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  • 特許-通気性男性下着 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】通気性男性下着
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/02 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
A41B9/02 M
A41B9/02 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019166558
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021042507
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】302032668
【氏名又は名称】山本 哲夫
(73)【特許権者】
【識別番号】519332601
【氏名又は名称】入交 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100107962
【弁理士】
【氏名又は名称】入交 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】入交 孝雄
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-129502(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0357325(KR,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0162052(US,A1)
【文献】特開平9-3701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランクスなどの男性用下着の前身頃裏側において、
通気性の布地からなる一対の長方形の通気布片の一方の短辺を該前身頃上部左右両側にそれぞれ水平に固着し、該通気布片の両側外方側縁の下端を前身頃下部中央部に固着すると共にそれに接する短辺を続けて前身頃下部中央部に沿って上方に向けて固着し、
通気布片の長辺長さl に対して前身頃の上部固着部の高さから該通気布片の両側外方側縁の下端を固着した前身頃下部中央部に至る長さLとの間の関係をL>l とすることにより、着用時にこれら一対の長方形の通気布片の両側外方側縁が吊り上げられて大腿部に接すると共に、通気布片下方部を上部固着部に対して下方の上記固着した領域に沿った方向に捻じれさせて大腿部に接する面を形成せしめることにより、通気性を確保したことを特徴とする通気性男性下着。
【請求項2】
トランクスなどの男性用下着の前身頃裏側において、
通気性の布地からなる長方形の通気布片の両短辺を該前身頃上部左右両側にそれぞれ水平に固着し、該長方形の通気布片の長辺の中央部の左右外側の側縁部を前身頃下部中央部に固着すると共に該長辺の内側の側縁部を前身頃下部中央部に沿って上方に向けて固着し、
(通気布片の長辺長さ)の1/2 に対して(前身頃の上部固着部から下部固着部に至る長さ)との間の関係を(前身頃の上部固着部から下部固着部に至る長さ)>1/2(通気布片の長辺長さ)とすることにより、
着用時に長方形の通気布片の両側外方側縁が吊り上げられて
大腿部に接すると共に、通気布片下方部を上部固着部に対して下方の上記固着した領域に沿った方向に捻じれさせて大腿部に接する面を形成せしめることにより、通気性を確保したことを特徴とする通気性男性下着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランクス、ブリーフ等の男性用下着の通気性を向上するもので、着用状態で局部と大腿部との間の密着を防止し、通気性を確保して快適性を向上する下着に関する。
【背景技術】
【0002】
男性用下着においては着用時に局部と大腿部とが密に接触し、汗をかいたり、高温多湿の気候の下では蒸れたり、湿った状態となって不快なものであった。特にブリーフ等のように大腿部で閉じた形態の下着では空気の流通が妨げられ、快適さを損なうものであった。トランクスなどのような大腿部は開放された形態のものであっても、局部と大腿部との間の接触は防止できないため、このような不快な状態は解消されなかった。
【0003】
このような状態に対して、日本古来のふんどしは、綿布からなると共に局部を包み込む形態で支持するため、局部と大腿部との間に綿布に生地が介挿された状態となるため、局部と大腿部との間に空間も形成され、高温多湿な我が国の気候条件に適したものといえる。
しかしながら、本格的な六尺ふんどしとなると、現代の衣服事情に合致せず、また、いわゆる越中ふんどしも、前後に亘るその構造と共にその形態が現代の嗜好に合わないため廃れた経緯がある。
【0004】
そこでこのような事情に鑑み、種々の試みがなされている。
例えば、特許文献1には、男性用パンツにおいて局部の蒸れを防止するため、身頃の前に位置して局部を覆うと共に側縁で付け根部に密着して局部を覆う左右一対の前見頃によって局部を包み込む構造が提案されている。
しかしながら、これら左右一対の前身頃はパンツの構造上このように局部に密着した位置関係に維持されることは困難であり、局部は構造上自由運動することから、目論見通りの作用効果は達成しがたい。
【0005】
