(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】皮膚美白組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/11 20060101AFI20240920BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240920BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240920BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K8/11
A61K8/49
A61K8/67
A61Q19/02
(21)【出願番号】P 2022517143
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2020068973
(87)【国際公開番号】W WO2021052647
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-04-24
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522103801
【氏名又は名称】ベッラ オーロラ ラボス,エセ.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス ナヴァッロ,セルジ
(72)【発明者】
【氏名】セグラ テヘドール,ヨルディ
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0353392(US,A1)
【文献】特開2014-205667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、皮膚美白組成物:
(a)スクラレオリド;
(b)コウジ酸;および
(c)アスコルビルグルコシド;
ここで、コウジ酸は式(I)のペプチドならびにその化粧品的に許容される塩および溶媒和物を含むマイクロカプセルまたはナノカプセル内にカプセル化され、
前記ペプチドは、前記マイクロカプセルまたはナノカプセルの外表面に結合される:
R
2-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-DPhe-Arg-(AA)-Gly-Lys-DPro-Val-R
1 (I)
式(I)において、
- R
1は、-NH-(CH
2)
3-O-(CH
2CH
2O)
n-(CH
2)
3-NH
2
基であり、ここで、nは1~10の整数であり;
- R
2は、(C
1-24アルキル)-CO-、(C
2-24アルケニル)-CO-および(C
6-10アリール)-CO-から選択され;
- AAは芳香族基を含むアミノ酸である。
【請求項2】
コウジ酸の含有量が、0.0001%~0.1%(w/w)の範
囲に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
nが1または2であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
R
2がアセチル、プロパノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイルおよびヘプタデカノイルから選択さ
れることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
AAがトリプトファン、3-(2-ナフチル)-D-アラニン、3-アミノ-3-(1-ナフチル)-プロピオン酸、3-アミノ-3-(ビフェニル)-プロピオン酸、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、5-ヒドロキシトリプトファンおよびL-3,4-ジヒドロキシ-フェニルアラニンから選択さ
れることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中のスクラレオリドの量が、0.001%~5%(w/w)の範囲に含ま
れることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
スクラレオライドがリポソームの形態で封入さ
れることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中のアスコルビルグルコシドの量が、0.01%~10%(w/w)の範囲に含ま
れることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
さらに、異性化糖を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中の異性化糖の量が、0.00001%~2%(w/w)の範囲に含ま
れることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
さらに、ゲニステインおよびスルフォラファンを含
むことを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
さらに、Pancratium maritimum抽出物を含
むことを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
さらに、Lansium domesticum(Langstat)葉抽出物を含
むことを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
皮膚の美白のための、請求項1~13に記載の組成物の化粧品としての使用。
【請求項15】
皮膚の過剰色素沈着性のシミの排除または減少のための、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は皮膚の美白に有用な化粧品組成物、特に、皮膚から黒ずみおよびシミを除去するために有用な化粧品組成物に関する。
【0002】
〔最新技術〕
メラニンは皮膚の色をつかさどる濃い色素で、表皮でみられる細胞の一種であるメラノサイトで合成される。具体的には、メラノサイト内部の小胞であるメラノソーム内で、メラニン生成が行われる。メラニン生成の鍵となる酵素は、チロシナーゼである。チロシナーゼはメラノソームの膜に局在する糖タンパク質で、L-チロシンからのメラニン合成の2つの段階を触媒する。メラニン生成に関与する他の2つの酵素は、チロシナーゼ関連蛋白質1(Tyrp1)とチロシナーゼ関連蛋白質2(Tyrp2)である。メラニンとしては、褐色がかった黒色のユーメラニンと赤みがかった黄色のフェオメラニンの2種類が生成される。
【0003】
メラニン生成は、一連の多段階シグナル伝達カスケードによって調節される複雑な過程であり、様々な外因性および内因性の因子によって影響される。
【0004】
したがって、例えば、紫外線曝露はp53の活性化を誘発し、次にPOMC(プロオピオメラノコルチン)の発現増加を誘発し、さらにPOMCはACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、α-、β-、γ-MSH(メラノサイト刺激ホルモン)などの小ペプチドに分解される。ACTHとα-MSHはメラノサイト上のメラノコルチン-1受容体(MC1R)を刺激し、メラニンの生成の増加をもたらす。さらに、UV放射はケラチノサイトおよびメラノサイトにおける活性酸素種(ROS)の産生を高め、高濃度ROSはDNA損傷を引き起こし、さらにp53を活性化し、ひいてはメラニン生成を促進する。
【0005】
また、メラニンの生成は、メラニン生成の鍵となる酵素であるチロシナーゼ、Tyrpl、およびTyrp2を制御するmicrophthalmia-associated transcription factor(MITF)によって本質的に制御されており、その活動は、例えばcAMP、ERK/MAPKおよびNO/cGMPなどの、多くのシグナル経路によって制御される。
【0006】
この複雑な過程の結果として、メラニンの合成はとりわけ、様々な刺激、例えば、日射、炎症、ニキビ、ストレス、ホルモン変化、公害または炎症作用によって活性化され得る。皮膚炎の後遺症として生じる色素沈着は、一般に、炎症後過剰色素沈着(PI)として知られている。
【0007】
メラノサイトで生成されたメラニンは、隣接するケラチノサイトに移動され、その結果、この色素が表皮表面で可視化され、光酸化により次第に濃くなる。
【0008】
メラニンは有害な紫外線(UV)放射から皮膚を保護するために重要な役割を果たしているが、皮膚におけるメラニンの異常に多い産生および蓄積は、過剰色素沈着をもたらす可能性がある。それらは通常無害であるが、例えば肝斑(melasma)、日光性黒子、そばかすといった、皮膚、特に顔面の皮膚における色素沈着過剰は、一般に見栄えが悪いと考えられている。そのため、この皮膚の外観に関する懸念は、皮膚の色素沈着を減少させることができる皮膚美白化粧品製品の研究を促進した。これらの製品は一般に、皮膚上の異なる種類の色素斑を排除するため、生まれつき暗い皮膚色を明るくするため、または皮膚への色素沈着を防止するために使用される。
【0009】
皮膚色素沈着に関与するメカニズムおよび利用可能な主な皮膚美白剤は例えば、Gillbro et al., The melanogenesis and mechanisms of skin-lightening agents - existing and new approaches, Int. J. Cosm. Sci., 2011, 33, 210-221またはKumari et al., Melanogenesis inhibitors, Acta Derm. Venereol., 2018, 98, 924-931に記載されている。
【0010】
皮膚の美白および脱色素沈着のための最も一般的なアプローチは、チロシナーゼを阻害することによってメラニン生成を抑制することである。皮膚の美白に有効なチロシナーゼ阻害剤としては、例えば、ヒドロキノンおよびその誘導体であるアルブチンおよびデオキシアルブチンが知られている。それらの使用はメラノサイトの細胞毒性を引き起こす可能性があるものの、メラニン生成の阻害を示す。コウジ酸はAspergillus、AcetobacterおよびPenicilliumといった、数種類の細菌から得られる天然由来の真菌代謝物であり、接触皮膚炎、感作性および紅斑などのいくつかの副作用を引き起こす可能性があるものの、肝斑の治療に好適に使用されている。アゼライン酸(ノナンジオン酸)は、脱色剤としても一般的に使用されている、異なるチロシナーゼ阻害剤の一種である。また、レスベラトロールなどのポリフェノール類またはグラブリジンのようなイソフラボン類も、チロシナーゼ阻害による皮膚の美白効果を有することが報告されている。
【0011】
