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特許7558382改質ベータゼオライトによるオレフィンの相互変換プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】改質ベータゼオライトによるオレフィンの相互変換プロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 11/05 20060101AFI20240920BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20240920BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240920BHJP
【FI】
C10G11/05
B01J29/70 M
B01J35/60 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023501596
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 US2020060860
(87)【国際公開番号】W WO2022019943
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】16/936,990
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301041531
【氏名又は名称】一般財団法人JCCP国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】コセオグル,オマール レファ
(72)【発明者】
【氏名】ホジキンズ,ロバート ピーター
(72)【発明者】
【氏名】渡部 光徳
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩司
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0021912(US,A1)
【文献】特表2003-517505(JP,A)
【文献】特開2014-46277(JP,A)
【文献】特表2020-509122(JP,A)
【文献】特表2015-533639(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104549453(CN,A)
【文献】特表2017-534433(JP,A)
【文献】国際公開第2020/035016(WO,A1)
【文献】特表平3-505839(JP,A)
【文献】特開昭63-159492(JP,A)
【文献】特表2002-519281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 11/05、11/18
B01J 29/70、35/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンが豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法において、
オレフィン相互変換ユニット内で前記オレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させて、エチレンとプロピレンを含む相互変換された流出物を生成する工程であって、450℃から750℃の反応温度、1バールから5バール(100kPaから500kPa)の反応圧力、および0.5秒から1000秒の滞留時間で行われる、接触させる工程、
を含み、
前記オレフィンが豊富な炭化水素流は、炭化水素流の総質量に基づいて、少なくとも20質量%のオレフィンを含有する炭化水素流であり、
前記触媒系は骨格置換ベータゼオライトを含み、
前記骨格置換ベータゼオライトは改質されたBEA骨格を有し、該改質されたBEA骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子からなる群より独立して選択されるベータゼオライトAl置換原子で、BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたBEAアルミノケイ酸塩骨格を有する、方法。
【請求項2】
前記骨格置換ベータゼオライトが、該骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記骨格置換ベータゼオライトが、該骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%のベータゼオライトAl置換原子を含有し、
前記ベータゼオライトAl置換原子が、(a)チタン原子とジルコニウム原子、(b)チタン原子とハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子とハフニウム原子、および(d)チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子:からなる群より選択される組合せを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記骨格置換ベータゼオライトが、該骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含有し、
前記ベータゼオライトAl置換原子が、チタン原子とジルコニウム原子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記骨格置換ベータゼオライトが、
(a)400m/gから800m/gの比表面積、
(b)10から200のSiO対Alのモル比、
(c)0.2cm/gから0.6cm/gの細孔体積、および
(d)結晶格子定数a=1.26nmから1.27nm、b=1.26nmから1.27nm、およびc=2.62から2.65nm、
を有する、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
オレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させる前に、ジオレフィンを含有するラフィネート流を選択的に水素化して、前記オレフィンの豊富な炭化水素流を生成し、それによって、該オレフィンの豊富な炭化水素流が、該ラフィネート流よりも少ない含有量でジオレフィンを含有する工程をさらに含む、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
未変換のオレフィンを、なくすために反応器に戻すように再循環させる工程をさらに含む、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記触媒系が、該触媒系の総質量に基づいて、2質量%から90質量%の骨格置換ベータゼオライトを含む、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記触媒系が、非晶質シリカ-アルミナおよびアルミナから選択される結合剤をさらに含む、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記オレフィンの豊富な炭化水素流が、4から12の炭素原子を有する炭化水素を含み、粗C4精製流、ラフィネート-1流、水蒸気分解装置からのラフィネート-2流、流動接触分解装置からのC4流、および分解装置の熱分解ガソリンからのC5+流から選択される、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記オレフィンの豊富な炭化水素流が、蒸気熱分解ユニットまたは流動接触分解ユニットからの流出物である、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記オレフィン相互変換ユニットが、流動床反応器、固定床反応器、および移動床反応器から選択される、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記触媒系が、骨格置換超安定Y(USY)-ゼオライトをさらに含み、前記骨格置換USY-ゼオライトが改質USY骨格を有し、該改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択されるUSY-ゼオライトAl置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格を含み、前記骨格置換USY-ゼオライトが、該骨格置換USY-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記骨格置換USY-ゼオライトが、
(a)2.43nmから2.45nmの結晶格子定数aおよびb、
(b)600m/gから900m/gの比表面積、および
(c)5:1から100:1のSiO対Alのモル比、
を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記骨格置換ベータゼオライトが、該骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含有し、
前記ベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子を含み
記USY-ゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子を含む、請求項13または14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その全ての内容が本開示に引用される、2020年7月23日に出願された米国特許出願第16/936990号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本出願は、炭化水素流を処理する方法に関し、より詳しくは、オレフィンの豊富な炭化水素流を相互変換して、プロピレンとエチレンを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プロピレンを生成するための処理経路の内の1つに、選択的オレフィン分解技術がある。選択的オレフィン分解の原料は、蒸気熱分解および流動接触分解などの分解ユニットからの炭素数が4から12であるオレフィンの豊富な炭化水素を含むことがある。C4/C5分解のためのいくつかの方法は、価値の低い炭化水素流が高価値のオレフィンに変換されるという点でメタセシスと似ている。しかしながら、一般的なC4/C5分解と選択的オレフィン分解との間には、多くの違いがある。選択的C4/C5分解技術に関して、C5流は、イソブテンを含むC4流と共に変換することができる。ノルマルブテンは、異性化を必要としない。それに加え、この過程ではエチレンが消費されない。実際に、主要なプロピレン生成物と共に、余計なエチレンが生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
