(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】先進運転支援システム評価装置および先進運転支援システムの評価試験方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01M17/007 J
(21)【出願番号】P 2024538787
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2022030104
(87)【国際公開番号】W WO2024029072
(87)【国際公開日】2024-02-08
【審査請求日】2024-07-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】林 一寿
(72)【発明者】
【氏名】安藤 則幸
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 雄治
(72)【発明者】
【氏名】樫原 拓美
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-021201(JP,A)
【文献】特許第4021019(JP,B2)
【文献】特開2020-193956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の実際の走行時に記録されたセンサデータまたは衛星配信情報である走行記録情報と、コンピュータでの車両の走行シミュレーションによって生成されたセンサデータまたは衛星配信情報である仮想走行情報との片方または両方から、同一時刻の情報とみなしたセンサデータと衛星配信情報との組み合わせである車両センサ情報を抽出し、前記車両センサ情報の集合である車両センサ情報群を生成する車両センサ情報生成部と、
前記車両センサ情報群を記憶する車両センサ情報記憶部と、
前記車両センサ情報群から、ユーザーが指定した開始時刻からの時間経過に応じた前記車両センサ情報を選択して、評価試験の対象である先進運転支援システムの車載装置に出力する車両センサ情報出力部と、
を備える先進運転支援システム評価装置。
【請求項2】
前記車両センサ情報出力部は、前記車両センサ情報を、出力先の前記車載装置の物理インタフェースに応じた物理信号に変換して出力する、
請求項1に記載の先進運転支援システム評価装置。
【請求項3】
前記車両センサ情報出力部は、前記車両センサ情報を、前記先進運転支援システムに含まれる複数の前記車載装置に出力する、
請求項1または請求項2に記載の先進運転支援システム評価装置。
【請求項4】
前記車両センサ情報出力部は、前記車両センサ情報に含まれる前記衛星配信情報を前記車載装置へ出力し、前記車載装置から前記衛星配信情報に基づく時刻および位置の算出結果を示す応答を受けると、当該算出結果に基づいて、その後に出力する前記車両センサ情報を選択する、
請求項1
または請求項2に記載の先進運転支援システム評価装置。
【請求項5】
車両センサ情報生成部は、さらに、前記走行記録情報から前記車載装置における学習の状態を示す情報である学習情報を抽出し、前記学習情報の集合である学習情報群を生成し、
前記車両センサ情報記憶部は、さらに、前記学習情報群を記憶し、
前記車両センサ情報出力部は、前記車両センサ情報の出力を開始する前に、前記開始時刻に最も近い時刻の前記学習情報を前記学習情報群から抽出し、抽出した前記学習情報を前記車載装置に出力して、前記車載装置に前記学習情報を更新させる、
請求項1
または請求項2に記載の先進運転支援システム評価装置。
【請求項6】
先進運転支援システム評価装置の車両センサ情報生成部が、車両の実際の走行時に記録されたセンサデータまたは衛星配信情報である走行記録情報と、コンピュータでの車両の走行シミュレーションによって生成されたセンサデータまたは衛星配信情報である仮想走行情報との片方または両方から、同一時刻の情報とみなしたセンサデータと衛星配信情報との組み合わせである車両センサ情報を抽出し、前記車両センサ情報の集合である車両センサ情報群を生成し、
前記先進運転支援システム評価装置の車両センサ情報記憶部が、前記車両センサ情報群を記憶し、
前記先進運転支援システム評価装置の車両センサ情報出力部が、前記車両センサ情報群から、ユーザーが指定した開始時刻からの時間経過に応じた前記車両センサ情報を選択して、評価試験の対象である先進運転支援システムの車載装置に出力する、
先進運転支援システムの評価試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、先進運転支援システムの評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が周囲の情報を把握して、走行の制御や運転者への情報提示などの運転支援を行うシステムは、先進運転支援システム(Advanced Driver-Assistance System;ADAS)として知られている。
【0003】
また、下記の特許文献1には、車両の制御ユニットの故障が検出されたときに車両の走行データを走行経路と関連づけて記録することで、故障の解析時に、走行経路上の故障発生位置と故障発生時の車両の走行データとを画面上に表示することが可能な車両走行用データ記録解析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の解析装置は、故障が検出された前後の車両データを記録する構成であるため、故障を検出できなかった場合には車両データが記録されず、故障発生時の車両データの解析ができない。そのため、前もって想定されていない故障が生じた場合には、車両データが記録されず、故障の解析が困難となる。
