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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】回転工具及び切削加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B23C5/10 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022576734
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022001934
(87)【国際公開番号】W WO2022158514
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2021008127
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5626444(US,A)
【文献】米国特許第6234725(US,B1)
【文献】国際公開第2018/216764(WO,A1)
【文献】特開平4-372305(JP,A)
【文献】特表2015-510845(JP,A)
【文献】特表2019-508270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/93204(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/10
B23D 77/00 - 77/14
B23B 51/00 - 51/14
B26D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端から第2端に向かって回転軸に沿って延びた円柱形状であって、
外周面と、
前記第1端から前記第2端に向かって前記回転軸の周りに螺旋状に延び、第1ねじれ角を有する第1溝と、
前記第1端から前記第2端に向かって前記回転軸の周りに螺旋状に延び、第2ねじれ角を有する第2溝と、
前記外周面及び前記第1溝の交わりに位置する第1刃と、
前記外周面及び前記第2溝の交わりに位置する第2刃と、を有し、
前記第1ねじれ角が正の値であって、且つ、前記第2ねじれ角が負の値であって、
前記第1溝が前記第2溝と交差し、且つ、前記第1刃が前記第2刃に接続され、
前記外周面は、
前記第1刃及び前記第2刃に沿って延びた第1外周面と、
前記第1外周面に対して前記回転軸の回転方向の後方に位置する第2外周面と、を有し、
前記第1外周面は、
前記第1刃に沿って延びた第1逃げ面と、
前記第2刃に沿って延びた第2逃げ面と、
前記第1逃げ面及び前記第2逃げ面が接続される部分である接続部に位置し、且つ、前記第2外周面に対して窪んだ凹部と、を有し、
前記第1逃げ面は、前記第2逃げ面に近づくにしたがって前記第1刃に直交する方向の幅が大きくなる第1拡大部を有し、
前記第1刃に沿う方向において、前記接続部側を内側、前記内側とは反対側を外側としたとき、前記第1拡大部における前記第2逃げ面から遠い側の端部は、前記凹部の端部よりも外側に位置している、回転工具。
【請求項2】
前記第1拡大部は、前記第2逃げ面と隣り合う、請求項1に記載の回転工具。
【請求項3】
前記第2逃げ面は、前記第1逃げ面に近づくにしたがって前記第2刃に直交する方向の幅が大きくなる第2拡大部を有する、請求項1又は2に記載の回転工具。
【請求項4】
前記第2拡大部は、前記第1逃げ面と隣り合う、請求項3に記載の回転工具。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載の回転工具を回転させる工程と、
回転している前記回転工具を被削材に接触させる工程と、
前記回転工具を前記被削材から離す工程と、を有する切削加工物の製造方法。
【請求項6】
第1端から第2端に向かって回転軸に沿って延びた円柱形状であって、
外周面と、
前記第1端から前記第2端に向かって前記回転軸の周りに螺旋状に延び、第1ねじれ角を有する第1溝と、
