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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】燃焼器用筒、燃焼器、及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/42 20060101AFI20240920BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F23R3/42 A
F02C7/18 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023502489
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007623
(87)【国際公開番号】W WO2022181694
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2021028331
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 賢
(72)【発明者】
【氏名】小西 哲
(72)【発明者】
【氏名】松本 照弘
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160874(JP,A)
【文献】特開2013-040574(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0354819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/42
F02C 7/18
F23R 3/08
F23R 3/28
F23R 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒軸線の周りに筒状を成し、前記筒軸線が延びる筒軸線方向における上流側と下流側とのうち、前記上流側から前記下流側の方向成分を有する向きに燃焼ガスが流れる燃焼空間の周囲を画定する胴と、
前記胴に取り付けられている空気供給管と、
を備え、
筒状の前記胴には、
前記燃焼ガスに対向する内周面と、
前記内周面と相反する側を向く外周面と、
前記外周面から前記内周面に貫通した挿入開口と、
前記内周面と前記外周面との間を前記内周面に沿った方向に延びて、内部に冷却媒体を流すことができる複数の冷却流路と、
が形成され、
前記空気供給管の一部は、前記挿入開口から前記胴の内周側に挿入されて、前記胴の内周側に突出しており、
前記複数の冷却流路は、それぞれ、自身の内部に冷却媒体を導くことができる入口と、自身の内部を流れてきた前記冷却媒体を排出することができる出口と、を有し、
前記複数の冷却流路は、前記複数の冷却流路のうちの一部の冷却流路として、複数の開口周り流路を有し、
前記複数の開口周り流路は、前記挿入開口の縁に沿って延びている迂回流路部を有し、
前記複数の開口周り流路のうち、少なくとも一の開口周り流路が衝突域流路を成し、
前記衝突域流路は、前記迂回流路部として衝突域迂回流路部を有し、
前記衝突域迂回流路部は、前記空気供給管の管中心軸線に対する放射方向であって、前記燃焼ガスのうちで前記管中心軸線に向かってくる燃焼ガスの流れの向きに延びる衝突ガス軸線と交差し、且つ、前記衝突ガス軸線から前記挿入開口の縁に沿って前記上流側の方向成分を有する向きに延びていると共に、前記衝突ガス軸線から前記挿入開口の縁に沿って前記下流側の方向成分を有する向きに延び、
前記衝突域迂回流路部中で、前記衝突ガス軸線と交差する交差位置は、前記管中心軸線よりも前記上流側に位置し、
前記衝突域迂回流路部のうち、前記管中心軸線回りの角度であって、前記燃焼ガスの静圧が上がる静圧上昇領域である前記衝突ガス軸線を中心とする所定角度の範囲内の部分には、前記内周面で開口する前記出口が形成されていない、
燃焼器用筒。
【請求項2】
筒軸線の周りに筒状を成し、前記筒軸線が延びる筒軸線方向における上流側と下流側とのうち、前記上流側から前記下流側の方向成分を有する向きに燃焼ガスが流れる燃焼空間の周囲を画定する胴と、
前記胴に取り付けられている空気供給管と、
を備え、
筒状の前記胴には、
前記燃焼ガスに対向する内周面と、
前記内周面と相反する側を向く外周面と、
前記外周面から前記内周面に貫通した挿入開口と、
前記内周面と前記外周面との間を前記内周面に沿った方向に延びて、内部に冷却媒体を流すことができる複数の冷却流路と、
が形成され、
前記空気供給管の一部は、前記挿入開口から前記胴の内周側に挿入されて、前記胴の内周側に突出しており、
前記複数の冷却流路は、それぞれ、自身の内部に冷却媒体を導くことができる入口と、自身の内部を流れてきた前記冷却媒体を排出することができる出口と、を有し、
前記複数の冷却流路は、前記複数の冷却流路のうちの一部の冷却流路として、複数の開口周り流路を有し、
前記複数の開口周り流路は、前記挿入開口の縁に沿って延びている迂回流路部を有し、
前記複数の開口周り流路のうち、少なくとも一の開口周り流路が衝突域流路を成し、
前記衝突域流路は、前記迂回流路部として衝突域迂回流路部を有し、
前記衝突域迂回流路部は、前記空気供給管の管中心軸線に対する放射方向であって、前記燃焼ガスのうちで前記管中心軸線に向かってくる燃焼ガスの流れの向きに延びる衝突ガス軸線と交差し、且つ、前記衝突ガス軸線から前記挿入開口の縁に沿って前記上流側の方向成分を有する向きに延びていると共に、前記衝突ガス軸線から前記挿入開口の縁に沿って前記下流側の方向成分を有する向きに延び、
前記衝突域迂回流路部中で、前記衝突ガス軸線と交差する交差位置は、前記管中心軸線よりも前記上流側に位置し、
前記衝突域迂回流路部のうち、前記管中心軸線回りの角度であって、前記衝突ガス軸線を中心とする60°±20°の範囲内であるの部分には、前記内周面で開口する前記出口が形成されていない、
燃焼器用筒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃焼器用筒において、
前記衝突ガス軸線は、前記筒軸線に対して、40°±15°の角度を成す、
燃焼器用筒。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃焼器用筒において、
前記複数の開口周り流路は、前記迂回流路部の前記上流側の端から前記筒軸線方向における前記上流側に延びる上流側流路部を有し、
前記上流側流路部は、前記入口と前記出口とのうち、一方を有する、
燃焼器用筒。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の燃焼器用筒において、
前記複数の開口周り流路は、前記迂回流路部の前記下流側の端から前記筒軸線方向における前記下流側に延びる下流側流路部を有する、
燃焼器用筒。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃焼器用筒において、
前記複数の開口周り流路は、前記迂回流路部の前記上流側の端から前記筒軸線方向における前記上流側に延びる上流側流路部と、前記迂回流路部の前記下流側の端から前記筒軸線方向における前記下流側に延びる下流側流路部と、を有し、
前記上流側流路部には、前記入口と前記出口とのうちの一方が形成され、前記下流側流路部には、前記入口と前記出口とのうちの他方が形成され、前記迂回流路部には、前記入口及び前記出口が形成されていない、
