(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置、圧縮機および方法
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20240920BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240920BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20240920BHJP
F04B 39/08 20060101ALI20240920BHJP
F25B 1/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F25B49/02 560
F25B1/00 396Z
F04B39/00 C
F04B39/08 A
F25B1/04 Z
(21)【出願番号】P 2023138704
(22)【出願日】2023-08-29
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】松村 賢治
(72)【発明者】
【氏名】多田 修平
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宏治
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-096734(JP,A)
【文献】特開2018-096652(JP,A)
【文献】特開2018-025372(JP,A)
【文献】特開2015-232319(JP,A)
【文献】特開2018-112396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/08
F04C 29/00
F25B 1/00 - 1/10
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機の内部の圧力に応答して、前記圧縮機内の冷媒を放出する放出部材と、
前記放出部材により前記冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける方向付け部材と
を備え、前記圧縮機は、
電源端子部と、
前記圧縮機の内部において前記電源端子部の周囲および前記放出部材に連通する部位の周囲を囲む内部壁部と
を含む、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
冷凍サイクル装置であって、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機の内部の圧力に応答して、前記圧縮機内の冷媒を放出する放出部材と、
前記放出部材により前記冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける方向付け部材と
を備え、前記圧縮機は、
前記圧縮機の内部の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧縮機の内部の温度を検出する温度検出素子と、
前記放出部材へ連通する部位に設けられた放電素子と
を含み、前記冷凍サイクル装置は、前記圧縮機の制御装置を含み、前記制御装置は、前記圧力検出素子により検出される前記圧力および前記温度検出素子により検出される前記温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、前記放電素子から放電させるよう構成される、冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記方向付け部材は、前記放出部材の前記放出方向を可変とするための回動部材を備え、前記回動部材の回動可能な範囲により前記構成可能な方向の範囲が規定され、前記回動部材の回動により前記冷媒の前記放出方向が前記所定の方向に構成される、請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記方向付け部材は、当該冷凍サイクル装置の少なくとも部分的な設置後に取り付け可能に構成されており、前記方向付け部材は、それぞれ取り付けることで前記構成可能な方向の範囲内の方向を与える形状を有する複数の部材のうちの一つであり、前記方向付け部材は、取り付けられることで前記放出部材の前記放出方向が前記所定の方向となる形状を有する、請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記方向付け部材は、それぞれ前記放出部材を取り付けることが可能でかつ前記圧縮機の外周方向で方向をずらして設けられた複数の接続部であり、前記複数の接続部の方向が前記放出部材による前記構成可能な方向の範囲内の方向を規定し、前記複数の接続部のうちのいずれか1つに前記放出部材が取り付けられることで前記放出部材の前記放出方向が前記所定の方向に構成される、請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
冷媒を圧縮する圧縮機の本体部と、
前記圧縮機の内部の圧力に応答して、前記圧縮機内の冷媒を放出する放出部材と、
前記放出部材により前記冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける方向付け部材と
電源端子部と、
前記圧縮機の内部において前記電源端子部の周囲および前記放出部材に連通する部位の周囲を囲む内部壁部と
を備える、圧縮機。
【請求項7】
冷媒を圧縮する圧縮機の本体部と、
前記圧縮機の内部の圧力に応答して、前記圧縮機内の冷媒を放出する放出部材と、
前記放出部材により前記冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける方向付け部材と
前記圧縮機の内部の圧力を検出する圧力検出素子と、
前記圧縮機の内部の温度を検出する温度検出素子と、
