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特許7558239溶融紡糸糸を巻き取るための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】溶融紡糸糸を巻き取るための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B65H63/00 Z
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022194913
(22)【出願日】2022-12-06
(65)【公開番号】P2023084690
(43)【公開日】2023-06-19
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】10 2021 006 020.2
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティム チヴィエカラ
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-141119(JP,A)
【文献】特開昭63-291833(JP,A)
【文献】特表2014-524994(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0092946(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03345850(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 55/00-55/04
B65H 61/00-63/08
D01D 1/00-13/02
D01F 1/00-6/96
D01F 9/00-9/04
G02B 6/02-6/10
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィラメントまたはモノフィラメントから成る溶融紡糸糸を巻き取るための装置(10)であって、
パッケージ(14)を形成するように少なくとも1本の紡糸糸を巻き取ることができる巻取りスピンドル(12)を有し、
前記巻取りスピンドル(12)に配置されたパッケージ(14)の外周(18)の温度を測定するための少なくとも1つの測定装置(16)を有し、
前記測定装置(16)による温度測定値を評価するための評価装置(20)を有し、
前記評価装置(20)は、少なくとも1つの評価された温度測定値に基づいて、パッケージ(14)において巻成された糸部分の不均一な質量分布を検出するように特定されている、
装置(10)。
【請求項2】
前記測定装置(16)は、紡糸糸が巻き取られている間、回転するパッケージ(14)および/またはパッケージ(14)の前記外周(18)の温度を測定するように特定されていることを特徴とする、請求項1記載の装置(10)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの測定装置(16)は、温度を非接触式にかつ/または赤外線カメラとしてかつ/または高温計として測定するように構成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の装置(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの測定装置(16)は、特に前記巻取りスピンドル(12)の長手方向(17)に沿って、かつ/または前記巻取りスピンドル(12)に配置された複数のパッケージ(14)に沿って、かつ/または前記巻取りスピンドル(12)に配置された少なくとも1つの前記パッケージ(14)の幅に沿って移動可能かつ/または変位可能に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の装置(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの測定装置(16)は、前記巻取りスピンドル(12)に配置されたパッケージ(14)の前記外周(18)の温度を反射装置(24)、特にミラーによって測定するように特定されており、前記反射装置(24)は、好ましくは、特に、前記巻取りスピンドル(12)の長手方向(17)に沿って、かつ/または前記巻取りスピンドル(12)に配置された複数のパッケージ(14)に沿って、かつ/または前記巻取りスピンドル(12)に配置された少なくとも1つのパッケージ(14)の幅に沿って移動可能かつ/または変位可能に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の装置(10)。
