(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】光交換装置及び光交換方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/29 20130101AFI20240920BHJP
H04B 10/27 20130101ALI20240920BHJP
【FI】
H04B10/29
H04B10/27
(21)【出願番号】P 2024541364
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2022031286
(87)【国際公開番号】W WO2024038569
(87)【国際公開日】2024-02-22
【審査請求日】2024-07-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G通信インフラを高効率に構成するメトロアクセス光技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 剛
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/217312(WO,A1)
【文献】特開2013-143746(JP,A)
【文献】特開平8-167877(JP,A)
【文献】特開平8-237289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/29
H04B 10/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所光ネットワークと広域光ネットワークとをつなぐ光交換装置であって、
入力される強度変調光信号を直接検波し、局所受信アナログ電気信号として出力する局所親光送受信器と、
前記局所受信アナログ電気信号をサンプリングし、局所受信デジタル信号として出力する局所親アナログデジタル変換部と、
前記局所受信デジタル信号を局所送信デジタル信号と広域送信デジタル信号とに振り分けて出力する交換部と、
前記局所送信デジタル信号をアナログ信号に変換する局所親デジタルアナログ変換部と、
前記広域送信デジタル信号に対しデジタル信号処理を行い、コヒーレント光通信用の送信サブキャリア信号を生成する広域送信デジタル信号処理部と、
前記送信サブキャリア信号を周波数多重し、広域送信アナログ電気信号へ変換する広域デジタルアナログ変換部と、
前記広域送信アナログ電気信号に基づいて、光搬送波を変調する広域光変調部と、
を含み、
前記局所親アナログデジタル変換部は、想定する信号形式のうちサンプリングの条件が最もシビアとなるものに合わせてサンプリングを実施する、
光交換装置。
【請求項2】
前記広域光ネットワークの受信用光スイッチから送られた光信号に対し、コヒーレント検波を行い、広域受信アナログ電気信号を出力する広域光検出部と、
前記広域受信アナログ電気信号をサンプリングし、デジタル信号に変換し、周波数領域でサブキャリアに分離する広域アナログデジタル変換部と、
前記広域アナログデジタル変換部から送られた信号に対しデジタル信号処理を実施し、広域受信デジタル信号として前記交換部へ出力する広域受信デジタル信号処理部と、をさらに含む、
請求項1に記載の光交換装置。
【請求項3】
局所光ネットワークと広域光ネットワークとをつなぐ光交換装置の光交換方法であって、
局所親光送受信器が、入力される強度変調光信号を直接検波し、局所受信アナログ電気信号として出力し、
局所親アナログデジタル変換部が、前記局所受信アナログ電気信号をサンプリングし、局所受信デジタル信号として出力し、
交換部が、前記局所受信デジタル信号を局所送信デジタル信号と広域送信デジタル信号とに振り分けて出力し、
局所親デジタルアナログ変換部が、前記局所送信デジタル信号をアナログ信号に変換し、
広域送信デジタル信号処理部が、前記広域送信デジタル信号に対しデジタル信号処理を行い、コヒーレント光通信用の送信サブキャリア信号を生成し、
広域デジタルアナログ変換部が、前記送信サブキャリア信号を周波数多重し、広域送信アナログ電気信号へ変換し、
広域光変調部が、前記広域送信アナログ電気信号に基づいて、光搬送波を変調し、
前記局所親アナログデジタル変換部が、想定する信号形式のうちサンプリングの条件が最もシビアとなるものに合わせてサンプリングを実施する、
光交換方法。
【請求項4】
広域光検出部が、前記広域光ネットワークの受信用光スイッチから送られた光信号に対し、コヒーレント検波を行い、広域受信アナログ電気信号を出力し、
広域アナログデジタル変換部が、前記広域受信アナログ電気信号をサンプリングし、デジタル信号に変換し、周波数領域でサブキャリアに分離し、
広域受信デジタル信号処理部が、前記広域アナログデジタル変換部から送られた信号に対しデジタル信号処理を実施し、広域受信デジタル信号として前記交換部へ出力する、
