(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】模型部品及び模型玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 3/36 20060101AFI20240920BHJP
A63H 3/38 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A63H3/36 C
A63H3/38 Z
(21)【出願番号】P 2024043734
(22)【出願日】2024-03-19
【審査請求日】2024-07-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大介
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-247798(JP,A)
【文献】米国特許第5540612(US,A)
【文献】中国実用新案第204034260(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模型玩具の玩具部品であって、
透明部材と、
前記透明部材の少なくとも一部を覆うカバー部材と
を含み、
前記透明部材は、前記カバー部材から露出した露出部分より視認可能な位置に第1の切り欠きと第2の切り欠きとを有し、
前記第1の切り欠きは、前記第2の切り欠きよりも、前記露出部分に近接して設けられ、
前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きとは、前記露出部分の正面からみて少なくとも一部において重複するように異なる形状にて構成されている、玩具部品。
【請求項2】
前記透明部材は、前記第1の切り欠きに隣接した第1の残存部と、前記第2の切り欠きに隣接した第2の残存部とを有し、
前記第1の残存部と前記第2の残存部とは、前記露出部分の正面からみて、少なくとも一部において重複するように構成されている、請求項1に記載の玩具部品。
【請求項3】
前記透明部材は、前記露出部分の正面からみた場合に、
前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きとが重複する第1の領域と、
前記第1の切り欠きと前記第2の残存部が重複する第2の領域と、
前記第2の切り欠きと前記第1の残存部が重複する第3の領域と、
前記第1の残存部と前記第2の残存部が重複する第4の領域と、
を含むように構成されている、請求項2に記載の玩具部品。
【請求項4】
前記第4の領域は、前記透明部材の中心側に位置し、
前記第1の領域と前記第2の領域と前記第3の領域とは、前記第4の領域の周辺に位置する、ように構成されている請求項3に記載の玩具部品。
【請求項5】
前記透明部材は有色透明の材料により構成されており、
前記第4の領域は、前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域よりも、色の濃い領域である、請求項4に記載の玩具部品。
【請求項6】
前記透明部材は有色透明の材料により構成されており、
前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第4の領域よりも、明度が高い領域である、請求項4に記載の玩具部品。
【請求項7】
前記透明部材の露出部分は平坦面を有する、請求項6に記載の玩具部品。
【請求項8】
前記第1の切り欠きと、前記第2の切り欠きとは、少なくとも一部において、前記透明部材の周辺部から中心部にかけて切り欠きの厚みが減少するように構成されている、請求項7に記載の玩具部品。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の玩具部品を有する模型玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型部品及び模型玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
人形玩具(模型玩具)には、透明の部材に構成された模型部品が含まれる。特許文献1には、目の部分に透明の部材を組み込んだ人形玩具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
