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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】シール装置及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/447 20060101AFI20240920BHJP
   F01D 11/14 20060101ALI20240920BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16J15/447
F01D11/14
F02C7/28 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023574086
(86)(22)【出願日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2023000705
(87)【国際公開番号】W WO2023136314
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2022005086
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】古庄 達郎
(72)【発明者】
【氏名】西本 慎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晋太朗
(72)【発明者】
【氏名】阪下 堅一
(72)【発明者】
【氏名】河野 将弥
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 昂平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亜積
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/013109(WO,A1)
【文献】特開2009-185811(JP,A)
【文献】特開2012-180874(JP,A)
【文献】特開2016-223426(JP,A)
【文献】特開2012-13083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/447
F01D 11/14
F02C 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の回転部材と、前記回転部材に対して前記回転部材の径方向外側に配置された静止部材との間に配置され、前記回転部材と前記静止部材との間をシールするシール部材と、
前記シール部材を前記径方向外側に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記シール部材は、
前記回転部材の周方向に延在する基部と、
前記周方向に延在し、前記基部から前記径方向外側に向かって突出するリブと、
前記周方向に延在し、前記基部から前記回転部材の径方向内側に向かって突出するシールフィンと、
を有し、
前記リブは、前記周方向における前記リブの一方端と他方端との間に前記付勢部材が配置される切欠き部を有する
シール装置。
【請求項2】
前記基部の前記径方向内側の面から前記リブの前記径方向外側の端面までの距離は、前記基部の前記径方向内側の面から前記基部の前記径方向外側の面までの距離の3倍以上である
請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記基部は、前記静止部材の内周部に形成された前記周方向に延在する溝部における開口部に挿通される挿通部を含み、
前記回転部材の軸方向の前記リブの寸法は、前記軸方向の前記挿通部の寸法の0.3倍以下である、
請求項1又は2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記シール部材とは異なる部材であって、前記切欠き部が存在する周方向位置における前記基部の変形を規制する規制部材、
を備える
請求項1又は2に記載のシール装置。
【請求項5】
前記リブは、前記切欠き部を挟んだ前記周方向の一方側の第1リブと他方側の第2リブとを含み、
前記規制部材は、前記第1リブと前記第2リブとに結合されている、
請求項4に記載のシール装置。
【請求項6】
前記第1リブには、前記回転部材の軸方向に前記第1リブを貫通する第1貫通孔が設けられ、
前記第2リブには、前記軸方向に前記第2リブを貫通する第2貫通孔が設けられ、
前記規制部材には、前記軸方向に前記規制部材を貫通する第3貫通孔と、前記第3貫通孔とは前記周方向に離間した位置で前記軸方向に前記規制部材を貫通する第4貫通孔とが設けられ、
前記規制部材と前記第1リブ及び前記第2リブとを結合する少なくとも2つの結合ピン、
を備え、
前記結合ピンの少なくとも1つは、前記第1貫通孔と前記第3貫通孔に挿入され、
前記結合ピンの少なくとも他の1つは、前記第2貫通孔と前記第4貫通孔に挿入される
請求項5に記載のシール装置。
【請求項7】
前記規制部材には、前記第1リブを挟んで前記軸方向の一方側と他方側とに前記第3貫通孔が設けられ、及び、前記第2リブを挟んで前記軸方向の一方側と他方側とに前記第4貫通孔が設けられている
請求項6に記載のシール装置。
【請求項8】
前記第1リブは、前記径方向内側に向かって凹んだ第1凹部が形成され、
前記第2リブは、前記径方向内側に向かって凹んだ第2凹部が形成され、
前記規制部材は、前記第1凹部に嵌合する第1突部と、前記第2凹部に嵌合する第2突部とを有する
請求項5に記載のシール装置。
【請求項9】
前記規制部材は、結合部材によって前記切欠き部を挟んだ前記周方向の一方側の前記基部と他方側の前記基部とに固定される
請求項4に記載のシール装置。
【請求項10】
前記規制部材は、前記リブを挟んで前記回転部材の軸方向の一方側から他方側まで延在している
請求項4に記載のシール装置。
【請求項11】
前記規制部材は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記付勢部材を前記径方向外側から押圧する押さえ板である
請求項4に記載のシール装置。
【請求項12】
前記回転部材と、
前記静止部材と、
請求項1又は2に記載のシール装置と、
を備える
回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シール装置及び回転機械に関する。
