(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】好中球の亜集団の検出および報告
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20240920BHJP
G01N 15/14 20240101ALI20240920BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240920BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/48 Z
G01N15/14 C
C12Q1/04
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2022506920
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 US2020044841
(87)【国際公開番号】W WO2021026123
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-25
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510005889
【氏名又は名称】ベックマン コールター, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Beckman Coulter, Inc.
【住所又は居所原語表記】250 S. Kraemer Boulevard, Brea, CA 92821, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ラミレス, カルロス
(72)【発明者】
【氏名】フォーチュン, アナ
(72)【発明者】
【氏名】アハメド, ベンタハー
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-034342(JP,A)
【文献】特表2014-515103(JP,A)
【文献】欧州特許第02694960(EP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0168653(US,A1)
【文献】特開平05-099919(JP,A)
【文献】特開2010-237147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 15/14
C12M 1/34
C12Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幼若顆粒球(EGC)鑑別を実施し、かつEGC鑑別の結果を提供するための方法であって、
a)
白血球の顆粒度、核の小葉度および細胞表面構造を分析することを含む、第1の体液試料中の
前記白血球を分析する第1の試験を実施すること
であって、前記第1の試験が、試験順序に従って実行される、ことと、
b)顆粒度、核の小葉度および細胞表面構造からなる群のうちの少なくとも1つに基づいて、前記第1の体液試料中の他の細胞型からEGCを鑑別することと、
c)前記第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースを生成することであって、
i)前記試験順序によって指定されたパラメータを生成すること;
ii)ノンスパラメータであって、
A)前記試験順序によって指定された前記パラメータにコンテキストを提供する、および
B)前記試験順序によって指定されない、
ノンスパラメータを生成することと、
を含み、前記インターフェースは、
i)
好中球の標識され
た数と、
ii)
EGCの標識され
た数と、
を含む前記第1の試験の1または複数の結果を報告することと、
を含む、方法。
【請求項2】
a)前記方法が、
i)第2の体液試料中の白血球を分析する第2の試験を実施することと、
ii)前記第2の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースを生成することであって、前記第2の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースは、
A)
好中球の標識され
た数と、
B)
EGCの標識され
た数と、
を含むことと、
を
さらに含み、
b)前記第1の試験は第1のモードで実行され、前記第2の試験は第2のモードで実行され、
c)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースおよび前記第2の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースは、それらのそれぞれの好中球およびEGC
の数に対して一貫した標識を使用する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の試験が第1の分析器を使用して実行され、前記第2の試験が第2の分析器を使用して実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の試験が5分類鑑別であり、前記第2の試験が6分類鑑別である、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
a)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースからの前記
好中球の標識され
た数が、好中球の複数の亜集団に対する数を含み、
b)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースが、好中球の前記複数の亜集団の各亜集団に対する標識された数を含み、
c)好中球の前記複数の亜集団は、
i)EGCと、
ii)成熟好中球と、
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
a)成熟好中球の前記亜集団は、複数の亜・亜集団を含み、
b)前記複数の亜・亜集団は、桿状核球、脱顆粒球および加齢好中球を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
好中球の前記複数の亜集団からの各亜集団に対する前記標識された数が、
i)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェース内の前記
好中球の標識され
た数に近接して表示され、
ii)前記
好中球の標識され
た数に対して、第1の水準で字下げされている、
請求項5~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
亜・亜集団を含む各亜集団について、
a)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースは、前記亜・亜集団の各々について標識された数を提供し、
b)前記亜・亜集団の各々は、前記
好中球の標識され
た数に対して、第2の水準で字下げされている、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースが、前記
好中球の標識され
た数を好中球の前記亜集団についての前記標識された数に関連付ける標識を含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
a)第3の体液試料中の白血球を分析する第3の試験を実施することと、
b)1または複数の信頼性基準を、
i)前記第3の試験において決定された好中球数、
ii)前記好中球数によって含まれる少なくとも1つの好中球亜集団数、
に対して適用することと、
c)i)前記好中球数によって含まれる少なくとも1つの好中球亜集団数が前記1または複数の信頼性基準の少なくとも1つを満たさないことを決定することと、
ii)前記第3の試験に対応する順序が好中球亜集団の数を必要としないことを決定することと、
iii)前記好中球数が前記好中球数に対して適用されるすべての信頼性基準を満たすことを決定することと、
を含む、一連の決定を実施することと、
d)前記一連の決定に基づいて、前記好中球数を含むが好中球亜集団に対する数を含まない報告を提供することと、
を含む、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の試験に対応する前記順序が好中球亜集団の数を必要としないことを決定することが、群の少なくとも1つから前記第3の試験に対応する前記順序を取り出すことを含み、前記群が、
a)検査室情報システム(LIS)と、
b)ヘルスケア情報システム(HIS)と、
c)電子医療記録システム(EMR)と、
からなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
a)前記試験順序によって指定された前記パラメータがEGC
の数であり、
b)前記ノンスパラメータが、成熟好中球
の数である、
請求項
1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~1
2のいずれか一項に記載の方法を実行するための命令が保存されたコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
請求項1~1
2のいずれか一項に記載の方法を実行するためにコンピュータ可読媒体に保存された命令とともに構成された1または複数の分析器を備えるシステム。
【請求項15】
a)前記1または複数の分析器が、
i)前記第1の体液試料をフローセル中に流し込むように適合された溶液ディスペンサと、
ii)前記フローセルに対して実質的に横方向に配置された1または複数のエネルギー源および関連するセンサと、
iii)前記1または複数のエネルギー源に関連する前記センサからの信号パルスを処理するように適合された信号プロセッサと、
を備え、
b)前記1または複数のエネルギー源に関連する前記センサは、低角度光散乱(LALS)測定値を含む光測定値に少なくとも部分的に基づいて前記信号パルスを生成するように適合されている、
請求項1
4に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許第9,658,215号および米国特許第10,222,320号の主題に関連し、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本出願は、2019年8月6日に米国特許庁に出願された「Detecting and Reporting Subpopulations of Neutrophils」と題する仮特許出願第62/883,578号に関連し、かつその利益を主張し、その出願はその全体が参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
粒子分析器は、生体細胞試料を分析して、試料中に含まれる1または複数の種類の細胞の数および/または分布を決定するために使用される。粒子分析器には、血液分析器およびフローサイトメーターが含まれる。血液分析器およびフローサイトメーターは、細胞が1または複数のセンサによって監視される小さな開口部または測定領域を通過するときに生成される信号を収集および分析することによって、様々な種類の血液細胞を測定および鑑別する。例えば、血液の試料は、1または複数のエネルギー源および関連するセンサが通過する細胞の様々な物理的特性に対応する信号を検出するように構成されている測定領域を流れる。測定領域内の単一の細胞の測定値に対応する1または複数の信号は、細胞事象と呼ばれる。次いで、細胞試料の複数の細胞に対する細胞事象データを分析して、細胞の物理的特性に基づいて鑑別された集団を決定する。
