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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】水系クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20240924BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240924BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/86
A61Q1/14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017210104
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019081731
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-10-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大畑 哲也
(72)【発明者】
【氏名】豊島 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】山田 武
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231966(JP,A)
【文献】特開2014-210744(JP,A)
【文献】特開2006-124305(JP,A)
【文献】岩永 哲朗 外1名、FRAGRANCE JOURNAL 、2003-12、p.106~112
【文献】Cosmetic & Toiletry、界面を科学する、太陽化学株式会社、2015年、p.1~16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
JST PLUS/JMEDPLUS
JST7580 JDREAMIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合度3以下のグリセリン重合物の含有量が20%以下であり、水酸基価から計算される平均重合度が10~20であるポリグリセリンと炭素数が8~12である脂肪酸でエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステル、およびポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを含有する水系クレンジング化粧料であって、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量をX%、前記ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルの含有量をY%としたときに下記式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする水系クレンジング化粧料
1≦X≦15 (1)
0<Y≦-1.1X+21.1 (2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系クレンジング化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品分野において、化粧落としのためのクレンジング化粧料は、オイル、ローション、クリームなどの剤型があり、それぞれ使用性に応じて利用されている。
【0003】
油中水型乳化物であるクレンジングオイルやクレンジングクリームは、連続相が油であるためメイクとのなじみが良くクレンジング性に優れている。
【0004】
また、オイルを全く含まないか微量に配合したローションタイプのものは、クレンジングの油性感が少なく使用感に優れており、一定の需要がある。近年では、ジグリセリンプロピレンオキサイド付加物を配合したものや(例えば、特許文献1参照)、ノニオン界面活性剤を配合したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらは使用感が優れているものの、クレンジング性能と使用感を両立させるため、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-124305号公報
【文献】特開2016-065026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、クレンジング力に優れ、使用感が良好な水系クレンジング化粧料を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、重合度3以下のグリセリン重合物の含有量が20%以下であり、水酸基価から計算される平均重合度が10~20であるポリグリセリンと炭素数が8~12である脂肪酸でエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステルがクレンジング性能に優れ、上記課題を解決し得る事を見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
即ち、本発明は、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを、またはポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルと併用で水系クレンジング化粧料に配合することで、従来のポリグリセリン脂肪酸エステルのみやポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルのみまたはその併用においても困難であった、クレンジング力が高く、経時での透明性を維持する水系クレンジング化粧料の開発を可能とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、範囲を表す表記「~」は、上限と下限を含むものである。
【0010】
本発明の界面活性剤を構成するポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンの製造方法は特に限定はない。
【0011】
常法のポリグリセリンの製造方法であるグリセリンをアルカリ触媒下に常圧又は減圧下で加熱して得る方法などがある。
【0012】
本発明に用いる、重合度3以下のグリセリン重合物の含有量が20%以下で、平均重合度が10~20のポリグリセリンは、任意の製造方法で得られたポリグリセリンの重合度3以下のグリセリン重合物を除去して得られる。重合度3以下のポリグリセリンの除去方法には限定はないが、方法として薄膜蒸留、膜分離、溶剤を用いた溶液抽出法などが挙げられ、好ましくは熱劣化の少ない薄膜蒸留などである。薄膜蒸留などを用いる事により、含有する未反応グリセリン及び重合度3以下のグリセリン重合物を除去することが出来る。重合度3以下のグリセリン重合物の含有量は10%以下が好ましく、重合度3以下のグリセリン重合物の含有量が20%より多い場合では、本発明の効果である優れたクレンジング力を発揮する事は出来ない。
【0013】
本発明に用いるポリグリセリンの組成分析は、ポリグリセリンをトリメチルシリル化誘導体とし、下記の条件にてガスクロマトグラフィーにより分析を行い、各成分のピーク面積を百分率として求めることができる。
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
