(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】床版揚重装置及び床版揚重装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20240920BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20240920BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D19/12
E01D24/00
(21)【出願番号】P 2024116993
(22)【出願日】2024-07-22
(62)【分割の表示】P 2021028970の分割
【原出願日】2021-02-25
【審査請求日】2024-07-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 諒介
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-81881(JP,U)
【文献】特開2004-232426(JP,A)
【文献】特開2023-154661(JP,A)
【文献】特許第7519135(JP,B1)
【文献】特許第7467731(JP,B1)
【文献】特許第7467751(JP,B1)
【文献】特開2018-155017(JP,A)
【文献】特開2016-98489(JP,A)
【文献】特開2020-133213(JP,A)
【文献】特開2004-176486(JP,A)
【文献】特開2004-300688(JP,A)
【文献】特開2014-80807(JP,A)
【文献】特開2002-331927(JP,A)
【文献】米国特許第6021910(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
E01D 19/12
E01D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版を吊り上げ可能な揚重機構と、
前後方向に延在し、前記揚重機構を保持する上側保持体と、
前記上側保持体に取り付けられる複数の支柱と、
前記支柱の下方に設けられる走行機構と、
前記支柱の位置を水平方向において前記上側保持体に近接した第1位置と前記上側保持体から離れた第2位置とに変位させる支柱変位機構と、を備え、
前記支柱変位機構は、
前記支柱と前記上側保持体とを水平方向において接続する水平接続部材と、
前記上側保持体と前記水平接続部材との接続部を支点として前記水平接続部材を水平面内において回動可能に支持するヒンジ継手と、を有し、
前記支柱の位置は、前記水平接続部材が回動されることに応じて、前記第1位置と前記第2位置とに変位可能である、
床版揚重装置。
【請求項2】
前記支柱には、上下方向に伸縮可能な伸縮機構が設けられる、
請求項1に記載の床版揚重装置。
【請求項3】
床版を吊り上げ可能な揚重機構と、前後方向に延在し前記揚重機構を保持する上側保持体と、前記上側保持体に取り付けられる複数の支柱と、前記支柱の下方に設けられる走行機構と、前記支柱の位置を水平方向において前記上側保持体に近接した第1位置と前記上側保持体から離れた第2位置とに変位させる支柱変位機構と、を備えた床版揚重装置の設置方法であって、
運搬車両の荷台から降ろす際に、前記支柱と前記上側保持体とを水平方向において接続する水平接続部材と前記上側保持体との接続部を支点として、前記水平接続部材を水平面内において回動させることによって、前記支柱の位置を前記第1位置から前記第2位置へと変位させる工程を含む、
床版揚重装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版を撤去または架設する床版揚重装置及び床版揚重装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、床版を撤去または架設する床版揚重装置が開示されている。この床版揚重装置は、トレーラによる運搬を容易とするために、門形の脚部が上下方向及び幅方向に伸縮する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の床版揚重装置は、揚重作業時における高さに対してトレーラにより運搬される際の高さを大幅に低くする必要があることから、上下方向における脚部の伸縮量が大きく設定されている。さらに、この床版揚重装置には、脚部を幅方向に伸縮させるために、幅方向に沿って脚部を支持するスライドガイドが設けられている。
【0005】
このように比較的伸縮量が大きい伸縮機構を複数備えた床版揚重装置は、運搬時の大きさをコンパクトにすることができる一方、重量が嵩んでしまう。床版揚重装置の重量が大きいと、床版の撤去または架設が行われる橋梁等への負担が大きくなるとともに、床版揚重装置を運搬するトレーラの燃費を悪化させるおそれがある。
【0006】
本発明は、床版揚重装置の重量を軽減させること、特に運搬時の床版揚重装置の重量を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、床版揚重装置であって、床版を吊り上げ可能な揚重機構と、前後方向に延在し、揚重機構を保持する上側保持体と、上側保持体に取り付けられる複数の支柱と、支柱の下方に設けられる走行機構と、支柱の位置を水平方向において上側保持体に近接した第1位置と上側保持体から離れた第2位置とに変位させる支柱変位機構と、を備え、支柱変位機構は、支柱と上側保持体とを水平方向において接続する水平接続部材と、上側保持体と水平接続部材との接続部を支点として水平接続部材を水平面内において回動可能に支持するヒンジ継手と、を有し、支柱の位置は、水平接続部材が回動されることに応じて、第1位置と第2位置とに変位可能である。
【0008】
