(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】機械加工工具の使用
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/16 20060101AFI20240920BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20240920BHJP
B23B 49/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B23Q3/16
B23C9/00 A
B23B49/00 A
(21)【出願番号】P 2023521745
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(86)【国際出願番号】 DE2021100870
(87)【国際公開番号】W WO2022100785
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】102020129631.2
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021128438.4
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート サンダーズ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン コンラート
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017118738(DE,A1)
【文献】特開平08-229722(JP,A)
【文献】実開平01-114245(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第102513580(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0266251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/04、16
B23B 49/00
B23C 5/20
B23C 9/00
B21D 53/12
B27B 5/26
F16C 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受けケージの形態の被加工物(9)上の転動要素を受容するためのポケット(8)
を機械加工するための機械加工工具(10)の使用であって、前記機械加工工具(10)が、被加工物支持体(12)と、主軸(11)と、を備えるように構成され、機械加工
ツール(13)及びクランプ手段(1)が、前記主軸(11)に固定され、前記クランプ手段(1)が、前記クランプ手段(1)を前記機械加工工具(10)の前記主軸(11)に固定するための受容構造(2)と、被加工物(9)を被加工物支持体(12)に対して押し付けるための圧力プレート(3)と、を備えるように構成され、前記受容構造(2)及び前記圧力プレート(3)が、少なくとも1つの圧力シリンダ(4)を介して接続され、前記被加工物(9)に対する前記圧力プレート(3)の接触圧力を、前記少なくとも1つの圧力シリンダ(4)によっ
て調整することができ、かつ
前記被加工物(9)を機械加工する際に、前記被加工物(9)が前記圧力プレート(3)によって前記被加工物支持体(12)に押し付けら
れ、前記圧力プレート(3)における通路開口部を通して前記機械加工
ツール(13)
が前記被加工物(9)に向かって案
内される、使用。
【請求項2】
前記圧力プレート(3)が、環状であり、かつ前記
主軸(11)に固定された機械加工
ツール(13)のための通路開口部を形成する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記機械加工
ツール(13)が、ドリル加工装置によって形成される、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記機械加工
ツール(13)が、フライス加工装置によって形成される、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項5】
転がり軸受けケージの形態の被加工物(9)上に転動要素を受容するための少なくとも1つのポケット(8)
を機械加工するための前記機械加工工具(10)の使用が、
前記機械加工工具(10)を提供する工程と、
前記転がり軸受けケージの位置を前記被加工物支持体(12)上に固定する工程と、
前記圧力プレート(3)を使用して前記転がり軸受けケージを前記被加工物支持体(12)に押し付ける工程と、
前記機械加工
ツール(13)を使用して第1のポケット(8)を形成する工程と、
前記転がり軸受けケージから前記圧力プレート(3)を取り外す工程と、を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
少なくとも1つのポケット(8)が、ドリル加工又はフライス加工される、請求項
5に記載の使用。
【請求項7】
