(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】サンプル液の粘弾性特性を測定する測定システムのためのカートリッジ装置、対応する測定システム、及び対応する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 11/04 20060101AFI20240920BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N11/04 B
G01N37/00 101
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023082050
(22)【出願日】2023-05-18
(62)【分割の表示】P 2021143317の分割
【原出願日】2009-12-15
【審査請求日】2023-06-16
(32)【優先日】2008-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511151145
【氏名又は名称】ツェー アー カズィゾ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ロメロ-ガレアノ,ホセ ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ケッセラー,マックス
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト,アクセル
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-517221(JP,A)
【文献】特表平09-504372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/04
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムに結合するように構成されたカートリッジであって、前記システムは、試験サンプルの一部に関連する少なくとも1つの粘弾性特性を決定するように構成され、
第1の測定キャビティ及び第2の測定キャビティを含む複数の測定キャビティと、
第1の試薬又は試薬の組み合わせを含有する第1の試薬キャビティ、及び、第2の試薬又は試薬の組み合わせを含有する第2の試薬キャビティを含む複数の試薬キャビティと、
前記試験サンプルの第1の部分を受け入れるための第1の受入キャビティ、及び、前記試験サンプルの第2の部分を受け入れるための第2の受入キャビティを含む複数の受入キャビティと、
前記第1の測定キャビティ、前記第1の試薬キャビティ及び前記第1の受入キャビティと流体連通している第1の流体流路であって、前記試験サンプルの前記第1の部分を、前記第1の試薬又は試薬の組み合わせと混合するために、前記第1の受入キャビティから移送するための第1の流体流路と、
前記第2の測定キャビティ、前記第2の試薬キャビティ及び前記第2の受入キャビティと流体連通している第2の流体流路であって、前記試験サンプルの前記第2の部分を、前記第2の試薬又は試薬の組み合わせと混合するために、前記第2の受入キャビティから移送するための第2の流体流路
とを含み、
前記第1の測定キャビティは、前記試験サンプルの前記第1の部分と前記第1の試薬又は試薬の組み合わせとに基づく第1の混合物を受け入れるように構成され、前記第1の測定キャビティは、前記システムが前記第1の混合物に基づく少なくとも1つの粘弾性特性を決定することを可能にするように構成され、
前記第2の測定キャビティは、前記試験サンプルの前記第2の部分と前記第2の試薬又は試薬の組み合わせとに基づく第2の混合物を受け入れるように構成され、前記第2の測定キャビティは、前記システムが前記第2の混合物に基づく少なくとも1つの粘弾性特性を決定することを可能にするように構成される、カートリッジ。
【請求項2】
前記第1の受入キャビティが、前記第1の測定キャビティである単一の測定キャビティに関連付けられており、前記第2の受入キャビティが、前記第2の測定キャビティである単一の測定キャビティに関連付けられている、請求項
1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記第1の流体
流路及び前記第2の流体
流路を含む配管をさらに含み、前記配管は、
前記第1の試薬キャビティと前記第1の測定キャビティとの間における第1の配管であって、前記第1の混合物が通過する、第1の配管と、
前記第2の試薬キャビティと前記第2の測定キャビティとの間における第2の配管であって、前記第2の混合物が通過する、第2の配管と
を含み、
前記第1の試薬キャビティ及び前記第2の試薬キャビティ内に含有される試薬が、前記配管の対応する寸法よりも大きい寸法を有する固体の形態である、請求項
1に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記第1の流体
流路及び前記第2の流体
流路を含む配管をさらに含み、前記配管は、
前記第1の試薬キャビティと前記第1の測定キャビティとの間における第1の配管であって、前記第1の混合物が通過する、第1の配管と、
前記第2の試薬キャビティと前記第2の測定キャビティとの間における第2の配管であって、前記第2の混合物が通過する、第2の配管と
を含み、
前記第1の配管内における圧力の変化が、前記試験サンプルの前記第1の部分と前記第1の試薬又は試薬の組み合わせとの混合を可能にし、
前記第2の配管内における圧力の変化が、前記試験サンプルの前記第2の部分と前記第2の試薬又は試薬の組み合わせとの混合を可能にする、請求項
1に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記試験サンプルの前記第1の部分と前記第1の試薬又は試薬の組み合わせとの混合が、少なくとも部分的に、前記第1の試薬キャビティ内で起こり、
前記試験サンプルの前記第2の部分と前記第2の試薬又は試薬の組み合わせとの混合が、少なくとも部分的に、前記第2の試薬キャビティ内で起こる、請求項
4に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記第1の測定キャビティが、前記第1の測定キャビティ内の前記第1の混合物に対する第1の試験を可能にするように配置されており、前記第1の試験は、前記第1の混合物に基づく第1の粘弾性特性を測定するためのものであり、
前記第2の測定キャビティが、前記第2の測定キャビティ内の前記第2の混合物に対する第2の試験を可能にするように配置されており、前記第2の試験は、前記第2の混合物に基づく第2の粘弾性特性を測定するためのものであり、
前記第1の試験と、前記第2の試験と
は、それぞれ異な
る試薬を使用する試験である、請求項
