(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/19 20060101AFI20240920BHJP
B62D 1/181 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B62D1/19
B62D1/181
(21)【出願番号】P 2022510437
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011451
(87)【国際公開番号】W WO2021193451
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2020058296
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】本間 太輔
(72)【発明者】
【氏名】関口 暢
(72)【発明者】
【氏名】馬場 洋光
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-019327(JP,A)
【文献】特開2019-156334(JP,A)
【文献】特開2019-107993(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030285(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に沿う軸線回りに回転可能にステアリングシャフトが挿入されるパイプと、
車体に支持されるとともに、前記パイプを前後方向に移動可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングに対して前記パイプを前後方向に移動させるテレスコ機構と、
前記パイプ及び前記テレスコ機構の間を接続する荷重吸収機構と、を備え、
前記テレスコ機構は、
前記ハウジングに連結されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに連結された係合部及び前記荷重吸収機構に連結され前記係合部に前後方向で係合する被係合部を有し、前記係合部及び前記被係合部を介して前記アクチュエータの駆動力を前記パイプに伝達させる送り機構と、を備え、
前記荷重吸収機構は、
前記パイプ及び前記送り機構の何れか一方の部材に設けられ、前後方向に沿って延びる延在部と、
前記パイプ及び前記テレスコ機構の何れか他方の部材において、前記延在部に対して左右方向の両側にそれぞれ設けられ、前記パイプに作用する前方への荷重が所定値以上の場合に、前記延在部のうち左右方向を向く側面上を摺動しながら前記一方の部材に対して相対移動する摺動部と、を備え、
少なくとも一方の前記摺動部は、
前記延在部の前記側面に接触する前側押圧部と、
前記前側押圧部よりも後方において、前記延在部を間に挟んで前記一方の摺動部と向かい合う他方の前記摺動部との間の左右方向の第1距離が前記前側押圧部と前記他方の摺動部との間の左右方向の第2距離よりも短い後側押圧部と、を備えているステアリング装置。
【請求項2】
前記後側押圧部のうち前記延在部に接触する後側接触部、及び前記前側押圧部のうち前記延在部に接触する前側接触部は、それぞれ前記延在部に向けて凸の湾曲面をなしている請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記一方の部材には、
前記一方の摺動部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記一方の摺動部の前後方向への移動を案内する第1ガイドと、
前記他方の摺動部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記他方の摺動部の前後方向への移動を案内する第2ガイドと、が設けられている請求項1又は請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記一方の摺動部のうち前記第1ガイドと対向する面、及び前記他方の摺動部のうち前記第2ガイドと対向する面は、前後方向に延びる平坦面に形成されている請求項3に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記延在部は、
左右方向の幅が前記第1距離よりも大きく前記第2距離以下に形成されるとともに、前記前側押圧部が接触する第1幅狭部と、
前記第1幅狭部の後方に位置して左右方向の幅が前記第1距離以下に形成された第2幅狭部と、
前記第1幅狭部の前方に位置して左右方向の幅が前記第2距離よりも大きく形成された幅広部と、を備えている請求項1から請求項4の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記送り機構は、
前記アクチュエータの出力軸に連結されるとともに、前記係合部として雄ねじを有するシャフトと、
前記一方の部材に接続されるとともに、前記被係合部として前記雄ねじに係合する雌ねじ部が形成されたナットと、を備えている請求項1から請求項5の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項7】
前記荷重吸収機構は、前記摺動部に対する前記延在部の上下方向への移動を規制する規制部材を備えている請求項1から請求項6の何れか1項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリング装置に関する。
本願は、2020年3月27日に日本に出願された特願2020-058296号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置では、運転者の体格差や運転姿勢に応じてステアリングホイールの前後位置を調整するテレスコピック機能を備えたものがある。この種のステアリング装置としては、車体に支持されたアウタコラムと、前後方向に移動可能にアウタコラム内に保持されたインナコラムと、アウタコラム及びインナコラムを前後動可能に接続するテレスコ機構と、を備えている。インナコラムは、ステアリングシャフトを回転可能に支持する。ステアリングシャフトの後端部には、ステアリングホイールが取り付けられる。
【0003】
ステアリング装置では、二次衝突時等、所定の荷重がステアリングホイールに作用した場合に、インナコラムがアウタコラムに対して前方に移動する過程(いわゆる、コラプスストローク)で、運転者に加わる衝撃荷重を緩和する構成が搭載されている。例えば、下記特許文献1には、テレスコ機構に形成されたガイド突起が、アウタコラムに形成されたガイド溝内に保持された構成が開示されている。
【0004】
特許文献1発明に係るステアリング装置では、テレスコ動作の際、テレスコ機構の駆動力によってインナコラムがテレスコ機構(電動モータ)とともにアウタコラムに対して前後動する。
一方、二次衝突時において、所定の荷重がステアリングホイールに作用した場合には、インナコラムがテレスコ機構から離脱する。これにより、インナコラムは、アウタコラムに対して前方に移動しようとする。この際、ガイド突起がガイド溝の幅を拡大させながらインナコラムが前方に移動する。その結果、特許文献1発明に係るステアリング装置は、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重を緩和するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、衝撃荷重を効率的に緩和させるには、ガイド突起及びガイド溝の内壁の何れかを塑性変形させることが好ましいと考えられる。この場合、衝撃吸収性能を高めるために、ガイド突起及びガイド溝の締め代(正面視での重なり量)を大きくすることも考えられる。
しかしながら、ガイド突起及びガイド溝の締め代を大きくすると、特に初期荷重(動き出し荷重)が大きくなり易い。その結果、従来のステアリング装置は、コラプスストローク時(二次衝突時のストローク)の荷重変動が大きいという課題があった。