また、本発明は、床版を吊り上げ可能な揚重機構と、前後方向に延在し揚重機構を保持する上側保持体と、上側保持体に取り付けられる複数の支柱と、支柱の下方に設けられる走行機構と、支柱の位置を水平方向において上側保持体に近接した第1位置と上側保持体から離れた第2位置とに変位させる支柱変位機構と、を備えた床版揚重装置の設置方法であって、運搬車両の荷台から降ろす際に、支柱と上側保持体とを水平方向において接続する水平接続部材と前記上側保持体との接続部を支点として、水平接続部材を水平面内において回動させることによって、支柱の位置を第1位置から第2位置へと変位させる工程を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、床版揚重装置の重量を軽減させること、特に運搬時の床版揚重装置の重量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】床版更新作業を説明するための概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る床版揚重装置の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る床版揚重装置の平面図である。
【
図7】下側ユニットを荷台から降ろす工程を順に説明するための図である。
【
図8】上側ユニットを荷台から降ろす工程を順に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る床版揚重装置及び床版揚重装置の設置方法について、図面を参照して説明する。
【0012】
本発明の実施形態に係る床版揚重装置100は、橋梁やトンネル内に設けられた既設の床版を新たな床版に更新する作業において、床版を吊り上げ下げする際に用いられる装置である。
【0013】
まず、
図1を参照して、床版揚重装置によって行われる一般的な床版更新作業について説明する。
図1は、橋梁1での床版更新作業の概要を示した概略図である。
【0014】
橋梁1は、例えば
図1に示すように、橋台(図示省略)の間に橋梁1の幅方向に間隔を空けて架け渡された複数の桁4と、隣り合う桁4の間に設けられた複数の横梁5と、を有し、複数の床版2が隣り合う桁4の間を塞ぐように橋梁1の長手方向に沿って設置されることによって構築されている。
【0015】
橋梁1を通過する車両等の荷重は、主に鉄筋コンクリートによって製造される床版2を介して桁4に伝達される。このため、床版2は、時間の経過とともに徐々に劣化ないし損傷することになる。したがって、定期的に床版2を交換する床版更新作業を行う必要がある。
【0016】
床版更新作業では、既設の床版2aが桁4から撤去されると共に、新たな床版2bが桁4に設置される。なお、床版2が更新される範囲は、橋梁1全体であってもよいし、一部分のみであってもよい。
【0017】
床版撤去作業では、床版撤去装置7(床版揚重装置)を用いて既設の床版2aを吊り上げることにより、桁4から既設の床版2aが撤去される。吊り上げられた既設の床版2aは、図示しない搬送車両の荷台に搭載され、橋梁1から搬出される。
【0018】
床版撤去装置7は、モータにより駆動されるウレタンゴム製のタイヤを備えた自走可能な構成となっており、既設の床版2a上を橋梁1の長手方向に移動することができる。床版撤去装置7を橋梁1の一端側から他端側へと向かって移動させながら、既設の床版2aを桁4から順次撤去することにより、既設の床版2の撤去が行われる。
【0019】
床版設置作業では、図示しない搬送台車によって橋梁1の一端側から新たな床版2bが搬入され、搬入された新たな床版2bは、床版架設装置8(床版揚重装置)によって吊り上げられ桁4上に設置される。
【0020】
床版架設装置8は、床版撤去装置7と同様に自走可能な構成となっており、桁4に設置された新たな床版2b上を橋梁1の長手方向に移動することができる。床版架設装置8を橋梁1の一端側から他端側へと向かって移動させながら、既設の床版2aが撤去された部分に新たな床版2bを順次設置することにより、新たな床版2bの設置が行われる。
【0021】
上記の床版更新作業では、床版撤去作業と床版設置作業とが並行して進められるとともに、桁4の錆などを除去するケレン作業や桁4の高さを調整する高さ調整作業も同時並行で進められる。
【0022】
このように定期的に実施される床版更新作業は、車両等の通行への影響を最小限に抑えるために、橋梁1上の複数車線3a,3bのうち、1つの車線3aのみの通行を規制して行われる。
【0023】
しかしながら、床版撤去装置7や床版架設装置8といった比較的大型の床版揚重装置を橋梁1上に設置するには、全車線3a,3bの通行を規制してクレーン車等の大型重機を設置し、トレーラ等の運搬車両によって搬入された床版揚重装置の構成部品をクレーン車によって吊り下げながら組み立てる必要がある。このため、車両等の通行を一時的に止めなければならず、交通への影響が大きい。
【0024】
全車線3a,3bの通行を規制せずに床版揚重装置を設置可能とするためには、例えば、床版揚重装置に幅方向に伸縮する機構と上下方向に伸縮する機構とを設けておき、運搬車両によって搬入された床版揚重装置の各伸縮機構を運搬車両の荷台上で伸長させることによって、1つの車線3a内で荷台から床版揚重装置を降ろすことが考えられる。
【0025】
しかしながら、比較的伸縮量が大きい伸縮機構を床版揚重装置に複数設けた場合、運搬時の装置の大きさをコンパクトにすることができる一方で、装置の重量が嵩んでしまい、結果として、床版揚重装置が設置される橋梁等への負担が大きくなるとともに、床版揚重装置を運搬する車両の燃費を悪化させてしまうおそれがある。また、装置を運搬する車両には積載重量の制限があり、装置自体の重量が制限されることから、結果として床版を揚重する能力が小さくなるおそれがある。
【0026】
また、床版揚重装置の重量を低減させるには、自走可能とするために設けられた電動モータ等の走行機構を備えない定置式とすることが考えられるが、上述の床版更新作業を効率的に実施するには、床版揚重装置を自走可能な構成とすることが好ましい。