前記放出部材へ連通する部位に設けられた放電素子と、
前記圧力検出素子により検出される前記圧力および前記温度検出素子により検出される前記温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、前記放電素子から放電させるよう構成される制御装置と
を含む、圧縮機。
【請求項8】
冷媒を圧縮する圧縮機であって、前記圧縮機の内部の圧力を検出する圧力検出素子と、前記圧縮機の内部の温度を検出する温度検出素子と、所定の部位に設けられた放電素子とを含む、前記圧縮機と、
前記圧縮機の内部の圧力に応答して、前記圧縮機内の冷媒を放出する放出部材であって、前記所定の部位が、前記放出部材へ連通する部位である、前記放出部材と、
前記圧力検出素子により検出される前記圧力および前記温度検出素子により検出される前記温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、前記放電素子から放電させるよう構成される制御装置と
を含む、冷凍サイクル装置。
【請求項9】
冷凍サイクル装置が実行する方法であって、
圧縮機により、冷媒を圧縮するステップと、
圧力検出素子により、前記圧縮機の内部の圧力を検出するステップと、
温度検出素子により、前記圧縮機の内部の温度を検出するステップと、
制御装置により、前記圧力検出素子により検出される前記圧力および前記温度検出素子により検出される前記温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、前記圧縮機の内部の圧力に応答して、前記圧縮機内の冷媒を放出する放出部材へ連通する部位に設けられる放電素子から放電させるステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に関し、より詳細には、冷凍サイクル装置、冷凍サイクル装置の圧縮機および冷凍サイクル装置が実行する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエネルギー枯渇問題および地球温暖化問題が注目され、冷凍空気調和機器(冷凍サイクル装置)に使用される冷媒に対しても、エネルギー消費効率(COP;Coefficient of Performance)が高く、かつ、環境負荷がより小さいものが望まれている。特に地球温暖化問題に対する注目度は高く、冷媒が漏れることでの直接的影響、すなわち地球温暖化係数(GWP;Global Warming Potential)が低く、かつ、間接的な影響、すなわち消費エネルギーが小さい冷媒が求められている。
【0003】
一方、人の生活環境に近いところで使用されることもあり、無毒性および低燃焼性の観点からの配慮も重要となっている。現在、低GWP冷媒として有力な冷媒がいくつか提案されているが、その中でも、不均化反応を起こすが高性能である冷媒が知られている。不均化反応が起こると、急激に冷媒が膨張し、圧力が急激に上昇することから、不均化反応を起こす冷媒を用いる場合にその対策が求められる。
【0004】
上記のような不均化反応を起こす冷媒に関連し、特開2018‐112396号公報(特許文献1)が知られている。特開2018-112396号公報(特許文献1)は、HFO-1123の不均化反応による爆発を防止することを目的として、制御機構によって、冷媒回路の圧縮機から膨張弁までの流路(即ち、高圧側)における冷媒の圧力を閾値以下に制御する、冷凍サイクル装置を開示する。特許文献1は、さらに、圧縮機の密閉容器の外に冷媒を排出するために使用されるリリーフバルブを開示し、制御装置は、冷媒回路の高圧側における冷媒の圧力が第4値に達すると、リリーフバルブを開く構成を開示する。しかしながら、不均化反応は急激に冷媒が膨張することから、リリーフ弁から冷媒を逃がすにしても、冷媒が噴出される。また、冷媒のみならず、圧縮機内の油も噴出する蓋然性がある。そのため、冷凍サイクル装置の設置の状態により、好ましくない方向へ冷媒等を噴出してしまう蓋然性があり、これに対する対応が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記点に鑑みて為されたものであり、本開示は、冷凍サイクル装置(圧縮機)の設置状態に応じて、圧縮機の内部の圧力に応じて冷媒を放出する放出部材により望ましくない方向に冷媒が放出されることを防止することが可能な冷凍サイクル装置、圧縮機および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示では、上記課題を解決するために、下記特徴を有する冷凍サイクル装置を提供する。本冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機の内部の圧力に応答して、圧縮機内の冷媒を放出する放出部材と、放出部材により冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける方向付け部材とを備える。
【0008】
また、本開示によれば、圧縮機により、冷媒を圧縮するステップと、圧縮機の内部の圧力に応答して、放出部材により、圧縮機内の冷媒を、方向付け部材により構成可能な方向の範囲の中から方向付けられた所定の方向に放出するステップとを含む、冷凍サイクル装置が実行する方法が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、圧縮機であって、冷媒を圧縮する圧縮機の本体部と、圧縮機の内部の圧力に応答して、圧縮機内の冷媒を放出する放出部材と、放出部材により冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける方向付け部材とを備える、圧縮機が提供される。
【0010】