【0006】
また、車載装置が保存可能なデータ量は限られており、車両の走行中に測定したデータの全てを記録し続けることはできない。そのため、故障発生時にセンサから入力された実際のデータを故障解析時に確認できず、それによって、故障の原因解析ができないこともある。
【0007】
本開示は以上のような課題を解決するためになされたものであり、先進運転支援システム故障時の実際のセンサデータや衛星配信情報が不足していても、故障の解析を可能にできる先進運転支援システム評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る先進運転支援システム評価装置は、車両の実際の走行時に記録されたセンサデータまたは衛星配信情報である走行記録情報と、コンピュータでの車両の走行シミュレーションによって生成されたセンサデータまたは衛星配信情報である仮想走行情報との片方または両方から、同一時刻の情報とみなしたセンサデータと衛星配信情報との組み合わせである車両センサ情報を抽出し、車両センサ情報の集合である車両センサ情報群を生成する車両センサ情報生成部と、車両センサ情報群を記憶する車両センサ情報記憶部と、車両センサ情報群から、ユーザーが指定した開始時刻からの時間経過に応じた車両センサ情報を選択して、評価試験の対象である先進運転支援システムの車載装置に出力する車両センサ情報出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る先進運転支援システム評価装置によれば、先進運転支援システムの車載装置に記憶されている走行記録情報と、走行シミュレーションで生成された仮想走行情報とを用いて、実走行時の車載装置への情報入力を机上で実現または再現することができるため、先進運転支援システム故障時のセンサデータや衛星配信情報が不足している場合でも、故障の解析が可能になる。
【0010】
本開示の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る先進運転支援評価システムの構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る先進運転支援システム評価装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】車両センサ情報群のデータ構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態2に係る先進運転支援評価システムの構成図である。
【
図5】実施の形態2に係る先進運転支援システム評価装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態3に係る先進運転支援評価システムの構成図である。
【
図7】実施の形態3に係る先進運転支援システム評価装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態3に係る学習情報群のデータ構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係る先進運転支援システム評価装置は、机上で、実車走行試験と同等のセンサデータ(車速、加速度、ヨーレートなど)および衛星受信電波の入力状況を実現または再現することで、車両の走行時に発生した故障の原因究明、事前の走行試験の工数の削減、いわゆる「逆走」(法規上定められた走行方向とが逆向きで道路を走行すること)など実際に確認することが困難なテストケースの評価試験を可能にする。
【0013】
ここで、センサデータの入力状況の「実現」とは、車両で実際に走行していない、任意の走行パターン(机上で描いた走行パターン)におけるセンサデータの入力状況を机上で実現することを意味し、センサデータの入力状況の「再現」とは、車両で実際に走行した走行パターンにおけるセンサデータの入力状況を机上で再現することを意味する。ただし、以下の説明では、「実現」と「再現」の両方の意味を含めて、単に「実現」あるいは「再現」ということもある。また、センサデータの入力状況を机上で実現または再現することによって行われる先進運転支援システムの評価試験を「再現試験」ということもある。
【0014】
本開示に係る先進運転支援システム評価装置のポイントは以下のとおりである。
【0015】
第1のポイントは、車載装置のログ情報(例えば、HDL(高精度ロケータ)内に保存される長時間ログ情報)とコンピュータシミュレーションの結果(シミュレーションにおける車両の衛星信号の受信状況など)との両方を組み合わせて、車両に搭載されているときの車載装置の状況(例えば、HDLの動作)を机上で実現または再現することである。また、複数の車載装置に時刻同期させたセンサデータを入力する先進運転支援システム、例えば、HDL、自動運転ECU(AD-ECU)およびカーナビゲーション装置という3つの装置を同期させる先進運転支援システムの動作確認試験も可能にする。第1のポイントに関する技術は、下記の実施の形態1~3で説明される。
【0016】