【0007】
本開示は、コラプスストローク時の荷重変動を抑制でき、吸収エネルギーを安定させることができるステアリング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係るステアリング装置は、前後方向に沿う軸線回りに回転可能にステアリングシャフトが挿入されるパイプと、車体に支持されるとともに、前記パイプを前後方向に移動可能に支持するハウジングと、前記ハウジングに対して前記パイプを前後方向に移動させるテレスコ機構と、前記パイプ及び前記テレスコ機構の間を接続する荷重吸収機構と、を備えている。前記テレスコ機構は、前記ハウジングに連結されたアクチュエータと、前記アクチュエータに連結された係合部及び前記荷重吸収機構に連結され前記係合部に前後方向で係合する被係合部を有し、前記係合部及び前記被係合部を介して前記アクチュエータの駆動力を前記パイプに伝達させる送り機構と、を備えている。前記荷重吸収機構は、前記パイプ及び前記送り機構の何れか一方の部材に連結され、前後方向に沿って延びる延在部と、前記パイプ及び前記テレスコ機構の何れか他方の部材において、前記延在部に対して左右方向の両側にそれぞれ設けられ、前記パイプに作用する前方への荷重が所定値以上の場合に、前記延在部のうち左右方向を向く側面上を摺動しながら前記一方の部材に対して相対移動する摺動部と、を備えている。少なくとも一方の前記摺動部は、前記延在部の前記側面に接触する前側押圧部と、前記前側押圧部よりも後方において、前記延在部を間に挟んで前記一方の摺動部と向かい合う他方の前記摺動部との間の左右方向の第1距離が前記前側押圧部と前記他方の摺動部との間の左右方向の第2距離よりも短い後側押圧部と、を備えている。
【0009】
本態様によれば、前側押圧部及び後側押圧部のそれぞれが延在部の側面上を摺動する際に延在部又は摺動部を塑性変形させることで、衝撃荷重を緩和することができる。この際、衝撃荷重に対する吸収エネルギーを確保するにあたって、一つの押圧部で延在部との締め代を大きくする場合に比べ、各押圧部と延在部との間の締め代を小さくできる。摺動部に掛かる衝撃荷重を前側押圧部及び後側押圧部に分散できるので、摺動部全体としてより高荷重に対応することができる。その結果、荷重吸収機構による吸収エネルギーを、コラプスストローク全域に亘って安定させることができる。摺動部に掛かる衝撃荷重を前側押圧部及び後側押圧部に分散することで、摺動部の強度を確保できる。
しかも、本態様では、テレスコ機構の係合部及び被係合部が前後方向で係合しているため、二次衝突時において、アクチュエータに対する送り機構の前方への移動が規制される。これにより、二次衝突時において、送り機構とともに荷重吸収機構が前方に移動するのを抑制できる。そのため、延在部と摺動部との間に効果的に荷重を発生させることができる。その結果、所望の衝撃吸収性能を確保できる。
テレスコ機構のアクチュエータがハウジングに固定されているため、テレスコ動作時及び二次衝突時においてアクチュエータが移動しない。そのため、ステアリング装置の周囲にアクチュエータの移動スペースを確保する必要がない。これにより、レイアウト性の向上を図ることができる。
【0010】
(2)上記(1)の態様のステアリング装置において、前記後側押圧部のうち前記延在部に接触する後側接触部、及び前記前側押圧部のうち前記延在部に接触する前側接触部は、それぞれ前記延在部に向けて凸の湾曲面をなしていることが好ましい。
本態様によれば、各接触部が湾曲面をなしている。そのため、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、摺動部が延在部上を摺動する際、押圧部と延在部との引っ掛かりを抑制できる。これにより、摺動部を延在部上でスムーズに移動させることができる。したがって、コラプスストロークの全体に亘って効率的に衝撃荷重を緩和することができるので、衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)の態様のステアリング装置において、前記一方の部材には、前記一方の摺動部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記一方の摺動部の前後方向への移動を案内する第1ガイドと、前記他方の摺動部に対して左右方向で前記延在部とは反対側に位置し、前記他方の摺動部の前後方向への移動を案内する第2ガイドと、が設けられていることが好ましい。
本態様によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、延在部に沿って各摺動部を前後方向にスムーズに移動させることができる。延在部と各摺動部との間に作用する荷重によって、各摺動部が左右方向の外側に移動又は変形しようとした場合には、各摺動部の移動又は変形をガイドによって規制することができる。
【0012】
(4)上記(3)の態様のステアリング装置において、前記一方の摺動部のうち前記第1ガイドと対向する面、及び前記他方の摺動部のうち前記第2ガイドと対向する面は、前後方向に延びる平坦面に形成されていることが好ましい。
本態様によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、摺動部がガイドのうち摺動部との対向面に沿ってスムーズに案内される。
【0013】
(5)上記(4)の態様のステアリング装置において、前記延在部は、左右方向の幅が前記第1距離よりも大きく前記第2距離以下に形成されるとともに、前記前側押圧部が接触する第1幅狭部と、前記第1幅狭部の後方に位置して左右方向の幅が前記第1距離以下に形成された第2幅狭部と、前記第1幅狭部の前方に位置して左右方向の幅が前記第2距離よりも大きく形成された幅広部と、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、幅広部は摺動部の前側押圧部によって塑性変形させられた後、前側押圧部が通過した部分がさらに後側押圧部によって塑性変形させられる。これにより、各押圧部と延在部との締め代が大きくなるのを抑制できる。コラプスストロークの全域に亘って各押圧部の双方によって衝撃荷重に対する吸収エネルギーが確保される。よって、衝撃吸収性能を確保できる。
【0014】
(6)上記(1)から(5)の何れかの態様のステアリング装置において、前記送り機構は、前記アクチュエータの出力軸に連結されるとともに、前記係合部として雄ねじを有するシャフトと、前記一方の部材に接続されるとともに、前記被係合部として前記雄ねじに係合する雌ねじ部が形成されたナットと、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、テレスコ機構として送りねじ機構を採用する。これにより、シャフトの雄ねじとナットの雌ねじとの係合力を確保し易くなる。テレスコ動作時においてアクチュエータの回転量に対するパイプのストロークが調整し易い。送り機構としての送りねじ機構に衝撃吸収機構が連結されることにより、二次衝突時にシャフトに対してナットがロックする。そのため、送り機構(ナット)の前方への移動が規制される。これにより、二次衝突時において、送り機構とともに荷重吸収機構が前方に移動するのを抑制できる。そのため、延在部と摺動部との間に効果的に荷重を発生させることができる。その結果、所望の衝撃吸収性能を確保できる。
【0015】
(7)上記(1)から(6)の何れかの態様のステアリング装置において、前記荷重吸収機構は、前記摺動部に対する前記延在部の上下方向への移動を規制する規制部材を備えていることが好ましい。
本態様によれば、摺動部に対する延在部の上下方向への移動が規制される。その結果、摺動部が延在部から離脱するのを抑制し、荷重吸収機構による吸収エネルギーを、コラプスストローク全域に亘って安定させることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記各態様によれば、コラプスストローク時の荷重変動を抑制でき、吸収エネルギーを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図7】二次衝突時の動作を説明するための説明図である。