皮膚の美白のための別のアプローチとして、メラニンを含有する成熟メラノソームのケラチノサイトへの移動の阻害が挙げられる。このようなメカニズムにより作用すると考えられているいくつかの皮膚美白物質としては、大豆および大豆抽出物などのプロテアーゼ活性化受容体2(PAR-2)阻害剤、およびナイアシンアミドが挙げられる。
【0012】
抗酸化物質もまた、皮膚中の活性酸素種(ROS)(これはメラニン形成を活性化する)を中和することができ、また、既存のメラニンの直接的な光酸化を低減することができるため、皮膚の美白に一般的に使用される。皮膚美白剤として一般的に使用される抗酸化物質としては、例えば、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンC、ならびに、リン酸マグネシウムアスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、およびアスコルビルグルコシド等のアスコルビン酸誘導体、が挙げられる。
【0013】
国際特許出願WO-A-2014/170239には、例えば、Salvia sclarea Lに含まれる天然由来の物質であるスクラレオリドの皮膚美白剤としての使用が開示されている。スクラレオリドの皮膚美白作用に関与するメカニズムは、インターロイキン1(IL-1)α生合成阻害剤として、炎症後の過剰色素沈着を阻害することによる、抗炎症活性に関連している。さらに、スクラレオリドとチロシナーゼ阻害剤であるフェニルエチルレゾルシノールとの組み合わせにより、in vitroにおいて相乗的なメラニン阻害効果が得られることが見出されている。
【0014】
一方で、特許出願WO-A-2008/155048は、皮膚の黒色化、毛髪の暗色化、およびメラニンの合成の増強のための、スクラレオリドとヘスペリジンメチルカルコン(HMC)との組み合わせを開示している。
【0015】
これまでに先行技術において皮膚の美白のための物質および組成物が開示されているにもかかわらず、依然として、皮膚の安全かつ効果的な脱色素沈着を提供する、改良された製品が必要とされている。特に、望ましくない有害作用および毒性作用の無い、より安全な組成物を得るために、より少ない量の活性成分を用いて改善された色素脱失効果を達成するためには、強力な相乗的抗メラニン生成効果を有する、皮膚美白化粧剤のより優れた組み合わせを提供することが望ましい。
【0016】
〔発明の目的〕
本発明の目的は、皮膚美白用組成物である。
【0017】
本発明の別の態様は、皮膚を美白するための前記組成物の非治療的な化粧品としての使用である。
【0018】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、培養色素沈着ケラチノサイト(メラノサイトの存在下で正常ヒトケラチノサイトを培養することによって得られた)上に、数種類の組成物を1日1回、5日間連続して局所的に適用し、メラニン含有量を測定した、RHPEモデル(「再構築ヒト色素沈着表皮(Reconstructed human pigmented epidermis)」)を用いた実施例5のin vitro脱色素沈着アッセイの結果を示すグラフである。y軸は処理期間後のメラニン含有量の変化(μg)を示し、x軸は、アッセイした種々の組成物(1-コウジ酸、2-アスコルビルグルコシド、3-スクラレオリド、4-コウジ酸およびアスコルビルグルコシド、5-コウジ酸およびスクラレオリド、6-コウジ酸、アスコルビルグルコシドおよびスクラレオリド)を示す。濃い灰色の棒グラフは、実験的に得られた結果を示している。組み合わせの組成物について、明るい灰色の棒グラフは、組み合わせた成分の単純な相加効果で予想される理論的な結果を示す。
【0019】
図2は、リポソーム内にスクラレオリドをカプセル化した組成物の、脱色素効果に対する影響を評価するために、同じin vitroRHPEモデル(「再構築ヒト色素沈着表皮」)を用いた、実施例7のin vitro脱色素沈着アッセイの結果を示すグラフである。カプセル化コウジ酸(コウジ酸の0.00006%(w/w))、アスコルビルグルコシド(2%(w/w))、異性化糖(0.0049%(w/w))およびスクラレオリド(組成物1は0.2%(w/w)非カプセル化スクラレオリドを含み、一方で、組成物2、3および4は、それぞれ0.2%(w/w)、0.09%(w/w)および0.03%(w/w)のスクラレオリドを含む、リポソームにカプセル化されたスクラレオリドを含む)を含む、4つの異なる組成物(1~4)を試験した。組成物0を対照(RHPEモデルに製品を適用しなかった)とした。y軸は5日間の処理期間後のメラニン含有量の変化(%)を示し、x軸は、アッセイした異なる組成物を示す。
【0020】
図3は、実施例7でアッセイした組成物(対照組成物0および組成物1~4)についての、細胞生存率試験の結果を示す。細胞生存率は、対照組成物の細胞生存率を基準の100%とした%(y軸)で表す。
【0021】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の目的は、以下を含む皮膚美白組成物である:
(a)スクラレオリド;
(b)コウジ酸
(c)アスコルビルグルコシド;
ここで、コウジ酸は式(I)のペプチドならびにその化粧品的に許容される塩および溶媒和物を含むマイクロカプセルまたはナノカプセル内にカプセル化され、
前記ペプチドは、前記マイクロカプセルまたはナノカプセルの外表面に結合される:
R2-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-DPhe-Arg-(AA)-Gly-Lys-DPro-Val-R1 (I)
式(I)において、
- R1は、-NH-(CH2)3-O-(CH2CH2O)n-(CH2)3-NH2
基であり、ここで、nは1~10の整数であり;
- R2は、(C1-24アルキル)-CO-、(C2-24アルケニル)-CO-および(C6-10アリール)-CO-から選択され;
- AAは芳香族基を含むアミノ酸である。
【0022】
本発明の発明者らは、スクラレオリド、コウジ酸およびアスコルビルグルコシドの組合せを含む化粧品組成物を開発した。この組成物は、驚くべきことに、相乗的な美白効果を増強し、美白活性剤を減量した、効率的な美白組成物の調製を可能にし、それゆえに、あらゆる副作用のリスクを最小化した。
【0023】
本明細書および特許請求の範囲において、一般に冠詞「a」、「an」または「the」で先行する単数形の表現は、文脈が明らかに他に示さない限り、複数形も含むことを意図している。全てのパーセンテージは特に明記しない限り、重量で表される。「約(about)」という用語が先行する数値は、その値の周りの特定の変動、すなわち、記載された量の変動または±5%を含むことを意味する。下限値および上限値によって定義される数値範囲は、前記記載された上限値および下限値も含むことを意味し、それらはまた、任意のより狭い下位の範囲を含む。
【0024】
化粧用活性剤または化粧用活性成分は、化粧効果を提供するために、体表面、特に皮膚、毛髪または爪に適用されることが意図される任意の物質である。化粧効果は、正常な、病気でない皮膚、毛髪または爪の感覚または外観知覚を美化および/または改善することに関する。乾燥肌もこのカテゴリーに含まれる。化粧効果はいかなる治療効果も伴わない。すなわち、化粧品は、いかなる疾患をも予防または改善することを意図しない。
【0025】
化粧効果は、例えば、皮膚の白化である。用語「美白(whitening,lightening)」または「脱色素沈着(depigmentation)」は本明細書中で互換的に使用され、過剰に色素沈着した皮膚を美白する工程を意図する。典型的には、例えば、老化斑、ニキビ跡のシミ、皮膚の色むら、炎症後の過剰色素沈着あるいは肝斑および黒子シミを含む、皮膚の黒ずみ、斑点およびシミを排除または減少させることを意図する。本明細書では、「しみ(spots)」、「シミ(marks)」および「斑点(blemishes)」という用語は同等物であることを意味し、互換的に使用される。
【0026】
〔コウジ酸〕
コウジ酸は、特に、A.oryzae、A.flavus、A.tamariiおよびA.parasiticusを含む、AspergillusおよびPenicillum属の数種類の細菌種によって産生される天然物質であり、化学的には、5-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-4H-ピラン-4-オン(CAS番号501-30-4)に指定されている。
【0027】
コウジ酸は、例えばMohamad et al., Kojic acid: applications and development of fermentation process for production, Biotechnol. Mol. Biol. Rev., 2010, 5(2), 24-37に開示されているように、適切なコウジ酸産生Aspergillus株を用い、種々のカーボンおよび窒素源を用いて発酵することによって生産することができる。コウジ酸はいくつかの供給源、例えば、Sigma-Aldrich、Spec-Chem Industry Inc、またはCosphatech LLCから市販されている。
【0028】
コウジ酸は、皮膚美白剤として化粧品組成物に使用される、周知のチロシナーゼ阻害剤である。コウジ酸は組成物の種類、意図される用途に応じて、また特定の国の規制に応じて、異なる濃度で外用化粧品組成物に使用され得る。例えば、コウジ酸の含有量は、通常、米国で販売されている皮膚美白組成物中では0.1%~2%であり、カナダで販売されている皮膚美白組成物中では0.1%~30%までの範囲である(Brunett et al., Final report of the safety assessment of kojic acid as used in cosmetics, Int. J. Toxicol., 2010, 29 (Suppl. 4), 244S-273S)。
【0029】
本発明の組成物において、コウジ酸は、標的化マイクロカプセルまたはナノカプセルの形態で使用される。すなわち、メラノコルチン-1受容体(MC1R)アゴニストペプチドを表面上に含むカプセルの形態で使用される。このペプチドはメラノサイト上のメラノコルチン-1受容体(MC1R)に選択的に結合するため、前記カプセルは、コウジ酸を輸送し、メラノサイトに特異的に送達する。これにより、効果的な美白効果に必要とされるコウジ酸の量を低減することが可能となる。さらに、コウジ酸、スクラレオリドおよびアスコルビルグルコシドの特定の組み合わせについて見出された相乗効果は、組成物中のコウジ酸の量をさらに低減することをも可能にする。
【0030】
したがって、本発明の組成物中のコウジ酸の含有量は、通常、0.0001%~0.1%(w/w)の範囲であり、好ましくは0.0001%~0.01%(w/w)の範囲であり、より好ましくは0.0001%~0.001%(w/w)の範囲であり、よりさらに好ましくは0.0003%~0.0009%(w/w)の範囲であり、よりさらに好ましくは0.0004%~0.0008%(w/w)の範囲であり、よりさらに好ましくは0.0005%~0.0007%(w/w)の範囲である。
