(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】デルタシグマ変調回路、ディジタル送信回路、及び、ディジタル送信機
(51)【国際特許分類】
H03M 3/02 20060101AFI20240920BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20240920BHJP
H03M 1/08 20060101ALI20240920BHJP
H03M 1/66 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03M3/02
H04B1/04 A
H03M1/08 B
H03M1/66 C
(21)【出願番号】P 2024513696
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2022020903
(87)【国際公開番号】W WO2023223523
(87)【国際公開日】2023-11-23
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 浩之
(72)【発明者】
【氏名】萩原 達也
(72)【発明者】
【氏名】早馬 道也
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-220647(JP,A)
【文献】特開2006-262488(JP,A)
【文献】国際公開第2017/085789(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/129975(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0238151(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0126648(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/00-9/00
H04B 1/04
H03M 1/08
H03M 1/66
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力された信号に対してディジタル処理を行うループフィルタと、
前記ループフィルタによるディジタル処理後の信号に基づいて、閾値との大小関係に応じた1ビットの信号を出力する複数の量子化器と、
前記量子化器により
それぞれ出力された信
号の平均値を算出し、前記ループフィルタにフィードバックする平均化回路とを備え、
前記量子化器が用いる閾値は、値が互いに異なる
ことを特徴とするデルタシグマ変調回路。
【請求項2】
外部から入力された信号に対してディジタル処理を行うループフィルタと、
前記ループフィルタによるディジタル処理後の信号に基づいて、閾値との大小関係に応じた1ビットの信号を出力する複数の量子化器と、
前記量子化器により
それぞれ出力された信
号の平均値を算出し、前記ループフィルタにフィードバックする平均化回路と、
前記量子化器により出力された信号の振幅を合成する合成回路とを備え、
前記量子化器が用いる閾値は、値が互いに異なる
ことを特徴とするディジタル送信回路。
【請求項3】
送信対象である信号を生成するモデムと、
前記モデムにより生成された信号に対してディジタル処理を行うループフィルタと、
前記ループフィルタによるディジタル処理後の信号に基づいて、閾値との大小関係に応じた1ビットの信号を出力する複数の量子化器と、
前記量子化器により
それぞれ出力された信
号の平均値を算出し、前記ループフィルタにフィードバックする平均化回路と、
前記量子化器により出力された信号の振幅を合成する合成回路と、
前記合成回路による合成後の信号の電力を増幅する増幅器と、
前記増幅器による増幅後の信号を電波として空間に放射するアンテナとを備え、
前記量子化器が用いる閾値は、値が互いに異なる
ことを特徴とするディジタル送信機。
【請求項4】
送信対象である信号を生成するモデムと、
前記モデムにより生成された信号に対してディジタル処理を行うループフィルタと、
前記ループフィルタによるディジタル処理後の信号に基づいて、閾値との大小関係に応じた1ビットの信号を出力する複数の量子化器と、
前記量子化器により
それぞれ出力された信
号の平均値を算出し、前記ループフィルタにフィードバックする平均化回路と、
前記量子化器を複数のグループに分けた量子化器群毎に接続され、当該量子化器群に含まれる量子化器より出力された信号の振幅を合成する複数の合成回路と、
前記合成回路毎に接続され、当該合成回路による合成後の信号の位相を変化させる複数の移相器と、
前記移相器毎に接続され、当該移相器による位相の変化後の信号の電力を増幅する複数の増幅器と、
前記増幅器毎に接続され、当該増幅器による増幅後の信号を電波として空間に放射する複数のアンテナとを備え、
前記量子化器群が用いる閾値は、値が互いに異なる
ことを特徴とするディジタル送信機。
【請求項5】
送信対象である信号を生成するモデムと、
前記モデムにより生成された信号に対してディジタル処理を行うループフィルタと、
前記ループフィルタによるディジタル処理後の信号に基づいて、閾値との大小関係に応じた1ビットの信号を出力する複数の量子化器と、
前記量子化器により
それぞれ出力された信
号の平均値を算出し、前記ループフィルタにフィードバックする平均化回路と、
前記量子化器毎に接続され、当該量子化器により出力された信号の電力を増幅する複数の増幅器と、
前記増幅器毎に接続され、当該増幅器による増幅後の信号を電波として空間に放射する複数のアンテナとを備え、
前記量子化器が用いる閾値は、値が互いに異なり、
前記アンテナにより放射された信号は空間で振幅が合成される
ことを特徴とするディジタル送信機。
【請求項6】
前記合成回路は、アナログ受動回路で構成された
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のディジタル送信機。
【請求項7】
前記量子化器が用いる閾値は、等間隔に設定された
ことを特徴とする請求項1記載のデルタシグマ変調回路。
【請求項8】
前記量子化器が用いる閾値は、等間隔に設定された
ことを特徴とする請求項2記載のディジタル送信回路。
【請求項9】
前記量子化器が用いる閾値は、等間隔に設定された
