(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】リチウム金属電池用負極及びこれを含むリチウム金属電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20240920BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240920BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20240920BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/80 C
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2023530047
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 KR2022006226
(87)【国際公開番号】W WO2022235029
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0057409
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0053302
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミ・ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユンジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キヒュン・キム
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-059641(JP,A)
【文献】特開2017-162812(JP,A)
【文献】特表2021-502671(JP,A)
【文献】特開2017-098235(JP,A)
【文献】特開2020-047577(JP,A)
【文献】国際公開第2020/153405(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134
H01M 4/38
H01M 4/80
H01M 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材;
前記多孔性基材の表面に形成された炭素コーティング層;及び
前記炭素コーティング層の上に位置するリチウム金属層;を含み、
前記炭素コーティング層は、板状構造の炭素粒子を含
み、
前記多孔性基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロース、ナイロン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含む、リチウム金属電池用負極。
【請求項2】
前記多孔性基材は
、ポリエチレンテレフタレー
トを含む、請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項3】
前記多孔性基材の気孔度は40%ないし90%である、請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項4】
前記多孔性基材の厚さは0.5μmないし30μmである、請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項5】
前記炭素コーティング層は板状構造のグラフェンまたはグラフェン誘導体を含む、請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項6】
前記多孔性基材の単位面積当たりのコーティングされた炭素粒子の重量は、0.1g/m
2ないし5g/m
2である、請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項7】
前記多孔性基材の一面に炭素コーティング層が形成され、
前記多孔性基材と反対方向を向く炭素コーティング層の一面にリチウム金属層が積層された構造である、請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項8】
前記多孔性基材が中央に位置し、
前記多孔性基材の両面にそれぞれ炭素コーティング層が形成され、
前記多孔性基材と反対方向を向く炭素コーティング層の一面それぞれにリチウム金属層が積層された多層構造である、請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項9】
前記リチウム金属電池用負極の引張強度は1MPaないし300MPaである、請求項1に記載のリチウム金属電池用負極。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の負極を含むリチウム金属電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はリチウム金属電池用負極及びこれを含むリチウム金属電池に関する。
【0002】
本出願は、2021年5月3日付韓国特許出願第10-2021-0057409号及び2022年4月29日付韓国特許出願第10-2022-0053302号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込む。
【背景技術】
【0003】
