(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】設置位置特定システム及び設置位置特定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/18 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01S5/18
(21)【出願番号】P 2023539535
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2021029281
(87)【国際公開番号】W WO2023013022
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長廣 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】村山 修一
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/084767(WO,A1)
【文献】特開2021-009125(JP,A)
【文献】特開2018-148539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0121273(US,A1)
【文献】国際公開第2014/073033(WO,A1)
【文献】特開2010-197727(JP,A)
【文献】特開2017-067666(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108309607(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 5/30
G01S 7/52 - 7/64
G01S 15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間に散在配置されている複数の室内機と、
前記空間内において室内機の設置位置を探索する探索者により携行される携帯端末と、
を有し、
前記各室内機は、
ファンと、
前記携帯端末からの駆動指令に応じて前記ファンの駆動を制御する制御手段と、
を有し、
前記携帯端末は、
前記探索者による指示に応じて前記駆動指令を送信する送信手段と、
前記駆動指令に応じて駆動する前記ファンから出力された音信号を入力する音信号入力手段と、
前記音信号入力手段により入力された音信号の入力状況に基づき前記探索者が設置位置の探索対象とする室内機の設置位置を特定する位置特定手段と、
前記音信号入力手段により入力された音信号の波形を表示する表示パネルと、
を有
し、
前記音信号入力手段は、指向性を有し、前記探索者の直上付近に設置された前記室内機の前記ファンの位置に向けられて使用されることを特徴とする設置位置特定システム。
【請求項2】
前記位置特定手段は、前記室内機のいずれかの近傍に移動した前記探索者による指示に応じて送信された前記駆動指令に応じて当該室内機から出力された音信号の大きさが所定の閾値以上の場合、当該室内機の設置位置を、前記探索対象とする室内機の設置位置と特定することを特徴とする請求項1に記載の設置位置特定システム。
【請求項3】
前記各室内機の前記ファンは、室内機毎に異なる音信号を出力し、
前記携帯端末は、前記各室内機から出力される音信号の基準信号を記憶する記憶手段を有し、
前記位置特定手段は、前記室内機のいずれかの近傍に移動した前記探索者による指示に応じて送信された前記駆動指令に応じて当該室内機から出力された音信号が、前記探索対象とする室内機の基準信号と合致する場合に、当該室内機の設置位置を、前記探索対象とする室内機の設置位置と特定することを特徴とする請求項1に記載の設置位置特定システム。
【請求項4】
前記各室内機の前記ファンは、室内機毎に異なる音信号を出力し、
前記携帯端末は、前記各室内機から出力される音信号の基準信号を記憶する記憶手段を有し、
前記位置特定手段は、前記室内機のいずれかの近傍に移動した前記探索者による指示に応じて送信された前記駆動指令に応じて当該室内機から出力された音信号が、いずれかの基準信号と合致する場合に、当該室内機の設置位置を、合致した基準信号に紐付く室内機の設置位置と特定することを特徴とする請求項1に記載の設置位置特定システム。
【請求項5】
前記各ファンから出力される音信号は、非可聴音であることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の設置位置特定システム。
【請求項6】
複数の室内機が散在配置されている所定の空間内において室内機の設置位置を探索する探索者により携行される携帯端末
であって表示パネル及び指向性を有する音信号入力手段を搭載する携帯端末が、
前記探索者
が前記いずれかの前記室内機の直下付近まで移動した後にされた指示に応じて前記駆動指令を送信し、
前記探索者により前記いずれかの前記室内機のファンの位置に向けられているときに、前記駆動指令に応じて駆動する前記ファンから出力された音信号を入力し、
入力された音信号の
