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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電源回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/06 20060101AFI20240920BHJP
   G05F 1/56 20060101ALI20240920BHJP
   H03K 5/02 20060101ALI20240920BHJP
   H03K 19/0185 20060101ALI20240920BHJP
   H03K 19/094 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03K17/06 063
G05F1/56 310L
H03K5/02 L
H03K19/0185 210
H03K19/094 210
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024542401
(86)(22)【出願日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 JP2024007629
【審査請求日】2024-07-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】李 偉浩
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-322184(JP,A)
【文献】特表2022-504556(JP,A)
【文献】特開平5-127761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0259235(US,A1)
【文献】国際公開第2020/230604(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
G05F 1/56
H03K 5/00- 5/26
H03K 19/00-19/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド電圧を共有する、低電圧のローサイドおよび高電圧のハイサイドがある電圧補償回路であって、
電圧を制御する絶縁型ゲート端子を有する半導体素子と、
前記ハイサイドの回路に接続し、前記ローサイドの電圧と前記ハイサイドの電圧との差に基づく一定の電圧に充電された昇圧コンデンサと、
を備え、
前記半導体素子に対して、前記昇圧コンデンサと前記ローサイドの回路とを直列接続し、前記ローサイドの回路の制御信号の電圧を前記昇圧コンデンサで前記ハイサイドの電圧まで昇圧させ、前記ハイサイドにある前記半導体素子の絶縁型ゲート端子に印加し、
前記半導体素子の抵抗値を制御し、前記半導体素子のソース端子側の電圧を、予め定められた電圧で電圧補償する帰還回路が接続されている、
電圧補償回路と、
電源入力に接続され、電荷を蓄電する出力コンデンサと、
電源入力に接続され、電圧を昇圧させる昇圧回路と、
前記昇圧回路によって充電される電圧補償コンデンサと、
を備え、
前記電圧補償回路は、前記電圧補償コンデンサから前記出力コンデンサへ電圧補償を行う電源回路。
【請求項2】
前記半導体素子の絶縁型ゲート端子とソース端子との間に、ダイオードを接続することで、前記昇圧コンデンサを充電する、
請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記ダイオードは、前記ローサイドの電圧に合わせたツェナー電圧のツェナーダイオードである、
請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
チャージポンプ回路を用いて前記昇圧コンデンサを充電する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
工場における製品の外観検査、製品加工時の位置出しのためのアライメント制御、高速に動作する機械装置の動作観察などのために、高速移動する製品、装置、治具などを撮像することが求められている。特に外観検査およびアライメント制御においては、ブレの無い鮮明な画像を得るために、撮影対象物をごく短時間だけ照明する照明器具、即ち、ストロボ点灯させる照明器具が用いられることがある。照明器具として近年は、長寿命、省電力などの利点から、LED(Light Emitting Diode)を光源としたLED照明器具の利用が急速に進んでいる。
【0003】
LEDを点灯する際、光量を制御するために一般的には電流量の制御を行う。例えば、指定電圧に維持する電圧制御回路とLED側に実装された電流制限抵抗の組み合わせによって、LED照明器具の仕様の合わせた電流量に制御する。電圧制御回路と電流制限抵抗を組み合わせた場合は、電圧と電流とが比例しない関係上、少量であっても電圧降下が発生すると、電流量つまり光量が大きく減少する。このため、出力電圧の維持が重要な課題となる。特に、ブレの無い鮮明な画像を得るためにはより短時間により明るい光量での照射が望まれており、出力電圧の維持がより重要である。また、LED照明器具の高輝度化要求に対して、出力電流および出力電圧が増大している。
【0004】