本願は、2022年1月17日に日本国特許庁に出願された特願2022-005086号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンや蒸気タービン等の回転機械は、回転部材としてのロータの周囲において、高圧側から低圧側に流れる作動流体の漏れ量を少なくするシール装置を備える。
【0003】
特許文献1には、ロータの径方向外側に設けられて径方向に移動可能に設けられたシール部材、及びシール部材を径方向外側に向かって付勢する弾性体を有する可動シール部材を備えたシール装置が開示されている。
【0004】
このような構成とされたシール装置では、回転機械の起動及び停止時において、シール部材が弾性体によって径方向外側に付勢され、ロータと可動シール部材との間のシール間隙が十分に確保される。
【0005】
一方、回転機械の運転時には、高圧側の作動流体(例えば、作動蒸気)がシール部材の径方向外側の背面に回り込むことで、シール部材に背面圧力が作用する。この背面圧力は、弾性体の付勢力に抗して、シール部材を径方向内側に変位させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-97352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えばガスタービンや蒸気タービン等における上半部では、シール部材の自重に抗して弾性体の付勢力によってシール部材を鉛直上方に移動させる必要がある。そのため、回転機械の起動及び停止時にロータと可動シール部材との間のシール間隙を確実に確保するためには、弾性体の付勢力は適度に大きくなければならない。しかし、弾性体の付勢力が過度に大きいと、回転機械の運転時にシール部材を径方向内側に変位させることが困難となる。シール部材の径方向の寸法が大きくなるほどシール部材の自重が大きくなるため、弾性体の付勢力を大きくしなければならない。そのため、シール部材の径方向の寸法が大きくなるほど弾性体の付勢力の設定が難しくなる傾向となる。
【0008】
また、例えばガスタービンや蒸気タービン等における下半部では、回転機械の運転時には、シール部材の自重と弾性体の付勢力とに抗してシール部材を径方向内側に変位させなければならない。そのため、回転機械の運転時にシール部材を径方向内側に確実に変位させるためには、弾性体の付勢力を比較的小さくしなければならない。しかし、弾性体の付勢力が過度に小さいと、回転機械の起動及び停止時にロータと可動シール部材との間のシール間隙を確保し難くなる。そのため、シール部材の径方向の寸法が大きくなるほど弾性体の付勢力の設定が難しくなる傾向となる。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、回転機械の起動及び停止時には回転部材とシール部材との間のシール間隙を確保し、回転機械の運転時には作動流体の漏れ量を少なくすることができるシール装置及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るシール装置は、
回転機械の回転部材と、前記回転部材に対して前記回転部材の径方向外側に配置された静止部材との間に配置され、前記回転部材と前記静止部材との間をシールするシール部材と、
前記シール部材を前記径方向外側に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記シール部材は、
前記回転部材の周方向に延在する基部と、
前記周方向に延在し、前記基部から前記径方向外側に向かって突出するリブと、
前記周方向に延在し、前記基部から前記回転部材の径方向内側に向かって突出するシールフィンと、
を有し、
前記リブは、前記周方向における前記リブの一方端と他方端との間に前記付勢部材が配置される切欠き部を有する。
【0011】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、
前記回転部材と、
前記静止部材と、
上記(1)の構成のシール装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、回転機械の起動及び停止時には回転部材とシール部材との間のシール間隙を確保し、回転機械の運転時には作動流体の漏れ量を少なくすることができるシール装置及び回転機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】幾つかの実施形態に係るシール装置を備える回転機械の一例としての蒸気タービンについて説明するための図である。
図2図1の蒸気タービンを構成するケーシング本体をロータの軸線に直交する断面で見た概略断面図である。
図3】幾つかの実施形態に係るシール装置の全体構成例を示す正面図である。
図4A図3の破線で囲んだA部の拡大図であり、第1シール装置の第1可動機構について示している。
図4B】第1可動機構を径方向外側から見たときの拡大図である。
図4C】第1可動機構の分解図である。
図5図4Bに示す第1シール装置の内、第1可動シール部材だけを表した図である。
図6A図4A及び図9AにおけるB-B矢視断面図であり、蒸気タービンの起動・停止時における状態を示している。
図6B図4A及び図9AにおけるC-C矢視断面図であり、蒸気タービンの起動・停止時における状態を示している。
図7A図4A及び図9AにおけるB-B矢視断面図であり、蒸気タービンの定格運転時における状態を示している。
図7B図4A及び図9AにおけるC-C矢視断面図であり、蒸気タービンの定格運転時における状態を示している。
図8図4AにおけるD-D矢視断面図であり、蒸気タービンの定格運転時における状態を示している。
図9A図3の破線で囲んだA部の拡大図であり、第2シール装置の第2可動機構について示している。
図9B】第2可動機構を径方向外側から見たときの拡大図である。
図9C】第2可動機構の分解図である。
図10図9Bに示す第2シール装置の内、第2可動シール部材だけを表した図である。
図11図9AにおけるE-E矢視断面図であり、蒸気タービンの定格運転時における状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0015】
(蒸気タービン1の概略について)
図1は、幾つかの実施形態に係るシール装置を備える回転機械の一例としての蒸気タービンについて説明するための図である。
図1に示すように、蒸気タービンプラント10は、蒸気タービン1と、作動流体としての蒸気Sを蒸気供給源(不図示)から蒸気タービン1に供給する蒸気供給管12と、蒸気タービン1の下流側に接続されて蒸気を排出する蒸気排出管13とを備えている。
【0016】