1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記第1の試薬又は試薬の組み合わせと、前記第2の試薬又は試薬の組み合わせとが、それぞれ前記試験サンプルの第1又は第2の部分に溶解するように構成された球剤を含む、請求項
1に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記第1の流体流路が、前記第1の試薬キャビティと前記第1の測定キャビティとの間に第1の曲部を含み、
前記第2の流体流路が、前記第2の試薬キャビティと前記第2の測定キャビティとの間に第2の曲部を含む、請求項
1に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記第1の流体流路が、前記試験サンプルの前記第1の部分を、前記第1の受入キャビティの底部から移送するように構成され、
前記第2の流体流路が、前記試験サンプルの前記第2の部分を、前記第2の受入キャビティの底部から移送するように構成される、請求項
1に記載のカートリッジ。
【請求項10】
請求項
1に記載のカートリッジを受け入れるように構成されたシステムであって、前記システムが、それぞれ前記第1及び第2の測定キャビティに関連付けられた第1及び第2のプローブを含み、前記第1及び第2のプローブが、それぞれ前記第1及び第2の測定キャビティ内の前記第1及び第2の混合物に基づく粘弾性特性を測定するように構成される、システム。
【請求項11】
測定システムに結合されたカートリッジを使用して粘弾性試験を実行する方法であって、
第1の操作であって、
試験サンプルの第1の部分を、前記カートリッジ上の第1の受入キャビティ内に受け入れるステップと、
前記試験サンプルの前記第1の部分を、前記第1の受入キャビティから、第1の流体流路に沿って、第1の試薬キャビティへと移送するステップであって、前記第1の試薬キャビティが、前記カートリッジ上にあって第1の試薬又は試薬の組み合わせを含有しており、移送の間に、前記試験サンプルの前記第1の部分が前記第1の試薬又は試薬の組み合わせと混合される、ステップと、
前記試験サンプルの前記第1の部分と前記第1の試薬又は試薬の組み合わせとに基づく第1の混合物を、
前記第1の流体流路に沿って、第1の測定キャビティへと移送するステップと
、
前記第1の測定キャビティ内の前記第1の混合物に対して第1の粘弾性試験を実行するステップと、
を含む第1の操作を実行することと、
第2の操作であって、
前記試験サンプルの第2の部分を、前記カートリッジ上の第2の受入キャビティ内に受け入れるステップと、
前記試験サンプルの前記第2の部分を、前記第2の受入キャビティから、第2の流体流路に沿って、第2の試薬キャビティへと移送するステップであって、前記第2の試薬キャビティが、前記カートリッジ上にあって第2の試薬又は試薬の組み合わせを含有しており、移送の間に、前記試験サンプルの前記第2の部分が前記第2の試薬又は試薬の組み合わせと混合される、ステップと、
前記試験サンプルの前記第2の部分と前記第2の試薬又は試薬の組み合わせとに基づく第2の混合物を、
前記第2の流体流路に沿って、第2の測定キャビティへと移送するステップと
、
前記第2の測定キャビティ内の前記第2の混合物に対して第2の粘弾性試験を実行するステップと、
を含む第2の操作を実行することとを含み、
前記第1の操作の少なくとも1つのステップが、前記第2の操作の少なくとも1つのステップと同時に実行される、方法。
【請求項12】
前記試験サンプルの前記第1の部分を前記第1の受入キャビティから移送するために、ポンプを操作するステップをさらに含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記試験サンプルの前記第1の部分と前記第1の試薬又は試薬の組み合わせとの混合が、少なくとも部分的に、前記第1の試薬キャビティ内で起こり、
前記試験サンプルの前記第2の部分と前記第2の試薬又は試薬の組み合わせとの混合が、少なくとも部分的に、前記第2の試薬キャビティ内で起こる、請求項
11又は
12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の試薬又は試薬の組み合わせと、前記第2の試薬又は試薬の組み合わせとが、混合の間にそれぞれ前記試験サンプルの第1又は第2の部分に溶解するように構成された球剤を含む、請求項
11又は
12に記載の方法。
【請求項15】
前記試験サンプルの前記第1の部分を前記第1の受入キャビティから移送するステップが、前記第1の流体流路に沿って圧力を印加することを含み、
前記試験サンプルの前記第2の部分を前記第2の受入キャビティから移送するステップが、前記第2の流体流路に沿って圧力を印加することを含む、請求項
11又は
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル液、特に血液サンプルの粘弾性特性を測定する測定システムのためのカートリッジ装置に関する。本発明はまた、対応する測定システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
傷が流血を止めること、すなわち、身体が、適切な止血のメカニズムを有することは、生存のために不可欠である。傷又は炎症の場合において、血液の凝固の過程は、外性因子又は内性因子、例えば、それぞれ、組織因子(TF)又はハーゲマン因子(FXII)のいずれかにより活性化され得る。両方の活性化チャンネルが、カスケードの一般の分岐において継続され、その結果、トロンビンが形成される。トロンビンは、それ自体、最終的に、凝血のタンパク質骨格を表すフィブリン線維の形成を開始する。
【0003】
最終的な凝血の他の主な成分は血小板であり、血小板は、凝固の過程の間にフィブリン線維によって相互結合されると共に、多くの生理的な変化を受ける。限度内で、血小板の欠乏は、増加したフィブリンの量によって置換され、又は逆も可能である。このことは、健康な個体群内であっても、血小板計数及びフィブリノゲン濃度が変化するということが観察において反映されたものである。
【0004】
血液の潜在力を評価するために、適切な凝固を形成して凝血の安定性を決定するための様々な方法が導入されている。血小板計数又はフィブリン濃度の決定のような共通の臨床検査は、検査された成分が、十分な量で利用可能であるかどうかの情報を提供するが、検査された成分が、生理的な条件下で適切に機能するかどうかという疑問に答えることに欠ける(例えば、生理的な条件下におけるフィブリノゲンの重合活性は、一般的な光学的手法では評価できない)。その他、大部分の臨床検査は血漿において機能するため、準備のための追加のステップや、特にPOC(point of care)条件下では好ましくない追加の時間を必要とする。
【0005】