【0031】
換言すると、本発明の組成物におけるコウジ酸の含有量は、通常、1ppm~1000ppmの範囲であり、好ましくは1ppm~100ppmの範囲であり、より好ましくは1ppm~10ppmの範囲であり、よりさらに好ましくは3ppm~9ppmの範囲であり、よりさらに好ましくは4ppm~8ppmの範囲であり、よりさらに好ましくは5ppm~7ppmの範囲である。
【0032】
〔カプセル化コウジ酸〕
本発明の組成物において、コウジ酸は、マイクロカプセルまたはナノカプセル内にカプセル化される。これらのマイクロカプセルまたはナノカプセルは、メラノコルチン-1受容体(MC1R)アゴニストである式(I)のペプチドがその外表面に付着しており、このようにカプセル化された活性物質のメラノサイトへの標的送達のために設計されている。使用される上記の標的化カプセルについては、特許出願WO-A-2015/075116に開示されている。
【0033】
本明細書において、マイクロカプセルまたはナノカプセルは、通常、「カプセル」とも呼ばれ、WO-A-2015/075116号公報に開示されているように、典型的には10nm~10000nm、好ましくは50nm~5000nm、より好ましくは100nm~1000nm、よりさらに好ましくは150nm~450nm、よりさらに好ましくは180nm~400nmのサイズ分布を有する。マイクロカプセルのサイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定することができる。
【0034】
マイクロカプセルは好ましくはポリマーであり、通常、1つ以上の生分解性ポリマーから作製される。
【0035】
一実施形態において、カプセルを形成するポリマーは、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ乳酸、ポリ(プロピレンフマレート-コ-エチレングリコール)[P(PF-co-EG)]ブロックコポリマー、ポリ無水物ポリ(フマル酸-コ-セバシン酸)無水物、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ラクチド/グリコリド)、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、デキストラン、キトサン、ヒドロキシアパタイト、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、カルボマー、ポリ(エチレングリコール)、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0036】
カプセルを形成するポリマーの少なくとも1つは、カルボキシル基とR1中のアミン末端基とを結合させることによって、式(I)のペプチドを結合させるためのカルボキシル基を有することが必要である。
【0037】
一実施形態において、前記マイクロカプセルは、コアポリマー(または「内層ポリマー」)および外殻ポリマー(または「外層ポリマー」)を含む二層ポリマーマイクロカプセルである。
【0038】
コアポリマーおよび外殻ポリマーは、好ましくは、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ乳酸、ポリ(プロピレンフマレート-コ-エチレングリコール)[P(PF-co-EG)]ブロックコポリマー、ポリ無水物ポリ(フマル酸-コ-セバシン酸)無水物、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ラクチド/グリコリド)、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、デキストラン、キトサン、ヒドロキシアパタイト、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、カルボマー、ポリ(エチレングリコール)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
好ましい実施形態において、コアポリマーと外殻ポリマーとは異なる。より好ましい実施形態において、コアポリマーはポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)であり、外殻ポリマーはポリビニルアルコール(PVA)である。より好ましい実施形態において、PLGAは、40:60~60:40、より好ましくは50:50のラクチド/グリコリドのモル比を有する。
【0040】
前記マイクロカプセルまたはナノカプセルの調製はWO-A-2015/075116に開示されており、通常、化粧用活性成分と、カプセルを形成するポリマーとの適切な溶媒中での混合を含む。
【0041】
前記カプセルが二層マイクロカプセルまたはナノカプセルである場合、調製プロセスは、典型的には、以下を含む。
【0042】
a) 適切な溶媒中での内層ポリマーとコウジ酸との混合。ここで、前記溶媒は、例えば、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン(DCM)、エタノール、メタノール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)又は酢酸エチルである;
b) 適切な溶媒中での前記工程a)で得られた混合物と外層ポリマーとの乳化。ここで、前記溶媒は例えば、水、アセトニトリル、ジクロロメタン(DCM)、エタノール、メタノール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルフィド(DMS)または酢酸エチルであり、好ましくは、前記溶媒は水、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、およびジメチルスルフィドから選択され、より好ましくは、前記溶媒は水である
c) カプセルの分離。
【0043】
本発明の標的化カプセルの調製におけるさらなる工程は、メラノサイトに対する親和性を付与する式(I)のペプチドの、前記マイクロカプセルまたはナノカプセルの外表面へのカップリングである。この工程は、前記カプセルを形成する前または後に、好ましくは前記カプセルを形成した後に行うことができる。
【0044】
このカップリング工程は、カプセルの表面に存在するカルボキシル基とペプチドのアミノ末端基とをカップリングさせて、アミド結合を形成させることによって行われる。
【0045】
カプセルの表面に存在する前記カルボキシル基は、前記マイクロカプセルまたはナノカプセルの表面の外側に存在する限り、外殻ポリマーまたは内殻ポリマーのいずれかに属していてもよい。好ましい実施形態において、共有結合は、ペプチドの(R1基中の)アミノ末端基と、外表面に存在するPLGAポリマー由来のカルボキシル基との間のアミド結合である。好ましくは、外殻ポリマーはポリビニルアルコールである。
【0046】
前記カップリング反応を行うために、前記カプセル表面のカルボキシル基を予め活性化しておくことが好ましい。
【0047】
式(I)のペプチドは以下の通りであり、その化粧品的に許容される塩および溶媒和物でもある:
R2-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-DPhe-Arg-(AA)-Gly-Lys-DPro-Val-R1 (I)
式(I)において、
- R1は、-NH-(CH2)3-O-(CH2CH2O)n-(CH2)3-NH2
基であり、ここで、nは1~10の整数であり;
- R2は、(C1-24アルキル)-CO-、(C2-24アルケニル)-CO-および(C6-10アリール)-CO-から選択され;
- AAは芳香族基を含むアミノ酸である。
【0048】
上記のペプチド配列において、それらの立体配置を特定せずに言及されるアミノ酸(Ser、Tyr、Nle、Glu、His、Arg、Gly、LysおよびVal)はDおよびL立体異性体の両方を含むことを意味し、一方、DPheおよびDProは、それぞれフェニルアラニンおよびプロリンのD立体異性体を特異的に示す。
【0049】
本発明の一実施形態において、上記配列中のアミノ酸Ser、Tyr、Nle、Glu、His、Arg、Gly、LysおよびValは、特に、L立体異性体のみを示す。
【0050】
R1は-NH-(CH2)3-O-(CH2CH2O)n-(CH2)3-NH2基であり、ここで、nは1~10の整数であり、好ましくは、nは1~3の整数であり、より好ましくは1または2である。一実施形態において、nは1であり、R1はエチレングリコールビス(3-アミノプロイル)エーテル(CAS 2997-01-5)に由来する。別の実施形態において、nは2であり、R1は4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(CAS 4246-51-9)とも呼ばれるジエチレングリコールビス(3-アミノプロイル)エーテルに由来する。
【0051】
「C1-nアルキル」とは、1~n個の炭素原子を有する直鎖または分枝状のアルキル基を意味する。「C2-nアルケニル」とは、1個以上の炭素-炭素二重結合を有し、2~n個の炭素原子を有する直鎖または分枝状の炭化水素鎖基を意味する。C6-10アリールという用語は、フェニル、ナフチルまたはインデニルのような、6~10個の環状炭素原子を有する、単環式または二環式の芳香族基を意味する。C6-10アリール基は任意に、ヒドロキシ、メルカプト、ハロ、アルキル、フェニル、アルコキシ、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシル、アルコキシカルボニル等の1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0052】
前記式(I)のペプチドにおいて、R2は、(C1-24アルキル)-CO-、(C2-24アルケニル)-CO-および(C6-10アリール)-CO-から選択され、好ましくは、R2は(C1-24アルキル)-CO-であり、より好ましくは、R2は(C1-16アルキル)-CO-であり、さらに好ましくは、R2は、アセチル、プロパノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、およびヘプタデカノイルから選択され、よりさらに好ましくは、R2はヘキサデカノイル(パルミトイルとも呼ばれる)である。
【0053】
