(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】飲料供給システムおよび飲料供給ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
A47J 31/00 20060101AFI20240920BHJP
A47J 31/44 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A47J31/00 302
A47J31/44 100
(21)【出願番号】P 2024522879
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2022021791
(87)【国際公開番号】W WO2023228418
(87)【国際公開日】2023-11-30
【審査請求日】2024-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 智子
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0330119(US,A1)
【文献】特開平07-000286(JP,A)
【文献】特開2010-157018(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112509217(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00
A47J 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内を自律移動してユーザに飲料を供給する飲料供給ロボットと、
前記飲料供給ロボットを制御する制御装置とを備え、
前記飲料供給ロボットは、
前記飲料の温度を調整するための温度調整部を含む飲料供給部と、
前記飲料供給ロボットを移動させる駆動部と、
前記飲料供給部および前記駆動部に電力を供給するバッテリとを含み、
前記飲料供給ロボットは、ステーションから電力の供給を受けて前記バッテリを充電することが可能に構成され、
前記制御装置は、前記飲料供給ロボットが前記ステーションまたは飲料の供給地点に位置するときに前記温度調整部を動作させる一方で、前記飲料供給ロボットの移動中において前記温度調整部の動作を停止させるように構成され、
前記ステーションに前記飲料供給ロボットが位置する場合において、ユーザからの供給指示を受信したときには、前記制御装置は、
ユーザの位置情報および前記施設内の温度情報を取得し、
前記位置情報から、前記供給地点、および前記ステーションから前記供給地点までの移動経路を決定し、
前記移動経路と前記飲料供給ロボットの移動速度とに基づいて、前記飲料供給ロボットの移動時間を算出し、
前記移動時間および前記温度情報に基づいて、前記移動時間中における前記飲料の温度変化量を推定し、
推定された前記温度変化量を補償するように、前記飲料の供給設定温度に基づいて目標温度を設定し、
前記飲料の温度が前記目標温度になるように前記温度調整部を制御し、
前記飲料の温度が前記目標温度に達したことに応じて、前記供給地点への移動を開始するように前記駆動部を制御する、飲料供給システム。
【請求項2】
前記ステーションに前記飲料供給ロボットが位置する場合において、前記制御装置は、
前記飲料の温度を前記供給設定温度に保つように前記温度調整部の間欠運転を実行し、
前記供給指示を受信したことに応じて、前記飲料の温度が前記目標温度になるように、前記温度調整部の連続運転を実行する、請求項1に記載の飲料供給システム。
【請求項3】
前記ステーションに前記飲料供給ロボットが位置する場合において、前記制御装置は、
各ユーザのスケジュール情報および前記温度情報を取得し、
前記スケジュール情報から、飲料の供給予定地点および供給予定時刻を設定し、
前記ステーションから前記供給予定地点までの前記移動経路を決定し、
前記供給予定地点までの前記移動経路と前記移動速度とに基づいて、前記供給予定地点までの移動予測時間を算出し、
前記温度情報を用いて、前記移動予測時間中における前記温度変化量を推定し、
推定された前記温度変化量を補償するように、前記供給設定温度に基づいて前記目標温度を設定し、
前記供給予定時刻および前記移動予測時間に基づいて、前記飲料供給ロボットの移動開始時刻を設定し、
前記移動開始時刻において前記飲料の温度が前記目標温度に達するように、前記温度調整部を制御し、
前記移動開始時刻において前記供給予定地点への移動を開始するように、前記駆動部を制御する、請求項1に記載の飲料供給システム。
【請求項4】
前記ステーションに前記飲料供給ロボットが位置する場合において、前記制御装置は、
前記飲料の温度を前記供給設定温度に保つように前記温度調整部の間欠運転を実行し、
前記移動開始時刻に基づいて設定された連続運転開始時刻が到来したことに応じて、前記飲料の温度が前記目標温度になるように、前記温度調整部の連続運転を実行する、請求項3に記載の飲料供給システム。
【請求項5】
施設内を自律移動してユーザに飲料を供給する飲料供給ロボットの制御方法であって、
前記飲料供給ロボットは、
飲料の温度を調整するための温度調整部を含む飲料供給部と、
前記飲料供給ロボットを移動させる駆動部と、
前記飲料供給部および前記駆動部に電力を供給するバッテリとを含み、
前記飲料供給ロボットは、ステーションから電力の供給を受けて前記バッテリを充電することが可能に構成され、
前記飲料供給ロボットが前記ステーションまたは飲料の供給地点に位置するときに、前記温度調整部を動作させるステップと、
前記飲料供給ロボットの移動中において、前記温度調整部の動作を停止させるステップとを備え、
前記温度調整部を動作させるステップは、
前記飲料供給ロボットが前記ステーションに位置する場合において、ユーザから供給指示を受け付けたときに、ユーザの位置情報および前記施設内の温度情報を取得するステップと、
前記位置情報から、前記供給地点と、前記供給地点までの移動経路とを決定するステップと、
前記移動経路と前記飲料供給ロボットの移動速度とに基づいて、前記飲料供給ロボットの移動時間を算出するステップと、
前記温度情報を用いて、前記移動時間中における前記飲料の温度変化量を推定するステップと、
推定された前記温度変化量を補償するように、前記飲料の供給設定温度に基づいて目標温度を設定するステップと、
前記飲料の温度が前記目標温度になるように前記温度調整部を制御するステップとを含み、
前記飲料の温度が前記目標温度に達したことに応じて、前記供給地点への移動を開始するように前記駆動部を制御するステップをさらに備える、飲料供給ロボットの制御方法。
【請求項6】
前記温度調整部を動作させるステップは、
前記ステーションに前記飲料供給ロボットが位置する場合に、前記飲料の温度を前記供給設定温度に保つように前記温度調整部の間欠運転を実行するステップと、
前記供給指示を受信したことに応じて、前記飲料の温度が前記目標温度になるように、前記温度調整部の連続運転を実行するステップとをさらに含む、請求項5に記載の飲料供給ロボットの制御方法。
【請求項7】
前記ステーションに前記飲料供給ロボットが位置する場合において、各ユーザのスケジュール情報および前記温度情報を取得するステップをさらに備え、
前記温度調整部を動作させるステップは、
前記スケジュール情報から、飲料の供給予定地点および供給予定時刻を設定するステップと、
前記ステーションから前記供給予定地点までの前記移動経路とを決定するステップと、
前記供給予定地点までの前記移動経路と前記移動速度とに基づいて、前記供給予定地点までの移動予測時間を算出するステップと、
前記温度情報を用いて、前記移動予測時間中における前記温度変化量を推定するステップと、
推定された前記温度変化量を補償するように、前記供給設定温度に基づいて前記目標温度を設定するステップと、
前記供給予定時刻および前記移動予測時間に基づいて、前記飲料供給ロボットの移動開始時刻を設定するステップと、
前記移動開始時刻において前記飲料の温度が前記目標温度に達するように、前記温度調整部を制御するステップとを含み、
前記駆動部を制御するステップは、前記移動開始時刻において前記供給予定地点への移動を開始するように、前記駆動部を制御するステップを含む、請求項5に記載の飲料供給ロボットの制御方法。
【請求項8】
前記温度調整部を動作させるステップは、
前記ステーションに前記飲料供給ロボットが位置する場合において、前記飲料の温度を前記供給設定温度に保つように前記温度調整部の間欠運転を実行するステップと、