エネルギー貯蔵技術への関心が高まるにつれ、携帯電話、タブレット(tablet)、ラップトップ(laptop)及びビデオカメラ、さらには電気自動車(EV)及びハイブリッド電気自動車(HEV)のエネルギーまで適用分野が拡大し、電気化学素子に対する研究及び開発が次第に増大している。電気化学素子はこのような側面から最も注目されている分野であり、中でも充電及び放電が可能なリチウム-硫黄電池などの二次電池、さらにはリチウム金属電池の開発は関心の焦点となっており、最近ではこれら電池を開発するにおいて容量密度と比エネルギーを向上させるために、新しい電極と電池の設計に対する研究開発へとつながっている。
【0004】
リチウム金属電池の負極に用いられるリチウムは、密度が低い点で電池のエネルギー密度の向上に長所を有しているが、相対的に機械的強度が低く、延性の大きい特性により容易に寸法変化を起こすという点で製造工程上の短所が指摘されてきた。また、このようなリチウムを支持するための集電体として通常銅箔が用いられたが、薄肉にもかかわらず、リチウムに比べて密度が約16.8倍高いという点から重量当たりのエネルギー密度の損失が大きいという問題点が提起されてきた。
【0005】
このような前記リチウム金属電池用負極の機械的強度及び負極製造工程上の問題点を補うために、様々な構造のリチウム金属電池用負極に対する研究が進められてきた。ただし、新しい基材を導入し、機械的強度を補完するとしても電池のエネルギー密度の損失を最小化することが難しく、電池駆動が安定的でない点から負極の構造を改善することに限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許公報第10-2014-0146071号(2014年12月24日)「強化した金属箔電極」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、リチウム金属電池用負極においてリチウム金属層のみならず、多孔性基材及び板状構造の炭素粒子を含む炭素コーティング層を含むことにより、リチウムの機械的物性を補完しながらも電池のエネルギー密度の損失を最小化するために軽量、かつ電池の駆動安定性及び製造工程性が高められるリチウム金属電池用負極及びこれを含むリチウム金属電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面によると、
多孔性基材;前記多孔性基材の表面に形成された炭素コーティング層;及び前記炭素コーティング層の上に位置するリチウム金属層;を含み、前記炭素コーティング層は板状構造の炭素粒子を含む、リチウム金属電池用負極を提供する。
【0009】
本発明の一具体例において、前記多孔性基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロース、ナイロン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むことができる。
【0010】
本発明の一具体例において、前記多孔性基材の気孔度は40%ないし90%であることができる。
【0011】
本発明の一具体例において、前記多孔性基材の厚さは0.5μmないし30μmであることができる。
【0012】
本発明の一具体例において、前記炭素コーティング層は板状構造のグラフェンまたはグラフェン誘導体を含むことができる。
【0013】
本発明の一具体例において、前記多孔性基材の単位面積当たりのコーティングされた炭素粒子の重量は、0.1g/m2ないし5g/m2であることができる。
【0014】
本発明の一具体例において、前記多孔性基材の一面に炭素コーティング層が形成され、前記多孔性基材と反対方向を向く炭素コーティング層の一面にリチウム金属層が積層された構造であることができる。
【0015】
本発明の一具体例において、前記多孔性基材が中央に位置し、前記多孔性基材の両面にそれぞれ炭素コーティング層が形成され、前記多孔性基材と反対方向を向く炭素コーティング層の一面それぞれにリチウム金属層が積層された多層構造であることができる。
【0016】
本発明の一具体例において、前記リチウム金属電池用負極の引張強度は1MPaないし300MPaであることができる。
【0017】
本発明の第2の態様によると、前記負極を含むリチウム金属電池が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるリチウム金属電池用負極は、リチウムの低い機械的物性を補完できる軽量の多孔性基材を構造上含んで電池の製造工程性を改善することができ、板状構造の炭素粒子を含む炭素コーティング層を含んでリチウムと支持体との親和性向上によるリチウムのプレーティング(plating)時の安定構造の形成により、リチウムの効率を向上させる効果を有する。
【0019】
また、本発明による負極を含むリチウム金属電池は、多孔性基材による負極の電解液保有量が増加することで電池の寿命特性が改善される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明によるリチウム金属電池用負極の一実施形態の構造を図式化したものである。
【
図2】本発明によるリチウム金属電池用負極の一実施形態の構造を図式化したものである。
【
図3】本発明の製造例2、4及び5により製造されたリチウム金属電池用負極を撮影した写真である。
【
図4】本発明の製造例4によるリチウム金属電池用負極の引張強度の測定結果を示すグラフである。
【
図5】本発明の製造例5によるリチウム金属電池用負極の引張強度の測定結果を示すグラフである。
【
図6】本発明の製造例2によるリチウム金属電池用負極のSEMイメージを示したものである。
【