ことを特徴とする請求項3から請求項5のうちの何れか1項記載のディジタル送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ディジタル回路に実装されるデルタシグマ変調回路、ディジタル送信回路、及び、ディジタル送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の送信機では、モデム等のディジタル回路で送信対象である信号を生成し、アナログ回路で当該送信対象である信号を高周波帯の信号に変換し、送信を行っている。なお、ディジタル回路で生成される信号は、ベースバンド周波数帯の信号である。
一方、近年、FPGA(Field Programmable Gate Array)の高速化が進んでいる。そのため、送信対象である信号をFPGAから直接高周波帯で出力するディジタル送信機の開発がなされている。
【0003】
ディジタル送信機では、ベースバンド周波数帯の信号を高周波帯の信号に変換するためのアナログ回路が不要となる。そのため、このディジタル送信機では、従来の送信機に対して、回路構成を簡素化することができる。
また、今後、更なるFPGAの高速化が進むことにより、ミリ波帯のような高い周波数のディジタル送信機についても簡素な回路構成で実現することが期待される。
【0004】
図11に、従来のディジタル送信機の構成例を示す。
従来のディジタル送信機は、例えば
図11に示すように、FPGA(ディジタル回路)11、増幅器12、フィルタ13、及び、アンテナ14を備えている。
【0005】
図11に示すディジタル送信機では、送信対象である信号をFPGA11から直接高周波帯で出力するために、FPGA11にデルタシグマ変調回路1102が実装されている。
このデルタシグマ変調回路1102は、モデム1101により生成された信号を、FPGA11から出力可能なHighとLowで表される1ビットの信号に変換して出力する。
【0006】
FPGA11から出力される1ビットの信号は、増幅器12によりその電力が増幅され、増幅器12で発生する高調波がフィルタ13により除去された後、アンテナ14から電波として送信される。
【0007】
FPGA11に実装されたデルタシグマ変調回路1102では、送信対象である信号を1ビットの信号に変換するために、量子化器1103により量子化が施されている。
一方、この量子化により送信対象である信号と1ビットの信号との間に誤差(量子化誤差)が生じる。そのため、デルタシグマ変調後の1ビットの信号のスペクトラムをみると、量子化誤差が量子化雑音となって主信号の周辺の帯域に現れる。
【0008】
この量子化雑音は、ディジタル送信機から送信される信号の信号対雑音比(以下SNRと称す)を低下させ、通信品質を低下させる要因となる。そのため、ディジタル送信機においては送信信号のSNRの向上が課題となっている。
【0009】
これに対し、特許文献1では、SNRの向上を図ったディジタル送信機の構成が示されている。
【0010】
この特許文献1では、FPGA等で構成されるディジタル回路の内部に複数のデルタシグマ変調回路が並列化され、この複数のデルタシグマ変調回路により出力された信号を合成回路で合成する構成が示されている。
そして、この構成では、各々のデルタシグマ変調回路に予め設定される初期値を異なる値にすることにより、各々のデルタシグマ変調回路により出力される信号のうち主信号を変えずに量子化雑音が異なるように生成することができる。このため、この構成では、複数のデルタシグマ変調回路により出力された信号が合成回路で合成されると、主信号に対する量子化雑音のレベルが相対的に低減し、その結果、SNRを向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図11に示すように、デルタシグマ変調回路1102は、大別すると、量子化器1103及びループフィルタ1104から構成される。
図11に示す量子化器1103は、ループフィルタ1104により出力された信号が示す値と量子化器1103に予め設定された閾値とを比較し、2つの値の大小に応じた1ビットの信号を出力する。
なお、ループフィルタ1104は、デルタシグマ変調回路1102の安定性又は量子化雑音の現れ方等に影響を与えるディジタル処理を行うディジタルフィルタである。
【0013】
先に説明したデルタシグマ変調回路1102の初期値は、ループフィルタ1104に設定される。そのため、特許文献1では、このデルタシグマ変調回路を並列化することによって、SNRが改善することになる。
しかしながら、FPGA等のディジタル回路に実装されたデルタシグマ変調回路では、量子化器よりもループフィルタのほうがディジタル回路の回路規模が大きくなる。そのため、デルタシグマ変調回路を並列化するに従い、ディジタル回路の回路規模が大幅に増大する。
【0014】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、単一構成で、主信号に対して量子化雑音の相対的に低減することを可能とする複数の信号を生成可能となるデルタシグマ変調回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示に係るデルタシグマ変調回路は、外部から入力された信号に対してディジタル処理を行うループフィルタと、ループフィルタによるディジタル処理後の信号に基づいて、閾値との大小関係に応じた1ビットの信号を出力する複数の量子化器と、量子化器によりそれぞれ出力された信号の平均値を算出し、ループフィルタにフィードバックする平均化回路とを備え、量子化器が用いる閾値は、値が互いに異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、上記のように構成したので、単一構成で、主信号に対して量子化雑音の相対的に低減することを可能とする複数の信号を生成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係るディジタル送信機の構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1における合成回路の構成例を示す図である。
【
図3】実施の形態1におけるループフィルタの構成例を示す図である。
【
図4】
図4A~
