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  • 特許-制御装置、熱源システム及び制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】制御装置、熱源システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/48 20180101AFI20240920BHJP
   F24F 11/47 20180101ALI20240920BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20240920BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240920BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20240920BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20240920BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240920BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240920BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20240920BHJP
   F24F 140/60 20180101ALN20240920BHJP
【FI】
F24F11/48
F24F11/47
F24F11/65
F24F11/64
F24F11/61
F24F11/74
F25B1/00 381D
F25B1/00 383
F24F110:10
F24F110:12
F24F140:60
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023022435
(22)【出願日】2023-02-16
(65)【公開番号】P2024116687
(43)【公開日】2024-08-28
【審査請求日】2024-06-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 尚希
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆博
(72)【発明者】
【氏名】森川 純次
(72)【発明者】
【氏名】新井 健太
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-134145(JP,A)
【文献】特開2020-197309(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098552(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0088245(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機によって温度を調節する対象の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付ける設定受付部と、
空調対象空間の温度と、外気温度と、前記設定温度と、前記設定時刻又は前記設定時刻が含まれる時間帯と、空調対象の月と、前記空調機の室内機ファンの回転数と、前記空調機の圧縮機の回転数と、前記空調機の室外機ファンの回転数と、に基づいて、前記設定温度の達成に必要な運転時間を出力する予測モデルと、
前記空調機が備える前記室内機ファンを所定の回転数で運転した場合に前記設定温度を達成するために必要な運転時間を、前記予測モデルを用いて、複数の前記所定の回転数について算出し、算出した前記回転数ごとの前記運転時間に基づいて、複数の前記所定の回転数の中から、前記設定時刻までに前記設定温度の達成が可能な前記回転数を選択する算出部と、