特許文献1には、定電圧回路の正負の電圧入力端間に電圧低下抑制用のコンデンサを設けたパルス電流出力装置を含むLEDストロボ点灯電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-220349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のLEDストロボ点灯電源装置に含まれるパルス電流出力装置では、出力電流および出力電圧の増大に対応すると、高電圧化により定電圧制御部に選択できる高電圧対応素子が限定的で高価になる。また、電流量の増大による電圧補償速度の高速化要求に対して、高電圧対応素子では逆に電圧補償速度が低下してしまう。電圧補償に限らず、ローサイド回路の信号をハイサイド回路に伝達する回路では、高電圧化により、高電圧対応素子が限定的で高価になり、かつ、伝達速度が低下してしまう。一般的に高電圧化時に伝達速度が低下する原因として、半導体スイッチング素子の端子間の電圧差に由来する電圧増幅時のミラー効果が上げられる。
【0007】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、ローサイド回路の信号をハイサイド回路に伝達する回路において、高電圧化しても低コストかつ高速伝達を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る電源回路は、電圧補償回路と、出力コンデンサと、昇圧回路と、電圧補償コンデンサとを備える。電圧補償回路は、グランド電圧を共有する、低電圧のローサイドおよび高電圧のハイサイドがある電圧補償回路である。電圧補償回路は、半導体素子と、昇圧コンデンサとを備える。半導体素子は、電圧を制御する絶縁型ゲート端子を有する。昇圧コンデンサは、ハイサイドの回路に接続し、ローサイドの電圧とハイサイドの電圧との差に基づく一定の電圧に充電される。電圧補償回路は、半導体素子に対して、昇圧コンデンサとローサイドの回路とを直列接続し、ローサイドの回路の制御信号の電圧を昇圧コンデンサでハイサイドの電圧まで昇圧させ、ハイサイドにある半導体素子の絶縁型ゲート端子に印加し、半導体素子の抵抗値を制御し、半導体素子のソース端子側の電圧を、予め定められた電圧で電圧補償する帰還回路が接続されている。出力コンデンサは、電源入力に接続され、電荷を蓄電する。昇圧回路は、電源入力に接続され、電圧を昇圧させる。電圧補償コンデンサは、昇圧回路によって充電される。電圧補償回路は、電圧補償コンデンサから出力コンデンサへ電圧補償を行う。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ローサイドの信号をハイサイドに伝達する回路において、ローサイドの回路の制御信号の電圧を昇圧コンデンサでハイサイドの電圧まで昇圧させる昇圧コンデンサを設けたことにより、ローサイド回路においては電圧の制約がなくなり、高速なデバイスを低コストの候補から選択することができ、半導体スイッチング素子による電圧増幅が不要となることで、伝達速度の低下を最小限にすることができ、高電圧化しても低コストかつ高速伝達を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るパルス電流出力装置の構成例を示す図
図2】実施の形態1に係る電流制限回路の一例を示す図
図3】実施の形態1に係る電流制限回路にインダクタを挿入した一例を示す図
図4】実施の形態1に係る電流制限回路にインダクタを挿入した他の例を示す図
図5】実施の形態1に係る電流制限回路の突入電流の抑え込み効果を比較したグラフを示す図
図6】実施の形態1に係る電流制限回路のインダクタンスを利用した電流の先回り制御を表すグラフを示す図
図7】実施の形態1に係る電流制限回路を用いた電流制限と抵抗器を用いた電流制限との動作差異を表すグラフを示す図
図8】実施の形態1に係る電圧監視がある場合とない場合の立ち上げ時の入力コンデンサ電圧とメインコンデンサ電圧との関係を表すグラフを示す図
図9】実施の形態1に係る電圧監視回路の一例を示す図
図10】実施の形態1に係る高速電圧補償回路の一例を示す図
図11】実施の形態1に係る高速電圧補償回路の昇圧コンデンサによる昇圧制御動作を表すグラフを示す図
図12】実施の形態1に係る高速電圧補償回路における昇圧コンデンサを充電する回路の一例を示す図
図13】実施の形態1に係る高速電圧補償回路における昇圧コンデンサを充電する回路にオペアンプを保護するツェナーダイオードを付加した一例を示す図
図14】実施の形態1に係る高速電圧補償回路における昇圧コンデンサを充電する回路に簡易な電圧補償回路を迂回路として付加した一例を示す図
図15】実施の形態1に係る高速電圧補償回路における昇圧コンデンサを充電する回路に簡易な電圧補償回路を迂回路として付加した場合の充電動作を表すグラフを示す図
図16】実施の形態1に係る高速電圧補償回路における昇圧コンデンサを充電する回路にチャージポンプ回路を付加した一例を示す図
図17】実施の形態2に係る複数のLEDのチャンネルを設けたパルス電流出力装置の構成の一例を示す図
図18】実施の形態2に係る複数のLEDのチャンネルを設けたパルス電流出力装置の構成の他の例を示す図
図19】実施の形態2に係るパルス電流出力装置の4チャンネルのLEDを連続的に点灯させた場合の電流および電圧の変化を表すグラフを示す図
図20】実施の形態3に係る高速電圧補償回路を用いた突入電流発生時の電圧低下を防止する電源回路の一例を示す図
図21】実施の形態3に係る高速電圧補償回路を用いた低リップルの電源回路の一例を示す図
図22】実施の形態4に係る昇圧コンデンサを用いたレベルシフト回路の一例を示す図
図23】実施の形態4に係るレベルシフト回路におけるパルス信号の高速高電圧レベルシフトを表すグラフを示す図
