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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】テーパ部を有する円筒体の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 41/04 20060101AFI20240920BHJP
   B21D 41/02 20060101ALI20240920BHJP
   B21D 22/28 20060101ALI20240920BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B21D41/04 C
B21D41/02 A
B21D22/28 A
B21D24/00 G
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023513864
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2022034792
(87)【国際公開番号】W WO2023105883
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2021197643
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 隆太
(72)【発明者】
【氏名】川端 大貴
(72)【発明者】
【氏名】角田 司
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113458248(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108655290(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112427559(CN,A)
【文献】特開昭50-086468(JP,A)
【文献】特開2014-133260(JP,A)
【文献】特開2006-205232(JP,A)
【文献】特開2014-018801(JP,A)
【文献】特開昭63-119938(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104889274(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 41/04
B21D 41/02
B21D 22/28
B21D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスに形成された所定の形状を有する貫通孔であるダイス孔に、所定の形状を有する芯金である第1芯金によって、有底又は無底の円筒状の部材である素管を、前記素管及び前記ダイス孔の軸方向に押し込むことによって、テーパ部を有する円筒体を成形する方法であって、
前記円筒体は開口している一方の端部に近付くほど内径及び外径が増大する部分であるテーパ部及び他方の端部と前記テーパ部との間に形成された円筒状の部分である小径部を備え、前記テーパ部の最大外径及び最大内径は前記素管の外径よりも大きく、前記小径部の外径は前記素管の外径よりも小さく、
前記ダイス孔は、前記円筒体の前記テーパ部の最大外径に対応する内径である第1内径を有する部分である大内径部と、前記円筒体の前記小径部の外径に対応する内径である第2内径を有する部分である小内径部と、前記大内径部と前記小内径部との間に形成され且つ前記大内径部から前記小内径部へと近付くほど前記第1内径から前記第2内径へと内径が減少する部分である内径減少部と、を備え、
前記第1芯金は、先端から遠ざかるにつれて円筒体のテーパ部の最小内径に対応する外径から円筒体のテーパ部の最大内径に対応する外径へと外径が増大する部分である外径増大部と、前記外径増大部の基端側に隣接する位置において径方向における外側に広がるように形成された環状の段差であって前記円筒体の前記テーパ部の最大外径に等しい外径及び前記円筒体の前記テーパ部の最大内径に等しい内径を有する部分である第1段差部と、を備え、
前記ダイス孔に前記素管を押し込む向きである第1方向の上流側に前記素管の開口端である第1端部が向くようにして前記ダイス孔の前記大内径部側から前記素管を挿入し前記素管の前記第1端部とは反対側の端部である第2端部を前記ダイス孔の前記内径減少部に当接させることにより、前記ダイス孔の内部における所定の位置に前記素管を設置する第1工程、及び
前記素管の前記第1端部に前記第1芯金を挿入して前記第1芯金によって前記素管を前記第1方向に押圧することにより、前記ダイス孔の前記内径減少部に対向する領域に前記テーパ部が形成され且つ前記ダイス孔の前記小内径部に対向する領域に前記小径部が形成された前記円筒体を成形する第2工程、
を含み、
前記第2工程において、
前記第1芯金の前記外径増大部によって前記素管の前記第1端部の内側を押圧して前記素管の前記第1端部側の内周面及び外周面を拡径させて前記円筒体の前記テーパ部を形成する拡径過程、
遅くとも前記第1芯金の前記第1段差部が前記素管の前記第1端部に当接する時点である第1時点以降において前記第1芯金によって前記素管を前記第1方向に押圧して、前記素管の外周面と前記ダイス孔の内周面との間に少なくとも部分的に空隙が存在する状態にて、前記素管の前記第2端部を前記ダイス孔の前記小内径部に向かって押し込んで前記素管の前記第2端部側を縮径させて前記円筒体の前記小径部を形成する縮径過程、及び
前記ダイス孔の前記内径減少部と前記第1芯金の前記外径増大部との間に前記素管の前記第1端部側の領域を挟み込んで前記テーパ部及び小径部の成形を完了する完了過程、
を実行し、
前記第1芯金の前記第1段差部は、前記外径増大部の側面に対して垂直となるように傾斜しており、前記第1時点において前記素管の前記第1端部側の端面と面接触する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記拡径過程の開始以降に前記縮径過程が開始される、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記第1時点以降に前記縮径過程が開始される、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記円筒体の前記テーパ部の最大外径と前記素管の前記第1端部の外径との差の前記素管の前記第1端部の外径に対する比率である拡径率よりも、前記素管の前記第2端部の外径と前記円筒体の前記小径部の外径との差の前記素管の前記第2端部の外径に対する比率である縮径率の方が大きい、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記素管の前記第1端部側の前記円筒体の前記テーパ部に対応する領域の肉厚が、前記素管の前記第2端部側の前記円筒体の前記小径部に対応する領域の肉厚よりも大きい、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記素管を構成する材料がオーステナイト系ステンレス鋼である、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記素管が、前記第2端部が閉じている有底の円筒状の部材である、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項8】
請求項7に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記第2工程が開始される前に、前記ダイス孔の前記小内径部側から所定の形状を有する芯金である第2芯金が挿入されて前記素管の前記第2端部に当接する位置において固定されており、
前記第2工程が実行される期間における所定の時点において前記第2芯金が所定の速度にて前記第1方向への移動を開始する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記第2工程の後に、前記第1芯金を前記円筒体から抜き取り、前記円筒体の前記小径部の内径に対応する外径を有する円柱状の形状を有する芯金である第3芯金を前記円筒体の前記テーパ部側から挿入して前記第1方向に移動させることにより、前記円筒体の前記小径部の内面を扱く扱き過程を実行する第3工程、
を更に含む、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項10】
請求項7又は請求項8に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記第1芯金が、前記円筒体の前記小径部の内径に対応する外径を有する円柱状の部分である中心部材と、前記中心部材の周囲に前記中心部材と同軸状に設けられた部分である周縁部材と、に分割されており、
前記中心部材は、前記周縁部材に対して、前記第1方向に摺動可能に構成されており、
前記第2工程において、前記中心部材を前記周縁部材よりも高い速度にて前記第1方向に移動させて前記素管の底部の内面を押圧することにより、少なくとも前記縮径過程の一部と並行して、前記円筒体の前記小径部の内面を扱く扱き過程を実行する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項11】
請求項9に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記第3芯金の先端には、抜き加工用の突起が形成されており、
前記扱き過程の実行後に、前記第3芯金を前記第1方向に更に移動させることにより、前記円筒体の前記小径部の先端にある底部を前記突起によって打ち抜く抜き過程を実行する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項12】
請求項10に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記中心部材の先端には、抜き加工用の突起が形成されており、