式(I)のペプチドにおいて、AAは芳香族基を含むアミノ酸である。当該アミノ酸は、天然アミノ酸または合成アミノ酸であり得る。一実施形態において、AAは、トリプトファン、3-(2-ナフチル)-D-アラニン、3-アミノ-3-(1-ナフチル)-プロピオン酸、3-アミノ-3-(ビフェニル)-プロピオン酸、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、5-ヒドロキシトリプトファンおよびL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンから選択され、好ましくは、AAは、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシンおよびL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンから選択され、より好ましくは、AAはトリプトファンであり、よりさらに好ましくはL-トリプトファンである。
【0054】
前記式(I)のペプチドの化粧品として許容される塩および溶媒和物を、本発明の組成物のマイクロカプセルまたはナノカプセルを調製するために使用することもできる。「化粧品として許容される」とは、動物、とりわけ、ヒトに対しての使用に安全かつ適していると一般に認められている塩または溶媒和物を意味する。薬学的に許容される塩には、例えば、金属塩(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、有機アミン(例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミンなど)、または塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リジンまたはヒスチジンなど)などの塩基付加塩、あるいは、例えば、有機酸(中でも、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩または酒石酸塩など)、または無機酸(中でも、塩化物、硫酸塩、ホウ酸塩または炭酸塩など)の酸付加塩といった、付加塩が含まれる。前記式(I)のペプチドの化粧品として許容される塩は、当技術分野で従来周知の方法によって得ることができる。化粧品として許容される溶媒和物には、例えば、水和形態が含まれる。
【0055】
一実施形態において、コウジ酸は式(I)のペプチドならびにその化粧品的に許容される塩および溶媒和物を含むマイクロカプセルまたはナノカプセル内にカプセル化され、前記ペプチドは、前記マイクロカプセルまたはナノカプセルの外表面に結合される:
R2-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-DPhe-Arg-(AA)-Gly-Lys-DPro-Val-R1 (I)
式(I)において、
- 前記アミノ酸Ser、Tyr、Nle、Glu、His、Arg、Gly、Lys、ValおよびAAは、D型またはL型であり、好ましくは、全てのアミノ酸がL型であり;
- R1は、-NH-(CH2)3-O-(CH2CH2O)n-(CH2)3-NH2基であり、ここで、nは1~10、好ましくは1~3、より好ましくは1または2の整数であり;
- R2は、(C1-24アルキル)-CO-、(C2-24アルケニル)-CO-および(C6-10アリール)-CO-から選択され、好ましくは、R2は(C1-24アルキル)-CO-であり、より好ましくは、R2は(C1-16アルキル)-CO-であり、さらに好ましくは、R2は、アセチル、プロパノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、およびヘプタデカノイルから選択され、よりさらに好ましくは、R2はヘキサデカノイルであり;
- AAは芳香族基を含むアミノ酸であり、好ましくは、トリプトファン、3-(2-ナフチル)-D-アラニン、3-アミノ-3-(1-ナフチル)-プロピオン酸、3-アミノ-3-(ビフェニル)-プロピオン酸、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、5-ヒドロキシトリプトファンおよびL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンから選択され、好ましくは、AAは、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシンおよびL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンから選択され、より好ましくは、AAはトリプトファンであり、よりさらに好ましくはL-トリプトファンである。
【0056】
スクラレオリド
スクラレオリド(CAS番号564-20-5)は、数種類の植物原料、例えば、Salvia sclarea Lにおいて見出される天然由来の物質である。
【0057】
スクラレオリドは、ノルアンブレイノリド、または化学名ナフト[2,1-b]フラン-2(1H)-オン、デカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチル、[3aR-(3aα,5aβ,9aα,9bβ];または(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチル-1,4,5,5a,7,8,9,9b-オクタヒドロベンゾ[e][1]ベンゾフラン-2-オン(IUPAC)としても知られている。
【0058】
スクラレオリドはSalvia属のいくつかの種から抽出することによって得ることができ、実質的に純粋なスクラレオリドとして合成的に得ることもできる。
【0059】
スクラレオリドはいくつかの供給源、例えば、Symrise社から市販されている。
【0060】
国際特許出願WO-A-2014/170239に開示されているように、スクラレオリドの皮膚美白効果に関するメカニズムは、インターロイキン1(IL-1)α生合成阻害剤として、炎症後の過剰色素沈着を阻害することによる、抗炎症活性に関連している。
【0061】
本発明の組成物中のスクラレオライドの量は、通常、0.001%~5%(w/w)の範囲で含まれ、好ましくは0.01%~2.5%(w/w)の範囲で含まれ、より好ましくは0.05%~1%(w/w)の範囲で含まれ、よりさらに好ましくは0.1%~0.5%(w/w)の範囲で含まれ、よりさらに好ましくは約0.2%(w/w)である。
【0062】
任意に、スクラレオリドは、リポソームの形態で封入されてもよい。リポソームは、活性物質の皮膚浸透を改善するために、化粧用製剤において一般的に使用される。当技術分野でよく知られているように、リポソームは、通常、約60nm~300nmの範囲のサイズを有する球状の小胞であり、少なくとも1つのリン脂質二重層を形成するリン脂質から構成されることが最も多いが、他の脂質を含んでいてもよい。リポソームは、親水性の活性物質がカプセル化され得る親水性中心部を含み、一方で、疎水性の活性物質は二重層に組み込まれるので、リポソームは、親水性の活性物質および親油性の活性物質の両方に適したビヒクルである(Knoth et al., Nanocarrier-Based Formulations: Production and Cosmeceutic Applications, in: Cosmetic Formulation. Principles and Practice, Benson H.A.E., Roberts M.S., Rodrigues Leite-Silva V. and Walters K.A., editors, CRC Press, 2019)。リポソームは周知の技術によって調製することができる。一般に、リポソームの調製方法は、膜形成脂質の有機相中での混合、乾燥、その後の脂質の水和、および、超音波処理、押出または均質化などの種々の機械的処理によるさらなるサイズの減少、を含む。
【0063】
疎水性の活性物質であるスクラレオリドは、o/wエマルジョンのような水性の製剤に、リポソームの形態で好適に添加される。
【0064】
さらに、驚くべきことに、本発明の組成物は、スクラレオリドがリポソームの形態である場合に、メラニン生成評価のためのin vitroモデル(RHPE:再構築ヒト色素沈着表皮)において、より優れた細胞生存率および脱色素効果を示すことが見出された(実施例7を参照のこと)。これにより、リポソームを使用することによって、同等の脱色素効果を達成するための製剤中のスクラレオリドの量を減少させることが可能であることが見出された。
【0065】
したがって、本発明の一実施形態において、スクラレオリドは、リポソームの形態でカプセル化される。スクラレオリドがリポソームの形態である場合、前記組成物中のスクラレオリドの量は、好ましくは0.01%~2.5%(w/w)の範囲に含まれ、より好ましくは0.01%~0.5%(w/w)の範囲に含まれ、よりさらに好ましくは0.03%~0.2%(w/w)の範囲に含まれ、よりさらに好ましくは約0.1%(w/w)である。
【0066】
〔アスコルビルグルコシド〕
アスコルビルグルコシドは、L-アスコルビン酸2-グルコシド(CAS 129499-78-1)としても知られる、L-アスコルビン酸のC2-ヒドロキシル基がグルコース分子に結合しているビタミンC(L-アスコルビン酸)の誘導体である。皮膚に浸透すると、アスコルビルグルコシドは、アルファグルコシダーゼ酵素によってL-アスコルビン酸とグルコースとに分解され、ビタミンCを徐々に皮膚に供給する。
【0067】
アスコルビルグルコシドはいくつかの供給源、例えば、DKSH、Spec-Chem Industry Inc、またはCosphatech LLCから広く入手可能である。
【0068】
アスコルビルグルコシドは、皮膚美白組成物に使用される。その美白効果はビタミンCの抗酸化特性に関連しており、皮膚中の活性酸素種(ROS)(これは、メラニン生成を活性化する)を中和することができ、また、既存のメラニンの直接的な光酸化を低減することもできる。
【0069】
本発明の化粧品組成物中のアスコルビルグルコシドの量は、通常、0.01%~10%(w/w)の間に含まれ、好ましくは0.1%~8%(w/w)の間に含まれ、より好ましくは0.5%~5%(w/w)の間に含まれ、さらに好ましくは1%~3%(w/w)の間に含まれ、よりさらに好ましくは約2%(w/w)である。
【0070】
〔本発明の組成物〕
追加の活性成分
一実施形態において、本発明の組成物は、いかなる追加の皮膚美白活性物質も含有せず、本質的にコウジ酸、スクラレオリドおよびアスコルビルグルコシドからなる。「本質的になる」とは、前記組成物が任意に、溶媒(複数可)および追加の製剤添加剤を含有するが、さらなる皮膚美白化粧品活性物質を含有しないことを意味する。
【0071】
別の実施形態において、本発明の組成物は、追加の皮膚美白化粧品活性成分を含有する。
【0072】
任意の皮膚美白メカニズムにより作用する、天然または合成由来のいずれかの、当技術分野で開示されている任意の既知の皮膚美白活性剤が、追加の皮膚美白剤として、前記組成物に好適に含まれ得る。既知の皮膚美白メカニズムは、とりわけ、チロシナーゼ阻害、MITF阻害、ケラチノサイトへのメラニンの移動の阻害、または抗酸化メカニズムである。
【0073】