前記移動開始時刻に基づいて設定された連続運転開始時刻が到来したことに応じて、前記飲料の温度が前記目標温度になるように、前記温度調整部の連続運転を実行するステップとをさらに含む、請求項7に記載の飲料供給ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飲料供給システムおよび飲料供給ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平7-286号公報(特許文献1)には、自動走行給茶装置を用いてユーザにお茶を供給する給茶システムが開示されている。この給茶システムにおいて、自動走行給茶装置は、給茶ユニットと、給茶ユニットを搭載して移動する走行装置と、バッテリとを備えており、バッテリに蓄えられた電力を用いてユーザの所へ移動してお茶を供給する。
【0003】
特開2001-157018号公報(特許文献2)には、走行路を自走して缶入り飲料を販売する自走式自動販売機システムが開示されている。自走式自動販売機は、走行路を自走する搬送台車と、商品をユーザに販売する自動販売部と、バッテリとを備えている。自動販売部は、商品を加熱または冷却するための冷凍サイクル装置を含んでいる。搬送台車および自動販売部への給電は、バッテリによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-286号公報
【文献】特開2010-157018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に開示されるシステムは、バッテリに蓄えられた電力を用いて、給茶装置または自動販売機を走行させるとともに、飲料の加熱または冷却を行うように構成されている。そのため、バッテリの容量によっては、給茶装置または自動販売機が移動できる範囲が制限されることが懸念される。また、バッテリの残容量が不足することによって、移動先において給茶ユニットまたは冷凍サイクル装置の動作を継続させることができず、適温の飲料をユーザに供給することが困難となることが懸念される。
【0006】
なお、バッテリの容量を増やすことによってこれらの懸念点を回避することができるが、バッテリが大型なものになるため、給茶装置および自動販売機の大型化および重量化を招くことが懸念される。
【0007】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、広範囲のユーザに対して適温の飲料を供給することができる飲料供給システムおよび飲料供給ロボットの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に従う飲料供給システムは、施設内を自律移動してユーザに飲料を供給する飲料供給ロボットと、飲料供給ロボットを制御する制御装置とを備える。飲料供給ロボットは、飲料の温度を調整するための温度調整部を含む飲料供給部と、飲料供給ロボットを移動させる駆動部と、飲料供給部および駆動部に電力を供給するバッテリとを含む。飲料供給ロボットは、ステーションから電力の供給を受けてバッテリを充電することが可能に構成される。制御装置は、飲料供給ロボットがステーションまたは飲料の供給地点に位置するときに温度調整部を動作させる一方で、飲料供給ロボットの移動中において温度調整部の動作を停止させるように構成される。ステーションに飲料供給ロボットが位置する場合において、ユーザからの供給指示を受信したときには、制御装置は、ユーザの位置情報および施設内の温度情報を取得し、位置情報から、供給地点と、供給地点までの移動経路とを決定する。制御装置は、移動経路と飲料供給ロボットの移動速度とに基づいて、飲料供給ロボットの移動時間を算出し、移動時間および温度情報に基づいて、移動時間中における飲料の温度変化量を推定する。制御装置は、推定された温度変化量を補償するように、飲料の供給設定温度に基づいて目標温度を設定し、飲料の温度が目標温度になるように温度調整部を制御する。制御装置は、飲料の温度が目標温度に達したことに応じて、供給地点への移動を開始するように駆動部を制御する。
【0009】
本開示の一態様に従う飲料供給方法は、施設内を自律移動してユーザに飲料を供給する飲料供給ロボットの制御方法である。飲料供給ロボットは、飲料の温度を調整するための温度調整部を含む飲料供給部と、飲料供給ロボットを移動させる駆動部と、飲料供給部および駆動部に電力を供給するバッテリとを含む。飲料供給ロボットは、ステーションから電力の供給を受けてバッテリを充電することが可能に構成される。制御方法は、飲料供給ロボットがステーションまたは飲料の供給地点に位置するときに、温度調整部を動作させるステップと、飲料供給ロボットの移動中において、温度調整部の動作を停止させるステップとを備える。温度調整部を動作させるステップは、飲料供給ロボットがステーションに位置する場合において、ユーザから供給指示を受け付けたときに、ユーザの位置情報および施設内の温度情報を取得するステップと、位置情報から、供給地点と、供給地点までの移動経路とを決定するステップと、移動経路と飲料供給ロボットの移動速度とに基づいて、飲料供給ロボットの移動時間を算出するステップと、温度情報を用いて、移動時間中における飲料の温度変化量を推定するステップと、推定された温度変化量を補償するように、飲料の供給設定温度に基づいて目標温度を設定するステップと、飲料の温度が目標温度になるように温度調整部を制御するステップとを含む。制御方法は、飲料の温度が目標温度に達したことに応じて、供給地点への移動を開始するように駆動部を制御するステップをさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、広範囲のユーザに対して適温の飲料を供給することができる飲料供給システムおよび飲料供給ロボットの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る飲料供給システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】飲料供給ロボットおよびステーションの構成例を示す図である。
【
図4】飲料供給システムの基本動作を説明するための図である。
【
図5】飲料供給ロボットの動作の第1の実施例を説明するためのタイムチャートである。
【
図6】飲料供給ロボットの動作の第2の実施例を説明するためのタイムチャートである。
【
図7】第2の実施例における飲料供給の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】第2の実施例における飲料供給の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】飲料供給ロボットの動作の第3の実施例を説明するためのタイムチャートである。
【
図10】第3の実施例における飲料供給の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】第3の実施例における飲料供給の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰り返さないものとする。
【0013】
<飲料供給システムの構成>
図1は、実施の形態に係る飲料供給システムの構成を示すブロック図である。飲料供給システム100は、施設内を自律移動する飲料供給ロボットによって施設内に存在するユーザに対して飲料を供給するシステムである。
【0014】
図1に示されるように、飲料供給システム100は、飲料供給ロボット10と、ステーション20と、複数の無線通信機30と、サーバ40とを備える。
【0015】
飲料供給ロボット10は、自律移動型の飲料供給装置である。飲料供給ロボット10は、飲料供給部12と、駆動部13とを備えている。飲料供給ロボット10は、バッテリを搭載しており、バッテリに蓄えられた電力を用いて飲料供給部12および駆動部13を作動させることにより、施設内を移動し、予め定められた供給設定温度Tsetに従った低温の飲料をユーザに供給することができる。
図1の例では、飲料供給ロボット10は、飲料として、温かいお茶、お湯、および温かい珈琲を供給するように構成されている。
【0016】
飲料供給ロボット10には、操作部15が設けられている。操作部15は、飲料供給ロボット10が供給できる飲料の品目を表示する表示部と、飲料を汲み出すための操作ボタンとを含んで構成される。
【0017】
飲料供給ロボット10には、無線通信機11が設けられている。無線通信機11は、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy、「Bluetooth」は登録商標)通信規格に従う通信方式を用いて、飲料供給ロボット10の位置を検出するための信号を出力する。BLE通信規格に代えて、UWB(Ultra Wide Band)通信規格に従う通信方式を用いてもよい。また、無線通信機11は、例えばLTE(Long Term Evolution)などの無線通信規格に従う通信方式を用いて、飲料供給ロボット10を識別するためのIDを示す信号などをサーバ40へ送信する。
