IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧 ▶ ダウ コーニング コーポレーションの特許一覧

特許7558271耐候性および耐久性のあるコーティング組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】耐候性および耐久性のあるコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/08 20060101AFI20240920BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20240920BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09D183/08
C09D133/04
C08G77/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022529105
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 US2020060078
(87)【国際公開番号】W WO2021113042
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】62/944,005
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スウィアー、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー、ゲイリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーゲル、エリン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ホルストマン、ジョン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】マチェルスキ、スーザン エム.
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0148752(US,A1)
【文献】特開2001-089570(JP,A)
【文献】特開平11-071461(JP,A)
【文献】特開2011-046966(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061630(WO,A1)
【文献】特開2012-031382(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106381084(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
C08G 77/00 - 77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性コーティング組成物であって、
(1)重合形態で
(i)(RSiO1/2
(ii)(RSi(OR’)(2-x)/2
(iii)(RSi(OR’),O(3-y)/2、および
(iv)(Si(OR’)(4-z)/2
の構造単位を含むアミノ官能性シリコーン樹脂であって、式中、各R’は、水素、アルキル基、または官能化アルキル基であるが、ただし、すべてのR’基の少なくとも5モルパーセントが、式:-R-NHRのアミン含有基であることを条件とし、
式中、Rは、アミノアルコールに由来するアルキル基またはアリール含有基であり、Rは、水素、アルキル基、またはアリール基であり、
式中、a+b+c+d=1.00(100モルパーセント)であり、xは、0または1のいずれかであり、yは、0、1、または2のいずれかであり、zは、0、1、2、または3のいずれかであり、
式中、各Rは、独立して、水素、アルキル基、またはアリール基であり、
前記アミノ官能性シリコーン樹脂の-NH-当質量が、50~750である、アミノ官能性シリコーン樹脂と、
(2)重合形態でエポキシ官能化基と硬化適合性基とを有するアクリルコポリマーと、を含み、
前記コーティング組成物が、0.5~1.3の範囲のアミンNH官能基対エポキシ官能基のモル比を有する、硬化性コーティング組成物。
【請求項2】
0.8~1の範囲のアミンNH官能基対エポキシ官能基のモル比を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記アミノ官能性シリコーン樹脂のすべてのR’基の少なくとも20モルパーセントが、式:-R-NHRのアミン含有基である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記アミノ官能性シリコーン樹脂のすべてのR’基の5~42モルパーセントが、式:-R-NHRのアミン含有基である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記アミノアルコールが、(a)COH部分の周りに立体障害を有するか、(b)二級もしくは三級アルコールであるか、または(c)それらの混合物の群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記アミノアルコールが、1-アミノ-2-プロパノールまたは1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オールである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記アクリルコポリマーの前記エポキシ官能化基が、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルアクリレート、およびそれらの混合物の群から選択される1つ以上のモノマーに由来し、前記アクリルコポリマーが、200~600の範囲のエポキシ当量(EEW)を