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特許7558393変性ポリグリコール酸およびその調製方法並びに用途
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  • 特許-変性ポリグリコール酸およびその調製方法並びに用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】変性ポリグリコール酸およびその調製方法並びに用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/91 20060101AFI20240920BHJP
   C08G 63/06 20060101ALI20240920BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C08G63/91 ZBP
C08G63/06
C08J5/18 CFD
C08L101/16
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023512146
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2021105985
(87)【国際公開番号】W WO2022037319
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】202010837348.1
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520335934
【氏名又は名称】国家能源投資集団有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA ENERGY INVESTMENT CORPORATION LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】523031068
【氏名又は名称】北京低▲タン▼清潔能源研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】孫小杰
(72)【発明者】
【氏名】陳蘭蘭
(72)【発明者】
【氏名】王栄
(72)【発明者】
【氏名】リァン,ウェンビン
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-012560(JP,A)
【文献】特開2006-152196(JP,A)
【文献】国際公開第2020/087222(WO,A1)
【文献】特表2022-506568(JP,A)
【文献】特開2011-052110(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0201724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/91
C08G 63/06
C08J 5/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bを含み、
前記構造単位Aと前記構造単位Bのモル比>400:1である、変性ポリグリコール酸であって、
前記変性ポリグリコール酸において、前記構造単位Aは、ポリグリコール酸部分を形成し、前記構造単位Bに接続され、及び
前記ポリグリコール酸の重量平均分子量は90,000~140,000であり、前記変性ポリグリコール酸の重量平均分子量が100,000~180,000であり、
前記ポリイソシアネート系化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートとの2:8~5:5の重量比の混合物である、変性ポリグリコール酸
【請求項2】
前記構造単位Aと前記構造単位Bのモル比が400超:1~3000以下:1である、請求項1に記載の変性ポリグリコール酸。
【請求項3】
変性ポリグリコール酸の総重量に対して、窒素元素の含有量が0.016~0.12wt%である、請求項1または2に記載の変性ポリグリコール酸。
【請求項4】
変性ポリグリコール酸の総重量に対して、窒素元素の含有量が0.018~0.08wt%である、請求項1または2に記載の変性ポリグリコール酸。
【請求項5】
前記ポリグリコール酸の5重量%重量減少温度と前記変性ポリグリコール酸の5重量%重量減少温度はそれぞれT1およびT2であり
T2-T1≧20℃;及び/又は
40℃と荷重2.16kg下で、前記ポリグリコール酸と前記変性ポリグリコール酸のメルトフローレートはそれぞれMFR1およびMFR2であり
MFR2≦40%×MFR1;及び/又は
30℃、歪み2%、周波数0.1rad/s下で、前記ポリグリコール酸と前記変性ポリグリコール酸の溶融粘度がそれぞれη1およびη2であり
η2≧4×η1である、請求項1又は2に記載の変性ポリグリコール酸。
【請求項6】
T2-T1が20~30℃であり;
MFR2が(10~30%)×MFR1であり;及び/又は
η2=(5~10)×η1である、請求項5に記載の変性ポリグリコール酸。
【請求項7】
ポリグリコール酸とポリイソシアネート系化合物を乾燥および混合した後、押出機により溶融混練し、押出造粒して、前記変性ポリグリコール酸を得るステップを含み、
前記ポリグリコール酸の重量平均分子量が90,000140,000であり;
前記変性ポリグリコール酸の重量平均分子量は100,000~180,000であり;
