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特許7558387横編機によるパンチレース編地の編成方法
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  • 特許-横編機によるパンチレース編地の編成方法 図1
  • 特許-横編機によるパンチレース編地の編成方法 図2
  • 特許-横編機によるパンチレース編地の編成方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】横編機によるパンチレース編地の編成方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 7/24 20060101AFI20240920BHJP
   D04B 15/36 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
D04B7/24
D04B15/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023505585
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022010081
(87)【国際公開番号】W WO2022191204
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2021038732
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(72)【発明者】
【氏名】森田 真人
(72)【発明者】
【氏名】島崎 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌紀
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3556921(EP,A1)
【文献】国際公開第2007/132559(WO,A1)
【文献】特許第5057996(JP,B2)
【文献】特許第4102430(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B7/24
D04B9/38
D04B35/06
D04B15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針床上に編針としてフックを有する針本体と、針本体と相対移動してフックの開閉を行うスライダーを有する複合針、
複合針の針本体とスライダーを進退制御する複合針制御手段、
針床上を走行して編針に編糸を供給する給糸口としてレース糸を下糸として供給するレース糸用給糸口、柄糸を上糸として供給する柄糸用給糸口、
更に給糸口から編針に延びる編糸部分に作用して下方へ押し下げるループプレッサー、
を備えた横編機を用いて、
レース糸は編地のベースをニットループで形成し、
柄糸は柄部分をレース糸と引き揃えられた状態でニットループを形成し、柄部分以外をミスすることでパンチレースを有する編地の編成方法であって、
パンチレースを編成するコースでは、
複合針制御手段によって編地のベースを形成するベース用編針と柄部分を形成する柄用編針を選択し、ベース用編針および柄用編針の針本体とスライダーを進出させてフックに係止した編目をクリアできる位置まで進出させ、各給糸口からフックを開いた状態にある編針および編針へと延びる部分のレース糸をフックの進退軌跡内、柄糸をフックの進退軌跡の上方となる高さとなるように各給糸口を移動させるステップ、
複合針制御手段によってベース用編針のスライダーだけを更に進出させてスライダーの先端をレース糸と柄糸との間に進入させるステップ、
複合針制御手段によってベース用編針および柄用編針の針本体を所定量後退させることでベース用編針はフックをスライダーの先端を当接させてフックを閉ざし、柄用編針ではフックを開いた状態を維持させたままとし、
続いてループプレッサーを更に下降させることでフックを開いた状態にある柄用編針のフックの進退軌跡内へと柄糸用給糸口から延びる柄糸部分を押し下げるステップ、
上記ステップに続いて複合針制御手段によってベース用編針と柄用編針の針本体を後退させることでベース用編針ではフックで柄糸を引き込まずミスさせてレース糸のみを引き込んでニットループを形成させ、柄用編針ではフックはレース糸と柄糸の両方を引き込んでニットループを形成させるステップ、