例えば、以下の総説論文に開示されている皮膚美白物質を使用することができる:Gillbro et al. op. cit.; Kumari et al. op. cit.; or Zolghadri et al., A comprehensive review on tyrosinase inhibitors, J. Enzyme Inhib. Med. Chem., 2019, 34 (1), 279-309。
【0074】
チロシナーゼ阻害活性を有する物質としては、当業者には周知のように、ヒドロキノン、アルブチン、デオキシアルブチン、4-(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-1,3-ベゼンジオール、レゾルシノール、4-n-ブチルレゾルシノール、バニリンおよびその誘導体、10’(Z)-ヘプタデセニルヒドロキノン、イソタキオシドおよびそのグリコシド誘導体などのフェノール化合物、が挙げられる。また、主にハーブ植物、果実および合成原料に見られる一部のフラボノイド誘導体は、チロシナーゼに対する強力な阻害剤として良く知られている。フラボノイド誘導体としては、フラボン類(とりわけ、ルテオリン、アピゲニン、バイカレイン、クリシン、アピゲトリン、ビテキン、バイカリン、ノビレチン、モルソンまたはタンゲレチンなど)、フラボノール類(とりわけ、ミリセチン、ケンペロール、ケルセチン、モリン、イソラムネチン、ガランギン、ルチン、クエルシトリン、またはアストラガリンなど)、イソフラボン類(とりわけ、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ホルムノネチン、ゲニスチンまたはダイジン、例えばそれらのいくつかは典型的には大豆に由来するものである、あるいは、Giycyrrhiza glabraの根から単離されたグラブリジンなど)、フラバノン類(とりわけ、ナリンゲニン、ヘスペレチン、エリオジクチオール、ナリンギン、ヘスペリジン、またはリキリチンなど)、フラバノノール(タキシフォリンなど)、フラバノール(カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、またはプロアントシアニジン)、アントシアニジン(とりわけ、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペオニジン、またはペラルゴニジン)、クルクミノイド(クルクミン、またはデスメトキシクルクミンなど)、クマリン、カルコン(とりわけ、イソリキリチゲニン、グラブレン、2,4,2’,4’-ヒドロキシカルコンなど)あるいはオーロン類(とりわけ、4,6,4’-トリヒドロキシオーロン)、等が挙げられる。チロシナーゼ阻害活性を有する他のポリフェノールは、例えば、レスベラトロールおよびオキシレスベラトロールである。様々な化学分類(chemical classes)に属する他の物質がチロシナーゼ阻害剤として開示されており、例えば、一部のテルペン(例えば、バクチオールまたは一部のカルバクロール誘導体)、キノン(Aloe vera中に見られるアロインおよびアロエシン、あるいはタンシノンなど)、ピリジン誘導体(例えば、((S)-(5-(ベンジルオキシ)-1-オクチル-4-オキソ-1,4-ジヒドロピリジン-2-イル)メチル2-アミノ-3-フェニルプロパノエート)、レチノイド(とりわけ、アダパレンおよびトレチノインなど)、カルボン酸(たとえば、アゼライン酸またはケイ皮酸など)、アゾールまたはチアゾリジン誘導体などが挙げられる。
【0075】
既知のチロシナーゼ阻害剤の一部は合成由来であるが、それらの大部分は植物由来であり、植物抽出物として入手可能であるか、あるいは真菌または細菌によって産生される。特に、膨大な量のチロシナーゼ阻害物質を含有する植物種が当技術分野で開示されている。
【0076】
別の皮膚美白活性物質はスルフォラファンであり、これはブロッコリーおよびブロッコリースプラウト、ならびにクレス(Lepidium sativum、同様にアブラナ科に属する)の抽出物中に見出すことができる。スルフォラファンはMAPキナーゼ経路を調節することによるチロシナーゼ発現の抑制を含むメカニズムによってメラニン形成を阻害する(Shirasugi et al., Suforaphane inhibited melanin synthesis by regulating tyrosinase gene expression in B16 mouse melanoma cells, Biosci. Biotechnol. Biochem. 2010, 74 (3), 579-582)。さらに、スルフォラファンは、プロテアソーム活性を高めることで、酸化タンパク質の蓄積を抑え、加齢に関する黒子シミの原因となる別の黄褐色の色素である、リポフスチンの生成を抑制し得る。
【0077】
本発明の組成物において追加の活性物質として使用するのに適した、別の報告された皮膚美白剤は、ベトナムの樹木であるLangsatまたはDuku(Lansium domesticum)の葉の抽出物である。この抽出物のメラニン合成抑制効果は、チロシナーゼ酵素の合成を阻害する色素沈着遺伝子サイレンサーマイクロRNA(miR-490-3p)の発現増加と関連している。
【0078】
別の適切な皮膚美白物質は、ウミユリまたは海水仙(Pancratium maritimum)の抽出物である。この抽出物のメラニン生成阻害作用は、α-メラノサイト刺激ホルモン(α‐MSH)の産生を介してメラニン形成の活性化に関与するPOMC(プロオピオメラノコルチン)の発現阻害剤としての活性によるものと考えられる。
【0079】
本発明の組成物における、追加の活性物質として好適な他の種類の皮膚美白剤は、その作用機序がメラニンを含む成熟メラノソームのケラチノサイトへの移動の阻害に基づくものであり、例えば、豆乳および大豆抽出物のようなプロテアーゼ活性化受容体2(PAR-2)阻害剤、あるいは、特にナイアシンアミドまたは異性化糖のような他の物質である。異性化糖は、グラム陰性海洋細菌Vibrio alginolyticus(CNCM I-4994)によって分泌される海洋性エキソ多糖であり、その構造内に2つのアミノ酸を含む。異性化糖の構造および単離プロセスについては、Drouillard et al., Structure of an amino acid-decorated exopolysaccharide secreted by a Vibrio alginolyticus strain, Mar. Drugs, 2015, 13, 6723-6739 およびフランス特許出願FR-A-2975906に記載されている。
【0080】
一実施形態において、本発明の組成物は、追加の皮膚美白活性物質として異性化糖を含む。
【0081】
追加で糖異性体を含む組成物は、実施例7に開示された臨床試験で見出されるように、皮膚の美白に特に効果的であることが明らかとなった。
【0082】
組成物中に存在する場合、異性化糖の量は、通常、0.00001%~2%(w/w)の範囲、好ましくは0.00001%~1%(w/w)の範囲、より好ましくは0.0001%~0.1%(w/w)の範囲、よりさらに好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の範囲に含まれる。
【0083】
一実施形態において、本発明の組成物は、本質的に、上記に開示された好ましい量および形態で含まれるコウジ酸、スクラレオリド、アスコルビルグルコシドおよび異性化糖からなり、いかなる追加の皮膚美白活性物質も含有しない。
【0084】
一実施形態において、本発明の組成物は、さらにダイズ由来のイソフラボンを含み、好ましくはゲニステインを含む。
【0085】
前記組成物中に存在する場合、ゲニステインの量は、通常、0.00001%~2%(w/w)の範囲、好ましくは0.00001%~1%(w/w)の範囲、より好ましくは0.0001%~0.1%(w/w)の範囲、さらにより好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の範囲に含まれる。
【0086】
一実施形態において、前記組成物は、例えば、Lepidium sativum抽出物のような、スルフォラファンをさらに含む。
【0087】
前記組成物中に存在する場合、スルフォラファンの量は、通常、0.00001%~2%(w/w)の範囲、好ましくは0.00001%~1%(w/w)の範囲、より好ましくは0.0001%~0.1%(w/w)の範囲、よりさらに好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の範囲に含まれる。
【0088】
一実施形態において、本発明の組成物は、ゲニステインおよびスルフォラファンの両方をさらに含む。スクラレオリド-コウジ酸-アスコルビルグルコシドの組み合わせによって提供される相乗的な脱色素沈着に加えられる、これらの物質の脱色素沈着効果は、黒子または加齢に関するシミに対して特に有用であり得る。通常、ゲニステインの量は0.00001%~2%(w/w)、好ましくは0.00001%~1%(w/w)、より好ましくは0.0001%~0.1%(w/w)、よりさらに好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の範囲であり、スルフォラファンの量は、0.00001%~2%(w/w)、好ましくは0.00001%~1%(w/w)、より好ましくは0.0001%~0.1%(w/w)、よりさらに好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の範囲である。任意で、前記組成物は、通常、0.00001%~2%(w/w)の範囲、好ましくは0.00001%~1%(w/w)の範囲、より好ましくは0.0001%~0.1%(w/w)の範囲、よりさらに好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の範囲に含まれる量の異性化糖を含む。
【0089】
一実施形態において、本発明の組成物はさらに、Pancratium maritimum抽出物を含む。POMC(プロオピオメラノコルチン)発現の阻害剤としてのこの物質の脱色素沈着効果は、スクラレオリド-コウジ酸-アスコルビルグルコシドの組み合わせによって提供される相乗的な脱色素沈着と組み合わされて、炎症作用によって引き起こされるシミに対して特に有用であり得る。
【0090】
前記組成物中に存在する場合、Pancratium maritimum抽出物の量は一般に、0.00001%~2%(w/w)の範囲、好ましくは0.00001%~1%(w/w)の範囲、より好ましくは0.0001%~0.1%(w/w)の範囲、よりさらに好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の範囲に含まれる。任意で、前記組成物は、通常、0.00001%~2%(w/w)の範囲、好ましくは0.00001%~1%(w/w)の範囲、より好ましくは0.0001%~0.1%(w/w)の範囲、よりさらに好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の範囲に含まれる量の異性化糖を含む。