選択的オレフィン分解の効率と収量比(yield)は、相互変換された生成物流がプロピレンなどの高価値の生成物を最適な比率で含有するように仕向ける、触媒と、その触媒を含む触媒系とに大きく依存する。したがって、選択的オレフィン分解プロセスにおける高価値の生成物の収量比を増加させる、触媒と触媒系が、継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した背景に対して、本開示の例示の実施の形態は、オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法に関する。この方法は、オレフィン相互変換ユニットにおいてオレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させて、エチレンとプロピレンを含む相互変換された流出物を生成する工程を含む。この接触させる工程は、450℃から750℃の反応温度、1バールから5バール(100kPaから500kPa)の反応圧力、および0.5秒から1000秒の滞留時間で行われることがある。触媒系は、骨格置換ベータゼオライトを含む。この骨格置換ベータゼオライトは、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択されるベータゼオライトAl置換原子で、BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたBEAアルミノケイ酸塩骨格を有する。
【0006】
いくつかの実施の形態によれば、その触媒系は、骨格置換ベータゼオライトに加え、骨格置換超安定Y(USY)ゼオライトを含むことがある。そのような実施の形態において、骨格置換USYゼオライトは改質USY骨格を有する。改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択されるUSYゼオライトAl置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格であることがある。
【0007】
ここに記載された実施の形態の追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、またはその詳細な説明および以下の特許請求の範囲を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって認識されるであろう。先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、様々な実施の形態を記載しており、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する意図があることを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施の形態は、プロピレンとエチレンを含有する生成物流を生成するための、骨格置換ベータゼオライト触媒の存在下でオレフィンの豊富な炭化水素流のオレフィン相互変換に関する。オレフィン相互変換プロセスは、炭化水素流中のオレフィン化合物の間で4つの主反応を伴う。この4つの反応に、オレフィンのオリゴマー化、分解、不均化、および水素転移がある。これらの反応は、単一反応器内で同時に起こり、それによって、複数のオレフィン化合物の供給混合物を他の化合物の相互変換混合物に相互変換することができる。相互変換混合物の組成物は、供給混合物中に存在するよりも多い量、または実質的に多い量で、例えば、プロピレンとエチレンなどの高価値の生成物を含むことがある。
【0009】
オレフィンのオリゴマー化中、X個の炭素原子を有するオレフィンは、Y個の炭素原子を有するオレフィンと結合して、X+Y個の炭素原子を有するオレフィンを形成し、ここで、XとYは同じかまたは異なる。分解は、実質的にオレフィンのオリゴマー化の逆であり、それによって、X+Y個の炭素原子を有するオレフィンが分解されて、X個の炭素原子を有するオレフィンと、Y個の炭素原子を有するオレフィンを当モル量で形成する。不均化は、X個の炭素原子を有するオレフィンおよびY個の炭素原子を有するオレフィンが、U個の炭素原子を有するオレフィンと、V個の炭素原子を有するオレフィンに変換され、ここで、X+Y=U+Vである。水素転移反応は、炭素数が同じかまたは異なるオレフィンの、環状オレフィン、アルカン(パラフィン)、シクロアルカン(ナフテン)、芳香族化合物、またはその組合せへの変換を含む。触媒と反応条件によって、相互変換からの生成物の最終的な分布が決まる。相互変換プロセスからの、プロピレン、エチレン、またはその両方などの軽質オレフィンの生産を最大にするために、特に、アルカンと芳香族化合物を形成する水素転移反応と環化反応を最小にすることが望ましい。
【0010】
ここで、オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法の実施の形態を詳しく参照する。この方法は、オレフィン相互変換ユニット内でオレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させて、エチレンとプロピレンを含有する相互変換された流出物を生成する工程を含む。この接触させる工程は、相互変換反応を促進させる反応器の条件下で行われる。実施の形態において、接触させる工程は、450℃から750℃の反応温度、1バールから5バール(100kPaから500kPa)の反応圧力、および0.5秒から60秒の滞留時間で行われる。触媒系は、改質されたBEA骨格を有する骨格置換ベータゼオライトを含む。続いてより詳しく記載されるように、改質されたBEA骨格は、ベータゼオライトAl置換原子でBEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたBEAアルミノケイ酸塩骨格である。このベータゼオライトAl置換原子は、チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子からなる群より独立して選択される。
【0011】
実施の形態によるオレフィンの豊富な炭化水素流は、炭化水素流の総質量に基づいて、少なくとも20質量%、少なくとも30質量%、少なくとも40質量%、少なくとも50質量%、少なくとも60質量%、少なくとも70質量%、または少なくとも80質量%のオレフィンを含有するどの精製流から選択されてもよい。ここに用いられているように、炭化水素流に関する「オレフィン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する直鎖または分岐炭化水素を含む。「モノオレフィン」という用語は、正確に1つの炭素-炭素二重結合を含有する炭化水素を称する。「ジオレフィン」という用語は、正確に2つの炭素-炭素二重結合を含有する炭化水素を称する。「炭化水素」という用語は、炭素原子と水素原子のみを含む、各々が任意のサイズまたは炭素鎖長を有する直鎖、分岐、環状、または芳香族化合物を称する。
【0012】
具体的な例示の実施の形態において、オレフィンの豊富な炭化水素流は、粗C4精製流、ラフィネート-1流、ラフィネート-2流、流動接触分解装置からのC4流、および分解装置の熱分解ガソリンからのC5+流から選択されることがある。いくつかの実施の形態において、オレフィンの豊富な炭化水素流は、蒸気熱分解ユニットまたは流動接触分解ユニットからの流出物である。いくつかの実施の形態において、オレフィンの豊富な炭化水素流は、4から12の炭素原子、または4から10の炭素原子、または4から8の炭素原子を有する炭化水素を含むことがある。
【0013】
粗C4精製流は、石油または原油からの真空蒸留または他の分離過程の生成物であることがある。粗C4精製流は、アルカンと、モノオレフィンおよびジオレフィンを含むオレフィンとの混合物であるC4炭化水素を主に含有する。ラフィネート-1流は、分離によって1,3-ブタジエン(ジオレフィン)が除去された粗C4流の生成物である。ラフィネート-1流は、典型的に、約40質量%から約50質量%のイソブチレンおよび約30質量%から約35質量%の2-ブテン異性体(シス-2-ブテンおよびトランス-2-ブテン)を含有する。ラフィネート-2流は、1,3-ブタジエンとイソブチレンが除去された粗C4流の生成物である。ラフィネート-2流は、典型的に、約50質量%から約60質量%の2-ブテン異性体、約10質量%から約15質量%の1-ブテン、および約20質量%のn-ブタンを含有する。C5+流は、少なくとも50質量%の、5より多く炭素原子を有する炭化水素を含有することがある。いくつかの実施の形態において、C5+流は、90質量%超の、6から10の炭素原子を有する炭化水素を含有することがある。オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンが、触媒系の存在下で、選択された反応器の条件下で先に記載されたような相互変換反応を経るのに十分な量であるという前提で、実施の形態によるオレフィンの豊富な炭化水素流は、どの特定の組成物にも限定されないことを理解すべきである。
【0014】
実施の形態によるオレフィン相互変換プロセスにおいて、オレフィンの豊富な炭化水素流は、原油、合成原油、ビチューメン、オイルサンド、シェールオイルおよび石炭液化油の1つ以上に由来することがある。オレフィンの豊富な炭化水素流は、ナフサ、ディーゼル、真空軽油(VGO)、溶剤脱歴プロセスから得られた脱アスファルト油(DAO)、脱金属油、コーカープロセスから得られた軽質または重質コーカー軽油、別の流動接触分解(FCC)プロセスから得られたまたはFCCプロセスから再循環された循環油、ビスブレーキングプロセスから得られた軽油、または先の内の少なくとも1つを含む組合せを含む、350℃より高い正常沸点を有する石油分画を含むことがある。