請求項3に記載の光交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は光交換装置及び光交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる5Gと称される第5世代移動体通信システムにおいて、光トランスポートネットワーク(OTN、Optical Transport Network)が利用されていることが知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、5Gネットワークと接続されるOTNネットワークの例が多数、示されている(非特許文献1の
図8-4~
図8-10、参照)。ここで、本明細書においては、広域の光ネットワークは、「広域光ネットワーク」と称されるものとする。また、本明細書においては、局所の光ネットワークは、「局所光ネットワーク」と称されるものとする。
非特許文献1に例示されるように、一般に、局所光ネットワークから送られる有限長のトラフィックは、サービス種別ごとに分けて管理され、電気的なルーティング装置を介して連続信号に変換された後、広域光ネットワークにて長距離かつ大容量に光伝送される。すなわち、一般に、広域光ネットワーク及び局所光ネットワークから構成されるネットワークは、局所光ネットワーク側にルーティング装置が備えられており、ルーティング装置が宛先情報を解読してルーティングを実施している。また、広域光ネットワーク側には、サービス種別ごとに、あるいは宛先ごとに、広域光交換装置が用意されている、と言える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】一般社団法人情報通信技術委員会著、“第5世代移動体通信システムにおけるOTNの適用に関する技術報告”、TR-1084、第1.0版、2020年3月11日.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来の広域光ネットワーク及び局所光ネットワークから構成されるネットワークは、ルーティング装置において、宛先等の制御情報を解読してルーティングする電気的な処理の負荷が大きい。多様な種別、かつ大容量のデータが送られると、ルーティング装置の処理能力に依存した処理遅延が生じる。
【0006】
広域光ネットワーク及び局所光ネットワークから構成されるネットワークの技術分野において、処理遅延が生じない、「広域光ネットワークが、局所光ネットワークからの有限長信号を直接収容できる」ための仕組みが求められている。
本開示技術は、「広域光ネットワークが、局所光ネットワークからの有限長信号を直接収容できる」ための仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示技術に係る光交換装置は、局所光ネットワークと広域光ネットワークとをつなぐ光交換装置であって、入力される強度変調光信号を直接検波し、局所受信アナログ電気信号として出力する局所親光送受信器と、局所受信アナログ電気信号をサンプリングし、局所受信デジタル信号として出力する局所親アナログデジタル変換部と、局所受信デジタル信号を局所送信デジタル信号と広域送信デジタル信号とに振り分けて出力する交換部と、局所送信デジタル信号をアナログ信号に変換する局所親デジタルアナログ変換部と、広域送信デジタル信号に対しデジタル信号処理を行い、コヒーレント光通信用の送信サブキャリア信号を生成する広域送信デジタル信号処理部と、送信サブキャリア信号を周波数多重し、広域送信アナログ電気信号へ変換する広域デジタルアナログ変換部と、広域送信アナログ電気信号に基づいて、光搬送波を変調する広域光変調部と、を含み、局所親アナログデジタル変換部は、想定する信号形式のうちサンプリングの条件が最もシビアとなるものに合わせてサンプリングを実施する、というものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示技術に係る光交換装置は上記構成を備えるため、広域光ネットワークが、局所光ネットワークからの有限長信号を直接収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る光交換装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る光交換装置の交換部20が、局所親アナログデジタル変換部14から受信した信号の扱い例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る光交換装置の交換部20が、広域受信デジタル信号処理部38から受信した信号の扱い例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、本開示技術に係る光交換装置の接続例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る光交換装置200の機能構成を示すブロック図である。