前記転がり軸受けケージが、銅又は銅系の合金から形成される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
少なくとも1つの潤滑剤供給装置が、前記クランプ手段(1)に設けられている、請求項1~
7のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工工具の使用に関し、機械加工工具は、被加工物支持体と主軸とを備えるように構成され、機械加工工具及びクランプ手段は、主軸に固定され、クランプ手段は、クランプ手段を機械加工工具の主軸に固定するための受容構造を備えるように構成され、かつ圧力プレートは、被加工物支持体に被加工物を押し付けるように構成されている。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受けケージ9を形成するためのポケット8の製造には、硬質金属ドリルの形態の機械加工工具がよく使用されている(
図1を参照)。上記の硬質金属ドリルは、適切な切削速度及び前進運動で軸方向において、得られるケージポケット8内の材料を機械加工する。得られるケージ9を加工中に所定の位置に保つ必要がある。これまで、ケージ9の所定の位置は、被加工物上にクランプカバー5を置き、手動で締めることによって固定されていた(
図1を参照)。このクランプカバー5には開口部6が設けられており、機械加工工具が被加工物まで通過できるようになっていた。
【0003】
クランプカバー5及び開口部6の構成は、ボアのピッチ円及びポケット8の直径に一致させる必要がある。様々なケージの寸法の約95%は同一ではないため、多数のクランプカバー5を構造的に構成及び製造する必要があった。これは、構成、製造、及び保管コストの点でコストがかかる。
【0004】
工具の刃先を最適に冷却することもほとんど不可能である。切りくずが堆積し、かつ切りくずがポケットボアに引き込まれる危険性がある。各クランプカバーは、適切なトルクで、手動で挟持する必要がある。加工対象の被加工物ごとにカバーの着脱に相当な時間を要する。
【0005】
DE102017118738A1は、被加工物に機械的又は油圧的保持力を加えるドリル治具を備えた、フライス工具を使用して櫛形のケージを製造する方法を開示している。
【0006】
DE102006004932A1は、機械加工工具用の押さえ装置を開示している。
【0007】
AT509502B1は、繊維とマトリックス材料との複合材料を有する被加工物を機械加工するための装置を開示している。工具、特にドリル工具又はフライス工具は、固定子又は軸に回転可能に取り付けられている。更に、被加工物の表面に押し付けられ、かつ機械加工点に隣接する領域での被加工物のほつれ又は損傷を防止することを意図した押さえ要素が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、転がり軸受けケージのポケットの製造を簡素化し、加速することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の使用によって達成される。
【0010】
本発明によれば、転がり軸受けケージの形態の被加工物上の転動要素を受容するためのポケットを導入及び/又は機械加工するための機械加工工具の使用が提供され、機械加工工具は、被加工物支持体と主軸とを備えるように構成され、機械加工工具及びクランプ手段が主軸に固定されている。クランプ手段は、クランプ手段を機械加工工具の主軸に固定するための受容構造と、被加工物支持体に被加工物を押し付けるための圧力プレートと、を含み、受容構造と圧力プレートとは、少なくとも1つの圧力シリンダを介して接続されている。被加工物に対する圧力プレートの接触圧力を、少なくとも1つの圧力シリンダによって規定の方法で調整することができる。機械加工工具は、機械加工工具が、圧力プレートによって被加工物支持体に押し付けられた被加工物を機械加工する際に、圧力プレートの通路開口部を通って案内され得るようなやり方で配置される。
【0011】
機械加工工具及びクランプ手段は、好ましくは、標準的なインターフェース、例えば、急テーパインターフェースタイプ、ハイシャンクテーパインターフェースタイプ、又はカプト(Capto)タイプの標準インターフェースを介して主軸に固定される。
【0012】
転がり軸受けケージは、特に、銅又は銅系の合金から形成される。このような転がり軸受けケージは、機械加工中、特に転動要素を受容するためのポケットの製造中に、反り及びねじれを起こしやすい。
【0013】
圧力プレートは、特に環状であり、かつ軸に固定された機械加工工具のための通路開口部を形成する。
【0014】
特に、機械加工工具は、機械加工工具が、圧力プレートによって被加工物支持体に押し付けられた被加工物の機械加工中に、圧力プレートの通路開口部を通って中央に案内され得るようなやり方で配置される。
【0015】
機械加工工具は、好ましくは、ドリル装置又はフライス装置によって形成される。
【0016】
この使用は、好ましくは、転がり軸受けケージの形態の被加工物上に転動要素を受容するための少なくとも1つのポケットを製造するための方法を含み、方法は、
機械加工工具を提供する工程と、
転がり軸受けケージの位置を被加工物支持体上に固定する工程と、