【請求項6】
複数の測定装置(16)が、特に、前記巻取りスピンドル(12)の長手方向(17)に沿って、かつ/または前記巻取りスピンドル(12)に配置された複数のパッケージ(14)に沿って、かつ/または前記巻取りスピンドル(12)に配置された少なくとも1つの前記パッケージ(14)の幅に沿って設けられていることを特徴とする、請求項1記載の装置(10)。
【請求項7】
前記巻取りスピンドル(12)に配置されたパッケージ(14)の外周端部分(26)の温度を測定するための少なくとも1つの前記測定装置(16)が、恒久的かつ/または固定的に位置決めされていることを特徴とする、請求項1記載の装置(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの測定装置(16)および/または複数の測定装置(16)は、前記巻取りスピンドル(12)に配置されたパッケージ(14)のパッケージ幅に沿った温度分布を検出するように特定されていることを特徴とする、請求項1記載の装置(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの測定装置(16)は、パッケージ(14)の前記外周(18)の温度を連続的に検出するように、かつ/または周期的に繰り返して、特に20秒未満、好ましくは10秒未満もしくは5秒未満の時間間隔で検出するように特定されていることを特徴とする、請求項1記載の装置(10)。
【請求項10】
前記評価装置(20)は、温度値および/または温度分布の検出されたノミナル値/実測値の分散に基づいて、巻成される各々の前記パッケージ(14)の品質または巻成された各々の前記パッケージ(14)の品質を識別するための警告信号、および/または現在かつ/または将来の巻取り手順の少なくとも1つのパッケージパラメータおよび/または巻成パラメータおよび/またはトラバースパラメータを適合させるための制御信号および/または情報信号を発するように特定されていることを特徴とする、請求項1記載の装置(10)。
【請求項11】
複数のフィラメントから成る溶融紡糸糸を巻き取るための方法であって、
少なくとも1本の紡糸糸を、巻取りスピンドル(12)にパッケージ(14)を形成するように巻き取り、
前記巻取りスピンドル(12)に配置された前記パッケージ(14)の外周(18)の温度の測定を実施し、
定装置(16)の測定した温度を評価し、
少なくとも1つの評価された温度測定値に基づいて、巻成された糸部分の不均一な質量分布を検出する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフィラメントから成る溶融紡糸糸を巻き取るための装置に関する。本発明は、また、溶融紡糸糸を巻き取るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成糸の製造では、溶融したポリマーが紡糸ポンプによって高圧下で紡糸口金に供給され、細いフィラメントストランドを形成するように押し出される。押し出され冷却された後、フィラメントストランドはまとめられて糸を形成する。こうして製造された複数の糸は、いわゆるテイクアップ巻取り機で並列に巻き取られてパッケージを形成する。
【0003】
巻取りのためのこのようなテイクアップ巻取り機は、チャックを有する、いわゆる巻取りスピンドルと、巻取りスピンドルの周に配置された巻取り管を収容して固定するためのクランプ装置を有するクランプジャケットとを有している。巻取りスピンドルには、巻き取られる糸1本につき1つの巻取り管を配置することができる。巻取りスピンドルは、スピンドル支持体に、突出するように一方で取り付けて配置することができ、その結果、巻取りスピンドルの周上に巻成されたパッケージは、完了時に巻取りスピンドルの自由端部から取外し可能になる。パッケージの取外しは、ドッフィングとも呼ばれる。
【0004】
パッケージを巻成するとき、各々の糸は、通常、接触圧ローラによって、それぞれ巻取り管の周上またはすでに部分的に巻成されたパッケージの周上に堆積する。パッケージ内の糸の質量分布が均一であるため、接触圧ローラによる支承作用にも均一性が存在している。しかしながら、パッケージの端部分で糸が反転するため、パッケージの端部分に糸溜まりが生じることがある。さらに、糸層が摺動することで、巻成されたパッケージ内の質量分布にむらが生じる可能性がある。その結果として、各々の巻成されたパッケージの下流側の処理が損なわれる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の背景から、本発明の目的は、それぞれ改善された品質のパッケージまたは巻成されたパッケージを形成するように溶融紡糸糸の巻取りを保証する、溶融紡糸糸を巻き取るための装置を規定することであった。目的は、また、品質の点で改善された信頼性を有する、溶融紡糸糸を巻き取るための方法を規定することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