図1に示されるとおり、光交換装置200は、局所光ネットワーク100と広域光ネットワーク300とをつなぐ装置である。
図1に示されるとおり実施の形態1に係る光交換装置200は、N個(Nは自然数)の局所親光送受信器13と、N個の局所親アナログデジタル変換部14と、N個の局所親デジタルアナログ変換部15と、交換部20と、M個(Mは自然数)の広域送信デジタル信号処理部31と、広域デジタルアナログ変換部32と、広域光変調部33と、広域光検出部36と、広域アナログデジタル変換部37と、M個の広域受信デジタル信号処理部38と、を備える。
実施の形態1に係る光交換装置200が想定する局所光ネットワーク100は、複数の局所子光送受信器11と、複数の局所子光送受信器11とN個の局所親光送受信器13とを繋げる光伝送路12と、を含む。
また実施の形態1に係る光交換装置200が想定する広域光ネットワーク300は、送信用光スイッチ34と、受信用光スイッチ35と、を含む。
【0011】
実施の形態1に係る光交換装置200が扱う主な信号の名称は、本明細書においては、以下の表に記載のとおり、とする。
【0012】
《局所光ネットワーク100》
情報通信の技術分野において、局所側とは、クライアント側を意味する用語として用いられる。また、局所側とは対になる広域側とは、ライン側又は伝送路側を意味する用語として用いられる。局所光ネットワーク100の名前に用いられている「局所」という用語は、辞書の意味どおり、限られた場所を意味するものである。
実施の形態1に係る光交換装置200が想定する局所光ネットワーク100においては、1つの親光送受信器に複数の子光送受信器が接続されている。
図1に示される例では、1番目の局所親光送受信器13(13-1)に、複数の局所子光送受信器11(11-1-1、11-1-2、…、11-1-K[1])が、1番目の光伝送路12(12-1)によって接続されている。このように本明細書において用いられる、番号の後ろに付加されている「-n」(nは1からNまでを取り得る変数)の符号は、n番目の伝送系列に係る機能ブロックであることを表している。
図1に示される例において、局所子光送受信器11の総数は、K[1]+K[2]+…+K[n]+…+K[N]である。
図1に示されるとおり、n番目の光伝送路12-nは、いずれも一部が共用されている。また光伝送路12-nは、いずれも別の光交換装置(不図示、200-他)に係る局所側インタフェースと接続可能なものである。
局所子光送受信器11からは、有限長の、より具体的にはバースト信号状の強度変調信号が出力される。バースト信号とは、時間領域で観測したときに、ごく一部にのみ信号が存在しそれ以外には信号が存在しないものを意味する。なお、局所子光送受信器11から出力される強度変調信号は、光信号であることを強調して、「強度変調光信号」と称されることもある。
局所子光送受信器11から出力された強度変調信号は、時間分割多重される。
なお、後述の局所親アナログデジタル変換部14-nにおいて必要となる分解能を抑えること、及び、パワージェットを確保すること、を両立できるよう、局所子光送受信器11から送出される光のパワーは、適宜、調整されることが望ましい。
【0013】
光伝送路12-nは、一般に、一芯の光ファイバで構成され、局所子光送受信器11-n-k(kは1からK[n]までを取り得る変数)と局所親光送受信器13-nとの間の双方向通信を実現する。光伝送路12-nにおいて、上り方向(子から親への方向)と下り方向(親から子への方向)との衝突を防ぐため、光波長の値を変える等の工夫がなされる。
【0014】
局所光ネットワーク100の端末にある局所子光送受信器11-n-kは、局所親光送受信器13-nから送信され光伝送路12-nを経由して入力される強度変調された光信号を、直接検波し、シンボルの判定を行い、元データに復調する。
ここでシンボルとは、デジタル変調において、或る1つの状態が続いている期間又は時間を意味するものである。関連する用語として、シンボルレートが挙げられるが、単位時間あたりに変化するシンボル数であり、単位は[symbol/s]が用いられる。シンボルレートは、ボーレート(単位は[Baud])、又は変調レートとも称される。
シンボルレートは、占有周波数帯域と関連する。シンボルレートが大きい場合、占有周波数帯域が広くなる。このため、限りある周波数資源を節約しつつ、情報を多く伝送できる、すなわちシンボルレートが同じでビットレートが大きい、多値変調は有力な手段である。
【0015】
このように実施の形態1に係る光交換装置200が想定する局所光ネットワーク100は、1つの局所親光送受信器13に複数の局所子光送受信器11が接続されていること、局所親光送受信器13と局所子光送受信器11との間の光伝送路12が一部共有されていること、局所子光送受信器11からは有限長の強度変調信号が出力されていること、強度変調信号が時間分割多重されていること、という性質を有するものである。
【0016】
《広域光ネットワーク300》