図7】本発明の製造例5によるリチウム金属電池用負極のSEMイメージを示したものである。
【
図8】本発明の実施例3によるリチウム-リチウム対称セル形態のリチウム金属電池用負極を含む電池のサイクル寿命の評価結果を示したものである。
【
図9】本発明の比較例4によるリチウム-リチウム対称セル形態のリチウム金属電池用負極を含む電池のサイクル寿命評価の結果を示したものである。
【
図10】本発明の実施例1、2及び比較例1、2によるリチウム金属電池の放電容量評価の結果を示したものである。
【
図11】本発明の比較例1及び3によるリチウム金属電池の放電容量評価の結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によって提供される具体例は、下記の説明により全て達成することができる。下記の説明は本発明の好ましい具体例を記述するものとして理解されるべきであり、本発明が必ずしもこれに限定されるものではないことを理解すべきである。
【0022】
リチウム金属電池用負極
本発明によるリチウム金属電池用負極は、多孔性基材;前記多孔性基材の表面に形成された炭素コーティング層;及び前記炭素コーティング層上に位置するリチウム金属層;を含み、前記炭素コーティング層は板状構造の炭素粒子を含む。
【0023】
本明細書において、リチウム金属電池は負極でリチウム金属を用いる電池に定義することができる。
【0024】
本発明によるリチウム金属電池用負極は、多孔性基材を含む。
【0025】
前記多孔性基材は、リチウム化(Lithiation)を引き起こさない多孔性の高分子基材であってもよい。リチウムに対する支持体の役割を果たす多孔性基材がリチウム化を引き起こす場合、負極の引張強度(Tensile strength)及び延伸率(Elongation)が著しく低下するため、多孔性基材はリチウム化を引き起こさない基材を用いることが好ましい。
【0026】
例えば、前記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)などのポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)などのポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、 ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(poly(p-phenylene benzobisoxazole)、ポリアリレート(polyarylate)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含み、好ましくはポリエチレンテレフタレートであることができるが、これに特に制限されるものではない。ただし、リチウム化(Lithiation)を引き起こせる高分子であるポリイミド(polyimide)は、前記多孔性基材として用いるのに好ましくないこともある。
【0027】
前記多孔性基材の気孔度は40%以上、45%以上、50%以上であってもよく、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下であってもよい。前記気孔度は、多孔性基材における気孔の体積割合を意味し、前記空隙率は、例えば、BET(Brunauer-Emmett-Teller)測定法または水銀浸透法(Hg porosimeter)により測定することができるが、これに限定されるものではない。さらに他の例として、空隙率はサイズ、厚さ及び密度などの他のパラメータを用いて計算することができる。具体的に、素材の厚さ測定装備(TESA、u-hite)を通じて顆粒層の厚さを測定した後、素材の真密度測定装備(Microtrac、BELPycno)を通じて測定された顆粒層の真密度を用いて計算することができる。前記気孔度が40%未満の場合はリチウムの移動経路が制限され、充電及び放電時の抵抗が大幅に増加することができる。一方、前記気孔度が90%を超える場合には、負極の物性が向上しない点から組立工程性を改善し難い問題点がある。
【0028】
前記多孔性基材の厚さは、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上であってもよく、30μm以下、29μm以下、28μm以下、27μm以下、26μm以下、25μm以下、24μm以下、23μm以下、22μm以下、21μm以下、20μm以下であってもよい。前記厚さが0.5μm未満の場合は、多孔性基材の厚さが薄すぎるため、負極の支持体として引張強度などの機械的物性が低下することがある。一方、前記厚さが30μmを超える場合、リチウムの移動経路長が増加して充電及び放電時の抵抗が大きく増加することができ、重量及び体積当たりのエネルギー密度が低くなるという問題点がある。
【0029】
本発明によるリチウム金属電池用負極は、前記多孔性基材の表面に形成された炭素コーティング層を含み、前記炭素コーティング層は板状構造の炭素粒子を含む。
【0030】
前記多孔性基材の表面に形成された前記炭素コーティング層は、伝導性の炭素粒子を含むことができる。前記炭素コーティング層に含まれた伝導性を帯びた炭素粒子により、負極の支持体の役割を果たす多孔性基材とリチウム金属の間の親和性が向上することでリチウムのプレーティング(plating)時に安定的な構造形成が可能であり、リチウムの効率改善及びリチウム負極の製造工程性を向上させることができる。
【0031】