前記ポリイソシアネート系化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートとの2:8~5:5の重量比の混合物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の変性ポリグリコール酸の調製方法。
【請求項8】
100重量部のポリグリコール酸を基準とし、前記ポリイソシアネート系化合物の使用量が0.5~5重量部である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
100重量部のポリグリコール酸を基準とし、前記ポリイソシアネート系化合物の使用量が1~3重量部である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥の条件としては、乾燥温度が50~80℃であり、乾燥時間が5~10時間である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項11】
前記溶融混練の条件としては、温度が220~250℃であり、押出機回転数が60~110r/minである、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載の変性ポリグリコール酸の分解性材料またはバリア包装材料における用途。
【請求項13】
請求項1~のいずれか1項に記載の変性ポリグリコール酸のフィルム、繊維およびシートの少なくとも1つの調製における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2020年08月19日に出願された中国特許出願202010837348.1の利益を主張し、その出願の内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、高分子材料の分野に関し、具体的に変性ポリグリコール酸およびその調製方法並びに用途に関する。
【背景技術】
【0003】
人類の生態環境に対する関心が高まる中、環境に優しい生分解性高分子材料が注目されている。中国の生分解性材料産業は急速に発展しており、主要技術の躍進、製品種類の増加、製品経済性の向上により、生分解性材料は強い発展の勢いを示している。
【0004】
ポリグリコール酸(PGA)は、生分解性が良く、機械的強度やガスバリア性に優れていることから、フィルム、繊維、包装容器、多層ボトル、医療用縫合糸など様々な分野で使用できる生分解性ポリマーである。開環重合では一定の相対分子量を持つPGAを得ることができるが、溶融強度が低く、溶融粘度が低く、メルトフローレートが高いため、ブロー成形、押出成形などの成形加工への適用が制限され、PGAの各分野での幅広い応用を大きく妨げている。ポリエステルは通常、固相重縮合、溶融重縮合、反応押出などの方法で分子量を大きくしたり、物理的・化学的特性を改善させることができる。
【0005】
CN106432697Aでは分解性ポリグリコール酸の調製方法が開示され、まず重縮合反応によりポリグリコール酸プレポリマーを得、次に重合容器内で鎖伸長剤MDIを添加して高分子量のポリグリコール酸を得る。この特許のポリグリコール酸は、オリゴマーで鎖伸長をしているため、生成するポリグリコール酸の機械的特性は実際の需要を満たすことができない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、先行技術におけるポリグリコール酸の低溶融強度、低溶融粘度及び高いメルトフローレートの問題を克服し、高い重量平均分子量、高い溶融粘度および低いメルトフローレートなどの特性を有する同時に、引張強度が高く、熱安定性も大幅に改善される変性ポリグリコール酸およびその調製方法並びに用途を提供することである。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1側面は、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bを含み、
前記構造単位Aと前記構造単位Bのモル比>400:1である変性ポリグリコール酸を提供する。
【0008】
本発明の第2側面は、ポリグリコール酸とポリイソシアネート系化合物を乾燥および混合した後、押出機で溶融混練し、押出造粒して、前記変性ポリグリコール酸を得るステップを含み、
前記ポリグリコール酸の重量平均分子量が5~30万である変性ポリグリコール酸の調製方法を提供する。
【0009】
本発明の第3側面は、上記方法により製造された変性ポリグリコール酸を提供する。
【0010】
本発明の第4側面は、上記変性ポリグリコール酸の分解性材料またはバリア包装材料における用途を提供する。
【0011】
本発明の第5側面は、上記変性ポリグリコール酸のフィルム、繊維およびシートの少なくとも1つの調製における用途を提供する。
【0012】
上記技術的解決手段によって、本発明が提供する変性ポリグリコール酸およびその調製方法並びに用途は以下の有益な効果を有する。
【0013】
本発明では、ポリイソシアネート系化合物を選択してポリグリコール酸を変性させ、押出中ポリグリコール酸の末端基と反応性基を介して反応し、ポリグリコール酸鎖同士を接続させることにより、ポリグリコール酸の重量平均分子量および溶融粘度を増加させ、ポリグリコール酸の熱安定性を効果的に向上させ、溶融押出時のポリグリコール酸の熱分解を抑制することができる。
【0014】