図24】実施の形態4に係るレベルシフト回路におけるローサイドのパルス信号とハイサイドのパルス信号との間の高速伝達を表すグラフを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本実施の形態に係る回路、高速電圧補償回路、電源回路、および、レベルシフト回路について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一または相当する部分には同じ符号を付す。
【0012】
(実施の形態1)
実施の形態1に係るパルス電流出力装置1の構成について、図1を用いて説明する。パルス電流出力装置1は、電源入力された電流を制限する電流制限回路11、電流制限回路11を経由した電流の電荷を蓄電する入力コンデンサ12、入力コンデンサ12の電圧を監視する電圧監視回路13、電圧を昇降圧させる昇降圧回路14、昇降圧回路14を経由した電荷を蓄電するメインコンデンサ15、電圧を補償する高速電圧補償回路16、高速電圧補償回路16を経由した電荷を蓄電する出力コンデンサ17、外部のLED2を点灯させるパルス出力を制御するパルス出力制御部18および出力コンデンサ17が蓄電する電荷を用いて外部のLED2を点灯させるパルス出力スイッチング回路19を備える。入力コンデンサ12は、第1コンデンサの例である。メインコンデンサ15は、第2コンデンサの例である。高速電圧補償回路16は、電圧補償回路の例である。出力コンデンサ17は第3コンデンサの例である。
【0013】
外部から電源入力された電流は、電流制限回路11によって電流制限され、電荷が入力コンデンサ12に蓄電される。入力コンデンサ12に蓄電された電荷は、昇降圧回路14を経由して、メインコンデンサ15に蓄電される。この時、電圧監視回路13が入力コンデンサ12の電圧を監視し、予め定めた電圧に満たない場合には、昇降圧回路14の昇降圧動作を停止させる。メインコンデンサ15に蓄電された電荷は、高速電圧補償回路16を経由して、出力コンデンサ17に蓄積される。パルス出力制御部18が、予め定められたデューティ比(点灯時間比)に合わせてパルス出力スイッチング回路19を制御することによって、出力コンデンサ17に蓄積された電荷がパルス出力スイッチング回路19から出力され、外部のLED2の点灯が制御される。デューティ比は、パルス出力時間の比率の例である。
【0014】
なお、外部の電源は直流電源だけでなく、交流電源でも良い。交流電源を適用する場合には、電流制限回路11の前段に、整流回路を設け、整流回路を経由した電流が電流制限回路11を通って、電荷が入力コンデンサ12に蓄電される構成となる。
【0015】
ここで、電流制限回路11について、図2図3および図4を用いて説明する。図2に示す電流制限回路11-1は、電流測定用のシャント抵抗器61により降下した微小電圧を計測し、オペアンプ62によって指定電圧になるように、Pチャンネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)素子63の抵抗値を変化させることで、一定量以下の電流量となるように制御する例である。Pチャンネル型MOSFET素子63は、半導体素子の例である。例えば、パルス電流出力装置1の仕様を、出力電圧が48V、最大出力電流が50A、デューティ比が1%とする場合、平均電力は48V×50A×0.01=24Wである。入力電圧24Vであった場合、必要電流量は24W/24V=1Aとなるが、昇圧時の変換効率および回路の各種損失を鑑みて、例えば2倍の2Aで電流制限を行えば良い。この場合、シャント抵抗器61の抵抗値を0.1Ωとすると、電位差が0.2Vとなるように、オペアンプ62の比較対象電圧64を設計する。オペアンプ62を含むPチャンネル型MOSFET素子63の抵抗値を制御する回路は、第1帰還回路の例である。
【0016】
しかしながら、例えば起動時にオペアンプ62の制御が間に合わず、突入電流が発生する場合がある。特許文献1に記載の技術のように抵抗器によって電流制限を行う場合よりは高電流の期間が極めて短く、電源仕様によっては電流制限回路11-1の構成でも許容されることはあるが、この突入電流を防止するために、図3に示すように、電流制限回路11-1の電流路にインダクタ71を挿入して電流制限回路11-2の構成にしても良いし、図4に示すように電流制限回路11-1の電流路にインダクタ81を挿入して電流制限回路11-3の構成にしても良い。
【0017】
図5は、図2図3および図4に示すそれぞれの構成における突入電流の抑え込み効果を比較したグラフである。グラフ91が図2に示す電流制限回路11-1によって制限される電流、グラフ92が図3に示す電流制限回路11-2によって制限される電流、グラフ93が図4に示す電流制限回路11-3によって制限される電流である。グラフ92に表されるように、電流制限回路11-2ではインダクタ71のインダクタンスによって、電流の急激な変化を抑え込むことで、電流制限回路11-1よりも突入電流を鈍化させることができる。グラフ93に表されるように、電流制限回路11-3ではインダクタ81のインダクタンスより、電流の変化に先行して発生する誘導起電力の電位差をオペアンプ62にフィードバックすることで、オペアンプ62の動作を先行させることができる。電流測定のための電位差は一般的に1Vにも満たないので、誘導起電力の電位差は小さくて良く、数μHのインダクタで十分な効果を有する。
【0018】
図6は、電流制限回路11-3におけるインダクタンスを利用した電流の先回り制御を表すグラフである。グラフ103が示す電流の変化に対して、グラフ101が示すインダクタンスによる電圧が先行して変化する。電圧の変化をオペアンプ62にフィードバックし、オペアンプ62は電圧変化に対して遅れてグラフ104が示す制御を開始し、電流の変化がオーバーシュートする前に、必要な制御が完了する。この結果、図5のグラフ93に示すように、突入電流を防止することができる。