前記炭素コーティング層は板状構造の炭素粒子を含むことができ、例えば、炭素コーティング層は板状構造のグラフェンまたはグラフェン誘導体を含むことができる。前記炭素コーティング層は、好ましくはグラフェン、還元グラフェンオキシド(Reduced Graphene Oxide,RGO)、酸化グラフェン(Graphene Oxide,GO)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むことができ、より好ましくはグラフェンであることができる。前記板状構造の炭素粒子を炭素コーティング層に含む場合、多孔性基材の表面上に気孔が減少することもあり、正極との相対的な距離に影響されずにリチウムのプレーティングを制御できる効果を有することができる。
【0032】
前記多孔性基材の単位面積当たりコーティングされた炭素粒子の重量は、0.1g/m2以上、0.2g/m2以上、0.3g/m2以上、0.4g/m2以上、0.5g/m2以上、0.6g/m2以上であってもよく、5.0g/m2以下、4.5g/m2以下、4.0g/m2以下、3.5g/m2以下、3.0g/m2以下、2.5g/m2以下、2.0g/m2以下、1.5g/m2以下、1.4g/m2以下、1.3g/m2以下、1.2g/m2以下、1.1g/m2以下、1.0g/m2以下であってもよい。前記炭素粒子の重量が0.1g/m2未満の場合、炭素コーティング層が板状構造の炭素粒子を含むことによる電池放電容量などの性能改善効果が低下することがある。一方、前記炭素粒子の重量が5.0g/m2を超える場合、リチウムイオンの移動を防いでセル抵抗が増加することにより電池性能が低下することがあり、重量及び体積当たりのエネルギー密度また必要以上に低くなる問題点がある。
【0033】
本発明によるリチウム金属電池用負極は、リチウム金属層を含む。
【0034】
リチウム金属層とは、リチウム金属元素を含む金属層を意味する。前記リチウム金属層の材質は、リチウム合金、リチウム金属、リチウム合金の酸化物またはリチウム酸化物であることができる。非限定的な例として、負極はリチウム金属の薄膜であることができ、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al及びSnの群から選択される1種以上の金属との合金であることができる。このとき、前記リチウム金属層は、表面酸化膜または一部が酸素や水分によって変質したり、不純物を含むこともできる。
【0035】
前記リチウム金属層は、多孔性基材上に形成された炭素コーティング層の上に積層された後、圧延工程を経ることで多孔性基材及び炭素コーティング層構造と密着することができる。前記圧延により、リチウムの一部または全体が多孔性基材に浸透して多孔性基材の気孔内部に位置することができる。また、圧延時にリチウムがロール(roll)に当接する面には、リチウムとの密着特性のない離型フィルムを用いて圧延工程を施すことができる。さらに、支持体である多孔性基材とリチウム金属層との界面を安定化させるために、酸素と水分を遮断してパウチで封止した状態で数時間ないし数日を保管するエージング(Aging)処理過程を施すことができる。
【0036】
前記リチウム金属層の厚さは、0.1μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、3μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上、13μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、55μm以上であってもよく、100μm以下、95μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下であってもよい。前記厚さが0.1μm未満の場合、リチウムの効率不足により電池の性能を発揮し難く、前記厚さが100μmを超える場合、リチウム厚さ増加でエネルギー密度が減少する問題点が発生できる。
【0037】
前記リチウム金属電池用負極は、前記多孔性基材を準備した後、多孔性基材の表面上に板状構造の炭素粒子を含む分散液をコーティングした後、真空乾燥して炭素コーティング層を形成した後、その上にリチウム金属箔を積層させた後、圧延して製造することができる。前記コーティング方法は、好ましくはディップコーティング法(dip coating)であり得るが、これに特に制限されるものではない。また、前記圧延方法は特に制限されず、当業界において通常用いられる方法を用いることができる。
【0038】
図1を参照すると、前記リチウム金属電池用負極は、前記多孔性基材100の一面に炭素コーティング層200が形成され、前記多孔性基材100と反対方向を向く炭素コーティング層200の一面にリチウム金属層300が積層された構造であってもよい。前記炭素コーティング層の一面にリチウム金属層が積層された構造の負極の場合には、好ましくはモノセルやコインセルにおいて活用することができる。
【0039】
図2を参照すると、前記リチウム金属電池用負極は、前記多孔性基材100が中央に位置し、前記多孔性基材の両面にそれぞれ炭素コーティング層が形成され、前記多孔性基材と反対方向を向く炭素コーティング層の一面それぞれにリチウム金属層が積層された多層構造であることができる。前記多層構造の負極の場合には、積層(stacking)構造をなす様々な形態のセルにおいて活用することができる。
【0040】
