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  • 特許-樹脂組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20240920BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240920BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08J3/20 B
C08L101/00
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/34
C08K3/40
C08K3/08
C08K3/26
C08K3/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022124819
(22)【出願日】2022-08-04
(65)【公開番号】P2023024383
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】110128998
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518305565
【氏名又は名称】臺灣塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高 堂▲チュン▼
(72)【発明者】
【氏名】許 育晟
(72)【発明者】
【氏名】顏 凱宸
(72)【発明者】
【氏名】周 建旭
(72)【発明者】
【氏名】歐 志軒
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 翰章
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 龍田
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-033377(JP,A)
【文献】特開2010-189628(JP,A)
【文献】国際公開第2006/080318(WO,A1)
【文献】特開2000-086931(JP,A)
【文献】米国特許第06284035(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第112250996(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0244286(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103865234(CN,A)
【文献】特開2021-170636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F27/00-27/96
B02C1/00-7/18
15/00-17/24
B29B7/00-11/14
13/00-15/06
B29C31/00-31/10
37/00-37/04
71/00-71/02
C08J3/00-3/28
99/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子フィラー、ミクロン無機粒子及び樹脂を攪拌混合して、混合物を形成する工程と、
前記混合物を高速遠心して、上層混合液及び下層混合液を形成する工程と、
前記上層混合液を取り出して、樹脂組成物を取得する工程と、を含み、
前記ナノ粒子フィラーは、ナノシリカ、ナノ銀、ナノ炭酸カルシウム、ナノカオリン、ナノ炭素繊維又はそれらの組み合わせを含み、前記混合物中の前記ミクロン無機粒子の含有量は、0.1~30重量%である樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子フィラーは、粒子径が5nm~250nmである請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記混合物中の前記ナノ粒子フィラーの含有量は、0.1~10重量%である請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ミクロン無機粒子は、