前記第1端から前記第2端に向かって前記回転軸の周りに螺旋状に延び、第2ねじれ角を有する第2溝と、
前記外周面及び前記第1溝の交わりに位置する第1刃と、
前記外周面及び前記第2溝の交わりに位置する第2刃と、を有し、
前記第1ねじれ角が正の値であって、且つ、前記第2ねじれ角が負の値であって、
前記第1溝が前記第2溝と交差し、且つ、前記第1刃が前記第2刃に接続され、
前記外周面は、
前記第1刃及び前記第2刃に沿って延びた第1外周面と、
前記第1外周面に対して前記回転軸の回転方向の後方に位置する第2外周面と、を有し、
前記第1外周面は、
前記第1刃に沿って延びた第1逃げ面と、
前記第2刃に沿って延びた第2逃げ面と、
前記第1逃げ面及び前記第2逃げ面が接続される部分である接続部に位置し、且つ、前記第2外周面に対して突出した凸部と、を有し、
前記第1逃げ面は、前記第2逃げ面に近づくにしたがって前記第1刃に直交する方向の幅が大きくなる第1拡大部を有する、回転工具。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年1月21日に出願された日本国特許出願2021-008127号の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、被削材の転削加工に用いられる回転工具及び切削加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属などの被削材を転削加工する際に用いられる回転工具として、例えば特開平1-321108号公報(特許文献1)及び特開2013-022657号公報(特許文献2)に記載の回転工具が知られている。特許文献1に記載の回転工具は、外周面、切屑排出溝及び切刃を有する。外周面は、マージン及びクリアランスを有する。特許文献2に記載の回転工具は、順ねじれの第1溝、逆ねじれの第2溝、順ねじれの第1刃、逆ねじれの第2刃を有する。
【0004】
回転工具が順ねじれの切刃及び逆ねじれの切刃を有し、これらの切刃が接続される場合には、この接続される部分の付近に大きな切削負荷が加わる恐れがある。このように、回転工具が順ねじれの切刃及び逆ねじれの切刃を有し、これらの切刃が接続される場合であっても、回転工具の耐久性が高いことが求められている。
【発明の概要】
【0005】
本開示における限定されない一例の回転工具は、第1端から第2端に向かって回転軸に沿って延びた円柱形状であって、外周面と、第1溝と、第2溝と、第1刃と、第2刃と、を有する。第1溝は、第1端から第2端に向かって回転軸の周りに螺旋状に延び、第1ねじれ角を有する。第2溝は、第1端から第2端に向かって回転軸の周りに螺旋状に延び、第2ねじれ角を有する。第1刃は、外周面及び第1溝の交わりに位置する。第2刃は、外周面及び第2溝の交わりに位置する。
【0006】
第1ねじれ角が正の値であって、且つ、第2ねじれ角が負の値である。第1溝が第2溝と交差し、且つ、第1刃が第2刃に接続される。外周面は、第1外周面と、第2外周面と、を有する。第1外周面は、第1刃及び第2刃に沿って延びる。第2外周面は、第1外周面に対して回転軸の回転方向の後方に位置する。第1外周面は、第1刃に沿って延びた第1逃げ面と、第2刃に沿って延びた第2逃げ面と、を有する。第1逃げ面は、第2逃げ面に近づくにしたがって幅が大きくなる第1拡大部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の限定されない一例の回転工具を示す斜視図である。
図2図1に示す領域A1を拡大した拡大図である。
図3図1に示す回転工具を第1端に向かって見た図である。
図4図1に示す回転工具の側面図である。
図5図4に示す領域A2を拡大した拡大図である。
図6図5に示す領域A3を拡大した拡大図である。
図7図6に示すインサートにおけるVII-VII断面の拡大図である。
図8】本開示の限定されない一例の回転工具における領域A3に相当する領域を拡大した拡大図である。
図9】本開示の限定されない一例の回転工具における領域A3に相当する領域を拡大した拡大図である。
図10】本開示の限定されない一例の回転工具における領域A3に相当する領域を拡大した拡大図である。