前記扱き過程の実行後に、前記中心部材を前記第1方向に更に移動させることにより、前記円筒体の前記小径部の先端にある底部を前記突起によって打ち抜く抜き過程を実行する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項13】
請求項9に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記ダイス孔の前記小内径部側の端部から前記第1方向とは反対の向きである第2方向に移動するように構成された抜き加工用の芯金である第4芯金が設けられており、
前記扱き過程の実行後に、所定の部材によって前記第2方向に前記円筒体が移動しないように固定し且つ前記第3芯金を前記第2方向に移動させてから、前記第4芯金を前記第2方向に移動させることにより、前記円筒体の前記小径部の先端にある底部を前記第4芯金によって打ち抜く抜き過程を実行する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項14】
請求項10に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記ダイス孔の前記小内径部側の端部から前記第1方向とは反対の向きである第2方向に移動するように構成された抜き加工用の芯金である第4芯金が設けられており、
前記扱き過程の実行後に、前記周縁部材によって前記第2方向に前記円筒体が移動しないように固定し且つ前記中心部材を前記第2方向に移動させてから、前記第4芯金を前記第2方向に移動させることにより、前記円筒体の前記小径部の先端にある底部を前記第4芯金によって打ち抜く抜き過程を実行する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項15】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記素管が、前記第2端部が開口している無底の円筒状の部材である、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項16】
請求項15に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記第2工程が開始される前に、前記円筒体の前記小径部の内径に対応する外径以下の大きさの外径である第1外径を有する円柱状の形状を有する芯金である第5芯金が前記ダイス孔の前記小内径部側から挿入されており、
前記第2工程において実行される前記縮径過程において、縮径された前記素管の前記第2端部側の開口部が前記第5芯金に外嵌する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項17】
請求項16に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記第5芯金の外周面の所定の位置には、径方向における外側に広がるように形成された環状の段差であって前記第1外径よりも大きく且つ前記円筒体の前記小径部の外径以下である外径を有する部分である第2段差部が形成されており、
前記第5芯金の前記第2段差部は、前記ダイス孔の前記小内径部の前記第1方向における上流側の端部又は当該端部よりも下流側にある所定の位置に対向する位置に形成されており、
前記第2工程において、前記素管の前記第2端部が前記第5芯金の前記第2段差部に当接する時点である第2時点以降における所定の時点において前記第5芯金が所定の速度にて前記第1方向への移動を開始する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【請求項18】
請求項15乃至請求項17の何れか1項に記載されたテーパ部を有する円筒体の成形方法であって、
前記第2工程の後に、前記第1芯金を前記円筒体から抜き取り、前記円筒体の前記小径部の内径に対応する外径を有する円柱状の形状を有する芯金である第3芯金を前記円筒体の前記テーパ部側から挿入して前記第1方向に移動させることにより、前記円筒体の前記小径部の内面を扱く扱き過程を実行する第3工程、
を更に含む、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーパ部を有する円筒体の成形方法に関する。より詳しくは、本発明は、金型のセット数及び作業工程の増大を低減しつつ、素管の肉厚の大小に拘わらず塑性加工によって実施することが可能な、テーパ部を有する円筒体の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野においては、例えばノズル又はタンクライナー等の漏斗状の部材を成形するための中間素材として、例えば図2に例示するようなテーパ部を有する円筒体を使用することが知られている。
【0003】
例えば、図2の(a)に例示したようなテーパ部を有する有底の円筒体の成形方法としては、有底円筒状の中間素材に扱き加工又は据込み加工を施してテーパ部を付与しつつ円筒部を縮径させて所望の形状を得る方法が一般的である。
【0004】
特許文献1(特許第4681143号公報)には、同軸2重構造を有するマンドレルとダイとの間に中間素材の側壁を通し、当該マンドレルによって中間素材の底部を押圧すると共に、外側のマンドレルとダイとの間において中間素材の側壁を扱いて、縮径部を延長してゆく成形方法が開示されている。また、特許文献2(特許第5741771号公報)には、上記成形方法において、中間素材の底部を挟んで上記マンドレルに対向するように配置されたカウンターパンチを併用する成形方法が開示されている。
【0005】
更に、特許文献3(特許第5244529号公報)には、開口端の周縁にフランジ部を有するハット状の中間素材のフランジ部をアウタダイとしわ押え板との間に挟んで拘束したままアウタダイの内側に設けたインナダイを押し下げて当該中間素材をアウタポンチの内側に設けたセンタポンチに被せながら中間素材の側壁を内側に向けて押し付けることにより小径部を形成する成形方法が開示されている。
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載された方法は、薄板を引き延ばす扱き加工であって、例えば2mm以上の厚さを有する厚板に適用すると、例えば金型の破損及び/又は成形中の素管における亀裂の発生等の問題が生ずる虞がある。また、特許文献3に記載された方法は、単純な形状への据込み加工であるため、図2に例示したような形状を有する部材を得るためには、複数の工程を経て少しずつテーパ部を拡げつつ筒部を縮径させなければならず、例えば金型のセット数及び作業工程の増大を招き、経済的ではない。また、特許文献3に記載された方法も、適用可能な素管の肉厚は2mm程度が限界であり、それ以上の厚さを有する厚板から図2に例示したような形状を有する部材を得ることは困難である。
【0007】
以上のように、当該技術分野においては、図2に例示したような形状を有する肉厚の部材を得るためには、金属塊に熱間鍛造を施すか或いは切削加工(削り出し)を施すのが通例であるが、これらの成形方法も経済的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4681143号公報
【文献】特許第5741711号公報
【文献】特許第5244529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、当該技術分野においては、金型のセット数及び作業工程の増大を低減しつつ、素管の肉厚の大小に拘わらず塑性加工によって実施することが可能な、テーパ部を有する円筒体の成形方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、所定の形状を有するダイス孔に所定の形状を有する芯金によって円筒状の素管を押し込むことによってテーパ部及び小径部を有する円筒体を成形する方法において、素管を軸方向に押圧して圧縮しながら縮径させて小径部を形成することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0011】
具体的には、本発明に係るテーパ部を有する円筒体の成形方法(以降、「本発明方法」と称呼される場合がある。)は、ダイスに形成された所定の形状を有する貫通孔であるダイス孔に、所定の形状を有する芯金である第1芯金によって、有底又は無底の円筒状の部材である素管を、素管及びダイス孔の軸方向に押し込むことによって、テーパ部を有する円筒体を成形する方法である。
【0012】
円筒体は開口している一方の端部に近付くほど径が増大する部分であるテーパ部及び他方の端部とテーパ部との間に形成された円筒状の部分である小径部を備える。テーパ部の最大外径は素管の外径よりも大きく、小径部の外径は素管の外径よりも小さい。
【0013】
ダイス孔は、大内径部と、小内径部と、内径減少部と、を備える。大内径部は、円筒体のテーパ部の最大外径に対応する内径である第1内径を有する部分である。小内径部は、円筒体の小径部の外径に対応する内径である第2内径を有する部分である。内径減少部は、大内径部と小内径部との間に形成され且つ大内径部から小内径部へと近付くほど第1内径から第2内径へと内径が減少する部分である。
【0014】
第1芯金は、外径増大部と、第1段差部と、を備える。外径増大部は、先端から遠ざかるにつれて円筒体のテーパ部の最小内径に対応する外径から円筒体のテーパ部の最大内径に対応する外径へと外径が増大する部分である。第1段差部は、外径増大部の基端側に隣接する位置において径方向における外側に広がるように形成された環状の段差であって円筒体のテーパ部の最大外径に等しい外径及び円筒体のテーパ部の最大内径に等しい内径を有する部分である。
【0015】
本発明方法は、以下に示す第1工程及び第2工程を含む。
第1工程:ダイス孔に素管を押し込む向きである第1方向の上流側に素管の開口端である第1端部が向くようにしてダイス孔の大内径部側から素管を挿入し素管の第1端部とは反対側の端部である第2端部をダイス孔の内径減少部に当接させることにより、ダイス孔の内部における所定の位置に素管を設置する。
第2工程:素管の第1端部に第1芯金を挿入して第1芯金によって素管を第1方向に押圧することにより、ダイス孔の内径減少部に対向する領域にテーパ部が形成され且つダイス孔の小内径部に対向する領域に小径部が形成された円筒体を成形する。