装置の点では、この目的は、請求項1の主題によって達成される。本発明による方法は、請求項12に記載されている。有利な設計の実施形態は、従属請求項の主題であり、以下に説明される。
【0007】
複数のフィラメントから成る溶融紡糸糸を巻き取るための本発明による装置は、パッケージを形成するように少なくとも1本の紡糸糸を巻き取ることができる巻取りスピンドルと、巻取りスピンドルに配置されたパッケージの外周の温度を測定するための少なくとも1つの測定装置と、測定装置による温度測定値を評価するための評価装置とを有している。本発明によれば、評価装置は、少なくとも1つの評価された温度測定値に基づいて、パッケージにおいて巻成された糸部分の不均一な質量分布を検出するように特定されていることが提供される。
【0008】
溶融紡糸糸を巻き取るための本発明による装置は、有利には、巻取り精度を向上させ、ひいては巻成されたパッケージの全体的な品質を向上させることを可能にする。各々のパッケージ内で糸の質量分布が均一である場合、パッケージの周面上でも、均一な温度分布またはノミナル温度が確立される。その理由は、特に、質量分布が均一な場合、巻取り時に使用される接触圧ローラの均一な支承作用も確立されるからである。
【0009】
良好に巻成されたパッケージは、巻成されたパッケージの外周に沿って、巻取りの反転点でそれぞれほぼ同一の大きさの温度の山と温度の谷とを有しており、パッケージの幅に温度軸を表示したグラフでは、温度の山と温度の谷とが互いに対称になっている。
【0010】
しかしながら、糸の巻取りの際にいわゆる糸溜まりが生じ、ひいては質量分布にむらが生じるほど、これにより、パッケージの周面の温度分布が不均一になるか、またはパッケージの周面のノミナル温度からばらつく、つまり分散することがある。このように、パッケージの糸溜まりのある領域は、接触圧ローラの接触圧がより強くなるため、隣接する領域よりも強く加熱されることがある。その結果、糸溜まりを、巻取りスピンドルに配置されたパッケージの外周の温度の測定と、各々の測定値の評価とにより、好適に検出することができる。温度分布では、これは、グラフにおける異なる大きさの温度の山と温度の谷とにより確認することができる。
【0011】
このような検出に基づいて、例えば、品質の差異の観点での各々のパッケージの分類、進行中の各々の巻取りプロセスの適合、および後続の巻取りプロセスの適合など、適切な措置をそれぞれ開始することができる。
【0012】
有利な設計の一実施形態によれば、測定装置は、紡糸糸が巻き取られている間、回転するパッケージおよび/またはパッケージの外周の温度を測定するように規定することができる。巻取り中の温度の測定は、糸溜まりの検出、ひいては質量分布のむらの検出をより高い精度で保証する。こうして、特に、巻成されたパッケージの不均一な層がパッケージの均一な層によって目立たなくなってしまい、パッケージの不均一な層の検出が妨げられることを回避することができるかまたは完全に回避することができる。
【0013】
さらに好ましくは、少なくとも1つの測定装置は、温度を非接触式にかつ/または赤外線カメラとしてかつ/または高温計として測定するように構成することができる。その結果として、巻取りプロセスの阻害を完全に回避することができるか、または軽微な程度に制限することができる。非接触式な温度の測定は、特に、巻き取られる糸が測定装置に巻き込まれる危険なく行うことができる。
【0014】
有利な設計の一実施形態によれば、少なくとも1つの測定装置は、特に巻取りスピンドルの長手方向に沿って、かつ/または巻取りスピンドルに配置された複数のパッケージに沿って、かつ/または巻取りスピンドルに配置された少なくとも1つのパッケージの幅に沿って移動可能かつ/または変位可能に配置することができる。測定装置がそのように配置される結果として、温度測定は、複数の測定点で前記測定装置によって実施されてよく、その結果、質量分布における潜在的なむらに関連するより高い情報密度が、1つのパッケージまたは複数のパッケージに関して生成されてよい。同時に、移動可能または変位可能な測定装置によって、測定装置の数を少なく抑えることができ、その結果として、紡糸糸を巻き取るための装置の製造コストを削減することができる。
