(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】エレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するよう機械学習モデルに学習させるためのコンピュータによって実行される方法、設置上の欠陥を分類するためのコンピュータによって実行される方法、およびそのシステム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240920BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20240920BHJP
B66B 5/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
B66B3/00 W
B66B3/00 R
B66B5/00 G
(21)【出願番号】P 2022570401
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2022055641
(87)【国際公開番号】W WO2023062442
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】102021000026375
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】522218057
【氏名又は名称】ヴィットゥル ホールディング ゲーエムべーハー
【氏名又は名称原語表記】WITTUR HOLDING GMBH
【住所又は居所原語表記】Rohrbachstrasse 26-30, 85259 Wiedenzhausen,Bayern,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100216150
【氏名又は名称】香山 良樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ゼルホファー,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】デ フランチェスコ,ジゥゼッペ
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-114111(JP,A)
【文献】特開2009-270843(JP,A)
【文献】特開平05-233585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0010019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00- 5/28
G01M13/00-13/045
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するよう、セット・ファンクション・モデルとフーリエ変換モデルとの組み合わせである機械学習モデルに学習させるためのコンピュータによって実行される方法(100)であって、
それぞれが物理的パラメータを検出するよう構成されている複数のセンサを前記エレベータに配置する工程(101)と、
少なくとも一つの時系列を含むデータセットを取得するよう、前記センサを用いて前記物理的パラメータの値を検出する工程(102)と、
前記データセットから特徴を抽出することによって、第一入力層を取得する工程(103)と、
前記データセットから特徴を抽出することによって、第二入力層を取得する工程(104)と、
前記第一入力層を前記セット・ファンクション・モデルに供給する工程(105)と、
前記第二入力層を前記フーリエ変換モデルに供給する工程(106)と、
を備える、
方法(100)。
【請求項2】
前記データセットは、時系列の行列を含む、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記データセットは、さらに、一以上の静的な値または周期的な値を含む、
請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記データセットは、さらに、音響サンプルを含む、
請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記音響サンプルの抽出される特徴は、音響スペクトログラムを含む、
請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記センサを用いて前記物理的パラメータの値を検出する前記工程(102)は、センサのタイプおよび関係する物理的パラメータのタイプに応じて異なる規則性で行われる、
請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項7】
エレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するためのコンピュータによって実行される方法(200)であって、
前記エレベータに配置される複数のセンサを用いて、複数の物理的パラメータを検出する工程(201)と、
前記検出された物理的パラメータから第一特徴抽出および第二特徴抽出を実行する工程(202)と、
前記第一の抽出された特徴および前記第二の抽出された特徴を、
請求項1または2に記載の設置上の欠陥を検出するよう学習された前記機械学習モデルに供給する工程(203)と、
を備える、
方法(200)。
【請求項8】
エレベータ(1)における特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するためのシステム(300)であって、
前記エレベータ(1)に配置され、物理的パラメータを検出するよう構成されている複数のセンサ(2)と、