選択した前記回転数で前記室内機ファンを回転させつつ、前記空調機を運転する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記空調機の運転開始後に、前記設定時刻までの残り時間を計算し、そのまま選択した前記回転数で前記室内機ファンを回転させつつ、前記空調機を運転した場合に前記設定時刻までに前記設定温度の達成が可能かどうかを判定し、前記達成が不可能な場合、前記達成が可能な前記回転数を新たに選択する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記設定温度の達成が可能な前記回転数の中から当該回転数で前記室内機ファンを回転させつつ、前記空調機を運転したときの消費電力量が最小となる前記回転数を選択する、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記設定温度の達成が可能な前記回転数の中から最も早く前記設定温度を達成する前記回転数、最も遅く前記設定温度を達成する前記回転数、前記設定時刻よりも所定時間前までに前記設定温度を達成することができる前記回転数、のうちの何れかを選択する、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記予測モデルは、前記空調対象空間の温度と、前記外気温度と、前記設定温度と、前記設定時刻又は前記設定時刻が含まれる時間帯と、前記空調対象の月と、前記室内機ファンの回転数と、前記圧縮機の回転数と、前記室外機ファンの回転数と、に基づいて、前記設定温度の達成に必要な前記運転時間に加え、前記消費電力量を出力するように構成され、
前記算出部は、前記予測モデルに基づいて、前記運転時間と前記消費電力量を算出する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
空調機と、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置と、
を備える熱源システム。
【請求項7】
空調機によって温度を調節する対象の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付けるステップと、
前記空調機が備える室内機ファンを所定の回転数で運転した場合に前記設定温度を達成するために必要な運転時間を、空調対象空間の温度と外気温度と前記設定温度と前記設定時刻又は前記設定時刻が含まれる時間帯と空調対象の月と前記室内機ファンの回転数と前記空調機の圧縮機の回転数と前記空調機の室外機ファンの回転数とに基づいて前記設定温度の達成に必要な運転時間を出力する予測モデルを用いて、複数の前記所定の回転数について算出し、算出した前記回転数ごとの前記運転時間に基づいて、複数の前記所定の回転数の中から、前記設定時刻までに前記設定温度の達成が可能な前記回転数を選択するステップと、
選択した前記回転数で前記室内機ファンを回転させつつ、前記空調機を運転するステップと、
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、熱源システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが指定する設定時刻よりも前に自動的に空調機の運転を開始し、設定時刻までに室温が設定温度となるように冷房運転を行う予冷モードと呼ばれる機能が提供されている(例えば、特許文献1)。この機能を利用すると、設定時刻にユーザの帰宅時刻を指定することで、帰宅時の自宅を所望の設定温度に冷房しておくことができる。予冷モードにおいて、設定温度を達成するために必要な空調時間は、室内機ファンの風量などの各種条件により変動する。従って、予冷モードの運転精度を向上するためにはファン回転数を考慮する必要がある。例えば、予冷モードで冷房運転を行う場合、風量設定を意図的に変更しない限りは、前回停止時の設定のままの風量で室内機ファンが運転されることが多く、前回終了時の風量の設定によっては、設定時刻までに設定温度を達成することができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-94505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファンの風量を考慮した運転を行うことにより、設定時刻までに設定温度を達成できるように制御する必要がある。
【0005】
上記課題を解決することができる制御装置、熱源システム及び制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、制御装置は、空調機によって温度を調節する対象の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付ける設定受付部と、空調対象空間の温度と、外気温度と、前記設定温度と、前記設定時刻又は前記設定時刻が含まれる時間帯と、空調対象の月と、前記空調機の室内機ファンの回転数と、前記空調機の圧縮機の回転数と、前記空調機の室外機ファンの回転数と、に基づいて、前記設定温度の達成に必要な運転時間を出力する予測モデルと、前記空調機が備える前記室内機ファンを所定の回転数で運転した場合に前記設定温度を達成するために必要な運転時間を、前記予測モデルを用いて、複数の前記所定の回転数について算出し、算出した前記回転数ごとの前記運転時間に基づいて、複数の前記所定の回転数の中から、前記設定時刻までに前記設定温度の達成が可能な前記回転数を選択する算出部と、選択した前記回転数で前記室内機ファンを回転させつつ、前記空調機を運転する制御部と、を備える。