【0015】
さらに有利な設計の実施形態によれば、少なくとも1つの測定装置は、巻取りスピンドルに配置されたパッケージの外周の温度を反射装置、特にミラーによって測定するように規定することができる。ここでの反射装置は、好ましくは、特に、巻取りスピンドルの長手方向に沿って、かつ/または巻取りスピンドルに配置された複数のパッケージに沿って、かつ/または巻取りスピンドルに配置された少なくとも1つのパッケージの幅に沿って移動可能かつ/または変位可能に配置することができる。偏向装置が設けられている結果、測定装置の配置の点でより大きな柔軟性が存在する。特に、測定装置は、各々の測定点に向けて直接的に配向させる必要がなく、そのような配向は、よりコンパクトかつ/またはより軽量な反射装置によって実現することができる。
【0016】
さらに、反射装置の移動可能な配置または変位可能な配置はまた、1つのみの測定装置を使用して複数の測定点で温度測定を実施できることを保証し、その結果、質量分布の潜在的なむらに関連するより高い情報密度が、1つのパッケージまたは複数のパッケージに関して生成されてよい。反射装置、特にミラーの移動可能性または変位可能性は、さらに、構造の点で小さな複雑性のみによって、ひいては低い製造コストで実現することができる。
【0017】
さらに有利な設計の実施形態によれば、複数の測定装置は、特に、巻取りスピンドルの長手方向に沿って、かつ/または巻取りスピンドルに配置された複数のパッケージに沿って、かつ/または巻取りスピンドルに配置された少なくとも1つのパッケージの幅に沿って設けることができる。複数の測定装置は、複数の測定点での温度の同時測定を可能にする。こうして、1つのパッケージまたは複数のパッケージに関して、質量分布の潜在的なむらに関連するさらに改善された情報密度が生成されてよい。
【0018】
さらに有利な設計の一実施形態によれば、巻取りスピンドルに配置されたパッケージの外周端部分の温度を検出するための少なくとも1つの測定装置が、恒久的かつ/または固定的に位置決めされていてよい。糸が反転するので、パッケージの各々の端部には、特定の程度まで糸溜まりが生じることがある。したがって、パッケージの外周端部分の温度を測定するための少なくとも1つの測定装置の恒久的かつ/または固定的な位置決めは、結果として、パッケージの領域で質量分布のむらの検出精度または検出の信頼性をそれぞれ向上させることができる。
【0019】
さらに好ましくは、評価装置は、評価された温度測定値に基づいて、巻成された糸部分の糸溜まり、特にパッケージ端部での糸溜まりの結果としての、かつ/または移動した糸層による糸溜まりの結果としての不均一な質量分布を検出するように特定されてよい。結果として、検出精度、ひいては巻成されたパッケージの品質もまたさらに向上させることができる。
【0020】
さらに好ましくは、少なくとも1つの測定装置および/または複数の測定装置は、巻取りスピンドルに配置されたパッケージのパッケージ幅に沿った温度分布を検出するように規定することができる。パッケージ内の、特に糸の巻取り中のパッケージ内の温度の分散は、結果として特に有利に検出され、評価ユニットによって評価することができる。パッケージ内の著しい温度の分散により、糸溜まりおよび質量分布のむらに関連する結論を評価の小さな複雑性のみで得ることができる。特に、このような評価は、温度データのノミナル値/実測値の比較がなくても、あるいは経験的に決定された温度データに頼らなくても、それぞれ実施可能である。
【0021】
さらに、少なくとも1つの測定装置は、パッケージの外周の温度を連続的に検出するように、かつ/または周期的に繰り返して、特に20秒未満、好ましくは10秒未満もしくは5秒未満の時間間隔で、検出するように特定されていることが有利であり得る。温度検出は、同様に、100秒未満、好ましくは50秒未満、または30秒未満の時間間隔で実施することができる。温度の連続的な検出は、監視の点で高い精度を保証する。これに対して、温度測定値の評価のための計算の点での複雑性は、周期的に繰り返される温度検出の結果として低く抑えることができる。さらに、周期的に繰り返される温度検出は、異なる時点の異なる測定点で温度測定を実施するより少ない数の測定装置を使用して実施することができる。ここで、間隔を短くすると、糸溜まりが検出されないリスクを確実に低減することができる。
【0022】