【0016】
第2工程においては、以下に示す拡径過程、縮径過程及び完了過程を実行する。
拡径過程:第1芯金の外径増大部によって素管の第1端部の内側を押圧して素管の第1端部側を拡径させる。
縮径過程:遅くとも第1芯金の第1段差部が素管の第1端部に当接する時点である第1時点以降において第1芯金によって素管を第1方向に押圧して素管の第2端部をダイス孔の小内径部に向かって押し込んで素管の第2端部側を縮径させる。
完了過程:ダイス孔の内径減少部と第1芯金の外径増大部との間に素管の第1端部側の領域を挟み込んでテーパ部及び小径部の成形を完了する。
【0017】
好ましくは、拡径過程の開始以降に縮径過程が開始される。このための具体的な方策については後述する。また、円筒体のテーパ部に対応する領域の肉厚が円筒体の小径部に対応する領域の肉厚よりも大きい素管を使用してもよい。更に、素管を構成する材料がオーステナイト系ステンレス鋼であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記のように、本発明方法においては、第2工程において実行される縮径過程において、遅くとも第1時点以降において第1芯金によって素管を第1方向に押圧して素管の第2端部をダイス孔の小内径部に向かって押し込んで素管の第2端部側を縮径させる。即ち、素管を軸方向に押圧して圧縮しながら縮径させて円筒体の小径部を形成する。従って、本発明方法によれば、肉厚の大きい素管を使用する場合においても、例えば座屈及び/又は破断等の問題を低減しつつテーパ部と小径部とを同時に形成して、テーパ部を有する円筒体を円滑に成形することができる。
【0019】
好ましくは、拡径過程の開始以降に縮径過程が開始される。これにより、テーパ部と小径部とをバランス良く、より円滑に形成することができる。また、円筒体のテーパ部に対応する領域の肉厚が円筒体の小径部に対応する領域の肉厚よりも大きい素管を使用することにより、第2工程において実行される拡径過程における素管の第1端部側の拡径に伴う肉厚の減少(減肉)を少なくとも部分的には相殺して、円筒体の肉厚をより均一にすることができる。更に、素管を構成する材料としてオーステナイト系ステンレス鋼を選択することにより、第2工程の実行に伴う加工硬化により、円筒体の機械的強度を高めることができる。
【0020】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施態様に係るテーパ部を有する円筒体の成形方法(第1方法)において使用される素管の構成を例示する模式的な断面図である。の構成を例示する模式的な断面図である。
図2】第1方法によって成形されるテーパ部を有する円筒体の構成を例示する模式的な断面図である。
図3】第1方法において使用されるダイスの構成を例示する模式的な断面図である。
図4】第1方法において使用される第1芯金の構成を例示する模式的な断面図である。
図5】第1方法に含まれる各工程及び各過程の流れを示すフローチャートである。
図6】第1方法において実行される第2工程の進行に伴う第1芯金の位置及び第1素管の形状の変化を例示する模式的な断面図である。
図7】第1方法の変形例1-1を示す模式的な断面図である。
図8】第1方法の変形例1-1において使用される素管の成形方法の一例を示す模式的な断面図である。
図9】本発明の第2実施態様に係るテーパ部を有する円筒体の成形方法(第2方法)の変形例2-1において実行される第2工程の進行に伴う第1芯金及び第2芯金の位置並びに第1素管の形状の変化を例示する模式的な断面図である。
図10】本発明の第3実施態様に係るテーパ部を有する円筒体の成形方法(第3方法)に含まれる各工程及び各過程の流れを示すフローチャートである。
【0022】
図11】本発明の第4実施態様に係るテーパ部を有する円筒体の成形方法(第4方法)において使用される第1芯金の構成の一例を示す模式的な断面図である。
図12】第4方法に含まれる各工程及び各過程の流れを示すフローチャートである。
図13】第4方法において実行される第2工程の進行に伴う第1芯金を構成する中心部材及び周縁部材の位置及び第1素管の形状の変化を例示する模式的な断面図である。
図14】第3方法に含まれる第3工程において実行される扱き過程の実行後に抜き過程を実行する本発明の第5実施態様及び第6実施態様に係るテーパ部を有する円筒体の成形方法(第5方法及び第6方法)に含まれる各工程及び各過程の流れを示すフローチャートである。
図15】第4方法に含まれる第2工程において実行される扱き過程の実行後に抜き過程を実行する第5方法及び第6方法に含まれる各工程及び各過程の流れを示すフローチャートである。
図16】第5方法において実行される抜き過程の一例を示す模式的な断面図である。
図17】第6方法において実行される抜き過程の一例を示す模式的な断面図である。
図18】本発明の第7実施態様に係るテーパ部を有する円筒体の成形方法(第7方法)の変形例7-1において第2工程が開始される直前の状態を示す模式的な断面図である。
図19】第7方法の変形例7-2において第2工程が開始される直前の状態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係るテーパ部を有する円筒体を成形する方法(以降、「第1方法」と称呼される場合がある。)について説明する。尚、本明細書において使用される「芯金」なる用語は、塑性加工において加工対象となる部材に対して加圧、変形及び/又は穿孔を行うための雄型の総称であり、当該技術分野において広く使用されている「マンドレル」、「パンチ」及び「ポンチ」等の類義語を包含する。
【0024】
第1方法は、ダイスに形成された所定の形状を有する貫通孔であるダイス孔に、所定の形状を有する芯金である第1芯金によって、有底又は無底の円筒状の部材である素管を、素管及びダイス孔の軸方向に押し込むことによって、テーパ部を有する円筒体を成形する方法である。即ち、第1方法は、冷間鍛造によって、テーパ部を有する円筒体を成形する方法である。
【0025】
第1方法を実行するための装置の基本的な構成については当業者に周知であるので詳細な説明は省略するが、ダイス及び第1芯金を始めとする構成要素は、例えば後述する第2工程において構成要素に作用する荷重等の加工条件に耐え得る性質(例えば、機械的強度及び耐久性等)を有する材料によって構成される。また、ダイス孔に第1芯金を押し込むための駆動機構は、素管を構成する材料の性質(例えば、機械的強度及び硬度等)に応じて、当該技術分野において周知の種々の駆動機構の中から適宜選択することができる。典型的には、例えば油圧式プレス機等のプレス機が駆動機構として採用される。
【0026】
テーパ部を有する円筒体を成形するための素材となる素管は、冷間鍛造による成形が可能な材料によって構成された筒状の部材である。素管は、例えば図1の(a)に例示するように有底の円筒状の部材からなる素管101であってもよく、或いは、例えば図1の(b)に例示するように無底の円筒状の部材からなる素管102であってもよい。このような素管は、第1方法によってテーパ部を有する円筒体に成形することが可能である限り、特に限定されない。例えば、素管は、板巻きパイプ又はシームレス管であってもよく、鍛造又は切削によって製造されたものであってもよい。また、板状の部材からの絞り成形によって有底の素管を製造してもよい。
【0027】
円筒体は開口している一方の端部に近付くほど径が増大する部分であるテーパ部及び他方の端部とテーパ部との間に形成された円筒状の部分である小径部を備える。本明細書の冒頭において説明したように、斯かる円筒体は例えばノズル又はタンクライナー等の漏斗状の部材を成形するための中間素材として使用することができる。このような円筒体の具体例としては、例えば図2に例示したようなテーパ部を有する円筒体を挙げることができる。
【0028】
図2の(a)及び(b)に例示した円筒体201及び202は、開口している一方の端部211に近付くほど径が増大する部分であるテーパ部220及び他方の端部212とテーパ部220との間に形成された円筒状の部分である小径部230を備える。但し、円筒体201は第2端部212が閉じている有底の円筒体であるのに対し、円筒体202は第2端部212が開口している無底の円筒体である。このように、成形しようとする製品に応じて、有底又は無底の円筒体を中間素材として使用することができる。
【0029】
具体的には、例えばノズル又はタンクライナー等の無底の部材を上述した円筒体201のような有底の円筒体から成形する場合においては、当然のことながら、例えば底部を切除したり切削により底部に孔を穿ったりする必要がある。一方、有底の円筒体から有底の部材を成形する場合においては、必ずしも例えば底部を切除したり底部に穴を穿ったりする必要は無い。逆に、例えばノズル又はタンクライナー等の無底の部材を上述した円筒体202のような無底の円筒体から成形する場合においては、例えば底部を切除したり底部に穴を穿ったりする必要は無い。一方、無底の円筒体から有底の部材を成形する場合においては、当然のことながら、例えば底部を更なる塑性加工又は底部を構成する部材の接合等により底部を形成する必要がある。
【0030】
円筒体において、テーパ部の最大外径は素管の外径よりも大きく、小径部の外径は素管の外径よりも小さい。これは、詳しくは後述するように、円筒体のテーパ部は素管の拡径により、円筒体の小径部は素管の縮径により、それぞれ形成されるためである。尚、テーパ部の最大外径とは、第1方法においてダイス孔に素管が押し込まれる向きである第1方向における上流側の円筒体のテーパ部の端部における外径を指す。
【0031】
ダイス孔は、第1方向における上流側から順に、大内径部と、内径減少部と、小内径部と、を備える。大内径部は、円筒体のテーパ部の最大外径に対応する内径である第1内径を有する部分である。小内径部は、円筒体の小径部の外径に対応する内径である第2内径を有する部分である。内径減少部は、大内径部と小内径部との間に形成され且つ大内径部から小内径部へと近付くにつれて第1内径から第2内径へと内径が減少する部分である。
【0032】