図4Dは、実施の形態1における複数の量子化器と合成回路とを組み合わせた回路の動作例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係るディジタル送信機の別の構成例を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係るディジタル送信機の別の構成例を示す図である。
【
図7】実施の形態1における合成回路の別の構成例を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係るディジタル送信機の別の構成例を示す図である。
【
図9】実施の形態2に係るディジタル送信機の構成例を示す図である。
【
図10】実施の形態3に係るディジタル送信機の構成例を示す図である。
【
図11】従来のディジタル送信機の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係るディジタル送信機の構成例を示す図である。
実施の形態1に係るディジタル送信機は、
図1に示すように、FPGA(ディジタル回路)1、合成回路2、増幅器3、フィルタ4、及び、アンテナ5を備えている。なお、FPGA1及び合成回路2は、ディジタル送信回路を構成する。
【0019】
FPGA1は、送信対象である信号に基づく複数の1ビットの信号を合成回路2に対して出力する。
このFPGA1の構成例については後述する。
【0020】
合成回路2は、FPGA1により出力された複数の1ビットの信号の振幅を合成する。この合成回路2による合成後の信号は、増幅器3に出力される。
この合成回路2としては、アナログ受動回路で構成された合成回路が用いられる。アナログ受動回路で構成された合成回路は、例えば、抵抗、コンデンサ、インダクタ、又は、伝送線路等を用いて構成された合成回路である。
【0021】
図2に実施の形態1における合成回路2の構成例を示す。
図2では、合成回路2として、Wilkinson型合成回路が用いられた場合の構成例を示している。この
図2Aに示すWilkinson型合成回路は、2つの伝送線路及び1つの抵抗から構成された合成回路であり、同相合成回路2aである。
そして、
図1に示すディジタル送信機では、合成回路2が同相合成回路2aである場合を想定した構成となっている。
【0022】
増幅器3は、合成回路2による合成後の信号の電力を増幅する。この増幅器3による増幅後の信号は、フィルタ4に出力される。
この増幅器3としては、例えば近年高周波化が進んでいるCMOS等の半導体を用いた増幅器が用いられる。
【0023】
フィルタ4は、増幅器3による増幅後の信号に含まれる高調波を除去する。このフィルタ4による高調波の除去後の信号は、アンテナ5に出力される。
このフィルタ4としては、例えばローパスフィルタが用いられる。
なお、このフィルタ4は、ディジタル送信機に必須の構成ではない。
【0024】
アンテナ5は、フィルタ4による高調波の除去後の信号を、電波として空間に放射する。
このアンテナ5として、例えばパッチアンテナが用いられる。
【0025】
次に、実施の形態1におけるFPGA1の構成例について説明する。
実施の形態1におけるFPGA1は、
図1に示すように、モデム101、及び、デルタシグマ変調回路102を備えている。
【0026】
モデム101は、送信対象である信号を生成する。この際、モデム101は、例えば、通信データを変調してディジタル変調信号を生成することで、送信対象である信号を生成する。このモデム101により生成された信号は、デルタシグマ変調回路102に出力される。
【0027】
デルタシグマ変調回路102は、モデム101により生成された信号を、デルタシグマ変調によって、FPGA1から出力可能なHighとLowで表される複数の1ビットの信号に変換する。このデルタシグマ変調回路102による変換後の信号は、合成回路2に出力される。
【0028】
このデルタシグマ変調回路102は、
図1に示すように、複数の量子化器103-1~103-N、平均化回路104、及び、ループフィルタ105を有している。
【0029】
量子化器103-1~103-Nは、それぞれ、ループフィルタ105によるディジタル処理後の信号を、1ビットの信号に変換する。この量子化器103-1~103-Nによる変換後の信号は、それぞれ、平均化回路104及び合成回路2に出力される。
【0030】
より具体的には、量子化器103-1~103-Nは、それぞれ、予め設定された閾値とループフィルタ105によるディジタル処理後の信号が示す値とを比較し、その大小関係に応じた1ビットの信号を出力する。
例えば、量子化器103-1~103-Nは、それぞれ、上記ディジタル処理後の信号が示す値が閾値以上である場合には1を示す信号を出力し、上記ディジタル処理後の信号が示す値が閾値未満である場合には0を示す信号を出力する。
【0031】
なお、量子化器103-1~103-Nが用いる閾値は、値が互いに異なる。例えば、量子化器103-1~103-Nが用いる閾値は、等間隔に設定されていてもよい。
【0032】
平均化回路104は、量子化器103-1~103-Nにより出力された1ビットの信号に基づいて、当該信号が示す値の平均値を算出する。この平均化回路104により算出された平均値を示す信号は、ループフィルタ105にフィードバックされる。
【0033】
ループフィルタ105は、モデム101により生成された信号及び平均化回路104により算出された平均値を示す信号に基づいて、ディジタル処理を行う。このループフィルタ105は、デルタシグマ変調回路102の安定性又は量子化雑音の現れ方等に影響を与えるディジタル処理を行うディジタルフィルタである。このループフィルタ105によるディジタル処理後の信号は、量子化器103-1~103-Nに出力される。
【0034】
このループフィルタ105は、例えば
図3に示すように、加算器1051、加算器1052、遅延器1053、及び、遅延器1054を有している。
図3に示すループフィルタ105は、1次のループフィルタである。また、
図3に示すループフィルタ105は、
図11に示すループフィルタ1104と同様である。
【0035】
加算器1051は、モデム101により生成された信号から、遅延器1053による遅延後の信号を減算する。この加算器1051による減算後の信号は、加算器1052に出力される。
【0036】
加算器1052は、加算器1051による減算後の信号に対し、遅延器1054による遅延後の信号を加算する。この加算器1052による加算後の信号は、量子化器103-1~103-N及び遅延器1054に出力される。