広域光ネットワーク300の名前に用いられている「広域」という用語は、辞書の意味どおり、広い区域を意味するものである。一般に、広域のネットワークは、都市内の広い区域、都市間、又は国家間をつなぐものである。
実施の形態1に係る光交換装置200が想定する広域光ネットワーク300は、1つの光送受信器によって、複数の仮想的な光チャネルを収容可能である。仮想的な光チャネルは、それぞれ独立した光波長として扱うことができる。ここで「仮想的」という用語の意味は、物理的には1つの光送受信器というインタフェースであるにもかかわらず、実際には複数の光チャネルを同時に出力できる、ということを表したものである。
この作用により広域光ネットワーク300は、低遅延でありながら大容量の異なるタイプのサービスを収容でき、異なる地点との通信が可能となる。
広域光ネットワーク300が扱う信号は、偏波多重、直交振幅変調、又はサブキャリア多重されたものである。広域光ネットワーク300の受信側は、コヒーレント検波を行い、デジタル信号処理により波形歪みの補償及び符号誤りの訂正、等の補正を行う。
広域光ネットワーク300に含まれる送信用光スイッチ34及び受信用光スイッチ35の詳細は、後述の説明により明らかとなる。
【0017】
《光交換装置200》
前述のとおり光交換装置200は、局所光ネットワーク100と広域光ネットワーク300とを接続する。光交換装置200の詳細は、後述の機能ブロックごとの説明により明らかとなる。
【0018】
《光交換装置200を構成する局所親光送受信器13》
光交換装置200を構成する局所親光送受信器13は、強度変調光信号の生成及び検波を行う構成要素である。
光交換装置200を構成する局所親光送受信器13-nは、局所子光送受信器11-n-kから送信され光伝送路12-nを経由して入力される強度変調された光信号を、直接検波するが、シンボルの判定は行わない。局所親光送受信器13において直接検波により得られた信号は、本明細書においては、「局所受信アナログ電気信号」と称されるものとする。局所受信アナログ電気信号は、局所親アナログデジタル変換部14-nへと送られる。
【0019】
局所親アナログデジタル変換部14-nへと送られる信号、すなわち局所受信アナログ電気信号は、本開示技術の想定においては、ボーレートが異なる、又は多値変調の度合(「変調多値度」と称されることがある)が異なる有限長の信号が、時間的に多重されることが起こり得るものとする。本開示技術が想定する局所受信アナログ電気信号は、例えば、10[Gb/s]のオン・オフ・キーイング信号と50[Gb/s]の四値PAM信号とが、時間的に多重されて得られたものである、ということが生じ得る。
本開示技術に係る光交換装置200の技術的特徴は、信号形式を意識せずにサンプリングを実施し、プロトコル無依存でトラフィック収容を行う点にある。信号形式を意識せずにプロトコル無依存でトラフィック収容を行うことは、本明細書においては、「直接収容」と称されるものとする。
【0020】
《光交換装置200を構成する局所親アナログデジタル変換部14》
光交換装置200を構成する局所親アナログデジタル変換部14-nは、局所親光送受信器13-nから送られる局所受信アナログ電気信号をサンプリングする構成要素である。局所親アナログデジタル変換部14においてサンプリングにより得られた信号は、本明細書においては、「局所受信デジタル信号」と称されるものとする。
局所受信デジタル信号は、交換部20へと送られる。
【0021】
前述のとおり、本開示技術に係る光交換装置200の技術的特徴は、信号形式を意識せずにサンプリングを実施し、プロトコル無依存でトラフィック収容を行う点にある。したがって、局所親アナログデジタル変換部14は、代償として、最も条件がシビアな信号形式に合わせてサンプリングを実施する必要がある。局所親アナログデジタル変換部14は、例えば、最もシビアな50[Gsample/s]又はさらに安全率を考慮してその2倍の100[Gsample/s]のサンプリングレートでサンプリングを実施する。また、局所親アナログデジタル変換部14は、この例においては、少なくとも2[bit]以上の分解能すなわち量子化ビット数でサンプリングを実施する。多値信号を用いない場合(2値信号のみの場合)のように、サンプリングは最小1[bit]でよい場合もあるが、いずれにしても局所親アナログデジタル変換部14は、想定するいずれの信号形式にも対応できる分解能を有する必要がある。
このように、どの範囲の信号までだったらプロトコル無依存でトラフィック収容できるかといった信号に対する条件と、サンプリングレート及び量子化ビット数といった局所親アナログデジタル変換部14に対する条件とは、トレードオフの関係にあると言える。本開示技術は、局所親アナログデジタル変換部14におけるサンプリングレート及び量子化ビット数について最も厳しい条件を受け入れることにより、プロトコル無依存でトラフィック収容を実現するものである。
【0022】
《光交換装置200を構成する局所親デジタルアナログ変換部15》