【0018】
複数の無線通信機30は、例えば、天井35に適当な距離を置いて設置され、飲料供給ロボット10の無線通信機11と同じ通信規格に従う通信方式を用いて、飲料供給ロボット10から発信される信号を受信するとともにその受信強度を検知する。各無線通信機30における受信強度から、施設内における飲料供給ロボット10の位置を検出することができる。無線通信機30は、飲料供給ロボット10から受信した信号の受信強度をサーバ40へ出力する。無線通信機30は壁に設置されてもよい。
【0019】
ステーション20は、施設内に設置されており、移動待機中の飲料供給ロボット10を収容する。ステーション20は、飲料供給ロボット10に搭載されたバッテリを充電するための充電器を備えている。飲料供給ロボット10は、ステーション20において待機しながらバッテリを充電する。ステーション20における充電方式は、接触式であってもよいし、非接触式であってもよい。
【0020】
サーバ40は、飲料供給ロボット10を管理および制御する。サーバ40は、無線通信機30において受信される信号の受信強度を無線通信機30から受信し、各無線通信機30における受信強度から施設内における飲料供給ロボット10の位置を検出する。
【0021】
サーバ40は、通信網NWに接続されている。通信網NWには、施設の利用を管理する施設管理サーバ50、およびユーザが所有する通信端末であるユーザ端末60が接続されている。ユーザ端末60は、例えば、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末、パーソナルコンピュータなどである。飲料の供給を希望するユーザは、自身が所有するユーザ端末60を用いて、サーバ40に対して飲料の供給指示を出力することができる。
【0022】
サーバ40は、施設管理サーバ50と通信することにより、施設内の飲料供給ロボット10が移動可能な経路に関する情報、施設内におけるステーション20の位置に関する情報、および、施設内の温度を示す温度情報などを取得する。
【0023】
また、サーバ40は、ユーザ端末60と通信することにより、ユーザからの飲料の供給指示を受信する。ユーザからの供給指示を受信した場合には、サーバ40は、当該供給指示を出力したユーザ端末60とデータを遣り取りすることにより、施設内におけるユーザ端末60の位置情報、すなわち施設内におけるユーザの位置情報を取得する。
【0024】
サーバ40は、飲料供給ロボット10の位置情報、施設管理サーバ50から取得した各種情報、およびユーザ端末60から取得したユーザの位置情報を用いて、飲料供給ロボット10に対して移動および飲料供給等の各種制御を行うとともに、飲料供給ロボット10に対して必要な情報を提供する。
【0025】
<サーバのハードウェア構成>
図2は、サーバ40のハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、サーバ40は、CPU(Central Processing Unit)41と、RAM(Random Access Memory)42と、ROM(Read Only Memory)43と、I/F(Interface)装置44と、記憶装置45とを含んで構成される。CPU41、RAM42、ROM43、I/F装置44、および記憶装置45は、通信バス46を通じて各種データを遣り取りする。
【0026】
CPU41は、ROM43に格納されているプログラムをRAM42に展開して実行する。ROM43に格納されているプログラムには、サーバ40によって実行される処理が記述されている。なお、
図2では、CPUが単数である構成を例示しているが、サーバ40は複数のCPUを有する構成としてもよい。
【0027】
I/F装置44は、無線通信機30、飲料供給ロボット10、施設管理サーバ50、およびユーザ端末60と信号やデータを遣り取りするための入出力装置である。I/F装置44は、無線通信機30において受信される信号の受信強度を無線通信機30から受信する。また、I/F装置44は、LTEなどの無線通信規格に従う通信方式を用いて、飲料供給ロボット10を識別するためのIDや、飲料供給ロボット10による飲料供給の開始/終了を示す信号などを飲料供給ロボット10から受信する。
【0028】
記憶装置45は、各種情報を記憶するストレージであって、飲料供給ロボット10による飲料供給を管理および制御するための各種情報を記憶する。各種情報には、飲料供給ロボット10の情報、施設の情報(飲料供給ロボット10が移動可能な経路に関する情報、ステーション20の位置情報、施設内の温度情報など)、ユーザの位置情報、および飲料供給ロボット10の位置情報が含まれる。
【0029】
<飲料供給ロボットの構成>
図3は、飲料供給ロボット10およびステーション20の構成例を示す図である。
図3に示すように、飲料供給ロボット10は、無線通信機11と、飲料供給部12と、駆動部13と、カメラ14と、操作部15と、バッテリ16と、制御部18とを含む。
【0030】
無線通信機11は、
図1で説明したように、例えばBLE通信規格に従う通信方式を用いて、飲料供給ロボット10の位置を検出するための信号を発信する。また、無線通信機11は、例えばLTEなどの無線通信規格に従う通信方式を用いて、飲料供給ロボット10を識別するためのID、飲料供給ロボット10による飲料供給の開始を示す供給開始信号、および飲料供給の終了を示す供給終了信号などの各種情報をサーバ40へ送信する。
【0031】
飲料供給部12は、ユーザに飲料を供給するための部材である。飲料供給部12は、例えば、液体貯留タンク120と、液体供給経路122と、温度調整部124、温度センサ126と、攪拌部128と、吐出口130と、開閉機構132とを含んで構成される。飲料供給部12は、バッテリ16から電力の供給を受けて作動することができる。
【0032】
液体貯留タンク120は、水等の液体を貯留する。液体貯留タンク120に貯留された液体は、温度調整部124によってその温度が調整される。
図1の例では、温度調整部124は、ヒータを含んでおり、液体貯留タンク120に貯留された液体を加熱する。温度センサ126は、液体貯留タンク120に貯留された液体(お湯)の温度Twを検出し、検出値を示す信号を制御部18へ出力する。
【0033】
液体貯留タンク120に貯留された液体(お湯)は、液体供給経路122を通じて攪拌部128に供給される。攪拌部128は、液体供給経路122から導入された液体(お湯)と、図示しない粉挽き部から供給された茶葉粉末または珈琲粉末とを攪拌することにより、お茶または珈琲を生成する。
【0034】
攪拌部128には、生成された飲料を吐出するための吐出口130が設けられる。開閉機構132は、吐出口130を開閉するための部位である。ユーザによって操作部15の操作ボタンが操作されたことに応じて、開閉機構132は吐出口130を一定時間開放させる。これにより、攪拌部128から所定量の飲料が吐出口130を通じて吐出されて、ユーザに供給される。
【0035】
カメラ14は、飲料供給ロボット10の周囲を撮像し、撮像画像を制御部18へ出力する。カメラ14に代えて、飲料供給ロボット10の周辺に存在する物体と飲料供給ロボット10との距離を測定するレーザ距離計などが設けられてもよい。
【0036】
駆動部13は、飲料供給ロボット10が移動するための駆動力を発生する。駆動部13は、例えば、飲料供給ロボット10が移動するための車輪と、車輪を駆動するためのモータとを含む。駆動部13(モータ)は、バッテリ16から電力の供給を受けて作動することができる。
【0037】
制御部18は、飲料供給ロボット10全体を制御する。制御部18は、図示は省略するが、主な構成要素として、CPU、ROM、RAM、およびI/F装置を有している。これらの各部は通信バスを通じて各種データを遣り取りする。CPUは、ROMに格納されているプログラムをRAMに展開して実行する。ROMに格納されているプログラムには、飲料供給ロボット10によって実行される処理が記述されている。なお、処理については、ソフトウェアによるものに限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0038】
制御部18は、カメラ14からの撮像画像に基づいて、飲料供給ロボット10が自律的に移動するように駆動部13を制御する。また、制御部18は、温度センサ126からの検出信号に基づいて、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料が吐出口130から吐出されるように、温度調整部124(ヒータ)を制御する。駆動部13および温度調整部124の制御については後述する。