【0015】
オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法の実施の形態において、オレフィンの豊富な炭化水素流は、オレフィン相互変換ユニット内で触媒系と接触させられて、エチレンとプロピレンを含有する相互変換された流出物を生成する。この触媒系をこれから詳しく説明する。相互変換ユニットおよび適切な反応条件とパラメータをその後に説明する。
【0016】
骨格置換ベータゼオライト触媒
オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法の実施の形態において、オレフィンの豊富な炭化水素流が接触させられる触媒系は、触媒を含む。その触媒は、骨格置換ベータゼオライトを含む。この骨格置換ベータゼオライトは、改質されたBEA骨格を有する。
【0017】
改質されたBEA骨格は、BEAアルミノケイ酸塩骨格の標準的な定義によるBEAアルミノケイ酸塩骨格の類似物である。標準的な定義によれば、BEAアルミノケイ酸塩骨格は、1.26nmから1.27nmの結晶格子定数aおよびb(UD)、2.62nmから2.65nmの単位格子長さc、400m/gから800m/gの比表面積、およびシリカ(SiO)とアルミナ(Al)の基準で計算して、10から200のケイ素対アルミニウムのモル比を有する結晶質アルミノケイ酸塩ゼオライトである。
【0018】
本開示の実施の形態による骨格置換BEA型ゼオライトに関して、改質されたBEAアルミノケイ酸塩骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択されるベータゼオライトAl置換原子で、BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたBEAアルミノケイ酸塩骨格である。
【0019】
本開示に使用されるように、「Ti-BEA」という用語は、置換原子がチタンである、実施の形態による骨格置換BEA型ゼオライトを称する。同様に、「Zr-BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がジルコニウムを含む、実施の形態による骨格置換BEA型ゼオライトを称する。「Hf-BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換BEA型ゼオライトを称する。「(Ti、Zr)-BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がチタンとジルコニウムを含む、実施の形態による骨格置換BEA型ゼオライトを称する。「(Ti、Hf)-BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がチタンとハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換BEA型ゼオライトを称する。「(Zr、Hf)-BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がジルコニウムとハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換BEA型ゼオライトを称する。「(Ti、Zr、Hf)-BEA」という用語は、ベータゼオライトAl置換原子がチタン、ジルコニウムおよびハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換BEA型ゼオライトを称する。
【0020】
実施の形態による骨格置換BEA型ゼオライトは、先に定義されたように、Ti-BEA、Zr-BEA、Hf-BEA、(Ti、Zr)-BEA、(Ti、Hf)-BEA、(Zr、Hf)-BEA、または(Ti、Zr、Hf)-BEAであることがある。ベータゼオライトAl置換原子は、BEA型ゼオライトの骨格を形成するアルミニウム原子の代わりに使用され、したがって、BEA型ゼオライトの骨格の成分の機能を果たす。置換は、以下に限られないが、紫外、可視、および近赤外分光光度法(UV-Vis-NIR)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、または核磁気共鳴分光法(NMR)を含む分析技術によって、確認することができる。
【0021】
いくつかの実施の形態において、骨格置換BEA型ゼオライトは、骨格置換BEA型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%、または0.1質量%から5質量%、または0.2質量%から4質量%、または0.3質量%から3質量%のベータゼオライトAl置換原子を含む。酸化物基準の計算において、チタン原子はTiOに基づいて計算され、ジルコニウム原子はZrOに基づいて計算され、ハフニウム原子はHfOに基づいて計算される。骨格置換BEA型ゼオライト中のチタン、ジルコニウム、およびハフニウムは、例えば、蛍光X線分析、高周波プラズマ発光分析、または原子吸光分析などの公知の技術によって定量的に決定することができる。
【0022】
いくつかの実施の形態において、骨格置換BEA型ゼオライトは、骨格アルミニウムを置換したベータゼオライトAl置換原子に加え、骨格置換BEA型ゼオライトの骨格に付着した、またはその外部に担持された、またはそれと結合した、ジルコニウム原子、チタン原子、ハフニウム原子、またはその任意の組合せをさらに含むことがある。そのような実施の形態において、ジルコニウム、チタン、またはハフニウム原子は、チタニア粒子、ジルコニア粒子、またはハフニア粒子などの酸化物粒子として付着することがある。この酸化物粒子は、50nm以下の粒径を有することがある。ここで考えられるような、定量分析を容易にする目的のために、骨格置換BEA型ゼオライト中の置換原子の質量による量は、骨格アルミニウム原子と置換されたか、もしくはゼオライト骨格に付着した、またはその外部に担持された、またはそれと結合した、骨格置換BEA型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算された、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムの総量を含む。しかしながら、全ての実施の形態において、BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の少なくとも一部が、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、またはその任意の組合せで置換されていることを理解すべきである。例示の実施の形態において、骨格置換BEA型ゼオライト中に存在するチタン、ジルコニウム、およびハフニウム原子の50%超、または75%超、または90%超、または99%超が、ゼオライト骨格中の骨格アルミニウム原子と置換されており、特に粒子として、ゼオライト骨格に単に付着した、またはその外部に担持された、またはそれと結合したわけではない。
【0023】
骨格置換BEA型ゼオライトが、(Ti、Zr)-BEA、(Ti、Hf)-BEA、(Zr、Hf)-BEA、または(Ti、Zr、Hf)-BEAにおけるように、ベータゼオライトAl置換原子の組合せを含有する場合、酸化物基準で計算される、各ゼオライト中のベータゼオライトAl置換原子の個々のタイプの質量比は限定されないことが当業者に認識されるはずである。実施の形態による方法に記載された反応は、チタン対ジルコニウム対ハフニウムの比率を調節することによって、調整されるかもしれないが、チタン対ジルコニウム対ハフニウムのどの比率が、本開示による炭化水素油を分解する方法を実施するのに効果的であってもよいことを理解すべきである。
【0024】
前記触媒系における骨格置換BEA型ゼオライトは、骨格アルミニウム原子の一部が、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、またはその任意の組合せで置換されているBEAアルミノケイ酸塩骨格を有する骨格置換BEA型ゼオライトをもたらすどのゼオライト調製方法によって、調製されてもよい。1つの例示の調製技術において、触媒系における骨格置換BEA型ゼオライトは、1.260nmから1.270nmの結晶格子定数aおよびb、2.62nmから2.65nmの単位格子長さc、400m/gから800m/gの比表面積、および10から200、または10から100、または30から70のシリカ対アルミナのモル比を有するBEA型ゼオライトを500℃から700℃でか焼することによって、製造することができる。次に、か焼したBEA型ゼオライトを含有する懸濁液を形成する。この懸濁液は、懸濁液中に存在する液体と固体に基づいて、5から15の液/固質量比を有することがある。この懸濁液に無機酸または有機酸を加えて、懸濁液のpHを2.0未満に低下させる。1つ以上の追加の溶液の混合中に沈殿を防ぐために、懸濁液のpHを2.0未満に前もって制御する。詳しくは、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、またはその組合せの化合物を含有する1つ以上の追加の溶液を懸濁液に混ぜ合わせて、アルミニウム部位で骨格置換を行う。次に、懸濁液を、例えば、アンモニア水などの塩基で中和して、pHを7から7.5の範囲に上昇させる。得られた骨格置換BEA型ゼオライトを濾過し、水で洗浄し、例えば、80℃から180℃の乾燥温度で乾燥させることができる。
【0025】
実施の形態による、(Ti、Zr)-BEA骨格置換BEA型ゼオライトの1つの具体的な非限定例において、28.5のシリカ対アルミナ比を持つBEA骨格を有するゼオライトを51.4g、450gの脱イオン水に懸濁させ、40℃に加熱する。次に、10.0gの硫酸チタンの水溶液(5質量%のTiOと同等である)と共に、14.8gのHSO(25質量%)を加えて、8.48gの脱イオン水および1.52gの硫酸チタンを含有する溶液(33質量%のTiOと同等である)を生成する。この溶液に、追加の硫酸ジルコニウム水溶液(2.8g、18質量%のZrOを構成する)を加える。この混合物を60℃で4時間に亘り撹拌し、次いで、濾過し、1.5リットルの脱イオン水で洗浄する。得られたゼオライトを110℃で乾燥させて、骨格置換ゼオライト(Ti、Zr)-BEAを得る。