またさらに、本発明中のポリイソシアネート系化合物は、ポリグリコール酸のメルトフローレートを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の変性ポリグリコール酸とポリグリコール酸の赤外線比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に開示された範囲の終点および任意の値は、その特定の範囲または値に限定されるものではなく、その範囲または値に近い値を包含するものと理解さるべきである。数値範囲については、各範囲の終点値同士、各範囲の終点値と個々の点値同士、および個々の点値同士を組み合わせて1つまたは複数の新たな数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は本明細書に具体的に開示されているものと見なす。
【0017】
本発明の第1側面は、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bを含み、
前記構造単位Aと前記構造単位Bのモル比>400:1である変性ポリグリコール酸を提供する。
【0018】
本発明では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比を上記範囲になるように制御することにより、得られた変性ポリグリコール酸は高い重量平均分子量、高い溶融粘度および低いメルトフローレートという利点を有する同時に、引張強度が高く、熱安定性も大幅に改善される。
【0019】
またさらに、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、メルトフローレート、引張強度および熱安定性などの性能をさらに改善するために、構造単位Aと構造単位Bのモル比を400~3000:1とする。
【0020】
本発明では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比は、式Iに示すように、窒素含有量を用いて算出される。
【0021】
【数1】
【0022】
ここで、xは窒素含有量(g/kg)であり、nはポリイソシアネートエステル系化合物中の窒素含有元素の数であり、M1はポリイソシアネートの分子量(g/mol)であり、M2はポリグリコール酸に由来する構造単位Aの重量平均分子量(g/mol)である。
【0023】
本発明では、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量は、痕跡量S/N分析装置を用いて、炉温1050℃、アルゴン、酸素流量100mL/min、最大積分時間800sの試験条件で試験した。
【0024】
本発明によれば、変性ポリグリコール酸の総重量に対して、前記窒素元素の含有量が0.016~0.12wt%である。
【0025】
本発明では、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量が変性ポリグリコール酸の総重量に対して上記範囲を満たすように前記窒素元素の含有量を制御することにより、変性ポリグリコール酸は高い重量平均分子量、高い溶融粘度および低いメルトフローレート、さらには引張強度が高く、熱安定性が優れるという利点を有し、さらに、窒素元素の含有量が0.018~0.08wt%である場合、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、メルトフローレート、引張強度および熱安定性がさらに改善される。
【0026】
本発明によれば、前記変性ポリグリコール酸の重量平均分子量が10~50万、好ましくは18-30万である。
【0027】
本発明では、前記ポリイソシアネート系化合物とは、イソシアネート基を2つ以上含有する化合物を意味する。
【0028】
本発明によれば、前記ポリイソシアネート系化合物は、ジイソシアネート系化合物および/またはジイソシアネートプレポリマーから選択される。
【0029】
本発明によれば、前記ポリイソシアネート系化合物はトルエン-2,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびリジンジイソシアネートから選択された少なくとも1つである。
【0030】
好ましくは、前記ポリイソシアネート系化合物はヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはジフェニルメタンジイソシアネートから選択され、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートおよびフェニルメタンジイソシアネートである。
【0031】
本発明によれば、前記ポリグリコール酸の5重量%重量減少温度と前記変性ポリグリコール酸の5重量%重量減少温度はそれぞれT1およびT2であり、
T2-T1≧20℃、好ましくは、T2-T1が20~30℃である。
【0032】
本発明では、5重量%重量減少温度とは、TG熱重量減少法で測定した、ポリグリコール酸の5%重量減少に対応する温度を意味する。
【0033】
本発明によれば、240℃、荷重2.16kg下で、前記ポリグリコール酸と前記変性ポリグリコール酸のメルトフローレートはそれぞれMFR1およびMFR2であり、
MFR2≦40%×MFR1、好ましくは、MFR2が(10~30%)×MFR1であり、
本発明では、メルトフローレートは、GB/T 3682-2000方法に従って測定される。
【0034】
本発明によれば、230℃、歪み2%、周波数0.1rad/s下で、前記ポリグリコール酸と前記変性ポリグリコール酸の溶融粘度がη1およびη2であり、
η2≧4×η1、好ましくは、η2=(5-10)×η1である。
【0035】
本発明では、溶融粘度は、回転式レオロジー周波数スキャン(230℃、歪み2%、周波数0.1~100rad/s)の方法で測定される。
【0036】