【0003】
体積、導電率および光散乱などの物理的特性の測定値が、細胞を分類するために使用される。例えば、Beckman CoulterのVolume,Conductivity and Scatter(VCS)技術は、幾つかある用途の中でも特に、白血球をサブグループまたは集団に分類するために使用される。これらの物理的測定は、類似の物理的特性を共有する細胞がクラスターにグループ化する多次元空間を形成する。各クラスターは、特定の種類の血液細胞の集団に対応する。
【0004】
白血球(WBC、ロイコサイトとも呼ばれる)の計数は、様々な形態の感染症などの病的症状を検出するための重要なツールである。5分類WBC鑑別(5-part WBC Differential)は、長きにわたって、血液学的症状の検出において非常に有益な試験であった。5分類鑑別は、末梢血中に通常見られる5つの主要なWBCのサブタイプ、すなわち好中球、リンパ球、単球、好酸球および好塩基球を検出および計数する。しかしながら、成熟過程の中間段階には他の種類のWBCが存在し得る。成熟過程の中間段階にあるこれらのWBCには、血液学的障害の指標でもある芽細胞、異型リンパ細胞(variant lymph cell)および幼若顆粒球(EGC(Early Granulated Cell))が含まれる。EGCという用語は、主に前骨髄球、骨髄球、および後骨髄球から構成される未成熟骨髄細胞のサブセットを指す。芽細胞および桿状核球(band cell)などの成熟の中間段階にある他の細胞は、一般に、EGC集団には含まれない。
【0005】
末梢血中のEGCの上昇した存在は、増強した骨髄活性化を示し得る。例えば、EGCの数は、細菌感染の重症型である敗血症を示すことができる。一般に、循環EGCの増加は細菌感染中に起こる。EGCの存在は、感染または重度の炎症性疾患による増加した骨髄細胞産生を示す。EGCは、白血病、骨髄異形成症候群および骨髄線維症の患者にも見られ得る。したがって、患者の血液試料中のEGCの迅速かつ正確な計数は、急性感染症、敗血症およびその他の症状のタイムリーな処置のために非常に望ましいことがあり得る。細胞の亜集団を同定および計数することによって日常的な5分類WBC鑑別試験を強化することにより、診断能力を高め得る。
【0006】
従来の分析方法では、EGCの存在は、二次元ヒストグラムまたはスキャッタグラムにおける細胞事象集団の形状の変化を伴う。1または複数の細胞集団の形状に基づいて、従来の粒子分析器は、未成熟または非定型細胞の存在についてエンドユーザに警告することができるが、細胞のこれらの亜集団を定量化することができないことがあり得る。
【0007】
EGC計数は、従来、手作業による血液スメア分析によって行われている。この過程は労働集約的であり、計数される細胞の数が少ないことおよびヒトの主観などの様々な要因に起因して極めて誤りを起こしやすい。
【0008】
EGC計数の別の従来の方法は、蛍光に基づく。WBCは、各細胞のRNAおよびDNAを染色するポリメチン色素で染色される。次いで、EGCは、EGC中のRNAおよびDNAの含有量がより多いために、より高い蛍光に基づいて成熟顆粒球とは別に同定することができる。しかしながら、蛍光ベースの技術は高価であることがあり得、比較的低コストの分析器には適していないことがあり得る。さらに、標識試薬の管理は、分析器の操作の複雑さを増大させ、蛍光標識の組成によっては、オペレータまたは環境安全上の懸念を引き起こし得る。したがって、非蛍光性の方法および機器によってEGCを決定できることが必要とされている。
【0009】
さらに、DCのみに基づいて未成熟顆粒球を測定する別の方法が開示されている。しかしながら、好中球亜集団、未成熟顆粒球亜集団および桿状核球の体積が重複する場合には、この測定の精度が損なわれる可能性がある。
【0010】
別の、より最近の方法は、幼若顆粒球細胞を同定および計数するために光散乱測定を使用する。
【0011】
EGC計数のさらに別の従来の方法は、例えばCD16抗体などの1または複数の抗体を使用するフローサイトメトリー分析を含む。この方法を使用して、EGC細胞でのCD16染色の欠如に基づいてEGCを同定することができる。しかしながら、この方法は、異なる細胞型を順次ゲートするために複数の抗体の使用を伴う。したがって、EGCを同定するために抗体を使用するフローサイトメトリー法は、法外な費用がかかることがあり、1または複数の抗体の使用による細胞の物理的特性の変化を引き起こす可能性がある。
【0012】
血液試料中のEGCを同定および計数し、EGCを白血球の他の亜集団から区別し、および/またはEGCを好中球の他の亜集団から区別するための効率的な方法およびシステムが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
簡単な要旨
いくつかの態様において、本開示は、血液試料などの生物学的検体中のEGCを検出および/または計数するための方法に関する。いくつかの態様において、本開示は、EGCおよび他の白血球亜集団を計数することに関する。いくつかの態様において、本開示は、EGCおよび他の好中球亜集団を計数することに関する。他の好中球亜集団は、成熟好中球(「mNE」)および/または桿状核好中球(「桿状核球」)を含み得る。いくつかの態様において、本開示は、異なる亜集団に対して報告された尺度間の関係性を明確にすることを意図した様式で、白血球および/または好中球亜集団を報告するための方法に関する。
【0014】
第1の態様によれば、いくつかの実施形態は、幼若顆粒球(EGC)鑑別を実施し、その結果を提供するための方法を提供し得る。いくつかの実施形態において、このような方法は、第1の体液試料中の白血球を分析する第1の試験を実施することを含み得る。このような方法は、顆粒度(granularity)、核の小葉度(nuclear lobularity)および細胞表面構造からなる群のうちの少なくとも1つに基づいて、第1の体液試料中の他の細胞型からEGCを鑑別することも含み得る。このような方法は、第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースを生成することも含み得る。いくつかの実施形態において、このようなインターフェースは、標識された好中球数および標識されたEGC数を含み得る。
【0015】
第2の態様によれば、第1の態様の文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、前記方法は、第2の体液試料中の白血球を分析する第2の試験を実施することを含み得る。いくつかのこのような実施形態において、前記方法は、第2の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースを生成することも含み得る。いくつかのこのような実施形態において、第2の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースは、標識された好中球数および標識されたEGC数を含み得る。いくつかのこのような実施形態において、第1の試験は第1のモードで実行され得、第2の試験は第2のモードで実行され得る。いくつかのこのような実施形態において、第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースおよび第2の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースは、それらのそれぞれの好中球数およびEGC数について一貫した(consistent)標識を使用し得る。
【0016】
第3の態様によれば、第2の態様の文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、第1の試験は第1の分析器を使用して実行され得、第2の試験は第2の分析器を使用して実行され得る。
【0017】
第4の態様によれば、第2または第3の態様のいずれかの文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、第1の試験は5分類鑑別であり得、第2の試験は6分類鑑別であり得る。
【0018】
第5の態様によれば、第1~第4の態様のいずれかの文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースからの標識された好中球数は、好中球の複数の亜集団に対する数を含み得る。いくつかのこのような実施形態において、第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースは、好中球の複数の亜集団の各亜集団に対する標識された数を含み得る。いくつかのこのような実施形態において、好中球の複数の亜集団は、EGCおよび成熟好中球を含み得る。
【0019】
第6の態様によれば、第5の態様の文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、成熟好中球の亜集団は複数の亜・亜集団を含み得る。いくつかのこのような実施形態において、複数の亜・亜集団は、桿状核球、脱顆粒球(degranulated cell)および加齢好中球(aged neutrophil)を含み得る。
【0020】
第7の態様によれば、第5または第6の態様のいずれかの文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、好中球の複数の亜集団からの各亜集団に対する標識された数は、第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェース内の標識された好中球数に近接して表示され得、標識された好中球数に対して第1の水準で字下げされ得る。
【0021】
第8の態様によれば、第5~第7の態様のいずれかの文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、亜・亜集団を含む各亜集団について、第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースは、亜・亜集団の各々に対する標識された数を提供し得、亜・亜集団の各々は、標識された好中球数に対して第2の水準で字下げされ得る。
【0022】
第9の態様によれば、第5~第8の態様のいずれかの文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースは、標識された好中球数を好中球の亜集団に対する標識された数に関連付ける標識を含み得る。
【0023】
第10の態様によれば、第5~第9の態様のいずれかの文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、前記方法は、第3の体液試料中の白血球を分析する第3の試験を実行することを含み得る。いくつかのこのような実施形態において、前記方法は、第3の試験において決定された好中球数、および好中球数によって含まれる少なくとも1つの好中球亜集団数に1または複数の信頼性基準(reliability criteria)を適用することをさらに含み得る。いくつかのこのような実施形態において、前記方法は、i)好中球数によって含まれる少なくとも1つの好中球亜集団数が1または複数の信頼性基準の少なくとも1つを満たさないことを決定することと、ii)第3の試験に対応する順序が好中球亜集団の数を必要としないことを決定することと、iii)好中球数が好中球数に対して適用されるすべての信頼性基準を満たすことを決定することとを含む一連の決定を実行することをさらに含み得る。いくつかのこのような実施形態において、前記方法は、一連の決定に基づいて、好中球数を含むが好中球亜集団に対する数を含まない報告を提供することをさらに含み得る。
【0024】