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記アクリルコポリマーが、前記アクリルコポリマーの総モノマー単位の重量に基づいて、重合形態で30~60重量%のグリシジル(メタ)アクリレートモノマー単位を含む、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記アクリルコポリマーが、前記アクリルコポリマーの総モノマー単位の重量に基づいて、重合形態で2重量%~20重量%の硬化適合性基モノマー単位を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記アクリルコポリマーの前記硬化適合性基が、アルコール(OH)官能基、フェノール基、三級アミン、または主鎖にぶら下がっているかもしくは末端基として接続するかのいずれかである酸基のうちの1つ以上を含有するモノマー基を重合形態で含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記硬化適合性基が、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)に由来する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の硬化コーティング組成物の1つ以上の層を含む、コーティング物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能化アクリルコポリマーとアミノ官能性シリコーン樹脂硬化剤とを有する硬化性コーティング組成物に関する。より具体的には、アクリルコポリマーは、重合形態でエポキシ官能化基と硬化適合性基とを有し、アミノ官能性シリコーン樹脂は、アルコキシ官能性シロキサンであり、これは、任意選択的に、立体障害のあるアルコール-アミン前駆体部分に由来する。コーティング組成物は、優れた耐候性および耐久性コーティングの分野で有用であり、イソシアネート含有ポリウレタン系コーティングの代わりとして有用である。
【0002】
イソシアネート含有ポリウレタン系コーティングは、優れた耐候性および耐久性が必要とされる用途で使用される。ただし、製造業者および消費者は、そのような材料への曝露を制限するために、耐薬品性および耐食性に加えて耐候性を提供しながら、イソシアネートを含まないコーティングに移行することを望んでいる。金属を保護するためにエポキシコーティングが使用されているが、良好な色および光沢の保持が必要とされる用途では、エポキシコーティングはトップコート(大抵はポリウレタン)でさらにコーティングされる。ポリシロキサン-エポキシコーティングなどのエポキシ樹脂に由来する他のコーティングは、硬化に関しては湿度に依存し、コーティングが硬化し続けるにつれて脆くなることがよくある。
【0003】
Si-O-C結合を介して接続されたアミノ官能基を有するアミノ官能性ポリシロキサンは、典型的には、SiOC結合が加水分解を受けやすく、元のアミンアルコールおよびシラノールが再生されるため、水分の存在下で安定性の懸念を示す。加水分解は、アルコールアミンが、典型的には、ホストシロキサン樹脂および有機エポキシ硬化剤(hardener)と適合しないために、保護コーティングの外観と、化学架橋のレベルが、SiOC結合が切断された場合に大きく制限されるために、保護コーティングの性能との両方に影響を与える。
【0004】
米国特許公開第2005/0148752A1号は、ポリマー主鎖と官能基との間にSi-O-C結合を有するアミノ官能性ポリシロキサンを開示しており、エポキシポリシロキサン組成物を含んでいる。US2005/0148752A1は、アクリルコポリマーを含むコーティングを識別できない。さらに、US2005/0148752A1は、立体障害のあるアルコール-アミン前駆体部分に由来するシロキサンの使用に関連する利点を、非立体障害の部分と区別できない。
【0005】
米国特許第8,193,293号は、アミノ官能性ポリシロキサンと、水素化ケイ素を含有するポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応を受けることができる2つ以上の不飽和結合を有するヒドロキシル官能基含有材料の反応生成物であるポリシロキサン樹脂と、ポリエポキシドとを含む低温の周囲硬化性コーティング組成物を開示している。
【0006】
米国特許第8,871,888号は、分子あたり2つ以上の1,2-エポキシ基を含むエポキシ樹脂と、50℃~140℃の軟化点を有する炭化水素化合物と、アルコキシ官能性および/またはシラノール官能性シリコーンと、ポリアルキルジアミン成分とケトン成分とを含む反応物の反応生成物を含むケチミン硬化剤とを含む、高固形分、一成分、貯蔵安定性のコーティング組成物を開示している。
【0007】
国際特許公開第WO01/51575 A1号は、アルキル、アリール、アルコキシ、反応性グリシドキシ、およびOSi(OR)基を有するポリシロキサンと、グリシジル官能性アクリルポリマーと、硬化剤とを含む周囲温度硬化コーティング組成物を開示している。ポリシロキサンは、アミン官能基を含有しない。
【0008】
日本特許公開第2002-167546 A号は、(A)アクリル樹脂と、(B)少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、(C)オルガノシラン化合物と、(D)アミノシラン含有アミン硬化剤とを含む単一コーティング仕上げのための耐食性コーティング材料組成物を開示しており、アクリル樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、およびオルガノシラン化合物(C)の配合比として、これらの樹脂の固形分含有量の総量に各々基づいて、成分(A)は5~65重量%であり、成分(B)は30~90重量%であり、成分(C)は、5~65重量%である。
【0009】
