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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両用ルーフテント
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/12 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B60J7/12 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024009759
(22)【出願日】2024-01-25
【審査請求日】2024-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599053713
【氏名又は名称】株式会社ホワイトハウス
(73)【特許権者】
【識別番号】524035243
【氏名又は名称】オートレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 文夫
(72)【発明者】
【氏名】朴 東賛
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122607(JP,A)
【文献】特開2022-117555(JP,A)
【文献】実開平06-033716(JP,U)
【文献】実開平07-009635(JP,U)
【文献】韓国登録特許第2160195(KR,B1)
【文献】中国実用新案第209509636(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/00 - 7/22
E04H 15/00 - 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフに形成される穴を開閉可能なテントを有する車両用ルーフテント(6)であって、
スティール製の車体(2)のルーフ縁(7)に固定されるスティール製のベース(4)と、
前記ベースの開口(5)を開閉可能なルーフ本体(8)であって、スティール製で前記ルーフ縁及び前記ベースと外観上同質の質感を有するルーフ本体と、
前記ベースに対し前記ルーフ本体を相対運動可能に連結するリンク機構(10、30)と、
前記リンク機構に動力を伝達可能な電動のアクチュエータ(11)と、
前記ベースの開口の車外側に形成可能なテント部(50)とを備える車両用ルーフテント。
【請求項2】
前記アクチュエータは、シリンダ(12)と、前記シリンダに対し伸縮可能なロッド(13)と、前記シリンダに対し前記ロッドを駆動する電動モータと、前記電動モータの回転駆動力を前記ロッドの伸縮運動に変換する機構とを備える請求項1記載の車両用ルーフテント。
【請求項3】
前記機構は、ボールねじを有する請求項2記載の車両用ルーフテント。
【請求項4】
前記リンク機構は、一端が前記ルーフ本体に回動可能に支持され、他端が前記ベースに回動可能に支持されるレバー(14)を有し、前記ロッドの一端が前記レバーの中央に回動可能に支持される第1リンク機構(10)と、
第1リンク(32)の中央と第2リンク(34)の中央は回動可能に連結されている第2リンク機構(30)と、を有する請求項2又は請求項3に記載の車両用ルーフテント。
【請求項5】
前記1リンク機構が収縮したときロックする機構(14、48、19)を備える請求項4に記載の車両用ルーフテント。
【請求項6】
前記テント部は、布部(56)と、前記ベース及び前記ルーフ本体から前記布部を分離可能である着脱自在な着脱可能部材とを有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用ルーフテント。
【請求項7】
前記テント部は、前記テント部の内外に光を通す窓部(57、58)を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用ルーフテント。
【請求項8】
前記布部は、メッシュ(57、58)を備える請求項6記載の車両用ルーフテント。
【請求項9】
ルーフ穴(3)を有する車体と、前記車体に対し車両前後方向に移動可能であって前記ルーフ穴を開閉可能な床部材と、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用ルーフテント(6)とを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ルーフテントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のルーフを開閉する機構として、特許文献1は、開閉ルーフの左右に設けた開閉リンクと、開閉ルーフの開閉回動中心軸近傍に一端部を回動自在に設け、他端側を開閉リンクの開閉折り畳み軸に設けた左右のシリンダと、開閉ルーフの開閉端部側とルーフ本体に両端が取り付けられるテントを開示している。