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ミクロンガラスビーズ又はそれらの組み合わせを含む請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ミクロン無機粒子は、粒子径が2μm~200μmである請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂は、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、又はそれらの組み合わせを含む請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
攪拌混合する工程は、20~160℃の温度で、100~5000rpmの攪拌回転数で、0.5~15時間攪拌することを含む請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記混合物を高速遠心する工程は、5000~150000rpmの遠心回転数で、0.1~5時間遠心することを含む請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能な樹脂組成物は、接着剤、電子計器、宇宙航空、塗料、電子電気絶縁材料及び先端複合材料等の分野において広く適用されている。高性能な樹脂組成物は、硬化後に高い架橋密度の三次元網状立体構造を形成し、樹脂材料の強度、剛性、係数、硬度、耐熱性を顕著に向上させることができる。しかし、材料が高い架橋密度により本質的な脆性を呈し、使用上に硬い力を受けて脆性破壊を引き起こしやすく、更に適用が制限される。中でも、靭性を付与する方法としては、表面が特に改質官能化されたナノ粒子を導入することで靭性付与を達成するものがある。
【0003】
しかしながら、ナノ粒子は、高い表面エネルギーが極めて凝集しやすい特性を有するため、樹脂組成物中に均一に分散し且つナノ粒子自体のナノサイズを維持することが困難であり、そのナノ粒子の特性を発揮することはできない。樹脂材料内部のナノ粒子の分散性は、靭性付与の性質と大きく関係しており、ナノ粒子の分散性が良好であるほど、靭性付与の効果も良くなる。ナノ粒子の分散性が悪いと、靭性付与効果がないばかりでなく、かえって性質を低下させる可能性があり、例えば、曲げ強度は、樹脂材料内部のナノ粒子の分散不良による凝集欠陥により、応力集中領域が発生し、強度の低下を招くことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在のナノ粒子の分散方法では、樹脂組成物を溶剤で溶解し、超音波分散機で分散させた後、溶剤を除去するものが多いが、最終的に樹脂組成物中に溶剤が残留し、高性能な複合材料におけるボイド欠陥が生成し、性能が低下することになる。高速攪拌機で攪拌するだけでは、ナノ粒子を十分に分散させることができず、ナノ粒子が樹脂レシピに凝集する問題が依然として存在する。
本発明は、上述に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、ナノ粒子フィラー、ミクロン無機粒子及び樹脂を攪拌混合して、混合物を形成する工程と、混合物を高速遠心して、上層混合液及び下層混合液を形成する工程と、上層混合液を取り出して、樹脂組成物を取得する工程と、を含む。混合物中のミクロン無機粒子の含有量は、約0.1~30重量%である。
【0006】
本発明の実施形態によれば、ナノ粒子フィラーは、ナノシリカ、ナノ銀、ナノ炭酸カルシウム、ナノカオリン、ナノ炭素繊維又はそれらの組み合わせを含む。
【0007】
本発明の幾つかの実施形態によれば、ナノ粒子フィラーは、粒子径が約5nm~250nmである。
【0008】
本発明の幾つかの実施形態によれば、混合物中のナノ粒子フィラーの含有量は、約0.1~10重量%である。
【0009】
本発明の幾つかの実施形態によれば、ミクロン無機粒子は、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ミクロンガラスビーズ又はそれらの組み合わせを含む。
【0010】
本発明の幾つかの実施形態によれば、ミクロン無機粒子は、粒子径が約2μm~200μmである。
【0012】