【0037】
遅延器1053は、平均化回路104により算出された平均値を示す信号を1クロックだけ遅延する。この遅延器1053による遅延後の信号は、加算器1051に出力される。
【0038】
遅延器1054は、加算器1052による加算後の信号を1クロックだけ遅延する。この遅延器1054による遅延後の信号は、加算器1052に出力される。
【0039】
このように、
図3に示す1次のループフィルタでは、加算器1051で、モデム101により生成された信号と、平均化回路104の出力に対して遅延器1053で1クロックだけ遅延された信号との差をとり、その差を示す信号を加算器1052及び遅延器1054で積算する。
【0040】
次に、
図1に示す実施の形態1に係るディジタル送信機の動作例について説明する。
ここで、
図1に示す実施の形態1におけるFPGA1と
図11に示す従来のFPGA11とを比べると、
図11で示される量子化器1103が、
図1では複数の量子化器103-1~103-N及び平均化回路104に置き換わっているところが異なる。また、
図11ではデルタシグマ変調回路1102の出力は1つであるが、
図1ではデルタシグマ変調回路102の出力が量子化器103-1~103-Nの数に相当するN個であるところが異なる。
【0041】
そして、
図1に示す実施の形態1に係るディジタル送信機では、モデム101で生成された信号がループフィルタ105に入力されると、平均化回路104の出力との間でディジタル処理が施され、量子化器103-1~103-Nに出力される。なお、ループフィルタ105の内部では、加算器1051で、モデム101により生成された信号と、平均化回路104の出力に対して遅延器1053で1クロックだけ遅延された信号との差をとり、その差を示す信号を加算器1052及び遅延器1054で積算する。
【0042】
また、量子化器103-1~103-Nには、それぞれ異なる閾値(T1~TN)が設定されている。そして、この量子化器103-1~103-Nは、それぞれ、ループフィルタ105からの信号に対して、閾値(T1~TN)に基づいて得られた1ビットの信号を出力する。
【0043】
そして、量子化器103-1~103-Nからそれぞれ出力された1ビットの信号は平均化回路104に入力され、平均化回路104で各信号が示す値の平均値が算出された後、ループフィルタ105にフィードバックされる。
そして、デルタシグマ変調回路102は、上記の動作を、繰り返し実行する。
【0044】
この量子化器103-1~103-Nから出力される1ビットの信号は、High及びLowで表される1ビットの信号であり、合成回路2でその振幅が合成される。
【0045】
ここで、量子化器103-1~103-Nの共通の入力信号をYとし、量子化器103-1~103-Nの出力信号をVk(kは1からNまでの整数)とし、合成回路2の出力信号をSとした場合での、各関係について
図4を用いて説明する。
図4では、説明を簡単にするためN=3の場合について説明する。
【0046】
例えば、量子化器103-1の閾値(T
1)がT
1=-0.5であるとする。この場合、
図4Aに示すように、量子化器103-1からは、Y<-0.5の場合にはV1=0を示す信号が出力され、Y>=-0.5の場合にはV1=1を示す信号が出力される。
【0047】
また、量子化器103-2の閾値(T
2)及び量子化器103-3の閾値(T
3)は、T
1と異なる値に設定される。例えば、閾値の間隔が等間隔であり、T
2=0,T
3=0.5であるとする。この場合、量子化器103-2及び量子化器103-3からの出力信号であるV2及びV3は、それぞれ
図4B及び
図4Cのようになる。
【0048】
そして、量子化器103-1の出力信号であるV1が合成回路2に出力される際、V1=1の場合にはHighに相当する電圧が出力される。一方、V1=0の場合にはLowに相当する電圧が出力される。ここでは、説明の簡単化のため、High=1,Low=0とする。量子化器103-2及び量子化器103-3についても、同様である。
【0049】
すると、FPGA1から出力される3つの1ビットの信号の振幅が合成回路2で合成された結果、
図4Dに示すような階段状の出力信号(S)となる。
【0050】
ここで、FPGA1から出力される1ビットの信号に現れる量子化雑音は、送信対象である信号と各量子化器103-1~103-Nから出力される1ビットの信号との間に生じる量子化誤差が原因であり、1ビットの場合にはこの量子化誤差は大きくなる。
【0051】
FPGA1からは1ビットの信号しか出力できないため量子化器103-1~103-Nを1ビットの量子化器で構成しており、その結果、FPGA1から出力される1ビットの信号それぞれのスペクトラムをみると、主信号の周囲に高いレベルの量子化雑音が現れ、SNRが低い状態となる。そこで、実施の形態1に係るディジタル送信機では、これらの1ビットの信号を合成回路2で合成することにより、複数のステップで構成される出力が得られる。
N=3の例では、ステップ数が3の出力が得られる。この場合、ステップ数が1に相当する
図11の構成と比べて、送信対象である信号との間に生じる量子化誤差が小さくなる。そのため、合成回路2から出力される信号のスペクトラムは、主信号に対して量子化雑音が相対的に低いレベルとなり、SNRが向上する。ここではN=3の場合について説明したが、ステップ数、すなわち閾値の異なる量子化器103-1~103-Nの数であるNが増加するにつれて送信信号のSNRが向上する。
【0052】
その後、合成回路2による合成後の信号は、増幅器3でその電力が増幅され、増幅器3で発生する高調波がフィルタ4で除去された後、アンテナ5から電波として送信される。
【0053】
以上のように、実施の形態1に係るディジタル送信機では、閾値の異なる複数の量子化器103-1~103-Nに対して1つのループフィルタ105を用いてデルタシグマ変調回路102を構成し、デルタシグマ変調回路102を実装したFPGA1から出力される複数の1ビットの信号の振幅を合成回路2で合成する。これにより、実施の形態1に係るディジタル送信機では、特許文献1のようにデルタシグマ変調回路が並列化された構成と比べて、ディジタル回路の回路規模を削減しつつSNRを高めることが可能となる。
【0054】