これらの問題を克服する他のグループの検査が、「粘弾性法」という用語によって要約される。これらの方法の共通の特徴は、凝血の堅固さ(又はそこで依存する他のパラメータ)が、最初のフィブリン線維の形成から線維素溶解による凝血の分解まで、連続的に決定されるということである。凝血の堅固さは、凝固が血管内の傷の場所における血圧及び剪断応力に抗しなければならないことから、生体内での止血に重要な機能パラメータである。凝血の堅固さは、多数の相互にリンクするプロセスの、すなわち、凝固活性化、トロンビン形成、フィブリン形成及び重合、血小板活性、並びにフィブリン-血小板の相互作用の結果であり、線維素溶解によって損なわれ得る。それ故、粘弾性モニタリングの使用によって、凝固系のこれら全てのメカニズムが評価される。
【0006】
凝固診断のために使用されるこれら全ての方法に共通する特徴は、凝血が、円筒状のピンと軸対称なカップとの間の空間に設けられて、凝血のそれらの2つのボディを結合する能力が決定されることである。
【0007】
第1の粘弾性法は、「トロンボエラストグラフィ」(Hartert H: Blutgerinnungsstudien mit der Thrombelastographie, einem neuen Untersuchungsverfahren Klin Wochenschrift 26:577-583, 1948)と呼ばれる。
図1に例示されるように、トロンボエラストグラフィにおいて、サンプル液1としてのサンプルが、左右にそれぞれ約5°で定期的に回転させられるカップ2内に設置される。プローブピン3が、トーションワイヤ4によって自由に支持される。凝血が形成されるとき、カップ2の動きが、トーションワイヤ4の逆の運動量に抗してプローブピン3に伝達することが始まる。凝血の堅固さの尺度としてのプローブピン3の動きは、連続的に記録され、時間に対してプロットされる。歴史的な理由から、堅固さは、ミリメータで測定される。
【0008】
この種の典型的な測定の結果が
図2に例示される。最も重要なパラメータの1つは、活性化物質が誘導された凝固カスケードの開始と、所定の値を超える堅固さの信号によって示される、最初の長いフィブリン線維が生成されるまでの時間との間の時間である。このパラメータは、凝固時間又は、以下のように、単にCTと呼ばれる。他の重要なパラメータは、凝固の進展の速度の尺度を示す血餅形成時間(CFT)である。CFTは、凝固の堅固さが2mmから20mmに増加するためにかかる時間として定義される。さらに、最大凝血堅固さ又は単にMCFとも称される、測定中に凝固が到達する最大の堅固さもまた、主要な診断において非常に重要である。
【0009】
オリジナルのトロンボエラストグラフィ技術(Hartert et al . (米国特許第3714815号明細書) )の改良は、Cavallari et al . (米国特許第4193293号明細書)によって、Do et al . (米国特許第4148216号明細書)によって、Cohen (米国特許第6537819号明細書)によって記述されている。
図3に例示される、Calatzis et al.(米国特許第5777215号明細書)によるさらなる改良が、トロンボエラストメトリの用語の下で知られる。
【0010】
上記の修正とは異なり、トロンボエラストメトリは、プローブピン3が活動的に回転される間に、カップ2がカップホルダ12に固定されることに基づく。この目的のために、プローブピン3は、ベースプレート11内のボールベアリング7によって支持されるシャフト6に取り付けられると共に、それに接続されるスプリング9を有する。スプリングの反対の端部で誘導される図面の平面に対して垂直な揺動運動は、シャフト6と、接続されたカップ2との各方向における約5°の回転軸5回りの周期的な回転に変換される。サンプル液1が凝固を開始するとき、光線の変位により検出手段10及びミラー9から検出されるシャフト6の動きの振幅は、減少し始める。
【0011】
凝固中に、フィブリン骨格は、血液収容カップ2の表面とその中に押し込まれるプローブピン3との間に機械的な弾性リンク機構をつくり出す。それ故、1以上の活性化因子が加えられることによって誘発される凝固工程の進行が観測される。この方法において、患者の止血状態の様々な欠陥が明らかになり、適切な医療的介入のために解釈される。
【0012】
この分野において、他の臨床方法と比較した粘弾性、例えばトロンボエラストメトリ技術の一般的な利点は、凝固過程及びサンプルの機械的特性の変化が全体として監視されることである。これは、上述した他の臨床方法とは異なり、トロンボエラストメトリが、凝固経路の全ての成分が十分な量で利用可能かどうかを示すだけでなく、各成分が適切に機能するかどうかを示すということを意味する。
【0013】
血小板並びにフィブリノゲン及び特定の因子の正しい量及び機能についての詳細な情報を得るために、今日では、凝固系の特定の成分を活性化させ又は抑止するのに利用可能な成分が増加している。これにより、問題のある凝固系の点を決定することが可能になる。実用的な理由から、これらの成分は、通常、後にピペット(手動又は自動のもの)を使用することによって、測定のために使用される使い捨てのプラスチックカップ内に注入される。最後の準備ステップにおいて、血液又は血漿のサンプルが加えられた後に、サンプル(血液/プラズマ及び追加の薬品)の全量が、それをピペットの先端内に引き込み、それをカップに再度調剤することによって混合される。
【0014】
凝固系の特定の成分を活性化又は抑止することが可能であることは、4つの測定を平行に行うことを可能にするROTEM(Pentapharm GmbH, Munich, Germany)のような最新のトロンボエラストロメータに関して特に有用である。これは、患者の凝固状態についての現時点の状況における詳細な情報が達成されることを可能にし、それ故、数分以内の適切な治療を可能にする。
【0015】
これは、多数の外傷又は大きな外科手術の状況においてしばしば生じる、大量の血液の損失を被る患者の場合に特に重要である。そのような患者の血液は、しばしば体積における損失を置き換えるように投与される点滴により希釈される。これは、血小板、及びフィブリノゲンを含む凝固因子の濃度を減少させることにつながる。
【0016】
トロンボエラストメトリ及びトロンボエラストグラフィの主な利点は、どの種の血液製剤が適切な薬剤であるかを正確に決定する複数の異なる検査を同時に行うことができること、測定をポイントオブケア(POC)で、またはポイントオブケア(POC)の近くで行うことができること、及び、他の方法と比較して、有効な結果が得られるまでの時間が比較的短いことである。
【0017】
他方で、オペレータは、特に外科手術が行われる場合において、測定を開始するために、かなりの数のステップ(試薬の準備、プローブピン及びカップの機器への取り付け、血液サンプルと試薬のピペッティング及び混合、コンピュータの設定の調整等)を実行しなければならず、これには多大な時間がかかる。
