(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】食感が改善されたタンパク麺製造用組成物、それを用いたタンパク麺の製造方法及びそれを用いて製造されたタンパク麺。
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20240920BHJP
A23L 29/212 20160101ALI20240920BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20240920BHJP
A23L 19/12 20160101ALI20240920BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240920BHJP
A23L 11/65 20210101ALI20240920BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20240920BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20240920BHJP
A23J 3/26 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L7/109 A
A23L29/212
A23L29/256
A23L19/12 Z
A23L11/00 Z
A23L11/00 F
A23L11/65
A23J3/14
A23J3/16
A23J3/26
(21)【出願番号】P 2023501577
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 KR2021014101
(87)【国際公開番号】W WO2022265163
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0077542
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514080420
【氏名又は名称】テサン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン クン
(72)【発明者】
【氏名】ピョン、ミョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チン、チュン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】アン、トゥ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨ ファン
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-117072(JP,A)
【文献】特開2008-263906(JP,A)
【文献】特開昭64-013960(JP,A)
【文献】特開2010-081888(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2002-0048841(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物全体重量に対して、60乃至98重量%の量の植物性タンパク質、
0.5乃至2重量%の量のジャガイモ繊維質、
0.5乃至15重量%の量のアルギン酸、および
0.5乃至15重量%の量のデンプンを含む、
タンパク麺製造用組成物。
【請求項2】
前記植物性タンパク質が豆タンパク質である、請求項1に記載のタンパク麺製造用組成物。
【請求項3】
前記豆が、大豆、黒豆、インゲン豆、ひよこ豆、レンチル豆、薬豆、及びナタマメからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項
2に記載のタンパク麺製造用組成物。
【請求項4】
前記豆タンパク質が、豆粉末、豆乳、および豆腐からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項
2に記載のタンパク麺製造用組成物。
【請求項5】
組成物全体重量に対して、60乃至98重量%の量の植物性タンパク質、
0.5乃至2重量%の量のジャガイモ繊維質、
0.5乃至15重量%の量のアルギン酸、および
0.5乃至15重量%の量のデンプンを含むタンパク麺製造用組成物に水を配合してペーストを形成する段階、及び
前記ペーストを塩化カルシウムを含む凝固水に吐出して麺状に凝固させる段階を含む、
タンパク麺の製造方法。
【請求項6】