【
図9】第2実施形態に係るステアリング装置の拡大底面図である。
【
図10】第2実施形態に係るステアリング装置を示す図であって、
図3に対応する断面図である。
【
図11】変形例に係るステアリング装置を示す図であって、
図8のXI-XI線に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0019】
[ステアリング装置1]
図1は、ステアリング装置1の斜視図である。
図1に示すように、ステアリング装置1は、車両に搭載される。ステアリング装置1は、ステアリングホイール2の回転操作に伴って車輪の舵角を調整する。
【0020】
ステアリング装置1は、ハウジング11と、パイプ12と、ステアリングシャフト13と、駆動機構14と、荷重吸収機構15と、を備えている。パイプ12及びステアリングシャフト13は、それぞれ軸線O1に沿って形成されている。したがって、以下の説明では、パイプ12及びステアリングシャフト13の軸線O1の延びる方向を単にシャフト軸方向といい、軸線O1に直交する方向をシャフト径方向といい、軸線O1回りの方向をシャフト周方向という場合がある。
【0021】
本実施形態のステアリング装置1は、軸線O1が前後方向に対して交差した状態で車両に搭載される。ステアリング装置1の軸線O1は、後方に向かうに従い上方に延びている。但し、以下の説明では、便宜上、ステアリング装置1において、シャフト軸方向でステアリングホイール2に向かう方向を単に後方とし、ステアリングホイール2とは反対側に向かう方向を単に前方(矢印FR)とする。シャフト径方向のうち、ステアリング装置1が車両に取り付けられた状態での上下方向を単に上下方向(矢印UPが上方)とし、左右方向を単に左右方向(矢印LHが左側)とする。
【0022】
<ハウジング11>
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う断面図である。
図1~
図3に示すように、ハウジング11は、チルトブラケット21と、ハウジング本体22と、を備えている。
チルトブラケット21は、左右一対の側部フレーム23a,23bと、各側部フレーム23a,23bに形成された取付ステー24と、各側部フレーム23a,23b同士を架け渡す架け渡し部25と、を備えている。
側部フレーム23a,23bは、左右方向を厚さ方向として、前後方向に延びている。側部フレーム23a,23bの下端縁のうち、一方(左側)の側部フレーム23aの前端部には、突出片27が形成されている。突出片27は、一方の側部フレーム23aの前端部から下方に向けて突出している。
【0023】
取付ステー24は、側部フレーム23a,23bの上端部から、それぞれ左右方向の外側に張り出している。ハウジング11は、取付ステー24を介して車体に支持される。
架け渡し部25は、各側部フレーム23の上端部同士を一体に架け渡している。架け渡し部25は、側部フレーム23における前後両端部にそれぞれ設けられている。
【0024】
ハウジング本体22は、チルトブラケット21の内側に配置されている。ハウジング本体22は、保持筒31と、前側延出部32と、を有している。
【0025】
保持筒31は、シャフト軸方向(前後方向)に延びる筒状に形成されている。
図2に示すように、保持筒31内の前端部には、前側軸受35の外輪が嵌合(圧入)されている。
図1~
図3に示すように、保持筒31における前後方向の中間部には、スリット36が形成されている。スリット36は、前後方向に延びている。
【0026】
図3に示すように、保持筒31のうち、スリット36の開口縁には、突出壁(第1突出壁38及び第2突出壁39)が形成されている。第1突出壁38は、スリット36の開口縁のうち、右側開口縁から下方に突出している。第1突出壁38は、スリット36の右側開口縁に沿って前後方向に延びている。
第2突出壁39は、スリット36の開口縁のうち、左側開口縁から下方に突出している。第2突出壁39は、スリット36の左側開口縁に沿って前後方向に延びている。第2突出壁39には、下方に向けて開口する凹部39aが形成されている。
【0027】
図1に示すように、前側延出部32は、保持筒31から前方に突出している。前側延出部32は、前後方向に直交する断面視で下方に開口するU字状に形成されている。図示の例において、前側延出部32のうち、左右方向で対向する一対の側壁37間の距離は、保持筒31の外径よりも長くなっている。各側壁37は、チルトブラケット21のうち、対向する側部フレーム23a,23bにピボット軸40を介してそれぞれ連結されている。これにより、ハウジング本体22は、ピボット軸40回り(左右方向に延びる軸線O2回り)に回動可能にチルトブラケット21に支持されている。
【0028】
<パイプ12>
パイプ12は、シャフト軸方向に延びる筒状に形成されている。パイプ12は、保持筒31内に挿入されている。パイプ12は、保持筒31に対してシャフト軸方向に移動可能に構成されている。
図2に示すように、パイプ12の後端部には、後側軸受41の外輪が嵌合(圧入)されている。
【0029】
<ステアリングシャフト13>
ステアリングシャフト13は、インナシャフト42及びアウタシャフト43を備えている。
インナシャフト42は、シャフト軸方向に延びる筒状に形成されている。インナシャフト42は、パイプ12内に挿入されている。インナシャフト42の後端部は、後側軸受41の内輪に圧入されている。これにより、インナシャフト42は、後側軸受41を介して軸線O1回りに回転可能に支持されている。インナシャフト42のうち、パイプ12から後方に突出した部分には、ステアリングホイール2が連結される。インナシャフト42は中実でもよい。
【0030】
アウタシャフト43は、シャフト軸方向に延びる筒状に形成されている。アウタシャフト43は、パイプ12内に挿入されている。アウタシャフト43の後端部には、パイプ12内において、インナシャフト42が挿入されている。アウタシャフト43の前端部は、保持筒31内において前側軸受35の内輪に圧入されている。これにより、アウタシャフト43は、保持筒31内で軸線O1回りに回転可能に支持されている。
【0031】
インナシャフト42及びパイプ12は、アウタシャフト43に対してシャフト軸方向に移動可能に構成されている。インナシャフト42の外周面には、例えば雄スプラインが形成されている。雄スプラインは、アウタシャフト43の内周面に形成された雌スプラインに係合している。これにより、インナシャフト42は、アウタシャフト43に対する相対回転が規制された上で、アウタシャフト43に対してシャフト軸方向に移動する。但し、ステアリングシャフト13の伸縮構造や回転規制の構造は、適宜変更が可能である。本実施形態では、アウタシャフト43がインナシャフト42に対して前方に配置された構成について説明したが、この構成のみに限られない。アウタシャフト43がインナシャフト42に対して後方に配置された構成であってもよい。
【0032】
<駆動機構14>
図1に示すように、駆動機構14は、チルト機構45と、テレスコ機構46と、を備えている。チルト機構45は、例えばハウジング11の左側に配置されている。テレスコ機構46は、例えばハウジング11の右側に配置されている。駆動機構14は、少なくともテレスコ機構46を有していればよい。
【0033】
チルト機構45は、いわゆる送りねじ機構である。チルト機構45は、チルトモータユニット51と、チルト連結部52と、チルト可動部53と、を備えている。チルト機構45は、チルトモータユニット51の駆動によって軸線O2回りのステアリング装置1の回動の規制及び許容を切り替える。
チルトモータユニット51は、チルトギヤボックス55と、チルトモータ56と、を備えている。
【0034】
チルトギヤボックス55は、側部フレーム23aの前端部に、側部フレーム23aから左右方向の外側に張り出した状態で取り付けられている。