必要なのは、水分の存在下で良好な安定性を示し、UV保護、耐食性、良好な乾燥時間、および耐薬品性を含む特性の良好なバランスを、すべて最小限の材料を使用して提供する、費用効果の高いコーティング組成物である。
【0010】
本発明は、硬化性コーティング組成物であって、
(1)重合形態で
(i)(RSiO1/2
(ii)(RSi(OR’)(2-x)/2
(iii)(RSi(OR’),O(3-y)/2、および
(iv)(Si(OR’)(4-z)/2
の構造単位を含むアミノ官能性シリコーン樹脂であって、式中、各R’は、水素、アルキル基、または官能化アルキル基であるが、ただし、すべてのR’基の少なくとも5モルパーセントが、式:-R-NHRのアミン含有基であることを条件とし、式中、Rは、アミノアルコールに由来するアルキル基またはアリール含有基であり、Rは、水素、アルキル基、またはアリール基であり、式中、a+b+c+d=1.00(100モルパーセント)であり、xは、0または1のいずれかであり、yは、0、1、または2のいずれかであり、zは、0、1、2、または3のいずれかであり、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル基、またはアリール基であり、アミノ官能性シリコーン樹脂の-NH-当質量は、50~750である、アミノ官能性シリコーン樹脂と、(2)重合形態でエポキシ官能化基と硬化適合性基とを有するアクリルコポリマーと、を含み、コーティング組成物が、0.5~1.3の範囲のアミンNH官能基対エポキシ官能基のモル比を有する、コーティング組成物を提供する。本発明は、硬化コーティング組成物の1つ以上の層を含むコーティング物品をさらに提供する。
【0011】
「モルパーセント」という用語は、「モル分率」として表すこともでき、1モルパーセントは0.01のモル分率に等しい。「モルパーセント」および「モル分率」という用語は、合計100mol%(すなわち、1.00モル分率)の材料中のSi含有量に基づいている。本発明で提示される各範囲について、範囲の下限および範囲の上限は、本発明で特定された追加の成分の範囲の下限と上限との組み合わせを含む他の下限または上限と任意の方法で分離および組み合わせることができる。すべての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0012】
アミノ官能性シリコーン樹脂
本発明のアミノ官能性シリコーン樹脂は、シロキサン構造上のSi単位にSi-O-C結合を介して接続されたアミン官能基を有するシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有するシロキサン構造として記載することができ、重合形態で、
(i)(RSiO1/2
(ii)(RSi(OR’)(2-x)/2
(iii)(RSi(OR’),O(3-y)/2、および
(iv)(Si(OR’)(4-z)/2
の構造単位を含み、式中、各R’は、水素、アルキル基、または官能化アルキル基であるが、ただし、すべてのR’基の少なくとも5モルパーセントが、式:-R-NHRのアミン含有基であることを条件とし、
式中、Rは、アミノアルコールに由来するアルキル基またはアリール含有基であり、Rは、水素、アルキル基、またはアリール基であり、
式中、a+b+c+d=1.00(100モルパーセント)であり、xは、0または1のいずれかであり、yは、0、1、または2のいずれかであり、zは、0、1、2、または3のいずれかであり、
式中、各Rは、独立して、水素、アルキル基、またはアリール基であり、
アミノ官能性シリコーン樹脂の-NH-当質量は、50~1000、好ましくは50~750、より好ましくは80~900、さらにより好ましくは100~800、最も好ましくは100~700である。
【0013】
式:-R-NHRのアミン含有基であるすべてのR’基の量は、5モルパーセント、10モルパーセントまたは20モルパーセントまで低くすることができ、独立して、100モルパーセント、50モルパーセントまたは30モルパーセントまで高くすることができ、好ましい範囲は5~42モルパーセントおよび20~30モルパーセントであるが、ただし、アミノ官能性シリコーン樹脂の-NH-当質量が、特定された範囲内にあることを条件とする。Rは、式HO-R-NHRによって表されるアミノアルコールに由来し、式中、Rは、アルキル基またはアリール含有基である。好ましくは、Rは、(a)COH部分の周りに立体障害を有するか、(b)二級もしくは三級アルコールであるアミノアルコール、または(c)それらの混合物の群から選択される、アミノアルコールに由来する。
【0014】
シリコーン樹脂の記載において、RSiO1/2はまたMとも称され、RSiO2/2はまたDとも称され、RSiO3/2はまたTとも称され、SiO4/2はまたQとも称される。M、D、T、またはQ記号の横に上付き文字が使用されている場合は、存在するR基のタイプを指す。例えば、DPhは、2つのR基のうちの1つがフェニル基であることを意味する。上付き文字が記載されていないどのR基(複数可)も、ポリマーの特定の説明が別段の指示をしない限り、当業者にはメチル基であると理解されるはずである。アミノ官能性シリコーン樹脂の-NH-当質量は、アミノ官能性シリコーン樹脂の既知量の溶液またはニート試料の13C-NMRスペクトルを取得し、アミノ官能性シリコーン樹脂のアミノ官能性Si単位と関連するピークを、既知量の内部標準(典型的には、1,4-ジオキサン)と関連するピークに対して定量化し、ガスクロマトグラフィーにより決定された試料に存在する溶媒含有量がある場合は、それを調整することにより決定される。アミノ官能性シリコーン樹脂は、ニートな液体、溶液、または溶融可能な固形分の形態をしている。各下付き文字a、b、cまたはdは、材料を構成する単位の分布全体の平均値であり、NMRスペクトルデータ(典型的には、29Si-NMRおよび13C-NMR、あるいは29Si-NMRおよびH-NMR)に基づく計算を使用することにより、任意の所与の材料について決定される。
【0015】