燃焼器用筒。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の燃焼器用筒において、
前記複数の冷却流路は、前記複数の冷却流路のうちの一部の冷却流路として、前記筒軸線方向に延びる補完流路を有し、
前記補完流路は、前記複数の開口周り流路のうち、少なくとも一の開口周り流路の前記迂回流路部が存在する前記筒軸線に対する周方向の領域内に存在し、且つ、前記少なくとも一の開口周り流路の前記迂回流路部の一部に対して、前記筒軸線方向の位置が同じである、
燃焼器用筒。
【請求項8】
請求項7に記載の燃焼器用筒において、
前記補完流路の前記入口は、前記補完流路の前記筒軸線方向における両端のうち、前記挿入開口に近い側の端に形成されている、
燃焼器用筒。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の燃焼器用筒において、
前記複数の開口周り流路は、複数の前記衝突域流路を有し、
前記複数の衝突域流路のうち、第一衝突域流路の前記衝突域迂回流路部は、前記複数の衝突域流路のうちで前記第一衝突域流路を除く他の衝突域流路の前記衝突域迂回流路部よりも、前記挿入開口に近く、
前記第一衝突域流路の流路断面積は、前記他の衝突域流路の流路断面積より広い、
燃焼器用筒。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の燃焼器用筒において、
前記複数の冷却流路のうち、前記筒軸線に対する周方向で隣り合っている二つの冷却流路の前記出口は、前記筒軸線方向における位置が互いに異なっている、
燃焼器用筒。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の燃焼器用筒と、
前記挿入開口よりも前記上流側に配置され、前記燃焼空間中に燃料を噴射可能なバーナと、
を備え、
前記バーナは、前記筒軸線を中心として環状の燃料噴出口を有するバーナ枠と、前記バーナ枠内に設けられ、前記筒軸線を中心として、前記燃料噴出口から噴出する前記燃料を旋回させることができるスワラと、を有し、
前記スワラは、前記筒軸線に対する前記燃料噴出口から噴出する燃料の角度が予め定められた燃料旋回角度になるよう構成され、
前記筒軸線に対する前記衝突ガス軸線の角度は、前記燃料旋回角度±15°の範囲内である、
燃焼器。
【請求項12】
請求項11に記載の燃焼器において、
さらに、前記挿入開口よりも前記上流側に配置され、前記燃焼空間中に空気を噴射して、前記燃焼空間中で、前記バーナから噴射した燃料を拡散燃焼させることができる空気噴射器を備える、
燃焼器。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の燃焼器と、
圧縮空気を前記燃焼器に送ることができる圧縮機と、
前記燃焼器からの前記燃焼ガスで駆動できるタービンと、
を備えるガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスが流れる流路を画定する燃焼器用筒、この燃焼器用筒を備える燃焼器、及び、この燃焼器を備えるガスタービンに関する。
本願は、2021年2月25日に、日本国に出願された特願2021-028331号に基づき優先権を主張し、この内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの燃焼器は、燃焼ガスの流路を画定する燃焼器用筒と、この燃焼器用筒内に空気と共に燃料を噴射する燃焼器本体と、を備えている。燃焼器用筒内では、燃料が燃焼すると共に、燃料の燃焼で生成された燃焼ガスが流れる。
【0003】
燃焼器用筒としては、例えば、以下の特許文献1に開示されている燃焼器用筒がある。この燃焼器用筒は、軸線周りに筒状の胴と、この胴に取り付けられている空気供給管と、を備える。筒状の胴は、その外周面からその内周面に貫通した開口と、冷却媒体が流れる複数の冷却流路と、が形成されている。複数の冷却流路のうち、いくつかの冷却流路の出口は、開口の縁に形成されている。空気供給管は、胴の内周側に燃焼用二次空気を供給する役目を担っている。この空気供給管は、筒状の管本体と、管本体に設けられているリップ部と、を有する。管本体の一部は、開口から胴の内周側に挿入され、胴の内周側に突出している。管本体の両端のうち、胴の内周側の端には、前述のリップ部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-092373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の燃焼器用筒における胴の内周側には、高温の燃焼ガスが流れる。この燃焼ガスの一部は、空気供給管中で胴の内周側に位置している部分に衝突する。燃焼ガスは、空気供給管に衝突すると、その動圧が下がる一方で、その静圧が上がる。この結果、上記特許文献1に記載の燃焼器用筒では、胴の開口の縁に出口が形成されている冷却流路内に、燃焼ガスの一部が逆流して、胴を焼損させる可能性がある。
【0006】
そこで、本開示は、燃焼器用筒の耐久性を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための開示に係る一態様としての燃焼器用筒は、
筒軸線の周りに筒状を成し、前記筒軸線が延びる筒軸線方向における上流側と下流側とのうち、前記上流側から前記下流側の方向成分を有する向きに燃焼ガスが流れる燃焼空間の周囲を画定する胴と、前記胴に取り付けられている空気供給管と、を備える。筒状の胴には、前記燃焼ガスに対向する内周面と、前記内周面と相反する側を向く外周面と、前記外周面から前記内周面に貫通した挿入開口と、前記内周面と前記外周面との間を前記内周面に沿った方向に延びて、内部に冷却媒体を流すことができる複数の冷却流路と、が形成されている。前記空気供給管の一部は、前記挿入開口から前記胴の内周側に挿入されて、前記胴の内周側に突出している。前記複数の冷却流路は、それぞれ、自身の内部に冷却媒体を導くことができる入口と、自身の内部を流れてきた前記冷却媒体を排出することができる出口と、を有する。前記複数の冷却流路は、前記複数の冷却流路のうちの一部の冷却流路として、複数の開口周り流路を有する。前記複数の開口周り流路は、前記挿入開口の縁に沿って延びている迂回流路部を有する。前記複数の開口周り流路のうち、少なくとも一の開口周り流路が衝突域流路を成す。前記衝突域流路は、前記迂回流路部として衝突域迂回流路部を有する。前記衝突域迂回流路部は、前記空気供給管の管中心軸線に対する放射方向であって、前記燃焼ガスのうちで前記管中心軸線に向かってくる燃焼ガスの流れの向きに延びる衝突ガス軸線と交差し、且つ、前記衝突ガス軸線から前記挿入開口の縁に沿って前記上流側の方向成分を有する向きに延びていると共に、前記衝突ガス軸線から前記挿入開口の縁に沿って前記下流側の方向成分を有する向きに延びる。前記衝突域迂回流路部中で、前記衝突ガス軸線と交差する交差位置は、前記管中心軸線よりも前記上流側に位置する。前記衝突域迂回流路部のうち、前記管中心軸線回りの角度であって、前記衝突ガス軸線を中心とする所定角度の範囲内の部分には、前記内周面で開口する前記出口が形成されていない。
ここで、所定角度の範囲内の部分は、前記燃焼ガスの静圧が上がる静圧上昇領域である。また、所定角度は、60°±20°である。
【0008】