チルトモータ56は、出力軸(不図示)を前方に向けた状態でチルトギヤボックス55に後方から取り付けられている。チルトモータ56の出力軸は、チルトギヤボックス55内で減速機構(不図示)に接続されている。
【0035】
チルト連結部52は、チルトワイヤ61と、チルトシャフト62と、チルトワイヤ61及びチルトシャフト62同士を連結するチルトカップリング63と、を備えている。
チルトカップリング63は、左右方向に延びる軸線O3回りに回転可能に突出片27に支持されている。
【0036】
チルトワイヤ61は、チルトギヤボックス55とチルトカップリング63との間を架け渡している。チルトワイヤ61は、チルトモータ56の駆動に伴い回転可能に構成されている。チルトワイヤ61は、撓み変形可能に構成されている。チルトギヤボックス55とチルトカップリング63との間を接続する接続部材は、チルトワイヤ61のような撓み変形するものに限られない。チルトギヤボックス55とチルトカップリング63のレイアウト等によっては、チルトギヤボックス55とチルトカップリング63を撓み変形しない接続部材により接続してもよい。
チルトシャフト62は、チルトカップリング63とチルト可動部53との間を架け渡している。チルトシャフト62は、チルトモータ56の駆動に伴い、チルトワイヤ61と共回りする。チルトシャフト62の外周面には、雄ねじ部が形成されている。
【0037】
チルト可動部53は、リンク部材70と、チルトナット71と、を備えている。
リンク部材70は、上方に開口するU字状に形成されている。リンク部材70は、左右方向で対向する側壁70a,70bを有している。側壁70aは、保持筒31と側部フレーム23aとの間に配置されている。側壁70bは、保持筒31と側部フレーム23bとの間に配置されている。
【0038】
側壁70a及び側部フレーム23a同士は、左右方向に延びる第1ボルト75によって連結されている。側壁70b及び側部フレーム23b同士は、第1ボルト(不図示)によって連結されている。これにより、リンク部材70は、左右方向に延びる軸線O4回りに回動可能にチルトブラケット21に支持されている。
側壁70a及び保持筒31同士は、左右方向に延びる第2ボルト76によって連結されている。側壁70b及び保持筒31同士は、第2ボルト76によって連結されている。第2ボルト76は、第1ボルト75よりも後方に配置されている。これにより、リンク部材70は、軸線O4と平行に延びる軸線O5回りに回動可能に保持筒31に支持されている。
【0039】
チルトナット71は、側壁70aの下方に取り付けられている。チルトナット71の内周面には、雌ねじ部が形成されている。チルトナット71には、チルトシャフト62が噛み合っている。チルトナット71は、チルトシャフト62の回転に伴いチルトシャフト62上の位置が変更可能に構成されている。
【0040】
テレスコ機構46は、いわゆる送りねじ機構である。テレスコ機構46は、テレスコモータユニット(アクチュエータ)81と、テレスコ連結部82と、テレスコ可動部83と、を備えている。テレスコ機構46は、テレスコモータユニット81の駆動によってハウジング11に対するパイプ12(ステアリングシャフト13)の前後動の規制及び許容を切り替える。
テレスコモータユニット81は、テレスコギヤボックス85と、テレスコモータ86と、を備えている。
【0041】
テレスコギヤボックス85は、前側延出部32から左右方向の外側に張り出した状態で取り付けられている。したがって、テレスコモータユニット81は、チルト機構45の駆動力によってハウジング本体22と一体で軸線O2回りに回動可能に構成されている。
テレスコモータ86は、出力軸(不図示)を前方に向けた状態でテレスコギヤボックス85に後方から取り付けられている。テレスコモータ86の出力軸は、テレスコギヤボックス85内で減速機構に接続されている。テレスコモータユニット81は、ワイヤ等を介してチルトブラケット21に支持されていてもよい。
【0042】
図4は、荷重吸収機構15の分解斜視図である。
図4に示すように、テレスコ連結部82は、テレスコギヤボックス85から後方に延びている。テレスコ連結部82は、テレスコモータ86の駆動に伴い、軸線回りに回転する。テレスコ連結部82の外周面には、雄ねじ部82aが形成されている。
【0043】
テレスコ可動部83は、荷重吸収機構15を介してパイプ12に接続されている。テレスコ可動部83の内周面には、雌ねじ部83aが形成されている。テレスコ可動部83には、テレスコ連結部82が噛み合っている。テレスコ可動部83は、雌ねじ部83aを介して雄ねじ部82aに前後方向で係合(接触)している。テレスコ可動部83は、テレスコ連結部82の回転に伴いテレスコ連結部82上を移動可能に構成されている。
【0044】
<荷重吸収機構15>
図3、
図4に示すように、荷重吸収機構15は、テレスコ可動部83とパイプ12との間を接続している。荷重吸収機構15は、テレスコ動作時等、パイプ12に作用する前後方向の荷重が所定値未満の場合、テレスコ機構46の駆動力をパイプ12に伝達して、テレスコ可動部83とともにパイプ12をハウジング11に対して前後方向に移動させる。荷重吸収機構15は、二次衝突時等、パイプ12に作用する荷重が所定値以上の場合、テレスコ機構46とは独立してパイプ12をハウジング11に対して前後方向に移動させる。荷重吸収機構15は、ハンガブラケット100と、EA(Energy Absorbing)ブロック101と、EAプレート102と、を備えている。
【0045】
ハンガブラケット100は、パイプ12の前方部において、パイプ12の下部に固定されている。本実施形態において、ハンガブラケット100は、パイプ12の外周面に溶接等により固定されている。ハンガブラケット100は、スリット36内に配置されている。
【0046】
EAブロック101は、ハンガブラケット100の下方に設けられている。EAブロック101は、例えば鉄系材料の焼結材により一体に形成されている。EAブロック101は、固定プレート110と、第1摺動部111と、第2摺動部112と、を備えている。
固定プレート110は、ハンガブラケット100に下方から重ね合わされている。固定プレート110は、ハンガブラケット100にねじ止め等によって固定されている。EAブロック101は、パイプ12に直接固定されていてもよい。
【0047】
第1摺動部111及び第2摺動部112は、左右方向で対向している。第1摺動部111及び第2摺動部112は、固定プレート110から下方に突出している。各摺動部111,112は、スリット36を通じてハウジング本体22の外部に突出している。各摺動部111,112は、平面視において、後述する延在部150の中心を通り前後方向に延びる対称線に対して線対称に形成されている。したがって、以下の説明では、第1摺動部111を例にして説明する。
【0048】
図5は、荷重吸収機構15の拡大図である。
図5に示すように、第1摺動部111は、前側押圧部200と、後側押圧部201と、を備えている。前側押圧部200は、頂面200aが左右方向の内側を向く三角形状に形成されている。後側押圧部201は、頂面201aが左右方向の内側を向く三角形状に形成されている。各押圧部200,201は、左右方向の内側に向かうに従い前後方向の寸法が漸次小さくなっている。前側押圧部200の頂面200a及び後側押圧部201の頂面201aは、平面視において左右方向の内側に向けて凸の湾曲面に形成されている。
【0049】
各押圧部200,201は、前後方向で連なっている。各押圧部200,201は、左右方向の外側を向く面(以下、ガイド面210という。)が面一に配置されている。ガイド面210は、左右方向に直交する平坦面に形成されている。前側押圧部200の頂面200aは、後側押圧部201の頂面201aよりも左右方向の外側に位置している。したがって、各摺動部111,112のうち、各前側押圧部200の頂面200a間における左右方向の距離をL1a、各後側押圧部201の頂面201a間の距離をL1bとすると、L1a>L1bに設定されている。第1摺動部111における左右方向の内側を向く面のうち、各押圧部200,201間に位置する部分は、各押圧部200,201の斜面により形成された逃げ部211が形成されている。逃げ部211は、頂面200a,201aに対して左右方向の外側に窪んでいる。ガイド面210は、平坦面に限らず、湾曲面等であってもよい。