【0007】
また、本開示の熱源システムは、熱源装置と、上記の制御装置と、を備える。
【0008】
本開示の一態様によれば、制御方法は、空調機によって温度を調節する対象の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付けるステップと、前記空調機が備える室内機ファンを所定の回転数で運転した場合に前記設定温度を達成するために必要な運転時間を、空調対象空間の温度と外気温度と前記設定温度と前記設定時刻又は前記設定時刻が含まれる時間帯と空調対象の月と前記室内機ファンの回転数と前記空調機の圧縮機の回転数と前記空調機の室外機ファンの回転数とに基づいて前記設定温度の達成に必要な運転時間を出力する予測モデルを用いて、複数の前記所定の回転数について算出し、算出した前記回転数ごとの前記運転時間に基づいて、複数の前記所定の回転数の中から、前記設定時刻までに前記設定温度の達成が可能な前記回転数を選択するステップと、選択した前記回転数で前記室内機ファンを回転させつつ、前記空調機を運転するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
上述の制御装置、熱源システム及び制御方法によれば、設定時刻までに設定温度を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における空調システムの一例を示す図である。
図2】実施形態における予測モデルの一例を示す図である。
図3】実施形態における空調システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
図4】実施形態における空調システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態によるファンの制御方法について図1図4を参照して説明する。本実施形態の制御方法は、空調機、給湯機、冷凍機などの各種熱源装置のファンの制御に適用することができるが、以下では一例として空調機に適用する場合を例に説明を行う。
【0012】
(空調システムの構成)
図1は、実施形態における空調システムの一例を示す図である。図1に示すように空調システム100は、空調機1と、サーバ20と、を含む。空調機1は、外気温度センサ2と、室内温度センサ3と、室内機ファン4と、圧縮機5と、室外機ファン6と、制御装置10と、を備える。外気温度センサ2および室内温度センサ3と制御装置10は接続されていて、制御装置10は外気温度センサ2、室内温度センサ3が計測した温度を取得する。室内機ファン4、圧縮機5及び室外機ファン6と制御装置10は接続されていて、制御装置10は、室内機ファン4、圧縮機5及び室外機ファン6を制御すると共にそれらの運転状態を検知する。例えば、制御装置10は、室内機ファン4、圧縮機5及び室外機ファン6の各々を所望の回転数で運転させることができ、またそれらの回転数を検知することができる。制御装置10と、サーバ20とは、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。
【0013】
(制御装置の構成)
制御装置10は、センサ情報取得部11と、設定受付部12と、到達時間算出部13と、制御部14と、通信部15と、を備える。
センサ情報取得部11は、外気温度センサ2が計測した外気温度、室内温度センサ3が計測した室内温度を取得する。
設定受付部12は、空調対象空間の設定温度と設定温度を達成すべき設定時刻の設定などを受け付ける。
【0014】
到達時間算出部13は、ある回転数Xで室内機ファン4を運転した場合に、空調対象空間の室内温度が設定温度に到達するまでの時間(到達時間と称する。)とそのときに必要となる消費電力量を算出する。例えば、到達時間算出部13は、後述する予測モデル作成部21が作成した予測モデルやテーブル、関数等と、空調機1にて計測された外気温度および室内温度等の運転条件に基づいて、到達時間を算出する。また、例えば、到達時間算出部13は、到達時間に、室内機ファン4の回転数に応じた消費電力、圧縮機5の回転数に応じた消費電力、室外機ファン6の回転数に応じた消費電力などを乗じた値を合計して、設定温度の達成に必要な消費電力量を算出する。