光交換装置200を構成する局所親デジタルアナログ変換部15は、交換部20から送られるデジタル信号(以降、「交換後デジタル信号」と称する)をアナログ信号に変換する構成要素である。局所親デジタルアナログ変換部15において、デジタルアナログ変換により得られるアナログ信号は、本明細書においては、「局所送信アナログ電気信号」と称されるものとする。
局所送信アナログ電気信号は、局所親光送受信器13-nへと送られる。
なお、分解能とパワージェットとの両立の観点から、局所親デジタルアナログ変換部15は、変換前のデジタル領域において、振幅調整を適宜、実施することが望ましい。
【0023】
《光交換装置200を構成する交換部20》
光交換装置200を構成する交換部20は、簡単に言えば、入力された信号を振り分けて、出力する構成要素である。交換部20が行う処理は、本明細書においては、「交換処理」と称されるものとする。光交換装置200を構成する交換部20は、ハードウエアとしては、処理回路により実現される。
交換部20へ入力される信号は、局所親アナログデジタル変換部14-n(n=1、2、…、N)からの局所受信デジタル信号、及び広域受信デジタル信号処理部38-m(m=1、2、…、M)からの広域受信デジタル信号、である。広域受信デジタル信号処理部38-m及び広域受信デジタル信号の詳細は、後述の説明により明らかとなる。
交換部20から出力される信号は、広域送信デジタル信号処理部31-m2(m2=1、2、…、M)へ送られる広域送信デジタル信号、及び局所親デジタルアナログ変換部15-n2(n2=1、2、…、N)へ送られる局所送信デジタル信号である。広域送信デジタル信号処理部31-m2及び広域送信デジタル信号の詳細は、後述の説明により明らかとなる。
【0024】
交換部20において実施される交換処理により様々な経路が生じるが、経路は、大きく4種類に分類できる。交換処理により生じる4種類の経路は、局所→局所、局所→広域、広域→局所、広域→広域、である。
図2は、実施の形態1に係る光交換装置200の交換部20が、局所親アナログデジタル変換部14から受信した信号の扱い例を示す説明図である。
図2における
図2Aは、破線により、交換部20の交換処理により生じる4種類の経路のうち、局所→広域、を示すものである。また
図2における
図2Bは、破線により、交換部20の交換処理により生じる4種類の経路のうち、局所→局所、を示すものである。
図3は、実施の形態1に係る光交換装置200の交換部20が、広域受信デジタル信号処理部38から受信した信号の扱い例を示す説明図である。
図3における
図3Aは、破線により、交換部20の交換処理により生じる4種類の経路のうち、広域→局所、を示すものである。また
図3における
図3Bは、破線により、交換部20の交換処理により生じる4種類の経路のうち、広域→広域、を示すものである。
【0025】
交換部20において実施される交換処理は、例えば、複数経路への信号の分配、複数の局所光ネットワーク100から単一の仮想光チャネルへの割当て(「信号集約」とも称される)、及び仮想光チャネルに係る物理周波数の切換え、等を実現できる。ここで、複数経路への信号の分配には、信号を部分に分けて分配する場合も、同一信号を複製して分配する場合(マルチキャストの場合)も、含まれる。
交換処理は、交換規則に従い実施される。実施の形態1に係る光交換装置200は、外部からの指示(以降、「監視制御信号」と称する)により交換規則を変更できるよう、交換部20が構成されている。すなわち交換規則は、本開示技術に係る光交換装置200においては、時間経過とともに変更し得るものである、として扱われる。なお、
図2及び
図3において、「外部制御装置等」と示された箇所が、監視制御信号によって交換規則を変更する外部を表している。なお、本開示技術において、監視制御信号は外部のソフトウエアにより実現されてもよい。監視制御信号がどのように実現されるかは、本開示技術にとって、本質的な事項ではない。
実施の形態1に係る光交換装置200は、外部へ、入力信号の短時間平均電力、広域側のビット誤り率、又は情報量、等の情報(以降、「監視制御情報」と称する)を出力できるよう、交換部20が構成されている。
【0026】
交換部20において実施される処理は、局所光ネットワーク100からの信号をデジタル値として保持する部分を含むが、この部分処理は、RoF(Radio-over-Fiber)と類似する概念だとも言える。RoFのネーミング流儀を真似れば、この部分処理は、アクセスネットワークの信号をコヒーレント信号に乗せるものであるから、AoC(Access-over-Coherent)である、と言える。
【0027】
《光交換装置200を構成する広域送信デジタル信号処理部31》
光交換装置200を構成する広域送信デジタル信号処理部31は、符号化及びスペクトル整形等のデジタル信号処理を行う構成要素である。