波形を前記表示パネルに表示し、
表示された音信号の波形に基づき前記探索者が設置位置の探索対象とする室内機の設置位置を特定する、
ことを特徴とする設置位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置位置特定システム及び設置位置特定方法、特に設置位置が不明な機器の設置位置の特定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビル等の施設には空調設備が設置されている。空調設備を構成する複数の室内機は、例えばフロアの天井に埋め込まれて設置される。各空調機には、MAC(Meadia Access Control)アドレスやIP(Intenet Protocol)アドレス等の通信相手を特定可能な識別情報が割り当てられている。空調設備の管理装置は、室内機の識別情報を指定した指令を送信することで、ネットワークを介して所望の室内機の動作を制御する。
【0003】
ところで、室内機を設置する設置作業では、通常、このような識別情報が考慮されることなく、室内機を無作為に設置する場合がある。この場合、どの識別情報の室内機が、どの設置位置に設置されているのか不明となっている。
【0004】
空調設備の保守作業を行う作業者は、現地に出向き、修理や保守点検の対象となる室内機の直下当たりに脚立を載置し、脚立に上った状態で、天井に取り付けられている室内機に対して作業を施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/084767号
【文献】特開2014-153967号公報
【文献】特開2014-229020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、作業者は、作業対象とする室内機を特定できるものの、情報管理の不徹底などにより、その室内機の設置場所を特定できない場合がある。そのため、脚立を室内機の設置位置の下方まで持ち運び、脚立に上って室内機のラベル等を参照することによって作業対象の室内機かどうかを確認する必要があった。この脚立を持ち運び、脚立に上り、そして作業対象の室内機かどうかを確認する作業を、作業対象の室内機を見つけ出すまで繰り返し行う必要があった。
【0007】
本発明は、複数の室内機が設置されている空間内において、設置位置が不明な室内機の設置位置を簡便に特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る設置位置特定システムは、所定の空間に散在配置されている複数の室内機と、前記空間内において室内機の設置位置を探索する探索者により携行される携帯端末と、を有し、前記各室内機は、ファンと、前記携帯端末からの駆動指令に応じて前記ファンの駆動を制御する制御手段と、を有し、前記携帯端末は、前記探索者による指示に応じて前記駆動指令を送信する送信手段と、前記駆動指令に応じて駆動する前記ファンから出力された音信号を入力する音信号入力手段と、前記音信号入力手段により入力された音信号の入力状況に基づき前記探索者が設置位置の探索対象とする室内機の設置位置を特定する位置特定手段と、前記音信号入力手段により入力された音信号の波形を表示する表示パネルと、を有し、前記音信号入力手段は、指向性を有し、前記探索者の直上付近に設置された前記室内機の前記ファンの位置に向けられて使用されることを特徴とする。
【0009】
また、前記位置特定手段は、前記室内機のいずれかの近傍に移動した前記探索者による指示に応じて送信された前記駆動指令に応じて当該室内機から出力された音信号の大きさが所定の閾値以上の場合、当該室内機の設置位置を、前記探索対象とする室内機の設置位置と特定することを特徴とする。
【0011】
また、前記各室内機の前記ファンは、室内機毎に異なる音信号を出力し、前記携帯端末は、前記各室内機から出力される音信号の基準信号を記憶する記憶手段を有し、前記位置特定手段は、前記室内機のいずれかの近傍に移動した前記探索者による指示に応じて送信された前記駆動指令に応じて当該室内機から出力された音信号が、前記探索対象とする室内機の基準信号と合致する場合に、当該室内機の設置位置を、前記探索対象とする室内機の設置位置と特定することを特徴とする。
【0012】
また、前記各室内機の前記ファンは、室内機毎に異なる音信号を出力し、前記携帯端末は、前記各室内機から出力される音信号の基準信号を記憶する記憶手段を有し、前記位置特定手段は、前記室内機のいずれかの近傍に移動した前記探索者による指示に応じて送信された前記駆動指令に応じて当該室内機から出力された音信号が、いずれかの基準信号と合致する場合に、当該室内機の設置位置を、合致した基準信号に紐付く室内機の設置位置と特定することを特徴とする。
【0013】