また、本開示によれば、下記特徴を有する冷凍サイクル装置を提供する。本冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮する圧縮機であって、圧縮機の内部の圧力を検出する圧力検出素子と、圧縮機の内部の温度を検出する温度検出素子と、所定の部位に設けられた放電素子とを含む、圧縮機と、圧縮機の内部の圧力に応答して、圧縮機内の冷媒を放出する放出部材であって、所定の部位が、放出部材へ連通する部位である、放出部材と、圧力検出素子により検出される圧力および温度検出素子により検出される温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、放電素子から放電させるよう構成される制御装置とを含む。
【0011】
また、本開示によれば、下記特徴を有する、冷凍サイクル装置が実行する方法が提供される。本方法は、圧縮機により、冷媒を圧縮するステップと、圧力検出素子により、圧縮機の内部の圧力を検出するステップと、温度検出素子により、圧縮機の内部の温度を検出するステップと、制御装置により、圧力検出素子により検出される圧力および温度検出素子により検出される温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、圧縮機の内部の圧力に応答して、圧縮機内の冷媒を放出する放出部材へ連通する部位に設けられる放電素子から放電させるステップとを含む。
【0012】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄および図面により明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0013】
上記構成によれば、冷凍サイクル装置(圧縮機)の設置状態に応じて、圧縮機の内部の圧力に応じて冷媒を放出する放出部材により望ましくない方向に冷媒が放出されることを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態による冷凍機の構成図である。
【
図2】
図2は、不均化反応が発生したときリリーフ弁から冷媒を放出する構成において、冷凍機の設置状況によって望ましくない方向へ冷媒や油等を噴出してしまう様子を説明する
【
図3】
図3は、本発明の1または複数の実施形態による冷凍機の圧縮機に設けられるリリーフ弁の構成例を説明する。
【
図4】
図4は、本発明のさらに他の実施形態による冷凍機の圧縮機に設けられるリリーフ弁の構成例を説明する。
【
図5】
図5は、本発明の好ましい実施形態によるリリーフ弁が設けられた圧縮機の内部構造を説明する図である。
【
図6】
図6は、好ましい実施形態による、偶発的な不均化反応が起こる前に放出部材の付近で放電させることで不均化反応を意図的に誘導する構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明の実施形態は、以下に説明する具体的な実施形態に限定されるものではない。なお、図面において、同一符号は、同一または相当部分を示すものとする。
【0016】
本開示は、冷凍サイクル装置、冷凍サイクル装置の圧縮機および冷凍サイクル装置が実行する方法を対象とする。本発明の実施形態による冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機の内部の圧力に応答して、圧縮機内の冷媒を放出する放出部材と、放出部材により冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける方向付け部材とを備える。
【0017】
上記構成により、冷凍サイクル装置(圧縮機)の設置状態に応じて、圧縮機の内部の圧力に応じて冷媒を放出する放出部材により望ましくない方向に冷媒が放出されることを防止することが可能となる。
【0018】
好ましい実施形態においては、方向付け部材は、放出部材の放出方向を可変とするための回動部材を備えてもよい。回動部材の回動可能な範囲によって、構成可能な方向の範囲が規定され、回動部材の回動によって、冷媒の放出方向が所定の方向に構成される。これにより、設置状態に合わせて回動部材を回動させるという簡便な操作で、放出部材の放出方向を所望の方向(放出が望ましくない方向以外の方向)に向けることが可能となる。
【0019】
他の好ましい実施形態においては、方向付け部材は、当該冷凍サイクル装置の少なくとも部分的な設置後に取り付け可能に構成される。方向付け部材は、それぞれ取り付けることで放出部材の構成可能な方向の範囲内の方向を与える形状を有する複数の部材のうちの一つであってよい。方向付け部材は、取り付けられることで放出部材の放出方向が所定の方向となる形状を有する。これにより、複数の部材の中から、取り付けることで所望の方向を与える形状を有する一つを選択して取り付けるという簡便な操作で、放出部材の放出方向を所望の方向(望ましくない方向以外の方向)に向けることが可能となる。
【0020】
さらに他の好ましい実施形態においては、方向付け部材は、それぞれ放出部材を取り付けることが可能でかつ圧縮機の外周方向で方向をずらして設けられた複数の接続部であってよい。複数の接続部の方向が放出部材による構成可能な方向の範囲内の方向を規定し、複数の接続部のうちのいずれか1つに放出部材が取り付けられることで放出部材の放出方向が所定の方向に構成される。これにより、複数の接続部の中から、所望の方向を規定する一つを選択してそれに放出部材を取り付けるという簡便な操作で、放出部材の放出方向を所望の方向(望ましくない方向以外の方向)に向けることが可能となる。
【0021】
好ましい実施形態においては、圧縮機は、電源端子部と、圧縮機の内部において電源端子部の周囲および放出部材に連通する部位の周囲を囲む内部壁部とを含む。冷媒として不均化反応を起こし得る冷媒を用いる場合、電源端子部が起点として反応が起こり得るところ、この構成により、電源端子部が起点として反応が起こった場合に、不均化反応による圧力伝播が放出部材の方へ優先的に起こるようになる。
【0022】