【0039】
バッテリ16は、飲料供給部12および駆動部13その他飲料供給ロボット10の各機器が作動するための電力を供給する。飲料供給ロボット10は、ステーション20において待機しながらバッテリ16を充電することができる。
【0040】
<ステーションの構成>
ステーション20は、充電器22と、無線通信機24と、制御部26とを含む。無線通信機24は、飲料供給ロボット10の無線通信機11と同じ通信規格に従う通信方式を用いて、飲料供給ロボット10から発信される信号を受信するとともにその受信強度を検知する。制御部26は、無線通信機24における受信強度から、飲料供給ロボット10がステーション20に位置しているか否かを判定することができる。
【0041】
飲料供給ロボット10がステーション20に位置していると判定された場合、制御部26は、充電器22を作動させる。充電器22は、外部電源(例えば、商用電源)から供給される交流電力をバッテリ16に充電可能な電力に変換してバッテリ16に供給する。これにより、ステーション20での待機中、充電器22から供給される電力を用いてバッテリ16が充電される。
【0042】
本実施の形態に係る飲料供給システム100において、サーバ40は、飲料供給ロボット10の制御部18およびステーション20の制御部26とともに、飲料供給ロボット10を制御する「制御装置」を構成する。
【0043】
<飲料供給システムの動作>
次に、本実施の形態に係る飲料供給システム100の動作について説明する。
【0044】
図4は、飲料供給システム100の基本動作を説明するための図である。
図4には、施設内のフロアを天井35から見た平面図が模式的に示されている。フロア上には、デスク、椅子およびラックなどの複数の機器が配置されている。また、フロア上には、ステーション20が配置されている。フロアにおけるステーション20の配置数は単数であっても複数であってもよい。
【0045】
フロアには、飲料供給ロボット10が通行可能な領域、および通行不可能な領域が指定されている。これらの指定された領域に基づいて、施設管理サーバ50によって、飲料供給ロボット10が移動可能な経路が設定される。
【0046】
図4に示すように、飲料供給ロボット10は、ステーション20で待機している。上述したように、飲料供給ロボット10は、ステーション20で待機しながらバッテリ16を充電する。ステーション20での待機中、飲料供給ロボット10は、液体貯留タンク120内の液体の温度Twを供給設定温度Tsetに保つように、温度調整部124を制御する。これによると、飲料供給ロボット10は、ステーション20に待機している間も、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料をユーザに供給することができる。
【0047】
各ユーザは、施設内での作業中、所有しているユーザ端末60(例えば、スマートフォン)を用いて、飲料供給システム100に対して飲料の供給指示を発信することができる。ユーザ端末60からの供給指示を受信した場合、サーバ40は、発信元のユーザ端末60とデータを遣り取りすることにより、当該ユーザ端末60を所有するユーザの位置情報を取得する。
【0048】
サーバ40は、取得されたユーザの位置情報と、記憶装置45に記憶されている、飲料供給ロボット10が移動可能な経路に関する情報とを用いて、飲料供給ロボット10の移動経路を決定する。具体的には、サーバ40は、ユーザの位置情報から飲料の供給地点を決定する。そして、サーバ40は、飲料供給ロボット10が移動可能な経路に関する情報を参照して、現在地点であるステーション20から供給地点までの移動経路の候補を探索する。サーバ40は、例えば、移動経路の候補のうち移動時間が最短となる移動経路を、飲料供給ロボット10の移動経路に決定する。
図4には、ユーザの位置情報に基づいて決定された、飲料の供給地点P1、および飲料供給ロボット10の移動経路Rt1が示されている。サーバ40は、決定した供給地点P1および移動経路Rt1に関する情報を飲料供給ロボット10に送信する。
【0049】
飲料供給ロボット10は、サーバ40から供給地点P1および移動経路Rt1に関する情報を受信すると、当該移動経路Rt1に沿って供給地点P1まで移動する。これにより、供給地点P1に到着した飲料供給ロボット10は、供給指示を発信したユーザに対して飲料を供給することができる。
【0050】
以上に説明した飲料供給システム100において、飲料供給ロボット10は、バッテリ16に蓄えられた電力を用いて駆動部13および飲料供給部12を作動させる。次に、駆動部13および飲料供給部12の制御について説明する。
【0051】
(第1の実施例)
図5は、飲料供給ロボット10の動作の第1の実施例を説明するためのタイムチャートである。
図5には、飲料供給ロボット10における飲料供給部12(温度調整部124)の動作、およびそれに対応する液体貯留タンク120内の液体の温度Twの時間変化が示されている。
図5には、さらに、飲料供給ロボット10における駆動部13の動作と、バッテリ16に対する動作とが示されている。
【0052】
時刻t0にて、飲料供給ロボット10は、ステーション20で待機している。制御部18は、駆動部13の動作を停止させる。制御部18は、液体貯留タンク120内の液体の温度Twを供給設定温度Tsetに保つように、温度調整部124の間欠運転を実行する。具体的には、制御部18は、供給設定温度Tsetと温度センサ126により検出される液体温度Twとの偏差(Tw-Tset)が負の閾値を超過した場合に温度調整部124を動作させて液体を加熱する。温度調整部124の動作によって液体温度Twが上昇し、偏差(Tw-Tset)が正の閾値を超過すると、温度調整部124の動作を停止させる。このように液体温度Twを供給設定温度Tsetに保つことにより、飲料供給ロボット10は、ステーション20で待機しながら供給設定温度Tsetに従った適温の飲料をユーザに供給することができる。
【0053】
なお、飲料供給ロボット10がステーション20に待機している間、充電器22は、外部電源から供給される交流電力をバッテリ16に充電可能な電力に変換してバッテリ16に供給する。これにより、ステーション20での待機中、充電器22から供給される電力を用いてバッテリ16が充電される。
【0054】
時刻t1にてユーザ端末60からの供給指示を受信した場合、サーバ40は、発信元のユーザ端末60とデータを遣り取りすることにより、当該ユーザ端末60を所有するユーザの位置情報を取得する。サーバ40は、取得されたユーザの位置情報と、記憶装置45に記憶されている、飲料供給ロボット10が移動可能な経路に関する情報とを用いて、飲料の供給地点、および飲料供給ロボット10の移動経路を決定する。サーバ40は、決定した供給地点および移動経路に関する情報を飲料供給ロボット10に送信する。
【0055】
飲料供給ロボット10は、供給地点および移動経路に関する情報をサーバ40から受信すると、時刻t2にてステーション20を出発し、当該移動経路に沿って供給地点まで移動する。飲料供給ロボット10がステーション20を出発することで、ステーション20からバッテリ16への電力の供給が遮断され、バッテリ16の充電が停止される。時刻t2以降、バッテリ16に蓄えられた電力を用いて駆動部13および飲料供給部12(温度調整部124)が動作することにより、バッテリ16の残容量が徐々に減少する。
【0056】
時刻t3にて飲料供給ロボット10が供給地点に到着すると、駆動部13の動作が停止される。温度調整部124は、時刻t2以降も、液体温度Twを供給設定温度Tsetに保つように間欠運転を継続して実行する。これによると、供給地点に到着した後直ちに、飲料供給ロボット10は、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料をユーザに供給することができる。
【0057】
飲料の供給が終了すると、時刻t4にて飲料供給ロボット10は、駆動部13を再び作動させて、供給地点からステーション20まで移動する。このとき、飲料供給ロボット10は、供給地点までの移動経路と同じ移動経路に沿って、元のステーション20に帰還することができる。あるいは、飲料供給ロボット10は、供給地点の最寄りの別のステーション20までの移動経路に関する情報を新たにサーバ40から取得し、取得した移動経路に沿って別のステーション20に帰還してもよい。
【0058】
時刻t5にて飲料供給ロボット10がステーション20に帰還すると、制御部18は、駆動部13の動作を停止させる。時刻t5以降、飲料供給ロボット10は、再びステーション20から電力の供給を受けてバッテリ16を充電する。これによりバッテリ16の残容量が回復する。