また、特許文献2では、股間の蒸れを防止するため、局部と股間に布片を介そうするためこれら局部に接する布片の側縁部に伸縮性のあるゴムを縫い込んで密着性を確保することが試みられているが、このような張力を及ぼす下着により常時感じる圧迫感は快いとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-249802号公報
【文献】実用新案登録第3176879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現代において広く普及しているトランクスやブリーフなどの男性用下着において、男性局部と大腿部との間に介挿されて両者の密着を阻止し、通気性を確保して着用時の圧迫感なく、快適性を確保する。
また、その構造を簡単なものとし、着用に際して格別の考慮、操作を要しないと共に日用品として廉価に提供可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
トランクスやブリーフなどの男性用下着において、
通気性の布地からなる一対の長方形の通気布片の一方の短辺を下着前身頃裏側の上方部左右にそれぞれ固着すると共に、
該通気布片の他方の短辺の該下着中心線に対して外側に対応する側の端部を下着下方部に中心に寄せて固着すると共に該短辺縁を中心線に沿って上方に向けて固着し、
これら通気布片の長辺の長さ l に対して下着の上方部布片取付部から下方部取付部に至る長さLの関係を L>l とすることにより、着用時には該一対の通気布片の両側長辺側が張力を受ける共に相対する側では弛みを形成し、
下着の立体形状により、通気布片下端の短辺が下着下方の固着位置から上方の固着位置の間の領域が前後方向に向けられて、その左右で大腿部に相対する面を形成することにより、その間の布片により通気性を確保するものであり、
また、上記一対の通気布片を連続した布片として、その両短辺を下着上方左右に固着し、該通気布片の中央部外側端部を下着下方中央に固着すると共に他辺に向け、下着上方に向けて固着することにより、同様の機能を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
下着の上部左右両側に固着された通気布片は、着用時には身体前側左右方向に沿って配置されるが、
下着下方部では下着が中心線に沿って立体的に前後方向に向く部位が形成されるため、下方の短辺をこれらの部位に固着された通気布片下方部は同様に前後方向を向いて捻じれた状態となり、大腿部に沿った部位が形成される。
一方、上記したように通気布片の長さ l に対して、その固着部間の長さ Lが
L>l の関係にあることから、
通気布片左右側では張力が働いて両側縁部が大腿部付根に沿って配置され、中心線に沿って相対する側ではその弛みによって下着に沿って前後方向に向けられて該両側辺との間に大腿部に沿う領域が形成され、大腿部と局部間に通気布片が安定して介挿された状態を維持することができる。
また、このとき下着の前見頃においても同様に弛みを生じて局部収容空間が形成されることにより、通気性を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本願発明を適用する下着としてトランクスを示し、(A)は前面(前見頃正面)、(B)はその裏側(前身頃裏面)を示す。
図2図2(A)は、本願発明の実施例1の通気布片、(B)は該通気布片を図1(B)のトランクス前身頃裏面に取り付けた状態を示し、(C)は(B)の通気布片を取り付けたトランクスを着用した状態での通気布片、トランクス前身頃の形態を側面から見た形態を示す。
図3図3は、本願発明の通気布片を設けたトランクスを立体形状として上方から見た斜視図を示す。
図4図4は、本願発明の通気布片の他の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
図1は、トランクスを例として、(A)開放部を備えた前見頃正面側とその裏面側(B)を示す。ほぼ中央に所用を果たすための開放部10があり、図は本願発明の通気布片を取り付けていないため、平面形として高さが示されている。
つまり、図中の通気布片取付部間の想定される高さは図中の上部取付部位置から最下部までの長さLである。
【0012】
図2は、本願発明の通気布片と該通気布片をトランクス前見頃裏面に適用した状態を示す。
図2(A)は本願発明の通気布片であって、一対の通気性布地、例えば伸縮性を備えたガーゼなどからなる長方形の布片である。
四隅のa、b、c、d及びa’、b’、c’、d’の上辺(短辺)acおよびa’c’をトランクスの開放部10の左右上方Dに縫付けるなどして固着し、下辺(短辺)bd、b’d’の左右端b、b’をトランクスの開放部下方の中央部近傍gに同じく縫付けるなどして固着する。
この中央部gの位置は後述するように左右両側の長辺ab、a’b’間に張力を作用させるためトランクス下辺中央よりも後方とすることが好ましい。
【0013】
さらに、短辺bd、b’d’をトランクス下端gから中央線に沿ってその上方g’に縫い付けるなどして固着する。短辺の固着する箇所g’は、短辺bd、b’d’の固定端gから端部d、d’までの間で適宜設定する。
このようにすることによって、短辺bd、b’d’はトランクス下端中央部から前身頃裏面に沿って上方に向けて固着された状態となる。
【0014】