【0018】
さらに、これは、準備が複雑であるだけでなく、操作エラーのリスクも増加させる。トロンボエラストロメータの用法を単純化するいくつかの試みがある。例えば、ローテムシステム(Pentapharm GmbH, Munich, Germany)に自動のピペットを供給することにより、取り扱いを大きく単純化し、それによって操作エラーのリスクを減少させる。
【0019】
国際公開第2008093216号は、すぐに使用できる混合物内で1つの特定の検査のために必要とされる試薬のそれぞれの適切な量を提供するための試みを記述する。測定の前の試薬の反応を防止するために、それらは、凍結乾燥物(lyophilisate)の状態において供給される。これは、試薬が室温で保存され得るということから、追加的に有利である。この試みを用いることで、血液サンプルを試薬容器に添加するステップ、血液を試薬と混合するステップ及び混合物を機器まで移送するステップにまで、準備が減少する。
【0020】
米国特許出願公開第2007/0059840号明細書は、止血分析装置及び方法を記述する。装置は、検査されるサンプルを保持するための容器と、サンプル上に浮遊可能に支持される浮きとを含む。磁石は、浮きに固定されている。容器は、揺動運動するように駆動され得る。外部の磁界が浮きに近接して生成される。磁界強度検出器は、容器の揺動とサンプルの凝固に応じた浮きと磁石の動きの結果としての磁界の変化を検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そのような新たな測定システムは、使用者について受容性の問題と不確実性を伴う。さらに、その分析装置は、既存の測定システムには適合しない。それ故、新たなシステムが完全に設計されなければならない。
【0022】
全てのこれらの修正は、現代のトロンボエラストロメータ及びトロンボエラストグラフの操作の重要な改良に繋がるが、しかしながら、広く自動化された技術を開発するための成功の試みは、Hartertの発明の60年前から成功例がなかった。2つの主な理由のうちの1つは、互いに関連して移動させられ、それ故、測定装置の異なる部品に逆に取り付けられなければならない2つの使い捨ての部品(カップ及びピン)を、測定が必要とすることである。例えば、
図3において、プローブピン3はシャフト6に、カップ2はカップホルダ12にそれぞれ取り付けられる。もう1つの主な理由は、患者の現在の出血状態の包括的な情報を取得するために様々な検査が要求されることである。これらの様々な検査は、血液サンプルに混合されなければならない様々な試薬を必要とする。
【0023】
本発明に内在する問題は、サンプル液、特に血液サンプルの粘弾性特性を測定するための測定システムに関するカートリッジ装置を提供することである。
【0024】
本発明に直結するのは、サンプル液の粘弾性特性、特に血液サンプル液の凝固特性を測定するための対応する測定システムを提供するという問題である。
【0025】
本発明に内在するさらなる問題は、前記測定システムを使用してサンプル液の粘弾性特性を測定するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
これらの問題は、独立請求項の主題によって解決される。独立請求項において、望ましい実施形態が説明される。
【0027】
第1の態様において、本発明は、サンプル液、特に血液サンプルの粘弾性特性を測定するための測定システムに関するカートリッジ装置を提供し、前記カートリッジ装置内部に構成される少なくとも1つの測定キャビティを有し、かつ、前記少なくとも1つの測定キャビティ内に配され、前記サンプル液に関して検査を実行するための少なくとも1つのプローブ要素を有するカートリッジ本体と、前記カートリッジ本体に取り付けられ得るカバーとを備え、前記カバーは、前記少なくとも1つの測定キャビティを少なくとも部分的に覆い、かつ、前記少なくとも1つの測定キャビティ内の所定位置において、前記プローブ要素を保持するための保持要素を構成する。
【0028】
第2の態様において、本発明は、サンプル液、特に血液サンプルの粘弾性特性を測定するための測定システムを提供し、少なくとも1つのインターフェース要素と、駆動手段によって回転させられるように、前記インターフェース要素によって回転可能に支持される少なくとも1つのシャフトと、前記インターフェース要素に固定され、前記サンプル液を保持するための少なくとも1つのカートリッジ装置であって、カバーを伴うカートリッジ本体と前記少なくとも1つのシャフトと協働するために前記カートリッジ本体内に構成される測定キャビティ内に設けられる少なくとも1つのプローブ要素とを備えるカートリッジ装置と、前記サンプル液の粘弾性特性を測定するために前記シャフトと協働する少なくとも1つの検出手段と、前記測定システムを制御する制御手段と、を備える。
【0029】
第3の態様において、本発明は、前記測定システムによってサンプル液の粘弾性特性を測定するための方法を提供し、以下のステップ、a)少なくとも1つの測定キャビティを有するカートリッジ装置に、前記カートリッジ装置内部に配される少なくとも1つのプローブ要素を提供すること、b)前記カートリッジ装置を前記インターフェース要素に取り付けることであって、前記シャフトが前記プローブ要素内に挿入されていること、c)前記カートリッジ装置の測定キャビティ内にサンプル液を充填すること、d)前記回転軸回りの揺動運動でシャフトを回転させること、及び、e)前記検出手段によって前記シャフトの回転を検出することにより、前記サンプル液の粘弾性特性を測定すること、を備える。
【0030】
望ましい実施形態において、プローブ要素は、サンプル液と協働するプローブピンと、測定システムへの接続のためのコネクタ部とを備える。コネクタ部は、例えば、プローブ要素内で延びる孔として構成され、かつ、例えばクリップ手段又はねじであり得る摩擦接続手段を備える。挿入ガイドが、測定システムの部品、特にシャフトの挿入を促進する。それによって、シャフトは、プローブ要素にしっかりと接続され得る。
【0031】
少なくとも1つの測定キャビティは、シャフトの挿入の前に、プローブ要素を配列又は保持するために、プローブ要素のための保持又は支持手段を備え得る。
【0032】
シャフトがコネクタ部に挿入された後で、シャフトは、プローブ要素を動作位置に配置するために持ち上げられ得る。
【0033】
他の望ましい実施形態において、プローブ要素は、取り外し可能に固定されるカバーの構成部品として構成される。オペレータは、カートリッジ装置を測定システムに取り付けなければならないだけであり、プローブ要素内に挿入されているシャフトは、プローブ要素をカバーから取り外し、測定を実行できる位置においてそれをしっかりと保持する。それ故、プローブ要素は、プローブ要素をカバーの固定手段の位置で取り外し可能に固定する固定部を備える。