好ましい実施形態においては、圧縮機は、圧縮機の内部の圧力を検出する圧力検出素子と、圧縮機の内部の温度を検出する温度検出素子と、放出部材へ連通する部位に設けられた放電素子とを含む。冷凍サイクル装置は、圧縮機の制御装置を含む。制御装置は、圧力検出素子により検出される圧力および温度検出素子により検出される温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、放電素子から放電させるよう構成される。これにより、不均化反応が起こる前に放出部材の付近で放電させることで不均化反応を意図的に誘導し、放出部材を作動させることができる。ひいては、圧縮機内部の任意の部位で偶発的に不均化反応が起こってしまう前に、制御下で放出部材から冷媒を放出させることが可能となる。
【0023】
好ましい実施形態においては、冷媒は、HFO-1123またはHFO-1132(E)である。これにより、上述した不均化反応への対処を行いながら、エネルギー消費効率を高め、かつ、環境負荷をより小さくすることが可能となる。
【0024】
本発明の実施形態による冷凍サイクル装置が実行する方法は、圧縮機により、冷媒を圧縮するステップと、圧縮機の内部の圧力に応答して、放出部材により、圧縮機内の冷媒を、方向付け部材により構成可能な方向の範囲の中から方向付けられた所定の方向に放出するステップとを含む。
【0025】
上記構成により、冷凍サイクル装置(圧縮機)の設置状態に応じて、圧縮機の内部の圧力に応じて冷媒を放出する放出部材により望ましくない方向に冷媒が放出されることを防止することが可能となる。
【0026】
本発明の実施形態による圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機の本体部と、圧縮機の内部の圧力に応答して、圧縮機内の冷媒を放出する放出部材とを備え、さらに、放出部材により冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける方向付け部材を備える。
【0027】
上記構成により、圧縮機の設置状態に応じて、圧縮機の内部の圧力に応じて冷媒を放出する放出部材により望ましくない方向に冷媒が放出されることを防止することが可能となる。
【0028】
本発明の他の実施形態による冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮する圧縮機であって、圧縮機の内部の圧力を検出する圧力検出素子と、圧縮機の内部の温度を検出する温度検出素子と、所定の部位に設けられた放電素子とを含む、圧縮機を備える。冷凍サイクル装置は、また、圧縮機の内部の圧力に応答して、圧縮機内の冷媒を放出する放出部材であって、所定の部位が、放出部材へ連通する部位である、放出部材を備える。冷凍サイクル装置は、圧力検出素子により検出される圧力および温度検出素子により検出される温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、放電素子から放電させるよう構成される制御装置をさらに含む。
【0029】
上記構成により、不均化反応が起こる前に放出部材の付近で放電させることで不均化反応を意図的に誘導して、放出部材を作動させることができる。ひいては、圧縮機内部の任意の部位で偶発的に不均化反応が起こる前に、制御下で放出部材から冷媒を放出させることが可能となる。
【0030】
本発明の他の実施形態による冷凍サイクル装置が実行する方法は、圧縮機により、冷媒を圧縮するステップと、圧力検出素子により、圧縮機の内部の圧力を検出するステップと、温度検出素子により、圧縮機の内部の温度を検出するステップと、制御装置により、圧力検出素子により検出される圧力および温度検出素子により検出される温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、圧縮機の内部の圧力に応答して、圧縮機内の冷媒を放出する放出部材へ連通する部位に設けられる放電素子から放電させるステップとを含む。
【0031】
上記構成により、不均化反応が起こる前に放出部材の付近で放電させることで不均化反応を意図的に誘導して、放出部材を作動させることができる。ひいては、圧縮機内部の任意の部位で偶発的に不均化反応が起こる前に、制御下で放出部材から冷媒を放出させることが可能となる。
【0032】
以下、
図1~
図6を参照しながら、本発明の実施形態による冷凍サイクル装置、冷凍サイクル装置の圧縮機および冷凍サイクル装置が実行する方法の一例として、冷凍機10、冷凍機10の圧縮機24および冷凍機10が実行する方法を一例として説明する。
【0033】
なお、
図1~
図6に示した実施形態は、冷凍サイクル装置の一例としての冷凍機10を説明するものである。ここで、冷凍サイクル装置は、冷凍空気調和機器とも呼ばれ、冷凍空気調和機器とは、エアーコンディショナー(エアコン)や、冷蔵庫、冷凍庫など、冷媒および冷凍サイクルを利用した機器を総称するものである。冷凍空気調和機器の例としては、より具体的には、パッケージエアコンやビル用マルチエアコンなど空気調和機、上記冷凍機やチリングユニットなどの熱源機器、ショーケースや冷凍冷蔵庫、ユニットクーラー、製氷機など業務用冷凍機、カーエアコンなどの輸送用冷凍機器、ヒートポンプ給湯機などが含まれ得る。
【0034】
以下、まず、
図1を参照しながら、冷凍サイクル装置の一例としての冷凍機10の全体構成について説明する。
図1は、冷凍機10の構成例を示した図である。冷凍機10は、例えば、第1の筐体11内に、第1の熱交換器12と、第1のファン13と、第1のファンモータ14とを備え、第2の筐体20内に、第2の熱交換器21と、第2のファン22と、第2のファンモータ23と、圧縮機24と、減圧機構25と、制御装置26とを備える。
【0035】
第1の筐体11内の第1の熱交換器12は、配管30、31により、第2の筐体20内の圧縮機24と減圧機構25とに接続される。第2の筐体20内の第2の熱交換器21は、配管32、33により、第2の筐体内の圧縮機24と減圧機構25とに接続される。
【0036】