【0050】
図3、
図4に示すように、EAプレート102は、メインプレート130とサブプレート131とを備えている。
メインプレート130は、前後方向から見た正面視でクランク状に形成されている。メインプレート130は、EAブロック101よりも硬度が低い材料(例えば、SPHC等)により形成されている。メインプレート130は、取付片132と、連結片133と、動作片134と、支持片135と、を備えている。
【0051】
取付片132は、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。取付片132は、上述したテレスコ可動部83に上方から取り付けられている。EAプレート102は、テレスコ可動部83と一体で前後動可能に構成されている。
連結片133は、取付片132における左右方向の内側端縁から下方に延びている。
【0052】
動作片134は、連結片133の下端縁から左右方向の内側に延びている。動作片134は、パイプ12を下方から覆っている。動作片134の後端部は、EAブロック101(摺動部111,112)と平面視で重なり合っている。動作片134には、長孔(第1長孔140及び第2長孔141)が形成されている。各長孔140,141の構成については後述する。
【0053】
支持片135は、動作片134のうち、連結片133とは反対側に位置する端縁から上方に延びている。支持片135の上端部は、上述した凹部39a内に収容されている。凹部39a内には、ガイドレール144が設けられている。ガイドレール144は、下方に向けて開口するU字状に形成されるとともに、凹部39a内を前後方向に延びている。ガイドレール144は、凹部39aの内面を被覆するように凹部39a内に嵌め込まれている。ガイドレール144は、支持片135との間に発生する摩擦抵抗が、支持片135と凹部39aの内面との間に作用する摩擦抵抗よりも小さい材料(例えば、樹脂材料等)により形成されている。ガイドレール144の内側には、上述した支持片135が収容されている。ガイドレール144は、ハウジング本体22に対するメインプレート130(EAプレート102)の左右方向の移動を規制しつつ、前後方向の移動を案内する。
【0054】
サブプレート131は、テレスコ可動部83と動作片134との間を接続している。サブプレート131のうち、左右方向の外側端部は、テレスコ可動部83に下方から取り付けられている。サブプレート131は、取付片132とともに、テレスコ可動部83を上下方向で挟み込んでいる。サブプレート131における左右方向の内側端部は、動作片134に接続されている。
【0055】
図6は、
図3のVI矢視図である。
図5、
図6に示すように、各長孔140,141は、動作片134を上下方向に貫通するとともに、前後方向に延びている。各長孔140,141は、平面視において後述する延在部150の中心を通り前後方向に延びる対称線に対して線対称に形成されている。したがって、以下の説明では、第1長孔140を例にして説明する。
【0056】
第1長孔140は、前後方向の両端部に位置する拡大部(前側拡大部145及び後側拡大部146)と、拡大部145,146同士を接続する遷移部147と、を備えている。
遷移部147は、前後方向に直線状に延びている。遷移部147のうち、左右方向の外側を向く外向側面147a、及び左右方向の内側を向く内向側面147b同士は、前後方向に沿って互いに平行に延びる平坦面に形成されている。
【0057】
図6に示すように、前側拡大部145は、左右方向における幅(最大幅)が、遷移部147における左右方向の幅(最大幅)よりも広くなっている。前側拡大部145は、遷移部147の外向側面147aに対して左右方向の内側に膨出している。
【0058】
図5に示すように、後側拡大部146は、後方に位置するものほど左右方向の内側に段々と膨出する段差状に形成されている。後側拡大部146は、第1嵌合部250と、第2嵌合部251と、を備えている。第1嵌合部250の内面のうち左右方向の外側を向く外向側面は、遷移部147の外向側面147aに対して左右方向の内側に位置している。第1嵌合部250の外向側面は、前後方向に直線状に延びる平坦面に形成されている。第1嵌合部250の内面のうち、第1嵌合部250の外向側面と遷移部147の外向側面147aとの境界面250aは、前後方向に直交する平坦面に形成されている。境界面250aは、前方に向かうに従い左右方向の外側に延びる傾斜面等であってもよい。
【0059】
第2嵌合部251の内面のうち左右方向の外側を向く外向側面は、第1嵌合部250の外向側面に対して左右方向の内側に位置している。第2嵌合部251の外向側面は、前後方向に直線状に延びる平坦面に形成されている。第2嵌合部251の内面のうち、第1嵌合部250の外向側面と第2嵌合部251の外向側面との境界面251aは、前後方向に直交する平坦面に形成されている。境界面251aは、前方に向かうに従い左右方向の外側に延びる傾斜面等であってもよい。
【0060】
後側拡大部146内には、第1摺動部111が嵌まり込んでいる。第1摺動部111のうち前側押圧部200は、第1嵌合部250内に嵌まり込んでいる。前側押圧部200は、頂面200aが第1嵌合部250の外向側面に近接又は当接し、ガイド面210が第1嵌合部250の内向側面に近接又は当接している。
第1摺動部111のうち後側押圧部201は、第2嵌合部251内に嵌まり込んでいる。後側押圧部201は、頂面201aが第2嵌合部251の外向側面に近接又は当接し、ガイド面210が第2嵌合部251の内向側面に近接又は当接している。
【0061】
図4、
図5、
図6に示すように、動作片134のうち、各長孔140,141間に位置する部分は、前後方向に沿って延びる延在部150を構成している。延在部150は、前側括れ部151と、後側括れ部152と、幅広部153と、を備えている。前側括れ部151は、前側拡大部145間に位置する部分である。後側括れ部152は、後側拡大部146同士の間に位置する部分である。後側括れ部152は、第1嵌合部250間に位置する第1括れ部260と、第2嵌合部251間に位置する第2括れ部261と、を備えている。
【0062】
第1括れ部260における左右方向の幅L2aは、後側押圧部201間の距離L1bよりも大きく、前側押圧部200間の距離(第1距離)L1a以下に設定されている。第2括れ部261における左右方向の幅L2bは、後側押圧部201間の距離(第1距離)L1b以下に設定されている。
【0063】
幅広部153の幅L2cは、第1括れ部260の幅L2aや前側押圧部200間の距離L1aよりも広くなっている。幅広部153のうち、各括れ部260,261に対して左右方向の外側に膨出した部分は、変形部265を構成している。変形部265は、押圧部200,201の頂面200a,201aと正面視で重なり合っている。変形部265は、二次衝突時等、EAブロック101に対して前方に向けて所定の荷重が入力された際に、各摺動部111,112(各押圧部200,201)が摺動することで塑性変形可能に構成されている。したがって、変形部265は、EAブロック101に作用する荷重が所定未満の場合(例えば、テレスコ動作時等)には変形不能になっている。パイプ12に作用する荷重が所定値未満の場合には、各摺動部111,112が各後側拡大部146内に嵌まり込んだ状態で、EAプレート102に対するEAブロック101の相対移動が規制されている。
【0064】
動作片134のうち、各長孔140,141に対して延在部150とは反対側(左右方向の外側)に位置する部分は、前後方向に沿って延びるガイド部156を構成している。ガイド部156は、各摺動部111,112に対して左右方向の外側に位置して、各摺動部111,112の左右方向の外側への変位を規制する。ガイド部156のうち左右方向の内側を向く側面(長孔140,141の内向側面(例えば、内向側面147b))は、上述したガイド面210に対向している。ガイド部156とガイド面210とは当接していてもよい。