前記ペースト形成段階が、タンパク麺製造用組成物100重量部に対して水80乃至500重量部を配合する、請求項
5に記載のタンパク麺の製造方法。
【請求項7】
前記凝固水の塩化カルシウム濃度が0.2乃至4重量%である、請求項
5に記載のタンパク麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食感が改善されたタンパク麺製造用組成物、それを用いたタンパク麺の製造方法及びそれを用いて製造されたタンパク麺に関するものであり、より詳しくは、植物性原料を用いて食感及び組織感に優れ、風味が向上し、生産性に優れたタンパク麺を製造するための組成物、それを用いたタンパク麺の製造方法及びそれを用いて製造されたタンパク麺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
麺は生地を細く長く伸ばした食品を総称するもので、一般的に小麦粉、デンプンのような穀物粉末から製造される。麺はご飯、パンと共に代表的な高炭水化物食品に属し、カルグクス、うどん、パスタ、グクスなどのような様々な食品に世界的に広く使われている。
【0003】
ところが、最近には健康への関心が高まるにつれて、麺のような高炭水化物食品を避ける傾向がある。特に麺は小麦粉のような精製穀物粉末で構成されるため、カロリーや血糖値が高く、体重や血糖管理の面から健康に悪い食品の一つとされている。また、小麦粉生地に存在するグルテンが腸内環境に及ぼす否定的な影響が知られ、麺は避けるべき食品であるという認識がますます高まっている。
【0004】
このような麺の欠点を改善するために、小麦粉を他の原料に置き換えてカロリーおよび血糖値を下げた麺が開発された。代表的な低カロリー麺としては、こんにゃく粉を用いて製造したこんにゃく麺がある。例えば、大韓民国公開特許公報第10-1998-039175号では、こんにゃく粉、寒天粉末、食塩、及び小麦粉を主成分とし、これを撹拌して凝固させて押出成形する方式で低カロリー即席麺を製造する技術を記載している。しかし、こんにゃくを主原料とした麺は、一般的な麺とは著しく異なる組織感や食感を持つ。また、こんにゃくには栄養成分がほとんどないため、栄養学的に不良であり、風味がなく、味覚的側面でも嗜好度が高くなかった。
【0005】
栄養学的に優れ、風味が改善された低カロリー麺を開発するための方案として、豆腐のようなタンパク質成分を用いて製造した高タンパク麺が開発されている。例えば、大韓民国公開特許公報第10-2013-0058865号は、豆腐、小麦粉、及び精製塩を混合した原材料に水を配合して混練した後、押出成形及び乾燥した後、切断して豆腐麺を製造する方法を開示している。しかし、前記技術では麺が依然として小麦粉を含めており、原料に豆腐を添加することを記載しているだけで、柔らかくてコシのある食感を具現するための方案については開示したことがない。また、麺形態を作るために押出成形、乾燥、及び切断の過程を経なければならないため、工程が複雑で大量生産に不利であるという欠点があった。
【0006】
このように、既存の麺製品の欠点を改善するために様々な技術が開発されているが、タンパク質含量の高い低カロリー麺として食感及び組織感に優れ、生産性に優れた長所を均等に備えた技術は提案されていなかった。したがって、これに対する技術開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、食感に優れ、タンパク質含有量の高い麺を製造することができるタンパク麺製造用組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、前記組成物を用いたタンパク麺の製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、前記組成物および製造方法を用いて製造されたタンパク麺を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、植物性タンパク質、ジャガイモ繊維質、アルギン酸、及びデンプンを含む、タンパク麺製造用組成物を提供する。
本発明において、タンパク麺製造用組成物の全体重量に対して、植物性タンパク質は60乃至98重量%含まれることが好ましい。
本発明において、タンパク麺製造用組成物の全体重量に対して、ジャガイモ繊維質は0.2乃至15重量%含まれることが好ましい。
本発明において、タンパク麺製造用組成物の全体重量に対して、アルギン酸は0.5乃至15重量%含まれることが好ましい。
【0009】
本発明において、タンパク麺製造用組成物の全体重量に対して、デンプンは0.5乃至15重量%含まれることが好ましい。