前記検出された物理的パラメータから特徴を抽出するよう構成される第一特徴抽出ユニット(3)および第二特徴抽出ユニット(4)と、
前記第一特徴抽出ユニット(3)および前記第二特徴抽出ユニット(4)から入力される前記抽出された特徴の受信に応じて、設置上の欠陥を検出するよう構成されるセット・ファンクション・モデル(SF)とフーリエ変換モデル(FT)との組み合わせで構成される機械学習モデル(ML)であって、
請求項1または2に記載の設置上の欠陥を検出するよう学習された機械学習モデル(ML)と、
を備える、
システム(300)。
【請求項9】
前記センサ(2)は、位置センサ、速度センサおよびマイクロホンの中から選択される、
請求項
8に記載のシステム(300)。
【請求項10】
電子装置のメモリへ読み込み可能なソフトウェア製品であって、
前記電子装置によって実行されたときに、請求項7に記載の方法の工程の実行を指定する命令を含んでいる、
ソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するよう機械学習モデルに学習させるためのコンピュータによって実行される方法、設置上の欠陥を分類するためのコンピュータによって実行される方法、およびそのシステムに関する。
【0002】
本発明の用途の一つは、エレベータドアの特にエレベータ搭乗場扉(ドア)の設置制御およびエレベータ搭乗箱(かご)ドアの設置制御である。
【0003】
また、本発明の用途は、エレベータドアの保守の予兆および遠隔監視においても見出されよう。
【0004】
本発明の他の用途は、エレベータ駆動手段、特にモータ、ブレーキ装置およびエンコーダにも関係する。
【0005】
本発明の他の用途は、安全装置において、例えば速度超過調節器(ガバナ)、安全機器、調節器引っ張り(テンション)ロープおよび削り屑(シェーブ)において見出されよう。
【0006】
また、加速度計、荷重変換器(トランスデューサ)、上昇制御器(リフト・コントローラ)およびドア安全スイッチの制御も想定される。
【0007】
総じて、本願の用途は、エレベータのあらゆる構成部品において見出されよう。
【背景技術】
【0008】
設置全体にわたって分散配置されるセンサから検出されるデータに基づくエレベータ設置の監視システムは、最新技術においてすでに提案されている。
【0009】
米国特許第10,196,236号明細書の要約には、エレベータ設置の監視システムおよびエレベータドアの使用データを生成するための監視システムを動作する方法が提案されている。この監視システムは、エレベータ設置において配置されるセンサと、評価ユニットと、を有しており、センサはセンサの環境の少なくとも一つの物理的パラメータを検出し、評価ユニットは時間経過に対するその物理的パラメータの変化(コース)に基づいてエレベータドアの動作状態を判断する。
【0010】
米国特許出願公開第2020/0062542号明細書の要約には、エレベータかごの位置を、動作に基づいて、プロセッサおよびエレベータシステムの機械室の一以上の構成部品と関連する振動データを収集する機械室センサによって、決定するための方法およびシステムが提案されている。このエレベータシステムはエレベータかごと昇降路(ホイストウエー)とを備えており、この方法はホイストウエーにおけるエレベータかごの位置を決定するよう振動データを分析する。
【0011】
上述の提案(ソリューション)は、保守の予兆を捉えようとするものであるが、設置品質が低い場合にはその影響を受ける。センサによって回収されるデータは設置品質を高めるには十分でない。データが間接的なデータであるからであり、つまり、センサは扉開閉装置には直接接続されていないからである。
【0012】
不完全な設置の対策に費やす時間および経費の低減が必要である。事実、エレベータ会社やエレベータ多国籍企業は、エレベータ提供(リリース)から6ヵ月以内に多数の製品改修(コールバック)を受けるが、その多くは低い設置品質に起因する。コールバックの原因となる主な構成部品の多くはドアである。
【0013】
設置品質が顧客満足度を高める鍵となることは明らかである。
【発明の開示】
【0014】
このことに鑑みて、本発明の基本的な技術的課題は、先行技術の上述した欠点を克服するエレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するよう機械学習モデルに学習させるためのコンピュータによって実行される方法、設置上の欠陥を分類するためのコンピュータによって実行される方法、およびそのシステムを提供することにある。
【0015】
特に、本発明の目的は、エレベータドアの不完全な設置を従来技術提案に対してより良好に検出でき、したがって特にドアに関する設置過程の品質を向上できるエレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するよう機械学習モデルに学習させるためのコンピュータによって実行される方法、設置上の欠陥を分類するためのコンピュータによって実行される方法、およびそのシステムを提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、より効率的でかつ簡単に保守作業の計画を立てることができるとともに監視を行うことができ、したがって正しい設置を確認するための時間を低減できるエレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を分類するコンピュータによって実行される方法およびシステムを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、低い設置品質に起因する将棋倒し効果(ノックオン・エフェクト)の数を低減できるエレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を分類するコンピュータによって実行される方法およびシステムを提供することにある。