前記リチウム金属電池用負極の引張強度は、1MPa以上、2MPa以上、3MPa以上、4MPa以上、5MPa以上、6MPa以上、7MPa以上、8MPa以上、9MPa以上、10MPa以上、11MPa以上、12MPa以上、13MPa以上、14MPa以上、15MPa以上、16MPa以上、17MPa以上、17.5MPa以上、18MPa以上であってもよく、300MPa以下、280MPa以下、260MPa以下、240MPa以下、220MPa以下、200MPa以下、180MPa以下、160MPa以下、140MPa以下、120MPa以下、100MPa以下、80MPa以下、60MPa以下、40MPa以下、35MPa以下、30MPa以下、29MPa以下、28MPa以下、27MPa以下、26MPa以下、25MPa以下、24MPa以下、23MPa以下、22MPa以下、21MPa以下、20MPa以下であってもよい。前記引張強度の範囲に該当する場合、多孔性基材の導入によりリチウム金属の機械的強度が補完され、支持体が強化されたリチウム複合負極を製造することができる。
【0041】
リチウム金属電池
本発明によるリチウム金属電池は前記負極を含む。
【0042】
具体的に、前記リチウム金属電池は正極;負極;分離膜;及び電解液;を含み、前記負極として本発明によるリチウム金属電池用負極を含む。
【0043】
前記負極は本明細書において前述とおりである。
【0044】
前記正極は、正極集電体と前記正極集電体の一面または両面に塗布された正極活物質層を含むことができる。
【0045】
前記正極集電体は正極活物質を支持し、当該電池に化学的変化を誘発せず高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタニウムン、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチール表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。
【0046】
前記正極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化することができ、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を用いることができる。
【0047】
前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー及び導電材を含むことができる。
【0048】
前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や、1またはそれ以上の遷移金属に置換された化合物;式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは0~0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiFe3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である)またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNixMn2-xO4で表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;式のLi一部がアルカリ土類金属イオンに置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0049】
前記正極活物質は硫黄を含むことができる。硫黄の場合、単独では電気伝導性がないため、炭素材のような伝導性素材と複合化して用いられる。前記正極活物質が硫黄を含む場合、硫黄は硫黄-炭素複合体の形態で含まれてもよい。前記硫黄-炭素複合体に含まれる炭素は、多孔質炭素材であって前記硫黄が均一、かつ安定的に固定される骨格を提供し、硫黄の低い電気伝導度を補完して電気化学反応が円滑に進行するようにする。
【0050】
前記多孔質炭素材は、一般に様々な炭素材質の前駆体を炭化させることにより製造することができる。前記多孔質炭素材は内部に一定でない気孔を含み、前記気孔の平均直径は1ないし200nmの範囲であり、気孔度または空隙率は多孔質炭素材料の全体積の10ないし90%の範囲であり得る。万一、前記気孔の平均直径が前記範囲未満の場合、気孔サイズが分子レベルに過ぎず硫黄の含浸が不可能であり、逆に前記範囲を超える場合、多孔質炭素材の機械的強度が弱化し、電極の製造工程に適用するに好ましくない。
【0051】
前記多孔質炭素材の形態は、球状、棒状、針状、板状、チューブ状、またはバルク状で通常用いられるものであれば制限なく使用できる。
【0052】
前記多孔質炭素材は、多孔質構造であるか、比表面積の高いものであって、当業界において通常用いられるものであればいずれでもよい。例えば、前記多孔質炭素材としてはグラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化カーボンファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であることができ、好ましくは炭素ナノチューブ(CNT)であることができるが、これに制限されない。
【0053】
前記導電材は、電解液と正極活物質とを電気的に連結させて集電体(current collector)から電子が正極活物質まで移動する経路の役割を果たす物質であって、導電性を有するものであれば制限なく用いることができる。
【0054】
例えば、前記導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;スーパーP(super-P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して用いることができる。
【0055】
