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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20240920BHJP
   B62D 1/181 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B62D1/19
B62D1/181
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022510435
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011444
(87)【国際公開番号】W WO2021193449
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2020058293
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020058294
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】本間 太輔
(72)【発明者】
【氏名】関口 暢
(72)【発明者】
【氏名】馬場 洋光
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-019327(JP,A)
【文献】特開2019-156334(JP,A)
【文献】特開2019-107993(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に沿う軸線回りに回転可能にステアリングシャフトが挿入されるパイプと、
車体に支持されるとともに、前記パイプを前後方向に移動可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングに対して前記パイプを前後方向に移動させるテレスコ機構と、
前記パイプ及び前記テレスコ機構の間を接続する荷重吸収機構と、を備え、
前記テレスコ機構は、
前記ハウジングに連結されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに連結された係合部及び前記荷重吸収機構に連結され前記係合部に前後方向で係合する被係合部を有し、前記係合部及び前記被係合部を介して前記アクチュエータの駆動力を前記パイプに伝達させる送り機構と、を備え、
前記荷重吸収機構は、
前記パイプ及び前記送り機構の何れか一方の部材に設けられ、前後方向に沿って延びる延在部と、
前記パイプ及び前記送り機構の何れか他方の部材において、前記延在部に対して左右方向の第1側に設けられ、前記パイプに作用する荷重が所定値以上の場合に、前記延在部のうち左右方向の第1側を向く側面上を摺動しながら前記一方の部材に対して相対移動することで、前記延在部を塑性変形させる摺動部と、
前記他方の部材において、前記延在部に対して左右方向の第2側に設けられるとともに、前記パイプに作用する荷重が所定値以上の場合に、前記摺動部と一体で移動可能に構成され、前記延在部の左右方向の第2側への移動又は変形を規制する規制部と、を備えているステアリング装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記延在部のうち左右方向の第2側を向く側面上を摺動しながら前記摺動部と一体で移動することで、前記延在部を塑性変形させる請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記摺動部及び前記規制部は、前記延在部の中心を前後方向に沿って延びる対称線に対して線対称に形成されている請求項1又は請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記一方の部材には、
前記摺動部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記摺動部の前後方向への移動を案内する第1ガイドと、
前記規制部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記規制部の前後方向への移動を案内する第2ガイドと、が設けられている請求項1から請求項3の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記延在部は、左右方向の第1側で前記送り機構に接続され、左右方向の第2側でと前記ハウジングに支持されている請求項1から請求項4の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記送り機構は、
前記アクチュエータの出力軸に連結されるとともに、前記係合部として雄ねじを有するシャフトと、
前記一方の部材に接続されるとともに、前記被係合部として前記雄ねじに係合する雌ねじ部が形成されたナットと、を備えている請求項1から請求項5の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項7】
前記荷重吸収機構は、前記摺動部に対する前記延在部の上下方向への移動を規制する規制部材を備えている請求項1から請求項6の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項8】
前後方向に沿う軸線回りに回転可能にステアリングシャフトが挿入されるパイプと、
車体に支持されるとともに、前記パイプを前後方向に移動可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングに対して前記パイプを前後方向に移動させるテレスコ機構と、
前記パイプ及び前記テレスコ機構の間を接続する荷重吸収機構と、を備え、
前記テレスコ機構は、
前記ハウジングに連結されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに連結された係合部及び前記荷重吸収機構に連結され前記係合部に前後方向で係合する被係合部を有し、前記係合部及び前記被係合部を介して前記アクチュエータの駆動力を前記パイプに伝達させる送り機構と、を備え、
前記荷重吸収機構は、
前記パイプ及び前記送り機構の何れか一方の部材に設けられ、前後方向に沿って延びる延在部と、
前記パイプ及び前記送り機構の何れか他方の部材において、前記延在部に対して左右方向の第1側に設けられ、前記パイプに作用する前方への荷重が所定値以上の場合に、前記延在部のうち左右方向の第1側を向く側面上を摺動しながら前記一方の部材に対して相対移動する第1摺動部と、
前記他方の部材において、前記延在部に対して左右方向の第2側に設けられるとともに、前記パイプに作用する荷重が所定値以上の場合に、前記延在部のうち左右方向の第2側を向く側面上を摺動しながら、前記第1摺動部と一体で移動する第2摺動部と、を備え、
前記第1摺動部のうち前記延在部に接触する第1接触部、及び前記第2摺動部のうち前記延在部に接触する第2接触部は、それぞれ前記延在部に向けて凸の湾曲面をなしているステアリング装置。
【請求項9】
前記延在部は、
前記第1接触部及び前記第2接触部間の左右方向の距離よりも狭い幅狭部と、
前記第1接触部及び前記第2接触部間の左右方向の距離よりも広く、前記第1摺動部及び前記第2摺動部の摺動時に塑性変形可能な幅広部と、を備えている請求項8に記載のステアリング装置。
【請求項10】
前記第1摺動部の外周面は、前記第1接触部に対して前後方向の両側に向かうに従い前記延在部から離間する側に延在し、
前記第2摺動部の外周面は、前記第2接触部に対して前後方向の両側に向かうに従い前記延在部から離間する側に延在している請求項8又は請求項9に記載のステアリング装置。
【請求項11】
前記一方の部材には、
前記第1摺動部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記第1摺動部の前後方向への移動を案内する第1ガイドと、
前記第2摺動部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記第2摺動部の前後方向への移動を案内する第2ガイドと、が設けられている請求項8から請求項10の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項12】
前記第1摺動部のうち、前記第1ガイドと対向する対向面は、前後方向に沿って平坦面に形成され、
前記第2摺動部のうち、前記第2ガイドと対向する対向面は、前後方向に沿って平坦面に形成されている請求項11に記載のステアリング装置。
【請求項13】
前記送り機構は、
前記アクチュエータの出力軸に連結されるとともに、前記係合部として雄ねじを有するシャフトと、
前記一方の部材に接続されるとともに、前記被係合部として前記雄ねじに係合する雌ねじ部が形成されたナットと、を備えている請求項8から請求項12の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項14】
前記荷重吸収機構は、前記第1摺動部及び前記第2摺動部に対する前記延在部の上下方向への移動を規制する規制部材を備えている請求項8から請求項13の何れか1項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリング装置に関する。
本願は、2020年3月27日に日本に出願された特願2020-058293号、及び2020年3月27日に日本に出願された特願2020-058294号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置では、運転者の体格差や運転姿勢に応じてステアリングホイールの前後位置を調整するテレスコピック機能を備えたものがある。この種のステアリング装置としては、車体に支持されたアウタコラムと、前後方向に移動可能にアウタコラム内に保持されたインナコラムと、アウタコラム及びインナコラムを前後動可能に接続するテレスコ機構と、を備えている。インナコラムは、ステアリングシャフトを回転可能に支持する。ステアリングシャフトの後端部には、ステアリングホイールが取り付けられる。