【0027】
このような課題を解決するために、本実施形態に係る床版揚重装置100は、装置を設置する際の交通への影響を最小限に留めるとともに、橋梁等への負担低減や運搬車両の燃費向上を実現可能な構成としている。また、揚重性能を向上させた構成としている。
【0028】
次に
図2~4を参照し、本実施形態に係る床版揚重装置100の構成について説明する。
図2は、床版揚重装置100の側面図であり、
図3は、床版揚重装置100の平面図であり、
図4は、
図2のA-A線に沿う断面を示した断面図である。なお、以下では、
図2~4に矢印で示されるように、
図2及び
図3の左側を前方、右側を後方とし、
図3の上側を右方、下側を左方として説明する。
【0029】
床版揚重装置100は、
図2に示すように、走行機構21,26を有する下側ユニット10と、前方に揚重機構50が取り付けられた上側ユニット40と、から構成され、下側ユニット10の上方に上側ユニット40が接続されることで一体化されている。つまり、床版揚重装置100は、後述のように、下側ユニット10と上側ユニット40とに分割された状態で運搬可能な構成となっている。
【0030】
下側ユニット10は、
図3及び
図4に示すように、前後方向に沿って、床版揚重装置100の左側に配置される第1下側ユニット10Aと、床版揚重装置100の右側に配置される第2下側ユニット10Bと、で構成され、各下側ユニット10A,10Bは、前後方向に延在して設けられた下側保持体11と、下側保持体11の下方前方に取り付けられた前方側走行機構21と、下側保持体11の下方後方に取り付けられた後方側走行機構26と、をそれぞれ有する。
【0031】
下側保持体11は、前後方向に延在する下側主桁12と、下側主桁12から上方に向かって延びる接続柱13と、を有する。接続柱13は、下側主桁12の前方及び後方にそれぞれ設けられ、これらの上端には下側ユニット10と上側ユニット40との接続部となる接続フランジ13aが設けられる。また、下側主桁12の下方前方には、前方側走行機構21が連結される前方連結部12a(走行機構連結部)が設けられ、下側主桁12の下方後方には、後方側走行機構26が連結される後方連結部12b(走行機構連結部)が設けられる。下側主桁12及び接続柱13は、鋼管やH形鋼等の鋼材によって形成され、互いに溶接接合される。
【0032】
前方側走行機構21には、ウレタンゴム製のタイヤである2つの車輪部22,23(車輪)と、一方の車輪部23を駆動させる電動モータ24が設けられており、後方側走行機構26には、ウレタンゴム製のタイヤである1つの車輪部27(車輪)と、車輪部27を駆動させる電動モータ28が設けられている。揚重機構50寄りに設けられる前方側走行機構21の2つの車輪部22,23は、揚重作業時に前方側走行機構21に対して作用する荷重を分散させるために、前後方向に所定の間隔だけ離して配置される。
【0033】
各電動モータ24,28の駆動は、図示しない操作盤を介してオペレータにより操作される。このように下側ユニット10に車輪部23,27を駆動させる電動モータ24,28が設けられることで、床版揚重装置100は、オペレータの操作に応じて前後方向へと自走することができる。なお、上述の走行機構の数や車輪部の数、電動モータの配置等は、一例であって、例えば、走行機構は3つ以上設けられていてもよく、また、電動モータは何れか1つの走行機構のみに設けられていてもよい。
【0034】
上側ユニット40は、床版2を吊り上げ下げ可能な揚重機構50と、前後方向に延在し前方側において揚重機構50を保持する上側保持体41と、上下方向に伸縮可能な伸縮機構を有し上側保持体41に取り付けられる複数の支柱60A~60Dと、支柱60A~60Dの位置を水平方向において上側保持体41に近接した第1位置と上側保持体41から離れた第2位置とに変位させる支柱変位機構70A~70Dと、を有する。なお、
図2~4に示される支柱60A~60Dの位置は、第2位置である。
【0035】
上側保持体41は、前後方向に延在する一対の主桁42と、一対の主桁42間を水平方向において連結する一対の上側連結梁43と、一対の主桁42の下方に設けられ一対の主桁42と平行に延在する一対の下側桁45と、一対の下側桁45間を水平方向において連結する一対の下側連結梁46と、一対の主桁42と一対の下側桁45とを上下方向において連結する4本の連結柱44と、を有する。これらの部材は鋼管やH形鋼等の鋼材によって形成され、互いに例えば、溶接で接合される。
【0036】
一対の主桁42は、一対の下側桁45よりも長く、前方側に配置される上側連結梁43及び連結柱44よりも前方に向かって延出した延出部42aを有し、この延出部42aにおいて揚重機構50が保持されている。
【0037】
揚重機構50は、吊荷となる床版2を揚重する吊りワイヤーロープの繰出し部及び巻取り部となる吊点を構成するものであり、一対の主桁42間に架け渡されたH形鋼材で形成された梁材52と、梁材52に取り付けられた揚重部51と、を有する。揚重部51は、梁材52に沿って左右方向に移動可能であり、また、フックに床版2が吊り下げられた状態において、昇降及び旋回可能な構造を有している。
【0038】
支柱60A~60Dは、油圧シリンダ(伸縮機構)により構成され、上下方向に沿って伸縮可能な状態で各連結柱44に取り付けられている。具体的には、各支柱60A~60Dは、シリンダチューブ61と、シリンダチューブ61内を摺動する図示しないピストンと、上端がピストンに連結され下端がシリンダチューブ61の外側に延びるロッド62と、を有する油圧シリンダであり、シリンダチューブ61が後述の水平接続部材75等を介して連結柱44に取り付けられることによって、上側保持体41に保持されている。また、各支柱60A~60Dのロッド62の下端には、下側ユニット10と上側ユニット40との接続部となる接続フランジ62aが設けられる。接続フランジ62aは、下側ユニット10の接続フランジ13aと接続分離自在である。
【0039】