前記したように、通気布片の左右長辺の長さab、a’b’の長さlに対して、これに対応するトランクスの上方の布片固着部Dから開放部下方のトランクス下端gまでの長さ(図2のL)との間を、L>lの関係とすることにより、また、通気布片両側の長辺ab、a’b’側がトランクス下端中央部に固着されることにより短く作用し、中央側の開放部に接する内側両長辺cd、c’d’側では短辺bd、b’d’がトランクス下端gから上方g’に向けて固着されているため、それだけ長さが余ることになる。
【0015】
すなわち、長辺a、b及びa’、b’側では引き上げられて長辺ab、a’b’間に張力が働く一方、長辺cd、c’d’側ではゆるんだ状態となる[図2(B)参照]。
また、トランクスの立体形状は、通気布片下方の短辺bd、b’d’の一端b、b’を固着した中央下端部gからその上方の固着部g’に向けてほぼ水平方向をなすから、このトランクスを実際に着用すると、平面形で表した図1図2(B)の状態から、立体的に変形してトランクス下方部位では通気布片は前後方向の変位が生じる。
この状態を図2(C)及びトランクスを上方から立体形状として見た図3の斜視図に示す。
図2(C)において、線分Aは身体両側に沿って位置する通気布片の長辺ab、a’b’であって、長辺両側下端b、b’がトランクスの下端部中央gが後方に変位することに伴い、長辺ab、a’b’に張力が働いて身体の両側大腿部付け根に沿って密着して配置される。
【0016】
これに対して、短辺bd、b’d’はトランクス下方gに固着されたb、b’からトランクス中央に沿って上方g’に向けて縫い付けられて固着されているところ、トランクスを着用する立体形状では固着範囲g~g’が図示するように前後方向に変位するため、それに伴って短辺bd、b’d’は、上方に固着された短辺ac、a’c’の向きから捻じれて通気布片下方の部位にトランクスの前後方向に向く領域が形成される。
また、それより上方では長辺cd、c’d‘側は長さがあることからゆるく撓んでトランクス開放部10に相対して開放自在の状態に維持される。
このとき、トランクスの前見頃も図2(C)の線分Bのようにゆるく、弛んだ状態に保たれるため、局部は緩んだ長辺cd、c’d’側通気布片Cと共に身体との間で十分な収容空間が保持されるから、所用の便に支障はない。
【0017】
このようにして、本願発明の通気布片はトランクス前身頃上方の固着部では、短辺ac、a’c’は身体に沿って横方向であるが、これに対して下端の短辺bd、b’d’はトランクス下方中央部gから上方のg’の領域が着用時には前後方向に変位することに伴って、上方の取付部である辺ac、a’c’に対して垂直方向に捻じれ、このため通気布片下方部位は大腿部付け根に前後方向に沿った状態となる。
このとき、短辺bdとb’d’ 間は前後方向に向けてねじられて、長辺abとcd間及びa’b’とc’d’間の通気布片には、大腿部に沿って接する十分な幅の領域が形成される。
【0018】
したがって、布片下方部では大腿部に沿って布片の両側辺の間の布地が接した状態となり、通気性が達せられると共に、通気布片はトランクス開放部に相対する領域では辺cd、c’d’側たるみにより所用の便を達成する。
【0019】
以上のとおり、本願発明の通気布片においては、L>lの関係が保たれ、この差が大きいことが必要で、gの位置がトランクスの中央部より後方にあることが好ましい。
また、通気布片の内側下端部d、及びd’の固着箇所は中央線近傍、若しくは中央線上でよく、中央線に沿って適宜に上方固着部g’を設定して固着領域gg’の範囲を定めればよい。
さらに、通気布片下方のトランクス下方中央部gの固着する部位近傍の短辺bd、b’d’の幅は、大腿部に接する部位より狭くてもよく、特に固着部gがより後方に位置する場合には幅を広くする必要はないので図3(A)に示すように一対の布片の相対する側の下方部e、e’のようにカットして幅を狭く形成してもよい。
【0020】
(実施例2)
また、通気布片を図3(B)に示すように一対の布片とすることに替えて一続きの布片としてもよい。
この実施例においては、図3(C)に示すように両短辺ac、a’c’を先の実施例1と同様にトランクス開放部上方両側に固着し、次いで布片中央の外側下端b(b’)をトランクス開放部下方中央部gに固着し、上方に向けてg’に固着して固着領域gg’を形成する。
【0021】
この実施例では布片は一続きの構成となるが、実施例1と同じく、辺ab、a’b’の長さがトランクスの固着部間の長さとの関係でL>lの関係を保ち、固着位置gがトランクス下端中央後方であって、辺bd(b’d’)において固着位置g‘により辺bd、b’d’からこれらの領域で通気布片に対して十分な前後方向の布片面を形成できる構成であれば、実施例1とその仕組みと作用効果に変わりはない。
【0022】
以上の実施例では本願発明の通気布片を適用した男性用下着の例としてトランクスに拠ったが、男性用下着としてブリーフ等であっても同様であり、また、下着という衣服のカテゴリーに限らず、男性用パジャマなどでも同様の機能、作用効果が期待される。
通気性の布片として弾力性のあるガーゼなどが好適であるが、そのほか通気性、吸湿性がある木綿地など各種の布地が利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本願発明は、以上のとおり男性用下着において、その衛生的、着用の便と快適性を改善・向上するものであるから、その簡易な構成と相まって産業上貢献するものである。
【符号の説明】
【0024】
g、g‘ 通気布片下方短辺のトランクス取付位置
A 通気布片の長辺ab、a’b’が身体に沿って配置される領域
B トランクス前身頃の着用時に緩く撓む領域
C 通気布片
D 通気布片の上部固着領域
1 トランクス
10 トランクス開放部

図1
図2
図3
図4