【0003】
ステアリング装置では、二次衝突時等、所定の荷重がステアリングホイールに作用した場合に、インナコラムがアウタコラムに対して前方に移動する過程(いわゆる、コラプスストローク)で、運転者に加わる衝撃荷重を緩和する構成が搭載されている。例えば、下記特許文献1には、テレスコ機構に形成されたガイド突起が、アウタコラムに形成されたガイド溝内に保持された構成が開示されている。
【0004】
特許文献1発明に係るステアリング装置では、テレスコ動作の際、テレスコ機構の駆動力によってインナコラムがアウタコラムに対して前後動する。
一方、二次衝突時において、所定の荷重がステアリングホイールに作用した場合、テレスコ機構がアウタコラムから離脱する。その後、インナコラムとテレスコ機構とが、アウタコラムに対して前方に移動しようとする。この際、ガイド突起がガイド溝を押し広げながらインナコラムが前方に移動する。その結果、特許文献1発明に係るステアリング装置は、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重を緩和するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2006-347243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、衝撃荷重を効率的に緩和させるには、ガイド溝を塑性変形させることが好ましいと考えられる。
しかしながら、上述した従来技術にあっては、ガイド突起によってガイド溝が押し広げられる際にガイド溝を形成する隔壁自体(アウタコラム)が移動又は変形し、所望の衝撃吸収性能を確保することが難しかった。
【0007】
上述した従来技術にあっては、二次衝突時において、安定した衝撃吸収性能を発揮させる点で未だ改善の余地があった。具体的に、上述した従来技術では、ガイド突起が平面視で矩形状に形成されている。そのため、ガイド突起は、角部がガイド溝の内面に接触した状態でガイド溝の内面上を摺動する。この場合、ガイド突起の角部がガイド溝の内面に引っ掛かる等して、ガイド突起とガイド溝の内面との間に作用する荷重変動が生じやすい。
【0008】
本開示は、所望の衝撃吸収性能を確保し易いステアリング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係るステアリング装置は、前後方向に沿う軸線回りに回転可能にステアリングシャフトが挿入されるパイプと、車体に支持されるとともに、前記パイプを前後方向に移動可能に支持するハウジングと、前記ハウジングに対して前記パイプを前後方向に移動させるテレスコ機構と、前記パイプ及び前記テレスコ機構の間を接続する荷重吸収機構と、を備えている。前記テレスコ機構は、前記ハウジングに連結されたアクチュエータと、前記アクチュエータに連結された係合部及び前記荷重吸収機構に連結され前記係合部に前後方向で係合する被係合部を有し、前記係合部及び前記被係合部を介して前記アクチュエータの駆動力を前記パイプに伝達させる送り機構と、を備えている。前記荷重吸収機構は、前記パイプ及び前記送り機構の何れか一方の部材に連結され、前後方向に沿って延びる延在部と、前記パイプ及び前記送り機構の何れか他方の部材において、前記延在部に対して左右方向の第1側に設けられ、前記パイプに作用する荷重が所定値以上の場合に、前記延在部のうち左右方向の第1側を向く側面上を摺動しながら前記一方の部材に対して相対移動することで、前記延在部を塑性変形させる摺動部と、前記他方の部材において、前記延在部に対して左右方向の第2側に設けられるとともに、前記パイプに作用する荷重が所定値以上の場合に、前記摺動部と一体で移動可能に構成され、前記延在部の左右方向の第2側への移動又は変形を規制する規制部と、を備えている。
【0010】
本態様によれば、二次衝突時等、パイプに所定値以上の荷重が作用した場合に、パイプがハウジングに対して前方に移動する。この際、摺動部が延在部の側面上を摺動する過程で、延在部が塑性変形することで、衝撃荷重を吸収することができる。
特に、本態様では、摺動部の摺動時に摺動部と延在部との間に作用する荷重によって延在部が摺動部から離間する側へ移動又は変形しようとした場合に、規制部によって延在部の移動又は変形を規制できる。これにより、延在部を効率的に塑性変形させることができ、所望の衝撃吸収性能を確保することができる。
しかも、本態様では、送り機構の係合部及び被係合部が前後方向で係合しているため、二次衝突時において、アクチュエータに対する送り機構の前方への移動が規制される。これにより、二次衝突時において、送り機構とともに荷重吸収機構が前方に移動するのを抑制できる。そのため、延在部と摺動部との間に効果的に荷重を発生させることができる。その結果、所望の衝撃吸収性能を確保できる。
テレスコ機構のアクチュエータがハウジングに固定されているため、テレスコ動作時及び二次衝突時においてアクチュエータが移動しない。そのため、ステアリング装置の周囲にアクチュエータの移動スペースを確保する必要がなく、レイアウト性の向上を図ることができる。
【0011】
(2)上記(1)の態様のステアリング装置において、前記規制部は、前記延在部のうち左右方向の第2側を向く側面上を摺動しながら前記摺動部と一体で移動することで、前記延在部を塑性変形させることが好ましい。
本態様によれば、延在部に対する摺動部及び規制部の前方移動に伴い、摺動部及び規制部によって延在部がしごかれるように塑性変形する。これにより、延在部の左右方向の移動や変形を規制した上で、衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)の態様のステアリング装置において、前記摺動部及び前記規制部は、前記延在部の中心を前後方向に沿って延びる対称線に対して線対称に形成されていることが好ましい。
本態様によれば、摺動部及び規制部と延在部との間に作用する荷重が均等になり易い。
【0013】
(4)上記(1)から(3)の何れかの態様のステアリング装置において、前記一方の部材には、前記摺動部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記摺動部の前後方向への移動を案内する第1ガイドと、前記規制部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記規制部の前後方向への移動を案内する第2ガイドと、が設けられていることが好ましい。
本態様によれば、二次衝突時において、延在部に沿って摺動部及び規制部を前後方向にスムーズに移動させることができる。延在部と摺動部及び規制部との間に作用する荷重によって、摺動部及び規制部が左右方向の外側に移動又は変形しようとした場合には、摺動部及び規制部の移動又は変形をガイドによって規制することができる。
【0014】
(5)上記(1)から(4)の何れかの態様のステアリング装置において、前記延在部は、左右方向の第1側で前記送り機構に接続され、左右方向の第2側で前記ハウジングに支持されていることが好ましい。
本態様によれば、延在部が左右両側で支持されるので、ハウジングに対する延在部の左右方向の移動を規制できる。これにより、二次衝突時において、摺動部及び規制部と延在部との間に発生する荷重によって延在部自体が左右方向に位置ずれするのを抑制できる。
【0015】
(6)上記(1)から(5)の何れかの態様のステアリング装置において、前記送り機構は、前記アクチュエータの出力軸に連結されるとともに、前記係合部として雄ねじを有するシャフトと、前記一方の部材に接続されるとともに、前記被係合部として前記雄ねじに係合する雌ねじ部が形成されたナットと、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、送り機構として送りねじ機構を採用することで、シャフトの雄ねじとナットの雌ねじとの係合力を確保し易くなるとともに、テレスコ動作時においてアクチュエータの回転量に対するパイプのストロークを調整し易い。また、送り機構としての送りねじ機構に衝撃吸収機構が連結されることにより、二次衝突時にシャフトに対してナットがロックして、送り機構(ナット)の前方への移動が規制される。これにより、二次衝突時において、送り機構とともに荷重吸収機構が前方に移動するのを抑制できる。そのため、延在部と摺動部との間に効果的に荷重を発生させることができる。その結果、所望の衝撃吸収性能を確保できる。
【0016】
(7)上記(1)から(6)の何れかの態様のステアリング装置において、前記荷重吸収機構は、前記摺動部に対する前記延在部の上下方向への移動を規制する規制部材を備えていることが好ましい。
本態様によれば、摺動部に対する延在部の上下方向への移動が規制される。その結果、摺動部が延在部から離脱するのを抑制し、荷重吸収機構による吸収エネルギーを、コラプスストローク全域に亘って安定させることができる。
【0017】
(8)本開示の一態様に係るステアリング装置は、前後方向に沿う軸線回りに回転可能にステアリングシャフトが挿入されるパイプと、車体に支持されるとともに、前記パイプを前後方向に移動可能に支持するハウジングと、前記ハウジングに対して前記パイプを前後方向に移動させるテレスコ機構と、前記パイプ及び前記テレスコ機構の間を接続する荷重吸収機構と、を備えている。前記テレスコ機構は、前記ハウジングに連結されたアクチュエータと、前記アクチュエータに連結された係合部及び前記荷重吸収機構に連結され前記係合部に前後方向で係合する被係合部を有し、前記係合部及び前記被係合部を介して前記アクチュエータの駆動力を前記パイプに伝達させる送り機構と、を備えている。前記荷重吸収機構は、前記パイプ及び前記送り機構の何れか一方の部材に連結され、前後方向に沿って延びる延在部と、前記パイプ及び前記送り機構の何れか他方の部材において、前記延在部に対して左右方向の第1側に設けられ、前記パイプに作用する前方への荷重が所定値以上の場合に、前記延在部のうち左右方向の第1側を向く側面上を摺動しながら前記一方の部材に対して相対移動する第1摺動部と、前記他方の部材において、前記延在部に対して左右方向の第2側に設けられるとともに、前記パイプに作用する荷重が所定値以上の場合に、前記延在部のうち左右方向の第2側を向く側面上を摺動しながら、前記第1摺動部と一体で移動する第2摺動部と、を備えている。前記第1摺動部のうち前記延在部に接触する第1接触部、及び前記第2摺動部のうち前記延在部に接触する第2接触部は、それぞれ前記延在部に向けて凸の湾曲面をなしている。