圧力プレートを使用して転がり軸受けケージを被加工物支持体に押し付ける工程と、
機械加工工具を使用して第1のポケットを形成する工程と、
転がり軸受けケージから圧力プレートを取り外す工程と、を含む。
【0017】
少なくとも1つのポケットは、ドリル加工又はフライス加工されることが好ましい。
【0018】
従来技術と比較して、クランプ手段の圧力プレートがクランプカバーに取って代わり、少なくとも1つの圧力シリンダ、好ましくは2つ又は3つの圧力シリンダがポケットの側壁を適所に保持する。これらの圧力シリンダは、ストロークの動きでポケットの側壁を解放及び挟持する。特に、圧力シリンダは、油圧シリンダである。特に、圧力シリンダのばね力を、バルブを介して調整することができる。
【0019】
接触圧力又はクランプ圧力を、ターゲットを絞った定義された方法で調整できるため、機械加工工程全体で一定に保つことができる。
【0020】
更に、主軸の移動軸に追従するクランプ手段は、転がり軸受け構成要素に対して垂直に押すだけでなく、垂直に対してある角度で押すこともできるように配置することができる。したがって、転がり軸受けケージが、被加工物支持体とは反対側に対向する上側に傾斜面を有する場合は、圧力プレートをその上に置いて押し付けることができる。
【0021】
本発明による使用は、以前に使用されたクランプカバーの構成、製造及び保管コストに関するコスト削減を伴う。
【0022】
機械加工するすべてのケージタイプに対して1つのクランプ手段を使用することができる。
【0023】
また、精密な挟持が可能である。クランプ手段はまた、機械加工工具の工具刃先の最適な冷却を可能にする。潤滑剤を簡単な方法で機械加工工具に供給することができる。
【0024】
この目的のために、少なくとも1つの潤滑剤供給装置がクランプ手段に設けられることが好ましい。
【0025】
切りくずの蓄積が確実に回避される。最後に、クランプ手段を使用すると、ケージポケットの機械加工中のセットアップ時間が大幅に短縮される。クランプ手段を使用することにより、機械加工中の転がり軸受けケージのゆがみが防止され、機械加工の精度が向上し、ひいては、最終的な部品の幾何学形状の精度も向上する。
【0026】
図1~3は、例として本発明を説明することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】従来技術による従来の製造方法によるクランプカバーを示す。
【
図3】機械加工工具内のクランププレートとともにクランプ手段を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本明細書の冒頭で既により詳細に説明されており、開口部6を有するクランプカバー5を使用する従来技術による従来の製造方法を示しており、クランプカバー5は、ポケット8を有する転がり軸受けケージの形態の被加工物9を被加工物支持体12に対して挟持する。ポケット8を形成するために、ここには図示されていないドリルの形態の機械加工工具が、クランプカバー5の開口部6を通って案内される。
【0029】
図2は、機械加工工具10のクランプ手段1を示している。クランプ手段1は、機械加工工具10の軸11、ここでは主軸にクランプ手段1を固定するための受容構造2を備える。クランプ手段1はまた、機械加工工具10の被加工物支持体12上に傾斜ケージの形態で被加工物9を押し付けるための圧力プレート3を備える。傾斜ケージは、断面図及び半断面図で示されている。傾斜ケージの位置は、固定クランプによってその内径の領域で被加工物支持体12上に固定される。受容構造2及び圧力プレート3は、この場合、2つの圧力シリンダ4を介して接続されている。圧力シリンダ4によって、被加工物9に対する、この場合は傾斜ケージに対する圧力プレート3の接触圧力を規定の方法で調整することができる。機械加工工具10は、ドリル工具の形態の機械加工工具13を備える。これは、圧力プレート3を突き抜け、かつ被加工物9にポケット8を形成する。ここでは、軸11は、傾斜ケージ内にポケット8を形成するために、被加工物支持体12に対して45°の角度で配向されている。しかしながら、軸11は、機械加工されるケージのタイプに応じて、被加工物支持体12に対して異なる角度で配向することもできる。
図1に示すように、直線ケージの機械加工は、軸11を被加工物支持体12に対して90°の角度に配向させることによって実施される。
【0030】
図3は、機械加工工具10内のクランププレート7とともにクランプ手段1を示している。
図2と同じ参照符号は、同一の要素を示している。ここに追加的に配置されたクランププレート7は、例えば被加工物支持体12上のクランププレート7の中央ねじ接続(ここでは図示せず)を介して、転がり軸受けケージの位置の中央固定を可能にするので、固定クランプ12aは、任意選択的に省略することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 クランプ手段
2 受容構造
3 圧力プレート
4 圧力シリンダ
5 クランプカバー
6 クランプカバーの開口部
7 クランププレート
8 ポケット
9 被加工物
10 機械加工工具
11 軸、主軸
12 被加工物支持体
12a 固定クランプ
13 機械加工工具