本発明のアミノ官能性シリコーン樹脂は、(1)ヒドロキシ、アルコキシまたはアリールオキシ官能基を有するシリコーン樹脂を(2)アミノアルコールと反応させることによって作製することができる。ヒドロキシ、アルコキシまたはアリールオキシ官能基を有するシリコーン樹脂は、ポリシロキサン、アルコキシシラン、またはクロロシランに由来し得る。シリコーン樹脂(1)組成物のヒドロキシ、アルコキシ、またはアリールオキシ官能基は、「OZ」含有量と称されることもあり、モルパーセントという用語で表される。好適なシリコーン樹脂の非限定的な例には、The Dow Chemical Companyから入手可能なDOWSIL(商標)3074およびDOWSIL(商標)3037、Shin-Etsu Chemical Co.,Ltd.から入手可能なShin-Etsu Silicone KR-213およびKR-510、ならびにWacker Chemie AGから入手可能なSILRES(登録商標)IC232およびSILRES(登録商標)SY231が含まれる。
【0016】
アミノアルコールは、先に記載したように、式HO-R-NHRによって表すことができる。好適なアミノアルコールの非限定的な例には、2-アミノ-1-エタノール、1-アミノ-2-プロパノール、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール、2-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-1-ブタノール、ネオペンタノールアミン(3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール)、2-アミノ-1-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジオール、5-アミノ-1-ペンタノール、1,2-ジメチルエタノールアミン、3-アロキシ(alloxy)-2-ヒドロキシ-プロピルアミン、1-アミノ-2-メチル-ペンタノール、N-メチルエタノールアミン、N-ヒドロキシエチルプロパンジアミン、N-シクロヘキシルエタノールアミン、p-(ベータ-ヒドロキシエチル)-アニリン、N-(ベータ-ヒドロキシプロピル)-N’-(ベータ-アミノエチル)ピペラジン、2-ヒドロキシ-3-(m-エチルフェノキシ)プロピルアミン、2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノベンジルアルコール、3-アミノベンジルアルコール、3-アミノ-o-クレゾール、4-アミノ-o-クレゾール、5-アミノ-o-クレゾール、2-アミノ-p-クレゾール、4-アミノ-m-クレゾール、6-アミノ-m-クレゾール、1-アミノ-1-シクロペンタンメタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、3-(1-ヒドロキシエチル)アニリン、2-アミノ-1-フェニルエタノール、1-アミノメチル-1-シクロヘキサノール、8-アミノ-2-ナフトール、2-アミノ-フェネチルアルコール、4-アミノフェネチルアルコール、3-(アルファ-ヒドロキシエチル)アニリン、マンニッヒ塩基、アミノアルコールとシス-2-ペンテンニトリルとの反応、それに続く水素化ステップによる生成物、アミノフェノール、例えば、p-アミノフェノール、チロシン、チラミンなど、エポキシアミン付加物、およびそれらの混合物が含まれる。好ましいアミノアルコールには、1-アミノ-2-プロパノールおよび1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オールが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
NMR:様々なアルコキシ含有アミノ官能性シリコーン樹脂組成物の組成を、NMRを利用して決定する。核磁気共鳴(NMR)分析は、Mercuryの400MHz超伝導分光機器を使用して行われる。この機器は、シリコンを含まないプローブを使用している。
【0018】
アルコキシ含有量-アルコキシ含有量は、2つの方法のうちの1つによって計算される。方法1は、13C NMRから測定されたアルコキシ対フェニルの比を使用し、次いでこの比を29Si NMRから測定されたフェニル含有量に乗算する。得られた結果はモルパーセント(mol%)にある。方法2は、13C NMRで内部標準重水素化クロロホルムを使用する。NMR試料に添加された樹脂およびクロロホルムの重量を使用して、重量%のアルコキシを決定する。次いで、この情報を29Si NMRから得られた組成と組み合わせて使用して、モルのアルコキシを計算する。
【0019】
分子量-分子量(MnおよびMw)について分析される樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して行われる。試料を、0.5%濃度のTHF中で調製し、無水酢酸用いてキャッピングし、濾過し、RI検出を使用してポリスチレン標準に対して分析した。カラムは、50mmガードカラムを備えた2つの300mmの5マイクロメートルMixed Cである。流量はlml/分である。
【0020】
アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、およびオクタデシルにより例示されるが、これらに限定されず、アルキル基は、典型的にはメチルである。アリール基は、フェニル、ナフチル、ベンジル、トリル、キシリル、キセニル、メチルフェニル、2-フェニルエチル、2-フェニル-2-メチルエチル、クロロフェニル、ブロモフェニル、およびフルオロフェニルにより例示されるが、これらに限定されず、アリール基は、典型的にはフェニルである。
【0021】
ヒドロキシ、アルコキシまたはアリールオキシ官能基を有するシリコーン樹脂は、当技術分野で知られている重合方法に従って合成される。非限定的で例示的な重合方法は、米国特許公開第2005/0148752A1号に開示されている。
【0022】
多官能化アクリルコポリマーの説明