図1に示すように、幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1は、ケーシング2と、ケーシング2内で軸線O周りに回転するロータ本体11と、ロータ本体11に接続されるロータ3と、ロータ本体11を軸線O回りに回転可能に支持する軸受部4とを備えている。
【0017】
ロータ3は、ロータ本体11とタービン動翼30とを備えている。タービン動翼30は、ロータ本体11から径方向に延びるように取り付けられる複数の動翼本体31と、複数の動翼本体31の各々の先端部に連なるチップシュラウド34とを備える。
【0018】
ケーシング2は、ロータ3を外周側から覆うように設けられた概略筒状の部材である。ケーシング2には、ロータ本体11に向かって径方向内側に延在するように取り付けられる複数の静翼本体21が設けられている。静翼本体21は、内周面25の周方向及び軸線O方向に沿って複数配列される。複数の静翼本体21には、複数の静翼本体21の各々の先端部に連なるハブシュラウド23が取り付けられている。
【0019】
ケーシング2の内部において、静翼本体21と動翼本体31が配列された領域は、作動流体である蒸気Sが流通する主流路20を形成する。
【0020】
図2は、図1の蒸気タービンを構成するケーシング本体をロータの軸線に直交する断面で見た概略断面図である。
説明の便宜上、以下の説明では、軸線Oを中心とする径方向を回転部材の径方向、又は、単に径方向とも称する。同様に、以下の説明では、軸線Oを中心とする周方向を回転部材の周方向、又は、単に周方向とも称し、軸線Oの延在方向を回転部材の軸方向、又は、単に軸方向とも称する。
【0021】
ケーシング2は、蒸気Sの流路を画成するケーシング本体(車室)51と、ケーシング本体51の内周部に固定されるリング状の翼環52(図2参照)とを備えている。さらに、翼環52の内周部には、幾つかの実施形態に係るシール装置100が設けられている。
【0022】
ケーシング本体51は、ロータ3の軸線Oを含む面で、図2に示すように、車室上半部51Aと車室下半部51Bとに二分割されている。これら車室上半部51A及び車室下半部51Bには、それぞれ相手側に突き合わせる面(分割面54A,54B)において、ロータ3の径方向に突出するフランジ部55A,55Bが各々形成されている。そして、車室上半部51Aと車室下半部51Bとは、フランジ部55A,55Bにおいてボルト9により締結されている。
なお、図2に示す概略断面図は、径方向内側にタービン動翼30(図1参照)が配される軸方向位置におけるケーシング本体51の断面を示しており、この断面位置におけるケーシング本体51は円筒状に形成されている。
【0023】
また、翼環52も、ケーシング本体51と同様に、ロータ3の軸線Oを含む面で翼環上半部52Aと翼環下半部52Bとに二分割されている。翼環上半部52Aは、車室上半部51Aに固定され、翼環下半部52Bは、車室下半部51Bに固定されている。車室上半部51Aと車室下半部51Bとを締結固定することで、翼環上半部52Aと翼環下半部52Bとが接続されて翼環52となる。
【0024】
幾つかの実施形態に係るシール装置100は、ケーシング本体51及び翼環52と同様に、シール装置上半部100Uとシール装置下半部100Lとに二分割されている。
【0025】
(シール装置100について)
図3は、幾つかの実施形態に係るシール装置100の全体構成例を示す正面図である。図3に示すように、幾つかの実施形態に係るシール装置100は、複数の動翼本体31の各々の先端部に連なるチップシュラウド34に沿って環状に設けられた固定シール部材110及び可動シール部材120を有する。
【0026】
幾つかの実施形態に係るシール装置100は、後述する図6A図6B図7A、及び図7Bによく示すように、翼環52に形成された周方向に延在する溝部521に保持され、チップシュラウド34と翼環52の間の間隙50をシールするように構成されている。
なお、以降、回転機械の「静止部材」としての翼環52と、「回転部材」としてのチップシュラウド34との間に設けられたシール装置に幾つかの実施形態に係るシール装置100を適用する例について説明するが、幾つかの実施形態に係るシール装置100はグランドシール、静翼チップシール、ダミー環シール等を含む種々の回転機械用のシールとして使用可能である。
【0027】
固定シール部材110は、一対の上側部材110A及び下側部材110Bがロータ本体11の図示左右両側にそれぞれ配置されている。対をなす上側部材110A及び下側部材110Bは合せ面112で合わさっている。固定シール部材110の内周側にはシールフィンが設けられており、固定シール部材110とチップシュラウド34の間を介した流体(回転機械が蒸気タービン1の場合は蒸気S)の漏れを抑制している。
固定シール部材110は、背面から板ばね等で弾性的に支持されており、チップシュラウド34と接触したときに径方向外側に逃げ得るよう構成されているが、基本的には不動であり、蒸気タービン1の稼動状態に応じて移動するものではない。
【0028】
一方、可動シール部材120は、以下で説明するように、蒸気タービン1の起動・停止時にはチップシュラウド34との間隙50が大きく、蒸気タービン1の定格運転時には、合せ面114で固定シール部材110に当接するように図中の矢印方向に移動し、間隙50が狭まるようになっている。
【0029】
図4Aは、図3の破線で囲んだA部の拡大図であり、一実施形態に係るシール装置100である第1シール装置100Aの第1可動機構150Aについて示している。
図4Bは、第1可動機構150Aを径方向外側から見たときの拡大図である。
図4Cは、第1可動機構150Aの分解図である。
図5は、図4Bに示す第1シール装置100Aの内、第1シール装置100Aの可動シール部材120である第1可動シール部材120Aだけを表した図である。
図6Aは、図4A及び図9AにおけるB-B矢視断面図であり、蒸気タービン1の起動・停止時における状態を示している。
図6Bは、図4A及び図9AにおけるC-C矢視断面図であり、蒸気タービン1の起動・停止時における状態を示している。
図7Aは、図4A及び図9AにおけるB-B矢視断面図であり、蒸気タービン1の定格運転時における状態を示している。
図7Bは、図4A及び図9AにおけるC-C矢視断面図であり、蒸気タービン1の定格運転時における状態を示している。
図8は、図4AにおけるD-D矢視断面図であり、蒸気タービン1の定格運転時における状態を示している。
【0030】
図9Aは、図3の破線で囲んだA部の拡大図であり、他の実施形態に係るシール装置100である第2シール装置100Bの第2可動機構150Bについて示している。
図9Bは、第2可動機構150Bを径方向外側から見たときの拡大図である。