また、前記各ファンから出力される音信号は、非可聴音であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る設置位置特定方法は、複数の室内機が散在配置されている所定の空間内において室内機の設置位置を探索する探索者により携行される携帯端末であって表示パネル及び指向性を有する音信号入力手段を搭載する携帯端末が、前記探索者が前記いずれかの前記室内機の直下付近まで移動した後にされた指示に応じて前記駆動指令を送信し、前記探索者により前記いずれかの前記室内機のファンの位置に向けられているときに、前記駆動指令に応じて駆動する前記ファンから出力された音信号を入力し、入力された音信号の波形を前記表示パネルに表示し、表示された音信号の波形に基づき前記探索者が設置位置の探索対象とする室内機の設置位置を特定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の室内機が設置されている空間内において、設置位置が不明な室内機の設置位置を簡便に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1における設置位置特定システムが適用される部屋を示す概略的な見取り図である。
【
図2】実施の形態1における設置位置特定システムを示すブロック構成図である。
【
図3】実施の形態1における記憶部に記憶される情報を示す図である。
【
図4】
図1に示す部屋において、作業者の移動経路を示す図である。
【
図5】実施の形態1における設置位置特定処理を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態2において、
図1に示す部屋を2つの小部屋に分けて利用する場合の概念図である。
【
図7】実施の形態2における記憶部に記憶される情報を示す図である。
【
図8】
図1に示す部屋において、作業者の移動経路及び各室内機から発信される音信号の波形を示す図である。
【
図9】実施の形態2における設置位置特定処理を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態3における記憶部に記憶される情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0018】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における設置位置特定システムが適用される部屋1を示す概略的な見取り図である。なお、
図1では、部屋1における室内機2の設置位置を簡易的に図示しており、厳密な見取り図ではない。
【0019】
部屋1は、ビル等の施設内にある所定の空間の一例である。部屋1の天井には、保守対象となる機器に相当する空調設備に含まれる室内機2a~2fが埋め込まれている。部屋1は、
図1に例示するように、複数の室内機2a~2fが設置されるほど比較的広い空間である。なお、各室内機2a~2fは、相互に区別する必要はない場合は、「室内機2」と総称する。
【0020】
部屋1には、ドア3が設けられている。作業者4は、ドア3から部屋1に進入して、室内から室内機2の保守点検を行う。より詳細には、図示しない脚立を室内に持ち込んで、室内機2の直下当たりに立てて、脚立に上って室内機の修理や保守点検等の保守作業を行う。また、作業者4は、携帯端末5を携行しており、保守作業の際には持ち込んだ携帯端末5を利用する。
【0021】
図2は、本発明に係る設置位置特定システムの一実施の形態を示すブロック構成図である。
図2には、
図1に示す携帯端末5と室内機2とが示されている。なお、室内機2a~2fは、いずれも
図2に示す構成を有していればよい。
【0022】
携帯端末5は、保守作業の際に室内において室内機2の設置位置を探索する探索者となる作業者4により携行される。携帯端末5は、スマートフォンやタブレット端末等、通信機能を有し、携帯性を有する情報処理装置として機能する機器である。携帯端末5は、従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。すなわち、携帯端末5は、CPU、ROM、RAM、ストレージ、通信インタフェース、ユーザインタフェースとしての操作パネル、音信号を入力する手段としてのマイク等を搭載して構成される。
【0023】
携帯端末5は、操作受付部51、送信制御部52、指示送信部53、音検出部54、判定部55、表示制御部56及び記憶部57を有している。なお、本実施の形態の説明に用いない構成要素については、図から省略する。
【0024】
操作受付部51は、操作パネル等からの作業者4による操作を受け付ける。送信制御部52は、操作受付部51が受け付けた作業者4による操作の内容に応じて駆動指令等の送信の制御を行う。指示送信部53は、送信制御部52からの制御の下、通信インタフェースを介して駆動指令等の指示を室内機2へ送信する。音検出部54は、マイクにより実現され、周囲で発せられた音を検出する。本実施の形態の場合、音検出部54には、室内機2から出力された音信号が入力される。判定部55は、音検出部54に入力された音信号の入力状況に基づき作業者4が設置位置の探索対象とする室内機の設置位置を特定する。表示制御部56は、判定部55による判定結果や音検出部54が検出した音信号の波形等の操作パネルへの表示を制御する。
【0025】
図3は、本実施の形態における記憶部57に記憶される情報を示す図である。本実施の形態における記憶部57には、室内機情報と音信号データが含まれている。