多官能化アクリルコポリマーは、アクリルコポリマーの主鎖上で官能性を保持する、アクリレート結合、エポキシ官能化基、および硬化適合性基を介した重合形態を含む、過半量の共重合(メタ)アクリルエステルを含むコポリマーを意味する。好ましくは、多官能化アクリルコポリマーは、硬化適合性基の存在に部分的に起因する極性材料であり、これは、いかなる理論にも拘束されないが、極性アミノ官能性シリコーン樹脂との適合性を助けると考えられている。この適合性は、硬化コーティング組成物のヘイズの低減により最もよく見られる。本明細書で使用される場合、アクリレートなどの別の用語が続く用語「(メタ)」の使用は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を指す。例えば、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかを指す。同様に、用語「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸またはアクリル酸を指す。アクリルコポリマーは、キシレンなどの溶媒中でのフリーラジカル重合により調製され、モノマー、開始剤、任意選択的に連鎖移動剤、および溶媒を容器に充填し、約60°~175℃で約1~6時間反応させて、ポリマーを形成することができる。アクリルコポリマーを調製するために使用され得る典型的な溶媒は、以下のトルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、エチルアルコール、ミネラルスピリット、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ならびに他の脂肪族、脂環式、および芳香族炭化水素、エステル、エーテル、ケトン、およびアルコールであり、それらは、便利に使用される。あるいは、アクリルコポリマーは、フリーラジカル乳化もしくは懸濁付加重合を介して、または剪断下で予備成形したポリマーを水性媒体に分散させることにより調製され得る。好ましくは、本発明のアクリルコポリマーは、溶媒型である。
【0023】
アクリルコポリマーの調製に好適なモノマーには、(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせが含まれる。(メタ)アクリル酸およびイタコン酸、ならびにそれらの塩などのカルボン酸モノマー、スチレンスルホン酸ナトリウムおよびスルホン酸アクリルアミド-メチル-プロパン、ならびにそれらの塩などのスルホン酸モノマー、さらにはホスホエチルメタクリレートおよびその塩などのリン酸モノマーを含む追加のモノマーがアクリルコポリマーを調製するために使用され得る。スチレン、アクリロニトリル、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、およびアルコキシシラン官能性(メタ)アクリレートなどのモノマー、ならびにグリシジル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの共硬化性官能基を付与することができるモノマーもアクリルコポリマーの調製において使用され得る。ある特定の実施形態において、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびジビニルベンゼンを含む、少量の共重合された多エチレン性不飽和モノマー基をアクリルコポリマーに組み込むことが有利であり得る。そのようなモノマー基をポリマーに不均一に組み込んで、多相ポリマー粒子を形成し、コアシェル、半球形、または閉塞形態を作成することも有利であり得る。連鎖移動剤は、これらのアクリルコポリマーを調製するために使用され得、その例には、ドデシルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、メルカプトトリアルコキシシラン、ブチルメルカプトプロピオネート、メチルメルカプトプロピオネート、およびメルカプトプロピオン酸が含まれる。開始剤は、これらのアクリルコポリマーを調製するために使用され得、その例には、ペルオキシおよびアゾ化合物が含まれる。
【0024】
アクリルコポリマーのエポキシ官能化基は、グリシジルメタクリレート(GMA)またはグリシジルアクリレートなどのグリシジル基を含むが、GMAが好ましい。アクリルコポリマーの硬化適合性基は、アルコール(OH)官能基、フェノール基、シリコーン基、例えば、モノマーの3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(MATS)でのような、三級アミン、または主鎖にぶら下がっているか(アクリルモノマーの場合のように)もしくは末端基として接続するかのいずれかである酸基のうちの1つ以上を含有するモノマー基を重合形態で含み、例えば、この場合、OH官能性連鎖移動剤が重合に使用される。好ましくは、硬化適合性基は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMAまたはHEA)である。好ましくは、アクリルコポリマーは、GMA、HEMA、メチルメタクリレート(MMA)、および2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)を含むモノマーから合成される。
【0025】