また、到達時間算出部13は、算出した到達時間と消費電力量に基づいて、室内機ファン4の回転数を決定する。例えば、到達時間算出部13は、設定時刻までに設定温度を達成することができる回転数を選択し、選択した回転数で室内機ファン4を運転することを決定する。又は、到達時間算出部13は、設定時刻までに設定温度を達成することができる回転数の中から消費電力量が最小となる回転数を選択してもよいし、運転開始後に回転数を変更させてもよい。例えば、最初は高速で室内機ファン4を運転し、早めに設定温度を達成し、その後、低速に切り替え設定温度を維持する、最初に設定温度を達成することができる回転数の中から消費電力量が最小となる回転数を選択し、その後の状況に応じて必要であればより高速な回転数に切り替えるなどが考えられる。
【0015】
制御部14は、外気温度センサ2、室内温度センサ3が計測した温度等に基づいて、室内機ファン4、圧縮機5、室外機ファン6等を制御して、設定時刻に設定温度が達成できるよう空調を実行する。例えば、制御部14は、設定時刻よりも到達時間算出部13によって算出された到達時間だけ遡った時刻、あるいはその時刻よりも少し前に空調を開始し、設定時刻までに設定温度を達成できるよう冷房運転や暖房運転を行う。その際、制御部14は、到達時間算出部13が選択した回転数で室内機ファン4を運転する。
【0016】
通信部15は、サーバ20と通信を行う。例えば、通信部15は、予測モデルの作成のために必要となる学習用データとして、センサ情報取得部11が取得した外気温度や室内温度、制御部14で検知した室内機ファン4,圧縮機5及び室外機ファン6の回転数、設定受付部12が取得した設定時刻や設定温度をサーバ20へ送信する。また、通信部15は、サーバ20から到達時間の算出に使用する予測モデルやテーブル等、到達時間の算出に使用する天気の情報などを取得する。なお、制御装置10が、インターネット上のサーバから直接、天気の情報を取得してもよい。
【0017】
(サーバの構成)
サーバ20は、予測モデル作成部21と、通信部22と、を備える。
予測モデル作成部21は、室内機ファン4を有る回転数Xで運転したときに、空調対象空間の室内温度を設定温度にするために必要な到達時間を予測するための予測モデルを作成する。例えば、予測モデル作成部21は、空調機1の過去の運転データに基づいて、どのような室内温度、外気温度、室内機ファン4の回転数のときに、どれぐらいの時間で設定温度を達成できるかを解析して、(運転開始時の)室内温度、外気温度、設定温度、室内機ファン4の回転数、到達時間の関係を規定したテーブルや関数等を作成する。あるいは、予測モデル作成部21は、室内温度、外気温度、設定温度、設定時刻(又は空調を行う時間帯)、空調対象の月(1月、8月等、又は季節)、室内機ファン4の回転数、圧縮機5の回転数、室外機ファン6の回転数、天気などを説明変数、設定温度の達成に必要な到達時間を目的変数(目的変数には、到達時間に加えて、設定温度を達成するために必要となった消費電力量を追加してもよい。)とする予測モデルを機械学習等により作成する。
【0018】
通信部22は、制御装置10、インターネット上の各種サーバ等と通信を行う。例えば、通信部22は、制御装置10から室内温度、外気温度、設定温度、設定時刻、室内機ファン4,圧縮機5及び室外機ファン6の回転数などを受信し、これらの値を予測モデル作成部21へ出力する。また、通信部22は、天気の予報や実績を配信するサーバから天気の予報情報や実績情報を取得して、取得した情報を予測モデル作成部21へ出力したり、制御装置10へ送信したりする。また、通信部22は、予測モデル作成部21によって作成された予測モデル、テーブル等を制御装置10へ送信する。
【0019】
図1に例示する構成は一例である。例えば、到達時間算出部13のうちの到達時間と消費電力量の計算を行う機能をサーバ20に設けて、その計算結果を制御装置10へ送信する等、計算量が多い処理をサーバ20で行うようにしてもよい。また、サーバ20を設けずに、到達時間算出部13に、空調対象空間の設定温度、外気温度、室内温度別にファン回転数ごとの到達時間と消費電力量を定めた簡易的なテーブル等を記憶させ、このテーブルに基づいて、到達時間と消費電力量を算出するように構成してもよい。
【0020】
(予測モデル)