【0034】
測定後に、カートリッジ装置は、測定装置から取り外され得る。ここで、シャフトは、プローブ要素から取り外される。その後、プローブ要素は、例えば、シーリングを構成するように適合されるフランジによって、測定キャビティをカバーに対してシールする。カバーは、測定キャビティ内でプローブ要素を保持する。
【0035】
カバーの固定手段は、対応するプローブ要素の固定部のクリップ手段と協働するクリップ手段を備えることが望ましい。
【0036】
他の実施形態において、プローブ要素の固定部は、カバーに一体的に構成され、カバーの固定手段は、孔(パーフォレーション)を備える。
【0037】
カバーは、接着又は溶着のいずれかによってカートリッジ本体に固定され得る。他の実施形態において、カバーは、例えばプラスチック材料で製造されるカートリッジ本体に一体的に構成される。カバーは、カートリッジ本体とは異なる材料で製造されることも可能である。それは、例えば、2以上の成分の成形によって行われ得る。
【0038】
さらなる望ましい実施形態において、カートリッジ装置は、サンプル液を受けるためにその内部に構成される少なくとも1つの受入キャビティと、少なくとも1つの試薬を保持するための少なくとも1つの試薬キャビティと、前記キャビティと前記少なくとも1つの測定キャビティとを接続する配管と、配管によって、サンプル液を少なくとも1つの受入キャビティから少なくとも1つの測定キャビティに移送するために、配管に接続される少なくとも1つのポンプ手段と、をさらに備え、カバーは、前記キャビティと前記配管とを覆い、かつ前記キャビティと前記配管を少なくとも部分的に構成し、かつ、少なくとも部分的にポンプ手段を構成する。
【0039】
さらなる実施形態において、少なくとも1つの試薬キャビティは、ポンプ手段又は/及び少なくとも1つの測定キャビティ又は/及び1以上の配管に、一体的に構成される。試薬キャビティは、深いキャビティ、又は、試薬が溜められ得る単なる小さな場所として構成され得る。それ故、配管とポンプ手段を通じて測定キャビティ内に圧送されているサンプル液は、試薬と混合され得る。
【0040】
ポンプ手段は、圧送された液を測定キャビティ内に導くために、サンプル液の導かれる流れのための少なくとも1つのバルブを備える。
【0041】
他の実施形態において、前記試薬又は追加の試薬が、外部の手段によって開かれ得る少なくとも1つの試薬容器内に保存され得る。
【0042】
さらなる実施形態において、試薬を保存する少なくとも1つの試薬容器は、カバー内に一体化される。
【0043】
他の実施形態において、少なくとも1つの試薬容器は、試薬を配管内及び/又はキャビティの1つの中に排出するために、外部の手段によって開かれ得る底部を備える。容器は、例えばブリスター容器として適合され得る。少なくとも1つの試薬は、粉砕された形態、固体の形態又は液体の形態で、カートリッジ装置内に保存され得る。
【0044】
カートリッジ装置には、その内部に保存される少なくとも1つの試薬がさらに供給され得る。受入キャビティが備えられない場合には、液内に充填することが、測定キャビティ内に直接的に行われ得る。この目的を達成するために、サンプル液は、カバーを通じて、開口又は通過孔を経由してインターフェース要素内に注入され、又は、オペレータによって配管を通じて注入され、又は、制御装置によって注入され得る。
【0045】
受入キャビティの場合において、サンプル液は、受入キャビティ内に充填され得ると共に、ポンプ手段によって測定キャビティに圧送され得る。
【0046】
サンプル液を充填し、ポンプ手段を操作し、試薬を加えるため及び/又は試薬容器を開くために、測定システムは、制御装置を装備する。制御装置は、インターフェース要素の通路として構成されるポンプアクセスを通じてポンプ手段にアクセスする手段を有する。さらに、制御装置は、インターフェース要素内の入口を通じてサンプル液を受入キャビティ内に注入することができる。制御装置はまた、試薬容器を開くことと同様に、試薬をカートリッジ装置に注入し、又は加える操作手段を備える。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、Hartertによるトロンボエラストグラフィの原理の概略図である。
【
図2】
図2は、典型的なトロンボエラストリック測定を示す例示的な図である。
【
図3】
図3は、トロンボエラストメトリの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明によるカートリッジ装置の第1の実施形態の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明によるカートリッジ装置の第1の実施形態の変形の概略図である。
【
図6】
図6は、本発明によるカートリッジ装置の第1の実施形態の他の変形の概略図である。
【
図7a】
図7aは、プローブ要素の第1の実施形態の概略図である。
【
図7b】
図7bは、使用前の本発明によるカートリッジ装置の第1又は第2の実施形態の測定キャビティ内における
図7aのプローブ要素の第1の実施形態の概略図である。
【
図7c】
図7cは、使用中の本発明によるカートリッジ装置の第1又は第2の実施形態の測定キャビティ内における
図7aのプローブ要素の第1の実施形態の概略図である。
【
図9a】
図9aは、本発明によるカートリッジ装置の第3の実施形態の側面図である。
【
図9b】
図9bは、
図9aのカートリッジ装置のB-B断面図である。
図9cは、
図9aのカートリッジ装置のC-C断面図である。
図9dは、
図9aのカートリッジ装置のD-D断面図である。
【
図13a】
図13aは、本発明による測定システムの実施形態の側面図である。
【
図14】
図14は、本発明によるカートリッジ装置の第3の実施形態の試薬容器の断面図である。
【
図15】
図15は、プローブ要素の第2の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明のさらなる特徴と有利性が、図面の参照とともに実施形態の記載から明白になるであろう。
【0049】
同じ機能を有する部品及び要素は、同じ参照番号で示される。
【0050】
望ましい実施形態の詳細な説明に先立ち、基本の特徴及び、基本の実用的な実施例を以下に述べる。全ての実施形態は、第1の実施形態(
図4、5及び6参照)、第2の実施形態(
図7b,7c及び15参照)、又は、第3の実施形態(
図9、10参照)において構成され得るカートリッジ装置50(
図13c参照)を参照する。カートリッジ装置50は、検査されるサンプル液に接触する全ての部品を含む。これらはまた、サンプル液が測定のために混合されなければならない試薬であり得る。カートリッジ装置50は、カートリッジ装置50が測定前に取り付けられる測定システム40(