第2のポイントは、車載装置が衛星測位部で認識した時刻(具体的には、先進運転支援システム評価装置から衛星の電波またはそれに相当するデータを車載装置に入力したときに車載装置が認識した時刻)を、車載装置から先進運転支援システム評価装置にフィードバックし、先進運転支援システム評価装置が、車載装置が認識した時刻に応じた試験データ(評価試験に必要な車速やヨーレートなどのセンサデータ)を選択して車載装置に入力すること、すなわち、試験データの入力処理の時刻同期をとることである。第2のポイントに関する技術は、下記の実施の形態2で説明される。
【0017】
第3のポイントは、再現試験の評価開始前に、車載装置内部の学習データやパラメータを、再現試験時(走行試験時に記録しておいた学習データやパラメータ)に自動で置き換えることである。第3のポイントに関する技術は、下記の実施の形態3で説明される。
【0018】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る先進運転支援システム評価装置10を用いた先進運転支援評価システム100の全体構成を示す図である。
図1に示すように、先進運転支援評価システム100は、先進運転支援システム評価装置10と、先進運転支援システム20と、操作装置30とを備えている。
【0019】
先進運転支援システム評価装置10は、車両センサ情報生成部1と、車両センサ情報出力部2と、車両センサ情報記憶部3と、を備える。
【0020】
車両センサ情報生成部1には、車両の実際の走行時に記録されたセンサデータまたは衛星配信情報である走行記録情報と、コンピュータでの車両の走行シミュレーションによって生成されたセンサデータまたは衛星配信情報である仮想走行情報とが入力される。車両センサ情報生成部1は、走行記録情報および仮想走行情報の片方または両方から、同一時刻の情報とみなすことが可能なセンサデータと衛星配信情報との組み合わせである車両センサ情報を抽出し、抽出された車両センサ情報の集合である車両センサ情報群を生成する。
【0021】
センサデータは、車両のセンサによって検出される車速、ヨーレート、加速度、時刻、位置(緯度、経度および高度)のうちの少なくともいずれか1つを含む情報である。衛星配信情報は、衛星から配信される時刻、エフェメリス(ephemeris)、アルマナック(Almanac)、SBAS(satellite-based augmentation system)信号、CLAS(Centimeter Level Augmentation Service)のL6信号のうちの少なくともいずれか1つ含む情報である。
【0022】
車両センサ情報出力部2は、先進運転支援システム評価装置10のユーザー(評価実施者)により指定される開始時刻(T=0)からの時間経過に応じた車両センサ情報を、車両センサ情報群から選択して、評価試験の対象である先進運転支援システム20に出力する。このとき、車両センサ情報出力部2は、車両センサ情報を、その出力先の車載装置の物理インタフェースの仕様に応じた物理信号に変換して出力する。例えば、車両センサ情報のうち、車速のデータをEthernet(登録商標)で出力し、エフェメリス(ephemeris)とアルマナック(Almanac)を1575.42MHzのBPSK(binary phase shift keying)変調のアナログ信号で出力することなどが想定される。これにより、物理インタフェースの異なる複数の車載装置を含む先進運転支援システムの評価試験にも対応できる。
【0023】
車両センサ情報記憶部3は、車両センサ情報生成部1が生成した車両センサ情報群を記憶する記憶媒体である。車両センサ情報記憶部3は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの書き換え可能な記録媒体であり、車両センサ情報群を、所望の車両センサ情報を検索可能な状態で記憶する。車両センサ情報記憶部3は、例えばSQLなどのリレーショナルデータベースなどのデータベースの仕組みを利用して実現されてもよいし、任意の構造体やデータの配列を定義してデータ検索可能な仕組みを用意してもよい。
【0024】
先進運転支援システム20は、先進運転支援システム評価装置10を用いた評価試験の対象であり、複数の車載装置(車載装置#1~#N)を含む車載装置群20Aと、衛星測位装置20Bとからなる。車載装置群20Aに含まれる車載装置としては、AD-ECU、ADAS-ECU(「予防安全ECU」とも呼ばれる)、DMS(ドライバーモニタリングシステム)、ナビゲーション装置などが想定される。衛星測位装置20Bは、HDLであり、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いた衛星測位機能を有するもの車載装置が想定される。
【0025】
操作装置30は、先進運転支援システム評価装置10のユーザーインタフェースである。先進運転支援システム評価装置10のユーザー(評価実施者)は、操作装置30を用いて、評価の開始時刻など評価試験に必要な情報を先進運転支援システム評価装置10に入力したり、評価試験の状況や評価可能な車両センサ情報の内容確認を行ったりすることができる。
【0026】
図2は、実施の形態1に係る先進運転支援システム評価装置10の処理を示すフローチャートである。以下、
図2を参照しつつ、実施の形態1に係る先進運転支援システム評価装置10の処理を説明する。
【0027】
実施の形態1においては、走行記録情報には、車両がある経路を走行した際の、時刻情報、車速情報、加速度情報、ヨーレート情報、位置情報(緯度、経度および高度)などのセンサデータが、一定周期で記録されているものとする。この「一定周期」は、センサデータの種類によって異なってもよい。例えば、車速と加速度とヨーレートは20ミリ秒周期のデータ、時刻情報および位置情報は100ミリ秒毎のデータ、などでもよい。