【0026】
骨格置換BEA型ゼオライトの調製において、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、またはチタン化合物の水溶液をBEA型ゼオライトの懸濁液と混合するときに、この水溶液は、懸濁液に徐々に加えることができる。懸濁液への水溶液の添加を完了した後、この溶液は、例えば、3時間から5時間に亘り室温(25℃±10℃)で撹拌することによって、混合することができる。さらに、混合が完了した後、上述した混合溶液は、そのpHが7.0から7.5に制御されるようにアンモニア水などのアルカリを添加することによって中和し、それによって、触媒中の骨格置換ゼオライトを得ることができる。
【0027】
骨格置換BEA型ゼオライトの調製において、BEA型ゼオライト原材料は、500℃から700℃または550℃から650℃でか焼されることがある。骨格置換BEA型ゼオライトが得られる限り、か焼時間は特に限定されない。例示のか焼時間は、30分から10時間であることがある。BEA型ゼオライト原材料のか焼雰囲気に関して、か焼が空気中で行われることが好ましい。か焼されたBEA型ゼオライト原材料を20℃から30℃の温度を有する水中に懸濁させて、懸濁液を形成する。BEA型ゼオライトの懸濁液の濃度に関して、液固質量比は、例えば、5から15、または8から12であることがある。
【0028】
骨格置換BEA型ゼオライトの調製において懸濁液のpHを低下させるための無機酸の非限定例としては、硫酸、硝酸、または塩化水素酸が挙げられるであろう。骨格置換BEA型ゼオライトの調製において懸濁液のpHを低下させるための有機酸の例としては、カルボン酸が挙げられるであろう。無機酸または有機酸の量は、懸濁液のpHを2.0未満の範囲に制御できる限り、限定されない。酸の量の非限定例としては、骨格置換BEA型ゼオライト中のアルミナのモル量の0.5から4.0倍、または0.7から3.5倍の酸のモル量が挙げられる。
【0029】
骨格置換BEA型ゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するチタン化合物の非限定例としては、硫酸チタン、酢酸チタン、塩化チタン、硝酸チタン、乳酸チタン、およびチタン原子にゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換させるのに十分な懸濁液中の溶解度を有するチタンの任意の化合物が挙げられる。実施の形態において、チタン化合物を水中に溶かすことにより調製されるチタン化合物の水溶液が、チタン化合物として適切に使用される。
【0030】
骨格置換BEA型ゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するジルコニウム化合物の非限定例としては、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、およびジルコニウム原子にゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換させるのに十分な懸濁液中の溶解度を有するジルコニウムの任意の化合物が挙げられる。実施の形態において、ジルコニウム化合物を水中に溶かすことにより調製されるジルコニウム化合物の水溶液が、ジルコニウム化合物として適切に使用される。
【0031】
骨格置換BEA型ゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するハフニウム化合物の非限定例としては、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウム、フッ化ハフニウム、臭化ハフニウム、シュウ酸ハフニウム、およびハフニウム原子にゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換させるのに十分な懸濁液中の溶解度を有するハフニウムの任意の化合物が挙げられる。実施の形態において、ハフニウム化合物を水中に溶かすことにより調製されるハフニウム化合物の水溶液が、ハフニウム化合物として適切に使用される。
【0032】
実施の形態によれば、骨格置換BEA型ゼオライト触媒は、(a)400m/gから800m/gの比表面積、(b)10から200のSiO対Alのモル比、(c)0.2cm/gから0.6cm/gの細孔体積、および(d)結晶格子定数a=1.26nmから1.27nm、b=1.26nmから1.27nm、およびc=2.62から2.65nmを有することがある。骨格置換BEA型ゼオライト触媒は、0.40mL/gから0.75mL/gの、600オングストローム以下(60nm以下)の直径を持つ細孔の体積を有することがある。非限定例の実施の形態において、骨格置換BEA型ゼオライト触媒添加剤は、(a)400m/gから800m/gの比表面積、(b)約60のSiO対Alのモル比、(c)0.38cm/gから0.43cm/gの細孔体積、および(d)結晶格子定数a=1.26nmから1.27nm、b=1.26nmから1.27nm、およびc=2.62から2.65nmを有する(Ti、Zr)-BEAゼオライトを含むことがある。骨格置換BEA型ゼオライト触媒は、4nmから100nmの直径を有するメソ細孔を有することがある。
【0033】
炭化水素油を分解する方法の非限定例の実施の形態において、触媒は、骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%のベータゼオライトAl置換原子を含有する(Ti、Zr)-BEA骨格置換ベータゼオライトである。そのような例示の実施の形態において、ベータゼオライトAl置換原子は、チタン原子およびジルコニウム原子を含む。
【0034】
実施の形態によれば、前記触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、2質量%から90質量%、または5質量%から90質量%、または10質量%から90質量%、または20質量%から70質量%の骨格置換BEA型ゼオライト触媒を含むことがある。この触媒系に必要に応じて含まれることがある追加の成分をより詳しく説明する。
【0035】
触媒系の随意的な追加の成分
オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法の実施の形態において、触媒系は、必要に応じて、骨格置換ベータゼオライトに加えて、1種類以上の成分を含むことがある。そのような成分の例としては、制限なく、追加のゼオライト触媒などの1種類以上の追加の触媒、触媒マトリクス支持体、結合剤、充填剤、または活性金属成分が挙げられる。
【0036】
いくつかの実施の形態によれば、触媒系は、骨格置換ベータゼオライトに加えて、追加の触媒を含むことがある。追加の触媒の例としては、制限なく、BEA型ゼオライトの孔径と異なる孔径を有し、それによって、制限された形状を有する炭化水素だけをその細孔を通じてゼオライトに入らせるように選択的である形状選択的ゼオライトが挙げられる。適切な形状選択的ゼオライト成分の例としては、制限なく、例えば、ゼオライトY、超安定Y型ゼオライト(USYゼオライト)、骨格置換USYゼオライト、ZSM-5ゼオライト、ゼオライトオメガ、SAPO-5ゼオライト、SAPO-11ゼオライト、SAPO34ゼオライト、およびペンタシル型アルミノケイ酸塩が挙げられる。触媒系中に存在する場合、触媒系中の追加の形状選択的ゼオライトの含有量は、触媒系の総質量に基づいて、約0.01質量%から20質量%、または約0.01質量%から10質量%であることがある。
【0037】
いくつかの実施の形態において、触媒系は追加の触媒を含み、その追加の触媒は骨格置換超安定Y(USY)-ゼオライトを含む。実施の形態による骨格置換超安定Y(USY)型ゼオライトは、改質USY骨格を有する。この改質USY骨格は、USYアルミノケイ酸塩骨格の標準的な定義によるUSYアルミノケイ酸塩骨格の類似体である。標準的な定義によれば、USYアルミノケイ酸塩骨格は、2.430nm以上かつ2.450nm以下の結晶格子定数(UD)、600m/gから900m/gの比表面積、およびシリカ(SiO)とアルミナ(Al)の基準で計算して、20から100のケイ素対アルミニウムのモル比を有するアルミノケイ酸塩ゼオライトの骨格である。
【0038】
本開示の実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトに関して、改質USY骨格は、USYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部をUSY-ゼオライトAl置換原子で置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格である。実施の形態において、USY-ゼオライトAl置換原子は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択される。
【0039】
本開示に使用されるように、「Ti-USY」という用語は、置換原子がチタンである、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。同様に、「Zr-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がジルコニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。「Hf-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。「(Ti、Zr)-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がチタンとジルコニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。「(Ti、Hf)-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がチタンとハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。「(Zr、Hf)-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がジルコニウムとハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。「(Ti、Zr、Hf)-USY」という用語は、USY-ゼオライトAl置換原子がチタン、ジルコニウム、およびハフニウムを含む、実施の形態による骨格置換USY型ゼオライトを称する。