図11】限定されない一例における切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。
図12】限定されない一例における切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。
図13】限定されない一例における切削加工物の製造方法の一工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<回転工具>
以下、本開示の限定されない複数の実施形態の回転工具1について、図面を用いてそれぞれ詳細に説明する。以下で参照する各図において、説明の便宜上、各々の限定されない実施形態を説明する上で必要な主要部材のみが簡略化して示されてもよい。したがって、回転工具1は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各部材の寸法比率などを忠実に表したものに限定されない。
【0009】
回転工具1は、エンドミル又はフライス工具であってもよい。また、回転工具1は、切削部分(切削部5)及び把持部分(シャンク部3)が別体で形成されたインサート式であってもよく、また、切削部分及び把持部分が一体的に形成されたソリッド式であってもよい。そのため、図1図7に示す限定されない一例のように、回転工具1がソリッドエンドミルであってもよい。
【0010】
図1に示す限定されない一例のように、回転工具1は、回転軸O1に沿って第1端1aから第2端1bにかけて延びてもよい。より具体的には、回転工具1は、回転軸O1に沿って第1端1aから第2端1bにかけて延びた円柱形状でもよい。一般的には、第1端1aが「先端」と呼ばれ、第2端1bが「後端」と呼ばれ得る。また、回転工具1は、回転軸O1の周りで回転可能でもよい。図1などにおける矢印Y1は、回転軸O1の回転方向を示してもよい。
【0011】
回転工具1は、シャンク部3及び切削部5を有してもよい。シャンク部3は、工作機械の回転するスピンドルに把持されることが可能な部位であってもよい。シャンク部3は、工作機械におけるスピンドルの形状に応じて設計されてもよい。
【0012】
切削部5は、シャンク部3に対して第1端1aの側に位置してもよい。切削部5は、被削材に接触することが可能であり、被削材の切削加工(例えば、肩加工)において主要な役割を果たすことが可能な部位である。
【0013】
切削部5の外径Dは、特定の値に限定されない。例えば、外径Dの最大値は、4~50mmに設定されてもよい。また、回転軸O1に沿った方向における切削部5の長さLは、L=1.5D~12Dに設定されてもよい。
【0014】
切削部5は、外周面7、第1溝9、第2溝11及び切刃13を有してもよい。言い換えれば、回転工具1は、外周面7、第1溝9、第2溝11及び切刃13を有してもよい。切刃13は、第1刃13a及び第2刃13bを有してもよい。また、回転工具1は、第1端面15及び第2端面17をさらに有してもよい。第1端面15は、回転工具1における第1端1aに位置する平らな面であってもよい。第2端面17は、回転工具1における第2端1bに位置する平らな面であってもよい。
【0015】
外周面7は、円柱形状の回転工具1における、第1端1aの側から第2端1bの側に向かって延びてもよい。図1に示す限定されない一例のように、外周面7が、第1端面15から第2端面17にかけて延びてもよい。
【0016】
第1溝9は、第1端1aから第2端1bに向かって回転軸O1の周りに螺旋状に延びてもよい。第1溝9は、いわゆる切屑排出溝として機能してもよい。螺旋状に延びる切屑排出溝の回転軸O1に対する傾斜角が、一般的にねじれ角と呼ばれる。螺旋状に延びる第1溝9の回転軸O1に対する傾斜角が、第1ねじれ角θ1であってもよい。
【0017】
図5において便宜的に第1ねじれ角θ1を図示しているが、第1ねじれ角θ1は以下の手順により評価してもよい。まず、第1溝9と、外周面7のうち回転軸O1の回転方向Y1の後方において第1溝9に隣り合う部分と、が交わる稜線(第1稜線)を特定する。回転工具1を側面視した場合に、上記の第1稜線及び回転軸O1が交わる角度を測定する。この角度を第1ねじれ角θ1と評価してもよい。
