(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ロボット、ロボットの駆動ユニット及び位置決め方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/10 20060101AFI20240920BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20240920BHJP
G01L 3/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B25J9/10 A
F16H1/32 B
G01L3/14 G
(21)【出願番号】P 2023541753
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 DE2021100937
(87)【国際公開番号】W WO2022148507
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】102021100276.1
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】桐原 大輔
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018125079(DE,A1)
【文献】特表2020-502964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10
F16H 1/32
G01L 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動シャフト(3)と、前記駆動シャフト(3)を駆動するための駆動モータ(4)と、前記駆動シャフト(3)から出力シャフト(11)に伝達するためのストレイン・ウェーブ・ギア機構(5)とを備える、ロボット(15)のための駆動ユニット(1)において、前記駆動シャフト(3)と前記ストレイン・ウェーブ・ギア機構(5)とを介して前記駆動モータ(4)によって位置決めされるときに前記出力シャフト(11)の角度位置(Θ
o)を調整する方法であって、
前記ストレイン・ウェーブ・ギア機構(5)は、前記駆動シャフト(3)に動作可能に結合された波動発生器(5a)と、可撓性リング(5c)と、前記出力シャフト(11)に結合され得る歯付きリング(5d)とを有し、前記駆動ユニット(1)はさらに、前記駆動シャフト(3)の角度位置(Θ
i
)を検出するための第1のセンサ(6a)と、前記出力シャフト(11)の前記角度位置(Θ
o
)を検出するための第2のセンサ(6b)と、前記可撓性リング(5c)の膨張(ω)を検出するための第3のセンサ(6c)とを備え、前記方法が、
-前記駆動シャフト(3)及び前記出力シャフト(11)の角度距離(ΔΘ
i,gl、ΔΘ
i,ge、ΔΘ
o,gl、ΔΘ
o,ge)が、前記可撓性リング(5c)の膨張(ω)に起因して前記駆動シャフト(3)の前記角度位置(Θ
i)と前記出力シャフト(11)の前記角度位置(Θ
o)との間に非線形関係が存在する加速度において、前記第1のセンサ(6a)、第2のセンサ(6b)、及び第3のセンサ(6c)によって判定される較正方法と、
-実際値発生器としての前記第2のセンサ(6b)を用いて、前記出力シャフト(11)の前記角度位置(Θ
o)を実際の角度位置から目標角度位置に調整するための位置決め方法であって、前記実際の角度位置と前記目標角度位置との間に前記出力シャフト(11)の少なくとも前記判定された角度距離(Θ
o,gl、Θ
o,ge)が存在するかどうかがチェックされ、存在しない場合、前記出力シャフト(11)は、前記実際の角度位置が前記目標角度位置から前記出力シャフト(11)の少なくとも前記判定された角度距離(ΔΘ
o,gl、ΔΘ
o,ge)だけ離間されるまで回転され、次いで、前記実際の角度位置は、前記第2のセンサ(6b)によって前記目標角度位置に調整される、位置決め方法と、を含む、方法。
【請求項2】