【0003】
この開示には、エアタンク内の空気をエアコンプレッサが吸引し、吸引した空気をコード内を経由してエアシリンダに供給し、開閉ルーフを稼働することが開示されている。開閉ルーフはFRP樹脂素材からなることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-341366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車両のボディは剛性確保の観点から鉄で製造されていることが多い。ルーフテント付のボディを鉄で製造する車両では、車両の鉄製ルーフの中央に開口を形成し、FRP、CFRP等の繊維強化樹脂製のルーフ本体を設けている。
【0006】
このようなルーフテント付の車両において、ルーフの開口周囲が鉄からなるボディの外壁と、繊維強化樹脂からなるルーフ本体の外壁は、異なる材料である。したがって、車両のボディの全体観について、外観上の美観や観る人の印象が異なり、ユーザーからは、ボディとルーフ本体との間で異質材料の特性に起因する異和感を嫌い、同質性の統合感のあるルーフテント付車両が求められていた。
【0007】
公知の繊維強化樹脂製のルーフ本体は、一定程度以上の強度確保の点からルーフ本体の重量を軽量にすることが困難であった。また、FRP製のルーフ本体は、外壁の表面粗さが粗になり、相対的に低剛性になり、ルーフ本体の外壁に反射した光によってルーフ本体の表面に波状にうねる反射模様が生じるなど品質が損なわれるという問題がある。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両に用いられる高付加価値のルーフテントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用ルーフテントは、車両のルーフに形成される穴を開閉可能なテントを有する車両用ルーフテント(6)であって、
スティール製の車体(2)のルーフ縁(7)に固定されるスティール製のベース(4)と、
前記ベースの開口(5)を開閉可能なルーフ本体(8)であって、スティール製で前記ルーフ縁及び前記ベースと外観上同質の質感を有するルーフ本体と、
前記ベースに対し前記ルーフ本体を相対運動可能に連結するリンク機構(10、30)と、
前記リンク機構に動力を伝達可能な電動のアクチュエータ(11)と、
前記ベースの開口の車外側に形成可能なテント部(50)とを備える構成を採用する。
【0010】
車両用ルーフテントにおいて、ルーフ本体を金属製にすると、様々な特性を得られることが判明した。ルーフ本体の外観美については、特定ユーザ層から高い評価を受けた。
一般に、ルーフテントを有する車両ボディとルーフ本体とを異質の材料にて構成すると、車両ボディと車両ルーフとの特性の同質性を確保することが困難であり、車両全体の外観とルーフ本体の外観上の異和感を生じていた。
【0011】
本発明の車両用ルーフテントは、この課題を解決した。金属材でルーフ本体を製造するとき、ルーフ本体の表面に外観において波状の光模様のない高密度の外壁を形成することができた。
本発明の車両用ルーフテントによると、車両ボディの外観上、太陽光などの光が照射された車体に波状の凹凸のない平滑面の美観をそのまま保持するとともに、ルーフテントのルーフ本体の外壁と車体の外壁との連続する平滑な表面の美観がそのまま統合感をもって保持される。これにより、車両の外壁の全体観について、車体とルーフ本体の境界域に調和のとれた同質性を確保し、ルーフテント付車両全体において、車体と閉状態のルーフ本体とが融合し、異和感を生じさせない美観を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態の車両の正面図。
図2】本発明の第一実施形態のベースの斜視図。
図3】本発明の第一実施形態にルーフ本体の斜視図。
図4】本発明の第一実施形態のルーフテントの骨組みを示す斜視図。
図5】本発明の第一実施形態のルーフテントの骨組みを示す正面図。
図6】本発明の第一実施形態によるリンク機構の正面図。
図7図6のVII部分の拡大図、。
図8図6のVIII部分の拡大図、。
図9】本発明の第一実施形態による開状態のテント部を示す斜視図。
図10】本発明の第一実施形態によるアクチュエータの電気回路図。
図11】外観の比較実験1において比較形態と本実施形態とを対比した比較図。