本発明の幾つかの実施形態によれば、樹脂は、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、又はそれらの組み合わせを含む。
【0013】
本発明の幾つかの実施形態によれば、攪拌混合する工程は、約20~160℃の温度で、約100~5000rpmの攪拌回転数で、約0.5~15時間攪拌することを含む。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態によれば、攪拌混合する工程は、約0.01~100Torrの真空度で、50~5000rpmの攪拌回転数で、約0.1~2時間攪拌して真空引きすることを含む。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態によれば、混合物を高速遠心する工程は、約5000~150000rpmの遠心回転数で、約0.1~5時間遠心することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付の図面を読むと、以下の詳細な説明から本開示の各方面を十分に理解することができる。
図1】本発明の幾つかの実施形態による樹脂組成物の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面で本発明の複数の実施形態を開示し、明確に説明するために、多くの実際的な細部を以下の記述で合わせて説明する。しかしながら、理解すべきなのは、これらの実際的な細部が、本発明を制限するように適用されるものではない。
【0018】
以下では一連の操作又は工程によってここで開示された方法を説明するが、これらの操作又は工程に示された順序は本発明を限定するものと解釈されるべきではない。例えば、ある操作又は工程は異なる順序、及び/又は他の工程と同時に行うことができる。また、全ての示された操作、工程及び/又は特徴を実行しなければ本発明の実施形態を実現できないというわけではない。また、ここで説明した各操作又は工程は複数のサブ工程又は動作を含むことができる。
【0019】
図1は、本発明の各種の実施形態による樹脂組成物の製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、方法100は、操作110と、操作120と、操作130と、を含む。
【0020】
図1を参照すると、方法100の操作110において、ナノ粒子フィラー、ミクロン無機粒子及び樹脂を攪拌混合して、混合物を形成する。幾つかの実施形態において、ナノ粒子フィラー、ミクロン無機粒子及び樹脂を攪拌混合する工程は、ナノ粒子フィラー、ミクロン無機粒子及び樹脂を高速攪拌機に入れることを含む。例としては、高速攪拌機は、プラネタリーミキサーであってよい。
【0021】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子フィラーは、ナノシリカ、ナノ銀、ナノ炭酸カルシウム、ナノカオリン、ナノ二酸化チタン、ナノ炭素繊維又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、ナノ粒子フィラーは、粒子径が約5nm~250nmである。粒子径がこの範囲内にあるナノ粒子フィラーは、力学性能、耐熱性等の樹脂組成物の性能を効果的に向上させる。例としては、ナノ粒子フィラーの粒子径は、約10、20、30、50、70、100、115、135、155、175、195、200、210、220、230、240、又は245nmであってよい。幾つかの実施形態において、ナノ粒子フィラーは、約0.1~10重量%である。例えば、ナノ粒子フィラーは、約1、3、5、7、又は9重量%であってよい。この重量%範囲内にあるナノ粒子フィラーを添加すると、樹脂組成物の機械的、電気的性能等を向上させることができる。
【0022】