図2に予測モデルの一例を示す。図2の1速~4速は室内機ファン4の風量、回転数を表している。1速が最も回転数が小さく風量が少ない。2速、3速、4速と数字が増えるにつれ、回転数は増大し、風量も多くなる。基本的には、風量が多い程、到達時間は短くなると考えられるが、諸条件により3速の方が4速より到達時間は短くなるなどの例外があってもよい。図示するように予測モデルは、室内温度、外気温度、設定温度、室内機ファン4の回転数等(以上、説明変数)ごとに、その運転条件での到達時間および消費電力量(以上、目的変数)を算出するように構成されている。図示は省略するが、説明変数として、さらに圧縮機5の回転数、室外機ファン6の回転数、月(空調を行う季節)、設定時刻(空調を行う時間帯)、天気等の情報が加えられてもよい。また、消費電力量は、予測モデルが出力する値ではなく、別途計算されたものであってもよい。なお、この消費電力量は、室内機ファン4が消費する電力量ではなく、設定温度を達成するまでに空調機1が消費する電力量、あるいは空調機1の代表的な機器(例えば、室内機ファン4、圧縮機5及び室外機ファン6)が消費する電力量である。
【0021】
到達時間算出部13は、図2に例示する予測モデルに基づいて、室内機ファン4の回転数を決定する。例えば、ユーザが、11時30分に、その日の12時00分に室温を26℃とするよう予冷モードの空調設定を行ったとする。予冷モードとは、ユーザが指定する設定時刻よりも前に自動的に運転を開始し、設定時刻までに室温が設定温度となるように冷房運転又は暖房運転を行う運転モードのことである(“予冷”と記載するが、本明細書の予冷モードは冷房運転だけでなく暖房運転も対象とする。)。また、11時30分時点での空調対象空間の室内温度は33度、外気温度は35度であるとする。到達時間算出部13は、現在時刻11時30分と設定時刻12時00分の差を計算する。到達時間算出部13は、予測モデルに基づいて、計算した30分の間に設定温度を達成できるような室内機ファン4の回転数を選択する。1速の場合には到達時間が40分で、今から空調を開始した場合、設定時刻に間に合わないので、到達時間算出部13は、2速~4速の中から室内機ファン4の回転数を選択する。
【0022】
(A)例えば、到達時間算出部13は、この中から最も低速の回転数(この例の場合2速)を選択してもよいし、2速~4速の消費電力量(w21、w31、w41)を比較して消費電力量が最小となる回転数を選択してもよい。あるいは、到達時間算出部13は、最も早く設定温度を達成する回転数(例えば4速)、又は、最も遅く設定温度を達成する回転数(例えば2速)を選択してもよい。
【0023】
(B)あるいは、2速だと到達時間が30分で、ユーザの指定する12時00分ちょうどなので、例えば、到達時間算出部13は、設定時刻の5分前に設定温度が達成できることを条件として、その条件を満たす回転数の中から最も低速の回転数(この例の場合3速)を選択してもよいし、消費電力量が最小となる回転数を選択してもよい。
【0024】
(C)また、例えば、到達時間算出部13は、最初に設定時刻に設定温度を達成することができる2速を選択して、その後、所定の時間間隔で、室内温度センサ3が計測する温度を監視しつつ、その都度、12時00分までの残り時間と、予測モデルに基づく到達時間を比較して、室内機ファン4の回転数を変更してもよい。例えば、11時30分に2速で運転を開始し、5分後の11時35分に室内温度が32℃、外気温度が35℃であったとする。到達時間算出部13は、残り時間25分と、室内温度32度,外気温度35℃及び回転数2速の条件と、図2の予測モデルと、に基づいて、到達時間26分を算出する。残り時間は25分なので、このまま2速で運転すると、設定時刻に間に合わない。そこで、到達時間算出部13は、他の1速、3速、4速の到達時間を算出して、その中から設定時刻に間に合う回転数を選択する。この例の場合であれば、到達時間算出部13は、3速又は4速の何れかを選択する。例えば、到達時間算出部13は、最も低速の回転数を選択してもよいし、消費電力量が最小となる回転数を選択してもよいし、最も余裕をもって設定温度を達成できる回転数を選択してもよいし、最も遅く設定温度を達成する回転数を選択してもよい。到達時間算出部13は、その後も定期的に残り時間を計算し、設定時刻までに設定温度を達成できる回転数の中から室内機ファン4の回転数を決定する。なお、11時35分の室内温度が31℃、外気温度が35℃であれば、残り時間25分に対し、到達時間が22分なので、到達時間算出部13は、室内機ファン4の回転数を2速から変更する必要は無い。
【0025】
(D)あるいは、「省エネモード」と「達成優先モード」をユーザが選択できるようにし、ユーザが「省エネモード」を選択した場合は、到達時間算出部13は、(A)又は(B)の説明における最も消費電力量が小さい回転数を選択する方式によって、(a)ユーザが設定温度や設定時刻を設定したとき、又は、(b)空調開始時(この例の場合のように設定時刻で余裕がない時刻に予冷モードの設定がされた場合)、又は、(c)設定時刻の1~2時間前(1~2時間あれば、ほとんどの設定温度の達成は可能と考える。)等のタイミングで回転数を決定し、運転開始後もその回転数を維持するようにしてもよい(外気温度の変化などにより設定時刻に間に合わない可能性がある)。また、ユーザが「達成モード」を選択した場合は、(C)で説明した方法で適宜、回転数を切り替えながら運転するようにしてもよい。