図13c参照)の部品である。測定システム40はまた、電気的及び/又は機械的手段によってカートリッジ装置50と相互作用して、サンプル液の流れ及び測定を制御すると共にデータを収集するように適合された制御装置(図示せず)を備える。さらに、この装置は、測定、データ解析、及びユーザインタラクションに求められる機械的及び電気的部品を含む。本発明は、トロンボエラストメトリ、トロンボエラストグラフィ及び血小板凝集測定のみならず、外科手術に関して通常行われる他の血液検査にも適している。
【0051】
本発明のカートリッジ装置50の第1の実施形態について、
図4及び5を参照して記述する。サンプル液1、特に血液サンプルの凝固又は血小板機能のような、医療関連、例えば粘弾性の特性を測定するための測定システム40のためのカートリッジ装置50は、サンプル液1を受ける受入キャビティ16、サンプル液を圧送するためのポンプ手段18、試薬21を保存するための試薬キャビティ19、サンプル液1を測定するための測定キャビティ20、及び前記各キャビティを接続するための配管を備える。配管は、受入キャビティ16からポンプ手段18までの入口ダクト13、ポンプ手段18から試薬キャビティ19までの中間ダクト、及び、試薬キャビティ19から測定キャビティ20までの出口ダクト15を備える。変形形態において、前記キャビティ及びダクトは異なる方法で配置され、そのうち1つが
図5に示されるように、ポンプ手段18及び試薬キャビティ19が変えられる。
【0052】
この実施形態において、受入キャビティ16は、カートリッジ装置50内のキャビティからなる。サンプル液1は、例えば、
図10bにおける受入キャビティカバー33aとして示される自己シーリングキャップを介して、シリンジ、ピペット等によって利用され得る。例えば、上記の制御装置によって、ポンプ手段18を操作することにより、サンプル液は、試薬キャビティ19に移送され、そこでは、測定に必要とされる試薬21がサンプル液1に混合される。さらに、サンプル液1の圧送は、それを測定(以下に記述)が実行される測定キャビティ20内に移送することになる。
【0053】
他の実施形態において、試薬キャビティ19は、ポンプ手段18及び/又は測定キャビティ20及び/又は配管に一体に構成される。サンプル液1の移送は、前記制御装置によって制御され得る。
【0054】
図6は、第1の実施形態の他の変形を示す。1つの受入キャビティ16だけを伴う
図4の2つのアレンジメントが並列に配置され、第1の入口ダクト13が第2のポンプ手段18’に接続される第2の入口ダクト13’と連絡する。第2の中間ダクト14’は、第2の試薬21’を保存する第2の試薬キャビティ19’に繋がる。第2の出口ダクト15’は、第2の試薬キャビティ19’を第2の測定キャビティ20’に接続する。
図6は、容易に想到できる複数の異なるアレンジメント可能な変形を1つだけ示す。サンプル液1は、アレンジメントの間で同時に共有される。外部の制御装置によって制御されることで、サンプル液1の共有される部分は、移送中に異なる試薬21,21’に混合される。使用者に対する最大の利益を達成するために、異なる種類の検査が1つのカートリッジ装置50において組み合わせられ得るということは、当業者にとって明らかである。
【0055】
望ましい実施形態において、カートリッジ装置50は、4つの測定キャビティ20,20’を有する
図4又は5の4つのアレンジメントを備える。それ故、測定は、妥当性をチェックするために、同じサンプル液において異なる試薬で、又は、同じ試薬で同様に行われ得る。
【0056】
例えば、凝血に関して、凝固カスケードの異なる部分を活性化し、又は抑制する有用な異なる試薬が存在する。Pentapharm GmbH (Munich, Germany)は、数ある中で、内因性及び外因性の血液サンプル(それぞれINTEM又はEXTEM)の活性化に関する検査を提供し、かつ、血小板機能が、サイトカラシンD(FIBTEM)の投与によって抑制される外因性の活性化についての検査をも提供する。そのような検査の賢明な組み合わせによって、問題が起こる凝固カスケード内のポイントで、非常に正確に決定できるということが可能であるということが最新の技術である。これは、適切な薬物治療を決定するために非常に重要である。病理サンプルのEXTEM検査における結果を、同じサンプルのFIBTEM検査の結果と比較することにより、例えば、凝固障害が、フィブリノゲンの欠乏又は血小板の機能不全によるものかどうかを正確に決定することが可能になる。一般に、凝固障害が非常に生じやすい異なる典型的な医療状況が存在する。例えば、心臓切開手術中の凝固障害がヘパリンの影響による可能性が最も高い一方で、肝移植手術中に生じる凝固障害は、単に、特定の凝固因子等の欠乏によって生じるに過ぎない。これは、基本的に、異なる医療機関が異なる凝固検査を求めるということを意味する。
図6を参照すると、異なる典型的な手術のために異なるカートリッジ装置50を提供することが可能であり、かつ、価値がある。また、例えば、1つのカートリッジ内で、INTEM、EXTEM及びFIBTEM凝固検査を、血小板凝集検査に組み合わせるということも可能である。そのようなカートリッジを使用して、患者の凝固状態についてのほとんど全ての情報を提供する測定の準備は、単に、外部制御装置を備えた測定システム40にカートリッジ装置50を取り付けること、及び、血液サンプルを1つのサンプル液1として注入すること、の2つのステップを必要とするだけである。いくつかのトロンボエラストグラフィ又はトロンボエラストメトリ検査における、より複雑かつ時間を浪費する準備の重要性を考慮すると、本発明が、より容易で、安全な、かつ、より正確なPOC検査について非常に有利であるということが明白である。
【0057】
記述される実施形態のカートリッジ装置50が、トロンボエラストメトリ、トロンボエラストグラフィ、血小板凝集測定等の種々異なる診断検査に適しているということに留意することが重要である。カートリッジ装置50の設計目的となる検査の種類によって、測定中にサンプルと作用し合う異なる追加の部品、及び/又は外部制御装置が存在する。トロンボエラストメトリ及び血小板凝集測定についての可能な適合が以下に記述される。
【0058】
図7aは、測定キャビティ20(
図10b及び13cも参照)内に設けられるプローブ要素22の第1の実施形態の概略図である。
図7b及び7cは、測定キャビティ20のみを備えるカートリッジ本体30の形式のカートリッジ装置50の第2の実施形態を示す。示される例において、このキャビティ20は、配管15,15’を経由して、キャビティ壁を通じてアクセス可能である。代わりに、キャビティ20は、例えば、注射針等によって、カバー31を通じて充填され得る。
【0059】
プローブ要素22は、中間部23を経由して、フランジ24及び固定部25に接続されるプローブピン3(
図1参照)を備える。プローブ要素22は、回転部品として構成され、さらに、その長手方向の軸(回転軸5(