模型玩具において、透明部材により視覚的効果を奏する有意な構成を提供することが望まれている。そこで、本発明では、模型玩具において、透明部材により視覚的効果を奏する有意な構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、模型玩具の玩具部品であって、透明部材と、前記透明部材の少なくとも一部を覆うカバー部材とを含み、前記透明部材は、前記カバー部材から露出した露出部分より視認可能な位置に第1の切り欠きと第2の切り欠きとを有し、前記第1の切り欠きは、前記第2の切り欠きよりも、前記露出部分に近接して設けられ、前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きとは、前記露出部分の正面からみて少なくとも一部において重複するように異なる形状にて構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、模型玩具において、透明部材により視覚的効果を奏する有意な構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る模型玩具100の一形態の(A)外観正面及び(B)外観側面の一例を示す図。
【
図2】一実施形態に係る模型玩具100の頭部101の断面構成の一例を示す図。
【
図3】一実施形態に係る透明部材201の外観構成の一例を示す図。
【
図4】一実施形態に係る透明部材201の内部構成の一例を示す図。
【
図5】一実施形態に係る透明部材201の内部の視認態様の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
まず
図1を参照して、本実施形態に係る模型玩具100の外観構成の一例について説明する。
図1(A)は模型玩具100の外観正面を示し、
図1(B)は模型玩具100の外観側面を示す。なお、x,y,zの矢印はそれぞれ模型玩具における上、左、前方向の向きを示し、他の図面についても同様である。
【0010】
模型玩具100は、本体部を構成する頭部101、胸部102、腕部103a、103b、脚部104a、104b、及び腰部105を備える。本実施形態では模型玩具の一例として人型ロボットを例に説明するが、本発明を限定する意図はなく、本発明は人、動物、ロボット、昆虫、恐竜、武具、装飾具等、様々な模型に適用することができる。
【0011】
頭部101は、胸部102に連結される。胸部102には、さらに側部において右腕部103b及び左腕部103aが連結部材によって連結され、下部において腰部105が連結される。腰部105には股関節が含まれ、右脚部104b及び左脚部104aがそれぞれ回動可能に連結される。なお、以下では、頭部101及び胸部102を含む部分を上体部と称する。
【0012】
図2を参照して、本実施形態に係る模型玩具100の頭部101の構成について説明する。
図2は頭部中心のyz面における断面構成の一例を示す。
図2において、頭部101の上側には、透明部材201が配置されている。当該透明部材201は、当該透明部材201を覆うカバー部材202により少なくとも一部が覆われており、カバー部材の頭部前方側の開口202Aから、透明部材201の正面側の部分201Aが露出して視認可能に頭部101内に配置されている。また、カバー部材の頭部後方側の開口202Bから、透明部材201の背面側の部分201Bが露出して視認可能に頭部101内に配置されている。
【0013】
頭部101は、接続パーツ202により胸部102と接続され、上体部を構成する。接続パーツ202は、軸部203と係合され、軸部203を中心に上下に回動可能となっている。これにより頭部101の角度を変更することができる。また、接続パーツ202の軸部203と係合している側とは反対側の端部は球状構造を有し、これにより胸部102に対して回動が可能となっている。
【0014】
図3は、透明部材201の外観構成の一例を示す図である。
図3(A)は、透明部材201を斜め上から見た構成の一例を示す斜視図であり、
図3(B)は、透明部材201を斜め下から見た構成の一例を示す斜視図である。透明部材201の正面側の部分201Aは平坦面となっており、部分201Aより内側の位置に、切り欠き301と切り欠き302とが順に奥行方向に両側面に構成されている。換言すると、切り欠き301は切り欠き302よりも、部分201Aの近傍に配置されている。透明部材201の成形材料(素材)としては、例えば有色透明(または半透明)の汎用ポリスチレン(GPPS)を使用することができる。平坦面は、例えば鏡面磨きをかけることにより透明度を向上させることができる。
【0015】
図4は、透明部材201の内部構成の一例を示す図であり、特には、切り欠き301と302との構成例を示している。
図4(A)は、
図3のA-A断面での断面構成の一例を示す図である。
図4(B)は、
図3のB-B断面での断面構成の一例を示す図である。
図4(C)は、切り欠き301と302とを重ね合わせたときの見え方の一例を示す図である。
【0016】
図4(A)においては、切り欠き301は、切り欠き301が構成された位置における透明部材201の外形線400の内側に形成された切り欠き部401と、透明部材201の一部として残存し、切り欠き部401と隣接する残存部402とで構成される。残存部402は所定の形状を有しており、