【0019】
図4に戻り、電流制限回路11-3において、平衡状態時にオペアンプ62にフィードバックされる端子84a-端子84b間の電位差は、インダクタ81の誘導起電力が0Vとなったときの、シャント抵抗器61とインダクタ81の直列抵抗による電位差の総和となる。しかしながら、一般的にインダクタの直列抵抗は電流測定用のシャント抵抗器より精度誤差が大きい。このため、電流制限の精度を高める場合は、シャント抵抗器より直列抵抗の抵抗値が十分小さいインダクタを用いると良い。例えば、0.1Ωのシャント抵抗器を用いる場合は、0.02Ωの直列抵抗のインダクタを用いると良い。一般的にインダクタの直列抵抗の精度誤差は±20%である。このため、例えば0.1Ω±1%のシャント抵抗器と0.02Ω±20%のインダクタを組み合わせた場合、総抵抗としては0.12Ω±5%以内に収まる。
【0020】
ここで、電流制限回路11-3を用いて電流制限を行った場合の入力コンデンサ12の電圧の変化と、抵抗器を用いて電流制限を行った場合の入力コンデンサ12の電圧の変化とを比較する。図7は、電流制限回路11-3を用いた電流制限と抵抗器を用いた電流制限との動作差異を表すグラフである。電流のグラフ111および入力コンデンサ12の電圧のグラフ113が抵抗器を用いた電流制限に対応し、電流のグラフ112および入力コンデンサ12の電圧のグラフ114が電流制限回路11-3を用いた電流制限に対応する。抵抗器を用いて電流制限では、電流は最初に大電流が流れ、次第に電流値が落ちていく。それに合わせて入力コンデンサ12の電圧は上昇して停滞する。対して、電流制限回路11-3を用いた電流制限では、電流は矩形波形的に推移し、入力コンデンサ12の電圧は比例的に上昇する。電流制限回路11-3を用いた電流制限では、入力コンデンサ12の電圧がインダクタ81のインダクタンスによりオーバーシュートしているが、後段に昇降圧回路14があるため、入力コンデンサ12の電圧精度は重要ではなく、逆にオーバーシュートにより昇降圧回路14の動作を効率化する効果を有する。
【0021】
昇降圧回路14の昇降圧は、インダクタ、トランスなどのインダクタンスを用いた方法、および、コンデンサを用いたチャージポンプの方法が一般的であり、いずれでも良い。ここでは、インダクタを用いた昇圧またはトランスを用いた絶縁型昇降圧を例に説明する。特にトランスを用いた絶縁型昇降圧の場合、入力と出力の電圧の間で、昇圧と降圧の作用が異なるが、一般的に、スイッチングによる電磁誘導によって電力を絶縁伝送しながら出力側のコンデンサが指定電圧を昇圧また維持するようにスイッチングする動作は変わらない。
【0022】
電源または電流制限回路11により供給される電流量に対して、昇降圧回路で消費する電流量が一定量を超過すると、入力コンデンサ12の電圧が低下し、昇降圧効率を大きく下げる。このため、電圧監視回路13を設け、入力コンデンサ12の電圧を監視し、一定の電圧以下となった場合には、昇降圧回路の動作を停止し、一定の電圧より大きくなった場合に、昇降圧回路の動作を開始する。
【0023】
図8は、電圧監視がある場合とない場合の立ち上げ時の入力コンデンサ12の電圧とメインコンデンサ15の電圧との関係を表すグラフである。電圧監視がない場合、昇降圧回路で消費する電流量が一定量を超過すると、グラフ121が示す入力コンデンサ12の電圧が大きく下がり、グラフ122が示すメインコンデンサ15の電圧が一向に上がらない状況となる。また、電源電圧と入力コンデンサ12との電圧の電圧差が大きくなり、電圧差×電流量で算出される膨大な損失が電流制限回路11に発生する。これに対し、電圧を低下しないように、グラフ123が示す入力コンデンサ12の電圧を監視し、一定の電圧以下となった場合に昇降圧回路14の動作を停止すると、グラフ124が示すメインコンデンサ15の電圧は適切な電圧に迅速に昇圧される。また、電源電圧と入力コンデンサ12との電圧の乖離を防止することで、電流制限回路11に発生する損失を抑えることができる。
【0024】
図9は、電圧監視回路13の一例である。コンパレータ132の入力端子133および入力端子134にそれぞれ入力される電源電圧および入力コンデンサ12の電圧を、分圧に基づく比率で比較し、閾値を下回った場合に、昇降圧回路14の動作を停止する。例えば入力コンデンサ12の電圧が電源電圧の95%未満の場合に、コンパレータ132の出力端子135より昇降圧回路14の昇降圧のためのスイッチング動作を無効化する信号を出力することで、入力コンデンサ12の電荷消費を停止させる。
【0025】
続いて、高速電圧補償回路16について、図10図14を用いて説明する。図10に示す高速電圧補償回路16-1は、昇降圧回路14によって充電されたメインコンデンサ15がNチャンネルMOSFET素子142のドレイン端子に接続され、ソース端子にLED出力用の出力コンデンサ17が接続されている。本実施の形態では、メインコンデンサ15が50Vから55Vまでの間で変化するものとし、出力コンデンサ17を48Vに固定することを目的とする。このため、オペアンプ144が出力コンデンサ17の電圧と基準電圧とを比較し、出力コンデンサ17が48Vとなるように、NチャンネルMOSFET素子142の抵抗値を制御する。NチャンネルMOSFET素子142のゲート端子とオペアンプ144との間には、昇圧を目的とした昇圧コンデンサ145が挿入されている。つまり、NチャンネルMOSFET素子142に対して、昇圧コンデンサ145とオペアンプ144とが直列接続されている。オペアンプ144を含むNチャンネルMOSFET素子142の抵抗値を制御する回路は、第2帰還回路の例である。オペアンプ144は、低電圧のローサイドにあり、出力コンデンサ17は、高電圧のハイサイドにある。ローサイドとハイサイドはグランド電圧を共有する。