を含むことを特徴とする横編機によるパンチレース編地の編成方法。
【請求項2】
前記各ステップを繰り返し行うことで、コース方向に連続してベースと柄部分を複数形成することを特徴とする請求項1に記載の横編機によるパンチレース編地の編成方法。
【請求項3】
複合針制御手段は、横編機のキャリッジに搭載したカムシステムであることを特徴とする請求項1または2に記載の横編機によるパンチレース編地の編成方法。
【請求項4】
前記カムシステムは、押圧作用によってスライダーのバットを針溝に沈めるためのスライダー切換プレッサーと、スライダーのバットに作用するスライダーサイドレイジングカムを備え、これらにより柄糸をレース糸とともにニットループを形成または柄糸のみをミスにすることを特徴とする請求項3に記載の横編機によるパンチレース編地の編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機によるパンチレース編地の編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パンチレース編地53とは、図3に示すように編地全体がレース糸49でニットループが形成されたベース55と、柄糸51がレース糸49と引き揃えられた状態でニットループを形成した柄部分57と柄部分以外がミスで形成された編地である。パンチレースは透かし柄と呼ばれることがある。
【0003】
特許文献1は、横編機を用いてパンチレース編地を編成する方法を開示している。しかし、特許文献1に記載のものは編針としてベラ針を備えた横編機による編成方法であり、
フックを有する針本体とスライダーを相対移動させてフックの開閉を行う複合針を備えた横編機による編成方法を開示したものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】EP3556921A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が課題とするのは複合針を備えた横編機でパンチレース編地を編成する編成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、針床上に編針としてフックを有する針本体と、針本体と相対移動してフックの開閉を行うスライダーを有する複合針、
複合針の針本体とスライダーを進退制御する複合針制御手段、
針床上を走行して編針に編糸を供給する給糸口としてレース糸を下糸として供給するレース糸用給糸口、柄糸を上糸として供給する柄糸用給糸口、
更に給糸口から編針に延びる編糸部分に作用して下方へ押し下げるループプレッサー、
を備えた横編機を用いて、
レース糸は編地のベースをニットループで形成し、
柄糸は柄部分をレース糸と引き揃えられた状態でニットループを形成し、柄部分以外をミスすることでパンチレースを有する編地の編成方法であって、
パンチレースを編成するコースでは、
複合針制御手段によって編地のベースを形成するベース用編針と柄部分を形成する柄用編針を選択し、ベース用編針および柄用編針の針本体とスライダーを進出させてフックに係止した編目をクリアできる位置まで進出させ、各給糸口からフックを開いた状態にある編針および編針へと延びる部分のレース糸をフックの進退軌跡内、柄糸をフックの進退軌跡の上方となる高さとなるように各給糸口を移動させるステップ、
複合針制御手段によってベース用編針のスライダーだけを更に進出させてスライダーの先端をレース糸と柄糸との間に進入させるステップ、
複合針制御手段によってベース用編針および柄用編針の針本体を所定量後退させることでベース用編針はフックをスライダーの先端を当接させてフックを閉ざし、柄用編針ではフックを開いた状態を維持させたままとし、
続いてループプレッサーを更に下降させることでフックを開いた状態にある柄用編針のフックの進退軌跡内へと柄糸用給糸口から延びる柄糸部分を押し下げるステップ、
上記ステップに続いて複合針制御手段によってベース用編針と柄用編針の針本体を後退させることでベース用編針ではフックで柄糸を引き込まずミスさせてレース糸のみを引き込んでニットループを形成させ、柄用編針ではフックはレース糸と柄糸の両方を引き込んでニットループを形成させるステップ、
を含むようにした。
【0007】
好ましくは、前記各ステップを繰り返し行うことで、コース方向に連続してベースと柄部分を複数形成するようにした。
【0008】
好ましくは、複合針制御手段は、横編機のキャリッジに搭載したカムシステムで構成した。