【0018】
本態様によれば、二次衝突時等、パイプに所定値以上の荷重が作用した場合に、パイプがハウジングに対して前方に移動する。この際、摺動部が延在部の側面上を摺動する過程で、延在部又は摺動部が塑性変形することで、衝撃荷重を吸収することができる。
特に、本態様では、各接触部が湾曲面をなしていることで、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、摺動部が延在部上を摺動する際、押圧部と延在部との引っ掛かりを抑制できる。これにより、摺動部を延在部上でスムーズに移動させることができる。したがって、コラプスストロークの全体に亘って効率的に衝撃荷重を緩和することができるので、衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
本態様では、テレスコ機構の係合部及び被係合部が前後方向で係合しているため、二次衝突時において、アクチュエータに対する送り機構の前方への移動が規制される。これにより、二次衝突時において、送り機構とともに荷重吸収機構が前方に移動するのを抑制できる。そのため、延在部と摺動部との間に効果的に荷重を発生させることができる。その結果、所望の衝撃吸収性能を確保できる。
テレスコ機構のアクチュエータがハウジングに固定されているため、テレスコ動作時及び二次衝突時においてアクチュエータが移動しない。そのため、ステアリング装置の周囲にアクチュエータの移動スペースを確保する必要がなく、レイアウト性の向上を図ることができる。
【0019】
(9)上記(8)の態様のステアリング装置において、前記延在部は、前記第1接触部及び前記第2接触部間の左右方向の距離よりも狭い幅狭部と、前記第1接触部及び前記第2接触部間の左右方向の距離よりも広く、前記第1摺動部及び前記第2摺動部の摺動時に塑性変形可能な幅広部と、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、幅広部のうち幅狭部に対して左右方向の外側に膨出した部分は、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、摺動部(接触部)によって塑性変形可能な変形部として機能する。本態様では、上述したように接触部と延在部との引っ掛かりを抑制できるので、摺動部と変形部との締め代(正面視で重なり合う範囲)を確保し易くなる。
【0020】
(10)上記(8)又は(9)の態様のステアリング装置において、前記第1摺動部の外周面は、前記第1接触部に対して前後方向の両側に向かうに従い前記延在部から離間する側に延在し、前記第2摺動部の外周面は、前記第2接触部に対して前後方向の両側に向かうに従い前記延在部から離間する側に延在していることが好ましい。
本態様によれば、摺動部のうち接触部以外の部分がコラプスストローク時において、延在部と接触するのを抑制できる。これにより、摺動部のうち、延在部との接触位置を安定させることができ、所望の衝撃吸収性能を確保し易い。
【0021】
(11)上記(8)から(10)の何れかの態様のステアリング装置において、前記一方の部材には、前記第1摺動部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記第1摺動部の前後方向への移動を案内する第1ガイドと、前記第2摺動部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記第2摺動部の前後方向への移動を案内する第2ガイドと、が設けられていることが好ましい。
本態様によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、延在部に沿って各摺動部を前後方向にスムーズに移動させることができる。延在部と各摺動部との間に作用する荷重によって、各摺動部が左右方向の外側に移動又は変形しようとした場合には、各摺動部の弾性変形をガイドによって規制することができる。
【0022】
(12)上記(11)の態様のステアリング装置において、前記第1摺動部のうち、前記第1ガイドと対向する対向面は、前後方向に沿って平坦面に形成され、前記第2摺動部のうち、前記第2ガイドと対向する対向面は、前後方向に沿って平坦面に形成されていることが好ましい。
本態様によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、摺動部がガイドのうち摺動部との対向面に沿ってスムーズに案内される。
【0023】
(13)上記(8)から(12)の何れかの態様のステアリング装置において、前記送り機構は、前記アクチュエータの出力軸に連結されるとともに、前記係合部として雄ねじを有するシャフトと、前記一方の部材に接続されるとともに、前記被係合部として前記雄ねじに係合する雌ねじ部が形成されたナットと、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、送り機構として送りねじ機構を採用することで、シャフトの雄ねじとナットの雌ねじとの係合力を確保し易くなるとともに、テレスコ動作時においてアクチュエータの回転量に対するパイプのストロークを調整し易い。送り機構としての送りねじ機構に衝撃吸収機構が連結されることにより、二次衝突時にシャフトに対してナットがロックして、送り機構(ナット)の前方への移動が規制される。これにより、二次衝突時において、送り機構とともに荷重吸収機構が前方に移動するのを抑制できる。そのため、延在部と摺動部との間に効果的に荷重を発生させることができる。その結果、所望の衝撃吸収性能を確保できる。
【0024】
(14)上記(8)から(13)の何れかの態様のステアリング装置において、前記荷重吸収機構は、前記第1摺動部及び前記第2摺動部に対する前記延在部の上下方向への移動を規制する規制部材を備えていることが好ましい。
本態様によれば、摺動部に対する延在部の上下方向への移動が規制される。その結果、摺動部が延在部から離脱するのを抑制し、荷重吸収機構による吸収エネルギーを、コラプスストローク全域に亘って安定させることができる。
【発明の効果】
【0025】
上記各態様によれば、所望の衝撃吸収性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ステアリング装置の斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4】荷重吸収機構の分解斜視図である。
図5】荷重吸収機構の拡大図である。
図6図3のVI矢視図である。
図7】二次衝突時の動作を説明するための説明図である。
図8】変形例に係るEAブロックの底面図である。
図9】変形例に係るEAブロックの底面図である。
図10】変形例に係るEAブロックの底面図である。
図11】変形例に係るEAブロックの底面図である。
図12】変形例に係るEAブロックの底面図である。
図13】変形例に係るEAブロックの背面図である。
図14】変形例に係るEAブロックの背面図である。
図15】変形例に係るEAブロックの底面図である。
図16】変形例に係るEAブロックの底面図である。
図17】第2実施形態に係るステアリング装置の拡大底面図である。
図18】第2実施形態に係るステアリング装置を示す図であって、図3に対応する断面図である。
図19】変形例に係るステアリング装置を示す図であって、図8のXIX-XIX線に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0028】
[ステアリング装置1]
図1は、ステアリング装置1の斜視図である。
図1に示すように、ステアリング装置1は、車両に搭載される。ステアリング装置1は、ステアリングホイール2の回転操作に伴って車輪の舵角を調整する。
【0029】
ステアリング装置1は、ハウジング11と、パイプ12と、ステアリングシャフト13と、駆動機構14と、荷重吸収機構15と、を備えている。パイプ12及びステアリングシャフト13は、それぞれ軸線O1に沿って形成されている。したがって、以下の説明では、パイプ12及びステアリングシャフト13の軸線O1の延びる方向を単にシャフト軸方向といい、軸線O1に直交する方向をシャフト径方向といい、軸線O1回りの方向をシャフト周方向という場合がある。
【0030】
本実施形態のステアリング装置1は、軸線O1が前後方向に対して交差した状態で車両に搭載される。ステアリング装置1の軸線O1は、後方に向かうに従い上方に延びている。但し、以下の説明では、便宜上、ステアリング装置1において、シャフト軸方向でステアリングホイール2に向かう方向を単に後方とし、ステアリングホイール2とは反対側に向かう方向を単に前方(矢印FR)とする。シャフト径方向のうち、ステアリング装置1が車両に取り付けられた状態での上下方向を単に上下方向(矢印UPが上方)とし、左右方向を単に左右方向(矢印LHが左側)とする。
【0031】
<ハウジング11>
図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。
図1図3に示すように、ハウジング11は、チルトブラケット21と、ハウジング本体22と、を備えている。
チルトブラケット21は、左右一対の側部フレーム23a,23bと、各側部フレーム23a,23bに形成された取付ステー24と、各側部フレーム23a,23b同士を架け渡す架け渡し部25と、を備えている。
側部フレーム23a,23bは、左右方向を厚さ方向として、前後方向に延びている。側部フレーム23a,23bの下端縁のうち、一方(左側)の側部フレーム23aの前端部には、突出片27が形成されている。突出片27は、一方の側部フレーム23aの前端部から下方に向けて突出している。
【0032】