本発明において、前記植物性タンパク質は豆タンパク質であることができる。
本発明において、豆は、大豆、黒豆、インゲン豆、ひよこ豆、レンチル豆、薬豆、及びナタマメからなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
本発明において、前記の豆タンパク質は、豆粉末、豆乳、および豆腐からなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0010】
本発明はまた、植物性タンパク質、ジャガイモ繊維質、アルギン酸、およびデンプンを含むタンパク麺製造用組成物に水を配合してペーストを形成する段階、及び前記ペーストを塩化カルシウムを含む凝固水に吐出して麺状に凝固させる段階を含む、タンパク麺の製造方法を提供する。
【0011】
本発明において、前記タンパク麺製造用組成物100重量部に対して、水80乃至500重量部を配合することが好ましい。
本発明において、前記凝固水の塩化カルシウム濃度は、凝固水重量に対して、0.2乃至4重量%であることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、前記製造方法により製造され、植物性タンパク質、ジャガイモ繊維質、アルギン酸、およびデンプンを含むタンパク麺を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、麺の主原料として植物性タンパク質を用いることにより、タンパク質含有量が高く風味に優れた低カロリー高タンパク麺を製造することができる。また、前記植物性タンパク質とジャガイモ繊維質、アルギン酸、及びデンプンを組み合わせて使用し、それらの含有量を調節して麺の食感及び組織感を大きく改善することができる。さらに、原料の前処理および製麺工程が単純化され、簡単な方法で麺を製造することができ、大量生産に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態により製造された麺を撮影した写真である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態において、植物性タンパク質の含有量の変化による硬度、弾性力、および引張強度の測定結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態において、ジャガイモ繊維質の含有量変化による硬度、弾性力、および引張強度の測定結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態において、塩化カルシウムの濃度変化による硬度、弾性力、および引張強度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態について、より詳細に説明する。他の式で定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野で熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。一般的に、本明細書で使用される命名法は、当技術分野で周知であり、通常使用されるものである。
【0016】
本発明は、食感が改善されたタンパク麺製造用組成物、それを用いたタンパク麺の製造方法及びそれを用いて製造されたタンパク麺に関するものである。
【0017】
本発明において「タンパク麺」とは、タンパク質が主成分である麺を意味する。従来の一般的な麺類は小麦粉等を主原料として炭水化物の含有量が高い反面、本発明のタンパク麺は植物性タンパク質を主原料として製造されるので、従来の麺類に比べて相対的に炭水化物含有量が低くタンパク質の含有量が高い。
【0018】
本発明のタンパク麺製造用組成物は、植物性タンパク質、ジャガイモ繊維質、アルギン酸、およびデンプンを含むことができる。
【0019】
本発明によれば、麺の主原料として植物性タンパク質を用いることにより、タンパク質含有量が高く風味に優れたタンパク麺を製造することができる。また、本発明では、前記植物性タンパク質、ジャガイモ繊維質、アルギン酸、及びデンプンを原料とした生地を塩化カルシウム凝固水に吐出させて製麺することにより、タンパク麺の食感及び組織感を大きく向上させることができ、小麦粉なしで製麺が可能であり、原料の前処理および製麺工程を単純化することができる。
【0020】