【0091】
一実施形態では、本発明の組成物がLansium domesticum(Langstat)葉抽出物をさらに含む。この実施形態による組成物は、追加のLangstat抽出物が、miR-490-3pを介して提供するさらなるメラニン合成阻害のために、肝斑の色素沈着過剰に対して特に有用であり得る。
【0092】
前記組成物中に存在する場合、Lansium domesticum葉抽出物の量は、通常、0.0001%~5%(w/w)の範囲、好ましくは0.0005%~1%(w/w)の範囲、より好ましくは0.001%~0.5%(w/w)の範囲、よりさらに好ましくは0.01%~0.1%(w/w)の範囲に含まれる。任意で、前記組成物は、通常、0.00001%~2%(w/w)の範囲、好ましくは0.00001%~1%(w/w)の範囲、より好ましくは0.0001%~0.1%(w/w)の範囲、よりさらに好ましくは0.001%~0.01%(w/w)の範囲に含まれる量の異性化糖を含む。
【0093】
〔製剤〕
本発明の組成物は、典型的には、化粧品活性成分および少なくとも1つの皮膚科学的に許容される担体またはビヒクルを含む。物質が、ヒトの皮膚組織と接触させて使用するのに適しており、かつ、無毒である場合、該物質は「皮膚科学的に許容される」または「美容的に許容される」とみなされる。
【0094】
本発明による組成物は、例えば、クリーム、ジェル、ローション、ペースト、泡、溶液、懸濁液、エマルジョン、乳液、または粘着製剤の形態であってよい。
【0095】
適切な担体は、例えば、無水物、あるいは、脂肪、ワックス、動物油および植物油ならびに固体および液体状の炭化水素の混合物であり得る。あるいは、前記担体は、水または親水性物質の水溶液であってもよい。好ましくは、前記担体はエマルジョンの形態である。エマルジョンは、典型的には、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、水中油中水型エマルジョン、油中水中油型エマルジョンまたはシリコーン中水型エマルジョンであり得る。エマルジョンは、通常、連続した水相(水中油および水中油中水)または連続した油相(油中水および油中水中油)を有すると表すことができる。前記油相は、シリコーン油、パラフィン炭化水素などの非シリコーン油、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、ワックスまたは植物油、あるいはそれらの混合物を含んでもよい。前記水相は、水、あるいは、ポリオール、α-ヒドロキシ酸、アミノ酸、タンパク質加水分解物、単糖、および多糖類などの親水性物質の水溶液を含んでもよい。
【0096】
エマルジョンの一般的な成分である乳化剤は表面活性剤(界面活性剤)であり、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、とりわけ、エトキシル化脂肪アルコール、エトキシル化脂肪酸エステル、アルキルグルコシドまたはアルキルオリゴグルコシド、エトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセロール/ポリグリセロール脂肪酸エステル、エトキシル化グリセリンモネスター、エトキシル化ポリグリセリルエステル、アルキルジメチルアミンオキシド、あるいは、ポロキサマーが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、とりわけ、アルカリ性セッケン、硫酸アルキル、硫酸アルキルエーテル、スルホコハク酸アルキル、サルコシン酸アシルまたはイセチオン酸アシルが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、とりわけ、第四アンモニウム塩、またはピリジン塩が挙げられる。両性界面活性剤としては、イミダゾリン誘導体、ベタイン、アミドベタインおよびスルホベタインが挙げられる。
【0097】
製剤中のその他の一般的な成分としては、例えば、皮膚軟化剤、湿潤剤、防腐剤、粘性調整剤、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線フィルター、キレート剤、香料および着色剤が挙げられる。一般的な皮膚軟化剤としては、例えば、パラフィン炭化水素、シリコーン、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪酸とアルコールとのエステル、トリグリセリド、セラミド、リン脂質およびワックスが挙げられる。湿潤剤としては、ポリヒドロキシアルコール、タンパク質およびヒドロキシル酸が挙げられる。一般的な防腐剤としては、とりわけ、ソルビン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、パラベン、イミダゾリジニル尿素、ジアゾリジニル尿素、DMDMヒダントイン、ヒドロキシメチルグリシネートナトリウム、メチルクロロイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリノン、ベンジルアルコールならびに2-フェノキシエタノールが挙げられる。製剤の粘度を制御するために、他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、例えば、とりわけ、キサンタンガム、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、デンプン誘導体、カルボマー、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース)、ポリアミド、グルタミド、コロイダルシリカまたは蝋(例えば、蜜蝋または植物蝋)が挙げられる。
【0098】
本発明の化粧品組成物は、典型的には、皮膚の生理的pHに近い、わずかに酸性のpHを有する。一般的な酸性度調節剤としては、ヒドロキシ酸および脂肪酸を含む有機酸が挙げられる。化粧品用エマルジョンにおいて、最も一般的なpH調節剤の一種は、乳酸およびクエン酸のようなヒドロキシ酸である。
【0099】
上記に引用した成分、ならびに他の多くの適切な化粧用製剤の賦形剤は、化粧用製剤の当業者に周知である。このような化粧品成分は数社、例えば、とりわけ、Comercial Quimica Masso, SA、Evonik、DuPontまたはDow Corningなどから商業的に入手可能である。
【0100】
化粧用組成物の調製は化粧用製剤の当業者に周知の手順に従って行われ、通常、単純な混合工程、および任意に成分を加熱する工程を含む。
【0101】
主な化粧品成分および手順の説明は、例えば、Cosmetic Formulation. Principles and Practice, Benson H.A.E., Roberts M.S., Rodrigues Leite-Silva V. and Walters K.A., editors, CRC Press, 2019または類似の参考資料中に見出すことができる。また、規制された化粧品物質および成分は、欧州委員会データベース「CosIng」(https://ec.europa.eu/growth/tools-databases/cosing)に開示されている。
【0102】
活性成分であるコウジ酸は、上記のように、本発明においてはカプセルの形態である。製剤中に存在する他の活性成分も、例えば、リポソームの形態で、カプセル化することができる。
【0103】
〔使用〕
実施例5に示されるように、驚くべきことに、本発明に定義されるような、スクラレオリド、アスコルビルグリコシド、ならびに、表面にMC1Rアゴニストペプチドを有するマイクロカプセルまたはナノカプセル中にカプセル化されたコウジ酸の組合せで処理された、再構築ヒト色素沈着表皮におけるメラニン含有量の減少は、各成分のメラニン抑制効果の単なる相加効果で予想されるものより著しく強いこと、すなわち、これらの成分間に明らかな相乗効果があることを、本発明の発明者らは見出した。
【0104】
したがって、このような組成物は、皮膚美白剤としての化粧品用途に特に有用である。
【0105】
さらに、非病理学的な顔面傷を有する健康な女性30人を対象に実施した臨床試験(実施例6参照)において、本発明の組成物はシミを除去するのに非常に効果的であり、さらに、副作用が報告されなかったため、安全であると結論付けられた。
【0106】
したがって、本発明の別の態様は、皮膚美白のための本発明の組成物の化粧品としての使用(非治療用)である。
【0107】
本発明の別の態様は、本発明の組成物の美容的に有効な量を、それを必要とする対象に局所的に適用する工程を含む、皮膚の美白のための方法である。
【0108】
皮膚の美白効果に含まれる具体的な用途は、皮膚の過剰色素沈着性のシミ(斑点、傷)の排除または減少、あるいは、不均一な皮膚の色調の平坦化である。シミの減少は、シミの数の減少、シミのサイズの減少、および/またはシミの色の濃さを明るくすることを意味し得る。前記過剰色素沈着性のシミは、例えば、とりわけ、UV曝露に関するシミ、傷跡後のシミ、炎症後のシミ、肝斑シミ、黒子シミまたは加齢に関するシミであり得る。処理されるシミは、身体の皮膚の任意の部分にあってもよく、好ましくは顔、首、腕および手である。
【0109】
本発明の組成物の効果は、化粧的な効果のみであり、正常な非病的な皮膚の知覚または知覚の態様を美化および/または改善することに関連し、特に、非病的なシミの除去を意図し、いかなる疾患をも予防または改善することを意図しないことが理解される。
【0110】
例えば、黒子は、無症候性の、小さく、はっきりと縁どられた褐色の斑点である。これらは、一般的に慢性的な日光への曝露によるもので(日光性黒子、肝斑(liver spots)とも呼ばれる)、日光に曝露される部位、特に顔面、首および手の甲に最も頻繁に生じる。それらは、典型的には中年期に最初に現れ、年齢と共に数が増加する。日光性黒子の原因の1つは、リポフスチンと呼ばれる黒い色素を含有する老化細胞が凝集し、その結果として、黒い斑点が形成されることである。リポフスチンは脂質およびタンパク質の酸化産物であり、これは、UV照射によって誘発され得る。
【0111】
例えば、肝斑(クロアズマとも呼ばれる)は、顔面および他の日光に曝露した体の部位における、不規則な形状の暗褐色の斑点または色素沈着斑の形成である。肝斑は無症候性であり、美容上の懸念のみが存在する。肝斑は、日光曝露、遺伝的素因およびホルモンの変化によって引き起こされると考えられており、特に女性、とりわけ妊婦によくみられる。
【0112】
本発明の組成物は、1日に1回、2回、またはそれ以上の回数、局所的に適用され得る。前記組成物は、典型的には皮膚上に、通常、脱色素沈着されるべき皮膚領域上にのみ、それを広げることによって適用される。処置の期間は、除去されるシミの種類および強度に合わせて調整されてもよい。典型的には、処置は、数日間(例えば、5~10日間)、数週間(例えば、1~6週間)、または数ヶ月間(例えば、1~12ヶ月間)維持され得る。
【0113】