第11の態様によれば、第10の態様の文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、
第3の試験に対応する順序が好中球亜集団の数を必要としないことを決定することが、検査室情報システム(LIS)と、ヘルスケア情報システム(HIS)と、電子医療記録(EMR)とからなる群の少なくとも1つから第3の試験に対応する順序を取り出すこと(retrieving)を含み得る。
【0025】
第12の態様によれば、第1~第11の態様のいずれかの文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、第1の試験は試験順序に従って実行され得る。いくつかのこのような実施形態において、第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースを生成することは、試験順序によって指定されるパラメータを生成することを含み得る。いくつかのこのような実施形態において、第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースを生成することは、試験順序によって指定されたパラメータにコンテキストを提供し、試験順序によって指定されないノンスパラメータを生成することも含み得る。
【0026】
第13の態様によれば、第12の態様の文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、試験順序によって指定されたパラメータはEGC数であり得、ノンスパラメータは成熟好中球数であり得る。
【0027】
第14の態様によれば、いくつかの実施形態は、第1~第13の態様のいずれかの文脈で記載された方法を実行するための命令が保存されたコンピュータ可読媒体を提供し得る。
【0028】
第15の態様によれば、いくつかの実施形態は、第1~第13の態様のいずれかの文脈で記載された方法を実行するための命令とともに構成された1または複数の分析器を備えるシステムを提供し得る。
【0029】
第16の態様によれば、第15の態様の文脈で記載されたようないくつかの実施形態において、1または複数の分析器は、第1の体液試料をフローセル中に流し込むように適合された溶液ディスペンサと、フローセルに対して実質的に横方向に配置された1または複数のエネルギー源および関連するセンサと、1または複数のエネルギー源に関連するセンサからの信号パルスを処理するように適合された信号プロセッサと、を備え得る。いくつかのこのような実施形態において、1または複数のエネルギー源に関連するセンサは、低角度光散乱(LALS)測定値を含む光測定値に少なくとも部分的に基づいて信号パルスを生成するように適合させ得る。
【0030】
特定の態様では、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
幼若顆粒球(EGC)鑑別を実施し、かつEGC鑑別の結果を提供するための方法であって、
a)第1の体液試料中の白血球を分析する第1の試験を実施することと、
b)顆粒度、核の小葉度および細胞表面構造からなる群のうちの少なくとも1つに基づいて、前記第1の体液試料中の他の細胞型からEGCを鑑別することと、
c)前記第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースを生成することであって、前記インターフェースは、
i)標識された好中球数と、
ii)標識されたEGC数と、
を含む前記第1の試験の1または複数の結果を報告することと、
を含む、方法。
(項目2)
a)前記方法が、
i)第2の体液試料中の白血球を分析する第2の試験を実施することと、
ii)前記第2の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースを生成することであって、前記第2の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースは、
A)標識された好中球数と、
B)標識されたEGC数と、
を含むことと、
を含み、
b)前記第1の試験は第1のモードで実行され、前記第2の試験は第2のモードで実行され、
c)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースおよび前記第2の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースは、それらのそれぞれの好中球およびEGC数に対して一貫した標識を使用する、
項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1の試験が第1の分析器を使用して実行され、前記第2の試験が第2の分析器を使用して実行される、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記第1の試験が5分類鑑別であり、前記第2の試験が6分類鑑別である、項目2~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
a)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースからの前記標識された好中球数が、好中球の複数の亜集団に対する数を含み、
b)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースが、好中球の前記複数の亜集団の各亜集団に対する標識された数を含み、
c)好中球の前記複数の亜集団は、
i)EGCと、
ii)成熟好中球と、
を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
a)成熟好中球の前記亜集団は、複数の亜・亜集団を含み、
b)前記複数の亜・亜集団は、桿状核球、脱顆粒球および加齢好中球を含む、
項目5に記載の方法。
(項目7)
好中球の前記複数の亜集団からの各亜集団に対する前記標識された数が、
i)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェース内の前記標識された好中球数に近接して表示され、
ii)前記標識された好中球数に対して、第1の水準で字下げされている、
項目5~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
亜・亜集団を含む各亜集団について、
a)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースは、前記亜・亜集団の各々について標識された数を提供し、
b)前記亜・亜集団の各々は、前記標識された好中球数に対して、第2の水準で字下げされている、項目5~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースが、前記標識された好中球数を好中球の前記亜集団についての前記標識された数に関連付ける標識を含む、項目5~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
a)第3の体液試料中の白血球を分析する第3の試験を実施することと、
b)1または複数の信頼性基準を、
i)前記第3の試験において決定された好中球数、
ii)前記好中球数によって含まれる少なくとも1つの好中球亜集団数、
に対して適用することと、
c)i)前記好中球数によって含まれる少なくとも1つの好中球亜集団数が前記1または複数の信頼性基準の少なくとも1つを満たさないことを決定することと、
ii)前記第3の試験に対応する順序が好中球亜集団の数を必要としないことを決定することと、
iii)前記好中球数が前記好中球数に対して適用されるすべての信頼性基準を満たすことを決定することと、
を含む、一連の決定を実施することと、
d)前記一連の決定に基づいて、前記好中球数を含むが好中球亜集団に対する数を含まない報告を提供することと、
を含む、項目5~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記第3の試験に対応する前記順序が好中球亜集団の数を必要としないことを決定することが、群の少なくとも1つから前記第3の試験に対応する前記順序を取り出すことを含み、前記群が、
a)検査室情報システム(LIS)と、
b)ヘルスケア情報システム(HIS)と、
c)電子医療記録システム(EMR)と、
からなる、項目10に記載の方法。
(項目12)
a)前記第1の試験が、試験順序に従って実行され、
b)前記第1の試験の1または複数の結果を報告する前記インターフェースを生成することは、
i)前記試験順序によって指定されたパラメータを生成することと、
ii)ノンスパラメータであって、
A)前記試験順序によって指定された前記パラメータにコンテキストを提供し、および
B)前記試験順序によって指定されない、
ノンスパラメータを生成することと、
を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
a)前記試験順序によって指定された前記パラメータがEGC数であり、
b)前記ノンスパラメータが、成熟好中球数である、
項目12に記載の方法。
(項目14)
項目1~13のいずれか一項に記載の方法を実行するための命令が保存されたコンピュータ可読媒体。
(項目15)
項目1~13のいずれか一項に記載の方法を実行するためにコンピュータ可読媒体に保存された命令とともに構成された1または複数の分析器を備えるシステム。
(項目16)
a)前記1または複数の分析器が、
i)前記第1の体液試料をフローセル中に流し込むように適合された溶液ディスペンサと、
ii)前記フローセルに対して実質的に横方向に配置された1または複数のエネルギー源および関連するセンサと、
iii)前記1または複数のエネルギー源に関連する前記センサからの信号パルスを処理するように適合された信号プロセッサと、
を備え、
b)前記1または複数のエネルギー源に関連する前記センサは、低角度光散乱(LALS)測定値を含む光測定値に少なくとも部分的に基づいて前記信号パルスを生成するように適合されている、
項目15に記載のシステム。
本開示の他の態様は、以下の図面および詳細な説明に記載されているか、または以下の図面および詳細な説明から当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図面の簡単な説明
本開示のさらなる特徴および利点、ならびにその様々な態様の構造および動作は、添付の図面を参照して以下で詳細に記載されている。本開示は、本明細書に記載されている特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。そのような実施形態は、例示のみを目的として本明細書に提示されている。さらなる実施形態は、本明細書に含有される教示に基づいて、当業者には明らかであろう。
【0032】
【
図1】
図1は、本開示の態様による例示的なシステムである。
【0033】
【
図2】
図2Aおよび2Bは、体積および光散乱に基づくWBC鑑別分析の例示的なスキャッタグラムを示す。
図2Aは、正常な試料を示す。
図2Bは、EGCを有する試料を示す。
【0034】
【
図3】
図3Aおよび3Bは、好中球とEGC集団の重複を示す。
図3Aは、体積および回転された中角度の光散乱に基づく例示的なスキャッタグラムを示す。
図3Bは、体積および導電率に基づく例示的なスキャッタグラムを示す。
【0035】
【
図4】
図4A、4Bおよび4Cは、本開示の態様にしたがって、EGC集団を検出するためにLALSを使用することを示す。
図4Aは、導電率およびLALSによる例示的なスキャッタグラムを示す。
図4Bは、導電率およびLALSを含む導出された測定による例示的なスキャッタグラムを示す。