【0018】
第1稜線が第1刃13aであってもよい。すなわち、第1刃13aは、外周面7及び第1溝9の交わりに位置してもよい。切削加工物を製造するための被削材の切削加工において、第1刃13aは、被削材を切削するために用いることが可能である。なお、第1刃13aは、第1稜線の全体に位置してもよく、また、第1稜線の一部のみに位置してもよい。
【0019】
第1稜線が第1刃13aである場合に、この第1稜線は厳密な意味での2つの面が交わる稜線でなくてもよい。第1刃13aの耐久性を向上させる観点から、外周面7及び第1溝9の交わりには、いわゆるホーニング面が形成されてもよい。このホーニング面を第1ホーニング面としてもよい。
【0020】
第1ホーニング面が小さく、巨視的には第1ホーニング面を線と見做せる場合には、外周面7及び第1溝9の交わりを第1稜線として評価してもよい。また、第1ホーニング面が大きく、巨視的にも第1ホーニング面を線と見做せない場合には、第1ホーニング面及び外周面7の境界を第1稜線と見做してもよい。
【0021】
第2溝11は、第1端1aから第2端1bに向かって回転軸O1の周りに螺旋状に延びてもよい。第2溝11は、第1溝9と同様に切屑排出溝として機能してもよい。螺旋状に延びる第2溝11の回転軸O1に対する傾斜角が、第2ねじれ角θ2であってもよい。
【0022】
図5において便宜的に第2ねじれ角θ2を図示しているが、第2ねじれ角θ2は以下の手順により評価してもよい。まず、第2溝11と、外周面7のうち回転軸O1の回転方向Y1の後方において第2溝11に隣り合う部分と、が交わる稜線(第2稜線)を特定する。回転工具1を側面視した場合に、上記の第2稜線及び回転軸O1が交わる角度を測定する。この角度を第2ねじれ角θ2と評価してもよい。
【0023】
第2稜線が第2刃13bであってもよい。すなわち、第2刃13bは、外周面7及び第2溝11の交わりに位置してもよい。被削材の切削加工において、第2刃13bは、被削材を切削するために用いることが可能である。なお、第2刃13bは、第2稜線の全体に位置してもよく、また、第2稜線の一部のみに位置してもよい。
【0024】
第2稜線が第2刃13bである場合に、この第2稜線は厳密な意味での2つの面が交わる稜線でなくてもよい。第2刃13bの耐久性を向上させる観点から、第1刃13aと同様に、外周面7及び第2溝11の交わりには、いわゆるホーニング面が形成されてもよい。このホーニング面を第2ホーニング面としてもよい。
【0025】
第2ホーニング面が小さく、巨視的には第2ホーニング面を線と見做せる場合には、外周面7及び第2溝11の交わりを第2稜線として評価してもよい。また、第2ホーニング面が大きく、巨視的にも第2ホーニング面を線と見做せない場合には、第2ホーニング面及び外周面7の境界を第2稜線と見做してもよい。
【0026】
回転工具1は、1つのみの第1溝9を有してもよく、また、図に示す限定されない一例のように、複数の第1溝9を有してもよい。回転工具1が複数の第1溝9を有する場合に、回転工具1は、複数の第1刃13aを有してもよい。また、回転工具1は、1つのみの第2溝11を有してもよく、また、図に示す限定されない一例のように、複数の第2溝11を有してもよい。回転工具1が複数の第2溝11を有する場合に、回転工具1は、複数の第2刃13bを有してもよい。
【0027】
図4に示す限定されない一例のように、第1溝9が、第2端1bに近づくにしたがって回転軸O1の回転方向Y1の後方に向かうようにねじれてもよい。また、第2溝11が、第1溝9とは逆に第2端1bに近づくにしたがって回転軸O1の回転方向Y1の前方に向かうようにねじれてもよい。すなわち、第1ねじれ角θ1が正の値であって、且つ、第2ねじれ角θ2が負の値であってもよい。言い換えれば、第1刃13aが順ねじれの刃であって、且つ、第2刃13bが逆ねじれの刃であってもよい。
【0028】