図12】外観の比較実験2において比較形態と本実施形態とを対比した比較図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による車両用ルーフテントを図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0014】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について図1から図12に基づいて説明する。
車両1のボディ2は、スティール製であって屋根部にルーフ穴3を有し、このルーフ穴3を形成するルーフ縁7にルーフテント6のベース4が固定される。ルーフ縁7は、前ピラー15に連なっている。前ピラー15は、ボディの一部を形成している。ベース4、ルーフ縁7及び前ピラー15はスティール製である。ルーフ縁7は、特許請求の範囲に記載のルーフ本体8の周囲に相当する。
【0015】
ルーフテント6はボディ2に備え付けれている。ここに、ルーフテント6の固定部は、ベース4等をいい、可動部は、リンク機構、アクチュエータ、ルーフ本体8等をいう。
【0016】
ルーフテント6は、テント機能の不使用時、ルーフ本体8の閉状態においてルーフテント6の構成要素としてのリンク機構及びアクチュエータは、車両に格納される。
ボディ2のルーフのうちルーフ穴3を除くルーフ縁7は、スティール製であり、スティール製の前ピラー15に連なっている。ルーフ縁7から前ピラー15に連なる表面は、平滑面で連続的な質感を有する。
【0017】
ベース4は、スティール製であり、図2に示すように中央部に開口5が形成される。ベース4は、前縁と横縁と後縁で方形状に形成され、中央に開口5が形成される。
ルーフ本体8は、スティール製であり、図2に示す開口5を開閉可能であり、後述するリンク機構、アクチュエータ等を経由してベース4に連結されている。ルーフ本体8は、前ピラー、ルーフ縁、と同様にスティール製であり、外観上美しい波打たない凹凸のない平滑面を形成する。ルーフ本体8はテントの高剛性の屋根の機能を有する。
【0018】
図4から図8にルーフテントのリンク機構を示す。
リンク機構は、ベース4とルーフ本体8を開口5の開閉動可能に連結する。リンク機構は、前方側の左右に配置される第1リンク機構10と、後方側の左右に配置される第2リンク機構30とからなる。
【0019】
第1リンク機構10はアクチュエータ11とレバー14とからなる。レバー14の一端はルーフ本体8のフレーム9に回動動可能に取り付けられ、他端はベース4の横縁に回動可能に取り付けられる。アクチュエータ11のシリンダ12の一端が第1連結部17に連結され、この第1連結部17がベース4に連結される。ロッド13の先端はレバー14の中央部に回動可能に取り付けられる。
【0020】
第2リンク機構30は、ベース4の横縁で第1リンク機構10の車両後方側の左右に取り付けられる。第1レバー31の一端がベース4に回動可能に連結され、他端が第1リンク32の一端に回動可能に連結され、第1リンク32の他端がルーフ本体8のフレーム9に回動可能に連結される。ベース4に一端が回動可能に連結される第2リンク34は他端が第2レバー33の一端に回動可能に連結され、他端がルーフ本体8のフレーム9に回動可能に連結される。第1リンク32の中央と第2リンク34の中央は回動可能に連結されている。
【0021】
図7はルーフ本体の閉状態を示す。第1リンク機構10の第1連結部17は、ルーフ本体が閉状態にあるベース4の固定部18との関係を示している。
レバー14の一端141の係止ピン48が固定部18の係止溝19に嵌合している。レバー14の一端141のピン47に回動可能に取り付けられる第3連結部46の端部461は、ルーフ本体8に取り付けられるフレーム9に固定されている。
ルーフ本体8が開くとき、ベース4の係止溝19からレバー14の係止ピン48が破線に示すように抜け出て解除される。このときベース4の第2連結部23ではレバー14の他端142のピン24がベース4の長孔25を図8で右方向に移動した後、レバー14が図8で時計方向に回動する。
【0022】
図4図5及び図6に示すアクチュエータ11は、シリンダ12の内部にサーボモータ等の図示しない電動モータ、及び電動モータの駆動力を受けて連動する図示しない動力伝達機構を有する。動力伝達機構は、例えば、サーボモータ(不図示)のモータ軸(不図示)から、モータ軸に連結されるねじ軸(不図示)、ボール(不図示)、ボールを収容するボールねじナット(不図示)、ナットの端部に連結されるロッド12から構成される。モータ軸の正転と逆転を切り替えることで、ロッド12を伸縮させる。小径のシリンダで高出力にロッド12先端の位置を的確に位置制御することができる。
【0023】