本発明において、前記植物性タンパク質とは、豆、ピーナッツ、クルミ、アーモンド、松の実などタンパク質含有量が高い植物由来の加工物を意味することができる。前記植物性タンパク質を用いることにより、タンパク質の含有量が高い麺を製造することができ、凝固水の塩化カルシウムと植物性タンパク質の凝固反応によって小麦粉なしで麺帯を形成することができ、タンパク麺の食感及び組織感を改善することができる。さらに、植物性タンパク質とジャガイモ繊維質との結合によって麺の組織感が向上し、時間が経過したり熱を加えたりしてもタンパク麺が伸びたり脆くなったりしない効果がある。
【0021】
本発明において、前記植物性タンパク質は豆のタンパク質であることが好ましく、ここで豆は、大豆、黒豆、インゲン豆、ひよこ豆、レンチル豆、薬豆、ナタマメなどを含むことができる。
【0022】
前記豆タンパク質は、豆由来の食品加工物、例えば豆粉末、豆乳、豆腐などを含むことができる。この中で、麺の製造便宜性の側面で、豆乳を好ましく用いることができる。豆タンパク質として豆乳を使用する場合、液状豆乳に原料及びアルギン酸を溶解してペーストを製造することができるので、原料前処理段階を単純化することができる。
【0023】
前記豆乳は、豆を水と共に湿式粉砕した後、固形物をろ過して製造した食品加工物、及び豆粉末に水を混合して製造した分散液形態の食品加工物を含む概念であり得る。また、食感、組織感、風味、栄養成分、および生産性の側面から、2乃至11ブリックス(brix)、好ましくは3乃至8ブリックスの豆乳を使用することができる。
【0024】
本発明において、前記植物性タンパク質は、タンパク麺製造用組成物の全体重量に対して60乃至98重量%含まれてもよく、好ましくは75乃至97重量%、もっと好ましくは87乃至96重量%含まれてもよい。前記植物性タンパク質に含まれるタンパク質成分は、タンパク麺製造用組成物の全体重量に対して、0.4乃至3.8重量%、好ましくは0.5乃至3.7重量%、もっと好ましくは0.6乃至3.6重量%含まれてもよい。
【0025】
植物性タンパク質の含有量が低すぎると、タンパク質の含有量が低く、高タンパク質の麺を製造することが困難であり、豆の香ばしい味が弱く感じられ、風味が低下することがあり、麺の食感が硬く感じられることがある。一方、植物性タンパク質の含有量が高すぎると、ペーストの形成が困難になり、麺が脆くなって飲食が不便だという問題が発生することがある。
【0026】
本発明において、前記ジャガイモ繊維質はジャガイモ由来の食物繊維を意味するものであり、具体的にはジャガイモから得た食物繊維成分を粉末化したものを用いることができる。本発明では、前記ジャガイモ繊維質が植物性タンパク質と結合されタンパク麺の組織感および保水力を向上させることにより、タンパク麺製造後に時間が経過したり熱を加えて調理したりしても伸びたり脆くなったりしない利点がある。さらに、ジャガイモ繊維は、麺に食物繊維を供給して栄養を改善する役割にも寄与する。
【0027】
本発明において、前記ジャガイモ繊維質は、タンパク麺製造用組成物の全体重量に対して0.2乃至15重量%含まれていてもよく、好ましくは0.3乃至8重量%、もっと好ましくは0.5乃至2重量%、さらにもっと好ましくは0.7 乃至1.8重量%含まれてもよい。ジャガイモ繊維質の含有量が少なすぎると、麺が硬くて強い食感を示し、飲食が困難になることがある。ジャガイモ繊維の含有量を多すぎると、麺が切れやすくなり、調理や飲食が不適切であるという欠点がある。
【0028】
前記アルギン酸(alginic acid)は、昆布、わかめなどの褐藻類に由来する多糖類酸であり、分子式(C6H8O6)nで表すことができる。本発明において、前記アルギン酸は、凝固水の塩化カルシウムとエッグ(egg)化反応されることにより、タンパク麺の形態を形成し、食感を調節する役割をする。また、アルギン酸は体内のナトリウム、老廃物、または重金属を排出する効果があるため、健康的な側面からも利点がある。
【0029】
前記アルギン酸は、アルギン酸、その食品学的に許容される塩、またはそれらの混合物を含むことができる。アルギン酸を塩形態で用いる場合、アルギン酸のナトリウム、プロピレングリコール、アンモニウム、カルシウム、カリウム、硫酸、水素硫酸、リン酸、二水素リン酸、アセテート、スクシネート、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸、マンテレート、メタンスルホネート、またはρ-トルエンスルホネート塩を使用することができる。好ましくは、アルギン酸のナトリウム、プロピレングリコール、アンモニウム、カルシウム、またはカリウム塩を使用することができる。一般的にアルギン酸は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムなどの粉末形態で流通販売され、水に溶かして使用することができる。
【0030】