前記バインダーは、正極活物質を正極集電体に維持し、正極活物質間を有機的に連結してこれらの間の結着力をより高めるものであって、当該業界において公知の全てのバインダーを用いることができる。
【0056】
例えば、前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride,PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene, PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(Styrene butadiene rubber,SBR)、アクリロニトリル-ブチジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(Carboxyl methyl cellulose,CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;及びシラン系バインダー;からなる群から選択された1種、2種以上の混合物または共重合体を用いることができる。
【0057】
前記正極の製造方法は本発明において特に限定せず、当業界において通常用いられる方法を用いることができる。一例として、前記正極は、正極スラリー組成物を製造した後、これを前記正極集電体の少なくとも一面に塗布することで製造されたものであることができる。
【0058】
前記正極スラリー組成物は、前述のところの正極活物質、導電材及びバインダーを含み、その他の溶媒をさらに含むことができる。
【0059】
前記溶媒としては、正極活物質、導電材及びバインダーを均一に分散することができるものを用いる。このような溶媒としては水系溶媒として水が最も好ましく、この際、水は蒸留水(distilled water)、脱イオン水(deionzied water)であることができる。ただし、必ずしもこれに限定されるものではなく、必要な場合、水と容易に混合できる低級アルコールを用いることができる。前記低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールなどがあり、好ましくはこれらは水と共に混合して用いることができる。
【0060】
前記電解液は、電池の電気化学反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割を果たす非水性溶媒であれば、特に限定されない。例えば、前記溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系または非プロトン性溶媒を用いることができる。前記カーボネート系溶媒としては、具体的に、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、またはブチレンカーボネート(BC)などを用いることができる。前記エステル系溶媒としては、具体的に、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(carprolactone)などが用いられる。前記エーテル系溶媒としては、具体的に、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグライム、トリグリム、テトラグリム、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、またはポリエチレングリコールジメチルエーテルなどが用いられる。前記ケトン系溶媒としては、具体的に、シクロヘキサノンなどを用いることができる。前記アルコール系溶媒としては、具体的に、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを用いることができる。前記非プロトン性溶媒としては、具体的に、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソラン(DOL)などのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)などを用いることができる。前記非水性有機溶媒は、単独で、または1つ以上混合して用いることができ、1つ以上混合して用いられる場合の混合割合は、所望の電池性能に応じて適宜調節することができる。
【0061】
前記電解液の仕込みは、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、リチウム金属電池の製造工程のうち、適切な段階で行うことができる。すなわち、リチウム金属電池の組み立て前、または組み立ての最終段階などで適用することができる。
【0062】
前記正極と負極の間には通常的な分離膜を介在させることができる。前記分離膜は、電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜であって、通常の分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れるものが好ましい。
【0063】
また、前記分離膜は、前記正極と負極とを互いに分離または絶縁させ、正極と負極との間にリチウムイオン輸送を可能にするものであって、多孔性、非導電性または絶縁性物質からなり得る。前記分離膜は、通常、リチウム金属電池において分離膜として用いられるものであれば、特に制限なく使用可能である。前記分離膜は、フィルムのような独立した部材であってもよく、正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0064】