なお、支柱60A~60Dを伸縮させる機構としては、油圧シリンダに限定されず、上下方向に伸縮可能な構成を有していればどのような機構であってもよく、例えば、電動アクチュエータであってもよい。
【0040】
支柱変位機構70A~70Dは、支柱60A~60Dと上側保持体41とを水平方向において接続する水平接続部材75と、上側保持体41と水平接続部材75との接続部を支点として水平接続部材75を水平面内において回動可能なアクチュエータ71と、を有する。
【0041】
水平接続部材75は、一端が支柱60A~60Dのシリンダチューブ61に接合された板状部材であって、各シリンダチューブ61に上下方向に間隔をあけて一対ずつ設けられる。水平接続部材75の他端は、上側保持体41の各連結柱44に設けられた連結部44aに連結される。
【0042】
連結部44aは、
図4に示されるように、左右方向において、上側保持体41の外側へと各連結柱44から膨出して形成された部分であって、その上下方向の長さは、一対の水平接続部材75の間に挿入可能な大きさとなっている。
【0043】
このように形成された水平接続部材75と連結部44aとは、水平接続部材75及び連結部44aを上下方向において貫通するピン部材76を備えるヒンジ継手によって連結される。このようにヒンジ継手により水平接続部材75は、ピン部材76を中心として上側保持体41に対して水平面内において回動可能に支持された状態となっている。換言すれば、各支柱60A~60Dは、上側保持体41に対してピン部材76を中心として、ヒンジ継手によって水平面内において回動可能である。
【0044】
アクチュエータ71は、シリンダチューブ72と、シリンダチューブ72内を摺動する図示しないピストンと、一端がピストンに連結され他端が水平接続部材75に連結されるロッド73と、を有する油圧シリンダである。アクチュエータ71は、シリンダチューブ72が図示しないブラケットを介して連結柱44に取り付けられることによって、上側保持体41に固定されている。
【0045】
水平接続部材75には、アクチュエータ71のロッド73が連結される連結部75aが突出して形成される。連結部75aが設けられる位置や連結柱44に対するアクチュエータ71の取り付け角度は、アクチュエータ71の伸縮に応じて、支柱60A~60Dの位置が第1位置と第2位置との間でスムーズに切り換わるように設定される。
【0046】
具体的には、アクチュエータ71が伸長した際には、
図3に示されるように、床版揚重装置100を上方から見たときに、水平接続部材75と主桁42とが略直交した状態となって、支柱60A~60Dの位置が上側保持体41から離れた第2位置となり、アクチュエータ71が収縮した際には、水平接続部材75と主桁42とが略平行となって、支柱60A~60Dの位置が上側保持体41に近接した第1位置となる。
【0047】
なお、アクチュエータ71は、連結柱44に対して完全に固定された状態ではなく、水平面内において僅かに回動可能な状態で取り付けられていてもよい。また、アクチュエータ71は、油圧シリンダに限定されず、伸縮可能な構成を有していればどのような機構であってもよく、例えば、電動アクチュエータであってもよい。
【0048】
上記構成の床版揚重装置100は、
図2~4に示されるように、支柱60A~60Dの位置が上側保持体41から離れた第2位置となっている状態において、床版2の吊り上げ下げを行う。このため、揚重作業中に支柱60A~60Dの位置が第2位置から第1位置へ移動してしまうことを防止するために、上側ユニット40には、支柱60A~60Dの位置が第2位置にある際に、下側桁45と支柱60A~60Dのシリンダチューブ61とを連結して、支柱60A~60Dを第2位置に保持する連結部材78が設けられている。
【0049】
連結部材78は、軸方向長さを調整可能なターンバックルを有する棒状部材である。連結部材78は、支柱60A~60Dの位置を切り換えるときや支柱60A~60Dの位置が第1位置にあるときには、一端がシリンダチューブ61から取り外され、下側桁45に沿った状態で上側ユニット40に収納される。
【0050】
床版揚重装置100は、上記構成の下側ユニット10の接続フランジ13aと、上記構成の上側ユニット40の接続フランジ62aとは接続・分離自在であり、図示しないボルトを介して結合されることによって一体的な構成となる。
【0051】
続いて、
図5及び
図6を参照し、床版揚重装置100の運搬状態について説明する。床版揚重装置100は、
図5及び
図6に示されるように、下側ユニット10と上側ユニット40とに分割され、それぞれ別の運搬車両T1,T2によって運搬される。
図5の(a)は、下側ユニット10の運搬状態を第1運搬車両T1の左側方から見た図であり、(b)は、下側ユニット10の運搬状態を第1運搬車両T1の上方から見た図である。
図6の(a)は、上側ユニット40の運搬状態を第2運搬車両T2の左側方から見た図であり、(b)は、上側ユニット40の運搬状態を第2運搬車両T2の上方から見た図である。なお、以下では、
図5及び
図6に矢印で示されるように車両の前方を前、後方を後、車両の左方を左、右方を右として説明する。
【0052】
まず、
図5を参照し、下側ユニット10の運搬状態について説明する。
【0053】
下側ユニット10を運搬する第1運搬車両T1の荷台には、下側ユニット10を路上に下ろす際に使用されるリフト装置80が設けられる。なお、リフト装置80は、下側ユニット10を路上から荷台に積載する際にも用いられる。
【0054】
リフト装置80は、上下方向に下側ユニット10を移動可能なリフト部81と、車両の幅方向に下側ユニット10を移動可能なスライド部84(間隔拡縮機構)と、を有する。
【0055】
リフト部81は、荷台に固定され上方が開口した箱状のベース部83と、ベース部83を上方から覆うように設けられ下方が開口した箱状の変位部82と、ベース部83及び変位部82の内部に区画された空間内に配置された図示しない複数の油圧シリンダと、を有する。
【0056】