図10に示すように、制御装置61は、車両のルーフに図1に示すようにテント部50を形成する状態と、第1リンク機構10及び第2リンク機構30を折り畳んで車両にテント部50を収納する状態とに切替を制御する装置である。図10に示すように、車室内の運転席近傍に設けられる開閉スイッチ60、開閉スイッチの出力に応じて演算処理する制御部61からなり、制御部61の演算処理後の出力に応じて図示しない前記サーボモータが正転又は逆転し、図示しない前記の動力伝達機構を経由してロッド12を伸縮する。伸縮するロッド12に連結される前述した図4図5図6に示す第1リンク機構10と第2リンク機構30を経由してルーフ本体8を所望の開閉位置に制御する。
【0024】
開閉スイッチ60の出力により制御部61が作動し、操作者の意思に対応するルーフ本体8の開状態又は閉状態になるようにアクチュエータ11のサーボモータに駆動信号を送信する。
【0025】
操作者がルーフ開のスイッチを開閉スイッチ60にてオンすると、制御部61がルーフ開に応じた駆動信号をサーボモータに送り、サーボモータの正転により動力伝達機構を経由して駆動力がリンク機構に伝達され、リンク機構を経由してルーフ本体が開状態になるまで作動する。開状態を検知するとサーボモータの回転駆動は停止する。操作者がルーフ閉のスイッチを開閉スイッチ60にてオンすると、制御部61がルーフ閉に応じた駆動信号をサーボモータに送り、サーボモータの逆転により動力伝達機構を経由して駆動力がリンク機構に伝達され、リンク機構を経由してルーフ本体が閉状態になるまで作動する。閉状態を検知するとサーボモータの回転駆動を停止する。
【0026】
テント部50は、図1図9に示すように、ルーフ本体8が開状態で図9に示す開状態の形態になる。テント部50は開状態のときテント機能がある。
テント部50は、ラバーバンド52と布56とメッシュ57、58からなる。ラバーバンド49は前面左右の前ラバーバンド53と後ラバーバンド54と側面の鉛直方向の側ラバーバ55、水平方向のラバーバンド52等からなる。
布56は側面と後面に面状に形成される。テント内外を仕切る役割がある。これにより、外部の雨水、日射、風の侵入を抑制する。
【0027】
右左両側の前ラバーバンド53の間は前面メッシュ57(窓)が貼り付けられ、側面は側面メッシュ58(窓)が貼り付けられる。
テント部50を構成するラバーバンド、布、メッシュ57、58は、ベース4及びルーフ本体88から例えば図示しないファスナ等の脱着部材を経由して車両から分離することができる。ベース4及びルーフ本体8に取り付けられる取付部と、この取付部から分離可能なテント部50とが、ファスナー(不図示)の開閉の切替により脱着可能になっている。取付部は布部56に設けられる。布部56に設けられるファスナは特許請求の範囲に記載の脱着可能部材に相当する。
【0028】
テント部50は、図1に示すルーフ本体8の開状態から閉状態に移行すると、折り畳まれ、ルーフ本体8と連動して車両1のボディ2のルーフ縁7の車室内部に収容可能である。
テント部50は、ルーフ本体8の閉状態から開状態に移行すると、車室内に折り畳まれた布が伸長し、図1及び図9に示す開状態に移行する。
【0029】
前面メッシュ57は、ファスナにより前ラバーバンド53から脱着可能になっている。前面メッシュ57をファスナでラバーバンドから分離した状態では前ラバーバンド53により形成される枠内にテント内空間を内外完全開放にする窓を形成する。前面メッシュ57を前ラバーバンドに装着した状態では、窓に相当する箇所に内外部分開放の前面メッシュ57が形成される。
【0030】
車両から分離可能な機能を有するテント部50は、他の形式例えば、窓の位置、大きさや布の種類等の異なる他のテント部に交換することができる。季節に応じてテント部を交換可能な機能を備える。あるいは交換機能を有するから、テント部の清掃や趣向の異なる他のテント部へ変更などにより車両をともにしたテント生活の快適度を高めることができる。
【0031】
本実施形態は、前述したように、ルーフ本体をスティール製としている。ボディと同様にスティール製であることから、多種の利点がある。
例えば車両のボディ2もルーフ本体8もスティール製であることで、車両全体の外観とルーフ本体の外観上の異和感を生じない。これにより、車両全体の美観が向上する。特にルーフ本体8を閉状態にしているときや車両走行状態では、ボディ2とルーフの境界に隔たり感がなく車両全体に外観上の一体感ないし統合された美観を発揮するから、ルーフテント付車両の商品価値が向上する。
【0032】
次にルーフテント付車両のルーフ本体について特性試験を行った試験結果を説明する。
(1)特性試験
本実施形態によるスティール製のルーフ本体と、比較形態によるFRP製のルーフ本体とを対比した。