【0026】
図11は、昇圧コンデンサ145による昇圧制御動作を表すグラフである。グラフ151は昇圧コンデンサ145の充電電圧、グラフ152はNチャンネルMOSFET素子142のソース端子の電圧、グラフ153はNチャンネルMOSFET素子142のゲート端子に印可される電圧、グラフ154はオペアンプ144の出力電圧である。図11に示すように、ゲート端子の静電容量に対して十分に大きい静電容量の昇圧コンデンサ145は、出力コンデンサ17の指定電圧である48Vに基づく一定の電圧に充電されている。昇圧コンデンサ145によって、オペアンプ144の出力電圧が遅延なくNチャンネルMOSFET素子142のソース端子の電圧より高い電圧に昇圧され、NチャンネルMOSFET素子142のゲート端子に印可される。つまり、昇圧コンデンサ145が充電される一定の電圧はオペアンプ144の出力電圧を遅延なくNチャンネルMOSFET素子142のソース端子の電圧より高い電圧に昇圧できる電圧である。
【0027】
一般的に、半導体素子は電圧範囲が低い方が高速動作でき、かつ安価である。また、本目的においてはMOSFET素子の抵抗値を限られた範囲で使用するため、MOSFET素子のゲート端子を印加する電圧は、ソース端子の電圧に対して5Vの電位差であれば十分である。つまり、昇圧コンデンサ145を備えることで、オペアンプ144の電源電圧も5Vの電圧で十分となる。このため、オペアンプ144の選択肢が豊富になり、速度優先で選びやすく、昇圧コンデンサ145を備えることは、高速な電圧補償回路を実現する上で有効な構成である。加えて、MOSFET素子のソース端子の電圧より高電圧に昇圧することで、高速で低コストのNチャンネルが使用できることも有利な点である。
【0028】
図12に示す高速電圧補償回路16-2は、高速電圧補償回路16-1の構成に加え、昇圧コンデンサ145を充電する回路を含む一例である。NチャンネルMOSFET素子142のゲート端子と昇圧コンデンサ145の接続部分と、NチャンネルMOSFET素子142のソース端子と出力コンデンサ17の接続部分との間にダイオード146を接続することで、NチャンネルMOSFET素子142のソース端子より電位が低い場合に昇圧コンデンサ145が充電される。MOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの絶縁型ゲート端子を有するスイッチング素子の場合、ゲート端子と他の端子との間では電流が流れない。加えて、NチャンネルMOSFET素子のゲート端子がNチャンネルMOSFET素子のソース端子より高電位の場合には、ダイオードの逆流防止効果により昇圧コンデンサ145の充電電圧が維持される。
【0029】
この時、ダイオード146にツェナーダイオードを用いることで、NチャンネルMOSFET素子142のゲート端子への過電圧の印加を防止することができる。例えば、ローサイドのオペアンプ144の動作電源が5Vであれば、ローサイドの電圧に合わせてツェナー電圧5.6V前後のツェナーダイオードを用いると良い。なお、過電圧の印加は、サージの他に電源切断が原因で出力コンデンサ17が放電し48Vが維持できない場合にも発生しうる。この場合、出力コンデンサ17の電圧低下に合わせて、昇圧コンデンサ145を放電することは合理的な動作である。
【0030】
なお、昇圧コンデンサ145を充電する際、オペアンプ144の出力端子の電圧を引き上げる場合があり、オペアンプ144の動作許容電圧を超過する場合がある。このため、図13に示す高速電圧補償回路16-3では、高速電圧補償回路16-2の構成に加え、オペアンプ144の出力端子にツェナーダイオード147を接続してオペアンプ144を保護している。例えば、オペアンプ144の動作電源が5Vであれば、5Vより若干大きい5.6V前後のツェナーダイオードを用いると良い。なお、オペアンプ144の動作電源に対して、ダイオードでクランプする構成でも良いが、5V電源を吊り上げる場合もあり、ツェナーダイオードを用いる方が簡便である。
【0031】
図13に示した構成の課題として、昇圧コンデンサ145の充電には、出力コンデンサ17が充電されている必要があるのに対し、出力コンデンサ17の充電には昇圧コンデンサ145を事前に充電し、NチャンネルMOSFET素子142のゲート端子をソース端子より高電圧に印加できるようにする必要があり、前提が相反する点が挙げられる。このため、図14に示す高速電圧補償回路16-4では、高速電圧補償回路16-3の構成に加え、PNP型バイポーラトランジスタ182およびNPN型バイポーラトランジスタ183を同一のオペアンプ144の出力端子に接続することで構成した簡易な電圧補償回路181を迂回路として付加している。簡易な電圧補償回路181は高速な電圧補償を行う必要はなく、昇降圧回路14においてメインコンデンサ15が充電される速度以上の補償速度があれば良い。
【0032】
例えば、パルス電流出力装置1の仕様が、出力電圧が48V、最大出力電流が50A、デューティ比が1%である場合、平均電流量は0.5Aである。このため、電圧補償に要する電流量は2倍の1Aあれば十分である。よって、PNP型バイポーラトランジスタ182において1Aの電流を流せる部品の選定および抵抗値の決定を行えば良い。
【0033】