また、ディジタル送信機では、増幅器として利得の低い増幅器を用いるほうが、小型化及び低コスト化につながる。そして、利得の低い増幅器を用いつつアンテナから送信するために必要な送信信号の電力を得るためには、増幅器に入力する信号の電力を予め高めておく必要がある。
これに対し、実施の形態1に係るディジタル送信機では、合成回路2として、
図2に示したWilkinson型合成回路のようなアナログ受動回路で構成される合成回路を使用している。これにより、実施の形態1に係るディジタル送信機では、高周波化に伴う半導体の低電圧動作の制約を受けずに信号の振幅を高めることが可能となる。その結果、実施の形態1に係るディジタル送信機では、合成回路2の後段の増幅器3の利得を高めることなくアンテナ5から送信するために必要な電力を得ることができ、ディジタル送信機の小型化及び低コスト化が可能となる。
【0055】
なお、
図1では、合成回路2の後段に増幅器3が接続された構成について示した。
これまで説明したように、実施の形態1に係るディジタル送信機では、
図1に示すFPGA1から出力された信号が合成回路2で合成されることにより、量子化雑音のレベルを主信号に対して相対的に低いレベルにすることができる。しかしながら、合成回路2から出力される信号には量子化雑音が残っている。
【0056】
そこで、実施の形態1に係るディジタル送信機において、例えば
図5に示すように、合成回路2と増幅器3との間にフィルタ6が接続されてもよい。
このフィルタ6は、合成回路2による合成後の信号に含まれる主信号を通過し、主信号の周辺の帯域に存在している量子化雑音を除去するフィルタである。このフィルタ6としては、バンドパスフィルタ又はローパスフィルタを用いることができる。
実施の形態1に係るディジタル送信機では、このフィルタ6を用いることで、合成回路2から出力される信号に残された量子化雑音を取り除くことができ、送信信号のSNRを更に向上することができる。
【0057】
なお、
図5では、フィルタ6が合成回路2と増幅器3の間に接続された例を示した。しかしながら、これに限らず、フィルタ6は、増幅器3とフィルタ4の間、又は、フィルタ4とアンテナ5の間に接続されていてもよい。
【0058】
また、
図1では、FPGA1の後段に合成回路2が直接接続された構成について示した。しかしながら、これに限らず、例えば
図6に示すように、FPGA1と合成回路2との間にDCブロック7-1~7-Nが接続されていてもよい。
DCブロック7-1~7-Nは、高周波信号を通過して直流の通過を阻止する。このDCブロック7-1~7-Nとしては、コンデンサ又はハイパスフィルタ等を用いることができる。
図6では、DCブロック7-1~7-Nとして、コンデンサが用いられた場合を示している。
【0059】
ここで、FPGA1から出力される1ビットの信号は、High(正電圧)とLow(GND)の2値で構成される時間変化する信号であり、この1ビットの信号にはDC成分が含まれる。そこで、実施の形態1に係るディジタル送信機では、この1ビットの信号をDCブロック7-1~7-Nに入力することによって、DC成分を除去したうえで信号の合成を行うことができる。
【0060】
また、上記では、合成回路2として、
図2Aに示すWilkinson型合成回路に代表される同相合成回路2aを用いた構成について示した。
しかしながら、これに限らず、合成回路2としては、
図7に示すマーチャントバランに代表される逆相合成回路2bを用いることもできる。
図7に示すマーチャントバランは、伝送線路で構成される。
【0061】
合成回路2として逆相合成回路2bを用いた場合でのディジタル送信機の構成例を
図8に示す。
図8では、説明を簡略化するため、量子化器103-1~103-Nとして2つの量子化器を用いた場合について示すが、この構成は偶数個の量子化器を用いて構成することができる。
【0062】
図8に示したディジタル送信機では、2つの量子化器のうち片方の量子化器103-2の出力にインバータ106が追加で接続されている。
インバータ106は、量子化器103-2により出力された1ビットの信号を反転する。このインバータ106による反転後の信号は、逆相合成回路2bに出力される。
【0063】
そして、逆相合成回路2bは、インバータ106による反転後の信号を再度反転して、量子化器103-1により出力された信号と振幅の合成を行う。よって、
図5に示す構成では、結果として
図1に示す構成と同様の効果が得られる。
【0064】
なお、
図8では、量子化器103-2の後段にインバータ106が接続された構成について示した。しかしながら、これに限らず、対となる量子化器(量子化器103-1及び量子化器103-2)による出力信号が、互いにビット反転した値となるように構成されていればよい。
例えば、量子化器103-2の後段にではなく、量子化器103-1の後段にインバータ106が接続されていてもよい。
また、例えば、インバータ106は用いずに、量子化器103-2として、量子化器103-1に対してビット反転した値を出力する量子化器を用いてもよい。例えば、量子化器103-2として、予め設定された閾値とループフィルタ105によるディジタル処理後の信号が示す値とを比較し、当該ディジタル処理後の信号が示す値が閾値以上である場合は0を示す信号を出力し、当該ディジタル処理後の信号が示す値が閾値未満である場合は1を示す信号を出力する量子化器を用いてもよい。
【0065】
以上のように、この実施の形態1によれば、デルタシグマ変調回路102は、外部から入力された信号に対してディジタル処理を行うループフィルタ105と、ループフィルタ105によるディジタル処理後の信号に基づいて、閾値との大小関係に応じた1ビットの信号を出力する複数の量子化器103-1~103-Nと、量子化器103-1~103-Nにより出力された信号が示す値の平均値を算出し、ループフィルタ105にフィードバックする平均化回路104とを備え、量子化器103-1~103-Nが用いる閾値は、値が互いに異なる。これにより、実施の形態1に係るデルタシグマ変調回路102は、単一構成で、主信号に対して量子化雑音の相対的に低減することを可能とする複数の信号を生成可能となる。
【0066】