より具体的に言えば、光交換装置200を構成する広域送信デジタル信号処理部31-mは、交換部20から送られる広域送信デジタル信号に基づいて、コヒーレント光通信用の送信サブキャリア信号を生成する構成要素である。広域送信デジタル信号処理部31-mを表す符号におけるm(m=1、2、…、M)は、サブキャリアを識別する「サブキャリア番号」と称されることもある。Mは、サブキャリアの総数を表す。サブキャリア総数(M)は、具体的には、4以上が想定される。
広域送信デジタル信号処理部31で生成された送信サブキャリア信号は、広域デジタルアナログ変換部32へと送られる。
【0028】
広域送信デジタル信号処理部31は、例えば、伝送路側フレーム生成、部分的なスクランブル処理、信号点配置の確率的な整形のための符号化、誤り訂正符号化、シンボル生成、スペクトル整形、等の各処理を実施してもよい。広域送信デジタル信号処理部31で処理された送信サブキャリア信号は、広域デジタルアナログ変換部32へと送られる。
【0029】
局所光ネットワーク100から送られる或る有限長のデータと別の有限長のデータとの間は、電力値がゼロ近傍のデータが大半となる。このため、本開示技術に係る光交換装置200は、広域送信デジタル信号処理部31において簡易的な圧縮処理を実施し、効率的な信号伝送を得るようにしてもよい。光交換装置200の広域送信デジタル信号処理部31が実施する圧縮処理は、例えば、国際公開第2020/174574号に記載された手法を適用したものでもよい。
【0030】
《光交換装置200を構成する広域デジタルアナログ変換部32》
光交換装置200を構成する広域デジタルアナログ変換部32は、簡単に言えば、複数のサブキャリアを多重し、一括してアナログ電気信号へ変換する構成要素である。
より詳細に言えば、光交換装置200を構成する広域デジタルアナログ変換部32は、以下の2つの処理を実施する構成要素である。第1に広域デジタルアナログ変換部32は、M個の広域送信デジタル信号処理部31(31-1、31-2、…、31-M)から送られるM個の送信サブキャリア信号を、周波数多重する。ここで、M個の送信サブキャリア信号は、それぞれデジタル信号である。サブキャリアの総数でもあるMは、前述のとおり、4以上が想定される。第2に広域デジタルアナログ変換部32は、周波数多重したデジタル信号を、アナログ信号に変換する。広域デジタルアナログ変換部32により変換されたアナログ信号は、本明細書においては、「広域送信アナログ電気信号」と称されるものとする。
一般に、広域送信アナログ電気信号は、直交偏波多重用に2系統分、直交振幅変調用に2系統分、合計4系統分が用意される(
図1における広域デジタルアナログ変換部32を起点とした4本の右矢印として図示)。
ここで、広域デジタルアナログ変換部32の動作速度は、例えば、100[Gsample/s]を超えたものである。
広域送信アナログ電気信号は、4系統分ともすべて、広域光変調部33へと送られる。
【0031】
《光交換装置200を構成する広域光変調部33》
光交換装置200を構成する広域光変調部33は、広域送信アナログ電気信号に基づいて、光搬送波を変調する構成要素である。
ここで、広域光変調部33の電気帯域は、数10[GHz]以上のものが想定されている。
広域光変調部33において処理された信号、すなわち変調後の光信号は、広域光ネットワーク300へと送られる。
【0032】
広域光ネットワーク300に含まれる送信用光スイッチ34は、各種の光信号を入力とし、多経路に変調後の光信号を分配して出力する構成要素である。送信用光スイッチ34へ入力される光信号は、具体的には、広域光変調部33から送られる変調後の光信号、及び、外部の別の光交換装置(不図示、200-他)から送られる光信号である。
送信用光スイッチ34は、広域送信デジタル信号処理部31-m(m=1、2、…、M)において生成されたサブキャリアを、固有の宛先に転送することを可能とする。実施の形態1に係る送信用光スイッチ34は、従来の光運用波長チャネルにおいて実施される経路選択と同様のことを実施する。実施の形態1に係る送信用光スイッチ34は、波長選択スイッチとして機能する経路選択の処理内容のほか、空間多重光ネットワークにおいて、例えば、ファイバのコア等に関する切換えを行うこともできる。
【0033】
広域光ネットワーク300に含まれる受信用光スイッチ35は、各種の光信号を入力とし、入力された光信号の合波を行う構成要素である。
受信用光スイッチ35において合波された光信号は、光交換装置200の広域光検出部36、及び外部の別の光交換装置(不図示、200-他)、へと送られる。
【0034】
《光交換装置200を構成する広域光検出部36》
光交換装置200を構成する広域光検出部36は、受信用光スイッチ35から送られた光信号に対し、コヒーレント検波を行う構成要素である。広域光検出部36により得られる信号は、本明細書においては、「広域受信アナログ電気信号」と称されるものとする。
一般に、広域受信アナログ電気信号は、前述の広域送信アナログ電気信号と同様に、直交偏波多重用に2系統分、直交振幅変調用に2系統分、合計4系統分が用意される(
