(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】クレーンシステム、クレーン及び移動体
(51)【国際特許分類】
B66C 15/06 20060101AFI20240920BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20240920BHJP
G08G 5/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B66C15/06
B66C23/88 D
G08G5/04 A
(21)【出願番号】P 2022510753
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012954
(87)【国際公開番号】W WO2021193941
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2020057204
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】戸井田 実
(72)【発明者】
【氏名】本庄 浩平
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開実用新案第20-2015-0002289(KR,U)
【文献】特開2002-003151(JP,A)
【文献】特開2008-308328(JP,A)
【文献】中国実用新案第206735669(CN,U)
【文献】特開2019-069835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-25/00
G08G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン本体と、前記クレーン本体の周囲を移動可能な移動体と、を備え、
前記移動体は、航空障害灯を有し、前記クレーン本体の航空障害灯として機能
し、
前記クレーン本体は、前記移動体を配置可能な配置部を有し、
前記クレーン本体の姿勢によって切り替わる前記クレーン本体の少なくとも2つの最上部に対応して複数の前記配置部が設けられている、
クレーンシステム。
【請求項2】
クレーン本体と、前記クレーン本体の周囲を移動可能な移動体と、を備え、
前記移動体は、航空障害灯を有し、前記クレーン本体の航空障害灯として機能
し、
前記クレーン本体は、前記移動体を配置可能な配置部と、第1の航空障害灯と、を有し、
前記第1の航空障害灯が前記クレーン本体の最上部に位置しない姿勢の場合に、前記移動体が前記クレーン本体の最上部に対応する前記配置部へ移動する、
クレーンシステム。
【請求項3】
クレーン本体と、前記クレーン本体の周囲を移動可能な移動体と、を備え、
前記移動体は、航空障害灯を有し、前記クレーン本体の航空障害灯として機能
し、
前記クレーン本体は、前記移動体を配置可能な配置部を有し、
前記クレーン本体の作業の終了を契機に、前記移動体が前記配置部へ移動する、
クレーンシステム。
【請求項4】
前記複数の配置部のうち前記クレーン本体の最上部に対応する1つの配置部を判断する判断部と、
前記1つの配置部へ前記移動体を移動させる制御部と、
を備える請求項
1記載のクレーンシステム。
【請求項5】
前記移動体の前記航空障害灯に電力を供給する送電部が、前記配置部に設けられている、
請求項
1から請求項
4のいずれか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項6】
前記移動体は、移動するための動力の出力を停止した状態で前記航空障害灯として機能する、
請求項
1から請求項
5のいずれか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項7】
航空障害灯が必要なクレーンであって、
航空障害
灯が必要な位置に航空障害灯を備えない一方、航空障害灯を有する移動体を配置可能な配置部を備え
、
前記クレーンの姿勢によって切り替わる前記クレーンの少なくとも2つの最上部に対応して複数の前記配置部が設けられているクレーン。
【請求項8】
航空障害灯が必要なクレーンであって、
航空障害
灯が必要な位置に航空障害灯を備えない一方、航空障害灯を有する移動体を配置可能な配置部を備え
、
さらに、第1の航空障害灯を備え、
前記第1の航空障害灯が前記クレーンの最上部に位置しない姿勢の場合に、前記移動体が前記クレーンの最上部に対応する前記配置部へ移動するクレーン。
【請求項9】
航空障害灯が必要なクレーンであって、
航空障害
灯が必要な位置に航空障害灯を備えない一方、航空障害灯を有する移動体を配置可能な配置部を備え
、
前記クレーンの作業の終了を契機に、前記移動体が前記配置部へ移動するクレーン。
【請求項10】
航空障害灯を有する移動体を留めるための特別な構造、又は、前記移動体の前記航空障害灯に電力を供給するための構造を有する特別配置部を有する
クレーンであって、
前記クレーンの姿勢によって切り替わる前記クレーンの少なくとも2つの最上部に対応して複数の前記特別配置部が設けられているクレーン。
【請求項11】
航空障害灯を有する移動体を留めるための特別な構造、又は、前記移動体の前記航空障害灯に電力を供給するための構造を有する特別配置部を有する
クレーンであって、
前記クレーンは、第1の航空障害灯を有し、
前記第1の航空障害灯が前記クレーンの最上部に位置しない姿勢の場合に、前記移動体が前記クレーンの最上部に対応する前記特別配置部へ移動するクレーン。
【請求項12】