取付ステー24は、側部フレーム23a,23bの上端部から、それぞれ左右方向の外側に張り出している。ハウジング11は、取付ステー24を介して車体に支持される。
架け渡し部25は、各側部フレーム23の上端部同士を一体に架け渡している。架け渡し部25は、側部フレーム23における前後両端部にそれぞれ設けられている。
【0033】
ハウジング本体22は、チルトブラケット21の内側に配置されている。ハウジング本体22は、保持筒31と、前側延出部32と、を有している。
【0034】
保持筒31は、シャフト軸方向(前後方向)に延びる筒状に形成されている。図2に示すように、保持筒31内の前端部には、前側軸受35の外輪が嵌合(圧入)されている。図1図3に示すように、保持筒31における前後方向の中間部には、スリット36が形成されている。スリット36は、前後方向に延びている。
【0035】
図3に示すように、保持筒31のうち、スリット36の開口縁には、突出壁(第1突出壁38及び第2突出壁39)が形成されている。第1突出壁38は、スリット36の開口縁のうち、右側開口縁から下方に突出している。第1突出壁38は、スリット36の右側開口縁に沿って前後方向に延びている。
第2突出壁39は、スリット36の開口縁のうち、左側開口縁から下方に突出している。第2突出壁39は、スリット36の左側開口縁に沿って前後方向に延びている。第2突出壁39には、下方に向けて開口する凹部39aが形成されている。
【0036】
図1に示すように、前側延出部32は、保持筒31から前方に突出している。前側延出部32は、前後方向に直交する断面視で下方に開口するU字状に形成されている。図示の例において、前側延出部32のうち、左右方向で対向する一対の側壁37間の距離は、保持筒31の外径よりも長くなっている。各側壁37は、チルトブラケット21のうち、対向する側部フレーム23a,23bにピボット軸40を介してそれぞれ連結されている。これにより、ハウジング本体22は、ピボット軸40回り(左右方向に延びる軸線O2回り)に回動可能にチルトブラケット21に支持されている。
【0037】
<パイプ12>
パイプ12は、シャフト軸方向に延びる筒状に形成されている。パイプ12は、保持筒31内に挿入されている。パイプ12は、保持筒31に対してシャフト軸方向に移動可能に構成されている。図2に示すように、パイプ12の後端部には、後側軸受41の外輪が嵌合(圧入)されている。
【0038】
<ステアリングシャフト13>
ステアリングシャフト13は、インナシャフト42及びアウタシャフト43を備えている。
インナシャフト42は、シャフト軸方向に延びる筒状に形成されている。インナシャフト42は、パイプ12内に挿入されている。インナシャフト42の後端部は、後側軸受41の内輪に圧入されている。これにより、インナシャフト42は、後側軸受41を介して軸線O1回りに回転可能に支持されている。インナシャフト42のうち、パイプ12から後方に突出した部分には、ステアリングホイール2が連結される。インナシャフト42は中実でもよい。
【0039】
アウタシャフト43は、シャフト軸方向に延びる筒状に形成されている。アウタシャフト43は、パイプ12内に挿入されている。アウタシャフト43の後端部には、パイプ12内において、インナシャフト42が挿入されている。アウタシャフト43の前端部は、保持筒31内において前側軸受35の内輪に圧入されている。これにより、アウタシャフト43は、保持筒31内で軸線O1回りに回転可能に支持されている。
【0040】
インナシャフト42及びパイプ12は、アウタシャフト43に対してシャフト軸方向に移動可能に構成されている。インナシャフト42の外周面には、例えば雄スプラインが形成されている。雄スプラインは、アウタシャフト43の内周面に形成された雌スプラインに係合している。これにより、インナシャフト42は、アウタシャフト43に対する相対回転が規制された上で、アウタシャフト43に対してシャフト軸方向に移動する。但し、ステアリングシャフト13の伸縮構造や回転規制の構造は、適宜変更が可能である。本実施形態では、アウタシャフト43がインナシャフト42に対して前方に配置された構成について説明したが、この構成のみに限られない。アウタシャフト43がインナシャフト42に対して後方に配置された構成であってもよい。
【0041】
<駆動機構14>
図1に示すように、駆動機構14は、チルト機構45と、テレスコ機構46と、を備えている。チルト機構45は、例えばハウジング11の左側に配置されている。テレスコ機構46は、例えばハウジング11の右側に配置されている。なお、駆動機構14は、少なくともテレスコ機構46を有していればよい。
【0042】
チルト機構45は、いわゆる送りねじ機構である。チルト機構45は、チルトモータユニット51と、チルト連結部52と、チルト可動部53と、を備えている。チルト機構45は、チルトモータユニット51の駆動によって軸線O2回りのステアリング装置1の回動の規制及び許容を切り替える。
チルトモータユニット51は、チルトギヤボックス55と、チルトモータ56と、を備えている。
【0043】
チルトギヤボックス55は、側部フレーム23aの前端部に、側部フレーム23aから左右方向の外側に張り出した状態で取り付けられている。
チルトモータ56は、出力軸(不図示)を前方に向けた状態でチルトギヤボックス55に後方から取り付けられている。チルトモータ56の出力軸は、チルトギヤボックス55内で減速機構(不図示)に接続されている。
【0044】
チルト連結部52は、チルトワイヤ61と、チルトシャフト62と、チルトワイヤ61及びチルトシャフト62同士を連結するチルトカップリング63と、を備えている。
チルトカップリング63は、左右方向に延びる軸線O3回りに回転可能に突出片27に支持されている。
【0045】
チルトワイヤ61は、チルトギヤボックス55とチルトカップリング63との間を架け渡している。チルトワイヤ61は、チルトモータ56の駆動に伴い回転可能に構成されている。チルトワイヤ61は、撓み変形可能に構成されている。チルトギヤボックス55とチルトカップリング63との間を接続する接続部材は、チルトワイヤ61のような撓み変形するものに限られない。チルトギヤボックス55とチルトカップリング63のレイアウト等によっては、チルトギヤボックス55とチルトカップリング63を撓み変形しない接続部材により接続してもよい。
チルトシャフト62は、チルトカップリング63とチルト可動部53との間を架け渡している。チルトシャフト62は、チルトモータ56の駆動に伴い、チルトワイヤ61と共回りする。チルトシャフト62の外周面には、雄ねじ部が形成されている。
【0046】
チルト可動部53は、リンク部材70と、チルトナット71と、を備えている。
リンク部材70は、上方に開口するU字状に形成されている。リンク部材70は、左右方向で対向する側壁70a,70bを有している。側壁70aは、保持筒31と側部フレーム23aとの間に配置されている。側壁70bは、保持筒31と側部フレーム23bとの間に配置されている。
【0047】
側壁70a及び側部フレーム23a同士は、左右方向に延びる第1ボルト75によって連結されている。側壁70b及び側部フレーム23b同士は、第1ボルト(不図示)によって連結されている。これにより、リンク部材70は、左右方向に延びる軸線O4回りに回動可能にチルトブラケット21に支持されている。
側壁70a及び保持筒31同士は、左右方向に延びる第2ボルト76によって連結されている。側壁70b及び保持筒31同士は、第2ボルト76によって連結されている。第2ボルト76は、第1ボルト75よりも後方に配置されている。これにより、リンク部材70は、軸線O4と平行に延びる軸線O5回りに回動可能に保持筒31に支持されている。
【0048】
チルトナット71は、側壁70aの下方に取り付けられている。チルトナット71の内周面には、雌ねじ部が形成されている。チルトナット71には、チルトシャフト62が噛み合っている。チルトナット71は、チルトシャフト62の回転に伴いチルトシャフト62上の位置が変更可能に構成されている。
【0049】
テレスコ機構46は、いわゆる送りねじ機構である。テレスコ機構46は、テレスコモータユニット(アクチュエータ)81と、テレスコ連結部82と、テレスコ可動部83と、を備えている。テレスコ機構46は、テレスコモータユニット81の駆動によってハウジング11に対するパイプ12(ステアリングシャフト13)の前後動の規制及び許容を切り替える。
テレスコモータユニット81は、テレスコギヤボックス85と、テレスコモータ86と、を備えている。
【0050】
テレスコギヤボックス85は、前側延出部32から左右方向の外側に張り出した状態で取り付けられている。したがって、テレスコモータユニット81は、チルト機構45の駆動力によってハウジング本体22と一体で軸線O2回りに回動可能に構成されている。
テレスコモータ86は、出力軸(不図示)を前方に向けた状態でテレスコギヤボックス85に後方から取り付けられている。テレスコモータ86の出力軸は、テレスコギヤボックス85内で減速機構に接続されている。テレスコモータユニット81は、ワイヤ等を介してチルトブラケット21に支持されていてもよい。
【0051】
図4は、荷重吸収機構15の分解斜視図である。
図4に示すように、テレスコ連結部82は、テレスコギヤボックス85から後方に延びている。テレスコ連結部82は、テレスコモータ86の駆動に伴い、軸線回りに回転する。テレスコ連結部82の外周面には、雄ねじ部82aが形成されている。
【0052】
テレスコ可動部83は、荷重吸収機構15を介してパイプ12に接続されている。テレスコ可動部83の内周面には、雌ねじ部83aが形成されている。テレスコ可動部83には、テレスコ連結部82が噛み合っている。テレスコ可動部83は、雌ねじ部83aを介して雄ねじ部82aに前後方向で係合(接触)している。テレスコ可動部83は、テレスコ連結部82の回転に伴いテレスコ連結部82上を移動可能に構成されている。
【0053】
<荷重吸収機構15>