図9Cは、第2可動機構150Bの分解図である。
図10は、図9Bに示す第2シール装置100Bの内、第2シール装置100Bの可動シール部材120である第2可動シール部材120Bだけを表した図である。
図11は、図9AにおけるE-E矢視断面図であり、蒸気タービン1の定格運転時における状態を示している。
【0031】
以下の説明では、一実施形態に係る第1シール装置100Aと、他の実施形態に係る第2シール装置100Bとを特に区別する必要がない場合や、一実施形態に係る第1シール装置100Aと、他の実施形態に係る第2シール装置100Bとの総称として記載する場合、単にシール装置100と称する。
同様に、以下の説明では、一実施形態に係る第1シール装置100Aの第1可動機構150Aと、他の実施形態に係る第2シール装置100Bの第2可動機構150Bとを特に区別する必要がない場合や、一実施形態に係る第1シール装置100Aの第1可動機構150Aと、他の実施形態に係る第2シール装置100Bの第2可動機構150Bとの総称として記載する場合、単に可動機構150と称する。
以下の説明では、一実施形態に係る第1シール装置100Aの第1可動シール部材120Aと、他の実施形態に係る第2シール装置100Bの第2可動シール部材120Bとを特に区別する必要がない場合や、一実施形態に係る第1シール装置100Aの第1可動シール部材120Aと、他の実施形態に係る第2シール装置100Bの第2可動シール部材120Bの総称として記載する場合、単に可動シール部材120と称する。
【0032】
幾つかの実施形態に係るシール装置100は、チップシュラウド34と、チップシュラウド34の径方向外側に配置された翼環52との間に配置され、チップシュラウド34と翼環52との間の間隙50をシールするシール部材である可動シール部材120を備える。
幾つかの実施形態に係るシール装置100は、可動シール部材120を径方向外側に付勢する付勢部材としてのばね131を備える。
幾つかの実施形態に係るシール装置100は、ばね131の付勢力に抗してばね131を径方向外側から押圧する押さえ板133を備える。
幾つかの実施形態に係るシール装置100は、ばね131を径方向内側から支持する支持板135を備える。
【0033】
一実施形態に係る第1シール装置100Aは、ばね131の付勢力に抗してばね131を径方向外側から押圧する第1押さえ板133Aを備える。
他の実施形態に係る第2シール装置100Bは、ばね131の付勢力に抗してばね131を径方向外側から押圧する第2押さえ板133Bを備える。
以下の説明では、一実施形態に係る第1シール装置100Aの第1押さえ板133Aと、他の実施形態に係る第2シール装置100Bの第2押さえ板133Bとを特に区別する必要がない場合や、一実施形態に係る第1シール装置100Aの第1押さえ板133Aと、他の実施形態に係る第2シール装置100Bの第2押さえ板133Bとの総称として記載する場合、単に押さえ板133と称する。
【0034】
一実施形態に係る第1シール装置100Aでは、第1可動機構150Aは、ばね131と、第1押さえ板133Aと、支持板135とを有する。
他の実施形態に係る第2シール装置100Bでは、第2可動機構150Bは、ばね131と、第2押さえ板133Bと、支持板135とを有する。
【0035】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、押さえ板133は、可動シール部材120に対して径方向外側に配置され、結合部材としての複数のボルト191によって可動シール部材120に固定されている。図5に示すように、可動シール部材120には、後述する基部121にボルト191の雄ネジと螺合する雌ネジ部195が形成されている。
【0036】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、図6A図6B図7A図7B図8、及び図11に示すように、可動シール部材120は、翼環52に形成された溝部521に保持されている。
可動シール部材120の内周側にはシールフィン122が設けられており、可動シール部材120とチップシュラウド34との間を介した蒸気Sの漏れを抑制している。
【0037】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、図6B図7B図8、及び図11に示すように、ばね131と、押さえ板133と、支持板135とが翼環52の溝部521の内部に設けられている。
幾つかの実施形態では、翼環52の溝部521は、翼環52の内周部52aに形成されていて、周方向に延在する。溝部521は、径方向内側で開口した開口部522を有する。
翼環52には、開口部522の軸方向の寸法が、溝部521における開口部522よりも径方向外側の領域の軸方向の寸法よりも小さくなるように軸方向に突出する一対の突部523が形成されている。
【0038】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、溝部521における一対の突部523に対して支持板135が径方向外側から当接している。そのため、支持板135は、溝部521内での径方向内側への移動が一対の突部523によって規制されている。
【0039】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、ばね131は、支持板135を径方向内側に向かって付勢するとともに、押さえ板133を径方向外側に向かって付勢する。
そのため、押さえ板133が固定されている可動シール部材120は、シールフィン122とチップシュラウド34との間隙が広がるように、ばね131によって付勢されることとなる。
なお、ばね131は例えばコイルばねであってもよく、コイルばねに代えて、皿ばね、板ばね、金属ベローズ等の任意の付勢部材を用いてもよい。
【0040】
(蒸気タービン1の起動・停止時)
蒸気タービン1の起動・停止時には、溝部521内に蒸気Sが導入されておらず、又は、導入されたとしても溝部521内の圧力が比較的低い。そのため、図6A及び図6Bに示すように、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、可動シール部材120は、ばね131の付勢力によって径方向外側に移動するので、シールフィン122とチップシュラウド34との間隙が広がる。
【0041】
(蒸気タービン1の定格運転時)