航空障害灯を有する移動体を留めるための特別な構造、又は、前記移動体の前記航空障害灯に電力を供給するための構造を有する特別配置部を有する
クレーンであって、
前記クレーンの作業の終了を契機に、前記移動体が前記特別配置部へ移動するクレーン。
【請求項13】
クレーン本体の周囲を移動可能で、前記クレーン本体の第1電装品として機能する第2電装品を備え
、
前記第1電装品が故障したときに前記クレーン本体の一部に配置されかつ前記第2電装品が駆動される移動体。
【請求項14】
前記クレーン本体の構成要素に連結可能な連結部を更に備える、
請求項
13記載の移動体。
【請求項15】
前記第2電装品以外の機能で前記クレーン本体の作業に寄与する機能を提供する機能部を備える、
請求項
13又は請求項
14に記載の移動体。
【請求項16】
前記第2電装品は航空障害灯である請求項
13から請求項15のいずれか一項に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンシステム、クレーン及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、航空障害灯を備えたクレーンが示されている。所定の高さ以上のクレーンにおいては、航空機に存在を知らせるために航空障害灯を備える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
航空障害灯等の電装品を備えるクレーンにおいては、電装品が故障した場合に、クレーンのブームを倒伏させるか、作業者が電装品の位置まで登り、電装品を修理する必要がある。
【0005】
本発明は、航空障害灯等の電装品が故障した場合に容易に対処できるクレーンシステム、クレーン及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明の一つの態様は、
クレーン本体と、前記クレーン本体の周囲を移動可能な移動体と、を備え、
前記移動体は、航空障害灯を有し、前記クレーン本体の航空障害灯として機能し、
前記クレーン本体は、前記移動体を配置可能な配置部を有し、
前記クレーン本体の姿勢によって切り替わる前記クレーン本体の少なくとも2つの最上部に対応して複数の前記配置部が設けられているクレーンシステムである。
(2)
本発明のもう一つの態様は、
クレーン本体と、前記クレーン本体の周囲を移動可能な移動体と、を備え、
前記移動体は、航空障害灯を有し、前記クレーン本体の航空障害灯として機能し、
前記クレーン本体は、前記移動体を配置可能な配置部と、第1の航空障害灯と、を有し、
前記第1の航空障害灯が前記クレーン本体の最上部に位置しない姿勢の場合に、前記移動体が前記クレーン本体の最上部に対応する前記配置部へ移動するクレーンシステムである。
(3)
本発明のもう一つの態様は、
クレーン本体と、前記クレーン本体の周囲を移動可能な移動体と、を備え、
前記移動体は、航空障害灯を有し、前記クレーン本体の航空障害灯として機能し、
前記クレーン本体は、前記移動体を配置可能な配置部を有し、
前記クレーン本体の作業の終了を契機に、前記移動体が前記配置部へ移動するクレーンシステムである。
【0007】
(4)
本発明の一つの態様は、
航空障害灯が必要なクレーンであって、
航空障害灯が必要な位置に航空障害灯を備えない一方、航空障害灯を有する移動体を配置可能な配置部を備え、
前記クレーンの姿勢によって切り替わる前記クレーンの少なくとも2つの最上部に対応して複数の前記配置部が設けられているクレーンである。
(5)
本発明のもう一つの態様は、
航空障害灯が必要なクレーンであって、
航空障害灯が必要な位置に航空障害灯を備えない一方、航空障害灯を有する移動体を配置可能な配置部を備え、
さらに、第1の航空障害灯を備え、
前記第1の航空障害灯が前記クレーンの最上部に位置しない姿勢の場合に、前記移動体が前記クレーンの最上部に対応する前記配置部へ移動するクレーンである。
(6)
本発明のもう一つの態様は、
航空障害灯が必要なクレーンであって、
航空障害灯が必要な位置に航空障害灯を備えない一方、航空障害灯を有する移動体を配置可能な配置部を備え、
前記クレーンの作業の終了を契機に、前記移動体が前記配置部へ移動するクレーンである。
【0008】
(7)
本発明の一つの態様は、
航空障害灯を有する移動体を留めるための特別な構造、又は、前記移動体の前記航空障害灯に電力を供給するための構造を有する特別配置部を有するクレーンであって、
前記クレーンの姿勢によって切り替わる前記クレーンの少なくとも2つの最上部に対応して複数の前記特別配置部が設けられているクレーンである。
(8)
本発明のもう一つの態様は、
航空障害灯を有する移動体を留めるための特別な構造、又は、前記移動体の前記航空障害灯に電力を供給するための構造を有する特別配置部を有するクレーンであって、
前記クレーンは、第1の航空障害灯を有し、
前記第1の航空障害灯が前記クレーンの最上部に位置しない姿勢の場合に、前記移動体が前記クレーン本体の最上部に対応する前記特別配置部へ移動するクレーンである。
(9)
本発明のもう一つの態様は、
航空障害灯を有する移動体を留めるための特別な構造、又は、前記移動体の前記航空障害灯に電力を供給するための構造を有する特別配置部を有するクレーンであって、
前記クレーン本体の作業の終了を契機に、前記移動体が前記特別配置部へ移動するクレーンである。
【0009】
(10)
本発明の一つの態様は、
クレーン本体の周囲を移動可能で、前記クレーン本体の第1電装品として機能する第2電装品を備え、