図3は、第1方法において使用されるダイスの構成を例示する模式的な断面図である。図3に例示するダイス301に形成されたダイス孔310は、第1方向における上流側から順に、大内径部311と、内径減少部312と、小内径部313と、を備える。大内径部311は、円筒体201のテーパ部220の最大外径に対応する内径である第1内径DI1を有する部分である。小内径部313は、円筒体201の小径部230の外径に対応する内径である第2内径DI2を有する部分である。内径減少部312は、大内径部311と小内径部313との間に形成され且つ大内径部311から小内径部313へと近付くにつれて第1内径DI1から第2内径DI2へと内径が減少する部分である。
【0033】
第1芯金は、第1方向における下流側から順に、外径増大部と、第1段差部と、を備える。外径増大部は、先端から遠ざかるにつれて円筒体のテーパ部の最小内径に対応する外径から円筒体のテーパ部の最大内径に対応する外径へと外径が増大する部分である。第1段差部は、外径増大部の基端側に隣接する位置において径方向における外側に広がるように形成された環状の段差であって円筒体のテーパ部の最大外径に等しい外径及び円筒体のテーパ部の最大内径に等しい内径を有する部分である。尚、円筒体の小径部の内径に対応する外径を有する略円柱状の部分である小径ガイド部が外径増大部の先端側に隣接して設けられていてもよい。
【0034】
図4は、第1方法において使用される第1芯金の構成を例示する模式的な断面図である。図4に例示する第1芯金401は、第1方向における下流側から順に、小径ガイド部411と、外径増大部412と、第1段差部413と、を備える。小径ガイド部411は、円筒体の小径部の内径に対応する外径を有する略円柱状の部分である。外径増大部412は、先端から遠ざかるにつれて円筒体のテーパ部の最小内径に対応する外径から円筒体のテーパ部の最大内径に対応する外径へと外径が増大する部分である。第1段差部413は、外径増大部412の基端側に隣接する位置において径方向における外側に広がるように形成された環状の段差であって円筒体のテーパ部の最大外径に等しい外径及び円筒体のテーパ部の最大内径に等しい内径を有する部分である。尚、図4に描かれている一点鎖線AXは、第1芯金、素管及びダイス孔の共通の中心軸を表している。即ち、第1方法において、第1芯金、素管及びダイス孔は軸AXを共通の軸とする同軸状に配置される。
【0035】
尚、ダイス孔310に素管101を押し込んで素管101の先端側(第2端部側)を効果的に縮径させる観点からは、第1芯金401の第1段差部413が素管101の基端側(第1端部側)に当接する際に第1段差部413と素管101の端面とが面接触することが望ましい。そこで、図4に例示する第1芯金401の第1段差部413においては、径方向における外側に広がるように形成された環状の平面が外径増大部412の側面に対して垂直となるように傾斜している。
【0036】
図5は、第1方法に含まれる各工程及び各過程の流れを示すフローチャートである。図5に例示するように、第1方法は、以下に示す第1工程(ステップS10)及び第2工程(ステップS20)を含む。
【0037】
第1工程(ステップS10):ダイス孔に素管を押し込む向きである第1方向の上流側に素管の開口端である第1端部が向くようにしてダイス孔の大内径部側から素管を挿入し素管の第1端部とは反対側の端部である第2端部をダイス孔の内径減少部に当接させることにより、ダイス孔の内部における所定の位置に素管を設置する。
【0038】
上述したように、円筒体において、テーパ部の最大外径は素管の外径よりも大きく、小径部の外径は素管の外径よりも小さい。また、ダイス孔において、大内径部の内径は円筒体のテーパ部の最大外径に対応する内径(第1内径)であり、小内径部の内径は円筒体の小径部の外径に対応する内径(第2内径)であり、内径減少部の内径は大内径部から小内径部へと近付くほど第1内径から第2内径へと減少する。従って、第1工程においてダイス孔に挿入された素管は、その先端(第2端部)がダイス孔の内径減少部に当接し且つダイス孔の大内径部の内周面と素管の外周面との間には空隙が存在する状態にて保持される。
【0039】
第2工程(ステップS20):素管の第1端部に第1芯金を挿入して第1芯金によって素管を第1方向に押圧することにより、ダイス孔の内径減少部に対向する領域にテーパ部が形成され且つダイス孔の小内径部に対向する領域に小径部が形成された円筒体を成形する。
【0040】
上述したように、第1芯金の先端には、先端から遠ざかるにつれて円筒体のテーパ部の最小内径に対応する外径から円筒体のテーパ部の最大内径に対応する外径へと外径が増大する外径増大部が設けられている。従って、素管の第1端部に第1芯金を挿入した時点においては、第1芯金の外径増大部の途中に素管の第1端部が当接することになる。その後、上述した駆動機構により第1芯金を第1方向に押圧することにより、ダイス孔の内径減少部に対向する領域にテーパ部が形成され且つダイス孔の小内径部に対向する領域に小径部が形成されて、所期の「テーパ部を有する円筒体」が成形される。
【0041】
図5に例示するように、第2工程(ステップS20)においては、以下に示す拡径過程(ステップS21)、縮径過程(ステップS22)及び完了過程(ステップS23)を実行する。
拡径過程(ステップS21):第1芯金の外径増大部によって素管の第1端部の内側を押圧して素管の第1端部側を拡径させる。即ち、素管の第1端部側が第1芯金の外径増大部によって押し広げられて拡径される。
縮径過程(ステップS22):遅くとも第1芯金の第1段差部が素管の第1端部に当接する時点である第1時点以降において第1芯金によって素管を第1方向に押圧して素管の第2端部をダイス孔の小内径部に向かって押し込んで素管の第2端部側を縮径させる。即ち、素管の第2端部側がダイス孔の小内径部へと押し込まれて縮径される。
完了過程(ステップS23):ダイス孔の内径減少部と第1芯金の外径増大部との間に素管の第1端部側の領域を挟み込んでテーパ部及び小径部の成形を完了する。
【0042】
上記のように、第1方法においては、第2工程(ステップS20)において実行される縮径過程(ステップS22)において、遅くとも第1時点以降において第1芯金によって素管を第1方向に押圧して素管の第2端部をダイス孔の小内径部に向かって押し込んで素管の第2端部側を縮径させる。即ち、素管を軸方向に押圧して圧縮しながら縮径させて円筒体の小径部を形成する。従って、第1方法によれば、肉厚の大きい素管を使用する場合においても、例えば座屈及び/又は破断等の問題を低減しつつテーパ部と小径部とを同時に形成して、テーパ部を有する円筒体を円滑に成形することができる。
【0043】
尚、第2工程(ステップS20)における拡径過程(ステップS21)及び縮径過程(ステップS22)を開始する順序は、例えば素管の座屈等の問題が生じない限りにおいて、特に限定されない。例えば、第2工程(ステップS20)の開始と同時に拡径過程(ステップS21)が開始される場合、拡径過程(ステップS21)の開始と同時に縮径過程(ステップS22)が開始されてもよく、或いは、拡径過程(ステップS21)の開始時点よりも後に縮径過程(ステップS22)が開始されてもよい。但し、上述したように、第1芯金の外径増大部の基端側に隣接する位置には、径方向における外側に広がるように形成された環状の段差であって円筒体のテーパ部の最大外径に等しい外径及び円筒体のテーパ部の最大内径に等しい内径を有する部分である第1段差部が設けられている。従って、拡径過程(ステップS21)の開始時点よりも後に縮径過程(ステップS22)が開始される場合であっても、第1芯金の第1段差部が素管の第1端部に当接する時点(第1時点)以降は、第1芯金によって素管が第1方向に押圧され、素管の第2端部がダイス孔の小内径部に向かって押し込まれ、素管の第2端部側が縮径されることとなる。逆に、第2工程(ステップS20)の開始と同時に縮径過程(ステップS22)が開始される場合もあり得る。この場合、縮径過程(ステップS22)の開始と同時に拡径過程(ステップS21)が開始されてもよく、或いは、縮径過程(ステップS22)の開始時点よりも後に拡径過程(ステップS21)が開始されてもよい。
【0044】
好ましくは、拡径過程の開始以降に縮径過程が開始される。より好ましくは、第1芯金の第1段差部が素管の第1端部に当接する時点(第1時点)以降に縮径過程が開始される。これにより、テーパ部と小径部とをバランス良く、より円滑に形成することができる。
【0045】
第2工程において拡径過程が開始されるタイミング及び縮径過程が開始されるタイミングは、例えば、素管の形状(径、長さ及び肉厚等)及び材料、円筒体のテーパ部となる部分の拡径率と円筒体の小径部となる部分の縮径率との大小関係、並びにダイス孔の内径減少部における内径の変化率(テーパ角)等、様々な要因によって変化する。
【0046】
拡径過程の開始以降に縮径過程が開始されるようにするための具体的な方策としては、例えば、円筒体のテーパ部の最大外径と素管の第1端部の外径との差の素管の第1端部の外径に対する比率である拡径率よりも素管の第2端部の外径と円筒体の小径部の外径との差の素管の第2端部の外径に対する比率である縮径率の方が大きくなるように、素管、ダイス孔及び第1芯金を構成することを挙げることができる。これにより、テーパ部と小径部とをバランス良く、より円滑に形成することができる。但し、後述するように、拡径過程の開始以降に縮径過程が開始されるようにするための方策は上記に限定されない。
【0047】
〈第2工程の詳細〉
ここで、第1方法において実行される第2工程における素管の形状の変化につき、更なる図面を参照しながら、より詳細に説明する。図6は、第2工程の進行に伴う第1芯金の位置及び第1素管の形状の変化を例示する模式的な断面図である。尚、図6においては、第1芯金、素管及びダイス孔の共通の軸AX(図4を参照)の図面に向かって右側の部分のみが描かれているが、軸AXの左側の部分についても同様である。また、図面を簡潔なものとするため、図1乃至図4において示した各部位に付された符号の一部のみが表示されている。しかしながら、図6に関する以下の説明においては、正確を期すため、図1乃至図4において示した符号を使用するので、必要に応じて図1乃至図4を参照されたい。
【0048】