図3参照)でもある)に沿ってプローブ要素22内に延びる孔として構成されるコネクタ部26を備える。
【0060】
プローブ要素22は、
図7bに示すように、カートリッジ装置50のカートリッジ本体30の測定キャビティ20内に設けられる。測定キャビティ20は、カバー31(
図10b及び13c参照)によって覆われる。カバー31は、測定キャビティ20の上方に、固定手段32を伴う開口を備える。プローブ要素22は、固定手段32に対応するプローブ要素22の固定部25が、固定手段32に係合するように設けられる。この方式において、プローブ要素22は、カバー31に取り外し可能に固定される。この例における固定手段32は、プローブ要素22の固定部25の円形ノッチに対応する円形ノーズを装備する。フランジ24は、カバー31の内側に接触する。
【0061】
測定システム40(
図13cも参照)へのカートリッジ装置50の取り付け中に、測定システム40のシャフト6(
図3及び
図13a~13c参照)は、その下部である挿入部6aによりコネクタ部26内に挿入される。プローブ要素22をコネクタ部26内に挿入することによって、プローブ要素22は、挿入部6aがコネクタ部26内に完全に挿入されてから、カバー31から取り外される。その後、プローブ要素22は、
図7cに示すように、測定位置内に配置され、この場所で維持される。シャフト6の挿入部6aは、例えば摩擦、クリップ手段、ねじ等によって、プローブ要素22のコネクタ部26に係合する。ねじの場合には、プローブ要素22は、カバー31との係合又はカバー31の孔(パーフォレーション)によって保持される。シャフト6の挿入部6aに対応するねじを有するシャフト6は、挿入部6aが完全にコネクタ部26内に挿入されるまで回転することよって、プローブ要素22のコネクタ部内に挿入される。シャフト6は、プローブ要素22がカバー31から取り外されるまで、十分に係合するプローブ要素22と共に、押し下げされ得る、及び/又は、回転させられ得る。
図7cは、測定キャビティ20内に圧送されたサンプル液1を示す。プローブ要素22のプローブピン3は、サンプル液1に浸漬される。上記の測定が実行され得る。測定後に、カートリッジ装置50は、測定システム40から取り外され、シャフト6は、プローブ要素22と共にカバー31に対して引き上げられる。シャフト6の挿入部6aは、プローブ要素22のコネクタ部26から引き抜かれ、プローブ要素22におけるフランジ24は、カバー31の開口に接触してシールする。フランジ24の代わりに、プローブ要素22の上端部が、カバー31内の開口よりも大きな直径を有していてもよい。シャフト6の挿入部6a及び測定キャビティ20,20’は、対称的に構成されることが望ましい。
【0062】
シャフト6の挿入部6aを、プローブ要素22のコネクタ部26内に挿入し、その底部が測定キャビティ20,20’の底部に接触するまで、プローブ要素22を押し下げることも可能であり、それによって、挿入部6aがコネクタ部26内に完全に挿入されることを保証する。その後、シャフト6は、
図7cに示すように、プローブ要素22のそれぞれの測定、作動位置に移動させられる。
【0063】
図8a~8cは、
図7aのプローブ要素22の望ましい実施形態の技術的な図である。
図8aは、側面図を示し、
図8bは、上記の
図7aに関して記述されたプローブ要素22の部品の平面図を示す。最後に、
図8cは、回転軸5に沿う断面図を例示する。コネクタ部26は、プローブ要素22の長さの75%を超えて延びる。
【0064】
ここで、カートリッジ装置50の第3の実施形態について、
図9a~
図9d及び
図10a~10bを参照して記述する。
【0065】
図9aは、本発明によるカートリッジ装置50の第3の実施形態の第2の実施形態の側面図である。
図9bは、
図9aのカートリッジ装置50のB-B断面図である。
図9cは、
図9aのカートリッジ装置のC-C断面図である。
図9bは、
図9aのカートリッジ装置のD-D断面図である。
図10aは、
図9aのカートリッジ装置の平面図である。
図10bは、
図10aのカートリッジ装置のE-E断面図である。
【0066】
この例のカートリッジ装置50には、配管13及び15が備えられる。ダクトは、この実施形態では、直径約1mmで構成される。配管は、漏れ防止された装置を得るために共に接着又は溶着されている2つの部品、すなわちカートリッジ本体30及びカバー31をカートリッジ装置50が備えていることを必要とする。カートリッジ本体30は、比較的硬く、そして、カバー31は、弾性部品として構成される。そうして、ポンプ手段18をカバー内に一体化することが可能になる。さらに、カバー31は、受入キャビティカバー33aで受入キャビティ16を覆い、一種のライナー壁33と、受入キャビティ16内に入口ダクト13のための入口を構成する分離壁34とを構成する。受入キャビティカバー33aは、例えばシリンジによりサンプル液1を注入するための自己シールとして作用し得る。カバー31は、配管13及び15の頂部の部品を構成すると共に、測定キャビティ20のカバー(再度
図7b,7c参照)を構成する。この例において、ポンプ手段18は、カバー31によって構成されるポンプ膜35を備える。ポンプ膜35は、ポンプ膜35の下で、カートリッジ本体30内のポンプキャビティ底部36aとともに構成されるポンプキャビティ36と協働する。
【0067】
この実施形態において、試薬キャビティ19,19’は、例えば、配管又は/及びポンプ手段18,18の試薬が保存されて排出され得る部分、特に、例えばポンプキャビティ底部36aの部分により構成される。
【0068】
ここで、ポンプ手段18について、
図11a,11b及び
図12を参照して記述する。
【0069】
図11aは、カートリッジ装置50のポンプ手段18,18’の断面図であり、
図11bは、
図11aのポンプ手段18の操作位置における断面図であり、
図12は、
図11aのポンプ手段18の概略的な平面図である。
【0070】
この例において、ポンプキャビティ36は、入口バルブ37を経由して入口ダクト13に接続され、出口バルブ38を経由して出口バルブに接続される。制御装置の適切な作動手段(図示せず)によるポンプ膜35の作動(作業サイクル中で
図11bに示す)は、矢印で示される流れの方向39において、サンプル液1の導かれた流れをつくり出す。カバー31の一体化された部分となっているポンプ膜35は、カバーの材料で製造され、又は、カバー31に一体的に製造される他の材料で製造される部品、例えば、2つの成分の製造による部品であり得る。バルブ37,38は、逆止バルブのタイプであり得る。
図12は、概略的な手法におけるポンプ手段の平面図を示す。
【0071】
ポンプ膜35に与えられる外力は、ポンプキャビティ36内の圧力を増加させて、出口バルブ38を開くと共に、入口バルブ37を閉じる。外力を解放することで、弾性ポンプ膜35は、