前記可撓性リング(5c)は、半径方向に延在するカラー(5e)を有し、前記第3のセンサ(6c)は、前記カラー(5e)上に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のセンサ(6b)は、前記歯付きリング(5d)上に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
較正プロセスにおいて、
-最初に、前記可撓性リング(5c)の膨張(ω)が0%に設定され
、第1の角度位置(Θ
i、Θ
o)として、前記駆動シャフト(3)の前記角度位置(Θ
i)が前記第1のセンサ(6a)によって検出され、前記出力シャフト(11)の前記角度位置(Θ
o)が前記第2のセンサ(6b)によって検出され、
-次いで、前記出力シャフト(11)は、第1の速度まで第1の回転方向に所定の様式で加速され、前記第3のセンサ(6c)が前記可撓性リング(5c)の連続的な膨張(ω)を検出するとすぐに、
第2の角度位置(Θ
i
、Θ
o
)として、前記駆動シャフト(3)の前記角度位置(Θ
i)が前記第1のセンサ(6a)によって検出され、前記出力シャフト(11)の前記角度位置(Θ
o)が前記第2のセンサ(6b)によっ
て検出され、
-前記第1の検出された角度位置(Θ
i、Θ
o)と前記第2の検出された角度位置(Θ
i、Θ
o)との間の距離は、同方向の角度距離(ΔΘ
i,gl、ΔΘ
o,gl)として定義されることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
続いて、
-前記出力シャフト(11)が停止され
、第3の角度位置(Θ
i、Θ
o)
として、前記駆動シャフト(3)の前記角度位置(Θ
i)が前記第1のセンサ(6a)によって検出され、前記出力シャフト(11)の前記角度位置(Θ
o)が前記第2のセンサ(6b)によって検出され、
-次いで、前記出力シャフト(11)は、第2の回転方向に回転され、前記第3のセンサ(6c)が前記可撓性リング(5c)の0%の膨張(ω)を検出するとすぐに再び停止され、静止時に、
第4の角度位置(Θ
i
、Θ
o
)として、前記駆動シャフト(3)の前記角度位置(Θ
i)
が前記第1のセンサ(6a)によっ
て検出され、前記出力シャフト(11)の前記角度位置(Θ
o)
が前記第2のセンサ(6b)によって検出され、
-次いで、前記出力シャフト(11)は、前記第2の方向に所定の様式で加速され、前記第3のセンサ(6c)が前記可撓性リング(5c)の不変の膨張(ω)を検出するとすぐに、
第5の角度位置(Θ
i
、Θ
o
)として、前記駆動シャフト(3)の前記角度位置(Θ
i)が前記第1のセンサ(6a)によって検出され、前記出力シャフト(11)の前記角度位置(Θ
o)が前記第2のセンサ(6b)によっ
て検出され、
-前記第3の検出された角度位置(Θ
i、Θ
o)と前記第5の検出された角度位置(Θ
i、Θ
o)との間の距離は、対向する角度距離(ΔΘ
i,ge、ΔΘ
o,ge)として定義され得ることを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
残留膨張(ω)
を、前記駆動シャフト(3)の前記第3の検出された角度位置(Θ
i)と前記第4の検出された角度位置(Θ
i)との間の距離と、前記出力シャフト(11)の前記第3の検出された角度位置(Θ
o)と前記第4の検出された角度位置(Θ
o)との間の距離との差
として算出することを特徴とする、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記位置決めプロセスにおいて、前記実際の角度位置を、設定点角度位置から少なくとも前記判定された角度距離(ΔΘ
o,gl、ΔΘ
o,ge)だけ離間させるように、前記出力シャフト(11)は、直前の回転と同じ回転方向に回転されることを特徴とする、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記位置決め方法において、前記実際の角度位置と前記目標角度位置との間
の距離をチェックするとき、前記出力シャフト(11)の前の回転における回転の方向に依存して、同方向又は逆の角度距離(ΔΘ
o,gl、ΔΘ