【0026】
室内機情報は、室内機2の識別情報である機器IDに、当該室内機2との間で通信を行うための情報としてIPアドレスを対応付けして設定される。室内機2の部屋1における設置位置は、不明であるものの、室内機2の機器IDと、情報の送信の宛先として指定するIPアドレスは、事前に把握されている。また、音信号データは、室内機2が出力する音信号の特徴を表す情報であり、
図3では、音信号の周波数のパターンを示す波形で示している。
【0027】
なお、
図3に示す室内機情報では、
図1に示す部屋1に設置されている室内機2に限定しているが、施設内の他の空間に設置される各室内機においても同様に室内機情報が設定される。
【0028】
携帯端末5における各構成要素51~56は、携帯端末5を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、記憶部57は、携帯端末5に搭載されたストレージにて実現される。あるいは、RAM又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0029】
また、携帯端末5が用いるプログラムは、通信手段により提供されるが、記録媒体等他の手法を用いて提供することも可能である。通信手段等から提供されたプログラムは、携帯端末5にインストールされ、携帯端末5に搭載のコンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0030】
室内機2は、受信部21、駆動制御部22及び発信部23を有している。なお、室内機2が室内機として機能するための構成要素等、以降の説明に用いない構成要素については、図から省略視する。
【0031】
受信部21は、携帯端末5から送信されてくる駆動指令などの指示を受信する。駆動制御部22は、受信部21により受信された指示が駆動指令の場合、駆動指令に応じて発信部23における音信号の出力を制御する。発信部23は、例えばスピーカにより実現され、駆動制御部22による制御の下、音信号を出力する。
【0032】
次に、本実施の形態における動作について説明する。ここでは、室内機2が不調であることが施設の設備の管理装置により確認されており、また、その室内機2の機種IDは特定されているものとする。但し、その室内機2は、
図1に示す部屋1に設置されていることは特定されているものの、部屋1のどこに設置されているのかまでは不明である。従って、作業者4は、部屋1に入って、保守作業を開始するために、その室内機2の設置位置を探索する必要がある。本実施の形態の場合、室内機2a~2fのうちどの室内機2が保守対象となるのか探索する必要がある。本実施の形態は、作業者4による室内機2の探索を容易にできるようにしたことを特徴としている。以下、探索対象の室内機2の設置位置を特定する設置位置特定処理について、
図4に示す見取り図及び
図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0033】
図4には、
図1と同様に部屋1に設置されている各室内機2の設置位置が示されている。作業者4は、この室内機2の中から、保守作業を施す室内機2を特定する必要がある。そのために、作業者4は、携帯端末5を携行し、部屋1に入る。なお、作業者4は、保守対象とする室内機2を探索対象とすることから、本実施の形態において「保守対象の室内機」と「探索対象の室内機」は、同じ室内機2を指している。また、厳密に言うと、探し出したいのは、探索対象の室内機2の設置位置だが、部屋1に設置されている各室内機2は、天井に固定され、設置位置が特定されているので、室内機2のいずれかを探索対象の室内機2と特定できれば、探索対象の室内機2の設置位置を特定することになる。従って、設置位置の探索ではなく室内機の探索、つまり、探索対象とするのは、「室内機の設置位置」ではなく単に「室内機」と説明する場合もある。なお、ここでは、機器IDが“X1”の室内機2(以下、「室内機X1」とも記載する)を探索対象とする場合を例にして説明する。
【0034】
ところで、作業者4は、所望の経路にて室内を移動することが可能である。但し、ここでは、
図4において破線の矢印Aで示すように、作業者4は、保守作業を施す室内機2を探し出すまで各室内機2の設置位置を時計回りで順に移動する計画を持っているものとする。
【0035】
作業者4は、部屋1に入り、所定のアプリケーションを起動し、そして、操作パネルに表示された所定の入力画面から探索対象の室内機2が室内機X1であることを指定する。
【0036】
携帯端末5における操作受付部51は、作業者4により指定された室内機2の識別情報(ここでの例では、“X1”)を受け付けると、送信制御部52は、室内機情報から室内機X1のIPアドレスを取得する(ステップ101)。続いて、作業者4は、
図4に示すように、まず室内機2dの近傍、具体的には室内機2dの直下付近まで移動し、その位置で携帯端末5を操作することで駆動指令の送信を指示する。すなわち、携帯端末5における操作受付部51は、室内機2dの直下付近まで移動された後(ステップ102)、駆動指令を送信するための操作を受け付けると、指示送信部53は、送信制御部52による制御の下、ステップ101において取得したIPアドレス宛に駆動指令を送信する(ステップ103)。
