切換え可能な変速伝動装置として構成されていてもよい。
【0071】
2つのシフトレール3には、少なくとも1つのシフトフォーク10が摺動可能に支持されており、このシフトフォーク10によって、特定の伝動装置ギヤ5が摺動可能である。これらのいわゆるシフトギヤ5cは、入力軸6または出力軸7に相対回動不能に結合されており、入力軸6と出力軸7とは、互いに同軸的に配置されていて、一緒に1つの主軸8を形成している。副軸9には、同様に前述の種類の伝動装置ギヤ5が配置されていてよい。
【0072】
さらに、軸には、相対回動不能かつ摺動不能に軸に配置されている固定ギヤ5bと、回転可能かつ摺動不能に軸に配置されている空転ギヤ5aとが設けられている。摺動可能により、シフトギヤ5cをシフトクローにより空転ギヤ5aに相対回動不能に連結することができ、これにより空転ギヤ5aも同様に相対回動不能に軸に結合されている。したがって、入力軸6、副軸9と出力軸7における伝動装置ギヤ5の種々異なる組合せを、力伝達のために選択することができ、これにより、二輪車のための互いに異なる変速比を有する様々なギヤが実現される。
【0073】
このような変速伝動装置1は、しばしば二輪車に組み込まれる。好適には、二輪車は、「ノーマルオープン型」のクラッチ、好適には遠心クラッチを有していてよく、二輪車の駆動エンジンは、「ノーマルオープン型」のクラッチにより変速伝動装置1に連結可能である。したがって、停止状態においてクラッチは解放されており、これにより、二輪車の車輪は、駆動エンジンに連結されておらず、ひいてはブロックされていない。
【0074】
変速伝動装置ロック30は、少なくとも1つのシフトローラ2と、歯列19を備えた少なくとも1つのロックギヤ15とに係合する。変速伝動装置ロック30は、回転可能に支持されたロック爪13を有しており、ロック爪13は、ロック位置において少なくとも1つのロックギヤ15の歯列19に係合し、自由旋回位置において、少なくとも1つのロックギヤ15に係合していない。特に、ロック爪13は、変速伝動装置1の少なくとも1つのシフトレール3に回転可能に支持されている。
【0075】
ロック爪13には、ばねエレメント16によりロック位置に向かう方向で予荷重が加えられている。図1に示した実施例では、ばねエレメント16がトーションばねとして形成されており、ロック爪13の支持領域32に配置されている。
【0076】
図1では、複数の伝動装置ギヤ5のうちの1つが、ロック可能な伝動装置ギヤとして構成されており、この伝動装置ギヤを、以下ではロックギヤ15と呼ぶ。ロックギヤ15が空転ギヤ5aとして構成されている場合、空転ギヤ5aはロック位置においてシフトギヤ5cに連結されていなければならない。なぜならば、さもなければ変速伝動装置1はロック爪13によりロック可能ではないからである。
【0077】
さらに図1から判るように、係合エレメント12がロック爪13に結合されており、係合エレメント12は、シフトローラ2が自由旋回回転領域における回転位置をとる場合に、シフトローラ2との直接的な協働により、ばねエレメント16の作用に抗して、ロック爪13を自由旋回位置に保持し、シフトローラ2がロック回転領域における回転位置をとる場合に、ロック爪13は、係合エレメント12によって、シフトローラ2によりロック位置へと解放可能である。係合エレメント12は、ロック爪13に特に相対回動不能に結合されている。この場合、図1には、ロック爪2が係合エレメント12により解放されているロック位置が示されている。
【0078】
さらに、シフトローラ2は、自由旋回回転領域に少なくとも2つの回転位置を有しており、自由旋回回転領域におけるそれぞれ1つの回転位置は、変速伝動装置1の1つのギヤに対応する。特に自由旋回回転領域には、複数の前進ギヤが設けられている。
【0079】
図2a~図2eは、図1に示した変速伝動装置ロック30を種々異なる視点で示している。図2a~図2eでは、変速伝動装置1は、完全には図示されていない。変速伝動装置ロック30は、図2a~図2eでは同様にロック位置で図示されている。特に図2cの側面図に基づき、ロック機構を良好に確認することができる。
【0080】
ロック爪13は、支持領域32を有しており、ロック爪13は、支持領域32において回転可能に支持されている。さらにロック爪13は、ロック領域34を有しており、ロック爪13は、このロック領域34においてロックギヤ15の歯列19に係合する。
【0081】
ロック領域34においてロック爪13は、特にロック輪郭14を有する。ロック輪郭14は、互いに異なる少なくとも2つの歯間室24に係合し、ロック輪郭14は、歯列19に適合されている。これにより、ロック爪13は、少なくとも1つのロックギヤ15により機械的に戻されるので、変速伝動装置1は、回転しているロックギヤ15にロック爪13が係合した場合にブロックされず、かつ/または変速伝動装置1に荷重が加えられている場合であっても、ロック位置から解除可能であることが実現される。