変位部82とベース部83とは入れ子式となっており、変位部82はベース部83によって上下方向に摺動自在に支持されている。また、複数の油圧シリンダは、シリンダチューブがベース部83に固定され、シリンダチューブから延出するロッドの先端部が変位部82に連結され、上下方向に伸縮可能な状態で設置される。このため、変位部82は、複数の油圧シリンダの伸縮に応じて、ベース部83に対して上下方向に変位する。
【0057】
スライド部84は、リフト部81を挟んで車両の前方側と後方側とに設けられており、リフト部81の変位に合わせて上下方向に変位する。なお、2つのスライド部84の構成は同じであるため、以下では車両の後方側に設けられたスライド部84について説明する。
【0058】
スライド部84は、リフト部81の変位部82に取り付けられたスライドガイド部84aと、スライドガイド部84aにより左右方向に摺動自在に支持される2つのスライド部材85a,85bと、スライドガイド部84a内に設けられ各スライド部材85a,85bを左右方向へと水平にスライドさせる2つの油圧シリンダ87a,87bと、を有する。
【0059】
スライド部材85a,85bは、荷台の左側に積載された第1下側ユニット10Aに結合される第1スライド部材85aと、荷台の右側に積載された第2下側ユニット10Bに結合される第2スライド部材85bと、から構成される。
【0060】
第1スライド部材85aの左側端部には、下方に向かって延びる延出部86が設けられ、延出部86の下端には、第1下側ユニット10Aの下側主桁12に図示しないボルトを介して結合されるフランジ部86aが設けられる。
【0061】
第1スライド部材85aをスライドさせる第1油圧シリンダ87aは、シリンダチューブがスライドガイド部84aに固定される一方で、シリンダチューブから延出するロッドの先端部が第1スライド部材85aに設けられた延出部86に連結されている。このため、第1スライド部材85aは、第1油圧シリンダ87aが伸長することによって左方向へとスライドし、第1油圧シリンダ87aが収縮することによって右方向へとスライドする。
【0062】
第2スライド部材85b及び第2油圧シリンダ87bも同様の構成となっており、第2スライド部材85bは第2油圧シリンダ87bが伸長することによって右方向へとスライドし、第2油圧シリンダ87bが収縮することによって左方向へとスライドする。
【0063】
スライド部84の各油圧シリンダ87a,87bは、
図5に示されるように、第1下側ユニット10A及び第2下側ユニット10Bを第1運搬車両T1により運搬する際には、第1下側ユニット10A及び第2下側ユニット10Bが荷台上に収まるように、左右方向における第1下側ユニット10Aと第2下側ユニット10Bとの間隔を小さくするために、収縮した状態とされる。また、このとき、リフト部81は、各車輪部22,23,27が荷台に接する程度に伸長した状態とされる。
【0064】
なお、リフト部81を上下方向に伸縮させる機構やスライド部材85aを水平方向にスライドさせる機構としては、油圧シリンダに限定されず、伸縮可能な構成を有していればどのような機構であってもよく、例えば、電動アクチュエータであってもよい。
【0065】
荷台に積載された第1下側ユニット10A及び第2下側ユニット10Bは、上記構成のリフト装置80によって、荷台に対してある程度固定された状態となるが、運搬時の振動等により荷台上で動いてしまうことを防止するために、図示しない固定具が適宜用いられる。
【0066】
続いて、
図6を参照し、上側ユニット40の運搬状態について説明する。
【0067】
上側ユニット40を運搬する第2運搬車両T2の荷台には、上側ユニット40を下側ユニット10に組み付ける際に使用されるリフト装置90が設けられる。なお、リフト装置90は、上側ユニット40を下側ユニット10から取り外して荷台に積載する際にも用いられる。
【0068】
リフト装置90は、上下方向に伸縮可能な伸縮機構を有する油圧シリンダであり、荷台に固定されるシリンダチューブ91と、シリンダチューブ91内を摺動する図示しないピストンと、一端がピストンに連結され他端がシリンダチューブ91から上方に突出したロッド92と、を有する。また、ロッド92の上端には、上側ユニット40の下側桁45に図示しないボルトを介して結合されるフランジ部92aが設けられる。
【0069】
上記構成のリフト装置90は、一対の下側桁45に対して、前方側に一対設けられるとともに、後方側に一対設けられる。つまり、上側ユニット40は、荷台上において、少なくとも4つのリフト装置90によって支持固定される。
【0070】
各リフト装置90は、
図6に示されるように、上側ユニット40を第2運搬車両T2により運搬する際には、運搬時の第2運搬車両T2の高さとなる上側ユニット40の高さをできるだけ低くするために、最も収縮した状態とされる。
【0071】
なお、リフト装置90を上下方向に伸縮させる機構としては、油圧シリンダに限定されず、伸縮可能な構成を有していればどのような機構であってもよく、例えば、電動アクチュエータであってもよい。また、リフト装置90は、下側桁45のように、上側ユニット40のうち、伸縮機能を有する支柱60A~60d以外の部分を支持していればよいことから、下側桁45に代えて、主桁42を支持する構成としてもよい。
【0072】
また、上側ユニット40を第2運搬車両T2により運搬する際には、上側ユニット40が荷台上に収まるようにするために、支柱変位機構70A~70Dのアクチュエータ71を収縮させることによって、支柱60A~60Dの位置を水平方向において上側保持体41に近接した第1位置とし、上側ユニット40の左右方向における幅をできるだけ小さくする。
【0073】
荷台に積載された上側ユニット40は、上記構成のリフト装置90によって、荷台に対してある程度固定された状態となるが、運搬時の振動等により荷台上で動いてしまうことを防止するために、図示しない固定具が適宜用いられる。なお、運搬中の上側ユニット40の姿勢を安定させるために、各支柱60A~60Dの伸縮機構を伸長し、荷台に接続フランジ62aが接した状態としておいてもよい。