【0059】
第1の実施例によれば、飲料供給ロボット10は、ステーション20での待機中および供給地点までの移動中において、液体貯留タンク120内の液体の温度Twを供給設定温度Tsetに保つように、温度調整部124を作動させる。これによると、飲料供給ロボット10が供給地点に到着した時刻直後にて、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料をユーザに供給することができる。
【0060】
その一方で、飲料供給ロボット10の移動中、駆動部13および飲料供給部12(温度調整部124)の作動にバッテリ16に蓄えられた電力が用いられるため、バッテリ16の容量によっては、飲料供給ロボット10が移動できる範囲が制限されることが懸念される。また、バッテリ16の残容量が不足することによって供給地点にて温度調整部124の動作を継続させることができず、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料をユーザに供給することが困難となることが懸念される。なお、バッテリ16の容量を増やすことによってこれらの懸念点を回避することができるが、バッテリ16が大型なものになるため、飲料供給ロボット10の大型化および重量化を招くことが懸念される。
【0061】
そこで、第2の実施例では、移動中における電力消費の削減に重点を置いた動作について説明する。
【0062】
(第2の実施例)
図6は、飲料供給ロボット10の動作の第2の実施例を説明するためのタイムチャートである。
図6には、飲料供給ロボット10における飲料供給部12(温度調整部124)の動作、およびそれに対応する液体貯留タンク120内の液体(水)の温度の時間変化が示されている。
図6には、さらに、飲料供給ロボット10における駆動部13の動作と、バッテリ16に対する動作とが示されている。
【0063】
図6に示すタイムチャートは、
図5に示したタイムチャートとは、ユーザ端末60からの供給指示を受信した時刻t1から飲料供給ロボット10が供給地点に到着する時刻t3までの時間における動作が異なる。
【0064】
第2の実施例では、時刻t1にて供給指示を受信すると、制御部18は、温度調整部124を間欠運転から連続運転に移行させる。具体的には、制御部18は、目標温度T*を設定するとともに、液体貯留タンク120内の液体の温度Twが目標温度T*になるように、温度調整部124を制御する。この温度調整部124の連続運転によって液体貯留タンク120内の液体が加熱されるため、時刻t1以降、液体温度Twは目標温度T*に向かって上昇する。
【0065】
時刻t2にて液体温度Twが目標温度T*に到達すると、制御部18は、温度調整部124の動作を停止させる。そして、飲料供給ロボット10は、ステーション20を出発し、移動経路に沿って供給地点まで移動する。飲料供給ロボット10がステーション20を出発することで、ステーション20からバッテリ16への電力の供給が遮断される。時刻t2以降、バッテリ16に蓄えられた電力を用いて駆動部13が作動することにより、バッテリ16の残容量が徐々に減少する。ただし、温度調整部124の動作は停止しているため、第1の実施例(
図5)と比較して、移動中の電力消費が抑えられる。
【0066】
時刻t3にて飲料供給ロボット10が供給地点に到着すると、制御部18は、駆動部13の動作を停止させる一方で、温度調整部124を起動させる。起動後、温度調整部124は、液体温度Twを供給設定温度Tsetに保つように間欠運転を実行する。
【0067】
以上説明したように、第2の実施例では、飲料供給ロボット10は、ステーション20から供給地点までの移動中、温度調整部124(ヒータ)の動作を停止するように構成されている。これによると、供給設定温度Tsetに比べて施設内の温度が十分に低い場合、もしくは、供給地点までの移動距離が長い場合には、飲料供給ロボット10の移動中に液体温度Twが低下する場合がある。供給地点での液体温度Twが供給設定温度Tsetを下回る場合には、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料をユーザに供給することができず、ユーザの満足度を低下させてしまう可能性がある。
【0068】
そこで、第2の実施例では、ユーザからの供給指示に応答して飲料供給ロボット10がステーション20を出発する前に、液体貯留タンク120内の液体の温度Twを供給設定温度Tsetよりも高い目標温度T*に調整する。これにより、供給地点までの移動中、温度調整部124の動作の停止に伴って液体温度Twが低下した場合であっても、供給地点にて液体温度Twが供給設定温度Tsetを下回ることを回避する。
【0069】
第2の実施例において、目標温度T*は、供給設定温度Tsetと、サーバ40から送信される移動経路に関する情報および施設内の温度情報とに基づいて設定される。具体的には、制御部18は、移動経路に関する情報を用いて、飲料供給ロボット10が現在地点であるステーション20から供給地点に到着するまでの移動時間を算出する。この移動時間は、移動経路の距離を、予め定められている飲料供給ロボット10の移動速度で除することによって算出することができる。
【0070】
供給地点までの移動時間が算出されると、制御部18は、算出された移動時間と施設内の温度情報とを用いて、移動時間中における液体の温度変化量ΔTwを推定する。具体的には、制御部18は、例えば、液体温度Tw、施設内の温度、および液体貯留タンク120内の液体の容量の間の予め定められた関係を示す数式、関数、マップあるいは表などを用いて、液体の冷却速度を算出する。この予め定められた関係は、例えば、実験的あるいは設計的に求めることができる。制御部18は、算出された冷却速度および移動時間に基づいて、温度変化量ΔTwを推定する。
【0071】
制御部18は、推定された温度変化量ΔTwを補償するように、供給設定温度Tsetに基づいて目標温度T*を設定する。本実施例では、温度変化量ΔTwは、液体温度Twの低下量に相当する。この温度低下量を補償するように、供給設定温度Tsetに対して温度変化量ΔTwを加算することにより、目標温度T*が算出される(T*=Tset+ΔTw)。
【0072】
なお、温度調整部124が、液体貯留タンク120内の液体を冷却する冷却装置である場合には、温度調整部124の動作を停止することによって、液体温度Twが上昇する。すなわち、移動中における温度変化量ΔTwは、液体温度Twの上昇量に相当する。この場合には、温度上昇量を補償するように、供給設定温度Tsetから温度変化量ΔTwを減算することにより、目標温度T*が算出される(T*=Tset-ΔTw)。
【0073】
制御部18は、温度センサ126により検出される液体温度Twが目標温度T*になるように、温度調整部124を制御する。温度調整部124が連続運転を実行することによって液体温度Twが上昇して目標温度T*に到達すると(時刻t2)、制御部18は、温度調整部124の動作を停止する。この温度調整部124の連続運転は、ステーション20での待機中に実行されるため、バッテリ16の残容量が低下することはない。
【0074】
時刻t2にて飲料供給ロボット10は、ステーション20を出発し、移動経路に沿って供給地点まで移動する。飲料供給ロボット10の移動中、液体温度Twは目標温度T*から徐々に低下する。この移動中における温度変化量ΔTwは、上述した温度変化量ΔTwの推定値に対応している。よって、飲料供給ロボット10が供給地点に到着した時刻t3にて、液体温度Twは供給設定温度Tsetと略等しくなる。これによると、飲料供給ロボット10が供給地点に到着した時刻直後にて、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料をユーザに供給することができる。
【0075】
図7および
図8は、第2の実施例における飲料供給の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートの各ステップは、サーバ40、飲料供給ロボット10の制御部18、およびステーション20の制御部26によるソフトウェア処理により実現される。各ステップは、サーバ40、飲料供給ロボット10およびステーション20内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0076】
飲料供給ロボット10は、カメラ14による撮像画像、およびステーション20との通信などに基づいて、飲料供給ロボット10がステーション20に待機しているか否かを判定する(S01)。飲料供給ロボット10がステーション20に待機していない場合(S01においてNO)、飲料供給ロボット10およびステーション20はS02以降の処理をスキップする。