【0028】
また、仮想走行情報は、走行記録情報に含まれる時刻情報および位置情報から得られる車両の走行経路上の特定位置(特定時刻における車両の位置)で受信したと想定される衛星配信情報(エフェメリス(ephemeris)、アルマナック(Almanac)、SBAS(satellite-based augmentation system)信号、CLAS(Centimeter Level Augmentation Service)のL6信号の少なくともいずれか1つを含む情報)をシミュレートして生成されたものとする。衛星配信情報は、一般的なGNSS(Global Navigation Satellite System)シミュレータ装置で生成してもよいし、車両の走行経路から近い電子基準点など、衛星から配信されている情報を受信し記録している施設や装置から取得したデータから生成してもよい。
【0029】
ステップS101では、先進運転支援システム評価装置10のユーザー(評価実施者)が、走行記録情報と仮想走行情報とを車両センサ情報生成部1に入力する。
【0030】
ステップS102では、車両センサ情報生成部1が、入力された走行記録情報と仮想走行情報とから、同一時刻の情報とみなされるセンサデータ(車速情報、加速度情報、ヨーレート情報、位置情報など)と衛星測位情報との組み合わせを車両センサ情報として抽出し、抽出した車両センサ情報を集約して、車両センサ情報の集合である車両センサ情報群を作成し、それを車両センサ情報記憶部3に保存する。
【0031】
図3は、車両センサ情報生成部1が生成する車両センサ情報群のデータ構成例である。
図3の例において、それぞれの車両センサ情報は、「時刻情報」と、当該車両センサ情報の出力先となる物理インタフェースを示す「物理インタフェース情報」と、車両センサ情報の内容を示す情報とから構成される。物理インタフェースは、例えば、「CAN(Control Area Network)の2ch(channel)」、「Ethernet(登録商標)の1ch」など、車両センサ情報を出力する信号線を示す情報である。
【0032】
車両センサ情報生成部1は、車両センサ情報群を複数作成し、車両センサ情報記憶部3は、車両センサ情報生成部1が作成した複数の車両センサ情報群を記憶してもよい。例えば、車両の1回の走行の開始時(具体的には、エンジンまたはモーターをオンした時)から終了時(具体的には、エンジンまたはモーターをオフした時)までの車両センサ情報の集合を1つの車両センサ情報群として扱い、車両の複数回の走行に対し、車両センサ情報生成部1が、車両センサ情報群#1、#2、#3・・・などと、各回の走行に対応する車両センサ情報群を作成してもよい。
【0033】
ステップS103では、先進運転支援システム評価装置10のユーザーが、車両センサ情報出力部2に対して、車両センサ情報の出力制御情報を入力する。出力制御情報は、車両センサ情報の「出力開始時刻」、「出力終了時刻」、「出力開始指示」および「出力停止指示」のうちの1つ以上を含む情報である。
【0034】
例えば、ユーザーが「出力開始時刻」と「出力終了時刻」と「出力開始指示」とを車両センサ情報出力部2に入力すると、出力開始時刻と出力終了時刻と間の車両センサ情報の出力を車両センサ情報出力部2に要求できる。また、ユーザーが「出力開始指示」のみを車両センサ情報出力部2に入力すると、車両センサ情報記憶部3に記録されている車両センサ情報群を最も古い時刻の車両センサ情報(以下、「開始レコード情報」という)から、当該車両センサ情報群の最も新しい時刻の車両センサ情報(以下、「終了レコード情報」という)までの車両センサ情報の出力を、車両センサ情報出力部2に要求できる。また、ユーザーが「出力開始指示」と「出力開始時刻」とを車両センサ情報出力部2に入力すると、出力開始時刻に最も近い時刻の車両センサ情報から、終了レコード情報までの車両センサ情報の出力を、車両センサ情報出力部2に要求できる。また、ユーザーが「出力開始指示」と「出力終了時刻」とを車両センサ情報出力部2に入力すると、開始レコード情報から、出力終了時刻に最も近い時刻の車両センサ情報までの車両センサ情報の出力を、車両センサ情報出力部2に要求できる。また、ユーザーが「出力停止指示」を車両センサ情報出力部2に入力すると、車両センサ情報の出力停止を車両センサ情報出力部2に要求できる。
【0035】
車両センサ情報出力部2は、入力された出力制御情報の要求に沿った処理を行う。ただし、車両センサ情報出力部2が要求された車両センサ情報を出力している途中に、「出力停止指示」の要求を受けた場合、車両センサ情報出力部2は、車両センサ情報の出力を一時停止する。その後、「出力開始指示」の要求を受けると、車両センサ情報出力部2は、一時停止する直前に出力した車両センサ情報の次の車両センサ情報(以下、「再開レコード情報」という)から出力を再開する。
【0036】
「出力開始指示」および「出力停止指示」とは別に、車両センサ情報の出力の一時停止および再開を要求するための「出力一時停止」および「出力再開」を、出力制御情報に含ませてもよい。この場合、ユーザーが車両センサ情報出力部2は、車両センサ情報の出力中に「一時停止」の出力制御情報が入力されるとその出力を一時停止し、その後「出力再開」の出力制御情報が入力されると「再開レコード情報」から出力を再開する。
【0037】