蒸気タービン1の定格運転時には、溝部521内に比較的高圧の蒸気Sが導入され、溝部521内の圧力が比較的高くなる。そのため、図7A及び図7Bに示すように、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、可動シール部材120は、溝部521内の蒸気Sの圧力によってばね131の付勢力に抗して径方向外側に移動するので、シールフィン122とチップシュラウド34との間隙が狭まる。
【0042】
(可動シール部材120の動作の確実性について)
幾つかの実施形態に係るシール装置100のシール装置上半部100Uでは、可動シール部材120の自重に抗してばね131の付勢力によって可動シール部材120を鉛直上方に移動させる必要がある。そのため、蒸気タービン1の起動・停止時にシールフィン122とチップシュラウド34との間隙を確実に確保するためには、ばね131の付勢力は適度に大きくなければならない。しかし、ばね131の付勢力が過度に大きいと、蒸気タービン1の定格運転時に可動シール部材120を径方向内側に変位させることが困難となる。
【0043】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、可動シール部材120の径方向の寸法は、グランドシール、静翼チップシール、ダミー環シール等に比べると径方向の寸法が大きい。可動シール部材120の径方向の寸法が大きくなるほどシール部材の自重が大きくなるため、ばね131の付勢力を大きくしなければならない。そのため、可動シール部材120の径方向の寸法が大きくなるほどばね131の付勢力の設定が難しくなる傾向となる。したがって、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、グランドシール、静翼チップシール、ダミー環シール等に比べるとばね131の付勢力の設定が難しい。
【0044】
また、幾つかの実施形態に係るシール装置100のシール装置上半部100Uでは、蒸気タービン1の定格運転時には、可動シール部材120の自重とばね131の付勢力とに抗して可動シール部材120を径方向内側に変位させなければならない。そのため、蒸気タービン1の定格運転時に可動シール部材120を径方向内側に確実に変位させるためには、ばね131の付勢力を比較的小さくしなければならない。しかし、ばね131の付勢力が過度に小さいと、蒸気タービン1の起動・停止時にシールフィン122とチップシュラウド34との間隙を確保し難くなる。そのため、可動シール部材120の径方向の寸法が大きくなるほどばね131の付勢力の設定が難しくなる傾向となる。
【0045】
そこで、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、可動シール部材120を以下のように構成することで、可動シール部材120の剛性を確保しつつ可動シール部材120の自重を抑制するようにしている。
【0046】
すなわち、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、例えば図4A図4B図4C図5図6A図6B図7A図7B図8図9A図9B図9C図10、及び図11に示すように、可動シール部材120は、周方向に延在する基部121を有する。
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、例えば図4A図4B図4C図5図6A図6B図7A図7B図8図9A図9B図9C図10、及び図11に示すように、可動シール部材120は、周方向に延在し、基部121から径方向外側に向かって突出するリブ123を有する。
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、例えば図4A図4C図6A図6B図7A図7B図8図9A図9C、及び図11に示すように、可動シール部材120は、周方向に延在し、基部121から径方向内側に向かって突出するシールフィン122を有する。
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、例えば図4C図5図9C、及び図10に示すように、リブ123は、周方向におけるリブ123の一方端と他方端との間にばね131が配置される切欠き部125を有する。
【0047】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、可動シール部材120に上記のリブ123を設けることで、可動シール部材120の剛性を確保しつつ可動シール部材120の自重を抑制できる。これにより、蒸気タービン1の起動・停止時には回転部材としてのチップシュラウド34と可動シール部材120との間のシール間隙であるチップシュラウド34とシールフィン122との間隙を確保し易くなり、蒸気タービン1の定格運転時には作動流体である蒸気Sの漏れ量を少なくすることができる。
【0048】
幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1は、回転部材としてのチップシュラウド34と、静止部材としての翼環52と、幾つかの実施形態に係るシール装置100と、を備える。
これにより、蒸気タービン1の起動・停止時には回転部材としてのチップシュラウド34と可動シール部材120との間のシール間隙であるチップシュラウド34とシールフィン122との間隙を確保し易くなり、蒸気タービン1の定格運転時には作動流体である蒸気Sの漏れ量を少なくすることができる。
【0049】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、基部121の径方向内側の面121aからリブ123の径方向外側の端面123aまでの距離L1は、基部121の径方向内側の面121aから基部121の径方向外側の面121bまでの距離L2の3倍以上であるとよい。
これにより、リブ123を挟んだ軸方向の両側に可動シール部材120を構成する部位が存在しない領域Rを設けることができる。そのため、この領域の分だけ、可動シール部材120の自重を小さくすることができる。幾つかの実施形態に係るシール装置100によれば、基部121の径方向の厚さ(距離L2)に対してリブ123の径方向の長さ((距離L1)-(距離L2))が比較的大きくなるので、上記領域Rが比較的大きくなり、可動シール部材120の自重が比較的小さくなる。これにより、蒸気タービン1の起動・停止時には回転部材としてのチップシュラウド34と可動シール部材120との間のシール間隙であるチップシュラウド34とシールフィン122との間隙を確保し易くなり、蒸気タービン1の定格運転時には作動流体である蒸気Sの漏れ量を少なくすることができる。