幾つかの実施形態において、ミクロン無機粒子は、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ミクロンガラスビーズ又はそれらの組み合わせを含む。ミクロン無機粒子は、媒体とされることができ、それが機械的外力を受けて生じる回転と衝突のせん断力及び衝撃力によってナノ粒子フィラーを更に樹脂に分散させる。幾つかの実施形態において、ミクロン無機粒子は、粒子径が約2μm~200μmである。例えば、ミクロン無機粒子の粒子径は、約3、5、7、10、30、50、70、90、110、130、150、170、又は190μmであってよい。詳細には、粒子径が大きすぎるミクロン無機粒子は、ナノ粒子フィラーを効果的に衝突・せん断分散させることができないが、小さすぎるミクロン無機粒子は、後のプロセスで混合物(樹脂、ナノ粒子フィラーを含む)から分離することが比較的困難となる。幾つかの実施形態において、ミクロン無機粒子は、約0.1~30重量%である。例えば、ミクロン無機粒子は、約0.5、1、5、10、15、20又は25重量%であってよい。ミクロン無機粒子の使用量が多すぎると、後の遠心操作の後で上層混合液を取り出すことが困難となり、逆にミクロン無機粒子の使用量が少なすぎると、十分に衝突・せん断力を発生させることができず、ナノ粒子を分散させる効果が低下し、且つ時間がかなりかかる。
【0023】
幾つかの実施形態において、樹脂は熱硬化性樹脂であってよい。幾つかの実施例において、樹脂は、フェノール樹脂(phenol formaldehyde resin;PF)、尿素樹脂(urea-formaldehyde;UF)、メラミン樹脂、エポキシ樹脂(epoxy;EP)、ビニルエステル樹脂(vinyl ester resin;VE)、不飽和ポリエステル樹脂(unsaturated polyester resin;UP)、ポリウレタン樹脂(polyurethane resin;PU)、シリコーン樹脂(Sillicone resin)、アクリル樹脂(acrylic resin)又はそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、更に、例えば、硬化剤、促進剤等の他の添加剤を樹脂に添加してもよい。
【0024】
幾つかの実施形態において、上記ナノ粒子フィラー、ミクロン無機粒子及び樹脂を高速攪拌機に入れた後、約20~160℃の温度で、約100~5000rpmの攪拌回転数で、約0.5~15時間攪拌混合してもよい。例えば、攪拌温度は、約25、30、50、70、90、100、120、又は140℃であってよい。幾つかの実施形態において、流動性を高めるように、上記ナノ粒子フィラー、ミクロン無機粒子、及び樹脂を加熱攪拌(例えば、130℃に昇温)してよい。他の実施形態において、例えば、低分子量の液状エポキシ樹脂、エポキシ樹脂溶剤溶液レシピ、水性改質ポリウレタン樹脂水溶液レシピ、反応性希釈剤を有するビニルエステル樹脂、反応性希釈剤を有する不飽和ポリエステル樹脂等の自体の流動性のよい樹脂は、ナノ粒子フィラー、ミクロン無機粒子を混入しても肉眼で観察できる顕著な流動性を有すると、昇温する必要はない。
【0025】
幾つかの実施形態において、混合物を形成するように、上記攪拌混合の後、約0.01~100Torrの真空度で、50~5000rpmの攪拌回転数で、約0.1~2時間攪拌して真空引きしてよい。幾つかの実施形態において、真空引き時の温度としては、先の攪拌混合の温度(すなわち20~160℃)を維持し又はそれ以下になってよい。
【0026】
引き続き図1を参照すると、方法100の操作120において、混合物を高速遠心して、上層混合液及び下層混合液を形成する。幾つかの実施形態において、混合物を高速遠心する工程は、約5000~150000rpmの遠心回転数で、約0.1~5時間遠心することを含む。具体的には、操作110で形成された混合物を高速遠心した後、ミクロン無機粒子を容器の下層に遠心することができるが、ナノ粒子フィラーは容器の上層に位置する。すなわち、下層混合液はミクロン無機粒子を含むが、上層混合液はナノ粒子フィラーを含む。
【0027】
図1を参照すると、方法100の操作130において、上層混合液を取り出して、樹脂組成物を取得する。上記操作で攪拌して分散させるように、ナノ粒子フィラーは、樹脂中に十分で均一に分散することができる。すなわち、樹脂組成物は、均一に分散したナノ粒子フィラーを含む。この樹脂組成物は、後のプロセス(例えば、硬化)で更に複合材料を形成する。ナノ粒子がその中に均一に分散する複合材料は、ナノ粒子フィラーが分散していないことや気孔が材料の内部に存在することによる応力集中欠陥を低減する。従って、例えば、電気特性、機械特性等の複合材料の性能を向上させることができる。
【0028】