【0074】
次に、
図7及び
図8を参照し、各ユニット10,40を運搬車両T1,T2の荷台からそれぞれ降ろし、床版揚重装置100を組み立てる工程について説明する。
図7は、下側ユニット10を第1運搬車両T1の荷台から降ろす工程を順に示した図であり、
図8は、上側ユニット40を第2運搬車両T2の荷台から降ろし、下側ユニット10に組み付ける工程を順に示した図である。なお、以下では、
図5及び
図6と同様に、車両の前方を前、後方を後、車両の左方を左、右方を右として説明する。
【0075】
まず、
図7を参照し、下側ユニット10を第1運搬車両T1の荷台から降ろす工程について説明する。
【0076】
下側ユニット10を運搬する第1運搬車両T1(先行運搬車両)は、上側ユニット40を運搬する第2運搬車両T2(後行運搬車両)よりも先行して床版揚重装置100を設置する現場に到着し、下側ユニット10をその荷台から路上へと降ろす。
【0077】
具体的には、床版揚重装置100を設置する現場へと第1運搬車両T1が到着すると、第1運搬車両T1の荷台上では、リフト装置80のリフト部81がさらに伸長され、
図7の(a)に示されるように、下側ユニット10の各車輪部22,23,27が荷台から所定の隙間G1だけ上昇した状態、すなわち、各車輪部22,23,27が荷台から僅かに離れた状態とされる。
【0078】
このように各車輪部22,23,27が荷台から離れた状態において、スライド部84の各油圧シリンダ87a,87bを伸長し、
図7の(b)に示されるように、第1スライド部材85aを左方向へ、第2スライド部材85bを右方向へとそれぞれスライドさせる。つまり、第1運搬車両T1の左右方向における第1下側ユニット10Aと第2下側ユニット10Bとの間隔は、スライド部84の各油圧シリンダ87a,87bを伸長させることによって拡げられる。このように、スライド部84は、一対の下側保持体11の間隔を拡縮可能な間隔拡縮機構として機能する。
【0079】
これにより、第1スライド部材85aに結合された第1下側ユニット10Aは荷台の左方の外側へ、第2スライド部材85bに結合された第2下側ユニット10Bは荷台の右方の外側へとそれぞれ移動することになる。
【0080】
そして、第1下側ユニット10A及び第2下側ユニット10Bが荷台の外側にそれぞれ位置した状態において、リフト部81を徐々に収縮し、
図7の(c)に示されるように、下側ユニット10の各車輪部22,23,27を路面上に着地させる。各車輪部22,23,27が路面に接した第1下側ユニット10A及び第2下側ユニット10Bは、図示しない輪止め等の支持部材によって支持され、自立した状態となる。
【0081】
そして、第1下側ユニット10A及び第2下側ユニット10Bが路面上で自立可能に支持された状態において、各スライド部材85aのフランジ部86aと下側ユニット10の下側主桁12とを結合するボルトが取り外される。
【0082】
これにより、第1運搬車両T1によって運搬された第1下側ユニット10A及び第2下側ユニット10Bは、1つの車線上において、第1運搬車両T1に沿って、その左側方と右側方とにそれぞれ降ろされた状態となり、下側ユニット10を第1運搬車両T1の荷台から降ろす工程が完了する。なお、左右方向における第1下側ユニット10Aと第2下側ユニット10Bとの間の間隔は、後続する第2運搬車両T2が進入可能な間隔となっている。
【0083】
続いて、
図8を参照し、上側ユニット40を第2運搬車両T2の荷台から降ろし、路面上に降ろされた下側ユニット10に組み付ける工程について説明する。
【0084】
上側ユニット40を運搬する第2運搬車両T2は、下側ユニット10を降ろして前方へと退去した第1運搬車両T1と入れ替わるようにして、第1下側ユニット10Aと第2下側ユニット10Bとの間に進入し、上側ユニット40をその荷台から下側ユニット10の上へと降ろす。
【0085】
具体的には、第1下側ユニット10Aと第2下側ユニット10Bとの間に第2運搬車両T2が到着すると、第2運搬車両T2の荷台上では、
図8の(a)に示されるように、下側ユニット10の接続フランジ13aの上面の高さH1よりも上側ユニット40の接続フランジ62aの下面の高さH2が高くなるように、各リフト装置90が伸長される。
【0086】
なお、各リフト装置90によって支持される上側ユニット40が第2運搬車両T2によって運搬される際に、接続フランジ62aの下面の高さH2が、路面上に降ろされた下側ユニット10の接続フランジ13aの上面の高さH1よりも高くなっている場合には、各リフト装置90は、伸縮機能を有する必要はなく、単なる架台として設けられてもよい。換言すれば、各リフト装置90が上側ユニット40を単に支持する架台として用いられる場合、その高さは、第2運搬車両T2によって運搬される際の上側ユニット40の接続フランジ62aの下面の高さH2が、路面上に降ろされた下側ユニット10の接続フランジ13aの上面の高さH1よりも高くなるように設定される。なお、このように上側ユニット40の接続フランジ62aの下面の高さH2が比較的高い状態で上側ユニット40を運搬すると、第2運搬車両T2の高さ制限を超えるおそれがあることから、リフト装置90は伸縮機能を有するものであることが好ましい。
【0087】
なお、下側ユニット10の接続フランジ13aの上面の高さH1は、支柱60A~60Dの伸縮量を小さくするためには、できるだけ高くすることが好ましい。しかしながら、この高さH1を高くするには、リフト装置90の伸縮量を大きくする必要がある一方で、リフト装置90の伸縮量を大きくすると、収縮時のリフト装置90の長さも長くなってしまうことから、結果として、運搬時の上側ユニット40の高さ、すなわち、第2運搬車両T2の高さが制限を超えてしまうおそれがある。このため、下側ユニット10の接続フランジ13aの上面の高さH1は、リフト装置90において設定可能な伸縮量に応じて適宜設定される。