【0050】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、基部121は、静止部材としての翼環52の内周部52aに形成された周方向に延在する溝部521における開口部522に挿通される挿通部124を含むとよい。軸方向のリブ123の寸法L3は、軸方向の挿通部124の寸法L4の0.3倍以下であるとよい。
これにより、リブ123を挟んだ軸方向の両側に可動シール部材120を構成する部位が存在しない領域Rを設けることができる。そのため、この領域Rの分だけ、可動シール部材120の自重を小さくすることができる。幾つかの実施形態に係るシール装置100によれば、基部121の軸方向の寸法(寸法L4)に対してリブ123の厚さ(寸法L3)が比較的小さくなるので、上記領域Rが比較的大きくなり、可動シール部材120の自重が比較底小さくなる。これにより、蒸気タービン1の起動・停止時には回転部材としてのチップシュラウド34と可動シール部材120との間のシール間隙であるチップシュラウド34とシールフィン122との間隙を確保し易くなり、蒸気タービン1の定格運転時には作動流体である蒸気Sの漏れ量を少なくすることができる。
【0051】
(リブ123の補強について)
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、切欠き部125が存在する領域では、他の領域と比べてリブ123の高さ(径方向の寸法)が低い、又は、リブ123が存在しないことになる。そのため、切欠き部125が存在する周方向位置における基部121は、切欠き部125が存在しない他の領域に比べて径方向に延在する仮想的な面に沿って曲がるように変形し易い。
【0052】
そこで、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、例えば可動シール部材120とは異なる部材であって、切欠き部125が存在する周方向位置における基部121の変形を規制する規制部材160を備えるとよい。
これにより、切欠き部125が存在する周方向位置における基部121の変形が規制部材160によって規制されるので、切欠き部125を設けても可動シール部材120の剛性を確保できる。
【0053】
なお、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、規制部材160は、付勢部材としてのばね131の付勢力に抗してばね131を径方向外側から押圧する押さえ板133であるとよい。
これにより、規制部材160を押さえ板133とは別の部材として新たに設けなくてもよく、押さえ板133によって可動シール部材120の剛性を確保できる。
【0054】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、規制部材160は、結合部材によって切欠き部125を挟んだ周方向の一方側の基部と他方側の基部121とに固定されるとよい。幾つかの実施形態に係るシール装置100では、例えば図4A図4B図4C図9A図9B、及び図9Cに示すように、規制部材160は、切欠き部125を挟んで周方向の一方側と他方側のそれぞれにおいて、リブ123を挟んで軸方向の一方側と他方側のそれぞれの計4カ所でボルト191によって基部121に固定されている。また、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、例えば図4A図4B図4C図9A図9B、及び図9Cに示すように、規制部材160は、切欠き部125が設けられた周方向位置の1カ所において、ボルト191によって基部121に固定されている。
これにより、規制部材160を可動シール部材120に安定的に固定できる。
【0055】
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、規制部材160は、リブ123を挟んで軸方向の一方側から他方側まで延在しているとよい。
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、リブ123を挟んで軸方向の一方側と他方側とに規制部材160が存在することで、比較的簡素な構成で軸方向にバランスの取れた補強ができる。また、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、可動シール部材120の周方向の剛性も安定して補強できる。
【0056】
(規制部材160とリブ123との結合について)
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、例えば図4C、及び図9Cによく示すように、リブ123は、切欠き部125を挟んだ周方向の一方側の第1リブ141と他方側の第2リブ142とを含んでいるとよい。規制部材160は、第1リブ141と第2リブ142とに後述するような形態で結合されているとよい。
これにより、規制部材160が第1リブ141と第2リブ142との相対的な移動を規制することで、切欠き部125が存在する周方向位置における基部121の変形を抑制できる。これにより、切欠き部125を設けても可動シール部材120の剛性を確保できる。
【0057】
(一実施形態に係る第1シール装置100Aの場合)
一実施形態に係る第1シール装置100Aでは、例えば図4A図4B図4C図5、及び図8に示すように、第1リブ141には、軸方向に第1リブ141を貫通する第1貫通孔143が設けられているとよい。第2リブ142には、軸方向に第2リブ142を貫通する第2貫通孔144が設けられているとよい。
一実施形態に係る第1シール装置100Aでは、例えば図4A図4B図4C、及び図8に示すように、規制部材160には、軸方向に規制部材160を貫通する第3貫通孔163と、第3貫通孔163とは周方向に離間した位置で軸方向に規制部材を貫通する第4貫通孔164とが設けられているとよい。
一実施形態に係る第1シール装置100Aは、例えば図4A、及び図4Bに示すように、規制部材160と第1リブ141及び第2リブ142とを結合する少なくとも2つの結合ピン193を備えるとよい。結合ピン193の少なくとも1つは、第1貫通孔143と第3貫通孔163に挿入されているとよく、結合ピン193の少なくとも他の1つは、第2貫通孔144と第4貫通孔164に挿入されるとよい。
なお、図4Cの分解図では、結合ピン193の記載を省略している。
【0058】
一実施形態に係る第1シール装置100Aでは、規制部材160と第1リブ141及び第2リブ142とを結合ピン193により結合するという比較的簡素な構成で可動シール部材120の剛性を比較的容易に確保できる。
【0059】