装置 島津 GC-2014
カラム GLサイエンス 2% Silicone OV-1 Chromosorb
WAW-DMCS 60/80 3mm×1.5m、SUS
キャリアガス He(50ml/min)
検出器 FID(H:60kPa、Air:50kPa)
検出器温度 350℃
カラム温度 100℃-(10℃/min)-350℃(Hold 10min)
サンプル 0.5μl
【0014】
本発明に用いるポリグリセリンの平均重合度は、水酸基価から算出したものであり、以下の(i)式により算出する。また、(i)式中の水酸基価は「基準油脂分析試験法2013年度版」(日本油化学会制定)に準拠し測定する。
【0015】
平均重合度=(112220-18×水酸基価)/(74×水酸基価-56110)(i)
【0016】
本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと炭素数が8~12の脂肪酸がエステル化したものである。具体的にはポリグリセリンカプリル酸エステル、ポリグリセリン2-エチルヘキサン酸エステル、ポリグリセリンカプリン酸エステル、ラウリン酸ポリグリセリル-10(阪本薬品工業(株)製、Sフェイス10G-L)などが挙げられる。
【0017】
また、水系クレンジング化粧料中上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の水系クレンジング化粧料には、クレンジング力をさらに高める観点から、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを含有することが好ましい。ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルは特に限定されないが、例えば、ポリオキシプロピレン(9)ジグリセリルエーテル(阪本薬品工業(株)製、SY-DP9)、ポリオキシプロピレン(14)ジグリセリルエーテル(阪本薬品工業(株)製、SY-DP14T)が挙げられる。
【0019】
また、水系クレンジング化粧料に上記ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを併用する際は、べたつきの無さを考慮すると、ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量をX%、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルの含有量をY%とした場合、1≦X≦15、Y>0、Y≦-1.1X+21.1を満たす含有量であることが好ましい。
【0020】
本発明のクレンジング化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で通常のクレンジング化粧料に使用される成分、例えば、スクワラン、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリル、ホホバ油、オリーブ油等の油分、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子類、各種ビタミン、アミノ酸、生薬、消炎剤、細胞賦活剤、色素、防腐剤、香料等を適宜配合することが出来る。
【0021】
本発明の水系クレンジング化粧料は、油を含まないか、油の含有量が15%以下であることが好ましく、その用途目的、方法、使用する環境等に応じ、液状、ジェル状、あるいはそれらを不織布等に含浸させたシート状、または噴射剤を組み合わせたエアゾールスプレー、エアゾールフォーム等の、いずれの剤型にも適用することが出来る。容器形態も同様であり、ボトル、ディスペンサー付きボトル、ポンプフォーマー、ジャー、チューブ、スプレー、エアゾール缶、シート類を充填した袋、箱等、特に制限されず、様々な容器に適用することが出来る。
【0022】
本発明の水系クレンジング化粧料の調製方法は、特に限定されない。
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例
【0023】
〈実施例1~22、比較例1~7〉
重合度3以下のグリセリン重合物が5、10、18、25%である平均重合度15のポリグリセリンを用いてカプリル酸エステル、ラウリン酸エステルを合成し、表1、2に示す成分を表に示す組成で70℃において加熱溶解した後、室温まで冷却して、水系クレンジング化粧料を製造した。
得られた水系クレンジング化粧料を用い、使用性における官能試験を実施した。評価項目としては、「クレンジング力」、「べたつきの無さ」、「外観の透明性」の3点であり、4段階で評価した。
【0024】
[クレンジング力]
20名の健常女性パネラーにより官能評価した。口紅を前腕に塗布し、10分間放置した後、塗布した部分に水系クレンジング化粧料を塗布し、コットンを用いて拭き取った。口紅の落ち具合について5点満点として平均点を算出し、以下の基準により評価した。これらの結果を表1、表2に示す。
(基準)
◎:4.0点以上(非常に良好)
○:3.0点以上、4.0点未満(良好)
△:2.0点以上、3.0点未満(やや悪い)
×:2.0点以下(悪い)
【0025】
[べたつきの無さ]
20名の健常女性パネラーにより官能評価した。各水系クレンジング化粧料を前腕に塗布後のべたつきの無さについて5点満点として平均点を算出し、以下の基準により評価した。これらの結果を表1、表2に示す。
(基準)
◎:4.0点以上(非常に良好)
○:3.0点以上、4.0点未満(良好)
△:2.0点以上、3.0点未満(やや悪い)
×:2.0点以下(悪い)
【0026】
[外観の透明性]
実施例、比較例で得た水系クレンジング化粧料の透過率を分光光度計を用い、660nmの波長にて測定した。これらの結果を表1、表2に示す。
(基準)
◎:98.0%以上
○:90.0%以上98.0%未満
△:80.0%以上90.0%未満
×:80.0%未満
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
重合度3以下のグリセリン重合物が20%以下である平均重合度15のポリグリセリンから合成したカプリル酸エステルおよびラウリン酸エステルを1質量%含有する水系クレンジング化粧料を用いる実施例1~5、22は、重合度3以下の重合物が25%であるポリグリセリンから合成したカプリル酸エステルおよびラウリン酸エステルを用いた比較例2又は3に比べてクレンジング力、透明性に優れていた。また、添加量を変更した場合でも本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する水系クレンジング化粧料を用いた実施例6~10は、重合度3以下の重合物が25%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた比較例4又は5に比べてクレンジング力、透明性に優れるものであった。ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを併用した実施例11~21は、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル単独の比較例1に比べてクレンジング力、透明性に優れており、また、重合度3以下の重合物が25%のポリグリセリンから合成したカプリル酸エステルおよびラウリン酸エステルとポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを併用した比較例6又は7に比べてクレンジング力、べたつきの無さ、透明性が同等又は優れるものであった。