【0018】
上記の課題および上述の目的は、エレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するようセット・ファンクション・モデルとフーリエ変換モデルとの組み合わせである機械学習モデルに学習させるためのコンピュータによって実行される、センサ配置工程と、物理的パラメータ値検出工程と、第一入力層取得工程と、第二入力層取得工程と、第一入力層供給工程と、第二入力層供給工程と、を含む方法によって基本的に達成される。
【0019】
センサ配置工程において、それぞれが物理的パラメータを検出するよう構成されている複数のセンサがエレベータに配置される。
【0020】
物理的パラメータ値検出工程において、少なくとも一つの時系列を含むデータセットを取得するようセンサを用いて物理的パラメータの値が検出される。
【0021】
第一入力層取得工程において、データセットから特徴を抽出することによって第一入力層が取得される。
【0022】
第二入力層取得工程において、データセットから特徴を抽出することによって第二入力層が取得される。
【0023】
第一入力層供給工程において、第一入力層がセット・ファンクション・モデルに供給される。
【0024】
第二入力層供給工程において、第二入力層がフーリエ変換モデルに供給される。
【0025】
本発明の一面では、データセットは時系列の行列を含む。
【0026】
本発明の一面では、データセットはさらに一以上の静的な値または周期的な値を含む。
【0027】
本発明の一面では、データセットはさらに音響サンプルを含む。
【0028】
本発明の一面では、音響サンプルの抽出される特徴は音響スペクトログラムを含む。
【0029】
本発明の一面では、センサを用いて物理的パラメータの値を検出する工程は、センサのタイプおよび関係する物理的パラメータのタイプに応じて異なる規則性(ペリオディシティ)で行われる。
【0030】
上記の課題および上述の目的は、エレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するためのコンピュータによって実行される、物理的パラメータ検出工程と、第一および第二特徴抽出実行工程と、第一および第二特徴抽出供給工程と、を含む方法によって基本的に達成される。
【0031】
物理的パラメータ検出工程においては、エレベータに配置される複数のセンサを用いて複数の物理的パラメータが検出される。
【0032】
第一および第二特徴抽出実行工程においては、検出された物理的パラメータから第一特徴抽出および第二特徴抽出が実行される。
【0033】
第一および第二特徴抽出供給工程においては、第一の抽出された特徴および第二の抽出された特徴が、設置上の欠陥を検出するよう予め学習された機械学習モデルに供給される。
【0034】
上記の課題および上述の目的は、エレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するための、複数のセンサと、第一特徴抽出ユニットと、第二特徴抽出ユニットと、機械学習モデルと、を備えるシステムによって基本的に達成される。
【0035】
複数のセンサは、エレベータに配置されるとともに物理的パラメータを検出するよう構成されている。
【0036】
第一特徴抽出ユニットおよび第二特徴抽出ユニットは、検出された物理的パラメータから特徴を抽出するよう構成される。
【0037】
機械学習モデルは、第一特徴抽出ユニットおよび第二特徴抽出ユニットから入力される抽出された特徴の受信に応じて設置上の欠陥を検出するよう構成されるセット・ファンクション・モデルとフーリエ変換モデルとの組み合わせで構成される。機械学習モデルは、設置上の欠陥を検出するよう予め学習している。
【0038】
本発明の一面では、センサは、位置センサ、速度センサおよびマイクロホンの中から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の図面を参照して、概略的でありしたがって限定するものではない、エレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するよう機械学習モデルに学習させるためのコンピュータによって実行される方法、設置上の欠陥を分類するためのコンピュータによって実行される方法、およびそのシステムの好ましい実施形態であるが他の形態を排除するものではない実施形態から、明らかとなろう。
【
図1】本発明にかかるエレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を分類するためのシステムを示す。
【
図2】本発明にかかるエレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を分類するためのコンピュータによって実行される方法において用いられるセット・ファンクションの概略図である。
【
図3】本発明にかかるエレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を分類するためのコンピュータによって実行される方法において用いられるFFTモデルの概略図である。
【
図4】本発明にかかるエレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するよう機械学習モデルに学習させるためのコンピュータによって実行される方法のフロー図を示す。
【
図5】本発明にかかるエレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を分類するためのコンピュータによって実行される方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図を参照して、符号100は、エレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するよう機械学習モデルに学習させるためのコンピュータによって実行される方法を示す。