【0026】
(E)また、回転数の切り替えを複数回、段階的に行うようにしてもよい。例えば、到達時間算出部13は、予め設定時刻までに設定温度を達成できるようなスケジュールを、予めシミュレーションして作成する。例えば、到達時間算出部13は、空調開始時や設定時刻の1~2時間前のタイミングで、そのときの室内温度、外気温度などを運転条件として、4速、3速、2速、1速の順又は1速、2速、3速、4速の順で所定時間ずつ室内機ファン4を運転した場合の室内温度の変化を図2の予測モデルから予測し、設定温度を達成できるスケジュールを作成する。そして、制御部14は、そのスケジュールに沿って室内機ファン4を運転する。なお、上記した回転数の順番は一例であって、これに限定されない。
【0027】
一般的に提供されている予冷モードにおける空調制御では、室内機ファン4の風量が十分に考慮されず、例えば、前回停止時のファン回転数がそのまま引き継がれて運転される場合などがある。その為、設定時刻までに設定温度が達成できず、ユーザの快適性を損ねる可能性がある。また、ユーザによっては、設定温度や設定時刻の設定はあくまで目安であって、消費電力量を抑えた運転に対する重要性の方が、厳密に設定時刻までに設定温度を達成することよりも大きい場合がある。本実施形態によれば、ユーザのニーズに応じて、設定時刻までに設定温度を達成する運転、消費電力量を抑えた運転、あるいはそれらを両立させた運転の何れかを、室内機ファン4の制御を通じて実現することができる。
【0028】
(動作)
次に図3を参照して、本実施形態に係る室内機ファン4の風量制御を適用した予冷モード運転の制御の流れについて説明する。
図3は、実施形態における空調システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
最初に予測モデル作成部21が、到達時間を出力する予測モデルを作成する(ステップS11)。予測モデル作成部21は、空調機1の過去の運転データ、例えば、時系列の室内温度、外気温度、室内機ファン4の回転数、圧縮機5の回転数、室外機ファン6の回転数、空調機1の消費電力量、到達時間などに基づいて、予測モデルを作成する。予測モデル作成部21は、通信部22を通じて、作成した予測モデルを制御装置10へ送信する。制御装置10では、到達時間算出部13が、送信された予測モデルを取得し、記憶する。予測モデルは、到達時間と消費電力量を出力するように構成されていてもよいし、到達時間だけを出力するように構成されていてもよい。到達時間だけを出力するように構成されている場合、室内機ファン4の風量ごとの消費電力量は、予測モデル作成部21が計算してもよいし、到達時間算出部13が、予測モデルに入力する圧縮機5の回転数等と、予測モデルが出力する到達時間から計算してもよい。
【0029】
次にユーザが、不図示のリモコンやスマートフォン等を用いて、制御装置10へ設定温度と設定時刻を設定する(ステップS12)。設定受付部12は、設定温度と設定時刻を取得し、記憶する。次に到達時間算出部13が、ファン回転数と空調開始時刻を設定する(ステップS13)。例えば、到達時間算出部13は、(a)ユーザが設定温度や設定時刻を設定したとき、又は、(b)空調開始時、又は、(c)設定時刻の1~2時間前における室内温度、外気温度、天気、時間帯、月と、圧縮機5の定格回転数、室外機ファン6の定格回転数、室内機ファン4の回転数(1~4速それぞれ)を予測モデルに入力して、室内機ファン4の回転数別の到達時間、消費電力量を算出する。あるいは、到達時間算出部13に、設定温度、外気温度、室内温度別に室内機ファン4の回転数ごとの到達時間と消費電力量を対応付けたテーブルを記憶させ、このテーブルに基づいて、到達時間と消費電力量を算出するように構成してもよい。例えば、到達時間算出部13は、設定時刻に間に合う回転数の中から最も消費電力量が小さい回転数を選択する。到達時間算出部13は、ステップS12で設定された設定時刻から、選択したファン回転数に対応する到達時間だけ遡った時刻、あるいはそれよりも少し前の時刻を空調開始時刻として設定する。到達時間算出部13は、選択した室内機ファン4の回転数と空調開始時刻を制御部14へ出力する。
【0030】