先ず、図6の(a)は、第1工程(ステップS10)においてダイス孔310の内部における所定の位置に設置された素管101の第1端部に第1芯金401の先端部(具体的には、小径コア部411及び外径増大部412の一部)が挿入された状態を示す。この状態においては、上述したように、素管101の先端(第2端部112)がダイス孔310の内径減少部312に当接しており、ダイス孔310の大内径部311の内周面と素管101の外周面との間には空隙が存在する。
【0049】
次に、図6の(b)は、第2工程(ステップS20)において第1芯金401が素管101を第1方向に押圧し始め、第1芯金401の外径増大部412の側面により素管101の第1端部111側が押し広げられてフレアが形成されている状態を示す。即ち、この時点において、拡径過程(ステップS21)が開始されて素管101の第1端部111側の拡径が始まっているが、素管101の第2端部112側の縮径は未だ始まっていない。
【0050】
次に、図6の(c)は、第1芯金401が第1方向に更に移動して、素管101の第1端部111側の拡径が更に進行すると共に、第1芯金401の第1段差部413が素管101の第1端部111に当接して素管101の第2端部112をダイス孔310の小内径部313に向かって押し込み始めた状態を示す。即ち、この時点において、縮径過程(ステップS22)が開始されて素管101の第2端部側の縮径が始まっている。
【0051】
次に、図6の(d)は、第1芯金401が第1方向に更に移動して、素管101の第1端部111側の拡径が更に進行すると共に、素管101の第2端部112がダイス孔310の小内径部313に進入し始めた状態を示す。即ち、この時点において、縮径過程(ステップS22)により円筒体201の小径部230が形成され始めている。
【0052】
次に、図6の(e)は、第1芯金401が第1方向に更に移動して、素管101の第1端部側の拡径が更に進行すると共に、素管101の第2端部112がダイス孔310の小内径部に更に進入して、縮径過程(ステップS22)により円筒体201の小径部230の形成が更に進行している状態を示す。
【0053】
最後に、図6の(f)は、第1芯金401が第1方向に更に移動して、ダイス孔310の内径減少部312と第1芯金401の外径増大部412との間に素管101の第1端部111側の領域が挟み込まれて、円筒体201のテーパ部220及び小径部230の成形が完了した状態を示す。
【0054】
以上のように、図6に示した例においては、第1芯金401の第1段差部413が素管101の第1端部111に当接した時点(第1時点)から縮径過程が開始されている。しかしながら、前述したように、第2工程において拡径過程が開始されるタイミング及び縮径過程が開始されるタイミングは、例えば、素管の形状(径、長さ及び肉厚等)及び材料、円筒体のテーパ部となる部分の拡径率と円筒体の小径部となる部分の縮径率との大小関係、並びにダイス孔の内径減少部における内径の変化率(テーパ角)等、様々な要因によって変化する。
【0055】
しかしながら、第1方法においては、以上説明してきたように、第2工程において実行される縮径過程における遅くとも第1時点以降において第1芯金によって素管を第1方向に押圧して素管の第2端部をダイス孔の小内径部に向かって押し込んで素管の第2端部側を縮径させることができる。即ち、素管を軸方向に押圧して圧縮しながら縮径させて円筒体の小径部を形成することができる。従って、第1方法によれば、肉厚の大きい素管を使用する場合においても、例えば座屈及び/又は破断等の問題を低減しつつテーパ部と小径部とを同時に形成して、テーパ部を有する円筒体を円滑に成形することができる。
【0056】
〈変形例1-1〉
ところで、第2工程において実行される拡径過程において素管の第1端部側が拡径されて円筒体のテーパ部が形成されるのに伴って、当該部分の肉厚が減少する(当該部分が減肉する)場合がある。一方、第1方法によって成型されるテーパ部を有する円筒体の用途によっては、円筒体の全体に亘って肉厚を均一化することが望ましい場合がある。このような場合は、円筒体のテーパ部となる素管の領域の肉厚を予め厚くしておいてもよい。即ち、第1方法において、円筒体のテーパ部に対応する領域の肉厚が円筒体の小径部に対応する領域の肉厚よりも大きい素管を使用してもよい。
【0057】
図7は、円筒体のテーパ部に対応する領域の肉厚が円筒体の小径部に対応する領域の肉厚よりも大きい素管を使用する第1方法の変形例1-1を示す模式的な断面図である。図7の(a)に例示する素管101aは、円筒体のテーパ部に対応する領域(太い破線によって囲まれた部分を参照)の肉厚が円筒体の小径部に対応する領域の肉厚よりも大きい点を除き、図1の(a)に例示した素管101と同様の構成を有する。このように円筒体のテーパ部となる素管の領域の肉厚を予め厚くしておくことにより、図7の(b)に例示するように、拡径過程における素管の第1端部側の拡径に伴う肉厚の減少(減肉)を少なくとも部分的には相殺して、円筒体201aの肉厚をより均一にすることができる。
【0058】
尚、上記のような素管の製造方法は、円筒体のテーパ部に対応する領域の肉厚が円筒体の小径部に対応する領域の肉厚よりも大きい素管を得ることが可能である限り、特に限定されない。例えば、上記のような素管は、鍛造又は切削によって製造されたものであってもよい。また、上記のような素管は、板状の部材からの絞り成形によって製造されたものであってもよい。
【0059】
図8は、第1方法の変形例1-1において使用される素管101aの成形方法の一例を示す模式的な断面図である。図面に向かって軸AXよりも左側の(a)には素管101aの加工中の状況が、図面に向かって軸AXよりも右側の(b)には素管101aの加工後の状況が、それぞれ描かれている。図8の(a)に例示するように、絞り加工によって素管101aを成形するためのダイスに形成されたダイス孔は、芯金が挿入される側の開口部に近付くにつれて広くなるようにテーパ部が設けられている(太い実線を参照)。これにより、図8の(b)に例示するように、加工後の素管101aにおける円筒体のテーパ部に対応する領域の肉厚を他の領域の肉厚よりも大きくすることができる(太い破線によって囲まれた部分を参照)。
【0060】
尚、図7及び図8に例示した素管101aにおいては、円筒体のテーパ部に対応する領域の肉厚が第1端部に近付くにつれて直線的に増大している。しかしながら、図7及び図8に示した素管101aはあくまでも例示に過ぎず、第1方法の変形例1-1において使用される素管の当該領域の形状は、拡径過程における素管の第1端部側の拡径に伴う肉厚の減少(減肉)を少なくとも部分的に相殺することが可能である限り特に限定されない。
【0061】
〈変形例1-2〉
ところで、例えばオーステナイト系ステンレス鋼等、加工硬化を生じ易い材料によって形成された素材を冷間鍛造によって加工する場合、例えば加工荷重が増大したり加工中に素材が割れたりする問題が生ずる場合がある。従って、このような材料は冷間鍛造において敬遠されがちであった。しかしながら、第1方法においては、上述したように、第2工程において実行される縮径過程における遅くとも第1時点以降において第1芯金によって素管を第1方向に押圧して素管の第2端部をダイス孔の小内径部に向かって押し込んで素管の第2端部側を縮径させる。即ち、素管を軸方向(第1方向)に押圧して圧縮しながら縮径させて円筒体の小径部を形成するので、素材を引き伸ばす加工方法に比べて、加工中における素管の割れ等の問題が生ずる可能性が低い。また、第1方法によれば肉厚の大きい素管を使用することができるので、第2工程において実行される縮径過程において素管の第1端部に大きい荷重をかけることができる。
【0062】
従って、第1方法においては、素管を構成する材料がオーステナイト系ステンレス鋼であってもよい。この場合、上記のように加工硬化が生ずるので、第1方法によって成形されるテーパ部を有する円筒体の硬度が高まり、機械的強度も増大する。従って、オーステナイト系ステンレス鋼によって構成された素管から第1方法によって成形される円筒体は、例えば円筒体の内部に存在する流体による高い圧力を受ける用途等、高い機械的強度が要求される用途に好適である。
【0063】
また、素材を引き伸ばす加工方法によって成形された製品には引張の残留応力が生ずるのに対して、素管を軸方向(第1方向)に押圧して圧縮する第1方法によって成形された製品には圧縮の残留応力が生ずる。第1方法によって成形される円筒体は、例えば円筒体の内部に存在する流体による高い圧力を受ける用途等、高い引張応力を受ける用途に好適である。
【0064】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第2実施形態に係るテーパ部を有する円筒体を成形する方法(以降、「第2方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0065】
第2方法は、上述した第1方法の何れかであって、
素管が、第2端部が閉じている有底の円筒状の部材である、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法である。
【0066】
上記のように第2端部が閉じている有底の素管の具体例としては、例えば図1の(a)に例示した素管101及び図7の(a)に例示した素管101aを挙げることができる。このような有底の素管を使用することにより、縮径過程において素管の第2端部側が意図しない変形を生じたりする問題を低減することができる。
【0067】
〈変形例2-1〉
ところで、前述したように、好ましくは、拡径過程の開始以降に縮径過程が開始される。より好ましくは、第1芯金の第1段差部が素管の第1端部に当接する時点(第1時点)以降に縮径過程が開始される。これにより、テーパ部と小径部とをバランス良く、より円滑に形成することができる。
【0068】
拡径過程の開始以降に縮径過程が開始されるようにするための具体的な方策の一例としては、前述したように、拡径率よりも縮径率の方が大きくなるように、素管、ダイス孔及び第1芯金を構成することを挙げることができる。しかしながら、第2端部が閉じている有底の円筒状の部材を素管として使用する第2方法においては、所謂「カウンターパンチ」をダイス孔の小内径部側から挿入して素管の第2端部(底部)に当接させておき、縮径過程を開始させるべき時点以降は素管の第2端部の第1方向への移動に応じてカウンターパンチもまた第1方向へ移動させることにより、拡径過程の開始以降の所期のタイミングにて縮径過程を開始させることができる。