図4(A)に示す形態では、略円形(あるいは、多角形)の中心部分の上下に多角形が付与された形態となっている。
図4(A)では、切り欠き301の厚みについては示されていないが、所定の厚みを有する切り欠きとすることができる。また、当該厚みは一様でなくてもよく、少なくとも一部において、透明部材201の周辺部から中心部にかけて厚みが減少するようにしてもよい。これにより、透明部材201を正面側より観察した場合の奥行き感を出すことができる。
【0017】
図4(B)においては、切り欠き302は、切り欠き302が構成された位置における透明部材201の外形線410の内側に形成された切り欠き部411と、透明部材201の一部として残存し、切り欠き部411と隣接する残存部412とで構成される。ここでの切り欠き部411は、切り欠き301の切り欠き部401よりも大きさが小さく、また、範囲が集中して形成されている。残存部412も所定の形状を有しており、
図4(B)に示す形態では、楕円形の中心部分の上下に多角形が付与された形態となっている。
図4(A)に示す残存部402に比べ、残存部412は中心部分の多角形の大きさが小さく、その分その上下の多角形領域の面積が大きくなっている。また、
図4(B)でも切り欠き302の厚みについては示されていないが、所定の厚みを有する切り欠きとすることができる。また、当該厚みは一様でなくてもよく、少なくとも一部において、透明部材201の周辺部から中心部にかけて厚みが減少するようにしてもよい。これにより、透明部材201を正面側より観察した場合の奥行き感を出すことができる。
【0018】
このようにして、重ね合わせる二つの切り欠き301、切り欠き302とは一部が重複しつつ、重複しない領域を確保することにより、正面側から見たときに観察者に対して透明部材201の内部において形状の存在を認識させることが可能となる。本実施形態では2つの切り欠きを奥行方向に配置することにより、残存部402と残存部412が重なる領域は最も濃い色に認識される一方、切り欠き部401と切り欠き部412とが重なる領域は最も薄い色に認識される。切り欠き部401と切り欠き部412とが重なり合わない部分については、一方の切り欠き部と、他方の残存部とが重なり合うので残存部の色味になる。あるいは、残存部402と残存部412が重なる領域は最も明度が低い領域に認識される一方、切り欠き部401、切り欠き部412、あるいは、切り欠き部401と切り欠き部412とが重なる部分は明度が高い領域に認識される。
【0019】
次に、
図4(C)においては、切り欠き301と切り欠き302とを重ねて正面側から見た様子を示しているが、ここで、切り欠き301と切り欠き302との重なり状態は以下に説明する通りである。
【0020】
まず、枠線201Aは、部分201を正面から見た際の正面側の部分201Aの輪郭を示す。枠線201A内において、切り欠き部401と411とが重なり合った部分(第1の領域)401、411が白色で示されている。この部分は、他の部分よりも薄い色で認識されるので、結果として明度が高いと認識される。その上下に切り欠き301の切り欠き部401と重畳した残存部412の一部(第2の領域)が示される。また、内側には切り欠き302の切り欠き部411と重畳した残存部402の一部(第3の領域)が示されている。内側においては、残存部402と残存部412との重畳部分(第4の領域)420が濃い色の部分として示されている。この部分は、白色で示された部分よりも濃い色で認識されるので、結果として明度が低いと認識される。
【0021】
このようにして、本実施形態では、切り欠き301と切り欠き302との重なり度合いに応じて正面から見た際の部分201の中央部分とその周辺部分とで色の濃さや明度が変わるので、これにより奥行感、立体感、あるいは、内部構造に関するディテール感を出すことができる。
【0022】
図5は、頭部101のカバー部材202の開口部202Aから透明部材201が見える様子の一例を示している。
図5では、正面側からではなく、少し斜めから見た様子を示している。ここでは、透明部材201の内側が正面側の部分201Aから見える。その際、切り欠き部401と切り欠き部411とが重畳せず分離して見えるため、残存部402や412に対して色が薄くなって見える領域が増える。切り欠き部401や411は、残存部402や412に対して相対的に色が薄いため、白濁しているようにも見えることがある。切り欠き部401と切り欠き部411との重なりは、透明部材201を見る角度に応じて異なるため、白濁して見える領域の大きさが見る角度に応じて異なり、透明部材201内部の構造(ディテール)を知覚したり、奥行感を感じたりずることができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態に係る模型玩具の部品は透明部材として構成され、かつ、模型玩具の他のパーツにより少なくとも一部が覆われるように配置されており、露出部分が外部から視認可能になっている。当該透明部材には、当該透明部材の露出部分から奥行方向に向かって配列された複数の切り欠きを有しており、各切り欠きは互いに他の切り欠きとは異なる形状を有するように形成されている。当該切り欠きは一部において他の切り欠きと奥行方向において重畳するように形成されていてもよい。このような切り欠きを備えることにより、露出部分から内部を見たときに、内部のディテール感を感ずるすること、あるいは、奥行感や立体感を感ずることが可能となる。このようにして、切り欠きの配置を調整することにより、部材に対して視覚的効果を付与することが可能となる。