圧縮機24は、配管30内の冷媒を吸引し、昇圧し、配管32を介して第2の熱交換器21へ向けて吐出する。第2の熱交換器21は、第2のファン22により冷媒と対象空間外の空気との間で熱交換を行い、冷媒を空冷して凝縮させる。このような圧縮機24としては、特に限定されるものではなく、スクロール型圧縮機を用いることができるが、レシプロ型やスクリュー型の圧縮機を用いてもよい。
【0037】
凝縮した冷媒は、配管33を介して減圧機構25へ送られる。減圧機構25では、凝縮した冷媒を減圧する。減圧された冷媒は、配管31を介して第1の熱交換器12へ送られる。
【0038】
第1の熱交換器12では、第1のファン13により取り込まれた、対象空間内の空気と、減圧された冷媒との間で熱交換を行い、冷媒が蒸発して空気を冷却する。冷却された空気は、対象空間内へ戻される。
【0039】
第1のファン13には、第1のファンモータ14が接続され、第2のファン22には、第2のファンモータ23が接続される。第1のファンモータ14、第2のファンモータ23および圧縮機24に内蔵されたモータは、制御装置26または他の部材が備えるモータ駆動装置により駆動され、制御される。
【0040】
制御装置26は、上述したセンサ類の検出値やコントローラからの操作信号に基づいて、圧縮機24を含む各機器を制御する。また制御装置26は、好ましい実施形態においては、後述する、圧縮機24内の圧力および温度に基づいて圧縮機24内部で意図的に不均化反応を誘導する動作を行う制御装置である。制御装置26は、特定用途向け集積回路(ASIC)として構成されてもよいし、CPU(Central Processing Unit)が不揮発性記録媒体に記憶されたプログラムを読み出してメモリに展開し、各種処理を実行するものとして、CPU、メモリおよび不揮発性記録媒体により構成されてもよい。
【0041】
制御装置26には、各種センサ類からの信号が入力され得る。このようなセンサ類としては、吸入圧力センサ、吐出圧力センサ、吐出温度センサ、温度センサなどを挙げることができる。好ましい実施形態においては、センサ類としては、それぞれ圧縮機24の内部の圧力および温度を検知する圧力センサおよび温度センサが含まれてもよい。好ましい実施形態において、圧力センサは、圧縮機24の内部の圧力を検出する。温度センサは、圧縮機24の内部の温度を検出する。
【0042】
図1に示した例では、冷凍機10は、第1の筐体11内の第1の熱交換器12を蒸発器として使用し、第1の筐体11が設置される空間内の空気を冷却する機能のみを有する機器とされている。しかしながら、冷凍機10は、四方弁を設け、冷媒が流れる方向を変えることにより、第1の熱交換器12を凝縮器として使用し、第1の筐体11が設置される空間内の空気を暖める機能も有していてもよい。
【0043】
上述した、第1の熱交換器12、圧縮機24、第2の熱交換器21および減圧機構25からなる冷媒回路においては、冷媒が循環する。近年のエネルギー枯渇問題および地球温暖化問題が注目されていることから、この冷媒に対して、エネルギー消費効率(COP;Coefficient of Performance)が高く、かつ、環境負荷がより小さいものが望まれている。低GWP冷媒として有力な冷媒がいくつか提案されているが、その中でも、HFO(ハイドロフルオロオレフィン)-1123やHFO-1132(E)などのハイドロフルオロオレフィン冷媒が知られている。これらの冷媒の多くは、不均化反応を起こすことが知られている。不均化反応が起こると、急激に冷媒が膨張し、圧力も急激に上昇することから、不均化反応を起こす冷媒を用いる場合にその対策が求められる。
【0044】
不均化反応は、一般に高い温度および高い圧力の条件で起こるため、冷凍サイクルの冷媒回路において不均化反応が起こり得る箇所は、圧縮機24である。そこで、圧縮機にリリーフ弁を設ける構成も検討されるが、しかしながら、不均化反応は急激に冷媒が膨張することから、リリーフ弁から冷媒を逃がすにしても、冷媒が噴出される。また、冷媒のみならず、圧縮機内の油も噴出する蓋然性がある。そのため、冷凍機10の設置の状態により、望ましくない方向へ冷媒や油等を噴出してしまう蓋然性がある。
【0045】
図2は、不均化反応が発生したときリリーフ弁から冷媒を放出する構成において、冷凍機(第2の筐体)の設置状況によって望ましくない方向へ冷媒や油等を噴出してしまう様子を説明する。なお、
図2(A)および
図2(B)は、上から俯瞰して見える圧縮機24の設置状態を表している。
図2(A)は、リリーフ弁Bの放出方向dが、汚れてもよい壁Wに向いている設置状態を説明する。
図2(B)は、リリーフ弁Bの放出方向dが、汚れることが望ましくない対象Vに向いている設置状態を説明する。一般に、冷凍機(第2の筐体)の向きとリリーフ弁の放出方向bとは固定されており、設置状態から、汚れることが望ましくない対象Vが存在する(存在する可能性のある)方向にリリーフ弁Bの放出方向dが向いてしまう場合、何らかの原因で不均化反応が起こってしまったときに、対象Vへ冷媒や油等を噴出してしまう蓋然性がある。
【0046】
そこで、本発明の1または複数の実施形態による冷凍機10では、圧縮機24の内部の圧力に応答して、圧縮機24内の冷媒を放出する放出部材を設け、放出部材により冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける方向付け部材を設ける構成を採用する。この構成により、冷凍機10(より具体的には圧縮機24)の設置状態に応じて、望ましくない方向に冷媒等が放出されることの防止を図る。
【0047】
図3は、本発明の1または複数の実施形態による冷凍機10の圧縮機24に設けられるリリーフ弁の構成例を説明する。なお、
図3は、上から俯瞰して見える圧縮機24の設置状態を表している。
図3(A)は、本発明の一実施形態による冷凍機10の圧縮機24に設けられるリリーフ弁の構成例100を説明する。
図3(B)は、本発明の他の実施形態による冷凍機10の圧縮機24に設けられるリリーフ弁の構成例110を説明する。