前記分離膜は多孔性基材からなることができるが、前記多孔性基材は、通常リチウム金属電池に用いられる多孔性基材であればいずれも使用可能であり、多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して用いることができ、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布またはポリオレフィン系多孔性膜を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記多孔性基材の材質としては、本発明において特に限定せず、通常的にリチウム金属電池に用いられる多孔性基材であればいずれも使用可能である。例えば、前記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)などのポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)などのポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(poly(p-phenylene benzobisoxazole)及びポリアリレート(polyarylate)からなる群から選択された1種以上の材質を含むことができる。
【0066】
前記多孔性基材の厚さは特に制限されないが、1ないし100μm、好ましくは5ないし50μmであることができる。前記多孔性基材の厚さ範囲が前述の範囲に限定されるものではないが、厚さが前述の下限より薄すぎる場合には機械的物性が低下し、電池使用中に分離膜が容易に損傷され得る。
【0067】
前記多孔性基材に存在する気孔の平均直径及び気孔度また特に制限されないが、それぞれ0.1ないし50μm及び10ないし95%であり得る。
【0068】
本発明によるリチウム金属電池の形状は特に制限されず、円筒型、積層型、コイン型など様々な形状であることができる。
【0069】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0070】
実施例:リチウム金属電池の製造
リチウム金属電池用負極の製造:製造例1ないし7
[製造例1]
多孔性基材として気孔度50%及び厚さ14μmのポリエチレンテレフタレート(PET、Polyethyleneterephthalate)不織布(製造メーカー:FTENE(KOR))を準備した後、不織布の表面上にグラフェン(Graphene)分散液(製造メーカー:Cnano)をディップコーティング法(Dip coating)を通じてコーティングした後、真空乾燥して炭素コーティング層を形成した。この際、炭素コーティング層において前記不織布の単位面積当たりのコーティングされたグラフェン粒子の重量は0.3g/m2であった。
【0071】
前記不織布上に形成された炭素コーティング層の上に厚さ60μmのリチウム金属箔を積層した後、圧延し、リチウム金属電池用負極を製造した。
【0072】
[製造例2]
炭素コーティング層において、前記不織布の単位面積当たりのコーティングされたグラフェン粒子の重量が0.6g/m2であることを除いては、製造例1と同様の方法でリチウム金属電池用負極を製造した。
【0073】
[製造例3]
厚さ35μmのリチウム金属箔を用いたことを除いては、製造例1と同様の方法でリチウム金属電池用負極を製造した。
【0074】
[製造例4]
負極として厚さ60μmのリチウム金属箔を用いた。
【0075】
[製造例5]
多孔性基材として製造例1と同一の不織布を準備した後、炭素コーティング層を形成せず、製造例1と同一のリチウム金属箔を積層させた後、圧延し、リチウム金属電池用負極を製造した。
【0076】
[製造例6]
多孔性基材として気孔度71%及び厚さ8μmのポリイミド(PI、Polyimide)不織布(製造メーカー:Kolon)を準備した後、炭素コーティング層を形成せず、製造例1と同一のリチウム金属箔を積層させた後、圧延し、リチウム金属電池用負極を製造した。
【0077】
[製造例7]
厚さ35μmのリチウム金属箔を用いたことを除いては、製造例5と同様の方法でリチウム金属電池用負極を製造した。
【0078】
リチウム金属電池の製造:実施例1ないし3及び比較例1ないし4
[実施例1]
製造例1により製造された負極と共に下記の負極、分離膜及び電解液を製造してリチウム金属電池を組み立てた。
【0079】
(1)正極:水を溶媒とし、硫黄-炭素複合体(S:C=75:25)、導電材及びバインダーを90:5:5の割合で混合して正極活物質スラリーを製造した。この際、導電材はデンカブラックを、バインダーはスチレンブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR:CMC=7:3)を用いた。
【0080】
前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、乾燥して正極を製造した。
【0081】
(2)分離膜:厚さ16μm、気孔45%のポリエチレン膜を用いた。
【0082】
(3)電解液:有機溶媒としてジメトキシエタン(DME)とジオキソラン(DOL)を1:1の体積比で用い、1MのLiTFSIを混合し、電解液対比1重量%のLiNO3を添加して電解液を製造した。
【0083】
[実施例2]
製造例2のリチウム金属電池用負極を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム金属電池を製造した。
【0084】
[実施例3]