化粧的に有効な量は、所望の美白効果を達成するのに必要な量を意味する。当業者は、各投与において使用される組成物の量を容易に決定することができる。
【0114】
〔実施例〕
実施例1A 本発明による組成物の調製
以下の表に列挙した成分を用いて、本発明による組成物を調製した:
【0115】
【0116】
前記組成物の成分は商業的に入手可能であった。スクラレオリドは、Symrise社(SymBright(登録商標)2036)から入手可能であった。カプセル化されたコウジ酸の溶液は、以下に開示されるように予め調製された。
【0117】
前記溶液を調製するために使用されたコウジ酸の標的化マイクロカプセルは、二層マイクロカプセルであり、内層ポリマーは(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)であり、外層ポリマーはポリビニルアルコール(PVA)であり、前記カプセルは、表面に、ペプチド Palmitoyl-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-DPhe-Arg-Trp-Gly-Lys-DPro-Val-NH-(CH2)3-(OCH2CH2)2-CH2-NH2(ペプチドI)が付着しており、前記ペプチドは、前記ペプチドのアミノ末端基と、PLGAに由来する、前記カプセルの表面上で結合可能なカルボキシル基と、の間のアミド結合によって前記カプセルに結合されていた。前記マイクロカプセルは、国際特許出願第2015/075116号パンフレットの実施例1に開示されているものに類似した手法を用いて調製された。
【0118】
これらの標的化コウジ酸マイクロカプセルは、以下の組成を有する水溶液の形態で前記組成物に組み込まれた:
【0119】
【0120】
この溶液中のコウジ酸活性物質の割合は、約0.03%w/wである。このカプセル化コウジ酸の溶液を、前記組成物中に2重量%で添加したので、最終的な組成物中のコウジ酸の量は約0.0006%(w/w)(6ppm)であった。
【0121】
前記組成物を調製するために、まず、成分A1~A5を、均一な混合物(「相A」)が得られるまで混合した(成分A5は、50℃で熱することによって予め溶融させられた)。成分B1~B5を、均質な混合物が得られるまで別途混合し、高剪断Ultra-Turraxホモジナイザー中(3000rpmで約2分間)、次いでパドルスターラー中で、約15分間かけて相Aに添加した。成分C1~C5は、混合され、前記組成物に撹拌されながら添加された。最後に、成分D4が添加された。最終処方物のpHは、5.5~6.5の範囲であることが確認された(あるいは、そうでない場合には、10%クエン酸または10%NaOHで調整された)。
【0122】
得られた生成物は、半透明で白色の水性分散液であった。
【0123】
実施例1B 本発明による組成物の調製
組成物が異性化糖を含むこと以外は、実施例1Aに開示されているものと同様の組成物を調製した。
【0124】
市販の製品であるEPS White P(CODIF Technologie Naturelle)(水、グリセリン、フェノキシエタノールおよび0.49%(w/w)の異性化糖を含む)が使用された。
【0125】
前記組成物は、バッファー成分(C1~C5)の前に前記組成物中に組み込まれることで、前記組成物中に1.0%のEPS White P(異性化糖が0.0049%(w/w)となるよう)が追加されたこと以外は、実施例1Aに開示されたものと同様であった。
【0126】
得られた生成物は、半透明で白色の水性分散液であった。
【0127】
実施例2 炎症作用によって引き起こされるシミに対して、増強された効果を有する、本発明による組成物の調製
別の組成物は、スクラレオリド-コウジ酸-アスコルビルグルコシドの相乗的組み合わせに、活性化異性化糖(EPS White P、CODIF Technologie Naturelle)およびPancratium maritimum抽出物(Neurolight 61 G、CODIF Technologie Naturelle、0.3%(w/w)のPancratium maritimum抽出物を含む)を添加することで、その炎症作用によって引き起こされるシミを除去するための活性を増強することにより、調製された。
【0128】
以下の表に列挙した成分が使用された:
【0129】
【0130】
前記組成物の成分は商業的に入手可能であった。スクラレオリドは、Symrise社(SymBright(登録商標)2036)から入手可能であった。カプセル化されたコウジ酸の溶液は、実施例1に開示されているように予め調製された。
【0131】
前記組成物を調製するために、成分A1~A6は、均一な混合物(「相A」)が得られるまで、パドルスターラー中で混合された。成分B1~B7は、均質な混合物が得られるまで別途混合され、約15分間かけて撹拌されながら相Aに添加された。成分C1およびC2は、それぞれ個別に添加された。成分D1~D5は、混合され、前記組成物に撹拌されながら添加された。混合物のpHは、5.5~6.5の範囲であることが確認された(あるいは、そうでない場合には、10%クエン酸または10%NaOHで調整された)。最後に、成分F1、F2およびF3が、それぞれ個別に添加された。
【0132】
得られた組成物は、白色の水性クレミゲルであった。
【0133】
実施例3 加齢に関するシミに対して、増強された効果を有する、本発明による組成物の調製
本発明による組成物は、スクラレオリド-コウジ酸-アスコルビルグルコシドの相乗的組み合わせに、活性化異性化糖(EPS White P、CODIF Technologie Naturelle)、大豆イソフラボン(ゲニステインに富む)およびLepidium sativum芽抽出物(スルフォラファンに富む)を添加することで、その加齢に関するシミを除去するための活性を増強することにより、調製された。
【0134】
大豆イソフラボンとLepidium sativum芽抽出物との混合物は、マイベル社(Delentigo(登録商標)、約0.11%(w/w)のゲニステインおよび約0.14%(w/w)のスルフォラファン約0.14%(w/w)を含む)から入手可能である。
【0135】
前記組成物の成分が以下の表に列挙される:
【0136】
【0137】
前記組成物の成分は商業的に入手可能であった。スクラレオリドは、Symrise社(SymBright(登録商標)2036)から入手可能であった。カプセル化されたコウジ酸の溶液は、実施例1に開示されているように予め調製された。
【0138】
前記組成物を調製するために、成分A1~A6は、均一な混合物(「相A」)が得られるまで、40℃で加熱しながら、パドルスターラー中で混合された。成分B1~B7は、均質な混合物が得られるまで別途混合され、撹拌されながら相Aに添加された。成分C1およびC2は、それぞれ個別に添加された。成分D1~D5は、混合され、前記組成物に撹拌されながら添加された。混合物のpHは、5.5~6.5の範囲であることが確認された(あるいは、そうでない場合には、10%クエン酸または10%NaOHで調整された)。最後に、成分F1およびF2が、それぞれ個別に添加された。
【0139】
得られた組成物は、白色の水性クレミゲルであった。
【0140】
実施例4 肝斑に対して、増強された効果を有する、本発明による組成物の調製
本発明による組成物は、スクラレオリド-コウジ酸-アスコルビルグルコシドの相乗的組み合わせに、活性化異性化糖(EPS White P、CODIF Technologie Naturelle)およびLansium domesticum葉抽出物(DN-Aura(登録商標)、BASF、約25%(w/w)のLangstat抽出物を含む)を添加することで、その肝斑の色素沈着に対する活性を増強することにより、調製された。組成物は、以下の表に列挙される成分を使用して調製された:
【0141】
【0142】
前記組成物の成分は商業的に入手可能であった。スクラレオリドは、Symrise社(SymBright(登録商標)2036)から入手可能であった。カプセル化されたコウジ酸の溶液は、実施例1に開示されているように予め調製された。
【0143】
前記組成物を調製するために、成分A1~A6は、均一な混合物(「相A」)を得られるまで、パドルスターラー中で混合された。成分B1~B7は、均質な混合物が得られるまで別途混合され、約15分間かけて、撹拌されながら相Aに添加された。成分C1およびC2は、それぞれ個別に添加された。成分D1~D5は、別途混合され、前記組成物に撹拌されながら添加された。混合物のpHは、5.5~6.5の範囲であることが確認された(あるいは、そうでない場合には、10%クエン酸または10%NaOHで調整された)。最後に、成分F1、F2およびF3が、それぞれ個別に添加された。
【0144】
得られた組成物は、白色の水性クレミゲルであった。
【0145】
実施例5 脱色素沈着を測定するためのin vitroアッセイ
本発明の化粧品組成物の脱色素沈着効果は、例えば、Sahuc F, Reconstructed human pigmented epidermis (rhpe): an in vitro model for the evaluation of melanogenesis, SOFW J., 2009, 135 (7)に開示されているような、in vitroでのRHPE(再構築ヒト色素沈着表皮)モデルを用いて評価された。このモデルは、5~10日間の、再構築ヒト色素沈着表皮組織上への、一日毎の被験製品の局所適用後のメラニン含有量の減少の定量化に基づく。各被験製品について達成されたメラニン含有量の減少度合いは、その脱色素沈着の強さに関連する。再構築ヒト色素沈着表皮組織は、基底層に局在するメラノサイト(3つの異なるフォト対応であり得る)の存在下で培養された、正常なヒトケラチノサイトで構成されている。これらの構築物の異なる色素化度合いは、肉眼的に異なる3つのヒトの皮膚のフォトタイプに対応する。
【0146】
使用された試験キットは、Episkin社(SkinEthic(登録商標) RHPE/Reconstructed Human Pigmented Epidermis)から入手した。特に、0.5cm2の大きさで、フォトタイプIVのRHPEを使用した。
【0147】
各被験組成物は、5日間、毎日局所的に適用され、その後、メラニン量を定量化され、細胞生存率が検査された。通常、メラニン量を測定するために、各被験製品について1つより多くのRHPEが使用され、その平均値が計算された。さらに、各被験組成物について、追加で1つのRHPEが、細胞生存率を確認するために使用された。初期メラニン含有量を測定するために、1つのRHPEが試験の開始時に使用された。
【0148】
前記被験組成物は、以下の表に列挙した成分を用いて調製された:
【0149】
【0150】