なお、車両センサ情報出力部2が、車両センサ情報記憶部3に記録されている車両センサ情報群を出力制御情報が入力される前に予め読み出し、出力可能な車両センサ情報の期間(例えば「A月B日C時からA月B日D時まで」など)を、先進運転支援システム評価装置10の状態を示す情報(以下、「評価装置情報」という)として操作装置30に出力してもよい。
【0038】
操作装置30は、評価装置情報をユーザーに提示することができる。評価装置情報が、出力可能な車両センサ情報の期間である場合、操作装置30が、その期間を表示してユーザーに示した上で、ユーザーに、車両センサ情報出力部2に出力させたい車両センサ情報を選択させてもよい。操作装置30は、汎用のパーソナルコンピュータで動作するソフトウェアとして構成されていてもよく、例えば、操作装置30が、出力可能な車両センサ情報のリストをコンピュータのディスプレイに表示し、ユーザーがマウスクリック操作などで出力したい車両センサ情報を選択できるようにしてもよい。
【0039】
また、車両センサ情報出力部2は、車両センサ情報の出力状態(例えば、出力中の車両センサ情報の内容など)の情報を評価装置情報として操作装置30に出力し、操作装置30がそれをユーザーに提示するようにしてもよい。車両センサ情報出力部2が車両センサ情報の出力状態を示す評価装置情報を操作装置30に出力するタイミングは、一定周期(例えば100ミリ秒周期)でもよいし、車両センサ情報出力部2が車両センサ情報を出力したタイミングでもよい。
【0040】
ステップS104では、先進運転支援システム評価装置10の車両センサ情報出力部2が、ユーザーから入力された出力制御情報に応じて、車両センサ情報の出力を開始する。具体的には、車両センサ情報出力部2は、車両センサ情報記憶部3から出力制御情報として入力された「出力開始時刻」に最も近い時刻の車両センサ情報、あるいは開始レコード情報から出力を開始する。
【0041】
例えば、車両センサ情報記憶部3に記録されている車両センサ情報に記録されている時刻の分解能が20ミリ秒であり、ユーザーが「出力開始時刻」として10時00分00秒110ミリ秒を入力した場合、「出力開始時刻」に最も近い時刻の車両センサ情報は、10時00分00秒120ミリ秒の車両センサ情報と、10時00分00秒100ミリ秒の車両センサ情報との2つが存在することがある。そのような場合、車両センサ情報出力部2は、出力する車両センサ情報の期間に出力開始時刻が含まれるように、最初に出力する車両センサ情報を選択する。すなわち、上記例であれば、車両センサ情報出力部2は、10時00分00秒100ミリ秒の車両センサ情報から出力を開始する。
【0042】
また、「出力終了時刻」に最も近い時刻の車両センサ情報についても同様とする。すなわち、ユーザーが「出力終了時刻」として11時59分59秒990ミリ秒を入力し、出力終了時刻に最も近い時刻の車両センサ情報として、11時59分59秒980ミリ秒の車両センサ情報と、12時00分00秒0ミリ秒の車両センサ情報との2つが存在した場合、車両センサ情報出力部2は、出力する車両センサ情報の期間に出力終了時刻が含まれるように、最後に出力する車両センサ情報を選択する。すなわち、この例であれば、車両センサ情報出力部2は、12時00分00秒0ミリ秒の車両センサ情報まで出力して、車両センサ情報の出力を終了する。
【0043】
また、車両センサ情報出力部2は、車両センサ情報の出力が一定周期となるように、車両センサ情報を順次出力する。例えば、先進運転支援システム評価装置10に時間の計測手段を設け、車両センサ情報出力部2が、前回の車両センサ情報の出力からの経過時間を計測して、次の車両センサ情報を出力するタイミングを定めてもよい。例えば、先進運転支援システム評価装置10が、時間の計測手段としてRTC(Real Time Clock)装置を備えてもよいし、先進運転支援システム評価装置10が外部のカウンター装置(例えば、1ミリ秒単位で信号を入力する装置)からの入力を積算して時間を計測してもよい。
【0044】
実施の形態1に係る先進運転支援システム評価装置10によれば、先進運転支援システム20の車載装置に記憶されている走行記録情報と、走行シミュレーションで生成された仮想走行情報とを用いて、実走行時の車載装置への情報入力を机上で実現または再現することができる。よって、先進運転支援システム20の走行記録情報が不足している場合でも、故障の解析が可能になる。
【0045】
逆に言えば、先進運転支援システム20の評価試験のために、車載装置に膨大なログ情報(走行記録情報)を蓄積させる必要がなくなる。よって、HDLのような少ない記憶容量の車載装置のログ情報を用いて、実際の車両の走行に近しい車載センサ情報の入力を机上で実現でき、先進運転支援システムの評価試験の効率化を図ることができる。
【0046】
<実施の形態2>
実施の形態1に係る先進運転支援評価システム100では、先進運転支援システム評価装置10が計測した時刻経過に基づいて、先進運転支援システム20に車両センサ情報が入力される。しかしその方法では、先進運転支援システム評価装置10と先進運転支援システム20との間の時間経過の計測精度の差異(誤差)や処理遅延などが時間経過とともに積算されると、例えば、先進運転支援システム評価装置10の認識時刻は0時0分0秒だが、先進運転支援システム20側の時刻は0時0分05秒など、先進運転支援システム評価装置10と先進運転支援システム20との間で認識する時刻に差が生じる場合がある。実施の形態2では、この課題を解決する先進運転支援評価システム100を提案する。