本発明の第2側面は、ポリグリコール酸とポリイソシアネート系化合物を乾燥および混合した後、押出機で溶融混練し、押出造粒して、前記変性ポリグリコール酸を得るステップを含み、前記ポリグリコール酸の重量平均分子量が5~30万である、変性ポリグリコール酸の調製方法を提供する。
【0037】
本発明では、前記押出機は、従来技術の通常の押出装置、例えば一軸押出機、または二軸押出機であり、好ましくは二軸押出機である。
【0038】
本発明によれば、100重量部のポリグリコール酸を基準とし、前記ポリイソシアネート系化合物の使用量が0.5~5重量部である。
【0039】
本発明によれば、100重量部のポリグリコール酸を基準とし、前記ポリイソシアネート系化合物の使用量が1~3重量部である。
【0040】
本発明によれば、前記ポリグリコール酸の重量平均分子量が好ましくは10~15万である。
【0041】
本発明によれば、前記ポリイソシアネート系化合物は、ジイソシアネート系化合物および/またはジイソシアネートプレポリマーから選択される。
【0042】
本発明によれば、前記ポリイソシアネート系化合物は、トルエン-2,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびリジンジイソシアネートから選択された少なくとも1つである。
【0043】
本発明によれば、前記ポリイソシアネート系化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネートと、トルエン-2,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびリジンジイソシアネートから選択された少なくとも1つとを含んでいるポリイソシアネート系化合物である。
【0044】
本発明によれば、前記ポリイソシアネート系化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはフェニルメタンジイソシアネートである。
【0045】
本発明によれば、前記ポリイソシアネート系化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0046】
本発明では、発明者らは、ポリイソシアネート系化合物としてヘキサメチレンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートの混合物を使用してポリグリコール酸を変性することにより、分子量を増大させ、溶融粘度を高め、メルトフローレートを低減することができる。
【0047】
またさらに、ヘキサメチレンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートの重量比が0:10~6:4、好ましくは3:7~5:5の場合、調製された変性ポリグリコール酸は、高分子量、高溶融粘度、低メルトフローレートという性能特性を有する。
【0048】
本発明によれば、前記乾燥の条件としては、乾燥温度が50~80℃で、乾燥時間が5~10時間である。
【0049】
本発明では、発明者らは、上記条件を用いてポリグリコール酸を乾燥する場合、原料中の水分が押出時に含有するポリグリコール酸の加水分解に至ることを回避することができ、またさらに、前記乾燥の条件としては、乾燥温度が60~80℃で、乾燥時間が5~8時間である。
【0050】
本発明によれば、前記溶融混練の条件としては、温度が220~250℃で、押出機回転数が60~110r/minである。
【0051】
本発明では、発明者らは溶融混練の条件を研究した結果、ポリグリコール酸とポリイソシアネート系化合物を溶融混練する際に、上記条件を用いると、ポリイソシアネート系化合物がポリグリコール酸と十分に反応できるようになると同時に、押出工程でポリグリコール酸が加水分解されず、得られた変性ポリグリコール酸の性能が低下しないようにできることを見だした。
【0052】
またさらに、前記溶融混練の条件としては、温度が230~240℃で、押出機回転数が80~100r/minである。
【0053】
本発明の第3側面は、上記方法により製造された変性ポリグリコール酸を提供する。
【0054】
本発明では、前記変性ポリグリコール酸の重量平均分子量が10~50万、好ましくは18-30万である。
【0055】
本発明では、前記ポリグリコール酸の5重量%重量減少温度と前記変性ポリグリコール酸の5重量%重量減少温度はそれぞれT1およびT2であり、
T2-T1≧20℃、好ましくは、T2-T1が20~30℃である。
【0056】
本発明では、240℃、荷重2.16kg下で、前記ポリグリコール酸と前記変性ポリグリコール酸のメルトフローレートはそれぞれMFR1およびMFR2であり、
MFR2≦40%×MFR1、好ましくは、MFR2が(10~30%)×MFR1であり、
本発明では、230℃、歪み2%、周波数0.1rad/s下で、前記ポリグリコール酸と前記変性ポリグリコール酸の溶融粘度がη1およびη2であり、
η2≧4×η1、好ましくは、η2=(5-10)×η1である。
【0057】
本発明の第4側面は、上記変性ポリグリコール酸料の分解性材料またはバリア包装材料における用途を提供する。
【0058】
本発明の第5側面は、上記変性ポリグリコール酸材料のフィルム、繊維およびシートの少なくとも1つの調製における用途を提供する。
【0059】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。以下の実施例では、
ポリグリコール酸のメルトフローレートはGB/T 3682-2000の方法によって測定され、
ポリグリコール酸の5重量%重量減少温度はTG熱重量減少法によって測定され、