さらに好ましくは、少なくとも1つの測定装置および/または複数の測定装置は、巻取りスピンドルに配置された複数のまたは全てのパッケージの外周面の温度を検出するように規定することができる。同様に、少なくとも1つの測定装置および/または複数の測定装置は、巻取りスピンドルに配置された幾つかのパッケージの外周面の温度を検出するように規定することができる。その結果、異なるパッケージ同士の間の温度比較を行うことが可能となる。さらに、こうして、同時に巻成されるより多くのパッケージの品質を監視することができ、こうして、品質の点での全体的な結果の向上または品質の点での信頼性の向上をそれぞれ実現することができる。
【0023】
更なる好ましい設計の一実施形態によれば、評価装置は、測定装置の一部として構成することができるか、または測定装置から分離させることができ、かつ/または評価装置および測定装置は、検出システムの一部として構成することができるか、または協働して検出システムを形成することができる。このような検出システムは、インテリジェントセンサおよび/またはニューラルセンサであってよい。このような検出システムは、特に、検出機能の点での連続的な改善を可能にするために、人工知能のためのモジュールを備えることができる。
【0024】
更なる好ましい設計の実施形態によれば、評価ユニットは、巻取りスピンドル制御ユニットによって形成することができる。結果として、設備の点での複雑性を低減することができる。巻取りスピンドル制御ユニットは、巻取りスピンドルの動作を制御するように構成することができ、例えば、巻取りスピンドルの回転および/または回転の加速および/または回転の減速および/または回転の制動を制御するために構成することができる。
【0025】
評価ユニットは、好ましくは、巻取りスピンドル制御ユニットのモジュールとして構成することができる。こうして、巻取りスピンドル制御ユニットと独立して設けられる評価ユニットを回避することができる。さらに、こうして、評価ユニットを装置全体の制御ユニットに特に簡単に統合することが可能になる。
【0026】
有利な設計の一実施形態によれば、溶融紡糸糸を巻き取るための装置は、トラバースユニットを有するように構成することが可能である。このようなトラバースユニットは、規定の巻取り行程によってパッケージに巻き取られる糸を巻き取るように、またはパッケージの規定の位置に各々の糸部分を堆積させ、パッケージの端部に糸部分を好適に案内するように規定することができる。例えば、このようなトラバースユニットは、バイロータ装置として構成することができる。
【0027】
更なる好ましい設計の実施形態によれば、評価ユニットは、トラバース制御ユニットによって形成することができる。トラバース制御ユニットは、トラバースユニットのための制御ユニットであってよい。トラバース制御ユニットが評価ユニットとして構成される結果、同じく設備の点での複雑性を低減することができる。評価ユニットは、特に、トラバース制御ユニットのモジュールとして構成することができる。結果として、トラバース制御ユニットと独立して設けられる評価ユニットを回避することができる。このような設計の実施形態はまた、評価ユニットを装置全体の制御ユニットに簡単に統合することを可能にする。
【0028】
巻取りスピンドル制御ユニットおよびトラバース制御ユニットは、さらに好ましくは、制御ユニット全体によって形成することができ、その結果として、設備の点での複雑性をさらに低減することができる。
【0029】
更なる好ましい設計の実施形態によれば、評価ユニットは、温度データのノミナル値/実測値の比較を実施するように規定することができる。ここでのノミナル温度データは、先行する巻取りプロセスの平均値から、好ましくは予め設定されており、かつ/または予め設定されており、かつ/または適合させられていてよい。例えば、ノミナル温度データは、所定の数の先行する巻取りプロセスの温度データの平均値、例えば、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、または少なくとも30回の先行する巻取りプロセスの温度データの平均値であってよい。
【0030】
ノミナル温度データは、また、巻取りスピンドルに配置され、かつ進行中の巻取りプロセスに供される所定の数の更なるパッケージの温度データの平均値、例えば、少なくとも3個、少なくとも5個、少なくとも10個、または少なくとも15個の更なるパッケージの温度データの平均値であってよい。
【0031】