以下の実施例は本発明の特定の態様を詳細に説明し、且つ当業者に本発明を実施させ得るためのものである。しかしながら、以下の実施例は本発明を限定することに用いられるべきではない。
【0029】
実施例1
平均粒子径が約20nmのナノシリカ粒子と平均粒子径が約3μmのミクロン二酸化ジルコニウム粒子を液状エポキシ樹脂と共にプラネタリーミキサーに入れた。公転1200rpm、自転1080rpm、温度120℃、真空度約0.5Torr、1時間で、ブレンド均質攪拌を行って、粒子が分散したエポキシ樹脂混合母液を得た。ナノシリカ粒子は4重量%であり、ミクロン二酸化ジルコニウム粒子は10重量%であった。
【0030】
上記低粘度エポキシ樹脂混合母液を遠心機に移し、遠心速度が80000rpmであり、遠心時間が10分間である高速遠心を行って、上層がナノシリカ粒子とエポキシ樹脂の均一に分散した混合液であり、下層が遠心されたミクロン二酸化ジルコニウム粒子であるものを得た。
【0031】
上記上層混合液を取り出して、ナノシリカ粒子とエポキシ樹脂が均一に分散した樹脂組成物を得た。
【0032】
実施例2
平均粒子径が約75nmのナノ銀粒子と平均粒子径が約5μmのミクロン二酸化チタン粒子を液状エポキシ樹脂と共にプラネタリーミキサーに入れ、ブレンド均質攪拌を行って、粒子が分散したエポキシ樹脂混合母液を得、ナノ銀粒子は3重量%であり、ミクロン二酸化チタン粒子は15重量%であった。ブレンド均質攪拌の攪拌時間は約1時間、攪拌温度は約120℃、真空度は約0.5Torr、公転攪拌速度は約1500rpm、自転攪拌速度は約1350rpmであった。
【0033】
上記低粘度エポキシ樹脂混合母液を遠心機に移し、遠心速度が70000rpmであり、遠心時間が10分間である高速遠心を行って、上層がナノ銀粒子とエポキシ樹脂の均一に分散した混合液であり、下層が遠心されたミクロン二酸化チタン粒子であるものを得た。
【0034】
上記上層混合液を取り出して、ナノ銀粒子とエポキシ樹脂が均一に分散した樹脂組成物を得た。
【0035】
実施例3
平均粒子径が約20nmのナノシリカ粒子と平均粒子径が約3μmのミクロン二酸化ジルコニウム粒子を液状エポキシ樹脂と共にプラネタリーミキサーに入れ、ブレンド均質攪拌を行って、粒子が分散したエポキシ樹脂混合母液を得、ナノシリカ粒子は4重量%であり、ミクロン二酸化ジルコニウム粒子は20重量%であった。ブレンド均質攪拌の攪拌時間は1時間、攪拌温度は120℃、真空度は約0.5Torr、公転攪拌速度は約1200rpm、自転攪拌速度は約1080rpmであった。
【0036】
上記低粘度エポキシ樹脂混合母液を遠心機に移し、遠心速度が80000rpmであり、遠心時間が10分間である高速遠心を行って、上層がナノシリカ粒子とエポキシ樹脂の均一に分散した混合液であり、下層が遠心されたミクロン二酸化ジルコニウム粒子であるものを得た。
【0037】
上記上層混合液を取り出して、ナノシリカ粒子とエポキシ樹脂が均一に分散した樹脂組成物を得た。
【0038】
実施例4
平均粒子径が約75nmのナノ銀粒子と平均粒子径が約5μmのミクロン二酸化チタン粒子を液状エポキシ樹脂と共にプラネタリーミキサーに入れ、ブレンド均質攪拌を行って、粒子が分散したエポキシ樹脂混合母液を得、ナノ銀粒子は3重量%であり、ミクロン二酸化チタン粒子は25重量%であった。ブレンド均質攪拌の攪拌時間は1時間、攪拌温度は120℃、真空度は約0.5Torr、公転攪拌速度は1500rpm、自転攪拌速度は1350rpmであった。
【0039】
上記低粘度エポキシ樹脂混合母液を遠心機に移し、遠心速度が70000rpmであり、遠心時間が10分間である高速遠心を行って、上層がナノ銀粒子とエポキシ樹脂の均一に分散した混合液であり、下層が遠心されたミクロン二酸化チタン粒子であるものを得た。
【0040】
上記上層混合液を取り出して、ナノ銀粒子とエポキシ樹脂が均一に分散した樹脂組成物を得た。
【0041】
実施例5
平均粒子径が約20nmのナノシリカ粒子と平均粒子径が約3μmのミクロン二酸化ジルコニウム粒子を液状エポキシ樹脂と共にプラネタリーミキサーに入れ、ブレンド均質攪拌を行って、粒子が分散したエポキシ樹脂混合母液を得、ナノシリカ粒子は1重量%であり、ミクロン二酸化ジルコニウム粒子は20重量%であった。ブレンド均質攪拌の攪拌時間は1時間、攪拌温度は120℃、真空度は約0.5Torr、公転攪拌速度は1200rpm、自転攪拌速度は1080rpmであった。