本発明において、前記アルギン酸は、タンパク麺製造用組成物の全体重量に対して0.5乃至15重量%含まれてもよく、好ましくは0.7乃至10重量%、もっと好ましくは1乃至5重量%含まれてもよい。アルギン酸の含有量が低すぎると、麺の硬度と弾力性が低く、麺の形態がよく維持できず、しっかりとした食感が低下し、よく切れる問題が発生することがある。一方、アルギン酸の含有量が高すぎると、麺が硬すぎて食感が低下し、飲食が困難であるという問題がある。
【0031】
本発明において、前記デンプンは、麺製造工程で糊化反応を誘導して増粘剤として機能する。糊化反応は、デンプンを水と共に加熱したときに粘度が上がる反応を意味するものである。具体的には、デンプンに熱を加えるとデンプン粒子が水分を吸収して膨潤し、ミセル構造が破壊されることによってデンプン粒子がコロイド溶液を形成して粘度を上昇させる。
【0032】
前記デンプンとしては、トウモロコシデンプン、ワキシ―コーンデンプン、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、小麦デンプン、サトウキビデンプン、それらの変性デンプン、またはそれらの組み合わせを使用することができる。変性デンプンは、天然デンプンをエーテル化、エステル化、アセチル化、架橋、酸化などを用いて化学的に変形させたものであってもよい。変性デンプンを用いる場合、天然デンプンを用いる場合に比べて生地の糊化温度が低くなり、麺の老化を抑制して安定性を向上させることができる。
【0033】
本発明において、前記デンプンは、タンパク麺製造用組成物の全体重量に対して0.5乃至15重量%含まれてもよく、好ましくは1乃至10重量%、もっと好ましくは1.5乃至8重量%含まれてもよい。デンプンの含有量が低すぎると、麺帯の形成が困難で粘弾性が低いことがある。デンプンの含有量が高すぎると、弾性が強すぎて食感嗜好度を低下させることがある。
【0034】
その他に、本発明のタンパク麺製造用組成物は、麺の味と物性を阻害しない範囲で、塩(食塩)、ビタミン、アミノ酸、色素、香料、甘味料、保存剤のような当業界で通常使用される調味料、副材料、食品添加物のような添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤は、タンパク麺製造用組成物の全体重量に対して5重量%以下、好ましくは3重量%以下の量で含まれてもよい。
【0035】
例えば、本発明のタンパク麺製造用組成物は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、ビオチン、葉酸、パントテン酸などの栄養成分;カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)などのミネラル;リジン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸;ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなどの防腐剤;ブチルヒドロキシシアニゾール、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤;亜硝酸ナトリウムなどの発色剤;クロレラ、黄金クロレラ、カボチャ粉、紫芋粉、ビートなどの天然色素;亜硫酸ナトリウムなどの漂白剤;食塩、ウコン、コショウ、グルタミン酸ナトリウムなどの調味料;砂糖、ズルチン、サイクラミン酸 、サッカリンなどの甘味料;バニリン、ラクトン類などの香料;明礬、D-スズ酸水素カリウムなどの膨張剤などを含むことができる。
【0036】
本発明において、前記タンパク麺製造用組成物に水を混合してペーストを形成し、前記ペーストをノズルから吐出して凝固水に落下させることで麺状に凝固させて、タンパク麺を製造することができる。このような方法によれば、原料の前処理及び製麺工程が簡略化され、簡単な方法で麺を製造することができ、大量生産が容易である。
【0037】
具体的には、前記タンパク麺製造用組成物に水を混合し攪拌してペーストを形成する。このとき、水は、タンパク麺製造用組成物100重量部に対して80乃至500重量部、好ましくは100乃至350重量部、もっと好ましくは150乃至250重量部の量で混合することができる。また、混合時には気泡生成を防止して麺の品質を改善するために十分に撹拌することが好ましい。前記撹拌は80乃至100℃の温度で行うことができ、ペーストが製造されると20℃以下の温度に冷却することができる。
【0038】