また、この実施の形態1によれば、ディジタル送信機は、送信対象である信号を生成するモデム101と、モデム101により生成された信号に対してディジタル処理を行うループフィルタ105と、ループフィルタ105によるディジタル処理後の信号に基づいて、閾値との大小関係に応じた1ビットの信号を出力する複数の量子化器103-1~103-Nと、量子化器103-1~103-Nにより出力された信号が示す値の平均値を算出し、ループフィルタ105にフィードバックする平均化回路104と、量子化器103-1~103-Nにより出力された信号の振幅を合成する合成回路2と、合成回路2による合成後の信号の電力を増幅する増幅器3と、増幅器3による増幅後の信号を電波として空間に放射するアンテナ5とを備え、量子化器103-1~103-Nが用いる閾値は、値が互いに異なる。これにより、実施の形態1に係るディジタル送信機は、従来に対し、FPGA1の回路規模増大を抑制しつつ送信信号のSNRを向上可能となり、且つ、ディジタル送信機の小型化及び低コスト化が実現可能となる。
【0067】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1で示したディジタル送信機をアレーアンテナに適用した場合での構成例について示す。
【0068】
図9に示す実施の形態2に係るディジタル送信機では、
図1に示す実施の形態1に係るディジタル送信機に対し、量子化器103-1~103-Nが複数の量子化器群107-K(量子化器103-1-1~103-1-L及び量子化器103-2-1~103-2-M)に変更され、合成回路2が複数の合成回路2-K(合成回路2-1及び合成回路2-2)に変更され、増幅器3が複数の増幅器3-K(増幅器3-1及び増幅器3-2)に変更され、フィルタ4が複数のフィルタ4-K(フィルタ4-1及びフィルタ4-2)に変更され、アンテナ5が複数のアンテナ5-K(アンテナ5-1及びアンテナ5-2)に変更され、複数の移相器8-K(移相器8-1及び移相器8-2)が追加されている。
図9に示す実施の形態2に係るディジタル送信機におけるその他の構成例については、
図1に示す実施の形態1に係るディジタル送信機と同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
なお、
図9では、説明の簡略化のため、K=2の場合を示しているが、Kは3以上であってもよい。
【0070】
量子化器103-1-1~103-1-Lは、それぞれ、ループフィルタ105によるディジタル処理後の信号を、1ビットの信号に変換する。この量子化器103-1-1~103-1-Lによる変換後の信号は、それぞれ、平均化回路104及び合成回路2-1に出力される。
【0071】
より具体的には、量子化器103-1-1~103-1-Lは、それぞれ、予め設定された閾値とループフィルタ105によるディジタル処理後の信号が示す値とを比較し、その大小関係に応じた1ビットの信号を出力する。
例えば、量子化器103-1-1~103-1-Lは、それぞれ、上記ディジタル処理後の信号が示す値が閾値以上である場合には1を示す信号を出力し、上記ディジタル処理後の信号が示す値が閾値未満である場合には0を示す信号を出力する。
【0072】
なお、量子化器103-1-1~103-1-Lが用いる閾値は、値が互いに異なる。例えば、量子化器103-1-1~103-1-Lが用いる閾値は、等間隔に設定されていてもよい。
【0073】
量子化器103-2-1~103-2-Mは、それぞれ、ループフィルタ105によるディジタル処理後の信号を、1ビットの信号に変換する。この量子化器103-2-1~103-2-Mによる変換後の信号は、それぞれ、平均化回路104及び合成回路2-2に出力される。
【0074】
より具体的には、量子化器103-2-1~103-2-Mは、それぞれ、予め設定された閾値とループフィルタ105によるディジタル処理後の信号が示す値とを比較し、その大小関係に応じた1ビットの信号を出力する。
例えば、量子化器103-2-1~103-2-Mは、それぞれ、上記ディジタル処理後の信号が示す値が閾値以上である場合には1を示す信号を出力し、上記ディジタル処理後の信号が示す値が閾値未満である場合には0を示す信号を出力する。
【0075】
なお、量子化器103-2-1~103-2-Mが用いる閾値は、値が互いに異なる。例えば、量子化器103-2-1~103-2-Mが用いる閾値は、等間隔に設定されていてもよい。
【0076】
なお、量子化器103-1-1~103-1-Lと量子化器103-2-1~103-2-Mとの間では、同じ値の閾値が設定されていてもよいし、異なる値の閾値が設定されていてもよい。
また、L及びMは同数であってもよいし、異なる数であってもよい。
【0077】
なお、実施の形態2における平均化回路104は、量子化器103-1-1~103-1-Lにより出力された1ビットの信号及び量子化器103-2-1~103-2-Mにより出力された1ビットの信号に基づいて、これらの信号が示す値の平均値を算出する。この平均化回路104により算出された平均値を示す信号は、ループフィルタ105にフィードバックされる。
【0078】
合成回路2-1は、FPGA1により出力された複数の1ビットの信号のうち、量子化器103-1-1~103-1-Lにより出力された1ビットの信号の振幅を合成する。この合成回路2-1による合成後の信号は、増幅器3-1に出力される。
この合成回路2-1としては、アナログ受動回路で構成された合成回路が用いられる。
【0079】
合成回路2-2は、FPGA1により出力された複数の1ビットの信号のうち、量子化器103-2-1~103-2-Mにより出力された1ビットの信号の振幅を合成する。この合成回路2-2による合成後の信号は、増幅器3-2に出力される。
この合成回路2-2としては、アナログ受動回路で構成された合成回路が用いられる。
【0080】
移相器8-1は、合成回路2-1による合成後の信号の位相を変化させる。すなわち、移相器8-1は、ディジタル送受信機に設けられた制御回路(不図示)による設定に基づいて、合成回路2-1による合成後の信号の位相を回転する。この移相器8-1による位相の変化後の信号は、増幅器3-1に出力される。
【0081】
移相器8-2は、合成回路2-2による合成後の信号の位相を変化させる。すなわち、移相器8-2は、ディジタル送受信機に設けられた制御回路(不図示)による設定に基づいて、合成回路2-2による合成後の信号の位相を回転する。この移相器8-2による位相の変化後の信号は、増幅器3-2に出力される。
【0082】
増幅器3-1は、合成回路2-1による合成後の信号の電力を増幅する。この増幅器3-1による増幅後の信号は、フィルタ4-1に出力される。