o,ge)が基準として取られることを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットための駆動ユニットであって、駆動シャフトと、駆動シャフトを駆動するための駆動モータと、駆動シャフトから出力シャフトへの伝達のためのストレイン・ウェーブ・ギア機構とを有し、ストレイン・ウェーブ・ギア機構は、駆動シャフトに動作可能に接続された波動発生器と、可撓性リングと、出力シャフトに結合され得る歯付きリングとを有し、駆動シャフトの角度位置を検出するための第1のセンサと、出力シャフトの角度位置を検出するための第2のセンサとを備える、駆動ユニットに関する。更に、本発明は、そのような駆動ユニットを有するロボット、及びそのような駆動ユニットにおける出力シャフトの角度位置を調整するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な駆動ユニットは、先行技術から知られており、特にロボット工学において、例えば、産業、実験技術、又は医療技術において使用されるロボットアームを動かすために使用されている。この目的のために、駆動ユニットは、ロボットアームの正確な移動のために駆動モータと移動されるロボットの部分との間の非常に高い伝達比を可能にするために、ストレイン・ウェーブ・ギア機構を装備している。ストレイン・ウェーブ・ギア機構は、非円形、特に楕円形の断面を有し、フレクスプラインとも呼ばれる可撓性リング内に延びる波動発生器又は造波機を有し、可撓性リングは全周にわたって変形される。可撓性リングは、その変形の2つの外側点においてのみ、外側リングとして設計された歯付きリングの内歯に係合する外歯を有する。円周方向の変形により、係合点も回転し、可撓性リングの歯の数と歯付きリングの歯の数は異なり、その結果、歯付きリングは、波動発生器の回転運動よりも著しく遅い回転運動に設定される。
【0003】
駆動モータは、調整プロセスによって調整され、出力シャフトを可能な限り正確に所望の角度位置に移動させる。第1のセンサ及び第2のセンサは実際値発生器として用いられ、第1のセンサは粗位置決めに使用され、第2のセンサは精密位置決めに使用される。第1のセンサは、負荷が出力側に加えられるときの振動及び力の入力に起因して、微細な位置決めのための十分な精度及び安定性を提供しない。通常、駆動モータとして電気モータが使用され、第1のセンサ及び第2のセンサとしてロータリエンコーダが使用される。このような対応する駆動ユニットは、例えば、KR102061693B1から知られている。また、JP6334317Bから、出力シャフトの膨張を検出するためのセンサを有する駆動ユニットが知られている。
【0004】
不都合なことに、出力シャフトが移動されると、可撓性リングは、特に加速中にねじれの形態で拡張され、この拡張は、駆動シャフトから出力シャフトに伝達される角度位置に重ね合わされる。この点において、第2のセンサは、少なくとも加速が行われる角度距離の領域において、出力シャフト位置の十分に正確な調整には好適ではないが、膨張によって重ね合わされた測定値を示し、これは、出力シャフトの角度位置のオーバーシュートにつながる。この角度距離の外側にある角度範囲では、第2のセンサは、加速に続く一定速度での可撓性リングの連続的な膨張が知られている限り、出力シャフトの角度位置の正確な調整にのみ好適である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、出力シャフトの角度位置を任意の所望の角度位置に正確に調整することができる駆動ユニットを提案することである。本発明の第1の態様によれば、この目的は、請求項1に記載の駆動ユニットによって達成される。この目的はまた、請求項4に記載のロボットを用いる本発明の第2の態様によって達成される。本発明の第3の態様によれば、この目的はまた、請求項5に記載の方法によって達成される。有利な改良は、従属請求項に提示される。
【0006】