【0033】
比較形態によるFRP製のルーフ本体は、重量:42.67kg、容積:21663cm3、上面の総面積:86974cm2、密度:1970kg/m3であった。
これに対し、本実施形態によるスティール製のルーフ本体は、重量:23.89kg、容積:3040cm3、ルーフ本体の上面の総面積:86929cm2、密度:7860kg/m3であった。
【0034】
本実施形態は、比較形態と対比すると、外観上の形状は近似するが、ルーフ本体の板厚は薄肉であった。スティール製にすることで、比較形態との対比でルーフ本体の顕著な薄肉化を実現できた。スティール材のルーフ本体の容積が小さく、ルーフ本体の上面の総面積は比較形態と略同じであり、重量は軽量、ルーフ本体は高密度であった。
【0035】
ルーフ本体については、スティール製の本実施形態は、FRP製の比較形態との対比において、スティール製(本実施形態)の場合、薄肉化でき、高密度化、軽量化、高剛性化できたという比較数値データ(寸法、板厚、材料、重量など)が得られた。
【0036】
本実施形態によれば、高剛性の車両1のボディ2に連結されるルーフ本体8をスティール製にし、テントのルーフに用いるから、上面が高剛性のテントルーフを形成し、ルーフ本体8の下方の居住空間として良好な車両ルーフテントを形成することができる。 本実施形態によれば、比較形態に比べ、車体に備える重量が相対的に軽量であるから、車両の燃費特性が優良になる。軽量化と高剛性とを両立する車両用ルーフテントを提供できる。
【0037】
本実施形態によれば、テント部50は、通常時、テント不使用時、例えば通常の車両停止時及び走行時、ボディ2の内部に収納されており、テント使用時、開閉スイッチ60のオン操作により車両のルーフ上にテント部50を自動組立することができる。また開閉スイッチ60のオフ操作によりテント50をボディ(車室)内に折り畳まれて収納することができる。したがって、車両を目的地に移動し、目的地の適切な場所を選択し、その場所に車両を移動し、当該場所において運転室内の簡便な操作により、車室内空間を拡大でき、快適な移動可能型の居住空間を形成することができる。テント部は、車両のボディに備え付けてあるから、目的地への運搬時の作業負荷を軽減することができる。
【0038】
(2)外観試験
比較実験1(太陽光を照射した実験)
ルーフ本体の外観については、スティール製のルーフ本体(実施形態1)とFRP製のルーフ本体(比較形態1)とについて、屋外で太陽光を照射し比較実験した。
【0039】
スティール製のルーフ本体(実施形態1)の場合、比較形態1との対比において、表面は、凹凸のない平滑な光沢のある歪みのない美しい仕上がり曲面であった。
FRP製のルーフ本体の表面は凹凸状に波打った反射面であったが、実施形態1では、波打つ反射面は見られず凹凸のない平滑な反射面であった。
【0040】
ここには、ルーフ本体をスティール製にしたときの仕上り面について、評価するにあたり、視覚上の美の程度を説明するため、FRP製の比較形態1とスティール製の実施形態1とを対比した模式的イメージ図を図11に示す。図11Aに示す比較形態1においてルーフ本体88とベース84の領域内に波状細線の反射光の乱れ80が現れたが、図11Bに示す実施形態1においては、ルーフ本体8からベース4を連ねてルーフ縁7までは直線状細線20に示す反射光の安定した整然さ20が現れた。
【0041】
図11Aに示すように、比較形態1では、ルーフ本体88の表面は光の反射で波打つ面が観察された。ここに外観上、比較形態1では、ルーフ本体88の質感と、ルーフ本体に隣接するルーフ縁7(ボディ)の質感とで、異質の質感があった。
【0042】
実施形態1では、図11Bに示すように、ルーフ本体の表面に生じる光の反射面は平滑面であり、ルーフ本体8の周囲のルーフ縁7を含む車体全体の反射面と視覚上同質の質感を感じられた。
【0043】
車両用ルーフテント6の商品価値は、スティール製のルーフ本体(実施形態1)が格段に高いという評価があった。多様な価値観があるなかで趣向により評価は異なるが、少なくとも、スティール製のルーフテントのニーズの高いことが判明した。この点において、本実施形態による車両用ルーフテントの商品価値が高いことが評価された。
【0044】
比較実験2(線状の蛍光を照射した実験)
比較実験2は、ルーフ本体をFRPで製造した場合(比較形態2)と、ルーフ本体をスティールで製造した場合(実施形態2)とにおいて、ルーフ本体に線状の光を照射したとき、ルーフ本体の反射面に映る帯状の筋形状を対比した。
【0045】
FRP製のルーフ本体の比較形態2とスティール製のルーフ本体の実施形態2とで対比した。その結果について模式的イメージ図を図12に示す。