【0042】
上記低粘度エポキシ樹脂混合母液を遠心機に移し、遠心速度が80000rpmであり、遠心時間が10分間である高速遠心を行って、上層がナノシリカ粒子とエポキシ樹脂の均一に分散した混合液であり、下層が遠心されたミクロン二酸化ジルコニウム粒子であるものを得た。
【0043】
上記上層混合液を取り出して、ナノシリカ粒子とエポキシ樹脂が均一に分散した樹脂組成物を得た。
【0044】
実施例6
平均粒子径が約20nmのナノシリカ粒子と平均粒子径が約3μmのミクロン二酸化ジルコニウム粒子を液状エポキシ樹脂と共にプラネタリーミキサーに入れ、ブレンド均質攪拌を行って、粒子が分散したエポキシ樹脂混合母液を得、ナノシリカ粒子は8重量%であり、ミクロン二酸化ジルコニウム粒子は20重量%であった。ブレンド均質攪拌の攪拌時間は1時間、攪拌温度は120℃、真空度は約0.5Torr、公転攪拌速度は1200rpm、自転攪拌速度は1080rpmであった。
【0045】
上記低粘度エポキシ樹脂混合母液を遠心機に移し、遠心速度が80000rpmであり、遠心時間が10分間である高速遠心を行って、上層がナノシリカ粒子とエポキシ樹脂の均一に分散した混合液であり、下層が遠心されたミクロン二酸化ジルコニウム粒子であるものを得た。
【0046】
上記上層混合液を取り出して、ナノシリカ粒子とエポキシ樹脂が均一に分散した樹脂組成物を得た。
【0047】
実施例7
平均粒子径が約130nmのナノシリカ粒子と平均粒子径が約100μmのミクロンガラスビーズ粒子を液状エポキシ樹脂と共にプラネタリーミキサーに入れ、ブレンド均質攪拌を行って、粒子が分散したエポキシ樹脂混合母液を得、ナノシリカ粒子は0.5重量%であり、ミクロンガラスビーズ粒子は5重量%である。ブレンド均質攪拌の攪拌時間は1時間、攪拌温度は120℃、真空度は約0.5Torr、公転攪拌速度は1200rpm、自転攪拌速度は1080rpmであった。
【0048】
上記低粘度エポキシ樹脂混合母液を遠心機に移し、遠心速度が80000rpmであり、遠心時間が10分間である高速遠心を行って、上層がナノシリカ粒子とエポキシ樹脂の均一に分散した混合液であり、下層が遠心されたミクロンガラスビーズ粒子であるものを得た。
【0049】
上記上層混合液を取り出して、ナノシリカ粒子とエポキシ樹脂が均一に分散した樹脂組成物を得た。
【0050】
比較例1
平均粒子径が約20nmのナノシリカ粒子を液状エポキシ樹脂と共にプラネタリーミキサーに入れ、ブレンド均質攪拌を行って、粒子が分散したエポキシ樹脂混合母液を得、ナノシリカ粒子は4重量%であり、ブレンド均質攪拌の攪拌時間は1時間、攪拌温度は120℃、真空度は約0.5Torr、攪拌速度は1200rpmであった。
【0051】
粒子が分散した上記低粘度エポキシ樹脂混合母液を遠心機に移し、遠心速度が80000rpmであり、遠心時間が10分間である高速遠心を行った。
【0052】
上記遠心されたナノシリカ粒子とエポキシ樹脂との混合液を取り出した。
【0053】
比較例2
平均粒子径が約75nmのナノ銀粒子を液状エポキシ樹脂と共にプラネタリーミキサーに入れ、ブレンド均質攪拌を行って、粒子が分散したエポキシ樹脂混合母液を得、ナノ銀粒子は3重量%であり、ブレンド均質攪拌の攪拌時間は1時間、攪拌温度は120℃、真空度は約0.5Torr、攪拌速度は1500rpmであった。
【0054】
粒子が分散した上記低粘度エポキシ樹脂混合母液を遠心機に移し、遠心速度が70000rpmであり、遠心時間が10分間である高速遠心を行った。
【0055】
上記遠心されたナノ銀粒子とエポキシ樹脂との混合液を取り出した。
【0056】
比較例3
平均粒子径が約130nmのナノシリカ粒子を液状エポキシ樹脂と共にプラネタリーミキサーに入れ、ブレンド均質攪拌を行って、粒子が分散したエポキシ樹脂混合母液を得、ナノシリカ粒子は0.5重量%であり、ブレンド均質攪拌の攪拌時間は1時間、攪拌温度は120℃、真空度は約0.5Torr、攪拌速度は1200rpmであった。
【0057】
粒子が分散した上記低粘度エポキシ樹脂混合母液を遠心機に移し、遠心速度が80000rpmであり、遠心時間が10分間である高速遠心を行った。