さらに、第1溝9が第2溝11と交差し、且つ、第1刃13aが第2刃13bに接続されてもよい。回転工具1が、このような第1溝9、第2溝11、第1刃13a及び第2刃13bを有する場合には、良好な切削加工を行うことが可能となる。例えば、被削材が、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)のような繊維成分を含有する場合であっても、良好な切削性能が発揮され易い。
【0029】
外周面7は、第1外周面19及び第2外周面21を有してもよい。第1外周面19は、第1刃13a及び第2刃13bに沿って延びてもよい。第2外周面21は、第1外周面19に対して回転軸O1の回転方向Y1の後方に位置してもよい。第1外周面19及び第2外周面21は、いわゆる逃げ面として機能してもよい。
【0030】
第1外周面19及び第2外周面21は、それぞれ滑らかな面であってもよい。具体的には、第1外周面19及び第2外周面21は、それぞれ平らな面であってもよく、また、曲面であってもよい。第1外周面19及び第2外周面21がそれぞれ滑らかであってこれら2つの面の間に稜線が形成される場合には、第1外周面19及び第2外周面21の境界が容易に特定され得る。
【0031】
第1外周面19は、回転軸O1からの距離が一定の曲面であってもよい。第2外周面21は、第1外周面19に対して窪んでいてもよい。言い換えれば、第2外周面21は、第1外周面19よりも回転軸O1の近くに位置してもよい。
【0032】
第1外周面19は、第1逃げ面23及び第2逃げ面25を有してもよい。第1逃げ面23は、第1刃13aに沿って延びてもよい。言い換えれば、第1逃げ面23は、第1刃13aから回転軸O1の回転方向Y1の後方に向かって延びてもよい。第2逃げ面25は、第2刃13bに沿って延びてもよい。言い換えれば、第2逃げ面25は、第2刃13bから回転軸O1の回転方向Y1の後方に向かって延びてもよい。
【0033】
第1逃げ面23は、第1拡大部27を有してもよい。第1拡大部27は、第1逃げ面23の少なくとも一部であってもよく、また、第2逃げ面25に近づくにしたがって第1刃13aに直交する方向の幅W1が大きくなる部位であってもよい。第1逃げ面23が第1拡大部27を有する場合には、第1刃13a及び第2刃13bが接続される部分の近くにおける第1外周面19の幅を大きく確保し易い。そのため、切刃13の耐久性が向上し易い。したがって、回転工具1は、耐久性が高い。
【0034】
なお、図8に示す限定されない一例のように、第1逃げ面23の全体が第1拡大部27に相当してもよく、また、図5に示す限定されない一例のように、第1逃げ面23の一部のみが第1拡大部27に相当してもよい。第1逃げ面23の一部のみが第1拡大部27に相当する場合には、第1逃げ面23において、過度に幅が狭い領域が生じにくく、第1刃13a全体としての耐久性が高い。
【0035】
第1逃げ面23が第1拡大部27を有する場合において、第1拡大部27のうち第2逃げ面25に近い側の端部における第1刃13aに直交する方向の幅W1aと、第1拡大部27のうち第2逃げ面25から遠い側の端部における第1刃13aに直交する方向の幅W1bとの差は特定の値に限定されない。製造工程上不可避なばらつきを避ける観点で、例えば、これらの幅W1a、W1bの比率(W1a/W1b)が、1.1~2であってもよい。
【0036】
第1逃げ面23の一部のみが第1拡大部27に相当する場合において、第1拡大部27は、第1逃げ面23における第2逃げ面25から比較的離れた側に位置してもよく、また、第1逃げ面23における第2逃げ面25に比較的近い側に位置してもよい。第1拡大部27が第1逃げ面23における第2逃げ面25に比較的近い側に位置する場合には、第1刃13a及び第2刃13bが接続される部分の近くにおける第1逃げ面23の幅が局所的に大きくなり易い。そのため、第1逃げ面23と被削材の接触が抑えられ易い。
【0037】
第1拡大部27が第1逃げ面23における第2逃げ面25に比較的近い側に位置する場合において、第1拡大部27は第2逃げ面25に接続されてもよい。言い換えれば、第1拡大部27は、第2逃げ面25と隣り合ってもよい。
【0038】