前記第1電装品が故障したときに前記クレーン本体の一部に配置されかつ前記第2電装品が駆動される移動体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、航空障害灯等の電装品が故障した場合に、この故障に容易に対処できるクレーンシステム、クレーン及び移動体を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るクレーンシステムを示す斜視図である。
【
図5A】クレーンの可動部の姿勢と移動体の配置姿勢との第1例を示す側面図である。
【
図5B】クレーンの可動部の姿勢と移動体の配置姿勢との第2例を示す側面図である。
【
図6A】変形例の配置部を示す側面図であり、可動部が第1姿勢のときを示す。
【
図6B】変形例の配置部を示す側面図であり、可動部が第2姿勢のときを示す。
【
図7】クレーンと配置部の適用箇所の一例を示す図である。
【
図8】クレーンと配置部の適用箇所の一例を示す図である。
【
図9】クレーンと配置部の適用箇所の一例を示す図である。
【
図10】クレーンと配置部の適用箇所の一例を示す図である。
【
図11】管理装置が実行する自動運転処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るクレーンシステムを示す斜視図である。
図2Aは、
図1の配置部を示す側面図である。
図2Bは
図1の配置部を示す上面図である。
図2Aにおいては、棒状の被連結部181を支持するプレート151の一部を破断した図を示している。
図2Bは移動体20が無い状態を示している。
【0014】
本実施形態のクレーンシステム1は、クレーン本体10と、移動体20とを備える。クレーン本体10は、クレーンと呼んでもよい。クレーン本体10は、クローラ等を有する走行体11、走行体11に対して旋回する旋回部12、運転員が運転操作を行うキャブ13、起伏等が可能なブーム等の可動部15、可動部15を動かすウインチ16、及び、荷を吊るフック17等を備える。
図1において、可動部15はブームであるが、可動部15には、ジブ、テレスコピックブームなどが含まれてもよい。
【0015】
クレーン本体10は、航空障害灯26を要する高さを有する一方、固定的に設置された航空障害灯を有さない。
【0016】
可動部15には、移動体20が駐機可能な配置部18が設けられている。配置部18は、可動部15が起立した状態で高い方の端部に設けられている。配置部18は、可動部15の回動方向において広い範囲で解放されており、可動部15が様々な姿勢をとっているときでも、多くの場合、配置部18の上方に移動体20が駐機可能な空間が確保される。
【0017】
配置部18は、
図2A及び
図2Bに示すように、移動体20が連結可能な被連結部181と、移動体20へ電力を供給する送電部182とを有する。被連結部181は、可動部15の一部(例えばプレート151)に支持された棒体である。送電部182は、電磁誘導により電力を伝送する送電コイルを含む構成である。なお、送電部182は、コネクタの接続又は電極同士の接触を介して電力が伝送される構成であってもよい。送電部182には、電力線183を介して電力が供給される。電力は、商用電源であってもよいし、クレーン本体10の発電電力又は蓄電電力であってもよい。送電部182は、移動体20が駐機した場合に使用される専用の構成要素であり、送電部182を有する配置部18は、移動体20を駐機させるための特別配置部にも相当する。
【0018】
図3Aは、移動体を示す側面図である。
図3Bは、移動体を示す正面図である。
図4は、移動体の構成を示すブロック図である。
【0019】
移動体20は、例えば空中を飛行し、上下前後左右の移動、正逆の旋回等を行うことができるいわゆるドローンである。移動体20は、複数のプロペラ21と、複数のプロペラ21を駆動する駆動部22と、測位を行う測位部23と、駆動部22を制御する制御部24と、外部から無線等を介して指令を受ける受信部25と、航空障害灯26と、クレーン本体10の被連結部181に連結可能な連結部30と、外部から電源電力を取り込み可能な受電部27とを備える。さらに、クレーンシステム1は、移動体20を手動で運転するためのリモコン41を備えていてもよい。また、クレーンシステム1は、移動体20を自律的に動かすための管理装置40を備えていてもよい。リモコン41又は管理装置40は、無線等を介して指令を移動体20へ送信できる。管理装置40は、例えばクレーン本体10のキャブ13内に配置されるコンピュータである。
【0020】
連結部30は、配置部18の被連結部181を把持可能な把持機構31と、把持機構31を駆動するアクチュエータ32とを有する。アクチュエータ32は、制御部24により制御される。
【0021】
受電部27は、受電コイルを有し、電磁誘導により非接触に電力を受けることができる。なお、受電部27及び配置部18の送電部182は、コネクタを介して互いに接続される構成、あるいは、電極を接触させて互いに接続される構成としてもよい。受電部27に供給された電力は、航空障害灯26へ供給され、航空障害灯26を点滅動作させる。受電部27に供給された電力の一部は、バッテリ28に蓄積され、各駆動系の電源及び制御系の電源として使用されてもよい。
【0022】
測位部23は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)、ビーコン、又はこれら両方を用いた測位と、ジャイロセンサ等を用いた方位の検出とを行って、移動体20の位置と向きとを測定する。測位部23により測定された位置及び向きの情報は、制御部24へ供給される。
【0023】