この種類のノミナル値/実測値の比較は、低い複雑性のみで確立することができ、同時に十分な信頼性のある評価結果を保証することができる。ノミナル温度データを予め設定することは、特に簡単に実施することができる。ノミナル温度データの任意の適合、特に連続的な任意の適合により、進行中に評価の精度を向上させ、巻成されたパッケージの品質保証を連続的に向上させることができる。
【0032】
更なる好ましい設計の実施形態では、評価ユニットは、温度値および/または温度分布の検出されたノミナル値/実測値の分散に基づいて、巻成される各々のパッケージの品質または巻成された各々のパッケージの品質を識別するための警告信号を発するように規定することができる。例えば、検出されたノミナル値/実測値の分散の関数として、特定の品質等級に対応する信号を発することができる。各々のパッケージは、その後、各々の品質等級に対応する方法でデータに基づいてラベル付けされ、かつ/または電子的に識別され、かつ/または識別されてよい。品質等級は、その後、パッケージの下流の処理のために考慮することができる。
【0033】
更なる好ましい設計の実施形態では、評価ユニットは、温度値および/または温度分布の検出されたノミナル値/実測値の分散に基づいて、少なくとも1つのパッケージパラメータおよび/または巻成パラメータを適合させるための制御信号および/または情報信号を発するように規定することができる。ここで、これは、進行中および/または将来の巻取り手順のためのパッケージパラメータおよび/または巻成パラメータであってよい。
【0034】
例えば、評価ユニットは、温度値および/または温度分布の検出されたノミナル値/実測値の分散に基づいて、巻取りスピンドルによる将来の巻取りプロセスまたは巻取り行程の各々のための機械的かつ/または技術的なプロセス設定を適合させるための制御信号および/または情報信号を発するように規定することができる。この種類の制御信号および/または情報信号は、巻取りスピンドルの将来の巻取りプロセスもしくは巻取り行程のための設定を自動的もしくは自己作動的に適合させるための信号、および/またはその設定を適合させるための、オペレータに対する信号もしくは自動的に生成される勧告であってよい。
【0035】
また、評価ユニットは、温度値および/または温度分布の検出されたノミナル値/実測値の分散に基づいて、巻取りスピンドルの動作中、進行中の巻取りプロセスまたは進行中の巻取り行程のための機械的かつ/または技術的なプロセス設定を適合させるための制御信号および/または情報信号を発するように規定することができる。この種類の制御信号および/または情報信号は、巻取りスピンドルの動作中、進行中の巻取りプロセスもしくは進行中の巻取り行程のための設定を自動的もしくは自己作動的に適合させるための信号、および/またはその設定を適合させるための、オペレータに対する信号もしくは自動的に生成される勧告であってよい。
【0036】
進行中もしくは将来の巻取りプロセスまたは進行中もしくは将来の巻取り行程のための設定は、それぞれ、例えばバイロータ設定であってよい。これは、顕著な温度分布を繰り返して測定するかまたは恒久的に測定する場合に特に有利であり得る。
【0037】
付加的または代替的に、進行中もしくは将来の巻取りプロセスまたは進行中もしくは将来の巻取り行程のための設定は、それぞれ、各々のパッケージ上に堆積されて巻き取られる糸のための堆積角の設定であってよい。これは、摺動する糸層が繰り返して検出されるかもしくは恒久的に検出される場合または温度測定値および対応する評価値によって摺動する糸層を示す結論が得られる場合に特に有利であり得る。
【0038】
本発明の更なる態様は、複数のフィラメントから成る溶融紡糸糸を巻き取るための方法であって、少なくとも1本の紡糸糸が、巻取りスピンドルにパッケージを形成するように巻き取られ、巻取りスピンドルに配置されたパッケージの外周の温度の測定が実施され、測定装置の測定した温度が評価され、少なくとも1つの評価された温度測定値に基づいて、巻成された糸部分の不均一な質量分布が検知される、方法に関する。
【0039】
このような方法は、特に有利には、溶融紡糸糸を巻き取るための上述した装置を使用して実施することができる。溶融紡糸糸を巻き取るための本発明による方法は、巻取り精度を向上させ、こうして、巻成されたパッケージの品質を全体的に高めることを有利に可能にする。
【0040】
各々のパッケージ内の糸の質量分布が均一な場合、パッケージの周面の温度またはノミナル温度もそれぞれ均一になる。なぜならば、巻取りに使用される接触圧ローラの均一な支承作用もまた確立されるからである。糸を巻き取るための方法では、いわゆる糸溜まりひいては質量分布におけるむらが生じると、パッケージの周面の温度分布が不均一になるかまたはノミナル温度から逸脱することがある。また、接触圧ローラの支承圧により、糸溜まりを有するパッケージの領域が、隣接する領域より強く加熱されることがある。巻取りスピンドルに配置されたパッケージの外周面の温度を測定し、各々の測定値を評価することにより、糸溜まりの検出が有利に可能になる。