製造例3により製造されたリチウム金属負極をそれぞれ負極及び正極として使用(正極と負極のそれぞれに含まれた「炭素コーティング層が形成された多孔性基材」が互いに対面するように位置付け)し、前記正極と負極の間に実施例1と同一の分離膜を位置させ、実施例1と同一の電解液を注液した後、封止してコインセルタイプのリチウム-リチウム対称セルであるリチウム金属電池を製造した。
【0085】
[比較例1ないし3]
比較例1ないし3は、それぞれ製造例4ないし6のリチウム金属電池用負極を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム金属電池を製造した。
【0086】
[比較例4]
製造例7により製造されたリチウム金属負極をそれぞれ負極及び正極として使用(多孔性基材が互いに対向するように位置付け)したことを除いては、実施例3と同様の方法でリチウム-リチウム対称セルであるリチウム金属電池を製造した。
【0087】
実験例1:負極の物性評価
前記製造例1ないし7において製造されたリチウム金属電池用負極について物性評価を行った。
【0088】
具体的に、厚さ及び単位面積当たりの質量を測定して下記表1に示した。また、引張強度はASTM E8/E8Mを基準に測定して下記表1のように示し、そのうち製造例4、5はそれぞれ
図4、
図5にグラフで結果を示した。
【0089】
【0090】
引張強度の測定結果、負極製造時にリチウム金属のみを単独で用いた製造例4は、1MPa以下の引張強度で負極の機械的強度が低いという点で、電池の安定的な駆動が期待し難いことが分かった。
【0091】
一方、PET不織布を含んだ製造例5の場合、負極の引張強度が17MPa以上であって、多孔性基材を負極支持体として含む場合、負極の機械的強度が向上することが確認できた。
【0092】
また、PET不織布及び炭素コーティング層を含んだ製造例1及び2の場合、負極の引張強度が18MPa以上で、PET不織布のみ含む場合に比べて負極の機械的強度がさらに向上することが確認できた。
【0093】
実験例2:負極の表面形状(SEM)
製造例2及び製造例5により製造されたリチウム金属電池用負極の表面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で撮影し、それぞれ
図6及び
図7のように示した。
【0094】
前記SEMイメージを通じて、多孔性基材上に板状構造の炭素粒子を含む炭素コーティング層を形成して負極を製造した製造例2は、板状構造の炭素粒子であるグラフェンの存在により相対的に多孔性基材の空隙が減少したことが分かった。一方、炭素コーティング層の形成なしに多孔性基材上にリチウム箔を直ちに圧延して負極を製造した製造例5は、製造例2と違って多数の空隙が存在することが分かった。
【0095】
実験例3:リチウム-リチウム対称セルタイプの電池寿命評価
前記実施例3及び比較例4により製造されたリチウム-リチウム対称セルであるリチウム金属電池について、25℃で電池のサイクル寿命評価を行った。
【0096】
具体的に、0.5mA/cm
2の電流密度で10mAhまで1回放電及び充電を行った後、1.5mA/cm
2の電流密度でサイクルを繰り返して電圧範囲-1.0Vまたは1.0Vに達する時点までの寿命を測定し、その結果を下記表2及び
図8、9に示した。
【0097】
【0098】
前記表2及び下記
図8、9を参照すると、多孔性基材上に板状構造の炭素粒子を含む炭素コーティング層を形成して負極を製造した実施例3の場合、多孔性基材のみを用いて炭素コーティング層を形成していない比較例4に比べてさらに長い寿命を示す結果を確認することができた。
【0099】
これを通じて、多孔性基材は分離膜とリチウム表面との間に位置して抵抗層として作用することになるが、グラフェンのような板状構造の炭素粒子を含む炭素コーティング層が形成されることにより過電圧が解消される効果で寿命が改善されることが確認できた。
【0100】
実験例4:リチウム金属電池の放電容量の評価
前記実施例1、2及び比較例1ないし3により製造されたリチウム金属電池について、放電容量を評価した。
【0101】
具体的に、電圧範囲1.8~2.5Vで0.1C放電/0.1C充電3サイクル、0.2C放電/0.2C充電3サイクル以後0.5C放電/0.3C充電3サイクルを行い、電池の放電容量を測定し、比較例1の放電容量を基準(100%)として放電容量の相対的割合を下記表3に示した。また、前記サイクルを繰り返し、放電容量評価を行い、その結果を
図10、11のように示した。
【0102】
【0103】
前記表3及び
図10、11の放電容量評価の結果を通じて、板状構造の炭素粒子を含む炭素コーティング層と多孔性基材を含む実施例1、2の場合、これを含まない比較例1ないし3に比べてサイクルが進むほど相対的にさらに優れた放電容量を示すことが確認できた。また、ポリイミド(PI)を多孔性基材として用いた比較例3の場合には、リチウム金属がポリイミドと反応性を有するところ、最初の段階の放電容量が急激に減少したことが確認できた。
【0104】
前記実施例1、2の場合、板状構造の炭素粒子を含む炭素コーティング層を含むことにより、支持体である多孔性基材の表面がリチウム金属と親和性が高くなり、グラフェンのような板状構造の炭素粒子により多孔性基材の気孔が減少し、正極との相対的な距離に影響されることなく、リチウムのプレーティング(plating)時に安定的な構造を形成し、リチウム効率及び放電容量を改善できることが確認できた。
【0105】
本発明の単なる変形ないし変更はすべて本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明らかになるだろう。
【符号の説明】
【0106】
100:多孔性基材
200:炭素コーティング層
300:リチウム金属層