胴内を流れる燃焼ガスが空気供給管に衝突すると、その動圧が下がる一方で、その静圧が上がる。燃焼ガスが空気供給管に衝突して、燃焼ガスの静圧が上がる静圧上昇領域は、管中心軸線回りの角度であって、衝突ガス軸線から上流側への予め定められた上流側角度の範囲内、及び衝突ガス軸線から下流側への予め定められた下流側角度の範囲内である。本態様では、挿入開口の縁に沿って延びる迂回流路部を有する複数の開口周り流路を有するので、迂回流路部を流れる冷却媒体により、挿入開口の縁を冷却することができる。しかも、本態様では、衝突域迂回流路部中で、静圧上昇領域内の部分には、この衝突域迂回流路部を有する衝突域流路の出口が形成されていない。よって、本態様では、胴内の燃焼ガスが空気供給管に衝突して、静圧上昇領域内で燃焼ガスの静圧が上昇しても、衝突域流路内への燃焼ガスの逆流を抑制することができる。
【0009】
上記目的を達成するための開示に係る一態様としての燃焼器は、
前記一態様における燃焼器用筒と、前記挿入開口よりも前記上流側に配置され、前記燃焼空間中に燃料を噴射可能なバーナと、を備える。前記バーナは、前記筒軸線を中心として環状の燃料噴出口を有するバーナ枠と、前記バーナ枠内に設けられ、前記筒軸線を中心として、前記燃料噴出口から噴出する前記燃料を旋回させることができるスワラと、を有する。前記スワラは、前記筒軸線に対する前記燃料噴出口から噴出する燃料の角度が予め定められた燃料旋回角度になるよう構成されている。前記筒軸線に対する前記衝突ガス軸線の角度は、前記燃料旋回角度±15°の範囲内である。
【0010】
胴の内周側の燃焼空間内で、筒軸線を中心として燃料を旋回させる場合、筒軸線に対する衝突ガス軸線の角度である衝突軸角度は、ほぼ燃料旋回角度になる。但し、燃料の噴出流量と燃焼用空気の噴出流量との比率、及び、燃焼用空気の旋回角度の関係で、この衝突軸角度は、多少変化する。このため、衝突軸角度は、燃料旋回角度に完全に一致している必要性はなく、燃料旋回角度±15°の角度範囲内の角度であればよい。
【0011】
上記目的を達成するための開示に係る一態様としてのガスタービンは、
前記一態様における燃焼器と、圧縮空気を前記燃焼器に送ることができる圧縮機と、前記燃焼器からの前記燃焼ガスで駆動できるタービンと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る一態様では、燃焼器用筒の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの構成を示す模式図である。
図2】本開示に係る一実施形態における燃焼器の要部断面図である。
図3図2におけるIII-III線断面図である。
図4】本開示に係る一実施形態における燃焼器用筒の平面図である。
図5図4におけるV-V線断面図である。
図6】本開示に係る一実施形態の第一変形例における燃焼器用筒の平面図である。
図7】本開示に係る一実施形態の第二変形例における燃焼器用筒の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係る燃焼器用筒、燃焼器、及びガスタービンの一実施形態、さらに、燃焼器用筒の各種変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
「ガスタービンの一実施形態」
本実施形態のガスタービンについて、図1を参照して説明する。
【0016】
本実施形態のガスタービンは、外気Aoを圧縮して圧縮空気Aを生成する圧縮機1と、燃料Fを圧縮空気A中で燃焼させ燃焼ガスGを生成する複数の燃焼器4と、燃焼ガスGにより駆動するタービン5と、を備える。
【0017】
圧縮機1は、回転軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ2と、圧縮機ロータ2を回転可能に覆う圧縮機ケーシング3と、を有する。タービン5は、回転軸線Arを中心として回転するタービンロータ6と、タービンロータ6を回転可能に覆うタービンケーシング7と、を有する。
【0018】
圧縮機1は、タービン5に対して、回転軸線Arが延びる回転軸線方向における上流側と下流側のうち、上流側に配置されている。圧縮機ロータ2とタービンロータ6とは、同一の回転軸線Ar上に位置し、互に接続されてガスタービンロータ8を成す。このガスタービンロータ8には、例えば、発電機GENのロータが連結されている。
【0019】
ガスタービンは、さらに、中間ケーシング9を備えている。圧縮機ケーシング3、中間ケーシング9、及びタービンケーシング7は、この順序で、前述の回転軸線方向に並んで、互に接続されている。複数の燃焼器4は、中間ケーシング9に設けられている。
【0020】
圧縮機1は、外気Aoを圧縮して圧縮空気Aを生成する。この圧縮空気Aは、燃焼器4内に流入する。また、燃焼器4には、燃料Fが供給される。燃焼器4内では、燃料Fが燃焼して、燃焼ガスGが生成される。この燃焼ガスGは、タービン5内に送られ、タービンロータ6を回転させる。このタービンロータ6の回転で、ガスタービンロータ8に接続されている発電機GENのロータが回転する。この結果、発電機GENは発電する。なお、本実施形態における燃料Fは、製鉄所の高炉からの高炉ガス(以下、BFG(Blast Furnace Gas)とする)を主とし、場合によっては、このBFGにコークス炉ガス(COG(Coke Oven Gas))が含まれる。
【0021】
「燃焼器用筒、及びこれを備える燃焼器の一実施形態」
本実施形態の燃焼器用筒、及びこれを備える燃焼器4について、図2図5を参照して説明する。
【0022】
本実施形態の燃焼器4は、燃焼ガスGが流れる燃焼空間Sを画定する燃焼器用筒としての燃焼筒20と、この燃焼筒20内に圧縮空気Aと共に燃料Fを噴射する燃焼器本体10と、を備える。燃焼筒20は、圧縮機1で圧縮された圧縮空気Aが漂う中間ケーシング9内に配置されている(図1参照)。
【0023】
燃焼器本体10は、図2及び図3に示すように、外筒11と、支持筒12と、内筒13と、バーナ14と、空気噴射器17と、を有する。外筒11、支持筒12、及び内筒13は、いずれも、筒軸線Ac周りに筒状を成している。なお、以下では、筒軸線Acが延びる方向を筒軸線方向Da、この筒軸線方向Daにおける両側のうち、一方側を上流側Dau、他方側を下流側Dadとする。また、筒軸線Acに対する周方向を単に周方向Dcとする。
【0024】
外筒11は、筒軸線Ac周りに筒状を成す外筒胴11aと、この外筒胴11aの上流側Dauの開口を塞ぐ蓋11bと、を有する。この外筒胴11aの下流側Dadの端は、図1を用いて前述した中間ケーシング9に接続されている。
【0025】
支持筒12は、筒軸線Ac周りに筒状を成し外筒11の内周側に配置されている。支持筒12には、外周側から内周側に貫通する空気導入開口12aが形成されている。支持筒12の上流側Dauの端は、外筒11の蓋11bに接続されている。中間ケーシング(図1参照)内に漂っている圧縮空気Aは、支持筒12の外周側から、空気導入開口12aを経て、支持筒12の内周側に流入する。
【0026】
内筒13は、小径胴13aと、拡径胴13bと、大径胴13cと、を有する。小径胴13a、拡径胴13b、及び大径胴13cは、いずれも、筒軸線Ac周りに筒状を成す。小径胴13aは、支持筒12の内周側に配置されている。拡径胴13bの上流側Dauの端は、小径胴13aの下流側Dadの端に接続されている。拡径胴13bは、下流側Dadに向かうに連れて次第に内径が大きくなる。この拡径胴13bの下流側Dadの端の内径は、支持筒12の内径と実質的に同じである。この大径胴13cの上流側Dauの端は、拡径胴13bの下流側Dadの端及び支持筒12の下流側Dadの端に接続されている。よって、この内筒13は、支持筒12により支持されている。拡径胴13bの内周側の空間及び大径胴13cの内周側の空間は、燃焼空間Sの上流側Dauの部分を形成する。