【0069】
そこで、第2方法の変形例2-1は、
第2工程が開始される前に、ダイス孔の小内径部側から所定の形状を有する芯金である第2芯金が挿入されて素管の第2端部に当接する位置において固定されており、
第2工程が実行される期間における所定の時点において第2芯金が所定の速度にて第1方向への移動を開始する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法である。
【0070】
素管の第2端部に当接する位置において第2芯金を固定するための具体的な手段は特に限定されず、例えば、解除可能な機械的手段であってもよく、或いは第1芯金が素管を第1方向に押し込む力に抗する力にて第1方向とは反対向きに第2芯金を付勢してもよい。また、第2芯金の第1方向への移動を開始させる時点は、例えば、その時点における拡径過程の進行状況、素管の座屈強度及び素管に生じさせるべき圧縮の残留応力の大きさ等、種々の要件に応じて適宜定めることができる。但し、第1芯金の第1段差部が素管の第1端部に当接する時点である第1時点から第2芯金の第1方向への移動を開始させる時点までの期間が過度に長くなると、例えば加工荷重の増大及び/又は素管の意図しない変形等の問題に繋がる虞が高まるので注意が必要である。
【0071】
また、第2芯金を第1方向へと移動させる速度についても、例えば、その時点における拡径過程の進行状況、素管の座屈強度及び素管に生じさせるべき圧縮の残留応力の大きさ等、種々の要件に応じて適宜定めることができる。但し、第1芯金の第1方向への移動速度に対して第2芯金の第1方向への移動速度が過度に遅くなると、例えば加工荷重の増大及び/又は素管の意図しない変形等の問題に繋がる虞が高まるので注意が必要である。
【0072】
図9は、第2芯金501がダイス孔310の小内径部313側から挿入されて素管101の第2端部112(底部)に当接している点を除き、図6と同様である。図9においても、軸AXの図面に向かって右側の部分のみが描かれているが、軸AXの左側の部分についても同様である。また、図面を簡潔なものとするため、図1乃至図4において示した各部位に付された符号の一部のみが表示されている。しかしながら、図9に関する以下の説明においては、正確を期すため、図1乃至図4において示した符号を使用するので、必要に応じて図1乃至図4を参照されたい。
【0073】
図9に示した例においては、第2芯金501は第1時点までは素管101の第2端部112(底部)に当接する位置において固定されており(図9の(a)及び(b)を参照)、第1時点以降の所定のタイミングにて所定の速度にて第1方向への移動を開始する(図9の(c)以降及び白塗りの矢印を参照)ように構成されている。
【0074】
第2方法の変形例2-1によれば、例えば、素管の形状(径、長さ及び肉厚等)及び材料、円筒体のテーパ部となる部分の拡径率と円筒体の小径部となる部分の縮径率との大小関係、並びにダイス孔の内径減少部における内径の変化率(テーパ角)等、様々な要因に応じて、例えば加工荷重の増大及び/又は素管の意図しない変形等の問題を招かない好適なタイミングにて縮径過程を開始させることができる。また、第2芯金の第1方向への移動速度もまた、様々な要因に応じて適宜設定することができる。例えば、第2芯金の第1方向への移動速度を第1芯金による押し込みに伴う小径部の先端の移動速度よりも低く設定した場合、円筒体の軸方向における圧縮の残留応力を増大させたり小径部の増肉を促進したりすることができる。逆に、第2芯金の第1方向への移動速度を第1芯金による押し込みに伴う小径部の先端の移動速度よりも高く設定した場合、円筒体の軸方向における圧縮の残留応力を減少させたり小径部の増肉を抑制したりすることができる。このように、第2方法の変形例2-1によれば、円筒体のテーパ部と小径部とを更にバランス良く、より一層円滑に形成することができる。
【0075】
《第3実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第3実施形態に係るテーパ部を有する円筒体を成形する方法(以降、「第3方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0076】
前述したように、第1方法及び第2方法を始めとする本発明に係るテーパ部を有する円筒体の成形方法(本発明方法)においては、第2工程において実行される縮径過程における遅くとも第1時点以降において第1芯金によって素管を第1方向に押圧して素管の第2端部をダイス孔の小内径部に向かって押し込んで素管の第2端部側を縮径させる。即ち、素管を軸方向に押圧して圧縮しながら縮径させて円筒体の小径部を形成する。
【0077】
従って、円筒体の小径部の肉厚は円筒体の小径部に対応する素管の領域の肉厚よりも大きくなる(増肉する)。また、このような小径部の増肉に伴って、小径部の肉厚のバラツキも大きくなりがちである。
【0078】
そこで、第3方法は、上述した第2方法の何れかであって、以下に示す第3工程を更に含むことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法である。
第3工程:第2工程の後に、第1芯金を円筒体から抜き取り、円筒体の小径部の内径に対応する外径を有する円柱状の形状を有する芯金である第3芯金を円筒体のテーパ部側から挿入して第1方向に移動させることにより、円筒体の小径部の内面を扱く扱き過程を実行する。
【0079】
図10は、第3方法に含まれる各工程及び各過程の流れを示すフローチャートである。図10に例示するフローチャートは、第2工程(ステップS20)の後に第3工程(ステップS30)を含む点を除き、図5に例示した第1方法についてのフローチャートと同様である。尚、筒状部材の内面を扱く扱き過程(扱き加工)の詳細については当業者に周知であるので、ここでの説明は省略する。
【0080】
上記のように、第3方法においては、上述した第2方法の実施後(即ち、第2工程の実行後)に、円筒体の小径部の内面に対して扱き加工を行う扱き過程が実行される。従って、第3方法によれば、例えば小径部の内径及び/又は肉厚について高い寸法精度が要求される用途において使用することができる高い寸法精度を有する円筒体を提供することができる。
【0081】
《第4実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第4実施形態に係るテーパ部を有する円筒体を成形する方法(以降、「第4方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0082】
上述した第3方法においては、上述した第2方法の実施後(即ち、第2工程の実行後)に、円筒体の小径部の内面に対して扱き加工を行う扱き過程が実行される。これにより、例えば小径部の内径及び/又は肉厚について高い寸法精度が要求される用途において使用することができる高い寸法精度を有する円筒体を提供することができる。
【0083】
しかしながら、第2工程の後に第1芯金を円筒体から抜き取り第3芯金を円筒体に挿入して円筒体の小径部の内面を扱く第3工程を実行することは、円筒体の生産効率の低下及び製造コストの増大に繋がる虞がある。また、第1芯金の先端に扱き過程を実行するための部分を設けたとしても、小径部の径がテーパ部の径よりも小さい。このため、当該部分の進行速度よりも小径部を構成する材料の流れの方が速くなるため、小径部を構成する材料の方が当該部分よりも先行して小径部の肉厚が増大すること(増肉)が懸念される。
【0084】
そこで、第4方法においては、第1芯金が、円筒体の小径部の内径に対応する外径を有する円柱状の部分である中心部材と、中心部材の周囲に中心部材と同軸状に設けられた部分である周縁部材と、に分割されている。更に、中心部材は、周縁部材に対して、第1方向に摺動可能に構成されている。
【0085】
図11は、第4方法において使用される第1芯金の構成の一例を示す模式的な断面図である。図11に例示する第1芯金402は、円筒体の小径部の内径に対応する外径を有する円柱状の部分である中心部材402aと、中心部材の周囲に中心部材と同軸状に設けられた部分である周縁部材402bと、に分割されている。更に、中心部材402aは、周縁部材402bに対して、第1方向に摺動可能に構成されている(白抜きの両矢印を参照)。
【0086】
加えて、第4方法は、上述した第2方法の何れかであって、第2工程において、中心部材を周縁部材よりも高い速度にて第1方向に移動させて素管の底部の内面を押圧することにより、少なくとも縮径過程の一部と並行して、円筒体の小径部の内面を扱く扱き過程を実行することを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法である。
【0087】
図12は、第4方法に含まれる各工程及び各過程の流れを示すフローチャートである。上述した第3方法においては第2工程(ステップS20)の後に第1芯金を第3芯金に換装して扱き過程を実行する別個の工程として第3工程(ステップS30)が実行される。これに対し、第4方法においては第2工程(ステップS20)において扱き過程(ステップS24)が実行される。この点を除き、図12に例示する第4方法についてのフローチャートは、図5に例示した第1方法についてのフローチャートと同様である。
【0088】
図12に例示するように、第4方法において実行される第2工程(ステップS20)においては、拡径過程(ステップS21)、縮径過程(ステップS22)及び完了過程(ステップS23)に加えて、扱き過程(ステップS24)もまた実行される。このように、第4方法においては押し込みによる絞り加工(縮径過程)と小径部の内側の形状及び肉厚を整える扱き加工(扱き過程)とを1つの工程の中で並行して実行することができるので、扱き加工の実行に伴う円筒体の生産効率の低下及び製造コストの増大を低減することができる。
【0089】