【0041】
溶融紡糸糸を巻き取るための装置に関連して上述した好ましい設計の実施形態は、溶融紡糸糸を巻き取るための方法にも類似の態様で適用される。
【0042】
以下、本発明を添付の図を参照して例示的に説明するが、これらの図は、いずれの場合も概略的に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の第1の例示的な実施形態による溶融紡糸糸を巻き取るための装置の側面図である。
図2】本発明の第2の例示的な実施形態による溶融紡糸糸を巻き取るための装置の側面図である。
図3】本発明の第3の例示的な実施形態による溶融紡糸糸を巻き取るための装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明の第1の例示的な実施形態による溶融紡糸糸を巻き取るための装置10の概略的な側面図を示す。装置10は、特に、複数のフィラメントから成る溶融紡糸糸を巻き取るために構成されている。このような溶融紡糸糸は、合成紡糸糸であってよい。
【0045】
図1による装置10は、巻取りスピンドル12を有している。この巻取りスピンドル12によって、ここではより詳細に図示されていない少なくとも1本の紡糸糸を、パッケージ14を形成するように巻き取ることができる。図1では、複数のパッケージ14が巻取りスピンドル12に配置されている。装置10はさらに、巻取りスピンドル12に配置されたパッケージ14の外周18の温度を測定するための測定装置16を有している。測定装置16は、有利には、高温計および/または赤外線カメラであってよい。
【0046】
装置10は、最後に、測定装置16による温度測定値を評価するための評価装置20を有している。ここで、評価装置20は、少なくとも1つの評価された温度測定値に基づいて、パッケージ14における巻成された糸部分の不均一な質量分布を検出するように規定されている。
【0047】
図1による例示的な実施形態では、測定装置16は、特に巻取りスピンドル12の長手方向17に沿って、または巻取りスピンドル12に配置された複数のパッケージ14に沿って、かつ/または巻取りスピンドル12に配置された少なくとも1つのパッケージ14の幅に沿って、移動可能または変位可能に配置される。
【0048】
測定装置16の移動可能性または変位可能性は、支持レール22によって実現されており、例えば、測定装置16は、支持レール22上で変位可能である。支持レール22上で測定装置16を変位させるために、直線駆動装置が設けられてよい。支持レール22は、特に、巻取りスピンドル12の長手方向17に沿って延在してよい。
【0049】
巻取りスピンドル12に配置されたパッケージ14のパッケージの幅に沿った温度分布の検出は、測定装置16の移動可能性または変位可能性により、簡単に行うことができる。同様に、温度測定は、巻取りスピンドル12に配置された異なるパッケージ14または隣り合うパッケージ14に対して実施することができ、この温度測定は、評価ユニット20による評価において考慮される。例えば、異なるパッケージ14の温度データを互いに比較することができる。
【0050】
図2は、本発明の第2の例示的な実施形態による溶融紡糸糸を巻き取るための装置10の側面図を示す。図2の例示的な実施形態による装置10は、測定装置16の配置または配向の種類の点で、図1による例示的な実施形態と異なっている。したがって、図2による例示的な実施形態では、測定装置16は、巻取りスピンドル12に配置された少なくとも1つのパッケージ14の外周18の温度を反射装置24によって測定するように規定されている。
【0051】
その結果、図2による測定装置16は、反射装置24に向かって配向されており、巻取りスピンドル12に配置された少なくとも1つのパッケージ14の外周面18への反射が、前記反射装置24によって行われる。これにより、全体的にコンパクトな構成態様とすることが可能になる。反射装置24は、特に、ミラーであってよい。反射装置24は、好ましくは、特に巻取りスピンドル12の長手方向17に沿って、かつ/または巻取りスピンドル12に配置された複数のパッケージ14に沿って、かつ/または巻取りスピンドル12に配置された少なくとも1つのパッケージ14の幅に沿って、移動可能かつ/または変位可能に配置される。
【0052】