【0047】
図4は、実施の形態2に係る先進運転支援評価システム100の構成図である。実施の形態2の先進運転支援評価システム100では、衛星測位装置20Bが、衛星測位によって算出した位置情報および衛星から受信した時刻情報(以下、「衛星測位位置情報」および「衛星測位時刻情報」という)を、車両センサ情報出力部2に出力する衛星測位算出結果出力部20B1を有している。
【0048】
また、車両センサ情報出力部2は、衛星測位算出結果出力部20B1が出力した衛星測位時刻情報が示す時刻において、衛星測位位置情報が示す位置に最も近い位置に対応する車両センサ情報を抽出し、抽出した車両センサ情報を起点(初回に出力する車両センサ情報)にして、車両センサ情報の出力を開始する。こうすることで、先進運転支援システム評価装置10と先進運転支援システム20との間で時刻の認識に誤差が生じた場合でも、走行記録情報に記録されている位置に応じた適切な車両センサ情報を先進運転支援システム20に入力でき、走行時の先進運転支援システム20の動作を机上で再現することができる。
【0049】
なお、衛星から配信される時刻情報は、符号化されたデジタル信号であるため、時刻情報に誤差は生じない。つまり、衛星から受信した時刻情報の値は、そのまま衛星測位装置20Bに認識される。しかし、衛星測位装置20Bに衛星配信情報を入力してから衛星測位が可能になるまで時間を要する場合があり、特に、初回の衛星測位の入力時には初期値確定計算に時間がかかる(初回の車両センサ情報の入力では時刻確定計算に時間を要する)。
【0050】
そこで、実施の形態2に係る先進運転支援評価システム100では、先進運転支援システム評価装置10が初回の衛星配信情報を衛星測位装置20Bに出力した後、衛星測位装置20Bが準備完了通知(衛星測位による時刻および位置の算出結果を示す応答)を先進運転支援システム評価装置10にフィードバックする。このフィードバックの内容に有効な時刻情報が入っていれば、先進運転支援システム評価装置10は、衛星測位装置20Bが準備完了したと判断し、フィードバックされた時刻および位置の算出結果に基づいて、出力する車両センサ情報の起点を定め、車両センサ情報の出力を開始する。
【0051】
図5は、実施の形態2に係る先進運転支援システム評価装置10の処理を表すフローチャートである。以下、
図5を参照しつつ、実施の形態2に係る先進運転支援システム評価装置10の処理を説明する。
【0052】
ステップS101からステップS103までは、実施の形態1に係る先進運転支援システム評価装置10の処理フロー(
図2)のものと同様である。
【0053】
ステップS204では、車両センサ情報出力部2が、操作装置30から入力された出力制御情報に応じた出力開始時刻に最も近い時刻の車両センサ情報(または開始レコード情報)の衛星配信情報を車両センサ情報記憶部3から抽出し、抽出した衛星配信情報を衛星測位装置20BにSDR(Software Defined Radio)を用いて入力する。
【0054】
衛星測位装置20Bは、衛星配信情報が入力されると、衛星配信情報を用いて衛星測位位置情報と衛星測位時刻情報を算出する。そして、衛星測位装置20Bの衛星測位算出結果出力部20B1が、その算出結果を示す応答をEthernet(登録商標)通信を用いて車両センサ情報出力部2へ出力(フィードバック)する。
【0055】
ここでは、衛星測位装置20Bから車両センサ情報出力部2へ衛星測位位置情報および衛星測位時刻情報の計算結果をフィードバックするための物理通信インタフェースをEthernet(登録商標)としたが、通信の遅延時間が先進運転支援システム20の評価試験に影響しない程度に小さい(例えば、ミリ秒以下)ものであればよく、例えばRS232やUSB(Universal Serial Bus)などでもよい。
【0056】
ステップS205では、車両センサ情報出力部2が、衛星測位装置20Bからフィードバックされた衛星測位時刻情報および衛星測位位置情報に最も近い時刻および位置の車両センサ情報を車両センサ情報記憶部3から抽出し、抽出した車両センサ情報を起点にして、車両センサ情報の出力を開始する。
【0057】
実施の形態2に係る先進運転支援システム評価装置10によれば、先進運転支援システム評価装置10が先進運転支援システム20に対して入力する車両センサ情報の時刻(評価システム時刻)と、先進運転支援システムが認識する時刻(評価対象システム時刻)間で同期をとることができ、机上で精度の高い再現試験を実施することができ、問題となる事象の特定作業を効率化する。
【0058】
<実施の形態3>
実施の形態1および2に係る先進運転支援評価システム100では、先進運転支援システム評価装置10が、評価試験のための車両センサ情報(再現試験用のデータセット)だけを、先進運転支援システム20の車載装置(車載装置群20A)に入力していた。しかし、車載装置が、演算で利用するセンサの補正係数や初期値などを、車両の走行中または停止中に逐次計算して更新する学習機能をもつ場合がある。このような車載装置を含む先進運転支援システム20の再現試験や評価においては、車両センサ情報だけでなく、車載装置における学習の状態を示す「学習情報」(具体的には、学習によって得られたセンサの補正係数や初期値などのパラメータの値)を、実走行時と同様な状態にする必要がある。実施の形態3では、この課題を解決する先進運転支援評価システム100を提案する。
【0059】