活性成分(スクラレオリド、アスコルビルグルコシドおよびコウジ酸)は、選択的に製剤に添加され、異なる活性成分を有する異なる組成物、すなわち、1つの活性成分のみが添加されたか、コウジ酸と、他の活性成分の1つとの二成分の組合せが添加されたか、3つの活性成分の組合せが添加されたか、あるいは、活性成分を含まない組成物か、のいずれかが参照として調製された。活性物質が組成物に添加されなかった場合、記載されたパーセンテージを達成するために、当量の水が添加された。
【0151】
前記組成物を調製するために、まず成分A1~A6は、70~75℃に加熱され、溶液(「相A」)を得るために混合された。成分B1~B8は、70~75℃に加熱され、溶液を形成するために別途混合された。相Aは、この溶液に添加され、そして、高剪断Ultra-Turraxミキサー中で乳化された(3000rpmで3分間、およびさらに300rpmで約10分間)。成分C1~C3が、60℃で添加された後、混合物は室温まで冷却され、次いでC4が添加された。成分D1~D5は混合され、先の混合物に添加された。最後に、成分E1が添加された。組成物の最終pHは、5.5~6.5の範囲であることが確認された(あるいは、そうでない場合には、10%クエン酸または10%NaOHで調整された)。
【0152】
比較のために、活性成分を含まない「ベース製剤」が調製され、対照組成物として使用された。したがって、このベース製剤には活性成分は添加されず、製剤中の物質の対応する量は水で調整された。
【0153】
以下の組み合わせの活性成分を含む、組成物0~6を調製した:
0.ベース製剤(活性なし)
1.コウジ酸(6ppm)のみ(KA)
2.アスコルビルグルコシド(2%w/w)のみ(AG)
3.スクラレオリド(0.2%w/w)のみ(S)
4.コウジ酸(6ppm)+アスコルビルグルコシド(2%w/w)(KA-AG)
5.コウジ酸(6ppm)+スクラレオリド(0.2%w/w)(KA-S)
6.コウジ酸(6ppm)+アスコルビルグルコシド(2%w/w)+スクラレオリド(0.2%w/w)(KA-AG-S)
脱色素沈着アッセイの結果は、以下の表に示される:
【0154】
【0155】
上記の表より提供される情報は、以下の通りである:
-第1列(Comp)は、アッセイされた組成物を特定する。
【0156】
-第2列(n)は、サンプルサイズ、すなわち、各被験組成物に使用したRHPE単位の数を示す。
【0157】
-第3列(メラニン(μm))は、各被験化合物についての、最終メラニン含有量(マイクログラム)を示し、示される結果は、全てのサンプルの結果の平均値である。
【0158】
-第4列(SD)は、前列で算出した平均値の標準偏差を示す。
【0159】
-第5列(変化量(exp.))は、組成物1~6の各々で処理した表皮サンプルのメラニン含有量と、ベース組成物(組成物0)のみで処理したサンプルのメラニン含有量とに見られる実験的変化量を示す。
【0160】
-第6列(変化量(theor.))は、組み合わせの組成物4~6で処理された表皮サンプルについての、メラニン含有量の計算される理論的変化量を示す。この理論的変化量は、前記の組み合わせの単一成分各々によって実験的に提供されるメラニン減少(サンプル1~3)の単純な相加効果で予想された。
【0161】
-第7列(差異(exp.-theor.))は、組み合わせの組成物(サンプル4~6)で実験的に見出された、実験的メラニン減少と、前記組み合わせの成分の単純な相加効果で予想される理論的メラニン値との間の差を示す。
【0162】
【0163】
3つの活性物質、すなわち、コウジ酸、アスコルビルグルコシドおよびスクラレオリドの組み合わせを含有する組成物6で処理されたサンプルにおけるメラニン含有量の減少は、3つの活性物質によって個々に提供されるメラニン抑制の単純な相加効果で理論的に予想されるものよりも大きいことが観察され得る。従って、係る組み合わせにより、明白な相乗的脱色素沈着効果が見出された。
【0164】
実施例6 本発明の組成物の有効性および安全性を評価するための臨床試験
本発明の組成物の脱色素沈着の有効性および安全性を評価するために、30人の健康な女性を対象とした前向き臨床試験を実施した。この研究に含まれたボランティアは、非病理学的な顔の斑点または欠陥を有する30~70歳の女性であった。実施例1Bの組成物は、42日間連続して、1日2回、朝夕に、規定された領域において、しみの上に適用された。太陽光保護剤もまた、朝に1日1回顔に適用された(SPF+50)。0日目、14日目、28日目および42日目(研究の終わり)に、ボランティアは面会された。
【0165】
主要評価項目:
1) 副作用の有無;
2) メラニン測定による皮膚のしみの減少
3) シミにおける皮膚の明度の低下。
【0166】
副次的評価は、製品の有効性および感覚的特性についてのアンケートを伴う、ボランティアによる主観的評価であった。
【0167】
メラニンは、Mexameter(登録商標)MX 18で測定され、皮膚の明度は、Skin-Glossymeter GL 200(Courage+Khazaka electronic GmbH)で測定された。
【0168】
副作用は報告されなかった。
【0169】
処置開始時(0日目)および処置後(42日目)に測定された、メラニンおよび明度の値(平均値)に加えて、それらの値の変化量(D42の値-D0の値)が、以下の表に示される:
【0170】
【0171】
研究を完了した後にボランティアが回答したアンケートには、香料、展延性、包装、鮮度などを含む、組成物の様々な側面を評価するための25の質問が含まれた。脱色素沈着効果に特に関連する質問の結果が、以下の表に示される:
【0172】
【0173】
実施例7 リポソームの形態のスクラレオリドを含有する組成物
実施例5に記載されているような、脱色素沈着効果を評価するためのin vitroアッセイが、以下の活性物質の組合せを有する組成物を用いて行われた:
0.コントロール(製品の適用なし)
1.KA-AG-SI-S
2.KA-AG-SI-lipoS(6.67%)
3.KA-AG-SI-lipoS(3%)
4.KA-AG-SI-lipoS(1%)。
【0174】
ここで、「KA」は、カプセル化されたコウジ酸溶液(2%w/w、実施例1に開示されるように、コウジ酸約6ppmに相当)を意味し、「AG」は、2%w/wアスコルビルグルコシドを意味し、「SI」は、1%EPS White Pとしての異性化糖(約0.0049%w/wの異性化糖に相当)を意味し、「S」は、0.2%w/wスクラレオリドを意味し、そして、「lipo S」は、リポソームの形態でのスクラレオリド、を意味する。6.67%w/wのスクラレオリドリポソームの濃度は、約0.2%w/wのスクラレオリドに相当し、3%w/wのリポソームの濃度は、約0.09%w/wのスクラレオリドに相当し、1%のリポソームの濃度は、約0.03%w/wのスクラレオリドに相当する。
【0175】
スクラレオリドのリポソームは、膜形成脂質としてホスファチジルコリンおよびコレステロールを用いて調製された。
【0176】
組成物の製剤および製造方法は、実施例5に開示されているものと同様であった。リポソームの形態でスクラレオリドを含有する組成物は、水相中でのリポソームの良好な分散性のために、スクラレオリドがカプセル化されていない組成物と比較して、より容易に調製された。
【0177】
実施例5と同じ試験キットを使用した(SkinEthic(登録商標)RHPE/再構築ヒト色素沈着表皮、フォトタイプIV RHPE、大きさ0.5cm2、Episkin)。
【0178】
各被験組成物は、5日間、毎日局所的に適用され、その後、メラニン量を定量化され、細胞生存率が検査された(メラニン量を測定するために、各被験製品について1つより多くのRHPEが使用され、その平均値が計算された)。
【0179】
メラニン含有量アッセイの結果は以下の表に示される。ここで、第2列は各被験組成物およびコントロール(未処理のRHPEサンプル)についての最終メラニン含有量(マイクログラム、平均値)を示し、第3列は、コントロールに対する処理1~4における、計算されたメラニン含有量の減少(%)を示す:
【0180】
【0181】
【0182】
細胞生存率アッセイの結果は以下の表に示される。ここで、コントロール(非処理の表皮組織サンプル)の細胞生存率が、生存率100%に割り当てられ、他の組成物はこの基準に対して相対的に評価された。
【0183】
【0184】
細胞生存率アッセイの結果は、
図3にグラフ化して示される。
【0185】
アッセイで得られた結果は、スクラレオリドがリポソームの形態で添加された場合、細胞生存率アッセイの結果がすべてのアッセイされた濃度において優れていることを示す。
【0186】
さらに、カプセル化されていないスクラレオリド(0.2%w/wスクラレオリド)と比較して、3%w/wのリポソーム(0.09%w/wスクラレオリド)としてスクラレオリドを使用した場合、メラニン減少に対する効果がより大きくなること、換言すると、より少ない美白活性物質により、より優れた脱色素沈着効果が達成されることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【
図1】
図1は、培養色素沈着ケラチノサイト(メラニノサイトの存在下で正常ヒトケラチノサイトを培養することによって得られた)上に、数種類の組成物を1日1回、5日間連続して局所的に適用し、メラニン含有量を測定した、RHPEモデル(「再構築ヒト色素沈着表皮」)を用いた実施例5のin vitro脱色素沈着アッセイの結果を示すグラフである。y軸は処理期間後のメラニン含有量の変化(μg)を示し、x軸は、アッセイした種々の組成物(1-コウジ酸、2-アスコルビルグルコシド、3-スクラレオリド、4-コウジ酸およびアスコルビルグルコシド、5-コウジ酸およびスクラレオリド、6-コウジ酸、アスコルビルグルコシドおよびスクラレオリド)を示す。濃い灰色の棒グラフは、実験的に得られた結果を示している。組み合わせの組成物について、明るい灰色の棒グラフは、組み合わせた成分の単純な相加効果で予想される理論的な結果を示す。
【
図2】
図2はリポソーム内にスクラレオリドをカプセル化した組成物の、脱色素効果に対する影響を評価するために、同じin vitroRHPEモデル(「再構築ヒト色素沈着表皮」)を用いた、実施例7のin vitro脱色素沈着アッセイの結果を示すグラフである。カプセル化コウジ酸(コウジ酸の0.00006%(w/w))、アスコルビルグルコシド(2%(w/w))、異性化糖(0.0049%(w/w))およびスクラレオリド(組成物1は0.2%(w/w)非カプセル化スクラレオリドを含み、一方で、組成物2、3および4はそれぞれ0.2%(w/w)、0.09%(w/w)および0.03%(w/w)のリポソームにカプセル化されたスクラレオリドを含む)を含む、4つの異なる組成物(1~4)を試験した。組成物0を対照(RHPEモデルに製品を適用しなかった)とした。y軸は5日間の処理期間後のメラニン含有量の変化(%)を示し、x軸は、アッセイした異なる組成物を示す。
【
図3】
図3は、実施例7でアッセイした組成物(対照組成物0および組成物1~4)についての、細胞生存率試験の結果を示す。細胞生存率は、対照組成物の細胞生存率を基準の100%とした、%(y軸)で表す。