図3(C)および
図3(D)は、本発明の一実施形態による冷凍機10の圧縮機24に設けられるリリーフ弁の構成例100(110についても同様である。)において、冷凍機10(第2の筐体20)の設置状況に適合させた冷媒や油等の放出方向dを説明する図である。
【0048】
図3(A)に示す実施形態においては、圧縮機24の内部の圧力に応答して圧縮機24内の冷媒を放出する放出部材として、リリーフ弁103が設けられ、リリーフ弁103により冷媒を放出する放出方向dを方向づける方向付け部材として、リリーフ弁103を圧縮機24に接続する回動部材102が設けられた構成を採用する。
図3(A)に示す回動部材102は、略直角の曲がり管構造となっており、さらに、回動部材102の圧縮機24に固定される一端の方向を軸として1方向の自由度で回動可能に構成されており、略直角に曲げられた(またリリーフ弁103が設けられた)他端の方向を軸周り360度の範囲の中から所定の方向に方向づけるものである。回動部材102の回動可能な範囲により構成可能な方向の範囲が規定され、回動部材102の回動により冷媒の放出方向dが所定の方向に構成される。
【0049】
図3(C)および
図3(D)を参照すると、回動部材102およびリリーフ弁103の構成例100により、冷凍機10(第2の筐体20)の設置状況に適合させて、汚れることが望ましくない対象Vを避けた方向(
図3(C)では壁Wの方向、
図3(D)では、壁Wも対象Vもない方向)に放出方向dが向けられている様子が描かれている。
【0050】
なお、説明する実施形態では、回動部材102は、1方向の回転自由度で、連続的に方向を変更できるものとして説明するが、段階的に方向を変更できるようにしてもよいし、回動部材102の回転の自由度も、1方向に限定されるものではない。また、1方向の回転自由度は、回動部材102が圧縮機24に回動可能に固定されることで与えられ得るが、これに限定されず、略直角の曲がり管構造の中間部で回転する構成とされてもよい。なお、回動部材102は、設置後の冷凍機10の再配置、設置後の周辺環境の変化に対応するため、冷媒を封入して設置した後も回動可能に構成されてもよい。その場合に、適宜、冷媒の密閉性を維持しながら回動可能とされればよい。
【0051】
図3(B)に示す実施形態においては、同様に、圧縮機24の内部の圧力に応答して圧縮機24内の冷媒を放出する放出部材としてリリーフ弁113が設け、リリーフ弁113により冷媒を放出する放出方向dを方向づける方向付け部材として、リリーフ弁113付きのアタッチメント110が圧縮機24の接続部111に取り付けられる構成を採用する。
図3(B)に示すアタッチメント110は、当該冷凍機10の設置後(少なくとも、圧縮機24の接続部111の位置および向きが定まる状態まで設置した後)に取り付け可能に構成されている。
【0052】
図3(B)に示すアタッチメント110は、
図3(B)において点線の矩形で囲んだ中に示すように、それぞれ取り付けることでリリーフ弁113に構成可能な方向の範囲内の方向を与える形状を有する配管構造112を備える複数のアタッチメント110a,110b,110cのうちの一つである。アタッチメント110は、圧縮機24の箇所に取り付けられることでリリーフ弁113の放出方向が所定の方向dとなる形状を有する。アタッチメント110aの配管構造112aは、接続部111に取り付けられた状態でリリーフ弁113が所定の方向に向くように構成された略直角の曲がり管の構造を有する。アタッチメント110bの配管構造112bは、同様に、略直角の曲がり管であるが、接続部111に取り付けられた状態で、リリーフ弁113がアタッチメント110aとは異なる方向を向くものである。アタッチメント110cの配管構造112cは、接続部111に取り付けられた状態でリリーフ弁113が、アタッチメント110a,110bとは異なる所定の方向に向くように構成されたストレート管である。複数のアタッチメント110a,110b,110cにより構成可能な方向の範囲が規定され、複数のアタッチメント110a,110b,110cからの取り付ける一つを選択により冷媒の放出方向dが所定の方向に構成される。
【0053】
なお、
図3(B)では、用意されたアタッチメント110のバリエーションの数は、3つであり、3種類の方向が規定されるが、
図3(B)に示す態様に限定されるものではない。アタッチメント110のバリエーションの数は、2であってもよいし、4以上であってもよく、それに応じて、バリエーションごとに複数の方向が規定される。
【0054】
図4は、本発明のさらに他の実施形態による冷凍機10の圧縮機24に設けられるリリーフ弁の構成例120を説明する。なお、
図4も、上から俯瞰して見える圧縮機24の設置状態を表している。
図4(A)は、リリーフ弁123が取り付けられる前の構成を示し、
図4(B)は、リリーフ弁123が取り付けられた後の構成を示す。
図4(C)および
図4(D)は、本発明のさらに他の実施形態による冷凍機10の圧縮機24に設けられるリリーフ弁の構成例120において、冷凍機10(第2の筐体20)の設置状況に適合させた放出方向dを説明する図である。
【0055】
図4(A)および
図4(B)に示す実施形態においては、圧縮機24の内部の圧力に応答して圧縮機24内の冷媒を放出する放出部材としてリリーフ弁123が設けられ、リリーフ弁123を圧縮機24に取り付ける箇所が複数用意される構成を採用する。リリーフ弁123は、当該冷凍機10の設置後(少なくとも、圧縮機24の接続部122a~122cの位置および向きが定まる状態まで設置した後)に取り付け可能に構成されている。リリーフ弁123により冷媒を放出する放出方向dを方向づける方向付け部材は、それぞれリリーフ弁123を取り付けることが可能でかつ圧縮機24の外周方向で方向をずらして設けられた複数の接続部122a,122b,122cである。複数の接続部122a,122b,122cの方向がリリーフ弁123よる構成可能な方向の範囲内の方向を規定し、複数の接続部122a,122b,122cのうちのいずれか1つにリリーフ弁123が取り付けられることでリリーフ弁123放出方向が所定の方向dに構成される。