図1における広域光検出部36を起点とした4本の左矢印として図示)。
ここで、広域光検出部36の電気帯域は、広域光変調部33と同様に、数10[GHz]以上のものが想定されている。
広域受信アナログ電気信号は、広域アナログデジタル変換部37へと送られる。
【0035】
《光交換装置200を構成する広域アナログデジタル変換部37》
光交換装置200を構成する広域アナログデジタル変換部37は、簡単に言えば、広域光検出部36から送られるアナログ電気信号をサンプリングしてサブキャリア分離を行う構成要素である。
より詳細に言えば、光交換装置200を構成する広域アナログデジタル変換部37は、以下の2つの処理を実施する構成要素である。第1に広域アナログデジタル変換部37は、広域光検出部36から送られるアナログ電気信号をサンプリングし、デジタル信号に変換する。第2に広域アナログデジタル変換部37は、サンプリングにより得られたデジタル信号を周波数領域でサブキャリアに分離する。
ここで、広域アナログデジタル変換部37の動作速度は、例えば、100[Gsample/s]を超えたものである。
広域アナログデジタル変換部37の分離処理により得られるM個の受信サブキャリア信号は、それぞれ、広域受信デジタル信号処理部38-1、広域受信デジタル信号処理部38-2、…、広域受信デジタル信号処理部38-M、へと送られる。
【0036】
《光交換装置200を構成する広域受信デジタル信号処理部38》
光交換装置200を構成する広域受信デジタル信号処理部38は、波形歪み補償及び誤り訂正等のデジタル信号処理を行う構成要素である。
より具体的に言えば、光交換装置200を構成する広域受信デジタル信号処理部38-mは、広域アナログデジタル変換部37から送られるm番目の受信サブキャリアに対し、デジタル信号処理を実施する構成要素である。広域受信デジタル信号処理部38-mが実施するデジタル信号処理は、例えば、波形等化、クロック再生、搬送波復元、シンボル復元、誤り訂正復号、信号点配置の確率整形に関する復号処理、部分的なデスクランブル処理、伝送路フレーム終端処理、が挙げられる。なお、送信側の広域送信デジタル信号処理部31-mにおいて簡易的な圧縮処理がなされる場合、広域受信デジタル信号処理部38-mは、その終端処理も実施する。
広域受信デジタル信号処理部38-mにおいてデジタル信号処理がなされた信号は、本明細書においては、「広域受信デジタル信号」と称されるものとする。広域受信デジタル信号は、交換部20へと送られる。
【0037】
実施の形態1に係る光交換装置200は、複数台を連携して利用することも可能である。或る個体(個体a)である光交換装置200-aは、別の個体(個体b)である光交換装置200-bから送信される強度変調光信号を、受信することが考えられる。具体的には、個体bである光交換装置200-bの局所親光送受信器13-n3(n3=1、2、…)から送信される強度変調光信号を、個体aである光交換装置200-aの局所親光送受信器13-nが受信することも可能である。
【0038】
図4は、本開示技術に係る光交換装置200の接続例を示す説明図である。
図4に示されるように、本開示技術に係る光交換装置200(200a)は、リングに接続されていない局所子光送受信機と、光カプラ、光スイッチ、光サーキュレータ、又はルーティング装置(以降、「光カプラ等」と称する)を介して接続されてもよい。
図4に示されるように、本開示技術に係る光交換装置200(200b)は、リングに接続されている局所子光送受信機と、光カプラ等を介して接続せれてもよい。
図4に示されるように、本開示技術に係る光交換装置200(200c)は、或る局所子光送受信機の機能の一部として、実現されてもよい。光交換装置200(200c)は、或る局所子光送受信機の機能の一部として実現され、当該局所子光送受信機が有する光カプラ等が、他の局所子光送受信機の光カプラ等と接続されてもよい。
【0039】
以上のとおり実施の形態1に係る光交換装置200は上記構成を備えるため、広域光ネットワーク300が、局所光ネットワーク100からの有限長信号を直接収容することができる。直接収容が可能となるため、本開示技術は、従来技術に係るルーティング装置で生じる処理遅延を、解消することができる。さらに本開示技術は、従来のネットワークで用いられているルータを極力少なくすることができ、ネットワーク全体としてみたときに省エネルギーにもなる。
【0040】
《付記:非特許文献1の図示例へ本開示技術をあてはめる場合》
非特許文献1の
図8-1に登場する「Fronthaul」は、本開示技術が想定する局所光ネットワーク(100)である。
同
図8-1に登場する「DCI」は、本開示技術が想定する広域光ネットワーク(300)である。ここで、DCIは、Data Center Interconnectionの頭文字でありデータセンタ間接続又はデータセンタ相互接続を意味するものである。
非特許文献1の
図8-1に登場する「DU」には、従来技術に係る局所光交換装置が含まれていると考えられる。ここで、DUは、Distribution Unitの頭文字であり、リモート局を意味するものである。