アクリルコポリマーは、コポリマーを生成するために添加された総モノマー単位の重量に基づいて、30~80重量%のグリシジル(メタ)アクリレートモノマー単位、好ましくは40~60重量%のグリシジル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくは範囲の最も下である30重量%超のグリシジル(メタ)アクリレートモノマーを含有する。アクリルコポリマーは、コポリマーを生成するために添加された総モノマー単位の重量に基づいて、最大20重量%の硬化適合性基モノマー単位、好ましくは最大10重量%の硬化適合性基モノマー単位、好ましくは最大8重量%の硬化適合性基モノマー単位、好ましくは2重量%超の硬化適合性基モノマー単位を含有し、好ましい範囲は5~10重量%である。硬化適合性基の上限は、HEMAをGMA官能基と組み合わせた場合のコポリマーの粘度により主に決定される。理論的には、HEAとグリシジルアクリレートとの組み合わせなどの他のモノマーを使用する場合、硬化適合性基をより高い含有量で有することが可能になる。アクリルコポリマーは、ASTM D1652に従って決定される場合、200~600g/molのエポキシ、好ましくは250g/mol超のエポキシ、より好ましくは275g/mol超のエポキシの下限、好ましくは500g/mol未満のエポキシ、より好ましくは450g/mol未満のエポキシの上限の範囲のエポキシ当量(EEW)を含有し、好ましい範囲は300~400g/molのエポキシである。
【0026】
アクリルコポリマーは、摂氏80度(80℃)以下、好ましくは30℃以下、最も好ましくは15℃以下の計算されたガラス転移温度(「Tg」)を有し、好ましい範囲は-40℃~10°Cである。Tgは、当技術分野でよく知られているように、所望のポリマーTgを達成するためのモノマーおよびモノマーの量の選択により到達される。ポリマーのTgは、動的走査熱量測定を使用して測定される。
【0027】
アクリルコポリマー溶液は、室温(25℃)で約70%の固形分の500センチポアズ(cP)~8,000cPの範囲の粘度を有する粘性液体である。本発明のアクリルコポリマーは、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される場合、500~10,000g/mol、好ましくは1,000~5,000g/mol以上、またはより好ましくは4,000g/mol以下の数平均分子量を有する。
【0028】
コーティング組成物の説明
本発明のコーティング組成物は、アクリルコポリマーとアミノ官能性シリコーン樹脂とを含む。アミンNH官能基対エポキシ官能基のモル比は、0.5~1.3、好ましくは0.8~1の範囲である。好ましくは、アミン基の過剰は、外部の耐久性に悪影響を与えるアミンブラッシュにつながる可能性があるため、避けるのが最善である。アミンブラッシュは、水に曝露されると光沢が失われる。コーティング組成物は、促進硬化が可能であるが、典型的には、周囲硬化を受ける。
【0029】
本発明のコーティング組成物は、ベンジルアルコール、サリチル酸、およびトリス-2,4,6-ジメチルアミノメチルフェノールなどの促進剤/可塑剤、シリカ、アルミナ、ジルコニア、タルク、サルフェート、TiO、カーボンブラック、グラファイト、シリケートなどを含む細かく分割された鉱物などの充填剤、他の硬化剤、他のエポキシ樹脂、補強剤、レオロジー調整剤、溶媒、促進剤、界面活性剤、紫外線(UV)安定剤、抗酸化剤、湿潤剤、溶媒、消泡剤、強化剤、ならびに顔料、染料、および色味剤を含む着色剤を含むがこれらに限定されない追加の組成物を含有し得る。
【0030】
本発明の硬化性コーティング組成物は、無着色の透明なクリアコート、またはプライマー、ベースコート、およびトップコート用途のための着色されたシステムであり得る。顔料は、任意の典型的な有機または無機顔料であり得る。特定の用途に望ましい色を達成するには、いくつかの異なる顔料が必要になる場合がある。好適な顔料の例には、二酸化チタン、不透明なポリマー、バライト、粘土、炭酸カルシウム、赤色酸化鉄、CIピグメントイエロー42、CIピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4(銅フタロシアニン)、CIピグメントレッド49:1、CIピグメントレッド57:1、およびカーボンブラックが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
得られたコーティング組成物は、当技術分野で知られている技法、例えば、噴霧、刷毛塗り、引き落とし、ロールコーティングを使用して基材に適用され得る。コーティングの公称乾燥フィルム厚(DFT)は、1ミル以上、好ましくは2ミル以上、好ましくは2.5ミル以上、より好ましくは3ミル以上である。1ミルは、1/1000インチに相当する。コーティングできる基板の例には、プラスチック、木材、金属(アルミニウム、鋼、または亜鉛メッキシートなど)、スズメッキ鋼、コンクリート、ガラス、複合材料、ウレタンエラストマー、下塗り(塗装)基板などが含まれるが、これらに限定されない。コーティングは、強制空気オーブン内または他のタイプの熱源を使用して、室温または高温で硬化され得る。
【0032】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示するものである。
【0033】
実施例および実験方法:
アクリルコポリマー
キシレンを、撹拌シャフト、縮合装置、熱電対ポート、および追加ポートを備えた500mLの4口丸底フラスコに添加した。加熱マントルを使用して、キシレンの温度を上げ還流(140℃)した。グリシジルメタクリレート(GMA)、メチルメタクリレート(MMA)、2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)、および2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)からなるモノマーブレンドを秤量し、500mLのガラス瓶内で混合し、次いで、ルアーロック接続部付きの50mLのプラスチック供給シリンジに均等に分割した。開始剤であるtert-ブチルペルオキシアセテート(TBPA、ミネラルスピリット中50%)を単一の50mLのプラスチックシリンジに添加し、長い供給ニードルアタッチメントを備えたルアーロック接続を介して供給チューブに接続した。二重シリンジポンプを使用して、一定の供給速度でモノマー混合物を添加し、単一の供給シリンジポンプを使用して、開始剤を供給した。溶媒が還流しているときに供給を開始した。供給速度の時間および温度は、溶媒および開始剤の半減期に依存する。供給物が枯渇したら、ラインを少量の溶媒で洗い流した。残留モノマーおよび開始剤を許容レベルまで低減するために、実行をさらに1時間続けた。表1は、作製したアクリルコポリマーを示す。