【0037】
室内機2dが室内機X1でない場合、室内機2dは、駆動指令を受信しないことから音信号を出力しない。一方、室内機2dが室内機X1の場合、室内機2dにおける駆動制御部22は、自機宛ての駆動指令であると判断し、携帯端末5からの駆動指令に応じて発信部23を動作させて所定以上の大きさで音信号を出力させる。
【0038】
携帯端末5の音検出部54は、駆動指令送信後、所定期間、音信号が入力されてくることを待機する。そして、所定期間内に音信号が入力された場合であって(ステップ104でY)、入力された音信号の受信強度が所定の閾値以上の場合(ステップ105でY)、判定部55は、最も近い位置にある室内機2dを、探索対象の室内機X1と特定する(ステップ106)。つまり、室内機2dの設置位置を、探索対象の室内機X1の設置位置と特定する。一方、音信号の入力はない場合(ステップ104でN)、ステップ102に移行する。
【0039】
ところで、室内機2d以外の室内機2a~2c,2e,2fの内のいずれか(つまり、室内機X1)が駆動指令を受信できた場合、音信号を出力する。そこで、本実施の形態においては、入力された音信号の大きさが所定の閾値に達していなければ(ステップ105でN)、入力された音信号の発信元は、室内機2dではなく他の室内機2a~2c,2e,2fであると判断する。つまり、判定部55は、室内機2dは探索対象の室内機X1でないと判断する。
【0040】
表示制御部56は、作業者4に最も近い室内機2d、換言すると作業者4の直上付近に設置されている室内機2dが室内機X1であるかそうでないかという判定部55による判定結果を操作パネルに表示させる。そして、室内機2dが室内機X1でない場合(ステップ105でN)、作業者4は、次の室内機2aの直下付近まで移動する(ステップ102)。
【0041】
本実施の形態によれば、以上の処理を繰り返すことによって、探索対象である室内機X1の設置位置を探し出すことができる。なお、探索対象の室内機2は、
図1に示す部屋1に設置されていることを前提としているので、上記処理を繰り返すことで必ず探し出すことができる。
【0042】
ところで、部屋1では、室内機2の探索中に業務が遂行され、室内機2が動作している場合が想定できる。この場合、室内機2のファンの駆動音を音検出部54が検出する場合がある。そこで、作業者4は、発信部23からの出力音が室内機2の駆動音と異なるように駆動指令の送信タイミングを操作してもよい。例えば、駆動指令を断続的に繰り返し送信させてもよい。
【0043】
あるいは、室内機2の駆動音とは明らかに異なる周波数又は周波数のパターンの音信号が発信部23から出力されるように、発信部23を構成したり、駆動制御部22により発信部23を駆動制御させたりしてもよい。例えば、室内機2が
図3に示す音信号データを出力することが既知である場合、判定部55は、音検出部54に入力された音信号の波形と、記憶部57に記憶される音信号データの波形とを比較して、発信部23からの音信号かどうかを判定してもよい。この場合、発信部23から出力される音信号の波形は、室内機2の駆動音とは明らかに異なる波形とするのが好ましい。あるいは、室内機2の駆動音より明らかに大きい音が出力されるようにしてもよい。
【0044】
また、上記説明では、判定部55が作業者4の直上付近に設置されている室内機2が探索対象の室内機であるかどうかを判定しているが、音検出部54が検出した音信号の波形を操作パネルに表示させて、作業者4にその波形から作業者4の直上付近に設置されている室内機2が探索対象の室内機であるかどうかを判定させるようにしてもよい。
【0045】
なお、本実施の形態では、音検出部54に入力された音信号の受信強度によって作業者4の直上付近に設置されている室内機2が探索対象の室内機であるかどうかを判定した。ただ、指向性をマイクに持たせ、最も近い位置の室内機2の発信部23当たりにマイクを向けることで、最も近い室内機2以外の室内機2からの音信号を音検出部54に極力検出させないようにしてもよい。
【0046】
また、本実施の形態では、室内機2における音信号出力手段として、所望の波形の音信号を出力可能なスピーカによって発信部23を実現する場合を想定したが、室内機2に搭載され、かつ音を発する機器、例えばファンを利用してもよい。ファンの場合、携帯端末5が発する駆動指令としては、ファンを駆動させる駆動オン指令でよい。あるいは、駆動のオンとオフを一定時間毎に切り替える駆動指令でもよい。あるいは、駆動の強弱を制御するための指令でもよい。この場合、ファンが発する音信号の波形を携帯端末5の操作パネルに表示させて、駆動指令に追従する波形の音信号が携帯端末5に入力されたことが確認できれば、その室内機2が探索対象の室内機2と特定できる。
【0047】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、保守対象とする1台の室内機2の設置位置を特定する場合を説明した。ただ、例えば、部屋1を区切って複数の小部屋として利用するために、室内機2をグループ分けしたい場合がある。例えば、