図3図4に示すように、荷重吸収機構15は、テレスコ可動部83とパイプ12との間を接続している。荷重吸収機構15は、テレスコ動作時等、パイプ12に作用する前後方向の荷重が所定値未満の場合、テレスコ機構46の駆動力をパイプ12に伝達して、テレスコ可動部83とともにパイプ12をハウジング11に対して前後方向に移動させる。荷重吸収機構15は、二次衝突時等、パイプ12に作用する荷重が所定値以上の場合、テレスコ機構46とは独立してパイプ12をハウジング11に対して前後方向に移動させる。荷重吸収機構15は、ハンガブラケット100と、EA(Energy Absorbing)ブロック101と、EAプレート102と、を備えている。
【0054】
ハンガブラケット100は、パイプ12の前方部において、パイプ12の下部に固定されている。本実施形態において、ハンガブラケット100は、パイプ12の外周面に溶接等により固定されている。ハンガブラケット100は、スリット36内に配置されている。
【0055】
EAブロック101は、ハンガブラケット100の下方に設けられている。EAブロック101は、例えば鉄系材料の焼結材により一体に形成されている。EAブロック101は、固定プレート110と、第1摺動部111と、第2摺動部112と、を備えている。
固定プレート110は、ハンガブラケット100に下方から重ね合わされている。固定プレート110は、ハンガブラケット100にねじ止め等によって固定されている。EAブロック101は、パイプ12に直接固定されていてもよい。
【0056】
第1摺動部111及び第2摺動部112は、左右方向で対向している。第1摺動部111及び第2摺動部112は、固定プレート110から下方に突出している。各摺動部111,112は、スリット36を通じてハウジング本体22の外部に突出している。各摺動部111,112は、平面視において、後述する延在部150の中心を通り前後方向に延びる対称線に対して線対称に形成されている。したがって、以下の説明では、第1摺動部111を例にして説明する。
【0057】
図5は、荷重吸収機構15の拡大図である。
図5に示すように、第1摺動部111は、平面視において前後方向を長手方向とする長円形状に形成されている。第1摺動部111の外周面は、ガイド面121と、接触面122と、逃げ面123と、接続面124と、を有している。
ガイド面121は、第1摺動部111の外周面のうち、左右方向の外側を向く面(外側面)の一部を構成している。ガイド面121は、前後方向に沿って延びる平坦面である。但し、ガイド面121は、湾曲面等であってもよい。
【0058】
接触面122は、ガイド面121の前端縁に連なっている。接触面122は、第1摺動部111の外周面のうち、外側面の前端部から前面を経て左右方向の内側を向く面(内側面)の前端部を構成している。接触面122は、前方に向けて凸の湾曲面に形成されている。図示の例において、接触面122は、曲率半径が一様で、中心角が180°程度の半円状に形成されている。接触面122のうち、左右方向の最も内側に位置する部分(以下、押圧部122aという。)は、第1摺動部111の外周面のうち左右方向の最も内側に位置している。各摺動部111,112間における左右方向の間隔は、押圧部122a間において最小(距離L1)となっている。
【0059】
逃げ面123は、接触面122のうち、左右方向の内側端縁から後方に延びている。逃げ面123は、第1摺動部111の内側面の一部を構成している。逃げ面123は、後方に向かうに従い左右方向の外側に向けて延びる傾斜面に形成されている。したがって、各摺動部111,112間における左右方向の間隔は、後方に向かうに従い漸次拡大している。
接続面124は、ガイド面121及び逃げ面123の後端縁同士を架け渡している。接続面124は、第1摺動部111の外周面のうち、内側面の後端部から後面を経て外側面の後端部を構成している。接続面124のうち、ガイド面121及び逃げ面123との境界部分は、丸みを帯びている。
【0060】
図3図4に示すように、EAプレート102は、メインプレート130とサブプレート131とを備えている。
メインプレート130は、前後方向から見た正面視でクランク状に形成されている。メインプレート130は、EAブロック101よりも硬度が低い材料(例えば、SPHC等)により形成されている。メインプレート130は、取付片132と、連結片133と、動作片134と、支持片135と、を備えている。
【0061】
取付片132は、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。取付片132は、上述したテレスコ可動部83に上方から取り付けられている。EAプレート102は、テレスコ可動部83と一体で前後動可能に構成されている。
連結片133は、取付片132における左右方向の内側端縁から下方に延びている。
【0062】
動作片134は、連結片133の下端縁から左右方向の内側に延びている。動作片134は、パイプ12を下方から覆っている。動作片134の後端部は、EAブロック101(摺動部111,112)と平面視で重なり合っている。動作片134には、長孔(第1長孔140及び第2長孔141)が形成されている。
【0063】
支持片135は、動作片134のうち、連結片133とは反対側に位置する端縁から上方に延びている。支持片135の上端部は、上述した凹部39a内に収容されている。凹部39a内には、ガイドレール144が設けられている。ガイドレール144は、下方に向けて開口するU字状に形成されるとともに、凹部39a内を前後方向に延びている。ガイドレール144は、凹部39aの内面を被覆するように凹部39a内に嵌め込まれている。ガイドレール144は、支持片135との間に発生する摩擦抵抗が、支持片135と凹部39aの内面との間に作用する摩擦抵抗よりも小さい材料(例えば、樹脂材料等)により形成されている。ガイドレール144の内側には、上述した支持片135が収容されている。ガイドレール144は、ハウジング本体22に対するメインプレート130(EAプレート102)の左右方向の移動を規制しつつ、前後方向の移動を案内する。
【0064】
サブプレート131は、テレスコ可動部83と動作片134との間を接続している。サブプレート131のうち、左右方向の外側端部は、テレスコ可動部83に下方から取り付けられている。すなわち、サブプレート131は、上述した取付片132とともに、テレスコ可動部83を上下方向で挟み込んでいる。サブプレート131における左右方向の内側端部は、動作片134に接続されている。
【0065】
図6は、図3のVI矢視図である。
ここで、図5図6に示すように、上述した各長孔140,141は、動作片134を上下方向に貫通するとともに、前後方向に延びている。各長孔140,141は、平面視において後述する延在部150の中心を通り前後方向に延びる対称線に対して線対称に形成されている。したがって、以下の説明では、第1長孔140を例にして説明する。
第1長孔140は、前後方向の両端部に位置する拡大部(前側拡大部145及び後側拡大部146)と、拡大部145,146同士を接続する遷移部147と、を備えている。
遷移部147は、前後方向に直線状に延びている。遷移部147のうち、左右方向の外側を向く外向側面147a、及び左右方向の内側を向く内向側面147b同士は、前後方向に沿って互いに平行に延びる平坦面に形成されている。
【0066】
図6に示すように、前側拡大部145は、左右方向における幅(最大幅)が、遷移部147における左右方向の幅(最大幅)よりも広くなっている。前側拡大部145は、遷移部147の外向側面147aに対して左右方向の内側に膨出している。前側拡大部145の内周面は、湾曲面に形成されている。
【0067】
図5に示すように、後側拡大部146は、左右方向における幅(最大幅)が、遷移部147における左右方向の幅(最大幅)よりも広くなっている。後側拡大部146は、遷移部147の外向側面147aに対して左右方向の内側に膨出している。後側拡大部146の前端部は、前方に向かうに従い左右方向の外側に延びる傾斜面146aを介して遷移部147の外向側面147aに連なっている。後側拡大部146内には、上述した第1摺動部111が嵌まり込んでいる。第1摺動部111のガイド面121は、後側拡大部146の内向側面146bに近接又は当接している。第1摺動部111の押圧部122aは、後側拡大部146の外向側面146cに近接又は当接している。
【0068】
図4図5図6に示すように、動作片134のうち、各長孔140,141間に位置する部分は、前後方向に沿って延びる延在部150を構成している。延在部150は、前側括れ部151と、後側括れ部(幅狭部)152と、幅広部153と、を備えている。前側括れ部151は、前側拡大部145間に位置する部分である。後側括れ部152は、後側拡大部146同士の間に位置する部分である。各括れ部151,152における左右方向の幅は、各摺動部111,112の押圧部122a間の距離L1以下に設定されている。
【0069】
幅広部153のうち、各括れ部151,152に対して左右方向の外側に膨出した部分は、変形部155を構成している。変形部155は、正面視において、各摺動部111,112の接触面122のうち、少なくとも押圧部122aと正面視で重なり合っている。変形部155は、二次衝突時等、EAブロック101に対して前方に向けて所定の荷重が入力された際に、各摺動部111,112(押圧部122a)が摺動することで塑性変形可能に構成されている。したがって、変形部155は、パイプ12を介してEAブロック101に作用する荷重が所定未満の場合(例えば、テレスコ動作時等)には変形不能になっている。パイプ12に作用する荷重が所定値未満の場合には、各摺動部111,112が各後側拡大部146内に嵌まり込んだ状態で、EAプレート102に対するEAブロック101の相対移動が規制されている。
【0070】
動作片134のうち、各長孔140,141に対して延在部150とは反対側(左右方向の外側)に位置する部分は、前後方向に沿って延びるガイド156を構成している。ガイド156は、各摺動部111,112に対して左右方向の外側に位置して、各摺動部111,112の左右方向の外側への変位を規制する。ガイド156のうち左右方向の内側を向く側面(長孔140,141の内向側面146b,147b)は、上述したガイド面121に対向している。なお、ガイド156とガイド面121とは当接していてもよい。