【0056】
図4(C)および
図4(D)を参照すると、複数の接続部122およびリリーフ弁123の構成例120により、冷凍機10(第2の筐体20)の設置状況に適合させて、汚れることが望ましくない対象Vを避けた方向(
図4(C)では壁Wの方向、
図4(D)では、壁Wも対象Vもない方向)に冷媒や油等の放出方向dが向けられている様子が描かれている。
【0057】
なお、
図4では、接続部の数は、3つであり、圧縮機24の中心から、略120度ずつ方向をずらして設けられているが、
図4に示す態様に限定されるものではなく、接続部の数は、2つであってもよいし、4以上であってもよいし、それに応じて、略均等な間隔でずらして設けられてもよいし、不均等な間隔でずらして設けられてもよい。
【0058】
図3(A)、
図3(B)および
図4(B)に示す構成例100,110,120のいずれにおいても、リリーフ弁103,113,123は、所定の閾値圧力以上の圧力が発生すると、それに応答して弁が開き、冷媒を逃がすよう構成されたものである。所定の閾値圧力として適切な値を設定することにより、不均化反応は始まった場合でも、一定規模を超えない段階で冷媒を噴出することで、圧縮機24の破損や破壊が防止される。リリーフ弁103が作動した後は、一般的に、冷媒の不均化反応を引き起こす何らかの異常を有することが想定されるので、修理に付されることとなる。
【0059】
図3(A)、
図3(B)および
図4(B)に示す構成例100,110,120における冷凍機10の動作は、以下の通りである。(1)圧縮機24により、冷媒を圧縮するステップが行われる。そして、(2)圧縮機の内部の圧力に応答して、リリーフ弁103,113,123より、圧縮機24内の冷媒を、方向付け部材(回動部材102の回動量、アタッチメント110の選択(110a~110cからの選択)、取り付ける接続部122の選択(122a~122cからの選択))により、構成可能な方向の範囲の中から方向付けられた所定の方向に放出するステップが行われる。
【0060】
なお、リリーフ弁103,113,123は、所定の閾値圧力以上の圧力が発生すると、それに応答して弁が開き(あるいは部材が壊れ)冷媒を逃がすように機械的に構成されたものとして説明する。不均化反応が過大に進行する前に冷媒を放出する観点からは、リリーフ弁103,113,123は、機械的に構成されたものであることが好ましいが、この実施形態に必ずしも限定されるものあではない。他の実施形態においては、圧縮機24の内部の圧力を圧力センサで検出し、制御装置26により、閾値圧力を超えたことに応答して電気的に弁を開き冷媒を逃がすように構成してもよい。また、上述した説明では、リリーフ弁が向く方向自体を変えるものとして説明したが、リリーフ弁の先に放出方向を方向付ける方向付け部材を設ける構成としてもよい。
【0061】
なお、
図3および
図4に示した実施形態は、好ましい実施形態ではあるが、リリーフ弁より冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づけるための具体的な構成例である。他の実施形態では、種々の変形例が考えられる。例えば、圧縮機24にT字管やY字管などの二分岐管や三分岐管など多分岐管を設けて、所望の方向を与える一端にのみリリーフ弁を設けて他方の端部を密閉することにより、方向付けを行ってもよい。
【0062】
以上、リリーフ弁により冷媒を放出する放出方向を、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける構成について、詳細に説明してきた。以下、さらに、リリーフ弁による冷媒の放出を、より適切に行うことが可能な、好ましい実施形態について、
図5を参照しながら説明する。
【0063】
図5は、本発明の好ましい実施形態によるリリーフ弁103が設けられた圧縮機24の内部構造を説明する図である。
図5(A)は、圧縮機24の縦方向の断面図であり、
図5(B)は、圧縮機24を縦方向の中央で、水平に(
図5(A)に垂直な方向で)輪切りにした断面図である。
【0064】
圧縮機24は、筐体201と、吸入部202と、圧縮部203と、吐出部204と、モータ205と、潤滑油206と、電源線207と、電源端子部208とを含み構成される。
図5に示す実施形態においては、圧縮機24には、さらに、回転部材102およびリリーフ弁103の構成100が設けられ、筐体201内部においては、電源端子部208の周囲およびリリーフ弁103に連通する回転部材102が設けられる部位の周囲を囲む内部壁部210が設けられている。
【0065】
不均化反応を起こし得る冷媒を用いる場合、電源端子部208に触れる箇所が起点として反応が起こり得るところ、
図5に示す構成を採用することにより、電源端子部208が起点として反応が起こった場合に、不均化反応による圧力伝播がリリーフ弁103の方へ優先的に起こるようになる。これにより、圧縮機24の破損を好適に防止することが可能となる。
【0066】
なお、内部壁部210は、電源端子部208を密閉するものではない点に留意されたい。また、内部壁部210の素材は、例えば、金属板などを用いることができる。また、
図5には、リリーフ弁103を設ける適切な箇所も示されており、
図5に示すように、リリーフ弁103は、不均化反応を起こしやすい電源端子部208に近接した箇所に好ましくは設けられる。
【0067】
上述したリリーフ弁による冷媒の放出は、何らかの異常により偶発的に生じる不均化反応に起因して起こるものであり、冷媒の放出のタイミングに関し、何ら制御をするものではない。以下、さらに、リリーフ弁による冷媒の放出を制御下で行うことが可能な、好適な実施形態について、
図6を参照しながら説明する。
【0068】