図6は、実施の形態3に係る先進運転支援評価システム100の構成図である。実施の形態3の先進運転支援評価システム100では、先進運転支援システム20の車載装置群20Aを構成する車載装置が、記憶部(不図示)に保存されている学習情報を更新する「学習情報更新部」を有する。また、本実施の形態では、実施の形態2と同様に、衛星測位装置20Bは衛星測位算出結果出力部20B1を有している。
【0060】
先進運転支援システム評価装置10の車両センサ情報出力部2は、車両センサ情報の出力を開始する前に、先進運転支援システム20の車載装置群20Aの個々の車載装置に対し、予め車両センサ情報記憶部3に保存されている学習情報を入力する。
【0061】
学習情報が入力された車載装置では、学習情報更新部が、入力された学習情報を、記憶部に保存されている既存の学習情報に上書きして、利用できる状態にする。学習情報を利用できる状態とは、学習情報の更新後における、ソフトウェアの再起動やパラメータの再設定が完了した状態を意味する。
【0062】
なお、各車載装置の学習情報は、走行記録情報として車両センサ情報生成部1に入力され、車両センサ情報生成部1が、走行記録情報から車載装置の学習情報を抽出して、車両センサ情報記憶部3に記憶させる。学習情報は、例えばHDLやDMSなどの車載装置固有のパラメータの学習結果であり、具体的には、車載装置の設置位置やセンサ感度のばらつきを補正するパラメータの学習結果などである。この学習情報は、車両ごと、機器ごとに異なるため、故障が生じた車両の車載装置に保存されている学習情報が走行記録情報として車両センサ情報生成部1に入力される。
【0063】
HDLやDMSなどの車載装置は、車両に搭載されているとき常に或いは一定周期で学習情報を保存できれば理想的である。しかし、車載装置の記憶容量には限りがあるため、車両のACC(アクセサリ)電源がオンにされたときや、故障が検出されたときなどに、その時点の学習情報を保存するのが実用的である。
【0064】
図7は、実施の形態3に係る先進運転支援システム評価装置10の処理を表すフローチャートである。以下、
図7を参照しつつ、実施の形態3に係る先進運転支援システム評価装置10の処理を説明する。
【0065】
ステップS101は、実施の形態1に係る先進運転支援システム評価装置10の処理フロー(
図2)のものと同様である。
【0066】
ステップS302は、車両センサ情報生成部1が、入力された走行記録情報と仮想走行情報とから、同一時刻の情報とみなされるセンサデータと衛星測位情報との組み合わせを車両センサ情報として抽出するとともに、各車載装置の学習情報を抽出し、車両センサ情報の集合である車両センサ情報群と、学習情報の集合である学習情報群とを作成し、それらを車両センサ情報記憶部3に保存する。
【0067】
図8に、学習情報群のデータ構成例を示す。
図8の学習情報群は、どの車載装置の学習情報かを識別するための「車載装置種別」と、学習情報を記録した時刻を示す「学習情報記録時刻」と、学習情報の内容を示す情報とから構成される。
【0068】
ステップS103は、実施の形態1に係る先進運転支援システム評価装置10の処理フロー(
図2)のものと同様である。
【0069】
ステップS304では、車両センサ情報出力部2が、操作装置30から入力された出力制御情報で指定された出力開始時刻に最も近い時刻の各車載装置の学習情報(つまり、
図8に示した「学習情報記録時刻」が出力開始時刻に最も近い学習情報)を、車両センサ情報記憶部3に記憶されている学習情報群から抽出し、車載装置群20Aの各車載装置に出力する。学習情報が入力された車載装置では、学習情報更新部が、入力された学習情報を、既存の学習情報に上書きして、利用できる状態にする。
【0070】
ステップS204およびステップS205は、実施の形態2に係る先進運転支援システム評価装置10の処理フロー(
図5)のものと同様である。
【0071】
本実施の形態では、実施の形態2のように衛星測位装置20Bが衛星測位算出結果出力部20B1を有する例を示したが、実施の形態1のように衛星測位装置20Bが衛星測位算出結果出力部20B1を有しない場合には、ステップS204およびステップS205の代わりに、実施の形態1に係る先進運転支援システム評価装置10の処理フロー(
図2)のステップS104が行われればよい。
【0072】
実施の形態3に係る先進運転支援システム評価装置10によれば、先進運転支援システム20を構成する車載装置群20Aの各車載装置の学習状態(学習情報の内容)も机上で再現できる。そのため、実際の走行により近い再現試験を実施でき、故障の要因特定や問題となる事象の事前確認などの作業効率が向上する。
【0073】
<ハードウェア構成例>
図9および
図10は、それぞれ先進運転支援システム評価装置10のハードウェア構成の例を示す図である。
図1に示した先進運転支援システム評価装置10の構成要素の各機能は、例えば
図9に示す処理回路50により実現される。すなわち、先進運転支援システム評価装置10は、車両の実際の走行時に記録されたセンサデータまたは衛星配信情報である走行記録情報と、コンピュータでの車両の走行シミュレーションによって生成されたセンサデータまたは衛星配信情報である仮想走行情報との片方または両方から、同一時刻の情報とみなしたセンサデータと衛星配信情報との組み合わせである車両センサ情報を抽出し、車両センサ情報の集合である車両センサ情報群を生成し、車両センサ情報群を記憶し、車両センサ情報群から、ユーザーが指定した開始時刻からの時間経過に応じた車両センサ情報を選択して、評価試験の対象である先進運転支援システムの車載装置に出力するための処理回路50を備える。処理回路50は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサ(中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)とも呼ばれる)を用いて構成されていてもよい。