【0040】
実施の形態によるこの骨格置換USY型ゼオライトは、先に定義されたような、Ti-USY、Zr-USY、Hf-USY、(Ti、Zr)-USY、(Ti、Hf)-USY、(Zr、Hf)-USY、または(Ti、Zr、Hf)-USYであることがある。USY-ゼオライトAl置換原子は、超安定Y型ゼオライトの骨格を形成するアルミニウム原子の代わりに使用され、したがって、超安定Y型ゼオライトの骨格の成分の機能を果たす。置換は、以下に限られないが、紫外、可視、および近赤外分光光度法(UV-Vis-NIR)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、または核磁気共鳴分光法(NMR)を含む分析技術によって、確認することができる。
【0041】
いくつかの実施の形態において、骨格置換USY型ゼオライトは、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%、または0.1質量%から5質量%、または0.2質量%から4質量%、または0.3質量%から3質量%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含む。酸化物基準の計算において、チタン原子はTiOに基づいて計算され、ジルコニウム原子はZrOに基づいて計算され、ハフニウム原子はHfOに基づいて計算される。骨格置換USY型ゼオライト中のチタン、ジルコニウム、およびハフニウムは、例えば、蛍光X線分析、高周波プラズマ発光分析、または原子吸光分析などの公知の技術によって定量的に決定することができる。
【0042】
いくつかの実施の形態において、骨格置換USY型ゼオライトは、骨格アルミニウムを置換した置換原子に加え、骨格置換USY型ゼオライトの骨格に付着した、またはその外部に担持された、またはそれと結合した、ジルコニウム原子、チタン原子、ハフニウム原子、またはその任意の組合せをさらに含むことがある。そのような実施の形態において、ジルコニウム、チタン、またはハフニウム原子は、チタニア粒子、ジルコニア粒子、またはハフニア粒子などの酸化物粒子として付着することがある。この酸化物粒子は、50nm以下の粒径を有することがある。ここで考えられるような、定量分析を容易にする目的のために、骨格置換USY型ゼオライト中の置換原子の質量による量は、骨格アルミニウム原子と置換されたか、もしくはゼオライト骨格に付着した、またはその外部に担持された、またはそれと結合した、骨格置換USY型ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算された、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムの総量を含む。しかしながら、全ての実施の形態において、USYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の少なくとも一部が、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、またはその任意の組合せで置換されていることを理解すべきである。例示の実施の形態において、骨格置換USY型ゼオライト中に存在するチタン、ジルコニウム、およびハフニウム原子の50%超、または75%超、または90%超、または99%超が、ゼオライト骨格中の骨格アルミニウム原子と置換されており、特に粒子として、ゼオライト骨格に単に付着した、またはその外部に担持された、またはそれと結合したわけではない。
【0043】
骨格置換USY型ゼオライトが、(Ti、Zr)-USY、(Ti、Hf)-USY、(Zr、Hf)-USY、または(Ti、Zr、Hf)-USYにおけるように、USY-ゼオライトAl置換原子の組合せを含有する場合、酸化物基準で計算される、各ゼオライト中のUSY-ゼオライトAl置換原子の個々のタイプの質量比は限定されないことが当業者に認識されるはずである。実施の形態による方法に記載された反応は、チタン対ジルコニウム対ハフニウムの比率を調節することによって、調整されるかもしれないが、チタン対ジルコニウム対ハフニウムのどの比率が、本開示によるオレフィンを相互変換する方法を実施するのに効果的であってもよいことを理解すべきである。
【0044】
前記触媒系における骨格置換USY型ゼオライトは、骨格アルミニウム原子の一部が、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、またはその任意の組合せで置換されているUSYアルミノケイ酸塩骨格を有する骨格置換USY型ゼオライトをもたらすどのゼオライト調製方法によって、調製されてもよい。1つの例示の調製技術において、触媒系における骨格置換USY型ゼオライトは、2.430nmから2.450nmの結晶格子定数、600m/gから900m/gの比表面積、および20から100のシリカ対アルミナのモル比を有するUSY型ゼオライトを500℃から700℃で焼成することによって、製造することができる。次に、焼成したUSY型ゼオライトを含有する懸濁液を形成する。この懸濁液は、5から15の液/固質量比を有することがある。この懸濁液に無機酸または有機酸を加えて、懸濁液のpHを2.0未満に低下させる。1つ以上の追加の溶液の混合中に沈殿を防ぐために、懸濁液のpHを2.0未満に前もって制御する。詳しくは、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、またはその組合せの化合物を含有する1つ以上の追加の溶液を懸濁液に混ぜ合わせて、アルミニウム部位で骨格置換を行う。次に、懸濁液を、例えば、アンモニア水などの塩基で中和して、pHを7から7.5の範囲に上昇させる。得られた骨格置換USY型ゼオライトを濾過し、水で洗浄し、例えば、80℃から180℃の乾燥温度で乾燥させることができる。
【0045】
骨格置換USY型ゼオライトの調製において、超安定Y型ゼオライト原材料は、500℃から700℃または550℃から650℃でか焼されることがある。骨格置換USY型ゼオライトが得られる限り、か焼時間は特に限定されない。例示のか焼時間は、30分から10時間であることがある。USY型ゼオライト原材料のか焼雰囲気に関して、か焼が空気中で行われることが好ましい。か焼されたUSY型ゼオライト原材料を20℃から30℃の温度を有する水中に懸濁させて、懸濁液を形成する。USY型ゼオライトの懸濁液の濃度に関して、液固質量比は、例えば、5から15、または8から12であることがある。
【0046】
骨格置換USY型ゼオライトの調製において懸濁液のpHを低下させるための無機酸の非限定例としては、硫酸、硝酸、または塩化水素酸が挙げられるであろう。骨格置換USY型ゼオライトの調製において懸濁液のpHを低下させるための有機酸の例としては、カルボン酸が挙げられるであろう。無機酸または有機酸の量は、懸濁液のpHを2.0未満の範囲に制御できる限り、限定されない。酸の量の非限定例としては、骨格置換USY型ゼオライト中のアルミナのモル量の0.5から4.0倍、または0.7から3.5倍の酸のモル量が挙げられる。
【0047】
骨格置換USY型ゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するチタン化合物の非限定例としては、硫酸チタン、酢酸チタン、塩化チタン、硝酸チタン、乳酸チタン、およびチタン原子にゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換させるのに十分な懸濁液中の溶解度を有するチタンの任意の化合物が挙げられる。実施の形態において、チタン化合物を水中に溶かすことにより調製されるチタン化合物の水溶液が、チタン化合物として適切に使用される。
【0048】
骨格置換USY型ゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するジルコニウム化合物の非限定例としては、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、およびジルコニウム原子にゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換させるのに十分な懸濁液中の溶解度を有するジルコニウムの任意の化合物が挙げられる。実施の形態において、ジルコニウム化合物を水中に溶かすことにより調製されるジルコニウム化合物の水溶液が、ジルコニウム化合物として適切に使用される。
【0049】
骨格置換USY型ゼオライトの調製中に懸濁液に混合される追加の溶液中に存在するハフニウム化合物の非限定例としては、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウム、フッ化ハフニウム、臭化ハフニウム、シュウ酸ハフニウム、およびハフニウム原子にゼオライト骨格中のアルミニウム原子を置換させるのに十分な懸濁液中の溶解度を有するハフニウムの任意の化合物が挙げられる。実施の形態において、ハフニウム化合物を水中に溶かすことにより調製されるハフニウム化合物の水溶液が、ハフニウム化合物として適切に使用される。
【0050】
骨格置換USY型ゼオライトの調製において、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、またはチタン化合物の水溶液を超安定Y型ゼオライトの懸濁液と混合する場合、その水溶液は、懸濁液に徐々に加えられることがある。懸濁液への水溶液の添加を完了した後、この溶液は、例えば、3時間から5時間に亘り室温(25℃±10℃)で撹拌されることがある。さらに、混合が完了した後、上述した混合溶液は、そのpHが7.0から7.5に制御されるようにアンモニア水などのアルカリを添加することによって、中和され、それによって、触媒中に骨格置換ゼオライトを得ることができる。