【0027】
バーナ14は、バーナ枠15と、ガス燃料Fを筒軸線Ac回りに旋回させる複数の燃料用スワラ16と、を有する。バーナ枠15は、筒軸線Acを中心として円筒状を成すバーナ筒15aと、バーナ筒15a内に配置されている中心筒15bと、を有する。バーナ筒15aは、内筒13の小径胴13aの内周側に配置されている。バーナ筒15aの上流側Dauの部分は、外筒11の蓋11bを貫通している。このバーナ筒15aは、外筒11の蓋11bに固定されている。バーナ筒15aの上流側Dau端及び下流側Dad端は、いずれも開口している。このバーナ筒15aの上流側Dauの端の開口から、バーナ筒15a内に燃料Fが流入する。中心筒15bは、筒軸線Ac周りに円筒状を成し、自身の中心軸が筒軸線Ac上に位置するように配置されている。バーナ筒15aの内周側と中心筒15bの外周側との間の環状の空間は、燃料Fが流れる燃料流路を成す。このため、バーナ筒15aの下流側Dadの端縁と中心筒15bの外周側の下流側Dadの端縁とで、筒軸線Acを中心として環状の燃料噴出口14jが形成される。複数の燃料用スワラ16は、燃料流路内に配置されている。燃料用スワラ16は、筒軸線Acに対する径方向外側の端がバーナ筒15aの内周面に接続され、筒軸線Acに対する径方向内側の端が中心筒15bの外周面に接続されている。中心筒15bは、複数の燃料用スワラ16を介して、バーナ筒15aに固定されている。複数の燃料用スワラ16は、筒軸線Acに対する、燃料噴出口14jから燃焼空間S中に噴出する燃料Fの角度が予め定められた燃料旋回角度θfになるよう構成されている。具体的には、筒軸線Acに対する燃料用スワラ16における下流側Dad部分の角度が前述の燃料旋回角度θfになっている。この燃料旋回角度θfは、例えば、40°である。
【0028】
空気噴射器17は、空気噴射枠18と、圧縮空気Aを筒軸線Ac回りに旋回させる複数の空気用スワラ19と、を有する。空気噴射枠18は、内筒13の小径胴13aとバーナ筒15aとで構成されている。バーナ筒15aの外周側と小径胴13aの内周側との間の環状の空間は、圧縮空気Aが流れる空気流路を成す。支持筒12の空気導入開口12aから支持筒12の内周側に流入した圧縮空気Aは、バーナ筒15aの外周側と小径胴13aの上流側Dauの端縁との隙間から空気流路内に流入する。圧縮空気Aは、この空気流路内を流れ、空気噴出口17jから、一次燃焼用空気A1として、燃焼空間S内に噴出する。空気噴出口17jは、筒軸線Acを中心として環状で、バーナ筒15aの下流側Dadの端縁と小径胴13aの下流側Dadの端縁とで形成されている。複数の空気用スワラ19は、空気流路内に配置されている。空気用スワラ19は、筒軸線Acに対する径方向外側の端が小径胴13aの内周面に接続され、筒軸線Acに対する径方向内側の端がバーナ筒15aの外周面に接続されている。複数の空気用スワラ19は、筒軸線Acに対する、空気噴出口17jから燃焼空間S中に噴出する圧縮空気A(一次燃焼用空気A1)の角度が予め定められた空気旋回角度になるよう構成されている。具体的には、筒軸線Acに対する空気用スワラ19における下流側Dad部分の角度が前述の空気旋回角度になっている。この空気旋回角度は、例えば、35°である。
【0029】
燃焼器用筒としての燃焼筒20は、筒軸線Acの周りに筒状を成す胴21と、この胴21に取り付けられている空気供給管40と、を有する。なお、空気供給管40は、スクープと呼ばれることもある。筒状の胴21は、燃焼ガスGが流れる燃焼空間Sの周囲を画定する。この胴21の上流側Dauの端は、内筒13の下流側Dadの端に接続されている。また、この胴21の下流側Dadの端は、図1に示すように、タービン5の燃焼ガス流入口5iに接続されている。
【0030】
胴21には、燃焼ガスGに対向する内周面23iと、内周面23iと相反する側を向く外周面22oと、外周面22oから内周面23iに貫通した円形の挿入開口25と、内周面23iと外周面22oとの間で冷却媒体が流れる複数の冷却流路30と、が形成されている。ここでの冷却媒体は、中間ケーシング(図1参照)内に漂っている圧縮空気Aである。複数の冷却流路30は、それぞれ、胴21の外周面22oで開口して内部に圧縮空気Aを導く入口30iと、内周面23iで開口して内部を流れてきた圧縮空気Aを排出する出口30oと、を有する。本実施形態では、冷却流路30の両端のうち、一方の端に入口30iが形成され、他方の端に出口30oが形成されている。
【0031】
胴21は、図5に示すように、外側板22と内側板23とを有する。外側板22で相反する方向を向いている一対の面のうち、一方の面が胴21の外周面22oを成し、他方の面が接合面22cを成す。また、内側板23で相反する方向を向いている一対の面のうち、一方の面が接合面23cを成し、他方の面が胴21の内周面23iを成す。外側板22の接合面22cには、外面側に凹み、長い複数の長溝22dが形成されている。外側板22と内側板23とは、互いの接合面22c,23c相互がろう付け等で接合されている。外側板22と内側板23との接合により、外側板22に形成されている長溝22dの開口が内側板23により塞がり、この長溝22d内が冷却流路30になる。よって、複数の冷却流路30は、胴21の外周面22oと内周面23iとの間を、内周面23iに沿った方向に延びている。
【0032】
空気供給管40は、図2図4及び図5に示すように、管中心軸線Atを中心として円筒状の管部41と、管部41に固定されているフランジ部42と、を有する。管部41の一部は、胴21の挿入開口25から胴21の内周側に挿入され、胴21の内周側に突出している。管部41と胴21との間の熱変形量差を考慮して、管部41の外周面と挿入開口25の縁との間には、わずかな隙間がある。管部41の両端のうちで、胴21の外周側に突出している端には、フランジ部42が固定されている。このフランジ部42は、管部41から管中心軸線Atに対する放射方向に突出している。空気供給管40のフランジ部42と胴21の外周面22oとの間には、複数の管固定ブロック45が配置されている。管固定ブロック45の一方の面は胴21の外周面22oに接合され、管固定ブロック45の他方の面は、空気供給管40のフランジ部42に接合されている。空気供給管40は、これら複数の管固定ブロック45により、胴21に固定されている。この空気供給管40が胴21に固定されている状態では、空気供給管40の管中心軸線Atは、筒軸線Acに対する放射方向に延びている。この空気供給管40は、中間ケーシング9(図1参照)内に漂っている圧縮空気Aを二次燃焼用空気A2として、胴21の内周側に導く。
【0033】
図5に示すように、本実施形態では、複数の冷却流路30のうち、周方向Dcで隣り合っている二つの冷却流路30の出口30oは、筒軸線方向Daにおける位置が互いに異なっている。また、本実施形態では、複数の冷却流路30のうち、一の冷却流路30の入口30iは、他の冷却流路30の入口30iと共有する場合がある。また、本実施形態では、複数の冷却流路30のうち、一の冷却流路30の出口30oは、他の冷却流路30の出口30oと共有する場合がある。本実施形態では、複数の冷却流路30のうち、一部が複数の通常流路31を成し、他の一部が複数の補完流路32を成し、残りの一部が複数の開口周り流路33を成す。
【0034】