【0074】
処理回路50が専用のハードウェアである場合、処理回路50は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものなどが該当する。先進運転支援システム評価装置10の構成要素の各々の機能が個別の処理回路で実現されてもよいし、それらの機能がまとめて一つの処理回路で実現されてもよい。
【0075】
図10は、処理回路50がプログラムを実行するプロセッサ51を用いて構成されている場合における先進運転支援システム評価装置10のハードウェア構成の例を示している。この場合、先進運転支援システム評価装置10の構成要素の機能は、ソフトウェア等(ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせ)により実現される。ソフトウェア等はプログラムとして記述され、メモリ52に格納される。プロセッサ51は、メモリ52に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、先進運転支援システム評価装置10は、プロセッサ51により実行されるときに、車両の実際の走行時に記録されたセンサデータまたは衛星配信情報である走行記録情報と、コンピュータでの車両の走行シミュレーションによって生成されたセンサデータまたは衛星配信情報である仮想走行情報との片方または両方から、同一時刻の情報とみなしたセンサデータと衛星配信情報との組み合わせである車両センサ情報を抽出し、車両センサ情報の集合である車両センサ情報群を生成する処理と、車両センサ情報群を記憶する処理と、車両センサ情報群から、ユーザーが指定した開始時刻からの時間経過に応じた車両センサ情報を選択して、評価試験の対象である先進運転支援システム20の車載装置に出力する処理と、が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ52を備える。換言すれば、このプログラムは、先進運転支援システム評価装置10の構成要素の動作の手順や方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0076】
ここで、メモリ52は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)およびそのドライブ装置のほか、今後使用されるあらゆる記憶媒体であってもよい。
【0077】
以上、先進運転支援システム評価装置10の構成要素の機能が、ハードウェアおよびソフトウェア等のいずれか一方で実現される構成について説明した。しかしこれに限ったものではなく、先進運転支援システム評価装置10の一部の構成要素を専用のハードウェアで実現し、別の一部の構成要素をソフトウェア等で実現する構成であってもよい。例えば、一部の構成要素については専用のハードウェアとしての処理回路50でその機能を実現し、他の一部の構成要素についてはプロセッサ51としての処理回路50がメモリ52に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0078】
また、実施の形態3の先進運転支援システム20を構成する車載装置も、
図9または
図10のハードウェア構成により実現可能である。
【0079】
例えば、
図9に示す処理回路50により車載装置が実現される場合、車載装置は、学習の状態を示す学習情報を記憶し、記憶されている学習情報を、外部の評価装置から入力される学習情報に更新して、更新後の学習情報を処理に利用できる状態にするための処理回路50を備える。
【0080】
また、
図10に示すプロセッサ51およびメモリ52により車載装置が実現される場合、車載装置は、プロセッサ51により実行されるときに、学習の状態を示す学習情報を記憶する処理と、記憶部に記憶されている学習情報を、外部の評価装置から入力される学習情報に更新して、更新後の学習情報を処理に利用できる状態にする処理と、が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ52を備える。
【0081】
以上のように、先進運転支援システム評価装置10および車載装置は、ハードウェア、ソフトウェア等、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0082】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0083】
上記した説明は、すべての態様において、例示であって、例示されていない無数の変形例が想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0084】
100 先進運転支援評価システム、10 先進運転支援システム評価装置、20 先進運転支援システム、1 車両センサ情報生成部、2 車両センサ情報出力部、3 車両センサ情報記憶部、20A 車載装置群、20B 衛星測位装置、20B1 衛星測位算出結果出力部、30 操作装置、50 処理回路、51 プロセッサ、52 メモリ。