【0051】
実施の形態による方法の触媒系は、触媒、特に、骨格置換BEA型ゼオライトの担体および必要に応じて存在することがある任意の追加の触媒をさらに含むことがある。いくつかの実施の形態において、この担体としては、骨格置換BEA型ゼオライト触媒を除く無機酸化物が挙げられるであろう。担体の無機酸化物は、造粒剤または結合剤の機能を果たす物質をさらに含むことがある。造粒剤としての物質を含む、任意の公知のゼオライト触媒担体に含まれるどの物質を使用してもよい。そのような無機酸化物の例としては、以下に限られないが、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-ボリア、リン-アルミナ、シリカ-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-シリカ、シリカ-アルミナ-チタニア、およびシリカ-アルミナ-ジルコニアが挙げられる。例示の実施の形態において、触媒系は、アルミナおよびシリカ-アルミナから選択される無機酸化物を担体として含む。シリカ-アルミナ担体は、非晶質であることがある。さらなる例示の実施の形態において、触媒系は、アルミナ結合剤を含むことがある。
【0052】
触媒系が担体を含む実施の形態において、ゼオライトと担体の質量比は、触媒活性の所望のレベルに応じて様々であろう。例示の実施の形態において、触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、2質量%から80質量%、10質量%から80質量%、または20質量%から約70質量%のゼオライトを含むことがある。同様に、触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、20質量%から98質量%、または20質量%から90質量%、または30質量%から80質量%を構成する触媒担体を含むことがある。
【0053】
さらなる例示の実施の形態において、触媒系は、シリカ系結合剤またはアルミナ系結合剤などの結合剤を含むことがある。シリカ系結合剤およびアルミナ系結合剤は、無機結合剤として使用することができる。シリカ系結合剤は、シリカゾル、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、およびケイ酸液の内の任意の1つまたは2つ以上であって差し支えない。例えば、10質量%から15質量%の範囲の濃度でSiOを含むシリカゾルは、12質量%から23質量%の範囲の濃度でSiOを含む水ガラスおよび20質量%から30質量%の範囲の濃度を有する硫酸を同時かつ連続的に加えることによって、調製することができる。アルミニウム化合物結合剤は、(a)塩基性塩化アルミニウム、(b)重リン酸アルミニウム、または(c)アルミナゾルであり得る。代わりに、酸性溶液中に、ギブサイト、バイエライト、およびベーマイトなどの微結晶アルミナの任意の種類または2種類以上を溶かすことによって得られた溶液をアルミニウム化合物結合剤として使用してもよい。ここでは、塩基性塩化アルミニウムは、[Al(OH)Cl6-nと表され、式中、nは整数であり、mは自然数であり、0<n<6および1<m<10、またはいくつかの実施の形態において、4.8<n<5.3および3<m<7である。
【0054】
実施の形態による方法の触媒系は、周期表のIUPACの第7族から第11族の個々の金属または金属の組合せから選択される活性金属成分をさらに含むことがある。活性金属の例としては、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金、クロム、モリブデン、およびタングステンが挙げられる。金属成分の組合せの非限定例としては、モリブデンとタングステンの組合せ;コバルトとニッケルの組合せ;モリブデン、タングステン、コバルトまたはニッケルの任意の1つ以上と、白金、ロジウム、またはパラジウムなどの白金族金属との組合せが挙げられる。例示の実施の形態において、触媒系は、ニッケル、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、またはその組合せから選択される少なくとも1つの活性相(active-phase)金属を含むことがある。
【0055】
金属成分が触媒系に含まれる場合、その触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、酸化物成分については酸化物基準で、または金属については金属基準で計算して、ゼロ超から約40質量%の金属成分を含有することがある。例示の実施の形態において、触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、モリブデン、タングステン、コバルト、またはニッケルなどの金属成分を3質量%から30質量%で含むことがある。さらなる例示の実施の形態において、触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、金属基準で計算して、白金、ロジウム、またはパラジウムから選択される金属成分を0.01質量%から2質量%で含むことがある。
【0056】
非限定例の実施の形態では、オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法において、触媒系は、骨格置換BEA型ゼオライト触媒、少なくとも1つの追加のゼオライト触媒または触媒添加剤、または触媒マトリクス支持体、結合剤、および充填剤を含むことがある。そのような例示の実施の形態において、触媒マトリクス支持体は、アルミナまたはシリカ-アルミナを含むことがあり、結合剤は、アルミナ、シリカ、ボリア、クロミア、マグネシア、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、およびその組合せからなる群より選択される多孔質無機酸化物のゾルであることがあり、充填剤は、カオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、ベントナイト、およびその組合せからなる群より選択される粘土であることがある。非限定例において、触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、1質量%から50質量%の骨格置換BEA型ゼオライト触媒、1質量%から50質量%の追加のゼオライト触媒、0.1質量%から15質量%の結合剤、および0.1質量%から15質量%の粘土を含むことがある。さらなる非限定例において、触媒系は、触媒系の総質量に基づいて、1質量%から50質量%の骨格置換BEA型ゼオライト触媒、1質量%から50質量%の骨格置換USY型ゼオライト触媒、0.1質量%から15質量%の結合剤、および0.1質量%から15質量%の粘土を含むことがある。
【0057】
さて、触媒系を詳しく説明してきたが、相互変換プロセスおよび関与する装置をこれから説明する。
【0058】
相互変換プロセス
先に述べたように、オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法は、オレフィン相互変換ユニット内でオレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させて、エチレンとプロピレンを含有する相互変換された流出物を生成する工程を含む。オレフィンの豊富な炭化水素流および触媒系の例示の実施の形態を、詳しく説明してきた。相互変換プロセスのパラメータと装置をこれから説明する。
【0059】
実施の形態によれば、オレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させる工程は、オレフィン相互変換ユニットの構成に基づいて、どの適切な方法により行われてもよい。この接触させる工程は、オレフィンの豊富な炭化水素流を、触媒系が既に中に存在するオレフィン相互変換ユニット中に通過させる工程を含むことがある。接触させる工程は、オレフィンの豊富な炭化水素流および触媒系を含む混合流を、オレフィン相互変換ユニットに入る前に混合流が形成されるように、オレフィン相互変換ユニット中に通過させる工程を含むことがある。
【0060】
いくつかの実施の形態によれば、オレフィン相互変換ユニットは、ライザー反応器またはダウナー反応器を含むことがある。本開示に使用されるように、「ダウナー」という用語は、流動床反応器などの反応器を称し、ここで、反応体は、例えば、反応器の上部に入り底部から出るなど、概して下向き方向に流れる。同様に、「ライザー」という用語は、流動床反応器などの反応器を称し、ここで、反応体は、反応器の底部に入り上部から出るなど、概して上向き方向に流れる。いくつかの実施の形態によれば、オレフィン相互変換ユニットは、流動床反応器、固定床反応器、および移動床反応器から選択される。いくつかの実施の形態によれば、オレフィンの豊富な炭化水素流は、蒸気熱分解ユニットまたは流動接触分解ユニット(そのいずれも、ライザー、ダウナー、またはその両方を含んでもよい)からの流出物であることがある。
【0061】
オレフィン相互変換ユニットへの供給物である、オレフィンの豊富な炭化水素流は、ナフサ分解装置またはFCCユニットを含むどの分解ユニットから、相互変換ユニットに通過させてもよい。オレフィン相互変換ユニットは、独立型の設備、拡張装置、または水蒸気分解装置と完全に統合された反応器であることがある。独立型ユニットについて、オレフィン相互変換ユニットからの生成物は、プロピレンの回収、エチレンの回収、または両方の回収のために分離セクションに供給されることがある。統合ユニットについて、オレフィン相互変換ユニットからの生成物は、水蒸気分解装置の回収セクションに供給されることがある。正確な供給地点は、カラムの容量および特定のプラントの分離スキームに依存する。未反応流は、さらなる変換のために選択的オレフィン分解ユニットに送り返すことができる。このように、いくつかの実施の形態において、オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法は、未変換のオレフィンを、なくすために相互変換ユニットに戻すように再循環させる工程をさらに含むことがある。
【0062】