複数の開口周り流路33は、それぞれ、挿入開口25の縁に沿って延びる迂回流路部34と、迂回流路部34の上流側Dauの端から筒軸線方向Daにおける上流側Dauに延びる上流側流路部35と、迂回流路部34の下流側Dadの端から筒軸線方向Daにおける下流側Dadに延びる下流側流路部36と、を有する。上流側流路部35及び下流側流路部36は、いずれも、筒軸線方向Daに延びる直線的な流路部である。一方、迂回流路部34は、円形の挿入開口25の縁に沿うために、円弧状の流路部である。開口周り流路33の入口30iは、上流側流路部35と下流側流路部36とのうちの一方に形成されている。この入口30iは、複数の通常流路31のうちの一の通常流路31の入口30iと共有している。また、開口周り流路33の出口30oは、上流側流路部35と下流側流路部36とのうちの他方に形成されている。この出口30oは、複数の通常流路31のうちの他の一の通常流路31の出口30oと共有している。迂回流路部34には、開口周り流路33の入口30i及び出口30oが形成されていない。
【0035】
ここで、管中心軸線Atに対する放射方向であって、燃焼ガスGのうちで管中心軸線Atに向かってくる燃焼ガスGの流れの向きに延びる線を衝突ガス軸線Aiとする。本実施形態において、筒軸線Acに対して、管中心軸線Atに向かってくる燃焼ガスGの流れの向きは、前述した燃料旋回角度θfとほぼ同じで40°を成す。このため、筒軸線Acに対して本実施形態の衝突ガス軸線Aiの成す角度である衝突軸角度θiは、40°である。衝突ガス軸線Aiと胴21の外周面22oとの交差位置は、主衝突位置41pを成す。
【0036】
複数の開口周り流路33の一部は、複数の衝突域流路33iを成し、残りは、複数の非衝突域流路33nを成す。衝突域流路33iの迂回流路部34は、衝突域迂回流路部34iを成す。ここで、図4に示すように、周方向Dcで、管中心軸線Atを基準にして主衝突位置41pが存在する側を周方向第一側Dc1とし、反対側を周方向第二側Dc2とする。複数の衝突域流路33i毎の衝突域迂回流路部34iは、いずれも、管中心軸線Atを基準にして、周方向第一側Dc1に存在する。一方、複数の非衝突域流路33n毎の迂回流路部34は、いずれも、管中心軸線Atを基準にして、周方向第二側Dc2に存在する。
【0037】
複数の衝突域流路33i毎の衝突域迂回流路部34iは、衝突ガス軸線Aiと交差している。衝突ガス軸線Aiと交差する交差位置34pは、管中心軸線Atよりも上流側Dauで、且つ管中心軸線Atよりも周方向第一側Dc1に位置している。
【0038】
胴21内を流れる燃焼ガスGが空気供給管40に衝突すると、その動圧が下がる一方で、その静圧が上がる。燃焼ガスGが空気供給管40に衝突して、燃焼ガスGの静圧が上がる静圧上昇領域Rは、管中心軸線At回りの角度であって、衝突ガス軸線Aiを中心とする所定角度(θu+θd)の範囲内である。具体的に、静圧上昇領域Rは、管中心軸線At回りの角度であって、衝突ガス軸線Aiから上流側Dauへの予め定められた上流側角度θuの範囲内、及び衝突ガス軸線Aiから下流側Dadへの予め定められた下流側角度θdの範囲内である。ここで、所定角度(θu+θd)は、燃焼ガスGが空気供給管40に衝突する直前の流速により変化する。このため、所定角度(θu+θd)は、60°±20°である。具体的に、上流側角度θu及び下流側角度θdは、30°±10°である。なお、本実施形態の上流側角度θu及び下流側角度θdは、30°である。
【0039】
衝突域迂回流路部34iは、衝突ガス軸線Aiから挿入開口25の縁に沿って上流側Dauの方向成分を有する向きに延びていると共に、衝突ガス軸線Aiから挿入開口25の縁に沿って下流側Dadの方向成分を有する向きに延びている。衝突ガス軸線Aiから上流側Dauの方向成分を有する向きに延びている部分の端には、衝突域流路33iの上流側流路部35に接続されている。また、衝突ガス軸線Aiから下流側Dadの方向成分を有する向きに延びている部分の端には、衝突域流路33iの下流側流路部36に接続されている。
【0040】
前述したように、複数の開口周り流路33毎の迂回流路部34には、入口30i及び出口30oが形成されていない。このため、衝突域迂回流路部34iのうち、衝突ガス軸線Aiから上流側Dauへ上流側角度θuの範囲内、及び衝突ガス軸線Aiから下流側Dadへ下流側角度θdの範囲内である、静圧上昇領域Rに存在する部分には、入口30i及び出口30oが形成されていない。
【0041】
ここで、複数の衝突域流路33iのうち、衝突域迂回流路部34iが挿入開口25に最も近い衝突域流路33iを第一衝突域流路33i1とする。この第一衝突域流路33i1に対して、周方向第一側Dc1に隣接する衝突域流路33iを第二衝突域流路33i2とし、この第二衝突域流路33i2に対して、周方向第一側Dc1に隣接する衝突域流路33iを第三衝突域流路33i3とする。図5に示すように、第一衝突域流路33i1の幅w1は、第二衝突域流路33i2の幅w2及び第三衝突域流路33i3の幅w3より広い。このため、第一衝突域流路33i1の流路断面積は、第二衝突域流路33i2の流路断面積及び第三衝突域流路33i3の流路断面積より広い。
【0042】
複数の通常流路31及び複数の補完流路32は、いずれも、筒軸線方向Daに延びる直線的な流路である。複数の通常流路31及び複数の補完流路32における上流側Dauの端には、入口30iと出口30oとのうち、一方が形成されている。また、複数の通常流路31及び複数の補完流路32における下流側Dadの端には、入口30iと出口30oとのうち、他方が形成されている。
【0043】
複数の補完流路32は、いずれも、複数の開口周り流路33のうち、少なくとも一の開口周り流路33の迂回流路部34が存在する周方向Dcの領域内に存在し、且つ、少なくとも一の開口周り流路33の迂回流路部34の一部に対して、筒軸線方向Daの位置が同じである。本実施形態では、複数の補完流路32毎の入口30iは、いずれも、筒軸線方向Daにおける挿入開口25に近い側の端に形成されている。
【0044】
複数の通常流路31は、前述したように、複数の冷却流路30のうち、複数の開口周り流路33及び複数の補完流路32を除く流路である。本実施形態では、複数の通常流路31のうち、一部の通常流路31は、一の開口周り流路33の迂回流路部34に対して、周方向Dcで挿入開口25から遠い側に隣接している。迂回流路部34は、前述したように、円弧状をなし、通常流路31は、直線状であるため、通常流路31と迂回流路部34との周方向Dcの間には、両者の距離が短い部分と長い部分とが存在する。複数の補完流路32のうち、一部の補完流路32aは、通常流路31と迂回流路部34との周方向Dcの間で、両者の距離が長い部分に配置され、この部分を冷却する役目を担う。また、複数の補完流路32のうち、他の補完流路32bは、周方向Dcで隣接する二つの開口周り流路33の上流側流路部35相互間又は下流側流路部36相互間に配置され、この相互間の部分を冷却する役目を担う。
【0045】
冷却流路30中で、この冷却流路30の出口30oに近い部分を流れる冷却媒体の温度は、冷却流路30中で、この冷却流路30の入口30iに近い部分を流れる冷却媒体の温度よりも高い。このため、冷却流路30中で、この冷却流路30の出口30oに近い部分での冷却能力は、冷却流路30中で、この冷却流路30の入口30iに近い部分での冷却能力よりも低い。このため、周方向Dcで隣り合っている二つの冷却流路30の出口30oの位置が、筒軸線方向Daで同じであると、二つの冷却流路30の各出口30oに近い部分の冷却能力が非常に低くなる。本実施形態では、周方向Dcで隣り合っている二つの冷却流路30の出口30oの位置が、筒軸線方向Daで互いに異なっているため、二つの冷却流路30の各出口30oに近い部分の冷却能力が非常に低くなることを抑制できる。