図4Cfは、LALSを含む第1の導出された測定と不透明度(OP)を含む第2の導出された測定による例示的なスキャッタグラムを示す。
【0036】
【
図5】
図5は、DC v MALSスキャッタグラムにおける例示的な細胞集団を示す。
【0037】
【
図6】
図6は、本開示の態様による導出された測定によるスキャッタグラムにおける
図5の同一の細胞試料を示す。
【0038】
【
図7】
図7は、本開示の態様による、EGCを検出および計数する例示的な方法を示す。
【0039】
【
図8】
図8は、本開示の態様によるEGCの集団を同定する例示的な方法を示す。
【0040】
【
図9】
図9は、本開示の態様による例示的な細胞事象分析器および例示的な対応するシステムを示す。
【0041】
【
図10】
図10は、本開示の態様による、細胞事象分析からの結果の例示的な表示を示す。
【0042】
【
図11】
図11は、本開示の態様による検査室分析を報告するための簡略化されたフローチャートである。
【0043】
【
図12】
図12は、幼若顆粒球(EGC)鑑別を実施し、その結果を提供するための簡略化されたフローチャートである。
【0044】
【
図13】
図13は、信頼性基準を満たさない数を省略することによって、報告インターフェース中に含めるための情報を動的に決定するための簡略化されたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
説明
本開示の特徴および利点は、図面と併せて以下に記載される詳細な説明からより明らかになるであろう。図面において、同様の参照番号は、一般に、同一の、機能的に類似の、および/または構造的に類似の要素を示す。一般に、要素が最初に現れる図面は、対応する参照番号の最も左側の桁によって示される。
【0046】
上記のように、WBCは、しばしば5つの亜集団に分類される。典型的な亜集団は、好中球、リンパ球、単球、好塩基球および好酸球である。各亜集団は異なる形態学的特徴を有し、WBCの1または複数の亜集団の変化は、特定の医学的症状を診断または除外するのに役立ち得る。しかしながら、自動血液分析器でこれらの亜集団を効率的に区別することは困難であることが判明している。亜集団は異なる形態を有するが、多くの類似性も有する。これらの類似性は、5つの主要な亜集団の第2層(second-tier)亜集団を区別することを試みるときには、克服することがさらに困難である。例えば、5分類鑑別において、報告された好中球の数は、EGCと桿状核球を含み得る。いくつかの例では、EGCと他の好中球亜集団の間の区別は臨床的に重要であり得るので、これらの好中球亜集団を区別すること、ならびにこれらの好中球亜集団を自動的に区別するための公知の方法の効率および精度を改善することがなお必要とされている
【0047】
EGCを区別するための初期の試みも、一貫しない報告をすることによって問題を抱えている。異なる種類の分析器、または同じ分析器を使用する異なる分析モードでさえも、WBC亜集団を異なるように報告し得る。例えば、桿状核球またはEGCは、好中球数に含まれることがあり得、または好中球数から除外されることがあり得る。いくつかの例では、EGCは好中球数に含まれ、別々にも報告され得る。他の例では、EGCは好中球数から除外され、別々に報告されないことがあり得、または好中球数から除外され、別々に報告されることがあり得る。これは、報告された好中球数に何が含まれるかまたは報告された好中球数から何が除外されるか、およびどのような条件下であるかを記憶する責任を検査室職員(laboratory personnel)または臨床医に負わせる。異なる試験結果が多いこと、ならびに異なる分析モードおよび/または異なる分析器が使用される可能性があることを考えると、検査室職員または臨床医が異なる条件下で好中球報告を読み取る方法を知ることをこのように要求されることは、著しい非効率性であり、臨床的混乱の原因となり得る。さらに、好中球は、白血球の百分率として報告されることが多い。EGCが文脈なしに別々に報告される場合、報告された値が白血球と比較したEGCのパーセントであるか、または好中球と比較したEGCのパーセントであるかは不明であり得る。
【0048】
本明細書に開示される方法およびシステムは、粒子分析器によって生成された細胞事象データを分析することによって、細胞試料中のEGCの同定および計数を可能にする。本開示は、本明細書が、一般に重複する好中球集団からEGCを分離するための特別なまたは高価な色素、染色剤または抗体を一切必要としないという点で、既存の技術より優れたアプローチを提供する。さらに、本明細書に記載の報告技術は、特に、異なる亜集団がそうでなければ異なるコンテキストで異なって提示され得るシステムにおいて、好中球亜集団の関係性を明確にし得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「パラメータ」および「測定」という用語は、一般に互換的に使用される。本開示のいくつかの態様において、レーザは、粒子、すなわち細胞から反射または屈折されたエネルギーの光線を放出し、そのエネルギー、または元の光線から特定の角度で反射もしくは屈折されたそのエネルギーの一部は、1または複数の検出器によってパラメータとして測定される。したがって、一般的に、エネルギーは測定されたパラメータであると考えられる。ある種のパラメータは直接測定されるのではなく、むしろ計算される。具体例として、不透明度(OP)およびRMALSは、不透明度パラメータについては測定されたDCおよびRFから、RMALSパラメータについてはMALSおよびDCから計算されたパラメータである。
【0050】
本開示のいくつかの態様において、血液試料中のEGC集団を自動的に検出および計数するために、低角度光散乱(LALS)測定が使用される。本開示のいくつかの態様によるEGCの計数は、粒子検出器内の試料の反復試験を必要としない。計数されたEGC情報は、白血球に対する5分類鑑別試験の一部として組み込むことができるか、または別々に提示することができる。
【0051】
本開示が実施され得る例示的な環境には、フローサイトメーターおよび血液分析器などの粒子分析器が含まれる。DxH(商標)800およびDxH(商標)900血液分析器は、粒子分析器の測定領域内の細胞を調べるために、例えば、専有のCoulter Volume,Conductivity,and Scatter(VCS)技術の変形を使用する。VCSは、細胞を調べるために、体積を測定するための低周波直流(DC)電源、導電率を測定するための高周波電源(OP)、および散乱を測定するための1または複数のレーザ光源という互いに協働する少なくとも3つの独立したエネルギー源を使用する。体積測定は、等張性希釈剤中で細胞全体が置き換える体積を物理的に測定するために電気インピーダンスのCoulter Principleを使用して実行される。この方法は、光路内での細胞型の向きとは関係なく、すべての細胞型をサイズによって正確に分ける。高周波(RF)領域の交流電流は、細胞の膜の双極性脂質層を短絡し、エネルギーが細胞に浸透することを可能にする。このエネルギー源は、化学組成および核体積を含む細胞サイズおよび内部構造に関する情報を収集するために使用される。1または複数のレーザエネルギー源および多角度光散乱センサまたは検出器は、細胞の内部構造、顆粒度および表面形態に関する情報を提供する。光散乱測定値は、例えば、軸から20~65度の範囲で測定された上方中角度光散乱(UMALS)、例えば、軸から10~20度の範囲で測定された下方中角度光散乱(LMALS)を含むことができる。UMALSとLMALSとの組み合わせは一般にMALSと呼ばれるが、UMALSとLMALSは、隣接する光検出器を使用する別個の光散乱測定値を構成する。
【0052】
さらに、VCS機器は、導電率および散乱から細胞サイズに対して調整された他の測定値を得るために、体積の高精度DC測定値を使用する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,616,501号(Rodriguezら)は、粒子分析器およびVCS技術の使用の詳細な説明を含む。市販のDxH(商標)血液分析器はすべてのVCS技術能力を有するが、細胞または細胞亜集団を同定および/または計数するために、独立して、またはサブコンビネーションで、または蛍光標識もしくは細胞イメージング(染色ありまたはなし)などの他の技術との組み合わせで、VCSの様々な態様が使用され得る。本開示における教示は、VCS技術またはその変形を使用する装置に限定されないことに留意されたい。
【0053】
光散乱測定値は、LALS測定値および/または軸方向光損失測定値(ALLまたはAL2)を含み得る。LALSは、例えば、軸から0~10度の範囲で測定される。ALLは、軸に沿った光損失として、例えば軸から0~1.0度で測定される。しかしながら、当業者は、UMALS、LMALS、LALSおよびALLに対応する例示的な光散乱角度が互いに相対的であり、粒子検出器の構成、粒子検出器および細胞試料と混合された試薬または他の材料の個々の特性などの要因によって変化し得ることを理解する。
【0054】
図1は、本開示の態様による粒子分析器100を示す。
図1は例示的なものであり、粒子分析器は、
図1に示すよりも多いまたは少ないモジュール、異なるモジュール、および異なる設計を含むことができる。図示されているように、粒子分析器100は、粒子検出器124および分析器122を含む。粒子検出器124は、粒子試料ディスペンサ102およびシース液ディスペンサ104を含む。試料ディスペンサ102は、所望の分析または試験の要件に従って調製された粒子試料を含む。例えば、血液の試料は、希釈剤で所定の細胞濃度の程度に希釈され得る。希釈剤の種類および希釈度は、実行されている試験によって異なる-試料中のWBCの数はRBCと比較して少ないので、白血球(WBC)分析は赤血球(RBC)より少ない希釈を必要とする。シース液ディスペンサ104は、例えば生理食塩水などのシース液を保持する。シース液(sheath fluid)は、粒子検出器内の粒子試料の円滑な流れを可能にする。粒子試料ディスペンサ102からの粒子試料およびシース液ディスペンサ104からのシース液は、所定の一定速度で注入される。溶液ディスペンサ106は、粒子試料およびシース液をフローセル108中に流し込む。フローセル108は、一般に、単一粒子が通過するように設計された小さな直径の管である。溶液ディスペンサ106内の溶液は、流体力学的集束(focusing)によって一定の速度でフローセル108中に注入される。流体力学的集束は、一般に粒子がフローセル108内で一定の間隔で一列で現れる、一定の速度および十分な圧力下で溶液を注入する。いくつかの粒子検出器は、フローセルなしで測定領域を有することができることに留意されたい。
【0055】
測定領域120を通って流れる粒子を検知するために1または複数の検知媒体が使用され得るように、粒子検出器124内に、検知装置110が配置される。エネルギー源112および関連するセンサ114は、フローセル108に対して実質的に横方向に(transversely)検知装置110内に配置される。エネルギー源112およびセンサ114は、測定領域120内の粒子を検出するために、1または複数の電気的または光学的検知媒体を使用する。例えば、測定領域120を通過する細胞の光散乱および光損失特性を測定するために、エネルギー源112および関連するセンサ114の組は、光測定を使用することができる。光散乱測定は、UMALS、LMALSおよびLALSを含むことができる。光損失は、軸方向光損失(ALLまたはAL2)、すなわち、軸に沿った、例えば軸から0~1.0度での光損失として測定される。エネルギー源112およびセンサ114の他の組は、細胞の体積(V)を測定するためにDC測定を、細胞の導電率(OP)特性を測定するためにRF測定を使用することができる。エネルギー源112およびセンサ114は、例えば、超音波が測定領域120内の細胞の様々な特性を検出するために使用される音響媒体などの他の媒体を含むこともできる。