【0082】
図1図3dでは、係合エレメント12が支持アーム23として構成されている。支持アーム23は、シフトローラ2に当て付けるための当接面33を有している。さらに支持アームは、ロック爪13の支持領域32においてロック爪に相対回動不能に結合されている。ロック爪13と一緒に、支持アーム23は、2辺のレバー、特にアングルレバーを形成しており、アングルレバーの角度は、80~100度の範囲にある(図2c参照)。
【0083】
シフトローラ2に支持アーム23を当て付けるための当接面33と、少なくとも1つのロックギヤ15の歯列19にロック爪13を係合するためのロック輪郭14とは、支持アーム23およびロック爪13の1つの共通の支持領域32から見て、支持アーム23もしくはロック爪13の同一の側、特に両方の右側に配置されている。
【0084】
当接面33とロック輪郭14とのこの構成は有利である。なぜならば、ロック爪13および/またはロック爪13の少なくとも1つのロック領域34が、シフトローラ2と少なくとも1つのロックギヤ15との間の中間室内に配置されているからである(特に図2c参照)。
【0085】
シフトローラ2は、操作輪郭11を有しており、係合エレメント12、本実施例では特に支持アーム23が、自由旋回位置で操作輪郭11において支持可能である。特に、操作輪郭11は、シフトローラ2の自由旋回回転領域において、円形軌道25に沿って延びており、係合エレメント12、本実施例では特に支持アーム23が、当接面33で操作輪郭11に接触する。ここで述べておくと、自由旋回位置は図面のいずれにも図示されていない。
【0086】
シフトローラ2のロック回転領域において、操作輪郭11は、半径方向内方に向かって凹設された切欠き26および/または半径方向内側に向かって凹設されたカムを有しており、これにより、係合エレメント12、特に支持アーム23は、ロック回転領域におけるシフトローラ2の回転位置において、半径方向で解放されている。これによって、支持アーム23は、もはやシフトローラ2において支持することができず、これによってロック爪13が、ばねエレメント16によってロックギヤ15内に押圧される。
【0087】
図2cでは、支持アーム23がロック位置においてもシフトローラ2に、特に操作輪郭11に接触しているという印象が生じ得る。好適にはこれは当てはまらない。なぜならば、ロック爪13は、ロック位置ではロックギヤ15により保持されるからである。
【0088】
支持アーム23とロック爪13とが、ロック回転領域において、操作輪郭11に設けられた切欠き26により解放されることにより、ロック爪13は、たとえば閉鎖カムを備えた操作輪郭によって、ロックギヤ15の歯列19内に押圧されるのではない。その代わりに、ばねエレメント16が、ロック爪13を歯列19内に押圧し、これによりロック爪13がそのロック輪郭14で即座に歯間室24内に衝突しない場合に、問題は生じない。
【0089】
さらに操作輪郭11が、シフトローラ2の外半径の半径方向内側でシフトローラ2の端面20に配置されている。操作輪郭11が、シフトローラ2に直接配置されていて、かつたとえば別個の構成部材としてシフトローラ2に取り付けられていないことが規定されている。
【0090】
図3a~図3dは、シフトローラ2とロックギヤ15とを備えた変速伝動装置ロック30を示しており、本実施例では、歯車駆動装置35が図示されている。歯車駆動装置35を介して、シフトローラ2がシフトモータ27により駆動可能である。このことは、特にオートマチック式の変速伝動装置1の場合、可能な1つの実施形態である。シフトモータ27は、一般的に電動モータとして構成されている。
【0091】
オートマチック式の変速伝動装置1の、二輪車への統合は、図示していない。たとえば、ドライバの制御命令は、電子的な制御ユニットにより受信可能であり、これにより、ドライバは、シフトローラの種々異なる回転位置間、特に自由旋回領域における少なくとも1つの回転位置と、ロック領域における回転位置との間、かつ/または自由旋回領域における複数の回転位置間での切換えを行うことができる。したがって、制御ユニットにより、シフトモータ27の少なくとも1つのアクチュエータを駆動制御することができる。
【0092】
また、少なくとも1つの操作表示部が二輪車に設けられていてもよく、少なくとも1つの操作表示部は、シフトローラ2の回転位置を表示する。シフトローラ2の回転位置は、たとえばシフトモータ27のアクチュエータの位置を介して既知であるので、操作表示のために付加的なセンサを変速伝動装置ロック30内に設置する必要はない。
【0093】