制御部24は、受信部25を介して外部から指令を受け、かつ、測位部23から測位情報を入力し、駆動部22及び連結部30のアクチュエータ32を駆動制御する。例えば、制御部24は、受信部25を介して移動の指令が入力されると、測位部23の測位結果を参照しながら駆動部22を制御し、指令に応じた移動体20の移動を実現する。また、制御部24は、連結部30の駆動指令が入力されると、指令に応じてアクチュエータ32を駆動し、把持機構31を開閉動作させることで、指令に応じた連結部30の連結又は連結解除の動作を実現する。
【0024】
上記のように構成された移動体20によれば、係員がリモコン41を用いて移動体20に操縦指令を送ることで、移動体20を配置部18へ移動させ、配置部18に駐機させたり、移動体20を配置部18から飛び立たせ、別の箇所に移動させることができる。また、管理装置40が、移動指令とともに移動先の位置情報及び向き情報を送ることで、移動体20を移動先へ移動させ、かつ、所定の方向を向かせることができる。移動先の位置情報として、配置部18の位置情報を送ることで、移動体20を配置部18へ移動させることができる。さらに、移動後に管理装置40が、連結部30の連結指令を送ることで、連結部30が被連結部181に連結して、移動体20を配置部18に駐機させることができる。管理装置40は、クレーン本体10に備わる測位装置の位置情報及び向き情報と、可動部15の姿勢情報とを、クレーン本体10の制御装置から受け、配置部18の位置及び向きを計算することができる。「駐機」とは、連結部30と被連結部181とが連結され、移動体20のプロペラ21が停止した状態を意味する。
【0025】
<移動体の使用例>
一使用例において、移動体20は、予めクレーン本体10の配置部18に配置される。配置部18において、移動体20の連結部30は被連結部181に連結され、移動体20の受電部27と配置部18の送電部182とは、互いに近接及び対向し、電力伝送可能にされる。
【0026】
クレーン本体10の作業を終了する際、可動部15を倒伏できずに可動部15を起立させたままクレーン本体10を停留させる場合、航空障害灯26の駆動が必要となる。この場合、係員は、電力線183(
図2Aを参照)を電源につないで送電部182へ電力を供給する。これにより、送電部182から移動体20の受電部27へ電力が伝送され、可動部15の端部で航空障害灯26が点滅動作する。
【0027】
なお、航空障害灯26は電力供給に伴って駆動される構成のほか、リモコン41又は管理装置40からの指令に基づき、制御部24が航空障害灯26を駆動する構成としてもよい。また、航空障害灯26は、電力供給があれば、時間又は周囲の明度によって自動的に駆動される構成であってもよい。また、上記の例では、クレーン本体10の作業を終了する際に航空障害灯を駆動する例を示したが、空港に近い現場など、作業中又は日中において駆動させる航空障害灯として、移動体20の航空障害灯26が使用されてもよい。
【0028】
可動部15を倒伏できない現場等で航空障害灯26の故障が判明した場合、係員は、リモコン41又は管理装置40から移動体20へ地上への移動の指令を送る。この指令により、移動体20は、連結部30の連結を解き、プロペラ21を駆動して、配置部18から飛び立つ。そして、移動体20が地上まで移動する。
【0029】
移動体20が地上まで移動すれば、係員は電球を交換するなどして航空障害灯26の故障を修理することができる。修理後、係員は、リモコン41又は管理装置40から移動体20へ配置部18への移動の指令を出力する。すると、移動体20は、配置部18まで移動し、かつ、連結部30が連結動作し、配置部18に駐機する。その後、正常な航空障害灯26を有する移動体20がクレーン本体10の配置部18に配置されるので、係員は、必要なときに航空障害灯26を動作させることができる。
【0030】
なお、クレーン本体10の作業中など、航空障害灯26の動作が不要なときには、移動体20は、クレーン本体10とは別の箇所で待機し、航空障害灯26の動作を要するときに、移動体20がクレーン本体10の配置部18へ移動して、航空障害灯26を動作させるようにしてもよい。この場合、キャブ13内の作業の終了を示す操作(例えばエンジン停止の操作)が行われたことを契機に、管理装置40が移動体20へ指令を発し、移動体20が配置部18へ移動して航空障害灯26が動作される構成としてもよい。また、ジブが倒伏した休車姿勢をとるクレーンの場合、休車姿勢を作業の終了としてもよい。
【0031】
<移動体の傾き管理>
図5Aは、クレーンの可動部の姿勢と移動体の配置姿勢との第1例を示す側面図である。
図5Bは、クレーンの可動部の姿勢と移動体の配置姿勢との第2例を示す側面図である。
【0032】
移動体20が配置部18に連結されている状態で可動部15の姿勢が変わると、
図5A及び
図5Bに示すように、移動体20の傾きが変化する。航空障害灯26を動作させる際の移動体20の傾き、並びに、配置部18から飛び立つ際の移動体20の傾きには、制限が付される場合がある。
【0033】
移動体20の傾きは、係員の目視により確認することができる。また、移動体20の傾きは、管理装置40が計算により求めることができる。管理装置40は、クレーン本体10から可動部15の姿勢情報を入力するインタフェース401と、移動体20が配置部18に駐機したときの可動部15の姿勢を記憶する傾斜記憶部402とが設けられている(
図4を参照)。管理装置40は、傾斜記憶部402に記憶された情報と、現在の可動部15の姿勢の情報とから、現在の移動体20の傾斜を計算することができる。例えば、
図5A及び
図5Bに示すように、移動体20が駐機したときに可動部15の姿勢が角度θ1であり、現在の可動部15の姿勢が角度θ2であれば、移動体20の傾斜角度θ3は、“θ3=θ1-θ2”のように計算することができる。
【0034】