同
図8-1に登場する「Cloud edge」及び「Cloud core」には、従来技術に係る広域光交換装置が含まれていると考えられる。
非特許文献1の
図8-1に登場する「Mid/Backhaul」は、本開示技術が想定する局所光ネットワーク(100)と広域光ネットワーク(300)との中間的な存在である。したがって、非特許文献1に図示されているMid/Backhaulを局所とするか広域とするかの判断は、ケースバイケースである、と言える。
このように本開示技術に係る光交換装置200は、非特許文献1の
図8-1に例示されるネットワークの配置において、フロントホールとDCIとを接続する装置として応用できる。
【0041】
非特許文献1の
図8-2に登場する「Metro-edge Fronthaul」も、本開示技術が想定する局所光ネットワーク(100)である。
図8-2に登場する「Metro-edge Fronthaul」のうち、AAU(Active Antenna Unit)からAAUと直接つながるオレンジ色のボックス(ルーティング装置に該当)までは、狭義の局所光ネットワーク(100)である。
非特許文献1の
図8-2に登場する「New Core」から先(図示されていない)は、本開示技術が想定する広域光ネットワーク(300)である。
非特許文献1の
図8-2に登場する「New Core」には、従来技術に係る広域光交換装置が含まれていると考えられる。
非特許文献1の
図8-2は、AAUからDUに至る経路として、3台の(3段階の)ルーティング装置を経由する例を示している。非特許文献の
図8-2における赤から青へ段階的に変化している虹色で示された線は、光伝送路(12)である。
このように本開示技術に係る光交換装置200は、非特許文献1の
図8-2に例示されるネットワークアーキテクチャにおいて、AAUからDUに至る経路におけるどのルーティング装置に代えても利用することができる。
【0042】
非特許文献1の
図8-3に登場するAAUからDU+CU(Distribution Unit及びCentral Unit)までは、本開示技術が想定する局所光ネットワーク(100)である。
非特許文献1の
図8-3に登場する「New Core」から先(図示されていない)も、本開示技術が想定する広域光ネットワーク(300)である。
このように本開示技術は、非特許文献1の
図8-3に例示されるネットワークアーキテクチャに対しても応用することができる。
【0043】
非特許文献1の
図8-4から
図8-10までに共通して登場する「Metro-Edge」(雲の図形)は、本開示技術が想定する局所光ネットワーク(100)である。
非特許文献1の
図8-4から
図8-10まで、本開示技術が想定する広域光ネットワーク(300)が明示されてはいないが、本開示技術は、このような接続関係にある局所光ネットワーク(100)を含むネットワークアーキテクチャに対しても応用することができる。
【0044】
非特許文献1の
図8-11から
図8-14までに共通して登場するOLT(Optical Line Terminal)は、本開示技術が想定する局所親光交換装置の一種である、と言える。非特許文献1の図には登場しないが、親であるOLTに対して、子はONU(Optical Network Unit)と称される。なお、OLTとONUとは、日本語では区別せずに光回線終端装置と称される。
非特許文献1の
図8-11から
図8-14までに共通して登場するOTNは、前述のとおり光トランスポートネットワークを意味ものではあるが、ここでは特に、広域光交換装置を表していると考えられる。
非特許文献1の
図8-11から
図8-14までに共通して登場するOADMは、Optical Add―Drop Multiplexerすなわち光分岐挿入装置であり、広域光ネットワーク(300)における光スイッチとして機能するものである。
このように本開示技術は、非特許文献1の
図8-11から
図8-14までに例示される接続がなされたネットワークに対しても、応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示技術は、例えば、5GネットワークとOTNネットワークとを接続する技術に応用できるため、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0046】
11 局所子光送受信器、12 光伝送路、13 局所親光送受信器、14 局所親アナログデジタル変換部、15 局所親デジタルアナログ変換部、20 交換部、31 広域送信デジタル信号処理部、32 広域デジタルアナログ変換部、33 広域光変調部、34 送信用光スイッチ、35 受信用光スイッチ、36 広域光検出部、37 広域アナログデジタル変換部、38 広域受信デジタル信号処理部、100 局所光ネットワーク、200 光交換装置、300 広域光ネットワーク。