【0041】
方法を、エレベータ搭乗場ドアまたはエレベータかごドアに適用できる。
【0042】
エレベータにおいて検出できる設置上の欠陥には種々の設置上の欠陥がある。
【0043】
好ましい実施形態において、方法100は、二進値での不良(バイナリ・フェイリュア)とパーセントとして測定される不良との二つの分類(カテゴリ)で設置上の欠陥を特定することができる。
【0044】
二進値での不良は、不良が「ある」か「ない」か、として表示される。
【0045】
二進値での不良には、開閉装置の不良、プーリがベルトに接触しているという状況等が含まれる。
【0046】
パーセントとして測定される不良は、ある範囲内で評価される。
【0047】
パーセントとして測定される不良としては、カウンタローラ設置、エレベータ搭乗場/かごドアの水平方向位置ずれ、エレベータ搭乗場/かごドアの垂直方向位置ずれ、ベルト張力、ゼロ点位置等がリストとして挙げられる。
【0048】
図4に示す通り、方法100は、複数のセンサ2をエレベータに配置する工程(ステップ101)から始まる。
【0049】
方法100は、実際には、エレベータ1の異なる位置に配置されるセンサ2によって検出される物理的パラメータの測定(ステップ102)に基づいて行われる。例えば、センサ2は、エレベータ1のドア10上で機能的にアクティブにされる。
【0050】
センサ2を種々のタイプとでき、またその数も任意の数とすることができる。
【0051】
例えば、ドア速度(スピード)センサ、ドア位置センサ、マイクロホンとすることができる。
【0052】
好ましくは、測定は、多数の(例えば20,000回の)ドアサイクルにわたって収集される。
【0053】
収集の周期は、センサのタイプに応じて変えることができる。
【0054】
特に、センサのうちのいくつかは、静的な値を、つまり一サイクルの間変化しない値を検出する。例えば、静的な値は、幅、材料、モータのタイプ等といったドアの特性に関する。
【0055】
他のセンサは、周期的な変化がある値を検出する。つまり、周期的な変化がある値とは、規則的に変化する値であり、温度、摩擦、振動等とできる。
【0056】
他のセンサは、音響標本(サンプル)を検出する。音響サンプルは、移動するドアの音、リレーのクリック音等に関するサンプルとできる。
【0057】
他のセンサは、一ドアサイクル内でより短い周期で変化する値を検出し、これにより時系列を生成する。
【0058】
各センサによって検出されるすべての値は、少なくとも一の時系列を含むデータベースを形成する。
【0059】
例えば、学習させる(トレーニング)方法10に用いられるデータセットは、
静的な値の一覧(リスト)と、
周期的な(サイクリック)値のリストと、
音響サンプルのリストと、
時系列の行列(マトリックス)と、
を含む。
【0060】
そして、方法100は、
データセットから特徴を抽出することによって機械学習模型(モデル)のための第一入力層を取得する工程(ステップ103)と、
データセットから特徴を抽出することによって機械学習模型(モデル)のための第二入力層を取得する工程(ステップ104)と、
を含む。
【0061】
特徴すなわちラベルは、モデルが認識するよう学習する設置上の欠陥に応じて選択される。
【0062】
特に、第一入力層を生成するために抽出される特徴は、データセットの時系列に関する。
【0063】
第二入力層を生成するために抽出される特徴は、他の領域のデータセット(静的な値、周期的な値、音響サンプル)に関する。
【0064】
音響サンプルに関して、特徴抽出は、音響サンプルを音響スペクトログラムのような視覚的な特徴表現へと変換して実行される。
【0065】
音響サンプルから特徴を抽出するための第一のアプローチは、像(イメージ)から潜在的な特徴ベクトルを、像自体を構築することによって、学習する自動エンコーダを用いることである(教師なし学習)。
【0066】
第二のアプローチは、畳み込みニューラルネットワークを通じて収集したラベルでイメージを分類し、最後の隠れ層の一つを固定して、両方のモデルで分類するためのさらなる特徴ベクトルとして機能させることである。両方のモデルに関して、これらの特徴は連結(コンカチネーション)ステップにおいて追加される。
【0067】
そして、抽出された特徴は、同じレベルにある二つの異なる分岐に続く機械学習モデルに供給される。
【0068】
実際には、機械学習モデルは、並列分岐に沿った
第一モデル、すなわちセット・ファンクション・モデルと、
第二モデル、すなわちフーリエ変換モデルと、
の二つのモデルによって構成される。
【0069】
第一入力層がセット・ファンクション・モデルに供給される(ステップ105)。
【0070】
第二入力層がフーリエ変換モデルに供給される(ステップ106)。
【0071】
第一モデルに関しては、すなわちセット・ファンクション・モデルに関しては、第一入力層は、正規化ステップを含む前処理後に取得される。
【0072】
時系列(タイム・シリーズ)のためのセット・ファンクション(Set Functions for Time Series)(短く「SeFT」)分類は、時系列分類および回帰のための最新技術の方法である。
【0073】
この技術は、集合(セット)としての生の(正規化された)時系列に作用して、時系列ごとに1度生じる追加的な特徴を扱うことができる。
【0074】
原理的には、時間情報は位置符号化(ポジショナル・エンコーディング)を介して符号化(エンコード)され、そして(複数の場合もありうる)測定の加重平均が計算される。加重(ウェイト)は、注意(アテンション(Attention))機構を介して学習される。