航空障害灯26を動作させる際の移動体20の傾きθ3に制限がある場合、航空障害灯26を動作させる際に、係員の目視又は管理装置40の演算処理により、移動体20の傾きθ3が確認される。そして、傾きθ3が制限を超えていた場合、係員又は管理装置40は、一旦、移動体20を配置部18から飛び立たせ、再度、配置部18へ駐機させる。この処理により、移動体20の傾きが制限範囲内に修正され、修正された傾きで航空障害灯26を動作させることができる。
【0035】
配置部18から飛び立たせる際の移動体20の傾きθ3に制限がある場合、移動体20を飛び立たせる際に、係員の目視又は管理装置40の演算処理により、移動体20の傾きθ3が確認される。そして、傾きθ3が制限を超えていた場合、係員は可動部15の姿勢の修正が必要であると認識する。あるいは、管理装置40が移動体20に移動の指令を送る前に、管理装置40から可動部15の姿勢をどのように変更しないと移動体20を移せないことを示す警告が発せられる。係員は、この警告に基づき、可動部15の姿勢の修正が必要であると認識する。上記の認識に基づき、係員は、可動部15の姿勢を変更し、移動体20の傾きを制限範囲内に変更する。その後、リモコン41の操縦、又は、管理装置40の指令により、移動体20を配置部18から飛び立たせることが可能となる。
【0036】
<配置部の変形例>
クレーン本体10の配置部18の構成としては、移動体20の傾きの管理を容易にするため、
図6A及び
図6Bの変形例が採用されてもよい。
図6Aは、変形例の配置部を示す側面図であり、可動部が第1姿勢のときを示す。
図6Bは、変形例の配置部を示す側面図であり、可動部が第2姿勢のときを示す。
【0037】
変形例の配置部18において、被連結部(例えば棒体)181は、回動自在にクレーン本体10の可動部15に支持される。さらに、変形例の配置部18には、可動部15の姿勢が変わっても、常に、被連結部181の上端が鉛直上方を向くように被連結部181を回転調整する姿勢維持機構185が設けられる。被連結部181の回動方向は、回動中心軸が可動部15の回動中心軸と平行となる方向である。姿勢維持機構185は、例えば被連結部181と一体化された重りであり、重りと被連結部181と被連結部181に連結された移動体20とを合わせた構成の重心が、被連結部181の回動中心よりも下方に位置するように設定される。
【0038】
変形例の配置部18によれば、可動部15の姿勢が変わっても、常に、被連結部181の所定位置(例えば送電部182の配置)が、鉛直上方を向くように、被連結部181が回動する。したがって、移動体20が被連結部181に連結される際、可動部15の姿勢が一定でなくても、移動体20と被連結部181との向きを合せて(例えば送電部182と受電部27とが対向する向きに合わせて)、互いを連結させることができる。
【0039】
さらに、移動体20が配置部18に配置されている状態で、可動部15の姿勢が変化しても、常に移動体20の水平姿勢が維持されるように、被連結部181が回動する。したがって、常に、航空障害灯26を、その向きを一定に保った状態で動作させることができ、常に、移動体20を水平度を保った状態から飛び立たせることができる。
【0040】
なお、姿勢維持機構185は、重りによる構成に限られず、重力方向を検出するセンサと、被連結部181の向きを変えるアクチュエータと、センサの出力に応じて被連結部181の向きが一定になるようにアクチューエータを制御する制御回路とから構成されてもよい。
【0041】
<クレーンの種類と配置部の適用例>
図7~
図10は、クレーンと配置部の適用箇所の一例を示す図である。本実施形態の移動体20を備えるクレーンシステム1A~1Cは、
図7~
図9に示すように、可動部としてブーム15AA~15CA及びジブ15AB~15CBを備えるクレーン本体10A~10Cを備えたシステムとしてもよい。また、本実施形態の移動体20を備えるクレーンシステム1Dは、
図10に示すように、可動部としてマストブーム15DBを有し、かつ、ウェイト台車19を備えたクレーン本体10Dを備えたシステムとしてもよい。
図7~
図9のクレーン本体10A~10Cはいわゆる移動式タワークレーンであり、
図10のクレーン本体10Dはいわゆるスーパーリフトである。
【0042】
ジブ15AB~15CBを有するクレーン本体10A~10Cの場合、例えば
図7に示すように、移動体20の配置部18Aは、ジブ15ABの先端部に設けられてもよいし、
図8及び
図9に示すように、移動体20の配置部18B、18Cは、ストラット15BC、15CCの先端部に設けられてもよい。ジブ15ABの先端部に配置部18Aを有する場合(
図7)、ジブ15ABを起立させた状態で、配置部18Aに移動体20を駐機させ、航空障害灯26をクレーン本体10Aの最も高い位置の周辺で動作させることができる。また、ストラット15BC、15CCの先端部に配置部18B、18Cを有する場合、ジブ15BB、15CBを倒伏あるいはジブ15BB、15CBの先端を下向きにした状態で、配置部18B、18Cへ移動体20を駐機させ、航空障害灯26をクレーン本体10B、10Cの最も高い位置の周辺で動作させることができる。
【0043】
マストブーム15DBを有するクレーン本体10Dの場合、移動体20の配置部18D、18Eが、ブーム15DAの先端部、又は、マストブーム15DBの先端部に設けられてもよい。
【0044】
なお、移動体20の配置部は、一台のクレーン本体の複数の箇所に設けられていてもよい。例えば、
図7のクレーン本体10Aの場合、ジブ15ABの先端部と、ストラット15ACとの2箇所に配置部18A、18Hが設けられていてもよい。複数の配置部18A、18Hは、ブーム15AA及びジブ15ABの姿勢によって、クレーン本体10Aの最も高くなりえる位置の周辺に設けられる。