次に制御部14は、ステップS13で設定された空調開始時刻になると、ユーザが設定した設定温度および設定時刻に基づく予冷モードでの空調を開始する(ステップS14)。このとき制御部14は、ステップS13で決定された回転数で室内機ファン4を運転する。空調が開始されると、到達時間算出部13は、所定の時間間隔で設定時間に設定温度を達成できるかどうかを判定する(ステップS15)。例えば、到達時間算出部13は、数分に1度、設定時刻までの残り時間を計算し、その時の室内温度、外気温度、室内機ファン4の回転数などの運転条件と予測モデルとに基づいて、そのまま運転を継続した場合の到達時間を算出し、残り時間が到達時間よりも短ければ達成できないと判定し、残り時間が到達時間よりも長ければ達成できると判定する。設定時刻までに設定温度を達成できると判定した場合(ステップS15;Yes)、ステップS17の処理に進む。
【0031】
設定時刻までに設定温度を達成できないと判定した場合(ステップS15;No)、到達時間算出部13は、室内機ファン4の回転数を変更する(ステップS16)。例えば、到達時間算出部13は、残り時間よりも短い到達時間が設定された回転数の中から消費電力量が最小となる回転数を選択する。到達時間算出部13は、選択した回転数を制御部14へ出力する。制御部14は、室内機ファン4の回転数を、到達時間算出部13から取得した回転数に切り替える。
【0032】
次に制御部14は、設定温度を達成したかどうか判定する(ステップS17)。達成していない場合(ステップS17;No)、ステップS15以降の処理を繰り返し実行する。設定温度を達成した場合(ステップS17;Yes)、制御部14は、設定温度を維持できるような制御に切り替える。例えば、制御部14は、室内機ファン4の回転数を最も低速に切り替えてもよい。
【0033】
図3のフローチャートでは、上記した(A)~(C)、(D)の「達成モード」を組み合わせた制御例を記載したが、室内機ファン4の制御方法として(D)の「省エネモード」を適用してもよいし(図3においてステップS15、S16が無い)、(E)の方法で制御してもよい。
【0034】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、予冷モードの運転時に設定時刻までに設定温度を達成できる風量で室内機ファン4を運転することができる。これにより、設定時刻までに設定温度を達成する確率を向上することができる。また、設定時刻に間に合いつつ消費電力量を最小とする回転数で室内機ファン4を運転することができる。これにより、ユーザの快適性を損なわずに、不要な電力消費を抑えることができる。
【0035】
なお上記の実施形態では、本実施形態のファン制御方法を空調システムに適用する場合について説明したが、給湯機によって湯を沸かしたり、冷凍機によって対象を冷却したりする場合にも本実施形態を適用して、給湯機のファンや冷凍機のファンを制御することができる。
【0036】
図4は、実施形態に係る空調システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の制御装置10,サーバ20は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0037】
制御装置10,サーバ20の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0038】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0039】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置、熱源システム及び制御方法は、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)第1の態様に係る制御装置は、熱源装置(空調機1)によって温度を調節する対象の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付ける設定受付部12と、前記熱源装置が備えるファンを所定の回転数で運転した場合に前記設定温度を達成するために必要な運転時間を複数の前記回転数について算出し、算出した前記回転数ごとの前記運転時間に基づいて、複数の前記回転数の中から、前記設定時刻までに前記設定温度の達成が可能な前記回転数を選択する算出部(到達時間算出部13)と、選択した前記回転数で前記ファンを回転させつつ、前記熱源装置を運転する制御部14と、を備える。
これにより、設定時刻までに設定温度を達成することができる。
【0041】