【0077】
飲料供給ロボット10がステーション20に待機している場合(S01においてYES)、ステーション20は、充電器22を作動して飲料供給ロボット10に搭載されるバッテリ16に電力を供給することにより、バッテリ16を充電する(S02)。
【0078】
上述したように、飲料の供給を希望するユーザのユーザ端末60から供給指示がサーバ40へと送信される。サーバ40は、ユーザ端末60からの供給指示を受信したか否かを判定する(S03)。供給指示を受信していない場合(S03においてNO)、サーバ40は、供給指示の受信を受け付ける待機状態となる。
【0079】
供給指示を受信していない場合(S03においてNO)、飲料供給ロボット10は、サーバ40から供給設定温度Tsetに関する情報を取得するとともに(S04)、温度センサ126により検出される液体貯留タンク120内の液体の温度Twを取得する(S05)。飲料供給ロボット10は、液体温度Twを供給設定温度Tsetに保つように、飲料供給部12内の温度調整部124を制御する(S06)。温度調整部124は、供給設定温度Tsetに対する液体温度Twの偏差に応じて、間欠運転を実行する。
【0080】
S03に戻って、供給指示を受信した場合(S03においてYES)、サーバ40は、ユーザ端末60とデータを遣り取りすることにより、当該ユーザ端末60を所有するユーザの位置情報を取得する(S07)。
【0081】
次に、サーバ40は、取得されたユーザの位置情報と、記憶装置45に記憶されている、飲料供給ロボット10が移動可能な経路に関する情報とを用いて、飲料の供給地点、および飲料供給ロボット10の移動経路を決定する(S08)。
【0082】
サーバ40は、施設管理サーバ50との通信によって、施設内の温度情報を取得する(S09)。サーバ40は、供給地点および移動経路に関する情報、および施設内の温度情報を飲料供給ロボット10に送信する。
【0083】
飲料供給ロボット10は、サーバ40から受信した移動経路に関する情報と、飲料供給ロボット10の移動速度とを用いて、飲料供給ロボット10が現在地点から供給地点に到着するまでの移動時間を算出する(S10)。
【0084】
次に、飲料供給ロボット10は、算出された移動時間と施設内の温度情報とを用いて、移動時間中における液体の温度変化量ΔTwを推定する(S11)。そして、飲料供給ロボット10は、推定された温度変化量ΔTwを補償するように、供給設定温度Tsetに基づいて目標温度T*を設定する(S12)。本実施例では、温度調整部124がヒータであるため、温度変化量ΔTwは、液体温度Twの低下量に相当する。この温度低下量を補償するように、供給設定温度Tsetに対して温度変化量ΔTwを加算することにより、目標温度T*が算出される(T*=Tset+ΔTw)。
【0085】
飲料供給ロボット10は、温度センサ126により検出される液体温度Twが目標温度T*になるように、温度調整部124を制御する(S14)。温度調整部124が連続運転を実行することによって液体が加熱されて、液体温度Twが上昇する。液体温度Twが目標温度T*に到達すると(S15においてYES)、飲料供給ロボット10は、温度調整部124の動作を停止する(S16)。
【0086】
飲料供給ロボット10は、ステーション20を出発して供給地点への移動を開始する。ステーション20は、充電器22の動作を停止して、バッテリ16への電力の供給を遮断する。これにより、バッテリ16の充電が停止される(S17)。
【0087】
飲料供給ロボット10は、バッテリ16に蓄えられた電力を用いて駆動部13を作動させ、移動経路に沿って移動する(S18)。飲料供給ロボット10は、カメラ14による撮像画像などに基づいて、供給地点に到着したか否かを判定する(S19)。供給地点に到着したと判定された場合(S19においてYES)、飲料供給ロボット10は、駆動部13の動作を停止する(S20)。
【0088】
供給地点において、飲料供給ロボット10は、操作部15に対するユーザ入力を受け付ける待機状態となる。この待機状態において、飲料供給ロボット10は、温度センサ126により検出される液体貯留タンク120内の液体の温度Twを取得し(S21)、取得された液体温度Twを供給設定温度Tsetに保つように、飲料供給部12内の温度調整部124を制御する(S22)。温度調整部124は、供給設定温度Tsetに対する液体温度Twの偏差に応じて、間欠運転を実行する。
【0089】
操作部15に対するユーザ入力を受け付けたことに応答して、飲料供給ロボット10は、飲料供給部12を制御することにより、ユーザに飲料を供給する(S23)。ユーザに対する飲料の供給が終了すると(S24においてYES)、飲料供給ロボット10は、温度調整部124の動作を停止させる(S25)。
【0090】
次に、飲料供給ロボット10は、ステーション20に帰還するために、供給地点を出発する(S26)。飲料供給ロボット10は、駆動部13を作動させ、移動経路に沿ってステーション20まで移動する(S27)。ステーション20に到着したと判定されると(S28においてYES)、飲料供給ロボット10は、駆動部の動作を停止し(S29)、処理をS01に戻す。
【0091】
第2の実施例によれば、ステーション20から供給地点までの移動中に温度調整部124の動作を停止させることにより、移動中に駆動部13とともに温度調整部124を作動させる第1の実施例(
図5参照)に比べて、飲料供給ロボット10の電力消費を抑制することができる。これによると、バッテリ16の残容量の低下を抑制することができるため、飲料供給ロボット10が移動できる範囲の制限を緩和させることが可能となる。また、バッテリ16の大容量化による飲料供給ロボット10の大型化および重量化を回避することができる。
【0092】
また、第2の実施例では、ユーザからの供給指示に応答して飲料供給ロボット10がステーション20を出発する前に、移動中における液体の温度変化量ΔTwを補償するように、供給設定温度Tsetに基づいて目標温度T*が設定され、液体温度Twが目標温度T*になるように、温度調整部124を制御される。これによると、供給地点までの移動中に温度調整部124の動作の停止に伴って液体温度Twが変化した場合であっても、供給地点への到着後直ちに、飲料供給ロボット10は、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料をユーザに供給することができる。
【0093】
(第3の実施例)
第1および第2の実施例では、ユーザからの供給指示を受信した場合における飲料の供給について説明した。第3の実施例では、ユーザのスケジュールを利用した飲料の供給について説明する。
【0094】
図9は、飲料供給ロボット10の動作の第3の実施例を説明するためのタイムチャートである。
図9には、飲料供給ロボット10における飲料供給部12(温度調整部124)の動作、およびそれに対応する液体貯留タンク120内の液体(水)の温度Twの時間変化が示されている。
図9には、さらに、飲料供給ロボット10における駆動部13の動作と、バッテリ16に対する動作とが示されている。
【0095】
第3の実施例では、サーバ40は、施設管理サーバ50と通信を行うことにより、各ユーザのスケジュールに関する情報を取得する。このスケジュールに関する情報には、各ユーザの出社予定時刻、退社予定時刻、休憩時間、および作業場所に関する情報が含まれる。また、スケジュールに関する情報には、各ユーザの参加予定の会議に関する情報(会議の開始時刻、終了時刻、開催場所)、および、来客に関する情報(来客の訪問時刻、訪問人数、訪問場所)が含まれる。
【0096】
サーバ40は、取得された情報から、飲料の供給予定地点、および供給予定時刻を設定する。一例として、ある時間帯において、複数のユーザが同じ作業場所で作業する予定がある場合には、この作業場所を供給予定地点に設定することができる。また、作業が行われる時間帯における特定の時刻を、供給予定時刻に設定することができる。
【0097】
別の例として、会議が予定されている場合には、会議の開催場所を飲料の供給予定地点に設定し、会議の開始時刻を供給予定時刻に設定することができる。あるいは、来客が予定されている場合には、来客の訪問場所を飲料の供給予定地点に設定し、訪問時刻を供給予定時刻に設定することができる。
【0098】
次に、サーバ40は、設定された飲料の供給予定地点と、記憶装置45に記憶されている、飲料供給ロボット10が移動可能な経路に関する情報とを用いて、飲料供給ロボット10の移動経路を決定する。例えば、サーバ40は、飲料供給ロボット10が移動可能な経路に関する情報を参照して、現在地点であるステーション20から供給予定地点までの移動経路の候補を探索する。サーバ40は、移動経路の候補のうち移動予測時間が最短となる移動経路を、飲料供給ロボット10の移動経路に決定する。