【0056】
センサ114は信号プロセッサ118に結合されている。センサ114は、検出された電気的または光学的測定値を、信号プロセッサ118で処理される対応する電気信号パルスに変換する。測定領域120を通過する各粒子について、一連の測定値に対応する電気信号パルスが、例えば信号プロセッサ118に集められる。これらの電気信号パルスから、1つの粒子が測定領域を通って流れている間に1つの測定パラメータについて捕捉された測定値を示す信号が形成される。信号プロセッサ118への入力は、アナログ信号またはデジタル信号とすることができる。信号プロセッサ118における処理の前、間または後に、アナログ信号をデジタルに変換するために、1または複数のアナログデジタル変換器(ADC)を使用することができる。信号によってカバーされる継続時間は、粒子が測定領域に進入して粒子が測定領域から出る際に開始することができる。本明細書の実施形態では、信号プロセッサ118は、検出された粒子を記述する1または複数の測定パラメータを導出するために、各信号の追加の処理を実行し得る。
【0057】
測定領域120内の粒子の検出は、事象または細胞事象と呼ばれる。信号プロセッサ118は、測定領域120を通って流れる検出された各粒子に対応する導出された信号を分析して、対応する事象を決定する。次いで、検出された事象は分析器122に送信される。分析器122は、事象データを受信するために信号プロセッサ118に結合されている。分析器122は、粒子検出器に結合されたコンピュータ内に配置することができる。分析器122は、粒子検出器124を備える粒子分析器100に搭載されることができ、または通信インフラストラクチャを介して粒子分析器100に別個に結合されることができることに留意されたい。
【0058】
信号生成および事象検出は、各電気的または光学的アクティブ測定に対して別々に実行され得る。分析器122は、各アクティブ測定に対応する事象データを受信することができる。次いで、分析器122は、受信した事象データを分析して、1または複数の数、細胞集団または細胞もしくは細胞集団に対応する他の特性を決定することができる。本明細書の実施形態において、分析器122は、受信した事象の散布図、ヒストグラム、またはその他の図式および/もしくは文字での説明を表示させることができる。散布図、ヒストグラムおよび/またはその他の図式的表現は、多次元であり得る。1または複数の細胞数、細胞集団または細胞もしくは細胞集団の他の特徴を決定することは、個々の細胞事象信号(例えば、LALS)を分析すること、細胞事象信号の組み合わせ(例えば、LALSおよびMALSまたはLALS、MALSおよびOP)を分析すること、または他の計数もしくは特徴に基づいて計数もしくは特徴を計算することを含み得る。例えば、好中球がEGCおよびmNEとして下位分類されるに過ぎなければ(その場合、「mNE」は、桿状核球、脱顆粒好中球およびその他の種々雑多な細胞を潜在的に含み得る)、分析器は好中球およびEGCの数を計測し、好中球からEGCを引いたものとしてmNEを計算し得る。同様に、分析器(analyze)は、好中球およびmNEの数を計測し、好中球からmNEを差し引いたものとしてEGCを報告し得る、またはmNEおよびEGCの数を計測し、それらを加算して全好中球を報告し得る。好中球のさらなる亜集団または亜カテゴリーが細胞事象信号から得られる場合(例えば、桿状核球、脱顆粒好中球、その他の加齢好中球など)、同様の数学を用いて数を推測し得る。
【0059】
「感度」および「特異度」は、二元的分類試験の性能の統計的尺度である。感度は、正しく特定された実際の陽性の割合を測定する。特異度は、正しく特定された陰性の割合を測定する。100%の特異度は、試験がすべての実際の陰性を認識することを意味する。100%の感度は、試験がすべての実際の陽性を認識することを意味する。したがって、高特異度試験とは対照的に、高感度試験での陰性結果は疾患を除外するために使用される。高特異度試験での陽性結果は、疾患の存在を確認することができる。しかしながら、特異度のみでは、陽性症例を認識する試験の精度を十分に示すことはできない。感度を知ることも必要である。いずれの試験についても、通常、これらの測定値間には二律背反が存在する。例えば、ある症状を有する人々に対して試験している診断アッセイでは、その症状を有さないと正しく特定される健康な人々の割合を見逃すリスクを低減するために(高い感度)、その症状を有すると正しく特定される病気の人々のある割合を見過ごすように(低い特異度)アッセイが設定され得る。この二律背反は、受信者動作特性(ROC)曲線を使用してグラフで表すことができる。
【0060】
測定系の「精度(accuracy)」は、量の測定値がその実際の(真の)値に近い度合いである。
【0061】
いくつかの態様において、開示されているEGCを計数するための方法は、少なくとも約80%正確(accurate)であり、より具体的には少なくとも約85%正確である。好ましい実施形態において、開示されているEGCを計数するための方法は、少なくとも約90%正確である。
【0062】
いくつかの態様において、開示されているEGCを計数するための方法は、少なくとも約85%の感度、より具体的には少なくとも約90%の感度、さらにより具体的には少なくとも約95%の感度を有する。いくつかの態様において、開示されているEGCを計数するための方法は、少なくとも約80%の特異度、より具体的には少なくとも約85%の特異度を有する。好ましい態様において、開示されているEGCを計数するための方法は、少なくとも約90%の特異度を有する。
【0063】
EGCを同定および計数するためのLALSの使用
【0064】
EGCは、成熟好中球の前駆体である。EGCは、顆粒度、核の小葉度および/または細胞表面構造のそれらの特有の性質に基づいて、特に好中球を含む他の細胞型から鑑別することができる。これらの特有の性質は、EGC集団を同定するための基礎として、測定し、使用することができる。いくつかの態様において、細胞の顆粒度、核の小葉度および/または細胞表面構造の程度を区別するために、LALSを使用することができる。LALSパラメータは、成熟WBCと比較して、EGCの顆粒度、小葉度および/または表面の特徴の微妙な変化に極めて敏感である。しかしながら、LALSは、EGCの計数における特異度および感度のために、他のパラメータと組み合わせることができることも理解される。より具体的には、LALSを使用する非蛍光性の方法および機器、ならびに前方光散乱、側方散乱、軸方向光損失、DC、RFおよび不透明度の群からの少なくとも1つの測定値を使用して、EGCを測定することができる。さらに、前方散乱光は、UMALS、LMALS、MALSから選択される。もちろん、EGCを計数するために、蛍光法を単独でまたは他の方法と組み合わせて使用することができる。しかしながら、上記のように、非蛍光法は、コストおよび/または使いやすさの点である種の利点を提示し得る。
【0065】
図2aおよび2bは、正常血液試料(
図2a)およびEGCを含有する血液試料(
図2b)からのWBC鑑別スキャッタグラムを示す。集団202aおよび202bは、それぞれ正常試料およびEGCを含有する試料の好中球集団を表す。集団202bの形状は、集団202aの形状と比較すると、体積軸に沿って伸びている。集団201aおよび201bは単球を表し、集団203aおよび203bはリンパ球を表し、集団204は好酸球を表し、集団205は溶解していないRBCを表す。多くの従来の方法は、
図2bに示すものなど、好中球集団の形状の伸長に基づいてEGCの存在を同定する。米国特許第5,125,737号(Rodriguezら)の
図19および20は、例えば、DC対OPおよびDC対RMALSをそれぞれマッピングするスキャッタグラムにおいて、体積軸またはDC軸に沿った好中球集団の形状の伸長を示している。RMALSは、回転された中程度の角度の光散乱(rotated medium angle light scatter)であり、典型的には、log(UMALS+LMALS)/DCとして計算される。
【0066】
図3aおよび3bは、それぞれ、別の血液試料のDC対RMALSおよびDC対OPスキャッタグラムを示す。
図3aおよび3bに示されている血液試料は、62.25%の分葉核好中球(segmented neutrophil)、12.75%の桿状核球、3%の後骨髄球、および0.75%の骨髄球の手動での参照を含む。両スキャッタグラムにおいて、クラスター302および303に見られるように、EGC集団を好中球集団から別個に同定することはできない。したがって、好中球集団の形状の伸長は、血液試料中のEGCの存在に関する指標として使用することができるが、従来使用されているような、DC、RMALSおよびOPに基づくスキャッタグラムは、EGC集団を別個に同定しない、および/またはEGCを計数しない。
【0067】
図4aは、本明細書の一実施形態によるOP対LALSをマッピングするスキャッタグラムの例示である。クラスター402は、OP対LALSのスキャッタグラムで、
図3aおよび3bに示されている同じ細胞事象を示す。LALS軸に沿った集団402の形状の伸長は、EGCの存在についての試料のフラギング(flagging)を可能にする。
【0068】
本明細書のいくつかの実施形態は、EGC集団を同定するためにLALSを使用する。LALSをMALS、ALL、OPおよび/またはDCなどの他のパラメータと組み合わせてEGC集団を同定および計数するための実施形態が以下に記載されている。EGC集団を同定するために、LALSは、他のパラメータおよび/またはLALS導関数(derivative)を含む導出パラメータと組み合わせることができる。本開示における教示に基づいてEGCを同定および計数するために、パラメータまたは導出パラメータの様々な他の組み合わせに従ってLALSを使用することができることが理解される。前述のように、LALSパラメータはEGCの顆粒度、小葉度および/または細胞表面特徴を検出する1つの方法にすぎないので、本明細書は、EGCを同定および計数するためのLALSの使用のみに限定されない。これらの細胞特徴は、本発明者らがEGCの密接に重複する好中球集団からEGCを鑑別することを可能にしたものである。
【0069】
EGCを同定および計数するためのLALSとMALSの組み合わせ
【0070】
本明細書の別の実施形態によれば、EGCを同定および計数するために、MALSおよびDCおよびRFの1またはそれより多くとともにLALSを使用することができる。一実施形態によれば、LALSは、MALSおよびDCとともに使用される。さらなる実施形態において、EGC集団を好中球などの他の細胞集団からより明確に鑑別するために、OPを使用することができる。なおさらなる実施形態は、EGCを鑑別するために導出パラメータを構築する際にLALS、MALS、OPおよびDCを使用する。
【0071】
導関数は、密接に関連する集団の微妙な差異を増強するための公知の方法であることが理解される。微分関数および付随する変数または追加パラメータの選択は、十分に当業者の技能の水準の範疇にある。図中、OP、RLS、F1、F2、P1およびP2は導関数である。
【0072】
一実施形態において、EGCおよび好中球の特徴的な核の小葉度および表面構造特性に基づいてEGCを好中球から鑑別するために、LALSおよびDCを組み込む導出パラメータ。EGCは、好中球と比較してより低いLALSを有する。さらに、通常、EGCは好中球よりサイズが大きいという特徴に基づいてEGCと好中球の間の分離を増加させるために、DC測定は導出された測定において利用される。例えば、米国特許第5,125,737号の