この増幅器3-1としては、例えばCMOS等の半導体を用いた増幅器が用いられる。
【0083】
増幅器3-2は、合成回路2-2による合成後の信号の電力を増幅する。この増幅器3-2による増幅後の信号は、フィルタ4-2に出力される。
この増幅器3-2としては、例えばCMOS等の半導体を用いた増幅器が用いられる。
【0084】
フィルタ4-1は、増幅器3-1による増幅後の信号に含まれる高調波を除去する。このフィルタ4-1による高調波の除去後の信号は、アンテナ5-1に出力される。
このフィルタ4-1としては、例えばローパスフィルタが用いられる。
なお、このフィルタ4-1は、ディジタル送信機に必須の構成ではない。
【0085】
フィルタ4-2は、増幅器3-2による増幅後の信号に含まれる高調波を除去する。このフィルタ4-2による高調波の除去後の信号は、アンテナ5-2に出力される。
このフィルタ4-2としては、例えばローパスフィルタが用いられる。
なお、このフィルタ4-2は、ディジタル送信機に必須の構成ではない。
【0086】
アンテナ5-1は、フィルタ4-1による高調波の除去後の信号を、電波として空間に放射する。
このアンテナ5-1として、例えばパッチアンテナが用いられる。
【0087】
アンテナ5-2は、フィルタ4-2による高調波の除去後の信号を、電波として空間に放射する。
このアンテナ5-2として、例えばパッチアンテナが用いられる。
【0088】
次に、
図9に示す実施の形態2に係るディジタル送信機の動作例について説明する。
図9に示す実施の形態2に係るディジタル送信機では、モデム101で生成された信号がループフィルタ105に入力されると、平均化回路104の出力との間でディジタル処理が施され、量子化器103-1-1~103-1-L及び量子化器103-2-1~103-2-Mに出力される。なお、ループフィルタ105の内部では、加算器1051で、モデム101により生成された信号と、平均化回路104の出力に対して遅延器1053で1クロックだけ遅延された信号との差をとり、その差を示す信号を加算器1052及び遅延器1054で積算する。
【0089】
また、量子化器103-1-1~103-1-Lには、それぞれ異なる閾値(T1~TL)が設定されている。そして、この量子化器103-1-1~103-1-Lは、それぞれ、ループフィルタ105からの信号に対して、閾値(T1~TL)に基づいて得られた1ビットの信号を出力する。
【0090】
同様に、量子化器103-2-1~103-2-Mには、それぞれ異なる閾値(TL+1~TL+M)が設定されている。そして、この量子化器103-2-1~103-2-Mは、それぞれ、ループフィルタ105からの信号に対して、閾値(TL+1~TL+M)に基づいて得られた1ビットの信号を出力する。
【0091】
そして、量子化器103-1-1~103-1-L及び量子化器103-2-1~103-2-Mからそれぞれ出力される1ビットの信号は平均化回路104に入力され、平均化回路104で平均値を算出したのち、ループフィルタ105にフィードバックされる。
そして、デルタシグマ変調回路102は、上記の動作を、繰り返し実行する。
【0092】
この量子化器103-1-1~103-1-Lから出力される1ビットの信号は、High及びLowで表される1ビットの信号であり、合成回路2-1でその振幅が合成される。
【0093】
同様に、量子化器103-2-1~103-2-Mから出力される1ビットの信号は、High及びLowで表される1ビットの信号であり、合成回路2-2でその振幅が合成される。
【0094】
そして、FPGA1から出力されたL個の1ビットの信号の振幅が合成回路2-1で合成された結果、ステップ数がLの階段状の出力が得られる。この出力は、ステップ数が1に相当する
図11の構成と比べて、ステップ数がLの分だけ送信対象である信号との間に生じる量子化誤差が小さくなる。そのため、合成回路2-1から出力される信号のスペクトラムは、主信号に対して量子化雑音が相対的に低いレベルとなり、SNRが向上する。
【0095】
同様に、FPGA1から出力されたM個の1ビットの信号の振幅が合成回路2-2で合成された結果、ステップ数がMの階段状の出力が得られる。この出力は、ステップ数が1に相当する
図11の構成と比べて、ステップ数がMの分だけ送信対象である信号との間に生じる量子化誤差が小さくなる。そのため、合成回路2-2から出力される信号のスペクトラムは、主信号に対して量子化雑音が相対的に低いレベルとなり、SNRが向上する。
【0096】
その後、合成回路2-1による合成後の信号は、移相器8-1で位相が回転され、増幅器3-1で電力が増幅され、増幅器3-1で発生する高調波がフィルタ4-1で除去された後、アンテナ5-1から電波として送信される。
【0097】
同様に、合成回路2-2による合成後の信号は、移相器8-2で位相が回転され、増幅器3-2で電力が増幅され、増幅器3-2で発生する高調波がフィルタ4-2で除去された後、アンテナ5-2から電波として送信される。
【0098】
なお、アンテナ5-1から送信される電波及びアンテナ5-2から送信される電波は、移相器8-1及び移相器8-2に設定した位相回転量の差だけ、主信号の位相が異なる。
【0099】
そして、アンテナ5-1から送信される電波及びアンテナ5-2から送信される電波が空間で合成されると、移相器8-1及び移相器8-2に設定した位相回転量の差に応じて、電波を送信する方向が変化される。
【0100】
以上のように、実施の形態2に係るディジタル送信機では、複数の量子化器を複数のグループである量子化器群107-Kに分け、その量子化器群107-K毎に合成回路2-K、増幅器3-K、フィルタ4-K及びアンテナ5-Kを接続し、更に合成回路2-Kと増幅器3-Kの間に移相器8-Kをそれぞれ接続し、各移相器8-Kに設定する位相回転量に差をつける。これにより、実施の形態2に係るディジタル送信機では、実施の形態1に示した効果に加えて、ディジタル送信機から送信する電波の方向を変化させることができる。
【0101】
なお、
図9では、移相器8-Kが、合成回路2-Kと増幅器3-Kの間に接続された構成を示した。しかしながら、これに限らず、移相器8-Kは、増幅器3-Kとフィルタ4-Kとの間、又は、フィルタ4-Kとアンテナ5-Kとの間に接続されていてもよい。
【0102】
実施の形態3.