図6は、偶発的な不均化反応が起こる前にリリーフ弁の付近で放電させることで不均化反応を意図的に誘導することが可能な、好ましい実施形態を説明する図である。
図6に示すように、好ましい実施形態においては、圧縮機24は、圧縮機24の内部の圧力を検出する圧力検出素子27と、圧縮機24の内部の温度を検出する温度検出素子28と、リリーフ弁103へ連通する曲がり管構造102内の部位に設けられた放電素子29とを含み、これらの素子は、制御装置26に接続されている。
【0069】
好ましい実施形態において、制御装置26は、圧力検出素子27により検出される圧力および温度検出素子28により検出される温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、放電素子29から放電させるよう構成される。ここで。所定条件は、通常運転で想定される圧力範囲および温度範囲の外の条件であり、何らかの異常により不均化反応によって通常運転で想定される以上の圧力および温度が生じたことを検出する条件である。
【0070】
圧力検出素子27により検出される圧力および温度検出素子28により検出される温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、制御装置26は、放電素子29から放電させる。かかる構成により、不均化反応が起こる前に、リリーフ弁103の付近で放電させることで、不均化反応を意図的に誘導し、リリーフ弁103を作動させることができる。ひいては、圧縮機24内部の任意の部位で偶発的に不均化反応が起こってしまう(ゆえに大きな規模の不均化反応が起こってしまう)前に、制御下でリリーフ弁103から(より小さな規模で不均化反応を誘導し)冷媒を放出させることが可能となる。この構成は、上述したリリーフ弁103の放出方向を方向づける構成と組み合わせて適用されることで、多大な利点を有する。
【0071】
図6に示す好適な実施形態における冷凍機10の動作は、以下の通りである。(1)圧縮機24により、冷媒を圧縮するステップが行われる。そして、圧縮動作中、定期的に(2-1)圧力検出素子27により、圧縮機24の内部の圧力が検出される。(2-2)これと同時に、または前後して、温度検出素子28により、圧縮機24の内部の温度が検出される。そして、(3)制御装置26により、圧力検出素子27により検出される圧力および温度検出素子28により検出される温度が所定条件を満たしたと判断したことに応答して、圧縮機24の内部の圧力に応答して圧縮機24内の冷媒を放出するリリーフ弁103へ連通する構造102内の部位に設けられる放電素子29から放電が行われる(S3)。
【0072】
なお、本発明の実施形態において好適な対象となる冷媒としては、不均化反応を生じ得る冷媒を挙げることができ、例えば、1,1,2-トリフルオロエチレン(HFO-1123)やトランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、フルオロエチレン(HFO-1141)、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))を含有する冷媒を挙げられるが、中でもHFO-1123およびHFO-1132(E)が好適に採用される。この冷媒は、単体でもよいし、あるいは混合物であってもよい。混合物としては、特に限定されるものではないが、上記冷媒と、例えば、プロパンなどの自然冷媒、あるいは、ジフルオロメタン(R32)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze(E))、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze(Z))、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(R125)などの他の冷媒との混合物が用いられてもよい。
【0073】
以上説明したように、上述した実施形態によれば、冷凍サイクル装置(圧縮機)の設置状態に応じて、圧縮機の内部の圧力に応じて冷媒を放出する放出部材により望ましくない方向に冷媒が放出されることを防止することが可能な冷凍サイクル装置、圧縮機および方法を提供することができる。
【0074】
好ましい実施形態によれば、不均化反応を意図的に誘導して放出部材を作動させることで、圧縮機内部の任意の部位で偶発的に不均化反応が起こってしまう前に、制御下で放出部材から冷媒を放出させることが可能な冷凍サイクル装置、圧縮機および方法を提供することができる。
【0075】
なお、本発明の実施形態は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれ得る。例えば、上記した実施形態は、分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
10…冷凍機、11…第1の筐体、12…第1の熱交換器、13…第1のファン、14…第1のファンモータ、20…第2の筐体、21…第2の熱交換器、22…第2のファン、23…第2のファンモータ、24…圧縮機、25…減圧機構、26…制御装置、27…圧力検出素子、28…温度検出素子、29…放電素子、30,31,32,33…配管、100,110,120…構成例、102…回転部材、112…配管構造、122…接続部、103,113,123…リリーフ弁、201…圧縮機の筐体、202…吸入部、203…圧縮部、204…吐出部、205…モータ、206…潤滑油、207…電源線、208…電源端子部、210…内部壁部、B…リリーフ弁、d…放出方向、V…対象、W…壁
【要約】
【課題】 冷凍サイクル装置を提供すること。
【解決手段】 冷凍サイクル装置10は、冷媒を圧縮する圧縮機24と、圧縮機24の内部の圧力に応答して、圧縮機24内の冷媒を放出する放出部材103と、放出部材103により冷媒を放出する放出方向dを、構成可能な方向の範囲の中から所定の方向に方向づける方向付け部材102とを備える。
【選択図】
図3