一実施形態に係る第1シール装置100Aでは、規制部材160には、第1リブ141を挟んで軸方向の一方側と他方側とに第3貫通孔163が設けられ、及び、第2リブ142を挟んで軸方向の一方側と他方側とに第4貫通孔164が設けられているとよい。すなわち、規制部材160は、第1リブ141及び第2リブ142を挟んで軸方向の一方側と他方側とに存在しており、第1リブ141及び第2リブ142を挟んだ軸方向の一方側と他方側とに結合ピン193を介して連結されているとよい。
一実施形態に係る第1シール装置100Aでは、第1リブ141及び第2リブ142を挟んで軸方向の一方側と他方側とに規制部材160が存在するので、比較的簡素な構成で軸方向にバランスの取れた補強ができる。また、一実施形態に係る第1シール装置100Aによれば、可動シール部材120の周方向の剛性も安定して補強できる。
【0060】
(他の実施形態に係る第2シール装置100Bの場合)
他の実施形態に係る第2シール装置100Bでは、例えば図9A図9C図10、及び図11に示すように、第1リブ141は、径方向内側に向かって凹んだ第1凹部145が形成されていてもよい。他の実施形態に係る第2シール装置100Bでは、例えば図9A図9C図10、及び図11に示すように、第2リブ142は、径方向内側に向かって凹んだ第2凹部146が形成されていてもよい。他の実施形態に係る第2シール装置100Bでは、例えば図9A図9C、及び図11に示すように、規制部材160は、第1凹部145に嵌合する第1突部165と、第2凹部146に嵌合する第2突部166とを有していてもよい。
これにより、規制部材160と第1リブ141及び第2リブ142とを第1突部165と第1凹部145との嵌合、及び、第2突部166と第2凹部146との嵌合により結合するという比較的簡素な構成で可動シール部材120の剛性を比較的容易に確保できる。
【0061】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述の説明では、幾つかの実施形態に係るシール装置100を回転機械の一例として蒸気タービン1に適用した場合について説明したが、幾つかの実施形態に係るシール装置100は、例えばガスタービン等、その他の回転機械に適用してもよい。
【0062】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るシール装置100は、回転機械としての蒸気タービン1の回転部材としてのチップシュラウド34と、回転部材としてのチップシュラウド34に対して回転部材の径方向外側に配置された静止部材としての翼環52との間に配置され、回転部材(チップシュラウド34)と静止部材(翼環52)との間をシールするシール部材である可動シール部材120と、シール部材(可動シール部材120)を径方向外側に付勢する付勢部材としてのばね131と、を備える。シール部材(可動シール部材120)は、回転部材の周方向に延在する基部121と、周方向に延在し、基部121から径方向外側に向かって突出するリブ123と、周方向に延在し、基部121から回転部材の径方向内側に向かって突出するシールフィン122と、を有する。リブ123は、周方向におけるリブ123の一方端と他方端との間に付勢部材(ばね131)が配置される切欠き部125を有する。
【0063】
上記(1)の構成によれば、シール部材(可動シール部材120)に上記のリブ123を設けることで、シール部材(可動シール部材120)の剛性を確保しつつシール部材(可動シール部材120)の自重を抑制できる。これにより、回転機械(蒸気タービン1)の起動及び停止時には回転部材(チップシュラウド34)とシール部材(可動シール部材120)との間のシール間隙を確保し易くなり、回転機械(蒸気タービン1)の運転時には作動流体としての蒸気Sの漏れ量を少なくすることができる。
【0064】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、基部121の径方向内側の面121aからリブ123の径方向外側の端面123aまでの距離L1は、基部121の径方向内側の面121aから基部121の径方向外側の面121bまでの距離L2の3倍以上であるとよい。
【0065】
上記(2)の構成によれば、リブ123を挟んだ軸方向の両側にシール部材(可動シール部材120)を構成する部位が存在しない領域Rを設けることができる。そのため、この領域Rの分だけ、シール部材(可動シール部材120)の自重を小さくすることができる。上記(2)の構成によれば、基部121の径方向の厚さ(距離L2)に対してリブ123の径方向の長さ((距離L1)-(距離L2))が比較的大きくなるので、上記領域Rが比較的大きくなり、シール部材(可動シール部材120)の自重が比較的小さくなる。これにより、回転機械(蒸気タービン1)の起動及び停止時には回転部材(チップシュラウド34)とシール部材(可動シール部材120)との間のシール間隙を確保し易くなり、回転機械(蒸気タービン1)の運転時には作動流体(蒸気S)の漏れ量を少なくすることができる。
【0066】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、基部121は、静止部材(翼環52)の内周部52aに形成された周方向に延在する溝部521における開口部522に挿通される挿通部124を含むとよい。回転部材の軸方向のリブ123の寸法L3は、軸方向の挿通部124の寸法L4の0.3倍以下であるとよい。
【0067】
上記(3)の構成によれば、リブ123を挟んだ軸方向の両側にシール部材(可動シール部材120)を構成する部位が存在しない領域Rを設けることができる。そのため、この領域Rの分だけ、シール部材(可動シール部材120)の自重を小さくすることができる。上記(3)の構成によれば、基部121の軸方向の寸法(寸法L4)に対してリブ123の厚さ(寸法L3)が比較的小さくなるので、上記領域Rが比較的大きくなり、シール部材(可動シール部材120)の自重が比較底小さくなる。これにより、回転機械(蒸気タービン1)の起動及び停止時には回転部材(チップシュラウド34)とシール部材(可動シール部材120)との間のシール間隙を確保し易くなり、回転機械(蒸気タービン1)の運転時には作動流体(蒸気S)の漏れ量を少なくすることができる。
【0068】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、シール部材(可動シール部材120)とは異なる部材であって、切欠き部125が存在する周方向位置における基部121の変形を規制する規制部材160、を備えるとよい。
【0069】
切欠き部125が存在する領域では、他の領域と比べてリブの123高さが低い、又は、リブ123が存在しないことになる。そのため、切欠き部125が存在する周方向位置における基部121は、切欠き部125が存在しない他の領域に比べて径方向に延在する仮想的な面に沿って曲がるように変形し易い。