(2)第2の態様に係る制御装置は、(1)の制御装置であって、前記算出部は、前記熱源装置の運転開始後に、前記設定時刻までの残り時間を計算し、そのまま選択した前記回転数で前記ファンを回転させつつ、前記熱源装置を運転した場合に前記設定時刻までに前記設定温度の達成が可能かどうかを判定し、前記達成が不可能な場合、前記達成が可能な前記回転数を新たに選択する。
これにより、運転開始後に運転条件が変わった場合でも、速やかにファン回転数を切り替えることで、設定時刻までに設定温度を達成することができる。
【0042】
(3)第3の態様に係る制御装置は、(1)~(2)の制御装置であって、前記算出部は、前記設定温度の達成が可能な前記回転数の中から当該回転数で前記ファンを回転させつつ、前記熱源装置を運転したときの消費電力量が最小となる前記回転数を選択する。
これにより設定時刻までに設定温度を達成するだけでなく、消費電力量を最小化するファン回転数を算出することができる。また、ユーザの快適性と省エネルギー性を両立した制御を実現することができる。
【0043】
(4)第4の態様に係る制御装置は、(1)~(3)の制御装置であって、前記算出部は、前記設定温度の達成が可能な前記回転数の中から最も早く前記設定温度を達成する前記回転数、最も遅く前記設定温度を達成する前記回転数、前記設定時刻よりも所定時間前までに前記設定温度を達成することができる前記回転数、のうちの何れかを選択する。
これにより、設定時刻までに設定温度を達成することができる。
【0044】
(5)第5の態様に係る制御装置は、(1)~(4)の制御装置であって、前記算出部は、前記設定温度と前記回転数を含む前記熱源装置の所定の運転条件に基づいて、前記運転時間を予測する予測モデルを備え、前記予測モデルに基づいて、前記運転時間を算出する。
これにより、運転条件に応じた運転時間(到達時間)を算出することができる。精度よく運転時間を予測することで、設定時刻までに設定温度を達成する制度を向上することができる。
【0045】
(6)第6の態様に係る制御装置は、(1)~(5)の制御装置であって、前記算出部は、前記設定温度と前記回転数を含む前記熱源装置の運転条件に基づいて、前記運転時間と前記消費電力量を予測する予測モデルを備え、前記予測モデルに基づいて、前記運転時間と前記消費電力量を算出する。
これにより、運転条件に応じた運転時間(到達時間)と消費電力量を算出することができる。精度よく運転時間と消費電力量を算出することで、制御制度を向上することができる。
【0046】
(7)第7の態様に係る制御装置は、(1)~(6)の制御装置であって、前記熱源装置は、空調機、給湯機、冷凍機の何れかである、
これにより、空調機、給湯機、冷凍機のファンを、設定時刻までに設定温度を達成することができるように制御することができる。
【0047】
(8)第8の態様に係る制御装置は、(1)~(7)の制御装置であって、前記熱源装置は、空調機であって、空調対象空間の温度と、外気温度と、前記設定温度と、前記設定時刻又は前記設定時刻が含まれる時間帯と、空調対象の月と、前記空調機の室内機ファンの回転数と、前記空調機の圧縮機の回転数と、前記空調機の室外機ファンの回転数と、に基づいて、前記設定温度の達成に必要な運転時間を出力する予測モデルをさらに備える。
これにより、精度よく運転時間を予測することができる。精度よく運転時間を予測することで、予冷モードの空調を精度よく実行することができる。
【0048】
(9)第9の態様に係る熱源システム(空調システム100)は、熱源装置(空調機1)と、(1)~(8)に記載の制御装置10と、を備える。
【0049】
(10)第10の態様に係る制御方法は、熱源装置によって温度を調節する対象の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付けるステップと、前記熱源装置が備えるファンを所定の回転数で運転した場合に前記設定温度を達成するために必要な運転時間を複数の前記回転数について算出し、算出した前記回転数ごとの前記運転時間に基づいて、複数の前記回転数の中から、前記設定時刻までに前記設定温度の達成が可能な前記回転数を選択するステップと、選択した前記回転数で前記ファンを回転させつつ、前記熱源装置を運転するステップと、を有する。
【符号の説明】
【0050】
100・・・空調システム
1・・・空調機
2・・・外気温度センサ
3・・・室内温度センサ
4・・・室内機ファン
5・・・圧縮機
6・・・室外機ファン
10・・・制御装置
11・・・センサ情報取得部
12・・・設定受付部
13・・・到達時間算出部
14・・・制御部
15・・・通信部
20・・・サーバ
21・・・予測モデル作成部
22・・・通信部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4