【0071】
[作用]
次に、上述したステアリング装置1の作用を説明する。以下の説明では、チルト動作、テレスコ動作及び二次衝突時のコラプスストロークについて主に説明する。
【0072】
<チルト動作>
図1に示すように、チルト動作は、チルトモータ56の駆動力がリンク部材70を介してハウジング本体22に伝達されることで、ハウジング本体22が軸線O2回りに回動する。ステアリングホイール2を上向きに調整する場合には、チルトモータ56が駆動することで、チルトワイヤ61及びチルトシャフト62が例えば第1方向(チルトナット71の緩み方向)に回転する。チルトシャフト62が第1方向に回転すると、チルトナット71がチルトシャフト62に対して後方に移動する。チルトナット71が後方に移動することで、ハウジング本体22がチルトブラケット21に対して軸線O2回りの上方に向けて回動する。その結果、ステアリングホイール2が、ハウジング本体22やパイプ12、ステアリングシャフト13等とともに軸線O2回りの上方に回動する。
【0073】
ステアリングホイール2を下向きに調整する場合には、チルトシャフト62を第2方向(チルトナット71の締め付け方向)に回転させる。すると、チルトナット71がチルトシャフト62に対して前方に移動する。チルトナット71が前方に移動することで、ハウジング本体22がチルトブラケット21に対して軸線O2回りに下方へ向けて回動する。その結果、ステアリングホイール2が、ハウジング本体22やパイプ12、ステアリングシャフト13等とともに軸線O2回りの下方に回動する。
【0074】
<テレスコ動作>
テレスコ動作は、テレスコモータ86の駆動力がEAプレート102及びEAブロック101を介してパイプ12に伝達されることで、パイプ12及びインナシャフト42がハウジング11及びアウタシャフト43に対して前後動する。ステアリングホイール2を後方に移動させる場合には、テレスコモータ86の駆動により、テレスコ連結部82を例えば第1方向(テレスコ可動部83の緩み方向)に回転させる。テレスコ連結部82が第1方向に回転すると、テレスコ可動部83及びEAプレート102がテレスコ連結部82に対して後方に移動する。EAプレート102の駆動力は、EAブロック101に伝達される。この際、各摺動部111,112が各後側拡大部146内に嵌まり込んだ状態で、EAプレート102に対するEAブロック101の相対移動が規制されている。そのため、EAプレート102の駆動力がEAブロック101を介してパイプ12に伝達される。その結果、パイプ12がインナシャフト42とともに後方に移動することで、ステアリングホイール2が後方に移動する。
【0075】
ステアリングホイール2を前方に移動させる場合、テレスコ連結部82を例えば第2方向に回転させる。テレスコ連結部82が第2方向(テレスコ可動部83の締め付け方向)に回転すると、テレスコ可動部83及びEAプレート102がテレスコ連結部82に対して前方に移動する。EAプレート102の前方移動に伴い、EAプレート102の駆動力がEAブロック101を介してパイプ12に伝達される。これにより、パイプ12が前方に移動することで、ステアリングホイール2が前方に移動する。
【0076】
<二次衝突時>
次に、二次衝突時の動作について説明する。
図6に示すように、二次衝突時(衝突荷重が所定値以上の場合)には、ステアリングホイール2がパイプ12やEAブロック101、インナシャフト42とともに、ハウジング本体22及びアウタシャフト43に対して前方に移動する。
【0077】
図7は、二次衝突時の動作を説明するための説明図である。
図6図7に示すように、二次衝突時には、ステアリングホイール2を介してパイプ12に前方への衝突荷重が作用する。この際、衝突荷重は、EAブロック101を介してEAプレート102に作用する。しかし、本実施形態では、テレスコ可動部83の雌ねじ部83aとテレスコ連結部82の雄ねじ部82aとが前後方向で係合(接触)しているため、ハウジング11に対するEAプレート102の前方移動が規制されている。したがって、ステアリングシャフト13、パイプ12、ハンガブラケット100及びEAブロック101は、EAプレート102及びハウジング11に対して前方に移動しようとする。
【0078】
本実施形態において、各摺動部111,112の押圧部122a間の距離L1は、幅広部153の幅L2よりも狭い。そのため、EAブロック101は、各摺動部111,112が延在部150をしごきながらEAプレート102に対して前方に移動する。各摺動部111,112の押圧部122aは、傾斜面146aを経て幅広部153の外側面(遷移部147の外向側面147a(第1側を向く側面、及び第2側を向く側面))上を摺動する際、変形部155を左右方向の内側に塑性変形(圧壊)させる。このように、ステアリングシャフト13等が、EAプレート102及びハウジング11に対して前方に移動する過程で、各摺動部111,112が延在部150をしごく際に発生する荷重によって、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重が緩和される。
【0079】
EAブロック101とEAプレート102との間で発生する荷重は、各摺動部111,112間の距離L1と幅広部153の幅L2との差分や、幅広部153の厚さ等を変更することで調整できる。二次衝突時には、各摺動部111,112によって延在部150をしごく際の荷重に加え、例えばパイプ12の外周面と保持筒31の内周面との間の摺動抵抗等で衝撃荷重を緩和してもよい。パイプ12の外周面と保持筒31の内周面との摺動部分に高摩擦係数の塗料を塗布したり、凹凸加工等を施したりしてもよい。
【0080】
このように、本実施形態では、テレスコ機構46において、送り機構(一方の部材)に連結された延在部150に対して左右方向の両側に、パイプ(他方の部材)12に連結された摺動部111,112が配置された構成とした。
この構成によれば、一方の摺動部と延在部150(変形部155)との間に作用する荷重によって延在部150が一方の摺動部から離間する側へ移動又は変形しようとした場合に、他方の摺動部(規制部)によって延在部150の移動又は変形を規制できる。これにより、延在部150を効率的に塑性変形させることができ、所望の衝撃吸収性能を確保することができる。本実施形態において、「移動又は変形」のうち、移動とは塑性変形を伴わずに例えば延在部150が一方の摺動部から離間する側に変位したり、摺動部111,112が延在部150から離間する側に変位したりすることを意味している。変形とは塑性変形を伴わずに例えば延在部150が一方の摺動部から離間する側に撓んだり、摺動部111,112が延在部150から離間する側に撓んだりすることを意味する。本実施形態では、上述した移動及び変形の少なくとも一方を規制できればよい。
【0081】
本実施形態では、テレスコ機構46において、テレスコ連結部(送り機構)82がテレスコ可動部(送り機構)83に螺合する構成とした。
この構成によれば、二次衝突時において、テレスコ連結部82の雄ねじ部82aと、テレスコ可動部83の雌ねじ部83aと、が接触することで、テレスコ連結部82に対するテレスコ可動部83の前方への移動が規制される。これにより、二次衝突時において、テレスコ連結部82とともにEAプレート102が前方に移動するのを抑制できる。そのため、延在部150と摺動部111,112との間に効果的に荷重を発生させることができる。その結果、所望の衝撃吸収性能を確保できる。
【0082】
本実施形態では、テレスコ機構46のテレスコモータユニット(アクチュエータ)81がハウジング11(ハウジング本体22)に固定されているため、テレスコ動作時及び二次衝突時においてテレスコモータユニット81が移動しない。そのため、ステアリング装置1の周囲にテレスコモータユニット81の移動スペースを確保する必要がなく、レイアウト性の向上を図ることができる。
特に、テレスコ機構46として送りねじ機構を採用することで、テレスコ連結部(シャフト)82の雄ねじ(係合部)82aとテレスコ可動部(ナット)83の雌ねじ(被係合部)83aとの係合力を確保し易くなる。テレスコ動作時においてテレスコモータユニット81の回転量に対するパイプ12のストロークを調整し易い。
【0083】
本実施形態では、各摺動部111,112によって延在部150の左右両側部(変形部155)を塑性変形させる構成とした。
この構成によれば、EAプレート102に対するEAブロック101の前方移動に伴い、各摺動部111,112によって延在部150がしごかれるように塑性変形する。これにより、延在部150が一方の摺動部から離間する側への移動変形を規制した上で、衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
【0084】
本実施形態では、各摺動部111,112が平面視において線対称に形成された構成とした。
この構成によれば、各摺動部111,112と延在部150との間に作用する荷重が均等になり易い。
【0085】
本実施形態では、EAプレート102が、各摺動部111,112に対して延在部150とは反対側にガイド(第1ガイド及び第2ガイド)156を備える構成とした。
この構成によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、延在部150に沿って各摺動部111,112を前方にスムーズに移動させることができる。延在部150と各摺動部111,112との間に作用する荷重によって、各摺動部111,112が左右方向の外側に移動又は変形しようとした場合に、各摺動部111,112の移動又は変形をガイド156によって規制することができる。
【0086】
本実施形態では、EAプレート102(延在部150)が左右方向の第1側でテレスコ機構46に接続され、左右方向の第2側で支持片135を介してハウジング本体22に支持されている構成とした。