本開示に記載されたような触媒系により触媒されるオレフィン相互変換は、オレフィンの豊富な炭化水素流のオレフィン相互変換のための通常の条件下で行われることがある。例えば、下記に記載される条件を適切に使用することができる。先に記載されたような触媒系は、反応器の容器に装填し、ガソリンおよび/またはエチレンとプロピレンを含む軽質オレフィンの生産のために公知のオレフィン相互変換プロセスにしたがって炭化水素油の接触分解に適切に使用することができる。
【0063】
例示の実施の形態において、オレフィンの豊富な炭化水素流の接触は、450℃から750℃の反応温度、1バールから5バール(100kPaから500kPa)の反応圧力、および0.5秒から1000秒の滞留時間でオレフィン相互変換ユニット内で行われることがある。
【0064】
オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法は、オレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させる前に、ジオレフィンを含有するラフィネート流を選択的に水素化して、オレフィンの豊富な炭化水素流を生成する工程をさらに含むことがある。そのような実施の形態において、ラフィネート流は、モノオレフィンに選択的に水素化されることのあるジオレフィンを含有するどの精製流であってもよい。そのような精製流の例としては、粗C4流、および1,3-ブタジエンを含有する炭化水素流が挙げられる。選択的水素化によって、オレフィンの豊富な炭化水素流は、ラフィネート流よりも少ない含有量でジオレフィンを含有する。理論で束縛する意図はないが、オレフィンの相互変換前にオレフィンの豊富な炭化水素流中のジオレフィンの濃度を低下させることによって、水素転移反応、環化、および芳香族化を減少させるか、最小にするか、またさらにはなくすことができ、よって、エチレンやプロピレンなどのオレフィンをもたらす反応を大本命にすることができると考えられる。
【0065】
オレフィンの豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法において、オレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系に接触させることにより、エチレンとプロピレンを含有する相互変換された流出物が生成される。相互変換された流出物の組成は、相互変換反応前のオレフィンの豊富な炭化水素流の組成に大きく依存することを当業者は理解すべきである。相互変換された流出物は、プロピレンとエチレンに加え、炭化水素を含有するであろうことも当業者は理解すべきである。実施の形態において、触媒系が本開示に記載されたような骨格置換BEA型触媒を含む場合、プロピレン、エチレン、またはその両方の収量比は、別の公知の触媒系の存在下での相互変換により形成されるプロピレン、エチレン、またはその両方の収量比よりも相対的に多い。実施の形態によれば、相互変換された流出物は、相互変換された流出物の総質量に基づいて、1質量%超のプロピレン、2質量%超のプロピレン、5質量%超のプロピレン、10質量%超のプロピレン、20質量%超のプロピレン、30質量%超のプロピレン、40質量%超のプロピレン、50質量%超のプロピレン、1質量%から60質量%のプロピレン、またさらには60質量%超のプロピレンを含むことがある。実施の形態によれば、相互変換された流出物は、相互変換された流出物の総質量に基づいて、1質量%超のエチレン、2質量%超のエチレン、5質量%超のエチレン、1質量%から10質量%のエチレン、10質量%超のエチレン、1質量%から20質量%のエチレン、またさらには20質量%超のエチレンを含むことがある。
【実施例
【0066】
本開示に記載された実施の形態は、実例として提示され、当業者により認識されるように、限定的であることを意味しない、以下の実施例を参照することによって、より良く理解されるであろう。
【0067】
オレフィンの豊富な炭化水素流として、ミッドカット(mid-cut)ナフサ流を使用した。このミッドカットナフサ流を、3.87の触媒対油の質量比で、550℃、30秒の滞留時間、1バール(100kPa)の圧力で、FCC MATユニット内で分解した。このミッドカットナフサ流の選択された性質が表1に与えられている。
【0068】
【表1】
【0069】
ミッドカットナフサ流の組成が表2に与えられている。
【0070】
【表2】
【0071】
オレフィンを相互変換するために、ミッドカットナフサ流を、唯一のゼオライト触媒としての本開示の実施の形態による(Ti、Zr)-BEAを含む触媒系と接触させた。この相互変換プロセスからの生成物の収量比が、表3に纏められている。
【0072】
【表3】
【0073】
表2に提示されているように、ミッドカットナフサ供給流中に存在する全オレフィンは、19.28質量%であった。表3に提示されているように、相互変換プロセスにより、4.32質量%のプロピレンおよび2.41質量%のエチレンを含有する生成物流が生成された。このように、本開示の実施の形態による骨格置換ベータゼオライト触媒は、本実施例のミッドカットナフサなどのオレフィンの豊富な炭化水素流からプロピレンとエチレンを生成するための適切な触媒として実証される。
【0074】
項目の列挙
本開示の実施の形態は、少なくとも以下の項目を含み、これらは、全体としての本開示の範囲または付随の特許請求の範囲を限定する意図はない。
【0075】
項目1:オレフィンが豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法において、オレフィン相互変換ユニット内でオレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させて、エチレンとプロピレンを含む相互変換された流出物を生成する工程であって、450℃から750℃の反応温度、1バールから5バール(100kPaから500kPa)の反応圧力、および0.5秒から1000秒の滞留時間で行われる、接触させる工程を含み、この触媒系は骨格置換ベータゼオライトを含み、この骨格置換ベータゼオライトは改質されたBEA骨格を有し、この改質されたBEA骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子からなる群より独立して選択されるベータゼオライトAl置換原子で、BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたBEAアルミノケイ酸塩骨格を有する、方法。
【0076】
項目2:骨格置換ベータゼオライトが、骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含有する、項目1の方法。
【0077】
項目3:骨格置換ベータゼオライトが、骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%のベータゼオライトAl置換原子を含有し、そのベータゼオライトAl置換原子が、(a)チタン原子とジルコニウム原子、(b)チタン原子とハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子とハフニウム原子、および(d)チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子:からなる群より選択される組合せを含む、項目1または項目2の方法。
【0078】
項目4:骨格置換ベータゼオライトが、骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含有し、そのベータゼオライトAl置換原子が、チタン原子とジルコニウム原子を含む、項目1から3のいずれかの方法。
【0079】
項目5:骨格置換ベータゼオライトが、(a)400m/gから800m/gの比表面積、(b)10から200のSiO対Alのモル比、(c)0.2cm/gから0.6cm/gの細孔体積、および(d)結晶格子定数a=1.26nmから1.27nm、b=1.26nmから1.27nm、およびc=2.62から2.65nmを有する、項目1から4のいずれかの方法。
【0080】
項目6:骨格置換ベータゼオライトが、4nmから100nmの直径を有するメソ細孔を有する、項目1から5のいずれかの方法。
【0081】
項目7:触媒系が、触媒系の総質量に基づいて、2質量%から90質量%の骨格置換ベータゼオライトを含む、項目1から6のいずれかの方法。
【0082】
項目8:オレフィンの豊富な炭化水素流が、4から12の炭素原子を有する炭化水素を含む、項目1から7のいずれかの方法。
【0083】
項目9:オレフィンの豊富な炭化水素流が、蒸気熱分解ユニットまたは流動接触分解ユニットからの流出物である、項目1から8のいずれかの方法。
【0084】
項目10:触媒系が、非晶質シリカ-アルミナおよびアルミナから選択される結合剤をさらに含む、項目1から9のいずれかの方法。
【0085】
項目11:結合剤が非晶質シリカ-アルミナであり、オレフィンの豊富な炭化水素流が、蒸気熱分解ユニットまたは流動接触分解ユニットからの流出物である、項目10の方法。
【0086】
項目12:触媒系が、骨格置換超安定Y-ゼオライトをさらに含む、項目1から11のいずれかの方法。
【0087】
項目13:骨格置換USY-ゼオライトが改質USY骨格を有し、この改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択されるUSY-ゼオライトAl置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格を含む、項目12の方法。
【0088】
項目14:骨格置換超安定Y-ゼオライトが、骨格置換超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含有する、項目12または項目13の方法。
【0089】
項目15:骨格置換超安定Y-ゼオライトが、(a)2.43nmから2.45nmの結晶格子定数aおよびb、(b)600m/gから900m/gの比表面積、および(c)5:1から100:1のSiO対Alのモル比を有する、項目12から14のいずれかの方法。
【0090】