【0075】
これらのステップの後、時系列を低次元で記述する固定サイズのベクトルを得る。
【0076】
このベクトルは、他の静的な特徴ベクトルと、周期的な特徴ベクトルと、場合によっては音響特徴ベクトルと、連結されて、ニューラルネットワークのような分類器(クラシファイヤ)/回帰器(リグレッサー)への入力を構成する。
【0077】
さらに認識しておくべきものは、有界回帰目標(bounded regression targets)をバイナリ目標と同様に扱うよう設計される目的関数である。この趣旨を満たすために、我々は、二進(バイナリ)値を{0,1}とし、回帰値を[-100%,+100%]から[-1,1]へと正規化する。
【0078】
SeFTトレーニングは、二進交差(バイナリ・クロス)エントロピー(binary cross-entropy)を適用することによって実行される。
【0079】
トレーニング時間は、トレーニングのためにおよそ20,000回のドアサイクルを用いるとして、約1日である。
【0080】
ここで提案する方法100において適用されるセット・ファンクションの概略図を
図2に示す。
【0081】
フーリエ変換モデルである第二モデルに関して、第二入力層は、均等にサンプリングされた時系列を得るために値を補間する工程と、信号を位相(フェーズ)図に変換する工程と、クラシファイヤのための静的な特徴を正規化する工程と、を含む前処理の後に、取得される。
【0082】
フーリエ変換は、時系列信号をその各周波数成分に変換する。このために、ドア速度-ドア位置フェーズ図が生成され、フーリエ変換において用いられる正弦波(シヌソイド)状の曲線を形成するように変えられる。
【0083】
センサ毎に、最大係数に対応する周波数およびその係数が2要素ベクトルとして抽出される。これらのベクトルおよび他の周期的特徴はすべて連結され、これにより、フーリエ変換モデルに供給される特徴列(カラム)を形成する。
【0084】
好ましくは、速度および性能が得られるよう設計された、勾配ブースティングによる決定木(デシジョンツリー)を実現するいわゆる「XGBoost」が用いられる。複数のXGBoostクラシファイヤを分離して実現する方法が用いられる場合、ヒンジ損失がバイナリ分類の損失関数として用いられ、二乗損失が回帰の損失関数として用いられる。
【0085】
不規則にサンプリングされた時系列Xが補間され、これにより、p個の均一に間を空けた値が得られる。
【0086】
フーリエ変換トレーニングは、分類目標のためのヒンジ損失を適用することによって実行される。
【0087】
トレーニング時間は、トレーニングのためにおよそ20,000回のドアサイクルを用いるとして、約3分である。
【0088】
ここで提案する方法100において適用されるFFTモデルの概略図を
図3に示す。
【0089】
図5を参照して、符号200は、エレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するための方法を示す。
図5のフロー図に示す方法200は、
エレベータに配置される複数のセンサを用いて複数の物理的パラメータを検出する工程(ステップ201)と、
検出された物理的パラメータから第一特徴抽出および第二特徴抽出を実行する工程(ステップ202)と、
第一の抽出された特徴および第二の抽出された特徴を、設置上の欠陥を検出するようすでに学習(トレーニング)された機械学習モデルに供給する工程(ステップ203)と、
を含む。
【0090】
図1を参照して、符号300は、複数のセンサ2と、第一特徴抽出ユニット3と、第二特徴抽出ユニット4と、機械学習モデルMLと、を備えるエレベータ1における特にエレベータドア10における設置上の欠陥を検出するためのシステムを示す。
【0091】
複数のセンサ2は、エレベータ1に配置されるとともに物理的パラメータを検出するよう構成される。
【0092】
第一特徴抽出ユニット3および第二特徴抽出ユニット4は、検出された物理的パラメータから特徴を抽出するよう構成される。
【0093】
機械学習モデルMLは、第一特徴抽出ユニット3および第二特徴抽出ユニット4から入力される抽出された特徴の受信に応じて設置上の欠陥を検出するよう構成されるセット・ファンクション・モデルSFとフーリエ変換モデルFTとの組み合わせで構成される。機械学習モデルMLは、上述した方法で学習された機械学習モデルである。
【0094】
本発明の一の面では、検出された物理的パラメータを、第一特徴抽出ユニット3および第二特徴抽出ユニット4に供給する前に、前処理することができる。
【0095】
本発明の一の面では、第一特徴抽出ユニット3および第二特徴抽出ユニット4の出力を、機械学習モデルMLに供給する前に、処理することができる。
【0096】
本発明にかかるエレベータにおける特にエレベータドアにおける設置上の欠陥を検出するよう機械学習モデルに学習させるためのコンピュータによって実行される方法、設置上の欠陥を分類するためのコンピュータによって実行される方法、およびそのシステムの特徴および利点は、利点と同様に、明らかであろう。
【0097】
特に、本願の方法は、特にエレベータドアに対する設置過程における品質を、ドアの近傍に直接設置されるセンサから回収される膨大なデータ量と、選択した特定の機械学習モデルとによって、向上することができる。
【0098】
これにより、設置時間および経費を低減でき、保守作業の計画を立てることができるとともに監視を行うことができ、また、品質を確認するための時間を低減できる。
【0099】
本願発明をエレベータの他の構成部品にも適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【文献】米国特許第10,196,236号
【文献】米国特許出願公開第2020/0062542号