【0065】
[作用]
次に、上述したステアリング装置1の作用を説明する。以下の説明では、チルト動作、テレスコ動作及びコラプスストロークについて主に説明する。
【0066】
<チルト動作>
図1に示すように、チルト動作は、チルトモータ56の駆動力がリンク部材70を介してハウジング本体22に伝達されることで、ハウジング本体22が軸線O2回りに回動する。ステアリングホイール2を上向きに調整する場合には、チルトモータ56が駆動することで、チルトワイヤ61及びチルトシャフト62が例えば第1方向(チルトナット71の緩み方向)に回転する。チルトシャフト62が第1方向に回転すると、チルトナット71がチルトシャフト62に対して後方に移動する。チルトナット71が後方に移動することで、ハウジング本体22がチルトブラケット21に対して軸線O2回りの上方に向けて回動する。その結果、ステアリングホイール2が、ハウジング本体22やパイプ12、ステアリングシャフト13等とともに軸線O2回りの上方に回動する。
【0067】
ステアリングホイール2を下向きに調整する場合には、チルトシャフト62を第2方向(チルトナット71の締め付け方向)に回転させる。すると、チルトナット71がチルトシャフト62に対して前方に移動する。チルトナット71が前方に移動することで、ハウジング本体22がチルトブラケット21に対して軸線O2回りに下方へ向けて回動する。その結果、ステアリングホイール2が、ハウジング本体22やパイプ12、ステアリングシャフト13等とともに軸線O2回りの下方に回動する。
【0068】
<テレスコ動作>
テレスコ動作は、テレスコモータ86の駆動力がEAプレート102及びEAブロック101を介してパイプ12に伝達されることで、パイプ12及びインナシャフト42がハウジング11及びアウタシャフト43に対して前後動する。ステアリングホイール2を後方に移動させる場合には、テレスコモータ86の駆動により、テレスコ連結部82を例えば第1方向(テレスコ可動部83の緩み方向)に回転させる。テレスコ連結部82が第1方向に回転すると、テレスコ可動部83及びEAプレート102がテレスコ連結部82に対して後方に移動する。EAプレート102の駆動力は、EAブロック101に伝達される。この際、各摺動部111,112が各後側拡大部146内に嵌まり込んだ状態で、EAプレート102に対するEAブロック101の相対移動が規制されている。そのため、EAプレート102の駆動力がEAブロック101を介してパイプ12に伝達される。その結果、パイプ12がインナシャフト42とともに後方に移動することで、ステアリングホイール2が後方に移動する。
【0069】
ステアリングホイール2を前方に移動させる場合、テレスコ連結部82を例えば第2方向に回転させる。テレスコ連結部82が第2方向(テレスコ可動部83の締め付け方向)に回転すると、テレスコ可動部83及びEAプレート102がテレスコ連結部82に対して前方に移動する。EAプレート102の前方移動に伴い、EAプレート102の駆動力がEAブロック101を介してパイプ12に伝達される。これにより、パイプ12が前方に移動することで、ステアリングホイール2が前方に移動する。
【0070】
<二次衝突時>
次に、二次衝突時の動作について説明する。
図6に示すように、二次衝突時(衝突荷重が所定値以上の場合)には、ステアリングホイール2がパイプ12やEAブロック101、インナシャフト42とともに、ハウジング本体22及びアウタシャフト43に対して前方に移動する。
【0071】
図7は、二次衝突時の動作を説明するための説明図である。
図6、
図7に示すように、二次衝突時には、ステアリングホイール2を介してパイプ12に前方への衝突荷重が作用する。この際、衝突荷重は、EAブロック101を介してEAプレート102に作用する。しかし、本実施形態では、テレスコ可動部83の雌ねじ部83aとテレスコ連結部82の雄ねじ部82aとが前後方向で係合(接触)しているため、ハウジング11に対するEAプレート102の前方移動が規制されている。したがって、ステアリングシャフト13、パイプ12、ハンガブラケット100及びEAブロック101は、EAプレート102及びハウジング11に対して前方に移動しようとする。
【0072】
本実施形態では、各摺動部111,112は、EAプレート102に対して前方に移動する際、各押圧部200,201が延在部150の外側面上を摺動することで、延在部150をしごきながら移動する。各摺動部111,112の各前側押圧部200は、境界面250aを経て幅広部153の外側面(遷移部147の外向側面)上を摺動する際、変形部265を左右方向の内側に塑性変形(圧壊)させる。そのため、幅広部153のうち、前側押圧部200が通過した部分は、前側押圧部200よりも前方に位置する部分に比べて幅が縮小する。この際、幅広部153における前側押圧部200が通過した部分の幅は、前側押圧部200の頂面200a間の距離L1aと同等になる。
【0073】
各摺動部111,112の後側押圧部201は、境界面251aを経て第1嵌合部250内に進入する。後側押圧部201の頂面201a間の距離L1bは、第1括れ部261の幅L2aよりも狭くなっている。そのため、後側押圧部201が第1括れ部260の外側面上を摺動する際、第1括れ部260を左右方向の内側に塑性変形させる。その後、後側押圧部201は、遷移部147内に進入し、幅広部153の外側面のうち、前側押圧部200が通過した部分を摺動する。ここで、後側押圧部201における頂面201a間の距離L1bは、前側押圧部200における頂面200a間の距離L1aよりも狭くなっている。そのため、後側押圧部201は、幅広部153のうち、前側押圧部200が通過した部分をさらに左右方向の内側に塑性変形(圧壊)しながら、前方に移動する。
【0074】
このように、ステアリングシャフト13等が、EAプレート102及びハウジング11に対して前方に移動する過程で、各押圧部200,201が延在部150をしごく際に発生する荷重によって、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重が緩和される。前側押圧部200が境界面250aに到達するタイミング、及び後側押圧部201が境界面251aに到達するタイミング(前側押圧部200による延在部150の圧壊に起因する初期荷重発生のタイミングと、後側押圧部201による延在部150の圧壊に起因する初期荷重発生のタイミング)は、同じでも異なっていてもよい。上述したタイミングが異なる場合には、コラプスストローク時における動き出し荷重を軽減し、荷重変動を抑制できる。
【0075】
EAブロック101とEAプレート102との間で発生する荷重は、各摺動部111,112間の距離L1a,L1bと幅広部153の幅L2cとの差分や、幅広部153の厚さ等を変更することで調整できる。二次衝突時には、各摺動部111,112によって延在部150をしごく際の荷重に加え、例えばパイプ12の外周面と保持筒31の内周面との間の摺動抵抗等で衝撃荷重を緩和してもよい。パイプ12の外周面と保持筒31の内周面との摺動部分に高摩擦係数の塗料を塗布したり、凹凸加工等を施したりしてもよい。
【0076】
このように、本実施形態では、摺動部111,112が、前側押圧部200と、前側押圧部200に対して後方に位置する後側押圧部201と、を備える構成とした。後側押圧部201間の距離(第1距離)L1bは、対向する摺動部111,112間の距離において前側押圧部200間の距離(第2距離)L1aよりも短い構成となっている。