【0046】
本実施形態の胴21は、挿入開口25の縁に沿って延びる迂回流路部34を有する複数の開口周り流路33を有する。このため、本実施形態では、迂回流路部34を流れる冷却媒体により、挿入開口25の縁を冷却することができる。
【0047】
本実施形態では、空気供給管40の周りの静圧上昇領域Rには、挿入開口25の縁に沿って、衝突域流路33iの衝突域迂回流路部34iが形成されている。この衝突域迂回流路部34i中で、静圧上昇領域R内の部分には、衝突域流路33iの出口30oが形成されていない。よって、胴21内の燃焼ガスGが空気供給管40に衝突して、静圧上昇領域R内でこの燃焼ガスGの静圧が上昇しても、衝突域流路33i内への燃焼ガスGの逆流を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、複数の衝突域流路33iのうち、衝突域迂回流路部34iが挿入開口25に最も近い第一衝突域流路33i1の流路断面積は、他の衝突域流路33iの流路断面積より広い。このため、第一衝突域流路33i1を流れる冷却媒体としての圧縮空気の流量は、他の衝突域流路33iを流れる冷却媒体としての圧縮空気の流量より多い。さらに、本実施形態では、複数の補完流路32毎の入口30iは、いずれも、筒軸線方向Daにおける挿入開口25に近い側の端に形成されている。このため、本実施形態では、挿入開口25に近い胴21の部分を積極的に冷却することができる。
【0049】
本実施形態では、以上の観点から、空気供給管40近傍における胴21の焼損を抑制でき、燃焼筒20の耐久性を高めることができる。
【0050】
「燃焼器用筒の第一変形例」
上記一実施形態における燃焼器用筒の第一変形例について、図6を参照して説明する。
【0051】
本変形例の燃焼器用筒も、第一実施形態における燃焼器用筒と同様、燃焼筒20aである。本変形例の燃焼筒20aは、第一実施形態における燃焼筒20に対して、複数の冷却流路の形状及び配置が異なっており、その他の構成は同じである。
【0052】
本変形例においても、上記一実施形態と同様、複数の冷却流路30のうち、一部が複数の開口周り流路33aを成し、他の一部が補完流路32を成し、残りの一部が通常流路31を成す。
【0053】
本変形例における複数の開口周り流路33aは、すべて、衝突域流路33iである。すなわち、本変形例における複数の開口周り流路33aには、上記一実施形態における非衝突域流路33nが含まれない。
【0054】
複数の衝突域流路33iのそれぞれは、上記一実施形態における衝突域流路33iと同様、挿入開口25の縁に沿って延びて円弧状を成す衝突域迂回流路部34iを有する。
【0055】
複数の衝突域流路33i毎の衝突域迂回流路部34iは、上記一実施形態と同様、衝突ガス軸線Aiと交差している。衝突ガス軸線Aiと交差する交差位置34pは、管中心軸線Atよりも上流側Dauで、且つ管中心軸線Atよりも周方向Dcに位置している。衝突域迂回流路部34iは、衝突ガス軸線Aiから挿入開口25の縁に沿って上流側Dauの方向成分を有する向きに延びていると共に、衝突ガス軸線Aiから挿入開口25の縁に沿って下流側Dadの方向成分を有する向きに延びている。衝突域迂回流路部34iのうち、静圧上昇領域Rに存在する部分には、入口30i及び出口30oが形成されていない。
【0056】
複数の衝突域流路33iのうち、衝突域迂回流路部34iが挿入開口25に最も近い第一衝突域流路33i1aは、上記一実施形態における第一衝突域流路33i1と異なり、上流側流路部35及び下流側流路部36を有していない。このため、本変形例における第一衝突域流路33i1aの衝突域迂回流路部34iには、この衝突域迂回流路部34iにおける一方の端に入口30iが形成され、他方の端に出口30oが形成されている。但し、この出口30oは、前述したように、静圧上昇領域R内には形成されていない。一方、複数の衝突域流路33iのうち、第二衝突域流路33i2及び第三衝突域流路33i3は、第一実施形態における第二衝突域流路33i2及び第三衝突域流路33i3と同様、衝突域迂回流路部34iの他に、上流側流路部35及び下流側流路部36を有する。
【0057】
本変形例においても、上記一実施形態と同様、空気供給管40の周りの静圧上昇領域Rには、挿入開口25の縁に沿って、衝突域流路33iの衝突域迂回流路部34iが形成されている。この衝突域迂回流路部34i中で、静圧上昇領域R内の部分には、衝突域流路33iの出口30oが形成されていない。よって、胴21内の燃焼ガスGが空気供給管40に衝突して、静圧上昇領域R内でこの燃焼ガスGの静圧が上昇しても、衝突域流路33i内への燃焼ガスGの逆流を抑制することができる。
【0058】
以上のように、空気供給管40の周りの静圧上昇領域R中に衝突域迂回流路部34iが存在していれば、上記第一実施形態のように、挿入開口25の全周を複数の開口周り流路33の迂回流路部34で実質的に覆う必要はない。また、衝突域流路33iは、衝突域迂回流路部34iがあれば、上流側流路部35及び下流側流路部36が無くてもよい。また、衝突域迂回流路部34iには、入口30i及び出口30oが形成されていてもよい。
【0059】
本変形例における複数の補完流路32のうち、一部の補完流路32の入口30iは、筒軸線方向Daにおける挿入開口25に近い側の端に形成されている。また、本変形例における複数の補完流路32のうち、他の一部の補完流路32cの入口30iは、筒軸線方向Daにおける挿入開口25に遠い側の端に形成されている。すなわち、全ての補完流路32毎の入口30iは、筒軸線方向Daにおける挿入開口25に近い側の端に形成されていなくてもよい。
【0060】
「燃焼器用筒の第二変形例」
第一実施形態における燃焼用筒の第二変形例について、図7を参照して説明する。
【0061】
本変形例の燃焼器用筒も、上記一実施形態における燃焼器用筒と同様、燃焼筒20bである。本変形例の燃焼筒20bは、第一実施形態における燃焼筒20に対して、複数の迂回流路部の形状が異なっており、その他の構成は同じである。
【0062】
上記一実施形態における迂回流路部34は、いずれも、円形の挿入開口25の形状に併せて円弧状を成している。一方、本変形例の迂回流路部34bは、いずれも、円弧状ではなく、複数の直線部分をつなぎ合わせた形状になっている。迂回流路部34bがこのような形状であっても、挿入開口25の縁に沿って延びていれば、上記一実施形態における迂回流路部34と実質的に同様の効果を得ることができる。但し、このような形状の迂回流路部34bよりも円弧状の迂回流路部34の方が圧縮空気Aの圧力損失が小さいため、円弧状の迂回流路部34の製造が困難でない場合には、迂回流路部は、円弧状である方がよい。
【0063】
「その他の変形例」
以上の実施形態及び各変形例では、燃料旋回角度θfと衝突軸角度θiとは、ほぼ同じである。しかしながら、燃料Fの噴出流量と燃焼用空気A1の噴出流量との比率、及び燃焼用空気A1の旋回角度の関係で、燃料旋回角度θfに対して衝突軸角度θiが、燃料旋回角度θf±15°の範囲内で変わることがある。このため、筒軸線Acに対する衝突ガス軸線Aiの角度である衝突軸角度θiは、40°に限られず、40°±15°の角度範囲内の角度であればよい。
【0064】