その後、ペーストをノズルから連続的に吐出して凝固水に落下させる。これにより、ペーストが凝固水に浸漬されて長い麺状に凝固し、タンパク麺が製造される。このとき、ノズルの大きさや形状を変更することで、麺の太さや形状を調整することができる。例えば、ノズルの吐出口断面が円形または四角形のものを用いることができる。また、ノズルの大きさを調整して希望する厚さ、例えば0.5乃至5mmの厚さを有する麺を製造することができ、吐出速度などを調整して希望する長さ、例えば10乃至30cmの長さを有する麺を製造することができる。
【0039】
本発明において、前記凝固水は塩化カルシウムを含むことができる。前記塩化カルシウムはペーストに存在する植物性タンパク質と凝固反応し、アルギン酸とエッグ化反応することができる。このようなペースト原料と塩化カルシウムとの複合反応により、形態が維持され、硬度および弾力性があり、しっかりした麺が形成される。このとき、凝固水の塩化カルシウム濃度を調節してタンパク質の組織感および食感を最適化することができる。
【0040】
前記塩化カルシウムの濃度は、凝固水重量に対して0.2乃至4.0重量%であることができ、好ましくは0.5乃至1.5重量%、もっと好ましくは0.8乃至1.2重量%であることができる。凝固水中の塩化カルシウムの含有量が低すぎると、麺帯の形成が困難であり、製造された麺が脆くなりやすく、安定性が低く、食感が不良になることがある。塩化カルシウムの含有量が高すぎると、麺が硬すぎて強い食感を示すため、消費者の嗜好度が低下する可能性がある。
【0041】
凝固された麺は水で洗浄し、水と共に充填包装する段階を経ることができる。このとき、水の温度は0乃至50℃、好ましくは10乃至30℃であることができる。
【0042】
充填包装が完了したら、滅菌のために追加の熱処理段階を行うことができる。このとき、熱処理温度は70乃至100℃、好ましくは80乃至95℃であり、熱処理時間は30分乃至2時間、好ましくは40分乃至1時間である。
【0043】
以降、10℃以下の温度に冷却し、冷蔵または冷凍状態で保管および流通することができる。
【0044】
このように製造されたタンパク麺は、小麺、中麺、カルグクス、うどん麺、スパゲッティ麺など様々な料理用麺として使用することができる。
【0045】
本発明のタンパク麺は植物性タンパク質を含有するためタンパク質含有量が高く、栄養学的に優れ、豆本来の香ばしい味が生きており、風味に優れる。また、前記植物性タンパク質と特定の植物性原料との結合使用、及び原料と凝固水との反応により食感及び組織感が大幅に改善され、消費者嗜好度に優れる。また、水と共に充填包装された状態でも経時的に面が伸びたり、脆くなったりすることなく、保管性及び安定性に優れた利点がある。
【実施例】
【0046】
以下の実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するために一部の実験方法と組成を示したものであり、本発明の範囲がこのような実施例に限定されるものではない。
【0047】
製造例:植物性タンパク質を含むタンパク麺の製造
豆乳(3brix)、ジャガイモ繊維質(POTEX CROWN)、ワキシ―コーンデンプン(HeatSTA)、アルギン酸ナトリウム、精製塩、保存剤、及び黄金クロレラを精製水と混合した後、90℃乃至100℃の温度で撹拌して気泡を除去し、 20℃以下に冷却してペーストを得た。ペーストを円形ノズルから射出して塩化カルシウムを含む凝固水に落下させることで麺帯を形成した。その後、麺を上水で水洗し、水と共に充填包装した後、88℃以上で殺菌し、10℃以下に冷却した後、冷蔵保存した。
【0048】
実験方法:タンパク麺の物性及び嗜好度測定方法
硬度、弾力性、および引張強度は、物性分析器(TA. XT plus、Stable Micro Systems、Surrey、UK)を用いて測定した。各実験は5回行った。硬度は、麺帯3本を互いに隣接して配置した後、硬度分析用ボタントリガーで圧着して切断したときの力を測定した結果である。弾力性は、麺帯一本をグリップアームトリガーに固定して伸ばし、切断時の時間を測定した結果であり、引張強度は弾力性と同じ試験で切断時の力を測定した結果である。
【0049】
実験例1:豆乳含有量によるタンパク麺の特性評価
前記製造例の方法を用いて、豆乳の含有量を異にしてタンパク麺を製造し、各麺の物性および嗜好度を測定した。
【0050】
精製水100重量部に対して、豆乳の含有量を0、25、50、75、及び100重量部に調整して実験を行った。その他の成分は、ジャガイモ繊維質0.7重量部、ワキシ―コーンデンプン1.7重量部、アルギン酸ナトリウム1.5重量部、精製塩0.5重量部、保存剤0.5重量部、及び黄金クロレラ0.1重量部を同様に使用し、塩化カルシウム濃度が凝固水全体重量に対して1.2重量%である凝固水に落下させた。
【0051】