加速とは、駆動モータの加速を意味し、駆動シャフト及びストレイン・ウェーブ・ギア機構を介して出力シャフトに伝達される。ここで、関与する全てのコンポーネントが加速され、特に、可撓性リングが拡張される。以下において、速度は、全てのコンポーネントのそれぞれの速度を意味するとも理解され、駆動シャフト及び可撓性リングは、出力シャフトよりも高い速度を有し、これは、ストレイン・ウェーブ・ギア機構の伝達比に対応する。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、駆動ユニットは、可撓性リングの膨張を検出するための第3のセンサを特徴とする。第1のセンサ、第2のセンサ及び第3のセンサによって、出力シャフトの位置に影響を及ぼす全ての量が既知であり、これらの量に基づいて、出力シャフトの正確な位置決めをもたらす調整方法を使用することができる。そのような方法は、例えば、第2のセンサによって実際値として検出された出力シャフトの位置に加えて、第3のセンサによって検出された膨張が実際値として直接使用される調整方法とすることができる。較正方法が上流に結合され、そこから得られる情報が、実際値として出力シャフトの実際の角度位置のみを用いて調整するために駆動ユニットの動作中に使用される調整方法が好ましい。このような方法は、本発明の第2の態様に従って以下に提案される。
【0008】
第3のセンサは、例えば、固定部に対する位置を検出するためのセンサ又は歪みゲージとすることができる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、可撓性リングは、半径方向に延在するカラーを有し、第3のセンサは、カラー上に配置される。このように、第3のセンサは、有利には、可撓性リングが波動発生器と動作可能に結合されているか、又は歯付きリングと歯係合している領域から離れて配置される。更に、可撓性リングの膨張は、カラー上で確実に測定することができる。
【0010】
更に好ましい実施形態では、第2のセンサは、歯付きリング上に配置される。それは、有利には、出力シャフトの位置が変速機で直接検出されるように、駆動装置の第1の出力側要素に配置される。更に、駆動ユニットは、有利には、出力側に多数の異なる付属部品を有する歯付きリングに配置された第2のセンサと共に使用することができる。
【0011】
更に好ましい実施形態では、駆動モータ、ストレイン・ウェーブ・ギア機構及び第1センサは、駆動シャフトと同軸に配置される。このようにして、小型の駆動ユニットが形成される。
【0012】
本発明の第2の態様は、上述のような駆動ユニットを有するロボットに関する。特に、ロボットは、産業、実験室技術、又は医療技術で使用するためのロボットアームである。それに応じて、ロボットは、上述した利点を有する。
【0013】
本発明の第3の態様は、上述した駆動ユニット内の駆動シャフト及びストレイン・ウェーブ・ギア機構を介して駆動モータによる位置決め中に、出力シャフトの角度位置を調整する方法に関する。
【0014】
本発明によれば、本方法は、駆動シャフトと出力シャフトとの角度距離が、加速中に第1のセンサ、第2のセンサ、及び第3のセンサによって判定される較正方法を含み、その周りでは、可撓性リングの伸長に起因して、駆動シャフトの角度位置と出力シャフトの角度位置との間に非線形関係が存在する。このようにして判定された角度距離からは、角度位置が、正確に検出することができない可撓性リングの膨張によって重ね合わされるか又は歪められるので、出力シャフトの実際の角度位置は、加速中に第2のセンサによって不正確にしか検出することができないことが分かる。次いで、この情報は、出力シャフトを位置決めするときに考慮に入れることができる。実際値発生器としての第2のセンサでは、実際角度位置から出発してこのような角度間隔内にある目標角度位置の正確な制御は不可能であり、修正された調整の戦略を必要とする。
【0015】
較正手順は、全ての有意な値を検出するために1回だけ実行される。較正方法は、好ましくは、出力シャフトの位置決めが、その後に実行される据付け状況にある、すなわち、動作状態下にある、駆動ユニットに対して実行される。次いで、駆動ユニットに取り付けられたコンポーネント及び他の環境状態の影響も考慮に入れられる。較正方法は、好ましくは、規則的な時間間隔で、及び/又は規定された数の位置決めプロセスの後に再び実行される。
【0016】