上記(4)の構成によれば、切欠き部125が存在する周方向位置における基部121の変形が規制部材160によって規制されるので、切欠き部125を設けてもシール部材(可動シール部材120)の剛性を確保できる。
【0070】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、リブ123は、切欠き部125を挟んだ周方向の一方側の第1リブ141と他方側の第2リブ142とを含んでいるとよい。規制部材160は、第1リブ141と第2リブ142とに結合されているとよい。
【0071】
上記(5)の構成によれば、規制部材160が第1リブ141と第2リブ142との相対的な移動を規制することで、切欠き部125が存在する周方向位置における基部121の変形を抑制できる。これにより、切欠き部125を設けてもシール部材(可動シール部材120)の剛性を確保できる。
【0072】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、第1リブ141には、回転部材の軸方向に第1リブ141を貫通する第1貫通孔143が設けられているとよい。第2リブ142には、軸方向に第2リブ142を貫通する第2貫通孔144が設けられているとよい。規制部材160には、軸方向に規制部材160を貫通する第3貫通孔163と、第3貫通孔163とは周方向に離間した位置で軸方向に規制部材160を貫通する第4貫通孔164とが設けられているとよい。シール装置100は、規制部材160と第1リブ141及び第2リブ142とを結合する少なくとも2つの結合ピン193を備えるとよい。結合ピン193の少なくとも1つは、第1貫通孔143と第3貫通孔163に挿入されているとよく、結合ピン193の少なくとも他の1つは、第2貫通孔144と第4貫通孔164に挿入されるとよい。
【0073】
上記(6)の構成によれば、規制部材160と第1リブ141及び第2リブ142とを結合ピン193により結合するという比較的簡素な構成でシール部材(可動シール部材120)の剛性を比較的容易に確保できる。
【0074】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、規制部材160には、第1リブ141を挟んで軸方向の一方側と他方側とに第3貫通孔163が設けられ、及び、第2リブ142を挟んで軸方向の一方側と他方側とに第4貫通孔164が設けられているとよい。
【0075】
上記(7)の構成によれば、第1リブ141及び第2リブ142を挟んで軸方向の一方側と他方側とに規制部材160が存在するので、比較的簡素な構成で軸方向にバランスの取れた補強ができる。また、上記(7)の構成によれば、シール部材(可動シール部材120)の周方向の剛性も安定して補強できる。
【0076】
(8)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、第1リブ141は、径方向内側に向かって凹んだ第1凹部145が形成されていてもよい。第2リブ142は、径方向内側に向かって凹んだ第2凹部146が形成されていてもよい。規制部材160は、第1凹部145に嵌合する第1突部165と、第2凹部146に嵌合する第2突部166とを有していてもよい。
【0077】
上記(8)の構成によれば、規制部材160と第1リブ141及び第2リブ142とを第1突部165と第1凹部145との嵌合、及び、第2突部166と第2凹部146との嵌合により結合するという比較的簡素な構成でシール部材(可動シール部材120)の剛性を比較的容易に確保できる。
【0078】
(9)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(8)の何れかの構成において、規制部材160は、結合部材(ボルト191)によって切欠き部125を挟んだ周方向の一方側の基部と他方側の基部121とに固定されるとよい。
【0079】
上記(9)の構成によれば、規制部材160をシール部材(可動シール部材120)に安定的に固定できる。
【0080】
(10)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(9)の何れかの構成において、規制部材160は、リブ123を挟んで回転部材の軸方向の一方側から他方側まで延在しているとよい。
【0081】
上記(10)の構成によれば、リブ123を挟んで軸方向の一方側と他方側とに規制部材160が存在するので、比較的簡素な構成で軸方向にバランスの取れた補強ができる。また、上記(10)の構成によれば、シール部材(可動シール部材120)の周方向の剛性も安定して補強できる。
【0082】
(11)幾つかの実施形態では、上記(4)乃至(10)の何れかの構成において、規制部材160は、付勢部材(ばね131)の付勢力に抗して付勢部材(ばね131)を径方向外側から押圧する押さえ板133であるとよい。
【0083】
上記(11)の構成によれば、規制部材160を押さえ板133とは別の部材として新たに設けなくてもよく、押さえ板133によって可動シール部材120の剛性を確保できる。
【0084】
(12)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、回転部材としてのチップシュラウド34と、静止部材としての翼環52と、上記(1)乃至(11)の何れかの構成のシール装置100と、を備える。
【0085】
上記(12)の構成によれば、回転機械(蒸気タービン1)の起動及び停止時には回転部材(チップシュラウド34)とシール部材(可動シール部材120)との間のシール間隙を確保し易くなり、回転機械(蒸気タービン1)の運転時には作動流体(蒸気S)の漏れ量を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 蒸気タービン
34 チップシュラウド
52 翼環
52a 内周部
100 シール装置
120 可動シール部材
121 基部
121a 面
121b 面
122 シールフィン
123 リブ
123a 端面
124 挿通部
125 切欠き部
131 ばね
141 第1リブ
142 第2リブ
143 第1貫通孔
144 第2貫通孔
145 第1凹部
146 第2凹部
160 規制部材
163 第3貫通孔
164 第4貫通孔
165 第1突部
166 第2突部
191 ボルト
193 結合ピン
521 溝部
522 開口部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11