図6に示すように部屋1を小部屋1a,1bに分割するために、室内機2を室内機2a,2b,2d,2eのグループG1と、室内機2c,2fのグループG2とに分けてグループ管理したいとする。この場合、室内機2a~2fそれぞれがどの機器IDの室内機であるかを特定する必要がある。このように、本実施の形態では、部屋1に設置されている全ての室内機2を探索対象として、探索対象の室内機の設置位置を特定することを特徴としている。
【0048】
本実施の形態における設置位置特定システムの構成は、実施の形態1と同じでよいので、重複した説明となる場合は、説明を省略する。
【0049】
図7は、本実施の形態における記憶部57に記憶される情報を示す図である。このうち、
図7(a)は、
図3に示す室内機情報に対応する図である。本実施の形態おける室内機情報は、室内機2の識別情報である機器IDに、当該室内機2のIPアドレスと、当該室内機2の発信部23から出力される音信号と、を対応付けして設定される。室内機情報に含まれる音信号は、当該室内機2から出力され、音検出部54から入力される音信号と比較する音信号の基準信号となる。基準信号は、換言すると、各室内機2から出力される音信号は、室内機2毎に異なる。つまり、周波数若しくは周波数のパターンが異なるので、
図7に示すように基準信号を波形で表すと、所定期間長における波形の形状は、全て異なってくる。以降の説明では、所定期間長における音信号の周波数や音信号の出現パターンのことを総称して「音信号の波形」という。
【0050】
次に、本実施の形態における設置位置特定処理について
図8に示す見取り図及び
図9に示すフローチャートを用いて説明する。
【0051】
図8は、実施の形態1で用いた
図4と同様に、作業者4の移動経路を破線の矢印Aで示している。更に、
図8では、室内機2a~2fがそれぞれ発信する音信号6a~6fの波形を対応付けて示している。なお、各音信号6a~6fは、相互に区別する必要はない場合は、「音信号6」と総称する。
【0052】
作業者4は、部屋1に入り、所定のアプリケーションを起動し、そして、
図4に示すように、まず室内機2dの近傍、具体的には室内機2dの直下付近まで移動し、その位置で携帯端末5を操作することで駆動指令の送信を指示する。すなわち、携帯端末5における操作受付部51は、室内機2dの直下付近まで移動された後(ステップ102)、駆動指令を送信するための操作を受け付けると、指示送信部53は、送信制御部52による制御の下、駆動指令を送信する(ステップ203)。本実施の形態においては、複数のホストを指定する形式でIPアドレスを指定することで、室内機2dには、駆動指令に応じて音信号を必ず出力させるように制御する。なお、実際には、他の室内機2a~2c,2e,2fも駆動指令を受信した場合、音信号を出力することになるが、マイクに指向性を持たせたり、受信強度を確認したりすることで、携帯端末5は、室内機2dからの出力を得ることができる。
【0053】
室内機2dにおける駆動制御部22は、携帯端末5からの駆動指令に応じて発信部23を動作させて音信号6dを出力させる。
【0054】
携帯端末5の音検出部54は、駆動指令送信後、所定期間、音信号6dが入力されてくることを待機する。そして、所定期間内に音信号6dが入力されると(ステップ104)、判定部55は、入力された音信号6dと室内機情報に記憶されている各基準信号とを比較する。この結果、判定部55は、室内機2dから出力された音信号6dの波形と合致する基準信号に紐付く室内機X6を選出する。なお、基準信号の中から、音信号6dの波形に最も類似する波形の音信号を特定できた場合も波形の合致とみなしてよい。
【0055】
このようにして、判定部55は、室内機2dを室内機X6と特定する(ステップ204)。作業者4は、矢印Aに示した計画に従って、まだ処理していない室内機2の位置まで移動すると(ステップ205でN、102)、携帯端末5は、上記処理を繰り返し実行する。作業者4が全ての室内機2の設置位置を巡回することで(ステップ205でY)、携帯端末5は、探索対象となる各室内機X1~X6の設置位置を特定することができる。この特定結果を
図7(b)に示す。
【0056】
以上のようにして、各室内機X1~X6の設置位置が特定できると、空調設備の管理装置は、室内機X3~X6でグループG1を形成し、室内機X1~X2でグループG2を形成する。そして、これ以降は、各グループG1,G2に属する室内機X3~X6,X1~X2を別個に制御することが可能になる。
【0057】
なお、本実施の形態においては、
図7に示すように室内機毎に異なる音信号が出力されるようにした。実施の形態1においても同様に
図7に示す室内機情報を記憶部57に記憶させるようにしてもよい。そして、例えば室内機2dから出力された音信号と、探索対象の室内機(例えば、室内機X1)に紐付く基準信号とを比較し、合致した場合に室内機2dは探索対象の室内機X1であると特定するように処理してもよい。
【0058】
実施の形態3.