第1逃げ面23が第1拡大部27を有する場合と同様の理由から、第2逃げ面25は第2拡大部29を有してもよい。第2拡大部29は、第2逃げ面25の少なくとも一部であってもよく、また、第1逃げ面23に近づくにしたがって第2刃13bに直交する方向の幅W2が大きくなる部位であってもよい。第2逃げ面25が第2拡大部29を有する場合には、第1刃13a及び第2刃13bが接続される部分の近くにおける第1外周面19の幅を大きく確保し易い。そのため、切刃13の耐久性がさらに向上し易い。
【0039】
なお、図8に示す限定されない一例のように、第2逃げ面25の全体が第2拡大部29に相当してもよく、また、図5に示す限定されない一例のように、第2逃げ面25の一部のみが第2拡大部29に相当してもよい。第2逃げ面25の一部のみが第2拡大部29に相当する場合には、第2逃げ面25において、過度に幅が狭い領域が生じにくく、第2刃13bの全体としての耐久性が高い。
【0040】
第2逃げ面25が第2拡大部29を有する場合において、第2拡大部29のうち第1逃げ面23に近い側の端部における第2刃13bに直交する方向の幅W2aと、第2拡大部29のうち第1逃げ面23から遠い側の端部における第2刃13bに直交する方向の幅W2bとの差は特定の値に限定されない。製造工程上不可避なばらつきを避ける観点で、例えば、これらの幅W2a、W2bの比率(W2a/W2b)が、1.1~2であってもよい。
【0041】
第2逃げ面25の一部のみが第2拡大部29に相当する場合において、第2拡大部29は、第2逃げ面25における第1逃げ面23から比較的離れた側に位置してもよく、また、第2逃げ面25における第1逃げ面23に比較的近い側に位置してもよい。第2拡大部29が第2逃げ面25における第1逃げ面23に比較的近い側に位置する場合には、第1刃13a及び第2刃13bが接続される部分の近くにおける第2逃げ面25の幅が局所的に大きくなり易い。そのため、第2逃げ面25と被削材の接触が抑えられ易い。
【0042】
第2拡大部29が第2逃げ面25における第1逃げ面23に比較的近い側に位置する場合において、第2拡大部29は第1逃げ面23に接続されてもよい。言い換えれば、第2拡大部29は、第1逃げ面23と隣り合ってもよい。
【0043】
第1外周面19は、凸部31又は凹部33をさらに有してもよい。
【0044】
凸部31は、図9に示す限定されない一例のように、第1外周面19における第1逃げ面23及び第2逃げ面25が接続される部分に位置し、且つ、第2外周面21に対して突出してもよい。第1外周面19が凸部31を有する場合には、第1刃13a及び第2刃13bが接続される部分の近くにおける、第1逃げ面23及び第2逃げ面25によって構成される逃げ面の幅が広くなり易い。そのため、切刃13の耐久性が高い。
【0045】
凹部33は、図10に示す限定されない一例のように、第1外周面19における第1逃げ面23及び第2逃げ面25が接続される部分に位置し、且つ、第2外周面21に対して窪んでもよい。第1外周面19が凹部33を有する場合には、第1刃13a及び第2刃13bが接続される部分に加わる切削負荷が、第1逃げ面23及び第2逃げ面25に分散され易い。そのため、第1外周面19が凹部33を有する場合もまた、第1外周面19が凸部31を有する場合と同様に切刃13の耐久性が高い。
【0046】
さらに、第1外周面19が凹部33を有する場合には、第1外周面19が凸部31を有する場合と比較して、被削材の加工面が傷つく恐れが小さくなり得る。第1外周面19が凹部33を有する場合には、第1外周面19の面積を小さくし易く、また、第2外周面21の面積を大きくし易い。そのため、例えば第2外周面21が第1外周面19に対して窪んでいる場合には、外周面7のうち被削材の加工面に接触する面が小さくなり易い。
【0047】
第1ねじれ角θ1及び第2ねじれ角θ2は、特定の値に限定されない。例えば、第1ねじれ角θ1は、20~60°程度に設定されてもよい。また、第2ねじれ角θ2は、20~60°程度に設定されてもよい。θ1及びθ2の値はほぼ同じであってもよく、具体的には、θ1及びθ2の値の違いは、5°以下であってもよい。
【0048】