【0045】
このような構成によれば、ジブ15ABの姿勢によって、最も高い箇所がストラット15BCの一端、又は、ジブ15ABの先端に変化しても、複数の配置部18A、18Hのいずれか高い方を選択して、選択された方に移動体20を駐機させることができる。よって、クレーン本体10Aの最も高い位置の近傍で航空障害灯26を動作させることができる。
【0046】
また、クレーン本体は固定的に設置された航空障害灯と、移動体20が駐機できる配置部との両方を有していてもよい。例えば、
図8のクレーン本体10Bは、ジブ15BBの先端部に固定的な航空障害灯126が設置され、ストラット15BCの先端部に配置部18Bが設けられている。このような構成によれば、ジブ15BBの先端が起立された状態のときには、固定的に設置された航空障害灯126を動作させ、ジブ15BBの先端を下に向けた状態のときには、配置部18Bに移動体20を駐機させ、移動体20の航空障害灯26を動作させることができる。このような使用法により、ジブ15BBの姿勢に応じてクレーン本体10Bの最も高い位置の近傍で航空障害灯26、126を動作させることができる。
【0047】
<移動体の制御処理>
クレーン本体に複数の配置部がある場合、管理装置40は、次の自動運転処理を実行してもよい。以下、
図7のクレーン本体10Aを参照して説明する。
【0048】
図11は、管理装置が実行する移動体の自動運転処理を示すフローチャートである。自動運転処理において、管理装置40は、先ず、クレーン本体10Aの運転操作を監視し(ステップS1)、エンジンを停止させる操作など、クレーン本体10Aの作業の終了を示す操作の有無を判別する(ステップS2)。
【0049】
ステップS2の判別結果がYESであると、管理装置40は、クレーン本体10のブーム15AA及びジブ15ABの姿勢情報を取得する(ステップS3)。姿勢情報は、クレーン本体10Aの運転操作の履歴から、管理装置40が計算して取得してもよいし、クレーン本体10Aの制御装置が姿勢情報を持っている場合には、制御装置から姿勢情報を送らせることで取得してもよい。また、ブーム15AA及びジブ15ABの各部の高さを示す測位情報を、別の測量装置又はクレーン本体10Aの制御装置から送らせ、これらから計算して姿勢情報を取得してもよい。また、クレーン本体10Aの作業終了時の姿勢が、幾つかのパターンに制限される場合には、運転者に姿勢のパターンを入力させ、管理装置40は、この入力情報から姿勢を識別してもよい。
【0050】
続いて、管理装置40は、姿勢情報に基づき、複数の配置部18B、18Hのうち、いずれが最も高い位置にあるか判断する(ステップS4)。そして、管理装置40は、ステップS4で判断された配置部へ移動し、航空障害灯26を動作するよう、移動体20に指令を発する(ステップS5)。ステップS5の指令により、移動体20は、要求された配置部へ移動及び駐機し、航空障害灯26を動作させる。そして、管理装置40は、自動運転処理を終了する。
【0051】
なお、上記の自動運転処理では、
図11の各ステップを管理装置40が実行する例を示したが、ステップS3~S5の処理は、移動体20の制御部24が、管理装置40から姿勢情報を受けて実行してもよい。また、移動体20は、撮影部を有し、撮影画像に基づき画像認識を行って、複数の配置部18B、18Hのうち、最も高い位置に移動した配置部を判断し、そこへ自律的に移動してもよい。
【0052】
<実施形態効果>
以上のように、上記実施形態で説明したクレーンシステム1、1A~1Dによれば、移動体20は航空障害灯26を有する。したがって、移動体20をクレーン本体10、10A~10Dの航空障害灯を要する箇所近傍に配置し、航空障害灯を動作させることで、移動体20の航空障害灯26をクレーン本体10、10A~10Dの航空障害灯として機能させることができる。また、上記の構成によれば、航空障害灯26に故障が生じた場合、この故障に容易に対処することができる。例えば、クレーン本体10、10A~10Dの可動部15を倒伏させずに、移動体20を地上に降ろして故障した航空障害灯26を修理することができる。したがって、可動部15を倒伏させることができない現場においても、容易に航空障害灯26の修理が可能となる。なお、上記実施形態では、移動体20が、クレーン本体10、10A~10Dの航空障害灯を要する箇所に停まる例を示したが、移動体20は、上記の箇所周辺で飛行した状態で配置されてもよい。
【0053】
さらに、上記実施形態のクレーンシステム1、1A~1Dによれば、クレーン本体10、10A~10Dが、移動体20を配置可能な配置部18、18A~18E、18Hを有する。したがって、移動体20を配置部18、18A~18Eに停めて、航空障害灯26を動作させることができる。この構成により、航空障害灯26の動作時において移動体20の移動によるエネルギー損失を低減できる。なお、上記実施形態では、配置部18、18A~18Eとして、移動体20を専用に留め置くための特別な部材(例えば被連結部181)と、航空障害灯26の電力を供給する手段(例えば送電部182)とを有する構成を示したが、移動体20が配置可能な配置部は、クレーン本体10、10A~10Dの既存の部材(例えばブーム又はジブの構成部材)であってもよい。
【0054】
また、
図7のクレーンシステム1Aによれば、可動部の姿勢に応じて切り替わるクレーン本体10Aの各最上部に対応して複数の配置部18A、18Hが設けられている。したがって、クレーン本体10Aが異なる姿勢で停留する場合でも、その時の最上部に移動体20を移動させて、航空障害灯26を動作させることができる。本明細書において、「最上部」とは、最も高い位置又はその周辺を意味する。