図19は、EGCが好中球より大きな体積を有することを示す。
【0073】
さらなる実施形態において、導出された測定値は、好中球からのEGCの分離を増加させるためにOP(RFおよびDCの関数である)を組み込むことができる。EGCは、好中球と比較してより低いOPを有する。
【0074】
ある特定の実施形態において、導出パラメータは、MALSを組み込むこともできる。MALSは、中程度の角度の光散乱で微妙な構造的差異を検知することによって、EGCと好中球の間の分離を増加させるのに寄与する。しかしながら、
図3aに見られるように、MALS単独では、EGC集団と好中球集団の間の特徴的な分離を達成することができない。
【0075】
図4bおよび4cは、スキャッタグラムを作製するために導出パラメータが組み込まれたときの
図4aの細胞試料を示す。
図4bは、P1軸に沿った好中球集団402bの伸長を示す。
図4cは、その導出された測定値が導入されたときのP2軸に対する好中球集団402cの広がりを示す。
図4cに示されているように、例示的な実施形態を血液試料に適用した最終結果は、好中球とは別にEGCを明確に認識することができるスキャッタグラムを生成することができる。
図4cでは、EGC集団406は、好中球集団404および定義されていない集団408と十分に異なる。図示されているスキャッタグラムでは、EGC集団406はWBC集団の8.8%を占め、定義されていない集団408はWBC集団の7.8%を占める。EGC集団は、ほぼ完全に、後骨髄球、骨髄球および前骨髄球から構成されるようである。いくつかの例では、前骨髄球段階への移行中の骨髄芽細胞のわずかな割合がEGC集団中に含まれ得る。定義されていない集団は、脱顆粒好中球、加齢好中球および桿状核球から構成されるようである。
【0076】
開示された実施形態の導出パラメータに到達する際に、適切な係数値は、細胞試料の集団間の実質的に最適な分離をもたらす係数の組み合わせであり得ることが理解される。係数値の選択は、動的に計算することができる。例えば、一実施形態によれば、スキャッタグラム上にマッピングされた細胞集団間の分離に関して閾値の所定の組が満たされるまで、係数値を繰り返し再較正することができる。
【0077】
EGCを同定するためにLALSをALLと組み合わせる
【0078】
本明細書の別の実施形態では、LALSはALL測定と一緒に考慮することができる。細胞のALLの大きさは、その表面特性および吸光度特性を表す。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,008,792号は、NRBCを計数するための方法の一部としてALL測定の説明を提供している。
【0079】
本発明者らは、LALSおよびALLパラメータが、EGCおよび好中球に関して反対方向に移動することを観察した。したがって、本明細書の一実施形態によれば、LALSおよびALL、特にLALSとALLの間の差に基づく導出された測定値が生成される。LALSとALLの間の差を考慮することは、EGC集団と好中球集団の間の分離を増加させることに寄与する。
【0080】
本発明者らは、一般に、EGCが好中球と比較してより高いDCおよびより低いOPパラメータを示すことも観察した。したがって、本明細書の一実施形態によれば、OPとDCの差に基づく導出された測定値は、好中球集団からのEGC集団の分離を増加させると考えられる。
【0081】
EGCおよび好中球集団の最適化された位置に到達するために、最初の導出パラメータに対して追加の平行移動、回転および拡大縮小を実行することができる。
【0082】
中間の導出パラメータは、所望の表示領域を占めるようにさらに引き伸ばして拡大することができる。伸張および拡大縮小は、自動ゲーティングおよび計数をより正確に達成することができるように、集団間の分離を増加させることに寄与する。
【0083】
ヒストグラム、スキャッタグラムおよび/またはそれぞれの集団の自動化された計数が達成され得るようにEGC集団と好中球集団が十分に分離されるその他の図式的表示を生成するために、導出パラメータを使用することができる。
【0084】
図5は、従来のDC対MALSスキャッタグラム中にEGCを含む好中球集団502を示す。図示されているとおり、従来のDC対MALSスキャッタグラムは、好中球集団からEGC集団を十分に分離しない。
【0085】
図6は、本明細書の一実施形態にしたがって導出パラメータをプロットするスキャッタグラムにおいて、
図5に示されている同じ細胞試料を示す。
図6では、EGC集団604は好中球集団602から明確に分離されている。
【0086】
LALSを使用してEGCを同定および計数するための方法
【0087】
図7は、本開示の態様による、血液試料中のEGCを同定および計数するための方法700を示す。方法700は、
図1に示されているものなどの粒子検出器および分析器において実施することができる。
【0088】
工程702において、分析のために血液試料が調製される。例えば、一般性を失うことなく、血液分析では、白血球に対する5分類鑑別試験の前に赤血球を除去するために、全血試料を溶解することができる。調製工程は、測定領域を通る試料の流れを容易にするために、試料に希釈剤および必要に応じてシース液を添加することを含むこともできる。次いで、調製された粒子試料は、経路を通って一列で粒子を移動させるのに十分な圧力を確保するために、流体力学的集束などの過程を使用して、実質的に一定の速度で測定領域を含む経路中に注入される。
【0089】
工程704において、血液試料の細胞は、粒子分析器の測定領域において測定に供される。希釈剤中および必要に応じてシース液中の細胞は、測定領域を1つずつ通過する。細胞が測定領域内にある時間間隔の間、複数のエネルギー源およびセンサの1またはそれより多くは、細胞を照合に供し、それぞれの照合によって生成された信号を収集するように動作し得る。上述したように、本明細書の一実施形態によれば、複数のエネルギー源および対応するセンサは、LALS測定のための測定信号ならびにDC、OP、MALSおよびALLパラメータの1またはそれより多くを収集するように動作する。
【0090】
工程706において、収集された測定信号に対応する細胞事象データが生成される。例えば、細胞に対する細胞事象データは、その細胞が測定領域を通過した間隔の間のその細胞のすべてのパラメータを表すデータを含むことができる。細胞事象データを生成することは、様々なセンサにおいて検出された光信号、RF信号およびその他の信号に対する電気信号の生成を含むことができる。
【0091】
工程708において、細胞事象データは、例えば分析器構成要素によってアクセスされる。一実施形態によれば、工程708~716の処理の一部または全部は、細胞が粒子検出器内で測定されるときにリアルタイムまたはほぼリアルタイムで実行することができる。別の実施形態によれば、工程708~716の処理は、粒子検出器によって以前に生成された保存された測定データに対して実行することができる。
【0092】
工程710において、本明細書の一実施形態により、EGCの集団が細胞事象データから鑑別される。EGC集団の鑑別は、
図8に関連して以下でさらに説明される。
【0093】
工程712において、EGCの鑑別された集団を報告することができる。一実施形態によれば、報告は、1または複数のヒストグラム、スキャッタグラムまたはその他の図式および/もしくは文字形式の表示での1または複数の細胞集団の表示および/または印刷された出力を含む。別の実施形態によれば、報告は、その保存された情報が後の取り出しおよび分析のために利用可能であるように、様々な細胞集団データをコンピュータ可読保存媒体に書き込むことを含む。
【0094】
工程714において、EGCが計数される。好中球集団を含む残りの細胞集団からEGC集団を分離した後に、EGCを数えることができる。EGCの計数は、ある領域内に属する個々の細胞事象を数えること、ある領域内の細胞事象をゲーティングすること、および/またはある領域内の細胞事象を推定することに基づくことができる。
【0095】
工程716において、計数されたEGCが報告される。計数されたEGCは、絶対数としておよび/または総白血球数の百分率として報告することができる。計数されたEGCは、例えば好中球などの任意の他の細胞集団の百分率および/または割合として報告することもできる。鑑別されたEGC集団を報告する場合のように、報告は、表示、印刷された出力および/またはコンピュータ可読媒体への保存を含むことができる。コンピュータ可読媒体は非一時的であり得る。
【0096】
図8は、EGC集団を細胞試料の他の細胞集団から鑑別するための方法800を示す。
【0097】
工程802において、LALSを含む第1の導出測定値が作成される。一実施形態によれば、第1の導出パラメータは、LALS測定値およびDC測定値を含む。
【0098】
工程804において、OPを含む第2の導出測定値が作成される。一実施形態によれば、第2の導出パラメータは、OP測定値およびMALS測定値を含む。
【0099】
工程806において、細胞事象のクラスタリングが実行される。一実施形態によれば、第1の測定値を1つの軸として、第2の測定値を別の軸として有するスキャッタグラムが作成される。細胞集団のクラスタリングは、手動および/または自動で行うことができる。クラスタリングは、選択された細胞集団が少なくとも所定の閾値距離だけ隔てられるまで、係数および/または測定項を反復的に較正することを含むことができる。クラスタリング工程は、1または複数の細胞集団をゲーティングすることも含むことができる。
【0100】
工程808において、EGCの集団は、前の工程で実行されたクラスタリングに基づいて同定される。
図4cに示されるように、第1および第2の導出パラメータに基づいて、EGCのクラスターを好中球のクラスターから鑑別することができる。
【0101】
他の態様において、工程802および804において、第1および第2の導出パラメータを作成することができる。したがって、第1の導出測定値は、LALSパラメータおよびMALSパラメータを含むことができる。第2の導出パラメータは、DCおよびOPパラメータを含むことができる。この実施形態によれば、工程806におけるクラスタリングは、第一及び第二導出パラメータに基づく軸を有するスキャッタグラムを作成することを含むことができる。
【0102】
他の例
【0103】
未成熟顆粒球の同定および/または計数は、LALSおよび2またはそれを超えるパラメータに基づき得る。2またはそれを超える次元でのスキャッタグラム、ヒストグラムおよび/または他のグラフの種類を、EGC集団の鑑別および計数において使用することができる。例えば、一実施形態は、導出パラメータおよび別の物理的なまたは導出された測定値に基づく三次元表面画像の生成を含むことができ、EGC集団は、三次元表面内の対応する細胞事象の位置に基づいて同定および計数することができる。
【0104】
図9に示すように、システム900は、分析器122に結合された粒子検出器124を含む。分析器122は、ディスプレイ920および記憶装置921にも結合され得る。記憶装置921は、非一時的なおよび/または有形のコンピュータ可読媒体を含み得る。粒子検出器124は、1または複数の測定パラメータを使用して粒子事象を検出し、測定領域内でのその粒子の持続時間を表す各粒子事象に対して信号を構築するために、検出された測定パラメータを処理する信号プロセッサ118を含む。信号プロセッサ118は、上述したように、測定領域内でのそれぞれの細胞の測定に対応する細胞事象を生成する。信号プロセッサ118は、例えば、受信された信号中のノイズを低減することによって、細胞事象の生成を最適化するために受信された信号の処理を実行することができる。測定領域内での粒子の持続時間に対応する信号を組み立て、その信号に対応するパラメータを決定するための命令は、ハードウェア記述言語(HDL)、アセンブリ、CおよびC++を含む任意の適切なプログラミング言語で実行することができ、ハードウェア、ファームウェアまたはソフトウェア・コンポーネントの1またはそれより多くを含み得る。