較正プロセスでは、一方では駆動シャフトについて、他方では出力シャフトについて、角度距離が検出される。駆動シャフトの角度距離は、ストレイン・ウェーブ・ギア機構の伝達比及び可撓性リングの膨張を介して出力シャフトの角度距離に関連する。
【0017】
較正方法は、好ましくは、規定された加速度で実行され、それはまた、検出された角度距離がそのような加速度に特有であるので、出力シャフトを位置決めするために以下において排他的に使用される。代替的に、得られた情報から更なる加速度プロファイルのための更なる角度距離を内挿又は外挿することも可能である。
【0018】
更に、本発明によれば、本方法は、実際値発生器として第2のセンサを使用して、出力シャフトの角度位置を実際の角度位置から目標角度位置に調整するための位置決め方法を含み、実際の角度位置と目標角度位置との間に少なくとも出力シャフトの判定された角度距離があるかどうかがチェックされ、存在しない場合、出力シャフトは、実際の角度位置が目標角度位置から少なくとも出力シャフトの判定された角度距離だけ離間するまで回転され、次いで、実際の角度位置は、第2のセンサによって目標角度位置に調整される。このように、いかなる時点においても、正確な調整が可能ではない角度範囲内にある、設定された角度位置に調整が行われてはならないことが確実になる。有利には、可撓性リングの膨張は、調整において連続的に検出され処理される必要はない。位置決めプロセスは、駆動ユニットの連続動作における出力シャフトの新たな目標角度位置ごとに実行される。
【0019】
一実施形態では、第2のセンサに加えて、第1のセンサも、少なくとも代替として、実際値発生器として使用される。特に、第1のセンサは、出力シャフトを第1の実際の角度位置から、少なくとも出力シャフトの判定された角度距離だけ目標角度位置から離間される、実際の角度位置まで移動させるために使用される。このように、この上流の位置決めプロセスは、出力シャフトの検出された角度距離よりも大きくなければならないという制限を受けない。
【0020】
本方法の好ましい実施形態では、較正方法において、可撓性リングの0%の膨張が最初に設定され、駆動シャフトの角度位置が第1のセンサによって検出され、出力シャフトの角度位置が第2のセンサによって第1の角度位置として検出される。次いで、出力シャフトは、第1の速度まで第1の回転方向に所定の様式で加速され、第3のセンサが可撓性リングの連続的な拡張を検出するとすぐに、駆動シャフトの角度位置が第1のセンサによって検出され、出力シャフトの角度位置が第2の角度位置として第2のセンサによって検出される。次いで、第1の検出された角度位置と第2の検出された角度位置との間の距離は、同方向の角度距離として定義される。「同方向」という用語は、前の回転に対する回転を指し、回転と前の回転が同じ方向であることを意味すると理解される。同方向の角度距離は、調整される回転が同じ方向の回転によって先行された場合に、実際値発生器として第2のセンサを使用する正確な調整が可能ではない角度距離である。
【0021】
本方法のこの実施形態の更なる実施形態では、次いで、出力シャフトは停止され、駆動シャフトの角度位置は第1のセンサによって検出され、出力シャフトの角度位置は第2のセンサによって第3の角度位置として検出される。次いで、出力シャフトは、第2の回転方向に回転され、第3のセンサが可撓性リングの0%の膨張を検出するとすぐに再び停止され、停止時に、駆動シャフトの角度位置が第1のセンサによって検出され、出力シャフトの角度位置が第4の角度位置として第2のセンサによって検出される。次いで、出力シャフトは、第2の方向に所定の様式で加速され、第3のセンサが可撓性リングの不変の拡張を検出するとすぐに、駆動シャフトの角度位置が第1のセンサによって検出され、出力シャフトの角度位置が第2のセンサによって第5の角度位置として検出される。次いで、第3の検出された角度位置と第5の検出された角度位置との間の距離は、逆の角度距離として定義される。「逆」という用語は、前の回転に対する回転を指し、その回転と前の回転が逆方向であることを意味すると理解される。逆の角度範囲は、調整される回転が逆方向の回転によって先行された場合に、実際値発生器として第2のセンサを使用する正確な調整が不可能である角度範囲である。