【表1】
【0034】
アクリルコポリマーの特性評価
GPC
2mg/mLの試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、注入前に、溶液を0.2μmのPTFEシリンジフィルターで濾過した。35℃で1.0mL/分の流量で、MIXED-Dカラム(300X7.5mm)を備えたAgilent 1100シリーズで測定されたGPCを使用して、分子量測定を実行した。Agilentの屈折率検出器をAgilentのGPC/SECソフトウェアで使用する。Polymer labsの17の狭いPS標準を使用して較正を実行し、3,742kg/mol~0.580kg/molの範囲にわたって3次多項式曲線に適合させる。
【0035】
EEW
EEWをASTM D1652に従って測定する。エポキシ樹脂を塩化メチレンに溶解し、酢酸中の過剰な臭化テトラエチルアンモニウム(TEAB)の存在下で、氷酢酸中の標準化された0.1N過塩素酸(HClO4)で滴定する。Metrohm905滴定装置およびEEW判定用に構成された関連するTiamo滴定ソフトウェアを使用して測定を実行した。
【0036】
固形分パーセント
小さなアルミ鍋の底にラベルを付け、はかりに鍋を配置し、その重量を最も近い0.0001グラムまで記録する。ピペットを使用して、約0.5g~1.5gの試料を鍋に均等に分配する。その重量を初期として記録する(鍋+試料)。試料をオーブンに入れる前に、焼き皿に配置し、バインダークリップでクリップ留めし、ピペットを使用して約2グラムのトルエンで樹脂を覆い、次に予熱したクラスAオーブンに慎重に配置する。2時間後、オーブンから焼き皿および試料を取り出す。天びんをゼロに設定し、試料(および鍋)を天びんに配置し、最終重量を記録し、次の式により固形分を計算する。
固形分%=(最終重量-鍋重量)/(初期重量-鍋重量)*100
【0037】
ガラス転移温度
を約5~10mgの試料サイズで、ASTM D7426に従って、示差走査熱量測定DSC Q2000 V24.10で測定した。温度プロファイルを次のように実行した:10℃で5分間の等温線。10℃/分で-50℃まで下降させ、5分間の等温線、10℃/分で150℃まで上昇させ、5分間の等温線、TgをTAソフトウェアを用いて分析した。
【0038】
粘度
ブルックフィールドDV-IIIウルトラ粘度計をスモール試料アダプター(SSA)と共に使用して、粘度測定を行った。スモール試料アダプターのレオロジー的に正確な円筒形状は、非常に正確な粘度測定および剪断速度判定を提供する。これらの試料に関して、9mLの材料をシリンダーに堆積し、スピンドル#31または#34を使用し、約25ニュートンメートル(N*m)のトルクで達成するように速度を変化させた。測定値をセンチポアズ(cP)の単位で報告した。
【0039】
アミノ官能性シリコーン樹脂
アミノ官能性シリコーン樹脂S1~S13を表2に示し、各々はシリコーン樹脂およびアルコール-アミンの反応生成物である。代表的なシリコーン樹脂S1は、NMRで決定されたD0.337シクロヘキシル 0.010Ph 0.653、(OZ=68.64mol%、FW約126.5g/mol Si)の構造を有する、シリコーン樹脂試剤/反応物を、以下の手順に従って1-アミノ-2-プロパノール(Mw=75.11、TCIブランド、bp=160℃)と反応させることによって調製した。250mLの1つ口丸底フラスコに、シリコーン樹脂反応物(94.19g、0.745mols Si.0.511mols OZ)および1-アミノ-2-プロパノール(16.52g、0.220mols、0.440mols NH)を充填した。フラスコには、磁気撹拌棒および水冷コンデンサーへと取り付けられているDean Stark装置を備えた。混合物は室温にて濁っていた。混合物を、140℃のアルミニウムブロック温度で2時間加熱した。最初の1時間に収集された揮発性物質の量は3.35gであり、2時間目では0.31gであった。140℃に加熱している間、反応混合物は透明になった。アルミニウムブロック温度を180℃に上げて、この温度で2時間保持した。最初の1時間に収集された揮発性物質の量は1.85gであり、2時間目では0.13gであった。最終生成物を、115℃の油浴温度および約1mmHgの圧力でロータリーエバポレーター(rotovapor)にてストリッピングした。
【0040】
得られた生成物は、室温にて透明な粘稠液体であった。生成物の単離された収量は100.9gであり、256g/mol NHの13C NMRスペクトルから計算されたアミン水素当量を有していた。生成物のNMR分析はそれを次のように示した:61.95mol%のOZ含有量(26.9mol% ORおよび33.5mol% OMe)を有するD0.333シクロヘキシル 0.007Ph 0.660。ORおよびOMe値は、13C NMRから、OR積分値の比を取り、それをフェニル基の積分値で割ることによって計算された。
【0041】
代表的なシリコーン樹脂S6は、アルコキシシランに由来するシリコーン樹脂試剤/反応物を、以下の手順に従ってエタノールアミンと反応させることによって調製した。
試剤:
●フェニルトリメトキシシラン-Dowsil(商標)Z-6124シラン(Dow,Inc.または関連会社から入手可能)-
●メチルトリメトキシシラン-Silastic(商標)Z-6070シラン(Dow,Inc.または関連会社から入手可能)、実験室蒸留;Mw=136.22
●エタノールアミン、Acros Organicsから入手可能
【0042】