図1は、50重量部の豆乳を用いて製造されたタンパク麺を撮影した写真である。麺が束ねずによく形成されたことが確認できる。
【0052】
製造された各麺について硬度、弾力性、および引張強度を測定し、その結果を
図2に示した。
【0053】
図2の結果を参照すると、豆乳を添加しない場合でも麺の形成は可能であるが、食感が硬すぎて食感が非常に不便であった。一方、豆乳含有量が精製水100重量部に対して25重量部以上である場合には、麺が柔らかく形成され、75重量部までは柔らかく弾力性があり、しっかりとした食感の麺が形成され、特に50重量部の場合、組織感及び食感が最も優れた結果を示した。しかし、豆乳が100重量部含まれる場合、麺が弾性はあるがよく切れる結果となった。
【0054】
したがって、植物性タンパク質の含有量を特定の範囲以内に調整することにより、組織感および食感に優れたタンパク麺を製造することができることを確認した。
【0055】
実験例2:ジャガイモ繊維質含量によるタンパク麺の特性分析
前記製造例の方法を用いて、ジャガイモ繊維質の含有量を異にしてタンパク麺を製造し、各麺の物性および嗜好度を測定した。
【0056】
精製水100重量部に対して、豆乳95重量部、ワキシ―コーンデンプン1.7重量部、アルギン酸ナトリウム1.5重量部、精製塩0.5重量部、保存剤0.5重量部、及び黄金クロレラ0.1重量部を使用し、精製水を除いた組成物全体重量にジャガイモ繊維質の含有量を0、0.5、1、2、および2重量%となるように調整し、ジャガイモ繊維質を添加した。製造されたペーストを、塩化カルシウム濃度が凝固水の全体重量に対して1.2重量%である凝固水に落下させた。
【0057】
製造された各麺について硬度、弾力性、引張強度、および食感を測定し、その結果を
図3に示した。
【0058】
図3の結果を参照すると、ジャガイモ繊維質を添加しない場合でも麺の形成は可能であるが、食感が硬く延性が弱く、麺の物性が良くなかった。一方、ジャガイモ繊維質の含有量が増加するほど硬度と弾力性が減少する反面、引張強度は増加する傾向を示し、ジャガイモ繊維質の含有量が組成物全体重量に対して0.5乃至2重量%であるとき、柔らかく硬くない食感の麺が形成され、飲食が容易な麺を形成することができた。ただし、5.0重量%を超えると麺が簡単に切れて調理及び飲食に不適当な麺が形成された。
【0059】
したがって、本発明では、ジャガイモ繊維質を添加し、その含有量を特定の範囲に調整することにより、組織感および食感に優れたタンパク麺を製造することができることがわかった。
【0060】
実験例3:凝固水中の塩化カルシウム含有量によるタンパク麺の特性評価
前記製造例の方法を用いて、凝固水の塩化カルシウム濃度を異にしてタンパク麺を製造し、各麺の物性および嗜好度を測定した。
【0061】
塩化カルシウム濃度は下表3に示すように調節し、ペーストは精製水100重量部に対して豆乳95重量部、ジャガイモ繊維質0.7重量部、ワキシ―コーンデンプン1.7重量部、アルギン酸ナトリウム1.5重量部、精製塩0.5重量部、保存剤0.5重量部、及び黄金クロレラ0.1重量部を加えて製造した。
【0062】
製造された各麺について硬度、弾力性、引張強度、および食感を測定し、その結果を
図4に示した。
【0063】
図4の結果を参照すると、凝固水の塩化カルシウム濃度が0.5重量%以上の場合、麺帯形成が可能であり、塩化カルシウム濃度が増加するほど硬度、弾力性、および引張強度が増加する結果を示した。塩化カルシウム濃度が0.5乃至1.2重量%の場合に柔らかくて弾性があり、しっかりとした食感が現れ、1.5重量%を超えると過度に硬くて強く、麺の食感が非常に不良であることを確認した。
【0064】
したがって、本発明において、凝固水の塩化カルシウム濃度が0.5乃至1.2重量%のときペーストの各原料と最適に反応して、組織感及び食感に優れたタンパク麺を形成することができることが分かった。
【0065】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須的特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。これに関して、前記で説明した実施形態はすべての点で例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。本発明の範囲は、前記の詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその等価概念から導出されるすべての変更または変形形態が本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。