【0022】
同方向及び逆の角度部分は、可撓性リングの通常非常に低いばね定数のために、加速後に可撓性リングに連続的な膨張が生じ、これは駆動シャフトが再び静止しているときには解消されないという点で互いに異なる。したがって、この連続的な膨張は、残留膨張と呼ばれる。可撓性リングが最初に第1の方向に加速され、次いで第2の方向に加速される場合、可撓性リングが第2の方向の加速によって伸張されるとすぐに、第1の回転からの残留膨張が最初に引き起こされなければならない。このため、加速中に対応する方向の残留膨張が既に存在する同方向の角度距離は、前の回転からの残留膨張が最初に引き起こされなければならない、逆の角度距離よりも短い。
【0023】
有利には、位置決め方法において同方向及び逆方向の角度距離を検出した後、出力シャフトの前の回転中の回転方向に応じて、出力シャフトの同方向又は逆方向の角度距離を、実際の角度位置と目標角度位置との間の距離をチェックする際の基準として使用することができる。このようにして、実際の角度位置と目標角度位置との間の不必要な距離が回避されるように、可能な限り短い角度距離が常にチェックの基準として使用される。
【0024】
本方法の更なる好ましい実施形態では、駆動シャフトの第3の検出された角度位置と第4の検出された角度位置との間の距離と、伝達比によって正規化された出力シャフトの第3の検出された角度位置と第4の検出された角度位置との間の距離との間の差が、残留膨張として定義される。次いで、有利には、所定の加速度における残留膨張が知られ、第2のセンサの測定値を補正するために使用することができる。
【0025】
好ましい実施形態では、位置決め方法において、出力シャフトを直前の回転と同じ回転方向に回転させて、実角度位置を目標角度位置から少なくとも判定された角度距離だけ離間させる。これにより、追加の方向転換が回避される。特に、ここでは大まかな位置決めで十分であるため、第1のセンサは、実際の角度位置を設定点角度位置から離間させるための実際値発生器として使用することができ、第1のセンサの測定値は、可撓性リングのいかなる膨張によっても重ね合わされない。
【0026】
更なる好ましい実施形態では、位置決め方法において、実際の角度位置と目標角度位置との間の距離をチェックするとき、出力シャフトの以前の回転の回転方向に応じて、同方向又は逆の角度距離が基準として取られる。既に上述したように、実際の角度位置と設定点角度位置との間の不必要な距離が回避されるように、可能な限り短い角度距離が常にチェックの基準として使用される。
【0027】
本発明を改善するための更なる尺度は、図を使用して、本発明の好ましい例示的な実施形態と共に以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による駆動ユニットの概略断面図である。
【
図2】第1のy軸上の出力シャフト角度位置対x軸上の駆動シャフト角度位置、及び加速下の第2のy軸上の可撓性リング膨張のプロットを示す。
【
図3】第1のy軸上の出力シャフト角度位置対x軸上の駆動シャフト角度位置、及び加速下の第2のy軸上の可撓性リングにおけるトルクのプロットを示す。
【
図4】実際の角度位置と設定点角度位置との間に十分な距離を有し、かつ同方向に回転する出力シャフトのための本発明による位置決め方法の概略図を示す。
【
図5】実際の角度位置と所望の角度位置との間の距離が逆方向の回転で十分である場合の、出力シャフトのための本発明による位置決め方法の概略図を示す。
【
図6】実際の角度位置と所望の角度位置との間の距離が同方向の回転では不十分である場合の、出力シャフトのための本発明による位置決め方法の概略図を示す。
【
図7】実際の角度位置と所望の角度位置との間の距離が逆方向の回転で不十分である場合の、出力シャフトのための本発明による位置決め方法の概略図を示す。
【