実施の形態1に係るディジタル送信機では、複数の量子化器103-1~103-Nから出力された信号を合成回路2で合成する場合を示した。これに対し、実施の形態3では、複数の量子化器103-1~103-Nから出力される信号を、実施の形態1に示す合成回路2ではなく、アンテナ5から放射される電波の形で空間合成する構成について示す。
【0103】
この
図10に示す実施の形態2に係るディジタル送信機では、
図1に示す実施の形態1に係るディジタル送信機に対し、合成回路2が取り除かれ、増幅器3が複数の増幅器3-1~3-Nに変更され、フィルタ4が複数のフィルタ4-1~4-Nに変更され、アンテナ5が複数のアンテナ5-1~5-Nに変更されている。
図10に示す実施の形態3に係るディジタル送信機におけるその他の構成例については、
図1に示す実施の形態1に係るディジタル送信機と同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0104】
増幅器3-1~3-Nは、量子化器103-1~103-N毎に接続されている。この増幅器3-1~3-Nは、それぞれ、接続された量子化器103-1~103-Nにより出力された複数の1ビットの信号の電力を増幅する。この増幅器3-1~3-Nによる増幅後の信号は、接続されたフィルタ4-1~4-Nに出力される。
この増幅器3-1~3-Nとしては、例えばCMOS等の半導体を用いた増幅器が用いられる。
【0105】
フィルタ4-1~4-Nは、増幅器3-1~3-N毎に接続されている。このフィルタ4-1~4-Nは、それぞれ、接続された増幅器3-1~3-Nによる増幅後の信号に含まれる高調波を除去する。このフィルタ4-1~4-Nによる高調波の除去後の信号は、接続されたアンテナ5-1~5-Nに出力される。
このフィルタ4-1~4-Nとしては、例えばローパスフィルタが用いられる。
なお、このフィルタ4-1~4-Nは、ディジタル送信機に必須の構成ではない。
【0106】
アンテナ5-1~5-Nは、フィルタ4-1~4-N毎に接続されている。このアンテナ5-1~5-Nは、それぞれ、接続されたフィルタ4-1~4-Nによる高調波の除去後の信号を、電波として空間に放射する。
このアンテナ5-1~5-Nとして、例えばパッチアンテナが用いられる。
そして、アンテナ5-1~5-Nにより放射された信号は、空間で振幅が合成される。
【0107】
次に、
図10に示す実施の形態3に係るディジタル送信機の動作例について説明する。
図10に示す実施の形態3に係るディジタル送信機では、モデム101で生成された信号がループフィルタ105に入力されると、平均化回路104の出力との間でディジタル処理が施され、量子化器103-1~103-Nに出力される。なお、ループフィルタ105の内部では、加算器1051で、モデム101により生成された信号と、平均化回路104の出力に対して遅延器1053で1クロックだけ遅延された信号との差をとり、その差を示す信号を加算器1052及び遅延器1054で積算する。
【0108】
また、量子化器103-1~103-Nには、それぞれ異なる閾値(T1~TN)が設定されている。そして、この量子化器103-1~103-Nは、それぞれ、ループフィルタ105からの信号に対して、閾値(T1~TN)に基づいて得られた1ビットの信号を出力する。
【0109】
そして、量子化器103-1~103-Nからそれぞれ出力される1ビットの信号は平均化回路104に入力され、平均化回路104で各信号が示す値の平均値が算出された後、ループフィルタ105にフィードバックされる。
そして、デルタシグマ変調回路102は、上記の動作を、繰り返し実行する。
【0110】
この量子化器103-1~103-Nから出力される1ビットの信号は、High及びLowで表される1ビット信号である。
【0111】
その後、FPGA1から出力された1ビットの信号は、それぞれ、増幅器3-1~3-Nで電力が増幅され、増幅器3-1~3-Nで発生する高調波がフィルタ4-1~4-Nで除去された後、アンテナ5-1~5-Nから電波として送信される。
【0112】
そして、アンテナ5-1~5-Nから送信された電波は、空間で合成される。
アンテナ5-1~5-Nから送信された電波が空間で合成された結果、合成回路2で合成する場合と同様にステップ数がNの階段状の出力が得られる。この出力は、ステップ数が1に相当する
図11の構成と比べて、ステップ数がNの分だけ送信対象である信号との間に生じる量子化誤差が小さくなる。そのため、空間で合成された信号のスペクトラムは、主信号に対して量子化雑音が相対的に低いレベルとなり、SNRが向上する。
【0113】
以上のように、実施の形態3に係るディジタル送信機では、個々の量子化器103-1~103-Nに対して増幅器3-1~3-N、フィルタ4-1~4-N及びアンテナ5-1~5-Nをそれぞれ接続し、アンテナ5-1~5-Nから送信された電波を空間で合成する。これにより、実施の形態3に係るディジタル送信機では、実施の形態1に係るディジタル送信機に対し、合成回路2を不要とすることができる。
【0114】
なお、各実施の形態の自由な組合わせ、或いは各実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本開示に係るデルタシグマ変調回路は、単一構成で、主信号に対して量子化雑音の相対的に低減することを可能とする複数の信号を生成可能となり、ディジタル回路に実装されるデルタシグマ変調回路等に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0116】
1 FPGA(ディジタル回路)、2 合成回路、2a 同相合成回路、2b 逆相合成回路、3 増幅器、4 フィルタ、5 アンテナ、6 フィルタ、7 DCブロック、8 移相器、101 モデム、102 デルタシグマ変調回路、103 量子化器、104 平均化回路、105 ループフィルタ、106 インバータ、107 量子化器群、1051 加算器、1052 加算器、1053 遅延器、1054 遅延器。