図11aに示される位置に戻り、それによって、出口バルブ38が閉じられると共に入口バルブ37が開かれることにより、サンプル液1をポンプキャビティ36内に導く。この機構は、独国特許発明第10135569号明細書による最新の技術である。本発明の文脈では、外側からポンプ膜35を作動させる制御装置の作動手段は、サンプル液1と接触するそれらの部品と制御装置との間が厳密に分離しているという利点を有する。同時に、カートリッジ装置50に必要とされる部品の総数、さらに使い捨てられる部品の総数は、最小に維持される。
【0072】
ここで、本発明による測定システム40を、
図13aから13cを参照する実施形態において記述する。
図13aは、測定システム40の実施形態の側面図であり、
図13bは、
図13aの測定システム40の平面図であり、
図13cは、
図13bの測定システム40のH-H断面図である。
【0073】
測定システム40は、カートリッジ装置50が取り付けられ、かつ固定されるインターフェース要素41を備える。インターフェース要素41は、
図13a~
図13cでは、基板としての例により示される。インターフェース要素41の機能は、シャフト6を支持すること、そして、シャフト6の位置、及び、それ故、測定位置における挿入部6aに固定されるプローブ要素22の位置、を維持することである。インターフェース要素41は、
図13a~
図13cに示されるように、カバー31全体に接続され、または、カバー31の各部のみ、例えば、回転軸5を取り囲んで接続され得る。シャフト6は、シャフト通路44内でベアリング7内に回転可能に支持され(
図13c)、駆動手段(図示せず)を介してスプリング9を駆動することによって、回転軸5(
図3参照)回りに回転し得る。検出手段10は、
図3にも示すように、シャフト6上に固定されるミラー8と協働する。上記の制御装置は同じく示されないが、容易に想到できる。作動手段及び/又は操作手段は、インターフェース要素41内の開ポンプアクセス42を通じて、ポンプ手段18にアクセスできる。受入キャビティ16は、もう1つの入口開口43にアクセスできる。カートリッジ装置50及び/又はそのカバー31に対するアクセスを有するインターフェース要素41のこれらの及び他の異なる通路は、
図13aの測定システム40の平面図としての
図13bにより例示される。例えば、通路孔44aは、サンプル液又は試薬の注入のため、測定キャビティ20,20’上のカバー31へのアクセスを構成するように、回転軸の近くに設けられる。追加のアクセス通路孔は、例えば、前記配管にアクセスするために配管上で、インターフェース要素41内に設けられ得る。
【0074】
図13cは、取り付けられたカートリッジ装置50及び測定システム40を示す
図13bのH-H断面図を例示する。その挿入部6aを伴うシャフト6は、プローブ要素22内に挿入され、上記のように測定位置においてそれを維持する。この実施形態は、測定キャビティ20を1つだけ備えるが、本発明の改良及び組み合わせが異なる手法で行われ得るということが当業者にとって明らかである。
【0075】
それ故、例えば、本発明によるカートリッジ装置50の第3の実施形態の試薬容器19bの断面図である
図14に示されるように、例えばブリスター容器内に試薬容器19bを設けることが可能である。容器19bは、試薬キャビティ底部19a,19a’を伴う試薬キャビティ19,19’上におけるカバー31の試薬カバー開口45内で保持リング46内に保持されるブリスターカバー49、底部48及びフレーム47によって画定されるチャンバ内に保持される試薬21を含む。制御装置によるブリスターカバー49上への力の作用により底部48が開き、そして、試薬キャビティ19,19’内に試薬が排出される。容器19bは、例えば、示されるようなクリップ手段によってカバーに固定され得る。フレーム47は、補強リングであり得る。ブリスターカバー49は、力が作用したときに損傷しないように補強されている。カートリッジ装置50の気密性は保証される。この方法において、利用される構造システムが造られ、それぞれの試薬が容易にカートリッジ装置50内に統合され得る。試薬が冷却されると共に、容易に移送及び供給されている小さな要素として設計され得ることもまた有利である。
【0076】
配管に接続されている、備えられたキャビティ内に試薬容器を挿入することも可能である。試薬は、サンプル液によって溶解される前に開口を通じて配管内に流れ得ないように、適切な直径の球剤として設計され得る。
【0077】
図15は、プローブ要素22’の第2の実施形態の概略図である。プローブ要素22’は、測定キャビティ20内に設けられる。プローブピン3には、その底部にディンプル29が備えられる。ディンプル29は、ノーズ29aとともに、プローブ要素22’を支持する先端ベアリングを構成する。プローブ要素22’は、
図7aのプローブ要素22と同様であるが、固定部25を有しておらず、フランジ24のみを有する。コネクタ部26は、シャフトの挿入部6aのための挿入ガイド27で構成される頂部を備える。プローブ要素22’は、シャフト6の挿入部6aが、固定手段を有していないカバー31の開口32aを通じて容易に挿入され得るように、特定の手法において測定キャビティ20内に保持される。挿入部6aは、プローブ要素22’のコネクタ部26の内側で溝28に係合し得る。先端ベアリングによって支持される係合の後に、シャフト6は、測定位置において、プローブ要素22’とともに引き上げられる。実際には、他の係合手段を使用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…サンプル液、2…カップ、3…プローブピン、4…トーションワイヤ、5…回転軸、6…シャフト、6a…挿入部、7…ベアリング、8…ミラー、9…スプリング、10…検出手段、11…基板、12…カップホルダ、13,13’…入口ダクト、14,14’…中間ダクト、15,15’…出口ダクト、16,16’…受入キャビティ、17…分岐ダクト、18,18’…ポンプ手段、19,19’…試薬キャビティ、19a,19a’…試薬キャビティ底部、19b…試薬容器、20,20’…測定キャビティ、21,21’…試薬、22,22’…プローブ要素、23…中間部、24…フランジ、25…固定部、26…コネクタ部、27…挿入ガイド、28…溝、29…ディンプル、29a…ノーズ、30…カートリッジ本体、31…カバー、32…固定手段、32a…開口、33…壁、33a…受入キャビティカバー、34…分離壁、35…ポンプ膜、36…ポンプキャビティ、36a…ポンプキャビティ底部、37…入口バルブ、38…出口バルブ、39…流れの方向、40…測定システム、41…インターフェース要素、42…ポンプアクセス、43…入口開口、44…シャフト通路、44a…通路孔、45…試薬カバー開口、46…保持リング、47…フレーム、48…底部フォイル、49…ブリスターカバー、50…カートリッジ装置