ポリグリコール酸の溶融粘度は回転式レオロジー周波数スキャン(230℃、歪み2%、周波数0.1-100rad/s)によって測定される。
【0060】
変性ポリグリコール酸中の窒素含有量は痕跡量S/N分析装置によって試験され、試験前に変性ポリグリコール酸をアセトン溶剤に浸漬して残余のポリイソシアネート系化合物を除去し、試験条件:炉温1050℃、アルゴン、酸素流量100mL/min、最大積分時間800sである。
【0061】
変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比は、式Iに示すように、窒素含有量を用いて算出される。
【0062】
【数2】
【0063】
xは窒素含有量(g/kg)であり、nはポリイソシアネートエステル系化合物中の窒素含有元素の数であり、M1はポリイソシアネートの分子量(g/mol)であり、M2はポリグリコール酸に由来する構造単位Aの重量平均分子量(g/mol)である。
【0064】
ポリグリコール酸の引張強度はGB/T1040.2-2006の方法によって測定される。
【0065】
ポリグリコール酸A(PGA)は市販品であり、重量平均分子量が14万であり、ポリグリコール酸B(PGA)は市販品であり、重量平均分子量が9万であり、ポリグリコール酸C(PGA)は市販品であり、重量平均分子量が4万であり、
実施例および比較例で使用した他の原料はいずれも市販品である。
【0066】
実施例1
ポリグリコール酸Aを乾燥して用意し、乾燥温度が70℃、乾燥時間が8時間であり、乾燥後の100重量部のポリグリコール酸、3重量部のポリイソシアネート系化合物(ヘキサメチレンジイソシアネートHDI:ジフェニルメタンジイソシアネートMDI=2:8)を均一に混合し、二軸押出機で240℃で溶融混練し、回転数100r/min、押出造粒して、変性ポリグリコール酸を得る。ポリグリコール酸Aおよびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件は表1に示され、変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度とメルトフローレートが表2に示される。
【0067】
実施例2
ポリグリコール酸Aを乾燥して用意し、乾燥温度が70℃、乾燥時間が8時間であり、乾燥後の100重量部のポリグリコール酸、2重量部のポリイソシアネート系化合物(ヘキサメチレンジイソシアネートHDI:ジフェニルメタンジイソシアネートMDI=4:6)を均一に混合し、二軸押出機で240℃で溶融混練し、回転数100r/min、押出造粒して、変性ポリグリコール酸を得る。ポリグリコール酸Aおよびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件が表1に示され、変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度とメルトフローレートが表2に示される。
【0068】
実施例3
調製方法が以下のとおりであり、ポリグリコール酸Aを乾燥して用意し、乾燥温度が70℃、乾燥時間が8時間であり、乾燥後の100重量部のポリグリコール酸、3重量部のポリイソシアネート系化合物(ヘキサメチレンジイソシアネートHDI:ジフェニルメタンジイソシアネートMDI=5:5)を均一に混合し、二軸押出機で240℃で溶融混練し、回転数100r/min、押出造粒して、変性ポリグリコール酸を得る。ポリグリコール酸Aおよびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件が表1に示され、変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度とメルトフローレートが表2に示される。
【0069】
実施例4
ポリグリコール酸Aを乾燥して用意し、乾燥温度が70℃、乾燥時間が8時間であり、乾燥後の100重量部のポリグリコール酸、4重量部のポリイソシアネート系化合物(ヘキサメチレンジイソシアネートHDI:ジフェニルメタンジイソシアネートMDI=5:5)を均一に混合し、二軸押出機で240℃で溶融混練し、回転数100r/min、押出造粒して、変性ポリグリコール酸を得る。ポリグリコール酸Aおよびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件が表1に示され、変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度とメルトフローレートが表2に示される。
【0070】
実施例5
ポリグリコール酸Aを乾燥して用意し、乾燥温度が70℃、乾燥時間が8時間であり、乾燥後の100重量部のポリグリコール酸、3重量部のポリイソシアネート系化合物(ジフェニルメタンジイソシアネートMDI)を均一に混合し、二軸押出機で240℃で溶融混練し、回転数100r/min、押出造粒して、変性ポリグリコール酸を得る。ポリグリコール酸Aおよびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件が表1に示され、変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度とメルトフローレートが表2に示される。
【0071】
実施例6