図8】本発明による駆動ユニットを有するロボットアームの非常に簡略化された表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、駆動ユニット1を外側で画定するハウジング2を有する駆動ユニット1を示す。ハウジング2内には、駆動シャフト3が玉軸受け10a,10bによって装着されており、この駆動シャフト3は、固定子4a及び回転子4bを有する駆動モータ4によって駆動され得る。更に、駆動シャフト3にはストレイン・ウェーブ・ギア機構5が配置されており、このストレイン・ウェーブ・ギア機構5は、駆動シャフト3の回転運動を、出力部のより緩慢な回転運動に変換する。ストレイン・ウェーブ・ギア機構5は、高い伝達比及び剛性を有する。第1のセンサ6aも駆動シャフト3に配置されており、駆動シャフト3の角度位置Θ
iを検出する。第1のセンサ6aは、ここではロータリエンコーダとして設計されている。また、制動機7が駆動シャフト3に作用し、それによって駆動シャフト3が制動され得る。
【0030】
ストレイン・ウェーブ・ギア機構5は、波動発生器5aと、玉軸受け5bを介して波動発生器5aの反対側に装着された可撓性リング5cと、歯付きリング5dとを有する。波動発生器5aは、駆動シャフト3に直接形成されており、歯付きリング5dは、ストレイン・ウェーブ・ギア機構5の出力部を形成しており、出力シャフト11に結合されているか、又は結合され得る。第2のセンサ6bは、歯付きリング5d上に配置され、このセンサは、同時に出力シャフト11の角度位置である歯付きリング5dの角度位置Θoを検出する。この目的のために、第2のセンサ6bは、ハウジング側の固定コンポーネント8上の対応するセンサ部6dに対する歯付きリング5dの角度位置Θoを検出する。可撓性リング5cは、ハウジング2に固定されるカラー5eを有する。第3のセンサ6cは、カラー5e上に配置され、それによって、可撓性リング5cのねじれの意味での膨張ωが検出される。この目的のために、ハウジング側の固定コンポーネント9に対する可撓性リング5c上の測定点の相対変位が検出される。
【0031】
図2及び
図3は、駆動シャフト3の角度位置Θ
i及び出力シャフト11(又は歯付きリング5d)の角度位置Θ
oの推移、並びに加速中の
図2の可撓性リングの膨張ωの推移及び
図3の可撓性リング5cのトルクTの推移を示す。可撓性リング5c内のトルクT又は膨張ωは、加速中に最大膨張ω
max及び最大トルクT
maxまで増大し、出力シャフト11の角度位置Θ
oはまだ変化しないか、又は角度位置Θ
iは駆動シャフト3に追従する。加速が一定の目標速度に達すると、トルクT又は結果として生じる膨張ωは、連続値ωk又はTkに達するまで減少する。この時点まで、駆動シャフト3の角度位置Θ
iと出力シャフト11の角度位置Θ
oとの間には非線形の関係があり、これにより、実際値発生器としての第2のセンサ6bの値のみを使用して出力シャフト11の位置決めを正確に調整することが不可能になる。この点から、駆動シャフト3の角度位置Θ
iと出力シャフト11の角度位置Θ
oとの間に再び線形関係が存在する。実際値発生器としての第2のセンサ6bによって、その後方に位置する出力シャフト11の角度位置Θ
oの全てが調整され得る。
【0032】
同方向の加速の場合、ゼロ点とωk又はTkに達する点との間に駆動シャフト3の角度距離ΔΘi,glが存在し、この角度距離にわたって、可撓性リング5cの膨張に起因して、駆動シャフトの角度位置Θiと出力シャフト11の角度位置Θoとの間に非線形関係が存在する。出力シャフト11に関して、ゼロ点とωk又はTkに達する点との間に角度距離ΔΘo,glが存在し、その角度距離にわたって、可撓性リング5cの膨張に起因して、駆動シャフトの角度位置と出力シャフト11の角度位置との間に非線形関係が存在する。
【0033】
逆の加速の場合、連続的な膨張ωkに対応する残留膨張も、前の回転から低減されなければならない。次いで、これは、残留伸長に対応する点Θivとωkに達する点との間の駆動シャフト3の角度距離ΔΘi,geをもたらし、その角度距離にわたって、可撓性リング5cの膨張に起因して、駆動シャフト3の角度位置Θiと出力シャフト11の角度位置Θoとの間に非線形関係が存在する。出力シャフト11に関して、残留膨張に対応する点Θovとωkに達する点との間に角度距離ΔΘo,geが存在し、その角度距離にわたって、可撓性リング5cの膨張に起因して、駆動シャフト3の角度位置Θiと出力シャフト11の角度位置Θoとの間に非線形関係が存在する。