反射装置24の移動可能性または変位可能性は支持レール22によって実現されており、例えば、反射装置24は支持レール22上で変位可能である。支持レール22上で反射装置24を変位させるために、直線駆動装置が設けられてよい。支持レール22は、特に、巻取りスピンドル12の長手方向17に沿って延在してよい。
【0053】
巻取りスピンドル12に配置されたパッケージ14のパッケージの幅に沿った温度分布の検出は、反射装置24の移動可能性または変位可能性により、簡単に行うことができる。同様に、温度測定は、巻取りスピンドル12に配置された異なるパッケージ14または隣り合うパッケージ14に対して実施することができ、この温度測定は、評価ユニット20による評価において考慮されてよい。例えば、異なるパッケージ14の温度データを互いに比較することができる。
【0054】
図3は、本発明の第3の例示的な実施形態による溶融紡糸糸を巻き取るための装置10の側面図を示す。図3の例示的な実施形態による装置10は、測定装置16の数および測定装置16の配置または配向の点で、図1または図2による例示的な実施形態とそれぞれ異なっている。したがって、図3による例示的な実施形態では、複数の測定装置16が設けられる。ここで、測定装置16は、特に巻取りスピンドル12の長手方向17に沿って、かつ/または巻取りスピンドル12に配置された複数のパッケージ14に沿って、かつ/または巻取りスピンドル12に配置された少なくとも1つのパッケージ14の幅に沿って、配置される。
【0055】
図3によれば、測定装置16は、巻取りスピンドルに対して固定的に配置されているか、または固定されている。測定装置16は、少なくとも巻取りスピンドル12の長手方向17に沿って移動することができないように配置されてよい。複数の測定装置16のうちの少なくとも1つは、巻取りスピンドル12に配置されたパッケージ14の外周端部分26の温度を検出するために、恒久的かつ/または固定的に位置決めされてよい。好ましくは、複数または全ての測定装置16が、巻取りスピンドル12に配置されたパッケージ14の外周端部分26の温度を検出するために、恒久的かつ/または固定的に位置決めされる。巻取り中に糸が反転することによって外周端部分26に糸溜まりが生じやすくなるので、外周端部分26の温度の監視は、品質保証のために有利である。
【0056】
図1図3による例示的な実施形態では、評価装置20は、いずれの場合も、1つの測定装置16または複数の測定装置16から分離されるように構成される。したがって、評価装置20は、別個の構成要素を形成することができる。しかしながら、評価装置20が各々の測定装置16の一部として構成されること、および/または各々の測定装置16が専用の評価装置20を有することも、同様に可能である。さらに、各々の評価装置20および測定装置16が検出システムの一部として構成される可能性、または検出システムを形成する可能性が存在する。最後に、評価装置20はまた、より詳細に図示されていないパッケージ制御ユニットおよび/またはトラバース制御ユニットによって形成することができる。
【0057】
図1図3に示す例示的な実施形態による装置10は、複数のフィラメントから成る溶融紡糸糸を巻き取るための方法を実施するのに適している。このような方法では、少なくとも1本の紡糸糸が、巻取りスピンドル12上にパッケージ14を形成するように巻き取られ、巻取りスピンドルに配置されたパッケージ14の外周18の温度の測定が実施され、測定装置の測定した温度が評価される。最後に、このような方法では、少なくとも1つの評価された温度測定値に基づいて、巻成された糸部分の不均一な質量分布を検出することができる。
【0058】
温度値および/または温度分布の、検出されたノミナル値/実測値の分散に基づいて、各々の評価ユニット20は、巻成される各々のパッケージ14の品質もしくは巻成された各々のパッケージ14の品質を識別するための警告信号、および/または進行中および/または将来の巻取り手順の少なくとも1つのパッケージパラメータおよび/または巻成パラメータおよび/またはトラバースパラメータを適合させるための、制御信号および/または情報信号を発することができる。
【0059】
こうして、進行中の巻成作業における各々のパッケージ14の品質に好適に影響を及ぼすことができ、または質量分布にむらを有するパッケージ14は、品質のレベルが低下していることを識別することができる。不均一な質量分布の検出に基づいて、連続的な品質の改善もしくは品質の確実性を保証するために、同様に、将来の巻取り手順のための設定および/または仕様をそれぞれ実装することができる。
図1
図2
図3