【0088】
このように下側ユニット10の接続フランジ13aよりも上側ユニット40の接続フランジ62aの位置が高くなった状態において、各支柱変位機構70A~70Dのアクチュエータ71を伸長し、
図8の(b)に示すように、ピン部材76を中心に水平接続部材75を回動させ、各支柱60A~60Dの位置を破線で示される第1位置から第2位置へと変位させる。なお、
図8の(b)では各支柱60A~60Dの動きをわかりやすくするために、下側ユニット10の図示を省略している。
【0089】
そして、各支柱60A~60Dの位置が第2位置となった状態において、各支柱60A~60Dの伸縮機構を僅かに伸長し、
図8の(c)に示されるように、上側ユニット40の接続フランジ62aを下側ユニット10の接続フランジ13aに当接させ、図示しないボルトによって、接続フランジ13aと接続フランジ62aとを結合する。これに併せて、下側桁45と支柱60A~60Dのシリンダチューブ61とは、連結部材78によって連結される。
【0090】
なお、下側ユニット10の接続フランジ13aに上側ユニット40の接続フランジ62aを当接させる際には、各支柱60A~60Dの伸縮機構を僅かに伸長させることに代えて、各リフト装置90の伸縮機構を僅かに収縮させてもよい。
【0091】
接続フランジ13aと接続フランジ62aとがボルトを介して結合された後、各リフト装置90のフランジ部92aと上側ユニット40の下側桁45とを結合するボルトが外され、各リフト装置90の伸縮機構は、
図8の(c)に示されるように、収縮される。
【0092】
このように第2運搬車両T2の荷台と上側ユニット40との接続が解除された後、各支柱60A~60Dの伸縮機構をさらに伸長することによって、床版揚重装置100は、
図2に示すように、揚重機構50の高さが所定の高さとなり、床版2を吊り上げ下げする揚重作業を行うことが可能な状態となる。この後、第2運搬車両T2は前方へと退去する。
【0093】
これにより、第2運搬車両T2によって運搬された上側ユニット40は、1つの車線上において、先に路面上に降ろされた下側ユニット10に組み付けられた状態となり、上側ユニット40を第2運搬車両T2の荷台から降ろす工程が完了するとともに、床版揚重装置100の設置が完了する。
【0094】
なお、上記実施形態では、揚重機構50が前方側に位置するように、上側ユニット40及び下側ユニット10がそれぞれ搬入されるが、上側ユニット40及び下側ユニット10は、揚重機構50が後方側に位置するように、各運搬車両T1,T2によって搬入されてもよい。
【0095】
床版揚重装置100を撤去する際の工程は、上述の搬入時の工程とは逆の手順によって行われる。このため、その説明を省略する。
【0096】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0097】
本実施形態では、上側ユニット40の支柱60A~60Dを下側ユニット10の下側保持体11に対して接続することによって、1つの車線上において、床版揚重装置100を容易に設置することが可能である。このように床版揚重装置100を組み立てるために、複数車線の通行を規制する必要がなく、また、クレーン車等の大型重機を用意する必要もないことから、床版揚重装置100を施工現場に設置する際の交通への影響を最小限に留めることができる。
【0098】
また、上側ユニット40の支柱60A~60Dが接続される下側ユニット10の下側保持体11には、車輪部22,23,27を有する走行機構21,26が取り付けられていることから、支柱60A~60Dは比較的高い位置において下側保持体11に接続されることになる。このため、支柱60A~60Dの伸縮機構の上下方向における伸縮量を小さくすることや支柱60A~60Dの伸縮機構を廃止することが可能となり、結果として、床版揚重装置100全体の重量が軽減される。これにより、床版揚重装置100が設置される橋梁等への負担を低減することができるとともに、床版揚重装置100を運搬する運搬車両T1,T2の燃費を向上させることができる。
【0099】
また、床版揚重装置100は上下のユニット10,40に分割して別々に運搬されることから、各ユニット10,40の重量分配の自由度が高くなり、結果として、床版揚重装置100の揚重性能を向上させることができる。
【0100】
また、本実施形態では、下側ユニット10の下側保持体11に、車輪部22,23,27及びこれらを駆動させる電動モータ24,28を有する走行機構21,26が取り付けられており、床版揚重装置100は自走可能な構成となっている。このため、床版揚重装置を定置式とした場合と比較し、単位時間あたりに床版2の揚重作業を行うことができる範囲が拡大し、結果として、揚重作業を伴う床版更新作業を効率的に行うことができる。
【0101】
また、本実施形態では、支柱60A~60Dの位置は、支柱変位機構70A~70Dのアクチュエータ71の伸縮に応じた回動によって第1位置と第2位置とに変位する。このように比較的重量が嵩むスライド機構を用いることなく、支柱60A~60Dの位置を変更可能な構成とすることによって、床版揚重装置100本体の重量を低減することができるとともに、床版揚重装置100を運搬する際のサイズをコンパクト化することができる。
【0102】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0103】