図15は、図14に示す高速電圧補償回路16-4の充電動作を表すグラフである。グラフ191はオペアンプ144の出力端子電圧、グラフ192は昇圧コンデンサ145の充電電圧、グラフ193はNチャンネルMOSFET素子142のゲート端子電圧、グラフ194は出力コンデンサ17の電圧、グラフ195はメインコンデンサ15の電圧である。出力コンデンサ17の電圧が指定電圧48Vに未達の状態では、オペアンプ144の出力端子電圧がオペアンプ144の電源電圧5Vとして出力され、出力コンデンサ17は簡易な電圧補償回路181を経由して充電される。グラフ192が示すように昇圧コンデンサ145は出力コンデンサ17の電圧よりツェナーダイオードのツェナー電圧を引いた電圧で充電される。グラフ194が示す出力コンデンサ17の電圧が指定電圧48Vに達すると、簡易な電圧補償回路181が電圧補償動作を停止するため、グラフ191が示すオペアンプ144の出力端子電圧がグランド電圧に引き下がり、グラフ192が示す昇圧コンデンサ145の電圧はグラフ194が示す出力コンデンサ17の電圧に近い電圧になり、昇圧コンデンサ145の充電が完了する。
【0034】
パルス電流出力装置1においては、メインコンデンサ15に蓄電可能なエネルギー量に基づく連続出力時間の制約があり、かつデューティ比の仕様により、短い間隔で十分長い時間でパルス電流出力を動作していない状態が存在する。この状態においては、昇圧コンデンサが充電動作となるため問題にならないが、仮に出力状態が継続すると充電できずに、昇圧コンデンサ145の自然放電による電圧低下が問題となる。この場合は、絶縁電源により充電する方法の他に、より簡易に、図16に示すように、高速電圧補償回路16-3の構成に加えて、スイッチングの繰り返しを活用したチャージポンプ回路201を設けることで、電圧補償回路16-5を構成してもよい。これは自然放電対策であり、昇圧コンデンサ145の急激な電圧変化は電圧補償動作に影響し望ましくないため、小電流で充電できるように、例えば100KΩ以上の高い抵抗値の抵抗器202および抵抗器203をチャージポンプ回路201に用いると良い。
【0035】
実施の形態1に係るパルス電流出力装置1によれば、半導体素子の抵抗値を動的制御する電流制限回路を備えることにより、制限電流内でコンデンサを高速に充電することができ、パルス電流出力装置の必要電源容量を低減し、パルス電流出力装置を用いる装置のサイズおよびコストを削減することができる。
【0036】
(実施の形態2)
実施の形態2では、複数のLEDを接続し、異なるタイミング点灯させる。実施の形態2に係るパルス電流出力装置1-1およびパルス電流出力装置1-2の構成についてそれぞれ、図17および図18を用いて説明する。図17に示すパルス電流出力装置1-1は、出力コンデンサ17より前段の回路とパルス出力制御部18を共有し、パルス出力スイッチング回路19-1および外部のLED2-1とパルス出力スイッチング回路19-2および外部のLED2-2の2つのチャンネルを設けた構成の例である。図18に示すパルス電流出力装置1-2は、メインコンデンサ15より前段の回路とパルス出力制御部18を共有し、高速電圧補償回路16-1、出力コンデンサ17-1、パルス出力スイッチング回路19-1および外部のLED2-1と、高速電圧補償回路16-2、出力コンデンサ17-2、パルス出力スイッチング回路19-2および外部のLED2-2の2つのチャンネルを設けた構成の例である。図17および図18では、便宜上、LEDのチャンネル数は2チャンネルで記載しているが、3チャンネル以上であってもよい。
【0037】
パルス出力の開始または終了による急な変化が、他のチャンネルに影響する場合があるため、図18の構成が望ましいが、許容する輝度バラつき、点灯パターンの制約などの製品仕様によっては図17の構成でも十分な場合がある。
【0038】
図19は、4チャンネルのLEDを連続的に点灯させた場合の、メインコンデンサ15の電圧変化を表すグラフである。グラフ231~グラフ234は各チャンネルのLEDに流れる電流であり、グラフ235は出力コンデンサ17の電圧、グラフ236はメインコンデンサ15の電圧である。
【0039】
一般的に、デューティ比はLEDの保護を目的としたチャンネルごとの点灯時間比の設定である。必要となるメインコンデンサ15の蓄電容量は、チャンネル数×各チャンネルの最大出力電力×各チャンネルの最大点灯時間である。しかしながら、強く短く点灯することを目的とする製品の場合、仕様上の最大点灯時間を使用することは稀である。このため、最大点灯時間の連続点灯を想定して製品設計を行うと、装置サイズおよび部材、コストが無駄になる可能性が高い。これに対して、例えばメインコンデンサ15の最低値を更新するごとにメインコンデンサ15の残量を示すデータを記録してユーザに通知し、稀に不足する場合は使用方法を変更する対処をすることで、メインコンデンサ15の蓄電容量をチャンネル数×各チャンネルの最大出力電力×各チャンネルの最大点灯時間にする必要がなくなり、前述の装置サイズおよび部材、コストが無駄になる問題を解決することができる。
【0040】
使用方法を変更する対処とは、具体的には、充電時間を設けるために、点灯時間を短くすること、点灯間隔を空けることなどが考えられる。これらの対処が困難である場合は、パルス電流出力装置を複数台用意すれば良い。メインコンデンサ15の残量を示すデータは、電圧情報の例である。
【0041】