この構成によれば、前側押圧部200及び後側押圧部201のそれぞれが延在部150の外側面上を摺動する際に延在部150を塑性変形させることで、衝撃荷重を緩和することができる。この際、衝撃荷重に対する吸収エネルギーを確保するにあたって、一つの押圧部で延在部との締め代を大きくする場合に比べ、各押圧部200,201と延在部150との間の締め代を小さくできる。摺動部111,112に掛かる衝撃荷重を前側押圧部200及び後側押圧部201に分散できるので、摺動部111,112全体としてより高荷重に対応することができる。その結果、荷重吸収機構15による吸収エネルギーを、コラプスストローク全域に亘って安定させることができる。摺動部111,112に掛かる衝撃荷重を前側押圧部200及び後側押圧部201に分散することで、摺動部111,112の強度を確保できる。
【0077】
本実施形態では、テレスコ機構46のテレスコモータユニット(アクチュエータ)81がハウジング11(ハウジング本体22)に固定されているため、テレスコ動作時及び二次衝突時においてテレスコモータユニット81が移動しない。そのため、ステアリング装置1の周囲にテレスコモータユニット81の移動スペースを確保する必要がない。これにより、レイアウト性の向上を図ることができる。
特に、ステアリング装置1では、テレスコ機構46として送りねじ機構を採用することで、テレスコ連結部(シャフト)82の雄ねじ(係合部)82aとテレスコ可動部(ナット)83の雌ねじ(係合部)83aとの係合力を確保し易くなる。ステアリング装置1では、テレスコ動作時においてテレスコモータユニット81の回転量に対するパイプ12のストロークを調整し易い。
【0078】
本実施形態では、各押圧部200,201の頂面(前側接触部、後側接触部)200a,201aが延在部150に向けて凸の湾曲面をなす構成とした。
この構成によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、摺動部111,112が延在部150上を摺動する際、押圧部200,201と延在部150との引っ掛かりを抑制できる。これにより、摺動部111,112を延在部150上でスムーズに移動させることができ、コラプスストローク時における荷重変動を緩やかにできる。これにより、コラプスストロークの全体に亘って効率的に衝撃荷重を緩和することができるので、衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
【0079】
本実施形態では、EAプレート102が、各摺動部111,112に対して延在部150とは反対側にガイド(第1ガイド、第2ガイド)156を備える構成とした。
この構成によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、延在部150に沿って各摺動部111,112を前方にスムーズに移動させることができる。延在部150と各摺動部111,112との間に作用する荷重によって、各摺動部111,112が左右方向の外側に移動又は変形しようとした場合には、各摺動部111,112の移動又は変形をガイド156によって規制できる。そのため、所望の衝撃吸収性能を確保できる。本実施形態において、「移動又は変形」のうち、移動とは塑性変形を伴わずに例えば延在部150が一方の摺動部から離間する側に変位したり、摺動部111,112が延在部150から離間する側に変位したりすることを意味している。変形とは塑性変形を伴わずに例えば延在部150が一方の摺動部から離間する側に撓んだり、摺動部111,112が延在部150から離間する側に撓んだりすることを意味する。本実施形態では、上述した移動及び変形の少なくとも一方を規制できればよい。
【0080】
本実施形態では、摺動部111,112のうち、ガイド156と対向する対向面は、前後方向に沿って延びるガイド面210を有している構成とした。
この構成によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、摺動部111,112がガイド156の内向側面に沿ってスムーズに案内される。
【0081】
本実施形態において、延在部150は、幅L2aが距離L1bよりも大きく距離L1a以下に形成された第1括れ部(第1幅狭部)260と、幅L2bが距離L1b以下に形成された第2括れ部(第2幅狭部)261と、幅L2cが距離L1aよりも大きく形成された幅広部153と、を備える構成とした。
この構成によれば、二次衝突に伴うコラプスストローク時において、幅広部153は各摺動部111,112の前側押圧部200によって塑性変形させられた後、前側押圧部200が通過した部分がさらに後側押圧部201によって塑性変形させられる。これにより、各押圧部200,201と延在部150との締め代が大きくなるのを抑制できる。コラプスストロークの全域に亘って各押圧部200,201の双方によって衝撃荷重に対する吸収エネルギーが確保される。よって、衝撃吸収性能を確保できる。
【0082】
(変形例)
上述した実施形態では、各押圧部200,201が前後方向に連なっている構成について説明したが、この構成に限られない。
図8に示す摺動部111,112のように、各押圧部200,201は、前後方向に離間していてもよい。図示の例において、各押圧部200,201は、平面視において、外径が異なる真円状に形成されている。また、上述した実施形態及び変形例において、各押圧部200,201の平面視外形は、三角形状や矩形状、半円形状、楕円形状等、適宜変更が可能である。
【0083】
上述した実施形態では、各摺動部111,112は、上下方向に直交する断面積が上下方向の全域に亘って一様な構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、各摺動部111,112の断面積が上下方向で異なるように形成してもよい。この場合、各摺動部111,112は、上方に向かうに従い断面積が縮小するように形成してもよく、上下方向の中央部の断面積が上下両端部の断面積に比べて小さくなっていてもよい。
上述した実施形態では、各摺動部111,112が線対称に形成された構成について説明したが、この構成に限らず、摺動部111,112が左右非対称に形成されていてもよい。
【0084】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係るステアリング装置1の拡大底面図である。
図10は、第2実施形態に係るステアリング装置1を示す図であって、
図3に対応する断面図である。
図9、
図10に示すステアリング装置1において、荷重吸収機構15は、EAカバー(規制部材)300を備えている。EAカバー300は、ハウジング本体22(摺動部111,112)に対するEAプレート102の下方への移動を規制する。EAカバー300は、ハウジング本体22の下部において、軸線O1に対してテレスコ機構46側とは反対側に配置されている。EAカバー300は、EAプレート102の一部を下方から覆っている。
【0085】
EAカバー300は、規制プレート301と、摺動プレート302と、を備えている。
規制プレート301は、摺動プレート302よりも剛性の高い材料(例えば、金属材料)により形成されている。規制プレート301は、上下方向を厚さ方向として、前後方向に延びている。規制プレート301は、重なり片301aと、取付片301bと、を備えている。
【0086】
重なり片301aは、第2突出壁39の下方において、前後方向に延びている。重なり片301aは、動作片134の左側端部(テレスコ機構46とは反対側の端部)に下方から重なり合っている。図示の例において、重なり片301aは、延在部150に対して左側のガイド156に重なり合っている。重なり片301aの前後方向の寸法は、EAプレート102(動作片134)よりも長い。
【0087】
取付片301bは、重なり片301aから左右方向の外側や前方に張り出している。取付片301bは、テレスコ動作時におけるEAプレート102の動作軌跡から外れた部分において、ハウジング本体22に固定されている。取付片301bは、例えばボルト305等によってハウジング本体22に固定されている。
【0088】