【0105】
上記の
図1に関して説明したように、分析器122は、粒子分析器100内に配置され得る、または有線もしくは無線接続などの、但しこれらに限定されない通信媒体を介して、直接もしくは1もしくはそれを超える中間装置を介して粒子検出器124に別個に結合されて配置され得る。1または複数の中間機器が使用される場合、各機器は、粒子検出器124に物理的に結合され得る、またはWIFI、携帯電話伝送などの無線通信媒体を介して粒子検出器124に結合され得る。分析器122は、粒子検出器124によって検出された各粒子に対応する細胞事象データを受信する。事象データは、とりわけ、LALS、OP、DCおよびMALSに対するパラメータを含むことができる。
【0106】
分析器122は、プロセッサ902、メモリ装置903、保存装置904、入力装置905、出力装置906、EGC決定モジュール907および通信インフラストラクチャ908などの構成要素を含む。プロセッサ902は、処理命令を実行することができる任意のマイクロプロセッサまたは他のプロセッサとすることができる。メモリ装置903は、ランダムアクセスメモリを含むことができる。保存装置904は、フラッシュメモリまたはハードディスクなどのコンピュータ可読永続保存媒体を含む。プロセッサ902は、粒子分析器から事象データを受信し、受信されたデータを処理し、処理された結果データを出力するための命令を実行する。メモリ装置903および保存装置904は、プロセッサ902の任意の一時的または永続的なメモリおよび保存要件を提供する。通信インフラストラクチャ908は、分析器122の構成要素を互いに相互接続し、周辺構成要素相互接続(PCI)バス、拡張業界標準アーキテクチャ(EISA)バス、イーサネット(登録商標)および/またはWIFIを含むが、これらに限定されない通信媒体を含み得る。入力装置905は、通信インフラストラクチャ908を介した粒子分析器100への接続性および粒子分析器100から事象データを含むデータを受信する能力を含むことができる。
【0107】
EGC決定モジュール907は、細胞事象データ粒子検出器124を処理して血液試料中のEGC集団を同定および計数する機能を含む。例えば、EGC決定モジュール907は、方法700の工程708~716を実施するための命令またはコンピュータプログラムを含むことができる。EGC決定モジュール907は、データアクセスモジュール942、EGC鑑別モジュール944およびEGC報告モジュール946を備えることができる。データアクセスモジュール942は、粒子検出器から受信された細胞事象データにアクセスすることができる。データにアクセスすることは、以前に保存された細胞事象データを取り込むために保存装置にアクセスすること、または粒子検出器から細胞事象データ(リアルタイムまたは遅延)を受信することを含むことができる。EGC鑑別モジュール944は、例えば、方法700の工程710および714に関連して上述したように、EGC集団を同定および計数するための機能を含むことができる。EGCレポーターモジュールは、例えば、方法700の工程712および716に関連して上述したように、EGC情報を報告するための機能を含むことができる。
【0108】
EGC決定モジュール907は、ハードウェア記述言語(HDL)、アセンブリ、CおよびC++を含む任意の適切なプログラミング言語で実行することができ、ハードウェア、ファームウェアまたはソフトウェア構成要素の1またはそれより多くを含み得る。EGC決定モジュール907を実行する命令および/またはコンピュータプログラムは、例えば、コンピュータ可読保存媒体904に保存することができる。
【0109】
出力モジュール906は、EGC決定モジュール907で決定されたEGC集団情報を含む細胞集団情報を用途に適した様式で取り扱うための機能を含む。一実施形態において、出力モジュール906は、EGC決定モジュール907を含む処理モジュールで決定された鑑別された細胞集団を表示するために、予め構成されたグラフ設定に従って1または複数のグラフを生成することができる。
【0110】
出力モジュール906は、通信インフラストラクチャ908を使用してディスプレイ920および/または記憶装置921に結合される。出力モジュール906からの結果データは、ディスプレイ920に送信されて、オペレータによって表示および分析される。例えば、ディスプレイ920は、ヒストグラム、スキャッタグラムまたは他の形態の図式および/もしくは文字表示の形態で結果データを示し得る。別の実施形態において、結果データは、その後の処理および分析のために外部記憶装置921に保存され得る。
【実施例】
【0111】
実施例
【0112】
以下の非限定的な実施例は、現在企図されている代表的な実施形態のより完全な理解を容易にするために、例示のみを目的として提供される。これらの実施例は、初期顆粒球細胞を同定および/または計数するための方法、システムおよび/または装置に関するものを含む、本明細書に記載される実施形態のいずれをも限定すると解釈されるべきではない。
【0113】
実施例1
【0114】
7つの異なる部位において収集された1536の固有の試料の組に対する400の基準細胞手動鑑別に対してのEGCの計数の評価が、以下の表1に示されている。相関係数rは、EGC%を前骨髄球%、骨髄球%および後骨髄球%の合計に対して比較することによって決定した。ROC曲線下面積の算出のために用いた陽性基準は、1%超または1%に等しい前骨髄球%、骨髄球%および後骨髄球%の合計であった。
【0115】
上記の例では、訓練された血液学技術者によって、1536個の試料の502個がEGCを含有するものとして採点された。次いで、本明細書のEGC検出プロトコルでプログラムされたDxH800機器を使用して、同じ試料を分析した。訓練された技術者によって採点された試料の数に関する、EGCを含有するものとして機器によって採点された試料の数の関数として、相関係数(r)を決定した。
【表1】
【0116】
感度は、真陽性EGCおよび偽陰性数に対する真陽性EGCの比である。他方、特異度は、真陰性EGCおよび偽陽性数に対する真陰性EGCの比である。ROC曲線下面積(受信者動作曲線)は、EGC計数法の感度と特異度を組み合わせた分析アプローチの精度の尺度である。列記された感度および特異度に対する基準は、感度と引き換えに特異度を得るまたはその逆である値の変動する規模を反映する。したがって、例えば、1.0の基準は、感度の減少を犠牲にして特異度が増加された場合である。特定の用途に対する最適な値は、日常的な努力によって当業者によって決定することができる。
【0117】
2つの異なる部位に対して、参照としてフローサイトメトリーCD16マーカーを使用して収集された315個の試料の組に対する同様の評価は、表2中に示される結果を与えた。CD16は好中球に関連するマーカーであるが、EGCには関連しない。したがって、好中球をゲートし、好中球集団へのスキャッタグラムの密接に重複する領域中に一般に出現するEGC集団から好中球を分離するために、標識されたCD16抗体を使用することができる。成熟度がより低い細胞は、成熟細胞より低い光散乱を有する。したがって、CD16抗体と光散乱の組み合わせを使用して、EGC集団をゲーティングすることができる。この方法を使用して、315個の試料をスクリーニングし、試料のうち164個がEGCを含有すると同定された。CD16ゲーティング分析アプローチを本明細書の分析方法と比較すると、本明細書は表2に記載されている結果を与えた。
【表2】
【0118】
したがって、本方法は、芽球または幼弱好中球(すなわち、桿状核球)などのより高いまたはより低いレベルの未熟性を有する細胞の存在が精度に対して有意な影響を及ぼさないことも実証した。
【0119】
従来の分析器では、好中球亜集団は、検査室職員および/または臨床医が適切に解釈するために著しい知識を必要とする一貫性のないまたは紛らわしい形式で報告され得る。例えば、いくつかの商用システムでは、分析器は2またはそれを超えるモードで動作し得る。モードの1つは、好中球の亜集団を特徴付けない5分類鑑別であり得る。このような5分類鑑別モードでは、EGCを含む好中球の数が報告される。同じ分析器は、サブカテゴリ化モード(商業的に6分類鑑別と呼ばれることもある)を実行することもあり、これは、EGCを除外する好中球の数を報告し、別個にEGCを報告し得る。このシナリオでは、同じ分析器が、異なる報告において「好中球」を異なってカウントする報告を生成し、EGCを含む場合と、EGCを除外する場合とがある。この種のシステムは、異なる試薬または蛍光標識を使用するので別個のモードを有することがあり、EGC数が具体的に指示されていなければ、ユーザは、EGCを計数するために、追加の試薬のための追加コストまたは増加した試料処理時間を被ることを望まないことがあり得る。これに関して、EGCを計数するために追加の試薬が必要とされず、EGCを同定するための追加の計算処理時間が些細なものであるので、光散乱またはVCSのようなアプローチが好ましいことがあり得る。
【0120】
図10は、本開示の態様による好中球亜集団を報告するための例示的な方法の結果を示す。EGCを同定するためにいずれの細胞事象が使用されたかに関係なく、ユーザ読み取り可能なディスプレイ1000は、白血球集団、または好中球集団、またはその両方の視覚的表示1010を提示し得、報告された値にコンテキストを提供し、EGC集団の相対的サイズの直感的な感覚を検査室職員および/または臨床医に与え得る。いくつかの態様において、ユーザが読み取り可能なディスプレイは、異なる分析器および/またはモードにわたって一貫して「好中球」という用語を使用する報告を含み得る。例えば、5分類鑑別を提供する特定の商業的ファミリーに属する分析器は、いわゆる6分類鑑別を提供する同じ商業的ファミリーに属する別の分析器と同じ意味で「好中球」を使用することがあり得る。例えば、全ての好中球数は、EGCを含み得る。他の態様において、すべての好中球数はEGCを除外し得る。いくつかの態様において、報告は、好中球と好中球の亜集団をさらに区別し得る。例えば、
図10に示されているように、好中球値は、サブ値が好中球値の中にまとめられることを強調するために、字下げされたサブ値1030とともに提示され得る。あるいは、好中球亜集団の値は、字下げありまたは字下げなしで提示することができ、総好中球数は、亜集団に対して字下げされてまたは字下げされずに、最後に合計として示される。いくつかの態様において、任意の計数された好中球亜集団を含む好中球数は、亜集団数の集合としての単語または記号(例えば、総、合計、=など)によって印が付され得る。これらの表示は、数が決定された過程とは無関係に選択され得る。例えば、好中球数が細胞事象の直接的な観察に基づいており、1または複数の亜集団が計算によって(例えば、他の直接的に観察された数を除外することによって亜集団の数を推測することによって)計数された場合でさえ、好中球数は合計(例えば、総、合計、=など)として提示され得る。他の態様において、表示形式は、その数が決定された過程に対応し得、計算によって得られた数と比較して、細胞事象分析から直接得られた数に対して異なる順序または異なる字下げもしくはラベリングを有する。
【0121】