【0024】
なお、上述の実施形態においては、人形玩具の頭部に配置された透明部材について説明したが、発明の実施の形態は頭部に配置される構成に限定されるものではない。他の部材により覆われており、一部が露出して内部が視認可能な部材であれば、どのような部位に適用されてもよい。頭部の目の位置や、口の位置に適用されてもよい。更には、腕や肩、その他の位置に配置される装飾的パーツとして適用されてもよい。また、人形玩具本体以外にも、種々の装飾部品に適用されてもよい。
【0025】
発明の実施形態は上述の態様に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。例えば模型玩具の形状は、特に限定されるものではなく、人、動物、ロボット、昆虫、恐竜等、様々な形状を含むものである。
【0026】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は以下の模型部品及び模型玩具を少なくとも開示する。
(1) 玩具部品であって、
透明部材と、
前記透明部材の少なくとも一部を覆うカバー部材と
を含み、
前記透明部材は、前記カバー部材から露出した露出部分より視認可能な位置に第1の切り欠きと第2の切り欠きとを有し、
前記第1の切り欠きは、前記第2の切り欠きよりも、前記露出部分に近接して設けられ、
前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きとは、前記露出部分の正面からみて少なくとも一部において重複するように異なる形状にて構成されている、玩具部品。
(2) 前記透明部材は、前記第1の切り欠きに隣接した第1の残存部と、前記第2の切り欠きに隣接した第2の残存部とを有し、
前記第1の残存部と前記第2の残存部とは、前記露出部分の正面からみて、少なくとも一部において重複するように構成されている、(1)に記載の玩具部品。
(3) 前記透明部材は、前記露出部分の正面からみた場合に、
前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きとが重複する第1の領域と、
前記第1の切り欠きと前記第2の残存部が重複する第2の領域と、
前記第2の切り欠きと前記第1の残存部が重複する第3の領域と、
前記第1の残存部と前記第2の残存部が重複する第4の領域と、
を含むように構成されている、(2)に記載の玩具部品。
(4) 前記第4の領域は、前記透明部材の中心側に位置し、
前記第1の領域と前記第2の領域と前記第3の領域とは、前記第4の領域の周辺に位置する、ように構成されている(3)に記載の玩具部品。
(5) 前記透明部材は有色透明の材料により構成されており、
前記第4の領域は、前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域よりも、色の濃い領域である、(4)に記載の玩具部品。
(6) 前記透明部材は有色透明の材料により構成されており、
前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第4の領域よりも、明度が高い領域である、(4)又は(5)に記載の玩具部品。
(7) 前記透明部材の露出部分は平坦面を有する、(1)から(6)のいずれか1つに記載の玩具部品。
(8) 前記第1の切り欠きと、前記第2の切り欠きとは、少なくとも一部において、前記透明部材の周辺部から中心部にかけて切り欠きの厚みが減少するように構成されている、(1)から(7)のいずれか1つに記載の玩具部品。
(9) (1)から(8)のいずれか1つに記載の玩具部品を有する模型玩具。
【要約】
【課題】模型玩具において、透明部材により視覚的効果を奏する有意な構成を提供する。
【解決手段】模型玩具の玩具部品であって、透明部材と、前記透明部材の少なくとも一部を覆うカバー部材とを含み、前記透明部材は、前記カバー部材から露出した露出部分より視認可能な位置に第1の切り欠きと第2の切り欠きとを有し、前記第1の切り欠きは、前記第2の切り欠きよりも、前記露出部分に近接して設けられ、前記第1の切り欠きと前記第2の切り欠きとは、前記露出部分の正面からみて少なくとも一部において重複するように異なる形状にて構成される。
【選択図】
図1