燃焼器によっては、燃焼空間内で筒軸線Acを中心として燃焼ガスGを旋回させないものもある。この場合、衝突ガス軸線Aiが筒軸線方向Daに延びることになる。つまり、筒軸線Acに対する衝突ガス軸線Aiの角度である衝突軸角度θiは、0°であってもよい。
【0065】
以上の実施形態及び各変形例では、燃焼筒20の胴21に空気供給管40を取り付けている。しかしながら、筒軸線方向Daにおける内筒13の大径胴13cの長さが長い場合には、この大径胴13cに空気供給管40を取り付けることもある。この場合、空気供給管40を備える燃焼用筒の胴は、内筒13の大径胴13cになる。
【0066】
以上の実施形態及び各変形例での燃料Fは、主としてBFGである。しかしながら、燃料Fは、他の燃料Fであってもよい。具体的に、燃料Fは、天然ガスやCOG等であってもよい。
【0067】
「付記」
以上の実施形態及び変形例における燃焼器用筒は、例えば、以下のように把握される。
【0068】
(1)第一態様における燃焼器用筒は、
筒軸線Acの周りに筒状を成し、前記筒軸線Acが延びる筒軸線方向Daにおける上流側Dauと下流側Dadとのうち、前記上流側Dauから前記下流側Dadの方向成分を有する向きに燃焼ガスGが流れる燃焼空間Sの周囲を画定する胴21と、前記胴21に取り付けられている空気供給管40と、を備える。筒状の前記胴21には、前記燃焼ガスGに対向する内周面23iと、前記内周面23iと相反する側を向く外周面22oと、前記外周面22oから前記内周面23iに貫通した挿入開口25と、前記内周面23iと前記外周面22oとの間を前記内周面23iに沿った方向に延びて、内部に冷却媒体を流すことができる複数の冷却流路30と、が形成されている。前記空気供給管40の一部は、前記挿入開口25から前記胴21の内周側に挿入されて、前記胴21の内周側に突出している。前記複数の冷却流路30は、それぞれ、自身の内部に冷却媒体を導くことができる入口30iと、自身の内部を流れてきた前記冷却媒体を排出することができる出口30oと、を有する。前記複数の冷却流路30は、前記複数の冷却流路30のうちの一部の冷却流路30として、複数の開口周り流路33を有する。前記複数の開口周り流路33は、前記挿入開口25の縁に沿って延びている迂回流路部34を有する。前記複数の開口周り流路33のうち、少なくとも一の開口周り流路33が衝突域流路33iを成す。前記衝突域流路33iは、前記迂回流路部34として衝突域迂回流路部34iを有する。前記衝突域迂回流路部34iは、前記空気供給管40の管中心軸線Atに対する放射方向であって、前記燃焼ガスGのうちで前記管中心軸線Atに向かってくる燃焼ガスGの流れの向きに延びる衝突ガス軸線Aiと交差し、且つ、前記衝突ガス軸線Aiから前記挿入開口25の縁に沿って前記上流側Dauの方向成分を有する向きに延びていると共に、前記衝突ガス軸線Aiから前記挿入開口25の縁に沿って前記下流側Dadの方向成分を有する向きに延びる。前記衝突域迂回流路部34i中で、前記衝突ガス軸線Aiと交差する交差位置34pは、前記管中心軸線Atよりも前記上流側Dauに位置する。前記衝突域迂回流路部34iのうち、前記管中心軸線At回りの角度であって、前記衝突ガス軸線Aiを中心とする所定角度(θu+θd)の範囲内の部分には、前記内周面23iで開口する前記出口30oが形成されていない。
【0069】
胴21内を流れる燃焼ガスGが空気供給管40に衝突すると、その動圧が下がる一方で、その静圧が上がる。燃焼ガスGが空気供給管40に衝突して、燃焼ガスGの静圧が上がる静圧上昇領域Rは、管中心軸線At回りの角度であって、衝突ガス軸線Aiから上流側Dauへの予め定められた上流側角度θuの範囲内、及び衝突ガス軸線Aiから下流側Dadへの予め定められた下流側角度θdの範囲内である。本態様では、挿入開口25の縁に沿って延びる迂回流路部34を有する複数の開口周り流路33を有するので、迂回流路部34を流れる冷却媒体により、挿入開口25の縁を冷却することができる。しかも、本態様では、衝突域迂回流路部34i中で、静圧上昇領域R内の部分には、この衝突域迂回流路部34iを有する衝突域流路33iの出口30oが形成されていない。よって、本態様では、胴21内の燃焼ガスGが空気供給管40に衝突して、静圧上昇領域R内で燃焼ガスGの静圧が上昇しても、衝突域流路33i内への燃焼ガスGの逆流を抑制することができる。
【0070】
(2)第二態様における燃焼器用筒は、
前記第一態様における燃焼器用筒において、前記所定角度(θu+θd)は、60°±20°である。
【0071】
所定角度(θu+θd)は、燃焼ガスGが空気供給管40に衝突する直前の流速により変化する。このため、所定角度(θu+θd)は、60°±20°である。
【0072】
(3)第三態様における燃焼器用筒は、
前記第一態様又は前記第二態様における燃焼器用筒において、前記衝突ガス軸線Aiは、前記筒軸線Acに対して、40°±15°の角度θiを成す。
【0073】
胴21の内周側の燃焼空間S内で、筒軸線Acを中心として燃料Fを旋回させる場合、筒軸線Acに対する衝突ガス軸線Aiの角度である衝突軸角度θiは、ほぼ40°になる。但し、燃料Fの噴出流量と燃焼用空気A1の噴出流量との比率、及び、燃焼用空気A1の旋回角度の関係で、この衝突軸角度θiは、多少変化する。このため、衝突軸角度θiは、40°に限られず、40°±15°の角度範囲内の角度であればよい。
【0074】
(4)第四態様における燃焼器用筒は、
前記第一態様から前記第三態様のいずれか一態様における燃焼器用筒において、前記複数の開口周り流路33は、前記迂回流路部34の前記上流側Dauの端から前記筒軸線方向Daにおける前記上流側Dauに延びる上流側流路部35を有する。前記上流側流路部35は、前記入口30iと前記出口30oとのうち、一方を有する。
【0075】
(5)第五態様における燃焼器用筒は、
前記第一態様から前記第四態様のいずれか一態様における燃焼器用筒において、前記複数の開口周り流路33は、前記迂回流路部34の前記下流側Dadの端から前記筒軸線方向Daにおける前記下流側Dadに延びる下流側流路部36を有する。
【0076】
(6)第六態様における燃焼器用筒は、
前記第一態様から前記第三態様のいずれか一態様における燃焼器用筒において、前記複数の開口周り流路33は、前記迂回流路部34の前記上流側Dauの端から前記筒軸線方向Daにおける前記上流側Dauに延びる上流側流路部35と、前記迂回流路部34の前記下流側Dadの端から前記筒軸線方向Daにおける前記下流側Dadに延びる下流側流路部36と、を有する。前記上流側流路部35には、前記入口30iと前記出口30oとのうちの一方が形成され、前記下流側流路部36には、前記入口30iと前記出口30oとのうちの他方が形成されている。前記迂回流路部34には、前記入口30i及び前記出口30oが形成されていない。
【0077】
本態様では、挿入開口25の縁に沿って延びる迂回流路部34に、開口周り流路33の出口30oが形成されていない。このため、本態様では、迂回流路部34中に燃焼ガスGが逆流することを抑制できる。
【0078】
(7)第七態様における燃焼器用筒は、
前記第一態様から前記第六態様のいずれか一態様における燃焼器用筒において、前記複数の冷却流路30は、前記複数の冷却流路30のうちの一部の冷却流路30として、前記筒軸線方向Daに延びる補完流路32を有する。前記補完流路32は、前記複数の開口周り流路33のうち、少なくとも一の開口周り流路33の前記迂回流路部34が存在する前記筒軸線Acに対する周方向Dcの領域内に存在し、且つ、前記少なくとも一の開口周り流路33の前記迂回流路部34の一部に対して、前記筒軸線方向Daの位置が同じである。