【0055】
また、実施形態のクレーンシステム1Aによれば、クレーン本体10Aの姿勢に応じて配置部18A、18Hの高い方を判断する判断処理(
図11のステップS4)と、判断された方へ移動体20を移動させる制御処理(
図11のステップS5)とを実行する管理装置40を備える。これにより、航空障害灯26を動作させる際に煩雑な移動体20の運転操作を省くことができ、クレーン本体10Aの姿勢に応じた最上部で航空障害灯26を動作させることができる。ここで、判断処理を行う管理装置40のソフトウェア機能が、本発明に係る判断部の一例に相当し、制御処理を実行する管理装置40のソフトウェア機能が、本発明に係る制御部の一例に相当する。これらの判断処理と制御処理とを行う構成は、前述のように移動体20に備わっていてもよい。
【0056】
また、実施形態のクレーンシステム1Aによれば、クレーン本体10Aの作業の終了を契機に、移動体20が配置部18A、18Hへ移動するよう制御される。したがって、クレーン本体10Aの作業の終了に連動させて、自動的に移動体20を配置部18A、18Hへ移動させることができ、航空障害灯26に関する運転者の操作をより省くことができる。なお、クレーン本体10Aの作業の終了とは、クレーン本体10Aのエンジンが停止したとき、あるいは、クレーン本体10Aが休車姿勢(ブームが倒伏した状態等)となったとき、を意味してもよい。
【0057】
また、実施形態のクレーンシステム1、1A~1Dによれば、配置部18、18A~18E、18Hには、移動体20へ電力を伝送できる送電部182が設けられている。したがって、長い時間でも航空障害灯26の動作を継続することができる。
【0058】
また、実施形態のクレーンシステム1、1A~1Dによれば、移動体20は、移動のための動力出力を停止した状態で、航空障害灯26を動作させ、クレーン本体10Aの航空障害灯として機能する。したがって、移動体20がクレーン本体10Aの航空障害灯として機能する際に、移動のための動力出力によるエネルギー損失を削減できる。
【0059】
また、実施形態のクレーンシステム1、1A~1Dによれば、例えば一定の向きを維持できる棒体が被連結部181として採用されるなど、クレーン本体10、10A~10Dの姿勢によらずに配置部18、18A~18E、18Hに移動体20を駐機させることができる。また、
図6A及び
図6Bに示した変形例の配置部18のように、姿勢維持機構185を備えることで、配置部18は、クレーン本体10、10A~10Dの姿勢によらずに移動体20を駐機させることができる。したがって、様々な姿勢において、移動体20の航空障害灯26を使用することができる。なお、配置部18、18A~18E、18H及び移動体20は、少なくともクレーン本体10、10A~10Dが第1姿勢にあるときと、第1姿勢とは異なる第2姿勢にあるときとで、移動体20が配置部18、18A~18E、18Hに配置可能であればよく、この構成により複数の姿勢において、移動体20の航空障害灯26を使用することができるという利点が得られる。例えば、クレーン本体10、10A~10Dが一部の姿勢(例えばブームが63°の姿勢)を除く、その他の姿勢であるときに、移動体20が配置部18、18A~18E、18Hに配置可能であっても、様々な姿勢において移動体20の航空障害灯26を使用できるという効果が奏される。
【0060】
また、実施形態のクレーン本体10は、航空障害灯を必要とする大きさを有する一方、固定された航空障害灯を有さず、移動体20を配置できる配置部18を有する。したがって、航空障害灯26を有する移動体20と組み合わせ、かつ、航空障害灯26を配置部18で動作させることで、可動部15を起立させたままてクレーン本体10を停留させることができる。なお、配置部18は、移動体20を配置させる専用の構成に限られず、例えばブーム又はジブの横材、ブーム又はジブに連結された板材など、非専用の構成であってもよい。
【0061】
また、実施形態のクレーン本体10は、特別配置部として、移動体20を留めるための特別な構造(ブーム又はジブの既存の構成部材とは異なる部材からなる被連結部181又は姿勢維持機構185等)、又は、航空障害灯26に電力を供給するための構造(例えば送電部182)を有する配置部18を備える。移動体20を留めるための特別の構造とは、移動体20を留めるために特有の形状を有する部材を含んだ構造、又は、移動体20を留めるために既存のブーム又は既存のジブが有さない構成部材を含んだ構造を意味する。上記のような特別配置部を有することで、クレーン本体10と航空障害灯26を有する移動体20とを組み合わせ、かつ、航空障害灯26を配置部18で動作させることで、航空障害灯26をクレーン本体10の航空障害灯として機能させることができる。配置部18は、移動体20を配置させるための上記の構造を有する点で、特別配置部であると識別できる。特別配置部を有するクレーン本体10は、固定された航空障害灯126を持っていてもよいし、航空障害灯が不必要なクレーン本体であってもよい。例えば、特別配置部を有するクレーン本体10は、航空障害灯が不必要な大きさであってもよい。
【0062】
また、
図8のクレーンシステム1Bによれば、固定された航空障害灯(第1の航空障害灯)126と、移動体20の航空障害灯26とを備える。さらに、固定された航空障害灯126がクレーン本体10Bの最上部に位置しない姿勢のときに、配置部18Bがクレーン本体10Bの最上部に位置する。したがって、クレーン本体10Bの姿勢に応じた最上部で航空障害灯126又は移動体20の航空障害灯26を動作させ、航空機にクレーン本体10Bの存在を知らせることができる。