【0009】
好ましくは、前記カムシステムは、押圧作用によってスライダーのバットを針溝に沈めるためのスライダー切換プレッサーと、スライダーのバットに作用するスライダーサイドレイジングカムを備え、これらにより柄糸をレース糸とともにニットループを形成または柄糸のみをミスにするようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、複合針を有する横編機においても針本体とスライダーの進退制御とループプレッサーによる編糸の押し下げを編針の選針に応じて組み合わせることでパンチレース編地を編成することが可能となる。
【0011】
単一のカムシステム内で編針の進退制御を行ってパンチレース編地のコース編成を完結できるので効率よく編成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るパンチレース編地の編成に使用される横編機のカムシステムを示す概略説明図である。
図2図2(a)~(e)は、図1のX、Y、Zの各位置での編針Bと編針Pの歯口上の状態を示す図である。
図3図3は、パンチレース編地を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1図3に基づいて説明する。
【実施例
【0014】
本実施形態では2枚ベッド横編機を用いてパンチレース編地を編成する方法を説明する。横編機の針床2には編針1として複数の複合針が配置されている。針床上を往復走行するキャリッジ(不図示)には編針1を進退操作するカムシステム10と編糸を編針1に給糸する複数の給糸口を備える。なお、編針1としては特許第2917146号公報、カムシステム10に搭載されるプレッサーや針床の構成や選針機構としては特許第5057996号公報、編糸を押さえるループプレッサー9としては特許第4102430号公報などに開示された公知の横編機と同等のものを適用できるのでここではその説明は省略する。
【0015】
<編針>
編針1は、先端にフック7を有する針本体3と、針本体3と相対移動してフック7を開閉するスライダー5で構成される。針本体3とスライダー5にはそれぞれバットが備えられ、後述のカムシステム10の作用を受けて針本体3とスライダー5は歯口に対して進退する。
【0016】
<カムシステム>
図1は、キャリッジに搭載されたカムシステム10を示す概略図である。カムシステム10は、ニット・タック・ミスを実施できる構成であるが、これに加えて編目の目移しが可能な複合カムシステムであってもよい。またキャリッジに複数のカムシステム10を搭載させてもよい。カムシステム10は、編針1の針本体3とスライダー5を進退制御する複合針制御手段として機能する。
【0017】
図1は、カムシステム10が左向きに走行して編成を行なうときの状態を示す。カムシステム10は、セレクトジャックのバット(不図示)に作用するプレッサー部13、編針1の針本体3のバットに作用する針本体制御カム部21、スライダー5のバットに作用するスライダー制御カム部31を有する。
【0018】
プレッサー部13は、プレッサー部13の下位に設けた選針機構(不図示)によってA,H,Bの3位置に選択されたセレクトジャックのバットに対応させて設けられている。
B位置には固定式のウエルトプレッサー15、H位置にはタックプレッサー17、A位置には左右一対のスライダー切換プレッサー19が設けられる。タックプレッサー17とスライダー切換プレッサー19は電磁石により出没制御が可能で作用位置または不作用位置に切換できる。特許第2917146号公報の図1-Cに示すようにプレッサーは針溝に収容されるセレクトジャックのバットを押圧して針溝内へ沈める。そのためセレクトジャックの下位に収容された針本体3とスライダー5のバットも針溝内に沈むのでカムの作用を受けることはない。また、上述のように本実施形態のスライダー切換プレッサー19は、セレクトジャックのバットに作用しているが、例えば特許第3292836号公報のようにスライダーが前後に2つのバット(第1、第2バット)を有する場合は、前方側の第1バット(補助バット)の方にスライダー切換プレッサーを作用させて第2バットを沈めるようにしてもよい。
【0019】