項目16:骨格置換ベータゼオライトが、骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含有し、そのベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子を含み、骨格置換超安定Y-ゼオライトが、骨格置換超安定Y-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含有し、そのUSY-ゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子を含む、項目12から15のいずれかの方法。
【0091】
項目17:オレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させる前に、ジオレフィンを含有するラフィネート流を選択的に水素化して、オレフィンの豊富な炭化水素流を生成し、それによって、オレフィンの豊富な炭化水素流が、ラフィネート流よりも少ない含有量でジオレフィンを含有する工程をさらに含む、項目1から16のいずれかの方法。
【0092】
項目18:未変換のオレフィンを、なくすために反応器に戻すように再循環させる工程をさらに含む、項目1から17のいずれかの方法。
【0093】
項目19:オレフィンの豊富な炭化水素流が、粗C4精製流、ラフィネート-1流、水蒸気分解装置からのラフィネート-2流、流動接触分解装置からのC4流、および分解装置の熱分解ガソリンからのC5+流から選択される、項目1から18のいずれかの方法。
【0094】
項目20:オレフィン相互変換ユニットが、流動床反応器、固定床反応器、および移動床反応器から選択される、項目1から19のいずれかの方法。
【0095】
項目21:骨格置換BEA型ゼオライト触媒添加剤が、(a)400m/gから800m/gの比表面積、(b)約60のSiO対Alのモル比、(c)0.38cm/gから0.43cm/gの細孔体積、および(d)結晶格子定数a=1.26nmから1.27nm、b=1.26nmから1.27nm、およびc=2.62から2.65nmを有する(Ti、Zr)-BEAゼオライトである、項目1から20のいずれかの方法。
【0096】
特に明記のない限り、ここに使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。ここでの説明に使用した専門用語は、特定の実施の形態を説明するためだけであり、限定を意図するものではない。本明細書および付随の特許請求の範囲に使用されるように、名詞は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数の対象を含むことが意図されている。
【0097】
本開示を説明し、定義する目的で、「約」という用語は、任意の定量的比較、値、測定、または他の表現に帰属するであろう固有の不確実性の程度を表すために、ここに利用されていることに留意されたい。「約」という用語は、定量的表現が、問題の主題の基本的な機能を変化させずに、述べられた基準から変動するかもしれない程度を表すためにもここに使用されている。
【0098】
以下の請求項の1つ以上が、移行句として「ここで」という用語を利用していることに留意されたい。本技術を定義する目的で、この用語は、構造の一連の特徴の記述を導入するために使用され、より一般に使用される制約がない用語「含む」と似た様式で解釈されるべきである、制約のない移行句として請求項に導入されることに留意されたい。
【0099】
特性に割り当てられた任意の2つの定量値は、その特性の範囲を構成することができ、所与の特性の全ての述べられた定量値から形成される範囲の全ての組合せが、ここに考えられることを理解すべきである。
【0100】
特定の実施の形態をここに説明し、記載してきたが、請求項の主題の範囲から逸脱せずに、様々な他の変更および改変が行えることを理解すべきである。さらに、請求項の主題の様々な態様がここに記載されているが、そのような態様は、組合せで利用される必要はない。したがって、付随の特許請求の範囲は、請求項の主題の範囲内に入るそのような変更および改変の全てを包含することが意図されている。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
オレフィンが豊富な炭化水素流中のオレフィンを相互変換する方法において、
オレフィン相互変換ユニット内で前記オレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させて、エチレンとプロピレンを含む相互変換された流出物を生成する工程であって、450℃から750℃の反応温度、1バールから5バール(100kPaから500kPa)の反応圧力、および0.5秒から1000秒の滞留時間で行われる、接触させる工程、
を含み、
前記触媒系は骨格置換ベータゼオライトを含み、
前記骨格置換ベータゼオライトは改質された BEA骨格を有し、該改質された BEA骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子からなる群より独立して選択されるベータゼオライトAl置換原子で、 BEAアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質された BEAアルミノケイ酸塩骨格を有する、方法。
実施形態2
前記骨格置換ベータゼオライトが、該骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含有する、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記骨格置換ベータゼオライトが、該骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01質量%から5質量%のベータゼオライトAl置換原子を含有し、
前記ベータゼオライトAl置換原子が、(a)チタン原子とジルコニウム原子、(b)チタン原子とハフニウム原子、(c)ジルコニウム原子とハフニウム原子、および(d)チタン原子、ジルコニウム原子、およびハフニウム原子:からなる群より選択される組合せを含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態4
前記骨格置換ベータゼオライトが、該骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含有し、
前記ベータゼオライトAl置換原子が、チタン原子とジルコニウム原子を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態5
前記骨格置換ベータゼオライトが、
(a)400m /gから800m /gの比表面積、
(b)10から200のSiO 対Al のモル比、
(c)0.2cm /gから0.6cm /gの細孔体積、および
(d)結晶格子定数a=1.26nmから1.27nm、b=1.26nmから1.27nm、およびc=2.62から2.65nm、
を有する、実施形態1から4いずれか1つに記載の方法。
実施形態6
オレフィンの豊富な炭化水素流を触媒系と接触させる前に、ジオレフィンを含有するラフィネート流を選択的に水素化して、前記オレフィンの豊富な炭化水素流を生成し、それによって、該オレフィンの豊富な炭化水素流が、該ラフィネート流よりも少ない含有量でジオレフィンを含有する工程をさらに含む、実施形態1から5いずれか1つに記載の方法。
実施形態7
未変換のオレフィンを、なくすために反応器に戻すように再循環させる工程をさらに含む、実施形態1から6いずれか1つに記載の方法。
実施形態8
前記触媒系が、該触媒系の総質量に基づいて、2質量%から90質量%の骨格置換ベータゼオライトを含む、実施形態1から7いずれか1つに記載の方法。
実施形態9
前記触媒系が、非晶質シリカ-アルミナおよびアルミナから選択される結合剤をさらに含む、実施形態1から8いずれか1つに記載の方法。
実施形態10
前記オレフィンの豊富な炭化水素流が、4から12の炭素原子を有する炭化水素を含み、好ましくは、粗C4精製流、ラフィネート-1流、水蒸気分解装置からのラフィネート-2流、流動接触分解装置からのC4流、および分解装置の熱分解ガソリンからのC5+流から選択される、実施形態1から9いずれか1つに記載の方法。
実施形態11
前記オレフィンの豊富な炭化水素流が、蒸気熱分解ユニットまたは流動接触分解ユニットからの流出物である、実施形態1から10いずれか1つに記載の方法。
実施形態12
前記オレフィン相互変換ユニットが、流動床反応器、固定床反応器、および移動床反応器から選択される、実施形態1から11いずれか1つに記載の方法。
実施形態13
前記触媒系が、骨格置換超安定Y(USY)-ゼオライトをさらに含み、好ましくは、前記骨格置換USY-ゼオライトが改質USY骨格を有し、該改質USY骨格は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、およびその組合せからなる群より独立して選択されるUSY-ゼオライトAl置換原子でUSYアルミノケイ酸塩骨格の骨格アルミニウム原子の一部を置換することによって改質されたUSYアルミノケイ酸塩骨格を含み、より好ましくは、前記骨格置換USY-ゼオライトが、該骨格置換USY-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含有する、実施形態1から12いずれか1つに記載の方法。
実施形態14
前記骨格置換USY-ゼオライトが、
(a)2.43nmから2.45nmの結晶格子定数aおよびb、
(b)600m /gから900m /gの比表面積、および
(c)5:1から100:1のSiO 対Al のモル比、
を有する、実施形態13に記載の方法。
実施形態15
前記骨格置換ベータゼオライトが、該骨格置換ベータゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のベータゼオライトAl置換原子を含有し、
前記ベータゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子を含み、
前記骨格置換USY-ゼオライトが、該骨格置換USY-ゼオライトの総質量に基づいて、酸化物基準で計算して、0.01%から5%のUSY-ゼオライトAl置換原子を含有し、
前記USY-ゼオライトAl置換原子がチタン原子とジルコニウム原子を含む、実施形態13または14に記載の方法。