この構成によれば、ハウジング11に対するEAプレート102の左右方向の移動を規制できる。これにより、二次衝突時において、各摺動部111,112と延在部150との間に発生する荷重によってEAプレート102自体が左右方向に位置ずれするのを抑制できる。
【0087】
しかも、本実施形態では、テレスコ機構46において、送り機構(一方の部材)に連結された延在部150に対して左右方向の両側に、パイプ(他方の部材)12に連結された摺動部111,112が配置された構成とした。その上で、本実施形態では、各摺動部111,112のうち延在部150との接触部分である押圧部(第1接触部及び第2接触部)122aが、平面視において延在部150に向けて凸の湾曲面をなす構成とした。
この構成によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、摺動部111,112が延在部150上を摺動する際、押圧部122aと延在部150との引っ掛かりを抑制できる。これにより、摺動部111,112を延在部150上でスムーズに移動させることができる。これにより、コラプスストロークの全体に亘って効率的に衝撃荷重を緩和することができるので、衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
【0088】
本実施形態では、テレスコ機構46において、テレスコ連結部(送り機構)82がテレスコ可動部(送り機構)83に螺合する構成とした。
この構成によれば、二次衝突時において、テレスコ連結部82の雄ねじ部82aと、テレスコ可動部83の雌ねじ部83aと、が接触することで、テレスコ連結部82に対するテレスコ可動部83の前方への移動が規制される。これにより、二次衝突時において、テレスコ連結部82とともにEAプレート102が前方に移動するのを抑制できる。そのため、延在部150と摺動部111,112との間に効果的に荷重を発生させることができる。その結果、所望の衝撃吸収性能を確保できる。
【0089】
また、本実施形態では、テレスコ機構46のテレスコモータユニット(アクチュエータ)81がハウジング11(ハウジング本体22)に固定されているため、テレスコ動作時及び二次衝突時においてテレスコモータユニット81が移動する必要がない。そのため、ステアリング装置1の周囲にテレスコモータユニット81の移動スペースを確保する必要がなく、レイアウト性の向上を図ることができる。
特に、テレスコ機構46として送りねじ機構を採用することで、テレスコ連結部(シャフト)82の雄ねじ(係合部)82aとテレスコ可動部(ナット)83の雌ねじ(係合部)83aとの係合力を確保し易くなる。テレスコ機構46として送りねじ機構を採用することで、テレスコ動作時においてテレスコモータユニット81の回転量に対するパイプ12のストロークを調整し易い。
【0090】
本実施形態では、延在部150は、各摺動部111,112の押圧部122a間の距離L1よりも幅が狭い後側括れ部(幅狭部)152と、押圧部122a間の距離L1よりも広い幅広部153と、を備えている構成とした。
この構成によれば、幅広部153のうち後側括れ部152に対して左右方向の外側に膨出した部分は、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、摺動部111,112(押圧部122a)によって塑性変形可能な変形部155として機能する。本実施形態では、押圧部122aと延在部150との引っ掛かりを抑制できるので、摺動部111,112と変形部155との締め代(正面視で重なり合う範囲)を確保し易くなる。そのため、変形部155を効果的に塑性変形させることができ、所望の衝撃吸収性能を確保し易い。
【0091】
本実施形態では、摺動部111,112の外周面は、押圧部122aに対して前後方向の両側に向かうに従い延在部150から離間する側に延在する構成とした。
この構成によれば、摺動部111,112のうち押圧部122a以外の部分がコラプスストローク時において、延在部150と接触するのを抑制できる。これにより、摺動部111,112のうち、延在部150との接触位置を安定させることができ、所望の衝撃吸収性能を確保し易い。
【0092】
本実施形態では、EAプレート102が、各摺動部111,112に対して延在部150とは反対側にガイド(第1ガイド及び第2ガイド)156を備える構成とした。
この構成によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、延在部150に沿って各摺動部111,112を前方にスムーズに移動させることができる。また、延在部150と各摺動部111,112との間に作用する荷重によって、各摺動部111,112が左右方向の外側に移動又は変形しようとした場合に、各摺動部111,112の移動又は変形をガイド156によって規制することができる。本実施形態において、「移動又は変形」のうち、移動とは塑性変形を伴わずに例えば延在部150が一方の摺動部から離間する側に変位したり、摺動部111,112が延在部150から離間する側に変位したりすることを意味している。変形とは塑性変形を伴わずに例えば延在部150が一方の摺動部から離間する側に撓んだり、摺動部111,112が延在部150から離間する側に撓んだりすることを意味する。なお、本実施形態では、上述した移動及び変形の少なくとも一方を規制できればよい。
【0093】
本実施形態では、摺動部111,112のうち、ガイド156と対向する対向面は、前後方向に沿って延びるガイド面121を有している構成とした。
この構成によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、摺動部111,112がガイド156の内向端面に沿ってスムーズに案内される。
【0094】
(変形例)
上述した実施形態では、各摺動部111,112が長円形状に形成された場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、摺動部111,112は、図8に示すような平面視で真円形状であってもよく、図9に示すような左右方向を長手方向とする長円形状であってもよい。摺動部111,112は、図10に示すように一つの頂点が左右方向の内側を向く三角形状であってもよく、三角形状以外の多角形状(矩形状)であってもよい。なお、摺動部111,112を多角形状に形成した場合において、左右方向の内側を向く頂点の前後方向の位置は適宜変更が可能である。
【0095】
さらに、摺動部111,112は、図11に示すように、平面視で長方形状の矩形部161と、矩形部161から左右方向の内側に膨出する膨出部162と、を有する構成であってもよい。矩形部161のうち、左右方向の外側を向く面は、前後方向に直線状に延びるガイド面121を構成している。一方、膨出部162は、左右方向の内側に向けて凸の半円形状に形成されている。なお、膨出部162は、三角形状等であってもよい。
【0096】
上述した実施形態では、ガイド面121が前後方向に直線状に延びる平坦面に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。ガイド面121は、図12に示すように、前後方向に間隔をあけて形成されていてもよい。図示の例において、ガイド面121は、左右方向の外側に膨出する半円形状に形成されている。
【0097】
上述した実施形態において、各摺動部111,112は、上下方向に直交する断面積が上下方向の全域に亘って一様な構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、図13に示すように、各摺動部111,112の断面積が上下方向で異なるように形成してもよい。図示の例において、各摺動部111,112は、下方に向かうに従い断面積が縮小する円錐台形状に形成されている。
この構成によれば、各摺動部111,112のうち、延在部150との接触位置を上下方向で変更することで、各摺動部111,112と延在部150との締め代の調整を行うことができる。接触位置の調整は、ハンガブラケット100や固定プレート110の厚さ等を変更したり、別途スペーサ等を用いたりしてもよい。なお、図13に示す例では、各摺動部111,112の断面積が下方に向かうに従い漸次縮小する構成について説明したが、この構成に限られない。各摺動部111,112における上下方向の中央部の断面積が上下両端部の断面積に比べて小さくなっていてもよい。
【0098】
上述した実施形態では、各摺動部111,112が線対称に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、図14に示す摺動部111,112のように、左右非対称に形成してもよい。
【0099】
上述した実施形態では、各摺動部111,112が押圧部122aを一つずつ有する構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、図15に示すように、各摺動部111,112が複数の押圧部200,201を有する構成であってもよい。各押圧部200,201は、一つの頂点が左右方向の内側を向く三角形状に形成されている。各押圧部200,201の頂面200a,201aは、平面視において左右方向の内側に向けて凸の湾曲面に形成されている。
【0100】
各押圧部200,201は、前後方向で連なっている。各押圧部200,201は、左右方向の外側を向く面(以下、ガイド面210という。)が面一に配置されている。一方、前側押圧部200の頂面200aは、後側押圧部201の頂面201aよりも左右方向の外側に位置している。したがって、各摺動部111,112のうち、各前側押圧部200の頂面200a間における左右方向の距離をL1a、各後側押圧部201の頂面201a間の距離をL1bとすると、L1a>L1bに設定されている。なお、第1摺動部111における左右方向の内側を向く面のうち、各押圧部200,201間に位置する部分は、各押圧部200,201の斜面により形成された逃げ部211が形成されている。逃げ部211は、頂面200a,201aに対して左右方向の外側に窪んでいる。
【0101】