上記実施の形態2により、部屋1に設置されている室内機2は、グループG1,G2にグループ分けされて運用される。上記実施の形態2では、前述した手法で室内機X1~X6をグループG1,G2に正しくグループ分けした。ただ、実施の形態2に示した手法を用いずに適当にグループ分けしてみて、そのグループ分けが正しいのか、確認したい場合がある。また、正しくグループ分けしていたところ、その後、例えば保守点検作業時における作業者4の接続ミス等によって室内機2の設置位置とグループとの対応付けがずれてしまう場合が想定しうる。この場合、グループを正しく構成し直す必要が生じてくる。本実施の形態は、室内機2のグループを検証する場合の処理である。
【0059】
本実施の形態における設置位置特定システムの構成は、実施の形態1と同じでよいので説明を省略する。
【0060】
図10は、本実施の形態における記憶部57に記憶される情報を示す図である。このうち、
図10(a)は、現在の設定内容を示している。本実施の形態における室内機情報は、部屋1の分割により形成されたグループ毎に、当該グループの識別情報であるグループID、当該グループに割り当てられている基準信号、当該グループに属する各室内機2の設置位置、機器ID及びアドレスが対応付けして設定される。このうち、基準信号7a,7bは、当該グループに属する室内機2に共通して設定され、同一グループに属する各室内機2から同じ波形の音信号が出力される。設置位置は、
図11に示す見取り図の符号を便宜的に用いている。機器ID及びアドレスは、前述したとおりである。
【0061】
次に、本実施の形態における動作について説明する。
【0062】
本実施の形態における動作は、基本的には実施の形態2と同様でよい。実施の形態2と同様に処理することで、各室内機2から出力される音信号の波形は、特定できる。各室内機2から出力される音信号の波形を
図11に示すが、
図11に示す室内機2cから発信される音信号と室内機2eから発信される音信号が、実際に属するグループG1.G2にそれぞれ対応する基準信号7a,7bと食い違っていることがわかる。つまり、
図10に示す室内機情報の設定例によると、室内機2c及び室内機2eにそれぞれ対応付けられている室内機X3及び室内機X5が正しくなく、実際には室内機X3と室内機X5とが入れ替わっていることがわかる。そこで、室内機2e,2cの各設置位置に対応付ける室内機を入れ替えることで、室内機X3,X5を小部屋1a,1bにそれぞれ対応するグループG1,G2に正しく対応付けることができる。
【0063】
ところで、上記各実施の形態において、発信部23からは、人の耳には聞こえない非可聴音を音信号として出力させるようにしてもよい。前述したように、室内機2の保守作業を業務中に行う場合が考えられるので、非可聴音を用いることによって業務中に保守作業を行う場合でも室内機2から発せられる音によって業務に与える悪影響を極力抑えることができる。
【0064】
なお、本実施の形態では、探索対象とする機器として、部屋1に設置される室内機を例にして説明したが、これに限らず、音を発する機器、あるいは発信部23を搭載可能な機器であれば、各実施の形態において説明した設置地特定システムを適用することは可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 部屋、1a,1b 小部屋、2,2a~2f 室内機、3 ドア、4 作業者、5 携帯端末、21 受信部、22 駆動制御部、23 発信部、51 操作受付部、52 送信制御部、53 指示送信部、54 音検出部、55 判定部、56 表示制御部、57 記憶部。