上記実施形態では、上側ユニット40の各支柱60A~60Dに伸縮機構が設けられている。これに代えて、上下方向に伸縮可能な伸縮機構は、例えば、各支柱60A~60Dが接続される下側ユニット10の接続部分となる接続柱13に、接続フランジ13aを上下方向に移動させるように、それぞれ設けられていてもよい。この場合、各接続柱13の伸縮機構は、下側ユニット10の接続フランジ13aと上側ユニット40の接続フランジ62aとを結合させる際に、僅かに伸長し、接続フランジ13aを接続フランジ62aに当接させ、接続フランジ13aと接続フランジ62aとが結合された後、揚重機構50の高さを所定の高さとするために、さらに伸長することになる。なお、伸縮機構は、上側ユニット40の各支柱60A~60Dと、下側ユニット10の接続柱13と、の両方に設けられていてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、下側ユニット10の接続フランジ13aと上側ユニット40の接続フランジ62aとが結合された後、揚重機構50の高さを所定の高さとするための伸縮機構が、上側ユニット40の各支柱60A~60D、つまり、床版揚重装置100に設けられている。下側ユニット10の接続フランジ13aと上側ユニット40の接続フランジ62aとを結合するだけで、揚重機構50の高さを所定の高さとすることができれば、伸縮機構は床版揚重装置100に設けられていなくともよい。
【0105】
その具体的な手段としては、例えば、下側ユニット10の接続フランジ13aの上面の高さH1を伸縮機構の伸長分だけ予め高くしておくことが考えられる。なお、この場合、第2運搬車両T2の荷台上で上側ユニット40をリフトする各リフト装置90の伸長量を大幅に大きくする必要があることから、リフト装置90としては例えば多段式(テレスコープ式)の油圧シリンダが用いられる。また、他の具体的な手段としては、上側ユニット40の接続フランジ62aの下面から揚重機構50を保持する上側保持体41までの高さを予め高くしておくことも考えられる。しかしながら何れの手段においても各ユニット10,40を運搬する際の運搬車両T1,T2の高さ制限を超えるおそれがあることから、揚重機構50の高さを所定の高さとするためには、伸縮機構を床版揚重装置100に設けることが好ましい。
【0106】
このように床版揚重装置100に伸縮機構が設けられていない場合は、下側ユニット10の接続フランジ13aと上側ユニット40の接続フランジ62aとを結合させる際、リフト装置90を僅かに収縮させることで、接続フランジ13aを接続フランジ62aに当接させる。
【0107】
また、上記実施形態では、リフト装置90は、第2運搬車両T2の荷台側に固定されている。これに代えて、リフト装置90は、上側ユニット40の下側桁45側に固定されていてもよい。この場合、第2運搬車両T2の荷台に加工等を行う必要がないことから、荷台として、一般的なものを使用することが可能となる。
【0108】
また、上記実施形態では、各支柱60A~60Dの位置は、ヒンジ継手を構成するピン部材76を中心に水平接続部材75を回動させることによって、第1位置と第2位置とに切り換えられる。これに代えて、水平接続部材75を左右方向にスライドさせるスライド機構により、各支柱60A~60Dの位置を、第1位置と第2位置とに切り換えてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、走行機構21,26が予め下側ユニット10に取り付けられているが、走行機構21,26は、下側ユニット10を降ろす際に、下側主桁12の連結部12a,12bに連結されてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、リフト装置90が上側ユニット40を荷台に対して昇降させる機構として用いられている。これに代えて、支柱60A~60Dの伸縮機構を、荷台に対して上側ユニット40を昇降させる機構として用いてもよい。この場合、支柱60A~60Dの伸縮機構を伸長させた後、荷台と下側桁45との間に上側ユニット40の高さを保持する保持台を一時的に挟み込み、この保持台によって上側ユニット40全体が支えられた状態で、上述のように、下側ユニット10に対する各支柱60A~60Dの結合が行われる。
【0111】
また、上記実施形態では、揚重機構50や走行機構21,26、支柱変位機構70A~70Dといった各機構の操作盤や電源について明示されていないが、各機構の操作盤や電源となる発電機は、上側ユニット40に設置されてもよい。この場合、床版揚重装置100の移動や揚重作業を単独で行うことが可能となる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0113】
100・・・床版揚重装置
2・・・床版
10・・・下側ユニット
10A・・・第1下側ユニット(下側ユニット)
10B・・・第2下側ユニット(下側ユニット)
11・・・下側保持体
12a・・・前方連結部(走行機構連結部)
12b・・・後方連結部(走行機構連結部)
21・・・前方側走行機構(走行機構)
22,23,27・・・車輪部(車輪)
26・・・後方側走行機構(走行機構)
40・・・上側ユニット
41・・・上側保持体
50・・・揚重機構
60A~60D・・・支柱(伸縮機構)
70A~70D・・・支柱変位機構
75・・・水平接続部材
80・・・リフト装置
84・・・スライド部(間隔拡縮機構)
90・・・リフト装置(伸縮機構)
T1・・・第1運搬車両(先行運搬車両)
T2・・・第2運搬車両(後行運搬車両)
【要約】
【課題】床版揚重装置の重量を軽減させる。
【解決手段】床版揚重装置100は、床版2を吊り上げ可能な揚重機構50と、前後方向に延在し揚重機構50を保持する上側保持体41と、上側保持体41に取り付けられる複数の支柱60A~60Dと、支柱60A~60Dの下方に設けられる走行機構21,26と、支柱60A~60Dの位置を水平方向において上側保持体41に近接した第1位置と上側保持体41から離れた第2位置とに変位させる支柱変位機構70A~70Dと、を備え、支柱変位機構70A~70Dは、支柱60A~60Dと上側保持体41とを水平方向において接続する水平接続部材75と、上側保持体41と水平接続部材75との接続部を支点として水平接続部材75を水平面内において回動可能に支持するヒンジ継手と、を有し、支柱60A~60Dの位置は、水平接続部材75が回動されることに応じて、第1位置と第2位置とに変位可能である。
【選択図】
図3