図4は、変速伝動装置ロック30を備えた変速伝動装置1の代替的な1つの実施例を斜視図で示しており、ここでは、変速伝動装置ロック30の自由旋回位置が図示されている。
【0094】
ばねエレメント16は、本実施例では、図1図3dに示した実施例とは異なり、ロック爪13の第2の端部領域22においてロック爪13に作用し、第2の端部領域22は、ロック爪13の支持領域32とは反対側に位置している。
【0095】
このように構成されている場合、図4から分かるように、ばねエレメント16が回転可能にシフトローラ13において支持されていることが規定されていてよい。これにより、変速伝動装置1内に既に存在しているシフトローラ2が、付加的にばねエレメント16のための支持ピンとして使用される。ばねエレメント16は、圧縮ばねおよび/または伸縮式ガイドを含んでいてよい。
【0096】
図1図3dに示した実施例に対する別の相違点は、係合エレメント12の形状および機能である。係合エレメント12は、図4では駆動ピン18として形成されている。駆動ピン18は、自由旋回位置においてロック爪13を保持するために、シフトローラ2と直接的に協働する。
【0097】
駆動ピン18は、支持領域32と、ロック領域34の少なくとも一部との間でロック爪13に取り付けられていてよく、支持領域32は、ロック爪13の第1の端部領域21に配置されており、ロック領域34は、少なくとも部分的に第2の端部領域22に配置されている。したがって、力は、本実施例ではロック爪13に直接に作用する。ロック爪13と係合エレメント12とは、本実施例では一緒に2辺のレバーを形成していない。
【0098】
駆動ピン18、ひいてはロック爪13は、操作スライドガイド17によって保持可能または解放可能であり、操作スライドガイド17は、シフトローラ2に配置されている。操作スライドガイド17の形状は、少なくとも所定の部分で、シフトローラ2の回転位置に応じてロック爪13の回転位置を定義する。
【0099】
操作スライドガイド17は、シフトローラ2の自由旋回回転領域において、円形軌道25に沿って延びていてよく、これにより駆動ピン18は、自由旋回回転領域において、好適にはシフトローラ2の半径方向で1つの位置に保持可能である。これにより、自由旋回回転領域におけるロック爪13の、ロックギヤ15に係合しない位置は変化しない。代替的には、操作スライドガイド17の楕円形または非円形の別の形状が規定されていてもよい。
【0100】
操作スライドガイド17は、シフトローラ2のロック回転領域において、半径方向外方に向けられた隆起部31および/または半径方向外方に向けられたカムを有していてよく、これによって駆動ピン18は、ロック回転領域におけるシフトローラ2の回転位置において、半径方向で好適には解放されている。この場合、駆動ピン18は、自由旋回回転領域におけるシフトローラ2の回転位置におけるよりもさらに外側に配置されている。駆動ピン18が、支持領域32と、ロック領域の少なくとも一部との間でロック爪13に取り付けられている場合、このことは、ロックギヤ15に向かう移動を引き起こし、これによりロック爪13とロックギヤ15とが係合する。
【0101】
自由旋回位置からロック位置へのロック爪13の移動時に、図4に示した実施例では、係合エレメント12の当接面33が半径方向外方に向かって移動するのに対して、図1図3dに示した実施例では、当接面33が梃子伝達比に基づいて内方に向かって移動する。
【0102】
駆動ピン18が、ロック回転領域におけるシフトローラ2の回転位置において、半径方向で第2の半径方向位置に保持可能であり、第2の半径方向位置が、自由旋回回転領域における駆動ピン18の半径方向位置よりも、さらに外側に配置されていることが規定されていてよい。しかし好適には、この場合も、ロック爪13がロック位置においてロックギヤ15により保持されることが規定されている。
【符号の説明】
【0103】
1 変速伝動装置
2 シフトローラ
3 シフトレール
4 シフトスライドガイド
5 伝動装置ギヤ
5a 空転ギヤ
5b 固定ギヤ
5c シフトギヤ
6 入力軸
7 出力軸
8 主軸
9 副軸
10 シフトフォーク
11 操作輪郭
12 係合エレメント
13 ロック爪
14 ロック輪郭
15 ロックギヤ
16 ばねエレメント
17 操作スライドガイド
18 駆動ピン
19 ロックギヤの歯列
20 シフトローラの端面
21 ロック爪の第1の端部領域
22 ロック爪の第2の端部領域
23 支持アーム
24 歯間室
25 操作輪郭/操作スライドガイドの円形軌道
26 操作輪郭の切欠き
27 シフトモータ
28 歯車駆動装置
29 ロック領域
30 変速伝動装置ロック
31 操作スライドガイドの隆起部
32 支持領域
33 当接面
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
図3c
図3d
図4