針本体制御カム部21は、プレッサー部13の上位に設けられる。中央にニードルレイジングカム23、天山カム25、これらを挟んで左右に度山カム27が設けられる。ニードルレイジングカム23は、針本体3のバットに作用してニット位置まで上昇させる上げカムとして作用する。天山カム25は針本体3のバットを引き下げて後続の度山カム27へと案内する。スライダー制御カム部31は、針本体制御カム部21の上位に設けられる。中央にスライダーレイジングカム33、その左右にスライダーサイドレイジングカム35を備える。スライダーサイドレイジングカム35はスライダー切換プレッサー19とキャリッジの進行方向において同位相に設けられる。なお、スライダー切換プレッサー19はキャリッジ進行方向の後行側のみが作用位置になり、先行側は不作用位置になる。
【0020】
B位置にあるセレクトジャックのバットはキャリッジ進行の間、ウエルトプレッサー15で押圧されるので、この位置にある編針1はニードルレイジングカム23、スライダーレイジングカム33の作用を受けることはないので編針は編目を形成しない(ミス)。
【0021】
H位置ではタックプレッサー17が作用位置にあるときは、針本体3とスライダー5の各バットはタックプレッサー17で沈められるためニードルレイジングカム23の頂部の手前でカムとの係合を絶ち、スライダーセンターレイジングカム33の作用を受けず各バットはルート42を通過する(タック)。タックプレッサー17が不作用位置にあるときは針本体3とスライダー5のバットはそれぞれニードルレイジングカム23とスライダーセンターレイジングカム33の斜面に沿って上昇する。その後、スライダー5のバットはスライダーサイドレイジングカム35の作用を受けて上昇して図の破線のルート41を通過する。このときの編成については後述する。
【0022】
A位置ではスライダー切換プレッサー19が不作用位置にあるとき、バットは上記したH位置でタックプレッサー17が不作用のときと同じルートを通過する。A位置で後行側のスライダー切換プレッサー19が作用位置にあるときは、針本体3とスライダー5のバットはそれぞれニードルレイジングカム23とスライダーセンターレイジングカム33の斜面に沿って上昇した後、スライダー切換プレッサー19の押圧作用を受けるのでスライダー5のバットはスライダーサイドレイジングカム35と係合せず直進し、スライダーガイドカム39の作用を受けて下降する。この結果、針本体3とスライダー5のバットは実線で示すルート40を通過する(ニット)。
【0023】
<ループプレッサー>
ループプレッサー9は特許第4102430号公報に記載のように針床上方の補助床(不図示)に備えられ、キャリッジに搭載された不図示のループプレッサー制御カムで歯口に対して進退、且つ歯口上方で下降して編糸を押し下げる作用をする。ループプレッサー9を複数本の編針毎に設けることも可能であるが、好ましくはループプレッサー9を編針1本毎に対応させて設けるようにすればパンチレース編地の柄部分を任意の編針で形成することが可能となる。つまり柄の制約をなくせるメリットがある。
【0024】
<給糸口>
図1の上位に給糸口を示す。キャリッジの進行方向の先行側がレース糸用給糸口45、後行側が柄糸用給糸口47である。編針1へと延びるレース糸49が柄糸51よりも低い位置となるようにレース糸用給糸口45は柄糸用給糸口47よりも先行させ、かつレース糸用給糸口45の高さを低くしている。レース糸49と柄糸51間に高低差が得られるならこの構成に代えて例えばレース糸用給糸口45をより大きく先行させるようにすれば各給糸口の高さは同じであってもよい。レース糸49が柄糸51よりも下方とするのでレース糸を下糸、柄糸を上糸と呼ぶことがある。なお、レース糸49は透明なナイロン系のものを使用すれば柄糸部分が浮き上がるような視覚上の効果を得られるが、これに限らず他の種類の糸を使用しても良い。
【0025】
<パンチレース編成>
このような構成の横編機を用いて行うパンチレース編地の編成方法を以下説明する。本実施形態では、A位置の編針1はルート40、H位置の編針1はルート41を通過させる場合を例として説明する。パンチレース編地を編成するコースでは、編地のベース55をレース糸49で編成するため編針1をH位置に選択し、柄部分57を編成する編針1をA位置に選択する。本実施形態では、A位置に選択された編針を柄用編針(以下、編針P)、H位置に選択された編針をベース用編針(以下、編針B)とする。カムシステム10では先行側のスライダー切換プレッサー19とタックプレッサー17を不作用位置および後行側のスライダー切換プレッサー19を作用位置にセットする。
【0026】