250mLの2つ口丸底フラスコに、フェニルトリメトキシシラン(106.28g、0.536mols)、メチルトリメトキシシラン(35.96g、0.264mols)およびエタノールアミン(12.91g、0.21mols、0.42mols NH)を充填した。混合には磁気撹拌棒を使用し、混合物を50℃のアルミニウムブロック温度に加熱した。脱イオン水(14.83g、0.823mols)をゆっくりと添加し、混合物を70℃のアルミニウムブロック温度で1時間加熱した。アルミニウムブロック温度を120℃に上げて、次にこの温度で1時間保持した。除去された揮発性物質の量は、55.8gであった。生成物を、80℃の油浴温度、約1.0mmHgでロータリーエバポレーターにて45分間ストリッピングした。
得られた生成物は、304g/mol NHの13C NMRスペクトルから計算されたアミン当量を有する、室温にて透明な粘稠液体であった。生成物のNMR分析はそれを次のように示した:83.4mol%のOZ含有量を有するTMe 0.300シクロヘキシル 0.010Ph 0.690
【表2-1】
【表2-2】
【0043】
コーティング配合物:クリアコーティング
表3のクリアコーティング組成物を以下の方法で調製した:アクリルコポリマーをMAX 40 SpeedMixer(商標)カップに配置し、アミノ官能性シリコーン樹脂を添加し、FlackTek(商標)DAC150 SpeedMixer(商標)で2分間2000rpmで混合した。コーティング組成物の配合では、アクリルコポリマーおよびアミノ官能性シリコーン樹脂を、1:1のエポキシ/NHのモル比を提供する量で添加する。
【表3】
【0044】
DOWSIL(商標)3055は、SiOC結合アミン官能基とは対照的に、SiC結合アミン官能基を有するアミン官能性シロキサン樹脂であり、Dow,Inc.または関連会社から入手可能である。
【0045】
クリアコート適用の引き落とし適用方法
ASTM D4147に従って、Q-Panel R-412-I(ホスフェート処理冷間圧延鋼)およびAL412(クロメート処理アルミニウム)パネルにコーティングを適用した。磁気チャックまたはクランプを使用して、パネルをしっかりした水平面に固定した。マルチクリアランススクエアアプリケーターを使用して、パネルにコーティングを適用し、5~6ミルの湿潤厚さを目標として、約2.5ミルの所望の乾燥フィルム厚さを達成した。
【0046】
コーティングの適用および試験方法
噴霧適用:この研究では3種類のパネル(ホスフェート処理冷間圧延鋼(CRS)、ブラスト鋼、およびクロメート処理アルミニウムパネル)を使用し、ホスフェート処理およびブラスト鋼パネルを脱脂剤または工場溶媒のいずれかで洗浄してから、噴霧した。200μmフィルターを備えた使い捨て噴霧容器に塗料を入れ、1.4mmまたは1.8mmのいずれかの霧吹きヘッドを使用した。パネルをワイヤーラックに配置し、3M(商標)Accuspray(商標)システム工業用噴霧器を備えた従来のエアアシストアプリケーションを使用して噴霧した。パネルを72°Fおよび50%の相対湿度の制御された温度および湿度の実験室において硬化させた。
【0047】
乾燥時間:コーティングを76マイクロメートル(μm)の厚さの湿潤フィルムを備えた1”×12”ガラス基板上に引き落とし、BYK乾燥時間記録計を設定した。ASTM D5895-03に準拠したBYK乾燥時間記録計を使用して、コーティングを通してニードルを引きずることにより、指触乾燥、不粘着時間、および乾燥硬度を測定した。
【0048】
振り子硬度:ケーニッヒ振り子を備えたBYK Gardnerの振り子硬度テスターを使用して、振り子硬度を測定した。テスターをISO1522に従って実行し、硬度を秒単位で測定するように設定した。
【0049】
鉛筆硬度
コーティングフィルムの鉛筆硬度は、ASTM D3363方法に従って測定される。コーティング組成物をガラスパネルに塗布して、厚さ120ミクロンの湿潤フィルムを形成し、室温にて7日間硬化させる。次いで、得られたフィルムを、Zhonghua鉛筆によって試験する。使用される鉛筆の硬度は、9H、8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、3B、4B、5B、6Bであり、ここで、9Hは最も硬く、6Bは最も軟らかい。
【0050】
光沢:BYK GardnerのマイクロTRI光沢計を使用してASTM D-523-89に従って、コーティングの20°、60°、および85°の光沢を測定した。
【0051】
ヘイズ:BYKのマイクロヘイズプラスメーターを使用してASTM E430試験方法Bに従って、クリアコート配合物のヘイズを測定する。ガラスパネル上に76マイクロメートルでコーティングを引き落とし、黒いレンタチャートで測定を行った。測定は、明るさ補正を伴う対数目盛であった。
【0052】
メチルエチルケトン二重摩擦試験:DJH DESIGNS INC製の半自動MEK摩擦試験機を使用してASTM D5402に従って、メチルエチルケトン(MEK)の二重摩擦試験を実行した。試験は、コーティングが摩擦で基材まで落とされるか、または最大200回の二重摩擦が破断せずに完了するまで続けられた。
【0053】
コーティング組成物の性能特性を表4~5に示す。それぞれCtg 14およびCtg 15と比較したCtg 12およびCtg 13は、改善された鉛筆硬度、改善された乾燥時間、改善された光沢読み取り値、改善された硬度、および改善されたMEK耐性を提供するアクリルコポリマー中の硬化適合性基(例えば、HEMA)の重要性を例示する。表4および5は、多官能化アクリルコポリマーとアミノ官能性シリコーン樹脂硬化剤とを有するコーティング組成物が、費用効果の高い方法でコーティング組成物の特性を改善することを例示する。アクリルコポリマーが重合形態でエポキシ官能化基と硬化適合性基とを有し、アミノ官能性シリコーン樹脂がアルコキシ官能性シロキサンである場合、コーティング特性が改善される。さらに、コーティング特性は、アミノ官能性シリコーン樹脂が立体障害のあるアルコール-アミン前駆体部分に由来するアルコキシ官能性シロキサンを有する場合、またはアルコール-アミン前駆体が二級もしくは三級アルコールである場合に、最も改善される。
【表4】
【表5】