図12A図12Bに示すように、線状の光の反射した2本の面は、、比較形態2では、ザギザ状の縁をもった帯状の反射面81、82になるのに対し、実施形態2では、平滑な均一幅のくっきりとした帯状の反射面71、72になり、安定感のある平滑面の美を感じさせられた。
【0046】
本発明は、一実施形態としてスティール製のルーフ本体を有する車両用ルーフテントについて説明したが、スティール以外の材料、例えばアルミニュウム、アルミニュウム合金等の金属材又は合金材からなるルーフ本体を備える車両用ルーフテントであってもよい。
【0047】
本発明は、車両ボディを構成する金属材又は合金材とルーフ本体を構成する金属材又は合金材とが異なる金属材又は合金材であってもよい。金属材又は合金材であれば、FRPと異なり、ルーフ本体の外壁に目視で外観上凹凸状の波打たない平滑な表面をもつルーフ本体を製造することができる。
【0048】
前述した一実施形態では、ルーフ本体の金属材はスティールであったが、本発明は、他の金属材でルーフ本体及びルーフ本体周囲のボディを製造した場合も「外観上同質の高い商品価値の質感を有する」ことが推認される。
【0049】
ルーフテントを開状態にしたとき、ベース4の開口5に相当する箇所には、図示しないが、床板部材に相当するパネルマットの縁をボディに支持し、このパネルマットにより開口を塞ぐ機能と床機能を果たす床装置を構成してもよい。また、パネルマットは、ボディと分離可能な形式であってもよく、折畳み可能な複数マットにしてもよく、パネルマットをルーフ本体に回動可能に連結されていてもよい。運転室とテント内空間を区切る床部材を構成する床装置を搭載することもできる。床部材を敷設したときは、床部材の上に就寝することもでき、車中泊可能な設備にもなる。
【0050】
アクチュエータの駆動源に用いた電動モータの例として、実施形態ではサーボモータを用いたが、本発明では、他の種類の電動モータを用いてもよい。ボールねじを用いたが、他の動力伝達機構を用いたものであってもよい。電動モータの駆動力をロッドの伸縮運動に変換する動力伝達機構については、本発明では、上記実施形態に用いたボールねじ以外の動力伝達機構であってもよい。これにより、電動モータの場合、エアシリンダや油圧シリンダ等の駆動源に比べ、体格が小型で小空間にアクチュエータを設けることができ、車室内空間の有効利用ができ、作動時に低騒音であり、操作が簡便であるという利点がある。
【0051】
前記実施形態では、前開き型であって車両の前方にルーフ本体が開口を大きくする形式であるが、本発明は、車両の後方にルーフ本体が開口を大きくする後開き型の実施形態に適用してもよい。
【0052】
前記実施形態は、アクチュエータによりルーフ本体を開閉駆動する形態を示したが、本発明は、電動モータに代わり手動操作によりスプリングダンパ及びリンク機構を利用してルーフ本体を開閉駆動する実施形態のものであってもよい。
【0053】
ここに、金属材からなるルーフ本体と、ルーフ本体の周囲の金属材からなるボディとを「外観上同質の質感を有する」と表現する。ルーフ本体をスティールで製造する場合の質感と、ボディをスティールで製造する場合の質感との区別がつかない程度に外観上同質の質感を有する。
【0054】
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 車両、
2 ボディ(車体)、
3 ルーフ穴、
4 ベース、
5 開口、
6 ルーフテント、
7 ルーフ穴、
8 ルーフ本体、
9 フレーム、
10 第1リンク機構、
11 アクチュエータ、
12 シリンダ、
13 ロッド、
14 レバー
30 第2リンク機構、
50 テント部、
57、58 メッシュ(窓部)、
60 開閉スイッチ、
61 制御装置。
【要約】
【課題】 車両に用いられる高付加価値のルーフテントを提供する。
【解決手段】 車両用ルーフテント6は、ボディ2のルーフ縁7に固定されるベース4の開口5を開閉可能なスティール製のルーフ本体8を備える。ベース4に対しルーフ本体8を相対運動可能に連結する第1リンク機構と、ベースの開口の車外側に形成可能なテント部50とを備える。テント部50は、布56の内部に居住空間を形成可能である。車両用ルーフテント6によると、太陽光などの光が照射されたとき、ボディ2に波状の凹凸のない平滑面の美観をそのまま保持するとともに、ルーフテント6のルーフ本体8の外壁とボディ2の外壁との連続する平滑面の美観がそのまま統合感をもって保持される。外観上、ボディ2と閉状態のルーフ本体8は境界域のない同質性を確保し、ルーフテント付車両全体の外観上の異和感を生じさせない美観がある。
【選択図】図1
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