まずキャリッジが各給糸口を連れて左方向に進行すると、編針Bと編針Pの針本体3とスライダー5は共にルート40を通ってX位置まで到達する。図2(a)はこのときの歯口の状態を示す。針本体3とスライダー5はカムによる進出量の差によってフック7とスライダー5の先端は距離を空けてフック7を開いた状態にある。レース糸49はフック7の進退軌跡内にあり、柄糸51はフック7の進退軌跡の上方にある。ループプレッサー9は柄糸51の更に上方の位置まで進出している。
【0027】
X位置以降は編針Bと編針Pの各スライダー5は別々のルートをとる。A位置ではスライダー切換プレッサー19が作用位置にセットしているので編針Pのスライダー5はスライダーサイドレイジングカム35の作用を受けずニットループを形成するルート40を通過する。一方、H位置ではプレッサーがないので編針Bのスライダー5はスライダーサイドレイジングカム35の作用でルート41を通ってY位置まで上昇する。図2(b)はこのときの歯口の状態を示し、編針Bのスライダー5の先端はレース糸49と柄糸51との間に進入している。このときループプレッサー9は柄糸51に当接する位置まで下降している。図2(c)はA位置の編針Pの歯口の状態を示し、ほぼ図2(a)と同じ状態にある。
【0028】
Z位置では、編針Bのスライダー5はY位置とほぼ同じ高さにあるが、針本体3は天山25の下げ面に沿って下降するのでフック7がスライダー5の先端と当接してフックを閉じる。図2(d)はこのときの編針Bの歯口の状態を示す。レース糸49はフック7内に保持され、ループプレッサー9は更に下降して柄糸51を押し下げるが、編針Bのフック7はスライダー5で既に閉じられているのでフック7は柄糸51を喰うことはない。このため図2(d)では、柄糸51を省略した。図2(e)はZ位置での編針Pの歯口の状態を示す。スライダー5は図2(c)の状態のまま、針本体3は天山25の下げ面に沿って下降するとともにループプレッサー9の更なる下降により柄糸51が編針Pのフック3の進退軌跡内まで押し下げられた状態になっている。
【0029】
以降はA位置の編針Pは、レース糸49と柄糸51の両方を引き込んでニットループを形成する。一方、H位置にある編針Bはレース糸49だけをフック7に引き込み、柄糸51は閉じたフック7の外側にあるのでレース糸49だけのニットループが形成され、柄糸51はミスとなる。このようにして編成されたパンチレース編地はレース糸49によって編地53のベース55が形成され、柄糸51は柄部分57を形成するところだけがレース糸49と引き揃えられた状態でニットループを形成し、柄部分57以外のところはループを形成せずミスとなって水平に延びた状態となる。このように単一のカムシステム10内で編針1の進退制御を行ってパンチレース編地のコース編成を完結でき、コース方向に連続してベース55と柄部分57を組合わせて複数形成する場合も効率よく編成できる。更にウエール方向にもベース55と柄部分57を組合わせて配置すると多彩な柄模様を編地53に形成できる。
【0030】
なお、上記実施形態では、カムシステム10を備えたキャリッジで編針1の針本体3とスライダー5の進退をスライダー切換プレッサー19とスライダーサイドレイジングカム35で行うようにしたが、パンチレース編地を編むために必要な動きを編針1に与えられるものであれば他の構成でもよい。例えば編針1そのものに駆動機構を設けて針本体3とスライダー5を制御すればキャリッジレスの横編機で実施することも勿論可能である。また各給糸口45,47はキャリッジに連行されて移動するタイプのものだけでなく、給糸口自体が独立した駆動源を備えてキャリッジと独立して自走するタイプの横編機であってもよい。先行側の給糸口が下糸、後行側の給糸口を上糸としてこれらの関係を入れ替えるようにすればパンチレース編地におけるレース糸と柄糸との関係を入れ替えた編地を編成することも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 編針
2 針床
3 針本体
5 スライダー
7 フック
9 ループプレッサー
10 カムシステム
13 プレッサー部
15 ウエルトプレッサー
17 タックプレッサー
19 スライダー切換プレッサー
21 針本体制御カム部
23 ニードルレイジングカム
25 天山カム
27 度山カム
31 スライダー制御カム部
33 スライダーレイジングカム
35 スライダーサイドレイジングカム
37 スライダーセンターガイドカム
39 スライダーガイドカム
40、41,42 ルート
45 レース糸用給糸口
47 柄糸用給糸口
49 レース糸
51 柄糸
53 編地
55 ベース
57 柄部分
図1
図2
図3