パルス出力制御部212およびパルス出力制御部222は、高速かつ柔軟な制御を実現するため、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)などのプログラム可能なデバイスが望ましい。これらのデバイスは、内部のレジスタにデータを記録し、外部通信を行うことが比較的容易なため、A-D変換器を経由して、パルス出力制御部212およびパルス出力制御部222にメインコンデンサ15の残量を示すデータを記録し、ユーザに通知する構成にすると良い。この場合、パルス出力制御部212およびパルス出力制御部222が電圧情報記録部の例である。なお、電圧情報記録部をパルス出力制御部212およびパルス出力制御部222とは別に備えてもよい。
【0042】
実施の形態2に係るパルス電流出力装置1-1およびパルス電流出力装置1-2によれば、複数のLEDを接続し、異なるタイミング点灯させる場合にも、半導体素子の抵抗値を動的制御する電流制限回路を備えることにより、制限電流内でコンデンサを高速に充電することができ、パルス電流出力装置の必要電源容量を低減し、パルス電流出力装置を用いる装置のサイズおよびコストを削減することができる。
【0043】
(実施の形態3)
高速な電圧補償回路は、パルス電流出力装置以外にも有用である。実施の形態3では、高速電圧補償回路を電源に活用する。実施の形態3に係る高速電圧補償回路を用いた電源回路の構成についてそれぞれ、図20および図21を用いて説明する。
【0044】
図20に示す電源回路は、高速電圧補償回路を用いた突入電流発生時の電圧低下を防止する電源回路である。出力コンデンサ245は電源入力より適正な電圧に充電される。並行して電源入力より昇圧回路242を経由して、電圧補償コンデンサ243が出力コンデンサ245より高い電圧に充電される。
【0045】
外部回路246の消費電流が、電源入力の供給電流で賄える場合には、出力コンデンサ245の電圧は維持されるが、突入電流のように電源入力の供給電流で賄えない場合は、出力コンデンサ245の電圧が降下する。出力コンデンサ245の電圧が降下すると、高速電圧補償回路244が動作し、電圧補償コンデンサ243から出力コンデンサ245へ電荷を移動させ、出力コンデンサ245の指定電圧を維持するように電圧補償する。この時、電圧補償のトリガを例えば0.5V下げた構成にすると良い。これにより数μsから数msの突入電流による電圧降下を防止しつつ、電流変動による電圧平滑化のため出力コンデンサ245の容量を減らすことができ、電源装置のサイズを小さくすることができる。
【0046】
図21に示す電源回路は、高速電圧補償回路を用いた低リップルの電源回路である。電源入力に対して、ローパスフィルタ252において電圧補償速度以上の変動を取り除いた上で、電圧補償コンデンサ253に蓄電する。外部回路256により電流量が変化したときに、出力コンデンサ255の電圧維持するように、高速電圧補償回路254が高速に電圧補償することで出力時においてもリップルがほとんどない電源を低コストに構成することができる。なお、この構成の場合、図16に示した自然放電対策が必要である。
【0047】
実施の形態3に係る電源回路によれば、高速電圧補償回路を用いることで突入電流発生時の電圧低下を防止する電源装置のサイズを小さくすることができる。また、高速電圧補償回路を用いることで低リップルの電源装置のコストを低減することができる。
【0048】
(実施の形態4)
入力電圧を遅延なく昇圧する昇圧コンデンサは、パルス電流出力装置以外にも有用である。実施の形態4では、昇圧コンデンサをパルス信号のレベルシフト回路に活用する。実施の形態4に係る昇圧コンデンサを用いたレベルシフト回路の構成についてそれぞれ、図22を用いて説明する。
【0049】
図22に示すレベルシフト回路は、3.3Vのパルス信号を48Vのパルス信号に高速にレベルシフトする。ローサイドのパルス信号261を反転回路262において反転し、ローサイドの電圧とハイサイドの電圧との差に基づく一定の電圧に充電された昇圧コンデンサ263において昇圧して、遅延なくハイサイドのPチャンネル型MOSFET266のゲート端子に電圧を印加することで、高速にレベルシフトできる。Pチャンネル型MOSFET266は、絶縁型ゲート端子を有する半導体素子の例である。つまり、昇圧コンデンサ263が充電される一定の電圧は、ローサイドのパルス信号261を遅延なくハイサイドの電圧に昇圧できる電圧である。ローサイドとハイサイドはグランド電圧を共有する。
【0050】
一般的に高電圧化時に伝達速度が低下する原因として、半導体スイッチング素子の端子間の電圧差に由来する電圧増幅時のミラー効果が上げられるが、昇圧コンデンサ263を用いることで、半導体スイッチング素子による電圧増幅が不要となり、伝達速度の低下を最小限にすることが可能となる。
【0051】
昇圧コンデンサ263の充電方法としては、図22に示すようにツェナーダイオード264およびツェナーダイオード265を設けることで、ローサイドのパルス信号261がHI、つまりローサイド電圧が反転回路262で反転して0Vの時に、充電が実行される。昇圧コンデンサ263の充電電圧は、ツェナーダイオード264のツェナー電圧で調整を行う。
【0052】
図23は、昇圧コンデンサを用いたパルス信号の高速高電圧レベルシフトを表すグラフである。グラフ271は、ローサイドのパルス信号、グラフ272は、ローサイドの電源電圧、グラフ273は、ローサイドのパルス信号とローサイドの電源電圧を反転回路262で反転したパルス信号電圧、グラフ274は、昇圧されたパルス信号電圧、グラフ275は、ハイサイドの電源電圧である。グラフ273が示すローサイドのパルス信号とローサイドの電源電圧を反転回路262で反転したパルス電圧が、グラフ274に示すように遅延なくハイサイド電圧に昇圧している。グラフ275が示すハイサイドの電源電圧とグラフ274が示す昇圧されたパルス信号電圧との差異によりPチャンネル型MOSFET266のゲート端子に負電圧が印加され、Pチャンネル型MOSFET266のドレイン・ソース間が導通する。