摺動プレート302は、重なり片301aの上面に重なり合っている。摺動プレート302は、動作片134との間に発生する摩擦抵抗が、動作片134と規制プレート301との間に作用する摩擦抵抗よりも小さい材料(例えば、樹脂材料等)により形成されている。摺動プレート302は、重なり片301aに固定されている。摺動プレート302の固定方法は、ピンを重なり片301aに圧入したり、かえし爪を有するピンを重なり片301aに係止したりして固定してもよく、接着等によって固定してもよい。
【0089】
図10に示すように、摺動プレート302は、重なり片301aと動作片134との間に位置している。摺動プレート302の上面は、動作片134の下面に近接又は当接している。EAカバー300は、摺動プレート302を備えない構成であってもよい。
【0090】
本実施形態のステアリング装置1では、テレスコ動作時において、パイプ12がインナシャフト42とともに前後方向に移動する際、EAプレート102はEAカバー300に対して前後方向に移動する。摺動プレート302は、動作片134に当接していてもよい。この場合、摺動プレート302は、テレスコ動作時において動作片134の下面が摺動する。
【0091】
二次衝突時において、摺動部111,112と延在部150との間に作用する荷重が大きくなると、EAプレート102が各摺動部111,112によって下方に押し退けられる。すると、EAプレート102は、第1摺動部111が第1長孔140から離脱しようとするとともに,第2摺動部112が第2長孔141から離脱しようとする。この際、動作片134が摺動プレート302を介してEAカバー300に接触する。これにより、ハウジング本体22(摺動部111,112)に対するEAプレート102の下方への移動が規制される。その結果、摺動部111,112がEAプレート102から離脱するのを抑制し、荷重吸収機構15による吸収エネルギーを、コラプスストローク全域に亘って安定させることができる。
【0092】
本実施形態のステアリング装置1では、金属製の規制プレート301と動作片134との間に樹脂製の摺動プレート302を配置することで、テレスコ操作時に金属同士の接触による異音や摩耗等を抑制できる。
【0093】
以上、本開示の好ましい実施例を説明したが、本開示はこれら実施例に限定されることはない。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、軸線O1が前後方向に交差している構成について説明していたが、この構成のみに限られない。軸線O1は、車両の前後方向に一致していてもよい。
【0094】
上述した実施形態では、テレスコ機構46が送りねじ機構である場合について説明したが、この構成のみに限られない。テレスコ機構46は、例えば歯車等を用いてもよい。
【0095】
上述した実施形態では、2つの摺動部111,112が前側押圧部200及び後側押圧部201を有する構成について説明したが、この構成に限られない。前側押圧部200及び後側押圧部201は、何れか一方の摺動部が有する構成であってもよい。各摺動部が前後方向に3つ以上の押圧部を有していてもよい。
上述した実施形態では、長孔140,141の間に位置する部分を延在部150とし、長孔140,141に対して左右方向の外側に位置する部分をガイド156とした場合について説明したが、この構成に限られない。EAプレート102は、少なくとも延在部150を有していれば、長孔140,141やガイド156を有さない構成であってもよい。
【0096】
上述した実施形態では、EAプレート102がテレスコ機構46(テレスコ可動部83)とハウジング本体22(突出壁39)との間に架け渡された構成について説明したが、この構成に限られない。EAプレート102は、テレスコ機構46に片持ちで支持されていてもよい。
上述した実施形態では、延在部150が1列の構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、延在部150は、左右方向や上下方向に複数設けられていてもよい。摺動部は、延在部150の数に応じて設けることが可能である。
上述した実施形態では、パイプ12側にEAブロック101(摺動部111,112等)を設け、ハウジング本体22側にEAプレート102(延在部150等)を設けた場合について説明したが、この構成に限られない。例えばパイプ12側にEAプレート102を設け、ハウジング本体22側にEAブロック101を設けてもよい。
【0097】
上述した実施形態では、押圧部200,201が湾曲面(頂面200a,201a)を有する構成について説明したが、この構成に限られない。
上述した実施形態では、EAプレート102のみが塑性変形する構成について説明したが、摺動部111,112が延在部150上を摺動する過程で、EAプレート102及びEAブロック101の少なくとも一方が塑性変形する構成であればよい。
上述した実施形態では、摺動部111,112が固定プレート110に一体に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、摺動部は、ボルト形状に形成され、固定プレート110に対してEAプレート102を間に挟んで反対側(下方)から固定プレート110に締結されていてもよい。この場合、1本のボルトの軸部のうち、延在部150と摺動する部分が前側押圧部200及び後側押圧部201を有していてもよい。
図11に示すように、前側押圧部200を軸部350aに有するボルト350と、後側押圧部201を軸部351aに有するボルト351と、をそれぞれ固定プレート110に締結してもよい。軸部350aのうち、第1長孔140(又は第2長孔141)内に位置する部分が、前側押圧部200として機能する。軸部351aのうち、第1長孔140(又は第2長孔141)内に位置する部分が、後側押圧部201として機能する。軸部350aのうち押圧部200,201の断面形状は、真円以外でもよい。
ボルト350の頭部350bは、軸部350aに対して拡大されている。ボルト351の頭部351bは、軸部351bに対して拡大されている。頭部350b,351bにおいて、外周部分の一部は、EAプレート102(延在部150やガイド156)に対して下方から重なり合っている。ボルト350の頭部350b、及びボルト351の頭部351bは、摺動部111,112に対するEAプレート102(延在部150)の上下方向の移動を規制する規制部材として機能する。
図11の例において、頭部350b,351bとEAプレート102との間には、隙間Sが設けられている。そのため、軸部350a,351aが延在部150をしごくことによって発生する変形痕(バリ等)が頭部350b,351bに接触するのを抑制できる。これにより、変形痕によってコラプスストロークが阻害されるのを抑制できる。
規制部材は、摺動部111,112に対する延在部150の上下方向の移動が規制される構成であればよい。すなわち、規制部材は、第2実施形態のように延在部150以外の部分に当接するEAカバー300によって、延在部150の上下方向への移動を間接的に規制してもよい。規制部材は、変形例に係る頭部350b,351bのように延在部150に直接当接することで、延在部150の上下方向への移動を直接規制してもよい。
規制部材は、ハウジング本体22に設けられていてもパイプ12に設けられていてもよい。
【0098】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…ステアリング装置
2…ステアリングホイール
11…ハウジング
12…パイプ(他方の部材、一方の部材)
13…ステアリングシャフト
15…荷重吸収機構
46…テレスコ機構(一方の部材、他方の部材)
81…テレスコモータユニット(アクチュエータ)
82…テレスコ連結部(送り機構、シャフト)
83…テレスコ可動部(送り機構、ナット)
111…第1摺動部
112…第2摺動部
153…幅広部
156…ガイド(第1ガイド、第2ガイド)
200…前側押圧部
200a…頂面(前側接触部)
201…後側押圧部
201a…頂面(後側接触部)
210…ガイド面(対向する面)
260…第1括れ部(第1幅狭部)
261…第2括れ部(第2幅狭部)
300…EAカバー(規制部材)
350b…頭部(規制部材)
351b…頭部(規制部材)