【0058】
上記遠心されたナノシリカ粒子とエポキシ樹脂との混合液を取り出した。
【0059】
比較例4
液状エポキシ樹脂をプラネタリーミキサーに入れて攪拌した後、遠心機に移し、攪拌時間が1時間、攪拌温度が120℃、真空度が約0.5Torr、攪拌速度が1200rpm、遠心速度が70000rpm、遠心時間が10分間である高速遠心を行った。
【0060】
下記の実施例において、実施例1~7及び比較例1~3で使用したエポキシ樹脂のエポキシ当量を計算し、これと同当量のエーテルアミン硬化剤を混合して金型に流し込んだ。その後、金型をオーブンに移して60℃まで昇温して硬化させ、樹脂ナノ複合材板を製造した。その後、樹脂ナノ複合材板をCNCによって樹脂ナノ複合材標準試験片に切断し、曲げ強度、曲げ係数、分散率等を含む各性能試験を行った。試験結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0061】
表1での曲げ強度は、規格ASTM D790に準拠して試験を行い、3点曲げ治具により規格に準拠して作製した試験片を押し曲げ、その最大降伏応力を強度(MPa)とした。強度測定機器はドイツZwickRoell社の万能材料試験機であった。
【0062】
曲げ係数は、規格ASTM D790に準拠して試験を行い、3点曲げ治具により規格に準拠して作製した試験片を押し曲げ、その弾性限界内の応力と歪みを選択して計算(MPa)を行った。係数測定機器はドイツZwickRoell社の万能材料試験機であった。
【0063】
分散率は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察し且つソフトウェアでナノフィラー凝集サイズを標定するものであった。映像観察機器は、日本のHitachi FE-SEMであった。
【0064】
表1を参照する。実施例1で製造した樹脂ナノ複合材は、比較例4で製造した樹脂材料に対して、曲げ強度が10.3%向上し、曲げ係数が17.6%向上した。実施例2で製造した樹脂ナノ複合材は、比較例4で製造した樹脂材料に対して、曲げ強度が8.9%向上し、曲げ係数が13.9%向上した。実施例3で製造した樹脂ナノ複合材は、比較例4で製造した樹脂材料に対して、曲げ強度が11.8%向上し、曲げ係数が18.5%向上した。実施例4で製造した樹脂ナノ複合材は、比較例4で製造した樹脂材料に対して、曲げ強度が9.3%向上し、曲げ係数が14.3%向上した。実施例5で製造した樹脂ナノ複合材は、比較例4で製造した樹脂材料に対して、曲げ強度が7.6%向上し、曲げ係数が5.2%向上した。実施例6で製造した樹脂ナノ複合材は、比較例4で製造した樹脂材料に対して、曲げ強度が5.8%向上し、曲げ係数が17.1%向上した。実施例7で製造した樹脂ナノ複合材は、比較例4で製造した樹脂材料に対して、曲げ強度が7.5%向上し、曲げ係数が4.5%向上した。
【0065】
実施例1で製造した樹脂ナノ複合材は、比較例1で製造した樹脂ナノ複合材に対して、曲げ強度が9.3%向上し、曲げ係数が4.9%向上した。実施例2で製造した樹脂ナノ複合材は、比較例2で製造した樹脂ナノ複合材に対して、曲げ強度が6.6%向上し、曲げ係数が3.9%向上した。
【0066】
また、表1によれば、実施例1~7で製造された樹脂ナノ複合材の凝集体サイズは、比較例1~3で製造された樹脂ナノ複合材の凝集体サイズに比べて大幅に小さいことが分かる。
【0067】
上記説明したように、本発明の実施形態によれば、樹脂組成物の製造方法が提供される。この方法は、ナノ粒子フィラーを樹脂に効率よく均一に分散させ、硬化後に形成された複合材料における、分散していないナノ粒子フィラーが複合材料の内部に存在することによる応力集中欠陥を低減する。従って、樹脂組成物及び複合材料の機械的性能及び安定性を向上させることができる。
【0068】
以上、本発明を実施形態で開示したが、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、様々な変更及び修正を行うことができ、従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定義されたものを基準とすべきである。
【符号の説明】
【0069】
100 方法
110、120、130 工程
図1