【0079】
一の開口周り流路33の迂回流路部34に対して、筒軸線Acに対する周方向Dcで挿入開口25から遠い側に、複数の冷却流路30のうちの一冷却流路30として、筒軸線方向Daに直線状に延びる通常流路31を設ける場合がある。この場合、通常流路31と迂回流路部34との周方向Dcの間には、両者の距離が短い部分と長い部分とが存在する。複数の補完流路32のうち、一部の補完流路32は、通常流路31と迂回流路部34との周方向Dcの間で、両者の距離が長い部分に配置されることになる。よって、本態様では、通常流路31と迂回流路部34との周方向Dcの間の距離が長い部分を、補完流路32を流れる冷却媒体により冷却することができる。
【0080】
(8)第八態様における燃焼器用筒は、
前記第七態様における燃焼器用筒において、前記補完流路32の前記入口30iは、前記補完流路32の前記筒軸線方向Daにおける両端のうち、前記挿入開口25に近い側の端に形成されている。
【0081】
本態様では、補完流路32の入口30iから補完流路32内に流入した冷却媒体により、挿入開口25の近くを積極的に冷却することができる。
【0082】
(9)第九態様における燃焼器用筒は、
前記第一態様から前記第八態様のいずれか一態様における燃焼器用筒において、前記複数の開口周り流路33は、複数の前記衝突域流路33iを有する。前記複数の衝突域流路33iのうち、第一衝突域流路33i1の前記衝突域迂回流路部34iは、前記複数の衝突域流路33iのうちで前記第一衝突域流路33i1を除く他の衝突域流路33iの前記衝突域迂回流路部34iよりも、前記挿入開口25に近い。前記第一衝突域流路33i1の流路断面積は、前記他の衝突域流路33iの流路断面積より広い。
【0083】
本態様では、第一衝突域流路33i1の流路断面積が他の衝突域流路33iの流路断面積より広いため、第一衝突域流路33i1を流れる冷却媒体の流量が他の衝突域流路33iを流れる冷却媒体の流量より多くなる。このため、本態様では、前述の静圧上昇領域Rであって、挿入開口25の近くを積極的に冷却することができる。
【0084】
(10)第十態様における燃焼器用筒は、
前記第一態様から前記第九態様のいずれか一態様における燃焼器用筒において、前記複数の冷却流路30のうち、前記筒軸線Acに対する周方向Dcで隣り合っている二つの冷却流路30の前記出口30oは、前記筒軸線方向Daにおける位置が互いに異なっている。
【0085】
冷却流路30中で、この冷却流路30の出口30oに近い部分を流れる冷却媒体の温度は、冷却流路30中で、この冷却流路30の入口30iに近い部分を流れる冷却媒体の温度よりも高い。このため、冷却流路30中で、この冷却流路30の出口30oに近い部分での冷却能力は、冷却流路30中で、この冷却流路30の入口30iに近い部分での冷却能力よりも低い。このため、周方向Dcで隣り合っている二つの冷却流路30の出口30oの位置が、筒軸線方向Daで同じであると、二つの冷却流路30の各出口30oに近い部分の冷却能力が非常に低くなる。本態様では、周方向Dcで隣り合っている二つの冷却流路30の出口30oの位置が、筒軸線方向Daで互いに異なっているため、二つの冷却流路30の各出口30oに近い部分の冷却能力が非常に低くなることを抑制できる。
【0086】
以上の実施形態及び変形例における燃焼器は、例えば、以下のように把握される。
(11)第十一態様における燃焼器は、
前記第一態様から前記第十態様のいずれか一態様における燃焼器用筒と、前記挿入開口25よりも前記上流側Dauに配置され、前記燃焼空間S中に燃料Fを噴射可能なバーナ14と、を備える。前記バーナ14は、前記筒軸線Acを中心として環状の燃料噴出口14jを有するバーナ枠15と、前記バーナ枠15内に設けられ、前記筒軸線Acを中心として、前記燃料噴出口14jから噴出する前記燃料Fを旋回させることができるスワラ16と、を有する。前記スワラ16は、前記筒軸線Acに対する前記燃料噴出口14jから噴出する燃料Fの角度が予め定められた燃料旋回角度θfになるよう構成されている。前記筒軸線Acに対する前記衝突ガス軸線Aiの角度は、前記燃料旋回角度θf±15°の範囲内である。
【0087】
胴21の内周側の燃焼空間S内で、筒軸線Acを中心として燃料Fを旋回させる場合、筒軸線Acに対する衝突ガス軸線Aiの角度である衝突軸角度θiは、ほぼ燃料旋回角度θfになる。但し、燃料Fの噴出流量と燃焼用空気A1の噴出流量との比率、及び、燃焼用空気A1の旋回角度の関係で、この衝突軸角度θiは、多少変化する。このため、衝突軸角度θiは、燃料旋回角度θfに完全に一致している必要性はなく、燃料旋回角度θf±15°の角度範囲内の角度であればよい。
【0088】
(12)第十二態様における燃焼器は、
前記第十一態様における燃焼器において、さらに、前記挿入開口25よりも前記上流側Dauに配置され、前記燃焼空間S中に空気を噴射して、前記燃焼空間S中で、前記バーナ14から噴射した燃料Fを拡散燃焼させることができる空気噴射器17を備える。
【0089】
以上の実施形態及び変形例におけるガスタービンは、例えば、以下のように把握される。
(13)第十三態様におけるガスタービンは、
前記第十一態様又は前記第十二態様における燃焼器と、圧縮空気Aを前記燃焼器に送ることができる圧縮機1と、前記燃焼器からの前記燃焼ガスGで駆動できるタービン5と、を備える。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示の一態様では、燃焼器用筒の耐久性を高めることができる。
【符号の説明】
【0091】
1:圧縮機
2:圧縮機ロータ
3:圧縮機ケーシング
4:燃焼器
5:タービン
5i:燃焼ガス流入口
6:タービンロータ
7:タービンケーシング
8:ガスタービンロータ
9:中間ケーシング
10:燃焼器本体
11:外筒
11a:外筒胴
11b:蓋
12:支持筒
12a:空気導入開口
13:内筒
13a:小径胴
13b:拡径胴
13c:大径胴
14:バーナ
14j:燃料噴出口
15:バーナ枠
15a:バーナ筒
15b:中心筒
16:燃料用スワラ
17:空気噴射器
17j:空気噴出口
18:空気噴射枠
19:空気用スワラ
20,20a,20b:燃焼筒(燃焼器用筒)
21:胴
22:外側板
22o:外周面
22c:接合面
22d:長溝
23:内側板
23i:内周面
23c:接合面
25:挿入開口
30:冷却流路
30i:入口
30o:出口
31:通常流路
32,32a,32b,32c:補完流路
33,33a:開口周り流路
33i:衝突域流路
33n:非衝突域流路
33i1,33i1a:第一衝突域流路
33i2:第二衝突域流路
33i3:第三衝突域流路
34,34b:迂回流路部
34i:衝突域迂回流路部
34p:交差位置
35:上流側流路部
36:下流側流路部
40:空気供給管
41:管部
41p:主衝突位置
42:フランジ部
45:管固定ブロック
A:圧縮空気
Ao:外気
A1:一次空気
A2:二次空気
F:燃料
G:燃焼ガス
S:燃焼空間
R:静圧上昇領域
Ar:回転軸線
Ac:筒軸線
Ai:衝突ガス軸線
At:管中心軸線
Da:筒軸線方向
Dau:上流側
Dad:下流側
Dc:周方向
Dc1:周方向第一側
Dc2:周方向第二側
θi:衝突軸角度
θu:上流側角度
θd:下流側角度
θf:燃料旋回角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7