図16に示す摺動部111,112のように、各押圧部200,201は、前後方向に離間していてもよい。図示の例において、各押圧部200,201は、平面視において、外径が異なる真円状に形成されている。
【0102】
(第2実施形態)
図17は、第2実施形態に係るステアリング装置1の拡大底面図である。図18は、第2実施形態に係るステアリング装置1を示す図であって、図3に対応する断面図である。
図17図18に示すステアリング装置1において、荷重吸収機構15は、EAカバー(規制部材)300を備えている。EAカバー300は、ハウジング本体22(摺動部111,112)に対するEAプレート102の下方への移動を規制する。EAカバー300は、ハウジング本体22の下部において、軸線O1に対してテレスコ機構46側とは反対側に配置されている。EAカバー300は、EAプレート102の一部を下方から覆っている。
【0103】
EAカバー300は、規制プレート301と、摺動プレート302と、を備えている。
規制プレート301は、摺動プレート302よりも剛性の高い材料(例えば、金属材料)により形成されている。規制プレート301は、上下方向を厚さ方向として、前後方向に延びている。規制プレート301は、重なり片301aと、取付片301bと、を備えている。
【0104】
重なり片301aは、第2突出壁39の下方において、前後方向に延びている。重なり片301aは、動作片134の左側端部(テレスコ機構46とは反対側の端部)に下方から重なり合っている。図示の例において、重なり片301aは、延在部150に対して左側のガイド156に重なり合っている。重なり片301aの前後方向の寸法は、EAプレート102(動作片134)よりも長い。
【0105】
取付片301bは、重なり片301aから左右方向の外側や前方に張り出している。取付片301bは、テレスコ動作時におけるEAプレート102の動作軌跡から外れた部分において、ハウジング本体22に固定されている。取付片301bは、例えばボルト305等によってハウジング本体22に固定されている。
【0106】
摺動プレート302は、重なり片301aの上面に重なり合っている。摺動プレート302は、動作片134との間に発生する摩擦抵抗が、動作片134と規制プレート301との間に作用する摩擦抵抗よりも小さい材料(例えば、樹脂材料等)により形成されている。摺動プレート302は、重なり片301aに固定されている。摺動プレート302の固定方法は、ピンを重なり片301aに圧入したり、かえし爪を有するピンを重なり片301aに係止したりして固定してもよく、接着等によって固定してもよい。
【0107】
図18に示すように、摺動プレート302は、重なり片301aと動作片134との間に位置している。摺動プレート302の上面は、動作片134の下面に近接又は当接している。EAカバー300は、摺動プレート302を備えない構成であってもよい。
【0108】
本実施形態のステアリング装置1では、テレスコ動作時において、パイプ12がインナシャフト42とともに前後方向に移動する際、EAプレート102はEAカバー300に対して前後方向に移動する。摺動プレート302は、動作片134に当接していてもよい。この場合、摺動プレート302は、テレスコ動作時において動作片134の下面が摺動する。
【0109】
二次衝突時において、摺動部111,112と延在部150との間に作用する荷重が大きくなると、EAプレート102が各摺動部111,112によって下方に押し退けられる。すると、EAプレート102は、第1摺動部111が第1長孔140から離脱しようとするとともに、第2摺動部112が第2長孔141から離脱しようとする。この際、動作片134が摺動プレート302を介してEAカバー300に接触する。これにより、ハウジング本体22(摺動部111,112)に対するEAプレート102の下方への移動が規制される。その結果、摺動部111,112がEAプレート102から離脱するのを抑制し、荷重吸収機構15による吸収エネルギーを、コラプスストローク全域に亘って安定させることができる。
【0110】
本実施形態のステアリング装置1では、金属製の規制プレート301と動作片134との間に樹脂製の摺動プレート302を配置することで、テレスコ操作時に金属同士の接触による異音や摩耗等を抑制できる。
【0111】
以上、本開示の好ましい実施例を説明したが、本開示はこれら実施例に限定されることはない。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、軸線O1が前後方向に交差している構成について説明していたが、この構成のみに限られない。軸線O1は、車両の前後方向に一致していてもよい。
【0112】
上述した実施形態では、テレスコ機構46が送りねじ機構である場合について説明したが、この構成のみに限られない。テレスコ機構46は、例えば歯車等を用いてもよい。
【0113】
上述した実施形態では、2つの摺動部111,112によって延在部150を塑性変形させる構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、延在部150に対して左右方向の第1側に摺動部を配置し、延在部150に対して左右方向の第2側に延在部150の移動又は変形を規制する規制部を配置してもよい。すなわち、規制部は、延在部150が移動又は変形しない限り、延在部150から離間する構成であってもよい。この場合、延在部150は、左右方向の第1側を向く側面のみに変形部155が形成されていればよい。
上述した実施形態では、長孔140,141の間に位置する部分を延在部150とし、長孔140,141に対して左右方向の外側に位置する部分をガイド156とした場合について説明したが、この構成に限られない。EAプレート102は、少なくとも延在部150を有していれば、長孔140,141やガイド156を有さない構成であってもよい。
【0114】
上述した実施形態では、EAプレート102がテレスコ機構46(テレスコ可動部83)とハウジング本体22(突出壁39)との間に架け渡された構成について説明したが、この構成に限られない。EAプレート102は、テレスコ機構46に片持ちで支持されていてもよい。
上述した実施形態では、延在部150が1列の構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、延在部150は、左右方向や上下方向に複数設けられていてもよい。摺動部及び規制部は、延在部150の数に応じて設けることが可能である。
上述した実施形態では、パイプ12側にEAブロック101(摺動部111,112等)を設け、ハウジング本体22側にEAプレート102(延在部150等)を設けた場合について説明したが、この構成に限られない。例えばパイプ12側にEAプレート102を設け、ハウジング本体22側にEAブロック101を設けてもよい。
上述した実施形態では、摺動部111,112が固定プレート110に一体に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、摺動部は、ボルト形状に形成され、固定プレート110に対してEAプレート102を間に挟んで反対側(下方)から固定プレート110に締結されていてもよい。図19に示すように、ボルト350は、軸部350aと、頭部350bと、を備えている。軸部350aは、第1長孔140(又は第2長孔141)を通じて固定プレート110等に固定されている。軸部350aのうち、第1長孔140(又は第2長孔141)内に位置する部分は、延在部150に摺動する第1摺動部111(又は第2摺動部112)として機能する。軸部350aのうち、延在部150と摺動する部分の断面視形状は適宜変更が可能である。
頭部350bは、軸部350aに対して拡大されている。頭部350bにおいて、外周部分の一部は、EAプレート102(延在部150やガイド156)に対して下方から重なり合っている。頭部350bは、摺動部111,112に対するEAプレート102(延在部150)の上下方向の移動を規制する規制部材として機能する。図19の例において、頭部350bとEAプレート102との間には、隙間Sが設けられている。そのため、軸部350aが延在部150をしごくことによって発生する変形痕(バリ等)が頭部350bに接触するのを抑制できる。これにより、変形痕によってコラプスストロークが阻害されるのを抑制できる。
規制部材は、摺動部111,112に対する延在部150の上下方向の移動が規制される構成であればよい。すなわち、規制部材は、第2実施形態のように延在部150以外の部分に当接するEAカバー300によって、延在部150の上下方向への移動を間接的に規制してもよい。規制部材は、変形例に係る頭部350bのように延在部150に直接当接することで、延在部150の上下方向への移動を直接規制してもよい。
規制部材は、ハウジング本体22に設けられていてもパイプ12に設けられていてもよい。
【0115】
上述した実施形態では、EAプレート102のみが塑性変形する構成について説明したが、摺動部111,112が延在部150上を摺動する過程で、EAプレート102及びEAブロック101の少なくとも一方が塑性変形する構成であればよい。
【0116】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1…ステアリング装置
2…ステアリングホイール
11…ハウジング
12…パイプ(他方の部材、一方の部材)
13…ステアリングシャフト
15…荷重吸収機構
46…テレスコ機構
81…テレスコモータユニット(アクチュエータ)
82…テレスコ連結部(送り機構、シャフト)
83…テレスコ可動部(一方の部材、他方の部材、送り機構、ナット)
111…第1摺動部(摺動部、規制部)
112…第2摺動部(規制部、摺動部)
121…ガイド面(対向面)
122a…押圧部(第1接触部、第2接触部)
150…延在部
156…ガイド(第1ガイド及び第2ガイド)
200a,201a…頂面(第1接触部、第2接触部)
210…ガイド面(対向面)
300…EAカバー(規制部材)
350b…頭部(規制部材)
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