【0053】
その結果、図24に示すように、グラフ281が示すローサイドのパルス信号と、グラフ282が示すハイサイドのパルス信号との間で、立ち上がり、立ち下がりともに、高速に伝達することができる。
【0054】
実施の形態4に係るレベルシフト回路によれば、ローサイドの信号をハイサイドに伝達する回路において、ローサイドの回路の制御信号の電圧を昇圧コンデンサでハイサイドの電圧まで昇圧させる昇圧コンデンサを設けたことにより、ローサイド回路においては電圧の制約がなくなり、高速なデバイスを低コストの候補から選択することができ、半導体スイッチング素子による電圧増幅が不要となることで、伝達速度の低下を最小限にすることができ、高電圧化しても低コストかつ高速伝達を実現することができる。
【0055】
上記の実施の形態1では、パルス電流出力装置1は、電流制限回路11、入力コンデンサ12、電圧監視回路13、昇降圧回路14、メインコンデンサ15、高速電圧補償回路16、出力コンデンサ17、パルス出力制御部18およびパルス出力スイッチング回路19を備えたが、これに限らない。パルス電流出力装置1は、少なくとも、電源入力された電流を制限する電流制限回路11と、電流制限回路11を経由した電流の電荷を蓄電するメインコンデンサ15と、外部のLED2を点灯させるパルス出力を制御するパルス出力制御部18と、メインコンデンサ15が蓄電する電荷を用いて外部のLED2を点灯させるパルス出力スイッチング回路19とを備えればよい。この構成の場合、メインコンデンサ15は、第1コンデンサの例である。また、パルス電流出力装置1は、電源入力された電流を制限する電流制限回路11、電流制限回路11を経由した電流の電荷を蓄電する入力コンデンサ12、入力コンデンサ12の電圧を監視する電圧監視回路13、電圧を昇降圧させる昇降圧回路14、昇降圧回路14を経由した電荷を蓄電するメインコンデンサ15、外部のLED2を点灯させるパルス出力を制御するパルス出力制御部18およびメインコンデンサ15が蓄電する電荷を用いて外部のLED2を点灯させるパルス出力スイッチング回路19を備える構成にしてもよい。この構成の場合、メインコンデンサ15は、第2コンデンサの例である。また、あるいは、パルス電流出力装置1は、電源入力された電流を制限する電流制限回路11、電流制限回路11を経由した電流の電荷を蓄電するメインコンデンサ15、電圧を補償する高速電圧補償回路16、高速電圧補償回路16を経由した電荷を蓄電する出力コンデンサ17、外部のLED2を点灯させるパルス出力を制御するパルス出力制御部18および出力コンデンサ17が蓄電する電荷を用いて外部のLED2を点灯させるパルス出力スイッチング回路19を備える構成にしてもよい。この構成の場合、メインコンデンサ15は、第1コンデンサの例である。また、それぞれの構成に実施の形態2を組み合わせて、LEDのチャンネル数を複数チャンネル設けてもよい。
【0056】
なお、本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。即ち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0057】
1,1-1,1-2 パルス電流出力装置、2,2-1,2-2 LED、11,11-1,11-2,11-3 電流制限回路、12 入力コンデンサ、13 電圧監視回路、14 昇降圧回路、15 メインコンデンサ、16,16-1,16-2,16-3,16-4,16-5,244,254 高速電圧補償回路、17,17-1,17-2,245,255 出力コンデンサ、18,212,222 パルス出力制御部、19,19-1,19-2 パルス出力スイッチング回路、61 シャント抵抗器、62 オペアンプ、63 Pチャンネル型MOSFET素子、64 比較対象電圧、71,81 インダクタ、84a,84b 端子、91~93,101,103,104,111~114,121~124,151~154,191~195,231~236,271~275,281,282 グラフ、132 コンパレータ、133,134 入力端子、135 出力端子、142 NチャンネルMOSFET素子、144 オペアンプ、145 昇圧コンデンサ、146 ダイオード、147 ツェナーダイオード、181 電圧補償回路、182 PNP型バイポーラトランジスタ、183 NPN型バイポーラトランジスタ、201 チャージポンプ回路、202,203 抵抗器、242 昇圧回路、243,253 電圧補償コンデンサ、246,256 外部回路、252 ローパスフィルタ、261 パルス信号、262 反転回路、263 昇圧コンデンサ、264,265 ツェナーダイオード、266 Pチャンネル型MOSFET。
【要約】
グランド電圧を共有する、低電圧のローサイドおよび高電圧のハイサイドがある回路であって、電圧を制御する絶縁型ゲート端子を有する半導体素子(142)と、ハイサイドの回路に接続し、ローサイドの電圧とハイサイドの電圧との差に基づく一定の電圧に充電された昇圧コンデンサ(145)と、を備え、半導体素子(142)に対して、昇圧コンデンサとローサイドの回路(144)とを直列接続し、ローサイドの回路(144)の制御信号の電圧を昇圧コンデンサ(145)でハイサイドの電圧まで昇圧させ、ハイサイドにある半導体素子(142)の絶縁型ゲート端子に印加する回路。
図1
図2
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