【0034】
図4~
図7は、出力シャフト11の少なくとも角度距離ΔΘ
o,gl、ΔΘ
o,geが実際の角度位置と目標角度位置との間にあるか(
図4及び
図5)否か(
図6及び
図7)に応じて異なる場合の出力シャフト11の位置決め方法を示す。更に、目標角度位置が実際の角度位置から見て同じ方向に位置するか(
図4及び
図6)、又は逆方向に位置するか(
図5及び
図7)に応じて、複数の場合が考えられる。実際の角度位置は丸い点として示され、目標角度位置は正方形の点として示されている。
【0035】
目標角度位置が実際の角度位置に修正される
図4による場合では、実際の角度位置と目標角度位置とが、少なくとも出力シャフト11の修正された角度距離ΔΘ
o,glだけ離間しているかどうかがチェックされる。そうであると判定されたので、直ちに出力シャフト11を目標角度位置に移動させる。
【0036】
目標角度位置が実際の角度位置に対して逆方向にある
図5による場合には、実際の角度位置と目標角度位置とが、出力シャフト11の少なくとも逆の角度距離ΔΘ
o,geだけ互いに離間しているかどうかがチェックされる。そうであると判定されたので、直ちに出力シャフト11を目標角度位置に移動させる。
【0037】
目標角度位置が実際の角度位置に修正される
図6による場合では、実際の角度位置と目標角度位置とが、少なくとも出力シャフト11の修正された角度距離ΔΘ
o,glだけ離間しているかどうかがチェックされる。そうではないことが確認されるので、出力シャフト11は、最初に、出力シャフト11の少なくとも逆の角度距離ΔΘ
o,geだけ設定点角度位置から離間された新しい実際の角度位置まで、同方向の回転方向に移動される。次いで、出力シャフト11を所望の角度位置に移動させる。
【0038】
目標角度位置が実際の角度位置に対して逆方向にある
図7による場合には、実際の角度位置と目標角度位置とが、出力シャフト11の少なくとも逆の角度距離ΔΘ
o,geだけ互いに離間しているかどうかがチェックされる。そうではないことが確認されるので、出力シャフト11は、最初に、出力シャフト11の少なくとも逆の角度距離ΔΘ
o,geだけ設定点角度位置から離間された新しい実際の角度位置まで、同方向の回転方向に移動される。次いで、出力シャフト11を所望の角度位置に移動させる。
【0039】
図8は、出力シャフト11を駆動するための駆動ユニット1を有するロボットアームの形態のロボット15を示す。第1の更なるシャフト13a及び第2の更なるシャフト13bは、第1の接合部12a及び第2の接合部12bを介して駆動ユニット1に接続されている。例として、把持ツール14が第2の更なるシャフト13b上に配置されている。更なるシャフト12a、12bをその都度制御するために、本発明による更なる駆動装置1が接合部12a、12bに配置され得る。
【符号の説明】
【0040】
1 駆動ユニット
2 ハウジング
3 駆動シャフト
4 駆動エンジン
4a 固定子
4a 回転子
5 ストレイン・ウェーブ・ギア機構
5a 波動発生器
5b 玉軸受け
5c 可撓性リング
5d ギヤリング
5e 可撓性リングカラー
6a 第1のセンサ
6b 第2のセンサ
6c 第3のセンサ
6d センサ部
7 制動機
8 固定されたハウジング側コンポーネント
9 固定されたハウジング側コンポーネント
10a 玉軸受け
10b 玉軸受け
11 出力シャフト
12a 第1の接合部
12b 第2の接合部
13a 第1の更なるシャフト
13b 第2の更なるシャフト
14 把持ツール
15 ロボット
Θi 駆動シャフトの角度位置
Θiv 残留膨張に対応する点
ΔΘi,gl 駆動シャフトの同方向角度距離
ΔΘi,ge 駆動シャフトの逆の角度距離
Θo 出力シャフトの角度位置
Θov 残留膨張に対応する点
ΔΘo,gl 出力シャフトの同方向の角度間隔
ΔΘo,ge 出力シャフトの逆の角度距離
ω 可撓性リングの膨張
ωmax 可撓性リングの最大膨張
ωk 可撓性リングの連続的な膨張
T 可撓性リングのトルク
Tmax 可撓性リングの最大トルク
Tk 可撓性リングにおける連続的なトルク