【0063】
また、実施形態の移動体20は、クレーン本体10、10A~10Dの航空障害灯として機能する航空障害灯26を有する。したがって、移動体20を駐機可能な配置部18、18A~18E、18Hを有するクレーン本体10、10A~10Dと、移動体20とを組み合わせることで、配置部18、18A~18E、18Hで航空障害灯26を動作させることができる。これにより、クレーン本体10、10A~10Dの存在を航空機に知らせることができる。
【0064】
また、実施形態の移動体20は、クレーン本体10、10A~10Dの構成要素に連結可能な連結部30を備える。したがって、連結部30の連結により、移動体20をクレーン本体10、10A~10Dに固定した状態で、航空障害灯26を使用することができる。
【0065】
なお、上記の実施形態では、移動体が航空障害灯を有する構成について説明した。しかし、移動体は航空障害灯以外の電装品を有する構成としてもよい。航空障害灯は本発明に係る第2電装品の一例に相当する。また、航空障害灯以外の電装品も本発明に係る第2電装品の一例に相当する。このような構成により、クレーン本体が使用する電装品が故障した場合に、この故障に容易に対処することが可能となる。移動体の電装品は、クレーン本体に備わる電装品(第1電装品に相当)を代替する構成であってもよい。例えば、クレーン本体は、所定の構成要素の位置が制限範囲を超えないように、構成要素の移動を検知するリミットスイッチ(例えば特開平7-290584号公報、特開2004-10202号公報に記載のリミットスイッチ等)を有することがある。この場合、移動体は、リミットスイッチの代替品を有していてもよい。このような構成によれば、クレーン本体のリミットスイッチが故障した場合に、移動体が該当箇所に移動及び連結し、リミットスイッチの代替品を機能させるようにしてもよい。リミットスイッチの代替品は、無線により検出結果を、クレーン本体の制御装置へ送る構成が採用されてもよい。
【0066】
また、移動体は、航空障害灯の機能、並びに、航空障害灯を移動させる機能以外の機能で、クレーン本体の作業に寄与する機能を提供する機能部を有してもよい。機能部としては、例えば、クレーン本体の作業の監視(例えば吊荷監視、周囲監視など)に寄与する機能部、あるいは、クレーン本体の点検に寄与する機能部など、クレーン本体の作業に寄与する機能を実現するものであればよい。作業の監視に寄与する機能部は、例えば、監視対象を撮影し、撮影映像のデータを管理装置に送信する手段、クレーン本体を上方から監視したり、吊荷と周辺物との接触を監視したり、吊荷の振れを監視する機能により実現できる。点検に寄与する機能部は、例えば、点検対象を撮影し、撮影映像のデータを管理装置に送信又は読出し可能に保持する手段、点検用のセンサを有し点検自体を行う手段、点検時の工具を運ぶなどの補助を行う手段などにより実現できる。上記の機能部を有する構成によれば、クレーン作業時に移動体を流用して、クレーン本体の作業に寄与する機能を実現できる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、移動体は、有線の電力線を介して航空障害灯の電源が供給されるように構成され、電力線を垂らして移動する構成としてもよい。また、移動体は、電力を蓄積するバッテリを備え、航空障害灯の電力をバッテリから供給する構成としてもよい。また、上記実施形態では、移動体の把持機構がクレーン本体の棒状の被連結部を把持することで、互いが連結される構成を示した。しかし、両者の連結には、各種のロック機構が採用されてもよいし、マグネットで吸着しアクチュエータの駆動でマグネットの吸着を開放する機構が採用されてもよいなど、連結の方法は限定されない。
【0068】
また、上記実施形態では、移動体がいわゆるドローンである例を示したが、移動体の移動方法は特に限定されず、例えば飛行せずにブームを伝って移動する移動体など、どのような移動方法が採用されてもよい。また、上記実施形態では、クレーン本体としてクローラクレーンを示したが、クレーンの種類は限定されず、例えばタワークレーン、トラッククレーン、ホイールクレーンなど、どのようなクレーンであってもよい。また、上述した移動体が有する航空障害灯以外の電装品は、リミットスイッチに限定されず、例えば風速計、風向計、カメラ(例えば吊荷監視用のカメラ)など、クレーンが有する電装品を代替できる電装品であれば、どのような電装品であってもよい。また、上記の移動体に備わる航空障害灯の機能以外の機能部は、クレーン本体の作業の監視に寄与する機能、クレーン本体の点検に寄与する機能部に限られず、クレーン本体の作業に寄与する機能部であれば、どのような機能部であってもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、クレーンシステム、クレーン及び移動体に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1、1A~1D クレーンシステム
10、10A~10D クレーン本体
15 可動部
15AA~15DA ブーム
15AB~15CB ジブ
15AC~15CC ストラット
15DB マストブーム
18、18A~18E、18H 配置部
20 移動体
23 測位部
24 制御部
26 航空障害灯
27 受電部
28 バッテリ
30 連結部
31 把持機構
32 アクチュエータ
40 管理装置
41 リモコン
126 固定された航空障害灯
181 被連結部
182 送電部
185 姿勢維持機構
401 インタフェース
402 傾斜記憶部