図13は、第4方法において実行される第2工程の進行に伴う第1芯金402を構成する中心部材402a及び周縁部材402bの位置及び第1素管101の形状の変化を例示する模式的な断面図である。図13においても、軸AXの図面に向かって右側の部分のみが描かれているが、軸AXの左側の部分についても同様である。また、図面を簡潔なものとするため、図1乃至図4及び図11において示した各部位に付された符号の一部のみが表示されている。しかしながら、図13に関する以下の説明においては、正確を期すため、図1乃至図4及び図11において示した符号を使用するので、必要に応じて図1乃至図4及び図11を参照されたい。
【0090】
図13の(a)に示す状態から図13の(b)に示す状態へと第2工程が進行するにつれて、第1芯金402の周縁部材402bが第1方向へと移動する(黒塗りの矢印を参照)。その結果、素管101の第1端部111側が拡径されて円筒体201のテーパ部220が成形される。同時に、第1芯金402の第1段差部413により素管101の第1端部111が第1方向に押圧され、素管101の第2端部112がダイス孔310の小内径部313へと押し込まれ、素管101の第2端部112側が縮径されて円筒体201の小径部230が成形される。これに並行して、第1芯金402の中心部材402aは周縁部材402bよりも速く(大きく)第1方向へと移動する(白抜きの矢印を参照)。その結果、素管101の第2端部112側が縮径されてなる円筒体201の小径部230の内周面が中心部材402aによって扱かれ、小径部230の内径及び/又は肉厚について高い寸法精度が達成される。同時に、小径部230の先端の底部の内面を中心部材402aが第1方向に押圧する。その結果、軸方向における引っ張り応力が小径部230に作用するので、第1段差部413による第1端部111の押圧に起因する圧縮応力が低減される。従って、例えば、肉厚が小さい素管であっても小径部の座屈を低減したり、小径部における増肉及び圧縮の残留応力を低減したりすることができる。
【0091】
尚、上記のように中心部材402aと周縁部材402bとを異なる速度にて第1方向に移動させるためには、中心部材402a及び周縁部材402bの移動を個別に制御することが可能な駆動機構が必要である。このような駆動機構の具体例としては、例えば複動プレス等の駆動装置を挙げることができる。
【0092】
《第5実施形態及び第6実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第5実施形態及び第6実施形態に係るテーパ部を有する円筒体を成形する方法(以降、それぞれ「第5方法」及び「第6方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0093】
前述したように、例えばノズル又はタンクライナー等の無底の部材を図2に例示した円筒体201のような有底の円筒体から成形する場合においては、例えば底部を切除したり切削により底部に孔を穿ったりする必要がある。このような別個の工程により二次加工を行うことは、円筒体を中間素材として成形される製品の生産効率の低下及び製造コストの増大等の問題に繋がる虞がある。斯かる問題を低減する観点からは、本発明方法を実施する装置が備えるダイスに円筒体がセットされた状態のままで円筒体の底部を開口させることが望ましい。
【0094】
そこで、第5方法は、上述した第3方法又は第4方法であって、
第3芯金又は中心部材の先端には、抜き加工用の突起が形成されており、
扱き過程の実行後に、第3芯金又は中心部材を第1方向に更に移動させることにより、円筒体の小径部の先端にある底部を突起によって打ち抜く抜き過程を実行する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法である。
【0095】
また、第6方法は、上述した第3方法又は第4方法であって、
ダイス孔の小内径部側の端部から第1方向とは反対の向きである第2方向に移動するように構成された抜き加工用の芯金である第4芯金が設けられており、
扱き過程の実行後に、所定の部材又は周縁部材によって第2方向に円筒体が移動しないように固定し且つ第3芯金又は中心部材を第2方向に移動させてから、第4芯金を第2方向に移動させることにより、円筒体の小径部の先端にある底部を第4芯金によって打ち抜く抜き過程を実行する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法である。
【0096】
以上のように、第5方法及び第6方法の何れにおいても、第3方法に含まれる第3工程において実行される扱き過程又は第4方法に含まれる第2工程において実行される扱き過程の実行後に、円筒体がダイスにセットされた状態のまま当該円筒体の底部を開口させる抜き過程が実行される。第5方法と第6方法とは、抜き過程を実行するための機構が異なる点を除き、同様の構成を有する。
【0097】
図14は、第3方法に含まれる第3工程において実行される扱き過程の実行後に抜き過程を実行する第5方法及び第6方法に含まれる各工程及び各過程の流れを示すフローチャートである。上述した第3方法においては第2工程(ステップS20)の後に第1芯金を第3芯金に換装して扱き過程を実行する第3工程(ステップS30)が実行される。これに対し、図14に例示する第5方法及び第6方法においては、第3工程(ステップS30)において扱き過程(ステップS31)の後に連続的に抜き過程(ステップS32)が実行される。この点を除き、図14に例示する第5方法及び第6方法についてのフローチャートは、図10に例示した第3方法についてのフローチャートと同様である。
【0098】
一方、図15は、第4方法に含まれる第2工程において実行される扱き過程の実行後に抜き過程を実行する第5方法及び第6方法に含まれる各工程及び各過程の流れを示すフローチャートである。上述した第4方法においては、第2工程(ステップS20)の実行により、拡径過程(ステップS21)、縮径過程(ステップS22)、完了過程(ステップS23)及び扱き工程(ステップS24)が実行される。これに対し、図15に例示する第5方法及び第6方法においては、第2工程(ステップS20)の実行により、拡径過程(ステップS21)、縮径過程(ステップS22)、完了過程(ステップS23)及び扱き工程(ステップS24)の後に連続的に抜き過程(ステップS25)が実行される。この点を除き、図15に例示する第5方法及び第6方法についてのフローチャートは、図12に例示した第4方法についてのフローチャートと同様である。
【0099】
上述したように、第5方法と第6方法とは、抜き過程を実行するための機構が異なる。図16は、第5方法において実行される抜き過程(ステップS32又はステップS25)の一例を示す模式的な断面図である。図面に向かって軸AXよりも左側の(a)には扱き過程(ステップS31又はステップS24)の完了時点における状況が、図面に向かって軸AXよりも右側の(b)には抜き過程(ステップS32又はステップS25)の実行時の状況が、それぞれ描かれている。
【0100】
図16の(a)に例示するように、扱き過程(ステップS31又はステップS24)の完了時点においては、第3芯金601又は中心部材402aの先端に形成された抜き加工用の突起601aが円筒体201の底部の内面に当接しているものの、底部は未だ開口していない。次に、第3芯金601又は中心部材402aを第1方向に更に移動させる(白抜きの矢印を参照)。これにより、図16の(b)に例示するように、円筒体201の底部が突起601aによって打ち抜かれる。
【0101】
一方、図17は、第6方法において実行される抜き過程(ステップS32又はステップS25)の一例を示す模式的な断面図である。図面に向かって軸AXよりも左側の(a)には扱き過程(ステップS31又はステップS24)の完了時点における状況が、図面に向かって軸AXよりも右側の(b)には抜き過程(ステップS32又はステップS25)の実行時の状況が、それぞれ描かれている。
【0102】
図17の(a)に例示するように、扱き過程(ステップS31又はステップS24)の完了時点においては、第3芯金601又は中心部材402aの先端が円筒体201の底部の内面に当接しているものの、底部は未だ開口していない。次に、所定の固定部材701又は周縁部材402bによって第2方向に円筒体201が移動しないように固定し且つ第3芯金601又は中心部材402aを第1方向とは反対の向き(第2方向)に移動(退避)させる。そして、抜き加工用の芯金である第4芯金801を第2方向に移動させる(黒塗りの矢印を参照)ことにより、図17の(b)に例示するように、円筒体201の底部が第4芯金801によって打ち抜かれる。
【0103】
以上のように、第5方法及び第6方法においては、第3工程又は第2工程において実行される扱き過程に付された円筒体がダイスにセットされた状態のままで当該円筒体の底部を開口させることができる。即ち、第5方法及び第6方法においては、別個の工程により二次加工を行うこと無く、円筒体がダイスにセットされた状態のままで円筒体の底部を開口させることができる。従って、第5方法及び第6方法によれば、例えばノズル又はタンクライナー等の無底の部材を有底の円筒体から成形する場合においても、生産効率の低下及び製造コストの増大等の問題を低減することができる。
【0104】
《第7実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第7実施形態に係るテーパ部を有する円筒体を成形する方法(以降、「第7方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0105】
第7方法は、上述した第1方法の何れかであって、
素管が、第2端部が開口している無底の円筒状の部材である、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法である。
【0106】
上記のように第2端部が開口している無底の素管の具体例としては、例えば図1の(b)に例示した素管102を挙げることができる。このような無底の素管を使用することにより、例えばノズル又はタンクライナー等の無底の部材を容易に成形することができる。
【0107】
〈変形例7-1〉