ポリグリコール酸Aを乾燥して用意し、乾燥温度が70℃、乾燥時間が8時間であり、乾燥後の100重量部のポリグリコール酸、0.5重量部のポリイソシアネート系化合物(ヘキサメチレンジイソシアネートHDI:ジフェニルメタンジイソシアネートMDI=2:8)を均一に混合し、二軸押出機で240℃で溶融混練し、回転数100r/min、押出造粒して、変性ポリグリコール酸を得る。ポリグリコール酸Aおよびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件が表1に示され、変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度とメルトフローレートが表2に示される。
【0072】
実施例7
ポリグリコール酸Aを乾燥して用意し、乾燥温度が70℃、乾燥時間が8時間であり、乾燥後の100重量部のポリグリコール酸、5重量部のポリイソシアネート系化合物(ヘキサメチレンジイソシアネートHDI:ジフェニルメタンジイソシアネートMDI=5:5)を均一に混合し、二軸押出機で240℃で溶融混練し、回転数100r/min、押出造粒して、変性ポリグリコール酸を得る。ポリグリコール酸Aおよびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件が表1に示され、変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度、およびメルトフローレートが表2に示される。
【0073】
実施例8
実施例1の調製方法と同じであり、溶融押出温度が230℃である点で異なる。
変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度とメルトフローレートが表2に示される。
【0074】
実施例9
実施例1の調製方法と同じであり、使用するポリグリコール酸の原料が異なり、使用するポリグリコール酸Bの重量平均分子量が9万である。変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度とメルトフローレートが表2に示される。
【0075】
実施例10
実施例1の調製方法と同じであり、ポリイソシアネート系化合物の使用量が異なる。ポリグリコール酸およびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件が表1に示され、変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度とメルトフローレートが表2に示される。
【0076】
比較例1
100重量部のポリグリコール酸Aを乾燥して用意し、乾燥温度が70℃、乾燥時間が8時間であり、乾燥後のポリグリコール酸を二軸押出機で240℃で溶融混練し、回転数100r/min、押出造粒する。その調製条件が表1に示され、ポリグリコール酸の重量平均分子量、引張強度、溶融粘度η1、5重量%重量減少温度T1とメルトフローレートMFR1が表2に示される。
【0077】
比較例2
比較例1の調製方法と同じであり、使用するポリグリコール酸の原料が異なり、使用するポリグリコール酸Bの重量平均分子量が9万である。ポリグリコール酸およびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件が表1に示され、ポリグリコール酸の重量平均分子量、引張強度、溶融粘度η1、5重量%重量減少温度T1とメルトフローレートMFR1が表2に示される。
【0078】
比較例3
比較例1の調製方法と同じであり、使用するポリグリコール酸の原料が異なり、使用するポリグリコール酸Cの重量平均分子量が4万である。ポリグリコール酸およびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件が表1に示され、ポリグリコール酸の重量平均分子量、引張強度、溶融粘度η1、5重量%重量減少温度T1とメルトフローレートMFR1が表2に示される。
【0079】
比較例4
実施例1の調製方法と同じであり、使用するポリグリコール酸の原料が異なり、使用するポリグリコール酸Cの重量平均分子量が4万である。ポリグリコール酸およびポリイソシアネート系化合物の使用量および調製条件が表1に示され、変性ポリグリコール酸では、ポリグリコール酸に由来する構造単位Aとポリイソシアネート系化合物に由来する構造単位Bのモル比、変性ポリグリコール酸中の窒素元素の含有量、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量、溶融粘度、引張強度、5重量%重量減少温度とメルトフローレートが表2に示される。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
図1に示す実施例1の赤外線スペクトルから分かるように、変性ポリグリコール酸は3308cm-1と1526cm-1にアミド基振動による振動吸収ピークを示し、これはポリイソシアネートエステル系化合物とポリグリコール酸が化学反応を起こすからである。
【0083】
表2の結果から分かるように、本発明ではポリイソシアネート系化合物を添加してPGAを化学変性することにより、変性ポリグリコール酸の重量平均分子量はポリグリコール酸に比べてある程度増加し、MFRがポリグリコール酸の40%以下に低下し、回転式レオロジー試験の230℃、周波数0.1rad/s時の複素黏度がポリグリコール酸の4倍以上に増加し、引張強度>100MPaに維持する。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の技術的思想の範囲内で、本発明の技術的解決手段に様々な単純な変形を加え、各技術的特徴を他の任意の適切な方法で組み合わせることができ、これらの単純な変形および組み合わせは同様に本発明の開示内容と見なされ、すべて本発明の保護範囲に含まれるものとする。
図1