明確さを維持することを補助するために、必ずしも公知の臨床的有用性が存在するわけではない1または複数のパラメータが報告され得る。例えば、EGCはmNEと一体化されて報告され得、mNEは、桿状核球、成熟好中球、加齢好中球、脱顆粒球などの好中球のいくつかの亜集団を含む。mNEのこの特定のサブグループは、特定の臨床的意義を有しないことがあるが、EGCに対してコンテキストを与えるために報告され得る。そのため、報告は、第1の字下げレベル1020で好中球(NE)の数、第2の字下げレベル1030でEGCの数および第2の字下げレベル1030でmNEの数を含み得る。さもなければ好中球としてカウントされていた任意の細胞がEGCまたはmNEのいずれかとして分類されたこと、ならびにEGCおよびmNEが合わせてすべてのNEの合計になることが、一見して、合理的に明白であろう。実際、mNEは、NE-EGC=mNEとして計算され得る。所望であれば、おそらくは桿状核球、成熟NE、脱顆粒球、加齢NEなどの1またはそれより多くに対して第3の字下げレベルを使用して、mNEをさらに細かく分類することもできるであろう。もちろん、具体的な表示は重要ではない。本明細書で使用される場合、mNEは、一般に、(未成熟顆粒球としても知られているEGCと区別するために)「幼弱」好中球と呼ばれることがある桿状核球を含む「成熟」好中球を指す。しかし、非EGC、miscNE、その他などの任意の所望の表示を使用することができ、本開示の外では、mNEは、NEの異なる亜集団またはNEの亜集団の異なる組み合わせを指すために使用することができる。むしろ、報告されていることを明確化し、5分類鑑別といわゆる6分類鑑別の間での一貫性を維持するために構造化された報告を使用するという考え方が、これらの例示的な表示を使用して例示されている。
【0122】
NEの要約報告を維持することは、局所決定則の実施も簡略化する。ほとんどの市販の分析器は、分析中の何かが分析器によって決定された細胞または細胞集団の特徴の1またはそれより多くについての問題を提起することを示す予め設定された注意および/または警告を有する。これらには、システム内における気泡もしくは破片の公知の表示、例えば、あり得るが可能性は低いカウント数、または互いに組み合わると可能性が低いもしくは不可能である異なる細胞集団に対する相対的カウント数もしくはパラメータが含まれ得る。同様に、特定の研究室または機関(異なる場所または異なる施設における研究室のネットワークを含み得る)は、分析者が特定の状況下で取るべき行動を定義する局所決定則を確立し得る。例えば、特定の閾値を超える細胞または細胞集団パラメータは、研究者または臨床医に転送される前に、検査室の技師による再検討のために注意を与える。別の例として、特定の閾値内の細胞または細胞集団パラメータは、検査室の技師による再検討なしに研究者または臨床医に発出され得る。どの分析器が使用されるか、または分析器がどのモードで動作されるかに応じて、すべての好中球と成熟好中球のみの両方を指すためにNEを使用するなど、2またはそれを超える異なる尺度を指すために同じパラメータ名が使用されると、これらの局所決定則は複雑化する。規則が単一の可能性(例えば、パラメータ値)ではなく複数の可能性(例えば、分析器ID、分析器モードおよびパラメータ値)を考慮しなければならないため、局所決定則を確立するときに、これらの複雑さは論理またはソフトウェアエラーの可能性を増大させる。決定則がすべての変数を考慮しなければ、例えば、単にECGが「総」数から除外されたために、総好中球数が正常であるように見えれば、誤った結果に再検討のための注意が与えられない可能性があり得る、または、例えば、EGCが含まれたために、総好中球数が異常に高いように見えれば、正しい結果に不必要に注意が与えられることがあり得る。不必要な注意は、検査室の技師から貴重な時間と労力を消費し、日常的な血液分析のコストを増加させ、再検討のために不必要に注意が与えられた試料の処理を遅らせる可能性がある。
【0123】
同様に、NE報告を亜集団報告から分離することは、技術者による再検討のための注意を減少させ得る。好中球の亜集団は、様々な発達段階にある細胞であり、多くの特徴を共有する。したがって、現在利用可能な細胞分析技術では、好中球を細分類することは困難である。手作業による塗抹標本でさえ、好中球を細分類する場合、操作者内または操作者間で理想的な再現性を有さない。したがって、好中球のサブカテゴリは、一般に好中球のカウントより、検査室の技師による再検討のための注意をより多く生成することが予測されるはずである。2つのパラメータを一貫して分離することによって、分析器自体は、特定の試料について好中球の細分類が必要とされなければ、おそらくは、さもなければ再検討のために注意が与えられたであろう不必要な結果を抑制することによって、人間による再検討のための注意を回避することができる。試料IDを分析器に入力された試験順序と比較することによって、またはそのような接続性が提供される場合、好中球細分類が要求されたかどうかを確認するために、検査室情報システム(LIS)、ヘルスケア情報システム(HIS)または電子医療記録(EMR)における試験順序と比較することによって、分析器はこれを行うことができる。同様に、特定の結果の人間による再検討が必要である場合、一貫した報告はトラブルシューティングを容易にし得る、例えば、分析器がどのモードで実行されたか、またはどの報告形式が使用されたかを判定するなどの工程を削除する可能性がある。このように、あまり複雑ではない好中球カウントが任意の予め設定された局所信頼性基準を満たせば、特定の試料について亜集団の特徴付けが必要とされないと仮定して、好中球の亜集団を決定することにいくらかの複雑な要素が存在する場合でさえ、そのカウントを発出または自動発出することができる(例えば、人間のユーザの介入なしに、分析器および/または関連する計算装置によって発出される)。
【0124】
上述のようにおよび
図11に示されているように、本開示の一態様は、検査室分析報告の報告を明確化および/または完了するためのノンスパラメータの使用である。これに関して、分析結果を報告するための方法1100は、細胞を含有する試料を分析することを含み得る。本開示では血液が一貫した例として使用されているが、市販の血液分析器は、滑液、脳脊髄液、胸水など、ならびに痰、創部ドレナージ、膿などの他の種類の試料から採取された細胞の懸濁液を含むがこれらに限定されない、細胞を含有し得る他の非血液体液を処理することができることが多い。同様に、本明細書に記載されている過程およびシステムは、血液試料を分析することが予定されているか、または血液試料を分析することができるかどうかに関係なく、尿検査機器および細胞撮像装置などの他の種類の分析器にも用途を見出し得る。分析結果を報告するための方法1100は、1または複数の細胞集団パラメータを決定すること1120を含み得る。分析結果を報告するための方法1120は、ノンスパラメータを生成すること1130を含み得る。ノンスパラメータは、決定された細胞集団パラメータの1またはそれより多くに対してコンテキストまたは補強情報をすること以外は特に重要ではないパラメータであり得る。例えば、mNEは、多くのコンテキストにおいて臨床的に重要ではないことがあり得、EGC計数が(個別にまたは日常的な鑑別の一部として)要求されるときに要求されないことがあり得る。しかしながら、報告されたEGCパラメータとNEパラメータ間の関係性をユーザが理解するのに役立つコンテキストを提供するために、mNEは、ノンスパラメータとしてEGCとともに日常的に報告され得る。これに関して、上述のように、mNEは、例えばNEからEGCを減算することによって計算(または決定)され得る。分析結果を報告するための方法1100は、1または複数の決定された細胞集団パラメータをノンスパラメータとともに報告すること1140を含み得る。上述のように、決定された細胞集団パラメータおよびノンスパラメータに対する視覚的表現、配置および表示は、細胞集団パラメータと他の報告された値の間の関係をさらに示し得る。
【0125】
上述のように、本開示の別の態様は、EGC鑑別の結果を明確にするインターフェースの使用を特徴とする。これに関して、
図12に示されているように、幼若顆粒球(EGC)鑑別1200の結果を実施および提供するための方法が提供され得る。このような方法は、第1の体液試料中の白血球を分析する第1の試験を実施すること1201を含み得る。このような方法は、群のうちの少なくとも1つに基づいて、第1の体液試料中の他の細胞型からEGCを鑑別すること1202も含み得る。この群は、顆粒度、核の小葉度および細胞表面構造からなり得る。いくつかのこのような方法では、第1の試験の実行1201の後、方法は、第1の試験の1または複数の結果を報告するインターフェースを生成すること1203を含み得る。いくつかのこのような方法では、このインターフェースは、標識された好中球数および標識されたEGC数を含み得る。
【0126】
いくつかの態様において、
図12の文脈で説明したような方法で生成されるようなインターフェースは、追加の情報を提供し得る。例えば、いくつかの実施形態において、このようなインターフェースからの標識された好中球数は、EGCおよび成熟好中球などの好中球の複数の亜集団に対する数を含み得、インターフェースは、それらの亜集団のそれぞれに対する標識された数を含み得る。さらに、いくつかの態様において、このようなインターフェースを生成することを含む方法1300は、別の(例えば、第3の)体液試料中の白血球を分析する別の試験(例えば、最初の試験および任意の介在する試験を鑑別するための第3の試験)を実施すること1301と、第3の試験で決定された好中球数および好中球数によって含まれる少なくとも1つの好中球亜集団数に1または複数の信頼性基準を適用すること1302とをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、このような方法1300は、一連の決定を実行すること1303も含み得る。これらの決定は、好中球数によって含まれる少なくとも1つの好中球亜集団数が1または複数の信頼性基準の少なくとも1つを満たさないことを決定すること1304と、第3の試験に対応する順序が好中球亜集団の数を必要としないことを決定すること1305と、好中球数が好中球数に適用されるすべての信頼性基準を満たすことを決定すること1306とを含み得る。次いで、これらの決定1303が行われると、いくつかの実施形態においては、
図13に示されているような方法は、一連の決定に基づいて、好中球数を含むが好中球亜集団に対する数を含まない報告を提供すること1307を継続し得る。
【0127】
収集された試料の上記データ分析は、本明細書が試料の手作業での鑑別検査と比較して高いレベルの相関、感度および特異度を有することを実証している。新規かつ非自明な報告過程は、データ分析を人間のユーザが理解および解釈することをさらに容易にする。
【0128】
本開示では、自動化された血球計数の診断的価値を改善することができる方法およびシステムを開示した。特に、本開示の態様は、感染の様々な症状の検出および処置に重要であり得る血球試料中のEGCの自動化された同定および計数を可能にする。開示された方法およびシステムは、現在の方法およびシステムと比べて費用対効果および効率を大幅に改善し、粒子分析器データの分析の大幅に改善をもたらすことができる。
【0129】
上記の記述は、例示および説明の目的で提示されている。上記の記述は、網羅的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、上記の教示に照らして他の修正および変形が可能であり得る。本記述は、本開示の原理とその実際の応用を説明し、それによって当業者が、企図される特定の用途に適した様々な実施形態および様々な修正において本開示を最良に利用することを可能にすることを意図している。添付の特許請求の範囲は、先行技術によって限定される場合を除いて、本明細書の他の代替実施形態を含むと解釈されることが意図されている。