【0099】
サーバ40は、供給予定地点および供給予定時刻に関する情報と、飲料供給ロボット10の移動経路に関する情報とを飲料供給ロボット10に送信する。飲料供給ロボット10の制御部18は、サーバ40からの情報を受信すると、供給予定時刻にて、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料が供給することができるように、駆動部13および飲料供給部12(温度調整部124)を制御する。
【0100】
具体的には、
図9に示すように、制御部18は、供給予定時刻t13に飲料供給ロボット10が供給予定地点に到着するように、飲料供給ロボット10がステーション20を出発する時刻を設定する。
図9に示す「移動開始時刻t12」は、飲料供給ロボット10がステーション20を出発する時刻に相当する。
【0101】
制御部18は、移動経路に関する情報を用いて、飲料供給ロボット10が現在地点であるステーション20から供給予定地点に到着するまでの移動予測時間を算出する。この移動予測時間は、移動経路の距離を、予め定められている飲料供給ロボット10の移動速度で除することによって算出することができる。そして、制御部18は、供給予定時刻t13から移動予測時間だけ遡った時刻を、移動開始時刻t12に設定する。
【0102】
次に、制御部18は、算出された移動予測時間と施設内の温度情報とを用いて、移動予測時間中における液体の温度変化量ΔTwを推定する。上述したように、制御部18は、例えば、液体温度Tw、施設内の温度、および液体貯留タンク120内の液体の容量の間の予め定められた関係を示す数式、関数、マップあるいは表などを用いて、液体の冷却速度を算出する。そして、制御部18は、算出された冷却速度および移動予測時間に基づいて、温度変化量ΔTwを推定する。
【0103】
次に、制御部18は、推定された温度変化量ΔTwを補償するように、供給設定温度Tsetに基づいて目標温度T*を設定する。本実施例では、温度変化量ΔTwは、液体温度Twの低下量に相当する。この温度低下量を補償するように、供給設定温度Tsetに対して温度変化量ΔTwを加算することにより、目標温度T*が算出される(T*=Tset+ΔTw)。
【0104】
また、制御部18は、液体貯留タンク120内の液体の温度Twと目標温度T*との偏差、および、温度調整部124が有する能力(本実施例では、加熱能力)に基づいて、液体温度Twが目標温度T*に到達するのに要する、温度調整部124の連続運転時間を算出する。そして、制御部18は、移動開始時刻t12から連続運転時間だけ遡った時刻を、連続運転開始時刻t11に設定する。
【0105】
図9に示すように、時刻t10にて、飲料供給ロボット10はステーション20で待機している。制御部18は、液体貯留タンク120内の液体の温度Twを供給設定温度Tsetに保つように、温度調整部124を制御する。温度調整部124は、供給設定温度Tsetと温度センサ126により検出される液体温度Twとの偏差(Tw-Tset)に応じて、間欠運転を実行する。
【0106】
飲料供給ロボット10がステーション20に待機している間、充電器22は、外部電源から供給される交流電力をバッテリ16に充電可能な電力に変換してバッテリ16に供給する。これにより、ステーション20での待機中、充電器22から供給される電力を用いてバッテリ16が充電される。
【0107】
連続運転開始時刻t11が到来すると、制御部18は、温度調整部124を間欠運転から連続運転に移行させる。制御部18は、液体貯留タンク120内の液体の温度Twが目標温度T*になるように、温度調整部124を制御する。この温度調整部124の連続運転によって液体貯留タンク120内の液体が加熱されるため、液体温度Twは目標温度T*に向かって上昇する。制御部18は、遅くとも移動開始時刻t12までに液体温度Twが目標温度T*に到達するように、温度調整部124を制御する。液体温度Twが目標温度T*に到達すると、制御部18は、温度調整部124の動作を停止させる。
【0108】
移動開始時刻t12が到来すると、飲料供給ロボット10は、ステーション20を出発し、移動経路に沿って供給予定地点まで移動する。移動開始時刻t12以降は、ステーション20からバッテリ16への電力の供給が遮断されるため、駆動部13の作動によってバッテリ16の残容量が徐々に減少する。
【0109】
供給予定時刻t13にて飲料供給ロボット10が供給予定地点に到着すると、制御部18は、駆動部13の動作を停止させる一方で、温度調整部124を起動させる。起動後、温度調整部124は、液体温度Twを供給設定温度Tsetに保つように間欠運転を実行する。
【0110】
飲料の供給が終了すると、時刻t14にて飲料供給ロボット10は、駆動部13を再び作動させて、供給地点からステーション20まで移動する。このとき、飲料供給ロボット10は、供給地点までの移動経路と同じ移動経路に沿って、元のステーション20に帰還することができる。あるいは、飲料供給ロボット10は、供給地点の最寄りの別のステーション20までの移動経路に関する情報を新たにサーバ40から取得し、取得した移動経路に沿って別のステーション20に帰還してもよい。
【0111】
時刻t15にて飲料供給ロボット10がステーション20に帰還すると、制御部18は、駆動部13の動作を停止させる。時刻t15以降、飲料供給ロボット10は、再びステーション20から電力の供給を受けて、バッテリ16を充電する。これによりバッテリ16の残容量が回復する。
【0112】
第3の実施例では、第2の実施例(
図6参照)と同様に、飲料供給ロボット10は、ステーション20から供給地点までの移動中、温度調整部124(ヒータ)の動作を停止するように構成されている。そのため、飲料供給ロボット10の移動中に液体温度Twが低下する可能性がある。
【0113】
そこで、第3の実施例では、供給予定時刻t13に応じて設定された移動開始時刻t12にて飲料供給ロボット10がステーション20を出発する前に、液体貯留タンク120内の液体の温度Twを供給設定温度Tsetよりも高い目標温度T*に調整する。目標温度T*は、移動中における液体の温度変化量ΔTwを補償するように、供給設定温度Tsetに基づいて設定される。
【0114】
このようにすると、
図9に示すように、飲料供給ロボット10の移動中、液体温度Twは目標温度T*から徐々に低下し、供給予定時刻t13にて液体温度Twは供給設定温度Tsetと略等しくなる。したがって、飲料供給ロボット10が供給予定時刻t13にて、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料をユーザに供給することができる。
【0115】
図10および
図11は、第3の実施例における飲料供給の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートの各ステップは、サーバ40、飲料供給ロボット10の制御部18、およびステーション20の制御部26によるソフトウェア処理により実現される。各ステップは、サーバ40、飲料供給ロボット10およびステーション20内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。
【0116】
図10には、飲料供給ロボット10がステーション20を出発するまでの処理手順が示されている。
図11には、飲料供給ロボット10が供給予定地点に移動して飲料を供給し、再びステーション20に戻るまでの処理手順が示されている。
【0117】
図10に示すように、飲料供給ロボット10は、カメラ14による撮像画像、およびステーション20との通信などに基づいて、飲料供給ロボット10がステーション20に待機しているか否かを判定する(S31)。飲料供給ロボット10がステーション20に待機していない場合(S01においてNO)、飲料供給ロボット10およびステーション20はS32以降の処理をスキップする。
【0118】
飲料供給ロボット10がステーション20に待機している場合(S31においてYES)、ステーション20は、充電器22を作動して飲料供給ロボット10に搭載されるバッテリ16に電力を供給することにより、バッテリ16を充電する(S32)。
【0119】
サーバ40は、施設管理サーバ50と通信を行うことにより、各ユーザのスケジュールに関する情報を取得する(S33)。サーバ40は、取得したスケジュールに関する情報を用いて、飲料の供給予定地点および供給予定時刻を設定する(S34)。S34では、各ユーザの作業場所および作業する時間帯、会議の開催場所および開催時刻、ならびに、来客の訪問場所および訪問時刻などに基づいて、飲料の供給予定地点および供給予定時刻が設定される。