回転工具1の材質としては、例えば、超硬合金及びサーメットなどが挙げられ得る。超硬合金の組成としては、例えば、WC-Co、WC-TiC-Co及びWC-TiC-TaC-Coが挙げられ得る。ここで、WC、TiC及びTaCは硬質粒子であってもよく、また、Coは結合相であってもよい。
【0049】
また、サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料であってもよい。具体的には、サーメットとして、炭化チタン(TiC)又は窒化チタン(TiN)を主成分としたチタン化合物が挙げられ得る。ただし、上記の材質は限定されない一例であって、回転工具1の材質としては、これらに限定されない。
【0050】
回転工具1の表面は、化学蒸着(CVD)法、又は、物理蒸着(PVD)法を用いて被膜でコーティングされてもよい。被膜の組成としては、例えば、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)及びアルミナ(Al23)などが挙げられ得る。
【0051】
<切削加工物の製造方法>
次に、限定されない実施形態の切削加工物101の製造方法について、図11図13を参照して詳細に説明する。なお、図11図13に示す限定されない一例においては、図1に示す回転工具1が用いられるが、このような形態に限定されない。また、図11図13に示す限定されない一例においては、切削加工として肩加工を示すが、切削加工は、このような形態に限定されない。
【0052】
切削加工物101は、被削材103を切削加工することによって作製されてもよい。切削加工物101の製造方法は、以下の(1)~(3)の工程を備えてもよい。
【0053】
(1)回転軸O1を中心に矢印Y1の方向に回転工具1を回転させ、被削材103に向かってY2方向に回転工具1を近づける工程(図11参照)。
【0054】
(1)の工程は、例えば、回転工具1が取り付けられた工作機械のテーブルの上に被削材103を固定し、回転工具1を回転させた状態で被削材103に近づけることにより行ってもよい。なお、(1)の工程では、被削材103と回転工具1とは相対的に近づけばよく、例えば、被削材103を回転工具1に近づけてもよい。
【0055】
(2)回転工具1をさらに被削材103に近づけることによって、回転している回転工具1を、被削材103の表面の所望の位置に接触させて、被削材103を切削する工程(図12参照)。
【0056】
(2)の工程では、回転工具1における切削部5の一部が被削材に接触するように切削加工が行われてもよい。
【0057】
(3)回転工具1を被削材103からY3方向に離す工程(図13参照)。
【0058】
(3)の工程においても、上記の(1)の工程と同様に、被削材103と回転工具1とは相対的に離せばよく、例えば、被削材103を回転工具1から離してもよい。なお、図12及び図13においては、視覚的な理解を容易にするため、加工面にハッチングが施されている。
【0059】
以上のような工程を経る場合には、優れた加工性を発揮することが可能となる。
【0060】
なお、以上に示したような被削材103の切削加工を複数回行う場合には、回転工具1を回転させた状態を保持しつつ、被削材103の異なる箇所に回転工具1の切刃13を接触させる工程を繰り返してもよい。
【0061】
被削材103の材質としては、例えば、アルミニウム、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄及び非鉄金属などが挙げられ得る。
【符号の説明】
【0062】
1・・・回転工具
1a・・第1端
1b・・第2端
3・・・シャンク部
5・・・切削部
7・・・外周面
9・・・第1溝
11・・・第2溝
13・・・切刃
13a・・第1刃
13b・・第2刃
15・・・第1端面
17・・・第2端面
19・・・第1外周面
21・・・第2外周面
23・・・第1逃げ面
25・・・第2逃げ面
27・・・第1拡大部
29・・・第2拡大部
31・・・凸部
33・・・凹部
101・・・切削加工物
103・・・被削材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13