ところで、上記のように第2端部が開口している無底の素管を使用して本発明に係るテーパ部を有する円筒体の成形方法(本発明方法)を実施する場合、素管の第2端部が閉じている有底の素管を使用する場合と比べると、縮径過程において素管の第2端部側において意図しない変形が生ずる場合がある。
【0108】
そこで、第7方法の変形例7-1は、
第2工程が開始される前に、円筒体の小径部の内径に対応する外径以下の大きさの外径である第1外径を有する円柱状の形状を有する芯金である第5芯金がダイス孔の小内径部側から挿入されており、
第2工程において実行される縮径過程において、縮径された素管の第2端部側の開口部が第5芯金に外嵌する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法である。
【0109】
図18は、第7方法の変形例7-1において第2工程が開始される直前の状態を示す模式的な断面図である。尚、図18に限らず、本明細書に添付される図面はあくまでも例示を目的とする模式的な図面であり、これらの図面に描かれた部材その他の寸法及び縦横比並びに相互の位置関係については必ずしも正確ではない。
【0110】
図18に例示するように、第7方法の変形例7-1においては、第2工程が開始される前に、円筒体202の小径部230の内径に対応する外径以下の大きさの外径である第1外径DO1を有する円柱状の形状を有する芯金である第5芯金901がダイス孔310の小内径部313側から挿入される。斯くして、第2工程において実行される縮径過程において、縮径された素管102の第2端部112側の開口部が小内径部313の内周面と第5芯金901の外周面との間の空隙に進入して第5芯金901に外嵌する。
【0111】
上記により、縮径過程において素管102の第2端部112側の開口部の形状が、小内径部313の内周面と第5芯金901の外周面との間の空隙によって規制される。その結果、上述したように縮径過程において素管102の第2端部112側において意図しない変形が生ずる可能性を低減することができる。
【0112】
〈変形例7-2〉
ところで、前述したように、好ましくは、拡径過程の開始以降に縮径過程が開始される。より好ましくは、第1芯金の第1段差部が素管の第1端部に当接する時点(第1時点)以降に縮径過程が開始される。これにより、テーパ部と小径部とをバランス良く、より円滑に形成することができる。
【0113】
拡径過程の開始以降に縮径過程が開始されるようにするための具体的な方策の一例としては、前述したように、拡径率よりも縮径率の方が大きくなるように、素管、ダイス孔及び第1芯金を構成することを挙げることができる。また、第2端部が閉じている有底の円筒状の部材を素管として使用する第2方法においては、所謂「カウンターパンチ」をダイス孔の小内径部側から挿入して素管の第2端部(底部)に当接させておき、縮径過程を開始させるべき時点以降は素管の第2端部の第1方向への移動に応じてカウンターパンチもまた第1方向へ移動させることにより、拡径過程の開始以降の所期のタイミングにて縮径過程を開始させることができる。
【0114】
一方、第7方法のように第2端部が開口している無底の素管を使用する場合においても、上述した第5芯金の構成を工夫することにより、第2端部が閉じている有底の円筒状の部材を素管として使用する第2方法のように、拡径過程の開始以降の所期のタイミングにて縮径過程を開始させることができる。
【0115】
即ち、第7方法の変形例7-2は、
上述した第7方法の変形例7-1であって、
第5芯金の外周面の所定の位置には、径方向における外側に広がるように形成された環状の段差であって第1外径よりも大きく且つ円筒体の小径部の外径以下である外径を有する部分である第2段差部が形成されており、
第5芯金の第2段差部は、ダイス孔の小内径部の第1方向における上流側の端部又は当該端部よりも下流側にある所定の位置に対向する位置に形成されており、
第2工程において、素管の第2端部が第5芯金の第2段差部に当接する時点である第2時点以降における所定の時点において第5芯金が所定の速度にて第1方向への移動を開始する、
ことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法である。
【0116】
図19は、第7方法の変形例7-2において第2工程が開始される直前の状態を示す模式的な断面図である。図19に例示するように、第7方法の変形例7-2においては、第5芯金901の外周面の所定の位置には、径方向における外側に広がるように形成された環状の段差であって第1外径DO1よりも大きく且つ円筒体202の小径部230の外径以下である外径を有する部分である第2段差部901aが形成されている。第5芯金901の第2段差部901aは、ダイス孔310の小内径部313の第1方向における上流側の端部又は当該端部よりも下流側にある所定の位置に対向する位置に形成されている。
【0117】
第2工程において、素管102の第2端部112が第5芯金901の第2段差部901aに当接する時点(第2時点)以降における所定の時点において、所定の速度にて第5芯金901の第1方向への移動を開始させる。第5芯金901の第1方向への移動を開始させる時点は、例えば、その時点における縮径過程の進行状況、素管の座屈強度及び素管に生じさせるべき圧縮の残留応力の大きさ等、種々の要件に応じて適宜定めることができる。但し、第2時点から第5芯金901の第1方向への移動を開始させる時点までの期間が過度に長くなると、例えば加工荷重の増大及び/又は素管の意図しない変形等の問題に繋がる虞が高まるので注意が必要である。
【0118】
また、第5芯金901を第1方向へと移動させる速度についても、例えば、その時点における縮径過程の進行状況、素管の座屈強度及び素管に生じさせるべき圧縮の残留応力の大きさ等、種々の要件に応じて適宜定めることができる。但し、縮径された素管102の第2端部112の第1方向への移動速度に対して第5芯金901の第1方向への移動速度が過度に遅くなると、例えば加工荷重の増大及び/又は素管の意図しない変形等の問題に繋がる虞が高まるので注意が必要である。
【0119】
第7方法の変形例7-2によれば、例えば、素管の形状(径、長さ及び肉厚等)及び材料、円筒体のテーパ部となる部分の拡径率と円筒体の小径部となる部分の縮径率との大小関係、並びにダイス孔の内径減少部における内径の変化率(テーパ角)等、様々な要因に応じて、例えば加工荷重の増大及び/又は素管の意図しない変形等の問題を招かない好適なタイミングにて縮径過程を進行させることができる。また、第5芯金901の第1方向への移動速度もまた、様々な要因に応じて適宜設定することができる。例えば、第5芯金901の第1方向への移動速度を第1芯金401による押し込みに伴う円筒体202の小径部230の先端の移動速度よりも低く設定した場合、円筒体202の軸方向における圧縮の残留応力を増大させたり小径部230の増肉を促進したりすることができる。逆に、第5芯金901の第1方向への移動速度を第1芯金による押し込みに伴う小径部230の先端の移動速度よりも高く設定した場合、円筒体202の軸方向における圧縮の残留応力を減少させたり小径部230の増肉を抑制したりすることができる。このように、第7方法の変形例7-2によれば、円筒体202のテーパ部220と小径部230とを更にバランス良く、より一層円滑に形成することができる。
【0120】
《第8実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第8実施形態に係るテーパ部を有する円筒体を成形する方法(以降、「第8方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0121】
第2端部が閉じている有底の素管を使用する第3方法に関する説明において述べたように、本発明方法においては素管を軸方向に押圧して圧縮しながら縮径させて円筒体の小径部を形成するので、円筒体の小径部の肉厚は円筒体の小径部に対応する素管の領域の肉厚よりも大きくなる(増肉する)。また、このような小径部の増肉に伴って、小径部の肉厚のバラツキも大きくなりがちである。この点については、第2端部が開口している無底の素管を使用する第7方法においても同様である。
【0122】
そこで、第8方法は、上述した第7方法の何れかであって、以下に示す第3工程を更に含むことを特徴とする、テーパ部を有する円筒体の成形方法である。
第3工程:第2工程の後に、第1芯金を円筒体から抜き取り、円筒体の小径部の内径に対応する外径を有する円柱状の形状を有する芯金である第3芯金を円筒体のテーパ部側から挿入して第1方向に移動させることにより、円筒体の小径部の内面を扱く扱き過程を実行する。
【0123】
第8方法に含まれる各工程及び各過程の流れについては、図10を参照しながら説明した第3方法と同様であるので、ここでも説明は省略する。また、筒状部材の内面を扱く扱き過程(扱き加工)の詳細については当業者に周知であるので、ここでの説明は省略する。
【0124】
上記のように、第8方法においては、上述した第7方法の実施後(即ち、第2工程の実行後)に、円筒体の小径部の内面に対して扱き加工を行う扱き過程が実行される。従って、第8方法によれば、例えば小径部の内径及び/又は肉厚について高い寸法精度が要求される用途において使用することができる高い寸法精度を有する円筒体を提供することができる。
【0125】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0126】
101,101a,102…素管
111…第1端部
112…第2端部
201,201a,202…テーパ部を有する円筒体
211…開口している一方の端部
212…他方の端部
220…テーパ部
230…小径部
301…ダイス
310…ダイス孔
311…大内径部
312…内径減少部
313…小内径部
401,402…第1芯金
402a…中心部材
402b…周縁部材
411…小径コア部
412…外径増大部
413…第1段差部
501…第2芯金
601…第3芯金
601a…抜き加工用の突起
701…固定部材
801…第4芯金
901…第5芯金
901a…第2段差部
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