【0120】
続いて、サーバ40は、設定された飲料の供給予定地点と、記憶装置45に記憶されている、飲料供給ロボット10が移動可能な経路に関する情報とを用いて、飲料供給ロボット10の移動経路を決定する(S35)。サーバ40は、供給予定地点および供給予定時刻に関する情報と、飲料供給ロボット10の移動経路に関する情報とを飲料供給ロボット10に送信する。
【0121】
飲料供給ロボット10は、サーバ40から情報を受信すると、移動経路に関する情報を用いて、飲料供給ロボット10がステーション20から供給予定地点に到着するまでの移動予測時間を算出する(S36)。そして、飲料供給ロボット10は、供給予定時刻から移動予測時間だけ遡った時刻を、移動開始時刻に設定する(S37)。
【0122】
次に、飲料供給ロボット10は、サーバ40から供給設定温度Tsetに関する情報を取得するとともに(S38)、施設内の温度情報を取得する(S39)。飲料供給ロボット10は、S36にて算出された移動予測時間と施設内の温度情報とを用いて、移動予測時間中における液体の温度変化量ΔTwを推定する。そして、飲料供給ロボット10は、推定された温度変化量ΔTwを補償するように、供給設定温度Tsetに基づいて目標温度T*を設定する(S41)。本実施例では、温度調整部124がヒータであるため、温度変化量ΔTwは、液体温度Twの低下量に相当する。この温度低下量を補償するように、供給設定温度Tsetに対して温度変化量ΔTwを加算することにより、目標温度T*が算出される(T*=Tset+ΔTw)。
【0123】
さらに、飲料供給ロボット10は、設定された目標温度T*に基づいて、温度調整部124の連続運転開始時刻を設定する(S42)。S42では、液体貯留タンク120内の液体の温度Twと目標温度T*との偏差、および、温度調整部124が有する能力に基づいて、液体温度Twが目標温度T*に到達するのに要する連続運転時間が算出される。そして、S37にて設定された移動開始時刻から連続運転時間だけ遡った時刻が、連続運転開始時刻に設定される。
【0124】
飲料供給ロボット10は、連続運転開始時刻が到来したか否かを判定する(S43)。連続運転開始時刻が到来していない場合(S43においてNO)、飲料供給ロボット10は、温度センサ126により検出される液体貯留タンク120内の液体の温度Twを取得する(S44)。飲料供給ロボット10は、液体温度Twを供給設定温度Tsetに保つように、飲料供給部12内の温度調整部124を制御する(S45)。温度調整部124は、供給設定温度Tsetに対する液体温度Twの偏差に応じて、間欠運転を実行する。
【0125】
S43に戻って、連続運転開始時刻が到来した場合(S43においてYES)、飲料供給ロボット10は、温度センサ126により検出される液体貯留タンク120内の液体の温度Twを取得し(S46)、液体温度Twが目標温度T*になるように、温度調整部124を制御する(S47)。温度調整部124が連続運転を実行することによって液体が加熱されて、液体温度Twが上昇する。液体温度Twが目標温度T*に到達すると(S48においてYES)、飲料供給ロボット10は、温度調整部124の動作を停止する(S49)。
【0126】
次に、飲料供給ロボット10は、移動開始時刻が到来したか否かを判定する(S50)。移動開始時刻が到来した場合(S50においてYES)、飲料供給ロボット10は、ステーション20を出発して供給地点への移動を開始する。ステーション20は、充電器22の動作を停止して、バッテリ16への電力の供給を遮断する。これにより、バッテリ16の充電が停止される(S51)。
【0127】
図11に示すように、飲料供給ロボット10は、駆動部13を作動させ、移動経路に沿って移動する(S52)。供給予定地点に到着したと判定された場合(S53においてYES)、飲料供給ロボット10は、駆動部13の動作を停止する(S54)。
【0128】
供給予定地点において、飲料供給ロボット10は、操作部15に対するユーザ入力を受け付ける待機状態となる。この待機状態において、飲料供給ロボット10は、温度センサ126により検出される液体貯留タンク120内の液体の温度Twを取得し(S55)、取得された液体温度Twを供給設定温度Tsetに保つように、飲料供給部12内の温度調整部124を制御する(S56)。
【0129】
操作部15に対するユーザ入力を受け付けたことに応答して、飲料供給ロボット10は、飲料供給部12を制御することにより、ユーザに飲料を供給する(S57)。ユーザに対する飲料の供給が終了すると(S58においてYES)、飲料供給ロボット10は、温度調整部124の動作を停止させる(S59)。
【0130】
次に、飲料供給ロボット10は、ステーション20に帰還するために、供給予定地点を出発する(S60)。飲料供給ロボット10は、駆動部13を作動させ、移動経路に沿ってステーション20まで移動する(S61)。ステーション20に到着したと判定されると(S62においてYES)、飲料供給ロボット10は、駆動部の動作を停止し(S63)、処理をS31に戻す。
【0131】
第3の実施例によれば、第2の実施例(
図6参照)と同様に、ステーション20から供給地点までの移動中に温度調整部124の動作を停止させるため、移動中に駆動部13とともに温度調整部124を作動させる第1の実施例(
図5参照)に比べて、飲料供給ロボット10の電力消費を抑制することができる。これにより、飲料供給ロボット10が移動できる範囲の制限を緩和させることが可能となる。また、バッテリ16の大容量化による飲料供給ロボット10の大型化および重量化を回避することができる。
【0132】
また、第3の実施例では、スケジュール情報から設定された供給予定地点および供給予定時刻に基づいて飲料供給ロボット10がステーション20を出発する前に、移動中における液体の温度変化量ΔTwを補償するように、供給設定温度Tsetに基づいて目標温度T*を設定し、液体温度Twが目標温度T*になるように、温度調整部124を制御する。これによると、供給予定地点までの移動中に温度調整部124の動作の停止に伴って液体温度Twが変化した場合であっても、供給予定地点への到着後直ちに、飲料供給ロボット10は、供給設定温度Tsetに従った適温の飲料をユーザに供給することができる。
【0133】
<その他の構成例>
上述した実施の形態では、飲料供給ロボット10に搭載される温度調整部124がヒータを含んでおり、バッテリ16に蓄えられた電力を用いて液体貯留タンク120内の液体を加熱する構成例について説明したが、温度調整部124が冷却装置を含み、液体貯留タンク120内の液体を冷却する構成としてもよい。この場合、第2および第3の実施例では、温度調整部124の動作を停止させることによって、液体の温度Twが上昇するため、移動中の液体の温度上昇量を補償するように、目標温度T*を設定すればよい。
【0134】
また、上述した実施の形態では、サーバ40が飲料供給ロボット10の移動経路を決定し、決定された移動経路に従って飲料供給ロボット10の制御部18が駆動部13を制御する構成例について説明したが、移動経路を決定する主体は制御部18であってもよい。例えば、サーバ40から制御部18へユーザの位置情報、および施設内における飲料供給ロボット10が移動可能な経路に関する情報とを送信し、制御部18が、受信した情報を用いて飲料供給ロボット10の移動経路を決定する構成としてもよい。
【0135】
上述した第2および第3の実施例では、飲料供給ロボット10の制御部18が目標温度T*を設定する構成例について説明したが、目標温度T*を設定する主体はサーバ40であってもよい。
【0136】
なお、上述した実施の形態について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不都合または矛盾が生じない範囲内で、実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
【0137】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0138】
10 飲料供給ロボット、11,24,30 無線通信機、12 飲料供給部、13 駆動部、14 カメラ、16 バッテリ、18,26 制御部、20 ステーション、22 充電器、35 天井、40 サーバ、41 CPU、42 RAM、43 ROM、44 I/F装置、45 記憶装置、46 通信バス、50 施設管理サーバ、60 ユーザ端末、100 飲料供給システム、120 液体貯留タンク、122 液体供給経路、124 温度調整部、126 温度センサ、128 攪拌部、130 吐出口、132 開閉機構、NW 通信網、Tset 供給設定温度、Tw 液体温度、T* 目標温度。